道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』→『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』第1章総論

道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』2017年、有斐閣と、同氏著『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』2021年、有斐閣の比較です。

『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』2021年、有斐閣を基準にしています。

誤りなどがあれば、指摘願います。

  • 総論

P7、民法の契約との比較

委任契約、組合契約との比較について

受任者・業務執行組合員の義務についての規定も不十分である。

の文の追加。

→信託という法制度であれば、受託者の義務をより詳細に定めることが出来ることと比較。

P9、有限責任投資組合においける、組合員の有限責任について、

定められ、と変更

道垣内弘人『信託法―現代民法別巻―』2017年では、認められ。

注25の追加

2017年からの新刊、田中和明『信託法案内』2019年、勁草書房の追加。

P18

信託の成立を認めるべき場合について

『信託法―現代民法別巻―』

受託者に信託財産に属する財産についての財産権があたかも帰属していない状態にある場合である。

『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』

信託財産に属する財産についての財産権が、受託者にあたかも帰属していないような状態にある場合である。

→信託財産に属する財産と、受託者との関係の明確化。

P19 また、法令上の用語ではないが、信託設定時点における信託財産を当初信託財産という。本書では、この用語についても、当初の信託財産全体を示すものとし、個々の財産については「当初信託財産に属する財産」ということにする(本書初版では使い分けがなお不徹底であった)。

→理由は、かっこ書き記載。信託法2条2項3号、5号、8号、20条3項、22条、追加信託に関する記述の際に、使い分けを明確にしたいという意味だと思われます。

P20 

『信託法―現代民法別巻―』

さらに、受益者の存在も必然的はないのであり、信託財産、さらにはその管理・運用によって得られる利益が、一定の目的に使用されることになっていることもある。たとえば、収入の十分でない学生に対する奨学金の交付という公益に使用されることになっているときは、公益信託となり、特定の大学のために信託法関係の書籍を購入し、寄付するということになっているときは(特定の大学に限られているので、公益とはいえない)、受益者の定めのない信託、すなわち目的信託となる。

『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻』

さらに、受益者の存在も必然的はない。信託財産、さらにはその管理・運用によって得られる利益が、一定の目的に使用されることになっていることもある。たとえば、特定の町内会の祭りのために必要な支出を、確認からの申請に基づいて給付する、ということになっているときが、そうである。このような場合は、特定された受給者あらかじめ存在するわけではなく、受益者の定めのない信託、すなわち目的信託となる。

→目的信託(信託法258条)の説明に留める、という意味なのかなと思います。

注39の追加

ここでは信託法の解釈指針として「商事信託」という概念を用いるときに、それとの対比で「民事信託」が定義されている。これに対して、信託の利用方法の拡大やその特色を示すときに「民事信託」という語が用いられることがあり、たとえば、「家族や個人の財産管理・承継等を主たる目的とする信託」とか、「非専門家である個人が受託者である信託」とかといった定義がされる。

→民事信託という用語が使用される場面についての紹介。

家族信託の相談会その52

お気軽にどうぞ。

2023年2月24日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

日弁連ガイドラインの概要と依頼者は誰かという問題(1)

 市民と法[1]の連載信託契約書から学ぶ民事信託支援業務(1)、渋谷陽一郎「日弁連ガイドラインの概要と依頼者は誰かという問題(1)」からです。

参考

しかし、そのような法改正運動への阻害要因が、これまで司法書士集団の中に存在してきた民事信託支援業務を行う人々(のビジネス思考、過剰宣伝、過剰報酬、SNS濫用その他)に対する嫌悪感である。

そのような嫌悪感は、公益意識の高い司法書士の人々の間を中心として、随分と以前から存在し、司法書士会総体としての一貫性ある民事信託支援業務の研究の蓄積(規律化)を阻んできた。

 公益意識の高い司法書士の人々が、民事信託支援業務を行う人々(のビジネス思考、過剰宣伝、過剰報酬、SNS濫用その他)に対して嫌悪感を持っていると断言するのは、難しいと考えられます。

 公益意識の高い司法書士の人々、については、日本司法書士会連合会の民事信託推進委員の中でも、同じ司法書士会員に対して、有料サブスクリプションサービスを展開しています。

信託の学校

会費について

入会金 2万円(税抜)

月会費 3500円(税抜)

入会した日が属する月の月会費は、入会金の中に含まれます。

入会後1年間は、任意退会ができませんので、ご注意ください。

 ビジネス思考、については、業務として行う以上、価値を感じてもらえる依頼者に対しては、対価をいただかなければ司法書士事務所の経営は成り立たないのではないかと考えられます。

