受託者の無限責任の記事について

民事信託実務研究会(谷口毅司法書士主宰)のメールマガジン(2019年7月16日)の記事です。

東京大学出身で日本司法書士会の民事信託に関するチーム、民事信託推進センターで講師などを務めています。

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なぜ、受託者は無限責任を負うのか?

本日は、鳥取の司法書士・行政書士の谷口毅が担当します。

これを書いている今は、ちょうど3連休の最後の夜。

一日中、何百通もの戸籍と格闘していたところです。

さて、簡単なクイズです。

受託者が信託事務を遂行する際に、債務を負った。

受託者はこの債務につき、無限責任を負わなくてはならない。〇か×か。

ちょっと勉強された方なら分かるでしょう。

正解は〇ですね。

ところで、読者のみなさんの中で、受託者が無限責任を負うという根拠の条文を、見つけた方はいらっしゃいますでしょうか?

実は…

信託法の中で…

受託者が無限責任を負うことは、どこにも明記されていません!

いや、敢えて言えば21条2項の反対解釈、とはいえますが、ストレートには書いていません。

一方、合名会社の場合はどうか?

会社法580条などで、「持分会社の債務を弁済する責任を負う」と明記されていますね。

なぜ、持分会社では無限責任を明記されているのに、信託では無限責任が明記されていないのでしょうか?

これ、要するに、「信託には人格がない」ということが影響しています。

合名会社は、会社と社員が別人格です。

会社と社員は同じではないので、会社の責任を社員に負わせるためには、法律に明記する必要があります。

でも、信託には人格がありません。

だから、法律に明記しないでも、無限責任を負うのは当たり前のことなのです。

例えば、受託者が、信託財産に属する家を修理するために工事を発注しました。

しかし、修理業者からすると、信託事務のために修理を発注されているのか、それとも、個人的な都合のために発注されているのかなんて、見分けがつくはずがありません。

受託者が「信託のためにする意思」をもって発注しているのかどうかなど、修理業者の目からは容易には見分けがつかないからです。

また、信託財産も固有財産も、いずれも受託者の所有物なので、所有権は1つしかありません。

これを区別するのは、「分別管理義務」という、信託の内部的な義務に過ぎないため、対外的に主張できるものでもありません。

そうすると、修理業者からみれば、「あなたが発注したんでしょ!?信託だとかなんとか、そんなこと知ったことではないので、あなたの所有する全財産で払ってください!」と言えるのが当然のことになります。

なので、法律の原則から言えば、固有財産と信託財産の区別に関係なく、自分が発注したものは、自分の所有する物で責任を負う、ということになります。

ただ、これを徹底すると、受託者が自分のために負った債務でも、信託財産に強制執行をかけることができてしまいます。

そこで、信託法は、受託者が自分のために負った債務で強制執行や相殺はできない、という特別の定めをおいて、信託財産の保護を図っているのですね。

これが倒産隔離機能です。

まとめると、

合名会社では、法人と社員が別人格であるから、「社員が無限責任である」と書く必要がある。

信託では、信託財産と固有財産が同一人物の所有に属するから、「無限責任である」と書かないでも全部に強制執行できて当然。

ただ、信託財産を守るために、「信託財産への強制執行や相殺は禁止する」という規定を置いている。

ということになります。

ちょっと難しかったでしょうか?

この辺をちゃんと解説している本があまりないので、ちょっと書いてみようと思ったところです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以上引用。下線は私です。

下線部分について考えてみたいと思います。

受託者はこの債務につき、無限責任を負わなくてはならない。

私なら、「受託者は第三者に対する債務につき、信託財産で足りない場合、原則として個人の財産で支払う義務を負う、とします。

無限責任という用語を使いません。根拠は信託法2条、21条、216条。破産法10章の2信託財産の破産です。ストレートに明記されていないから根拠法令ではない、というような考え方は難しいと思います。

「原則として」という用語は、法制審議会で受託者と受益者の無限責任を議論する際に出てきます(法制審議会信託法部会第1回など)。

倒産隔離機能

「倒産隔離」については、大垣尚司ほか編『民事信託の理論と実務』2016日本加除出版P255の見解を採って、私は利用に慎重になります。

合名会社では、法人と社員が別人格であるから、「社員が無限責任である」と書く必要がある。

信託では、信託財産と固有財産が同一人物の所有に属するから、「無限責任である」と書かないでも全部に強制執行できて当然。

この部分については、信託法177条に信う託債権と受益債権の優劣の記載があります。また会社法580条は、「持分会社の債務を弁済する責任を負う」と記載がありますが、その前に「次に掲げる場合には、連帯して、」とあります。条件がついており、持分会社と連帯債務者となる、ということが抜けているのではないかと思われます。

そのように考えると、合名会社の社員も当然に無限責任を負ってはいないということが出来ます。

まとめ

記事では、法人格に焦点が当てられ、合名会社の社員との比較を通じて信託受託者が無限責任であることは、信託法上に明記されない理由がまとめられている。

私は、信託の受託者が(当然に)無限責任を負う、とは考えない。根拠法令も信託法、破産法にある、と考える。

という違いになります。

公益信託法の見直しに関する 中間試案の補足説明

公益信託法の見直しに関する 中間試案の補足説明

平成29年12月 法務省民事局参事官室 目 次

はじめに ……………………………………………………….. 1

第1 新公益信託法の目的………………………………………….. 4

第2 公益信託の定義等……………………………………………. 5 1 公益信託の定義 …………………………………………….. 5 2 公益信託事務の定義………………………………………….. 9 3 現行公益信託法第2条第1項の削除…………………………….. 11

第3 公益信託の効力の発生……………………………………….. 11 1 公益信託の成立の認可……………………………………….. 11 2 不認可処分を受けた信託の効力………………………………… 12

第4 公益信託の受託者…………………………………………… 15 1 公益信託の受託者の資格……………………………………… 15 2 公益信託の受託者の権限,義務及び責任…………………………. 20

第5 公益信託の信託管理人……………………………………….. 21 1 公益信託における信託管理人の必置…………………………….. 21 2 公益信託の信託管理人の資格………………………………….. 22 3 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任……………………… 24

第6 公益信託の委託者…………………………………………… 25 1 公益信託の委託者の権限……………………………………… 25 2 公益信託の委託者の相続人……………………………………. 26

第7 行政庁 …………………………………………………… 27 1 公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁……………………….. 27 2 行政庁の区分 ……………………………………………… 28

第8 公益信託の成立の認可の申請………………………………….. 29 1 公益信託の成立の認可の申請主体………………………………. 29 2 公益信託の成立の認可の申請手続………………………………. 29

第9 公益信託の成立の認可基準……………………………………. 31 1 公益信託の目的に関する基準………………………………….. 31 2 公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準……………………. 32 3 公益信託の信託財産に関する基準………………………………. 35 4 公益信託の信託行為の定めに関する基準…………………………. 39

第10 公益信託の名称…………………………………………… 45

第11 公益信託の情報公開……………………………………….. 47 1 公益信託の情報公開の対象及び方法…………………………….. 47 2 公益信託の公示 ……………………………………………. 48

第12 公益信託の監督…………………………………………… 49 1 行政庁の権限 ……………………………………………… 49 2 裁判所の権限 ……………………………………………… 51

第13 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任………………… 52 1 公益信託の受託者の辞任……………………………………… 52 2 公益信託の受託者の解任……………………………………… 54 3 公益信託の新受託者の選任……………………………………. 57

第14 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任…………. 59 第15 公益信託の変更,併合及び分割………………………………. 61 1 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更…………….. 61 2 公益信託の目的の変更……………………………………….. 67 3 公益信託の併合・分割……………………………………….. 70

第16 公益信託の終了…………………………………………… 72 1 公益信託の終了事由…………………………………………. 72 2 公益信託の存続期間…………………………………………. 73 3 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了………………….. 74 4 公益信託の終了命令…………………………………………. 77 5 公益信託の成立の認可の取消しによる終了……………………….. 78

第17 公益信託の終了時の残余財産の処理…………………………… 80 1 残余財産の帰属権利者の指定………………………………….. 80 2 最終的な残余財産の帰属……………………………………… 82

第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等………………. 83 1 公益先行信託 ……………………………………………… 83 2 公益信託から受益者の定めのある信託への変更……………………. 84 3 残余公益信託 ……………………………………………… 84 4 受益者の定めのある信託から公益信託への変更……………………. 85

第19 その他 …………………………………………………. 87 1 信託法第3条第3号に規定する方法による公益信託………………… 87 2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い…………….. 88 3 罰則 …………………………………………………….. 90 4 その他 …………………………………………………… 91 1

