研修会「Web3、NFT、メタバース等を巡る動向と法的課題」

令和4年10月23日

日本司法書士会連合会

長島・大野・常松法律事務所 殿村桂司パートナー弁護士

デジタル庁 Web3.0研究会

https://www.digital.go.jp/councils/

自民党・政調、デジタル社会推進本部・NFT政策検討PT合同会議/プレゼン「WEB3.0とNFTについて」

Joichi Ito

経済産業省 新規事業・スタートアップ

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/index.html

経済産業省「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/

Web3

 分散、現段階において規模が小さいため手数料が高額の傾向、Google等はWeb2。Web2と呼ばれているものは、プラットフォーム事業者の判断で、どのような情報を受信するか、発信できるか、が強くなる傾向。事業だから。

総務省 

P2Pネットワークの在り方に関する作業部会

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/chousa/network_churitsu/wg2_070618_1.html

スマートコントラクト(取引における契約を自動で行う仕組み)の実装

代理の場合は?

三菱総合研究所

ブロックチェーン技術とQRコード※1を活用したデジタル乗車券をスマートフォンのアプリ上で発行し、自動改札機で利用する実証実験を、近鉄難波線「近鉄日本橋」駅と近鉄大阪線「近鉄八尾」駅において、参画各社の関係者を対象に行います。

本実験は、総務省※2が行う「地域経済の活性化に資するブロックチェーン技術による情報の安全かつ円滑な流通及び『スマートコントラクト※3』による省力化等の検証および社会実装に向けた調査研究」の一環として、ブロックチェーン技術がもつデータの信頼性や耐改ざん性といった特徴を活かし、セキュリティ面の強化のほか、お客さまの利便性向上や駅業務の効率化など、同技術の新たな利用可能性を検証するものです。

https://www.mri.co.jp/news/press/20200129.html

DApps・・・ブロックチェーンとスマートコントラクトを利用したアプリケーション。

axie-infinity

https://dappradar.com/ethereum/games/axie-infinity

トークン・・・ブロックチェーン上で発行される電子証票の総称

電子証票?

ERC20・・・トークンの規格

https://docs.ethhub.io/built-on-ethereum/erc-token-standards/what-are-erc-tokens/

金融規制が重要

2号暗号資産

金融庁 暗号資産関係

https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency02/index.html

第三者対抗要件?

ウォレット・・・トークンを管理するための財布

『J-KISSと連動したトークン付与覚書』の雛形を4者で共同公開

Skyland Ventures(本社:東京都渋谷区、パートナー・CEO:木下慶彦、以下SV)は、Web3時代におけるトークン投資に際して、国内法人として設立されたスタートアップを主な対象とする『J-KISSと連動したトークン付与覚書』の雛形を・Infinity Ventures Crypto(IVC)、Headline Asia、Skyland Ventures、増島 雅和氏の4者にて共同で公開

https://skyland.vc/

DEX・・トークンの取引所

UNISWAP PROTOCOL

https://uniswap.org/

NFT

・・・世界に一つだけのトークン。メタバース上の土地に活用。データの所有はメタデータ。ブロックチェーンの外。データの流通はインデックスデータ。ブロックチェーンの中。インデックスデータがNFT。コピーが困難で創作者を保護できる。

登記情報と現物の不動産、法人の事業との類比。

国内初!千葉工業大学で学修歴証明書をNFTで発行

千葉工業大学(千葉県習志野市 学長:松井孝典)と株式会社PitPa(本社:東京都渋谷区 代表取締役:石部達也、以下「PitPa」)は、共同でweb3時代を見据えたグローバル人材の育成を測るため、様々なツールの開発・推進を行っております。この度、第一弾として伊藤穰一がセンター長を務める千葉工業大学変革センターにて、NFT(非代替性トークン)による学修歴証明の発行を開始したことを発表いたします。

 

https://www.it-chiba.ac.jp/topics/pr20220818/

IPFS docs(所有権や著作権の細かい記述)

https://docs.ipfs.tech/

課題

デジタルデータの消失?、保険?、当然対抗制度?転売?賭博?不当表示?資金洗浄など。

経済的機能(決済)がなければ、原則として金融規制の対象とならない。

スポーツエコシステム推進協議会

「NFTのランダム型販売に関するガイドライン」を共同公表~関係4団体と連携して策定~

得はしても損はしない、という整理?

https://www.c-sep.jp/2022/10/12/nft_guideline_random/

自由民主党

NFT政策検討PTが提言(案)を取りまとめ

https://www.jimin.jp/news/information/203135.html

塩崎 彰久(しおざき あきひさ)HP

DAO・・・中央管理者のいない分散型、トークン所持者内、スマートコントラクト活用の組織。

山古志DAO

https://nishikigoi.on.fleek.co/

私たちの目的

私たちは、800人の実際の山古志住民と10,000人のグローバルなデジタル住民が一緒になって、独自の自律的なコミュニティと場所を作成しようとしています。村自体は日本の山奥に位置し、錦鯉産業を通じて世界とつながってきましたが、今回、さらに世界に開かれた仮想村「山古志」を世界で初めて作る試みとなります。錦鯉NFTのある世界です。

10,000人のデジタル居住者の知識、ネットワーク、すべてのリソースが集まって、社会の実際のガバナンスシステムに関係なく、独自の財源と独自のガバナンスを備えた持続可能な山古志村を作成します。錦鯉などの自然資源や独自の文化を維持するリアルと、物理的な制約を超えて無限に広がるメタバースを組み合わせることで、私たち山古志の人々とデジタル山古志の住民は、私たちの生活遺産を共有財産として発展させることができます。

法的不確実性、法形式の選択?合同会社型、有限責任事業組合型、権利能力なき社団型、、、、。

メタバース

明確な定義はない。使われ方としては、仮想空間において、アバターを用いて、参加者が相互交流する。

decentraland

https://decentraland.org/

Mesh for Microsoft Teams

https://news.microsoft.com/ja-jp/2021/11/04/211104-mesh-for-microsoft-teams/

目的

広告、売買などの収益目的の可能性。

法的関係性

消費者契約法、金融商品取引法、民法上の不法行為との関係。各々の利用する立場による契約関係・利用規約の有無。独占禁止法。税法。Web2のプラットフォーム事業者はいる。所有権はない、支配権の可能性。著作権、商標権などの対象となり得る。

Q メタバース上の土地に信託を設定して、その受益権を譲渡する場合の、準拠法は日本ン法で良いのか?・・・メタバース上の土地に所有権が認められていないのに、土地のどのような権利に信託を設定するのか分かりませんでした。

DIGITAL ASSETS AND PRIVATE LAW

https://www.unidroit.org/work-in-progress/digital-assets-and-private-law/

Online Dispute Resolution

https://ec.europa.eu/consumers/odr/main/?event=main.home2.show

オンライン紛争解決

日司連年次制研修会グループディスカッション

20221022

8月

司法書士もにょもにょ。

決済、登記のための本人確認・・・健康保険証でBの本人確認。B宅で面談。「この土地を売ってもいい?」に対して頷いたように見えた。

Bの本人確認方法として良いか。・・・犯罪収益移転防止法防止法、同規則上は良い。日本司法書士会連合会依頼者等の本人確認等に関する規定基準上、不足。

Bの意思確認方法として良いか。・・・不足。

Dの本人確認で足りないか。・・・包括での委任、というところで躊躇する。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(本人確認書類)

第七条 前条第一項(第十二条第一項において準用する場合を含む。)に規定する方法において、特定事業者が提示又は送付を受ける書類は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める書類のいずれかとする。ただし、第一号イ及びハに掲げる本人確認書類(特定取引等を行うための申込み又は承諾に係る書類に顧客等が押印した印鑑に係る印鑑登録証明書を除く。)並びに第三号に定める本人確認書類並びに有効期間又は有効期限のある第一号ロ及びホ並びに第二号ロに掲げる本人確認書類並びに第四号に定める本人確認書類にあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日において有効なものに、その他の本人確認書類にあっては特定事業者が提示又は送付を受ける日前六月以内に作成されたものに限る。

一 自然人(第三号及び第四号に掲げる者を除く。) 次に掲げる書類のいずれか

イ 運転免許証等(道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第九十二条第一項に規定する運転免許証及び同法第百四条の四第五項(同法第百五条第二項において準用する場合を含む。)に規定する運転経歴証明書をいう。)、出入国管理及び難民認定法第十九条の三に規定する在留カード、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)第七条第一項に規定する特別永住者証明書、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第二条第七項に規定する個人番号カード、前条第一項第二号に規定する旅券等(この場合において、同号中「当該顧客等」とあるのは、「当該自然人」とする。)若しくは船舶観光上陸許可書又は身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳若しくは戦傷病者手帳(当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるものに限る。)

ロ イに掲げるもののほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があり、かつ、当該官公庁が当該自然人の写真を貼り付けたもの

ハ 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書若しくは母子健康手帳(当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるものに限る。)又は特定取引等を行うための申込み若しくは承諾に係る書類に顧客等が押印した印鑑に係る印鑑登録証明書

ニ 印鑑登録証明書(ハに掲げるものを除く。)、戸籍の謄本若しくは抄本(戸籍の附票の写しが添付されているものに限る。)、住民票の写し又は住民票の記載事項証明書(地方公共団体の長の住民基本台帳の氏名、住所その他の事項を証する書類をいう。)

ホ イからニまでに掲げるもののほか、官公庁から発行され、又は発給された書類その他これに類するもので、当該自然人の氏名、住居及び生年月日の記載があるもの(国家公安委員会、カジノ管理委員会、金融庁長官、総務大臣、法務大臣、財務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び国土交通大臣が指定するものを除く。)

(Identification documents)

Article 7 In the method prescribed in paragraph (1) of the preceding Article (including the cases where it is applied mutatis mutandis pursuant to Article 12, paragraph (1)) Article 8 In the method prescribed in paragraph (1) of the preceding article (including the cases where it is applied mutatis mutandis pursuant to Article 12, paragraph (1)), the documents to be presented or sent by a Specified Business Operator shall be any of the documents specified in the following items for the categories listed in the respective items. (i) Identity Confirmation Documents prescribed in item (i) (excluding the certificate of seal registration pertaining to the seal affixed by the customer, etc. to the documents pertaining to the application for or acceptance of the Specified Transactions, etc.); and (ii) Identification documents prescribed in item (i)(b) and (e) and item (ii)(b) with a valid period or expiration date, and identification documents prescribed in item (iv), which are valid as of the date on which they are presented or sent by the Specified Business Operator, and other identification documents, which are valid as of the date on which they are presented or sent by the Specified Business Operator. (i) Natural persons (limited to those who are not a natural person (excluding those set forth in item (iii) and item (iv))

(i) Natural persons (excluding those listed in items (iii) and (iv)) Any of the following documents

(a) Driver’s license, etc. (a driver’s license prescribed in Article 92, paragraph 1 of the Road Traffic Act (Act No. 105 of 1960) and a driving record certificate prescribed in Article 104-4, paragraph 5 of the same Act (including the cases where it is applied mutatis mutandis under Article 105, paragraph 2 of the same Act). (meaning a driving record certificate prescribed in Article 104-4, paragraph 5 of the same Act (including cases where it is applied mutatis mutandis pursuant to Article 105, paragraph 2 of the same Act)) (iii) The residence card prescribed in Article 19-3 of the Immigration Control and Refugee Recognition Act, the special permanent resident certificate prescribed in Article 7, paragraph (1) of the Act on Special Provisions Concerning Immigration Control for Persons, etc. who have Renounced Japanese Nationality under the Treaty of Peace with Japan (Act No. 71 of 1991), and the number used to identify a specific individual in administrative procedures (2) The personal identification number card prescribed in Article 2, paragraph (7) of the Act on the Utilization of the Number to Identify Specific Individuals in Administrative Procedures, etc., the passport, etc. prescribed in paragraph (1), item (ii) of the preceding Article (in this case, the term “said customer, etc.” in the same item shall be deemed to be replaced with “said natural person”) (a) A personal number card, a passport, etc. prescribed in paragraph (1), item (ii) of the preceding Article (in this case, “said customer, etc.” in the same item shall be deemed to be replaced with “said natural person”) or a certificate of landing permission for ship tourism, or a physical disability certificate, mental disability health welfare certificate, medical care booklet or war injury and sickness certificate (limited to those which contain the name, residence and date of birth of said natural person)

(b) In addition to those listed in (a) above, a document issued or issued by a government or municipal office or other similar document that contains the name, residence, and date of birth of the natural person concerned and to which the government or municipal office has affixed a photograph of the natural person concerned

(c) National health insurance, health insurance, seamen’s insurance, late-stage medical care for the elderly or long-term care insurance, health insurance day worker’s special health insurance certificate, membership card of national public officers’ mutual aid association or local public officers’ mutual aid association, membership card of private school teachers’ mutual aid system, child support allowance certificate, special child support allowance certificate or maternal and child health handbook ( (limited to one that includes the name, residence, and date of birth of the natural person concerned) (d) A certificate of seal registration pertaining to a seal affixed by the customer, etc. to a document pertaining to an application for or acceptance of the Specified Transactions, etc. or a document pertaining to an application for or acceptance of the Specified Transactions, etc.

