2016年加工税制調査会(第25回総会)議事録

 

日 時:平成27年10月27日(火)午後14時00分~

場 所:財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

○中里会長

25回「税制調査会」を開会します。

タイトな日程での開催となっていまして、御迷惑をおかけしていますが、どうぞよろしくお願いします。

前回までで個人所得課税のセッションを3回行い、個人所得課税の歩みや構造的特徴の把握といったところを皮切りに、税率構造や控除のあり方等についての議論を行い、また、働き方の多様化や老後に備えるための自助努力への支援に関連する問題などに関連して、非常に実りの多い議論をいただいてきました。

この四半世紀の間に経済社会の構造が大きく変化してきた中にあって、個人所得課税について果たしてどのような見直しが必要かといった方向性に関する論点も様々な形で出していただけたのではないかと思っています。

今回は、前回申し上げましたとおり、資産課税について、これまでの歩みやその構造を把握しつつ、今後の検討課題の洗い出しなどを進めていきたいと思っています。

それでは、申し訳ありませんが、カメラはここで御退室いただきたいと思います。

(報道関係者退室)

○中里会長

それでは、早速、資産課税の議論に入っていきたいと思いますが、前半は資産課税の国税部分について事務局から説明いただき、委員の皆様から意見をいただくとともに、後半は地方税部分について同様に事務局から説明いただき、改めて委員の皆様から御意見をいただくという二部構成で進めていきたいと思います。

それでは、最初の方ですが、まず、財務省の新発田税制第一課企画官から説明をお願いします。

○新発田主税局主税企画官

どうぞよろしくお願いします。

それでは、お手元の資料の総25-1「説明資料〔相続税・贈与税〕」の目次を御覧ください。

本日は、相続税及び贈与税につきまして、今後の検討課題を洗い出していただくに当たり、関連する経済社会の構造変化のファクトファインディングなどを示すとともに、相続税、贈与税の意義やこれまでの沿革、現行制度の概要を確認いただくという構成で説明していきたいと思います。

早速ですが、2ページ目をお開きください。

骨太の方針では、資産課税関連では、下の方にありますように、世代間・世代内の公平を確保、資産格差が機会格差につながることを避ける必要があること。

また、老後扶養の社会化が進展する中で、遺産の社会還元といった観点が重要となっていること等を踏まえた見直しを行うとの基本方針が示されています。

続きまして、3ページです。

左側には資産課税を巡る構造変化ということで、人口や家計・再分配といったこれまでの実像セッションで議論いただいたものに加え、それらと比べるとサブカテゴリー的な位置付けになりますし、若干重なり合う部分もありますが、資産形成、相続と掲げています。本日は、まず、これらの切り口からファクトファインディングを試みたいと思います。

また、右側には、これまでの議論や先ほどの骨太の方針を踏まえ、資産課税に関する検討に当たり、主な視点としてキーワード的に七つほど並べています。もちろん、これらに限りませんし、あくまで議論の手がかりとして示した次第です。

5ページをおめくりください。

左側は家計資産の推移です。80年代にかけて急激に増加した家計資産残高は、90年代以降、おおむね横ばいとなっています。内訳を見ますと、不動産等の非金融資産が減少する一方で、金融資産が増大しています。

また、右側でフローの所得に対する各資産の割合を見ますと、正味資産ベースではストック化が引き続き進展しており、金融資産のウエートが高まっています。

6ページです。

こちらは相続税の対象となる相続財産の構成の推移を示しています。えんじと黄色の有価証券と現・預金の割合ですが、昭和63年の20%弱から平成25年には42.5%と倍以上、実額ベースでも約2.5倍増加しています。家計資産と同様に、相続財産においても金融資産のウエートが高まっている傾向が確認いただけるかと思います。

7ページです。

金融資産の年代別分布を見ています。左のグラフで1989年と2009年を比較すると、青とオレンジの60歳代以上の保有割合はほぼ倍増しています。この割合を資金循環統計のデータに当てはめますと右側ですが、40歳代以下の若い世代の保有額は減少している一方、60歳代以上の高齢者では増加しています。足元の2014年では60歳代以上の方々が約1,700兆円の家計金融資産の6割に当たる1,000兆円近くを保有していると考えられます。

次の8ページは、以前の事務局説明資料です。若い世代と比べると、相対的に貯蓄の多い高齢者世帯においても貯蓄額が多い世帯と少ない世帯に分かれ、ばらつきが見られるということでした。

9ページでは、左側で資産形成の原資となる所得の推移を見ています。生産年齢人口の減少や経済成長の鈍化により、マクロの賃金・俸給額は90年代後半から減少傾向にあります。右のグラフでは、資金循環統計を用いて家計金融資産の残高の変動を要因分解しています。

90年代後半から資金の純流入、青い棒グラフですが、減少しています。近年の残高の変動は、むしろ株式等の評価損益の変動による影響が大きくなっていることが伺われます。貯蓄の低下と併せ考えますと、このような傾向が今後も続くとするならば、家計金融資産が安定的に増加していくということはなかなか見込みにくいのではないかと考えられます。

次の10ページは現役世代の収入別世帯分布の経年変化です。90年代半ばと比較しますと、若年世代を中心に現役世代の世帯収入は低下しています。11ページは、世代別の純貯蓄額の経年変化です。こちらも若年世代を中心に現役世代の純貯蓄額は低下しています。これらを踏まえますと、現役世代にとりましては、高齢世代とは異なり、所得の一部を貯蓄し、資産を形成していくという道筋が細くなってきていると考えられるのではないかということです。

続きまして、12ページです。

まず、左側で貯蓄現在高の五分位階級別に純資産の割合を経年変化で見ています。1985年と比べますと、上位20%の世代の保有割合が増加しており、全体の60%を占めています。右側では、貯蓄階級別に世帯割合の推移を見ています。200万円未満と4,000万円以上のところに太線を引いていますが、それぞれの割合が増加しています。

以上をまとめますと、家計の資産形成の変容として、一つには金融資産のウエートが増加していること。二つ目は、高齢世代の金融資産保有割合が大きく増加していますが、世代ごとのばらつきが多いこと。三つ目として、その一方で、現役世代にとっては資産形成の道筋が細くなってきていることが言えようかと思います。

続きまして、相続の変容についてファクトファインディングを試みたいと思います。

15ページをおめくりください。

こちらは申告データから調べたものですが、被相続人の高齢化が一層進んでいます。足元の平成25年では全体の約7割が80歳以上、90歳以上が4分の1近くを占めています。

すみれ

「長生きになったってことだね。」

したがいまして、多くのケースでは相続人となるお子さんの年齢は50代、さらには60代以上となり、相続人自身も高齢者となる、いわゆる老老相続が増えています。

16ページは、以前の事務局説明資料です。世帯主の年齢が上がるにつれて、保有資産額が増加しているということでした。相続人の高齢化により、相続人の資産形成も相当に進んでいると考えられます。

次の17ページは、特に宅地の保有状況について見たものです。

赤い囲いの部分を御覧いただきますと、60歳代以上の高齢者が金額ベースですと現住居の宅地の約6割、現住居以外の宅地の約7割を保有しています。右側のグラフは現住居以外の宅地を相続により取得した年齢の推移です。こちらも年々上昇していまして、老老相続によって既に自宅をお持ちの方が二つ目の宅地資産を取得している状況が見てとれるかと思います。

続きまして、18ページです。

こちらは高齢者の貯蓄動機の経年変化です。貯蓄目的として、病気や介護に対する備えを挙げる方が近年では6割超を占めており、生活の維持と合わせて8割強の方が、長寿化が進む中で老後資金が不足するリスクへの備えを挙げている点には留意する必要があるかと思います。

続きまして、老後扶養の社会化です。

20ページは以前の事務局説明資料ですが、高齢者がいる世帯の姿が変容しており、三世代世帯の割合が大幅に減少する一方で、単独世帯や夫婦のみの世帯が増えているということでした。

次の21ページは以前厚生労働省から説明いただいた資料です。ライフサイクルで見た場合に、高齢者になりますと直接税、保険料の負担が減る一方で、医療、介護、年金という形で大きな給付を受けるという姿が見てとれたということであったかと思います。

22ページも以前の事務局説明資料ですが、年齢階層別の受益と負担の関係を見ますと、高齢者はネットでの受益となっているということでした。このように公的な社会保障制度の充実はこれまでの家族による私的な扶養に代わって、老後扶養を社会的に支えているわけですが、このことが高齢者の資産の維持形成に寄与していることを踏まえますと、相続によって次世代の一部に引き継がれることとなる資産には、老後扶養の社会化を通じて蓄積されたものという側面もあるのではないかと考えられます。

続きまして、相続に関する意識の変容を見ていきます。

24ページは遺産相続に関する意識について見たものです。

左の平成16年の調査では、オレンジの「残す財産がないので、遺産を残すことは考えていない」という回答が最も多く、次いで、残すかどうかは考えていないという回答があります。

遺産を残すことに肯定的な回答は合計で3分の1程度です。子供になるべく多く残したいとされる方が多いものの、子供のためだけではなくて、面倒を見てくれたボランティアにも残したい、あるいは社会公共の役に立たせたいという考え方をお持ちの方もいらっしゃいます。

最近のものでは、右側、こちらは国境なき医師団による意識調査です。これによりますと、社会の役に立てるために自分の遺産を寄附したい、あるいは寄附しても良いという方は四人に一人の割合でいらっしゃるようです。

25ページは日米英の遺贈の状況です。そもそものデータの制約がありますから単純な比較は困難ですが、NPOの調査によりますと、米英の生前寄附及び遺贈の状況は左のグラフのようになっています。我が国の遺贈に関する網羅的なデータはありませんが、相続税の申告から把握できる範囲では、被相続人による遺贈や相続人が申告期限までに寄附した財産の額というものは約300億円程度ということです。

続きまして、26ページ、若干アネクドータルなデータになりますが、最近相続を家族が争うという意味で争族化しているという話を耳にします。この20年の推移を見ますと、相続に関する相談や遺産分割事件数は死亡者数を大きく上回って増加しています。また、右のグラフを見ますと、遺産分割事件の約4分の3は5,000万円以下、すなわち平成24年当時ですと相続税が全くかからない遺産額での争いとなっています。遺産を巡る争いは必ずしも富裕層に限った話ではないということです。

すみれ

「相続に関する相談や遺産分割事件数は、死亡者数の「増加率」を上回っているんだよね。」

次に、ファクトファインディングの最後として、今後の人口動態上の変化を展望します。

28ページをおめくりください。

人口動態上、今後、死亡者数が増加します2040年のピーク時には、年間約167万人と、現在より25%程度多くの方がお亡くなりになると推定されています。

また、さらに高齢化が進む結果、75歳以上の方が死亡者全体に占める割合も10パーセント近く増え、約84%となることが見込まれています。この結果からは、今後、現在よりもさらに多くの相続件数が発生するとともに、そのタイミングもさらに後ずれする結果、老老相続が本格化することが見込まれるのではないかということです。

29ページは出生率と法定相続人の数の推移を並べたものです。

出生率の低下に伴い、被相続人一人当たりの法定相続人の数も減少しています。足元では2.97人と3を割り込んでいます。過去の出生率の低下を踏まえれば、相続人の数は今後さらに減少していくことが見込まれます。資産課税のあり方を考える際には、以上で御覧いただきましたように、経済社会の構造変化の中で資産形成や相続の実態が変容していることや、今後の人口動態上の変化にも御留意いただければと思います。

続きまして、相続税の現状について説明します。

31ページを御覧ください。

相続税、贈与税の国税収入におけるウエートは、円グラフの時計で言うと6時半辺りを御覧いただきますと、足元の平成27年度予算ベースで全体の3%、金額で1.8兆円弱ということです。

32ページでは、相続税の課税根拠や役割について確認させていただきたいと思います。

ここでは平成12年の中期答申を参照していますが、基本的に遺産の取得という無償の財産取得に担税力を見出して課税するものであるということですし、個人所得課税の補完、そして、累進税率の適用により、富の再分配を図るという役割を果たしていると整理しています。

また、このほかにも、被相続人の生前所得の清算、さらには老後扶養の社会化に伴う資産の引き継ぎの社会化といった役割を提示いただいています。

33ページを御覧ください。

こちらは相続税の課税対象です。相続税の課税対象は、相続または遺贈により相続人が取得した財産ですが、実際の計算に当たっては、右の吹き出しにありますように非課税財産を除外し、また、後ほど説明しますような課税価格を減額する調整を加え、さらに基礎控除の金額を控除したものがベースとなります。

この意味で、一般的なイメージでの遺産とは必ずしも一致しない点に御留意いただければと思います。

34ページでは、相続税の課税の仕組みをフローチャート的に図示しています。左から順に御覧いただきますと、まず、今、説明したように、算出しました課税遺産額を法定相続分で按分した上で、相続人ごとに超過累進税率を適用して税額を算出します。これらを合計したものが中央にある相続税の総額というものです。したがいまして、この総額は遺産分割のいかんに関わらず一定ということになります。