 過剰宣伝、過剰報酬、SNS濫用その他、については、渋谷陽一郎先生の過去の記事から推測すると過剰、濫用というより誤用、という意味だと思います。その点は同感です。

なお、ガイドラインに従う場合、受託者候補者からの依頼については、受任を拒絶すべきなのか、あるいは、説得して委託者から受任すべきか、という問題を生じうる。

 受託者候補がいない席で、委託者候補に直接説明後、委託者候補から受任する、という流れになるものと考えれます。

司法書士をもって、家族信託信託組成時における親族間の調整役であると考えた場合、(後日、紛争を生じた場合、紛争に巻き込まれ、非弁と主張されるリスクも踏まえて)家族の構成員間で意見対立を生じた場合、本当に、家族の構成員それぞれの調整役をに担えるのか、という問題を生じる。

 事実上、結果として調整役になれた場合はあると思いますが、文書として調整役であると記載することはできないと考えられます。

 記事の著者が、組成、という用語を利用するようになったのはいつ頃からか、気になりました。法律整序事務に、組成が入るのでしょうか。

日司連の考えから―司法書士行為規範から―

―中略―

なお、委託者の推定相続人たる兄弟姉妹が、割合を異にする第二次受益者であり、あるいは、推定相続人の一部が受益者に指定されず、利害対立が潜むような場合、また、甥姪、孫が第三次受益者に指定されている場合など、どのようにして信託関係者それぞれ(全員)に配慮するのか、(それは可能なのか。将来の受益者にも配慮するのか。全員への配慮ができない場合の司法書士の責任は何か)などの難問を生じよう。

将来の受益者にも配慮するのか。・・・・信託行為時に話が分かる状態であれば、話はすると思います。

全員への配慮ができない場合の司法書士の責任は何か。・・・行為規範の違反となり、懲戒処分の対象となることが考えらます。配慮について、その他信託関係人の範囲や、どのようなことが行うのかが分からないので、個別具体的な判断に委ねられるものと思われます。努力義務ではないところが特徴だと感じます。

なお、司法書士法上の根拠はなく、市民から必要されているからやっている、という考えが日司連では有効のようです。

民事信託支援業務は、司法書士法3条、司法書士法施行規則31条業務ではない。市民から必要とされてやっている。成年後見人就任と同じ。


[1] 139号、2023年2月、民事法研究会、P101~

民事信託の登記の諸問題(17)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(17)」からです。

権利の帰属を示すという意味は、権利者が誰であるかを示すことである。所有権の信託であれば、所有権者が誰なのか、ということである。そして、これは、民法177条に基づく対抗要件としての権利の登記である。

 私なら、所有権者が誰なのか、の部分は、信託行為による制限を受けた所有権者は誰なのか、とすると思います。

この点、信託の内容の登記は、実体法の領域に一番近いような印象がある(例えば司法書士の民事信託支援業務の法的根拠としての信託目録という側面ではそうである)。しかし、実体法上の法的根拠に乏しいとすれば、信託の内容の登記は、むしろ、それは極めて手続法的な領域にある、という逆説が存在することになる。

 読み取りが難しかったです。信託の内容の登記、という用語を私が理解していないからかもしれません。信託の内容の登記の大部分は、信託目録の記録内容を、構成や文言を実体法に即して考える必要があるから、実体法の領域に一番近いような印象がある、というような意味なのかなと感じます。

信託は泣いているとして知られる裁判例(注256溜箭将之「信託が潜在能力を発揮するには」信託法研究45号6~7頁)であるが、本誌読者のなかにも、違和感を感じる人がいるかもしれない。かような違和感は、信託は契約という方法で設定されるが、その実質として信託は契約なのか否か、という視点に関わる問題でもある。

 信託法3条1項1号による信託行為は、契約です。実質がない条文だとすると、利用しない方がよい、廃止する方がよい、となるので、現在のところ、実質がある契約だと考えられます。契約は両当事者が対等とみるのが原則で(民法521条)、当事者の属性、契約締結時前後の状況、その他の事情によって、個別具体的に判断されるものだと思います。

 裁判例(東京地裁平成30年10月23日判決)に関しては、父親が信託行為をしたいと考えたとき、受託者に就任する人が二男しかいなかったという可能性もあり、判決文を読む限り、父親である委託者が一方的に不利だったのか、分かりませんでした。

信託の関係は、弱者と強者の関係であり、そこで、弱者に対する後見的役割を果たし、公的介入を行うのがエクイティ裁判所である(かような後見的役割の不在こそエクイティ裁判所の伝統がない日本における課題である)注260、樋口 範雄『入門・信託と信託法』2007、弘文堂P27、P52。

