2017年10月20日週刊「かふう」 新しい財産管理として注目される「家族信託」(前編)

2017年10月20日週刊「かふう」

新しい財産管理として注目される「家族信託」(前編)

著者司法書士中村敦について

 

 読者に分かりやすく、インパクトがあるように説明することが目的かもしれませんが、使われている言葉が税法を含めた法律上、誤りがあるので指摘させていただきます。特に紹介で「司法の視点から」と、記載がありますので注意していただきたいと思います。

 

≪家族信託の仕組み≫図について

1、受益者から受託者に対して、矢印で遺言と書かれていますが、誤りであり削除が必要ではないでしょうか。受益者が受託者に対して遺言をすることは、家族信託の仕組みとはなりません。

 

2、委託者と受益者が違う人物ですが、税務上原則として、信託の効力発生時に受益者に贈与税が発生するので(相続税法9条の2)、誤りであり訂正が必要ではないでしょうか。

 少なくとも図に記載されている受益者と委託者を並べるか、最初の受益者を委託者にして、後ろに違う人物を置かなければこの仕組みは、現在の税法上行う方はいません。

 

3、信託契約に加えて遺言による信託を記載されていますが、信託宣言(自己信託)(信託法第3条第1項第3号)を加えなければ誤りです。適切な受託者を見つけることができずに悩んでいる方もいます。

 

 図については、(一社)家族信託普及協会のHPから丸写しで、少し修正を加えたのだと思われます。修正した部分が誤っています。最初から丸写しで考えた部分が誤りなのに、今後活用場面や注意点を解説することが本当にできるのでしょうか。

 

3、「家族信託とは投資信託等とはまったく違うものであり」の「まったく」は誤りです。司法の視点からみると、投資信託等、家族信託ともに信託法に則っており、信託銀行は家族信託商品を扱っています(みずほ信託銀行など)。

 違いは、受託者が信託銀行や信託会社でないこと(信託業法第2条)、投資信託の目的が利益を出すことに対して、家族信託は目的を法令に反しない限り自由に決められることなどです。

 家族信託という用語は商標登録されていますが、その趣旨は了承を得なければ利用できないというものではなく、悪質な信託を排除するためのものです(一社家族信託普及協会HP)。

 

4、「財産の多い少ないは関係ありません。」は、誤りです。

 家族信託の契約書を作成するのに、司法書士報酬で70万円以上、登記費用、公正証書費用などを合わせると100万円近くかかると聞きましたが違うのでしょうか。それは、読者にとって関係ないことでしょうか。期待させておいて後から高額な費用を提示するのは、不当景品類及び不当表示防止法第4条に抵触する恐れがあります(以下も同じです)。

 この文章の代わりに、どのくらいの費用がかかるのか、目安を提示する必要があるのではないでしょうか。

 上と同じ理由により、「全ての方が利用できる画期的な」も、司法の視点及び一般的な金銭面の常識から誤りです。

 

5、「これまでは実例も決して多くはありませんでした。ところが、~増えています。」について、現在家族信託についての統計はないはずですが、どのような統計や事実をもとに書いているのでしょうか?もとになるデータがなければ、「~と思います。」または「私の事務所では」にしなければ誤りです。

 

 

 

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『家族信託契約』遠藤英嗣

遠藤英嗣弁護士の書籍に質問してみました。

1)152ページ「他の信託の不動産取得との損益を通算することはできない。」について

⇒ 損益計算は信託契約ごとに考えるため、全く別の信託の関係を指します。一つの信託であれば、損益計算は可能だと考えられます。

なお、遠藤先生の場合、別個に信託を設定することはなく、したがって事例もないそうですが、同じ委託者で、単独所有と共有を分けて複数の信託を組成している方はいるようだ、とのことでした。ただし、その事例も多くはないと思われるとのことです。

2) 32ページの(2)「(成年後見人)の権限は監視監督や信託給付の請求等に限られる。」と、286ページの事例24「受益者の成年後見人も含むことになり、この者がいかなる対応を取るか大きな不安定要素が残る。」の矛盾について