次に、その総額を実際の相続割合に応じて按分し、配偶者といった個々の相続人の事情を考慮した税額控除を適用した上で、実際の納付税額が一番右にある緑の箱のように算出されます。

35ページですが、相続税の課税の仕組みには大きく分けて左下にありますアメリカやイギリスのような遺産に課税する遺産課税方式というものと、右にありますフランスやドイツといった各相続人が取得した財産に課税する遺産取得課税方式という二つがあります。我が国は後者の遺産取得課税を基本としつつ、税額計算においては遺産課税的な要素をミックスしたハイブリッド型を採用しており、法定相続分課税方式とも呼ばれています。

すみれ

「法定相続分課税方式、か。」

36ページの主要国の国際比較は、時間の関係上、説明を割愛させていただきます。

37ページ以降です。こちらでは、我が国の相続税、贈与税の創設以来の沿革について、ポイントを絞って紹介させていただきます。

現行の課税方式が導入されたのが昭和33年ですから、便宜、その前後に分けて説明をさせていただきます。

相続税が創設されましたのは明治38年、直接の目的は日露戦争の戦費調達ですが、恒久財源として創設されています。導入時には遺産課税方式を採用していました。また、民法上、存在した家督相続を優遇するといった仕組みをとっていました。戦後、昭和22年には民法改正により、家督相続制度が廃止されたことを受けた見直しが行われました。

昭和25年にはシャウプ勧告を受けて、富の集中排除の観点から遺産取得課税方式に転換しています。その後、昭和33年には現行の法定相続分課税方式が導入されています。この背景には、当時、遺産取得課税方式の下で遺産分割調査が困難であったこと、あるいは税負担回避目的での仮装分割が横行していたという問題があったことが指摘されています。

以上をまとめますと、課税方式については両方の課税方式を実施した経験を踏まえ、現行方式に至っている。二つ目として、民法の相続法制との関連が強いということが言えようかと思われます。

38ページでは、参考までに課税方式に関するこれまでの議論を一部紹介しています。昭和32年の答申では、現行の遺産所得課税体系をとりつつ、遺産額と相続人の数という客観的事実により税額が定まる点や、実際に遺産分割の程度により負担が異なってしまうという遺産取得課税の弊害を除去できるという点で最も合理的であると整理されています。

続いて、このような評価には昭和61年の答申をこちらでは参照していますが、大きな変化はありませんでしたというところです。その後、平成21年度改正に向けた議論の中で、税額計算も含めた遺産取得課税方式への移行が検討されましたが、現行方式に対する肯定的な評価もありました。したがいまして、最後のところですが、結論部分だけ紹介しますと、課税の公平性や相続のあり方に関する国民の考え方とも関連する重要な問題であることから、課税方式の見直しについては幅広い国民の合意を得ながら議論を進める必要があるという形で整理されたというところです。

続きまして、39ページをおめくりください。

所得税のセッションでも言及がありましたが、この間、昭和25年に富裕税が導入され、3年後の昭和28年に廃止されています。

すみれ

「富裕税、3年間、と」

制度の説明と、次のページの国際比較は省略しますが、廃止された理由として、一番下にありますが、財産の把握が困難であり課税の公平確保が困難であったという点、あるいは無収益財産への課税であり、納税者に無理が生じたという点、あるいは徴税コストが高かったという問題が指摘されているというところです。

41ページ、42ページは現行の課税方式を採用した後の主な改正を年表の形でまとめています。

ポイントとしましては、経済の高度成長やストック化、あるいはバブルによる急激な地価の高騰等を背景に、負担軽減の観点から累次、全体としては基礎控除を引き上げ、税率構造を緩和すると同時に、右から二つ目の列にありますような配偶者や家族の居住や事業の継続、あるいは農地や中小企業といった個別の事情に配慮した特例措置の拡充を行ってきたということがここ数年前までの大きな流れであったと言えようかと思います。

43ページです。

こちらは今の年表のうち、バブル期以降の基礎控除や税率構造にかかわる改正の動きを地価の動向と合わせてビジュアル的に示したものです。地価高騰に伴い、負担を軽減してきた一方で、地価下落以降も基礎控除の水準は据え置かれています。税率構造は平成15年度改正でもさらに緩和されてきたということでした。

44ページです。

この結果としまして、相続税の課税件数はこちらの赤い折れ線ですが、足元でお亡くなりになる方100人に対して約4人、負担割合、緑の折れ線ですが、約12%前後に低下するなど、資産再分配機能が大きく低下してきたということです。

45ページ以降では、この間の相続税のあり方を巡る議論を振り返っています。平成12年の中期答申では、相続課税にどの程度の累進性を持たせるかという点につきまして、格差が拡大し、資産集中が進めば機会の平等の確保が困難になるといった見方と、資産家層に過重な負担を求めれば、自らの資産を大きくして子供に引き継がせたいという意欲をそいで経済の活性化にマイナスの影響を及ぼすといった二つの考え方を提示した上で、どの程度の累進性を持って税制全体を通じた再分配を行っていくかは、その時々の経済社会状況やあるべき社会像によって異なってくるとしています。

また、相続税の課税対象者の範囲につきましては、租税が公的サービスの費用を国民皆で広く分かち合うものであることも考えると「相続課税の対象者の範囲」については相続課税がある程度の資産家層を対象とする税であると位置付けるとしても、そのあり方を見直していく余地があるのではないでしょうかといった考え方が示されていました。

46ページを御覧ください。

しかしながら、実際には平成15年度改正で最高税率の引き下げを含む税率構造のさらなる緩和が行われました。このため、平成19年の答申では、経済のストック化や高齢化の進展、老後扶養の社会化といった相続税を巡る環境変化からすれば大幅に緩和されてきた負担水準を放置することは適当でなく、資産再分配機能の回復が重要という考え方が示されたところです。

47ページを御覧ください。

その後、平成23年度の税制改正大綱では、地価動向を踏まえた基礎控除の水準調整をはじめとする課税ベースの拡大を図るとともに、税率構造について見直しを図ることにより、相続税の再分配機能を回復し、格差の固定化を防止する必要がありますとされたところですが、下にありますように、法案の修正が行われまして、平成25年度改正まで見送られたというところです。

48ページ以降は、このような経緯を経た平成25年度改正の概要の説明です。

第一に、基礎控除につきましては、物価、地価が現在と同等であった昭和50年代後半の水準まで引き下げるという考え方の下、具体的には当時の水準を現在価値に修正し、3,000万円プラス法定相続人一人当たり600万円に引き下げています。

次に、税率構造については、所得課税の最高税率が住民税と合わせて55%に引き上げられたことを踏まえ、最高税率を55%に引き上げるとともに、45%のブラケットを新設し、より高額の遺産額を中心に再分配機能の回復を図るという考え方で税率構造を見直しています。

49ページは税率構造を過去と比較したものです。

赤い線が現行制度のものとなります。黒い線の平成15年度改正と比べると、高額の遺産額のところがやや上に上がっていますが、それ以前のものと比べますと税率構造は緩やかであることが見てとれると思います。

50ページ、51ページは実効税率の推移になります。ここでは、配偶者プラス子二人が相続する、いわゆる一次相続の場合と、子二人が相続する二次相続の場合に分けて示しています。いずれも赤い線が現行制度における負担カーブになります。一次相続の場合には、配偶者控除により法定相続分または1億

6,000万円のいずれか大きい金額に対応する税額が控除されますから、二次相続と比べますと負担は半分程度に減少します。なお、子二人が二次相続する場合、実効税率が50%を超えてくるのは、このグラフからはみ出した33億円程度ということです。

いずれの場合におきましても、基礎控除の引き上げにより、カーブの立ち上がりが低いところから始まっていますが、傾き自体は平成15年度改正とほぼ平行になっていることが見てとれるかと思います。

52ページは改正前の統計ですが、課税価格階級別の分布割合とそれぞれの納付税額の構成をグラフ化したものです。件数ベースでは課税価格2億円以下の方が全体の約7割を占める一方で、納付税額ベースでは大体14%程度となっています。

53ページは平成25年度改正における、いわゆる小規模宅地の特例の見直しです。同居する親族が居住用の宅地を取得した場合に、その宅地の課税価格を80%減額する特例が設けられています。平成25年度改正では相続税の見直しに伴い、相続人の居住や事業の継続に配慮する観点から、適用対象となる面積の上限を宅地については330平米に拡大する等の措置を講じています。

この特例がどのように効いてくるか示したものが次の54ページです。

ここにある例をとりますと、これまでお子さんが同居していなかった場合、土地の課税価格はそのまま7,500万円になりますが、同居していた場合には8割減額の1,500万となりますから、1億500万円の遺産に対するお子さん二人の相続税負担は860万円から30万円、一人15万円に軽減されます。

すみれ

「同居って大きいんだね。」

先ほどの51ページの実効負担カーブでは、課税価格は1億500万円ではなく4,500万円の場合の実効税率を見ていただくということになります。

55ページを御覧ください。

平成25年度改正では、このほか事業承継税制についても見直しが行われましたが、説明については省略させていただきます。

なお、これらの平成25年度改正につきましては、本年1月1日から施行されたところです。相続税の申告期限は死亡したことを知った日から10カ月ですから、実際に改正後の申告書が提出されるのは来月以降ということになります。

したがいまして、本改正による影響等々について分析できる状況にはまだ至っていないという点を付言させていただきます。

56ページ以降では、世代をまたいだ相続税負担というところで御覧いただきたいと思います。

前提条件ですが、まずは遺産額2億円のケース。これは右に参考で示していますように、相続税の平均課税価格とほぼイコールであり、課税件数の約7割が含まれます。また、小規模宅地の特例等は考慮しておらず、基礎控除と配偶者控除のみを適用し、各人は法定相続分で遺産を取得し、取得した遺産には手をつけないということにしています。

子や孫一人一人の取得財産額に占める相続税の割合は右下の囲いにありますように、お子さんで1億円に対し1,060万円、お孫さんで4,470万円に対し132万円となります。

これを全て総計したものが右上の円グラフとなります。三代にわたって相続が行われた結果、三世代全体での相続税負担の合計は13.2%になります。お孫さんaという方から見ますと、自身の財産は赤線で囲まれた部分の4,338万円と、全体の約2割ですが、これは均分相続を通じて兄弟やいとこが同額の財産を取得していることによります。これらを合わせた家族内での私的移転を合計すると86.8%になるということです。

以下、似たようなケースを若干前提を変えて行っています。

次の57ページは、同じ2億円で一人っ子が続くケースです。一人当たりの相続財産が増えるため累進がかかってくることから、トータルで見た税負担は増えますが、孫の取得する財産は全体の4分の3に増加します。

58ページは遺産額を20億円に変えたケースです。課税価格が20億円を超えるケースは参考にもありますように、死亡者1万人に対して1.5人になります。それぞれの負担割合は先ほど御覧いただいたように子供で41.5%、孫で約25%ということです。また、孫Aの取り分は右の円グラフで申し上げますと、金額にして2億1,769万円ということになります。

59ページは同じ20億円で一人っ子のケースです。この場合のトータルした相続税額は約13億5,000万円となる一方で、お孫さんの取得する財産は約6億5,000万円となります。

規模感をつかんでいただくために参考までに申し上げますと、大学卒業の男性が大企業に就職し、定年後67歳まで働いた場合の退職金込みの生涯賃金が3億7,000万円、中小企業の場合ですと3億円ということです。

なお、このシミュレーションでは、先ほど説明した小規模宅地の特例や事業承継税制あるいは農地の納税猶予といった特例措置は勘案していませんから、これらが適用されるようなケースにおける実際の税負担割合がまた異なるものになるという点には御留意いただければと思います。

続きまして、贈与税について説明させていただきます。

61ページは贈与税の課税根拠及び役割です。

ここでも平成12年の中期答申を参照していますが、贈与という無償の財産取得に担税力を見出して課税するというものであり、相続税の存在を前提に、生前贈与による相続課税回避を防止するという意味で、相続税の補完という役割を果たしているということです。

62ページは贈与税の基本的な仕組みを示しています。贈与税は基本的に暦年課税という方式をとっており、1年間に贈与により取得した財産を合計し、110万円の基礎控除を差し引いた上で残りの課税財産額に超過累進税率を適用し、税額を導き出すということです。贈与税の税率構造は相続税の課税回避を防止する観点から、相続税と比べ相対的に高い負担となるように設定されています。

結果として、生前贈与に対し抑制的に働いてきたきらいがあります。このため、高齢化の進展により次世代への資産移転が後ろ倒しになる中で、資産移転の時期の選択に中立的な税率の構築が求められてきたところです。このような背景の下で、平成15年度改正で導入されましたものが63ページの相続時精算課税制度です。

63ページを御覧いただきますと、相続時精算課税は暦年課税との選択制になっていますが、ポイントだけ申し上げますと、累積で2,500万円の非課税枠を設定し、2,500万円を超えた部分については一旦一律20%で課税した上で、相続時にこれまでの贈与分も含め加算して相続税を計算し、先に払った分は相続税額から控除するというものです。ここにある事例では、最終的な相続税額はゼロですから、先に払った100万円は還付されることになります。

