1. 議題 宮城直会員除名の件

民事信託推進センター臨時総会開催通知

(一社)民事信託推進センター 社員 各位

毎々当センターの事業にご協力頂き有難うございます。 さて、当センターでは来る5月13日18時より、当センター会議室において、臨時社員総会を開催することに決定し、本日、郵送にて、各社員宛招集通知書を発送いたしました。

新型コロナの影響による感染を避けるため、当日はZOOM配信をいたします。また、ZOOMでの採決は致しません。

就きましては、当センターよりの郵送物が到着いたしましたら、同封の委任状、議決権行使届出書にご記入のうえ、当センターまで郵便にて返送用封筒を利用して必ず返送してください。 なお、事務所変更等の手続が御済でない方は申し出ください。

1. 議題 宮城直会員除名の件

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

一般社団法人 民事信託推進センター 事務局  山北 英仁 

民事信託実務基礎講座第1回総論「民事信託の基礎」

講 師:筑波大学名誉教授 中央大学研究開発機構教授 新井 誠

禁治産(きんちさん)制度(2000年3月まで)

1999年3月31日までの主な民法の条文

第七条 心神喪失ノ常況ニ在ル者ニ付テハ家庭裁判所ハ本人、配偶者、四親等内ノ親族、後見人、保佐人又ハ検察官ノ請求ニ因リ禁治産ノ宣告ヲ為スコトヲ得

第八条 禁治産者ハ之ヲ後見ニ付ス

第九条 禁治産者ノ行為ハ之ヲ取消スコトヲ得

第十条 禁治産ノ原因止ミタルトキハ家庭裁判所ハ第七条ニ掲ケタル者ノ請求ニ因リ其宣告ヲ取消スコトヲ要ス

第十一条 心神耗弱者及ヒ浪費者ハ準禁治産者トシテ之ニ保佐人ヲ附スルコトヲ得

 後見、保佐という用語は、現在とは意味が違っていると思いますが、禁治産制度の際も利用されていて、現在に引き継がれています。以前、「準禁治産制度は廃止しない方が良かった。」と専門家が言っていたことを聴いて違和感を持ったことがあります。理由は、家族が困るから、現行制度で、浪費癖がある人を管理する制度はないから、というものでした。

民法の一部を改正する法律(平成11年12月8日)

附 則

(施行期日)

第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、第九百六十九条、第九百七十二条、第九百七十六条及び第九百七十九条の改正規定、第九百六十九条の次に一条を加える改正規定並びに次条の規定は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。

(民法の一部改正に伴う経過措置の原則)

第二条 この法律による改正後の民法(次条において「新法」という。)の規定は、次条第三項の規定による場合を除き、当該改正規定の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法(次条において「旧法」という。)の規定によって生じた効力を妨げない。

東京法務局 戸籍記載から登記への移行

http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/page000466.html

 平成12年4月1日から成年後見制度が施行されたことにより,施行前に「禁治産宣告」「準禁治産宣告」を受けている方は,それぞれ「成年被後見人」「被保佐人」とみなされます。したがって,施行後においても宣告を受けた旨の戸籍の記載や後見人の権限は有効なものであるため,それらを証明するために戸籍謄本が使用できますが,戸籍謄本をその証明のために使用することに抵抗がある場合や成年後見制度を利用したい場合には,戸籍の記載を後見登記等ファイルに移す「移行の登記」を申請することができます。

 この申請により,登記が完了すると,「禁治産宣告」等の記載のある戸籍からこれらの記載がない戸籍に再製されることになります。

※ただし,浪費者等心神耗弱以外を原因とする準禁治宣告については,移行の対象外です。

 自動的に戸籍から登記システムに移行されるわけではなく、申請主義を採っています。申請をしていない方、浪費者等の準禁治産宣告については、現在でも戸籍に残っていることになります。代が下がって家系図を作成してみようとなった時、自分のご先祖が禁治産、準禁治産者と区別されて記載されているのをみて、何を思うのでしょうか。

(禁治産及び準禁治産の宣告等に関する経過措置)

