内閣官房法案誤り等再発防止プロジェクトチーム取りまとめ 

令和3年6月29日内閣官房法案誤り等再発防止プロジェクトチーム取りまとめ 

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/houan_ayamaribousi_pt/index.html

・改め文とは

参議院法制局「改め文」―法令の一部改正方式―

https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column050.htm

例「第○条中「△△△」を「×××」に改める。」

・新旧対照表の方式とは

平成28年3月25日 事務連絡 内閣官房行政改革推進本部事務局

「新旧対照表の方式による府省令等の改正について」

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f9/%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B43%E6%9C%8825%E6%97%A5%E4%BB%98%E3%81%91%E3%80%8C%E6%96%B0%E6%97%A7%E5%AF%BE%E7%85%A7%E8%A1%A8%E3%81%AE%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%BA%9C%E7%9C%81%E4%BB%A4%E7%AD%89%E3%81%AE%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8D.pdf

新旧対照表ドットコム(株)マカビ―カタガイ

新旧対照表の書き方(Excel編)

http://shinkyutaishohyo.com/

 Excelから新規作成を開きAとBの列を選択。右クリックで『列の幅』を選択し数値を入力。1行目を選択して右クリックで『行の高さ』を選択し数値を入力。同様に2行目以降も高さを調整。対象範囲のセルを選択して右クリックから『セルの書式設定』を選択し罫線をいれる。セルA1、A2を選択して結合。中央揃えをクリック。左側に改定前のテキストを、右側に改定後のテキスト。修正ルール(下線、削除、(略)、(新設)など。)に従い修正内容を記入。テキストサイズ、揃えを調整し、『セルの書式設定』(右クリック)からインデントで体裁。

参照条文とは

参議院法制局「法律の構成」

https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column044.htm

要綱とは

参議院法制局「職務」

https://houseikyoku.sangiin.go.jp/introduction/bureau/job.htm

誤りの内容

・ 案文

条文番号・文言等の誤りや、条文の欠落・重複が 12件

インデントの様式面での不備が 2 件

・ 新旧対照表

法改正に関わる箇所(新旧で改正内容を示している箇所)のうち、文言等の誤りが 6 件

上記以外の箇所(改正されていない箇所)のうち、電子データからの転記や手入力によるミス等による単純な誤記が 21 件

インデント、見出しや注記の欠落等の様式面での不備が 12 件

・ 参照条文について

電子データからの転記や手入力によるミス等による単純な誤記が 90 件

インデント、見出しやルビの欠落等の様式面での不備が 21 件

・ 要綱について、送り仮名や数字記載の誤記を含め、誤字・脱字等による誤りが 17 件

総務省において開発した法制執務業務支援システム(e-LAWS)

・法令データについては、データ更新が遅れがちであるほか、法令を所管する府省庁の認証が行われないまま掲載されている法令も多いことから、現時点では、法令案作成の基礎資料として用いることが難しく、法制局審査で使用が認められていない。e-LAWS を活用して作成される新旧対照表は、一部の文字(環境依存文字、数字、英字等)や表・別表が適切に表示できず、様式面で問題があるほか、法制執務で広く利用されている一太郎への出力機能がないこと。

 新旧対照表からの案文作成等の機能が限定的であるほか、法令作成過程において多数生ずる改め文の修正を反映できないなど、操作性や編集機能に限界があること。

 e-LAWS と、内閣法制局の法令審査支援システムや国立印刷局の編集・印刷システム等が連携していないこと。

日本の法令

・例えば、条番号の前に見出しがある、第1項の項番号が付されない、号番号等が付されずに並列で規定される例があるなど、視覚的には認識できるが、システムでは判読しづらい構造となっている。AI技術を活用し、表記揺れやインデントの乱れ、条項ズレなどを自動的に検出・補正するようなサービスが提供されている。

具体的方策

案文(改め文)について

・平成16年12月 内閣法制局

法令案における誤りの防止について(手引き)(増補版)

https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2020/04/%E6%B3%95%E4%BB%A4%E6%A1%88%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%AA%A4%E3%82%8A%E3%81%AE%E9%98%B2%E6%AD%A2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%EF%BC%89%EF%BC%88%E5%A2%97%E8%A3%9C%E7%89%88%EF%BC%89%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%91%EF%BC%96%E5%B9%B4%EF%BC%91%EF%BC%92%E6%9C%88%E3%81%AE%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%81%AE%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%89.pdf

