信託の共有持分に関する登記ほか

家族信託実務ガイド[1]を基に考えてみたいと思います。

渋谷陽一郎「共有持分の登記」

要するに、広義の意味での登記先例とは、登記官が登記処分の判断を行う際に、参考とすることができる公開の資料あるいは規律である、ということができると思います。前述の通り、公開されている資料であることが重要です。法務省内の登記に関する行政通達は、情報公開の重要性が叫ばれる以前から、登記専門誌群などを通じて、随時、自覚的に公表されてきました。

 今後、流れとしては法務省のwebサイトに行政通達が全て掲載されるということも考えられるのかなと感じました。現在は、専門誌のみですが、行政通達という性質上、オープンになるような気がします。専門誌に載るのは、通達に関する解説や論考が主になっていくのかもしれないと思いました。

登記官による登記処分の必要性は、全国津々浦々、日々大勢の国民の財産権にかかわるものとして、大量に発生しています。

 登記処分という言葉を初めて聞いたのですが、登記簿に登記事項を記録することを登記処分と記載しているのだと思います(不動産登記法9条)。

家族という言葉は、戦前の旧民法の親族法における中心的概念の一つであり、旧民法では家族とは何か、が定義されていました。

 法律用語でなくなったことは、夫婦別姓や事実婚などを認めるプラスの影響になっているのかなと感じます。良い悪いは措きます。すると、最初に家庭裁判所と名前を付けた人は、凄いなと個人的に思いました。

旧民法

第732条 戸主の親族にして其家に在る者及ひ其配偶者は之を家族とす

戸主の変更ありたる場合に於ては旧戸主及ひ其家族は新戸主の家族とす

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宮田浩志「信託内容の変更条項」からです。

信託契約書において、信託内容の変更条項が盛り込まれているケースは多いです。この場合、「受益者は、受託者との合意により、本件信託の内容を変更することができる。」という条項が一般的です。

 「「受益者は、受託者との合意により、本件信託の内容を変更することができる。」という条項が一般的です。」。そうなんでしょうか。知りませんでした。信託法149条を根拠としているように記載されていますが、委託者が抜けています。また契約条項の記載方法は、改善の余地がある様に思います。

信託内容の変更ができなくなるリスクと信託法149条2項2号の趣旨も踏まえ、例えば、受益者と受託者の合意による変更を原則としつつも、「受託者が本件信託の目的に反しないことおよび受益者の利益に適合することが明らかであると判断したときは、受託者は単独で本件信託の内容を変更することができる。」という条項を置くことも良策となり得るでしょう。

  私は考え方が逆ではないかなと思いました。信託法149条を原則として(条項としては、「その他信託法の定めによる、など。」。)、例外を信託法149条4項で追加したり削ったりして構成していくものだと考えます。「本件信託の目的に反しないことおよび受益者の利益に適合することが明らかであると判断したとき」には、客観的な基準が必要だと考えます。

受託者単独で変更できる条項のニーズ   信託の目的に反しないことおよび受益者の利益に適合することが明らかである場合の典型的なケースとしては、信託内融資をうける(受託者が信託財産の維持・形成のために、信託財産責任負担債務として金融機関等から借入れをする)場合が考えられます。

 文章の意味が分かりませんでした。どうして信託内融資を受けるケースが、信託の目的に反しないことおよび受益者の利益に適合することが明らかである場合と結びつくのでしょうか。題目の、受託者単独で変更できる条項のニーズも含めて読むということなんでしょうか。また、金融機関の求めに応じて信託の変更を公正証書化する場合に実務的には大きな意味がある、というようなことが記載されていますが、信託内融資を受けるケースは信託の目的に反しないことと、受益者の利益に適合することが明らかであると判断できるのが前提なのでしょうか。よく分かりませんでした。もし不動産の信託目録に記録している場合、登記原因証明情報にどのような記載をするのか気になります。