参考として、暦年課税を選択した場合の納税額との比較を右側に示しています。

64ページは、相続時精算課税制度導入時、平成14年の税制調査会の答申を引いています。

高齢化に伴い、相続による資産移転時期が後半にシフトしていることから、資産移転の時期の選択に対する中立的確保が重要であり、このような観点から相続税・贈与税の調整のあり方を検討すべきとの御指摘をいただいたところです。

65ページは贈与税の課税状況です。このグラフですと、オレンジの折れ線ですが、相続時精算課税制度を利用いただいている方の推移と相続時精算課税に基づく贈与の実額については棒グラフの茶色の部分をそれぞれ御覧いただければと思います。

導入当初と比べますと、件数、金額ともに若干減少傾向にあるということが言えようかと思います。

66ページは、先ほど御覧いただきました税制抜本改革法の附則における贈与税関係の指摘に下線を引いたものです。高齢者が保有する資産の若年世代の早期移転を促し、消費拡大を通じた経済活性化を図る観点からの贈与税の見直しということで措置を講じたというところです。

67ページをおめくりください。

平成25年改正では贈与税について、お子さんやお孫さんが贈与を受けた財産に係る税率を緩和するといった措置が講じられましたほか、相続時精算課税制度の対象者にお孫さんを追加するといった見直しを行ったところです。

68ページには、贈与税の税率の税率構造のこれまでの推移を並べていますから、御覧いただければと思います。

さらに、続きまして、69ページ以下ですが、近年ではリーマンショックへの対応やデフレ脱却、経済活性化の観点から、高齢者の保有資産の早期移転を促進するため、住宅や教育といった用途に限定した上で、一括贈与に係る非課税措置を設けたところです。

69ページから72ページにかけて資料を添付していますが、詳細については説明を割愛させていただきます。

住宅については平成21年、教育については平成25年、結婚・子育ては平成27年にそれぞれ創設されたということですし、その後、住宅と教育については拡充、延長が図られてきたというところです。

平成27年度改正では、いずれについても平成31年までの時限措置とされています。時限措置とした趣旨につきましては、一つにはデフレ脱却、経済再生といった政策目的に照らし、早期の資産移転促進による効果の発現を促すものであるということ。

もう一つには、このような非課税措置が格差の固定化につながりかねないという恐れを踏まえ、再分配機能が損なわれることのないよう、その効果や影響をよく見ながら、適用期限を迎える際に必要な見直しを行うこととしていることによるものということでした。

73ページに飛ばせていただきますと、こちらは、これらの措置の延長を盛り込んだ法案の国会審議における衆議院・財務金融委員会における附帯決議です。立法府からは、税制のあり方についてデフレ脱却・経済再生に向けた対応とともに、今後も格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現といった考え方の下で不断の見直しを行うことといった決議をいただいているところです。

最後のページの贈与税の国際比較については、説明は割愛させていただきます。

ありがとうございます。

○中里会長

ありがとうございました。

それでは、今の新発田企画官の説明につきまして、委員の皆様から質問、御意見がありましたら、お願いします。

井伊委員、どうぞ。

○井伊(重)委員

質問ですが、先ほど相続税法の改正に伴っての具体的な事例はまだ出ていないというところの説明はあったのですが、見込みとして、今回の税法改正でどれぐらいの人が相続税の適用対象に拡大されるのか。4%が何%に拡大したのかというところと、その比率です。13%がどれぐらいに拡大する見込みなのかという、そこのところを教えていただきたいです。

○中里会長

よろしいですか。お願いします。

○新発田主税局主税企画官

ただいまの質問にお答えいたします。43ページを御覧いただけますでしょうか。説明を省略してしまって恐縮ですが、43ページで先ほど御覧いただきました地価の公示と相続税の改正の推移を並べた表の一番下のところに、これまでの課税件数の推移を並べています。

一番右のところですが、今回の平成25年度改正に伴いまして、どの程度課税件数が増えるかということでは、当時の見込みでは今の4.3人というところが6人台程度になるのではないかというように見込んでいるところです。

もう一つの課税割合のところについては、手元にデータがありませんから、お答えできない状況です。

○中里会長

たしか年明けぐらいにならないと統計も出てこないという感じでしたか。

○新発田主税局主税企画官

そうです。毎月毎月の税収は大体その辺りから出てくると思いますが、傾向としてということになると、年明け以降、もう少し様子を見た上でということになろうかと思います。

○中里会長

そのようなわけで、これは仕方がないことですから、よろしいですか。

ほかにいかがでしょうか。

梅澤特別委員、どうぞ。

○梅澤特別委員

ありがとうございます。

二点質問です。一点目は、相続税に関して、相続の総額に対する実効税率の国際比較というものはどこにありますでしょうか。最高税率を見ると日本は諸外国より高く見えるのですが、これは見かけ上の話かもしれないため、実効税率でどのようであるのかということを教えてください。

二点目は、相続税と贈与税で、贈与税の方で資産移転の時期の選択に対しての中立性を確保することが重要という立法趣旨で改正が行われたという話ですが、実際に税率の階段を見るとまだまだ明らかに贈与税の方が税率は高く見えます。

ここのところをもう思い切って相続税と贈与税の税率構造を一致させる、あるいは大分相続税の方に寄せていくというような議論はあるのでしょうか。あるいは現実的なのでしょうか。

以上、二点、お願いします。

すみれ

「補完だったら同じ税率でも良いような気もする。どっち側に寄せるかは分からないけど。」

○中里会長

お願いします。

○新発田主税局主税企画官

まず、一点目のお尋ねですが、実際の実効負担の割合については、今、手元に資料がありませんから、次の機会なりで改めて可能な限り調べさせていただければと思います。

二つ目の相続税と贈与税の関係ということですが、最後の贈与税と相続税の関係のうち、贈与税の主要国の国際比較を付けています。各国との関係で申し上げますと、過去の生前贈与につきまして累積をする、全て足し合わせるといったような考え方をとっている国では、贈与税と相続税については税率が一致しているケースが多くあります。

逆に、日本の場合には、暦年課税ということで相続税と贈与税が別建ての関係になっているため、そのような関係もありまして、やや税率が相続税の課税回避防止といった観点でよりきつい負担になっているということですから、様々議論はいただけると思いますが、生前贈与による相続税負担の回避、防止という観点からは、相続税と贈与税の関係というものは、税率もさることながら、税率だけではなくてまとめて精算するといったような仕組みというものも諸外国では取り入れられているところです。

先ほど申し上げました相続時精算課税ですと、こちらの場合には20%で仮払いということですが、20%で仮払いをする代わりに贈与してから以降の全ての贈与を精算するということですから、そのような仕組みになりますと別建ての場合に想定しているような懸念が解消されると考えています。

○梅澤特別委員

ありがとうございます。

○中里会長

田近委員、どうぞ。

○田近委員

御説明、ありがとうございました。

相続税の全体の流れをどのように理解して良いのかということで、確認も込めて質問ですが、42ページに相続税、贈与税の主な改正ということが書いてあって、要するに平成4年を見ると相続税の基礎控除というものが引き上げられる。

相続税の税率構造というものも最高税率となる境目を5億円から10億に引き上げる。特例も引き上げるということで、基礎控除、税率構造、特例もある意味で課税を緩和するという動きです。

平成6年も同じく全て緩和するという動きで、平成11年は特例のところを緩和する。平成13年も特例のところを緩和して、贈与税の基礎控除も60万円から110万円に引き上げた。これは大きいです。そのようにすると、平成15年も同じような流れで、ただし、相続時精算課税ということで、途中で贈与しても死んだときに精算するという制度ができた。平成21年が今度は事業承継税制、これは後で質問させていただきます。平成21年に住宅資金の非課税枠、平成25年に教育資金の例の祖父、祖母が孫に1,500万円までということですと。

実は平成27年が新しい動きで、基礎控除を5,000万円から3,000万円にした、そして税率構造も増やして最高税率も増やした。ただし、小規模宅地はある意味で緩和したということです。

そうすると、これから税制調査会で何を議論していくのか。相続税の再分配機能を重視するような考え方なのか、年金、医療、介護等で社会保障の給付を受けている老後扶養の社会化なのか。

もう一つ、実は、私は大きな議論があったと思うことは、平成21年度のときに遺産取得課税を前提にしながら、要するに相続人の実額課税を議論したわけです。

民法の取得分の計算ではなくて、実額で行うと。その動きもあったのですが、それが途絶えていると言いますか、その後消えているということで、質問と同時に意見でもあるのですが、このような流れで、実態も踏まえて、我々の税制調査会での相続税のイシューは一体何なのであろうかということが大きな問題としてあると思います。

あと一点、事実確認等、今日でなくても結構ですが、先ほどの42ページですが、平成21年に事業承継税制というものが作られました。これは非常に重要な、特に中小企業のオーナーの方には大きな税制であると思うのですが、55ページに事業承継税制の概要があります。要するに事業承継、中小企業のオーナーが、仮に父親が社長でお亡くなりになった。それを相続する人たちの税が余りにも重いため、それを軽減してあげましょう。

ただし、それは簡単に認めるわけではなくて、相続人が、代表者であること。しっかりと雇用を確保して、5年間続けてください。そうすれば軽減するという制度ですが、質問は、この制度がそれ以降改正されたかどうかということと、この制度をどのように利用されているかという実態について、これは今日でなくても結構ですが、ぜひ事業承継税制のその後を制度面と実態面で伺いたいということです。

指摘したかったことは、この相続税の流れを踏まえて、前段の説明いただいた実態を踏まえて、税制調査会のアジェンダは一体何になっていくのであろうかということは指摘とともに感想を述べました。

○中里会長

よろしくお願いします。

○新発田主税局主税企画官

ファクトの面について、先ほど田近委員から事業承継税制のところで質問がありましたから、件数についてはまた改めて報告させていただきたいと思いますが、事業承継税制が入りましたのが平成21年度ですが、足元の改正でも、先ほど言及していただいた代表者であることというものが親族でなければいけなかったものが従業員等でも良くなった、あるいは雇用の8割というものは今、平均というようにこちらに書いてありますが、以前は平均ではなかったため、そのような意味で使い勝手を良くしたいという形での見直しはしていますが、具体的な適用件数につきましては、また改めて報告させていただきます。

○中里会長

田近委員、それでよろしいですか。

○田近委員

その後の制度改正での利用の実態については、次回以降で十分です。

○中里会長

調べていただくということですね。では、田中特別委員、どうぞ。

○田中特別委員

田近委員から事業承継税制の話が出ました。中小企業からすれば、事業承継税制で猶予をしていただくということは唯一の手がかりなのですが、なかなか利用が難しいということが実態であると思います。

猶予できるものが80%であり、実際に株の過半数を持っていなければいけないわけです。実際には父親が会社を作ったときには株主が何人かいなければいけないため子供たちの名前で株主を分けて、その後、後継者が一生懸命会社を大きくしたが、結果的には株が分散していて、なおかつ株価が非常に高くなってしまっていて相続がしにくくなっている。一生懸命行っているのに相続しにくいというような現象が一番大きな問題であろうと思います。

そのときに、取引のない株をどのように評価するかということが問題であるため、実際には評価は全部資産として売ったときの値で出していくと捉えていますから、会社の継続が難しくなっているということと思います。

そのために猶予制度を取り入れていただいているということだと思いますが、なかなか難しい。

株の評価については、類似業種を参照にしても、今、例えば何も中小企業の環境が変わっていないのに上場株が上がってしまうと、そのまま上がってしまうということもあって、それもどのように評価したら良いのかということはぜひ相談をしたいというところであると思います。

今の事業の承継についてもそうですし、その前にある小規模宅地等の特例といったような、要するに居住に関することや、商売に関することについてフローとストックがどのような影響を与えるかというようなことは重要な問題であると思います。

我々としても環境が急に変わってしまう、継続できないということについては困るということを感じています。

○中里会長

御意見ということですね。

○田中特別委員

はい。

○中里会長

では、野坂委員、お願いします。

○野坂委員

説明ありがとうございました。質問がまず一つあります。

31ページに国税の中で各税目の占める割合が出ています。相続税は先ほど3.0%で1.8兆円弱であるという説明がありました。全体の国税の中では相続税の割合はかなり低いという印象を持ったのですが、これまで様々な改正を行ってきた中で、国税の中で相続税の占める割合の推移、これについて基礎的なデータを見せていただければと思います。

丁寧に様々な説明、大変参考になったのですが、この中で何点か質問があります。

意識調査に絡めてアメリカなどとの比較、遺贈の割合の比較が出て日本は非常に少ないということでしたが、これを示した意味と言いますか、狙いと言いますか、日本がもっと遺贈しやすい社会にした方が良いという意味で出してこられたのか、日本が遺贈しにくい社会と言うべきなのか、資料がつけられた背景、意図が何かあるのであれば教えていただきたいです。