⇒ 監視監督や信託給付の請求「等」とし、2つに限定していませんので、矛盾はしないと考えています。

なお、この成年後見人と信託当事者の問題は、大変難しい問題を含んでいます。添付ファイルの信託フォーラム128-129ページをご参照いただけますでしょうか。

この「等」の範囲は、信託フォーラム128ページのように考えれば、広くもなります。また、「監視監督権」の究極のかたちは、「信託終了の合意に関する権限あり」という考えもあり得ると思います。

3) 277ページの3行目で「本信託の委託者の地位は、相続により承継しない、とすべき」について

⇒ 家族民事信託では、「委託者の地位は、相続により承継しない」が基本です。しかし、登録免許税法7条を適用したいという人のために、224ページの文例の3項において、「ただし、税法上の扱いについては除く。」という文言を追加していただき、1000分の4にしたい人は、試みられては如何かとしたのです。

もちろん、この「ただし、租税法上の扱いは除く」で、税当局が納得するかどうかはこれからの問題です。

2017年10月27日週刊「かふう」の記事について

 

新しい財産管理として注目される「家族信託」(後編)

著者司法書士中村敦

 

前回投稿分が無視されていますが、無視された事実も含めて相談者へ説明する必要があるので指摘させていただきます。

 

1、「契約や遺言で行うもので」は、誤りです。信託宣言(自己信託)(信託法第3条第1項第3号)があります。適切な受託者を見つけることができない方や、自己信託を利用した方が有効な方もいらっしゃいます。

 

2、「そして、将来父親が亡くなったら、家族信託契約時に受託者である子を次の受益者(二次受益者)として決めておけば、契約に従い子が賃料を受領する。という内容で家族信託の契約を締結することができます。」は、誤りです。その状態が一年間続けば信託は終了します(信託法163条)。

 

3、「信託財産であるアパートについては、成年後見人の権限は及ばず」は誤りです。

法定後見人の場合、法定代理人として受益者が持つ権限のうち信託法27条、31条、36条、38条、40条、41条、44条、45条、92条などは、行使することができます。

任意後見人の場合、一般的に包括的な代理権が与えられます。受益者が持つ権限のうち法定後見人が行使できる権利は、任意後見人も行使することができます

(受益者代理人が就いていても同じです。)。

 

4、「委託された」は、託された、又は信託設定されたの誤りです。委託されていません。

 

5、「生前にあるいは受益者死亡後に受益権の移動があった場合には贈与税や相続税の課税対象となる場合があります」について、相続税の課税対象となる場合があるのでしょうか?

 

 

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事例検討 なぜ、民事信託における受益権の個数か。

事例検討 なぜ、民事信託における受益権の個数か。

1  事例
1―1               事例の簡略図

図 1信託設定時

受託者B(子)
委託者A(父)
当初受益者A(父)(父)
信託契約
受益権
第2次受益者C(妻)
第2次受益者B(妻)
予備受託者Bの子(子)
1―2               事例の前提

図 2 前提

・信託目的は受益者の安定した生活。 ・委託者の受益者指定権、受益者変更権は制限されていない。 ・受益権は、受託者の同意を得て譲渡することができる。 ・第2次受益者について、割合の定めはない、
2 民事信託において利用される場合
2―1               受益者が複数であり、意思決定が必要な場合

 受託者の責任の免除、受託者が悪意・重過失の場合の一部免除、法人受託者の役員が悪意・重過失の場合の一部免除を受益権者集会で行う場合(信託法103条3項、40条から42条)。

2―2               受益者複数の場合の意思決定の方法
2―2―1      受益者の全員一致

 信託行為に別段の定めがある場合および単独受益権を除いて、受益者の全員一致が必要となる(信託法92条、105条1項)。

2―2―2      受益者代理人

 信託行為に別段の定めがある場合および受託者の責任免除を除いて、代理する受益者のために意思決定することができる(信託法139条)。

2―2―3      信託監督人

 信託行為に別段の定めがある場合および①受益権の放棄、②受益権取得請求権、③受益原簿がある場合の記載、証明書発行請求権を除いて、自己の名をもって当該信託の全受益者が持つ権利を行使することができる(信託法132条)。