軽微な変更は受託者単独でできるような規定を置くこと、あるいは信託監督人を置くケースでは、受託者と信託監督人の合意で変更出来るようにしておくことも検討すべきといえます。ただし、受益者代理人を置く場合は、受益者代理人は受益者本人と同等の権利行使が可能なので、大原則である受託者と受益者の合意で変更できる旨があれば、リスクは回避できる、という結論になります。

 「あるいは、」、「ただし、」、「結論になります。」がどのように繋がっているのか、私だけかもしれませんが分かりませんでした。記事全体に関しては、「一般的です。」「実は、」「実務的には大きな意味を持っています。」、「後見人等に多数就任中」、「全国からの相談が後を絶たない。」、「先駆的な存在」、「日本屈指」などはどのように読めばいいのか分かりませんでした。

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成田一正「親亡き後信託の課税関係~障がいのある子の親なき後の支援のために利用する~」

・ここでは、自己信託において、受益者も委託者兼受託者で事例が紹介されており、可能なんだなと驚きでした。私は2回ほど公証人から駄目だと言われていたからです。次回から公証人に民事信託の打診をする場合は、本記事を参考情報として添付してみようと思います。

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斎藤竜「コロナ禍でオンライン集客を始めたい士業・専門家のWeb活用の基本」

自分が提供するサービスによって、どの客層(「今すぐ客」と「そのうち客」)が対象になるのかを考えておく必要があるのです。自分のサービスの利用者がどの状態の客層をターゲットとしているのかを理解していないと、無駄に広告費を投入する、ブログ、Twitter、Facebook、YouTubeなどのSNS対策へ費用と時間を奪われることになりますので、ご注意ください。

ここは、人によって変わるのではないかなと思います。自分自身が理解するために発信している場合もあるだろうし、費用をかけて広告として発信している場合もあると思います。

そして、連絡を取りたい相手についても、普段どんな投稿をしているのか、どんな人なのか(名前、写真、肩書)、プロフィールなど、SNSなどで事前に調査します。その上でそのアカウントに積極的に絡んでいきましょう。

特にいいです。

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語り手:プレデンシャル信託株式会社 代表取締役社長 川嶋悦子

聞き手:家族信託実務ガイド編集部

「生命保険信託の活用」

2020年末の累計で4,189件になります。

 2015年にスタートです。この件数が多いのか少ないのか、分からないのですが年々契約件数が増えているので、必要とされる方は確実にいるのだなと感じます。

当社では、プレデンシャル生命のライフプランナーによるコンサルティングから生命保険信託の契約締結まで、7~8営業日程度と迅速な対応ができています。―中略―この「申込内容設計シート」を埋めていただければ、Webで行う信託の申込みも簡単に行って頂けるようになっています。

 7~8営業日はかなり速いと感じます。遺留分を考えないことも、理由の1つになるのでしょうか。明確に保険金の給付方法が決まっている依頼者からすると、使いやすいんじゃないかなと思います。Webでの申込みが出来るのも魅力の1つだと感じます。

信託契約締結時にかかる費用は信託契約1件あたり5,500円です。―中略―また委託者がお亡くなりになった後にかかる費用は、受領保険金総額の2.2%(※)と毎年3月末に22,000円の管理報酬として、いずれも信託財産から収受させていただきます。※一括交付の場合は、信託契約1件あたり、一律110,000円となります。※家族年金は、金銭信託開始時点の年金原価を受領保険金額とします。

 費用の感じ方は人によって違うと思いますが、死亡保険金が3000万円以上の生命保険に契約締結が必要なのかなと感じます。

プルデンシャル信託株式会社 生命保険信託とは

https://www.pru-trust.co.jp/trust/cost/


[1] 2021年5月第21号日本法令

照会事例から見る信託の登記実務(11)

 登記情報[1]の記事、横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(11)」を基に考えてみたいと思います。