新旧対照表について

・過去の法案資料ではなく、基本的には、法務省が編纂している法規集や官報を用いて、正確に、「現行」部分を作成すること。

・法規集の法令データは、電子的にも提供されており、法案提出省庁において、これを活用し、手入力を極力減らすことが、誤り防止につながると考えられるが、電子データの特徴(改正履歴の残存、レイアウトの違い等)に留意して作業することが重要。

・法制執務業務支援システム(e-LAWS)の法令データが法務省により整備された後には、e-LAWS を新旧対照表の「現行」部分の作成に活用する。

・ページを跨ぐ修正を行う場合や、最終段階での内閣法制局による職権修正が行われる場合には、案文とともに、誤りが生じやすいことに十分留意して、作業・確認する。

・誤り防止のため、法令名・法律番号・条項番号などの正確な記載は当然であるが、法案提出省庁の作成方法等も踏まえ、形式面を含め、最低限確認すべき項目や誤りやすいポイントを整理する必要。

参照条文について

・電子データからの転記や手入力によるミス等による誤記を防ぐため、基本的には、正確な電子データの活用を始めとして、新旧対照表と同様の対応が必要。

要綱

・案文や新旧対照表の内容が決まってきた段階で、法案を取りまとめている担当部局において、文言や条文番号等に誤記がないかに加え、改正内容や案文等に整合的であるかなど、横断的に確認。要綱は法案を作るために最初に出来るものと、成立した後にまとめるために作られるものがある。

読み合わせ

・法案担当経験者の参加、確認すべき資料の的確な分担、余裕のある日程管理をしながら何度も実施。職員による読み合わせ等に加え、音声の自動読み上げ、文書ソフトの校閲機能、民間事業者による校正サービス等を活用。法案誤り等再発防止プロジェクトチームが、府省庁横断的に確認すべきと考えられる事項をとりまとめ、2021年夏を目途に作成。

法制執務業務支援システム(e-LAWS)

・データ更新の業務フローを見直し、法令編纂を所管する法務省が、各府省庁や法令の専門業者の協力を得て、効率的に法令データを整備することとし、法律は、公布後速やかに(原則として、公布と同日を目指し、国会修正等があった場合も、できる限り速やかに)e-LAWS に掲載する。また、この法令データから、参照条文を自動的に作成する機能を整備する。e-LAWS について、出力時の体裁不備の解消、システムの操作性の向上や案文及び新旧対照表等の自動作成機能をはじめとする編集機能の改善。

  こうした法令データの整備等については、IT室、総務省、法務省が連携し、各府省庁の協力を得て、次期通常国会における法案提出に間に合うよう取り組む。

その他

・法案提出に先立ち、官房部局や第三者によるチェックを含め、複層的なチェック。

法令審査支援システムの活用

(操作マニュアル)

https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2021/01/%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%81%AE%E6%B3%95%E4%BB%A4%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%93%8D%E4%BD%9C%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%97%E5%B9%B4%EF%BC%98%E6%9C%88%E3%81%AE%E9%96%8B%E7%A4%BA%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%89.pdf

(配字・禁則処理)

・ワープロソフトでの1ページあたりの文字数と行数は、1行48字、1ページ13行詰めの設定とする。また、ワープロソフトで設定可能な禁則処理(追い込み)を行い、句読点のぶら下げは行わない設定とする。

相続人イギリス籍の日本の不動産の相続とイギリスにある銀行預金

20210703渉外司法書士協会令和3年度・東京定例会中級編メモ

被相続人イギリス籍の日本の不動産の相続とイギリスにある銀行預金

不動産の相続

・相続関係図

・宣誓供述書(イギリスの公証人)

銀行預金

上の二つに加えて

・日本民法意見書

被相続人フランス籍の日本にある不動産の相続

・非訟事案判決の通知(夫婦財産制の変更書を認証)

・フランス公証人宛照会書

・フランス公証人の回答、証明書(翻訳に規制)