(d) A certificate of seal registration (excluding those listed in (c)) (d) A copy or extract of a family register (limited to one to which a copy of the supplementary copy of the family register is attached) (d) A copy of a certificate of residence or a certificate of matters stated in a certificate of residence (a document certifying the name, address, and other matters in the basic resident register of the head of a local public entity)

(e) In addition to those listed in (a) through (d) above, documents issued or issued by public offices or other similar documents that contain the name, residence, and date of birth of the natural person concerned (documents issued by the National Public Safety Commission, Casino Control Commission, Commissioner of the Financial Services Agency, Minister of Internal Affairs and Communications, Minister of Justice, Minister of Finance, Minister of Health, Labor and Welfare, Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries, Minister of Economy, Trade and Industry Minister of Agriculture, Forestry and Fisheries, Minister of Economy, Trade and Industry, and Minister of Land, Infrastructure, Transport and Tourism).

・旧代表者の運転免許証の写しをもらう。

・代表者等とは?・・・会社代表者や代理人など、現に特定取引の任に当たっている自然人が顧客などではない場合における「特定取引等の任に当たっている自然人」。

・書面決議を用いる。会社法(書面による議決権の行使)第三百十一条、(取締役会の決議の省略)第三百七十条

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

三 法人である顧客等 次に掲げる方法のいずれか

イ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号又は第四号に定めるものの提示を受ける方法

ロ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受け、かつ、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律(平成十一年法律第二百二十六号)第三条第二項に規定する指定法人から登記情報(同法第二条第一項に規定する登記情報をいう。以下同じ。)の送信を受ける方法(当該法人の代表者等(当該顧客等を代表する権限を有する役員として登記されていない法人の代表者等に限る。)と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)

ハ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受けるとともに、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第三十九条第四項の規定により公表されている当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地(以下「公表事項」という。)を確認する方法(当該法人の代表者等と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)

ニ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号若しくは第四号に定めるもの又はその写しの送付を受けるとともに、当該本人確認書類又はその写しに記載されている当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法

ホ 当該法人の代表者等から、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第十二条の二第一項及び第三項の規定に基づき登記官が作成した電子証明書並びに当該電子証明書により確認される電子署名法第二条第一項に規定する電子署名が行われた特定取引等に関する情報の送信を受ける方法

(iii) A customer, etc., who is a juridical person, by any of the following methods

(a) Receiving from the Representative of the juridical person, etc. the presentation of identification documents specified in item (ii) or (iv) of the following Article

(b) Receiving a report of the name and the location of the head office or principal office of the Customer, etc. from the Representative of the juridical person, and receiving registration information (meaning registration information prescribed in Article 2(1) of the Act on Provision of Registration Information through Telecommunication Lines (Act No. 226 of 1999)) from a designated juridical person prescribed in Article 3(2) of the said Act. The same shall apply hereinafter).  (c) Receiving a report from a representative person, etc. of the juridical person (limited to a representative person, etc. of a juridical person who is not registered as an officer authorized to represent the said customer, etc.) by sending the transaction-related document by registered mail, etc. as a forwarding-free mail, etc.)

(c) Receiving a report on the name and the location of the head office or principal office of the Customer, etc. from the representative person, etc. of the juridical person, as well as the name and the location of the head office or principal office of the Customer, etc. that have been made public pursuant to Article 39, paragraph 4 of the Act on the Use of Identification Number to Identify Specific Individuals in Administrative Procedures (hereinafter referred to as the “Public Matters”) (hereinafter referred to as “publicly announced matters”) (d) Confirming the name and address of the head office or principal office of the customer, etc. (when receiving a report without meeting the representative, etc. of the juridical person, by sending a transaction-related document by registered mail, etc., by way of forwarderless mail, etc., addressed to the head office, etc. of the customer, etc., in addition to said method

(d) By receiving from the Representative of the juridical person, etc. the identification documents specified in item (ii) or (iv) of the following Article or a copy thereof, and sending the transaction-related documents by registered mail, etc., by which the forwarding is not required, to the head office, etc. of the Customer, etc. stated in the identification documents or the copy thereof.

(e) Receiving from the Representative of the juridical person, etc. an electronic certificate prepared by the registrar pursuant to the provisions of Article 12-2, paragraph (1) and paragraph (3) of the Commercial Registration Act (Act No. 125 of 1963) and information on the specified transactions, etc. for which an electronic signature prescribed in Article 2, paragraph (1) of the Electronic Signature Act has been executed, which is confirmed by said electronic certificate Method

ううう・・・「いが取得していいよ。」

えええ・・・「法定相続分は欲しいよ。」

・戸籍収集の可否、誰から、どこまで、委任状と職務上請求書の使い分け。

・法制相続情報一覧図の作成業務なら契約書不要?、目的が預貯金口座の解約ならOK?、遺産承継業務?

・紛争になったら辞任します、の委任契約?

・えええに対する通知書の作成は?・・・弁護士法72条違反とならない業務の在り方。税務申告の期限考慮

「受益者代理人は信託行為の変更で選任できるかー信託監督人の選任と比較してみるー」、「第3回民事信託実務入門信託契約条項の起案」

 信託フォーラム[1]の記事、遠藤英嗣弁護士「家族信託への招待第18回相談室、受益者代理人は信託行為の変更で選任できるか─信託監督人の選任と比較してみる─」からです。

指図権者・・・信託業法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000154

第四章 指図権者(指図権者の忠実義務)第六十五条、(指図権者の行為準則)

第六十六条

信託業法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416M60000002107_20221001_504M60000002055

第四章 指図権者(指図権者の行為準則)第六十八条

法第六十六条第三号に規定する内閣府令で定める取引は、次に掲げる取引とする。

一 取引の相手方と新たな取引を行うことにより自己又は信託財産に係る受益者以外の者の営む業務による利益を得ることを専ら目的としているとは認められない取引

二 第三者が知り得る情報を利用して行う取引

三 当該信託財産に係る受益者に対し、当該取引に関する重要な事実を開示し、書面による同意を得て行う取引

四 その他信託財産に損害を与えるおそれがないと認められる取引

2 法第六十六条第四号に規定する内閣府令で定める行為は、次に掲げる行為とする。

一 指図を行った後で、一部の受益者に対し不当に利益を与え又は不利益を及ぼす方法で当該指図に係る信託財産を特定すること。

二 他人から不当な制限又は拘束を受けて信託財産に関して指図を行うこと、又は行わないこと。

三 特定の資産について作為的に値付けを行うことを目的として信託財産に関して指図を行うこと。

四 その他法令に違反する行為を行うこと。

(2)一方、受益者代理人について、「信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべきものを指定する定めを設けることができる」(信託法138条1項)と規定するのみで、裁判所による選任は認められていない。その理由は、受益者代理人については、その指定選任は、受益者の権利行使に重大な影響を及ぼすため、裁判所が受益者を代理するものを選任することはふさわしくないとされるからである(寺本昌弘『逐条解説新しい信託法』322-323頁)。

 なぜ、受益者代理人に信託法139条のような、大きな権限を持たせているのかについて、受益者代理人が利用される想定事例として、

・年金信託や社内預金引き当て信託のように、受益者が頻繁に変動するためにその固定生を欠くような場合

・単なる投資の対象として受益権を取得した受益者が多数存在する場合

・受益証券発行信託(第185条以下)において、無記名式の受益証券が発行され、当該証券が転々流通する場合等

が挙げられ、民事信託・家族信託が想定されていないこともあると思います[2]。なお、信託監督人は信託の機関であり、受益者代理人は、あくまでも一定の範囲の受益者の代理人としての地位、という違いもあると考えられます。

参考

一般社団法人信託協会 受益証券発行信託計算規則

https://www.shintaku-kyokai.or.jp/products/corporation/beneficiary_certificate.html

(3)このことからすると、信託行為の変更により新たに選任された信託監督人について、受益者代理人のように、これが特定の「裁判上の行為」を求められることもないし、もしそれが危惧されるのであれば、信託条項に、「信託監督人は信託法132条1項本文が定める一切の裁判外の行為をする権限を有するものとする」と定め、信託登記目録に搭載することもできる。

 特定の「裁判上の行為」を求められることがないのは、信託法132条記載の通り、信託監督人が自己の名で受益者のために使う権利であり、使わないことも可能であり、受益者の権利を奪うものでもないからだと思います。

 ただ、信託目録については第三者対抗要件、取引の安全などの要請があるため信託監督人が選任された場合には、その住所、本店、氏名、名称などを記録する方が望ましいと感じます。権限については、信託法に定める権限以外の定めがある場合には記録する方が良いと考えます。

(2)―中略―このような受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者の意思決定を経ずに、他の関係者が創成することができるかというのが、問題の核心部分といえよう。このような受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者以外の者の意思によって登場させることは、委託者が考えた信託スキームを大きく変更するものであり、一律制限するのが相当と考える。

 受益者の権限を奪う特殊な地位にある関係人を、信託行為の変更により、すなわち委託者以外の者の意思によって登場させることを、信託行為によって委託者が定めている場合に、制限できるという根拠が分かりませんでした。

・・・・・・・・・・・

金森健一弁護士「第3回民事信託実務入門信託契約条項の起案」からです。

信託契約の内容を一から起案し、当事者に対し一から説明した経験のある者であれば、契約書の定型化や説明のマニュアル化等による業務の効率化に対し、果たしてそこまでこの仕事が単純であるのか疑問を抱かれる方が多いと思われるが、読者の皆様はいかがだろうか。

 程度によると思います。

もっとも、このような条項(一文)があれば、信託契約が成立したと即断してよいかどうかについては、一考を要する。「必要な行為をすべき」という文言により受託者に対し課す義務の内容が信託法の許容する限界を超えてしまうと、それをもって信託の成立が否定されることになるからである。

 信託の成立の要否は、信託契約全体、及び第三者との関係(例えば信託法第10条の訴訟信託、事後的な取消しとして信託法第11条の詐害信託の取消し等)から総合的に判断するものであり、信託法3条1項に沿った条項のみで判断するということはあまりないのではないかなと感じます。

一方、民事信託の利用を勧める場面において、「財産を受託者に預けるだけ」、「単に形式的な所有権が受託者に移るだけ」、「権利は残る」などという説明がなされることがあると聞く。

まだあるのかなと思いました。

民事信託は、自分では行うことのできない財産の管理を受託者に用いられる。言い換えれば、民事信託の受益者は、財産管理能力が低下又は喪失した者である。

私が書くのであれば、次のようになります。

民事信託は、自分では管理を行うことが出来なくなる可能性がある財産の管理を、受託者に依頼する場合に用いられることがある。自益信託における受益者は、財産管理能力の低下、喪失に備える者であることが多い。また親なき後に備える民事信託の受益者は、財産管理能力を既に喪失している者の場合もある。