はじめに 法制審議会信託法部会(部会長:中田裕康早稲田大学大学院教授)(以下「部会」 という。)は,平成29年12月12日,「公益信託法の見直しに関する中間試案」 (以下「試案」という。)を取りまとめた。 旧信託法(大正11年法律第62号)は大正11年の制定以来大きな見直しがされ てこなかったが,わが国の社会経済活動の発展・多様化や海外における法整備の動き に対応した抜本的な見直しの必要性が認識されるようになったことから,平成16年 9月8日,法制審議会第143回総会において,法務大臣から旧信託法を全面的に見 直してその現代化を図ることを目的とする諮問第70号がされた。法制審議会に対す る諮問事項は,「現代社会に広く定着しつつある信託について,社会・経済情勢の変 化に的確に対応する観点から,受託者の負う忠実義務等の内容を適切な要件の下で緩 和し,受益者が多数に上る信託に対応した意思決定のルール等を定め,受益権の有価 証券化を認めるなど,信託法の現代化を図る必要があると思われるので,その要綱を 示されたい。」というものである。 これを受け,専門部会として設置された信託法部会では,平成16年10月から平 成18年1月まで30回にわたり審議が行われ(その間,平成17年7月15日に信 託法改正要綱試案が決定され,補足説明とともにパブリックコメントに付されている。), 平成18年1月20日に信託法改正要綱案が決定された。そして,同年2月8日,法 制審議会第148回総会において信託法改正要綱が決定され,「諮問第70号につい ては,現在,信託法部会において審議中であるが,私益信託に関する制度の部分につ き,別紙(信託法改正要綱)のとおり答申する。」と法務大臣に答申された。 このように,平成18年の信託法改正要綱が「私益信託に関する制度の部分につき」 答申された理由は,その当時,民間の資金を利用して公益活動を行うという点で公益 信託と社会的に同様な機能を営む公益法人制度の全面的な見直し作業が並行して進ん でいたことによる。公益法人制度に関しては,平成18年5月,第164回国会(通 常国会)において公益法人制度改革3法(平成18年法律第48号,同第49号,同 50号)が成立し,公益法人の主務官庁による許可・監督制は廃止された。 そして,平成18年の第165回国会(臨時国会)において新信託法(平成18年 法律第108号。以下「信託法」という。)が成立した。もっとも,旧信託法のうち 公益信託に関する部分については,上記のような経緯から実質的な改正が行われず, 旧信託法の法律番号を付けたまま,その法律名を「公益信託ニ関スル法律」(以下「現 行公益信託法」という。)と改正した上で,旧信託法第66条以下の規定の内容を基 本的に維持し,新信託法との調整を図る観点から若干の改正が行われたにとどまった。 そのため,信託法制定時の衆・参両院の附帯決議において「公益信託制度については, 公益法人と社会的に同様の機能を営むものであることに鑑み,先行して行われた公益 2 法人制度改革の趣旨を踏まえつつ,公益法人制度と整合性のとれた制度とする観点か ら,遅滞なく,所要の見直しを行うこと」とされた。このように,平成18年の時点 において,現行公益信託法については,公益法人制度改革の趣旨を踏まえつつ,信託 制度と法人制度との差異を適切に考慮し,公益法人と公益信託の間で整合性のとれた 制度設計をするための将来的な見直しが予定されていた。 その後,平成20年12月から,旧民法下において設立された公益法人について, 新たな公益法人制度の下での公益社団法人・公益財団法人への移行が行われていたが, 平成25年11月に5年間の移行期間が満了した。 これを受け,法務省は,現行公益信託法の見直しの検討を開始し,長らく休会中と なっていた部会を平成28年6月の第31回会議から再開した。部会ではこれまでに 計17回の審議が行われており,平成29年12月の第47回会議で試案が取りまと められるとともに,事務当局においてこれを公表し,意見照会の手続を行うことが了 承された。 試案の要点,ポイントは3点ある。 1点目は,公益信託の信託事務及び信託財産の拡大である。現行公益信託法の下で は,主務官庁による許可の指針となっている「公益信託の引受け許可審査基準等につ いて」(平成6年9月13日公益法人等指導監督連絡会議決定。以下「許可審査基準」 という。)の存在等により,公益信託の利用は,委託者が金銭を信託財産として受託 者である信託銀行(「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律により同法第1条第 1項(兼営の認可)に規定する信託業務を営む同項に規定する金融機関」のことを指 す。以下本試案において同じ。)に拠出し,信託銀行がそれを用いて不特定多数の学 生に対する奨学金の支給や研究者等に対する研究費の助成を行うものに事実上限定さ れている。これを見直し,公益信託の信託財産として,金銭以外の財産,例えば不動 産や有価証券も許容し,公益信託の受託者が,奨学金の支給や研究費の助成等に加え, 美術館や学生寮の運営等の公益信託事務を行うことを許容することが提案されている (試案の第9の2及び第9の3(1))。 2点目は,公益信託の受託者の拡大である。これまでの公益信託の受託者はほぼ信 託銀行に限られてきたが,上記のように公益信託の信託事務や信託財産を拡大する場 合には,それを遂行する能力を有する多様な受託者を確保するため,受託者の担い手 を信託銀行以外の法人や企業にも拡大する必要があることについては部会で異論がな い。他方で,公益信託事務が適正かつ安定的に実施されることも重要であり,公益信 託事務の担い手としての受託者の範囲をどのように画するべきか,法人に加えて自然 人を受託者とすることを認めるかが論点となっている(試案の第4の1(1))。 3点目は,主務官庁による許可・監督制の廃止である。現行公益信託法の下では奨 学金支給なら主に文部科学省,自然環境の保全なら主に環境省というようにそれぞれ 3 所管の主務官庁が公益信託を許可・監督する仕組みが採られてきた。しかし,平成1 8年の法改正の際に主務官庁制を廃止した公益法人と整合性を図り,主務官庁制を廃 止することには部会で異論がなく,新たな公益信託の成立の認可・監督は,民間の有 識者から構成される委員会の意見に基づいて,特定の行政庁が行うものとすることが 提案されている。それに伴い,新たな公益信託においては信託管理人を必置とし,信 託内部の自律的ガバナンスを行政庁が補完する仕組みとすることが想定されている(試 案の第2の3,第5の1,第7)。 以上のポイントとなる点のほか,試案においては,新たな公益信託がより利用者に とって使いやすい仕組みとなることを重視する観点から,税法や信託業法等の関連法 令も視野に入れつつ,新たな公益信託の成立の認可や,監督・ガバナンスの具体的な 仕組み,公益信託の変更及び併合・分割,終了等の幅広い事項について現時点におけ る部会の議論を集約した案が提示されている。 また,現行公益信託法の法律名,条文が大正時代の片仮名文語体のままとなってい ることも改善する必要があり,これらを現代語化することについても部会で異論のな い方針となっている。 今後,部会においては,試案に対して寄せられた意見等を踏まえ,引き続き審議を 行うことが予定されている。 なお,この補足説明は,試案を公表するに当たり,その内容の理解に資するため, 試案に掲げられた各項目について,その趣旨等を補足的に説明するものであり,事務 当局である法務省民事局参事官室の責任において作成したものである。 4 第1 新公益信託法の目的 新公益信託法は,公益信託の成立の認可を行う制度を設けるとともに, 受託者による公益信託事務の適正な処理を確保するための措置等を定める ことにより,民間による公益活動の健全な発展を促進し,もって公益の増 進及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とするものとする。 (補足説明) 現行公益信託法には,その法律の目的を表す規定はない。 しかし,公益信託は,民間の資金を活用して公益活動を行うための制度であるとこ ろ,同様の社会的機能を有する公益法人について定めた公益社団法人及び公益財団法 人の認定等に関する法律(以下「公益法人認定法」という。)や,社会貢献活動を行う 特定非営利活動法人について定めた特定非営利活動促進法(以下「NPO法」という。) においては,いずれもその第1条に法律の目的が規定されており,これらの法律が公 益の増進に資する(公益法人認定法)又は寄与する(NPO法)ことを目的とするこ とがうたわれている。 そして,これらの法律との整合性を図る観点に加え,少子高齢化が進む我が国の将 来を見据えたときに,活力ある社会を実現するために民間が自発的に行う公益活動の 充実がより期待されることに鑑みると,新たな公益信託法の目的を法律の冒頭で明示 することには意義があると考えられることから,試案の第1では,新公益信託法の冒 頭に目的規定を置くことを提案している。 なお,公益信託を設定する委託者及び公益信託への寄附者にとって,自らの財産を 拠出する際に税法上の優遇措置があることは公益信託を利用する理由の一つとなって いるが,現行制度の下では,主務官庁による公益信託の引受け許可の際に用いられる 許可審査基準と税法上の区分である「特定公益信託」及び「認定特定公益信託」とし て優遇措置の適用を受けるための基準が異なるものとなっており,主務官庁による公 益信託の引受け許可を一段階とすれば,いわば二段階(特定公益信託),三段階(認定 特定公益信託)の手続が必要な仕組みとなっている。他方,公益法人制度においては, 公益法人の認定を行う行政庁から公益法人として認定を受けることにより,税法上の 優遇措置の対象となる仕組みとなっている。 税法上の優遇措置の基準については公益信託法の見直しの直接の検討対象ではない が,公益信託法の見直しに際しては,公益法人の活動を促進しつつ適正な課税の確保 を図るために税制上の措置を講ずるものとされている公益法人制度(公益法人認定法 第58条)と平仄を合わせ,行政庁から認可された公益信託が税法上の優遇措置を受 けることが可能な制度となることも視野に入れながら,新たな公益信託の成立の認可 基準や,その監督・ガバナンスに関する規律を検討する必要があるものと考えられる。 5 第2 公益信託の定義等 1 公益信託の定義 公益信託は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とする 受益者の定めのない信託として,行政庁から公益信託の成立の認可を受け たものとする。 (補足説明) 1 公益を目的とする受益者の定めのない信託 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第1条は,公益信託は,信託法第258条第1項に規定する受 益者の定めのない信託のうち学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他公益を目的と するものにして主務官庁の許可を受けたものであると定義している。 これは,平成18年に制定された新信託法において,公益信託のほかにペット の世話を目的とするものや資産の流動化を目的とするものも受益者の定めのない 信託として効力を認める柔軟な制度設計を採用したことに対応し,公益信託が「祭 祀,宗教,慈善,学術,技芸其ノ他公益ヲ目的トスル信託」と定められていた旧 信託法第66条の定義から,信託法第258条第1項に受益者の定めのない信託 が規定されたことに合わせた定義の変更がされたものである。 ⑵ 「受益者の定めのない信託」と「目的信託」の関係 上記⑴のとおり「受益者の定めのない信託」は法令上の用語であるが,法令上 の用語でない「目的信託」と表現されることがある。もっとも,「受益者の定め のない信託」と「目的信託」との関係を明確にし,かつ,現行法制の関係を整理 した上でないと,「目的信託」の用語を使うことは混乱を招くおそれがある。 現時点,「受益者の定めのない信託」と「目的信託」の関係については,複数 の理解が存在する。まず,①「受益者の定めのない信託」と「目的信託」は同義 であり,その中に公益目的でないものと公益信託があるという理解がある。この ような理解からは「目的信託」について,「受益者の定めのない信託(いわゆる 目的信託)」という使い方がされることが多い。次に,②「受益者の定めのない 信託」の中に公益信託とそれ以外の信託があり,「公益信託以外の受益者の定め のない信託」を「目的信託」と定義付ける理解がある。さらに,③「受益者の定 めのない信託」と「目的信託」は同義であり,その外側に公益信託があるという 理解がある。 現行法制との関係を見るに,現行公益信託法第1条は,公益信託を信託法第2 58条第1項の受益者の定めのない信託の下位概念としており,信託法附則第3 項も含めて,受益者の定めのない信託に公益目的のものが含まれるという前提に 立っているから,上記③の理解は現行法制の整理に適合しない。一方,上記①又 6 は②の理解であれば現行法制の整理と適合するから,①又は②のいずれの理解を 採ることも可能である。 その上で,新たな公益信託の規律を検討するに当たっては,上記①の「目的信 託」の中に公益信託が存在する理解を前提とするよりも,上記②の公益信託とそ れ以外の「目的信託」を対置する理解を前提として,それぞれの規律を比較する 方が分かりやすいと考えられる。 そこで,本補足説明では,上記②の理解に沿い,受益者の定めのない信託のう ち現行公益信託及び新たな公益信託を除いたものを「目的信託」と定義している。 ⑶ 公益信託と目的信託の異同 公益信託の制度は,平成18年の新信託法制定時に導入され同法第11章にお いて特例が設けられた目的信託の制度よりも先に旧信託法の時代から存在してい たものであり,公益信託と目的信託の共通点は,受益者の定めがないという点程 度である。目的信託は,委託者及び受託者の合意によってその効力を生じ,信託 法第259条で20年の期間制限が課され,同法第260条により委託者の権限 が強化された上で行政庁の認可や監督を受けないものとされている一方で,現時 点で想定される新たな公益信託は,委託者及び受託者の合意に加えて「公益を目 的とする」ことなどの認可基準を満たすことが行政庁から認められるものである ことを前提として,同法第259条の20年の期間制限などの規定が適用されず, 公益信託に付す名称が保護される等の公的な保護を受けられる地位を設定するも のであり,成立後も行政庁の監督を受け,委託者が公益信託に過度に関与するよ うな事態を回避することが予定されているものである。このように,目的信託と 公益信託は,重要な部分で相違点があり,性質上大きく異なるものと言える。 ⑷ 「公益を目的とする」と「受益者の定めのない信託」の順序 公益信託について信託法上の規律と別の規律を定めることの意義は,上記⑶の とおり行政庁による審査を経て「公益を目的とする」ことなどの要件を満たすこ とが公に認められるものであることを前提として,当該信託に公的な保護を受け られる地位を設定することにあると考えられる。また,旧信託法第66条が公益 信託を「公益ヲ目的トスル信託」として定義していたことを踏まえると,新たな 公益信託は「「公益を目的とする」「受益者の定めのない信託」として行政庁から 公益信託の成立の認可を受けたもの」であると定義することが相当であると考え られる。 ⑸ 新公益信託法と信託法の関係 その上で,新公益信託法は新たな公益信託について目的信託と異なる信託法の 特則を定める信託法の特別法であると位置付けられるから,新たな公益信託につ いては信託法第1章から第10章まで,第12章及び第13章の規定を適用する が,同法第11章(同法第258条から第261条まで)の規定は適用しないも 7 のとし,公益信託について信託法第1章から第10章まで,第12章及び第13 章の規定とは異なる特例を設ける場合には,新公益信託法の中に信託法第11章 (同法第258条から第261条まで)とは別の特例を設けることが相当である と考えられる。その際には,目的信託の受託者要件(信託法施行令第3条)の適 用範囲について「受益者の定めのない信託(学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その 他公益を目的とするものを除く。)」と定める信託法附則第3項も改正する必要が あるものと考えられる。 なお,公益信託は「公益を目的とする」ことに加え,「不特定かつ多数」の者の 利益の増進に寄与する,すなわち,公益信託事務による財・サービスの提供を直 接的に受ける者が特定の者に限られず,かつ,その数が多いことを原則として必 要とするものである。「不特定かつ多数」の文言は後記第2の2の公益信託事務の 定義で用いることとしている。 2 公益の例示 現行公益信託法第1条では「学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他」という順序 で公益が例示されている。これは,旧信託法第66条における公益の例示が,民法 旧第34条の公益法人における公益の例示と同様に「祭祀,宗教,慈善,学術,技 芸」とされていたものが,平成16年に現代語化された民法の旧規定における公益 の例示の順序が「学術,技芸,慈善,祭祀,宗教」に変更されたことに対応し,平 成18年の現行公益信託法制定時に上記民法の旧規定における公益の例示の順に合 わせたものである。 他方,公益法人認定法第2条第4号では,公益の例示として,「学術,技芸,慈善」 が挙げられているが,「祭祀,宗教」は挙げられていない。その理由は,民法施行法 旧第28条に「民法中法人ニ関スル規定ハ当分ノ内神社,寺院祠宇及ヒ仏堂ニハ之 ヲ適用セス」と規定され,民法の施行当初から,信教の自由の確保の観点上,民法 旧第34条の法人に関する規定は神社,寺院等には直ちに適用されないこととされ ており,その後,特別法である宗教法人法が制定されたために,宗教団体は同法に よって法人格を取得することが一般的となり,民法施行以来公益法人認定法の制定 に至るまで,実質的に宗教団体は民法旧第34条の適用範囲とされてこなかったこ とに基づくものであると考えられる。 もっとも,民法の特別法として宗教法人法が存在するのに対し,信託法の分野で はそれに相当する特別法が存在しないことに鑑みると,現時点において,特に現行 公益信託法第1条の表現を変更するまでの必要性は見当たらないことから,試案の 第2の1では,公益の例示を「学術,技芸,慈善,祭祀,宗教」の順序とする現行 公益信託法第1条と同様の表現としている。 8 3 公益信託の成立の認可 現行公益信託法第2条は,公益信託は主務官庁の「許可」を受けなければその効 力を生じない旨を規定している。 しかし,以前同様に主務官庁による設立の許可制が採られていた公益法人につい ては,主務官庁による裁量の幅が大きく,事業分野毎の主務官庁による指導監督が 縦割りで煩雑であり,法人設立が簡便でない等の問題点があり,公益法人制度改革 の結果,主務官庁による許可制は廃止され,民間の有識者から構成される合議制の 第三者機関を諮問機関として特定の行政庁が公益認定を行う仕組みが採用された。 一方,現在も主務官庁による引受けの許可制が採られている公益信託の審査実務 に対しては,①主務官庁ごとに許可基準が異なる場合がある,②公益信託の申請件 数が少ない主務官庁では担当者の公益信託の知識が十分でないために許可までの手 続に時間がかかる場合がある,③複数の主務官庁の所管にまたがる目的の公益信託 の場合にいずれの官庁が担当するか決まらずに時間を要する場合がある等,旧公益 法人と同様の主務官庁による許可制に対する問題点が指摘されている。 このように,主務官庁による公益信託の引受けの許可制(以下「主務官庁による 許可制」という。)についても,公益法人と同様の弊害が指摘されていることから すると,仮に新たな公益信託制度において主務官庁による許可制を維持するのであ れば,公益法人制度改革における政策決定が公益信託制度には妥当しないとの積極 的な理由付け・論証がされる必要があるが,そのような積極的な理由付けは見当た らない。そして,上記の問題点を解消するとともに,公益信託と類似の社会的機能 を有する公益法人制度との整合性を図る観点からは,現行公益信託法第2条第1項 を削除し,主務官庁による許可制を廃止する(試案の第2の3)ことが相当である と考えられる。 その上で,主務官庁に代わる行政庁が新たな公益信託の成立時に行う行政処分の 法文上の表現を検討するに,まず,「認定」とは,既に私法上の効果を有している 行為に対し,行政庁の行政処分によって一定の追加的効果を与える意味で使われる ことが多く,具体的な例としては,一般法人が行政庁による公益認定を受けて公益 法人としての地位を認められることになる公益法人制度が挙げられる。ただし,新 公益信託法の下では,公益信託として新たに信託を成立させる場合,未だ信託契約 の効力が生じていない段階で行政庁に対する認可の申請が行われることも想定され るため,必ずしも目的信託の前置を必要としない(なお,目的信託から信託の変更 をして公益信託の成立の認可を受けることも可能である。)仕組みが想定されてい ることからすると,新たな公益信託の成立時の行政処分を公益法人制度と同一の「認 定」と表現することは相当でないと言える。 また,「許可」は,行政庁による行政処分を受けなければ禁止されている行為に ついて,一定の要件を満たす場合に行政庁の行政処分により禁止を解除し,私人が 9 適法に当該行為を行うことを可能とする,行為規制効を有する行政処分の意味で使 われることが多い。そして,試案の第2の3では,行政庁の認可を受けていない公 益を目的とする受益者の定めのない信託であっても,当該信託の設定を禁止するこ とはせず,当該信託を受益者の定めのない信託として有効とすることを可能とする 旨の提案をしていることからすると,新たな公益信託の成立時の行政処分を「許可」 と表現することは相当でないと言える。 さらに,「認可」は,一定の要件を満たす場合に行政庁の行政処分により法的主 体に対し一定の権利を認めると同時に義務を課す,地位設定効を有する行政処分の 意味で使われることが多い。そして,新たな公益信託の成立時に行政庁が行う行政 処分の効力は,公益信託に対し20年の期間制限などの目的信託の規定が適用され ず,名称の保護が受けられるなどの効力を付与するものであることからすると,こ れを「認可」と表現することが最もその行政処分の性質を適切に表現するものであ ると言うことができる。 そこで,試案の第2の1では,公益信託の定義を,公益信託は公益を目的とする 受益者の定めのない信託として行政庁から成立の「認可」を受けたものとすること を提案している。 2 公益信託事務の定義 公益信託事務は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益に関する 具体的な種類の信託事務であって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄 与するものとする。 (補足説明) 1 公益信託事務の定義の必要性とその種類 現行公益信託法第4条では,「公益信託事務」という用語が使われているが,これ を定義した規定はない。 一方,公益法人認定法第2条第4号は,「公益目的事業」を「学術,技芸,慈善そ の他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって,不特定かつ多数の者の 利益の増進に寄与するもの」として定義しており,公益法人認定法との平仄を合わ せる観点からは,公益法人の公益目的事業と同様に,公益信託事務も法律の中で定 義することが利用者にとって分かりやすいと考えられる。その上で,公益の増進に 寄与する信託事務又は事業の種類は,その活動を営む形式が信託であるか法人であ るかにより異なるものではないから,公益信託の公益信託事務として想定される具 体的な種類の信託事務としては,公益法人の公益目的事業と同様のものが想定され る。そこで,試案の第2の2では,公益信託事務を,公益法人認定法第2条第4号 の公益目的事業の定義と同様の形で定義することを提案している。新公益信託法の 10 別表各号には,公益法人認定法第2条第4号の公益目的事業に関する別表と同様の 種類の信託事務を掲げることを想定している。 なお,公益法人認定法第2条は,公益法人は行政庁の認定を受けた一般法人であ る旨定義し,同法第5条第1号は,公益目的事業を行うことを主たる目的とするも のであることを公益認定の基準としていることから,公益性については認定基準の みに規定し,その認定を受けた一般法人を公益法人と定義することで,公益法人が 公益性を有することが明らかになっている。一方,試案においては,公益信託は公 益を目的とする受益者の定めのない信託として行政庁から公益信託の成立の認可を 受けたものであると定義し(試案の第2の1),公益信託は公益信託事務を行うこと のみを目的とすることを認可基準としている(試案の第9の1)。このように,試案 では,公益信託の定義を具体化したものを公益信託の成立の認可基準としているた めに,上記公益法人認定法の規定とは異なり,公益性を公益信託の定義及び認可基 準において二重に規定しているようにも見えることから,公益信託の定義について は認可基準との関係を踏まえて整理する必要があるという指摘もある。 2 不特定かつ多数の者の利益の増進 「不特定かつ多数」の文言は公益信託と類似の社会的機能を有する公益法人認定 法第2条第4号のほかにNPO法第2条第1項でも用いられており,公益性を表現 する文言として定着しているものと考えられる。そこで,試案の第2の2では,公 益信託事務の定義において,公益法人認定法第2条第4号の公益目的事業と同様に, 「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」という文言を使用している。 なお,公益法人認定法第2条第4号において,法人が行う事業が「不特定かつ多 数」の者の利益の増進に寄与するものと言い得るのは,原則として,その事業によ り提供される財・サービスの直接的な受益者が特定の者に限られず,かつ,その数 が多い場合を指すと解されている。また,公益法人の認定における「不特定かつ多 数」の具体的な判断は,国又は都道府県の合議制の機関が個別に行うこととなるが, 受益者等が特定の範囲の者に限られる場合であっても,その受益の効果が広く社会 全体や十分広い範囲に及ぶことを積極的に意図して事業を行い,その事業を介して 社会全体あるいは十分に広い範囲に利益が及ぶ場合や,現時点では受益者等が少数 であっても,その事業の趣旨,性質から利益の及ぶ範囲を踏まえると,実質的に多 数の者が受益の対象となる場合等についても,「不特定かつ多数」の者の利益の増進 に寄与するものと判断されることがあり得るものと考えられている(新公益法人制 度研究会編著「一問一答公益法人関連三法」(以下「一問一答公益法人関連三法」と いう。)194頁参照)。このような民間非営利部門による公益的活動を促進すると いう公益法人制度改革の趣旨に基づく「不特定かつ多数」の考え方は,新たな公益 信託の成立の認可の場面における「不特定かつ多数」の判断にも妥当し,「不特定か 11 つ多数」の要件を形式的に判断することは適当でなく,実質的かつ柔軟に行われる ことが望ましいと考えられる。 3 現行公益信託法第2条第1項の削除 現行公益信託法第2条第1項を削除するものとする。 (補足説明) 現行公益信託法第2条第1項は,公益信託は「受託者ニ於テ主務官庁ノ許可ヲ受ク ルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ」と規定している。 しかし,試案の第2の1の補足説明に記載したとおり,現在の主務官庁による許可 制は廃止することが相当である。また,現行公益信託法第2条第1項の文言からは, 主務官庁による許可を受けていない公益を目的とする受益者の定めのない信託は無効 であるという解釈があり得るが,民間の自立的な公益活動を促進する観点からは,主 務官庁による許可や行政庁の認可を受けていない公益を目的とする受益者の定めのな い信託であっても,当該信託を有効とすることが適切であると考えられる。そこで, 試案の第2の3では,現行公益信託法第2条第1項を削除する提案をしている。 第3 公益信託の効力の発生 1 公益信託の成立の認可 公益信託は,当事者が信託行為をし,かつ,行政庁による公益信託の成 立の認可を受けることによってその効力を生ずるものとする。 (補足説明) 1 公益信託の効力の発生 現行公益信託法第2条第1項は,公益信託は,「受託者ニ於テ主務官庁ノ許可ヲ 受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ」と規定し,信託の効力の発生について定める 信託法第4条の特則を定めている。 しかし,試案の第2の1及び3の補足説明に記載したとおり,新公益信託法では 主務官庁による許可制を廃止して行政庁による成立の認可の制度を採用した上で, 行政庁の認可を受けない公益を目的とする受益者の定めのない信託を有効とするこ とが相当であるから,公益信託の効力の発生についての信託法第4条の新たな特則 を定める必要がある。そこで,試案の第3の1では,公益信託は当事者が信託行為 をし,かつ,行政庁による公益信託の成立の認可を受けることによりその効力を生 じるものとすることを提案している。 公益信託としての地位設定効すなわち公益信託に付された名称の保護や行政庁の 12 監督が及ぶ等の公益信託の効力は,委託者及び受託者が信託行為をすること及び行 政庁による公益信託の成立の認可を受けることの両方の要素を備えることにより発 生する。 2 新たに公益信託を設定する場合 当事者が新たに公益信託を設定する場合,すなわち,当事者が当初から公益信託 の成立の認可申請を予定している場合における認可前の当事者間の法的関係は,通 常は公益信託として名称の保護や行政庁の監督が及ぶ等の効力が生じる前の,いわ ば公益信託の準備状態にあり,目的信託が成立していないものと捉えられることか ら,信託行為と公益信託の成立の認可の前後関係を問わず,公益信託の効力が生ず るまでの法律関係については信託法第259条の20年の期間制限は適用されず, 信託法附則第3項の受託者の資格制限等も適用されないことになる。 3 既存の目的信託から公益信託に変更する場合 一方,当事者が目的信託として設定し既に有効に成立している目的信託を公益信 託に変更する場合も想定される。その場合における認可前の当事者間の法的関係は, 目的信託が成立しているものと捉えられ,その後当事者が目的信託から公益信託へ の信託の変更を行い,かつ,行政庁による公益信託の成立の認可を受けたときに公 益信託としての効力を生じることから,信託の変更と公益信託の成立の認可の前後 関係を問わず,公益信託の効力が生ずるまでの法律関係については信託法第259 条の20年の期間制限及び信託法附則第3項の受託者の資格制限等が適用されるこ とになる。 2 不認可処分を受けた信託の効力 公益信託として新たに信託を成立させる場合に行政庁から不認可処分を 受けても当該信託を受益者の定めのない信託として有効に成立させる旨の 信託行為の定めがあるときは,当該信託は不認可処分を受けた時から受益 者の定めのない信託としてその効力を生ずるものとし(注1),当該信託 については信託法第11章の規定を適用するものとする(注2)。 (注1)上記のような規律については,新公益信託法の中に規定を設けるのではなく, 解釈に委ねるべきであるという考え方がある。 (注2)行政庁から不認可処分を受けた受益者の定めのない信託について,信託法 第11章の規定を適用するが,一定の事項につき信託法第11章の特則を設けるべき であるという考え方がある。 13 (補足説明) 1 不認可処分を受けた信託の効力 現行公益信託法第2条第1項は,公益信託は「主務官庁ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ 其ノ効力ヲ生ゼズ」と規定している。そのため,主務官庁から許可を受けていない公 益を目的とする受益者の定めのない信託は無効であるという解釈が存在していた。 しかし,試案の第2の3の補足説明に記載したとおり,行政庁から不認可処分を受 けた受益者の定めのない信託であってもこれを一律に無効とすることは公益の増進へ の寄与を目的とする民間の公益活動に対する過度な制約であると考えられる。また, 目的信託は,地域住民が金銭を拠出して信託を設定し,当該地域社会における老人の 介護,子育ての支援,地域のパトロール等の非営利活動に充てるなどの共益的な活用 が予定されていたものであり(寺本昌広「逐条解説新しい信託法〔補訂版〕」(以下「寺 本逐条解説」という。)448頁参照),それらの目的と公益目的との間には截然と区 別できない面があることからすると,上記のような共益的な目的を有する目的信託を 有効とする一方で,行政庁から公益信託の成立の認可が受けられなかったという理由 のみにより公益を目的とする受益者の定めのない信託を無効とすることは均衡を欠く。 一方,既に有効に成立している目的信託を公益信託に変更しようとし,行政庁に公 益信託の成立の認可の申請をしたが,不認可処分を受けた場合については,当該目的 信託の効力は不認可処分の前後で変わるものではなく,同一の目的信託が不認可処分 の前後で連続しているものと考えられる。 そこで,試案の第3の2では,公益信託として新たに信託を成立させる場合に行政 庁から不認可処分を受けても当該信託を受益者の定めのない信託として有効に成立さ せる旨の信託行為の定めがあるときは,当該信託は不認可処分を受けた時から受益者 の定めのない信託として効力を有するものとし,当該信託については信託法第11章 の規定を適用することを提案している。 2 試案の第3の2の(注1)について 試案の第3の2の提案に対しては,行政庁から不認可処分を受けた信託に信託法第 11章の規定を適用するのであれば,当該信託が不認可処分を受けた時から効力を有 することについては,新公益信託法の中に規定を設けるのではなく,現行公益信託法 第2条第1項の削除を前提とした上で,試案の第3の1の規定及び信託法第4条の解 釈に委ねれば足りるという考え方があることから,その考え方を試案の第3の2の(注 1)に示している。 (注1)の考え方を敷衍すると,以下のとおりとなる。すなわち,当事者が新たに 公益信託を設定する場合であるか,当事者が目的信託を設定する場合であるかは,信 託行為の解釈に委ねられるほかない問題であるように考えられる。そして,例えば, 信託契約書の中に,受託者となろうとする者が「公益信託の成立の認可の申請を行う 14 ものとする」かつ「不認可処分を受けた場合は,目的信託として成立するものとする」 等の記載があるものは,新たに公益信託を設定する場合であると解釈されることが多 いと考えられるが,このような信託契約書の記載からは,当事者が目的信託を行政庁 の不認可を停止条件として設定したと解釈することもでき,試案の第3の2のような 規律を新公益信託法の中に設ける必要はないということになる。もっとも,試案の第 3の2の提案には,公益を目的とするが行政庁の認可を受けない受益者の定めのない 信託を一律に無効とはしないという部会での一致した意見を明らかにする意味があり, そのことを踏まえて引き続き検討を要する。 3 試案の第3の2の(注2)について 試案の第3の2の提案に対しては,公益信託として新たに信託を成立させる場合に 行政庁から不認可の処分を受けても当該信託を有効とする旨の信託行為の定めがある ときに成立する受益者の定めのない信託については信託法第11章の規定を適用する が,一定の事項につき信託法第11章の特則を設けるべきであるという考え方もある ことから,その考え方を試案の第3の2の(注2)に示している。 (注2)に示す特則の例としては,目的信託の受託者の資格に関する信託法附則第 3項の受託者要件を適用しないこと,目的信託の存続に関する同法第259条の規定 を適用しないこと,目的信託の委託者の権限に関する同法第260条の規定を適用し ないこと等要件を緩和する規定のほか,信託管理人を必置とする規定を設けること, 試案の第4の1のように受託者の適格性を要求すること等内部ガバナンスの厳格化に 関する規定が考えられる。 もっとも,行政庁から不認可処分を受けた受益者の定めのない信託について上記受 託者要件の不適用等の追加的な効果を発生させるということは,当該信託の受託者に よる公益信託の成立の認可の申請により,当該信託が認可要件を満たしていなくても 本来は目的信託に付与されていない効果を発生させることを意味するものであり,そ のような取扱いには合理性に疑いがあると考えられるため,不認可処分を受けた受益 者の定めのない信託について一定の事項につき信託法第11章の特則を設けることに ついては慎重な検討を要する。なお,試案の第3の2の(注2)の考え方が採られる 場合には,当該信託の効力は,行政庁から不認可処分を受けた時から生じるものと考 えられる。 15 第4 公益信託の受託者 1 公益信託の受託者の資格 公益信託の受託者は,次の資格を満たさなければならないものとする。 ⑴ 公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有すること(注1) 【甲案】公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する法人である こと 【乙案】公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する者(法人又 は自然人)であること(注2) (注1)受託者がその信託財産の処分を行う場合には,当該公益信託の目的に関 し学識経験を有する者又は組織(運営委員等又は運営委員会等)の意見を聴く ことを必要とすべきであるとの考え方がある。 (注2)受託者の資格として,自然人が公益信託の受託者となる場合には,公益 信託の信託財産の適切な管理・運用をなし得る能力を有する法人と共同で受託 者となることを必要とし,その法人と共同で公益信託事務の適正な処理をなし 得る能力を有することを必要とするとの考え方がある。 ⑵ 受託者が自然人である場合(⑴で乙案を採用する場合) ア 信託法第7条に掲げる者に該当しないこと イ 禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を終わり,又は刑の執行を 受けることがなくなった日から5年を経過しない者に該当しないこと ウ 信託法その他の法律の規定に違反したことにより,罰金の刑に処せ られ,その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5 年を経過しない者に該当しないこと エ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規 定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 に該当しないこと オ 公益信託の成立の認可を取り消されたことに責任を負う公益信託の 受託者又は信託管理人でその取消しの日から5年を経過しない者に該 当しないこと ⑶ 受託者が法人である場合 業務を執行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しく はその職務を行うべき社員又は監事若しくは監査役のうちに,上記⑵ア ないしオのいずれかに該当する者がないこと (補足説明) 1 公益信託の受託者の資格に関する規律の必要性 現行公益信託法には,公益信託の受託者となり得る者の資格に関する規定は存在 16 しない。ただし,未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人を受託者の欠格事由 とする現在の信託法第7条の規定は公益信託にも適用される。そして,信託の成立 時に受託者が信託法第7条の欠格事由に該当する場合には当該信託は無効であり, 成立後に受託者が欠格事由に該当した場合には当該受託者の任務終了事由になると 解されている(村松秀樹ほか「概説新信託法」(以下「村松ほか概説」という。)1 9頁参照)。また,税法においては,受託者が信託会社(金融機関の信託業務の兼営 等に関する法律により同法第1条第1項(兼営の認可)に規定する信託業務を営む 同項に規定する金融機関を含む。)であることが特定公益信託の要件とされている。 なお,信託業法第3条は,信託業は,内閣総理大臣の免許を受けた株式会社でなけ れば営むことができないと規定している。 そして,公益信託事務の適正な処理を確保するという観点からすると,受益者が 存在せず,受益者による受託者の監督を期待することができない公益信託について は,その受託者自身に一定の適格性を要求することが望ましい。 また,許可審査基準「6.機関⑵ア」は,公益信託の受託者は,適切な管理運営 をなし得る能力を有するもので,社会的な信用を有し,かつ,知識及び経験が豊富 であることを公益信託の許可の要件としているが,成立の認可基準のような重要な 事項についてはできる限り法律に明示すべきであると考えられる。 そこで,試案の第4の1では,公益信託の受託者が一定の資格を有することを認 可基準とする旨の提案をしている。試案の第4の1に掲げた資格を受託者が満たさ ない場合には,公益信託の成立の認可を受けられず(仮に事後的に資格を満たさな いことが判明した場合には当該信託は無効又は公益信託の成立の認可の必要的取消 事由に該当すると考えられる。),公益信託の成立後に資格を満たさなくなった場合 には受託者の任務終了事由となることが想定される。また,公益信託の受託者が公 益信託事務の適正な処理をなし得る能力を喪失した場合には,公益信託の成立の認 可の任意的取消事由となる可能性がある。 2 公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有すること ⑴ 公益信託事務の適正な処理能力 試案の第4の1⑴では,公益信託の成立の認可を受けるために,受託者が公益 信託事務の適正な処理をなし得る能力を有することを必要としている。ここで, 公益信託事務の適正な処理とは,信託財産の管理処分や運用等の信託事務が適 正に行われることを意味するものであり,公益信託の受託者は,当該公益信託 の目的に照らし公益信託事務を適正に処理する責任を負う。したがって,公益 信託の受託者は,当該公益信託の目的に照らし公益信託事務の適正な処理能力 を自ら備えるか,その能力が不十分な場合には,当該受託者において公益信託 事務の適正な処理能力を補う仕組みを整える必要があると考えられる。その上 17 で,現在の500件弱存在する公益信託のうちのほとんどの受託者は信託銀行 であるが,公益信託事務として奨学金支給などを行う助成型の公益信託であれ ば,信託銀行以外にもそれを行う能力を有する者は存在するし,事業型の公益 信託には信託銀行以外の受託者がその信託事務の適正な遂行能力を有している ことも期待できるから,公益信託の受託者はこれまでよりも広がりをもって検 討することが相当であると言える。 ⑵ 試案の第4の1⑴の甲案について 試案の第4の1⑴の甲案は,公益信託の受託者が公益信託事務の適正な処理を なし得る能力を有する法人であることを必要とするものである。 甲案の理由としては,①美術館や学生寮の運営のほか,経済的な問題などによ り家庭で十分な食事を取ることが困難な子ども等に対し地域住民が無料で食事 を提供する子ども食堂の運営のような事業型の公益信託を想定するのであれば, 元々それに類似する事業を行っている法人の方が受託者として想定しやすいこ と,②公益信託を簡易に設定し,安定的・継続的に遂行するためには受託者に おいてそれなりの人員,組織及び資力を有していることが前提となること,③ 死亡,病気や老衰などのリスクが存在する自然人受託者と異なり,十分な人員, 組織及び資力を有する法人が受託者となる場合は,それらのリスクが小さいこ とが挙げられる。 甲案に対しては,公益信託には多様な活用法が想定され,その中には自然人 の受託者において信託財産の管理処分を含む公益信託事務の適正な処理を行う ことが可能なものもあり得るのであって,一律に自然人を受託者から排除する のは相当でないという問題点の指摘がある。 ⑶ 試案の第4の1⑴の乙案について 試案の第4の1⑴の乙案は,公益信託の受託者が,公益信託事務の適正な処 理をなし得る能力を有することを必要とすることについては,試案の第4の1 の甲案と同様であるが,甲案の法人受託者に加え,公益信託事務の適正な処理 をなし得る能力を有する自然人受託者も許容するものである。 乙案の理由としては,①公益信託の受託者として重要なのは,公益信託事務 の適正な処理をなし得る能力であり,その能力を有する者であれば,法人であ っても自然人であっても差し支えないこと,②法人にも破産や解散などにより 受託者としての能力を失う場面があり得ること,③現在の信託法は,旧信託法 における受託者の自己執行義務を改めて受託者から第三者への事務処理の委託 を広く認めており,自然人受託者が一定の範囲の信託事務を第三者に委託して 公益信託事務を行うことは可能であることが挙げられる。 乙案に対しては,法人と違い内部のガバナンスを備えていない自然人につい ては信託財産の管理処分を含む公益信託事務の適正な処理を確保する仕組みが十 18 分でないとの指摘がある。また,資本金の額や貸借対照表,組織構成等の客観 的な要件に基づいて適格性を判断できる法人と異なり,自然人受託者の適格性 の要件を明確に定めることには困難を伴い,客観的な要件が規定されなければ, 新たな公益信託における行政庁が,それぞれの自然人受託者の適格性を判断す ることは難しくなってしまう等の問題点の指摘がある。 ⑷ 試案の第4の1⑴の(注1)について 試案の第4の1⑴の(注1)は,受託者が,公益信託の目的に照らし,公益 信託事務の適正な処理を行うために運営委員会を必置としている許可審査基準 と同様の規定を新公益信託法の中に設けるべきであるとする考え方であり,試 案の第9と関連する。もっとも,許可審査基準は公益信託事務が原則として奨 学金の支給や研究費の助成等であることを前提として運営委員会を必置として いるものである一方で,新たな公益信託においては,試案の第9の2及び第9 の3⑴の提案のとおり,美術館や学生寮の運営を目的とする事業型も許容する が,こうした事業型の公益信託では信託財産の処分について当該公益信託の目 的に関し助言を行う運営委員会を必ずしも必要としないと考えられる。そのた め,助成型の公益信託のみならず事業型の公益信託も許容する新たな公益信託 において運営委員会を法律上必置とする取扱いには合理性に疑いがあり,その 規律を新公益信託法の中に設けることには慎重な検討が必要であると考えられ る。なお,新たな公益信託の信託行為において,受託者が助成型の公益信託に 対応した従前の運営委員会等と同様の機能を有する機関を任意的に設けること や,事業型の公益信託に対応して公益信託事務の適正な処理を確保するために 受託者に対し助言,勧告等を行う機関を任意的に設けることが否定されるもの ではない。 ⑸ 試案の第4の1⑴の(注2)について 試案の第4の1⑴の(注2)は,法人との共同受託であれば自然人を公益信 託の受託者とすることを許容する考え方である。この考え方は試案の第4の1 ⑴の甲案と乙案の折衷的な考え方であるが,共同受託者は相互にその業務執行 を監視する義務を原則として負うことからすると,仮に自然人受託者の能力が 十分でない場合には信託財産の適切な管理運用をなし得る能力を有する法人受 託者の負担のみが増える可能性があること等の問題点の指摘がある。 3 公益信託の受託者の欠格事由 ⑴ 公益信託の受託者が自然人である場合 試案の第4の1⑵アは,公益信託の受託者が自然人である場合に,信託法第7 条の欠格事由が適用され,未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人を受託者 とすることはできないことを示すものである。 19 試案の第4の1⑵イからオまでは,公益信託の受託者が自然人である場合に, 公益法人認定法第6条所定の公益法人の役員に関する欠格事由や信託法施行令 第3条第2号の目的信託の受託者である法人の役員に関する欠格事由を参考と して,公益信託の自然人受託者の欠格事由を新公益信託法の中に定めることを 提案するものである。 試案の第4の1⑵オの「公益信託の成立の認可を取り消されたことに責任を 負う公益信託の受託者」としては,公益信託の受託者が行政庁の勧告・命令等 に正当な理由なく従わず,試案の第12の1⑷に該当するとして公益信託の成 立の認可が必要的に取り消されたような場合を想定しているが,公益信託の成 立の認可が取り消される場合としてはその他の必要的取消事由又は任意的取消 事由に該当する場合も想定されることから,試案の第4の1⑵オの表現につい ては引き続き検討を要する。 なお,公益法人認定法第6条は,公益法人の理事に,公益認定を取り消され た公益法人の業務を行う理事であった者でその取消しの日から5年を経過しな い者がいる場合,当該法人は公益認定を受けることができないと規定している が,その取消しは同法第29条第1項第4号により公益法人が公益認定の取消 しを申請して公益認定が必要的に取り消された場合を含むものとされている。 