・遺産相続に関する宣誓供述書

被相続人日本籍のロシアに所在する遺産相続

・宣誓供述書

相続の準拠法

ロシアの相続法

弟による宣誓供述書の日本での認証

地方の公証人の認証についての宣誓供述書

ロシアはハーグ条約加盟国

被相続人が韓国籍で、朝鮮民事法令を適用する相続

・遺産分割協議書

・上申書(準拠法は日本)法の適用に関する通則36条、朝鮮民主主義人民共和国対外民事関係法45条1項但書き

・外国人登録原票のコピー

法の適用に関する通則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000

(本国法)

第三十八条 当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。

2 当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。

3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

朝鮮民主主義人民共和国の対外民事関係法に関する若干の考察

木棚照一

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/96-5/kitana.htm

山北英仁『渉外不動産登記の法律と実務』日本加除出版、2014

P515~イギリス国籍の相続

『家庭裁判月報』29巻6(1977.6)千種秀夫の「イギリスにおける相続法の改正について」P157~P186

「・相続を証する書面

イギリスには、公証人がほとんどおらず、通常はSolicitorが認証業務をしている。

P206~海外の認証―イギリスのソリシター(Solicitor)の認証について

Legal Services Act 2007 Chapter29」

https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2007/29/contents

「 イ ソリシター(Solicitor)には、結局のところ認証権限があるのか

 1801年の公証人法(Public Notaries Act 1801(c.79))は、1990年の裁判所及び法的サービス法によって、ほとんどの条項が廃止されており、同法は機能していない状態である。そこで、ソリシター団体であるローソサエティを含めたすべての承認規律団体が指定法律業務としての宣誓執行業務ができることが法的サービス法(2007年)で確認されたことにより、ソリシターはもちろんのこと指定法律資格者団体の全ては認証業務ができることになることがわかった。 」

Births, deaths, marriages and care. 駐日英国大使館

https://www.gov.uk/browse/births-deaths-marriages

最近の民事信託・家族信託に関するあれこれ

最近の民事信託・家族信託に関する記事について、考えてみたいと思います。

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■■ 一人暮らしの高齢者が増えている

これはみなさんも知っていると思います。子供がいる夫婦でも、子供は独立して親元を離れる。夫婦でどちらかがなくなれば、一人暮らしです。令和2年の高齢者白書(内閣府)によると一人暮らしの高齢者1980年:男性約19万人、女性約69万人2015年:男性約192万人、女性約400万人 お!すごい増加ですね。一人暮らしなだけなので、身寄りがない訳ではないですが、この中は身寄りがない人も含まれています。私の事務所で任意後見の受任者をしている、93歳の女性(今もすごく元気!)もご主人は亡くなられ、お子さんが一人いるのですが、知的障がいがあります。つまり、彼女も終末期は誰もサポートしてくれる人が、いません。あ、もちろん、私の方で、しっかりサポートしますので、今は大丈夫です!身寄りなし問題は3つあるとのこと。

1医療同意

2. 金銭担保

3. 死後事務

1.医療同意

本人が判断力がないと、医師は困ると思います。身元保証を求める理由ですね。でも、20年も会っていない甥の同意って意味があるのか?だったら、医療や介護チームで最適解を見つけるACP(アドバンス・ケア・プランニング)が重要になってきます。我々専門家も、金銭負担ができるかどうかの判断でACPに加わることは意味があると思います。つまり、連携が必要!

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 以前まで、家族信託専門コンサルタントの肩書でしたが、肩書を外して地域連携に方向転換をしたようです。

ACPとは何でしょうか。人生会議のことです。日本医師会

https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/006612.html

ACP(Advance Care Planning)とは、将来の変化に備え、将来の医療及びケアについて、 本人を主体に、そのご家族や近しい人、医療・ ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、本人による意思決定を支援するプロセスのことです。

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2. 金銭担保

施設や医療費を本人に請求しようにも、本人は認知症。だから、身元保証を求めますね。これこそ、成年後見がパワーを発揮する場面。身寄りない人とつながる地域包括や行政などとつながることにより、後見にもスムーズに移行できるのではと考えられます。

