「複層化信託の税務上の主な問題点と検討」

2020.12.5民事信託推進センター2020 第 8 回民事信託実務入門講座

税理士法人大手町トラスト 川口幸彦税理士

詳しくは税理士に確認をお願い致します。

・受益者連続型信託にならないようにするためには?

収益受益者(又は元本受益者)が死亡した場合には、信託が終了するものを組成すれば、受益者連続型信託とはみなされない。

〇 財務省主税局担当者は、「信託行為に、一定の場合に受益権が順次移転する定めのある信託、受益者指定権等を有する定めのある信託、その他これらに類似する信託(「平成 19 年度版 改正税法のすべて」P472)」が受益者連続型信託と説明している。これによれば、一定の信託行為(この「信託行為」とは、信託法2条2項に規定する信託契約、遺言、公正証書等の書面や電磁記録によってする意思表示のことを指すと考えられる。)の定めにより受益権が移転するものなどが受益者連続型信託となると考えられる。

 「平成 19 年度版 改正税法のすべて」P472~では、受益者連続型信託ではなくて、受益者連続型信託等、と記載されています。「等」が何を意味するか、明確に記載されている文献資料を探すことは出来ませんでした。私は、「その他これらの信託に類似する信託」に対する課税の余地を残していると読みました。

 一定の信託行為(この「信託行為」とは、信託法2条2項に規定する信託契約、遺言、公正証書等の書面や電磁記録によってする意思表示のことを指すと考えられる。)の定めにより受益権が移転するものなどが受益者連続型信託となると考えられる、に関しては、信託行為に一定の期限到来・条件成就(不成就)・権利行使が行われた場合に受益権が移転する定めがあるとき、であって「一定の」は不要なのかなと感じます。

問2 収益受益者が信託期間終了前に死亡し、信託行為の定めにより信託が終了した場合の課税関係はどうなるのか?

答2 相続税等の課税関係は生じない。(ただし、この答に疑問、再考の余地あり!)

相続税法基本通達(信託が合意等により終了した場合)

9-13 法第9条の3第1項に規定する受益者連続型信託(以下「受益者連続型信託」という。)以外の信託(令第1条の6に規定する信託を除く。以下同じ。)で、当該信託に関する収益受益権(信託に関する権利のうち信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「収益受益者」という。)と当該信託に関する元本受益権(信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利をいう。以下同じ。)を有する者(以下「元本受益者」という。)とが異なるもの(以下9の3-1において「受益者が複層化された信託」という。)が信託法(平成 18 年法律第 108 号。以下「信託法」という。)第 164 条(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)の規定により終了した場合には、原則として、当該元本受益者が、当該終了直前に当該収益受益者が有していた当該収益受益権の価額に相当する利益を当該収益受益者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。

     講師も疑問を持っているようです。もし、予め設定した信託期限よりも前に収益受益者が死亡し信託が終了した場合が、相続税法基本通達(信託が合意等により終了した場合)の合意等に該当しないとすると、複層化信託において信託期限を長く定めるほど節税出来ることになるので、通常通り課税されるように思います。

問3 財産評価基本通達 202⑶イの「(収益)受益者が将来受けるべき利益の価額」の「利益の価額」の具体的な内容は明かではなく、収益受益者に支払われる純粋な手取額をいい、例えば、建物等の減価償却費は、控除しなくてもよいのか?

答3 純粋な手取額ではなく、建物等の減価償却費は、控除して「利益の価額」を計算する。

配偶者居住権等と同じような評価方法になるのかなと思いました。

「配偶者居住権等の鑑定評価に関する研究報告」令和元年 12月(公社)日本不動産鑑定士協会連合会

https://www.fudousan-kanteishi.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/07/kyojyuken_houkoku.pdf

 

 