第三条 旧法の規定による禁治産の宣告は新法の規定による後見開始の審判と、当該禁治産の宣告を受けた禁治産者並びにその後見人及び後見監督人は当該後見開始の審判を受けた成年被後見人並びにその成年後見人及び成年後見監督人とみなす。

2 旧法の規定による心神耗弱を原因とする準禁治産の宣告は新法の規定による保佐開始の審判と、当該準禁治産の宣告を受けた準禁治産者及びその保佐人は当該保佐開始の審判を受けた被保佐人及びその保佐人とみなす。

3 前項に規定する準禁治産者以外の準禁治産者及びその保佐人に関する民法の規定の適用については、第八百四十六条、第九百七十四条及び第千九条の改正規定を除き、なお従前の例による。

4 旧法の規定による禁治産又は準禁治産の宣告の請求(この法律の施行前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、新法の規定による後見開始又は保佐開始の審判の請求とみなす。

戸籍法

第三十一条 届出をすべき者が未成年者又は禁治産者であるときは、親権を行う者又は後見人を届出義務者とする。但し、未成年者又は禁治産者が届出をすることを妨げない。

  親権を行う者又は後見人が届出をする場合には、届書に左の事項を記載しなければならない。

 一 届出をすべき者の氏名、出生の年月日及び本籍

 二 無能力の原因

 三 届出人が親権を行う者又は後見人である旨

第三十二条 無能力者がその法定代理人の同意を得ないですることができる行為については、無能力者が、これを届け出なければならない。禁治産者が届出をする場合には、届書に届出事件の性質及び効果を理解するに足りる能力を有することを証すべき診断書を添附しなければならない。

 従前の禁治産制度では、本人のためではなく、そのとりまきのための制度だったという事例の紹介がありました。親戚などが本人のお金で海外旅行に行った、などです。

成年後見制度と介護保険制度(2000年4月から)

 成年後見制度創設の機運は、福祉関係者から高まったようです。当初、法律家からの関心は薄かったとのことでした。そして現在でも民法学者の成年後見制度への関心は低いとの指摘がありました。

 成年後見制度の理念は、ノーマライゼーション。本人の意思により、家庭や地域で通常の生活をすることができるようにするという考え方。インクルージョンとは、各人の違いに注目するということでは共通であり、違いを乗り越えるのがノーマライゼーション、違いを包摂するのがインクルージョンという理解をしています。ノーマライゼーションを土台、インフラとしてインクルージョンな社会を目指すという順番になるのだと思います。

 身上保護ではなく、身上監護(民858)である意味。私は、「身上」という言葉が重い(一身上の、など。)、保護も上から見下されているみたいだし、監護はもっと厳しく監督されている、というイメージを持ってしまいます。

参考

新井誠「成年後見制度利用促進法の施行と成年後見制度の展望」障害法 第1号(2017 年)

付録として成年後見制度に関する横浜宣言。

https://disability-law.jp/wp-content/uploads/2017/11/%E6%96%B0%E4%BA%95%E8%AA%A0%E3%80%8C%E6%88%90%E5%B9%B4%E5%BE%8C%E8%A6%8B%E5%88%B6%E5%BA%A6%E5%88%A9%E7%94%A8%E4%BF%83%E9%80%B2%E6%B3%95%E3%81%AE%E6%96%BD%E8%A1%8C%E3%81%A8%E6%88%90%E5%B9%B4%E5%BE%8C%E8%A6%8B%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E5%B1%95%E6%9C%9B%E3%80%8D-1.pdf

上記の論文では、「身上監護」ではなく、「身上の保護」を採用したのは、「監護」という用語が与えるパターナリステックな印象を払拭して、少しでも本人中心主義を志向したいとの意図に基づく。とされています。任意後見の導入には反対が多かったが、参事官の変更(元福岡高裁裁判長 小林 昭彦)により、風向きが変わったと聞きました。「パブリックコメントで潰されるから、やりましょう。」と反対派を押し切って進めたら、パブリックコメントには、賛成が圧倒的に多かったということです。