[1] vol.18、2022年10月号、日本加除出版、P105~

[2] 寺本昌広『逐条解説新しい信託法補訂版』2008、商事法務、P321、P323

金融法学会第39回大会メモ

資金決済法制の最近の動向について

2022年10月15日金融庁企画市場局参事尾﨑有

・資金決済法改正(2022年)の概要

電子決済手段等への対応

(1)暗号資産・ステーブルコインを巡る動向

(2)今回の法改正の内容

 銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応高額電子移転可能型前払式支払手段への対応

資金決済法改正(2022年)の概要

金融のデジタル化等に対応し、安定的かつ効率的な資金決済制度を構築する

海外におけるいわゆるステーブルコイン等の発行・流通の増加

銀行等におけるマネロン対応等の更なる高度化の要請

高額で価値の電子的な移転が可能な前払式支払手段の広がり

電子決済手段等への対応

電子決済手段等取引業等の創設

電子決済手段等の発行者(銀行・信託会社等)と利用者との間に立ち、以下の行為を行う仲介者について、登録制を導入

[対象行為]電子決済手段の売買・交換、管理、媒介等

銀行等を代理して預金債権等の増減を行う行為

[参入要件]財産的基礎、業務を適正/確実に遂行できる体制等

[規制内容]利用者への情報提供、体制整備義務等

[監督]報告・資料提出命令、立入検査、業務改善命令等

銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応

銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応

為替取引分析業の創設

 預金取扱金融機関等の委託を受けて、為替取引に関し、以下の行為を共同化して実施する為替取引分析業者について、許可制を導入

[対象行為]取引フィルタリング、取引モニタリング

[参入要件]財産的基礎、業務を適正/確実に遂行できる体制等

[規制内容]情報の適切な管理、体制整備義務等

[監督]報告・資料提出命令、立入検査、業務改善命令等

高額電子移転可能型前払式支払手段への対応

高額電子移転可能型前払式支払手段の発行者について、

業務実施計画の届出、犯収法の取引時確認義務等の規定を整備

電子決済手段等への対応

  • 暗号資産・ステーブルコインを巡る動向

デジタル資産の拡大

 ブロックチェーン技術の登場を契機に、デジタル資産は、暗号資産をはじめ、資金調達手段、送金手段、更にはコンテンツ・著作物など急速にその範囲を拡大させた。こうした実態を踏まえ、当局はイノベーション促進と利用者保護等を目指した制度整備を継続的に実施。

暗号資産に係る法制度の整備(2016年法改正)

2014年ビットコインの売買業務を行っていたMTGOX社について、破産手続が開始

G7エルマウ・サミット首脳宣言(2015年6月)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_001244.html

「我々は、仮想通貨及びその他の新たな支払手段の適切な規制を含め、全ての金融の流れの透明性拡大を確保するために更なる行動をとる。」

FATF(金融活動作業部会)ガイダンス(2015年6月)

https://www.fatf-gafi.org/documents/guidance/?hf=10&b=0&s=desc(fatf_releasedate)

各国は、仮想通貨と法定通貨を交換する交換所に対し、登録・免許制を課すとともに、顧客の本人確認義務等のマネーロンダリング・テロ資金供与規制を課すべきである。

資金決済法・犯罪収益移転防止法等の改正(2017年4月施行)

暗号 資産の交換業者に 登録制を導入 登録制を導入

口座開設時における本人確認等を義務付け

・利用者保護の観点から、一定の制度的枠組みを整備

(最低資本金、顧客に対する情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理、システムの安全管理など)

暗号資産に係る法制度の整備(2019年法改正)顧客の暗号資産の流出事案が発生

暗号資産が投機対象化

事業規模の急拡大の一方で、交換業者の態勢整備が不十分

暗号資産が投機対象化

暗号資産を用いた新たな取引が登場(証拠金取引、ICO)

暗号資産に係る法制度の整備(2019年法改正)

利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備

国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更

5.資金決済法・金融商品取引法等の改正(2020年5月施行)

⇒「仮想通貨交換業等に関する研究会」を11回にわたり開催(2018年4月~12月)し、暗号資産交換業等を巡る諸問題についての制度的な対応を検討

https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/kasoukenkyuukai.html

利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備

国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更

 交換業者が顧客から預かっていた暗号資産のうち、ホットウォレット(オンライン)で管理していた暗号資産が流出する事案が複数発生

 交換業者に対し、業務の円滑な遂行等のために必要なものを除き、顧客の暗号資産を信頼性の高い方法(コールドウォレット等)で管理することを義務付け。ホットウォレットで管理する顧客の暗号資産については、別途、見合いの弁済原資(同種・同量の暗号資産)の保持を義務付け

過剰な広告・勧誘への対応

交換業者による過剰な表現を用いた広告・勧誘

広告・勧誘規制を整備

・虚偽表示・誇大広告の禁止

・投機を助長するような広告・勧誘の禁止など

暗号資産の管理のみを行う業者への対応

 FATF(マネロン対策等を扱う国際会議)が、暗号資産の管理のみを行う業者(カストディ業者)について、各国協調して規制を課すことを求める勧告を採択〔2018年10月〕

 カストディ業者に対し、暗号資産交換業規制のうち、暗号資産の管理に関する規制を適用(本人確認義務、分別管理義務など

問題がある暗号資産への対応

移転記録が公開されずマネロンに利用されやすいなどの問題がある暗号資産が登場

交換業者が取り扱う暗号資産の変更を事前届出とし、問題がないかチェックする仕組みを整備

(注)交換業者が取り扱う暗号資産を審査する自主規制機関とも連携

問題がある暗号資産への対応

暗号資産の取引において、不当な価格操作等が行われている、との指摘

風説の流布・価格操作等の不公正な行為を禁止

暗号資産に関するその他の対応

交換業者の倒産時に、預かっていた暗号資産を顧客に優先的に返還するための規定を整備

国内の暗号資産の取引の約8割を占める証拠金取引について、現状では規制対象外

外国為替証拠金取引(FX取引)と同様に、金融商品取引法上の規制

(販売・勧誘規制等)を整備

詐欺的な事案も多い等の指摘がある中、ICOに適用されるルールが不明確

※ICOは、企業等がトークン(電子的な記録・記号)を発行して、投資家から資金調達を行う行為の総称

 収益分配を受ける権利が付与されたトークンについて、投資家のリスクや流通性の高さ等を踏まえ、

・ 投資家に対し、暗号資産を対価としてトークンを発行する行為に金融商品取引法が適用されることを明確化

・ 株式等と同様に、発行者による投資家への情報開示の制度やトークンの売買の仲介業者に対する販売・勧誘規制等を整備

米国連邦法・NY州法における暗号資産・ステーブルコインに関連する現行規制の概観

米国NY州において、暗号資産・ステーブルコインに関するビジネスを行う場合、

・連邦銀行機密法(BSA)に基づく基本的なAML/CFT規制

・スキームの実態等に応じて送金・銀行規制、暗号資産規制、証券規制、商品先物規制等の中で該当する規制

が重畳適用されることになる。

デジタル資産の責任ある開発を確保するための米大統領令(2022年3月)

 2022年3月、ホワイトハウスは、デジタル資産の責任ある開発に関する米大統領令を公表。本大統領令は、暗号資産やステーブルコイン、CBDCを含むデジタル資産に関する政府全体戦略として、米国当局間の連携を含めた対応を指示するもの。

欧州の暗号資産に対する規制案

2020年9月、欧州委員会はステーブルコインを含む暗号資産(注1)の規制案(通称「MiCA」)を公表(注2)

 ステーブルコイン(電子マネートークン及び資産参照型トークン)の発行体に開示規制や資産保全義務を課すとともに、暗号資産のカストディ、交換、トレーディング・プラットフォームの運営を含む暗号資産サービスの提供者についても認可制を採用して様々な規制を課す内容となっている(注3)

(注1)規制案にいう「暗号資産」とは、分散型台帳技術又は類似の技術を用いて電子的に移転・価値保存される価値・権利をデジタルに表章したものをいう。

(注2)2022年3月14日に欧州議会で承認。次の段階として、2022年後半に三者協議(欧州議会・欧州理事会・欧州委員会)を実施予定。6月末に暫定合意。

(注3)現行のEU規制が適用される金融商品、電子マネー(電子マネートークンとしての性質を有するものを除く)等については、適用対象外

英国を暗号資産技術の世界的なハブとするための施策に関する発表(2022年4月)

2022年4月、英国政府は、英国を暗号資産技術と投資の世界的なハブとするための各施策を公表。公表された一連の施策は、英国における企業の投資、発展、成長を支援し、英国の金融サービス業界がテクノロジーやイノベーションの最先端の地位を維持することが目的

米国連邦法・NY州法におけるステーブルコインに関連する現行規制の概観

 連邦法

 いわゆるステーブルコインのみを対象とする固有の規制はないが、ステーブルコインを送付等する場合、連邦銀行機密法(BSA)のMoney Transmitterとして、AML/CFT規制に服する。現状、ステーブルコインに関して、複数の連邦規制当局からの監督を受ける可能性がある(連邦証券諸法、商品取引法等がステーブルコインに適用されるかについては、議論がある。)。

 ニューヨーク(NY)州法

 いわゆるステーブルコインのみを対象とする固有の規制はないが、ステーブルコインの発行・移転等を含む暗号資産事業活動を行う場合、NY州暗号資産規制(23 NYCRR Part 200)に基づきBitLicenseを取得しなければならない。

※ NY州銀行法上の銀行・信託会社であって、当局の承認を得た者は、BitLicenseの取得は不要(NY州暗号資産規制には従う必要)。

※ 法定通貨を送金する場合には、NY州のMoney Transmitterライセンスが必要であり、Bitライセンシーが顧客の暗号資産(NY州法上はステーブルコインを含む)を償還するためには、BitLicenseに加えてNY州法上のMoney Transmitterのライセンスを取得するのが一般的とされている。

電子決済手段等への対応

  • 今回の法改正の内容

資金決済WG報告(2022年1月11日)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220111.html

金融サービスのデジタル化への対応

1.電子的支払手段に関する規律のあり方

 ステーブルコインの分類

 ステーブルコインについて、現行制度の考え方に基づけば、価値を安定させる仕組みによって、以下のとおり分類できると考えられる。

ア 法定通貨の価値と連動した価格(例:1コイン=1円)で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの(及びこれに準ずるもの59)イ ア以外(アルゴリズムで価値の安定を試みるもの等)

59 上記アに該当するかどうかは、スキーム全体を見て実質的に判断することとなる。(略)

(参考1-3)電子的支払手段について

 本報告では、電子的支払手段について、送金・決済サービスにおける活用との機能に着目し、「資金決済法の『通貨建資産』のうち不特定の者に対する送金・決済に利用することができるもの(電子的方法により記録され、電子情報処理組織を用いて移転することができるものに限る)」と整理している。この定義は、既存のデジタルマネー(預金・未達債務)及びステーブルコインのうちの「デジタルマネー類似型」をカバーするが、同時に同様の機能を果たす様々な性質のものを含み得る。

 この点について、「不特定の者に対する送金・決済に利用することができる通貨建資産」に該当するもののうち、一般的に広く送金・決済手段として利用され得る状況には至っていないと評価されるもの(国債、社債、電子記録債権、前払式支払手段等)の取扱いが論点となる。これらの通貨建資産については、原則として「電子的支払手段」から除外しつつ、例外的にその流通性等に鑑み送金・決済手段としての機能が強いと認められるものを「電子的支払手段」に含めることができる枠組みとすることが考えられる 。

「高額電子移転可能型前払式支払手段」の実務上の対応等

[利用者利便・実務上の対応への配慮]

対応

前払式支払手段の利用の多くは少額。

前述の犯収法に基づく本人確認(取引時確認)は、オンラインで完結する本人確認方法で行うことが可能。

利用者が同一のアプリ等においてシームレスに高額電子移転可能型に移行できるような仕組みを可能とする。

発行者側のシステム対応に加え、既存ユーザーへの周知が必要であること等を踏まえ、適切な猶予期間を設ける。

(参考)高額電子移転可能型前払式支払手段の詳細(以下のア~オの全ての要件を満たす前払式支払手段

第三者型前払式支払手段(電子機器その他の物に電磁的方法により記録されるものに限る)

電子情報処理組織を用いて移転することができるもの((a)残高譲渡型、(b)番号通知型(狭義)及び(c)これに準ずるもの)

アカウント(発行者が前払式支払手段に係る未使用残高を記載し、又は記録する口座をいう)において管理されるものエ 上記ウのアカウントは繰り返しのチャージ(リチャージ)が行えるものに限る