要するに日本でも資産を持っていらっしゃる高齢者の方がいずれ社会に還元しようというような流れ、日本でもいずれ大きくなるかもしれないが、そのようなことを考えていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

○中里会長

この点をお願いします。

○新発田主税局主税企画官

まず、最初の質問ですが、相続税の税収ということで、税収額そのものについては44ページに棒グラフがついています。こちらを見ますと、若干納付税額と実際の税収、見方が違うのですが、ほぼ同じような動きをしていると理解いただければと思いますが、やはりバブルのピーク時に4兆円ほどあった税収が今はこのような段階になっているというところです。

国税収入との比較で申し上げますと、平成5年に税収の5.1%というものがピークですが、大体足元ではほぼこの10年近く、3%前後ということです。具体的なデータについては、改めて示させていただきたいと思います。

続きまして、遺贈のところですが、どのような意図かということですが、骨太の方針の中に遺産の社会還元というキーワードが一つ入っていました。様々な意味で社会還元というものはあると思いますが、その一つに遺贈というものがあるのではないか。

その場合に、意識調査だけであると少しデータとして御覧いただく議論の素材として不十分と思いましたから、国際的な比較をつけました。もちろん、様々な寄附文化という意味でよく言われていますように、様々な意味で海外と日本で違うところがありますから、税の場でという話で全ておさまるものではないと思いますが、一応ファクトと言いますか、素材としてあくまで示させていただいているところです。

○中里会長

それでは、宮崎委員、お願いします。

○宮崎委員

ありがとうございます。

意見というよりは希望かもしれないのですが、今、改めてデータを示していただいて、内容が不動産、家、土地のようなものよりも金融資産がかなり増えている、あるいは老老相続が増えているというようなことで改めて認識をしたところです。

つまり、古典的な議論の延長線上では論じられないであろうということは想像しているのです。

さはさりながら、先ほども現金収入がない段階で不動産を相続する場合に、納めるお金がないわけですから、それを要するに切り売りしたり、分割していくというような、出ていくという話が今でもあると思います。

そうすると、例えばまちづくりというものを考えたときに、ある一定の町並みや住まい方、暮らし方を維持しようということが非常に困難になってくるわけです。

祖父母の代で持っていた不動産が四分割、六分割、場合によっては八分割され分譲住宅で売り出されるというようなことになっていきますと、子の代、孫の代、そこにいられなくなる。そうすると、孫の代になると、もうアイデンティティの形成というのでしょうか、自分のよって立つ地域、ふるさと、特性というようなものをどのように継いでいくのか。

相続というときに何を相続し、何を守るのかということを、そこも併せて考えていただければと思います。

町がどんどん型崩れして細分化されたり、流動化したりということになりますと、不動産の流動化も、セキュリタイゼーションもありますが、結局文化そのものが守られていかないのではないかと危惧するものですから、その辺りのところに配慮ができると良いと思っています。

老老介護ですと、この税制調査会でも盛んに勉強しているように、資産を持っている高齢者から苦しい若年層に対して平等的に再配分できるようにというような趣旨が随分語られてきたと思うのですが、今のデータを見る限りでは、そこまで行かないです。

中途のところでとまってしまって、孫の代に行ったときには今、申し上げたようなことになってしまうということになると、もう少し形を考えた方が良いのかもしれないということを思っています。

いずれにしても、税と社会保障も課されても良いのですが、制度の中での改革だけではなくて、ほかの日本全体の文化、社会、歴史、暮らし方や価値観など、そのようなものに波及する部分もぜひ考慮しながら議論していただけたらと思っています。

○中里会長

宮永特別委員、お願いします。

○宮永特別委員

今回の資産課税という観点と、より強い所得税など、そのようなことにも影響するのでしょうが、例えば我々の感覚というよりも一般的に考えて、これからますますグローバル化していったり、優秀な人と言いますか、様々な意味で経済を活性化させる、産業構造を変えていったりするときに素晴らしく優秀な人たちが必要な場合もあるわけです。

ある程度長く考えたときに、そのような方たちが海外に出ていってしまって、今までは日本人で日本で教育を受けて、日本の教育制度もしっかりしていて、国際的にも日本の教育制度、社会全体がまだ高いレベルで相対的にいたのですが、これからはそうでもない時代が来るときに海外に出ていってしまって、優秀な人たちが帰ってこない。

徐々に長い年月の間に日本の力が弱っていくというようなときに、グローバルに見て、大体海外は先進国であるなど、特にターゲットを決めれば良いと思うのです。

教育レベルの非常に高い国や、産業レベル、経済力が非常に強い国で、ある程度一定以上、例えば基本的に住むのに大変難しい国であれば別ですが、先進国や、ある程度これならば日本とコンピートしている、もしくは日本よりも良いと言われているような国よりも、ある程度平均的に税制面において、極端に勝っている必要はないと思うのです。

中央より少し良いところにある、もう一つは、少し日本人は心に訴えるところがあるとすれば、政府や様々なところで、ライフサイクルを通じて平均的に見ると日本は税負担が公平で、極端に重税感はないしバランスは良いというところが説明できるような全体的な説明です。

特にその瞬間瞬間は相続の時や得ている時ではなくて、平均的なライフサイクル、極端に良い場合、中央の場合、すごくうまくいった場合、うまくいかなかった場合など、そのようなところで大体これぐらいの負担で全員あまり極端なことはないが、ある程度頑張ればきっちりとなっていきますというところがあれば良いのではないかと思います。

それと、少し日本的にアピールするのであったら、社会的な再配分と言いますか、社会還元というものについて日本の税制度はこのように海外にない特徴があって、このような優しさなど、良いものを持っていますということをアピールできるような、そのようなものを考えつくことがあれば良いのではないかという感じがして、質問でも意見でもないのですが、そのような感じがしましたから、そのような観点での資料その他、これからお考えがあればまた説明のときにでもいただければありがたいと思っています。

○中里会長

税制による国の営業努力のようなことですね。

○宮永特別委員

やはりそのようなものも要るのではないかという感じがします。

すみれ

「国の営業努力、か。国も大変だね。」

○中里会長

ありがとうございます。

それでは、上西特別委員、お願いします。

○上西特別委員

野坂委員がおっしゃいました遺贈をもっと行いやすくする社会という点は私も賛成です。そのために遺言が必要となるわけですが、法務省の民法(相続関係)部会で今、遺言の見直しをしているところです。遺贈しやすくなるような方向に移るのかなという気がしています。

それと59ページです。現在国税庁で平成25年までの数字が発表されていますが、20億円超のところで見ますと192件です。そして三代続いて大半が税金になるかどうかですが、先ほど説明がありましたように軽減措置を使わないでもこの図でいくと6億5,000万円は残るということですから、大抵の方については十分に残るわけです。

もちろん、キャッシュに近いものと遠いものとの差については一定の配慮が必要であると思いますが、これで実態が非常によく分かりました。

それと、相続税の役割についてです。全体に占める税収の比率を見ると、ピーク時で5%台であることから、税収の確保は当然必要ですが、役割としては再分配機能や格差の固定化などを防止する機能というものがより重要と思います。

その中で考えることが、相続税制の中での課税の公平というものも考える必要があります。その公平性というものは、社会全体と言いますか、多くの人から見た公平感というように言いかえても良いのかなと思います。公平感の裏返しというものは不公平感ですが、不公平感が高まると税に対する信頼性が失われて、ひいては勤労意欲の減退にもつながります。

とりわけ資産税、相続税の分野においての不公平感というものは重要です。多額の資産を持っている資産家のみが利用できるような手法が多く存置と言いますか放置されていると、この点において不公平感がより出てくることになります。

税制調査会は制度の基本的な枠組みやあり方を議論するところであることは承知しているのですが、実務家から見て疑義のある点について紹介をしたいと思います。

一般の週刊誌やビジネス雑誌などを見ても、最近、顕著に見られるものは高層マンション、タワーマンションを使った節税策です。都心のマンションを買って評価額を圧縮しましょうというようなフレーズが載っているぐらいですから、いかがなものかなと。

実態として、例えば3億円で取得したものが財産評価基本通達のとおり行えば、3分の1の1億円になった場合に、これが妥当かどうかということなのです。このような資産家しか使えないような制度があると、制度設計だけではなくて執行面において通達を改めるのか、または現在、著しく問題がある場合については別途措置することができるという規定があるわけなので、そのようなものも使って、時価と評価額との乖離が大き過ぎるものについては見直しを是非していただきたいと思います。

それともう一点、事業承継税制についてです。中小法人の事業の承継に伴う様々な問題解決や、雇用、技術の伝承などという点で非常に良い制度であると思うのですが、要件が厳しかったことから、利用件数が伸びなかったわけです。

平成25年度改正において相当に適用要件が緩和されたわけですが、やはり実務面から見るともう一段の見直しも検討いただきたい。例えば雇用の8割について5年間の平均となったわけですが、7人のところでしたら、その8割は5.6人ですから、6人を維持しなければいけないことになります。

また、納税猶予の継続届出書や判定の期日など算定割合の見直し等々、細かいことは申し上げませんが、現場を見ながらさらなる見直しをお願いしたいということも併せて申し述べておきたいと思います。

○中里会長

今の点について、事務局の方で何かありますか。

○新発田主税局主税企画官

前段の執行の話につきましては、国税庁の方で執行を持っていますから、そちらとも今の上西特別委員の意見の趣旨につきまして、きちんと共有させていただきたいと考えています。

○中里会長

この点はほかによろしいですか。

○田近委員

一つだけ。事業承継税制について。

○中里会長

どうぞ。

○田近委員

上西特別委員の指摘もそうですが、55ページについて、これは作るときに中小企業のオーナーに制度が濫用されるようなものであってはいけないということで、では、どこでそれを縛るのかという大変な議論がありました。

本来の事業を続けようにも、父親からもらった会社の株を資産評価してみて株数で割って、相続税が高くて仕事が続けられなくなってしまうというのは良くない。

その代わりに、仕事を続けるという要件で負担を緩和しましょうというのが雇用8割5年という縛りであったと私は思います。

非常に難しい問題で、我々と言いますか日本全体で中小企業の事業の継続をどのように考えるか。この8割5年というものがある意味でそれは守ってくださいと、その上で軽減しましょうという考えに立つのか、これが使い勝手が悪くて困るとするのか。

私自身は、この問題にはある意味でニュートラルですが、本当に大きな問題であると思います。したがって、実態を踏まえて税制調査会で議論を深めて、その中で私自身も考え方を整理できれば良いと思います。ただし、問題の所在とされる内容は、制度を作ったときはまさに8割5年の縛りが重要で、だからこの制度を作っても良いということがあったため、指摘させていただきます。

○中里会長

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

三点ほどです。

まず、相続税の位置付けですが、恐らく三つあって、一つは再分配という観点で、富の流動化と言いますか、固定化を回避する。ただし、再分配であれば、これは所得税の話も前回あったと思いますが、相続税は税金を取るというところですから、それをどのような形で移転と言いますか再分配に充てるのかということが本当は問われるため、これは特に相続税を今後再分配目的で強化するということであれば、税金をどのような形で再分配に充てているかという、その道筋は何か見せた方が良いと思います。

社会保障に限らないと思うのですが、何らかの形で富の流動化と言いますか、所得階層の流動化につながるような使途を考えて、念頭に置かないと良くないと思います。

二つ目の性格は、先ほど田近委員からありましたが、死亡時精算課税、つまり、本来自分が払うべきであった、例えば社会保険料や対価など、本当はこの後、議論が出てくるでしょうが、固定資産税なども本当は生きているうちはなかなか所得が低いため払えないが、亡くなったときに合わせて払うという、ある種、これまで払ってこなかった税金あるいは払うべき社会保険料、一般的に言えば受益に対する対価です。

社会保障であれ、行政サービスであれ、そのようなものに対する対価をまとめて払うという役割もあり得る。死亡時精算的課税。その場合であれば、当然本来払うべき社会保険料で幾らである、本来払うべき固定資産税で幾らなのかという、そこはしっかりと算定根拠をしていないといけないと思います。

三つ目は、意外と忘れられがちですが、一時期死亡消費税というものがはやったと思うのですが、相続税は消費税とむしろリンクするわけで、特に土地は非課税ですから関係ないですが、金融資産というような、さもなければ多分消費に充てられていたものであると考えるのであれば、消費税との見合いで金融資産に対する課税をどのように理解するかというアプローチもあり得るのかなと思います。それがまず言いたかったことの一つ目です。

すみれ

「死亡消費税ってはやったのか。」

二つ目ですが、私もこれをどのように整理したいのかよく分からないのですが、相続税と贈与税が向いているベクトルが全く逆で、相続税の方はどちらかというとこれから富の再分配という観点から見て強化しましょうということがある一方で、贈与税はむしろ早い段階で、寄附であれ、あるいは子供に対する移転であれ、そのような形で相続税の先取りなど、相続税の一体化ということが以前は図られていたと思うのですが、今の流れで見ると相続税はどちらかというとやめてと言いますか、軽減して、むしろ早い段階での贈与あるいは寄附を促しましょうという流れであるとすれば、実は相続税と贈与税は何らかの役割分担があるのか、あるいはそうではなくて本来の目的に即して贈与税と相続税の役割を一にするべきなのか、ここも整理が要るのかなと思いました。