「〜コーディネートに関する事例報告〜」

(一社)民事信託推進センター 2020年12⽉5⽇⺠事信託実務⼊⾨講座

司法書⼠・⺠事信託⼠・⾏政書⼠ 嵐⽥志保

家族関係図 略

信託財産 現預⾦

⺠事信託の設計図 略

信託口口座を作ろうとした銀行から、

1)推定相続人全員の承諾を得ること

2)受託者は第三者でないこと

のいずれかの条件を満たすよう求められたため、以下の事項を検討しました。

 ここでいう第三者は、委託者兼受益者の信託行為時の推定相続人ではない人、という意味かなと思いました。

推定相続人の承諾を取らないための条件として以下を考えました。

 ① 信託契約では、財産の承継は目的としておらず、全部使い切る前提とし、残った場合には二男に渡すとの内容としました。

 ② 信託契約において、受益者への財産引渡し方法は、基本的に定期交付(月額)とし、本人が希望する場合には年間〇万円以内での 随時交付(交付の目的及び使い道を本人に書面で提出してもらう方法)としました。

 私だったらどういう提案をするんだろう、と考えてみます。

・遺留分に配慮した公正証書遺言を作成する。

・推定相続人の承諾を取る際に、過去の特別受益に加えて、遺留分相当額を前渡しする(交付は暦年など)。

2) 受託者は第三者でないこと → 第三者が受託者となる場合のリスクを検討しました

 ① 受託者報酬を受け取るかどうか

② 本人の死亡後、受託者に対し相続人が何らかの異議を言ってくるか

③略

→結果的に、銀行の承諾を得られず信託口口座が作れなかったため、信託を行うこと自体を断念した.

 第三者が受託者である場合の報酬が、推定相続人の紛争可能性を招くとすると、信託銀行・信託会社が受託者である場合にも同じような可能性があると考えられます。第三者が成年後見人に就任した場合の報酬を参考にして渡しても、不合理とはならないんじゃないかなと思いました。

 相続人が異議を言ってきた場合(「何でこれだけしか残っていないのか?」「使い道がおかしいんじゃないか?」とか?)に大まかにでも、受益者のために信託行為に基づいて使ったということをメモでも残しておくことは大切なんだろうなと感じます。昨日、「通帳に鉛筆で書いておいた方が良いんじゃないですか。」と受託者に言ったら、「通帳に書き込みとかしても良いんですか?」と訊かれました。分からない人もいるようなので、出来るだけ無理なく続けられるような方法を個別具体的に提案できると良いなと感じます。

 断念する判断を行うことも、無理やり実行するより難しく大切な判断だと思います。

家族関係図 略

信託財産 略

1)共有を解消する方法の検討

① 信託期間中に移転する方法

 受益権の一部譲渡を繰り返す方法

 →税務上の評価が高くなる。負担(アパートローン)付贈与をするとしても、評価が高額になることと(時価額評価)、負担部分の債務額の確定が難しいとの結論に至りました。

 アパートの賃料を受領してたまった金額を、受益権の行使として受領して、受領した金額から持分移転相当額を他方に渡して片方の持分を増やす方法も考えましたが、譲渡価格が高額になること、都度譲渡とするとタイミングが難しいこと、税負担も都度発生することなどから、実行は難しいとの結論に至りました。

② 信託終了時に移転する方法

 信託終了時に単有とする方法とすると、本件はアパートローンの終了時が信託の終了事由であったので債務がない状態で、2分の1部分について、受益者ではない帰属権利者に移転することとなり、多額の贈与税がかかることが見込まれました。よって、この方法も取れないとの結論に至りました。

  受益権の負担付贈与という方法も初めて知りました。税務をクリアすると、そのようなことも出来るのだなと思いました。私には難しそうなので、受益権を暦年贈与する方法を採るかもしれません。

ローン完済時に信託終了、という信託行為は初めて聞きました。

 

(一財)司法協会研究助成申請書

受付年月日番   号
 個人研究18-
共同研究18-

落ちてしまったので、貼っておきます。何方かの参考になれば幸いです。

        2020(令和2)年度 研 究 助 成 申 請 書

                 2020(令和)年9月   日

一般財団法人 司法協会 御中

             住        所 沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地

             所  属  機  関 司法書士宮城事務所

             申請者氏名 【          】  印

             連絡先電話番号 (098)945-9268

 貴一般財団法人の研究助成の給付を受けたいので下記のとおり申請いたします。

               記

1 研究助成の種類    個人研究

             共同研究

2 研究課題  

【沖縄県における民事信託と任意後見の認知度の把握と、その向上に向けた仮説検証】

3 研究組織

 (個人研究)