次の(a)~(c)に掲げる場合の区分に応じ、当該区分に定める要件のいずれかに該当するもの。

(a)残高譲渡型の場合 他のアカウントに移転できる額が一定の範囲を超えるもの(例:1回当たりの譲渡額が10万円超、又は、1か月当たりの譲渡額の累計額が30万円超のいずれかに該当)

(b)番号通知型(狭義)の場合 メール等で通知可能な前払式支払手段(ID番号等)によりアカウントにチャージする額が一定の範囲を超えるもの(例:1回当たりのチャージ額が10万円超、又は、1か月当たりのチャージ額の累計額が30万円超のいずれかに該当)

(c)上記(b)に準ずるものの場合 アカウントへのチャージ額・利用額が一定の範囲を超えるもの(例:1か月当たりのチャージ額の累計額、1か月当たりの利用額の累計額のいずれもが30万円超)

※ただし、上記(a)~(c)のいずれかに該当するものであっても、アカウントに係る未使用残高の上限額が一定額以下のもの(例:30万円以下)は、対象外(高額電子移転可能型前払式支払手段には該当しない)。

金融法の体系の中の「資金決済法」

得津晶(一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻)

報告の内容

 金融監督法(公法)の中の資金決済法の位置づけ

資金決済(為替取引)を銀行業からの独立した一分野に

監督法上の特殊性(倒産隔離の必要性)のため倒産法上の取扱い

 金融取引法(私法)の中の資金決済法の位置づけ

倒産法上の取扱い(倒産隔離効ある救済の有無)の基準

「法的性質論」(or 当事者間の合意)→社会的な種類物性の程度へ

金融監督法(公法)

伝統的な金融法の体系:銀行・証券・保険(金融庁設置法3条などより)

機能的な金融法の分類

金融審議会「金融制度スタディ・グループ中間整理―機能別・横断的な金融規制体系に向けて」(平成30年6月19日)

資金決済法の独立

資金決済領域の様々な事業

•銀行法:為替取引(銀行法2条2項2号)

•資金決済法:前払式支払手段(3条)・資金移動業(2条2項)・暗号資産交換業(2条7項)・電子決済手段等取引業(2条10項)

•割賦販売法:包括信用購入あっせん(2条3項)

伝統的には銀行の固有業務の一部→多様な決済手段を銀行以外にも認める=「資金決済」が銀行業から独立

•「資金移動業」(資金決済法2条2項)「銀行等以外の者が為替取引を業として営むこと」

2009年改正で導入:送金上限額規制などで制約

2020年改正で拡充・一般化:第一種~第三種の類型ごと

⇒問:資金決済に銀行規制を課さなくてよい理論的な正当性はどこにあるのか?

銀行規制の根拠

問:資金決済に銀行規制を課さなくてよい理論的な正当性はどこにあるのか?

→問:そもそも銀行業に銀行規制を課す理論的な根拠はどこにあるのか?

• 伝統的な整理:「システミックリスク」(岩原紳作「銀行の決済機能と為替業務の排他性」『金融法論集(上)』51ー52頁)

銀行業=受信(預金の受入れ)と与信(貸付)の兼営+為替取引(銀行法2条2項)

「受信と与信の兼営」と「為替取引」のシステミックリスクの違い

ナローバンク論:「違う」

ナローバンク:与信の提供を行わず預入金は100%リザーブ×

同じ/分けて考えるべきではない(岩原紳作「銀行の決済機能と為替業務の排他性」『金融法論集(上)』73-74頁)

銀行規制の根拠:システミックリスク

問:そもそも銀行業に銀行規制を課す理論的な根拠はどこにあるのか?

2つの「システミックリスク」の区分←「困難は分割せよ」

預金の受入れと貸付の兼営=流動性ミスマッチを原因とする取り付けをめぐる囚人のジレンマ状況

→強制的な預金保険→モラルハザード→債権者モニタリングの「代替」としての法規制・銀行の健全性確保のための規制

② 資金決済=ネットワーク効果・連鎖倒産のおそれ→2つの解決策

1) 破産させない=銀行の健全性確保

2) 倒産隔離

⇒資金決済と預金の受入れ・貸付の兼営とを同一の規律にする理由はない

•資金決済と受信・与信の兼営とを同一の規律にする理由はない=資金決済を銀行業から独立

理論的なインパクト

•銀行法の銀行業定義規定:「為替取引」の法定他業への降格?

銀行法3条「みなし銀行業」の位置づけ

流動性のミスマッチ(受信を与信せず有価証券投資など)を銀行業の本質に→「みなし」から「銀行業」への昇格?

「銀行代理業」(2条14項3号):為替取引にのみ関与する場合と受信・与信の兼営に関与する場合とで規制に区分の可能性?

金融監督法からの「資金決済法」:ネットワーク効果・連鎖倒産のおそれ

2つの解決策

1)破産させない

2)倒産隔離→資金決済手段が利用者の倒産時(特に誤振込や無権限取引)にいかなる規律に服するかの議論が必要

=金融取引法における倒産隔離効・占有と本件の一致という問題の位置づけの明確化が必要

資金決済手段の倒産時の取扱い

•「帰属」:倒産した場合に取戻権が認められる主体

•占有=紙(有体物)の占有+記録の保持

当事者間で当該権利について移転する契約が成立したものの、記録が移転していなかった場合、当該権利は譲渡人と譲受人のいずれの責任財産に帰属するのか。=権利移転の対第三者対抗要件

記録の移転後に、当該譲渡の原因となった契約が解除されたものの、記録は譲受人にとどまっていた場合に、当該権利はどちらに帰属するのか。=原因契約が解除された場合(原因関係との無因性1)

記録の移転の原因となった契約が錯誤や詐欺で取り消された場合に、記録が譲受人にとどまっている状態で、当該権利はどちらに帰属するのか。=原因契約無効・取消の場合の帰属(原因関係との無因性2)

これまでの議論:法的性質論

物権なのか債権なのか、金銭なのか

所有権・物権=倒産隔離効あり(=優先権あり)

(金銭)債権=原則・倒産隔離効なし(=優先権なし)

限界:暗号資産・ステーブルコインなど新たな支払決済手段

•近時の有力説:当事者間の契約によって決定可能(小塚=森田『支払決済法〔第3版〕』196、203)

×第三者(債権者)の利害に影響

法的性質の操作可能性の限界

•そもそも法的性質を政策判断に基づいて操作できるのか?

例題:「有価証券」ないし「金銭」を契約で自由に設定することができるか?

2つの問題

法令上の根拠なく「金銭」・「有価証券」(ないし「証券口座」)を作ることができるか?

紙ではないデータを「金銭」「有価証券」とすることができるか?

•「預金口座」の法的性質をめぐる議論―契約による金銭的な取り扱いの創出

•有価証券をめぐる議論

問題:法令上の根拠のない有価証券

民事行政当局:有価証券には特別の法律の規定または慣習法が必要(民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針III—契約および債権一般(2)』344頁)

最判昭和44・6・24民集23巻7号1143頁:制定法上の根拠のない学校債について「無記名証券たる有価証券」であることを肯定

調査官解説:「券面上の記載を客観的に観察」=所持人払の趣旨が表れているかどうかすなわち発行者の意思が無記名証券を発行することにあったかどうか(吉井直昭「判解」最判解民事昭和44年度532)※学説も立場が分かれる

問題:紙ではないデータの「有価証券」化=特別法(社債等保管振替法など)に根拠のない「口座」を認めることができるか?

法的性質決定の操作可能

なにが金銭(所有と占の一致)―有価証券・証券口座―その他その他債権を決めるのか。

種類物性基準の提唱

•金銭の所有と占有の一致の根拠:「究極の種類物」=種類物性(「特定」が生じないこと)⇒「種類物」としての性質の強さが必要条件(≠十分条件)

種類物性が強い:物権的保護(倒産隔離効ある保護)が不可能

種類物性が弱い:物権的保護(倒産隔離効ある保護)の可能性(必須ではない)

「物権」「債権」「財産権」という法的性質に直接の関係はない

具体的な当事者の合意のみには依存しない

社会的な取り扱い・受容が決定基準の必要条件

参考:

「支払単位」(森田宏樹「仮想通貨の私法上の性質について」2018・森田宏樹「電子マネーの法的構成」1997未完)=高い種類物性として説明可能

貨幣・暗号資産(財産権)・決済性預金(債権「更改的効果」森田宏樹「振込取引の法的構造」2000)

「口座の記録」(森田宏樹「有価証券のペーパーレス化の基礎理論」2006):口座の記録に占有を認める

それを証券口座的に扱うか(有価証券基準)決済性預金口座的に扱うか(金銭基準)は社会的な「種類物性」に依存

結論

金融監督法(公法)の中の資金決済法の位置づけ

銀行業の規制根拠である「システミックリスク」に2つの異なる意味

1)流動性ミスマッチ←受信と与信の兼営

囚人のジレンマ状況→強制的預金保険→債権者にモラルハザード→代替としての銀行規制

2)ネットワーク効果・連鎖倒産のおそれ←為替取引≒決済領域

倒産隔離規制(供託など)⇒資金決済・為替取引は銀行業からの独立可能。倒産隔離の必要性のため倒産法上の取扱いの議論が必要

金融取引法(私法)の中の資金決済法の位置づけ

倒産法上の取扱い(倒産隔離効ある救済の有無)の基準

「法的性質論」(あるいは当事者間の合意)→社会的な種類物性の程度へ

金銭その他の支払手段の預かりに関する規制について

加毛明(東京大学大学院法学政治学研究科)

1.はじめに

決済と金銭その他の支払手段の預かり

為替取引:「為替業者による受信行為と資金移動指図の執行行為」(岩原

[2003]539頁)

業として預り金をすることの禁止

出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)による預り金の原則的禁止

金融規制法における金融業者の預り金の禁止→預り金禁止の趣旨・射程に関する検討の必要性

新たな支払手段の登場→預り金禁止の趣旨が妥当するか否かの検討の必要性

決済と金銭の預かりの関係

金融審議会・金融制度スタディ・グループ「中間整理」

機能別・横断的な金融規制の体系

金融の機能の分類――「決済」、「資金供与」、「資産運用」、「リスク移転」

「預金受入れ」の位置付け

「……預金には元本保証性があり、国民に広く利用される安全確実な価値の貯蔵、運用手段という側面や、法定通貨とほぼ同等に決済に利用できる決済手段という側面がある。」(金融審議会・金融制度スタディ・グループ[2018]10頁)

「……預金は資金の出し手から見れば「資産運用」という機能の一形態であるほか、サービス提供者から見れば、「預金受入れ」を単独で行うのではなく、「決済」や「資金供与」と併せて行うことが一般的とも考えられる。」(金融審議会・金融制度スタディ・グループ[2018]10-11頁)

決済と金銭の預かりの関係

預金者が(商業)銀行に金銭を預ける目的

「安全確実な価値の貯蔵」

「安全確実な資産運用」

銀行による運用方法としての「資金供与」=信用創造機能

「法定通貨とほぼ同等に決済に利用できる決済手段」の利用

銀行による預金(預金通貨)という支払手段の提供

(商業)銀行による金銭の預かり(預金)の特徴

規定の内容

業としての預り金の禁止(出資法2条1項)

罰則

預り金禁止違反(出資法8条3項1号)

預り金禁止を免れる行為(出資法8条3項2号) cf. 銀行業の無免許営業罪(銀行法61条1号)

みなし銀行業(銀行法3条)/営業の免許(銀行法4条1項)

他の法律に特別の規定のある者の除外(出資法2条1項)

預り金の意義(出資法2条2項)

不特定かつ多数の者からの金銭の受入れ(出資法2条2項柱書)

預金、貯金又は定期積金の受入れ(出資法2条2項1号)又は社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、1号に掲げるものと同様の経済的性質を有するもの(出資法2条2項2号)

金融庁「事務ガイドライン第3分冊:金融会社関係 2 預り金関係」

不特定かつ多数の者が相手であること

金銭の受け入れであること

元本の返還が約されていること

主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること

 出資金規制との関係

 立法の経緯

昭和24年 貸金業の取締に関する法律(旧貸金業法)

貸金業者による預り金の禁止(旧貸金業法7条1項)