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 地域包括は地域包括支援センター(介護保険法 第115条の45、同法第115条の46)のことです。行政などの「など」には、日常生活自立支援事業(社会福祉法第2条第3項第12号、同法第81条)の実施主体である社会福祉協議会も入っているのだと思います。

厚生労働省「地域包括支援センターの手引きについて」

https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/03/tp0313-1.html

社会福祉法人全国社会福祉協議会「日常生活自立支援事業」

https://www.shakyo.or.jp/news/kako/materials/100517_01.html

福祉サービスを利用したいけれど、手続きの仕方がわからない。銀行に行ってお金をおろしたいけれど、自信がなくて誰かに相談したい。商品勧誘の人が来たとき、どう対応していいかわからない。毎日の暮らしのなかにはいろいろな不安や疑問、判断に迷ってしまうことがたくさんあります。日常生活自立支援事業は、このような場合に、福祉サービスの利用手続きや、金銭管理のお手伝いをして、あなたが安心して暮らせるようにサポートします。

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3. 死後事務

ご遺体の引き取りですよね。これも、身元保証を求める大きな理由。

でも、後見人は、火葬と埋葬が法的にできるようになりましたし、死後事務委任を受けていれば、葬儀や、お墓も事前に決めることもできますよね。このように、身寄りなし問題って、我々専門家が活躍できるシーンが非常に多い。ですから、医療や介護のチームとつながることが大事なんですね。

■■ 身寄りなし(お一人様)って、不幸なの?もちろん、経済的に困窮していると大変だと思います。でも、案外行政の支援が厚いから、なんとかなる部分もあります。逆に生活に心配がない人はどうでしょう?これが案外、生活の満足度は高いそう。ちなみに、満足度最低は、夫婦二人暮らしのようです。

■■ 「認知症を怖がる社会から」から、「安心して認知症になれる社会」へ

そこで重要なのは後見制度。今は専門職による後見人が上位を占めていますが、財産管理はしてくれるが、身上監護はしてくれないと述べています。う〜ん。反省。

■■ 地域連携は求められている

その方が言うには、「法律側がそのような地域連携の情報発信をしたことは今までほとんどなかった。待っているのではなく、自分から発信することを大変うれしく思います」とのこと。やはり待っていてはダメですね。みなさんの地域でも、おそらく地域連携は求められているはず。暖かくなってきたので、外に出て、今まで会ったことがない人と連携の話しをしてきてはいかがでしょうか!

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「経済的に困窮していると大変だと思います。でも、案外行政の支援が厚いから、なんとかなる部分もあります。」について、そうなのでしょうか。行政の支援とは生活保護などを指しているのか、なんとかなる、がどのような範囲なのか分からないので、何ともいえません。

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1-1.親が認知症になってしまうと・・・

医療技術などの進歩により平均寿命がのび日本自体が長寿化としています。

健康寿命と本来の寿命との差が10年。今後も伸び続ける予測が立ており、「独居老人、老老介護」という言葉も出てくるほど。その反面、認知症が問題となっています。

認知症になってしまうと、介護等の問題だけではなく、契約などをする際法律上必要とされる判断能力がない状態になります。結果、様々な行為・契約に制限がかかり、親の財産が動かせなくなるのです。

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認知症になってしまうと、当然に法律上必要とされる判断能力がない状態になるわけではありません。親の財産を動かす必要があるのか、個別具体的な検討が必要だと思います。

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例えば、・親が入所する施設のための費用を親の預貯金から引出・振込ができない。・介護施設に入所後の親が住んでいる家を売ることができない。

・親の代わりに賃貸物件の管理や修繕、建替えができない。などなど。

相続対策についても当然検討する必要がありますが、それと同時に生前の財産管理も併せて行わなければならない状況となっています。

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キャッシュカードがあれば振込みは出来るかと思います。住んでいる家や賃貸物件の管理や修繕・建替えは法定の成年後見人でも必要があれば可能だと考えられます。

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このような認知症や認知症になった後のことを元気なうちから親にするのは気が引ける…という方は非常に多いでしょう。市場調査でも、7割の人は認知症に関することを親と会話していないのが現状です。(「認知症」に関する調査結果」 2018年 SOMPOホールディングス株式会社 調査)しかし、認知症になってしまったら、介護費用に充てるために自宅を貸したり、親の預貯金を引き出したりができないのです。そのような状態になってしまったら、あなたもご両親も困ってしまいます。もし、このことについて少しでも不安や心配があるのであれば、是非この後の内容も読んでみてください。