・民事上の代理権と商事上の代理権の違い。

 民事では本人の意思が重視されるが、商事では取引のスピードを求める傾向がある、というのは、確かにあるのかもしれないと思いました。不動産登記法、商法と民事は違う。ドイツの代理制度は民事商事問わない。法令に関して、遅れた民主主義?論文は色々出ているようです。第一次、第二次世界大戦の影響が大きいようです。

成年後見関係事件の概況(最高裁判所)―令和2年1月~12月―

 補助が成年後見制度で一番多く使われるべき制度である、と新井教授は指摘していました。私も同感です。

車のナンバー858

 民法858条に倣い、車のナンバーを858にしている方が何名かいるようです。その方の名前を聞いて、私にはやっていることが矛盾しているような気がしました。

横浜宣言の意義

 この頃が司法書士が一番輝いていた、熱があったというのが新井教授の指摘です(今は民事信託でどうやってお金を稼ごうかということしか考えていない、というようなことも指摘あり。)。私もこの頃は成年後見人を受け始めたころでした。世界に発信出来るなんてすごいなと素直に思っていました。また通訳でも外国語に堪能な司法書士が各地から集まって運営していたと、後日のレポートなどで読みました。

・信託の機能について

新井教授は物権説という立場の方です(物権的効果・・・物権変動)。

 対して現行の信託法は、債権説で構成されています(信託法2条、債権的効果・・・債権的拘束)。また、転換機能という用語は新井教授が生み出した言葉なので、名前を入れること、と指摘がありました。他益信託が本来の信託の姿であるという指摘もありました。税制を気にしなければ、直ぐにでも出来ることです。また今の実務でも実際は他益信託に近い運用になっていると思います。

 私は、成年後見人を20件くらいこなしてきました。しかし、今は就任していません。理由として、成年後見の報酬では事務所経営が出来ない、登記などの片手間でやっている司法書士もいるが、そのようなやり方はしたくない。高額な報酬が見込める案件に応募が集中する。約2年くらい、応募しても全て落とされた時期があった。というような理由があります。

 新井教授の指摘は、もっともなところが多いです。しかし、リーガルサポートや民事信託推進センターの役員の人しか知らないのではないかなと思います。多忙で仕方がない部分があると思いますが、目立たなくても懸命に実務を行っている司法書士に対して目が届いていないと感じることが多く、少し残念です。

≪座談会≫信託税務の実務上の諸問題

税理士・公認会計士 成田一正   司会:弁護士 奈良正哉

弁護士 伊東大祐 オブザーバー:弁護士 坂田真吾 弁護士 菅原万里子

信託フォーラム[1]の記事からです。なお、税に関する見解は税理士、法令上司法書士が業務として行うことができないものについては、弁護士への最終確認をお願いします。

信託はお金なり財産を預けて、誰かに管理してもらう制度になりますので、財産を扱う以上、税理士の先生方の手助けは必要だと思います。

 私なら、編集段階で次のように訂正してもらいます。「信託はお金などの財産の所有権を受託者に移転して、管理処分してもらう制度になります。財産の移転を伴うので、税理士の先生方の手助けは必要だと思います。」

登録免許税や不動産所得税は、それを受益権化しておいて、それを流通させれば節約になります。

 私なら、編集段階で次のように訂正してもらいます。信託の効力発生時と信託期中において、登録免許税や不動産所得税は、所有権を受益権化して、それを流通させれば売買や贈与などと比較して、結果として節税になります。ただし、信託の終了時においては、どのように終了するかによって変わります。

すなわち、相続人より得た財産からそれぞれの相続人の負担した債務を控除し、その残余が課税額となります。

 私なら、編集段階で次のように訂正してもらいます。各相続人が得た財産からそれぞれの相続人の負担した債務を控除し、その残余が課税額となります。

例えば信託自体が債務超過の場合、そのマイナスの部分が残余財産といえるのか、他の相続財産からマイナスとして差し引くのが無理であるとすると、信託で一部切り出したことで結局、課税上不利になるのではないかという問題が議論されています。これについては、9条の2第4項の適用が原因だとして、終了させなければ9条の2第6項が適用され、受益権の評価として積極、消極財産がそのまま取得されたというみなし規定が働くので、それで切り抜けようとというのが一般的な対処法となっています。