「最近の金融梗塞に伴いまして、あるいは高金利惡質な貸金業者が乱立し、あるいは巧みに仮装して預金貯金等の受入れをなし、銀行法等の違反行為をなすものも多数生ずる状態になりましたので、これらの貸金業者を取締り、その公正な運営を保障するとともに、最近の金融の逼迫に乘じて発生いたしました不正金融等を取締ることにより、金融の健全な発達をはかるために、本法案を提出しようとするものであります。」(第5 国会衆議院大蔵委員会議録32号(1949年)898頁〔愛知揆一〕)

「……預金等は正規の金融機関のみが取扱い、貸金業者はもつぱら金銭の貸付またはその媒介のみを行うこととするため、貸金業者は預金、貯金、掛金その他何らの名義をもつてするを問わず、不特定多数の者からこれらのものと経済的性質を同じくする金銭の受入れをしてはならないこと……としたのであります。」(第5国会衆議院大蔵委員会議録32号(1949年)898頁〔愛知揆一〕)

  立法の経緯

昭和29年出資法

銀行法その他の金融関係法規の脱法行為の禁止

「また預金の受入れ等の受信業務につきましては、現在すでに各般の金融関係法規によりまして、行政庁の免許ないし認可を受けた金融機関以外の者がこの業務を営むことを禁止しているのでありますが、最近はこの面における脱法的な行為もいよいよ巧妙な手段がとられるようになりまして、取締りに困難を加えて参つておる実情であります。従いまして、この際預金の受入れ等の禁止の範囲について明確な規定を設ける等の措置によりまして、取締りに便ならしめ、もつて金融秩序の維持をはかることといたしたいのであります。」(第19回国会衆議院大蔵委員会議録18号(1954年)371頁〔植木庚子郎〕)

 出資金の規制

不特定かつ多数の者に対し、出資金の全額以上に相当する金銭を払い戻す旨を示して、出資金を受け入れることの禁止(出資法1条)

出資金の性質に反する元本返還の約束→出資をしようとする者の誤認の防止(津田[1954]770頁)

背景:利殖機関による大衆からの金銭受入れの社会問題化(経済保全会事件、日本殖産金庫事件など)

罰則

出資金規制違反(出資法8条3項1号)、出資金規制を免れる行為(出資法8条3項2号)

刑法に正条がある場合の不適用(出資法8条4項)

「実際には、本条にふれる行為は詐欺罪にあたる場合が多いであろうが、詐欺罪を以てしては、捜査権の発動、立証の点につき困難な場合が少なくなく、早期に出資者大衆を不測の損害から保護することに欠けるうらみがあるところに、本条の実際上の意義があるわけである。この意味において、その防犯的意義は、……いわば詐欺罪を挙動犯形式においては握規制をしたものということができよう。」(吉田[1968]43頁)

 運用の実態

出資法1条ではなく、出資法2条1項による立件

「このように本条は当時多発した大衆からの資金集めの形態を念頭に置いて新設されたが、本法成立後はこれに該当するものとしての摘発は余りなく、また一条違反と二条違反の関係が微妙であることも理由となって、一条が実際に適用される例はほとんどみられず、その後はむしろ二条が適用される事例が多くみられる。」(芝原[2005]385頁)

原因

出資法1条の適用範囲の限定

出資法2条1項の適用範囲の広範さ

出資金(出資法1条)と預り金(出資法2条1項)の関係

出資金規制との関係

課題

「出資法二条の規制範囲は広すぎるから、実際の適用範囲を明確にするためにも(……)、もう少し絞り込む必要があり、また、②出資法一条の規制範囲は狭すぎるのであって、もう少し拡大する必要があるだろう(……)。」(京藤[1998]363頁)

出資法1条の適用範囲の拡張

金銭提供者による適切なリスク判断の可否という基準

金銭提供者のリスク判断を著しく歪める行為の存在

リスク判断ができない金銭提供者からの金銭の受入れ

出資法2条1項の適用範囲の限定

起訴便宜主義と処罰範囲の不明確化

⑶ 預り金禁止の趣旨

 判例

最判昭和36年4月26日刑集15巻4号177頁

「……預金の受入等の受信業務は、それが一般大衆を目的とするときは、その一般大衆から財貨を受託することになるのであるから極めて公共的色彩が強く、したがつて、その契約の履行には確乎たる保障がなければならないとともに、その業務がひとたび破綻をきたすようなことがあれば、与信者たる一般大衆に不測の損害を及ぼすばかりでなく、ひいてはこれら大衆と取引関係に立つ者にまでつぎつぎに被害を拡大して、社会の信用制度と経済秩序を攪乱するおそれがあり、これを自由に放任することは、預金等を為さんとする一般大衆の地位を保護し、社会の信用制度と経済秩序の維持と発展を図る上に適当でないので,既に銀行法等他の法律によつて、免許ないし認可を受けた金融機関等のみに行わせ、それ以外の者がこれを営むことを禁止しているのである。」

銀行規制の根拠との関係

 銀行の特徴――資産・負債間の流動性ギャップ(ミスマッチ)

• 要求払預金の受入れと信用創造

預金の一部が恒常的に銀行に留まることに対する合理的な期待(「返済期限の到来しない借入れ」(高橋編著[2010]199頁))

銀行の信認低下などを原因とする多数の預金者からの払戻しの請求と取付け

「返済期限が到来した借入れ」への転化(高橋編著[2010]199頁)

銀行規制の根拠との関係

預金者の要保護性

預け入れた金銭の払戻しを受けられないおそれ

預金者による自衛の困難

預金者が長年にわたって同じ銀行に口座を有し続ける傾向

小口預金者のモニタリング能力・インセンティヴの欠如(関口[2020]85-86 頁)

預り金禁止の趣旨

銀行規制の根拠との関係

システミック・リスク

破綻した銀行と関係のない者への影響の波及(関口[2020]85頁)

システミック・リスクを考慮に入れた経営を行うインセンティヴの欠如(関口[2020]85頁)

システミック・リスクが生じる原因(白川[2008]299頁)

取付けに関する預金者の心理的な連想

銀行間での与信の焦げ付き

時点ネット決済システムを通じた連鎖的波及

 預り金禁止の趣旨

銀行規制の根拠との関係

 銀行規制の根拠と預り金禁止の関係

資産・負債間の流動性ギャップ

流動性ギャップの重大さを基準とせずに預り金を禁止すること

流動性ギャップの発生を回避・抑制する方策

預り金の運用による長期の非流動資産の保有の禁止

預り金の保全

決済目的での利用への限定

流動性の高い金融資産による運用への限定(関口[2020]88頁)

金銭を預かる期間の制限

 預り金禁止の趣旨

 銀行規制の根拠との関係

銀行規制の根拠と預り金禁止の関係

金銭を預け入れた者の要保護性

預り金が返還されないリスクの低減

預り金の保全

金銭を預かる期間の制限

金銭を預け入れた者が負担可能なリスクへの限定

一人当たりの預り金の上限額の制限

預り金禁止の趣旨

 銀行規制の根拠との関係

銀行規制の根拠と預り金禁止の関係

• システミック・リスク

取付けに関する預金者の心理的な連想→預り金の保全

銀行間での与信の焦げ付き→預り金を原資とする資産供与の禁止

時点ネット決済システムを通じた連鎖的波及→決済システムへの参加の有無・態様

預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

前払式支払手段

保有者に対する払戻しの原則禁止(資金決済法20条5項本文)

元本返還約束の不存在を理由とする預り金該当性の否定

「……プリペイド・カードについて、一般的換金を行うような、すなわち一般的に元本の返還が約されていると解されるような場合には、出資法違反の疑いが生じよう。」(プリペイド・カード等に関する研究会[1989]22頁)

保有者に対する払戻しの義務付け(資金決済法20条1項)又は許容(資金決済法20条5 項ただし書)

流動性ギャップ発生の抑制

cf. 出資金規制との関係

「一般大衆の保護の観点については、元本保証を行って資金を募る詐欺的な資金募集が行われないようにするものと考えられる。」(高橋編著[2010]63頁)

預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

前払式支払手段

発行保証金の供託(資金決済法14条1項)、発行保証金保全契約

(資金決済法15条)、発行保証金信託契約(資金決済法16条1項)

預り金が返還されないリスクの低減

保有者1人当たりの発行額の制限

保有者が負担可能なリスクへの限定

預り金禁止が決済法制において有する意義

 資金決済法による預り金禁止への対処

 資金移動業

資金移動業者による利用者からの資金の受入れ

パブリック・コメントに対する金融庁の回答

「例えば、資金移動業者が、送金依頼人から送金指図を受けるとともに、当該指図に係る送金資金を送金依頼人のアカウントに受け入れるなど、送金資金が具体的な送金依頼と結びついている場合には、当該送金資金の受入れは、出資法第2条第2項で禁止される「預り金」には該当しないと考えられます。ただし、資金移動業者は、銀行と異なり預金の受入れはできず(銀行法第2条第2項)、送金と無関係に資金を預かったり、送金用口座と称して長期間金銭を預かり利息を付すなど、その実態によっては実質的に「預り金」に該当する場合も考えられます。」(金融庁[2010]40頁)

預り金該当性の否定と出資法2条1項の適用の否定(高橋編著[2020]195頁参照)

資金移動業者による金銭の受入れが許容される根拠の検討

 預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

 資金移動業

第二種資金移動業

履行保証金の供託(資金決済法43条1項2号)、履行保証金保全契約(資金決済法44条〔利用者から受け入れた資金を原資とする貸付け等の防止措置(資金移動業者に関する内閣府令30条の3)〕)、履行保証金信託契約(資金決済法45条)

流動性ギャップ発生の回避、預り金が返還されないリスクの低減、システミック・リスク顕在化の抑制

為替取引に用いられることがないと認められる利用者の資金を保有しないための措置(資金移動業者に関する内閣府令30条の2)

流動性ギャップ発生の回避、預り金が返還されないリスクの低減

 預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法による預り金禁止への対処

 資金移動業

第一種資金移動業

履行保証金の供託(資金決済法43条1項1号)、履行保証金保全契約(資金決済法44条)、履行保証金信託契約(資金決済法45条)

利用者からの金銭の受入れと供託までの期間の短縮

流動性ギャップ発生の回避

資金移動事務の処理に必要な期間等を超える債務負担の禁止(資金決済法51条の2第2項)

預り金が返還されないリスクの低減

預り金禁止が決済法制において有する意義

 資金決済法による預り金禁止への対処

資金移動業

第三種資金移動業

各利用者に対して負担する債務の額の制限(資金決済法51条の3、資金決済に関する法律施行令17条の2)

利用者が負担可能なリスクへの限定

履行保証金の供託(資金決済法43条1項2号)、履行保証金保全契約(資金決済法44条)、履行保証金信託契約(資金決済法45条)

預貯金等による管理の許容(資金決済法45条の2)

 預り金禁止が決済法制において有する意義

資金決済法の適用がない場合における預り金禁止への対処

収納代行

収納代行業者による利用者からの金銭の受入れ

弁済受領権限の意義

預り金禁止への対処

受け入れた金銭の保全

分別管理

金融機関による保証

信託の設定

自己信託による信託設定の可能性

利用者の金銭を預かる期間の制限

利用者1人当たりの受入れ金銭の制限

預り金禁止が決済法制において有する意義

 金銭を受け入れない決済サービスの提供

電子決済等代行業

為替取引の指図の受領・伝達(銀行法2条17項1号)、口座情報の取得・提供(銀行法2条17項2号)

「電子決済等代行業については、利用者の資金を預かることは想定していない……。」(井上監修[2018]37頁)

利用者から金銭を受け入れずに決済サービスを提供する可能性

預り金が許容される金融業者

金融商品取引業

有価証券の売買等に関して顧客から金銭などの預託を受けること(金融商品取引法2条8項16号)

分別管理・信託(金融商品取引法43条の2第2項、金融商品取引業等に関する内閣府令141条~141条の3)

暗号資産交換業

暗号資産の売買等に関して利用者の金銭の管理をすること(資金決済法2 条7項3号)

分別管理・信託(資金決済法63条の11第1項、暗号資産交換業者に関する内閣府令26条)

預り金が禁止される金融業者

金融商品仲介業

顧客から金銭等の預託を受けることの禁止(金融商品取引法66条の13、201条4号)