一方,試案の第16の3の甲案において公益信託の終了を,委託者,受託者及 び信託管理人の合意に加え行政庁による公益信託の成立の認可の取消処分がさ れたときに可能とするのであれば,その後5年間当該受託者が別の公益信託の 受託者となることを妨げる必要はないと考えられる。ただし,行政庁から認可 基準を満たさないことを理由に認可取消しの処分を受ける前に合意に基づく認 可の取消しを申請するようなケースも想定されることから,その点も含め引き 続き検討が必要である。 ⑵ 公益信託の受託者が法人である場合 試案の第4の1⑶は,公益信託の受託者が法人である場合に,その業務を執 行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しくはその職務を行う べき社員又は監事若しくは監査役,すなわち,いかなる名称を有する者である かを問わず,当該法人に対し役員と同等以上の支配力を有する者と認められる者 のうちに,上記試案の第4の1⑵アないしオのいずれかに該当する者がいるこ とを欠格事由とすることを提案するものである。上記「業務を執行する」は社 員のみを修飾する。また,上記「その職務を行うべき社員」の「その職務」と は,会計参与が行う職務を指すものである。 試案の第4の1⑶の欠格事由について,法人受託者が信託銀行等であり,そ の取締役の一人が犯罪を行ったとしても,法人受託者としての適格性が失われ るわけではないから,公益信託の成立の認可の取消事由とすることや,受託者 20 の任務終了事由とすることは適当でないとの考え方もある。たしかに,そのよ うな場合に法人受託者を交代させるのは合理的でない面があるが,法人受託者 の取締役等を含む欠格事由について実質的判断基準を採用することには困難な 面があり,引き続き検討を要する。 2 公益信託の受託者の権限,義務及び責任 ⑴ 公益信託の受託者の権限,義務及び責任は,受益者の定めのある信託 の受託者の権限,義務及び責任と同様であるものとする。 ⑵ 受託者の善管注意義務は,軽減することはできないものとする。 (補足説明) 1 公益信託の受託者の権限,義務及び責任 現行公益信託法に公益信託の受託者の権限,義務及び責任について信託法の特則 を定めた規定はなく,現行公益信託法の規律を除き目的信託に関する信託法第11 章の規定が適用されることになる。 しかし,公益信託は,目的信託とは性質上大きく異なるものであることからす れば,目的信託についての特則を定めた信託法第11章の規定をそのまま新たな 公益信託に適用する必要性は低いと言える。そこで,試案の第4の2⑴では,公 益信託の受託者の権限,義務及び責任を,受益者の定めのある信託の受託者の権 限(信託法第26条から第28条まで),義務及び責任(同法第29条から46条 まで)と同様とする旨の提案をしている。 具体的には,上記信託法第26条から第46条までの規定の中には,同法第2 6条のように受益者の定めのある信託の規定を新たな公益信託にもそのまま適用 することが相当である規定もあれば,同法第30条のように「受益者のため」を 「信託の目的の達成のため」と読み替えて新たな公益信託に適用することが相当 である規定もあると考えられる。上記のような読替えを行うためには,新公益信 託法の中に読替え規定(信託法第261条の別表に類似するが,新たな公益信託 では信託管理人が必置とされるので「信託管理人が現に存する場合にあっては」 等の文言は不要となるものと考えられる。)を置くことが想定されるところ,上記 読替え規定の内容については,引き続き検討を要する。 2 受託者の善管注意義務の軽減の禁止 新たな公益信託に受益者の定めのある信託の受託者についての規定を適用する ことにした場合,公益信託の受託者も信託法第29条第2項の善管注意義務を負 うことになるが,同項ただし書では信託行為による受託者の善管注意義務の軽減 が可能とされている。 21 しかし,受益者の定めのある信託については受託者の善管注意義務の軽減が適 切である場面が想定されているのとは異なり,公益目的のために拠出された公益 信託の信託財産の管理処分を行う受託者については,一定の資格が要求された上 でより信託財産の管理に重きが置かれるべきである。そこで,試案の第4の2⑵ では,公益信託の受託者の善管注意義務を軽減することはできないとする強行規 定を新公益信託法の中に設ける旨の提案をしている。 なお,公益信託の受託者が負う信託法第29条第2項の善管注意義務以外の義 務については,同法第31条2項及び同法第32条2項等を参考に新公益信託法 においても任意規定として信託行為で別段の定めを置くことはできるものとする ことを想定している。 第5 公益信託の信託管理人 1 公益信託における信託管理人の必置 公益信託の信託行為には,信託管理人を指定する旨の定めを設けなけれ ばならないものとする。 (注)美術館や学生寮の運営等を公益信託事務としている公益信託においては,会社法 がその規模等に応じて監査役,会計参与,会計監査人等を置かなければならない会社 を定めていることを参考にして,公益信託事務の規模等に応じて,公益信託の信託行 為に,事務処理及び会計の監査権限を有する者を指定する旨の定めも設けなければな らないとする考え方がある。 (補足説明) 1 公益信託における信託管理人の必置 現行公益信託法は,公益信託を設定するときに,信託管理人を指定する定めを設 けることを義務付けていない。一方,信託法第258条第4項により遺言により目的 信託を設定するときには信託管理人を指定する定めを設けなければならないとされて いる。また,許可審査基準では,設定の方法が遺言であるか信託契約であるかを問わ ず信託管理人は必置とされており,税法でも信託管理人を置くことが税制優遇を受け るための要件とされている。 しかし,主務官庁による許可・監督制を廃止し,委託者,受託者及び信託管理人 による自律的な監督・ガバナンスによって公益信託の運営の適正性を確保しようとす る新たな公益信託においては,信託管理人に期待される役割は従前よりも大きくなる。 また,公益信託の委託者の権限は,目的信託の委託者の権限よりも狭め,受益者の定 めのある信託の委託者の権限と同様のものとすること(試案の第6の1)からしても, 公益信託の目的の達成のために受託者を監督する信託管理人の役割は重要であると言 22 える。 そこで,試案の第5の1では,公益信託の信託行為には,信託契約による設定又 は遺言による設定のいずれの場合においても,信託管理人を指定する旨の定めを設け なければならないものとすることを提案している。 2 試案の第5の1の(注)について 試案の第5の1に加え,受益者不在の公益信託内部のガバナンスをより充実させる ために,委託者及び信託管理人とは異なる観点から受託者の監督を行う機関を設ける べきであり,特に美術館や学生寮の運営等を公益信託事務としている公益信託におい ては,会社法がその規模等に応じて監査役,会計参与,会計監査人等を置かなければ ならない会社を定めていることを参考にして,公益信託事務の規模等に応じて,公益 信託の信託行為に,事務処理及び会計の監査権限を有する者を指定する旨の定めも設 けなければならないとする考え方がある。そこで,そのような考え方を試案の第5の 1の(注)において示している。 2 公益信託の信託管理人の資格 公益信託の信託管理人は,次の資格を満たさなければならないものとす る。 ⑴ア 受託者又はその親族,使用人その他受託者と特別の関係を有する者 に該当しないこと イ 委託者又はその親族,使用人その他委託者と特別の関係を有する者 に該当しないこと ⑵ 信託法第124条に掲げる者に該当しないこと ⑶ 信託管理人が自然人である場合 前記第4の1⑵に掲げる者に該当しないこと ⑷ 信託管理人が法人である場合 業務を執行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しく はその職務を行うべき社員又は監事若しくは監査役のうちに,前記第4 の1⑵に掲げる者に該当する者がないこと (注)上記⑴から⑷までに加え,当該公益信託の目的に照らしてふさわしい学識,経 験及び信用を有する者(公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力を有する 者)であることを必要とする考え方がある。 (補足説明) 1 公益信託の信託管理人の資格に関する規律の必要性 現行公益信託法には,公益信託の信託管理人となり得る者の資格に関する規定は 23 存在しない。ただし,信託管理人の欠格事由として,未成年者又は成年被後見人若 しくは被保佐人であること,当該信託の受託者であることを規定する信託法第12 4条の規定は公益信託にも適用される。また,許可審査基準「6.機関⑵イ」は, 公益信託の信託管理人が,①当該公益信託の目的に照らして,これにふさわしい学 識,経験及び信用を有するものであること,②当該信託の委託者又は受託者並びに これらの者と親族,使用人等特別の関係を有するものでないこと,③原則として個 人であることを公益信託の許可の要件としている。 公益信託事務の適正な処理を確保するという観点からすると,公益信託において は,受益者が存在せず,受益者による受託者の監督を期待することはできないため, 公益信託の信託管理人にも一定の適格性を要求することが望ましい。また,成立の 認可基準のような重要な事項についてはできる限り法律に明示すべきであると考え られる。そこで,試案の第5の2では,公益信託の信託管理人が一定の資格を有す ることを認可基準とする旨の提案をしている。 2 公益信託の信託管理人の欠格事由 試案の第5の2⑴ア及びイでは,公益信託の信託管理人に①受託者,②受託者の 関係者,③委託者,④委託者の関係者が就任できないとする提案をしている。 このうち,①受託者,②受託者の関係者及び③委託者が信託管理人になることを 認めないものとすることは当然であるが,④委託者の関係者が信託管理人となるこ との可否についてはその必要性の有無を含め引き続き検討を要する。 試案の第5の2⑵では,新たな公益信託にも信託法第124条の規定が適用され, 未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人(同条第1号),当該信託の受託者であ る者(同条第2号)は公益信託の信託管理人に就任できないとする提案をしている。 なお,新たな公益信託にも信託法第124条第2号の規定は適用され,公益信託の 受託者が当該信託の信託管理人に就任することは認められないから,試案の第5の 2⑵は,第5の2⑴アと重複する面がある。 試案の第5の2⑶では,公益信託の信託管理人が自然人である場合に公益信託の 受託者が自然人である場合の欠格事由と同様の欠格事由とする提案をしている。 試案の第5の2⑷では,公益信託の信託管理人が法人である場合に業務を執行す る社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しくはその職務を行うべき社員 又は監事若しくは監査役のうちに,試案の第5の2⑶のいずれかに該当する者がな いことを欠格事由とする提案をしている。 なお,許可審査基準は,信託管理人は原則として個人であることを公益信託の許 可の要件としており,現在の公益信託の実務ではもっぱら個人が信託管理人に就任 している。しかし,受託者の監督を十分に果たし得る者であれば個人でも法人でも 信託管理人に就任することを妨げる必要性は認められない一方,個人と異なり死亡 24 することがなく業務執行の過程で複層的なチェックが行われる法人が信託管理人に 就任することにより効果的な監督・ガバナンスが実現される可能性もある。そこで, 試案の第5の2では,新たな公益信託では法人の信託管理人が選任される場合があ り得ることを前提として,公益信託の信託管理人の資格を提案している。 3 試案の第5の2の(注)について 試案の第5の2の(注)は,信託管理人の資格として,公益信託の目的に照らし てふさわしい学識,経験及び信用を有する者(公益信託事務の適正な処理の監督を なし得る者)であることを必要とする考え方である。この考え方には,許可審査基 準との連続性が保たれるという利点があるが,主務官庁による許可制廃止後に公益 信託の成立の認可を一元的に行う行政庁が,個別分野の信託管理人の学識,経験及 び信用等の有無を判断することは困難であり,仮にそれを可能とするにしても相当 のコストが予想されるという問題点もある。 3 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任 ⑴ 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任は,受益者の定めのある 信託の信託管理人の権限,義務及び責任と同様であるものとする。 ⑵ 信託管理人の権限は,信託行為の定めによって制限することは原則と してできないものとし,信託管理人の義務及び責任は,信託行為の定め によって制限することはできないものとする。 (補足説明) 1 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任 現行公益信託法第7条の存在により,公益信託の信託管理人は,受託者の辞任の 同意権を有しないと解される。一方,目的信託の信託管理人については信託法第2 61条別表による読替え後の信託管理人の権限(同法第125条),義務及び責任(同 法第126条から第130条まで)の規定が適用される。なお,信託法第125条 第1項ただし書は,信託行為に別段の定めがあるときは,信託管理人の権限を制限 することができる旨規定しているが,同法第260条第2項は,遺言により設定さ れた目的信託の信託管理人の有する受託者の行為の差止請求権などを信託の変更に より制限することができない旨規定している。 しかし,公益信託は,目的信託とは性質上大きく異なるものであることからす れば,目的信託についての特則を定めた信託法第11章の規定をそのまま公益信 託に適用する必要性は低いと言える。そこで,試案の第5の3⑴では,公益信託 の信託管理人の権限,義務及び責任については,受益者の定めのある信託の信託 管理人の権限(信託法第125条),義務及び責任(同法第126条から第130 25 条まで)と同様のものとすることを提案している。 2 信託行為による別段の定めの可否 受益者が存在しない公益信託において信託管理人が果たすべき役割の重要性から すると,公益信託の信託管理人の権限の信託行為による制限は原則として認めるべ きでない。もっとも,別表1のとおり,公益信託の受託者の辞任,解任等の同意権 や信託財産の状況に関する書類の内容についての報告受領権等については,委託者, 受託者及び信託管理人による私的自治を尊重し,信託行為による信託管理人の権限 の制限を認めることも考えられる。 一方,信託法第126条第1項は受託者の善管注意義務について定める同法第2 9条第2項と異なり信託行為の定めによる信託管理人の善管注意義務の軽減を定め ていないことに加え,信託内部のガバナンスにおける信託管理人の役割の重要性か らすれば,信託法第126条第1項の信託管理人の善管注意義務を信託行為の定め によって制限することはできないものと解することが相当であると考えられる。 そこで,試案の第5の3⑵では,公益信託の信託管理人の権限を信託行為の定め によって原則として制限することはできないものとし,信託管理人の義務及び責任 は信託行為の定めによって制限することはできないものとする提案をしている。 第6 公益信託の委託者 1 公益信託の委託者の権限 公益信託の委託者の権限は,受益者の定めのある信託の委託者が有する 権限と同様とした上で,信託行為により制限できるものとする。 (補足説明) 現行公益信託法第7条の存在により,公益信託の委託者は受託者の辞任の同意権を 有しないと解されるが,それ以外の受益者の定めのある信託の委託者の受託者に対す る信託事務の処理の状況等に関する報告請求権(信託法第36条)等の信託法上の権 限については,公益信託の委託者も有する。なお,目的信託の委託者は,受託者の行 為の差止請求権等を有するものとみなされ,それを変更することはできない(同法第 260条第1項)。 新たな公益信託において公益性を確保する観点や税制優遇を受けることを視野に入 れる観点からは,委託者の関与によって公益信託の運営が左右される状況はできるだ け回避することが望ましいから,目的信託の委託者の権限を公益信託の委託者に付与 すること,すなわち,信託法第260条に規定する同法第145条第2項各号(第6 号を除く)に掲げる権利を全て公益信託の委託者に付与することは相当でない。一方, 26 公益信託の委託者も信託財産を拠出した者として,受託者が任務を懈怠して信託財産 が損傷されることを防ぐために一定の監督権限が行使できるようにすることはむしろ 望ましいと言える。しかし,自然人の委託者は信託設定後に死亡する可能性があるか ら,過度な期待のもとに委託者に公益信託設定後の受託者の監督の役割を負わせるこ とは妥当でないと考えられる。そこで,試案の第6の1では,公益信託の委託者の行 使できる権限は,受益者の定めのある信託の委託者が有する権限と同様とした上で, 委託者の権限は信託行為により制限できるものとすることを提案している。 なお,公益信託の委託者が信託行為に別段の定めをしなくても原則として有する各 権限を委託者としての権限と利害関係人としての権限に分けて別表2に記載した。そ の上で,信託行為による制限を可能とすべきであるとの提案をしている,裁判所に対 する受託者及び信託管理人の解任申立権等の権限(試案の第13の2及び第14)に ついては別表2の「信託行為による制限を可能とすべきか」の欄に○を付し,信託行 為による制限を可能とすべきか引き続き検討する必要がある権限については同欄に△ を付している。 2 公益信託の委託者の相続人 公益信託の委託者の相続人は,委託者の地位を相続により承継しない ものとする(注)。 (注)信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによるとする考え方が ある。 (補足説明) 1 委託者の相続人 現行公益信託法には委託者の相続人に関する規定はないが,信託法第146条及 び同法第147条並びにその読替え規定である同法第261条により,契約により 目的信託を設定した場合には,委託者の相続人は委託者が有していた信託法上の権 利義務を原則として相続により承継し,遺言により目的信託を設定した場合には, 委託者の相続人は委託者が有していた信託法上の権利義務を原則として相続により 承継しないが,いずれの場合にも信託行為で別段の定めをすることができるとされ ている。 しかし,公益信託については,委託者が設定した公益目的と委託者の相続人との 間では利害が対立する面があることから,設定の方法が契約か遺言かを問わず委託 者の地位の相続を禁止することが相当であると考えられる。そこで,試案の第6の 2では,公益信託の委託者の相続人は,委託者の地位を相続により承継しないもの とするとの提案をしている。試案の第6の2の提案によれば,委託者の地位の相続 を許容する別段の定めを信託行為に置くことも認められないことになる。 27 2 試案の第6の2の(注)について 試案の第6の2の提案に対しては,信託行為に別段の定めがあるときは,委託者 の地位の相続による承継を認めるべきとする考え方があることから,その考え方を 試案の第6の2の(注)に示している。(注)の考え方には,委託者の多様な意思を 反映することができる利点があるが,委託者の相続発生後の法律関係が複雑になる という問題点がある。 第7 行政庁 1 公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁 現行公益信託法第2条第1項及び第3条の規律を廃止し,公益信託の成 立の認可・監督は,民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて, 特定の行政庁が行うものとする。 (補足説明) 現行公益信託法第2条第1項及び第3条により,公益信託については,主務官庁に よる許可・監督制が採用されており,主務官庁による許可判断の具体的な要件及び手 続は,許可審査基準及び主務官庁毎に定める公益信託の引受けの許可及び監督に関す る府省令(以下「公益信託の引受けの許可及び監督に関する府省令」という。)におい て規定されている。 しかし,新たな公益信託制度においては,試案の第2の3のとおり,現行公益信託 法第2条第1項を削除し,主務官庁による許可制は廃止することが前提とされるべき である。そして,公益信託よりも先に制度改革が行われた公益法人制度においては, 旧民法下における主務官庁による公益法人の許可制の問題点を踏まえ,民間の有識者 から構成される合議制の第三者機関を諮問機関として,特定の行政庁(内閣総理大臣 又は都道府県知事)が公益法人の公益性の有無を判断する仕組みを採用していること からすると,公益信託においても,特定の行政庁が一元的に公益信託の成立の認可を 行うこととした上で,不当な裁量権の行使を防止し,その判断の客観性や透明性を確 保するために,民間の有識者から構成される合議制の第三者機関を行政庁の諮問機関 とすることが相当であると考えられる。そこで,試案の第7の1では,現行公益信託 法第2条第1項及び第3条の規律を廃止し,公益信託の成立の認可・監督は,民間の 有識者から構成される合議制の第三者委員会の意見に基づいて,特定の行政庁が行う ものとする提案をしている。 28 2 行政庁の区分 現行公益信託法第10条及び第11条の規律を改め,公益信託事務が行 われる範囲が1の都道府県の区域内に限られる公益信託の成立の認可・監 督を行う行政庁は都道府県知事とし,公益信託事務が行われる範囲が2以 上の都道府県の区域内である公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁は 国の行政庁とするものとする。 (補足説明) 現行法の下では,公益信託の受益の範囲が2つ以上の都道府県の区域内に及ぶので あれば国の主務官庁が公益信託の許可及び監督を行っているが,公益信託の受益の範 囲が1の都道府県の区域内に限られる公益信託については,主務官庁の権限に属する 事務を都道府県知事又は都道府県の教育委員会が行っている(現行公益信託法第11 条,公益信託に係る主務官庁の権限に属する事務の処理等に関する政令第1条)。 このように,公益信託の受益の範囲,すなわち,公益信託事務が行われる範囲が全 国や複数の都道府県にまたがる場合には,都道府県より国の方が効果的に監督するこ とが可能であると言える。また,公益法人制度においては,①2つ以上の都道府県の 区域内に事務所を設置するもの(公益法人認定法第3条第1号イ),②公益目的事業を 2つ以上の都道府県の区域内において行う旨を定款に定めているもの(同号ロ),③国 の事務又は事業と密接な関連を有する公益目的事業であって政令で定めるもの(同号 ハ)は内閣総理大臣が認定し,それら以外のものはその事務所が所在する都道府県知 事が認定することとされている(同条第2号)。これに平仄を合わせる観点からも,公 益信託の成立の認可及び監督に関する国と都道府県の役割分担については,基本的に 従前の仕組みを維持すべきであると考えられる。 もっとも,旧民法下では主務官庁の一つであった都道府県の教育委員会が公益法人 制度改革においては公益法人の認定機関から外れ,都道府県知事に一元化されている ことからすれば,公益信託においても同様の仕組みを採用することが自然であるし, 教育分野のみを認可基準を専門化させる必要性は乏しいことからすると,都道府県の 教育委員会を公益信託の成立の認可主体とする必要はないと考えられる。 そこで,試案の第7の2では,現行公益信託法第10条及び第11条の規律を改め, 公益信託事務が行われる範囲が1の都道府県の区域内に限られる公益信託の成立の認 可・監督を行う行政庁は都道府県知事とし,公益信託事務が行われる範囲が2以上の 都道府県の区域内である公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁は国の行政庁とす る提案をしている。 29 第8 公益信託の成立の認可の申請 1 公益信託の成立の認可の申請主体 公益信託の受託者になろうとする者は,当該信託について行政庁による 公益信託の成立の認可の申請をすることができるものとする。 (補足説明) 現行公益信託法第2条第1項は,公益信託について,受託者が主務官庁の許可を受 けることにより効力を生ずる旨定めているが,主務官庁による許可判断の具体的な要 件及び手続の内容は,法律の中に規定されておらず,許可審査基準及び公益信託の引 受けの許可及び監督に関する府省令において規定されている。 しかし,私人間の信託行為に一定の公的な地位を設定する公益信託の成立の認可を 受けるための手続の骨格については,法律に明示して規定されることが望ましいと考 えられる。そこで,試案の第8の1では,公益信託の受託者になろうとする者は,当 該信託について行政庁による成立の認可の申請をすることができるものとする規定を 新公益信託法の中に置くことを提案している。 なお,新たな公益信託制度においては,既存の目的信託が公益信託の成立の認可を 受けることを許容している(試案の第3の1の補足説明3参照)ことから,試案の第 8の1の「公益信託の受託者になろうとする者」には,既存の目的信託の受託者も含 まれる。 2 公益信託の成立の認可の申請手続 公益信託の成立の認可の申請は,必要事項を記載した申請書等を行政庁 に提出してしなければならないものとする。 (補足説明) 試案の第8の1と同様に,私人間の信託行為に一定の公的な地位を設定する公益信 託の成立の認可を受けるための手続の骨格については,法律に明示して規定されるこ とが望ましいと考えられる。そこで,試案の第8の2では,公益信託の成立の認可申 請は,必要事項を記載した申請書等を行政庁に提出してしなければならないものとす る規定を新公益信託法の中に設けることを提案している。 上記申請書以外に必要となる具体的な書類については,公益信託の引受けの許可及 び監督に関する府省令及び公益法人認定法第7条に掲げられている書類等を参考にし て下記のような書類を規定することが考えられる。 ア 信託設立趣意書 イ 信託行為の内容を示す書類 30 ウ 信託財産に属する財産となるべきものの種類及び総額を記載した書類並びにそ の財産の権利及び価格を証する書類 エ 委託者となるべき者及び受託者となるべき者の氏名及び住所等を記載した書類 (委託者となるべき者又は受託者となるべき者が法人である場合にあっては,そ の名称,代表者の氏名及び主たる事務所の所在地を記載した書類並びに定款又は 寄附行為) オ 信託管理人となるべき者の氏名及び住所等を記載した書類(信託管理人となる べき者が法人である場合にあっては,その名称,代表者の氏名及び主たる事務所 の所在地を記載した書類並びに定款又は寄附行為)及び就任承諾書 カ 公益信託を適正に運営するために必要な機関を置く場合には,その名称,構成 員の数並びに構成員となるべき者の住所及び氏名等を記載した書類及び就任承諾 書 キ 当初の信託事務年度及び翌信託事務年度の事業計画書及び収支予算書 ク 公益信託事務を行うに当たり,法令上行政機関の許認可等を必要とする場合に おいては,当該許認可等があったこと又はこれを受けることができることを証す る書類 ケ 前各号に掲げるもののほか,行政庁が特に必要と認める書類 なお,現行の公益信託の引受けの許可及び監督に関する府省令は,委託者となるべ き者の履歴書,信託管理人となるべき者の履歴書,運営委員会その他の当該公益信託 を適正に運営するために必要な機関の構成員となるべき者の履歴書の提出を求めてい る。しかし,第5の2の(注)のように公益信託の成立の認可基準として信託管理人 に学識,経験及び信用を有する者(公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力 を有する者)であることを必要とする考え方を採らないのであれば,信託管理人の履 歴書を敢えて求めなくても足りると言える。また,公益法人認定法第7条及び同法施 行規則第5条において理事及び監事等の履歴書は公益認定申請時の必要書類とされて いないことからすると,委託者,信託管理人及び運営委員会等の構成員となるべき者 の履歴書の提出は不要であると考えられることから,上記エ,オ及びカの書類に履歴 書は含めないこととしている。 また,現行の公益信託の引受けの許可及び監督に関する府省令では「信託管理人を 置く場合に」信託管理人に関係する書類の提出が義務付けられているが,第5の1の 提案のとおり,新たな公益信託制度においては信託管理人の必置が前提となることか ら,上記オの書類は必ず提出すべきものとなる。 さらに,新たな公益信託の受託者が公益信託事務として美術館や学生寮の運営等を 行ういわゆる事業型の公益信託を認める場合にはその事業の遂行のために行政機関の 許認可等を必要とするときがあると考えられるから,公益法人認定法第7条第2項第 31 3号の規定を参考に,上記クの当該許認可等があったこと又はこれを受けることがで きることを証する書類の提出を必要としている。 第9 公益信託の成立の認可基準 (前注)本項1から4までの成立の認可基準の他に,次に掲げるものを認可基準 とするものとする。 ・公益信託の受託者の資格(前記第4の1) ・公益信託の信託管理人の資格(前記第5の2) ・公益信託終了時の残余財産の帰属権利者を信託行為で定めていること(後記 第17の1) 行政庁は,公益信託の成立の認可の申請がされた信託が次に掲げる基準に適 合すると認めるときは,当該信託について公益信託の成立の認可をするものと する。 1 公益信託の目的に関する基準 公益信託事務を行うことのみを目的とするものであること (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法には,公益信託の目的に関する許可基準は設けられていないが, 許可審査基準「1.目的」において,公益信託は,公益の実現すなわち積極的に不 特定多数の者の利益の実現を目的とするものでなければならないと定められており, 同窓会,同好会や特定団体,特定個人の支援等を目的とするものは,引受けを許可 しない旨定められている。 また,許可審査基準「2.授益行為」において,①当該公益信託の目的に照らし, 適切な内容であること,②授益行為の内容は,原則として,助成金,奨学金,奨励 金,寄附金等の支給若しくは物品の配布のような資金又は物品の給付であること, ③授益行為が信託行為上具体的に明確にされていること,④営利事業として行うこ とが適当と認められる性格及び内容のものでないことが公益信託の引受けの許可の 要件とされている。 なお,所得税法施行令第217条の2等には,税制優遇が認められるための要件 として,公益信託事務が研究者に対する助成金や学生に対する学資の支給であるこ とが挙げられている。 32 2 新たな公益信託の目的に関する基準 新たな公益信託においても,助成金,奨学金,奨励金,寄附金等の支給若しくは 物品の配布のような資金又は物品の給付を目的とすることが許容されることは当然 である。その上で,公益信託の目的をこれら金銭の助成等に限定しなければならな い理由は見当たらないから,公益信託の目的を不特定多数の者が利用する美術館や 留学生向け学生寮の運営とすることも許容されるようにすべきであると考えられる。 そして,その場合に,公益信託事務の遂行に伴い生じる美術館の入場料や学生寮の 寮費を公益信託の受託者が徴収することは許容されるようにすべきであると考えら れる。 一方,公益信託と類似の社会的機能を有する公益法人においては,公益目的事業 以外の収益事業を行うことが可能とされていることから,公益信託の受託者が公益 信託事務とは別に,公益信託の目的達成のための必要性を欠く収益事業を行うこと を許容すべきであるという考え方もある。しかし,公益信託の受託者が上記の収益 事業を行うことを許容する場合には,受託者に対し公益法人並びの非常に複雑な会 計処理を義務付けなければならなくなり,公益法人よりも利用者にとって負担の少 ない方法で設定し運営することができるという公益信託のメリットが損なわれるお それがある。また,公益信託の受託者が公益信託事務とは別に,上記の収益事業を 行うことを許容した場合には,公益信託の信託行為において定められた目的からか け離れた信託事務を受託者が行う可能性が高くなることも懸念される。 そこで,試案の第9の1では,公益信託は公益信託事務を行うことのみを目的と するものであることを公益信託の成立の認可基準とすることを提案している。 2 公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準 公益信託の受託者が行う信託事務が,当該公益信託の目的の達成のため に必要な信託事務であること なお,当該信託事務が収益を伴うことは許容されるものとする。 (補足説明) 前記のとおり,試案の第9の1の提案は,公益信託は公益信託事務を行うことのみ を目的とすることを認可基準とするものであるが,それだけでは,公益信託の信託行 為に記載された信託事務が収益を伴うものであっても,当該公益信託の目的の達成の ために必要な範囲の信託事務であれば認可基準を満たすが,その範囲を超える信託事 務であれば認可基準を満たさないことが明確にならず,行政庁の認可の判断に支障を 来す可能性がある。 公益信託の受託者が行う信託事務としては,下記表のとおり,①当該公益信託の目 的達成のために直接必要な信託事務,②当該公益信託の目的達成のために間接的に必 33 要な信託事務が想定される。そして,試案の第9の1の補足説明2のように公益信託 の成立の認可基準として公益信託事務を行うことのみを目的とするものであることを 必要とした場合には,それと併せて,公益信託の受託者が行うことが可能な信託事務 を上記①及び②に限定し,③当該公益信託の目的達成のための必要性を欠く信託事務 を許容しないようにするための認可基準を設けることが相当であると考えられる。そ こで,試案の第9の2では,公益信託の受託者が行う信託事務に関する基準として, 「公益信託の受託者が行う信託事務が,当該公益信託の目的の達成のために必要な信 託事務であること なお,当該信託事務が収益を伴うことは許容されるものとする」 との提案をしている。その趣旨は,公益信託の成立の認可申請の際に行政庁に対し提 出される当該公益信託の信託行為や事業計画書等に記載された信託事務が収益を伴う ものであっても,当該公益信託の目的の達成のために必要な範囲の信託事務であれば 認可基準を満たすが,その範囲を超える信託事務であれば認可基準を満たさないこと を示すことにある。 収益を伴う信託事務が上記②として許容されるか,上記③として許容されないかは, 行政庁が,公益信託の成立の認可の時点で,当該信託の信託行為や事業計画書等に基 づいて判断し,成立の認可後も当該公益信託の目的の達成のための必要性を欠く収益 を伴う信託事務を受託者が行うことがないように行政庁が監督することを想定してい る。 34 想定される信託事務の例 具体例(当初 信託財産) 信託事務の 分類 医学研究者向け 助成金の支給 (信託設定当初の 信託財産は金銭) 美術館の運営 (信託設定当初の 信託財産は美術品 及び金銭) 留学生向け 学生寮の運営 (信託設定当初の 信託財産は既存の 土地建物及び金銭) 公益信託の目的 医学の基礎研究者に 対する助成金の支給 により,医学の進歩 に寄与する。 価値の高い美術品の 展示により,文化芸 術の普及向上に寄与 する。 留学生の受入れによ り,国際的な人材育 成と国際交流の促進 に寄与する。 ①当該公益信託 の目的達成の ために直接必 要な信託事務 ・信託財産である金 銭の取崩しによる医 学研究者への助成金 支給 ・信託財産である金 銭の投資運用 ・美術品の公開・保存 ・美術館の敷地の購 入・保存,美術館建 物の建築・保存 ・展示品入替えのた めの美術品の売却・ 購入,一時的な金銭 の借入れ ・留学生への居室・ 食事の提供 ・学生寮建物の保存 ・老朽化した学生寮 建物の改築費用に充 てるための敷地の一 部売却,金銭の借入 ②当該公益信託 の目的達成の ために間接的 に必要な信託 事務 ・美術館内でのミュ ージアムショップ, カフェの営業 ・寮生を訪問するた めに訪れた海外から の宿泊客に対する学 生寮の部屋の賃貸 ③当該公益信託 の目的達成の ための必要性 を欠く信託事 務 ・美術と関係の無い ゲームや遊具の販売 ・留学生と関係の無 い一般の宿泊客を対 象とした宿泊業の経 営 35 3 公益信託の信託財産に関する基準 ⑴ 公益信託の信託財産は,金銭に限定しないものとする。 ⑵ 公益信託設定当初の信託財産に加え,信託設定後の信託財産の運用や, 委託者又は第三者からの拠出による事後的な信託財産の増加等の計画の 内容に照らし,当該公益信託の存続期間を通じて,公益信託事務を遂行 することができる見込みがあること ⑶ 信託財産に,他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財 産が原則として含まれないことを必要とし,例外として,当該株式等の 財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがな い場合は当該株式等の財産が含まれることを許容する(注)。 (注)公益信託の信託財産に他の団体の意思決定に関与することができる株式等の 財産が含まれるか否かを公益信託の成立の認可基準としないという考え方がある。 (補足説明) 1 金銭以外の信託財産の許容 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法には,公益信託の信託財産の範囲を限定する規律は存在しない が,許可審査基準「2.授益行為」は,授益行為の内容を原則として金銭の助成 等に限定し,同基準「4.信託財産」のイは,価値の不安定な財産,客観的な評 価が困難な財産又は過大な負担付財産が,引受け当初の信託財産の中の相当部分 を占めていないことを公益信託の許可基準としている。また,税法は,認定特定 公益信託及び特定公益信託の要件として,当該公益信託の受託者がその信託財産 として受け入れる資産は,金銭に限られるものであること(所得税法施行令第2 17条の2第1項第3号等)を必要とし,信託財産の運用も預貯金,国債,地方 債,特別の法律により法人の発行する債券又は貸付信託の受益権の取得等に限定 されている(所得税法施行令第217条の2第1項第4号等)。 ⑵ 金銭以外の信託財産の許容 上記⑴のとおり,現行制度の下で,公益信託の引受け当初の信託財産が価値の 安定的な財産,特に金銭に限定されている趣旨は,信託財産に価値の不安定な財 産が入ることにより公益信託の継続的な運営に支障が生ずることを防止すること にあると考えられる。 しかし,例えば,美術品や歴史的建造物を信託財産とし,それらの公開や保存 を信託事務とする公益信託において,評価が容易でない美術品や歴史的建造物が 信託財産になったからといって,直ちに公益信託の継続的な運営が妨げられると は考え難い。また,現行公益信託法上も,公益信託の信託財産の元本を取り崩し, 信託財産がなくなれば終了するという形態の公益信託は認められているのである 36 から,公益信託の継続的な運営の確保という点を過度に重視して,信託財産の範 囲を限定する合理性は乏しいと考えられる。さらに,公益信託の委託者となろう とする者が,自らの保有する著作権や不動産等の財産を拠出することを希望して も,それらを一度金銭に換価してからでなければ公益信託の信託財産としての拠 出を認めないという取扱いは,利用者に無用な負担を強いるものであり,公益信 託の積極的な利用を妨げているものと言える。そこで,試案の第9の3⑴では, 公益信託の信託財産は,金銭に限定しないものとすることを提案している。 ⑶ 公益信託の信託財産の投資運用について 上記⑴のとおり,現行法の下では,公益信託の信託財産の投資運用について, 預金又は貯金,国債,地方債,特別の法律により法人の発行する債券の取得,合 同運用信託の信託に限られるものとする旨の定めが信託行為に存在することが税 制優遇の要件とされていることから,この要件を公益信託の成立の認可基準とす ることも検討された。 しかし,公益信託の信託財産の投資運用については受託者がその信託の目的に 応じた客観的な善管注意義務を負うものであり,試案の第4の2⑵の提案のとお り公益信託の受託者の善管注意義務を信託行為の定めにより軽減することはでき ないものとするならば,公益信託の受託者による適切な投資運用が確保されると 考えられる。一方,信託行為に現在の税法の基準に掲げられているような預貯金 や国債等での投資運用を行う旨の定めが置かれた場合に,当該信託行為の定めに 沿った投資運用を受託者が行うことが善管注意義務に違反しないことは明らかで あると言える。また,信託財産の投資運用についての信託行為による別段の定め の内容が適当なものであるか否かについて,金融取引の知見を有しない行政庁が 判断することは困難であるとも考えられる。そこで,試案の第9の3では,公益 信託の信託財産の投資運用方法に関する認可基準を設けないものとすることを前 提としている。 2 公益信託事務を遂行することが可能な信託財産を保有していること ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法は,公益信託事務を遂行することができる見込みがあることを 公益信託の許可の要件としていないが,許可審査基準「4.信託財産」は,「公益 信託は,その目的を達成するため,授益行為を継続するのに必要な確固とした財 産的基礎を有していなければならないとし,引受け当初の信託財産の運用によっ て生ずる収入により,その目的の達成に必要な授益行為が遂行できる見込みがあ ること。ただし,信託財産の取崩しを内容とする公益信託にあっては,信託財産 により,その目的の達成に必要な授益行為が存続期間を通して遂行できる見込み であること。」を公益信託の許可の要件としている。また,税法においても,公益 37 信託の目的に関し相当と認められる業績が持続できることについて主務大臣の認 定を受けたものであることが,認定特定公益信託の要件とされている(所得税法 施行令第217条の2第3項,法人税法施行令第77条の4第3項)。 ⑵ 公益信託事務を遂行することが可能な信託財産の保有 しかし,公益信託の成立の認可の明確化,客観化の観点からは,新たな公益信 託の成立の認可基準は,新公益信託法の中に規律すべきであると考えられる。 その内容について検討するに,公益信託を運営する上では,信託設定後に委託 者又は第三者から寄附を受けることも想定されるところ,許可審査基準の「引受 け当初の信託財産の運用によって生ずる収入により」という部分は,「公益信託設 定当初の信託財産に加え,信託設定後の信託財産の運用や,委託者又は第三者か らの拠出による事後的な信託財産の増加等の計画の内容に照らし」という表現に 変更することが相当であると考えられる。また,許可審査基準の「(信託財産の取 崩しを内容とする場合にはその存続期間を通じて当該公益信託事務を遂行するこ とができる見込みがあること)」という部分はその前の部分と重複するし,新たな 公益信託が助成型に限られないことを前提とするならば,当該部分は削除した上 で,新たな公益信託の成立の認可基準とすることが相当であると考えられる。 そこで,試案の第9の3⑵では,公益信託設定当初の信託財産に加え,信託設 定後の信託財産の運用や,委託者又は第三者からの拠出による事後的な信託財産 の増加等の計画の内容に照らし,当該公益信託の存続期間を通じて,公益信託事 務を遂行することができる見込みがあることを認可基準とすることを提案してい る。この認可基準は,公益信託の受託者が信託設定当初の信託財産を売却して公 益信託事務を遂行することも想定しているものである。 3 他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産の保有禁止 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法には,公益信託の信託財産に他の団体の意思決定に関与するこ とができる株式等の財産が含まれることを制限する規定は存在しない。 一方,公益信託と類似の社会的機能を有する公益法人について,公益法人認定 法第5条第15号本文は,原則として,公益法人が他の団体の意思決定に関与す ることができる株式その他の内閣府令で定める財産(以下「株式等の財産」とい う。)を保有していないものであることを公益法人の認定基準と定めている。同号 の趣旨は,公益法人が株式等の財産の保有を通じて他の営利法人等の事業を実質 的に支配することを認めれば,営利法人の経営に対する実質的な影響力の行使を 通じて,実態は営利法人としての活動が行われることにつながるが,このような 行為は,一定の条件の下で認められている収益事業が無制限に拡大することを許 容し,公益認定の基準及び遵守事項の潜脱につながるものであることから,他の 38 団体の意思決定に関与することができる株式等の財産の保有を禁止することにあ る(一問一答公益法人関連三法209頁参照)。もっとも,その例外として,同号 ただし書及び同法施行令第7条は,株式等の財産を保有する場合であっても,株 主総会その他の団体の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関における議決 権の過半数を有していない場合には,他の団体の事業活動を実質的に支配するお それがないとして,例外的な場合を定めている。 ⑵ 株式等の財産の保有制限 試案の第9の1及び2の補足説明に記載したとおり,公益信託の受託者が,公 益信託の目的達成のための必要性を欠く収益事業を行うことは許容されない。そ して,公益信託の受託者が,信託財産に含まれる株式等の保有を通じて営利法人 等の事業を実質的に支配することを認めれば,公益信託の受託者が信託財産を用 いて実質的に営利事業を行うことにつながりかねないため,そのような事態を防 止する必要があると考えられる。さらに,公益信託の受託者が株式等の財産を保 有することを全て禁止すべきとの考え方もあり得るが,公益信託の受託者は善管 注意義務を負い,その信託財産について適切な分散投資を行うことが求められる ことから,公益信託の受託者が株式等の財産を一切保有してはならないとするこ とは適切でないと考えられる。 そこで,試案の第9の3⑶では,信託財産に,他の団体の意思決定に関与する ことができる株式等の財産が原則として含まれないことを必要とし,例外として, 当該株式等の財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれ がない場合は当該株式等の財産が含まれることを許容することを提案している。 ⑶ 実質支配の具体的基準 株式等による実質支配の基準については,公益法人では法人単位で判断する仕 組みとなっているが,新たな公益信託において,公益信託単位で判断することと すると,同一の受託者が複数の公益信託を合わせて50パーセントを超える株式 を保有することを防ぐことができない。そうすると,公益信託では受託者単位で 判断する仕組みを採用することも考えられる。その場合,公益信託の受託者が公 益信託の信託財産としてではなく自らの固有財産として保有する株式の存在を認 可の際どのように評価するか等が問題となり得る。また,株主の議決権は公益信 託事務の遂行に充てられる株式配当を受けるような局面で行使されるものでもあ るから,これを公益信託の受託者が行使することを画一的に否定することも相当 でないと考えられる。特に,美術品などを管理する資産管理会社が存在し,委託 者が当該資産管理会社の株式の全てを信託財産として拠出して,公益信託を設定 する場合には,試案の第9の3⑶の基準を公益法人と同様に50パーセントを超 えないこととすると形式的には基準に違反してしまう。しかし,当該資産管理会 社が収益事業を行っておらず,当該信託の受託者が美術品の保管のみを公益信託 39 事務として行っているような場合には,基準の趣旨に照らし実質的には問題がな いとの考え方もあり得る。このように,株式の保有制限の認可基準の内容につい ては,法人と信託の異同も踏まえつつ,引き続き検討を要する。 ⑷ 試案の第9の3⑶の(注)について 上記⑴の公益法人認定法における株式等の保有制限の趣旨は公益信託に直ちに 当てはまるものではないし,受託者が信託財産の管理運用を適正に行いその財産 を増加させることは望ましいものであって,その投資運用対象には当然株式等の 有価証券も想定される。そこで,公益信託の信託財産に他の団体の意思決定に関 与することができる株式等の財産が含まれるか否かを公益信託の成立の認可基準 としないとする考え方があることから,その考え方を試案の第9の3⑶の(注) に示している。上記(注)の考え方には,公益信託が株式会社その他の営利事業 を営む者等を支配するために使われないことを防止するための対応が別途必要と なるという問題点がある。 4 公益信託の信託行為の定めに関する基準 ⑴ 信託行為の定めの内容が,次に掲げる事項に適合することとする。 