あと気になることは、この後出てくる固定資産税もそうなのですが、小規模住宅に対する優遇措置というものは、先ほどのタワーマンションも近いと思うのですが、面積になぜあれほど注目するのかよく分からないのですが、小規模住宅を優遇するという形で面積に着目するからまさに小さい住宅もできてしまうわけで、ある種、確かに住み続ける人もいるわけで、すぐに売って相続税の税額を捻出しろということはむげであるということであれば、適正に評価して、別に面積は関係なく、一定額を控除するなど、基礎控除はあるわけですから、そのような住宅向けの控除を作るなど、もう少し別の工夫はあると思います。

固定資産税の方がむしろ大変なのですが、面積に注目することによって妙なゆがみを、相続税であれ、固定資産税であれ、何か与えているような気がするため、ここはむしろ課税標準は適正化する、ただし、何らかの控除という形での軽減政策を図るという、その辺りの政策の転換が必要なのではないかと思いました。

○中里会長

ありがとうございます。

それでは、林特別委員、どうぞ。

○林特別委員

どうもありがとうございます。

先ほどの佐藤委員の死亡精算というものは非常に同意できるところですから、私からもその点は重要だと強調したいと思います。それが一点です。

もう一つは、ここで余り指摘されていなかったため強調したいのですが、基本的に相続税というものは自分の努力に全くよらない一時的な所得ですから、そのような所得に課税する場合、どのように考えるべきかという根本に立ち戻って考えた方が良いかなと思います。

そのように相続を一時的な所得として考えられるのなら、これは事務局への質問になるのですが、相続した財産を相続税ではなく所得税として処理している国があるのかどうなのかということも気になるところです。所得税で処理している国があるとすれば、統計が出てこないような相続の処理の仕方もあるということになります。

最後に事業継承の件ですが、事業継承については、手段としては必ずしも相続税だけで対処する必要もないのかなという気がします。ほかに産業政策的な様々な優遇措置があれば良いわけですし、また、事業継承する場合も、必ずしも御子息が継承する必要はなくて、より良い経営者がいらっしゃればその方に任せれば良いわけです。

また、企業が企業として価値があれば当然買い手も出るわけですから、そのような意味で生産性の高い企業が残るという議論も可能かなと思います。それだけではないとは思いますが、そのような視点も必要ではないかと思います。

○中里会長

それでは、高田委員、お願いします。

○高田委員

説明どうもありがとうございました。私の場合は感想めいた話になってしまうのですが、先ほど、今の相続税のところの税収、全体において3%ほどということでありますから、そんなに大きな税目ではないと思うのですが、私自身感じますことは、資産課税というものはマクロ経済的に考えると実態以上にかなり大きな影響を与えてきたのではないかという点でして、例えばバブル期の中における不動産に対する課税や、このようなものは大したものではなかったわけですが、非常に大きな期待形成というものを金融資産、場合によっては不動産という資産価格にかなり影響を与えたということもありまして、そのような意味では、この議論というところに関しては、かなり資産形成もしくは資産価格に関するマクロ経済的な相当なインパクトを持ち得るという視点を我々持っておく必要があります。

従って、実態以上にかなりの影響があるという点は重要な論点ではないかなというように考えています。

そのような観点から考えました場合に、先ほどからこちらの中でも議論があったわけですが、相続の高齢化が進む中で、当然のことながら、従来であれば普通の相続の中で資産の移転というものが、若年層に行われてきました。

しかし今日、従来のような形での移転が行われにくくなってくる。この状況が今後ますます強まってきやすくなってくる。当然、先ほどのマクロ経済的な関係で言えば、例えば限界的な消費性向や、投資性向のようなものもかなり違ってきますから、当然、これは経済活性化の観点から考えますと、若年層への贈与の促進、何らかの形での促進が有効なわけです。

そのような意味で、従来から議論している格差という関係からすれば、例えば今回もありましたような贈与制度や、また、資産形成等について言えば、ジュニアNISAのようなものも出てきているわけです。このような制度の創設というものもこのような考え方にあるわけです。その考え方はこちらのペーパーの中でも66ページのところにそのような視点も出てきているわけですが、当然また同様に73ページの附帯決議のところにありますように、格差の固定化というところとの天秤をどのように図っていくのかというところは当然あるわけです。

しかしながら、このようなマクロ経済的な観点からすれば、一括贈与についても、ジュニアNISAなどにしても、デフレの脱却ということからすると、時限措置があるわけですが、一方で、政策的な期待の形成という観点から言えば、ある程度恒久的な対応にしていかないとどうしても期待形成には影響を及ぼしにくくなるという部分もあります。

その辺りの議論というものも同様にしていく必要があるのではないかと思います。したがって、当然のことながら、格差と言いますか、同世代の中においての格差はありながらも、若年層と高齢層という格差の観点から見ると、様々な資産の若年層への移転というようなものは重要な状況になってくると思いますから、そのようなマクロ的な政策意図というものもかなり今後は重点的に議論しておく必要があるのではないかと感じた次第です。

○中里会長

ありがとうございます。

事務局からお願いします。

○新発田主税局主税企画官

先ほど林特別委員から、相続税がない場合で所得として捉えるケースがあるのかということでした。詳細につきまして、また改めて示させていただければと思いますが、G7の国で申し上げますとカナダは相続税がない国ですが、カナダについては、みなし譲渡課税ということですから、それはどのような法形式と言いますか、どのような税目で税金を取るかということはまた別の話かと思いますが、いわゆる移転する所得という形では、何らかの形では捉えられているということかと思います。

○中里会長

含み益を相続時に所得税で課税してしまうということですね。スウェーデンは何か資産税か何かで別途補っているような記憶がありますが、結構どこも努力しているのかもしれません。

岡村委員、お願いします。

○岡村委員

今、高田委員からも指摘がありましたが、本日のファクトの中では、やはり老老相続が増えているということが非常に大きいことではないかと思います。やはり古い世代から次の世代への富の移転、特に社会の生産に役立つようなものをいつまでも年寄りが握り続けるということは余り良くないのかもしれないと思います。

この2015年の基本方針でも、持続的成長を支えるということですから、相続税といったものがこの持続を妨げるような形で入ってくることは好ましくない。しかし、他方では、もちろん機会格差を増やすようなことは、これも避けなければならないということになるのではないかと思います。

アメリカの例になるかもしれませんが、アメリカは1976年にユニフィケーションと言いますが、遺産税と贈与税の一体化の改革をしました。これは日本で言うと相続時精算課税制度の拡大バージョンになるかもしれません。背景には、アメリカは、遺産税は遺産を残した人、贈与税も贈与を受けた人ではなくて贈与した人に課税をされる制度になっていて、この中で比較的ユニフィケーションが行いやすかったということがあるかもしれません。しかし、日本もこれだけ老老相続が増えてくるということですと、死亡時まで資産を保有し続けるということではなくて、もう少し早い段階で次の世代に回す、そのようなことに役立つような税制ということも考えても良いのかもしれません。

アメリカでは、エステート・フリーズという、これは節税なのか、租税回避なのか分かりませんが、税負担軽減のテクニックがあります。決して悪い意味ではなくて、少し日本でもこの考え方、つまり、親の世代が、まだその事業が十分に成長していない段階で法人を作って、その株式を早期に次の世代に贈与してしまう。

そして、贈与された株式を持ちながら、次の世代の手の中で当該企業が成長していって、親が亡くなったときにはかなり立派な企業になっている。うまくいけばですが。それで遺産税を減少させるというのがエステート・フリーズです。もちろん、その事業実態が実は親が行っているということであると租税回避になるわけですが、次の世代が行っているのであれば、むしろ実態に合っているかもしれません。そのようなテクニックがずっと使われてきたわけです。

この事業承継税制の議論が先ほどから出ていますが、相続があったから、というよりは、その前の段階を考えていくような基本的な発想の転換のようなことを行えば、もう少しうまくいくのかなと思いました。

○中里会長

それでは、山田特別委員、お願いします。

○山田特別委員

ありがとうございます。

所得税中心でずっと議論が進んできていまして、相続税について議論する機会が多分今日しかないのではないかと思うものですから、今日の説明とは直接関係ないこともあるかもしれませんが、お聞きいただければと思います。

相続税ももっと薄く広く負担していただく税制にするという点を考えて良いのではないかと思う点です。何故かと言いますと、所得税などの税収のことを考えると、高額所得者に多く負担していただこうとしても税収に与える影響というものはそれほど大きくない。薄く広く多くの人から、たとえ5%でも10%でも負担していただく税制にすると、大きな額の税収になるという点を考えると、相続税の基礎控除を高くし過ぎてしまうと良くないのではないか。

今年から下げているから良いではないかという考え方もあるのでしょうが、もっと下げても良いのではないかということです。但し、徴税のことも考えての検討も必要です。

それと関連するのですが、所得税の検討の際に老夫婦の金融資産が2,000万円ほどになっているとのことでした。したがって、その辺りからも負担していただくということはどうかという検討もあったわけですが、あのとき違和感がありまして、老夫婦はそれから先の人生を非常に心配しているわけですから、その財産に着目した財産税のような取り方ということは酷なのではないかと私は感じ、それが生み出す所得に負担していただくという考え方であったら良いと思うというように申し上げたわけです。

その延長線で、そのような方々が結果として使い残して遺産になったという場合には、少し国庫に納めていただいて良いのではないかと思うものですから、その点で課税最低限の引き下げというものはもう一段考えても良いのではないかということです。

もう一つは、今日の話の中に全くなかったのですが、取引相場のない株式の評価につきまして、専門的な言葉になって済みませんが、類似業種比準方式というものがありまして、30年ほど前には比準要素として配当と所得と純資産と3分の1ずつ、同じ割合であったのですが、時を経るごとに所得のウエートが高くなっているわけです。

これはどのような影響が出るかというと、例えばベンチャーなどで頑張って、純資産はまだたまっていないが、すごく利益を出す会社がありますと、この会社の株式の評価は非常に高くなるという状態です。それとは逆に、含み資産たる土地のような資産は多くあるが、利益が低いというケースは評価額は低く算出されます。

そうすると、資産の有効活用度が低い会社の相続税上の評価は低くて有利ということになってしまう訳で、国民経済的には果たしていかがなものかという評価制度がなっているわけです。

私は実務家として、このように変化してきた評価は間違っているのではないかと思っていまして、この点から、もう一回純粋に取引相場のない株式の相続税、贈与税の評価はどのようにあるべきかの議論を行っていただくとありがたいと思います。

○中里会長

ありがとうございます。それでは、国税はここまででよろしいですか。

梅澤特別委員、何かありますか。どうぞ。

○梅澤特別委員

先ほど宮永特別委員が言われたグローバル化の視点でしっかりと考えましょうということは私も大賛成です。林特別委員がおっしゃられた所得税と相続税は違うから所得税は本人の努力の部分も勘案する必要があるが、相続税はそうではない。したがって、違う考え方で臨んで良いのではないかということも賛成です。

その上で、事務局に一点追加で質問と言いますかお願いですが、議論になってきました事業承継のしやすさということに関しても、主要諸外国との比較する参考情報を少しいただけませんでしょうか。岡村委員が言われたようなアメリカの話というものも大変参考になりましたし、なぜこれを申し上げているかというと、相続税はかなり厚く取れば良いとは、私も思うのですが、一方で、自分の周りで成功したアントレプレナーでまだ未上場という人たちが相当海外に出ている動きも見えます。

上場している企業もそうですが、未上場でもそのようなものが見えます。これは日本であると特に株式の評価額が高くなってしまったような未上場企業に関しては事業承継が様々難しい部分があるのかなと見てとれるのです。その辺り、実態がどのようであるのかということを確認したいという趣旨です。

○中里会長

これはお調べいただくということになりますか。

○新発田主税局主税企画官

済みません、今、手元にありませんから、こちらにつきましても調べさせていただきたいと思います。

○中里会長

よろしくお願いします。

宮崎委員、どうぞ。

○宮崎委員

先ほど上西特別委員がおっしゃった不公平感と言いますか、制度がしっかりと働いているかどうかということと、林特別委員がおっしゃった全く努力をしないで相続が来るということです。

そのときに、老老相続と老老介護が裏側にあって、自分の命を削って必死に介護をしている人と、ぽんと施設に預けて面会にも行かなくて、相続が来たら奪い合うというような、そのような人が同じ制度の中で考えられることは不公平なような気がするのです。

その辺りのところをしっかりと区別して労に報いるような、あるいは親子の愛情やきずななど、そのようなものも勘案できるような制度ができるのかどうかということを伺いたいと思います。

○中里会長

基本的には民法の問題であると思いますが、もし何かありましたら、どうぞ。

すみれ

「少し信託法の問題でもあるかな。」

○林特別委員

相続税の控除額を見れば、苦労されているような家庭にはそもそも相続税は課されないでしょうし、相続税が問題になるような家庭では、資産が十分にあるでしょうから、多分そのような苦労はされていないと思います。資産を使えば良いだけだと思います。