「証券仲介業者は証券取引行為に関し顧客に対し自らが証券取引の法的主体となることがないため、顧客から金銭等の預託を受ける必要がないこと」、「金銭等の預託の受入れの機会があると投資者被害を誘発するおそれがあること」(高橋編[2004]129頁)

金融商品仲介業務と金銭等の受入れの関連性、顧客の利便性に基づく批判(洲崎ほか[2004]50-51頁〔河本一郎〕)

 預り金が禁止される金融業者

金融商品仲介業

顧客から金銭等の預託を受けることの禁止(金融商品取引法66条の13、201条4号)

金融商品仲介業者に期待される役割の限定

「仲介者」である金融商品取引業者等と顧客を「仲介」する者としての位置づけ

金融商品仲介業者の資質・能力に対する評価

「……立法者は、金融商品仲介業者は証券会社と顧客の『つなぎ』に徹するべきであって、顧客の投資活動に深く関与することは妥当でないと考えているように思われます。」(洲崎ほか[2004]40頁〔洲崎博史〕)

「……金融商品仲介業者には証券会社を代理し得るほどの専門性を具備することは求められてないとみられる。」(戸田[2009]505頁)

金銭等の預託のニーズ

「また、売買代金の支払いや受取りも銀行振込みによって行われることが一般化しており、顧客が金融商品仲介業者に金銭を預託するニーズはあまりないといえそうである。」(神田ほか編[2014]984頁注3〔洲崎博史〕)

 預り金が禁止される金融業者

金融サービス仲介業

顧客から金銭等の預託を受けることの禁止(金融サービス提供法27 条本文、88条2号)

「流用・費消等による顧客被害を未然に防止することを図るため、金融サービス仲介業者には、原則として顧客からの財産の受入れを禁止することとしている(……)。」(岡田ほか[2021]11頁)

 預り金が禁止される金融業者

 金融サービス仲介業

決済サービスを提供する方法

顧客から金銭を預かる方法

「顧客の保護に欠けるおそれが少ない場合として内閣府令で定める場合」(金融サービス提供法27条ただし書)

資金移動業の兼業など(金融サービス仲介業者等に関する内閣府令46条)

顧客から金銭を預からない方法

電子決済等代行業の兼業など

cf. 電子金融サービス仲介業務(金融サービス提供法13条1項6号)を行う金融サービス仲介業者による電子決済等代行業の届出(金融サービス提供法18条1項)

 預り金が禁止される金融業者

電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業

利用者から金銭その他の財産の預託を受けることの禁止(改正資金決済法62条の13本文、110条2号、改正銀行法52条の60の13本文。63条の2第2号)

「仲介者が取り扱う電子的支払手段はそれ自体決済手段であり、投資対象ではないこと等から、(暗号資産交換業等と異なり、利用者による機動的な売買を可能とするために)仲介者が別途利用者の金銭を管理することは通常想定されない。」(金融審議会・資金決済ワーキング・グループ[2022]28 頁注101)

預り金が禁止される金融業者

電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業

利用者から金銭その他の財産の預託を受けることの禁止(改正資金決済法62条の13本文、110条2号、改正銀行法52条の60の13本文。63条の2第2号)

批判

特定信託受益権の場合、顧客は必ずしも信託銀行や信託会社に別途金銭を預託しているわけではない。……顧客は第一種金商業者兼電子決済手段等取引業者に金銭をあらかじめ預託し、適宜のタイミングで電子決済手段に交換することができるほうが利便性が高い(……)。特定信託受益権……の典型的な利用例は、ブロックチェーン上のトークンであることを利用して、セキュリティトークンや暗号資産との決済に利用することであるから、電子決済手段等取引業者が金銭の預託ができないとすると、この業登録の取得のインセンティヴが大きく低下すると考えられる。」(河合[2022]31-32頁)

預り金が禁止される金融業者

電子決済手段等取引業、電子決済等取扱業

預り金禁止の趣旨との関係

金銭の分別管理・信託による保全(河合[2022]32頁注18)

電子決済手段等取引業者による決済サービスの提供の可能性

顧客から金銭を預かる方法

資金移動業の兼業など

顧客から金銭を預からない方法

電子決済等代行業の兼業など

cf. 電子決済等取扱業者による電子決済等代行業を営むことの許容(銀行法52条の60の8第1 項)

 預り金禁止の根拠が金銭以外の支払手段について有する意義

新たな支払手段の登場

「『預金受入れ』の取扱いについては、IT の進展等により、資産を預けて電子的に決済に利用できるなど、預金類似とも言える手段が登場したり、あるいは、将来的にデジタル通貨のようなものが登場したりしてくると、預金の位置付けが大きく変容し、その重要性が相対的なものになっていく可能性があることにも留意する必要があると考えられる。」(金融審議会・金融制度スタディ・グループ[2018]11頁)

詐欺的方法による金銭以外の支払手段の受入れ

出資法2条2項の「金銭」の解釈

預金

脱法行為の処罰(出資法8条3項2号)

「これは、経済情勢が変化し、業者が常に新しい脱法方法を案出するから必要な規定であると説かれている。例えば、法文に『金銭』とあるので『収入印紙』とか『物品』を授受しておき、別にこれを金銭に交換するなどの脱法も抑えなければならない。」

金銭以外の支払手段の預かりに対する規制

受け入れた支払手段の決済利用

支払手段が返還されないリスクの低減、システミック・リスクの顕在化の回避

資産保全(分別管理・信託など)

受け入れた支払手段を原資とする「資金」供与?

参考文献

井上俊剛監修『逐条解説 2017年銀行法等改正』(商事法務・2018年)

岩原紳作『電子決済と法』(有斐閣、2003年)

岡田大ほか「『金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律』の解説(2・完)――金融商品の販売等に関する法律等関連」NBL1191号(2021年)7頁

小田部胤明『出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律と判例の解説〔増補第5 版〕』(東洋企画・2004年)

河合健「ステーブルコインに対する法規制の実務上の論点および関連ビジネスへの影響金法

2193号(2022年)22頁

神田秀樹ほか編著『金融商品取引法コンメンタール2 業規制』(商事法務・2014年)

京藤哲久「出資法の預り金・出資金規制について」『西原春夫先生古稀祝賀論文集 第3巻』(成文堂・1998年)341頁

金融審議会・金融制度スタディ・グループ「中間整理――機能別・横断的な金融規制体系に向けて」https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20180619/chukanseiri.pdf(2018年)

金融審議会・資金決済ワーキング・グループ「報告」

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20220111/houkoku.pdf(2022年)

金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」

https://www.fsa.go.jp/news/21/kinyu/20100223-1/00.pdf(2010年)

参考文献

芝原邦爾「出資法をめぐる法解釈上の諸問題」芝原邦爾『経済刑法研究 上』(有斐閣・2005年)383頁〔初出1996年〕

白川方明『現代の金融政策――理論と実際』(日本経済新聞出版社・2008年)

洲崎博史ほか「平成一五年の証券取引法等の改正Ⅲ――証券仲介業制度」別冊商事法務275 号(2004年)37頁

関口健太「金融規制法における『預金受入れ』の位置付けについての一考察――スイスにおける改正銀行法を手掛かりとして」金融研究39巻2号(2020年)55頁

高橋康文編『詳解 証券取引法の証券仲介業者、主要株主制度等――平成15年における証券取引法等の改正』(大蔵財務協会・2004年)

高橋康文編著『詳説資金決済に関する法制』(商事法務・2010年)

津田実「出資の受入預り及び金利等の取締等に関する法律」曹時6巻7号(1954年)767頁

戸田暁「金融取引における『仲介業者』の法規整――証券取引の分野を中心として」川濵昇ほか編『森本滋先生還暦記念企業法の課題と展望』(商事法務・2009年)491頁

プリペイド・カード等に関する研究会『プリペイド・カード等に関する研究会報告』(1989年)

吉田淳一「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律の概要」捜研17巻10号(1968 年)37頁

   

令和3年改正民法・不動産登記法研修会

「相続登記義務化関連法の解説」~改正不動産登記法が司法書士実務に与える影響について~

講師 海野禎子(神奈川県司法書士会会員)

司法書士法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=353M50000010055

(司法書士法人の業務の範囲)

第三十一条 法第二十九条第一項第一号の法務省令で定める業務は、次の各号に掲げるものとする。

一、二略

三 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催、出版物の刊行その他の教育及び普及の業務

法務省 不動産登記法新旧対照表

https://www.moj.go.jp/content/001347358.pdf

成立日及び公布日

令和3年4月21日

「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律悦第25号成立(同月28日公布。)。

施行期日

原則として公布後2年以内の政令で定める日(相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後3年,住所等変更登記の申請の義務化関係の改正については公布後5年以内の政令で定める日。)。

不動産登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(建物の表題登記の申請)

第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

民法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

(共同相続における権利の承継の対抗要件)

第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化の両面

発生の予防・・・不動産登記法を改正。新法を制定し,相続等によって土地の所有権を取得した者が,一定の要件を満たすことによりその土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設。

利用の円滑化・・・民法等を改正,所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するなどの措置を講じる。

民法改正の概要

令和5年(2023年)4月1日施行

隣地使用権・・・改正209条

竹木の枝の切除等・・・改正233条

継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権・・・改正213条の2,213条の3

共有物を使用する共有者と他の共有者との関係等・・・改正249条2項・3項

共有物の変更行為・・・改正251条

共有物の管理・・・改正252条

共有物の管理者・・・改正252条の2

変更・管理の決定の裁判の手続・・・改正非訟事件手続法85条

裁判による共有物分割・・・改正258条

相続財産に属する共有物の分割の特則・・・改正258条の2

所在等不明共有者の持分の取得・・・改正262条の2、非訟事件手続法87条

所在等不明共有者の持分の譲渡・・・改正262条の3、非訟事件手続法88条

相続財産についての共有に関する規定の適用関係・・・改正898条2項

所有者不明土地管理命令・・・改正264条の2

所有者不明土地管理人の権限・・・改正264条の3

所有者不明土地等に関する訴えの取扱い・・・改正264条の4

所有者不明土地管理人の義務・・・改正264条の5

所有者不明土地管理人の解任及び辞任・・・改正264条の6

所有者不明土地管理人の報酬等・・・改正264条の7

所有者不明土地管理制度における供託等及び取消し・・・改正非訟事件手続法90条

所有者不明建物管理命令・・・改正264条の8

管理不全土地管理命令・・・改正264条の9

管理不全土地管理人の権限・・・改正264条の10

管理不全土地管理人の義務・・・改正264条の11

管理不全土地管理人の解任及び辞任・・・改正264条の12

管理不全土地管理人の報酬等・・・改正264条の13

管理不全土地管理制度における供託等及び取消し・・・改正非訟事件手続法91条

管理不全建物管理命令・・・改正264条の14

相続財産の管理・・・改正897条の2

相続の放棄をした者による管理・・・改正940条

不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託等及び取消し・・・改正家事事件手続法146条の2,147条,190条の2第2項

相続財産の清算、相続財産の清算人への名称の変更・・改正936条,952条~958条

20230425官報

民法第952条以下の清算手続の合理化・・・改正952条2項,957条1項

期間経過後の遺産の分割における相続分・・・改正904条の3

遺産の分割の調停又は審判の申立ての取下げ・・・改正家事事件手続法199条2項,273条2項・3項

遺産の分割の禁止・・・改正908条2項~5項

所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み

相続登記等の申請の義務付け

令和6年(2024年)4月1日施行

 不動産の所有権の登記名義人が死亡し,相続等による所有権の移転が生じた場合において,下記の場合に公法上の登記申請義務が課される。不動産の所有権の登記名義人について相続(特定財産承継遺言を含む。)や遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)の開始があったときは,当該相続等により当該不動産の所有権を取得した者は,自己のために相続の開始があったことを知り,かつ,当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に,所有権の移転の登記を申請しなければならない(改正不動産登記法76条の2第1項(以下改正法という))。(注1・2)

 法定相続分での相続登記がされた後に遺産の分割があったときは,当該遺産の分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は,当該遺産の分割の日から3年以内に,所有権の移転の登記を申請しなければならない(改正法76条の2第2項)。(注2)相続人申告登記の申出をした者が,その後の遺産の分割によって所有権を取得したときは,当該遺産の分割の日から3年以内に,所有権の移転の登記を申請しなければならない(改正法76条の3第4項)。