氏  名(フリガナ)年   齢所 属 機 関・地 位
宮城直  40司法書士宮城事務所・代表司法書士  

4 研究課題に関する過去の業績

2018年7月

「チェック方式の民事信託契約書とその留意点(1)、」民事法研究会『市民と法』112号

「民事信託はなぜ利用されるのか:土地建物の円滑な権利移動に資することの検証」(公社)不動産学会一般発表論文

2018年9月

「チェック方式の民事信託契約書とその留意点(2)」民事法研究会『市民と法』113号

2020年2月

「民事信託に関するアンケート調査―沖縄の市町村等担当者と講座受講者に聴く―」民事法研究会『市民と法』121号

5 研究目的・意義

(1)研究目的

・沖縄県民の民事信託・家族信託の認知度を把握し、その向上のための仮説検証を行う。

・仮説検証の結果をまとめる。

(2)研究の意義

・採択していただいた平成30年度研究助成事業では、2019年の1年間、自治体、公証人役場、金融機関、民事信託の講座受講者に対してアンケート調査を行い、民事信託の利用件数の把握を試みましたが、残念ながら公証人役場、金融機関の協力が得られず、利用件数の把握は出来ませんでした。

しかし、自治体担当者、民事信託の講座受講者の関心は高く、実際に区画整理などで困っている現状があることが分かりました。

また家庭裁判所から、沖縄県における成年後見制度利用の概況を提供していただきました。都道府県単位で成年後見制度の利用概況を公表出来たのは全国でも初であり、全国平均と沖縄県の比較が出来たことは小さくはない成果だと考えます。

・前回の研究を踏まえて、民事信託・家族信託と任意後見について沖縄県民の認知度を調査します。また、認知度の向上のために民事信託・家族信託と任意後見について、動画を作成し公表したいと考えます。

・前回、沖縄県の成年後見制度の利用概況が得られたことから、予防法務としての任意後見についても研究対象に追加します。

6 研究計画・方法

  • 研究計画

2021年1月~2021年12月

・高齢者施設、市町村議会議員への民事信託・家族信託と任意後見に関するアンケート調査を行う。

2021年1月~2021年12月

・高齢者施設、市町村議会議員への民事信託・家族信託に関するアンケート調査について、結果の検証を行う。

2021年1月~2021年12月

・民事信託・家族信託と任意後見に関する動画の作成、公表。月に1本の動画作成予定。

2022年1月

・会計報告まとめ。

2022年2月

・一般財団法人司法協会へ研究報告及び会計報告の提出。

  • 研究方法等

ア アンケート調査及び分析

アンケート調査を基に、グラフ、表を作成し、現状分析を行う。現状分析を行った上で、民事信託・家族信託・任意後見制度についてニーズはあるのか、ニーズがある場合満たせているのか、満たせていない場合、どのようなアプローチが有効なのか提言をまとめる。ニーズがない場合はその理由をまとめる。

イ 動画の概要及び作成本数、並びに動画の公表方法

動画の概要・・・家族信託・民事信託・任意後見制度がどのような場合に必要となるのかについての紹介。

作成本数・・・月1本60分程度を予定。

動画の公表方法・・・YouTubeを予定。

7 研究実施期間

2021年1月~2021年12月

8 研究成果発表計画

・(公財)不動産学会などの所属学会への論文投稿、金融法務事情など法律雑誌への投稿。

・沖縄県司法書士会及びアンケート回答者で希望する者にアンケート調査の結果、動画の提供。

9 研究経費及び内訳

  総額

(内訳) 