1-2.「認知症」を契機としてとるべき対策

認知症後の財産管理対策の必要性については、前のタイトルでお伝えしました。その他の対策はどうなのでしょうか?親の財産管理に関する話をするタイミングは、これまで「相続」を契機としていました。多くの人が、・財産の分け方(遺産分割対策)・相続税をいかに下げるか(相続税対策)に関する話し合いを本人が亡くなるか少し前にするイメージではないでしょうか?しかし、もしそうなると、本人の意思を全く無視した話し合いになる可能性があります。「親の資産についてどう分けるか」について、子供同士が親なしで話し合おうとすることが争続に発展する原因の一つです。親の資産については、親の決定権が絶対なのですから。

もし、親を入れて円満に相続するのであれば、事前対策をしておく必要がありますが、遺言作成や生前贈与をするにしても本人の意思判断能力は必要です。また、現代では、「代々受け継いだ土地をそのまま残したい」「兄弟仲良く半分ずつ分けたい」「この人には財産を渡したくない」といったように要望が多様化していますね。そんな中で「これをやっておけば大丈夫」といったすべての人に適合する対策はありません。

1)まずは、具体的に、ご両親の認知症によって発生する将来考えられるリスクを顕在化すること。

2)そして、財産状況や本人や家族の希望を見てそれに合うような対策をとるか検討すること。この2つの行動をしていく必要があります。これを避けて、何もしなかった場合、例えば、親の財産が凍結し、不動産売却や賃貸契約、預貯金の引出しができなると、介護や通院費用等を捻出がむずかしくなる可能性もあります。そのために、「財産管理対策」に加えて、「遺産分割対策」「相続税対策」についても認知症をきっかけに話し合うことが重要なのです。

【本日のまとめ】

◎認知症になってしまうと、判断能力がない状態と 判断されてしまい、介護費用に充てるために自宅を貸す・売る等の契約をしたり、親の預貯金を引 き出したりできなくなる。

◎相続対策も意思能力が必要なので、「認知症」を 契機に「財産管理対策」「遺産分割対策」「相続税対策」を家族で話し合う機会が必要。

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 このような一連の記事も、人生会議で話し合う内容なのかもしれません。私は未だ定義されているような人生会議に参加したことはありませんが、どのような関わり方が出来るのか、考えてみたいと思います。

 ただ、これらの記事、特に成年後見や地域連携を前面に出す記載は、成年後見の審判開始の申立て書作成や成年後見人の仕事について支援するなど、直接成年後見人になる、ということは考えていないと思います。民事信託・家族信託など報酬になる仕事が来ることを考えてのものだと思います。

「信託契約の発効時期」

家族信託実務ガイド[1]の記事から考えてみます。

一般社団法人家族信託普及協会代表理事 司法書士 宮田浩「信託契約の発効時期」

信託契約の開始時期に関する例

1委託者が認知症になったとき

2委託者が主治医から認知症と診断されたとき

3委託者が判断能力を喪失したとき

4委託者が受託者に対し信託契約を発効すべき旨の意思表示をしたとき

5委託者につき成年後見開始または保佐開始の審判が下りたとき

6委託者につき要介護認定4以上となったとき

 1について、「認知症の定義が曖昧」という指摘があります。そうなのでしょうか。下のように、厚生労働者ほか様々な機関が認知症について定義しています。定義に共通するのが、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態、という状態を表していることです。これは1つの明確な定義といって良いのではないかと思います。また曖昧であるのが認知症といっても良いのではないかと考えます。

 反対に法律行為の発効時期に関して、契約書に署名することは誰が観ても分かり、署名が残るので発効時期は信託契約書に署名を行ったとき、という定義は、法令関係者が判断するには分かりやすいと思います。これは1つの行為である署名と状態である認知症の違いなので、指摘するほどのことでもないと感じます。例えば、毎日自分の名前を書くことを日課としている人でも、信号の判断が出来ない方もいるかと思います。契約書を読み、理解し、署名することは出来ても、日常生活に支障を来たしている状態にある、といえると思います。このような方はどうするのでしょうか。