○中里会長

よろしいですか。どうぞ田中特別委員、お願いします。

○田中特別委員

事業承継についても先ほど市場によって売買ができればそれが正解であるというようなお話をされていますが、先ほど来言っていることは、資産価値と運用価値が違うということの問題であって、それについては林特別委員が言うような簡単な解決策ではないということを言いたいです。生活についても同じであると思います。

○中里会長

実態を知るとそう簡単に行かない場合も確かにあるかもしれません。国税の部分はこれでよろしいですか。様々なお考えが当然出てくると思いますから、どうぞ御遠慮なくおっしゃってください。

それでは、お待たせしました。自治税務局の佐藤固定資産税課長から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○佐藤自治税務局固定資産税課長

それでは、資産課税の地方税パート、固定資産税についてです。

総25-2の資料です。

目次です。固定資産税の概要と沿革、基本的なところを整理しまして、土地に係る固定資産税の負担水準の状況です。それから、ページ数は多くありませんが、固定資産税をめぐる経済社会構造の変化について材料を提示させていただきまして、議論いただければと思っています。

2ページです。固定資産税の概要です。

課税客体は土地、家屋、償却資産の三資産。課税主体は市町村です。

納税義務者は土地、家屋、償却資産の所有者ですが、昨年度の実績で土地、家屋ともに4,000万人強、償却資産が419万人です。課税標準は価格で適正な時価、土地、家屋は3年ごとに評価替えを行っていまして、ちょうど今年度、平成27年度が3年に一回の評価替えの年です。次回は平成30年度です。

税率は標準税率を採用していまして1.4%、免税点を設けています。土地が30万円、家屋が20万円、償却資産が150万円。

賦課課税でして、賦課期日が当該年度の初日の属する年の1月1日です。

税収は8兆5,000億円余りということでして、土地、家屋がそれぞれ3兆3,000億円、3兆6,000億円。償却資産が1兆5,400億円、合わせて8兆円という大変大きな税収規模を誇る基幹税です。

3ページに地方税収に占めるウエート、市町村税収に占めるウエートを円グラフで整理しています。

地方税収35兆円に占めるウエートは約4分の1の24.2%、市町村税収20兆円余りに占めるウエートは約4割の41.6%ということで、個人住民税とともに基幹的な役割を市町村の行政サービスの実施に当たって担っているものです。

4ページに市町村の歳出と固定資産税収の推移をグラフで整理しています。昭和60年代以降は市町村歳出、固定資産税収ともに増加をしてきました。市町村歳出は平成11年度以降減少してきましたが、平成19年度以降、特に民生費、衛生費等の増により増加傾向にあり、平成25年度は54.9兆円。それに対しまして、固定資産税収は昭和60年度から徐々に上昇してきましたが、平成11年度の9.2兆円をピークとして、なだらかではありますが減少傾向です。平成25年度8兆7,000億円ということで、ちょうど平成20年度辺りから歳出と固定資産税収がVの形になってきているということです。

5ページが市町村歳出で社会保障に充てられます民生費・衛生費です。これは一番上に折れ線がありますように、平成20年代に入りまして大幅に上昇してきています。その中で先ほどと重複しますが、固定資産税については若干の減少というような状況です。

6ページは時間の関係で詳細な説明は省略しますが、地方財政全体の中で一般行政経費、この中に社会保障関係費が当然含まれているわけですが、その影響で増加している一方で、行政改革等で給与関係経費、投資的経費は減少しています。

全体として抑制基調にある中で一般行政経費の財源を確保することが課題になっているということです。

7ページに市町村税収全体に占める固定資産税収の割合を整理しています。ここで申し上げたいことは、先ほど市町村税収の約4割が固定資産税ということを挙げました。

市町村の規模別でいきますと、大都市は法人関係税もありますから固定資産税のウエートは4割を若干切り、これは政令市と東京都23区分でありますが、その一方で、町村については固定資産税収が税収の半分を占めているということで、特に小規模な自治体で非常に重要なものとなっていると言えようかと思います。

8ページに政令市における税収の構成比較ということで、このグラフは上から財政力指数の高い市、川崎市以下並べていますが、傾向はほぼ一致していまして、左が個人市民税、中央が固定資産税でありますが、両方合わせて6割以上から8割程度を占めており、固定資産税については、この政令市におきましても大体4割前後を占めているということです。

9ページは固定資産税収の動向を時系列で整理してみました。全体の数字は先ほど申し上げたとおりですが、土地については、平成11年度の3.8兆円をピークとしまして、なだらかではありますが減少して、平成27年度は3兆3,000億円余り、4,000億円強の減少です。

その一方で、家屋については、これは土地も共通ですが、3年おきに評価替えを行い、その年に一旦落ちては少し復元、落ちては復元ということを繰り返しています。平成10年度以降は、3.5兆円、3.6兆円、3.7兆円辺りで均衡しているという状況です。

償却資産は若干景気の動向にも左右されますが、平成10年と比べますと1,500億円ほど落ちていますが、平成27年度は1.6兆円というような状況、になっています。

10ページに主要税目の税収の時系列での推移を固定資産税中心に整理したものです。やはり御覧いただきますと、固定資産税収は平成元年度から徐々に上昇しまして、平成11年度をピークとして若干減少していますが安定的に推移しています。

個人住民税も比較的安定している税目ですが、固定資産税と比べると若干上下にぶれています。平成18年以降、上に上がっていますものは、税源移譲の関係です。

その一方、地方法人二税につきましては御覧のような状況で、平成元年度の10兆円から平成14年度には5.7兆円に落ちていますし、また、リーマンショック時には大きく下振れしました。地方消費税については、これが一番安定的と言えようかと思いますが、税率の引き上げによって平成26年度、平成27年度と上昇してきています。

11ページは地域別の偏在度です。これはいつも様々な税目で示しているものです。固定資産税は一番右にありますが、人口一人当たりの税収額は、最大の東京都が最少の長崎県の2.3倍ということで、清算後の地方消費税に次いで比較的偏在の少ない税であると理解いただければと思います。

12ページに固定資産税の性格として、平成12年の中期答申で整理いただいたものを付けています。確認のため申し上げると、固定資産税は安定的で税収の変動が少なく、どの地方団体にも税源が広く存在し、その偏在が少ないという性格を持っている。引き続き安定的な確保に努める必要があるとされています。

また、個別税目の整理の中では、固定資産の価値に応じて毎年経常的に課税する財産税であるということ。それから、資産の保有と市町村の行政サービスとの間に一般的な受益関係が存在していること。また、固定資産税は資産価値に応じて課税される物税であり、資産の所有者の所得などの人的要素は考慮されない、と整理いただいています。

13ページには、参考までに付けていますが、金子教授の租税法の中から。また、平成15年の最高裁判決では、固定資産税は土地の資産価値に着目し、その所有という事実に担税力を認めて課する一種の財産税であるとされています。

14ページでは固定資産税の仕組みを簡単に整理しています。

まず、固定資産評価基準により評価額を算定します。土地、建物は三年ごとに算定し、それ以外の年度は原則据え置きです。なお、宅地については、平成6年度の評価替えの際に地価公示価格等の7割を目途として評価することとされました。償却資産は毎年評価替えをしています。

その上で、課税標準について政策的な特例措置があります。ここに記載しているものは住宅用地の特例です。また、負担調整ということで、税負担を緩やかに上昇させるための課税標準額の調整措置というものを講じています。これに税率を掛けて税額を出します。税額の特例については、また後ほど資料もありますが、新築住宅の税額の特例で一般住宅について3年間2分の1にするといったものがあります。

15ページが評価の仕組みでして、固定資産評価基準に基づいて市町村長が評価を行います。これは地方税法に定めのある固定資産評価基準というものを総務大臣が告示しているもので、これに従った評価が行われています。

土地については、地目別に売買実例価格を基礎として評価額を算定します。家屋については、いわゆる再建築価格ということで評価対象家屋と同一の家屋を評価の時点でその場所に作った、新築したという場合に必要とされる建築費に経年減点補正という年数の経過に応じて定める減価を行って評価しています。

償却資産については取得価格方式でして、その後の経過年数で減価をしまして評価額を算定しているということです。

16ページは土地の評価のイメージですが、省略させていただきます。

17ページは宅地等に対する固定資産税の課税の仕組みでして、これは平成27年度、今年度の評価替えから3年間の現行制度を図で整理したものですが、固定資産評価額を先ほどの方式により算定しまして、小規模住宅用地には、先ほど佐藤委員からも指摘がありましたが、200平米以下の部分については課税標準の特例の6分の1というものがかかってきます。

これにより算出した額と、前年度の課税標準額に当該年度の評価額に6分の1の特例率を掛けた後の5%分を足し合わせた額とを比較し、いずれか低い方の額を課税標準として課税します。なお、一般住宅用地は特例率が3分の1でして、これは小規模住宅の200平米を超える部分に関しては特例率が3分の1というものです。以下同じです。

商業地等の宅地については、課税標準額の上限を評価額の7割としています。また、前年度の課税標準の現年度の評価額に対する割合というものを負担水準というように呼んでいますが、これが60%から70%の中にある場合には、前年度の課税標準に据え置くという特例を残置しています。60%以下の場合ですと、前年度の課税標準額に現年度の評価額の5%分を足し合わせたものに引き上げていくということです。

下に(B)というものがありますが、これは評価額と比較して下回っているという場合には20%まで引き上げるという最低水準を定めているということです。

18ページは、上に住宅用地、小規模住宅用地並びに一般住宅用地の特例を再度整理しているものでして、経緯としては昭和48年度、昭和49年度にそれぞれ住宅用地の特例と小規模住宅用地の特例が2分の1の特例率、4分の1の特例率で創設をされました。これはいわゆる列島改造ブームの後の地価上昇の際です。

平成6年度に、7割評価を入れたバブルの後ですが、住宅用地特例の拡充ということで小規模住宅用地の特例率を6分の1まで、一般住宅用地の特例率を3分の1まで深掘りしています。

新築住宅にかかわる固定資産税額の減額の特例ですが、先ほど少し申し上げましたが、一般の住宅については3年度分を2分の1としいます。ただし、対象床面積は120平米を限度としています。なお、優良な住宅については、5年度分となっています。

19ページですが、固定資産税は標準税率と申し上げましたが、平成16年度にそれまで設けていました制限税率2.1%を撤廃しています。超過税率を実施している地方団体は意外に多くありまして、下の表にありますように特別区は一つの自治体としてカウントして、全国1,719の地方団体のうち、超課税率を採用している団体が全体の8.9%、153あります。特に人口5万人未満の市につきましては、264ある中で50団体が超過税率を採用しています。比率として18.9%です。

財政状況が悪化した自治体で税収の確保を図る、あるいは地価の下落が著しいようなところで税収の確保を図るというような観点で導入されている例が多いと聞き及んでいます。

20ページは固定資産税の賦課徴収の流れですが、省略させていただきます。

22ページからが沿革です。昭和25年度に市町村税として創設されました。それまであった地租、家屋税、電柱、船舶、軌道等の償却資産に係る諸税はこのときに廃止されています。

当初の標準税率は1.6%、制限税率は3%でしたが、その後、標準税率は昭和29年度に1.4%に下げられています。

昭和30年度から3年ごとの評価替えの仕組みができまして、昭和36年3月に全国統一の評価方法を採用すべきであるということで、昭和37年度の地方税法の一部改正で固定資産評価基準というものを定めるということが規定されました。それ以後、この基準に基づいて評価しているところです。

ただし、23ページの中央にありますが、昭和39年度に、大変多くの土地投機がありまして、昭和38年度評価額に対する上昇率は土地が4.4倍ということでした。そこで昭和39年度に宅地についての暫定的な措置ということで、昭和38年度の課税標準額の1.2倍を上限として税額を算定することとしました。これが負担調整の始まりではないかと思っています。

先ほどから新築住宅に係る税額の特例の話を申し上げてきましたが、昭和39年度に法律でこの特例措置が定められたということです。

24ページですが、大変な地価の上昇があり、そのときに税率で調整してはどうかというような議論があったようですが、その際の税制調査会の答申としまして、税率の引き下げのみによって調整する方法では適当ではない。土地については課税標準の特例を設けて調整する方法について今後検討することが適当であるというような整理がされたということが残っています。

昭和41年度に入りまして、ここに記載のような負担調整率、昭和38年度の課税標準額に対しての当該年度の価格の割合、上昇率に応じて前年度の課税標準額に1.1から1.3

あるいは1.4という率を掛けるというような措置が講じられたということです。

26ページです。昭和46年の長期税制のあり方についての答申で、今、申し上げましたような前年度の課税標準に1.1あるいは1.2、1.3、1.4というものを掛けるということで、評価額をいて課税するという方向からかなりずれてきたということがあったため、このときに土地利用政策、住宅政策等の関連も相互に考慮しつつ、税負担の軽減、激変緩和について配意すべきである、評価額に基づいて課税する方向で検討すべき、という前提でこのようなことが定められました。