項     目予  算  額積 算 内 訳
郵送費72,000円・切手@120円×600=円(高齢者施設・市町村議会議員調査分)
消耗品費10,000円・A4用紙@2000円/2500枚 ・インク8000円(@4000円/インクジェットプリンター4色分セット2個)
書籍、複写費100,000円法務、統計に関する文献購入、行動変容に関する論文など複写。
動画作成費用153,299円・ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセットWH-H910N:30,000円 ・Anker PowerCore 20100 (モバイルバッテリー):4,000円 ・ソニー コンデンサーマイク:11,000円 ・SONY ウエアラブルカメラ:58,299円 ・その他のデータ保存、動画編集機材:5万円
調査報告書の提供10,000円アンケートに答えて下さった方で希望する機関に対して調査報告書・動画を提供する際の切手、DVD費用。
合計345,299円   

10  助成希望金額

345,299円(単年度の助成申請)

11  他の機関からの助成 (機関名・助成金額)

なし。

12 研究期間終了後の研究報告及び会計報告の提出予定日

2022年2月末日

13 連絡先

    フリガナ ミヤギスナオ

    氏 名  宮城直

    住 所  〒903-0114  

        沖縄県中頭郡西原町字桃原85番地

   電  話  (098)945-9268

   FAX  (098)96309775

   Eメール shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

司法書士業務に関するWebアプリケーション

落ちてしまったので、貼っておきます。

1 成年後見人が年に一度家庭裁判所に提出する財産目録

 成年後見人(民法843条)が就任した後、年に一度提出する書類のうち、財産目録について、Webアプリケーションを作成してみることにしました。理由は、利用者が微調整することで可能な手続きは、利用者自身が行った方が良いと考えたからです。

 制作過程

 元々の知識は、Wordに文字を打つことが出来る、Excelに数字入力することが出来る・SUM関数[1]が使える、です。どのような方法があるのか、そもそもWebアプリケーションはどのような仕組みになっているのか、というところから始めました。また時間の都合上、オンラインを含めてプログラミングスクールに通うという選択肢はありませんでした。手探りの中、python[2]というプログラム言語のWebアプリケーション開発のためのDjango[3]、その他の書籍を買ったり、主にエンジニアが集まるオンラインコミュニティに入っていました。それでも半年程、これで進めることが出来るという感触は得られませんでした。そんな中使ってみて、これなら可能かもしれないと感じたのが、glide[4]というエディタ[5]です。グーグルスプレッドシート[6]というExcelに似たようなソフトと連携してサービスを作成することが出来るようです。glideを利用して制作を進めていきました。最初に作るのは、情報の枠組みです。どのような表を作れば、glideというソフトが読み取ってくれて、変更が出来るのか、試しながら作っていきました。

現状の設計では、最終形は図1のようになりました。

図1 列AからZまで、行3から39まで同じような形

 列AからZまで利用したのは、その分入力する項目を増やすことが可能ということが理由です(実際は1行目のColumn3からColumn30までの27項目が利用可能になっています。)。また0が並んでいる理由は、図2です。

図2 行番号39まで情報が入っている。

 入力した情報の出力先である財産目録が同じシートに入っテキスト ボックス: 図3ており、行番号39まで情報が入っています。このような場合、glideから入力した情報は、40行目からしかグーグルスプレッドシートには反映されないようです。Glideからの入力が反映されるグーグルスプレッドシートと反映された情報を当てはめる財産目録は分かりやすく印刷の際も便利なので、別のシートにしていました。しかし、そのような設計にすると、2年目、3年目に入力したときに、情報が更新されないことが分かりました。利用できる関数やグーグルアップスクリプト[7]を探してみましたが、見つけることが出来ませんでした。分かる方がいらしたら教えてください。情報の枠組みを作ることが出来たら、glideでアカウントを作成した後、グーグルスプレッドシートとの連携を行います(図3)。