ア 委託者,受託者若しくは信託管理人又はこれらの関係者に対して特 別の利益を供与するものでないこと イ 特定の個人又は団体に対して寄附その他の特別の利益を供与するも のでないこと ウ 受託者及び信託管理人の報酬について,不当に高額にならない範囲 の額又は算定方法が定められていること エ 公益信託の会計について (ア) 公益信託事務に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額 を超えないと見込まれるものであること (イ) 遊休財産額が一定の制限を超えないと見込まれるものであること (ウ) 公益信託に係る費用のうち当該公益信託の運営に必要な経常的経 費の額が一定の割合以下となると見込まれるものであること(注) (注)エ(ウ)の基準は不要であるとする考え方がある。 ⑵ 公益信託事務が金銭の助成等に限定されている公益信託について,上 記⑴エの基準は適用しないものとする。 (補足説明) 1 関係者,特定の個人又は団体等に対する特別の利益の供与禁止 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法は,当該公益信託の受託者等の関係者に対する特別の利益の供 40 与禁止や営利事業を営む者等に対する特別の利益の供与禁止は公益信託の明示的 な要件としておらず,これらは税法上の特定公益信託及び認定特定公益信託の要 件ともされていない。 一方,公益信託類似の制度である公益法人制度については,公益法人認定法第 5条第3号は,公益認定の申請をした一般社団法人又は一般財団法人がその事業 を行うに当たり,その社員,評議員,理事,監事,使用人その他の政令で定める 当該法人の関係者に対し特別の利益を与えないものであることを認定基準として おり,同法施行令第1条は,同法第5条第3号の政令で定める法人の関係者とし て,当該法人の理事等の配偶者又は三親等内の親族等を掲げている。また,公益 法人認定法第5条第4号は,公益認定の申請をした一般社団法人又は一般財団法 人が,その事業を行うに当たり,「株式会社その他の営利事業を営む者又は特定 の個人若しくは団体の利益を図る活動を行うものとして政令で定める者に対し寄 附その他の特別の利益を与える行為を行わないものであること」を認定基準とし た上で,他の公益法人に対し,当該法人が行う公益目的事業のために寄附その他 の特別の利益を与える行為を行う場合は,この認定基準に反しないものとしてい る。また,同法施行令第2条は,同法第5条第4号の政令で定めるものとして, ①株式会社その他の営利事業を営む者に対して寄附その他の特別の利益を与える 活動を行う個人又は団体(同法施行令第2条第1号),②社員その他の構成員又 は会員等の相互の支援,交流,連絡その他の社員等に共通する利益を図る活動を 行うことを主たる目的とする団体(同条第2号)を掲げている。公益法人認定法 第5条第3号の趣旨は,公益法人の社員,理事等は,その法人における地位を利 用して,自ら又は自らの親族等に対して利益を誘導し得ることから,これらの者 を法人の関係者として位置付け,特別な利益の供与を禁止すべき対象として特に 考慮したものである(一問一答公益法人関連三法201頁参照)。また,同条第 4号の趣旨は,公益法人への寄附が営利法人の株主等に分配され,又は特定の者 のために利用される事態となれば,公益法人に対する不信感を寄附者が抱くこと になり,寄附金の停滞を招いて公益目的事業の実施に支障をもたらすおそれが生 じるとともに,公益法人一般の姿勢についても疑義が呈せられることを防止しよ うとするものである(一問一答公益法人関連三法202頁参照)。 ⑵ 特別の利益供与禁止 新たな公益信託においても,上記の公益法人認定法第5条第3号及び第4号の 趣旨は同様に妥当すると考えられる。そこで,試案の第9の4⑴アでは,公益信 託の信託行為の定めの内容が委託者,受託者若しくは信託管理人又はこれらの関 係者に対して特別の利益を供与するものでないことを認可基準とし,試案の第9 の4⑴イでは,公益信託の信託行為の定めの内容が,特定の個人又は団体に対し て寄附その他の特別の利益を供与するものでないことを公益信託の成立の認可基 41 準とすることを提案している。 なお,公益法人認定法第5条第3号は,その趣旨に照らし,法人の関係者が, 他の不特定かつ多数の受益者と同等の利益を受けることまでも禁止しているもの ではないから(一問一答公益法人関連三法202頁参照),例えば,一定の公益 性が認められるような適正な選考をした上で,公益信託の受託者が,当該公益信 託の関係者に助成する場合は,この認定基準には反しないものと考えられる。 2 受託者及び信託管理人の報酬 ⑴ 現行法の定め 信託法第54条は,受託者の信託報酬について規定しているが,現行公益信託 法には,受託者の信託報酬についての規定はない。ただし,許可審査基準「5. 信託報酬」は,公益信託の引受けに係る受託者への報酬については,信託行為に 明確に定めるものとし,その額は信託事務の処理に要する人件費その他必要な費 用を超えないものであることを公益信託の許可基準としている。 また,税法においても,特定公益信託及び認定特定公益信託の要件として,公 益信託の受託者がその信託財産から受ける報酬の額は,当該公益信託の信託事務 の処理に要する経費として通常必要な額を超えないことが必要とされている(所 得税法施行令第217条の2第1項第8号,法人税法施行令第77条の4第1項 第8号)。 一方,公益法人認定法第5条第13号は,公益法人の理事,監事及び評議員に 対する報酬等(報酬,賞与その他の職務遂行の対価として受ける財産上の利益及 び退職手当をいう。)について,民間事業者の役員の報酬等及び従業員の給与,当 該法人の経理の状況その他の事情を考慮して,不当に高額なものとならないよう な支給の基準を定めることを公益法人の認定基準としている。同号の趣旨は,法 人の非営利性を潜脱することを防止し,理事等に対する報酬等の適正な水準を確 保することにある(一問一答公益法人関連三法208頁参照)。 ⑵ 受託者及び信託管理人の報酬が不当に高額にならないこと 上記⑴の許可審査基準「5.信託報酬」に対しては,①主務官庁及びその担当 者によって適用の基準が異なる,②信託事務の難易度や事務負荷等が勘案されな い,③人件費以外の物件費等が認められず採算確保が極めて困難である等の問題 が指摘されている。そして,公益信託の受託者に対して正当な報酬額を支給する ことは,公益信託の担い手となる受託者にインセンティブを与えることとなり, 受託者の確保,ひいては民間による公益活動の促進につながるものと考えられる。 他方で,公益信託の受託者に対する信託報酬の適正な水準を確保することも引き 続き必要であると考えられる。 そこで,試案の第9の4⑴ウでは,受託者及び信託管理人の報酬について,不 42 当に高額にならない範囲の額又は算定方法が定められていることを認可基準とす ることを提案している。 なお,不当に高額なものか否かについては,信託事務の内容や信託財産の状況 などの考慮要素を踏まえて総合的に判断されることを想定している。例えば,当 該公益信託の信託財産の状況のみを考慮すると,金銭助成を公益信託事務とする 公益信託においては,年々信託財産が減少していくので信託財産から毎年一定額 (例:100万円)の信託報酬を受託者が取得することは許容すべきではなく, 信託財産の額の減少に応じて信託報酬も減額するような算定方法(例:残存する 信託財産の何%)とすべきであると判断される可能性がある。しかし,当該信託 事務の内容とそれに伴う受託者の事務負担を考慮して,信託財産から毎年一定額 の信託報酬を受託者が取得することも許容される場合もあると考えられる。 3 公益信託の会計に関する認可基準 ⑴ 収支相償 現行公益信託法上,収支相償は公益信託についての許可基準とされておらず, 税法上の特定公益信託及び認定特定公益信託の要件ともされていない。 一方,公益法人認定法第5条第6号及び第14条は,公益認定の申請をした 一般社団法人又は一般財団法人が,その行う公益目的事業について,当該公益 目的事業に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額を超えないと見込 まれること(収支相償)を公益法人の認定基準としている。その趣旨は,公益 法人の公益目的事業は不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与すべきものであ り,その遂行に当たっては動員可能な資源を最大限に活用し,無償又は低廉な 対価を設定することなどにより,利益を享受する者の範囲を可能な限り拡大す ることが求められることにある(一問一答公益法人関連三法204頁参照)。 新たな公益信託では,公益信託事務を金銭の助成等に限定せず,いわゆる事業 型の公益信託を行うことも許容することを想定していることから,公益法人にお ける収支相償の趣旨は,新たな公益信託にも妥当すると考えられる。そこで, 試案の第9の4⑴エ(ア)では,公益信託事務に係る収入がその実施に要する適正な 費用を償う額を超えないと見込まれるものであることを提案している。 ⑵ 遊休財産の保有制限 現行公益信託法には,公益信託の受託者が遊休財産を一定の額を超えて保有し ないことを公益信託の許可基準とする規定は存在しない。また,税法上も,遊休 財産の保有制限は,特定公益信託及び認定特定公益信託の要件とされていない。 他方,公益法人認定法第5条第9号及び第16条は,公益法人の事業活動を行 うに当たり,公益目的事業又は公益目的事業に必要なその他の活動に使うことが 具体的に定まっていない遊休財産の額が,一年分の公益目的事業費相当額を超え 43 ないと見込まれるものであることを公益法人の認定要件としている。その趣旨は, 公益目的事業が実施されることを期待した国民からの寄附等により取得,形成さ れた公益法人の保有する財産が,公益目的事業の実施とは関係なく法人内部に過 大に蓄積された場合,本来公益目的事業に使用されるべき財産の死蔵につながり, 寄附者等の資金拠出者の意思にも反することから,公益法人が保有する財産が公 益目的事業のために速やかに使用されることを確保することにある(一問一答公 益法人関連三法206頁参照)。 公益法人制度における遊休財産額は,その法人の純資産額(資産の額-負債の 額)から控除対象財産(使途の定めがある財産として公益法人認定法施行規則第 22条第3項に列挙されている財産。ただし,対応する負債の額を除く。)を差し 引いた残額として算定される。なお,控除対象財産は,①公益目的保有財産(同 項第1号),②公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務又は活動 の用に供する財産(同項第2号),③上記①及び②に掲げる特定の財産の取得又は 改良に充てるための保有資金(同項第3号),④特定費用準備資金(同項第4号), ⑤寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産(当該財産を処分するこ とによって取得した財産を含む。)であって,当該財産を交付した者の定めた使途 に従って使用・保有しているものや,当該使途に充てるための保有資金(同項第 5号,第6号)とされている。 新たな公益信託では,公益信託事務を金銭の助成等に限定せず,いわゆる事業 型の公益信託を行うことも許容することを想定していることから,公益法人にお ける遊休財産の保有制限の趣旨は,新たな公益信託にも妥当すると考えられる。 すなわち,公益信託の受託者が,公益信託の設定当初や公益信託が運営されてい る途中で委託者から受領した信託財産や第三者から寄附等により受領した信託財 産等を,自らのもとで蓄積し,長期にわたり公益目的の信託事務の遂行に使用し ない場合には,本来公益目的に使用されるべき財産の死蔵につながり,資金拠出 者の意思にも反すると考えられる。 そこで,試案の第9の4⑴エ(イ)では,公益目的の信託事務のために現に使用さ れておらず,かつ,そのために使用される見込みのない遊休財産の額が一定の額 を上回るものでないことを新たな公益信託の成立の認可基準とすることを提案し ている。 ⑶ 経常的経費の額 公益信託について,その信託事務を遂行するための経常的経費の額に関する 事項は,許可審査基準や税法上の特定公益信託及び認定特定公益信託の要件と はされていない。 一方,公益法人認定法第5条第8号及び第15条は,公益認定の申請をした 一般社団法人又は一般財団法人がその事業活動を行うに当たり,公益目的事業 44 の実施に係る費用の額の比率が100分の50以上となると見込まれるもので あることを認定基準としている。その趣旨は,公益法人は,公益目的事業を行 うことを主たる目的とし,また公益法人の名の下に,国民からの寄附等を受け つつ事業活動を行うものであることから,公益法人が行う全ての活動(公益目 的事業,収益事業等及び法人の運営のための活動)の規模に占める公益目的事 業の規模の割合が,少なくともその半分を占めていることが必要であるため,(公 益目的事業の実施に係る費用)/{(公益目的事業の実施に係る費用)+(収益 事業等の実施に係る費用)+(公益法人の運営に必要な経常的経費)}を公益目 的事業比率として定義し,この値が100分の50以上となることを認定基準 として設けることとしたものである(一問一答公益法人関連三法205頁参照)。 試案の第9の1のとおり,新たな公益信託は公益信託事務を行うことのみを 目的とするものであるから,公益信託の受託者が公益信託事務以外の信託事務 を行うことはなく,公益法人が公益目的事業に加えて収益事業等も行うことを 前提として定められている公益目的事業比率の趣旨は,公益信託には当然には 妥当しない。しかし,公益信託事務を遂行するためには一定の経常的経費が発 生するところ,公益信託の信託財産は,可能な限り公益信託事務を実施するた めの費用として用いられるべきであり,当該公益信託の運営に必要な経常的経 費のために過大に使用されることは望ましくないと考えられる。 そこで,試案の第9の4⑴エ(ウ)では,公益信託において支出される経費のう ち当該公益信託の運営に必要な経常的経費の占める比率が公益法人認定法第1 5条の公益目的事業費率の50%よりも低い一定割合を定め,その割合を下回 ると見込まれることを認可基準とすること等を想定した提案をしている。 ⑷ 試案の第9の4⑴エ(ウ)の(注)について 試案の第9の4⑴エ(ウ)の提案に対しては,公益信託の運営に必要な経常的経 費の大部分を占めると考えられる受託者等に対する報酬は,試案の第9の4⑴ ウのように公益信託の受託者及び信託管理人の報酬の額又は算定方法が定められ ていることを認可基準とすることにより不当に高額にならないことが担保されて いること,その他の経常的経費として想定される運営委員会の開催運営費,公 告関連費等が高額となる事態は想定し難いことなどを理由に,経常的経費に関 する認可基準を設ける必要はないという考え方がある。そこで,そのような考 え方を試案の第9の4⑴エ(ウ)の(注)に示している。 ⑸ 助成型の公益信託への会計に関する認可基準の不適用 公益信託の受託者が行う信託事務が金銭の助成等に限定されている公益信託に ついては,基本的に当該信託事務の対価としての収入を得ることなく,信託財産 を取り崩しながら奨学金の支給等の公益信託事務を遂行するものであることから, 収支相償や遊休財産の保有制限が問題となる可能性は極めて低い。また,収支相 45 償や遊休財産の保有制限が許可審査基準並びに税法上の特定公益信託及び認定特 定公益信託の要件とされていない理由は,公益信託の行う受託者の信託事務が事 実上助成事務に限定されてきたこと等によるものであると考えられる。そうする と,上記会計に関する認可基準は,美術館や学生寮の運営を目的とする事業型の 公益信託についてのみ適用するのが相当であると考えられる。 そこで,試案の第9の4⑵では,公益信託事務が金銭の助成等に限定されてい る公益信託については,収支相償,遊休財産の保有制限及び経常的経費等の会計 に関する認可基準は適用しないものとすることを提案している。 ただし,収支相償の認可基準については,公益信託事務を金銭の助成等に限定 している場合でも,新たな公益信託の信託財産の投資運用の対象が拡大されたと きには,それにより多額の運用益が信託財産に帰属することも想定されることか ら助成型の認可基準としても必要となるとの考え方もあり得る。また,実際の運 用に際しては,学生寮を有償で学生に提供しその寮生に奨学金を支給するような 事業型と助成型の両方を行う公益信託や,学生寮を無償で学生に提供するような 事業型であるが無償で事業を実施する公益信託の存在も想定されることから,そ れらの取扱いも含めて引き続き検討を要する。 第10 公益信託の名称 公益信託の名称に関して,以下のような規律を設けるものとする。 1 公益信託には,その名称中に公益信託という文字を用いなければなら ない。 2 何人も,公益信託でないものについて,その名称又は商号中に,公益 信託であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。 3 何人も,不正の目的をもって,他の公益信託であると誤認されるおそれ のある名称又は商号を使用してはならない。 4 3に違反する名称又は商号の使用によって事業に係る利益を侵害され, 又は侵害されるおそれがある公益信託の受託者は,その利益を侵害する 者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求 することができる。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法は,公益信託の名称の保護に関する規定を設けていない。また, 信託法においても,限定責任信託に関する規定(信託法第216条第2項第2号, 第218条等)を除いて,信託の名称に関する規定は存在しない。もっとも,許可 46 審査基準「3.名称」は,公益信託に名称が付されることを前提に,その目的及び 実態を適切に表現した社会通念上妥当なものでなければならないとし,①国又は地 方公共団体の機関等と誤認されるおそれのある名称,②既存の法人又は公益信託と 誤認させるおそれのある名称及び③当該公益信託の授益行為の範囲とかけ離れた名 称は適切ではないとしている。 一方,公益社団法人又は公益財団法人は,その種類に従い名称中に公益社団法人 又は公益財団法人という文字を用いることが義務付けられている(公益法人認定法 第9条第3項)。また,公益社団法人又は公益財団法人ではない者は,その名称又は 商号中に公益社団法人又は公益財団法人であると誤認されるおそれのある文字を用 いてはならず(同条第4項),何人も不正の目的をもって他の公益社団法人又は公益 財団法人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない(同 条第5項)。同条第4項及び第5項に違反した場合には,同法第63条により50万 円以下の罰金が科せられる。 2 公益信託の名称保護の必要性 公益信託に対する信頼を確保するためには,その活動の透明性を確保することが 重要であり,行政庁から公益信託の成立の認可を受けた公益信託であることを明確 にするために,公益信託の名称を付すことは有用であると言える。また,公益信託 の受託者が寄附金の募集を行うに当たって公益信託の名称を表示することにより, その寄附が公益信託事務に充てられることが明確となり,寄附金を集めやすくなる といったメリットも想定される。さらに,公益信託事務の状況の報告等の様々な公 示の場面でも公益信託という文字を付した名称を用いるのが公益信託に関係する者 の便宜にかなうものと考えられる。 そこで,試案の第10の1では,受託者による名称の使用につき,公益信託には, その名称中に公益信託という文字を用いなければならないものとすることを提案し ている。なお,その公益信託が限定責任信託の場合には,「限定責任公益信託」とい う文字を用いなければならないとの規律を設けることが相当であると考えられる。 また,公益信託以外の信託について,その名称又は商号中に公益信託又はそれと 誤認される名称を付すことを許容した場合には,事業者等により公益信託の名称を 利用した悪質な活動が行われる可能性もあり得ることから,公益信託についても, 公益法人認定法第9条の規定等を参考に,その名称を保護して社会的信用を保つ必 要がある。 そこで,試案の第10の2では,受託者以外の第三者による名称の使用につき, 何人も,公益信託でないものについて,その名称又は商号中に,公益信託であると 誤認されるおそれのある文字を用いてはならないこと,試案の第10の3では,何 人も,不正の目的をもって,他の公益信託であると誤認されるおそれのある名称又 47 は商号を使用してはならないこと,試案の第10の4では,第10の3の規定に違 反する名称又は商号の使用によって事業に係る利益を侵害され,又は侵害されるお それがある公益信託の受託者は,その利益を侵害する者又は侵害するおそれがある 者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができるとの提案をしている。 第11 公益信託の情報公開 1 公益信託の情報公開の対象及び方法 現行公益信託法第4条第2項を廃止又は改正し,新たな公益信託の情報 公開の対象,方法については,公益財団法人と同等の仕組みとするものと する。 (補足説明) 1 現行法の定め 信託法第37条は,受託者は,信託事務に属する財産及び信託財産責任負担債務 の状況を明らかにするため,法務省令で定めるところにより,信託財産に係る帳簿 その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない(同条第1項),受託者は, 毎年1回,一定の時期に,法務省令で定めるところにより,貸借対照表,損益計算 書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない(同条 第2項)と規定している。また,信託法第38条は,受益者は,受託者が保存義務 を負う全ての書類等のいずれをも閲覧請求できる一方,受益者以外の利害関係人は, 貸借対照表及び損益計算書等のみを閲覧請求できる旨規定している。その上で,現 行公益信託法第4条第2項は,公益信託の受託者は,毎年1回一定の時期に信託事務 及び信託財産の状況を公告しなければならない旨規定している。 一方,公益財団法人は,財産目録,定款,社員名簿等一定の情報を備え置き,閲 覧に供することのほか,同様の資料を毎事業年度行政庁に提出し,それらの資料は 閲覧,謄写に供されるものとされている(なお,個人情報保護や濫用防止の観点か ら,社員名簿等における個人の住所の開示については法人の判断に委ねられている ほか,正当な理由がある場合には閲覧を拒否することができる。)。その趣旨は,公 益財団法人が不特定かつ多数の者の利益のために活動することから,国民に対し広 く情報公開を行い,透明性の高い事業運営を行うことが望ましく,同時に情報開示 により,国民の公益法人に対する理解が深まり,当該公益財団法人への支援が促進 される効果が期待できると考えられることにある(一問一答公益法人関連三法21 9頁参照)。 48 2 新たな公益信託の情報公開の対象及び方法 新たな公益信託においても,上記1の信託法の各規定が受益者に関するものを除 き適用されるものと考えられる。その上で,上記1の公益法人の情報公開の趣旨は 新たな公益信託にも同様に妥当することに加え,公益信託の成立の認可を受けた信 託が税法上の優遇措置を受けられるようにすることを視野に入れた場合には,公益 信託の情報を受託者及び公益信託の成立の認可を行う行政庁等において広く公開す ることが適切であると考えられる。 そこで,試案の第11の1では,現行公益信託法第4条第2項を廃止又は改正し, 新たな公益信託の情報公開の対象,方法については,公益財団法人と同等の仕組みと するものとすることを提案している。公開の対象は,信託関係人の住所氏名のよう な個人情報を除く内容を想定しているが,実務上支障を来さないように引き続き検 討する必要がある。 2 公益信託の公示 行政庁は,公益信託の成立の認可やその取消し,公益信託の変更,併合・ 分割の認可をしたときは,その旨を公示しなければならないものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法には,行政庁による公益信託の引受け許可等の公示に関する規定は 存在しない。他方,公益法人認定法においては,行政庁が公益認定をしたとき(同法 第10条),変更の認定をしたとき(同法第11条第4項),名称又は代表者の変更の 届出があったとき(同法第13条第2項),合併の届出があったとき(同法第24条第 2項),解散の届出があったとき(同法第26条第4項),公益認定を取り消したとき (同法第29条第4項)等には,行政庁はその旨を公示しなければならない旨定めら れている。 2 新たな公益信託の公示 新たな公益信託について,上記公益法人における公示事項と同様の事項を一般国民 に向けて行政庁が公示することは,公益信託に対する信頼を高める上で有用であると 考えられる。 そこで,試案の第11の2では,行政庁は,公益信託の成立の認可やその取消し, 公益信託の変更,併合・分割の認可をしたときは,その旨を公示しなければならない ものとすることを提案している。 なお,公益法人認定法第11条第4項は,行政庁が公益目的事業の種類又は内容の 変更の認定をしたときは,その旨を公示しなければならない旨規定し,同法第13条 49 第1項第1号は,公益法人の「名称又は代表者の氏名の変更」の届出があったときは, その旨を公示しなければならない旨規定しているが,同項第2号の「内閣府令で定め る軽微な変更」の届出があったときは,公示の対象としていない。それに合わせ,試 案の第11の2でも信託の変更のうち軽微なものについては公示の対象としないこと を想定している。 第12 公益信託の監督 1 行政庁の権限 現行公益信託法第4条第1項の規律を改め,行政庁は,次の権限を行使 するものとする。 ⑴ 行政庁は,公益信託事務の適正な処理を確保するために必要な限度 において,受託者に対し,その公益信託事務及び信託財産の状況につ いて必要な報告を求め,又は,その職員に,当該受託者の事務所に立 ち入り,その公益信託事務及び信託財産の状況若しくは帳簿,書類そ の他の物件を検査させ,若しくは関係者に質問させることができる。 ⑵ 行政庁は,公益信託が成立の認可基準のいずれかに適合しなくなっ たとき等に該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合には,受託 者に対し,期限を定めて,必要な措置をとるべき旨の勧告をすること ができる。 ⑶ 行政庁は,上記⑵の勧告を受けた受託者が,正当な理由がなく,そ の勧告に係る措置をとらなかったときは,当該受託者に対し,その勧 告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。 ⑷ 行政庁は,上記⑶の命令を受けた受託者が,正当な理由がなく,そ の命令に従わなかったときは,当該公益信託の成立の認可を取り消さ なければならない。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第3条は,公益信託は,主務官庁の監督に属するとし,同法第4 条は,主務官庁は,公益信託事務の処理について検査する権限を有するほか,財産 供託命令等の権限を有するものとしている。 2 行政庁の報告徴求,検査,勧告及び命令権限 しかし,新たな公益信託制度では,現行公益信託法第2条を廃止して,主務官庁 による許可制を廃止することが前提となっており(前記第2の3,第5の1,第7), 50 それに伴い主務官庁による包括的な監督権限について定めた現行公益信託法第3条 も廃止することが相当であると考えられる。 その上で,新たな公益信託の監督を行う行政庁は,従前の主務官庁のように後見 的な観点から受託者の行為を包括的に監督するのではなく,公益信託の成立の認可 基準を満たしていることを確保するために必要な範囲で公益信託の受託者に対する 検査等の監督権限を行使することが相当であるものと考えられる。また,公益信託 事務の効果を維持・保全するという財産供託命令の趣旨は,新たな公益信託の受託 者の資格として公益信託事務を適正に処理する能力を要求し,それが満たされない 場合には行政庁が公益信託の成立の認可を取り消すなどの方法により達成できるか ら,財産供託命令の制度は廃止することが相当であると考えられる。 そこで,試案の第12の1⑴から⑷においては,現行公益信託法第4条第1項の 規律を改め,行政庁の監督権限を,受託者が公益信託の成立の認可基準に違反する 行為や,法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反する行為を行っていることを 把握した場合において,その是正を求め,その勧告・命令等に従わない場合には最 終的に当該公益信託の成立の認可を取り消す等の権限とすることを提案している。 なお,試案の第12の1では,公益法人と同様に,公益信託の受託者が行政庁に 対し毎年度の事業計画書及び事業報告書等を提出することを前提としている。 3 行政庁による公益信託の成立の認可の取消し 行政庁が公益信託の成立の認可を取り消す場合としては,公益法人認定法第29 条第1項及び第2項を参考に,必要的取消事由を①受託者又は信託管理人が欠格事 由に該当する場合,②受託者が偽りその他不正の手段により公益信託の成立の認可 等を受けた場合,③受託者が行政庁の命令に正当な理由なく従わない場合,④公益 信託の受託者から認可取消しの申請があった場合とし,任意的取消事由を①公益信 託の成立の認可基準のいずれかに適合しなくなった場合,②財産目録等の定期的な 報告書類を期限内に提出しなかった場合,③法令又は法令に基づく行政機関の処分 に違反した場合等とすることが考えられる。このうち,行政庁は,公益信託が成立 の認可基準のいずれかに適合しなくなったときには,公益信託の成立の認可を取り 消すことができるものとすることに部会において異論はなかった。 試案の第12の1⑷以外の取消事由については,信託と法人との異同を踏まえた 検討が必要である。特に,公益信託の受託者が公益信託の成立後に適正に公益信託 事務を行う能力を喪失したり,欠格事由に該当したときに行政庁が公益信託の成立 の認可を必要的又は任意的に取り消すまでの必要はなく,当該受託者を解任するよ うな仕組みとすべきであるとの考え方がある(信託管理人についても同様に考えら れる。)ほか,公益信託の終了事由との関係で公益信託の受託者から認可取消しの申 請があった場合を任意的取消事由とする考え方もあることから,公益信託の継続性 51 の確保の観点を考慮しつつ,引き続き検討を要する。 2 裁判所の権限 裁判所は,信託法が裁判所の権限としている権限を原則として有するも のとすることに加え,現行公益信託法第8条が裁判所の権限としている権 限を有するものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第8条は,公益信託について,信託法第258条第1項に規定す る受益者の定めのない信託に関する裁判所の権限は,同法第150条第1項の信託 の変更命令などの裁判を除き,同法第46条の検査役の選任権も含めて原則として 主務官庁に属するとし,裁判所の権限を主務官庁に移行させた上で,同法第58条 第4項の受託者の解任権等は主務官庁が職権で行使できると規定している。 2 新たな公益信託における裁判所の権限 しかし,新たな公益信託において,主務官庁による後見的な許可・監督制を廃止 し,公益信託内部の自主的な運営を重視する立場からは,新たに公益信託の成立の 認可・監督を行う行政庁の権限は公益信託の成立の認可基準を満たしていることを 確保するために必要な範囲で行使することが相当であり,職権による権限行使は否 定する方向性が志向されるべきであると考えられる。また,信託法上,信託の当事 者及び利害関係人の保護や利害調整を通じて信託目的の達成を図るための権限は裁 判所が有するものとされており,公益信託においても,認可基準の充足性の判断と は異なる上記の権限を裁判所が行使することは可能であると言える。さらに,検査 役の選任権限は会社法第358条や一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第 86条においても裁判所の権限とされていることからすると,行政庁に付与すべき 権限とは言い難い。そこで,試案の第12の2では,新たな公益信託において,裁 判所は,信託法が裁判所の権限としている権限(検査役の選任権限を含む。)と同様 の権限を原則として有するものとすることに加え,現行公益信託法第8条が裁判所 の権限としている権限を有するものとする提案をしている。 新たな公益信託の監督における裁判所と行政庁の権限分配については,別表3の とおりとすることを想定している。 52 第13 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任 1 公益信託の受託者の辞任 現行公益信託法第7条の規律を改め,受託者は,委託者及び信託管理人 の同意を得て辞任することができるほか,[やむを得ない事由/正当な理由] があるときは裁判所の許可を得て辞任することができるものとする。 (補足説明) 1 委託者及び信託管理人の同意を得た受託者の辞任 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第7条は,公益信託の受託者は,やむを得ない事由がある場合 に限り,主務官庁の許可を得て辞任することができる旨定めている。同条の存在 により,公益信託に信託法第57条は適用されないものと解されており,公益信 託の受託者が委託者及び信託管理人の同意を得て辞任することは認められない。 ⑵ 委託者及び信託管理人の同意 しかし,新たな公益信託において,主務官庁による許可・監督制を廃止した上 で,公益信託内部の自主的な運営を重視する立場からは,行政庁の権限は,公益 信託の成立の認可基準を満たしていることを確保するために必要な範囲で認めら れるべきであると考えられる。また,公益信託の成立の認可を行う行政庁等が受 託者の資格要件該当性を含めて公益信託の成立の認可を行う趣旨は,公益信託事 務の運営主体として適格性を欠く受託者を出現させないことにあるとするならば, 新受託者の選任には公益信託の成立の認可を行う行政庁の関与が必要であるが, 受託者の辞任には行政庁が関与せずとも差し支えないと言える。そこで,試案の 第13の1では,信託法第57条第1項を公益信託にも適用し,公益信託の受託 者が委託者及び信託管理人の同意を得て辞任することを可能とする旨の提案をし ている。 ⑶ 委託者不在の場合 試案の第13の1は信託法第57条第6項の規定を公益信託に適用することを 前提としており,同項により委託者が現に存しない場合には同条第1項本文の規 定は適用されないから,公益信託の委託者が死亡するなど委託者が不在の場合に 受託者が信託管理人の同意を得て辞任することは同項ただし書の信託行為の別段 の定めがない限り認められないことになる。 2 裁判所の許可による受託者の辞任 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第7条は,信託法第57条第2項の特則として,公益信託の受 託者は,やむを得ない事由があるときは主務官庁の許可を得て辞任できる旨定め 53 ている。現行公益信託法第7条あるいは信託法第57条第2項にいう「やむを得 ない事由」の具体的な例としては,受託者が天災,病気,高齢等のために信託事 務を処理するに足りる能力がなくなったとき(受託者が法人である場合は別途考 慮する必要がある。)など,任務の終了を認める客観的な必要性があり,かつ,受 託者に特段の帰責性が存しないことを要するものと考えられている(四宮和夫「信 託法〔新版〕」(以下「四宮」という。)264頁,村松ほか概説180頁参照)。 ⑵ 裁判所による辞任許可 しかし,新たな公益信託の成立の認可及び監督を行う行政庁の権限に関する規 定は,主務官庁による許可制の下における現行公益信託法第3条のように包括的 な権限を行政庁に与える規定とするのではなく,公益信託がその成立の認可基準 を満たしていることを継続的に確保するために必要な範囲で個別に規定を設ける ことが望ましい。したがって,同法第7条のような規定を設けることは相当でな いと考えられる。 また,公益信託の成立の認可を行う行政庁が受託者の資格要件該当性の判断を 行う趣旨は,公益信託事務の運営主体として適格性を欠く受託者を出現させない ことにあるとするならば,新受託者の選任には行政庁の関与が必須であるが,受 託者の辞任には行政庁が関与せずとも差し支えないし,公益信託の受託者の辞任 にやむを得ない事由があるか否かは認可基準充足性に関わるものではなく,裁判 所が判断することも可能であると考えられる。そこで,試案の第13の1では, 信託法第57条第2項と同様に,公益信託の受託者が裁判所の許可を得て辞任す ることを可能としている。 ⑶ 裁判所の判断事項 裁判所が判断する受託者の辞任事由としては,信託法第57条第2項と同じく 「やむを得ない事由」とすべきであるという考え方がある。この考え方に対して は,公益信託の受託者が公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を失ったとま では言えないが後任の新受託者として適格性を有する者が予定されているような 場合に,上記のとおり信託法第57条第2項のやむを得ない事由の解釈では受託 者の辞任は困難であるとすると,かえって公益信託事務の遂行が滞る可能性があ るという問題点の指摘がある。 一方,裁判所が判断する受託者の辞任事由としては,信託法第57条第2項と 異なり,新受託者候補者の存在を考慮しやすくなることが想定される「正当な理 由」とすべきであるという考え方がある。この考え方に対しては,受託者の辞任 の可否について新受託者候補者の存在を考慮するか否かは受益者の定めのある信 託でも同様に問題となるものであり,現行公益信託法第7条及び信託法第57条 第2項と敢えて異なる辞任事由を公益信託に新設することには,立法事実や必要 性・相当性について慎重な検討が必要であるし,その検討との関係で正当な理由 54 の概念の内容を更に明確にすべきであることや,認可基準に照らした新受託者の 適格性の判断を行政庁が行う(試案の第13の3)ことと整合性を欠くという問 題点の指摘がある。 そこで,試案の第13の1では,上記2つの考え方に角括弧を付し,公益信託 の受託者は,[やむを得ない事由/正当な理由]があるときは裁判所の許可を得て 辞任することができるものとしている。 なお,信託法第57条第2項のやむを得ない事由に新受託者候補者の存在が含 まれるか否かは解釈論であるとも言え,仮にそれを積極に解するのであれば,信 託法第57条第2項で一般的に規定されているやむを得ない事由を公益信託につ いてのみ変更する必要はないと考えられることも踏まえ,裁判所が判断する受託 者の辞任事由については引き続き検討を要する。 2 公益信託の受託者の解任 ⑴ 委託者及び信託管理人の合意による解任について 委託者及び信託管理人は,[受託者がその任務に違反して信託財産に 著しい損害を与えたことその他重要な事由があるとき/正当な理由があ るとき]は,その合意により受託者を解任することができるものとする。 ⑵ 委託者及び信託管理人の合意がない場合において,受託者がその任 務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があ るときは,裁判所は,委託者又は信託管理人の申立てにより,受託者を 解任することができるものとする。 委託者については信託行為において受託者の解任の申立権を有しない 旨を定めることができるものとする。 (補足説明) 1 委託者及び信託管理人の合意による受託者の解任 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第8条は,信託法第58条第4項の裁判所による受託者の解任 権限を主務官庁に与え,かつ,主務官庁の職権行使を可能としている。現行公益 信託法第8条の存在により,公益信託の受託者を委託者及び信託管理人の合意に より解任することはできないものと解される。また,信託法第58条第4項の解 任事由には,受託者が任務に背いたように見える行為であってもささいなミスや 怠慢や不正確な行為は当たらない(四宮264頁,寺本逐条解説202頁参照) と解釈されている。 ⑵ 委託者及び信託管理人の合意 しかし,新たな公益信託においては,主務官庁による許可制の下における現行 55 公益信託法第3条のように包括的に行政庁に権限を与える規定とするのではなく, 公益信託がその成立の認可基準を満たしていることを継続的に確保するために必 要な範囲で個別に規定を設けることが望ましいし,信託内部のガバナンスを充実 させる観点からは不適格な受託者が生じた場合にそれを内部的に解任する仕組み があることが必要であると言える。したがって,同法第8条のような規定を設け ることは相当でないと考えられる。 また,公益信託の成立の認可を行う行政庁が受託者の資格要件該当性の判断を 行う趣旨は,公益信託事務の運営主体として適格性を欠く受託者を出現させない ことにあるとするならば,新受託者の選任には行政庁の関与が必須であるが,受 託者の解任には行政庁が関与せずとも差し支えないと考えられる。そうすると, 公益信託の委託者及び信託管理人の合意により受託者を解任することができるよ うにすることが相当であると考えられる。 ⑶ 受託者の解任事由 新たな公益信託における委託者及び信託管理人の合意による受託者の解任事由 としては,信託法第58条第1項のように限定しないことも考えられるが,公益 信託の受託者の意思に反して解任がされる場合には公益信託事務の継続性や公益 性を確保する観点から受益者の定めのある信託や目的信託の受託者の解任よりも 慎重さが必要であるから,同項とは取扱いを別にし,一定の解任事由を設けるこ とが相当であると考えられる。 その上で,委託者及び信託管理人の合意による受託者の解任事由は,信託法第 58条第4項と同一の「受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与 えたことその他重要な事由があるとき」とすべきであるとの考え方がある。この 考え方に対しては,公益信託の受託者の能力に不足が見られ,かつ,よりふさわ しい新受託者候補が存在するような場合であっても,上記「重要な事由があると き」に該当しないと判断されることが多いと考えられることからすると,上記「重 要な事由があるとき」を解任事由とすることは限定的に過ぎ,公益信託事務を停 滞させるおそれがあるとの問題点の指摘がある。 一方,委託者及び信託管理人の合意による公益信託の受託者の解任事由は,職 務上の義務違反や任務懈怠等のほか,新受託者候補者の存在を考慮しやすくなる ことが想定される「正当な理由」とすべきであるとの考え方がある。この考え方 に対しては,職務上の義務違反や任務懈怠等は別として受託者の解任の可否につ いて新受託者候補者の存在を考慮することが「正当な理由」という文言によって 確実に表現できるとまでは言い難いし,そのような考慮要素を「正当な理由」に 入れ込むことは新受託者の適格性の判断は行政庁が行う(試案の第13の3)こ とと整合性を欠くという問題点の指摘がある。 そこで,試案の第13の2⑴では,上記2つの考え方に角括弧を付し,委託者 56 及び信託管理人は,[受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えた ことその他重要な事由があるとき/正当な理由]があるときは,その合意により受 託者を解任することができるとの提案をしている。 ⑷ 委託者不在の場合 試案の第13の2⑴は,信託法第58条第2項,第3項及び第8項の規定を公 益信託にも適用することを前提としている。同条第8項の適用により,委託者が 現に存しない場合には,同条第1項の規定は適用されないから,例えば公益信託 の委託者が死亡するなど委託者が不在の場合に受託者を信託管理人の単独の意思 表示により解任することは同条第3項の信託行為の別段の定めがない限り認めら れないことになる。 2 裁判所による受託者の解任 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第8条により,公益信託の受託者は,その任務に違反して信託 財産に著しい損害を与えたこと等の重要な事由があるときは,委託者又は信託管 理人による主務官庁に対する受託者解任の申立てを受けて主務官庁により解任さ れるほか,主務官庁の職権により受託者を解任することも可能とされている。 ⑵ 裁判所による解任 しかし,公益信託の成立の認可を行う行政庁が受託者の資格要件該当性の判断 を行う趣旨は,公益信託事務の運営主体として適格性を欠く受託者を出現させな いことにあるとするならば,新受託者の選任には行政庁の関与が必須であるが, 受託者の解任には行政庁が関与せずとも差し支えないと考えられる(なお,受託 者の解任の事実の行政庁への届出等の手続については別途検討する必要がある。)。 そこで,試案の第13の2⑵は,信託法第58条第4項の規定と同様に,裁判所 が公益信託の受託者を解任することができるものとする提案をしている。これは, 同条第5項から第7項までの規定を公益信託にも適用することを前提とするもの である。 ⑶ 裁判所に対する解任の申立権者 信託法第58条第4項,同法第125条において,裁判所に受託者の解任を申 し立てる権限を有する者は委託者又は信託管理人とされていることから,公益信 託の受託者についても,裁判所に受託者の解任を申し立てる権限を有する者は, 委託者又は信託管理人とすることが相当であると考えられる。その場合に,試案 の第5の3⑵で新たな公益信託の信託管理人の権限は,原則として制限できない ものとしていることから,信託管理人の裁判所に対する受託者の解任申立権を信 託行為で制限することはできないものと考えられる。一方,委託者については, 委託者がその権利を放棄することを望む場合にはこれを禁止する必要はないと考 57 えられる。そこで,試案の第13の2⑵では,委託者については信託行為におい て裁判所に対する受託者の解任申立権を有しない旨を定めることができるものと する提案をしている。 3 公益信託の新受託者の選任 ⑴ 委託者及び信託管理人は,信託行為に新受託者に関する定めがある場 合は,当該定めに従い,信託行為に新受託者に関する定めがない場合は, 信託法第62条第1項の方法により新受託者を選任することができるも のとした上で,新受託者になろうとする者は,行政庁による新選任の認 可を受けるものとする。 ⑵ 信託法第62条第1項の場合において,同項の合意に係る協議の状況 その他の事情に照らして必要があると認めるときは,裁判所は,利害関 係人の申立てにより,新受託者を選任することができるものとした上で, 新受託者になろうとする者は,行政庁による新選任の認可を受けるもの とする(注)。 (注)行政庁による認可を必要とせず,裁判所が新受託者を選任する前に,行政庁に 意見を聴くものとする考え方がある。 (補足説明) 1 委託者及び信託管理人の合意による新受託者の選任 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第8条は,信託法第62条第4項の裁判所による新受託者の選 任権限を主務官庁に与え,かつ,主務官庁の職権行使を可能としている。現行公 益信託法第8条の存在により,公益信託の新受託者を委託者及び信託管理人の合 意のみにより選任することはできないものと解されている。 ⑵ 委託者及び信託管理人の合意 新たな公益信託制度において,主務官庁による許可・監督制を廃止し,信託関 係人による内部ガバナンスを充実させる観点からすれば,委託者と信託管理人の 合意による新受託者の選任を否定することは望ましくないと言える。他方で,公 益信託の成立の認可基準を充足せず,適格性を欠く受託者が公益信託事務を行う 事態を避けるためには,公益信託の新受託者が選任される際に,その認可基準充 足性が行政庁により審査されるべきであると考えられる。そこで,試案の第13 の3⑴では,委託者及び信託管理人は,信託行為に新受託者に関する定めがある 場合は当該定めに従い,信託行為に新受託者に関する定めがない場合は,信託法 第62条第1項の方法により新受託者を選任することができるものとした上で, 新受託者となろうとする者は,行政庁による新選任の認可を受けるものとするこ 58 とを提案している。 ⑶ 委託者不在の場合 試案の第13の3⑴は信託法第62条第2項,第3項及び第8項の規定を公益 信託にも適用することを前提としている。現在の公益信託には,信託法第261 条第1項による読替え後の同法第62条第8項の適用がされていることと同様に, 公益信託の委託者が死亡するなど現に存しない場合には同項の適用により信託管 理人の単独の意思表示に加え行政庁による認可があるときに新受託者の選任が可 能となるものと考えられる。 2 裁判所による新受託者の選任 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第8条により,公益信託の新受託者は,委託者又は信託管理人 による主務官庁に対する新受託者の選任の申立てを受けて主務官庁により選任さ れるほか,主務官庁の職権により新受託者を選任することも可能とされている。 ⑵ 裁判所による新受託者の選任 しかし,新たな公益信託においては主務官庁による許可・監督制は廃止され, 試案の第12の1の補足説明のとおり,新たな行政庁の権限は公益性の確保に必 要な範囲とされるべきであり,信託法が裁判所の権限としている権限は公益信託 においても裁判所の権限とするのが相当であると考えられる。また,信託法第6 2条第4項の(委託者及び信託管理人の)合意に係る協議の状況その他の事情に 照らして必要があると認めるときに該当するか否かの判断は,公益性の確保や認 可基準充足性を判断するものではなく,公益信託においても裁判所が判断するこ とは可能であると言える。その上で,行政庁が公益信託の新受託者の選任に関与 しない場合には,当初の公益信託の成立の認可の際に行政庁が受託者の資格要件 該当性を判断することの意義が失われるから,公益信託の新受託者の選任又は新 受託者が公益信託事務を開始するに際して行政庁による認可を必要とすることが 相当であると考えられる。 そこで,試案の第13の3⑵は,信託法第62条第4項と同様に,同条第1項 の場合において,同項の合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があ ると認めるときは,裁判所は,利害関係人の申立てにより,新受託者を選任する ことができるものとした上で,新受託者になろうとする者は,行政庁による選任 の認可を受けるものとしている。この案は,信託法第62条第5項から第7項ま での規定を公益信託にも適用することを前提としている。 ⑶ 試案の第13の3⑵の(注)について 試案の第13の3⑵の提案に対し,行政庁による新受託者選任の認可を必要と するのではなく,裁判所の判断と行政庁の判断の調整を図るため,裁判所が新受 59 託者を選任する前に,当該新受託者になろうとする者が公益信託の成立の認可基 準を充足するか否かについて行政庁に意見を聴くべきであるとの考え方があるこ とから,その考え方を試案の第13の3⑵の(注)に示している。 上記(注)の考え方には,新受託者の選任をしようとする当事者が裁判所と行 政庁の両方に行く手間を省けるという利点がある。もっとも,裁判所による新受 託者選任の要件は,行政庁が判断する認可基準とは異なるものであるから,これ らの要件や基準の有無の判断を一つの手続内で行うことについては,不服申立手 続における判断事項等との関係も含めて理論的な整理が必要であるという問題点 の指摘がある。また,現在の公益法人の認定実務においては行政庁と一般法人と の間で直接的な情報のやりとりがされるようであり,裁判所から提供される書面 等の情報のみでは,意見聴取を求められた行政庁が新受託者の認可基準充足性に ついて判断することができない旨の回答がされる可能性がある。そうすると,裁 判所による新受託者選任の判断が困難となる場合も想定され,裁判所において新 受託者の選任を行政庁の意見を踏まえて一元的に行わせることにより,かえって 信託の当事者に過度な負担を強いるおそれがある上,新受託者の選任が遅延する ことにより,公益信託事務が停滞してしまう可能性もあることに留意する必要が あると考えられる。 第14 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任の規律は, 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任と同様の規律とするも のとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第8条は,信託に関する裁判所の権限は原則として主務官庁に属 する旨定めている。そして,受託者の辞任及び解任に関する信託法第57条及び第 58条の規定は同法第128条第2項により信託管理人の辞任及び解任に準用され, 新受託者の選任に関する同法第62条の規定は同法第129条により新信託管理人 の選任に準用されていることから,公益信託の受託者の辞任・解任及び新受託者の 選任と同様に,公益信託の信託管理人の辞任・解任及び新信託管理人の選任には主 務官庁の許可等が必要とされるものと解されている(公益信託の引受けの許可及び 監督に関する府省令参照)。 60 2 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任の規律 しかし,新たな公益信託においては主務官庁による許可・監督制は廃止され,試 案の第12の1の補足説明のとおり,主務官庁の権限は公益性の確保に必要な範囲 とされるべきであると考えられる。また,新たな公益信託における信託管理人の役 割の重要性に鑑みると,敢えて公益信託について受託者と異なる規律を設ける必要 性は認められないものと考えられる。さらに,信託法第128条第2項は,受託者 の辞任に関する同法第57条の規定を信託管理人の辞任に,受託者の辞任に関する 同法第58条の規定を信託管理人の解任に,それぞれ準用することを規定している。 また,同法第129条は,新受託者の選任に関する同法第62条の規定を新信託管 理人の選任について準用することを規定している。そこで,試案の第14では,公 益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任の規律は,公益信託の受託 者の辞任・解任,新受託者の選任と同様の規律とすることを提案している。 3 委託者不在の場合 試案の第13と同様に,試案の第14も,信託法第57条第2項から第6項まで の規定,同法第58条第2項から第8項までの規定,同法第62条第2項から第8 項までの規定を信託管理人に準用するものとしている同法第128条及び第129 条の規定が公益信託にも適用されることを前提としている。 その結果,公益信託の信託管理人の辞任は,委託者が現に存しない場合には,信 託法第57条第1項ただし書の信託行為の別段の定めがないときは同条第2項の裁 判所の許可を得ない限り認められないことになる。また,公益信託の信託管理人の 解任は,委託者が現に存しない場合には,同法第58条第3項の信託行為の別段の 定めがないときは同条第4項の裁判所による解任以外に認められないことになる。 さらに,公益信託の新信託管理人の選任は,委託者が現に存しない場合には,信託 法第62条第4項の裁判所による選任以外に認められないことになり,公益信託の 信託管理人の解任を裁判所に申し立てる権利は,複数の信託管理人が選任されてい る場合の他の信託管理人が有することになるものと考えられる。 その上で,公益信託において委託者及び他の信託管理人が存在しない場合に裁判 所に信託管理人の解任を申し立てる者が問題となるが,1人の信託管理人がその役 割を果たすことができないまま存在するのでは公益信託事務の適正な監督に支障を 生ずることに加え,信託管理人の解任に裁判所を関与させるのであれば受託者から の信託管理人の解任申立てを認めても不当な結果を生ずる可能性は低いと言えるこ とから,公益信託の信託管理人の解任申立権を公益信託の受託者に付与することが 相当であると考えられる。一方,信託管理人の解任申立権を信託管理人により監督 される立場の受託者に与えることは矛盾するとの考え方もあるし,そもそも委託者 不在の場合の取扱いについては信託法の解釈に委ねられていると考えられることも 61 踏まえ,引き続き検討を要する。 第15 公益信託の変更,併合及び分割 (前注)行政庁に対する変更,併合及び分割の認可の申請は,いずれも受託者が行 うことを前提としている。 1 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更 ⑴ 現行公益信託法第5条及び第6条を廃止又は改正し, ア 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更は,委託者, 受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による変更の 認可を受けることによってすることができるものとする。 イ 裁判所は,信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情 により,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目 的及び信託財産の状況その他の事情に照らして公益信託の目的の達成 に支障になるに至ったときは,委託者,受託者又は信託管理人の申立 てにより,信託の変更を命ずることができるものとする。 委託者については信託行為において変更命令の申立権を有しない旨 を定めることができるものとする。 ウ 受託者は,上記イの変更命令の後,行政庁による変更の認可を受け るものとする(注)。 (注)行政庁による変更の認可を必要とせず,裁判所が信託の変更を命ずる前に, 変更後の信託が公益信託の成立の認可基準を充足するか否かについて,行政庁に 意見を聴くものとする考え方がある。 ⑵ 上記⑴アの例外として,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の 定めの軽微な変更をするときは,受託者は,その旨を行政庁に届け出る とともに,当該変更について委託者及び信託管理人の同意を得ていない 場合には,遅滞なく,委託者及び信託管理人に対し,変更後の信託行為 の定めの内容を通知しなければならないものとする。 (補足説明) 1 委託者,受託者及び信託管理人の合意等並びに行政庁の認可による変更 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第6条は,公益信託について信託の変更(同法第5条の規定に よるものを除く。)を行うには,主務官庁の許可を受けることが必要である旨規定 しており,これにより,公益信託の変更は,信託法第149条の当事者の合意等 に加え主務官庁の許可があった時点でその効力を生じる。 62 ⑵ 信託法第149条の適用 新たな公益信託においても,当事者の信託に関する意思決定を重視する観点に 照らすと,当事者の合意等による信託行為の定めの変更の手続を定めている信託 法第149条を公益信託にも適用することが相当であると考えられる。 ⑶ 「委託者,受託者及び信託管理人の合意等」の意味 公益信託には受益者は存在しないが,新たな公益信託では信託管理人が必置と される(試案の第5の1)ことから,信託法第149条第1項から第5項までの 「受益者」は「信託管理人」と読み替えられる。 そして,上記の読替えを経ると,公益信託に信託法第149条を適用した場合 に必要とされる当事者の合意等は,①委託者,受託者及び信託管理人の3者合意 (同条第1項参照),②信託の目的に反しないことが明らかであるときの受託者及 び信託管理人の2者合意(同条第2項第1号参照),③信託の目的の達成のために 必要であることが明らかであるときの受託者が書面又は電磁的記録によってする 単独の意思表示(同条第2項第2号参照。この場合,受託者は委託者及び信託管 理人に対し変更後の信託行為の内容等を遅滞なく通知しなければならない。),④ 受託者の利益を害しないことが明らかであるときの委託者及び信託管理人の2者 の受託者に対する意思表示(同条第3項第1号参照),⑤信託の目的に反しないこ と及び受託者の利益を害しないことが明らかであるときの信託管理人単独の受託 者に対する意思表示(同条第3項第2号参照)を意味することになる。なお,新 たな公益信託では委託者の権限は受益者の定めのある信託の委託者が有する権限 と同様とする(試案の第6の1)立場からすると,新たな公益信託の変更につい ては目的信託の変更と異なり信託法第261条第3項を適用する必要はないもの と考えられる。 そこで,試案の第15の1⑴アの提案では,上記①から⑤の場合をまとめて, 「委託者,受託者及び信託管理人の合意等」と表現している。 ⑷ 行政庁の認可 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更について,委託者,受 託者及び信託管理人の合意等がある場合であっても,その変更後の信託行為の内 容によっては,新たな公益信託の成立の認可基準の充足性に問題が生じる可能性 がある。また,行政庁が公益信託の成立の認可の取消権限を有することを前提と しても,その権限行使は事後的なものにとどまるから,公益信託の信託行為の定 めの変更によって公益信託の成立の認可基準を満たさなくなる事態の発生を防止 するためには,信託行為の定めの変更の前に行政庁がその当否を審査することが 有効であるものと考えられる。この場合の行政庁の不認可処分に対する当事者の 不服申立手続は,行政不服審査又は行政処分の取消訴訟によることが想定される。 63 ⑸ 委託者不在の場合 試案の第15の1⑴アは,信託法第149条第5項の規定を公益信託に適用す ることを前提としており,同項により委託者が現に存しない場合には同条第1項 及び同条第3項第1号の規定は適用されないから,公益信託の委託者が死亡する など委託者が不在の場合に例えば受託者が信託管理人との合意により信託の変更 をすることは,同条第1項から第3項までの規定にかかわらず信託行為に別段の 定めがあるときはその定めによると規定している同条第4項の信託行為の別段の 定めがない限り認められないことになる。なお,同項の別段の定めにより行政庁 の認可を不要とすることはできないものと考えられる。 ⑹ 小括 以上の検討を踏まえ,試案の第15の1⑴アでは,現行公益信託法第6条を廃 止又は改正し,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更は,委託 者,受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による変更の認可を 受けることによってすることができるものとする提案をしている。 2 裁判所による変更 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第5条第1項は,公益信託について信託行為の当時予見するこ とのできなかった特別の事情が生じたときは,主務官庁は,信託の本旨に反しな い限り職権でも信託の変更を命じることができる旨規定し,同条第2項は,信託 法第150条の公益信託への適用を除外している。 ⑵ 信託法第150条の適用 しかし,新たな公益信託においては主務官庁による後見的見地からの包括的な 監督を定めた現行公益信託法第3条は廃止され,行政庁は公益信託の成立の認可 基準を満たしていることを確保するために必要な範囲で監督権限を行使すること が想定されている(試案の第12の1の補足説明参照)ことからすると,裁判所 による変更命令を排除し,主務官庁による職権での変更命令を許容する現行公益 信託法第5条第1項を維持することは相当でないと考えられる。 その上で,信託法第150条第1項は,信託行為の定めの変更は,信託関係者 等の意思によって行うのが原則ではあるものの,信託関係者の人数が少なくない 場合などにおいては,実際上,合意を行うことが困難な場合もある(村松ほか概 説285頁)ことから設けられたものであり,例えば,受託者の信託事務処理を 第三者に委託してはならない旨の定めがあるときに,信託行為の当時には予想で きなかった技術変化により,受託者自身による管理が不適切になり,受益者の利 益に適合しなくなった場合などが例として考えられる。裁判所による変更を通じ て受益者の利益が保護されるべきか否かは,信託目的との関係で判断されるから, 64 同項に基づく信託目的自体の変更はできないと解されている(道垣内弘人「信託 法」395頁,新井誠監修「コンメンタール信託法」407頁も同旨)。 このような信託法第150条の趣旨は,公益信託事務の処理の方法に係る信託 行為の定めの変更について,試案の第15の1⑴アの委託者,受託者及び信託管 理人の合意等がない場合にも妥当するものと言える。 したがって,裁判所に対する申立てによる信託行為の定めの変更の手続を定め ている信託法第150条を公益信託にも適用することが相当であると考えられる。 ⑶ 裁判所に対する変更命令の申立権者 裁判所による変更命令の申立権者について,信託法第150条第1項は,「委託 者,受託者又は受益者」と規定している。そして,同法第125条第1項は,信 託管理人は,受益者のために自己の名をもって受益者の権利に関する一切の裁判 上又は裁判外の行為をする権限を有すると規定しているため,信託管理人は,特 に読替え規定を置かなくとも単独受益者権を行使することができる(村松ほか概 説382頁参照)と解されていることに鑑みると,公益信託の変更命令の申立権 者は,「委託者,受託者又は信託管理人」となるものと考えられる。 なお,上記のうち受託者及び信託管理人の申立権を信託行為の定めにより制限 することはできないものと考えられる。一方,委託者については,信託法第15 0条第1項に基づく裁判所に対する信託の変更の申立権は,委託者が信託行為に 別段の定めをしなくても原則として有する権利として位置付けられているものの, 委託者がその権利を放棄することを望む場合にはこれを禁止する必要はなく,同 法第145条第1項に基づき権利を有しない旨を定めることは可能であると解さ れている(寺本逐条解説328頁参照)。また,委託者が当然に有すると整理され る権利の中には,裁判所に対する各種の申立権も含まれるが,これらの申立権を 放棄する旨の定めについても,その効力を認めることができるほか,委託者の権 利放棄の位置付けは,同法第145条第1項の規定によるものであるが,同時に, 同法第149条第4項,第151条第3項等の規定との関係では,それぞれにつ いて「別段の定め」がされたというべきであると解されている(村松ほか概説2 70頁)。したがって,委託者については信託行為により変更命令の申立権を有し ない旨を定めることができるものとすることが相当であると考えられる。 ⑷ 裁判所の判断事項 信託法第150条第2項により,変更命令の申立てを行う者は,裁判所に対し て当該申立てに係る変更後の信託行為の定めを明らかにしなければならないとさ れているから,裁判所はその申立ての可否の判断のみを行うことで足りる。この 場合の不服申立手続は,同条第5項に基づく即時抗告によることとなる。 ⑸ 行政庁による変更の認可 信託法第150条に基づく裁判所の変更命令は,委託者,受託者及び信託管理 65 人の合意等が整わない場合に当該合意等の代替となるものであり,変更後の信託 行為の定めの内容が公益信託の成立の認可基準を充足するか否かの判断を予定し ているものではないから,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変 更を行う場合には,行政庁による変更の認可を受けることを必要とすることが相 当であると考えられる。 ⑹ 小括 以上の検討を踏まえ,試案の第15の1⑴イ及びウでは,現行公益信託法第5 条を廃止又は改正し,裁判所は,信託行為の当時予見することのできなかった特 別の事情により,公益信託事務の処理の方法にかかる信託行為の定めが信託の目 的及び信託財産の状況その他の事情に照らして公益信託の目的の達成に支障にな るに至ったときは,委託者,受託者又は信託管理人の申立てにより,信託の変更 を命ずることができる(委託者については変更命令の申立権を有しない旨の信託 行為の定めを置くことができる)ものとした上で,受託者は裁判所の変更命令の 後,行政庁による変更の認可を受けるものとするとの提案をしている。 ⑺ 試案の第15の1⑴ウの(注)について 試案の第15の⑴ウは,裁判所の変更命令の後,行政庁による変更の認可を必 要とするものであるが,これに対し,行政庁による変更の認可を必要とするので はなく,裁判所の判断と行政庁の判断の調整を図るため,裁判所が信託の変更を 命ずる前に,変更後の信託が公益信託の成立の認可基準を充足するか否かについ て行政庁に意見を聴けば足りるとの考え方があることから,その考え方を試案の 第15の1⑴ウの(注)に示している。(注)の考え方には,信託の変更をしよう とする当事者が裁判所と行政庁の両方に行く手間を省けるという利点がある。も っとも,裁判所による変更命令の要件は,行政庁が判断する認可基準とは異なる ものであるから,これらの要件や基準の有無の判断を一つの手続内で行うことに ついては,不服申立手続における判断事項等との関係も含めて理論的な整理が必 要であるという問題点の指摘がある。また,現在の公益法人の認定実務において は行政庁と一般法人との間で直接的な情報のやりとりがされるようであり,裁判 所から提供される書面等の情報のみでは,意見聴取を求められた行政庁が変更後 の信託行為の認可基準充足性について判断することができない旨の回答がされる 可能性がある。そうすると,裁判所による変更命令の判断が困難となる場合も想 定され,裁判所において公益信託の変更命令を行政庁の意見を踏まえて一元的に 行わせることにより,かえって信託の当事者に過度な負担を強いるおそれがある 上,公益信託の変更が遅延する可能性もあることに留意する必要があると考えら れる。 66 3 信託行為の定めの軽微な変更 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第6条は,信託行為の定めの軽微な変更か否かを問わず,一律 に行政庁の許可を必要としている。 ⑵ 軽微な変更についての届出と関係者への通知 しかし,信託行為の定めの軽微な変更も含めて全ての公益信託の信託行為の定 めの変更について行政庁の変更の認可を得なければならないとした場合には,そ れに要する受託者の事務手続の負担が過大なものとなるおそれがあり,主務官庁 による許可制を廃止した後の,新たな行政庁による関与として過剰であると評価 される可能性もあるから,新たな公益信託において信託行為の軽微な変更をする 場合には,受託者が行政庁に対する届出をすることで足りるものとすることが相 当であると考えられる。 その上で,信託行為の定めの軽微な変更を行う場合に,委託者及び信託管理人 の同意があるときは委託者及び信託管理人に対し変更内容を通知する必要はない が,受託者が当該変更について委託者及び信託管理人の同意を得ていないときは, 信託法第149条第2項第2号を参考にして,受託者は,変更後の信託行為の定 めの内容を委託者及び信託管理人に対して遅滞なく通知しなければならないとす ることが相当であると考えられる。 そこで,試案の第15の1⑵では,試案の第15の1⑴アの例外として,公益 信託の信託行為の定めの軽微な変更をするときは,受託者は,その旨を行政庁に 届け出るとともに,当該変更について委託者及び信託管理人の同意を得ていない 場合には,遅滞なく,委託者及び信託管理人に対し,変更後の信託行為の定めの 内容を通知しなければならないものとすることを提案している。 ⑶ 軽微な変更の具体例 公益信託の信託行為の定めの軽微な変更の具体例としては,公益法人認定法施 行規則第7条を参考に,①受託者が公益信託事務を行う都道府県の区域を変更す るが,当該変更後の公益信託事務を行う区域が2以上の都道府県の区域内である ことから,行政庁が国の行政庁であることで変わらないもの,②公益信託事務の 内容の一部を変更するが,公益信託の成立の認可を受けた申請書の記載事項の変 更を伴わないものとすることなどが想定される。なお,公益信託の受託者の名称 の変更や,受託者が法人である場合の代表者の変更などは,そもそも,信託行為 の定めの変更に当たらないと考えられるが,これらの事象が生じた場合に,受託 者が事後的に行政庁にその名称の変更等の届出を行う仕組みを設けることも考え られる。 67 2 公益信託の目的の変更 ⑴ 現行公益信託法第6条を廃止又は改正し,公益信託の目的の変更は, 委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,行政庁による変 更の認可を受けることによってすることができるものとする。 ⑵ 現行公益信託法第9条を改正し,公益信託の目的を達成したとき又は その目的を達成することができなくなったときは, ア 委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,公益信託の 目的を他の公益目的に変更し,行政庁による変更の認可を受けること によって公益信託を継続できるものとする。 イ 委託者が現に存しない場合には,受託者及び信託管理人は,その合 意により,公益信託の目的を類似の目的に変更し,行政庁による変更 の認可を受けることによって公益信託を継続できるものとする。 (補足説明) 1 公益信託の終了原因が生ずる前の公益信託の目的の変更 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第6条は,公益信託について信託の変更(同法第5条の規定に よるものを除く。)を行うには,主務官庁の許可を受けることが必要である旨規定 しており,これにより,公益信託の変更は,信託法第149条の当事者の合意等 に加え主務官庁の許可があった時点でその効力を生じる。 ⑵ 信託法第149条第1項の適用 新たな公益信託においても,当事者による信託に関する意思決定を重視する観 点に照らすと,当事者の合意等による信託の目的の変更の手続を定めている信託 法第149条第1項を公益信託にも適用することが相当であると考えられる。 ⑶ 「委託者,受託者及び信託管理人の合意」の意味 もっとも,公益信託の目的の変更をする場合には,「信託の目的に反しないこと が明らかである」等の信託法第149条第2項及び第3項の要件を満たすことは 想定し難く,公益信託の目的の変更は,委託者,受託者及び信託管理人の合意が ある場合にのみ行われると考えられる。そのため,試案の第15の2の提案では, 試案の第15の1⑴アのように「委託者,受託者及び信託管理人の合意等」と表 現するのではなく,「委託者,受託者及び信託管理人の合意」と表現することとし ている。なお,同条第4項の規定により,例えば委託者及び受託者の合意に加え て行政庁による変更の認可を受けることにより信託の目的を変更できる旨の信託 行為の定めを置くことは可能であると考えられる。 68 ⑷ 行政庁の認可 公益信託の目的は,当該信託を設定した委託者の意思の表れであり,尊重され るべきであると考えられる。また,公益信託の目的の変更を認めると,特定の公 益目的のために設定された信託であることを前提として当該信託に寄附をした者 の期待が害されるおそれもあることからすると,公益信託の目的の変更を委託者, 受託者及び信託管理人の合意のみによって行うことができるようにすることは望 ましくない。さらに,公益信託の変更後の目的によっては公益信託の成立の認可 基準を満たさなくなる事態が生じる可能性があり,行政庁が公益信託の成立の認 可の取消権限を有することを前提としてもその権限行使は事後的なものにとどま るから,そのような事態を防止するためには,信託の目的の変更の前に,行政庁 がその当否を審査し,認可を与えるものとすることが必要であるものと考えられ る。なお,上記のとおり,公益信託の目的の変更を行う場合には,特定の公益目 的のために財産を寄附した者の期待が害されるおそれがあることからすると,試 案の第15の2⑴の場面においても,試案の第15の⑵イの場面と同じく類似の 目的にのみ変更を可能とする考え方もあり得るため,引き続き検討を要する。 ⑸ 委託者不在の場合 試案の第15の2⑴の提案は,信託法第149条第5項の規定を公益信託に適 用することを前提としており,同項により委託者が現に存しない場合には同条第 1項及び同条第3項第1号の規定は適用されないから,公益信託の委託者が死亡 するなど委託者が不在の場合に例えば受託者が信託管理人との合意により信託の 変更をすることは同条第4項の信託行為の別段の定めがない限り認められないこ とになるものと考えられる。なお,同項の別段の定めにより行政庁の認可を不要 とすることはできないものと考えられる。 ⑹ 小括 以上の検討を踏まえ,試案の第15の2⑴では,現行公益信託法第6条を廃止 又は改正し,公益信託の目的の変更は,委託者,受託者及び信託管理人の合意が ある場合には,行政庁による変更の認可を受けることによってすることができる ものとするとの提案をしている。 2 公益信託の目的を達成したとき又はその目的を達成することができなくなったと きの信託の目的の変更 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第9条は,「公益信託ノ終了ノ場合ニ於テ帰属権利者ノ指定ニ関 スル定ナキトキ又ハ帰属権利者ガ其ノ権利ヲ放棄シタルトキハ主務官庁ハ其ノ信 託ノ本旨ニ従ヒ類似ノ目的ノ為ニ信託ヲ継続セシムルコトヲ得」と規定している。 同条は,公益信託が終了した場合にこれを清算せずに類似の目的の公益信託とし 69 て継続させる方が,公益目的のために信託を設定した委託者の意思にも社会の要 求にも合致することから設けられているものであり,英米法におけるシ・プレ原 則を参照したものであると解されている。 ⑵ 委託者,受託者及び信託管理人の合意並びに行政庁の認可による変更 しかし,新たな公益信託においては主務官庁による許可・監督制は廃止される ことが前提となっているから,現行公益信託法第9条をそのまま維持することは できない。また,試案の第17の1の提案のとおり全ての公益信託の信託行為に 帰属権利者の定めが置かれることを前提とすると,新たな公益信託において,帰 属権利者が定まらないという事態は想定しにくい。そして,信託財産をできるだ け民間による公益活動のために活用しようという観点からは,仮に公益目的の達 成又は不達成の場合に公益信託の残余財産の帰属権利者として定められた国,地 方公共団体等がその権利を放棄していないときであっても,清算結了までの間, 委託者,受託者及び信託管理人の合意によりその目的を変更することは可能とす ることが相当であると考えられる。そして,その場合の変更の範囲については, 公益目的の達成又は不達成の前の時点では「類似の」目的への変更という制約が 課されていないこととの均衡を考慮すると,公益目的と評価できるものであれば 当初の目的と類似していない他の公益目的への変更も認められることになると考 えられる。 そこで,試案の第15の2⑵アでは,現行公益信託法第9条を改正し,公益信 託の目的を達成したとき又はその目的を達成することができなくなったときは, 委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,公益信託の目的を他の公 益目的に変更し,行政庁による変更の認可を受けることによって公益信託を継続 できるものとする提案をしている。 なお,試案の第15の2⑵アの提案に対しては,公益信託の信託行為において 公益信託の終了命令の申立権を委託者が有しない旨を定めることが可能とされて いること(試案の第16の4)との関係を踏まえ,信託法第149条第4項を適 用して終了命令の申立権を有しない委託者を信託行為の定めにより変更の合意の 当事者から外し,公益信託の目的達成又は不達成後に受託者及び信託管理人の合 意で信託の目的の変更を可能とする考え方もあることから,引き続き検討を要す る。 ⑶ 委託者不在の場合 試案の第15の2⑵アと異なり,委託者が現に存しない場合は,当初の公益目 的のために信託財産を拠出した委託者の意思を尊重する必要があることから,類 似の目的の公益信託への変更のみを許容することが相当であると考えられる。そ こで,試案の第15の2⑵イでは,委託者が現に存しない場合には,受託者及び 信託管理人は,その合意により,公益信託の目的を類似の目的に変更し,行政庁 70 による変更の認可を受けることによって公益信託を継続できるものとすることを 提案している。 3 公益信託の併合・分割 現行公益信託法第6条を廃止又は改正し,公益信託の併合・分割は,委 託者,受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による併合・ 分割の認可を受けることによってすることができるものとする(注)。 (注)裁判所は,信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,信託 行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして公益信託の目的 の達成に支障になるに至ったときは,委託者,受託者又は信託管理人の申立てにより, 信託の併合・分割を命ずることができる旨の規律を設けるものとする考え方がある。 (補足説明) 1 委託者,受託者及び信託管理人の合意並びに行政庁の認可による併合・分割 ⑴ 現行法の定め 現行公益信託法第6条は,公益信託について信託の併合又は分割を行うには, 主務官庁の許可を受けることが必要である旨規定しており,これにより,公益信 託の併合又は分割は,信託法第151条,第155条及び第159条の当事者の 合意等に加え主務官庁の許可があった時点でその効力を生じる。 ⑵ 信託法第151条,第155条及び第159条の適用 新たな公益信託においても,当事者による信託に関する意思決定を重視する観 点に照らすと,当事者の合意等による信託の併合・分割の手続を定めている信託 法第151条,第155条及び第159条を新たな公益信託にも適用することが 相当であると考えられる。 ⑶ 「委託者,受託者及び信託管理人の合意等」の意味 公益信託には受益者は存在しないが,新たな公益信託では信託管理人が必置と されることが前提とされること(試案の第5の1)から,信託法第151条第1 項及び第2項,第155条第1項及び第2項,第159条第1項及び第2項の「受 益者」はいずれも「信託管理人」と読み替えられる。 そして,上記の読替えを経ると,公益信託に信託法第151条,第155条及 び第159条を適用した場合に必要とされる当事者の合意は,①委託者,受託者 及び信託管理人の3者合意(信託法第151条第1項,第155条第1項及び第 159条第1項),②信託の目的に反しないことが明らかであるときの委託者及び 信託管理人の2者合意(同法第151条第2項第1号,第155条第2項第1号 及び第159条第2項第1号),③信託の目的の達成のために必要であることが明 らかであるときの受託者が書面又は電磁的記録によってする単独の意思表示(同 71 法第151条第2項第2号,第155条第2項第2号及び第159条第2項第2 号。この場合,受託者は委託者及び信託管理人に対し併合・分割後の信託行為の 内容等を遅滞なく通知しなければならない。)を意味することになる。なお,新た な公益信託では委託者の権限は受益者の定めのある信託の委託者が有する権限と 同様とする(試案の第6の1)立場からすると,新たな公益信託の併合・分割に ついては目的信託の変更と異なり信託法第261条第4項及び第5項を適用する 必要はないものと考えられる。そこで,試案の第16の3の提案では,上記①, ②及び③の場合をまとめて「委託者,受託者及び信託管理人の合意等」と表現し ている。 なお,信託行為に別段の定めを置くことを認める信託法第151条第3項,第 155条第3項及び第159条第3項の規定により,受託者が単独で併合・分割 を行う旨の信託行為の定めを置くことも可能であると考えられる。 ⑷ 行政庁の認可 委託者,受託者及び信託管理人の合意等がある場合にも,併合・分割後の信託 行為の定めの内容によっては,公益信託の成立の認可基準の充足性に問題が生じ る可能性がある。また,仮に目的を異にする2つの公益信託を併合する場合には, いずれかの目的の変更を伴うことになる。そして,公益信託の併合・分割後の信 託の内容によっては公益信託の成立の認可基準を満たさなくなる事態が生じる可 能性があるところ,行政庁が公益信託の成立の認可の取消権限を有することを前 提としても,その権限行使は事後的なものにとどまるから,上記のような事態の 発生を防止するためには,信託行為の併合・分割の前に行政庁がその当否を審査 し,認可をすることが有効であるものと考えられる。 ⑸ 委託者不在の場合 試案の第15の3は,信託法第151条第4項,第155条第4項及び第15 9条第4項の規定を公益信託に適用することを前提としている。これら各項によ り委託者が現に存しない場合には信託法第151条第1項,第155条第1項, 及び第159条第1項の規定は適用されないから,公益信託の委託者が死亡する など委託者が不在の場合に受託者が信託管理人との合意により信託の併合・分割 をすることは,信託法第151条第3項,第155条第3項及び第159条第3 項の信託行為の別段の定めがない限り認められないことになる。なお,上記各項 の別段の定めにより行政庁の認可を不要とすることはできないものと考えられる。 ⑹ 小括 以上の検討を踏まえ,試案の第15の3では,現行公益信託法第6条を廃止又 は改正し,公益信託の併合・分割は,委託者,受託者及び信託管理人の合意等が ある場合には,行政庁による併合・分割の認可を受けることによってすることが できるものとするという提案をしている。この場合の不服申立手続は,行政不服 72 審査又は行政処分の取消訴訟によることが想定される。 ⑺ 試案の第15の3の(注)について 試案の第15の3の提案に対しては,裁判所は,信託行為の当時予見すること のできなかった特別の事情により,信託行為の定めが信託の目的及び信託財産の 状況その他の事情に照らして公益信託の目的の達成に支障になるに至ったときは, 委託者,受託者又は信託管理人の申立てにより,信託の併合・分割を命ずること ができる旨の規律を設けるものとする考え方があることから,その考え方を試案 の第15の3の(注)に示している。 上記(注)の考え方には,信託の変更と同じく信託関係人の合意が整わない場 合にも裁判所という第三者のチェックを経て信託の併合・分割を可能となるとい う利点があるが,信託の併合・分割はいわゆる会社の組織変更に類似するもので あると言え,当該信託の関係者に対し信託目的の変更よりも重大な影響をもたら す可能性がある。また,裁判所が信託の併合・分割を命令できるということにな ると,当該信託の関係者の意思に反して組織変更を命令することとなり私的自治 への介入の程度が大きいと言えるという問題点の指摘がある。 第16 公益信託の終了 1 公益信託の終了事由 公益信託は,次に掲げる場合に終了するものとする。 ⑴ 信託の目的を達成したとき,又は信託の目的を達成することができ なくなったとき。 ⑵ 受託者又は信託管理人が欠けた場合であって,新受託者又は新信託 管理人が就任しない状態が1年間継続したとき。 ⑶ 受託者が信託法第52条(第53条第2項及び第54条第4項にお いて準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。 ⑷ 信託の併合がされたとき。 ⑸ 信託法第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる 裁判があったとき。 ⑹ 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。 ⑺ 委託者が破産手続開始の決定, 再生手続開始の決定又は更生手続開 始の決定を受けた場合において,破産法第53条第1項,民事再生法 第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手 続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項におい て準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。 ⑻ 信託行為において定めた事由が生じたとき。 73 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法には,公益信託の終了事由について定めた規定はない。そのため, 信託の終了事由を掲げる信託法第163条の規定は,公益信託についても原則とし て適用されるが,同条第2号の「受託者が受益権の全部を固有財産で有する状態が 1年間継続したとき」の事由については,公益信託の場合には受託者が「受益権」 の全部を固有財産で有する状態が想定し得ないことから,公益信託の終了事由には なり得ないと解されている。 2 信託法第163条の適用 試案の第16の1では,信託法第163条第2号を除く同条各号の終了事由が公 益信託にも適用されるものとする提案をしている。そのうち,第16の1⑵では, 新たな公益信託における信託管理人の役割の重要性に鑑み,同法第258条8項の 規定を参考として,信託管理人が欠けた場合であって,新信託管理人が就任しない 状態が1年間継続した場合についても新たな公益信託の終了事由とする旨の提案を している。なお,公益信託について信託法第163条第1号及び第3号から第9号 までが適用され,同条第2号が適用されないことは,信託法の解釈に委ねるべき性 質のものであり,新公益信託法の中に規律を設ける必要はないものと考えられる。 3 信託管理人の1年間の不在の場合の取扱い 試案の第16の1⑵の提案に対し,部会では,信託管理人の1年間の不在を公益 信託の終了事由とするのではなく,行政庁による公益信託の成立の認可の任意的取 消事由とすべきである旨の考え方も示された。たしかに,公益信託の継続性を重視 する観点からはその考え方にも一定の合理性がある。もっとも,その考え方に関し ては新たな公益信託における内部ガバナンスの中核を担う信託管理人が1年間不在 であるような場合にはその適正な運営に疑義が生じるという問題点の指摘がある。 2 公益信託の存続期間 公益信託の存続期間については,制限を設けないものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第2条第2項は,公益信託については,目的信託の存続期間は2 0年を超えることができないと定める信託法第259条を適用しない旨規定してい る。なお,同条が目的信託の存続期間を制限している趣旨は,目的信託においては, 74 公序良俗に反することになるような目的(民法第90条)を除き,信託の目的に特 段の制限は存しないため,信託財産に属する財産の管理・処分が信託行為で定めら れた信託目的に長期間拘束されることになると,場合により,物資の流通や合理的 な利用が妨げられ,国民経済上の利益に反することになるおそれがあり得ることか ら,これを防止する点にあるとされている(寺本逐条解説452頁,村松ほか概説 379頁参照)。 一方,受益者の定めのある信託の場合は,信託財産から給付等を受ける受益者が 存在するため,財産の流通が阻害されるおそれは少なく,民法上の委任や寄託など には存続期間の制限に関する規定が存在しないことからも,信託法上信託期間の制 限は設けられていない。ただし,信託期間があまりに長期にわたるときは,例外的 に公序良俗に反すると評価される場合があり得るものと解されている(佐藤哲治編 著「Q&A信託法」293頁参照)。 2 20年の期間制限の要否 旧信託法以来,永久に信託財産の処分を禁止してその収益だけを受益者に与える 信託(永久管理信託)は,物資の融通を害し国民経済上の利益に反することを理由 に,相当期間を超える禁止の部分については民法第90条により無効になり得るが, 公益信託は,公共の利益に仕えるものであるから,そのために長期にわたって物資 が拘束されることも許されると解されている(四宮152頁参照)。そして,現在の 公益信託についてこのような解釈を変更するまでの必要性は見当たらず,目的信託 の存続期間を20年間に制限する信託法第259条の趣旨は,公益信託には妥当し ないものと言うことができる。 そこで,試案の第16の2では,公益信託の存続期間については,期間制限を設 けないものとする提案をしている。 3 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了 【甲案】公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管理人の合意がある 場合には,行政庁による公益信託の[終了の認可/成立の認可の取消 し]を受けることによってすることができるものとする。 【乙案】公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管理人の合意のみに よりすることができるものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法には,委託者及び信託管理人の合意による公益信託の終了につい て定めた規定はない。他方,信託法第164条第1項は,委託者及び受益者は,い 75 つでも,その合意により,信託を終了することができると規定し,同条第2項は委 託者及び受益者が受託者に不利な時期に信託を終了したときは受託者の損害を賠償 しなければならない旨規定している。また,同条第3項は,信託行為に別段の定め があるときは,その定めによる旨規定している。 さらに,信託法第163条第9号は信託行為において定めた事由が生じたときを 信託の終了事由としており,同号に基づき,信託行為において,委託者又は受益者 以外の第三者(受託者を含む。)に信託を終了させる権限を付与することができると 解されている(村松ほか概説306頁参照)。 なお,税法上は,特定公益信託及び認定特定公益信託として税制優遇を受けるた めには,当該公益信託が合意により終了することのできないものであることが必要 とされている(所得税法第78条第3項,同法施行令第217条の2第1項第2号, 法人税法第37条第6項,同法施行令第77条の4第1項第2号等)。これは,公益 信託の信託財産として出資された金銭を税法上の寄附金として取り扱うためには, 当該信託財産が実質的に委託者の手を離れたものであることが前提とされることの ほか,公益信託の運営の公正性及び確実性等を担保するために必要な要件であると 考えられており,実務上は,信託行為に「当該公益信託が合意による終了ができな いものであること」を明記する例が多いようである。 2 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了 ⑴ 当事者の合意による終了の必要性 公益信託の終了事由は,試案の第16の1に掲げたとおりであるが,公益信託 の支出が収入を大幅に上回る状況が続くような場合において,受託者が信託の目 的達成又は不達成の要件(信託法第163条第1号)に該当するとして信託を終 了させようとしてもその判断に困難を伴う可能性があるし,信託の終了命令(同 法第165条第1項)を利用しようとしても,信託行為の当時予見することので きなかった特別の事情の要件を満たさないことも想定される。したがって,試案 の第16の1の終了事由のほか,公益信託の当事者の合意による終了を認める必 要があるものと考えられる。なお,新たな公益信託にも信託法第166条は適用 されることを前提としている。 ⑵ 試案の第16の3の甲案について いったん設定された公益信託は公益すなわち不特定多数人の利益に寄与するも のであり,その継続性の確保が重要であるほか,公益信託の終了が不正に行われ ることを防止する観点からすると,公益信託においては,委託者,受託者及び信 託管理人の合意がある場合でも,行政庁の処分を経なければ公益信託を終了する ことはできないとすることが相当であるという考え方があることから,その考え 方を試案の第16の3の甲案として示している。 76 上記行政庁の処分については,行政庁による公益信託の「終了の認可」とする 考え方がある一方,公益法人認定法第29条第1項第4号が公益法人から公益認 定の取消しの申請があったときには行政庁は公益認定を取り消さなければならな い旨定めていることを参考として公益信託の「成立の認可の取消し」とする考え 方もある。そこで,試案の第16の3の甲案では,上記2つの考え方の部分に角 括弧を付し,公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場 合には,行政庁による公益信託の[終了の認可/成立の認可の取消し]を受けるこ とによってすることができるものとする提案をしている。 仮に試案の第16の3の甲案を採用する場合には,行政庁の判断する終了事由 をどのように定めるかという点について,引き続き検討を要する。 ⑶ 試案の第16の3の乙案について 公益信託の終了後,その清算の段階における残余財産の適切な分配が担保され ているのであれば,公益信託の委託者又はその関係者に信託財産が帰属すること はないと考えられるし,信託の終了の後も行政庁の監督は信託財産の清算が結了 するまで継続し,監督権限の行使が可能であることからすると,信託財産の清算 処理に行政庁の監督が必要であることを理由として信託の終了に行政庁が関与す ることが必要であるとは言い難い。また,信託目的の達成又は不達成による終了 のような場合には行政庁の認可は不要とされており,行政庁が公益信託の成立の 認可基準充足性以外に,公益信託の終了に信託の終了事由以外の正当な理由があ るか否かを判断することは私的自治への過剰な介入となる可能性がある。さらに, 公益法人認定法第26条第1項は,公益法人は合併以外の理由により解散をした 場合には,その清算人等が解散の日から1箇月以内にその旨を行政庁に届け出な ければならないと定めており,公益法人の解散に行政庁の許可は必要とされてい ない(なお,同法第30条第1項において,公益認定取消後の法人は,1箇月以 内に公益目的取得財産残額の贈与契約を締結し,その後行政庁に対し報告するこ ととされている。)。