ところが、御案内のように昭和46年以降、3年間で地価公示価格の全国数値が二倍ほど上がるというような状況もあったため、昭和48年度に昭和46年の答申を踏まえて、負担調整措置として評価替えの翌々年度に課税標準が評価額に到達するような調整措置を導入しました一方、特例措置として先ほど説明しました住宅用地について課税標準額を価格の2分の1とする特例措置、いわゆる住宅用地特例をここで初めて創設したということです。

27ページにいきまして、昭和49年度の答申では、先ほどの佐藤委員の御意見にもありましたが、200平米以下の小規模の住宅用地について課税標準額を価格の4分の1にするという特例措置をさらに深掘りしたわけですが、その際の昭和48年12月の答申におきましては、200平米以下の土地というものを住民の日常生活に最小限必要と認められる小規模の住宅用地の税負担をさらに軽減するというような趣旨で入れられたということです。

実はこの後、地価の上昇は非常に緩やかでして、昭和50年から昭和62年の12年間で地価公示価格は、全国が1.5倍というようなことでしたから、この間は固定資産税の負担調整の仕組みを大きく変更するということはありませんでした。

28ページは土地基本法と平成3年度の税制改正に関する答申を入れています。いわゆるバブル経済がありまして、土地の評価の適正化・均衡化を図っていこう、平成6年度の評価替えにおいて地価公示価格の7割を目指した評価の均衡化、適正化を図ろうとなってきまして、28ページから29ページにかけて、そのときの答申を掲げさせていただいています。

そうした中で評価が大きく上がるため、評価は評価として、税負担については急激な変化が生じないような調整措置を講ずべきであるということも答申をいただいたところです。

平成4年に地価公示価格の7割程度を目途とする評価の水準について、そのようなことが決定されました。30ページですが、平成6年の評価替えに当たりましては、特例措置として小規模住宅用地、一般住宅用地の課税標準をそれぞれ4分の1から6分の1、2分の1から3分の1に深掘りしました。このときにはさらに暫定特例として価格の上昇率に応じて、これに連動する形で上昇率の高いところには4分の3から2分の1の率を乗じたというようなことも行っていますし、よりなだらかな負担調整措置も導入して、調整期間12年度程度で評価額に到達するような、そのために、このようなあらゆる措置を組み合わせて対応したということです。

その後、31ページですが、評価の均衡化というものは図られたわけですが、平成9年度には負担水準の均衡化を図ろうということで、そのための負担、調整措置の導入が図られました。先ほども説明申し上げましたから重複は避けますが、いわゆる負担水準という概念、ここに記載の前年度の課税標準額と当該年度の評価額の割合ですが、これに応じて課税標準額を決めていこうということで、例えば商業地等でいきますと、負担水準が80%以上の場合には80%まで引き下げる。

通常の場合、60%から80%の間にある場合には前年度の課税標準額を据え置く。60%を下回る場合にはなだらかな調整率の引き上げを図るということにしたわけです。

評価のところにありますが、据え置き年度、評価替えの翌年度、翌々年度においても、地価の下落に応じて評価額を修正できる措置を導入しました。この仕組みが基本的には続いてきているということですが、32ページにありますように、平成18年度、ここでは、負担水準が低い土地について、これまでかなり負担水準が低い場合でも先ほどのなだらかな負担調整措置をかけるということをしていましたが、負担水準が20%を下回っている場合には20%まで引き上げるということです。

33ページの下の方を御覧いただければと思います。平成24年度の左に商業地等がありまして、こちらは先ほど申し上げました現在の仕組みと同じですが、住宅用地につきましては据え置き特例を設けていたゾーンを段階的に撤廃するということで、平成24年に、平成25年に90%と100%の間に設けていました据え置きゾーンを平成26年度に撤廃しています。

それでは、次に土地に係る固定資産税の負担水準の状況について説明します。

まず、35ページ、平成21年度の答申を付けていますが、納税者の税負担にも配慮しつつ、負担の均衡化、適正化を促進する必要があるとされました。

36ページは、住宅用地についての課税標準額の据え置き特例について、時系列で整理したものです。説明は省略します。

こうした措置を講じてきました結果、37ページですが、小規模住宅用地における評価額に対する課税標準額の割合は、平成6年度、大変なばらつきがありましたが、平成26年度におきましては、100%から90%の間のゾーンに99%以上が収れんするという状況になっています。

38ページですが、小規模住宅用地について評価額の状況がどのようになっているか、課税標準額の状況がどのようになっているのかということをグラフで整理しています。一番上が地価公示価格です。その下が1平米当たり評価額ということで、平成6年度に7割評価を導入したその時点を指数100としまして、平成25年度の評価額については平成6年から6割減の43.9ということになっています。

下にいきまして、小規模住宅用地は課税標準の6分の1の特例を入れていますから、点線がその課税標準額の上限となります。したがって、平成6年度は評価額100に対しまして上限が16.7、6分の1で、一番下のひし形の折れ線が1平米当たりの課税標準額の実態の数字でして、平成11年度をピークに若干の減ということになっていますが、平成25年度を御覧いただきますと、上限にほぼ張りついてきているという状況がありますから、このまま地価の下落が続きますとストレートに税収の減になってくるということです。

39ページからが商業地等で、同じ仕組みですから重複の説明は割けますが、40ページには据え置きゾーン、負担水準の60%から70%のところに99.5%が収れんをしています。ただし、据え置き特例を商業地等の方は現在まだ残しているわけですが、その課題が発生しています。

41ページですが、評価額と課税標準額の逆転現象ということです。左の事例1、これは地価が上昇した場合、東京都のような場合ですが、評価額がn年度に9億円、課税標準額が6億円でした。これが評価額が上昇して10億円になりました。

そうしますと、負担水準が(A)評価額とn年度の課税標準額(B)6億円を比較して60%でありますから、これは据え置きゾーンに入っているため据え置きです。したがって、評価額10億円に対して課税標準額6億円になります。

ところが、右の事例2、これは地価下落のケースです。n年度に評価額が10億円で、課税標準額が7億円の場合、評価額が右の(A´)9億円に下落しました。その場合の負担水準は9億円分の(B´)7億円で、78%ですから、70%まで引き下げるということになりますと、課税標準額が6.3億円ということでして、左の方が評価額10億円で課税標準額が6億円、右は評価額9億円で課税標準額は6.3億円という、このような状況が発生しているということです。

43ページに宅地における負担水準の推移ということで、商業地等と一般住宅用地と小規模住宅用地につきまして、課税標準、上限がそれぞれ70%あるいは3分の1で33.3%、16.7%となっておりますが、ほぼ上限に張りついてきているというような状況ですが、商業地等については若干下げてきているということでして、これについては44ページに商業地等に係る負担水準の状況というものを付けています。

7割というものが上限になっているわけですが、実際に前年度の比較でありますから、負担水準が70%を超えるというところの地価が下落したところですが、人口減少が著しいような地方部では70%を超えて、頭を今、押さえているという状況ですが、東京都を御覧いただきますと、63%にとどまっています。

したがって、先ほど若干右に垂れてきていましたが、これは東京都の下がりの分が大きいのではないかと思っています。

以下、一般住宅用地等も同じですから、これは説明を省略します。

最後に、経済社会構造の変化ということで48ページに法人税の改革についての当税制調査会からいただいたものですが、住民税や固定資産税について充実を検討すべきとされています。

また、49ページには、これは過去に出しました人口の今後の推移、見通し。

50ページから都道府県別の人口変化のこれまでの経過と今後の推移の見込み。

52ページに地価公示価格の年別の指数の推移。

53ページに地価公示価格の前年度変動率で足元は三大都市圏では上昇、それ以外では下落幅が縮まってきたということです。

54ページから3枚ほど最近の固定資産税の納税額の状況を付けていまして、54ページは世帯主の年齢別に固定資産税の納税額を整理したものですが、60歳以上の年齢階級が固定資産税の納税者全体の6割強を占めています。また、60歳以上の年齢階層のうち、納税額が10万円未満の納税者が全体の4割、納税額が20万円以上、逆に高い方が1割弱ということで、若干二極化と言えようかと思いますが、60歳以上の年齢階級の固定資産税の納税のウエートが高いです。

55ページですが、これは高齢者夫婦世帯の住宅宅地の資産額階級別の年間収入と貯蓄現在高で、折れ線グラフがその世帯の分布割合でして、500万円から3,000万円の階級が全体の3分の2を占めています。500万円の階級では6.6%、1億円以上の階級は4.1%ということですが、棒グラフにあります指数で見ますと、年間収入は500万円未満の層からなだらかに上昇しています。貯蓄現在高も資産額に応じて上昇しています。その上昇率は年間収入よりは高くなっているという状況です。

最後に、56ページ、年齢階級別の一世帯当たりの租税社会保険料負担ですが、固定資産税のところを御覧いただきますと、折れ線が負担のある世帯の割合です。

29歳以下では11%しか固定資産税を負担している世帯はありませんが、それ以後、年齢を追って上昇しまして、50代以降は75%から80%、全体平均72%。負担がある世帯の平均の負担額ですが、全ての世代を通じて、29歳以下は若干低いですが均衡的です。個人住民税、所得税等は違う傾向が出ています。

○中里会長

どうもありがとうございました。

それでは、今の説明について、委員の皆様から質問や意見がありましたら頂戴したいと思います。いかがでしょうか。

山田特別委員、どうぞ。

○山田特別委員

15ページの家屋の評価に関して、意見ですが、いわゆる会計には減損という考え方があるわけですが、ここに書いてある家屋の評価に関しましては、再建築価格と経過年数に伴う減点補正率しかない。すなわち、減損という考え方がないということは、建物を一回作ってしまったが、非常に収益力は弱いといういわゆる、投資の失敗、そのようなケースにおける建物に係る固定資産税の収益に対する割合が高い、すなわち税負担が重たいという状況がありまして、事業再生が非常に難しいというケースがあります。事業再生ができた方が再活性化して、雇用も増えますしまた訪れる人なども増えて、その地域のためにもなるわけですので、建物に減損という考え方があって良いのではないか、あるべきではないかと思うため、ぜひ検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○中里会長

それでは、田近委員、どうぞ。

○田近委員

御説明ありがとうございました。

固定資産税について先ほど来、小規模宅地の評価の話は出ているのですが、17ページに固定資産税の課税の仕組みということで、これもまた理解が間違っていたりしたら指摘いただくとして、小規模住宅用地、一般住宅用地、商業地等の宅地、いわゆる課税対象価格というものが固定資産評価額で地価公示額の7割。それに7割を掛けて、つまり地価公示価格の49%をもって固定資産税の評価額にしましょうというものが骨太のところです。

小規模住宅、一般用地、一般住宅については既に指摘があったため、これも見直しが必要であるということは長年言われてきているし、商業地等ですが、今日改めて話を聞いて非常に興味深いことを伺ったと思って、要するに、今、言ったように、公示価格の7割をもって固定資産評価額にし、その7割をもって課税価格にする。

ただし、評価額が低いところがあったため一気に上げることは大変であるというところで、評価額の6割から7割がグレーゾーンと言いますか、ニアストライクゾーンというものを設けていたわけです。そして、その間に公示価格が下がってきたため自然に公示価格に対する評価額というものが結果的には上がってきたというところで、今日、非常に興味深いものを見せていただき、40ページがその説明の続きで、平成26年度、まさに申し上げたように100に対して7割が本来あるべきところ。ニアストライクゾーンを60から70にしたら、ほとんどニアストライクゾーンでいる。そうすると、60から70にとってしまったがゆえに、変な逆転現象が起きるというものが今日の説明で、この話はもう何十年行っているか分からないですが、もう7割がルールならば、7割にするということは原則で、この6割、7割のニアストライクゾーンで逆転があるということは問題として深掘りする必要がどこまであるのか。

皮肉なことにと先ほどから言っていますが、地価が下がってきてしまったため、ストライクゾーンにどんどん入ってきてしまった。そのようであるならば7割でも決めるということが一つの考え方であるのかなと思いました。

あと19ページに固定資産税の税率採用ということで、標準税率が1.4%。標準税率というものは先ほど言った地価の49%に対する1.4%ということですが、説明いただきたいことは、資料が必要なら後日で良いのですが、超過税率を採用しているものが全体の8.9%の市町村があるのですが、一体どのような市町村であるのか。

それが宅地なのか、住宅共用地なのか、商業地等なのか、この表から我々が持つべき像は一体どのようなものかということを伺いたいということで、商業地等の問題は非常に興味深く伺って、もう6割から7割のニアストライクゾーンというものがどこまで必要かということが私の意見です。理解が違っていたら修正してください。

○中里会長

佐藤固定資産税課長、もしコメントがあればどうぞ。

○佐藤自治税務局固定資産税課長

まず、今、商業地等の6割から7割の据え置き特例について意見をいただきましたが、自然な流れとしてはまさに住宅の方では据え置き特例を平成26年度になくしましたから、そのようなことになるのであろうと思いますが、これは当然負担増になる場合があるわけでして、そこをどのように理解を得ながら進めていくか、よく議論していく必要があると思っています。