図3

 必要な個所に入力したら、書式らしきものが出来ている、あるいは申請に必要な情報は揃っている状態になるように作られている、という考え方は、私たちが普段行っているコンピュータシステムを利用した登記申請の方法や、必要な添付情報の組み立て方の考え方に似ている面があるなと感じました。次に、アプリのタイトルや入力タブを整えていきます(図4)。入力タブの設定のために、グーグルスプレッドシートでは、提出年月日をカラム(coulmn)3等と定義していきました。そして、財産目録中の値が入るセルには、=INDIRECT(“列名” & COUNTA(列名:列名))という関数が入っています。INDIRECT(“列名”で指定した列を参照、& COUNTA(列名:列名))で、列の中で行番号が一番大きなセルの値を参照します。1年目は行番号40番に情報が記録され、2年目は行番号41番に情報が記録される。=INDIRECT(“列名” & COUNTA(列名:列名))が入っているセルは、1年目は行番号40番の情報を参照し、2年目は行番号41番の値を参照します。

図4

 glideは、パソコンでも使えますが、スマートフォンから入力することも可能です。スマートフォンにグーグルドライブをインストールしておけば、入力から印刷(コンビニ)までスマートフォンで可能な点もglideを選んだ理由です。パソコン、プリンタを持っていない人を想定しています。また、商用・非商用を選択することも出来ます。利用したことはありませんが、商用にすると、アプリケーションの便利機能が増えたり、見た目や使いやすさが上がるようです。

 テスト・利用実験

実際にアプリをインストールします(図5)。次にグーグルドライブを開ける状態にして、グーグルスプレッドシートをダウンロードや共有リンクなどで取得します(図6)。最初の画面を開いて、右上の+ボタンを押します(図7)スマートフォンから、アプリに必要事項を入力していきます(図8)。

図5

図6

図7

図8


 入力画面では、上に例文のようなものを付けました。出来るだけ分かりやすくしたつもりですが、改善事項があればご指導願います。入力が全て終わるか、途中でも終了するときは、右上のチェックマーク(✔)を押していったん終了します。入力が全て終了した後、グースプレッドシートに反映されているか確認します(図9、図10)。私は、普段の業務で行っている、官公庁などに提出する書類や情報についてを官公庁に提出する前に、自分の目でチェックすることに似ていると感じました。入力が確認出来た後は、印刷に入ります。今回は、スマートフォンからコンビニの複合印刷機を利用して印刷してみます。試してみて分かったのですが、コンビニでの印刷方法には、色々な方法があるようです。

図9

図10

私が調べた限りでは、センイレブンが一番使いやすそうでした[8]。私は事務所から近いファミリーマートにアンドロイド(android)のスマートフォンを持って行きました。まずは、スマートフォンにネットワークプリント[9]というアプリをインストールします。次に、グーグルスプレッドシートの印刷したい範囲を設定して、PDFファイルに変更。当初は、グースプレッドシートでページ指定を行い印刷しようとしたのですが、出来ませんでした。この辺りの調整は、コンビニにおいてあるマルチコピー機のメーカーや型式によって違うようです。印刷用のPDFファイルが出来たら、ネットワークプリントアプリの中に、PDFファイルを登録します(図11、12)。

図11

図12

ファミリーマートのマルチコピー機側の操作としては、スマートフォンで印刷、ネットワークプリント、という画面を押していきます。最後にユーザー番号(図11)を入力して、印刷開始です。印刷料金も必要です(図13,14、15)。印刷後です(図16)。

図13

図14

図15

図16

改善点など

 今回、glideというエディタを用いて、Webアプリケーション、スマートフォンアプリケーションを作成しました。glideの他に様々なエディタが提供されているようです[10]

 改善点

・財産目録しか作ることが出来なかった。 ・箇条書きであれば、ワードで作成しているような文書(例えば後見事務報告書)なども作成することが出来る可能性がある。

・今回の機能に関していえば、glideを使わなくても、グーグルフォーム[11]とグーグルスプレッドシートを連携させて、同じようなものを作ることが出来ることに気付きました。違いは新しいグーグルフォームとグーグルスプレッドシートを使わないといけないことでしょうか。