近時、信託目録不要論などの影響もあり

 私はこのような論考が最近影響力を持っているという記事を読んだことがないのですが、出典などを教えていただければ、少し考えてみたいと思います。

一方、9号に規定される「信託行為において定めた終了事由」については、信託契約当事者が定めた特約事項であり、これは、登記官を含む第三者との関係においては、登記がされない限り、一般にその存在を知り得ないものであり、後続の登記との関係において登記をする必要性が認められます。本来、不動産登記法97条1項10号が登記事項として想定してる信託の終了事由とは、この信託行為において定めた終了事由を指すものと考えます。

 9号とは、信託法163条1項9号のことです。他に信託法164条3項の規定も、不動産登記法97条1項10号が登記事項として想定してる信託の終了事由に含まれると考えられます。

登記されていない信託の終了事由に基づいて信託が終了する登記を認めることはできません。この場合には、信託の抹消の登記に先立ち、まず、「信託目録中の信託の終了事由」の更生する登記を申請する必要があります。

 信託の法定終了事由以外の場合で、信託行為によって任意法規の法定終了事由(信託法164条1項など)に変更がないときを想定しているのだと思います。その際、信託法163条9号による終了事由によって信託を終了する場合は、信託目録の更正登記を経て信託の抹消登記を行うべきであるというものです。

 私は、担保権の抹消登記などのように(昭和31年9月20日民甲2202局長通達、昭和32年6月28日民甲1249号回答、登記研究133号46頁など)、登記原因証明情報を提供すれば、更正登記は不要であると考えていましたが、登記実務は異なるようです。更正登記を経なければならない、としても理屈は通ると考えられます。

問題は、信託契約上、信託財産引継日が「信託終了日の翌日」と明定されており、このことが信託目録に登記されている場合において、現実にはこれと異なる日に信託財産の引継がされたときに、現実の信託財産の引継日を登記原因日として信託の登記を抹消して差し支えないかという点です。」

 私は、信託財産引継日が信託目録に記録されている場合、信託の抹消登記の登記原因及びその日付には関係がないと思います。信託法177条1項4号と登記原因が信託財産引継であることから、信託財産引継日に焦点があたっているのかもしれません。

 しかし通常、信託財産引継が登記原因となる信託の抹消の登記の法律行為は、清算受託者が受益者等から最終の計算を承認されることです(信託法184条)。よって、登記原因日付は受益者等が最終の計算を承認した日となります。

信託の本旨が信託行為をして受託者に制約を課すもの

 信託の本旨は、委託者から受託者に対して、財産の譲渡、担保権の設定その他の処分があり、受託者は一定の目的に従って他人の利益のために処分された財産を管理処分すること、だと思います(参考 別冊NBL編集部「信託法改正要綱試案と解説」商事法務 平成17年P21)。同じことを逆から言っているようにも思えますが、受託者に制約を課すのであれば、民法上の委任契約などでも、その目的は達成出来るのではないかと思います。

問5「信託法163条2号の規定にかかわらず、本信託契約は、受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が1年以上経過しても、終了しないものとする」旨の信託契約の条項は、登記することができますか(照会者E)

 司法書士、土地家屋調査士向けの雑誌である登記情報で記事になっているので、信じるしかありませんが、このような内容の照会を私達司法書士が行ったというのが少し気になります。

登記官としては、受託者がA信託不動産につき、受益権を固有財産で有する状態が1年以上経過していることが明らかになったことだけをもって信託法163条2号の規定により当該信託が終了していると判断することは出来ません。

根抵当権の元本の確定の登記申請(不動産登記法93条)に似ていると思いました。

通常、「相続」を原因とする所有権移転の登記であれば、登記原因証明情報として、相続人全員が作成した遺産分割協議書(印鑑証明書付き)を提供することになりますが、本問の場合には、「信託財産引継」を原因とする共同申請の形態をとるので、不動産登記法62条の規定は適用されず、同条を類推した厳格な情報を添付する必要はなく、例えば、報告的な登記原因証明情報の提供も考えられるところです。