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受託者の権限違反行為の取消し)

第二十七条 受託者が信託財産のためにした行為がその権限に属しない場合において、次のいずれにも該当するときは、受益者は、当該行為を取り消すことができる。

一 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知っていたこと。

二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

2 前項の規定にかかわらず、受託者が信託財産に属する財産(第十四条の信託の登記又は登録をすることができるものに限る。)について権利を設定し又は移転した行為がその権限に属しない場合には、次のいずれにも該当するときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。

一 当該行為の当時、当該信託財産に属する財産について第十四条の信託の登記又は登録がされていたこと。

二 当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が受託者の権限に属しないことを知っていたこと又は知らなかったことにつき重大な過失があったこと。

3項、4項略


[1] 899号、令和5年1月、テイハン、P93~

信託登記における錯誤・遺漏による更正登記リスク

家族信託実務ガイド[1]の記事、渋谷陽一郎「信託登記における錯誤・遺漏による更正登記リスク」からです。

それでは、登記官にとって信託法182条1項2号の特約が存在しないことになってしまうと、どうなるのでしょうか。登記手続上、同条2項の委託者または委託者の相続人が帰属権利者に指定する定めがあるものとみなすと、登記官に判断されてしまう可能性はないでしょうか。

 先例、通達、判例、裁判例が出ていない現状では、個々の登記官の判断に委ねられる可能性はあると考えます。

受託者の法務一郎が、後続の登記を申請する際に、当該特約(信託行為による定め)を称する登記原因証明情報として、信託設定時から存在している信託契約書を提供すれば足りる、と考えてもよいのでしょうか。

「・・・・登記原因証明情報として当該契約書を提供すれば足りると考えているようですが、このような取扱いは、信託目録の否定だけではなく、信託登記の公示制度の役割そのものを否定することになってしまいます。」(横山同書16頁)

 当該特約の登記がないにもかかわらず、信託契約書を提供することで、後続の登記の申請を行うようなことはできないということのようです。

 登記の申請構造としては納得できます。横山亘先生の見解が、そのまま全国共通の登記実務となるのか、結論付ける根拠でいいのか、位置付けが分かりませんでした。登記情報の連載が、「(元)登記官による~」などの書籍になると、根拠として扱っていいのか分かりません。

昭和41年5月16日付民事甲第1179号民事局長回答

信託の登記ある不動産についての抵当権設定登記申請の受理について

【要旨】受任者が第三者の債務の担保として信託財産に抵当権を設定しその登記の申請があった場合、委託者及び受益者の承諾があるときでもその申請は受理すべきでない。

この通達は、委託者と受益者が承諾した情報を添付することによって、受託者が登記義務者として、信託目録を変更更生せずに、抵当権設定登記の申請を行うことが出来るかを問うものであり、信託契約書が添付されている場合とは分けて考える必要があるのではないかと思います。

参考

登記研究554号P99~

カウンター相談43 信託原簿の受益者の記載の変更の申請書に添付すべき「変更を証する書面」について

問 不動産の管理を目的とする信託の登記がされ、代物弁済により質権者が受益権を取得したので、信託原簿の受益者の記載の変更の申請をしようと思いますが、申請書に添付すべき「変更の書面」がありません。この場合、申請書副本のみを添付すればよいでしょうか。

答 「変更を証する書面」をも添付する必要があります。

昭和27年8月23付民事甲第74号民事局長回答

甲が乙に売渡したる不動産の所有権移転登記を為さず死亡したので、乙が甲の相続人と共に右売買による所有権移転登記申請を為さんとするも相続人三名の内一名がその登記手続に応じない為め他の相続人と共に右登記申請を為したるとき受理して差支ありませんか。

回答

本月5日附日記第3434号をもって問い合わせのあった標記の件については、相続人全員が登記義務者として申請すべきものと考える。

任意後見契約が存在しないまま、委託者兼受益者が、認知症に罹患して、判断能力を喪失してしまえば、成年後見人の選任が求められるリスクはないでしょうか。もちろん、それは、登記官が、錯誤更生の申請時、更生を証する情報として、委託者兼受益者の名義関与を求めた場合の話です。

 成年後見人の選任が求められるのは、リスクなのか、分かりませんでした。当初から成年後見制度を利用しないための信託であれば、それはリスクかもしれません。

 登記に関係なく、認知症に罹患して福祉、医療、保険などの各種契約が求められる場面では成年後見人の選任が求められる可能性があります。記事に記載のあるように、民事信託支援業務に携わる士業の説明義務という点では同感です。


[1] 28号、2023年2月、P80~

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