2―2―4      信託行為で別段の定めを設ける(信託法105条1項ただし書)

(例)第○条―中略―

1 受益者の意思決定は、信託目的の範囲内において全員一致による。

2 受益者の全員一致が得られない場合、信託目的の達成不能を理由として本信託を終了する。

2―2―5      みなし賛成制度[1]

 (例)第○条―中略―

1 受託者が各受益者に対して、書面による通知を行い、1か月以内に2分の1を超える受益者から反対の意思表示がない場合は、受益者の意思決定があったものとみなす。

2―3               受益権の譲渡
3 受益権の定めとその例
3―1               受益権の定め方に規定はなく、割合、元本受益権や収益受益権について記載されている文献もある[2]。受益権が2つ以上ある場合で、その受益権が2人以上の受益者に帰属しているとき、「個数」を考える必要がある[3][4][5]。よって、2人以上の受益者が内容が異なる受益権を持っている場合でも、その受益権は当然に2個とはならず、信託行為において定めを要する。
3―2               受益権の共有と捉えられる定め
(受益権) 第○条 ―中略― 【氏名1】と【氏名2】の受益権の割合は均等とする。 (受益権) 第○条 ―中略― 元本受益権の受益者は、【氏名1】、【氏名2】、【氏名3】の3名とし、各人3分の1の割合で取得する。 (受益権) 第○条 ―中略― 受益者は、【氏名1】および【氏名2】とし、【氏名2】が取得する受益権の割合は、【氏名1】が負担している扶養義務の範囲内とする。
3―3               共有とする場合の留意点

 受益権は1個であり、信託法105条1項による意思決定の際は、受益者の人数を基準としているので問題とならない。

 受益者集会で決議する場合、受益権の個数により議決権1個とされるので、多数決を採ることができず、常に全員一致が必要となる(信託法112条1項1号、信託法42条)。受益者集会は、家族信託になじまないものが多いとの考えはある[6]が、受託者として法人を利用することは否定していない[7]ことから、受益者集会における多数決においても否定はされていない。

3―4               共有となっている受益権を2個以上に分ける方法
3―4―1      受益権の分割
3―4―2      受益権の分割と、受益者変更権および受益者指定権の組み合わせ。
3―4―3      受益権の分割と、受益権譲渡の組み合わせ
3―5               受益権の共有と捉えられないようにするための条項
3―5―1    受益債権の額を基礎とする
(受益権) 第○条 ―中略―  受益権は、受益債権の額1円につき1個とする。   ・このような定めをおく場合、112条1項2号も包含されると考えられるが、同号は「受益権の額」としていることから、受益債権と受益権の額が完全に一致するのかは不明。基準日を定める必要がある。  
3―5―2    受益債権に対する割合で定める場合
(受益権) 第○条 ―中略―  受益権は、本信託設定時の受益債権の総額に対する、各受益者が有する受益権債権の割合の1%につき1個とする。 ・この方法を採る場合、信託の変更について対応する条項が必要となる。   (信託の変更) 第○条―中略― 3 受益権が移転した場合、受益権の個数は、移転日における本信託の受益債権の総額に対する、各受益者が有する受益権債権の割合の1%につき1個とする。 4 前項の場合、各受益者に計算後の受益債権が指定される受益債権の分割・併合があったものとする。
3―5―3      受益債権に対する割合で定めた場合の端数処理

 受益者には、信託法103条以下に受益権取得請求権が認められている。主として家族間で行われる民事信託で利用するのは好ましくないと考える。

4 比較
4―1               会社法における利益享受帰属主体の自益権との比較
  株式会社の株主 合同会社の社員   信託の受益者  
自益権の種類 剰余金の配当請求権、残余財産の分配請求権等[8] 利益配当請求権等[9] 受益債権、

