木村敦子「信託と遺留分に関する一考察―相続法改正をふまえて―」

(公財)未来トラストフォーラム【84】P173~の記事からです。

減殺・・・自己の法定相続分の一部を確保するために、遺留分を侵害する限度で行われる。

侵害・・・遺留分権利者の潜在的持分の清算を目的する行為→遺留分の金銭債権化・価値化

遺留分の金銭債権化により、受益権の(準)共有状態は生じなくなる。受益権2分の1などを定めても良いが、遺留分侵害額算定の妨げにはならない。

遺留分侵害額請求の考え方と受益権(主に受益債権)説との関係・・・原則として親和的。

信託の場面における遺留分侵害行為

・相続分の一部の価値保障

・遺留分制度固有の目的に即した一定額の保障

どちらもあると思います。

受益権の評価に関する問題

・遺留分額に対して、受益権の価額が充分な程度に高くない場合・・・仕方がないのかなと感じます。

・信託の設定によって、遺留分侵害額算定の基礎財産が目減りする場合・・・信託行為によって適正に定めさせれている限りにおいては仕方がないのかなと感じます。

信託財産の目減りに関して

・信託設定時から遺留分侵害額の発生時までの間に、信託財産が目減りした(4000万円が1000万円になった、建物の評価が3000万円から2000万円になった場合)

・・・受益権の内容・時期によって遺留分侵害額算定の基礎となる財産に持ち戻すのか評価されると考えます(民法1043条、1044条)。またこの場合の相手方は、原則として受益権に基づく給付を受けた受益者、受益者が応じない場合には、受託者だと思います。建物の評価額のうち減額となった部分に関しては、受託者が悪意重過失のない管理運用を行い、評価減額が経年劣化による場合は、遺留分侵害額算定の基礎財産に含まれないと考えれます。

民法1045条1項の「負担の価額」

負担といえるか、重畳的債務引き受けや連帯保証など、容易に金銭に見積もることが出来るものを除いて、難しく感じます。

受託者であっただけで、負担を負ったといえるとは思えません。信託行為で(認められるかは別として)個別行為を負担と定めるか、被相続人と推定相続人その他の人が個別行為を行うごとに負担と記録するか、(これも必ず認められるのか分かりません)ここまで記録を取る必要があるのか、など考えさせられます。

元本受益権について

参考 (一社)民事信託推進センター テーマ別研修会「信託税務2つの事例の考察を中心として」 令和2年11月10日 税理士・司法書士 白 稲子 白稲子©2020

税務に関する最終判断は、税理士に依頼をお願いします。

・元本受益権、何に使うのか。

私は信託契約書の中に元本受益権という言葉を使ったことはありませんが、色々なところで使われています。

・国税庁

相続税法基本通達【第9条の3((受益者連続型信託の特例))関係】

(受益者連続型信託に関する権利の価額)

9の3─1 受益者連続型信託に関する権利の価額は、例えば、次の場合には、次に掲げる価額となることに留意する。

(1) 受益者連続型信託に関する権利の全部を適正な対価を負担せず取得した場合 信託財産の全部の価額

(2) 受益者連続型信託で、かつ、受益権が複層化された信託(以下9の3─3までにおいて「受益権が複層化された受益者連続型信託」という。)に関する収益受益権の全部を適正な対価を負担せず取得した場合 信託財産の全部の価額

(3) 受益権が複層化された受益者連続型信託に関する元本受益権の全部を適正な対価を負担せず取得した場合(当該元本受益権に対応する収益受益権について法第9条の3第1項ただし書の適用がある場合又は当該収益受益権の全部若しくは一部の受益者等が存しない場合を除く。)零

(注) 法第9条の3の規定の適用により、上記(2)又は(3)の受益権が複層化された受益者連続型信託の元本受益権は、価値を有しないとみなされることから、相続税又は贈与税の課税関係は生じない。ただし、当該信託が終了した場合において、当該元本受益権を有する者が、当該信託の残余財産を取得したときは、法第9条の2第4項の規定の適用があることに留意する。

・財産評価基本通達202(信託受益権の評価)

202 信託の利益を受ける権利の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。(平11課評2-12外・平12課評2-4外改正)

(1) 元本と収益との受益者が同一人である場合においては、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額によって評価する。

(2) 元本と収益との受益者が元本及び収益の一部を受ける場合においては、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額にその受益割合を乗じて計算した価額によって評価する。

(3) 元本の受益者と収益の受益者とが異なる場合においては、次に掲げる価額によって評価する。

イ 元本を受益する場合は、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額から、ロにより評価した収益受益者に帰属する信託の利益を受ける権利の価額を控除した価額