 遺言代用信託(信託法90条1項2号)において、信託財産の内容によって課税上の有利不利がある、という議論があるということを初めて知りました。また、相続税法9条の2第6項の適用を受けるために信託を終了させない、という対処が一般的になっているということも初めて知りました。

ここで、一番困るのは、もう委託者は新たに債務負担をする能力がない状況になり、受託者の判断で信託内借入れをした場合です。この場合委託者=被相続人に債務が帰属していたとはいえません。そいういう場合に、終了させない形にする検討がされているところです。

 債務控除(相続税法13条)の適用を受けられないとして、信託を終了させないという形にした場合、いつ信託を終了させるのだろうと思いました。

これは信託法が、終了時には清算受託者による清算が行われていることを前提とした規定しか置いておらず、民事信託によく見られる、現状有姿での権利義務の承継を想定していないため、相続税法もそれにならい、信託終了の規定を置いたものとみられます。

 「民事信託によく見られる、現状有姿での権利義務の承継」について、あまり見たことがないので、新しい見方だなと感じました。

相続税法9条の2について、時期のメモ

相続税法(贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利)

第九条の二

第1項・・・信託の効力が生じた場合

第2項・・・信託の効力が生じたとき以後、信託が終了する前で、新たに受益者等が存するに至った場合

第3項・・・信託の効力が生じたとき以後、信託が終了する前で、受益者等が新たに利益を受ける場合

第4項・・・信託が終了した場合

第6項・・・信託の効力が生じたとき以後、信託が終了する前

2018年に、某金融機関が東京国税局に照会をしたところ、当局の考え方を示している部分が幾つか出ています。すなわち、信託が終了した場合、清算受託者は債務を弁済した後でなければ残余財産を残余財産受益者等に給付することができないと信託法181条でされているが、以下の条件があれば相続税法の債務控除の対象となると考えてよいか、という問いです。

 1番目として信託契約において実質的な債務の存在が受託者にあることが明示的であり、その実態を覆すようなことがないこと。2番目として、信託終了時に信託法181条の規定のとおりでなく、信託財産責任負担債務を残し未清算のまま清算結了し、帰属権利者に財産及び債務が帰属していること。3番目として、2について債権者から同意が得られており、かつ争いが生じていないこと。

 2018年の段階でこのような照会があったことを初めて知りました。1番目の「信託契約において実質的な債務の存在が受託者にあることが明示的であり」の部分が、どのような記載であれば足りるのか分かりませんでした。

 3番目の争いが生じていないこと、というのは、相続人の同意書などで足りるのか、基準があれば分かりやすいのかなと思います。単に争いが生じていないこと、とするとどのように区別するのか難しい感じがします。裁判所に係属中であること、などとすると、係属していないことを税務署に報告するための情報について考えないといけなくなります。

 私は、信託法181条について、債権者の同意があれば残余財産を残余財産受益者等に給付することが出来ると考えていました。担保設定されている場合は、必要財産の留保もされていると考えます[2]

基本は、委託者からも多額の連帯保証を取るのが普通の発想でしょう。―中略―そこで、委託者が連帯保証をしていた場合、信託終了時には保証債務が残りますが、債務控除の対象になるのでしょうか。

 連帯保証について、多額、少額などの概念はないのではないかと思います(民法458条、大判大正6,4.28)。信託期中に委託者が連帯保証人となる契約を行った場合、委託者の死亡後にその連帯保証債務は、信託財産責任負担債務になるのでしょうか。私は、委託者の死亡後は相続人の法定相続分に従って、債権者に対する連帯保証債務を当然に承継するものだと考えていました(最判昭和29年4月8日)。

残余財産とは債務を弁済した残りの財産のことをいうので、両建てで債権債務を両方承継していくような場合には、そもそも残余財産が帰属する者という要件充足が観念できないのではないかと思います。

一度条文を確認してみます。相続税法9条の2

4 受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、当該給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた時において、当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となつた者は、当該信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であつた場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除く。)を当該信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなす。