図 3 受益権の分割と株式分割

  受益権の分割 株式分割
変更 信託行為の変更 定款
     
5 受託者の責任免除
5―1               例

 受託者の責任を免除する場合を例に取って考察する。受託者Bは、信託契約を締結して20年が経ち、今年で70歳になった。少し物忘れが出始め受益者からは、「そろそろ後退した方が良いんじゃないか。」と言われ始めていたが、受託者Bは、「いやいや、まだまだやれるよ。」と言ってやんわりと断ってきた。

 そんな時、

6 実務および各機関の対応

 民事信託を実行する際に4-2-1の方法を採り、契約書に受益権の個数に関する条項を定めた。

6―1               金融機関

 3つの金融機関へ口座を作成してもらうために事前FAXした際、これを疑問に聞いてくるところはなかった。

6―2               公証センター

 公証センターへ信託契約書の案を送信した際は、「この定めに文例はありますか?」と聞かれたので、「文例はありません。」と返事をして、参考書籍のコピーを送信した。

 再度「今回は受益者も1人なので、この定めは要らないんじゃないですか?」と聞かれたので、「何が起こるか分からないので要ります。」と答え、作成していただいた。

6―3               私は以下の理由から、現在のところ受益権について扶養義務の範囲内と定める以外、信託契約書において割合、元本、収益を定めたことはないが、個数については定めている。
6―3―1      割合はその時々で変わるのではないか。
6―3―2      元本や収益は簡単に分けられるのか。
6―3―3      最初から契約書に割合を定めると柔軟性に欠けるのではないか。
7 書式例(記載する事項)
7―1               受益権取得請求書
7―2               受益者集会に関する書類
7―3               受益者名簿

受益者の氏名住所、数、受益権の個数、不動産の場合は登記、株式の場合は株主名簿反映の有無。

7―4                

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 これと、例えば信託法89条の受益者変更権などをセットで組み合わせると、さらに面白い使い方を考えることができます。

 例えば、当初は委託者兼受益者の自益信託にしておき、受益者変更権を受託者に付与する。孫が大学に進学する場合や、子が家を建てる場合などに受益権を分割するとともに、受益者変更権を行使して、その孫や子に受益権を与え、大学進学費用や家の新築費用を援助してあげる。

 で、ある程度の金額を援助したら、その受益権は消滅し、ただの自益信託に戻る、などという設計を考えることができます。

 よく、信託を使って第三者に贈与を行いたい!などという話を聞くのですが、信託は受益者の利益のために行われるものですので、受益者以外の者に贈与を行うということは、忠実義務違反のおそれがあります。

 しかし、このように受益権の分割と受益者変更などを組み合わせることで、それと同じようなことは果たせるのではないかな、と思っているところです。


[1] 道垣内弘人『信託法』2017P353~P353

[2] 遠藤英嗣『新しい家族信託』2016 日本加除出版 P455、P460、P485

[3]道垣内弘人『信託法』2017 有斐閣 P323、P351、P393

[4]村松秀樹ほか『概説 新信託法』2008 金融財政事情研究会 P245

[5]新井誠監修『コンメンタール信託法』2008 ぎょうせい P332

[6] 遠藤永嗣『新しい家族信託』2016P168

[7] 遠藤永嗣『新しい家族信託』2016P183~

[8] 酒巻俊夫ほか編『逐条解説会社法』2008 中央経済社P28~

[9] 相澤哲ほか『論点解説 新・会社法』2006 商事法務P593~

信託設定前の抵当権の扱い

 

1 条文
(信託財産責任負担債務の範囲)
第二十一条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
一 省略
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
―以下、省略―

1―1 信託設定前の抵当権は、信託財産責任負担債務(21条1項2号)
「信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利」として、信託設定前の抵当権が挙げられています 。
その理由については、記載されている書籍などを見つけることは出来ませんでした。