・appleのスマートフォンではテストしていない。

・他にも連携できるツールがあると思うが、必要最小限な機能になっているか、分からない。

作ってみて感じたこと

・ノーコード、ローコードといわれるものを使っていると、より本格的にプログラムが書けるようになりたいと思うことがある(実際に行動するは別として)。

・ぺーバーレス、ハンコレスと電子化の過渡期に、どちらにも対応できるものを自分の手で作れるのは良いのかなと感じました。

・文中でも何度か触れましたが、必要な情報から逆算して考えたり、確実さを求めるところは、司法書士業務との共通点があると感じました。

・利用方法としては、スマートフォンを持っていてパソコン、プリンタを持っていない人に対して、glideアプリとグーグルスプレッドシートをQRコードでダウンロードしてもらい、自身で保守・管理・運用してもらうことを想定しています。最初の方は使い方をその都度教えるという形になるかもしれません。

その他(新型コロナ対策サイト、Politylink)

新型コロナ対策サイト

 令和2年の夏頃、沖縄県COVIT19対策サイト(図16)[12]のデータ更新に参加していました。そこでも、少し実践しながら勉強になったことがありました。サイトの後ろ側で行われていることをみたり、少し触らせてもらったりすることが出来たのは、良い経験だと感じます。

 CSVデータ(図17)やgithub[13](図18),pdfファイルから必要な情報を取り出して、グースプレッドシート(図19)に自動でまとめる方法[14]などが公開されていて、誰でも触ることが出来ます(触ったものが採用されるかは別です)。少なくともみることは出来ます。

図16

図17

図18

図19

(一社)Code for JapanのSocial Hack Dayで一緒になって、法令の施行日が気になる等の意見や、データの打ち込みなど少しだけ関わらせて頂いています。良い取り組みだと考え紹介させていただきます。

・経歴

薄井光生が大学時代の友人と一緒に開発している

情報系を専攻しているエンジニアで、政治や法律などとはそれまで接点が全く無かった。

・PolityLink(https://politylink.jp)について

PolityLink(ポリティリンク)は政治の「原文」へのポータルサイトです。 私たち国民が、政治に関する「正確」で「中立」な情報に簡単にアクセスできるように、 国会や行政機関の公式サイトに散らばった情報を、互いに関連付けてまとめ直しています。

[blogcard url=”pdf-parser/blob/master/auto_parser.py”]

・開発のきっかけ

政治について知りたいと思う機会が時々あったが(選挙時、#検察庁法改正案に反対しますなど)、どこから正確な情報を得れば良いのか分からないという悩みを持っていた。新聞やニュースなども見たが、切り取られているため背景知識がないと理解が難しい、知りたい情報がそもそもニュースになっていない場合があるなどの問題があった。そこで、国会や各省庁が公開している公式の情報ならこれらの問題が解決できるのではと思い調べてみると、情報自体はオンラインでも公開されていることが分かったが、必要な情報が様々なサイトに散らばっていてアクセスが難しいことが分かった。これらの散らばった情報をまとめ、簡単にアクセスできるようにすれば、政治についてもっと知ることができるのではないかと考えた。

・作ってよかったこと

第203回国会を国会タイムライン機能を使って並走してみて、国会で何が起こっているのかリアルタイムに把握することができた。これはPolityLinkが無かった今まではできなかったこと。

ニュースのみを見ていた今までは法律案が急に成立したように見えた。PolityLinkがあれば、成立までの過程(趣旨説明、審議、委員会での可決)が把握できているので、納得できる。

今までは物議をかもした法律案しか見えなかった(検察庁法改正案、育苗法改正案)。PolityLinkは網羅性があり、ニュースや話題にならないような法律案に関しても、各省庁が出している概要PDFを見れば簡単に理解でき、把握できる

・苦労したこと

散らばっているデータソースを様々なサイトからクローラーで集めてくるところ

集めてきた情報をまとめ直すところ。

例えば全く同じ名前の法律案があると難しい。

・今後について

それぞれの国会議員の基本情報と国会での発言データをまとめ、議員ページとして公開したい。選挙の際に、現職の議員が過去の国会でどのような活動をしてきたのか客観的に分かるようなページにしたい。