・国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 認知症センター

「認知症」とはどんな状態ですか?

https://www.ncnp.go.jp/hospital/guide/sd/dementia.html

・厚生労働省

「認知症」とは

https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html

 2について、「「主治医」というのは誰になるのかという疑問が生じます」、に関しては、通常かかりつけ医、またはかかりつけ医からの紹介を受けた医師になるのではないでしょうか。また信託行為以前に、その辺りの準備は行うことが可能な場合が多いのではないでしょうか。

 「委託者側の意向を無視して、診断書の発効日を恣意的に操作することも可能となり得るという点においても問題が多い」について、診断書の発効日を恣意的に操作するのは、誰なのでしょうか。受託者でしょうか。推定相続人その他の利害関係者でしょうか。どちらにしても、医師に対して診断書の発効日を恣意的に操作するという事が可能となり得るのか、私は経験がないので疑問に感じます。

 3について、同意です。4について、「結局成年後見制度下で本人の全財産の管理を実行する以上、家族信託をスタートさせるメリットが半減してしまいます。」について、そうなのでしょうか。信託行為と併せて任意後見契約を締結し、代理権目録に、信託行為との調整事項を記載しておけば良いのではないでしょうか。また成年後見人を就けない場合、家族信託だけで進めていけるのでしょうか。

 5について、「成年後見制度の代用」とありますが、併用ではなく代用という目的で利用する場合、著者のような考え方になるかもしれません。

 6について、「(要介護度と本人の判断能力の有無は無関係ですので、要介護度が高いからといって判断能力がないとも言い切れませんが)」とあります。

厚生労働省 「要介護認定はどのように行われるか」

https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo2.html

 審査基準の一つに、認知機能や思考・感情等の障害により、十分な説明を行ってもなお、予防給付の利用に係る適切な理解が困難である状態、があります。要介護度が高いからといって判断能力がないとも言い切れないことには、私は同意しますが、要介護度と本人の判断能力の有無は無関係ではないと思います。

 「委託者本人名義の預貯金口座から受託者が管理する信託金銭の管理口座(信託口口座または受託者個人名義の信託専用口座)への金銭の移動が実質的に不可能になるという事実」、について、そうなのでしょうか。著者が要介護度が高いからといって判断能力がないとも言い切れないと記載しているように、身体に過重な介護負担が必要な場合も要介護度4や5と判定される場合があります。そのような場合は、委託者が介護サービスを利用して金融機関窓口まで行き、資金移動を行うことが可能です。

  その後の「原則として信託契約日をもって効力発生日とすべき」、以下には基本的に賛成です。「受益者たる親のお金」、「受託者を不動産管理会社兼ATMだと思って」、「子側に預けておく」を除きます。

・家族信託実務ガイドの不思議

 当初この雑誌は、家族信託普及協会と司法書士法人ソレイユ、民事信託活用支援機構の関係者の記事が中心でした。現在22号ですが、民事信託推進センターの専門家が頻繁に登場するようになっています。今まででいえば、遠藤英嗣弁護士。信託の学校主宰の谷口毅司法書士。本号でいえば金森健一弁護士、渋谷陽一郎先生などです。民事信託推進センターの講座や信託フォーラム、市民と法、などでは家族信託普及協会と司法書士法人ソレイユ、民事信託活用支援機構の関係者のやり方を、名前を出さずに批判していましたが、家族信託実務ガイドではお互いを批判したりはないようです。記事になれば良い、という事なのでしょうか。同じ場所で記事を書くのであれば、名前も出ているので議論を行うのが通常だと感じます。


[1] 2021.8第22号日本法令P74~

渋谷陽一郎「高齢者の幸福な生活と福祉の実現」という信託の目的を「不動産投資」に変更する登記は可能なのか。

家族信託実務ガイド[1]の記事からです。

一体、登記官は、登記された「信託の目的」でもって、何を審査(判断)するのでしょうか。

 法務省から公式な見解は出ていませんが、私は、法人登記の会社の目的の審査基準に準ずると考えています。「会社法施行後の会社の目的における具体性の審査の在り方」に関する意見募集の実施結果について(報告)

http://www.moj.go.jp/MINJI/public_minji65_result_minji65.html

 「1「幸福の実現」の前提となる「生活費を給付」する」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的には、不動産と直接の関係がない記載のため、記載は不要と考えます。記載しても信託目録には記録されると考えます。