1―2 信託設定前の抵当権は、21条1項2号の信託財産責任負担債務ではない
これに対して、信託設定前の抵当権は、少なくとも信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務ではない、という考えがあります 。理由としては、
(1)信託の設定のために財産が委託者から受託者に移転されても抵当権が存続するのは、抵当権が登記されており、受託者に対抗することができるから。
(2)抵当権が存在しているからといって受託者が債務を負うわけではない(債務は債務者が負い、最終的には抵当権の目的となっている物が負う。)。
結論は、抵当権の負担の付いた不動産が信託財産に属する不動産になっている、というものです。

2 信託財産責任負担債務(信託法21条1項2号の場合)
2―1 要件
(1)信託行為の効力が発生することにより、当然に信託財産責任負担債務になる(1項本文)。
(2)信託設定する財産に関する債務
(3)信託設定前の原因によって生じた債務

2―2 信託財産責任負担債務とは
(1)信託財産から履行する債務(信託法2条1項9号)
(2)信託財産責任限定負担債務(信託法21条2項)ではない信託財産責任負担債務は、受託者が個人の財産から履行する可能性がある。履行後は、受益者との信託内部の関係となる 。

3 抵当権
3―1 抵当権とは何か(民法369条~)
法定の担保物権である抵当権の特徴を以下に示します。
(1)占有を抵当権者に移転せず、設定者が利用する(非占有担保権)。
(2)抵当権者イコール債権者。
(3)第3者に対抗するためには、登記が必要。
(4)債務者イコール設定者、とは限らない。
(5)設定者が債務者ではない場合、設定者自身は債務を負担していない。債務者が債務を返済できないとき、抵当権が実行されると設定者は抵当権の目的である物を失う。実質は保証人と同様の地位に立つ(物上保証人とも呼ばれる) 。

3―2 抵当権の権利は、何か。
性質としては、付従性や随伴性などがありますが、直接の権利としては、1つしか考えられませんでした。
(1)債務不履行があった場合に、目的物の売却代金から優先弁済を受ける権利。

4 信託設定前の抵当権は、信託法21条1項2号の信託財産責任負担債務か
4―1 2-1(要件)への当てはめ
4―1―1 (1)信託行為の効力が発生することにより、当然に信託財産責任負担債務になる(1項本文)。信託行為の効力が発生することにより、抵当権が付いている不動産の所有権は、当然に受託者へ移転します。登記前は、委託者の債権者へ、登記後は委託者、受託者の債権者へ対抗することができます。
 所有権の移転、第3者への対抗と、信託財産責任負担債務になることは関係がないので、(1)の要件は満たしていないと考えられます。

4―1―2 (2)信託設定する財産に関する債務。信託設定する土地に抵当権がある場合を考えてみます。委託者からみると、債務者の債務不履行があった場合に、土地の売却代金から優先弁済をする、停止条件付きの債務となります。停止条件付の債務は、まだ行使されておらず、債務者が債務を全て弁済すると債務は消滅し、抵当権も付従性により消滅します。

4―1―3 (3)信託設定前の原因によって生じた債務。抵当権の被担保債権は、信託設定前の原因によって生じています。このように考えていくと、「債務」が停止条件付の債務を含むのか、を判断する必要があります。


5 信託設定前の原因によって生じた債務は、停止条件付の債務を含むか。
5―1 相続税法
 保証人の場合、原則として相続税の評価に含まない 。
5―2 所得税法
 保証人の場合、原則として、所得控除の対象とならない 。
5―3 抵当権の実行
(実体上の要件)
(1)抵当権が存在していること
(2)被担保債権が存在し、その弁済期が到来していること

6 結論
信託設定前の原因によって生じた債務は、停止条件付の債務を含むのか。判断基準は、以下の要件に該当する場合に、債務に含めるとするのが妥当と考えらえます。
(1)信託設定時に、抵当権の被担保債権が履行遅滞になっていること。

以上

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