(注1)相続人申告登記の申出をした場合には登記申請義務を履行したものとみなす(改正法76条の3第2項)。

(注2)代位者その他の者の申請又は嘱託により,当該各規定による登記がされた場合には,適用しない(つまり,自ら申請していない者についても登記申請義務を免れる)(改正法76条の2第3項)。

登記申請義務の対象

対象となる財産・・・土地及び建物(法2条1号に規定する不動産)。

対象となる権利・・・所有権に限る。

相続登記等の申請義務違反の効果

 申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは,10万円以下の過料に処する(改正164条1項)。なお,当該過料の罰則については登記官が裁判所に対して過料事件の通知(過料通知)を行うことになるが,この具体的手続きについては,法務省令等に所要の規定を設けるものとされている。

 過料は本気?一筆、一棟単位?まず、相続人申告登記申請。登記申請単位だと不公平感もあると感じます。

正当な理由があると考えられる例

 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り,戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する場合。遺言の有効性や遺産の範囲等が争われている場合。申請義務を負う相続人自身に妊娠・出産・重病・介護等の事情がある場合。

3年以内に遺産分割が成立しなかった場合

所有権移転登記(相続人申告登記をした場合)・・・申出を受けて登記官が職権で登記(単独申出可・登記申請より簡易)。持分は登記されない。

法定相続分による相続登記・・・第三者が代位申請したケースは義務履行があったとみなされる。

法定相続分の割合で共有相続開始に遡ってA単独所有

遺産分割成立・・・「相続」による所有権移転登記(相続人申告登記をした場合)、「遺産分割」による単有とする所有権更正登記 (法定相続分による相続登記をした場合)

遺言書があった場合・・・遺贈又は相続による移転登記申請か、相続人申告登記申出

・申出を受けて登記官が職権で登記(単独申出可・登記申請より簡易)

・持分は登記されない

・遺言発見前に相続人申告登記がされていれば,重ねて相続人申告登記等をする必要はない

(*)改正法により,特定財産承継遺言,相続人に対する遺贈のいずれによるものかを問わず,その所有権の移転の登記は単独申請可能とされた(改正法63条3項)。

相続放棄者がいる場合の取り扱い

相続放棄者の相続登記申請義務・・・負わない。初めから相続人ではないから。

 登記申請義務を履行すべき期間の始期・・・自己のために相続の開始があったことを知った日とは被相続人である所有権登記名義人の死亡を知った日であり,「当該所有権を取得したことを知った日」とは相続放棄により(当該相続放棄をした者を除いた上で算定される。)。

相続放棄をする前に相続人申告登記をしていた場合・・・Aの登記申請義務は履行したものと扱われる(改正法76条の3第2項。)。

 相続放棄をする前にAが法定相続分に従った相続登記をしていた場合・・・相続人をAのみとする相続登記の更正登記をしなくても,当初の法定相続分の登記(相続放棄前の法定相続分による登記)をしていればAの申請義務違反はないと考えられる(正しい割合による相続登記を申請しない「正当な理由」があるとして過料の罰則の適用はない)。

施行の際に所有権の登記名義人が死亡している不動産についての経過措置

 今回の改正法施行日前に相続が発生していたケースについても,登記の申請義務は課される。具体的には,施行日と自己のために相続の開始があったことを知り,かつ所有権を取得したことを知った日のいずれか遅い日から法定の期間(3年間)が開始する(改正法附則5条6項)。

相続人申告登記の創設

令和6年(2024年)4月1日施行

死亡した所有権の登記名義人の相続人による申出を受けて登記官がする登記として,相続人申告登記を創設する(改正法76条の3)。

・所有権の登記名義人について相続が開始した旨

・自らがその相続人である旨

を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで,申請義務を履行したものとみなされる(登記簿に氏名・住所が記録された相続人の申請義務のみ履行したことになる。)

 所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は,法務省令で定めるところにより,登記官に対し,所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる(注1)。

 登記官は,前記の規定による申出があったときは,職権で,その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる(注2)。

(注1)これは,相続を原因とする所有権の移転の登記ではなく,各事実についての報告的な登記として位置付けられるものである。

(注2)相続人が複数存在する場合でも特定の相続人が単独で申出可(他の相続人の分も含めた代理申出も可)

付記1号 相続人申告 原因 年月日相続

氏名の申告相続人

住所氏名

年月日付記

付記2号相続人申告 原因 年月日相続

氏名の申告相続人

住所氏名

年月日付記

相続人による申出の際の添付書類

 申出人は当該登記名義人の法定相続人であることを証する情報(その有する持分の割合を証する情報を含まない。)を提供しなければならない。具体的には,単に申出人が法定相続人の一人であることが分かる限度での戸籍謄抄本を提供すれば足りる(例えば,配偶者については現在の戸籍謄抄本のみで足り,子については被相続人である親の氏名が記載されている子の現在の戸籍謄抄本のみで足りる)(部会資料P53・6)。

相続人申告登記の処分性

 相続人申告登記の申出を却下した登記官の判断には,処分性を有すると解されている。よって,審査請求や抗告訴訟の対象となる(ガイドブックP37)。その申出に対する却下事由や登記官が却下をする際の手続きに関する具体的な規律については法務省令に委任することが想定(部会資料 P57~58)。

相続人申告登記後の住所変更

 相続人申告登記後に,申出者の氏名又は住所について変更があった場合には,表示変更登記を申請する必要はない。

相続人申告登記の申出と法定単純承認事由

 民法921条1号では,「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし保存行為は除く)」と規定していることから,相続人申告登記の申出が本号の「処分」に該当するかが問題となる。この点,相続人申告登記は,所有権の登記名義人に相続が発生した事及び自らが法定相続人である旨を申し出てこれを公示する報告的な登記に留まる為,同号の「処分」には該当しないと解される(ガイドブックP38)。

相続登記等の簡略化

令和5年(2023年)4月1日施行

遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化

相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記手続を簡略化するため,共同申請主義(法60)の例外を規定を設ける。具体的には,遺贈(相続人に対する遺贈に限る)による所有権の移転の登記は,不動産登記法第60条の規定にかかわらず,登記権利者が単独で申請することができる(改正法63条3項)。

遺贈登記単独申請が適用される対象

対象となる受遺者・・・相続人に限る。

対象となる権利・・・所有権に限る。

昭和33年4月28日民甲779局長通達の変更。

法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化

 法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続を簡略化するため,法定相続分での相続登記がされている場合において,次に掲げる登記をするときは,更正の登記申請によることができるものとした上で,登記権利者が単独で申請することができるものとした。

遺産の分割の協議又は審判若しくは調停による所有権の取得に関する登記申請

他の相続人の相続の放棄による所有権の取得に関する登記申請

特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記申請

相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記申請

改正法

登記の目的 更正登記

遺産分割、相続放棄、特定財産承継遺言、相続人への遺贈

申請構造 単独申請

登録免許税 不動産1個当たり1000円

登記の目的 更正登記

申請構造 単独申請

登録免許税 不動産1個当たり1000円

所有権移転

年月日相続

共有者住所持分氏名

共有者住所持分氏名

共有者住所持分氏名

付記1号

何番所有権更正

年月日遺産分割

住所氏名

 権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符号の表示

 公布後5年以内施行(2026年予定)

 所有権登記名義人の相続に関する不動産登記情報の更新を図る方策の一つとして,登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から取得した死亡情報に基づいて法務省令で定めるところにより,職権で,当該所有権の登記名義人について死亡の事実を示す符号を表示することができる制度を新設した(改正法76条の4)。なお,符号の表示を広く実施していく観点から,住基ネット以外の情報源(固定資産課税台帳等)からも死亡情報の把握の端緒となる情報を取得する予定である(改正法151条参照)。

対象となる登記名義人・・自然人(部会資料 P53・11)

対象となる権利・・・所有権

・所有不動産記録証明制度の創設

公布後5年以内施行(2026年予定)

自然人及び法人を対象とする所有不動産記録証明制度として,次のような規律を設けるものとする(改正法119条の2)。

 何人も,登記官に対し,手数料を納付して,自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。後記②において同じ。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは,その旨)を証明した書面(以下「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる(改正法119条の2第1項)。(注1・2)

 所有権の登記名義人について相続その他の一般承継があったときは,相続人その他の一般承継人は,登記官に対し,手数料を納付して,当該所有権の登記名義人の所有不動産記録証明書の交付を請求することができる(改正法119条の2第2項)。(注2)交付の請求は,法務大臣の指定する登記所の登記官に対し,法務省令で定めるところにより,することができる(改正法119条の2第3項)。

 不動産登記法第119条第3項及び第4項の規定は,所有不動産記録証明書の手数料について準用する(改正法119条の2第4項)。

(注1)自然人だけではなく法人についても対象となる。

(注2)代理人による交付請求も許容することを前提としている。

所有不動産記録証明制度の限界

 現在の登記記録に記録されている所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所は過去の一定時点のものであり,必ずしもその情報が更新されているものではないことなどから,請求された登記名義人の氏名又は名称及び住所等の情報に基づいてシステム検索を行った結果を証明する所有不動産記録証明制度は,あくまでもこれらの情報に一致したものを一覧的に証明するものであり,不動産の網羅性等に関しては技術的な限界があることが前提である(要綱案P21)。

所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み

所有権登記名義人の氏名又は名称及び住所の変更登記申請の義務化

公布後5年以内施行(2026年予定)

 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは,当該所有権の登記名義人は,その変更があった日から2年以内に,氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない(改正法76条の5)。前記の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは,5万円以下の過料に処する(改正法164条2項)(注)。

(注)裁判所に対する過料事件の通知の手続等に関して法務省令等に所要の規定を設けるものとする。

 なお,相続登記の申請義務違反過料罰則と同様に,登記官が裁判所に対して過料事件の通知(過料通知)を行うことになるが,この具体的手続きについては,法務省令等に所要の規定を設けるものとされている。

住所変更登記等の申請の義務化に関する経過措置について

施行日前に住所等変更が発生していたケースについても,登記の申請義務は課される。具体的には,施行日と所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があった日のいずれか遅い日から法定の期間(2年間)が開始する(改正法附則第5条第7項)。

職権による所有権登記名義人の氏名又は名称及び住所の変更登記

公布後5年以内施行(2026年予定)

 改正法は,登記官が住民基本台帳ネットワークシステム又は商業・法人登記のシステムから所有権の登記名義人の氏名及び住所についての変更の情報を取得し,これを不動産登記に反映させるため,次のような規律を設けるものとする(改正法76条の6。)。上記により,登記官が職権登記をした場合は,表示変更登記申請の義務は履行済みと取り扱われる。住所等の変更があったときは,法務局側から所有権の登記名義人に対し,住所等の変更登記をすることについて確認を行い,その了解(「申出」と扱う)を得たときに,登記官が職権的に変更の登記をする。(注1)

 法務省内のシステム間連携により,法人の住所等に変更が生じたときは,商業・法人登記のシステムから不動産登記のシステムにその変更情報を通法人の場合 知することにより,住所等の変更があったことを把握する。(注2)取得した情報に基づき,登記官が職権で変更登記をする。

(注1)最新の住所を公示することに支障がある者(DV被害者等)も存在し得ることや,個人情報(プライバシー)保護の観点から住民基本台帳を閲覧することができる事由を制限している住民基本台帳制度の趣旨等を踏まえ,法務局側から,所有権の登記名義人に変更登記をすることについて確認を行い,その了解を得たときに,登記官が職権的に変更登記をすることとしている。

(注2)改正法では,所有権の登記名義人が法人であるときは,その会社法人等番号を登記事項とすることとされており(改正法73条の2第1項第1号),この情報連携においても会社法人等番号の利用を想定している。

不動産登記の公示機能をより高める観点等からの改正

所有権の登記の登記事項の追加

令和6年(2024年)4月1日施行

登記名義人の特定に係る登記事項の見直し

 所有権の登記名義人が法人であるときは,会社法人等番号(商業登記法7条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。)その他の特定の法人を識別するために必要な事項として法務省令で定めるものを登記事項とする(改正法73条の2第1項第1号)。なお,施行前に既に所有権の登記名義人となっている法人については,法務省令で定めるところにより,登記官が職権で改正法73条の2第1項第1号に規定する会社法人等番号を登記することを予定している(具体的には,法人から申出をしてもらい,登記官が職権で登記する流れが想定されている)。