技術的に難しいそうではあるが、国会審議のリアルタイム文字起こしや自動要約生成などにもチャレンジしてみたい。

公式の情報が公開されるまではタイムラグがあることがある。例えば衆議院本会議の議事録は1ヶ月以上経っても公開されていない。 

今後に向けて

 触ってみる、作ってみる。

 テレビ電話会議の普及、ペーパーレス、ハンコレスの中で、もし時間を少し開けることが出来たときの選択肢の1つとして、プログラミングなどを触ってみるのも良いのかなと感じます。他にもあえて対面営業を行ったり、専門分野を深く勉強して論文にまとめたり、苦手な分野を集中して勉強するのも大切だと思うので、あくまで選択肢の1つとして一緒に勉強・実装できる仲間が増えると楽しいかなと思います。

 試してみる、分からないことがあったとき、訊ける場所に入っておく。

 作ってみたら試してみる、駄目だったら改善する、そもそもその機能が必要なのか考えてみる、難しく考え過ぎていないか訊いてみる、というところは、専門家の知恵を借りたいところです。最寄りのプログラミングスクールを始めとして、オンライン上でも様々なサービスが提供されているようなので、一度入ってみて合わなかったら退会する、というぐらいの軽いスタンスでも入っておくのは有効だと感じます。私は、書籍とグーグル検索で1日かかってしまったことがありました。


[1] 2020年11月6日閲覧 Apps Script(コードエディタ)
https://developers.google.com/gsuite/aspects/appsscript?hl=ja


[1] 2020年11月6日閲覧 マイクロソフトサポート SUM関数(足し算)
https://support.microsoft.com/ja-jp/office/sum-%E9%96%A2%E6%95%B0-043e1c7d-7726-4e80-8f32-07b23e057f89

[2] 2020年11月6日閲 初心者のためのPython https://www.python.org/about/gettingstarted/

[3] 2020年11月6日閲覧Djangoの概要(pythonのコードを使う箱)https://docs.djangoproject.com/ja/3.1/intro/overview/

[4] 2020年11月6日閲覧 glideのHP https://www.glideapps.com/

[5] Wordやメモ帳などもテキストエディタと呼ばれるエディタ。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%BF

[6] 2020年11月6日閲覧グーグルスプレッドシートについて「パワフルなスプレッドシートを作ろう」https://www.google.com/intl/ja_jp/sheets/about/

[7]2020年11月6日閲覧 Apps Script(コードエディタ)
https://developers.google.com/gsuite/aspects/appsscript?hl=ja

[8]2020年11月6日閲覧セブン―イレブンのマルチコピー機があなたのプリンターに。https://www.printing.ne.jp/index_p.html

[9] 2020年11月6日閲覧コンビニプリントでテレワークを支援。https://networkprint.ne.jp/sharp_netprint/ja/top.aspx

[10] 2020年11月6日閲覧ノーコード、ローコードあれこれhttps://qiita.com/kento_gm/items/34c46a9bc6b3017c9345

[11] 2020年11月6日閲覧アンケートなどを作成することが出来る。https://www.google.com/intl/ja_jp/forms/about/

[12] このサイトは、沖縄県が作成したサイトではなく、民間のエンジニアなどが沖縄県よりも先に作成しました。 https://okinawa.stopcovid19.jp/

[13] 2020年11月6日閲覧https://github.com/Code-for-OKINAWA/covid19

[14]  2020年11月6日閲覧https://github.com/Code-for-OKINAWA/covid19-

佐久間 毅「民事信託の現状と課題 -可能性と危険性―」

(一社)民亊信託推進センター実務入門講座第8回公開セミナー 

2020年12月5日 佐久間 毅(同志社大学)

民事信託・・・個人が委託者となり,財産の管理または承継を主な目的として設定する信託であって,受託者も個人であるもの(ただし,個人が業として受託する場合を除く)

 民事信託は、定義づけも未だ確定されているとはいえないのが現状なんだなぁと改めて感じます。「受託者が個人であるもの」、「ただし、個人が業として受託する場合を除く」、という書き方は初めて読んだ気がします。これからまた新しい方法を考える人が出てくると、定義も変わり得ることを示唆させてくれます。