そうすると,公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管 理人の合意のみによりすることができるものとすることが相当であるという考え 方があることから,その考え方を試案の第16の3の乙案として示している。 試案の第16の3の乙案は,公益信託の継続性にも配慮して信託法第164条 第1項及び第2項のように受託者の損害を賠償することを前提に委託者及び受益 者の合意により信託を終了させることを可能とするものではなく,委託者,受託 者及び信託管理人の合意を必要としているものであるが,委託者及び信託管理人 の合意による公益信託の終了を可能とした上で受託者に損害が生じる場合にはそ の損害を賠償するという同条第1項及び第2項の規律を公益信託にも適用する考 え方もあり得ることから,そのような考え方を含め引き続き検討を要する。 77 ⑷ 委託者不在の場合 試案の第16の3の甲案及び乙案は,信託法第164条第4項の規定を公益信 託に適用することを前提としており,同項により委託者が現に存しない場合には 同条第1項及び第2項の規定は適用されないから,公益信託の委託者が死亡する など委託者が不在の場合に受託者が信託管理人との合意により公益信託を終了す ることは同条第3項の信託行為の別段の定めがない限り認められないことになる。 一方,委託者が存在しなくても受託者及び信託管理人の合意に加え行政庁の認可 があるときは公益信託の終了を可能とすべきであるという考え方もあり得ること から,そのような考え方を含め引き続き検討を要する。 4 公益信託の終了命令 信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,公益信 託を終了することが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らし て相当になるに至ったことが明らかであるときは,裁判所は,委託者,受 託者又は信託管理人の申立てにより,信託の終了を命ずることができるも のとする。 委託者については信託行為において公益信託の終了命令の申立権を有し ない旨を定めることができるものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第8条本文により,公益信託については,信託法第165条に基 づく裁判所による終了命令の権限は,主務官庁に属するものとされている。これは, 特別の事情により公益信託を終了することが信託の目的等に照らして相当であるか 否かは,公益信託を許可・監督する主務官庁の判断に委ねるべきであると考えられ ることによるものである。 2 信託法第165条の適用 しかし,現行公益信託法第8条は,主務官庁による許可制を前提とするものであ り,主務官庁による許可制の廃止を前提とする新たな公益信託に直ちに適合するも のではないと考えられる。 また,試案の第16の3の論点で当事者の合意による公益信託の終了を認めるの であれば,特別の事情による信託の終了を命ずる裁判は,信託行為の当時予見する ことのできなかった特別の事情の有無を踏まえた上で,終了について意見対立があ る当事者の利害を考慮して行われることになることから,終了命令の主体は裁判所 の方がより適切である。さらに,試案の第15の1⑴イでは公益信託の変更命令の 78 主体を裁判所としており,終了命令の主体と変更命令の主体は同一とすることが望 ましいと考えられる。 そこで,試案の第16の4では,公益信託にも信託法第165条第1項を適用し, 信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,公益信託を終了す ることが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして相当になるに至っ たことが明らかであるときは,裁判所は,委託者,受託者又は信託管理人の申立て により,信託の終了を命ずることができるものとする提案をしている。試案の第1 6の4は同条第2項から第5項までの規定も公益信託に適用されることを前提とす るものである。 3 裁判所に対する終了命令の申立権者 信託法第165条第1項は,信託の終了命令の申立権者を委託者,受託者及び受 益者としており,受益者の存在しない公益信託では,受益者は信託管理人と読み替 えられる。そして,上記のうち受託者及び信託管理人の終了命令の申立権を信託行 為の定めにより制限することは相当でないと考えられる。一方,委託者については, その意思により公益信託を支配することは許されるべきではないが,その終了時に 委託者及びその関係者に信託財産が帰属することが禁止されていることが確保され ている(試案の第17)のであれば,終了命令の申立権者に委託者が原則として入 っていることが不適切であるとは言い難い。そこで試案の第16の4では,委託者 については信託行為で終了命令の申立権を有しない旨を定めることを可能とする旨 の提案をしている。 5 公益信託の成立の認可の取消しによる終了 公益信託の成立の認可を取り消された公益信託は,終了するものとする (注)。 (注)原則として当該信託は終了するが,信託行為に公益信託の成立の認可の取消後 は受益者の定めのない信託として存続させる旨の定めがあるときは,当該信託は受 益者の定めのない信託として存続するものとするという考え方がある。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法には,公益信託の許可の取消しに関する規定が存在しない。その ため,学説上は,主務官庁による許可の取消しを肯定する見解と否定する見解があ る。これに対し,公益法人認定法は,公益法人に取消事由がある場合は,国又は都 道府県の合議制の機関への諮問を経て,行政庁により公益認定が取り消されるもの とし,公益認定の取消処分を受けた公益法人は,その名称中の公益社団法人又は公 79 益財団法人という文字をそれぞれ一般社団法人又は一般財団法人と変更する定款の 変更をしたものとみなすと規定している(公益法人認定法第29条,第43条第1 項第2号等)。 2 公益信託の成立の認可の取消しの効果 新たな公益信託においては,公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁に包括的 な監督権限を与えることは否定すべきであるが,公益信託の適正性を確保するため には,事後的に成立の認可基準を満たさなくなった公益信託の成立の認可の取消権 限を行政庁に付与する必要があると考えられる。 公益信託の設定前における目的信託の設定を必須とせず(試案の第3の1の補足 説明参照),公益信託の当事者に原則として受益者の定めのある信託の規定を適用す る(試案の第4から第6まで)立場から公益信託と目的信託は並列的な関係にある と整理すると,公益信託がその成立の認可を取り消された場合に目的信託として存 続させるのではなく,当該信託は終了するものとすることが制度の簡明さの点で優 れていると言える。また,公益信託の成立の認可が取り消されるような場合には, 委託者及び受託者の通常の意思は,その時点で信託を終了させることになるものと 考えられる。そこで,試案の第16の5では,公益信託の成立の認可を取り消され た公益信託は,終了するものとする提案をしている。 3 試案の第16の5の(注)について 試案の第16の5に対しては,公益信託の成立を取り消された信託は原則として 終了するが,信託行為に公益信託の成立の認可の取消後は受益者の定めのない信託 として存続させる旨の定めがあるときは,当該信託は受益者の定めのない信託とし て存続するものとするという考え方があることから,試案の第16の5の(注)に 示している。(注)の考え方には,委託者の意思を尊重することができるという利点 があるが,仮に公益信託の成立の認可を取り消された信託が目的信託として存続す ることを許容した場合,公益法人における公益目的取得財産残額に相当する財産の 価額の算定等の複雑な会計の仕組みを導入しなければならず,公益信託の軽量・軽 装備のメリットを害するおそれがあるという問題点の指摘がある。 80 第17 公益信託の終了時の残余財産の処理 1 残余財産の帰属権利者の指定 ⑴ 公益信託の信託行為には,残余財産の帰属すべき者(以下「帰属権利 者」という。)の指定に関する定めを置かなければならないものとする。 ⑵ 上記⑴の定めの内容は,信託終了時の全ての残余財産を当該公益信託 と類似の目的を有する他の公益信託若しくは類似の目的を有する公益法 人等(公益法人認定法第5条第17号イないしトに掲げる法人を含む。) 又は国若しくは地方公共団体に帰属させることを定めたものでなければ ならないものとする(注)。 (注)公益信託の成立後の寄附等により信託財産に加わった財産の帰属権利者につ いては上記⑵に掲げた者を指定するものでなければならないとした上で,公益信 託の成立時に拠出された信託財産の帰属権利者については委託者等の私人を指定 することを許容する考え方がある。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第9条は,公益信託が終了した場合における「帰属権利者ノ指定 ニ関スル定」を信託行為に置くことができることを前提としているが,帰属権利者 の範囲を限定する規定を置いていない。そのため,公益信託の信託行為において帰 属権利者を誰にするかは,公益信託の委託者等の判断に委ねられているが,実務上, 主務官庁は,私人を公益信託の帰属権利者とする定めがある場合には公益信託の許 可をしていないようである。 なお,税法上,特定公益信託又は認定特定公益信託の要件として,当該公益信託 の終了の場合において,その信託財産が国若しくは地方公共団体に帰属し,又は当 該公益信託が類似の目的のための公益信託として継続するものであることが信託行 為で明らかになっていることが求められている(所得税法第78条第3項,所得税 法施行令第217条の2第1項第1号,法人税法第37条第6項,法人税法施行令 第77条の4第1項第1号等)。 2 帰属権利者を指定する定めの必置 しかし,公益信託が終了した場合にその残余財産が誰に帰属するかは,信託財産 を出捐する委託者や,公益活動に使われることを期待して公益信託に寄附する者に とってその意思を担保するために重要な事項である。また,残余財産の帰属権利者 の指定をどのような範囲で認めるかは,税の優遇措置を受けられるか否かといった 点でも重要な事項と言える。そこで,試案の第17の1⑴では,公益信託の信託行 為には,帰属権利者の指定に関する定めを置かなければならないとする提案をして 81 いる。 3 帰属権利者の指定に関する信託行為の定めの内容 ⑴ 帰属権利者の指定の範囲 終了した公益信託の残余財産の帰属権利者として,当該公益信託と類似の目的 を有する他の公益信託又は国若しくは地方公共団体を信託行為で指定することに ついては部会では異論がなかった。その定め方としては,信託契約書に「国若し くは地方公共団体又は類似の目的を有する他の公益信託に寄附するものとする」 と記載するのが現在の実務の取扱いであるが,個別具体的な公益信託の名称を挙 げることも否定されないものと考えられる。一方で,公益信託が委託者以外から 寄附を受ける可能性も踏まえると,残余財産の帰属先から私人が除かれることに よりその信頼性が確保されることの効果を重視すべきであるとも考えられる。 その上で,受託者が残余財産を国又は地方公共団体に寄附する場合は別として, 現在の公益信託は500件弱の件数しかないことからすると,類似の目的の公益 信託に寄附するとした場合には抽象的な定めが許容されることを前提としても残 余財産の寄附先の選択肢が限定されてしまうことになる。そして,公益的な活動 を行い,法人内部で残余財産を分配しないことなどが制度的に担保されているも のとして,類似の事業を営む公益法人や学校法人,社会福祉法人,更生保護法人, 独立行政法人,国立大学法人,大学共同利用機関法人,地方独立行政法人等の法 人が公益法人の残余財産の帰属先として適格性を有するとされていることからす ると,これらの法人を公益信託の残余財産の帰属権利者として認めることも,信 託財産を公益目的のために使用するという観点から許容されて良いと考えられる。 そこで,試案の第17の1⑵では,当該公益信託と類似の目的を有する他の公 益信託又は国若しくは地方公共団体に加えて,類似の目的を有する公益法人等(公 益法人認定法第5条第17号イないしトに掲げる法人を含む。)を残余財産の帰属 先とすることを定めたものでなければならないとする提案をしている。 なお,残余財産の帰属権利者の信託行為の定めが正当であることは,公益信託 の成立の認可(試案の第9の前注)及び変更の認可(試案の第15の1)により担 保される。公益信託の清算段階において,残余財産が信託行為で定められた帰属 権利者に移転することを確保するための方法としては,公益法人認定法施行規則 第51条が公益認定を取り消された法人に対して残余財産の贈与に関する報告書 の作成・提出義務を義務付けていることなどを参考に,公益信託の清算受託者に 行政庁に対し残余財産の贈与等に関する報告書の作成・提出義務を課すことが考 えられる。 ⑵ 試案の第17の1⑵の(注)について 試案の第17の1⑵の提案に対しては,公益信託の成立後の寄附等により信託 82 財産に加わった財産の帰属権利者については試案の第17の1⑵で掲げた者を指 定するものでなければならないとした上で,公益信託の成立時に拠出された信託 財産の帰属権利者については委託者等の私人を指定することを許容する考え方が あることから,その考え方を第17の1⑵の(注)に示している。 上記(注)の考え方は,公益信託終了時の帰属権利者として委託者の関係者等 の私人を許容することによって公益信託の柔軟な利用を可能とする意図があり, その意図には合理性が認められる。もっとも,このような考え方を採用した場合 には,公益信託の成立の認可が税制優遇を伴うことは困難となるおそれがある。 また,受託者において公益信託の終了時に公益法人と同じような計算処理を行う 負担を課すことになるほか,残余財産の私人帰属を認めることによって,公益信 託の内部ガバナンスをより複雑なものとすることが求められ,行政庁による監督 がより強められる可能性があるという問題点の指摘がある。 2 最終的な残余財産の帰属 帰属権利者の指定に関する信託行為の定めに掲げられた者の全てがその 権利を放棄した場合の残余財産は,国庫に帰属するものとする。 (補足説明) 現行公益信託法には,信託法第182条第2項の規定によっても残余財産の帰属が 定まらないときは,残余財産は清算受託者に帰属すると規定する同条第3項の適用を 除外する規定はない。 しかし,信託法第182条第3項を新たな公益信託にも適用すると,帰属権利者の 指定に関する信託行為の定めに掲げられた者の全てがその権利を放棄した場合の残余 財産は清算受託者に帰属することとなるが,公益目的のために出捐された財産を清算 受託者に帰属させることは清算受託者に不当な利益を与える可能性がある上,逆に引 き取り手のない信託財産を清算受託者に帰属させることは酷であるとも考えられる。 そこで,試案の第17の2では,公益信託には同項を適用せず,帰属権利者の指定に 関する信託行為の定めに掲げられた者の全てがその権利を放棄した場合の残余財産は 国庫に帰属するものとする提案をしている。 もっとも,土壌汚染された土地などの引き取り手を見出し難いような負担の多い残 余財産までも含めて,公益性を理由として国庫に帰属させることが相当かどうかにつ いては引き続き検討を要する。また,部会では,新たな公益信託の成立の認可を行う 行政庁として国及び都道府県が想定されることを前提として,国のほかに地方公共団 体を最終的な残余財産の帰属先に含めるべきであるとする旨の意見も出されており, 公益認定の取消等に伴う財産の贈与先として国又は地方公共団体を定める公益法人認 定法第30条第1項や,民法第239条第2項との整合性の観点も含めて引き続き検 83 討が必要であると考えられる。 第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等 1 公益先行信託 公益先行信託(信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を公益目的の ために供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を私益目的のために 供する信託)について行政庁が成立の認可を行う制度は設けないものとす る。 (補足説明) 現行公益信託法に,公益先行信託に関する規定はない。 公益先行信託とは,信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を公益目的のために 供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を私益目的のために供する信託をいう。 具体例としては,委託者が10億円を信託財産とする信託を設定し,信託設定から1 0年間は7億円を特定の病気の治療研究に対する助成金として支出するが,残りの3 億円は委託者の子である受益者に対する生活費等として支出する信託が挙げられる。 民間による公益活動を促進するための方法の多様化という観点からは,公益先行信 託に関する新たな制度を設けることも検討に値する。 しかし,現在の法制度の下でも受益者の定めのある信託の仕組みを使って当初の一 定期間は公益のために信託財産を用い,一定期間経過後は,残りの信託財産を私益の ために用いることは可能である。また,公益先行信託という形で目的の変更後も変更 前と同一性を保ったまま信託が継続することを可能とするためには,公益先行信託の 成立の認可に関する規定や,目的の変更後の当該信託に対するコントロールのために 信託財産の処理を行政庁が監督する規定,公益先行信託の成立の認可を受けることに より社会的な信用や税の優遇措置を得て私財の蓄積がされるなどの濫用的な使われ方 を防ぐための規定を,信託法の中に新たに設ける又は「公益先行信託法」のような新 法の中に設ける等の対応が必要となると考えられる。 そして,上記のとおり,行政庁が公益先行信託の成立の認可を行い,その監督を行 うためには相当の社会的コストが必要となるが,「公益先行信託」の名称のもとに委託 者以外の第三者からの寄附が集まるとは想定し難いし,当面そのコストに見合った利 用がされるかには疑問を呈せざるを得ない。 そこで,試案の第18の1では,公益先行信託について行政庁が成立の認可を行う 制度は設けないものとする旨の提案をしている。 84 2 公益信託から受益者の定めのある信託への変更 公益信託について,信託の変更によって受益者の定めを設け,受益者の 定めのある信託とすることはできないものとする。 (補足説明) 現行公益信託法に,公益信託から受益者の定めのある信託への変更について定めた 規定はない。なお,信託法第258条第2項は,目的信託については,信託の変更に よって受益者の定めを設けることはできない旨規定しているが,その趣旨は,通常の 信託と目的信託とでは規範が大きく異なるため,法律関係の錯綜を防止する観点から, 信託の変更によって両者の転換を認めることは相当ではないと考えられたことにある (村松ほか概説379頁参照)。 公益信託の委託者は,特定の公益目的に財産を拠出するという意図でその財産を信 託する事例が大半であることに加え,事後的な信託の変更により受益者の定めを設け ることを許容すると,その信託の変更前に公益活動に使われることを期待して自らの 財産を拠出した寄附者等の意思に反することになる。また,公益性を理由に税制優遇 を受けていた公益信託を変更し受益者の定めのある信託にすることはその委託者又は 変更後の受益者等の関係者に不当な利益を与える可能性があるから,公益法人認定法 第30条等を参考にして,受益者の定めのある信託への変更時に公益信託の信託財産 を適切な帰属権利者に移転させるための規定を信託法の中に新たに設ける等の対応が 必要となるが,そのような規定を設けるまでの必要性は見出せない。 そこで,試案の第18の2では,公益信託について,信託の変更によって受益者の 定めを設け,受益者の定めのある信託とすることはできないものとする提案をしてい る。 3 残余公益信託 残余公益信託(信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を私益目的の ために供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を公益目的のために 供する信託)について行政庁が成立の認可を行う制度は設けないものとす る。 (補足説明) 現行公益信託法に,残余公益信託に関する規定はない。残余公益信託とは,信託設 定当初の一定期間は信託財産の一部を私益目的のために供するが,一定期間経過後は, 残りの信託財産を公益目的のために供する信託をいう。具体例としては,例えば,委 託者が受託者との間で1億円を信託財産とする信託を設定し,信託設定から委託者兼 受益者の死亡までの間は毎月一定の金額を委託者兼受益者の生活費等として支出する 85 が,委託者兼受益者の死亡後は,残りの金額を特定の病気の治療研究に対する助成金 として支出する信託が挙げられる。 しかし,上記の例で言えば,信託設定から委託者兼受益者の死亡までに支出される 金額の総額が不確定であることから,後続の公益目的の信託開始時に存在する残りの 信託財産の金額も不確定となり,残余公益信託の成立時点において行政庁がその成立 の認可基準を満たしているかの判断をすることは困難であるし,残りの信託財産が私 益に用いられる期間中の監督の仕組みも複雑になることが想定される。また,委託者 又はその指定した親族等を残余財産受益者又は帰属権利者とする受益者の定めのある 信託を設定し,その際,特定の時点において受託者が当該受益者も定めのある信託を 終了させ,その後に公益信託を行政庁から成立の認可を受けて設定することを委託者, 信託管理人等に義務付け,その義務を履行した場合に委託者又はその指定した親族等 が残余財産を取得できるようにする等の方法によって,残余公益信託の実質を既存の 仕組みを用いて実現することも可能であると考えられるが,その履行を確保する方法 は委託者不在である場合も含め引き続き検討する必要がある。 そこで,試案の第18の3では,残余公益信託について行政庁が成立の認可を行う 制度は設けないものとする提案をしている。 4 受益者の定めのある信託から公益信託への変更 【甲案】受益者の定めのある信託について,信託の変更によって受益者の 定めを廃止して公益信託とすることはできないものとする。 【乙案】受益者の定めのある信託について,信託の変更によって受益者の 定めを廃止して公益信託とすることができるものとする。 (補足説明) 1 現行公益信託法には,受益者の定めのある信託から公益信託への変更に関する規 定はない。なお,信託法第258条第3項は,受益者の定めのある信託においては, 信託の変更によって受益者の定めを廃止することはできないと規定しているが,そ の趣旨は,受益者の定めのある信託と,受益者の定めのない信託とでは,特定の受 益者の利益を図るか,特定の受益者の利益を離れた特定の目的の達成を図るかとい う点で,信託の目的が異なることはもちろん,信託法第11章(同法第258条か ら第261条まで)の規定するとおり,信託設定の方法,存続期間の限定の有無, 関係当事者の権利の内容など基本的な点において大きく異なっており,信託の変更 によってこの両者の間をいわば跨ぐようにすることは相当ではないと考えられるこ とにあるものと説明されている(寺本逐条解説451頁参照)。 86 2 試案の第18の4の甲案について 受益者の定めのある信託と公益信託との変更についても法律関係の錯綜を避ける 必要があるとして,受益者の定めのある信託について信託の変更によって受益者の 定めを廃止して公益信託とすることは可能とすべきでないという考え方があること から,その考え方を試案の第18の4の甲案として示している。 甲案には,現行法制との連続性が保たれるという利点があるが,受益者の定めの ある信託から目的信託への変更を禁止するとしても,受益者の定めのある信託から 公益信託への変更は政策的な観点から別途認める余地があるという指摘がある。 3 試案の第18の4の乙案について 公益を目的とする受益者の定めのある信託は,民間の公益活動の一つのスキーム として積極的に評価することが可能であり,歴史的建造物の保存のような公益を目 的として,当該建造物を信託財産とし,委託者を受益者とする受益者の定めのある 信託を設定することも想定される。そして,そのような受益者の定めのある信託を, 不特定多数の観光客への歴史的建造物の公開を目的とする公益信託に変更する場合 や,委託者の一人の子が難病を有しており,その治療のためにその子を受益者とす る受益者の定めのある信託を設定していたが,その子が健康を回復したことから不 特定多数の患者の治療のための公益信託に変更する場合に,いったん受益者の定め のある信託を終了させ,改めて公益信託として設定することを強いる必要はないも のと考えられる。また,受益者の定めのある信託から公益信託への変更には税制上 の問題が生ずる可能性は低いと言える。そこで,受益者の定めのある信託について, 信託行為の定めの変更により受益者の定めを廃止して公益信託とすることを可能と すべきであるという考え方があることから,その考え方を試案の第18の4の乙案 として示している。 乙案に対しては,受益者の定めのある信託から公益信託への変更は会社の組織再 編に相当する可能性があるとして,信託法第258条第3項の規律の例外を設ける だけでなく,当該受益者の定めのある信託の利害関係人の利害を調整するための規 定を整備する必要がある旨の指摘がある。 87 第19 その他 1 信託法第3条第3号に規定する方法による公益信託 【甲案】信託法第3条第3号に規定する方法により公益信託をすることは できないものとする。 【乙案】信託法第3条第3号に規定する方法により公益信託をすることは できるものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 信託法は,①信託契約を締結する方法(信託法第3条第1号),②遺言をする方法 (同条第2号)及び③自己信託の方法(同条第3号)により信託をすることを認め ているが,信託法第258条第1項は,自己信託の方法により目的信託をすること を認めていない。また,現行公益信託法には,信託法第3条第3号に規定する方法 による公益信託に関する規定はない。 自己信託の方法により受益者の定めのない信託を設定することができないとされ ている趣旨は,受益者の定めのある信託であれば受益者が有する受託者に対する監 督権限を委託者に付与することによって,受託者による信託事務の処理が適正にさ れることを確保しようとしているが,自己信託においては委託者と受託者が同一人 であるため,受益者の定めのない信託の受託者に対する監督が適切に行われない危 険があるからであると説明されている(寺本逐条解説451頁参照)。 2 試案の第19の1の甲案について 試案の第19の1の甲案は,信託法第3条第3号に規定する方法により公益信託 をすることはできないものとする提案である。 甲案の理由としては,①仮に公益信託を自己信託の方法により設定することを可 能とした場合には信託法上自己信託については公正証書による設定,詐害信託の取 消し等の手当てがされていることを前提としても,不正な公益信託が設定されるお それが完全には否定できないこと,②公益信託の信託財産について委託者からの分 離が確保されていないとして税制優遇を受けられないことが懸念されること,③公 益信託の委託者が,敢えて自らを受託者として公益信託を運営するニーズは多くな いと考えられることが挙げられる。 3 試案の第19の1の乙案について 試案の第19の1の乙案は,信託法第3条第3号による規定する方法により公益 信託をすることはできるものとする提案である。 乙案の理由としては,①例えば公益信託事務を適正に遂行できる十分な能力を有 88 する企業が自己信託の方法により公益信託を設定する場合にはその信頼性はむしろ 高いとも言え,民間による公益活動の促進という観点からは,公益信託の設定方法 について多様なメニューを用意することが望ましいと考えられること,②新たな公 益信託では信託管理人を必置とするなど信託管理人による監督の充実が図られる(試 案の第5)ほか,公益信託の委託者の権限は目的信託の委託者の権限よりも限定さ れる(試案の第6)ことからすると,新たな公益信託には上記1の信託法第258 条第1項の趣旨は必ずしも妥当しないこと,③自己信託の信託財産を委託者の所有 と同視することはできないことが挙げられる。 2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い ⑴ 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託は,新公益信託法の適 用を受ける公益信託への移行について,行政庁による移行の認可を受け ることを必要とするものとする(注)。 (注)一定の要件を満たしている既存の公益信託については,届出等の簡易な移行手 続を許容するとの考え方がある。 ⑵ 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託について,移行の認可 を受ける前は,現行公益信託法が適用されるものとし,移行の認可を受 けた後は,新公益信託法が適用されるものとする。 ⑶ 移行の認可は,新公益信託法の施行日から一定の期間内に受けること を必要とし,移行の認可を受けなかった信託は,上記の期間経過後に終 了するものとする。 (補足説明) 1 旧法信託から新法信託への移行の認可 ⑴ 公益法人制度改革の際の特例民法法人という制度は,旧法の公益法人が新制度 の法人に移行するまでの間の一時的な存在として設けられたものであり,その趣 旨は,特例民法法人である間(移行の認定または認可を受け,移行の登記をする までの間)は,実質的には民法法人(公益法人)であったときと同じ扱いをしよ うとするもの(一問一答公益法人関連三法261頁参照)であった。したがって, 移行の認定(又は認可)を受けることで,旧法から新法への適用関係の切り替え が行われていたと考えられる。 新たな公益信託においては,現在の公益信託に比して,主務官庁による許可制 を廃止し,信託管理人を必置とする等,公益信託の内部ガバナンスを厳格なもの とすることが想定されること等から,現行公益信託法から新公益信託法への適用 関係の切り替えについて,公益法人制度改革当時と同様の明確化の要請があるも のと考えられる。そこで,試案の第19の2⑴では,新公益信託法施行時に存在 89 する既存の公益信託は,新公益信託法の適用を受ける公益信託への移行について, 行政庁による移行の認可を受けることを必要とする旨の提案をしている。 ⑵ 試案の第19の2⑴の(注)について 試案の第19の2⑴の提案に対しては,公益法人制度改革前の公益法人と異な り,現在の公益信託は信託銀行により適切に運用されているものがほとんどであ ることに照らし,一定の要件を満たしている既存の公益信託については届出制等 の簡易な移行手続とすべきであるとの考え方があることから,その考え方を試案 の第19の2⑴の(注)に示している。上記(注)の考え方には,移行手続によ る事務負担の増加による既存の公益信託の信託財産の減少を避けられるという利 点があるが,既存の公益信託の受託者から行政庁に対する届出等がされた後に行 政庁が行うべき作業の内容をどのようにするか等の問題点がある。移行手続につ いては,試案の第9で提案している新たな公益信託の成立の認可基準の内容が固 まってから検討すべき面があり,それと現在の許可審査基準との差分はどの程度 となるのかという観点も踏まえ,会社法の特例有限会社の制度も参考にしつつ引 き続き検討を要する。 2 旧法と新法の適用関係 特例民法法人(旧民法法人)という制度が,旧公益法人が新制度の法人に移行す るまでの間の一時的な存在として設けられた趣旨は,特例民法法人である間は,実 質的には民法法人(公益法人)であったときと同じ扱いをしようとするものであり, 特例民法法人である間は,旧主務官庁が引き続き指導・監督を行うこととされてい た(一問一答公益法人関連三法261頁参照)ものである。そして,公益信託につ いても一定の期間は旧主務官庁が引き続き指導・監督を行うことが相当であるが, 新公益信託法の施行日後に長期にわたり旧法が適用される公益信託と新法が適用さ れる公益信託が併存する事態は避けるべきであると考えられる。そこで,試案の第 19の2⑵では,新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託について,新公益 信託法の施行日以降も移行の認可を受ける前は現行公益信託法が適用されるものと し,移行の認可を受けた後は新公益信託法が適用されるものとする旨の提案をして いる。 3 移行期間経過後の処理 試案の第19の2⑴の行政庁による移行の認可を受けない公益信託については, 当該信託は終了するものとするほかに,目的信託として存続するものとすることも 考えられる。 しかし,公益信託の信託財産を使途が公益目的に限定されていない,目的信託の 信託財産とすることは必ずしも適切とは言えないし,仮に移行の認可を受けない公 90 益信託が,目的信託として存続することを許容した場合には,公益法人における公 益目的取得財産残額に相当する財産の価額の算定等,非常に複雑な会計の仕組みを 導入しなければならないことが想定される。また,移行の認可を受けない意思を有 する公益信託の当事者に,当該公益信託を目的信託として存続させることのニーズ も見出し難い。そこで,試案の第19の2⑶では,一定の期間内に行政庁から移行 の認可を受けなかった公益信託は終了するものとする旨の提案をしている。 3 罰則 現行公益信託法第12条の規律を改め,罰則について所要の措置を講ず るものとする。 (補足説明) 1 現行法の定め 現行公益信託法第12条は,「公益信託ノ受託者,信託財産管理者,民事保全法(平 成元年法律第91号)第56条ニ規定スル仮処分命令ニ依リ選任セラレタル受託者 ノ職務ヲ代行スル者,信託財産法人管理人,信託管理人又ハ検査役ハ次ニ掲グル場 合ニ於テハ百万円以下ノ過料ニ処ス」と規定し,その場合を「第4条第2項ノ規定 ニ依ル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不正ノ公告ヲ為シタルトキ」(同条第1号),「第6 条又ハ第7条ノ規定ニ違反シタルトキ」(同条第2号),「本法ノ規定ニ依ル主務官庁 ノ命令又ハ処分ニ違反シタルトキ」(同条第3号)と規定している。 旧信託法においては,受託者等に関する過料の規定は存在しなかった。しかし, 新信託法では,受託者の義務を適切な要件の下で合理化するなど,当事者の私的自 治の働く範囲を拡大し,また,受益証券発行信託や限定責任信託等の新たな類型の 信託制度を導入していることから,制度の実効性及び信頼性を確保し,受益者をは じめとする信託関係者の利益を保護するためには,信託法上の民事的な措置のほか, 一定の作為・不作為については過料を課すことによる手当てをすることが相当であ ると考えられたことから(寺本逐条解説473頁参照),信託法第270条及び第2 71条において過料の規定が設けられた。そして,現行公益信託法についても,新 信託法と平仄を合わせる観点から,受託者等に関する過料の規定が新設されたもの である。 2 罰則規定の改正,新設 現行公益信託法第4条第2項,第6条及び第7条等は廃止又は改正が検討されて いることを踏まえると,公益信託に係る過料について定めている同法第12条も改 正する必要があるものと考えられる。そして,新たな公益信託において,仮に受託 者による公告を不要とするのであれば同条第1号の規定は不要となるが,同条第2 91 号及び第3号の規定については,これと同趣旨の罰則が必要になると考えられる。 また,公益法人認定法第62条から第66条までの規定を参考として,偽りその他 不正の手段により公益信託の成立の認可を受けた受託者に対する罰則等を新設する ことが考えられる。そこで,試案の第19の3では,現行公益信託法第12条の規 律を改め,罰則について所要の措置を講ずるものとすることを提案している。 なお,上記1に記載のとおり,現行公益信託法第12条は平成18年の新信託法 制定の際に新設された規定であり,公益法人認定法の罰則規定も平成18年に新設 されたものであって,その後約10年が経過した現時点において物価や貨幣価値の 変動は大きなものではないことからすると,罰金及び過料の金額は,現状の金額を 維持することが相当であると考えられる。 4 その他 その他所要の規定を整備するものとする。 以上 別表1【公益信託の信託管理人の権限】 権利の内容 信託法上の根拠規定 裁判所に対する申立権(検査役の選任申立権,受託者の解任申立 権等) 第92条第1号 ○ × 遺言信託における受託者の信託の引受けの催告権 第92条第2号 ○ × 信託財産への強制執行等に対する異議申立権等 第92条第3号,第4号 ○ × 受託者等の権限違反行為の取消権 第92条第5号 ○ × 受託者の利益相反行為に関する取消権 第92条第6号 ○ × 信託事務の処理の状況についての報告請求権 第92条第7号 ○ × 帳簿,信託事務の処理に関する書類又は信託財産の状況に関する 書類の閲覧等請求権 第92条第8号 ○ × 受託者の任務違反行為等に対する損失てん補等請求権 第92条第9号,第10号 ○ × 受託者の信託違反行為の差止請求権等 第92条第11号,第12号 ○ × 前受託者等の任務違反行為の差止請求権等 第92条第13号から第15 号まで ○ × 新受託者への就任の承諾の催告権 第92条第16号 ○ × 受益権を放棄する権利 第92条第17号 受益権取得請求権 第92条第18号 信託監督人又は受益者代理人への就任承諾の催告権 第92条第19号,第20号 受益証券発行信託における受益権原簿記載事項を記載した書面の 交付等請求権 第92条第21号 受益証券発行信託における受益権原簿の閲覧等請求権 第92条第22号 受益証券発行信託における受益権原簿記載事項の記載等請求権 第92条第23号 限定責任信託における金銭のてん補等請求権 第92条第24号,第25号 ○ × 会計監査人設置信託における損失てん補請求権 第92条第26号 ○ × 利益相反行為又は競合行為についての重要な事実の通知受領権 第31条第3項,第32条第 3項 ○ △ 信託財産の状況に関する書類の内容についての報告受領権 第37条第3項 ○ △ 他の受益者の氏名等の開示請求権 第39条第1項,第3項 受託者が信託財産から費用の前払を受ける場合の通知受領権 第48条第3項 ○ △ 受託者の任務終了の事実の通知受領権 第59条第1項,第60条第 1項 ○ △ 受益権の取得の事実の通知受領権 第88条第2項 信託の変更・併合・分割による一定の事項の通知受領権 第149条第2項・第4項, 第151条第2項・第3項, 第155条第2項・第3項, 第159条第2項・第3項 ○ △ 公益信託の信 託管理人の権 限とすべきか 受益者の定めのある信託における信託管理人の権限 信託行為に権限 を有しない旨の 定めを置くこと を許容するか 受 託 者 の 監 督 に 係 る 権 限 別表1【公益信託の信託管理人の権限】 権利の内容 信託法上の根拠規定 公益信託の信 託管理人の権 限とすべきか 受益者の定めのある信託における信託管理人の権限 信託行為に権限 を有しない旨の 定めを置くこと を許容するか 信託財産と固有財産等とに属する共有物の分割に係る協議 第19条第1項第2号及び第 3項第2号 ○ × 受託者の利益相反行為又は競合行為についての事前の承認 第31条第2項第2号及び第 32条第2項第2号 ○ × 受託者の利益相反行為に対する追認 第31条第5項 ○ × 受託者の競合行為について信託財産のためにされたものとみなす 権利の行使 第32条第4項 ○ × 受託者の損失てん補責任等を免除する権利 第42条 ○ × 受託者の辞任の同意 第57条第1項 ○ × 受託者の解任の合意 第58条第1項 ○ × 新受託者の選任の合意 第62条第1項 ○ × 前受託者,前受託者の相続人等又は破産管財人が新受託者への信託 事務の引継ぎの際に行う信託事務に関する計算に対する承認 第77条,第78条 ○ × 信託監督人及び受益者代理人に関する辞任の同意,解任の合意,新 信託監督人又は新受益者代理人の選任,信託監督人又は受益者代理 人による事務の終了に対する同意 第134条第2項及び第14 1条第2項,第135条第1 項及び第142条第1項,第 136条第1項第1号及び第 143条第1項第1号 信託の変更の合意等 第149条第1項,第2項第 1号及び第3項 ○ × 信託の併合の合意 第151条第1項及び第2項 第1号 ○ × 信託の分割の合意 第155条第1項及び第2項 第1号,第159条第1項及 び第2項第1号 ○ × 信託の終了の合意 第164条第1項 ○ × 清算受託者がその職務の終了の際に行う信託事務に関する最終の 計算に対する承認 第184条 ○ × 信 託 に 関 す る 意 思 決 定 に 係 る 権 限 別表2【公益信託の委託者の権限】 権利の内容 信託法上の根拠規定 信託事務の処理の状況等に関する報告請求権 第36条 △ 受託者の辞任に対する同意権 第57条第1項 △ 信託管理人との合意による受託者の解任権 第58条第1項 △ 裁判所に対する受託者の解任申立権 第58条第4項 ○ 信託管理人との合意による新受託者の選任権 第62条第1項 △ 裁判所に対する信託財産管理者の解任申立権 第70条(第58条第4項準用) △ 裁判所に対する信託財産法人管理人の解任申立権 第74条第6項(第70条準用) △ 信託管理人の辞任に対する同意権 第128条第2項(第57条第1項準用) △ 信託管理人との合意による他の信託管理人の解任権 第128条第2項(第58条第1項準用) △ 裁判所に対する信託管理人の解任申立権 第128条第2項(第58条第4項準用) ○ 信託管理人との合意による新信託管理人の選任権 第129条第1項(第62条第1項準用) △ 信託の変更の合意又は受託者に対する意思表示 第149条第1項及び第3項第1号 △ 裁判所に対する信託の変更の申立権 第150条第1項 ○ 信託の併合の合意 第151条第1項 △ 吸収信託分割の合意 第155条第1項 △ 新規信託分割の合意 第159条第1項 △ 信託管理人との合意による信託終了権 第164条第1項,第261条 △ 裁判所に対する信託の終了の申立権 第165条第1項 ○ 裁判所に対する公益確保のための信託終了申立権等 第166条第1項,第169条第1項,第 173条第1項 △ 信託の終了時の法定帰属権利者 第182条第2項 △ 遺言信託における信託の引受けの有無の催告権 第5条第1項 △ 遺言信託における裁判所に対する新受託者の選任申立 権 第6条第1項 △ 財産目録(貸借対照表等)の閲覧等請求権 第38条第6項 △ 新受託者に対する就任の承諾の有無の催告権 第62条第2項 △ 裁判所に対する新受託者の選任申立権 第62条第4項 △ 裁判所に対する信託財産管理命令の申立権 第63条第1項 △ 裁判所に対する信託財産法人管理命令の申立権 第74条第2項 △ 信託管理人に対する就任の承諾の有無の催告権 第123条第2項 △ 裁判所に対する信託管理人の選任申立権 第123条第4項 △ 新信託管理人に対する就任の承諾の有無の催告権 第129条第1項(第62条第2項準用) △ 裁判所に対する新信託管理人の選任申立権 第129条第1項(第62条第4項準用) △ 信託財産の保全処分に関する資料の閲覧等請求権 第172条第1項ないし第3項 △ 利 害 関 係 人 と し て の 権 限 新たな公益信託において,委託者が信託行為に別段の定めをしなくても原則として有する権限 信託行為による制限を 可能とすべきか 委 託 者 と し て の 権 限 別表3【新たな公益信託の監督における裁判所と行政庁との権限分配】 信託の監督に関する権限(受益者又は受益権の存在を前 提とするものを除く。) 根拠条文 権限を有 する機関 職権 行使 行政庁の関与の有無 (現時点の整理) 1 遺言信託における受託者の選任 第6条第1項 裁判所 × 裁判所による受託者の選任後, その認可を行う。 2 検査役の選任 第46条第2項 裁判所 × 裁判所による検査役の選任後, その通知を受ける。 3 検査役の報酬額の決定 第46条第5項 裁判所 × 関与無し 4 検査役に対する追加報告徴求 第47条第3項 裁判所 × 関与無し 5 受託者に対する周知措置の命令 第47条第6項 裁判所 × 関与無し 6 受託者の辞任の許可 第57条第2項 裁判所 × 関与無し 7 受託者の解任 第58条第4項 裁判所 × 関与無し 8 新受託者の選任 第62条第4項 裁判所 × 裁判所による新受託者の選任後, その認可を行う。 9 信託財産管理命令 第63条第1項 裁判所 × 関与無し 10 信託財産管理命令の変更・取消 第63条第3項 裁判所 × 関与無し 11 信託財産管理者の選任 第64条第1項 裁判所 × 裁判所による信託財産管理者の 選任後,その認可を行う。 12 複数の信託財産管理者の職務分掌等の許可 第66条第2項 裁判所 × 関与無し 13 信託財産管理者の権限外行為の許可 第66条第4項 裁判所 × 関与無し 14 信託財産管理者の辞任 第70条,第57条 第2項 裁判所 × 関与無し 15 信託財産管理者の解任 第70条,第58条 第4項 裁判所 × 関与無し 16 信託財産管理者に対する費用・報酬額の決定 第71条第1項 裁判所 × 関与無し 17 信託財産法人管理命令 第74条第2項 裁判所 × 関与無し 18 信託財産法人管理命令の変更・取消 第74条第3項,第 63条第3項 裁判所 × 関与無し 19 信託財産法人管理人の選任 第74条第6項,第 64条第1項 裁判所 × 関与無し 20 複数の信託財産法人管理人の職務分掌等の許可 第74条第6項,第 66条第2項 裁判所 × 関与無し 21 信託財産法人管理人の権限外行為の許可 第74条第6項,第 66条第4項 裁判所 × 関与無し 22 信託財産法人管理人の辞任 第74条第6項,第 70条,第57条第 2項 裁判所 × 関与無し 23 信託財産法人管理人の解任 第74条第6項,第 70条,第58条第 4項 裁判所 × 関与無し 24 信託財産法人管理人に対する費用・報酬額の決定 第74条第6項,第 71条第1項 裁判所 × 関与無し 別表3【新たな公益信託の監督における裁判所と行政庁との権限分配】 信託の監督に関する権限(受益者又は受益権の存在を前 提とするものを除く。) 根拠条文 権限を有 する機関 職権 行使 行政庁の関与の有無 (現時点の整理) 25 信託管理人の選任 第123条第4項 裁判所 × 裁判所による信託管理人の選任 後,その認可を行う。 26 信託管理人の報酬の決定 第127条第6項 裁判所 × 関与無し 27 信託管理人の辞任の許可 第128条第2項, 第57条第2項 裁判所 × 関与無し 28 信託管理人の解任 第128条第2項, 第58条第4項 裁判所 × 関与無し 29 新信託管理人の選任 第129条第1項, 第62条第4項 裁判所 × 裁判所による新信託管理人の 選任後,その認可を行う。 30 特別の事情による信託の変更の命令 第150条第1項 裁判所 × 裁判所による変更命令後,信託の 変更の認可を行う。 31 特別の事情による信託の終了の命令 第165条第1項 裁判所 × 関与無し 32 公益の確保のための信託の終了の命令 第166条第1項 裁判所 × 関与無し 33 公益の確保のための信託の終了の命令の申立てに伴う 担保命令 第166条第6項 裁判所 × 関与無し 34 信託財産の保全処分 第169条第1項 裁判所 × 関与無し 35 信託財産の保全処分の変更・取消 第169条第2項 裁判所 × 関与無し 36 信託財産管理命令における信託財産管理人の選任 第170条第1項 裁判所 × 関与無し 37 信託財産管理人の監督 第170条第2項 裁判所 × 関与無し 38 信託財産管理人に対する報告徴求等 第170条第3項 裁判所 × 関与無し 39 複数の信託財産管理人の職務分掌等の許可 第170条第4項, 第66条第2項 裁判所 × 関与無し 40 信託財産管理人の権限外行為の許可 第170条第4項, 第66条第4項 裁判所 × 関与無し 41 信託財産管理人の辞任 第170条第4項, 第70条,第57条 第2項 裁判所 × 関与無し 42 信託財産管理人の解任 第170条第4項, 第70条,第58条 第4項 裁判所 × 関与無し 43 信託財産管理人に対する費用・報酬額の決定 第170条第4項, 第71条第1項 裁判所 × 関与無し 44 公益の確保のための信託の終了の命令の場合における 新受託者の選任 第173条第1項 裁判所 × 裁判所による新受託者の選任後, その認可を行う。 45 新受託者の費用・報酬額の決定 第173条第4項 裁判所 × 関与無し 46 条件付債権等に関する鑑定人の選任 第180条第1項 裁判所 × 関与無し 47 限定責任信託に係る訴訟における提出命令 第223条 裁判所 × 関与無し 48 清算受託者による弁済の許可 第230条第2項 裁判所 × 関与無し