 登記を申請する側と、審査する側の立場の違いのように思いました。申請する側としては、報告的な登記原因証明情報で登記が記録されると分かっていても、依頼者に対して必要な情報を求めると思います。法務局では不要だと言われている書類等を集めて下さい、と説明する際の言い方は少し考える必要があると思いました。


[1] 714号 2021年5月きんざいP33~

プライバシーポリシー

参考 個人情報保護委員会

https://www.ppc.go.jp/

 とある法人の担当者とやり取りをすることがあり、必要になって「プライバシーポリシーはありますか?」と訊き、「ないです。」と言われたので作って共通フォルダに入れたことを報告したけれど、返信がないので削除しました。なのでここに置いておきます。

法人名 データ保護の取組み


 法人名は、全国各地で活動する○○コミュニティ同士が繋がり、協力して助け合う組織となり、自らの足元である地域を良くしていくために、全国に遍在する共通の課題に取り組むことを目指しています。
 法人名は、そのために当法人の事業の関係者、各種イベント・会議への参加者など(以下、「参加者等」といいます。)のプライバシーを尊重し、様々なデータを適切に取り扱い参加者に提供していくことが重要であると考えています。そこで、法人名では、各データポリシーを明らかにし、遵守して各データの管理、運用に取り組んでまいります。なお、各種イベント・会議やWebページ、コンテンツにおいて、別途データの取扱いを定める場合があります。

  法人名【日付】作成


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・取材協力への登録、申込確認
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4 個人情報の目的外利用について
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5 個人情報に関する問い合わせ、開示、訂正、追加または削除の手続
 当法人は、個人情報の正確性を保つよう努力すると同時に、個人情報の安全管理のために安全対策を行い、個人情報への不正アクセス、個人情報の紛失、破壊、改竄及び漏洩を防止すると共に、改善を行います。
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(連絡先)
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第2次受益者の指定に関する定めの意味は何か

 信託フォーラム[1]の記事、渋谷陽一郎「第2次受益者の指定に関する定めの意味は何か」を基に考えてみます。

第2次受益者となるべき者の定めが、信託契約上、存在しているにもかかわらず、登記代理人が、2次受益者となるべき者の指定の定めを、信託目録に記録すべき情報として提供せず、信託登記の登記事項として記録しなかった場合はどうなるのだろうか。―中略―信託目録上、受益権の相続を禁止する旨の定めが存在しないのであれば、次のような場面があり得る。受益者の相続人が、受益権を相続財産と信じて(あるいは信託に基づく遺産承継の形に反して)、相続による受益者変更の登記申請を、受益者による登記申請権の代位行使(申請)によって、受託者に代わっておこなうような場面が想定できる。そのような場合、登記官は、正当な理由なしには、当該登記申請を却下することはできない。

・前提

1 登記申請時に提供された登記原因証明情報には、第2次受益者となるべき者の指定の定めはなく、受益者指定権などのその他の受益者に関する定めはない。

2 登記記録の信託目録には、第2次受益者となるべき者の指定の定めがない。

考えること

1 受益権の相続を禁止する旨の定めは有効か。

 受益債権が相続される、ということは私でも理解しやすいです。受益権が相続されるか、というのは信託法182条2項が根拠になっているのかなと思いますが、記事に明示されているわけではないので、私には分かりませんでした。

 受益権の相続を禁止することは可能か、と問われると、信託法88条1項ただし書きが制限付きを許容するのみで、禁止については言及していないことから、信託行為で受益権の相続を禁止することは出来ないのではないかなと考えます。別途、民法891条、892条、893条、908条などの行為が必要なのではないかと考えます。

2 受益者の相続人が、受益権を相続財産と信じて(あるいは信託に基づく遺産承継の形に反して)、受益者変更の登記申請を行う場合、信託目録の受益者変更の原因を相続とすることは可能か。

 私は、このような場合、信託目録における原因は「【前受益者の氏名】の死亡」であると考えていましたが、書籍によると「相続」という記載もあるようです。意味は同じだから、統一されてはいないということでしょうか。


[1] Vol.15日本加除出版2021年4月P138~

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