 信託において受託者に生ずる効果:他人の大きな財産的利益に関わる,長期に及ぶ多種多様な事務処理の義務。その義務の違反があった場合の責任。

 信託銀行が受託者になる信託であっても,民事信託であっても同じ。

 「他人」と規定していいのか、私には分かりませんでした。行為によっては他人より責任は重く問われることもあるかもしれないし(信託不動産について、分筆すると価値が大幅に下落することが分かっていたのに、将来受託者が残余財産の帰属権利者として取得する分として、分筆した。)、親族だから責任は第三者が受託者に就任している場合より軽くなる場合もあるのではないかな(税理士は就いていたが、定期報告・訪問する契約ではなく、信託財産について、税の優遇を受けられる事案なのに受けるのを忘れていた。)と感じます。

* 民事信託に関与する専門家に求められること

 現実の受託者に履行可能な水準の義務となるよう信託条項が定められるべく,助言・提案をすること。

 その場合,通常,信託法が定めるよりも義務の内容を緩和する(義務を軽減する)ことになる。

 義務の軽減には限界がある → その限界を超えていないか,見極める必要がある。また,限界を超える場合,その者を受託者とする信託の設定には無理があることを委託者に認識させる必要がある。

 義務の軽減は,信託財産に不利益となる危険,委託者の望む結果が得られない危険を増大することになるが,受託者の現実を踏まえれば,受け入れざるを得ないことがある →委託者が,このことを理解したうえで信託を設定させる必要がある。

 信託行為で義務の内容を緩和(軽減)する必要があるのか、私は(受託者の)義務を緩和しているつもりはないですが、信託銀行が作成する信託契約書よりは細かく規定をしていないです。

当該の信託にとって適切な具体的定め(例:もっぱら普通預金と定期預金で管理するものとする。個人向け国債やインデックス型の投資信託など,購入可能とするものを例示する。)が信託行為に設けられることが望ましい。

 ここは普段記載していなかったので、金融商品について例示する必要はありそうだな、と思いました。信託設定時に受託者は興味がなくても、信託財産の所有者となった後に勧誘がくる可能性もあるんだろうなと思います。

公平義務違反

信託行為において,受託者は複数受益者をどのように扱うべきかを,できるだけ明確にしておく。

 受託者の公平義務に関しては、考えておく必要性があると感じさせられました。または、1つの信託行為に関して複数受益者を設定しないか、複数受益者の場合、委託者兼受益者は柔軟にしておいて、他の受益者に関してはある程度同じ事務処理しか出来ないようにしておくことも考えられるかなと思います。米国での2つの判例を紹介していただきました。私は残余財産の帰属権利者は、受託者に対して公平義務を追求出来ないと考えていますが、これも明らかに減った場合は分かりません。

4)対応策

 信託設定後に,信託が上記の信託条項に従い適切に運営されるよう,受託者への助言・支援,受託者の事務の監督等をおこなう。

* 費用について

 大きな財産の管理を実質的に他人にゆだねる場合,その事務処理の適正確保のために相応の費用がかかることは当然のこと。

 その必要な費用を負担することができない者,負担しない者は,制度の利用から排除されても仕方がない(制度の信用維持のためにも必要)。

 費用についての規模感がなかなか掴めません。包括契約を締結して、費用は個別計算が原則になると思いますが、費用の規模について税理士の顧問契約などを参考にすればよいのか、司法書士法施行規則31条に基づいて企業の経営助言を行う場合の費用を参考に少し落とした金額にするのか、迷っているところです。現在は、信託設定後の相談1回について5,000円を頂いています。

(3)効力の不安定

* 原因

 信託法の規定と異なる内容の信託条項が設けられた場合および信託法の規定と異なる行為を受託者がした場合につき,判例および安定した解釈が存在しない。

 その理由:従来の信託では,ほぼもっぱら信託銀行が受託者 + 信託銀行の「石橋を叩いて渡る実務」→ 信託の効力が争われることがほとんどなかった。

 ここは、私の認識と違っていました。「会報信託」という雑誌の後半には顧客から苦情あっせん委員会に寄せられた苦情が記載されていますが、毎回5,6件掲載されている印象があり、表に出ているだけで、信託銀行・信託会社でもこんなに数があるんだ、と思っていました。

PAGE TOP