 「2生活費給付の原資を得るため「アパート経営」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得まます。また、アパートとしての不動産を信託して、受託者が経営(管理・運用・処分)するため、不動産登記申請における信託の目的にもなり得ると考えます。

 「3アパート経営を学ぶため「アパート経営者養成講座」に入会する」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託財産に属する財産となる不動産と関係のない行為だからです。記載しても信託目録には記録されると考えます。

 「4アパート経営を成功させるためにプロに「第三者委託」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託目録に記録するとすれば、信託の目的ではなく、信託財産の管理方法(不動産登記法97条1項9号)だと考えます。

 「5アパート経営を持続させるため「定期的な修繕」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託財産に属する財産となる不動産の権利と関係のない行為だからです。記載しても信託目録には記録されると考えます。

 「6継続的な修繕実施のために賃料収入から「毎月の積立て」を行う」は、信託行為における信託の目的にはなり得ますが、不動産登記申請における信託の目的にはなり得ないと考えます。信託財産に属する財産となる不動産の権利と関係がなく、信託財産に属する財産となる金銭の管理方法だからです。記載しても信託目録には記録されると考えます。

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当該信託が、福祉型信託であることを示唆し、福祉型信託の水準の受託者責任を要請する具体的な機能と規律を有するというものです。

 私は信託の目的に現在、「受益者の幸福な生活と福祉の実現」と記載することはありません。もし引用記事のように福祉型信託の水準の受託者責任、ということを明確にする場合について考えてみます。信託の目的には、任意後見制度を利用した場合に準ずる生活、という用語を入れると思います。

例えば、生活費、医療費、介護費などをどれだけ支給するのか、あるいは、介護施設を利用するのか否か、受益権の配当額の決定その他、受益者の善管注意義務(受益債権に係る債務の履行)に直接的に関係します。

 「受益者の善管注意義務(受益債権に係る債務の履行)」というものが、私には分かりませんでした。

なお、そもそも、委託者兼受益者から、信託を終了させる権限を奪っているような場合、そのような信託は、委託者兼受益者の利益のための信託なのか、という疑問も生じます。

 それが意思凍結機能というものだと思います。受託者との関係性から、一様に権限を奪うという形にはならないのかなと考えます。ハードルは高いですが、信託法165条における信託の終了も用意されています。私は使われないことを願います。

信託の目的を「孫の教育資金の確保」から「孫の生活保障」に変更することは、孫への金銭的な支援を行うという信託事務の形式それ自体に大きな差異はなく、なんとなく信託の同一性が認められそうです。

 おそらく、信託の変更自体は可能だと思いますが、私は同一性がないと思います。受益者は同じでも信託財産の用途が違うからです。

 参考として、下の公益信託の審査基準を挙げます。公益信託は不特定多数のためのものなので、逆を考えれば民事信託・家族信託への当てはめが可能な部分があると思います。また同じ信託なので本質は同じだと思います。

平成6年9月13日公益法人等指導監督連絡会議決定

公益信託の引受け許可審査基準等について

https://www.soumu.go.jp/main_content/000694250.pdf

 P15に、イ 授益行為の内容は、原則として、助成金、奨学金、奨励金、寄附金等の支給若しくは物品の配付のような資金又は物品の給付であること。

とあります。これを生活保障とすることが出来るかと考えれば、出来ないと思います。同じ信託なので本質は同じ、の部分です。従って、高齢者の幸福な生活と福祉の実現から、「中小企業の事業承継」、「京町屋の保存」、「不動産複合施設の開発」などは全て孫の場合と同じ結論となります。

極端な「信託の目的」変更に係る信託変更登記を申請した場合、果たして、登記官はどのように判断するのでしょうか。登記官は、そのまま受理するのか、却下するのか、補正を命じるのでしょうか。

 登記官は、却下事由がない限り受理する、という事務を執ると考えます。


[1] 2021.8第22号P62~日本法令

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