公益信託法の見直しに関する中間試案

公益信託法の見直しに関する中間試案

目 次

第1 新公益信託法の目的………………………………………….. 1

第2 公益信託の定義等……………………………………………. 1 1 公益信託の定義 …………………………………………….. 1 2 公益信託事務の定義………………………………………….. 1 3 現行公益信託法第2条第1項の削除……………………………… 1

第3 公益信託の効力の発生………………………………………… 1 1 公益信託の成立の認可………………………………………… 1 2 不認可処分を受けた信託の効力…………………………………. 1

第4 公益信託の受託者……………………………………………. 2 1 公益信託の受託者の資格………………………………………. 2 2 公益信託の受託者の権限,義務及び責任………………………….. 3

第5 公益信託の信託管理人………………………………………… 3 1 公益信託における信託管理人の必置……………………………… 3 2 公益信託の信託管理人の資格…………………………………… 3 3 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任………………………. 4

第6 公益信託の委託者……………………………………………. 4 1 公益信託の委託者の権限………………………………………. 4 2 公益信託の委託者の相続人…………………………………….. 4

第7 行政庁 ……………………………………………………. 4 1 公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁………………………… 4 2 行政庁の区分 ………………………………………………. 4

第8 公益信託の成立の認可の申請…………………………………… 5 1 公益信託の成立の認可の申請主体……………………………….. 5 2 公益信託の成立の認可の申請手続……………………………….. 5

第9 公益信託の成立の認可基準…………………………………….. 5 1 公益信託の目的に関する基準…………………………………… 5 2 公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準…………………….. 5 3 公益信託の信託財産に関する基準……………………………….. 5 4 公益信託の信託行為の定めに関する基準………………………….. 6

第10 公益信託の名称……………………………………………. 6

第11 公益信託の情報公開………………………………………… 7 1 公益信託の情報公開の対象及び方法……………………………… 7 2 公益信託の公示 …………………………………………….. 7

第12 公益信託の監督……………………………………………. 7 1 行政庁の権限 ………………………………………………. 7 2 裁判所の権限 ………………………………………………. 8

第13 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任…………………. 8 1 公益信託の受託者の辞任………………………………………. 8 2 公益信託の受託者の解任………………………………………. 8 3 公益信託の新受託者の選任…………………………………….. 8

第14 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任………….. 9 第15 公益信託の変更,併合及び分割……………………………….. 9 1 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更……………… 9 2 公益信託の目的の変更……………………………………….. 10 3 公益信託の併合・分割……………………………………….. 10

第16 公益信託の終了…………………………………………… 10 1 公益信託の終了事由…………………………………………. 10 2 公益信託の存続期間…………………………………………. 11 3 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了………………….. 11 4 公益信託の終了命令…………………………………………. 11 5 公益信託の成立の認可の取消しによる終了……………………….. 11

第17 公益信託の終了時の残余財産の処理…………………………… 12 1 残余財産の帰属権利者の指定………………………………….. 12 2 最終的な残余財産の帰属……………………………………… 12

第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等………………. 12 1 公益先行信託 ……………………………………………… 12 2 公益信託から受益者の定めのある信託への変更……………………. 12 3 残余公益信託 ……………………………………………… 12 4 受益者の定めのある信託から公益信託への変更……………………. 13

第19 その他 …………………………………………………. 13 1 信託法第3条第3号に規定する方法による公益信託………………… 13 2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い…………….. 13 3 罰則 …………………………………………………….. 13 4 その他 …………………………………………………… 13 1

 