現行法改正法

申請情報として提供(改正法73条の2第1項第1号)

会社法人等番号を添付情報として提供(中間試案の補足説明P210)。

外国に住所を有する所有権登記名義人の国内における連絡先となる者の登記

 海外在留邦人の増加や海外投資家による不動産投資の増加により,不動産の所有者が国内に住所を有しないケースが増加しつつある。こうしたケースにおける所有者の把握は,基本的に登記記録上の氏名・住所を手掛かりとするほかないが,日本以外の国においては,その住所等の情報を詳細に管理していないこともあり得,その所在の把握や連絡を取ることに困難を伴うことが少なくない。そこで,改正法は,所有権の登記名義人が国内に住所を有しないときは,その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるものを登記事項とする旨改正した(改正法73条の2第1項第2号)。

 国内連絡先となる者については自然人でも法人でも可能でとされるが,不動産関連業者や司法書士等であることが期待されている(部会資料 P57・16)。施行後,この制度が定着するまでの間は「連絡先がない旨の登記」も許容する予定である(詳細は法務省令で定めることとされる)。連絡先として第三者の氏名又は名称及び住所を登記する場合には,当該第三者の承諾があることが必要である(要綱案P20)。

要件

・当該第三者は国内に住所を有するもの(要綱案P20)。

 連絡先となる者の氏名又は名称及び住所等の登記事項に変更があった場合には,所有権の登記名義人のほか,連絡先として第三者が登記されている場合には当該第三者が単独で変更の登記の申請をすることができるものとする(要綱案 P20)。国内に居住していた所有権の登記名義人が海外へ転居した場合には,国内居住者の海外へ 所有権登記名義人住所変更登記の申請が義務とされるので(改正法76の転居 条の5),その申請の際に併せて国内における連絡先に関する登記事項の登記の申請も必要となる(部会資料P35・15)。

外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し

 外国に住所を有する外国人(法人を含む。)が所有権の登記名義人となろうとする場合に必要となる住所証明情報については,次のいずれかとする(要綱案 P20)。具体的には,法務省令又は通達等で対応されるものと予想。

 外国政府等の発行した住所証明情報

  住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類(住所記載の旅券や身分証明書等)の写しが添付されたものに限る。)

登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化

令和5年(2023年)4月1日施行

公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例

 登記記録上存続期間が満了している地上権等の権利や,買戻期間が経過している買戻特約など,既にその権利が実体的には消滅しているにもかかわらず,その登記が抹消されることなく放置され,権利者(登記義務者)が不明となったり,その抹消手続きに手間やコストを要するケースが少なからず存在する。

 不動産登記法第70条1項の登記が地上権,永小作権,質権,賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり,かつ,登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において,相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは,その者の所在が知れないものとみなして,公示催告の申立てをすることを認める旨の改正(改正法70条1・2項)。

仮登記は入らない。

改正法70条2項

 登記権利者は,共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が知れないためその者と共同して権利に関する登記の抹消を申請することができないときは,非訟事件手続法99条に規定する公示催告の申立てをすることができる。(注)

公示催告の申立ての要件

地上権,永小作権,質権,賃借権若しくは採石権に関する登記

 登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないとみなして公示催告の申立てをすることができる(改正70条2項)。具体的には実際に現地を訪れての調査までしなくても良いものと考えられる(中間試案の補足説明P206)。登記権利者は単独で抹消登記を申請することができる(改正法70条3項。)。

(注)登記義務者の相続人の所在が判明しない場合にも適用するため,「登記義務者」を「共同して登記の抹消の申請をすべき者」に改めた(部会資料P53・16)。

買戻しの特約に関する登記の抹消手続の簡略化

 買戻しの特約に関する登記がされている場合において,その買戻しの特約がされた売買契約の日から10年を経過したときは,実体法上その期間が延長されている余地がないことを踏まえ,登記権利者(売買契約の買主)単独で当該登記の抹消を申請することができる(改正法69条の2)。なお,登記された買戻しの期間が10年より短い場合で,その期間を満了したときは,可能。

 登記官が買戻特約の登記を抹消したときは登記義務者に対しその旨通知することが予定。法務省令に規定を設けることが予定。(部会資料P 60・8。)。

解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化

令和5年(2023年)4月1日施行

 解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続を簡略化する方策として,次の要件を満たす場合,不動産登記法第60条の規定にかかわらず,登記権利者は単独で担保権の登記の抹消を申請することができるものとした(改正法70条の2)。

・担保権の登記義務者が解散した法人であること(注1・2)

・相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお法人の清算人の所在が判明しないこと(注3・4)

・被担保債権の弁済期から30年経過したこと

・その法人の解散の日から30年経過したこと

(注1)担保権とは,先取特権,質権又は抵当権のことである。

(注2)通常の法人解散の手続きを経た場合のみならず,休眠会社又は休眠法人として解散したとみなされた場合(会社法472条1項,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律149条1項,203条1項)や,法人に関する根拠法の廃止等に伴い解散することとされた法人も含まれる(中間試案の補足説明P208)。

(注3)法務省令で定める方法としては,清算人が登記された住所に居住していないことを証する「不在住証明書」や,当該(住所省略)を本籍とする戸籍がないことを証する「不在籍証明書」等の公的な書類を調査したり,住所地への郵便等の不到達等で居住していないことの証明するをすることなどで足り,現地調査までは必要ないと考えられている(ガイドブック P80)。

(注4)清算人が存在しない場合には,裁判所に対してその選任等を請求することは不要(中間試案の補足説明 P209)。

その他の改正

附属書類の閲覧制度の見直し

令和5年(2023年)4月1日施行

登記簿の附属書類(不動産登記法121条1項の図面を除く)の閲覧制度に関し,閲覧可否の基準を合理化する観点等から,次のような規律を設けるものとする(改正法121条)。

 何人も,登記官に対し,手数料を納付して,自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類(不動産登記法121条1項の図面を除く)(電磁的記録にあっては,記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの。後記において同じ)の閲覧を請求することができる。登記簿の附属書類(不動産登記法121条1項の図面及び前記に規定する登記簿の附属書類を除く)(電磁的記録にあっては,記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧につき正当な理由があると認められる者は,登記官に対し,法務省令で定めるところにより,手数料を納付して,その全部又は一部(その正当な理由があると認められる部分に限る)の閲覧を請求することができる。(注)

(注)「正当な理由」の内容は通達等で明確化することを予定している。

 例えば,過去に行われた分筆の登記の際の隣地との筆界等の確認の方法等について確認しようとするケース,不動産を購入しようとしている者が登記名義人から承諾を得た上で,過去の所有権の移転の経緯等について確認しようとするケースなどが想定されている(令和3年民法・不動産登記法改正,相続土地国庫帰属法のポイント(法務省)P20)

 被害者保護のための住所情報の公開の見直し

 令和6年(2024年)4月1日施行

 DV被害者等についても相続登記や住所変更登記等の申請義務化の対象となることに伴い,不動産登記法119条に基づく登記事項証明書の交付等に関し,次のような規律を設けるものとされた(改正法119条6項)。

対象者

 DV防止法,ストーカー規制法,児童虐待防止法上の被害者等を想定(具体的な範囲は今後法務省令で規定予定)

 登記官は,不動産登記法119条1項及び2項の規定にかかわらず,登記記録に記録されている者(自然人であるものに限る。)の住所が明らかにされることにより,人の生命若しくは身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがあるものとして法務省令で定める場合において,その者からの申出があったときは,法務省令で定めるところにより,同条1項及び2項に規定する各書面に当該住所に代わるものとして法務省令で定める事項を記載しなければならない。(注)

(注)対象者が載っている登記事項証明書等を発行する際に,現住所に代わる事項を記載(委任を受けた弁護士等の事務所や被害者支援団体等の住所,あるいは法務局の住所などを記載する事を想定している)(令和3年民法・不動産登記法改正,相続土地国庫帰属法のポイント(法務省)P20)。

共有物の管理の範囲の拡大・明確化

所在等不明共有者がいる場合の変更・管理

管轄裁判所

共有物の所在地の地方裁判所

所在等不明の証明

 例えば、不動産の場合には、裁判所に対し、登記簿上共有者の氏名等や所在が不明であるだけではなく、住民票調査など必要な調査を尽くしても氏名等や所在が不明であることを証明することが必要。

対象行為の特定

加えようとしている変更や、決定しようとする管理事項を特定して申立てをする必要

共有物の管理者

(活用例)共有物の使用者が決定していないケースで、管理者が第三者に賃貸したりするなどして使用方法を決定。

共有者が使用する共有者を決定していたのに、管理者が決定に反して第三者に賃貸した場合には、前記※により善意者を保護。

(例) 遺産として土地があり、A、B、Cが相続人(法定相続分各3分の1)であるケースでは、土地の管理に関する事項は、具体的相続分の割合に関係なく、A・Bの同意により決定することが可能。

裁判による共有物分割

※ 賠償金取得者が同時履行の抗弁を主張しない場合であっても、共有物分割訴訟の非訟事件的性格(形式的形成訴訟)から、裁判所の裁量で引換給付を命ずることも可能。

※ この他に、共有物の分割について共有者間で協議をすることができない場合(例:共有者の一部が不特定・所在不明である場合)においても、裁判による共有物分割をすることができることを明確化(新民法258Ⅰ)

債務名義になるか。

不明相続人の不動産の持分取得・譲渡

 共有者(相続人を含む。)は、相続開始時から10年を経過したときに限り、持分取得・譲渡制度により、所在等不明相続人との共有関係を解消することができる。共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明相続人(氏名等不特定を含む)の不動産の持分を、その価額に相当する額の金銭の供託をした上で、取得することができる(新民法262の2Ⅲ)

 共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明相続人以外の共有者全員により、所在等不明相続人の不動産の持分を含む不動産の全体を、所在等不明相続人の持分の価額に相当する額の金銭の供託をした上で、譲渡することができる(新民法262の3Ⅱ)

※ 異議届出期間満了前に家庭裁判所に遺産分割の請求がされ、異議の届出があれば、遺産分割手続が優先され、持分取得の裁判の申立ては却下

(例)相続人が、やむを得ない事由があることを理由に、具体的相続分による遺産の分割を求めて遺産分割の請求を行い、異議の届出をしたケースなど

※ 共有者が取得する所在等不明相続人の不動産の持分の割合、所在等不明相続人に対して支払うべき対価(供託金の額)は、具体的相続分ではなく、法定相続分又は指定相続分を基準とする(新民法898Ⅱ)。

※ 相続開始時から10年が経過する前でも、所在等不明相続人の土地・建物の持分につき、所有者不明土地・建物管理人を選任することは可能

林野庁

https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/sinrin_keikaku/kyouyuurin.html?s=09

共有者不確知森林制度

共有林の所有者の一部が不明で共有者全員の合意が得られない場合に、一定の裁定手続き等を経て、伐採や造林ができるようにする制度です。

共有林の所有者の一部が特定できない又は所在不明で共有者全員の同意が得られない場合に、市町村長による公告、都道府県知事の裁定等の手続きを経た上で、その者が所有する立木の持ち分を移転すること、共有者に土地の使用権を設定することにより、当該共有林において立木の伐採及び伐採後の造林が可能となります。

・安達敏男・吉川樹士・須田啓介・安藤啓一郎『改正民法・不動産登記法実務ガイドブック』(日本加除出版,2021)

・民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

・民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明

・令和3年民法・不動産登記法改正,相続土地国庫帰属法のポイント(法務省)

https://www.moj.go.jp/content/001355930.pdf

・荒井達也『Q&A 令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響』日本加除出版,2021年

・七戸克彦『新旧対照解説改正民法・不動産登記法』ぎょうせい,2021年

・松嶋 隆弘『民法・不動産登記法改正で変わる相続実務・財産の管理・分割・登記』ぎょうせい,2021年

・松尾 弘『物権法改正を読む:令和3年民法・不動産登記法改正等のポイント』慶応義塾大学出版会,2021年

・岡信太郎『改正のポイントからオンライン申請手続きまで図解でわかる改正民法・不動産登記法の基本』日本実業出版社,2021年

・ジュリスト2021年09 月号[雑誌] 有斐閣,2021年

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