今、超過税率について意見、質問がありました。実施している自治体についてはまた資料を用意したいと思いますが、税率につきましては、固定資産税は土地、家屋、償却資産で同一税率ということにしていますから、土地だけを上げるというようなところは現実にはありません。

○中里会長

それでは、増井委員、どうぞ。

○増井委員

56ページのグラフを大変興味深く拝見しました。ここで出ている負担ということについて、質問があります。端的に申しまして、日本の固定資産税は誰に帰着しているかという問題です。

○中里会長

田近委員、どうぞ。

○田近委員

一義的にはその土地の資産の流動性がそれほどないとすれば、それは資産を持っている人にかかると思いますが、増井委員はそれ以上御存知ですから、何か問題意識があればそれを基に議論した方が良いように思います。

○増井委員

特に再分配との関係では、ここで出ている負担という概念は納税をするというポイントを捉えています。それが実際に誰に帰着しているかということまである程度見通しがないと、かゆいところに手が届かない。そのような感じがしたものですから,日本の固定資産税が実際に誰に帰着しているかをお伺いしたかったわけです。

○中里会長

借家人などにどこまでいっているかということのデータが欲しいということですね。データといっても、そこは難しいのかもしれませんが、分かりました。それでは、梅澤特別委員、どうぞ。

○梅澤特別委員

不動産資産の形成をなるべく多くの人で進めようという政策で多分ここまでの制度が来ているのであろうと理解しました。高度成長期は全員がその夢を持てたため、ある意味で国民の福祉と経済成長に資する合理的な政策であったと思うのですが、既にその夢は破綻しました。

これからの公平を考えたときに、小規模の住宅を持っている人を最も優遇するということが本当に公平なのでしょうかという問題を立てても良い時期ではないかと思います。都市の再編成、コンパクトシティー化、人口の流動化など、潜在力の高い土地をなるべく流動化して、その活用を進めて都市全体の価値を上げていく、このようなことが社会ニーズとして重要なときに、小さな土地にしがみつく国民を大量生産するような政策はもう捨てませんかという問題提起です。

○中里会長

先ほどの山田特別委員の指摘について、佐藤固定資産税課長の方ですか。

○三宅自治税務局資産評価室長

すみません、先ほどの山田特別委員の家屋の評価についての意見に対して答えたいと思います。

先ほど資料、15ページのところで家屋評価を入れてある部分についての御指摘ですが、家屋の評価については、再建築価格に時の経過に伴う経年減点補正を乗じるということに対して、減損の考え方も導入ということでどうであろうかという意見であったと思うのですが、これは極めて基本的な部分だけ書いていまして、固定資産評価基準に定めているものは、災害などで随分家が傷んでしまった場合の損耗による減価や、あるいは需給事情による補正というものもありまして、極めて例外的ですが、需給事情による補正としては、最近の建築様式に適用しないような家屋や、環境不良地域に存在する家屋などということを判断して、市町村がそのような補正を講じることもできることとされています。

○中里会長

佐藤固定資産税課長の方で、先ほどの梅澤特別委員の指摘について、何かもしコメントがございましたら。

○佐藤自治税務局固定資産税課長

大変重い課題であると思います。幅広い政策的な議論が必要であると思いますから、それだけにとどめさせていただきたいと思います。

○中里会長

ありがとうございます。

それでは、高田委員、どうぞ。

○高田委員

御説明、どうもありがとうございました。

印象と言いましょうか、感想に近いのですが、4ページ目の固定資産税の税収の推移がこの30年間ほどずっとあるわけで、これが30年近くほとんど変わらないと言いますか、非常に安定している税収ということであると思うのです。

一方で、説明がありました、例えば38ページの住宅や、42ページ、商業地等のところがあるわけですが、いわゆる資産価値という観点から考えた場合に、これを資産税として資産価値全体の実効税率のようなことを考えた概念で考えると、実はバブル期は非常に軽くて、今は相当重い税になっています。これが例えば特に地方などにおいては負担感につながって、活性化のところでどのように出るかというところにもう少し経済学的なマクロベースで着目すべき議論ではないかと私は感じています。

相当バブル期においては軽くなっていたものが、今となっては価格自体、総額自体が半分以下です。商業地等においては3分の1以下ほどになっていますから、そのような意味では実際上相当負担が重くなっています。そのため、その辺りをどのように考えながら対応していくのか。それの劇症緩和を続けてきた歴史ではあるわけですが、マクロ的にはそのような状況を念頭に置く必要があるのではないかと感じる次第です。

○中里会長

それでは、林特別委員、どうぞ。

○林特別委員

どうもありがとうございます。

まず、質問ですが、資産課税ということですが、都市計画税が議論されていないということはどのようなことかなと思っています。単なる質問ですから、ご説明のみいただければと思います。

特に先ほど田近委員がおっしゃった19ページの超過税率との関連で、これも都市計画税を持っているところと持っていないところが関係しているのではないでしょうか。あくまでも読みですが、この辺りの相場観も教示していただければと思います。

もう一つ目は、これはコメントになりますが、やはり先ほど出た相続税もそうですが、固定資産税というものは土地利用に対してもかなり影響を与えると思います。

シャッター街の話もそうですし、特に農地に関してもそうです。農地に関してもかなり悪い影響があるのではないかと思っていますが、今後のコンパクト化、まちづくり等々考えるときには、相続税もそうですが、固定資産税も非常に重要な税であると思っています。

最後に、特に土地部分ですが、今まで議論されていたように様々な負担調整措置が入って非常に分かりにくい制度になっているということです。これは地価が上昇してきたという歴史的な経緯を説明していただきましたが、経済学者が分析した研究でも、今後地価が必ず下がるということは様々な研究で提起されていますから、過去、地価の上昇部分で様々課税し、かつ固定資産税を複雑にしてきた制度を税制確保という観点からでもかなり整理していかなければいけないかなと思っています。

特に地価は全国どこでも同じような速度で下がるということではないと思います。

やはり地方部分から土地価格はかなり下がってくることは懸念されると思いますから、この点、政策的にも税制的にもしっかりと対応していかなければいけないと思います。

○中里会長

都市計画税のことについて、お願いします。

○佐藤自治税務局固定資産税課長

資料は特に入れていませんでしたが、超過税率を採用している自治体で都市計画税を課税していないところがあるのではないか。それは一定の関係がありますから、また整理して資料として出させていただきたいと思います。

○中里会長

それでは、田中特別委員、どうぞ。

○田中特別委員

先ほどの株価について関係することは、特に土地の評価がどのようであるかということも関係していると思います。土地の評価が売買実例価格を参考にして行っているため、運用益ではないです。したがって、資産価値に比べて運用が少ないとそれはそのときに処分をしてしまうということになってしまうということであると思います。

それと同じように、固定資産税についても影響が出ている。特に日本全国の平均を指標としてここで整理はしていますが、大都市と地方は違うというように思います。大都市部では、商業地域で固定資産税が非常に高くなっていて事業に影響が出てくるようなこともあるでしょうし、まして、工場地域については継続ができていかないということになっています。そのようなことについて、土地の評価をどのようにしていくか、どのように利用していくことが良いのかということの観点からも、ぜひ再検討していただきたいと思います。

それと同時に、事業者から言うと償却資産まで税金がかかるのか。事業の原資について資産税として課税されるのかということも大きな影響があるということで、このようなことが事業にとって影響がある。徴収側ではなくて納める側としての実情を話させていただきました。

○中里会長

ありがとうございます。

それでは、そろそろ本日の会議を終わりにしたいと思います。ここまで非常に短い間に経済社会の構造変化を把握するための実像のセッション、個人所得課税、本日の資産課税と、皆様の御協力により、大変精力的な議論を続けてきました。

これまでも、中期答申に向けて、秋の適当なタイミングで個人所得課税を中心に論点の整理のようなものを行う必要があるのではないかということを私から申し上げてきましたが、次回からは、これまでの議論を踏まえつつ、どのような整理をさせていただくことが良いのか、委員の皆様に御相談していきたいと思っています。

したがいまして、次回については、まず、本日いただいた資産課税についての宿題、これについての報告を行っていただくとともに、論点の整理に向けた起草会合を行っていきたいと思っています。ただし、そこで議論のプロセスで様々なやりとりを自由に行っていただくために、これは申し訳ありませんが、非公開という形にしたいと思います。ただし、会議終了後の記者会見はいつもどおり私の方で行いますから、その場で議論の流れに関してはプレスの皆様に御紹介したいと思っています。この点、お許しいただきたいと思います。

会議の詳細は、改めて事務局から御案内します。

以上です。本日はどうもお忙しい中、ありがとうございました。

[閉会]

(注)

本議事録は、毎回の審議後速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため、速記録に基づき、内閣府、財務省及び総務省において作成した資料です。

内容には正確を期していますが、事後の修正の可能性があることをご承知おきください。

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すみれ「遺言控除って出てこなかったね。お疲れ様でした。津島佑子さん、ご冥福をお祈りします。」

当然に受託者を辞任するものとする。

ある書籍で、自己信託の文例の中に、

当初受託者○○につき後見開始、保佐開始の「申立て」がなされ、または任意後見監督人選任の審判がなされた場合は、委託者及び受益者の承諾なくして、

「当然に当初受託者は受託者を辞任するものとする。」

というような文言がありました。

1、まず、受託者の辞任については、簡単に出来ないようになっています。

  辞任できる場合として、(信託法57条)

  (1)委託者と受益者の同意を得た場合

  (2)信託行為に別段の定めがある場合

  (3)やむを得ない事由があるときに、裁判所の許可を得る場合

 が挙げられます。

上の文言は、(2)の定めがある場合に該当します。後見開始、保佐開始の申立てなので、信託行為に別段の定めがなければ、受託者の任務終了事由にもなりません(信託法第56条)。

 自己信託だし、別段の定めは原則自由に記載していいと思うのですが、日本語として少し引っかかります。

 文中に、○○の場合、○○した時、○○なされたとき、の後の「当然に」は、当初受託者○○につき後見開始、保佐開始の「申立て」がなされ、または任意後見監督人選任の審判がなされれば、条件がそろう、

 その結果、(1)に関係なく、結果が生じる(辞任する)、という意味だと思います。

ただ、「当然に」の後に続く、辞任「するものとする」というのは、一般的な原則あるいは方針と示す規定の述語(「ワークブック法制執務」より)として使われるようです。

すると、条件がそろえば、辞任という結果が生じる、一般的にはね、ということになってよく分かりませんでした。

違和感を覚えたのは私だけかも。

民事信託とは


当事務所では、次の3つのいずれかに当てはまるものとします。
1 委託者以外の者が受託者となる信託行為のうち、信託(受託)の引受けが営業としてなされる結果商行為となる信託行為以外のもの
2 委託者が受託者となる信託行為のうち、信託業法に基づく登録が不要のもの
3 営業としてする信託の引受けにあたるが、信託業法に基づく免許・登録が不要のもの

(出典:新井誠、大垣尚司「民事信託の理論と実務」)

受益者とは

 

受益者は,受託者が信託目的を実現することで生まれる法的あるいは経済的利益を享受し,また,これを受託者に対し要求する権利(受益債権)を有する信託行為の直接当事者ではなく,また,権利(受益権)を享受するだけでなんら義務を負担するものではない。特定の受益者が信託行為で指定されている場合,その者は特段の受益の意思表示をしないでも当然に受益権を取得する。
受益者の資格 この結果,受益者となるために意思能力や行為能力その他特段の資格は不要であり, 設定時点で受益者が現に存在している必要もない。さらに,受益者にそもそも権利能力がないので、法的には受益者がいない「受益者の定めのない信託」も許される。ただし,何らかのかたちで信託の利益を受ける対象が全くないために,受託者がもっぱら利益を受けることになる信託は無効。

(信託法2条、88条)

受託者とは

 
受託者は,信託設定後,他の当事者の信頼を一身に背負って信託の運営にあたる最も重要な主体。
受託者の資格 こうした重責に配慮して,信託法は受託者となるための資格要件を加重している。まず,未成年者・成年被後見人,被保佐人は受託者となることができず,これらを受託者 とする信託は無効である(取り消しうる行為とならない)。また,営業として信託の引受けを行うには,信託業法に基づき信託会社としての免許・登録が必要 となる。ただし,金融機関は内閣総理大臣(金融庁)の認可を受ければ信託業を兼営することができる。後者のうち,金銭信託の引受けを主業とする銀行のことを俗に「信託銀行」という。また,主務官庁の監督のある公益信託の場合を除き,受益者の定めのない信託(目的信託)の受託者 になるには,信託事務を適正に処理するに足りる財産的基礎(純資産5000万円超)と人的構成(前科等の規制)を有する法人(自然人は不可)でなければならない。

(信託法7条、26条。信託業法3条・7条。金融機関の信託業務の兼営等に関する法律1条)

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