 「残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき」となっているので、必ずしも給付を受けた(例えば通帳にお金が入った。)わけではありません。お金を請求する権利を持った場合のことについて、記述しているのだと思います。そして、権利を持った場合に、たとえ受け取っていなくても課税されるのであれば、「両建てで債権債務を両方承継していくような場合」も「残余財産が帰属すべき者」として観念することができるのではないかと思いました[3]

受益者等の定義は9条の2第1項に、「当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいう。以下この節において同じ。)」とされていますが、ここに帰属権利者を読み込むことはできるのでしょうか。

 相続税法9条の2第1項は、信託の効力発生時の条項なので、帰属権利者を読み込むことは出来ないと思います。


[1] Vol.15 2021年4月 日本加除出版P25~

[2] 寺本昌広「逐条新しい信託法〔補訂版〕」P378

[3] 参考として、能見義久・道垣内弘人編「信託セミナー4」2016有斐閣P72~

特定委託者について

 信託フォーラム[1]の記事、後藤隆士「特定委託者について」からです。税に関する事柄が出てきます。最終判断は、税理士に確認をお願いします。

自益信託であっても、信託の変更に関与し得る受託者(信託法149条)が帰属権利者と指定(同法182条)されている場合、相続税法9条の2第1項に基づき、受託者に対して贈与税が課税されないか、という問題を生じる。

 なぜ、贈与税課税の問題が生じるのだろう?という疑問が湧きました。相続税法9条の2は、1項から5項まで全てみなし規定です。受託者が残余財産の帰属権利者(信託法182条1項2号)に指定されている場合、受託者は受益者ではありません。また信託の効力が生じた場合における、信託財産の給付を受けることとされている者でもありません。

受託者が残余財産の帰属権利者を兼ねる場合、相続税法9条の4により相続税が課されるのに、信託の効力発生時に贈与税も課税されるのは酷な感覚を持ちます。

議論の実益は、撤回権(信託の終了)、指図権、受益者指定・変更権、追加信託、信託の併合・分割、受託者の辞任に対する同意権、裁判所に対する受託者の選・解任請求権などが「信託の変更をする権限」に当たるか、という点だと思われる。

 私は、相続税法施行令1条の7にある通り、ほとんどの信託の変更は軽微な変更をする権限に当たり、相続税法9条の2第5項における信託の変更をする権限には該当しないと考えます。

参考 

相続税法(贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利)

第九条の二 5 第一項の「特定委託者」とは、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除く。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除く。)をいう。

相続税法施行令(信託の変更をする権限)

第一条の七 法第九条の二第五項に規定する政令で定めるものは、信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り信託の変更をすることができる権限とする。

2 法第九条の二第五項に規定する信託の変更をする権限には、他の者との合意により信託の変更をすることができる権限を含むものとする。

信託法149条所定の権限が「信託の変更をする権限」に当たり得ることに変わりなく、また、「信託の目的」の意義を広くとらえる上記3の立場を採っても、「信託の目的に反しないことが明らかな場合」に限り信託の変更を出来るかどうかは、当該信託の信託目的及び受託者の変更権限の内実に関わる信託行為の定めの解釈を通じた個別判断になるはずであり、結局、本稿の整理と検討の段階では、冒頭の例のように、帰属権利者として指定されている受託者については、一般論としては、特定委託者に当たる可能性は否定しきれないと思われる。

1「信託法149条所定の権限が「信託の変更をする権限」に当たり得ることに変わりなく」について、当たり得ることはそうなのですが、その可能性は低いと思います。

2「「信託の目的」の意義を広くとらえる上記3の立場を採っても、「信託の目的に反しないことが明らかな場合」に限り信託の変更を出来るかどうかは、当該信託の信託目的及び受託者の変更権限の内実に関わる信託行為の定めの解釈を通じた個別判断になるはずであり、」については同意です。

3「結局、本稿の整理と検討の段階では、冒頭の例のように、帰属権利者として指定されている受託者については、一般論としては、特定委託者に当たる可能性は否定しきれないと思われる。」について、否定しきれないことはそうなのですが、その可能性は低いと思います。1でも可能性は低いと記載しましたが、相続税法施行令1条の7にある「信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り信託の変更する権限」は、公証人を含む専門家が設定する信託行為の効力が発生する段階では、ほとんど全ての権限と言っていいと思います。信託の目的に反する権限を設定することは、専門家の職業生命を失う可能性があるからです。