ロ 収益を受益する場合は、課税時期の現況において推算した受益者が将来受けるべき利益の価額ごとに課税時期からそれぞれの受益の時期までの期間に応ずる基準年利率による複利現価率を乗じて計算した金額の合計額

・税務大学校論叢第 92 号 平成 30 年6月 佐 々 木 誠「受益権が質的に分割された信託に対する所得税の課税に関する考察」

「はじめに」より抜粋

受益権が質的に分割される信託のうち、今後、個人の財産管理や承継のために活用が見込まれる元本分配と収益分配を受ける権利を分割する信託や、信託収益を受益者に分配せずに、その全部又は一部が留保される信託を念頭に置き、現行の受益者等課税信託に代わる新たな課税方式を検討することとしたい。

・相続税法9条の2第4項

・相続税法施行令1条の8

・相続税法基本通達9-13

何やら、税金に関係があるようです。元本はアパートで考えると建物と土地(所有権、借地権)、収益は、賃料などから、元本を維持するための費用を差し引いたお金、とひとまず考えたいと思います。

このような信託を設定することで何か良い事があるのか。

・受益者連続型信託の場合、委託者兼受益者が亡くなった場合、次の順位の元本受益者には、「課税上は元本受益権の権利の価額は0円として扱われます[1]」、とありますが、私は土地建物の価額を0円と評価するのは(次の順位の元本受益者の居住の有無に関わらず)難しいような気がするのですが、実務運用はどのようになっているのか気になります。税法上の優遇措置を利用する場合を除きます。

[1] (一社)民事信託推進センター「民事信託ハンドブック」平成28年 日本法令P370~

元本受益権、誰が使うのか。

・受益者連続信託における、第2次受益者以降の受益者を想定しているのだと思います。

元本受益権はどのように評価するのか。

・信託が続いているうちは、0円。終了時に、終了原因、残余財産の帰属権利者(受益者)により課税。

・配偶者居住権の算定式を参考に評価。

国税庁HP

0円と1,300万円だと大分違ってきます。

・その他の算定方法

・固定資産税評価額

・相続税評価額

他に適切な算定方法があれば教えて下さい。

 

 

 

 

・遺留分侵害額の請求との関係

 

遺留分侵害額の請求の対象となる受益権

 

委託者兼受益者(他に当初受益者がいる場合はその人も含みます。)が亡くなった場合と、第2次受益者が亡くなった場合を同じ計算方法で行うものとします。

 

・元本受益権、収益受益権ともに受益者が亡くなった年度の相続税評価額×給付の期間×給付の内容の金銭評価。

 

・他に適切な方法があれば教えて下さい。

民事信託・家族信託に関する質問

メールによる質問を一部加工しています。

委託者:父

受託者:息子が代表取締役の法人

受益者:父、母

・父が亡くなりました。 銀行の了解が必要ですか?他にどんな影響があるでしょうか?

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 ・銀行借入があり、銀行が民事信託の設定を支援した軍用地について

銀行に連絡は必要です。

基本的には、登記は少し特殊ですが、普通の相続が起きたときと同じような処理をします。

登記申請は銀行の提携司法書士がやるのか確認をお願いします。

・銀行借入のない自宅の土地建物について

 準備書類を添付します。私が登記する場合、除籍謄本と、息子様の長男の運転免許証の写真を先にメールしていただければ、書類、見積書は作成出来ます。

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信託財産の土地は、信託の終了が必要になると思われるが、その際に不動産取得税がかかるのか否か等お教えください。

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信託財産の土地について、信託法上は信託は終了しません。次の受益者に指定されている方への受益者変更の登記申請を行います。

税務上、相続と扱われて不動産取得税はかかりません。相続税の対象となります。

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・建物を信託財産に属する財産にした後に建物を取り壊した際に信託は終了することになると思いますが、この認識でよいでしょうか。

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信託法上、信託は終了しません。土地と一緒に信託契約をしているからです。次に指定されている受益者への受益者変更の登記を行います。

受託者と受益者の合意で、土地と一緒に信託を終了させることも可能です。

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・信託の目的物である建物を取り壊す際の税務処理について

 信託財産(この場合建物)を取り壊す際に信託上の処理が必要か。

 例えば、信託財産の建物は、信託を終了してからでないと取り壊せないなど。

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税務上の処理は今年中に取り壊しが完了して、受託者が役所に建物滅失の届け出を提出した場合、来年の建物の固定資産税が課税されません。

信託上の処理は必要ありません。受託者が解体業者と契約して取り壊します。

取り壊した後、受託者が建物滅失登記を申請します。

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・私から長男への信託受益権の暦年贈与を実施したいと思います。

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可能です。お父様から息子様への受益者の変更登記申請を行った後、長男を受益者に追加する受益者の変更登記申請を行う必要があります。