その結果、ほとんど全ての権限が相続税法9条の2第5項が定める「軽微な変更をする権限」に該当し、特定委託者ではなくなります。


[1] Vol.15 2021.4、P13~

照会事例から見る信託の登記実務(9)

登記情報[1]の横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(9)」から考えてみたいと思います。

後続の登記の申請に先立ち必要とされる登記事項として挙げられるものには、例えば、受益者の指図、承諾による処分、受託者による信託費用のための処分、処分による利益相反の許容、受託者による担保権の設定、信託終了時の信託不動産の帰属などが考えられます。

 「信託費用」というのが、何を指しているのか分かりませんでした。また、「信託費用のための処分」と信託目録に記録してしまうと、信託費用がこのままでは足りないということを登記原因証明情報か、その他の添付書類で証明ないし疎明しないといけなくなるのではないかと思います。そのため、記録するなら受託者以外の受益者などの同意、くらいに留めておきたいと私は思います。そのように記録しておけば、同意書が添付書類になり具体的です。

 「受託者による担保権の設定」について記録しておけば、登記申請について記録することは省略できる、というのが法務局の見解と考えて良いのかなと思いました。私にとっては大きなことで、担保設定したから登記申請が出来るとは思っていなかったので(参考として民法177条)、この記事を根拠に今まで記録していた「登記申請」は削除することを検討したいと思います。

信託の変更(信託法149条)も同様です。変更方法が149条1項ないし3項で法定されているので、これらを登記する必要はないと考えますが、4項に「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる」とあることから、特約を登記しない限り、当該特約に基づく信託の変更の登記は認められないことになります。

 文章自体には同意です。ただ、信託の終了に関する判決(東京地判平成30年10月23日)から、信託の変更についても同様の解釈がなされるのではないかと個人的に考えます。信託法149条4項に定める変更事由が記録されていて、その他信託法に定める事由があるとき、という記録がない場合は、信託法149条1項ないし3項の規定は、適用されなくなるのではないかと考えることが出来ます。登記官の審査はより複雑になるので、他に良い方法はないのかなと思います。

 受益権の譲渡について、箇条書き程度で記載されることが望ましい、とありますが、曖昧なので譲渡の条件としても良いのかなと感じます。また信託法88条だけでなく、信託法93条が主となる項目だと感じます。

抵当権変更の登記につき、債務者の表示に受託者である旨の記載をすることができるかについてですが、―中略―登記する必要性はないと思われます。

 私も同意です。不動産の全部事項証明書中、甲区の信託された日付と乙区の抵当権変更の日付を照らし合わせると、受託者として債務者になったのか、個人として債務者になったのかが分かると考えます。

(2)信託の変更の登記の省略

登記原因証明情報上、1.信託受託者の追加、2.3者(新受託者、旧受託者、受益者)による信託条項の変更契約、3.旧受託者の辞任の順に法律事実が発生しているにもかかわらず、3と1を1つにまとめ、旧受託者から新受託者への所有権移転がされたかのような登記をすることは、登記原因証明情報との不一致を生じさせることになってしまいます。このような登記の申請は認められず、まず、1受託者を1人から2人にする所有権一部移転登記、2信託の変更の登記、3旧受託者の辞任による合有登記名義人変更の登記の申請をする必要があります。

 「3者(新受託者、旧受託者、受益者)による信託条項の変更契約」とありますが、法律効果は2者(旧受託者と受益者)間の契約として現れるのではないかと思います。新受託者は未だ受託者になっていません。

「1受託者を1人から2人にする所有権一部移転登記、2信託の変更の登記、3旧受託者の辞任による合有登記名義人変更の登記の申請をする必要があります。」について、1信託の変更の登記(受託者の任務終了事由の変更)2所有権移転登記(受託者辞任による変更)で済むのではないかと思います。


[1] 713号 2021.4(一社)金融財政事情研究会P35~