第1 新公益信託法の目的 新公益信託法は,公益信託の成立の認可を行う制度を設けるとともに, 受託者による公益信託事務の適正な処理を確保するための措置等を定める ことにより,民間による公益活動の健全な発展を促進し,もって公益の増 進及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とするものとする。 第2 公益信託の定義等 1 公益信託の定義 公益信託は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とする 受益者の定めのない信託として,行政庁から公益信託の成立の認可を受け たものとする。 2 公益信託事務の定義 公益信託事務は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益に関する 具体的な種類の信託事務であって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄 与するものとする。 3 現行公益信託法第2条第1項の削除 現行公益信託法第2条第1項を削除するものとする。 第3 公益信託の効力の発生 1 公益信託の成立の認可 公益信託は,当事者が信託行為をし,かつ,行政庁による公益信託の成 立の認可を受けることによってその効力を生ずるものとする。 2 不認可処分を受けた信託の効力 公益信託として新たに信託を成立させる場合に行政庁から不認可処分を 受けても当該信託を受益者の定めのない信託として有効に成立させる旨の 信託行為の定めがあるときは,当該信託は不認可処分を受けた時から受益 者の定めのない信託としてその効力を生ずるものとし(注1),当該信託 については信託法第11章の規定を適用するものとする(注2)。 (注1)上記のような規律については,新公益信託法の中に規定を設けるのではなく, 解釈に委ねるべきであるという考え方がある。 2 (注2)行政庁から不認可処分を受けた受益者の定めのない信託について,信託法 第11章の規定を適用するが,一定の事項につき信託法第11章の特則を設けるべき であるという考え方がある。 第4 公益信託の受託者 1 公益信託の受託者の資格 公益信託の受託者は,次の資格を満たさなければならないものとする。 ⑴ 公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有すること(注1) 【甲案】公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する法人である こと 【乙案】公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する者(法人又 は自然人)であること(注2) (注1)受託者がその信託財産の処分を行う場合には,当該公益信託の目的に関 し学識経験を有する者又は組織(運営委員等又は運営委員会等)の意見を聴く ことを必要とすべきであるとの考え方がある。 (注2)受託者の資格として,自然人が公益信託の受託者となる場合には,公益信 託の信託財産の適切な管理・運用をなし得る能力を有する法人と共同で受託者と なることを必要とし,その法人と共同で公益信託事務の適正な処理をなし得る能 力を有することを必要とするとの考え方がある。 ⑵ 受託者が自然人である場合(⑴で乙案を採用する場合) ア 信託法第7条に掲げる者に該当しないこと イ 禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を終わり,又は刑の執行を 受けることがなくなった日から5年を経過しない者に該当しないこと ウ 信託法その他の法律の規定に違反したことにより,罰金の刑に処せ られ,その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5 年を経過しない者に該当しないこと エ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規 定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 に該当しないこと オ 公益信託の成立の認可を取り消されたことに責任を負う公益信託の 受託者又は信託管理人でその取消しの日から5年を経過しない者に該 当しないこと ⑶ 受託者が法人である場合 業務を執行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しく はその職務を行うべき社員又は監事若しくは監査役のうちに,上記⑵ア ないしオのいずれかに該当する者がないこと 3 2 公益信託の受託者の権限,義務及び責任 ⑴ 公益信託の受託者の権限,義務及び責任は,受益者の定めのある信託 の受託者の権限,義務及び責任と同様であるものとする。 ⑵ 受託者の善管注意義務は,軽減することはできないものとする。 第5 公益信託の信託管理人 1 公益信託における信託管理人の必置 公益信託の信託行為には,信託管理人を指定する旨の定めを設けなけれ ばならないものとする。 (注)美術館や学生寮の運営等を公益信託事務としている公益信託においては,会社法 がその規模等に応じて監査役,会計参与,会計監査人等を置かなければならない会社 を定めていることを参考にして,公益信託事務の規模等に応じて,公益信託の信託行 為に,事務処理及び会計の監査権限を有する者を指定する旨の定めも設けなければな らないとする考え方がある。 2 公益信託の信託管理人の資格 公益信託の信託管理人は,次の資格を満たさなければならないものとす る。 ⑴ア 受託者又はその親族,使用人その他受託者と特別の関係を有する者 に該当しないこと イ 委託者又はその親族,使用人その他委託者と特別の関係を有する者 に該当しないこと ⑵ 信託法第124条に掲げる者に該当しないこと ⑶ 信託管理人が自然人である場合 前記第4の1⑵に掲げる者に該当しないこと ⑷ 信託管理人が法人である場合 業務を執行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しく はその職務を行うべき社員又は監事若しくは監査役のうちに,前記第4 の1⑵に掲げる者に該当する者がないこと (注)上記⑴から⑷までに加え,当該公益信託の目的に照らしてふさわしい学識,経 験及び信用を有する者(公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力を有する 者)であることを必要とする考え方がある。 4 3 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任 ⑴ 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任は,受益者の定めのある 信託の信託管理人の権限,義務及び責任と同様であるものとする。 ⑵ 信託管理人の権限は,信託行為の定めによって制限することは原則と してできないものとし,信託管理人の義務及び責任は,信託行為の定め によって制限することはできないものとする。 第6 公益信託の委託者 1 公益信託の委託者の権限 公益信託の委託者の権限は,受益者の定めのある信託の委託者が有する 権限と同様とした上で,信託行為により制限できるものとする。 2 公益信託の委託者の相続人 公益信託の委託者の相続人は,委託者の地位を相続により承継しない ものとする(注)。 (注)信託行為に別段の定めがあるときは,その定めるところによるとする考え方が ある。 第7 行政庁 1 公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁 現行公益信託法第2条第1項及び第3条の規律を廃止し,公益信託の成 立の認可・監督は,民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて, 特定の行政庁が行うものとする。 2 行政庁の区分 現行公益信託法第10条及び第11条の規律を改め,公益信託事務が行 われる範囲が1の都道府県の区域内に限られる公益信託の成立の認可・監 督を行う行政庁は都道府県知事とし,公益信託事務が行われる範囲が2以 上の都道府県の区域内である公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁は 国の行政庁とするものとする。 5 第8 公益信託の成立の認可の申請 1 公益信託の成立の認可の申請主体 公益信託の受託者になろうとする者は,当該信託について行政庁による 公益信託の成立の認可の申請をすることができるものとする。 2 公益信託の成立の認可の申請手続 公益信託の成立の認可の申請は,必要事項を記載した申請書等を行政庁 に提出してしなければならないものとする。 第9 公益信託の成立の認可基準 (前注)本項1から4までの成立の認可基準の他に,次に掲げるものを認可基準 とするものとする。 ・公益信託の受託者の資格(前記第4の1) ・公益信託の信託管理人の資格(前記第5の2) ・公益信託終了時の残余財産の帰属権利者を信託行為で定めていること(後記 第17の1) 行政庁は,公益信託の成立の認可の申請がされた信託が次に掲げる基準に適 合すると認めるときは,当該信託について公益信託の成立の認可をするものと する。 1 公益信託の目的に関する基準 公益信託事務を行うことのみを目的とするものであること 2 公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準 公益信託の受託者が行う信託事務が,当該公益信託の目的の達成のため に必要な信託事務であること なお,当該信託事務が収益を伴うことは許容されるものとする。 3 公益信託の信託財産に関する基準 ⑴ 公益信託の信託財産は,金銭に限定しないものとする。 ⑵ 公益信託設定当初の信託財産に加え,信託設定後の信託財産の運用や, 委託者又は第三者からの拠出による事後的な信託財産の増加等の計画の 内容に照らし,当該公益信託の存続期間を通じて,公益信託事務を遂行 することができる見込みがあること 6 ⑶ 信託財産に,他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財 産が原則として含まれないことを必要とし,例外として,当該株式等の 財産の保有によって他の団体の事業活動を実質的に支配するおそれがな い場合は当該株式等の財産が含まれることを許容する(注)。 (注)公益信託の信託財産に他の団体の意思決定に関与することができる株式等の 財産が含まれるか否かを公益信託の成立の認可基準としないという考え方がある。 4 公益信託の信託行為の定めに関する基準 ⑴ 信託行為の定めの内容が,次に掲げる事項に適合することとする。 ア 委託者,受託者若しくは信託管理人又はこれらの関係者に対して特 別の利益を供与するものでないこと イ 特定の個人又は団体に対して寄附その他の特別の利益を供与するも のでないこと ウ 受託者及び信託管理人の報酬について,不当に高額にならない範囲 の額又は算定方法が定められていること エ 公益信託の会計について (ア) 公益信託事務に係る収入がその実施に要する適正な費用を償う額 を超えないと見込まれるものであること (イ) 遊休財産額が一定の制限を超えないと見込まれるものであること (ウ) 公益信託に係る費用のうち当該公益信託の運営に必要な経常的経 費の額が一定の割合以下となると見込まれるものであること(注) (注)エ(ウ)の基準は不要であるとする考え方がある。 ⑵ 公益信託事務が金銭の助成等に限定されている公益信託について,上 記⑴エの基準は適用しないものとする。 第10 公益信託の名称 公益信託の名称に関して,以下のような規律を設けるものとする。 1 公益信託には,その名称中に公益信託という文字を用いなければなら ない。 2 何人も,公益信託でないものについて,その名称又は商号中に,公益 信託であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。 3 何人も,不正の目的をもって,他の公益信託であると誤認されるおそれ のある名称又は商号を使用してはならない。 4 3に違反する名称又は商号の使用によって事業に係る利益を侵害され, 又は侵害されるおそれがある公益信託の受託者は,その利益を侵害する 7 者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求 することができる。 第11 公益信託の情報公開 1 公益信託の情報公開の対象及び方法 現行公益信託法第4条第2項を廃止又は改正し,新たな公益信託の情報 公開の対象,方法については,公益財団法人と同等の仕組みとするものと する。 2 公益信託の公示 行政庁は,公益信託の成立の認可やその取消し,公益信託の変更,併合・ 分割の認可をしたときは,その旨を公示しなければならないものとする。 第12 公益信託の監督 1 行政庁の権限 現行公益信託法第4条第1項の規律を改め,行政庁は,次の権限を行使 するものとする。 ⑴ 行政庁は,公益信託事務の適正な処理を確保するために必要な限度 において,受託者に対し,その公益信託事務及び信託財産の状況につ いて必要な報告を求め,又は,その職員に,当該受託者の事務所に立 ち入り,その公益信託事務及び信託財産の状況若しくは帳簿,書類そ の他の物件を検査させ,若しくは関係者に質問させることができる。 ⑵ 行政庁は,公益信託が成立の認可基準のいずれかに適合しなくなっ たとき等に該当すると疑うに足りる相当な理由がある場合には,受託 者に対し,期限を定めて,必要な措置をとるべき旨の勧告をすること ができる。 ⑶ 行政庁は,上記⑵の勧告を受けた受託者が,正当な理由がなく,そ の勧告に係る措置をとらなかったときは,当該受託者に対し,その勧 告に係る措置をとるべきことを命ずることができる。 ⑷ 行政庁は,上記⑶の命令を受けた受託者が,正当な理由がなく,そ の命令に従わなかったときは,当該公益信託の成立の認可を取り消さ なければならない。 8 2 裁判所の権限 裁判所は,信託法が裁判所の権限としている権限を原則として有するも のとすることに加え,現行公益信託法第8条が裁判所の権限としている権 限を有するものとする。 第13 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任 1 公益信託の受託者の辞任 現行公益信託法第7条の規律を改め,受託者は,委託者及び信託管理人 の同意を得て辞任することができるほか,[やむを得ない事由/正当な理由] があるときは裁判所の許可を得て辞任することができるものとする。 2 公益信託の受託者の解任 ⑴ 委託者及び信託管理人の合意による解任について 委託者及び信託管理人は,[受託者がその任務に違反して信託財産に 著しい損害を与えたことその他重要な事由があるとき/正当な理由があ るとき]は,その合意により受託者を解任することができるものとする。 ⑵ 委託者及び信託管理人の合意がない場合において,受託者がその任 務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があ るときは,裁判所は,委託者又は信託管理人の申立てにより,受託者を 解任することができるものとする。 委託者については信託行為において受託者の解任の申立権を有しない 旨を定めることができるものとする。 3 公益信託の新受託者の選任 ⑴ 委託者及び信託管理人は,信託行為に新受託者に関する定めがある場 合は,当該定めに従い,信託行為に新受託者に関する定めがない場合は, 信託法第62条第1項の方法により新受託者を選任することができるも のとした上で,新受託者になろうとする者は,行政庁による新選任の認 可を受けるものとする。 ⑵ 信託法第62条第1項の場合において,同項の合意に係る協議の状況 その他の事情に照らして必要があると認めるときは,裁判所は,利害関 係人の申立てにより,新受託者を選任することができるものとした上で, 新受託者になろうとする者は,行政庁による新選任の認可を受けるもの とする(注)。 9 (注)行政庁による認可を必要とせず,裁判所が新受託者を選任する前に,行政庁に 意見を聴くものとする考え方がある。 第14 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任の規律は, 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任と同様の規律とするも のとする。 第15 公益信託の変更,併合及び分割 (前注)行政庁に対する変更,併合及び分割の認可の申請は,いずれも受託者が行 うことを前提としている。 1 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更 ⑴ 現行公益信託法第5条及び第6条を廃止又は改正し, ア 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更は,委託者, 受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による変更の 認可を受けることによってすることができるものとする。 イ 裁判所は,信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情 により,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目 的及び信託財産の状況その他の事情に照らして公益信託の目的の達成 に支障になるに至ったときは,委託者,受託者又は信託管理人の申立 てにより,信託の変更を命ずることができるものとする。 委託者については信託行為において変更命令の申立権を有しない旨 を定めることができるものとする。 ウ 受託者は,上記イの変更命令の後,行政庁による変更の認可を受け るものとする(注)。 (注)行政庁による変更の認可を必要とせず,裁判所が信託の変更を命ずる前に, 変更後の信託が公益信託の成立の認可基準を充足するか否かについて,行政庁に 意見を聴くものとする考え方がある。 ⑵ 上記⑴アの例外として,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の 定めの軽微な変更をするときは,受託者は,その旨を行政庁に届け出る とともに,当該変更について委託者及び信託管理人の同意を得ていない 場合には,遅滞なく,委託者及び信託管理人に対し,変更後の信託行為 の定めの内容を通知しなければならないものとする。 10 2 公益信託の目的の変更 ⑴ 現行公益信託法第6条を廃止又は改正し,公益信託の目的の変更は, 委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,行政庁による変 更の認可を受けることによってすることができるものとする。 ⑵ 現行公益信託法第9条を改正し,公益信託の目的を達成したとき又は その目的を達成することができなくなったときは, ア 委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,公益信託の 目的を他の公益目的に変更し,行政庁による変更の認可を受けること によって公益信託を継続できるものとする。 イ 委託者が現に存しない場合には,受託者及び信託管理人は,その合 意により,公益信託の目的を類似の目的に変更し,行政庁による変更 の認可を受けることによって公益信託を継続できるものとする。 3 公益信託の併合・分割 現行公益信託法第6条を廃止又は改正し,公益信託の併合・分割は,委 託者,受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による併合・ 分割の認可を受けることによってすることができるものとする(注)。 (注)裁判所は,信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,信託 行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして公益信託の目的 の達成に支障になるに至ったときは,委託者,受託者又は信託管理人の申立てにより, 信託の併合・分割を命ずることができる旨の規律を設けるものとする考え方がある。 第16 公益信託の終了 1 公益信託の終了事由 公益信託は,次に掲げる場合に終了するものとする。 ⑴ 信託の目的を達成したとき,又は信託の目的を達成することができ なくなったとき。 ⑵ 受託者又は信託管理人が欠けた場合であって,新受託者又は新信託 管理人が就任しない状態が1年間継続したとき。 ⑶ 受託者が信託法第52条(第53条第2項及び第54条第4項にお いて準用する場合を含む。)の規定により信託を終了させたとき。 ⑷ 信託の併合がされたとき。 ⑸ 信託法第165条又は第166条の規定により信託の終了を命ずる 裁判があったとき。 ⑹ 信託財産についての破産手続開始の決定があったとき。 11 ⑺ 委託者が破産手続開始の決定, 再生手続開始の決定又は更生手続開 始の決定を受けた場合において,破産法第53条第1項,民事再生法 第49条第1項又は会社更生法第61条第1項(金融機関等の更生手 続の特例等に関する法律第41条第1項及び第206条第1項におい て準用する場合を含む。)の規定による信託契約の解除がされたとき。 ⑻ 信託行為において定めた事由が生じたとき。 2 公益信託の存続期間 公益信託の存続期間については,制限を設けないものとする。 3 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了 【甲案】公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管理人の合意がある 場合には,行政庁による公益信託の[終了の認可/成立の認可の取消 し]を受けることによってすることができるものとする。 【乙案】公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管理人の合意のみに よりすることができるものとする。 4 公益信託の終了命令 信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,公益信 託を終了することが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らし て相当になるに至ったことが明らかであるときは,裁判所は,委託者,受 託者又は信託管理人の申立てにより,信託の終了を命ずることができるも のとする。 委託者については信託行為において公益信託の終了命令の申立権を有し ない旨を定めることができるものとする。 5 公益信託の成立の認可の取消しによる終了 公益信託の成立の認可を取り消された公益信託は,終了するものとする (注)。 (注)原則として当該信託は終了するが,信託行為に公益信託の成立の認可の取消後 は受益者の定めのない信託として存続させる旨の定めがあるときは,当該信託は受 益者の定めのない信託として存続するものとするという考え方がある。 12 第17 公益信託の終了時の残余財産の処理 1 残余財産の帰属権利者の指定 ⑴ 公益信託の信託行為には,残余財産の帰属すべき者(以下「帰属権利 者」という。)の指定に関する定めを置かなければならないものとする。 ⑵ 上記⑴の定めの内容は,信託終了時の全ての残余財産を当該公益信託 と類似の目的を有する他の公益信託若しくは類似の目的を有する公益法 人等(公益法人認定法第5条第17号イないしトに掲げる法人を含む。) 又は国若しくは地方公共団体に帰属させることを定めたものでなければ ならないものとする(注)。 (注)公益信託の成立後の寄附等により信託財産に加わった財産の帰属権利者につ いては上記⑵に掲げた者を指定するものでなければならないとした上で,公益信 託の成立時に拠出された信託財産の帰属権利者については委託者等の私人を指定 することを許容する考え方がある。 2 最終的な残余財産の帰属 帰属権利者の指定に関する信託行為の定めに掲げられた者の全てがその 権利を放棄した場合の残余財産は,国庫に帰属するものとする。 第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等 1 公益先行信託 公益先行信託(信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を公益目的の ために供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を私益目的のために 供する信託)について行政庁が成立の認可を行う制度は設けないものとす る。 2 公益信託から受益者の定めのある信託への変更 公益信託について,信託の変更によって受益者の定めを設け,受益者の 定めのある信託とすることはできないものとする。 3 残余公益信託 残余公益信託(信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を私益目的の ために供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を公益目的のために 供する信託)について行政庁が成立の認可を行う制度は設けないものとす る。 13 4 受益者の定めのある信託から公益信託への変更 【甲案】受益者の定めのある信託について,信託の変更によって受益者の 定めを廃止して公益信託とすることはできないものとする。 【乙案】受益者の定めのある信託について,信託の変更によって受益者の 定めを廃止して公益信託とすることができるものとする。 第19 その他 1 信託法第3条第3号に規定する方法による公益信託 【甲案】信託法第3条第3号に規定する方法により公益信託をすることは できないものとする。 【乙案】信託法第3条第3号に規定する方法により公益信託をすることは できるものとする。 2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い ⑴ 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託は,新公益信託法の適 用を受ける公益信託への移行について,行政庁による移行の認可を受け ることを必要とするものとする(注)。 (注)一定の要件を満たしている既存の公益信託については,届出等の簡易な移行手 続を許容するとの考え方がある。 ⑵ 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託について,移行の認可 を受ける前は,現行公益信託法が適用されるものとし,移行の認可を受 けた後は,新公益信託法が適用されるものとする。 ⑶ 移行の認可は,新公益信託法の施行日から一定の期間内に受けること を必要とし,移行の認可を受けなかった信託は,上記の期間経過後に終 了するものとする。 3 罰則 現行公益信託法第12条の規律を改め,罰則について所要の措置を講ず るものとする。 4 その他 その他所要の規定を整備するものとする。 以上

法制審議会信託法部会 第47回会議 議事録


法制審議会信託法部会 第47回会議 議事録 第1 日 時  平成29年12月12日(火)   自 午後1時30分                          至 午後3時44分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題 公益信託法の見直しに関する中間試案の取りまとめ 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会信託法部会の第47回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   本日は,神田委員,筒井委員,山本委員,岡田幹事,堂園幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席です。   本日の会議資料の確認等を事務当局からお願いします。 ○中辻幹事 お手元の資料について御確認いただければと存じます。   事前に,部会資料45「公益信託法の見直しに関する中間試案(案)」及び参考資料6「公益信託法の見直しに関する中間試案(案)の説明資料」を送付いたしました。また,本日は,内閣府の明渡関係官から,公益法人制度における残余財産の処分について御説明を頂けるということで,その資料を当日配布資料としております。   以上の資料について,もしお手元にない方がいらっしゃいましたら,お申し付けください。よろしいでしょうか。 ○中田部会長 本日は,部会資料45「公益信託法の見直しに関する中間試案(案)」について御審議いただきます。部会資料45は,部会資料44の「中間試案のたたき台(2)」について,前回の部会での審議を受けて,事務当局の方で修正されたものだということです。本日は,中間試案の取りまとめにまで至ることを予定しておりますので,何とぞよろしく御協力のほどをお願いいたします。   このほか,参考資料6「公益信託法の見直しに関する中間試案(案)の説明資料」も配布されています。中間試案などをパブリックコメントの手続に付すに当たっては,民事局参事官室において補足説明を付すことが多いようです。この補足説明は,従来から,民事局参事官室の責任で作成するものとされており,今回も部会での審議対象ではありません。しかし,事務当局におかれましては,これまでの審議の経緯を踏まえて,より丁寧に部会での意見を中間試案の補足説明に反映したいというお考えから,本日,この説明資料を参考資料として用意されたと伺っています。   このように,本日の審議の対象は,飽くまでも部会資料45でありますので,まずはそのゴシック部分について,中間試案としてパブリックコメントに付すことが適切かという観点から御審議いただければと思います。そして,ゴシック部分について,部会としての意見の集約がおおむねできたところで,参考資料6について,御意見や御指摘を頂くことを考えております。その上で,最終的に,部会資料45について,御確認,御決定を頂くというように進めたいと思っております。   なお,途中の午後3時頃,切りのいいところで休憩を挟むことを考えております。こういった進め方でよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,本日の審議に入りたいと思いますが,事務当局から御紹介のありましたように,前回の終わりに少し話が出ました公益法人制度における残余財産の処分につきまして,内閣府の明渡関係官から御説明いただけると伺っています。公益法人認定法第5条17号の規定の読み方についてということです。   明渡関係官,お願いいたします。 ○明渡関係官 1枚お配りしております「公益法人制度における残余財産の処分について」というペーパーに基づいて御説明いたします。   「法律の規定」と,そのペーパーの冒頭に書いておりますけれども,今部会長がおっしゃった第5条第17号でございます。下の方ですけれども,「類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは次に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体」というような規定がございます。この「類似の事業を目的とする」というのが,どこまで掛かるのかというふうなことが,前回の議論の中で出てきたものということだと承知しております。   その下に,「修飾語句のかかり方のモデル」というのを書いておりまして,こういう場で申し上げるのも恐縮ではありますけれども,四つのものの選択的接続の場合,四つにかかる場合,一番冒頭のもののみにかける場合,最初の二つにかける場合,三つにかける場合とありまして,この条文で用いている「若しくは」「又は」「若しくは」とつながるのは,この三つ目,「A及びBにかける場合」というふうな形となっております。したがいまして,「類似の事業を目的とする」というのは,「他の公益法人」と「次に掲げる法人」にかかるものであり,「次に掲げる法人」というのは,学校法人,社会福祉法人等々が,この後規定されているというものでございます。   念のため,裏面を御覧いただきますと,このときの法律に至るまでの議論の経緯等を付けております。平成16年11月の有識者会議の報告書,ここを御覧いただきますと,アンダーラインを引いているところでございますが,「帰属者となり得る者を他の類似目的の公益性を有する法人」というような形で書いております。その後の閣議決定たる行革の方針におきましても,下線部分,「他の類似の公益目的の法人」という形で書いております。「法人」となっておりますので,全てに掛かっておりますけれども,法律の規定においては,公益法人とそれ以外の法人を具体的に規定するために,現在の条文になったものと思っております。   なお,同じような議論については,公益認定委員会でもございまして,そのときも,前2者に掛かるというふうなことを説明しているというのが,③の議事録の抜粋でございます。 ○中田部会長 ありがとうございました。引き続いての審議の参考にしていただければと存じます。   ただいまの御説明につきまして,御質問などございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,先に進めさせていただきます。   それでは,部会資料45についての審議をお願いします。事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,御説明申し上げます。   今回も前回同様,前回の部会資料である部会資料44の本文の提案から変更している箇所についてのみ,その変更の理由等も含めて御説明させていただきます。   まず,第1,第2,第3の1,こちらは変更はございません。   第3の2,「不認可処分を受けた信託の効力」について変更がございますので,御説明いたします。   第46回会議では,部会資料44の第3の2の提案に対し,既に受益者の定めのない信託が有効に成立しており,その信託が公益信託の成立の認可申請をして不認可になった場合には,当該信託は不認可処分を受けたときよりも前に効力を生じていることから,提案の表現を工夫すべき旨の指摘がありました。その指摘を踏まえ,本部会資料の第3の2の提案では,冒頭に「公益信託として新たに信託を成立させる場合に」という文言を追加する旨の変更をして,第3の2の規律が適用される場面を限定し,既に受益者の定めのない信託として存在している信託が公益信託の成立の認可を受ける場面では該当しないことを明らかにしています。   また,部会資料44の第3の2の提案では,「信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託に関する信託法第11章の規定」と記載しておりましたが,「信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託に関する」という部分は,あえて記載するまでの必要性に乏しいことから,「信託法第11章の規定」という記載に変更しております。   次に,第4,第5の1,こちらは変更はございません。   第5の2,「公益信託の信託管理人の資格」について御説明いたします。   第46回会議では,部会資料44の第5の2(1)ア及びイの提案に対し,「受託者(委託者)又はその親族,使用人等の」と,その直後の「受託者(委託者)と特別の関係を有する者」で,文章を区切って読まれる可能性があり,分かりにくい旨の指摘がありました。その指摘を踏まえ,本部会資料の第5の2(1)ア及びイでは,上記部分の表現を「受託者(委託者)又はその親族,使用人その他」に変更しております。   また,第46回会議では,部会資料44の第5の2の(注)に対し,公益信託の受託者の資格が「公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有すること」とされていることに合わせ,「公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力を有する者」という表現の方が分かりやすいとの意見がありましたので,本部会資料第5の2(注)では,その旨の表現を括弧書きの中に追加する表現の変更をしております。   また,本部会資料の第6の1及び2の提案については,部会資料44の第6の1及び2の提案から,実質的な変更点はございませんが,第46回会議における指摘を踏まえ,文章を簡潔にするために表現を変更しております。   次に,第7,第8は変更はございません。   それから,第9に入りまして,第9の1,3,4,こちらは変更はございません。   第9の2,公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準について御説明いたします。   第46回会議では,部会資料44の第9の2の提案に対し,信託行為や事業計画書に記載されている信託事務の内容が公益信託の目的達成のために必要性を欠く信託事務を行うものになっていないかということを行政庁が認可の際に判断するという趣旨を表現すべきである旨の意見,それから,公益信託の受託者が公益信託の目的の達成のために必要な収益を伴う信託事務を行うことを妨げないことを分かりやすく表現すべきである旨の意見等が出されました。   これらの意見を踏まえ,本部会資料の第9の2の提案では,公益信託の受託者が行う信託事務が収益を伴うものであっても,それが当該公益信託の目的の達成のために必要な範囲であれば許容されることが端的に明らかになるように,「公益信託の受託者が行う信託事務が,当該公益信託の目的の達成のために必要な信託事務であること。なお,当該信託事務が収益を伴うことは許容されるものとする。」との表現に変更しております。   なお,本部会資料の第9の3(2)及び(3)について,部会資料44の第9の3(2)及び(3)から実質的な変更点はございませんが,部会資料44では,項目名と本文の内容が重複し,読みにくい面があったことから,項目名を削除しております。   次に,第10,第11,第12,第13,第14までについては変更はございません。   第15に入りまして,第15の1,「公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更」及び第15の2,「公益信託の目的の変更」について御説明いたします。   第45回会議では,部会資料42のように,第15の1の項目名を「公益信託の目的以外の信託行為の定めの変更」,第15の2の項目名を「公益信託の目的の変更」とすると,第15の1の変更には委託者,受託者及び信託管理人の合意等が必要であり,第15の2の変更には委託者,受託者及び信託管理人の合意が必要であるという整理が可能であるが,部会資料43及び44のように,第15の1の項目名を「公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更」とし,第15の2の項目名を「公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更」とすると,そのような整理が不可能になる旨の指摘がありました。   また,部会資料44の第15の2の提案では,公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更(公益信託の目的の変更及び公益信託事務の範囲の変更を含む)は,委託者,受託者及び信託管理人の合意によりできるものとしておりましたが,公益信託事務の範囲の変更であっても,それが公益信託の目的に影響を与えるものでなければ,例えば信託法第149条第2項第2号の受託者による単独の意思表示等の方法を含む委託者,受託者及び信託管理人の合意等での変更を許容することも考えられることから,部会資料44の表現は,いささか不正確な面がありました。   それらの指摘等を踏まえ,本部会資料の第15の2(2)の提案では,項目名を「公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更」から「公益信託の目的の変更」に変更するとともに,本文中の「公益信託事務の範囲の変更」を削除しています。公益信託事務の範囲の変更については,本部会資料の第15の1又は2のいずれかが適用されることを想定しております。   次に,第16,「公益信託の終了」について御説明いたします。   部会資料44の第16の(前注)には,「信託法第163条(同条第2号を除く)の規定が原則として適用される」と記載しておりましたが,第45回会議において,公益信託の終了事由を広く取り上げた方が分かりやすい旨の指摘等があったことを踏まえ,本部会資料の第16の1の提案では,信託法第163条第1号及び第3号から第9号までの事由に該当する場合に公益信託が終了することを,具体的な終了事由とともに示す旨の変更をしております。   なお,本部会資料の第16の1(2)の提案のうち,信託管理人の1年の不在を終了事由とすることについては,部会で別の考え方が示されていることから,パブリックコメントに付すに際しては,その旨が明らかになるように努めたいと存じます。   また,本部会資料第16の3の乙案については,部会資料44の第16の2の乙案から実質的な変更はございませんが,乙案の趣旨は,行政庁の関与なく,当事者の合意のみによる公益信託の終了を可能とすることにあることをより分かりやすく表すために,委託者,受託者及び信託管理人の合意のみにより終了できるという表現の変更をしております。   次に,第17,「公益信託の終了時の残余財産の処理」についてですが,第46回会議では,部会資料44の第17の1(2)の甲案及び第17の2の甲案を積極的に支持する意見はなく,第17の1(2)及び第17の2の論点は,それぞれ乙案を本文の提案にすべきであるとする意見に特段の異論はありませんでした。これを踏まえ,本部会資料の第17の1(2)及び第17の2の提案では,部会資料44の第17の1(2)及び第17の2のいずれからも甲案を削除し,乙案を本文の提案としております。   なお,部会資料44の第17の1(2)の(注)に掲げていた公益信託の成立時に拠出された信託財産の一部を私人に帰属させることを許容するものとする考え方は,本部会資料の第17の1(2)の(注)に掲げており,この点は変更はございません。   次に,第18,これは変更はございません。   最後に,第19,「その他」の論点についてですが,第46回会議において,部会資料44の第19の2(1)の(注)について,簡易な手続の具体例を示すべきである旨の意見等があったことを踏まえ,本部会資料の第19の2(1)の(注)では,簡易な移行手続の例として,届出を例示しております。   また,本部会資料の第19の2(3)では,部会資料44の第19の2(3)の「上記(1)の」という部分を削除する旨の表現の変更をしております。 ○中田部会長 ありがとうございました。   それでは,部会資料45についての意見交換に入ります。   全体を三つに区切りまして,御審議いただこうと思います。すなわち,第1から第7,第8から第14,そして,第15から第19までの三つです。   まず,第1から第7までにつきまして,どこからでも結構ですので,御自由に御発言をお願いいたします。 ○平川委員 第4の1なんですけれども,受託者の資格要件で,受託者が公序良俗に反する事業を営んでいないことを要件にすべきなのではないかということを従前申し上げたのですけれども,その資格要件から外されている点について意見を申したいと思います。   公益法人認定法5条5号では,公益法人の認定要件の一つとしているのに,受託者の認可要件で,資格要件ではないという理由があるのか,今一度御確認いただきたいし,また,あえて外す理由をお聞かせ願いたいということです。   認可のときにチェックするからよいということなのか,また,結果としては,認可を受けた後に風俗営業を営み出したときに,受託者の資格がないとは言えなくなるわけですけれども,ほかに差し障りのあることが具体的に発生して,かかる事象が解任の事由に該当すれば,解任はあるけれども,そうではない限り問題なしとなるということになるかと思います。そうすると,公益の信託事務を滞りなくやる能力はあるけれども,風俗営業の商売も幅広くやっているというような受託者だけれども,公益信託事務に差し障りがないから,そういう受託者は許容するということに,結果としてなると思います。   公益法人認定法では,5条第5号に,公益認定の基準の一つとして,公益法人の社会的信用を維持する上でふさわしくない事業として,政令3条の指定により,投機的な取引を行う事業,また,利息制限法に定める利息制限を超える貸金を行う事業,いわゆる高利貸し,そして,風俗営業規制法に規定する性風俗関連特殊営業を指定し,これらの事業や,またその他,公序良俗を害するおそれのある事業を行わない者であることとしています。公益信託の受託者が,かかる事業を行っていないことを要件とすることは,公益性のある信託の信用性を維持するためにも必要な要件ではないかと考えます。   例えば,固有の事業として,家出してきた女性を使って風俗営業規制法に規定する性風俗関連特殊営業を営んでいる者が,一方ではドメスティック・バイオレンスのシェルターを運営する公益信託の受託者になるというようなことは,違和感があるという以上に,許容すべきではないと考えます。   したがいまして,公益法人認定法5条5号は,公益信託においても当然引き継がれるべきだと考えておりますが,これを外す積極的な理由というのを,今一度御審議願いたいと思います。 ○中田部会長 この点は,ここでも既に御審議いただいたことではありますが,更に重ねてということかと存じます。   ほかに,この第4の1に関しまして,関連する御意見などございますでしょうか。   それでは,事務当局の方からお願いします。 ○中辻幹事 この公序良俗要件について,平川委員から今のような御意見を頂いていたことは重々承知しておりますし,以前は川島委員からも同様の意見を頂いておりました。一方で,能見委員や小幡委員,小野委員,道垣内委員,林幹事などからは反対の御意見を頂いていたところです。   そこで,少し前の資料ですけれども,部会資料43「中間試案のたたき台(1)」の16ページになりますが,公序良俗要件について改めて検討いたしました。そこで論じていることの繰り返しになってしまいますけれども,確かに公益信託の受託者として,しっかりした方を確保するということは重要です。しかし,このような要件を法律上設けなくても,委託者において適切な受託者を選定し,信託管理人や行政庁の方できちんと受託者を監督していくことは可能であると考えています。   また,公益法人との違いとして,公益信託は,公益信託事務を行うことのみを目的とするものに限り認可されるということが大きいと思います。公益法人については,公益目的事業以外の収益事業を幅広く行うものであっても認定を受けられるので,収益事業の関係で規制をかけなくてはいけない面があるのですけれども,公益信託については,そのような必要性は低いということを踏まえまして,中間試案のたたき台の段階から,この要件は外しているということでございます。そして,第44回会議では,川島委員からも外すことに異存がないという御発言を頂き,部会の御意見の大勢はこれを受託者の要件としないということであると私どもとしては認識しておりました。 ○平川委員 そうしますと,要するに,信託事務の遂行能力とか,そちらの方の信託事務の方の善管注意義務とか,そういうものを確実にやっている者であれば,ほかの素行といいますか,営業について,性風俗関連特殊営業を営んでいるかどうかとか,そういうことは考慮に値しないということになるわけですか。 ○中辻幹事 全く値しないとまで言い切るつもりはありません。けれども,逆に,法律に従った適法な営業として認められている者を一律に受託者から排除するということの方が,過剰な規制となる可能性があってむしろ問題が大きいのではないかと考えています。   もう一つ,これも以前に申し上げたことですけれども,公益法人の認定では一般法人から公益認定を受けようとするその法人自体の公益性を見るわけですね。でも,公益信託の認可においては,受託者が誰であるかも重要ですが,その信託が行う公益信託事務の公益性について着目する方がむしろ重要であると考えておりまして,そのような観点からも,法人と信託で差別化を図れるのではないかと考えているところでございます。 ○平川委員 はい。 ○中田部会長 ほかに,これに関して,あるいは,それ以外についてでも結構でございますが,御意見ございますでしょうか。もしないようでしたら,先に進んでもよろしいでしょうか。   それでは,次に,第8から第14までに進みます。これも,どこからでも結構ですので,御自由に御発言をお願いいたします。   前回の審議を受けて,若干の修正箇所がございますけれども,特に改めて御意見はございませんでしょうか。先に進んでもよろしいでしょうか。   それでは,後でまた戻っていただいても結構ですが,次に進みます。第15から第19までのうち,御意見をお願いいたします。 ○深山委員 意見というよりは,確認ないし質問に近いかと思います。   第15のところです。先ほど関係官から説明を頂いたところではあるのですけれども,整理の仕方を少し部会資料44から変えて,公益信託事務の処理の方法に関する変更と,目的の変更というふうに,大きく分けて規律を設けているということですが,その中で,公益信託事務の範囲の変更についてはゴシックからは落としましたという説明があって,そこについて,補足説明では,15の1の(1)又は2の(1)のいずれかが適用されることが想定されるという説明があります。   これは,先ほどの関係官の説明ですと,ケース・バイ・ケースで,信託事務の範囲の変更が1の(1)に当たる場合もあれば,2の(1)に当たる場合もあるという意味で,いずれかが適用されるということだという説明のように聞こえました。そのようなケース・バイ・ケースで適用が分かれるという趣旨なのか,あるいは,そこは明示をしないで,解釈に委ねるような趣旨で書かれているのか。ちょっとその趣旨が分からなかったので,確認をさせていただければと思います。   従前,範囲の変更というのが,目的の変更に近い,あるいは目的の変更を具体化したものというような位置付けで,一つ前の資料では,目的の方に寄せていたようなイメージを持っていたのですが,今回あえてそれを外したということは,そうではなくて,合意等でもいけるということを含意しているのかなと思ったり,ちょっとその辺が気になったので,もう少し御説明いただければと思います。 ○中田部会長 関連する御意見,御質問はございますでしょうか。   それでは,お願いします。 ○中辻幹事 では,深山委員からの御質問についてお答えいたしますと,公益信託事務の範囲の変更については,深山委員の御理解のとおり,目的の変更に近いというかそちらに寄せていける場合が多いと考えていることは部会資料44から変わっておりません。公益信託事務の範囲の変更といってもその変更の程度には大小があって,例えば,公益法人認定法の別表1号の学術及び科学技術の振興を目的とする事業に相当する公益信託事務を行っていた信託から,別表2号の文化及び芸術の振興を目的とする事業に相当する公益信託事務を行う信託に変更するようなものは,まさに目的の変更に当たり,15の2の規律が適用されることになるのだろうと思います。   ただ,例えば,別表1号の学術及び科学技術の振興を目的とする事業であることには変更はないけれども,大学院生向けの奨学金の対象に大学生も加えるようなものについては,グラデーションがあって,必ずしも目的の変更に当たるとは言えない場合もあるのではないかと考えました。そのために,今回の資料では,公益信託事務の範囲の変更について,15の1(1)の規律が適用される場合もありますし,15の2(1)の規律が適用される場合もあるという説明をしております。   いずれにせよ,信託法149条が公益信託にも適用されることを中間試案では前提としておりますので,どちらの場合でも,委託者,受託者及び信託管理人の合意があれば公益信託事務の範囲の変更はできるということになります。そうすると,通常はこれら3者の合意で変更することになり,15の1(1)に該当するのか,15の2(1)に該当するのかは,実際上は余り変わらないとも言えるのですが,15の1は「合意等」となっていて信託法149条2項及び3項の適用があり受託者単独の意思表示による変更が可能なのに対し,15の2は「合意」となっていて基本的には3者合意が必要という違いが出てきます。また,信託法150条の変更命令によっては信託の目的を変更することはできないという解釈がありまして,そこは解釈に委ねるのですけれども,仮に15の2の目的の変更を伴う公益信託事務の範囲の変更に当たるのであれば,信託法150条の方法での変更はできなくなるという整理をしております。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。 ○深山委員 はい。 ○中田部会長 ほかにございますでしょうか。   今の部分以外,全体を通じてでも結構でございます。部会資料45について。 ○林幹事 第16の1の終了事由のところで,(2)の,特に信託管理人が欠けた場合について,欠けた状態が1年継続したときを終了事由とされています。この整理について,説明資料の方には,1年間欠けたときを終了事由とせずに取消事由とするという考えがある趣旨を書いていただいているところなのですが,個人的な意見としては,改めてこういうふうに終了事由を中間試案に掲げるなら,この点を少なくとも(注)などに書いていただけると有り難かったという印象を持っています。取りあえず,その旨を議事録にとどめていただく趣旨で発言しています。最終的には,整理についてはお任せするほかない部分もあるのですが,意見としては,せめて(注)にしていただいたら有り難かったというところです。 ○中田部会長 今の点につきまして,関連する御意見等ございますでしょうか。   事務当局の方からございますでしょうか。 ○中辻幹事 事務局への配慮を含む御意見をありがとうございます。   正直に言えばできるだけゴシックは変えたくないのですけれども,もちろん委員,幹事の皆様から,(注)にという御意見が多いようであれば,修正させて頂きたいと思います。 ○中田部会長 いかがでしょうか。   1年不在の場合について,(注)で,このような考え方もあるというような記述をするということについて,林幹事から御提案があり,中辻幹事からも,もし部会での御意見が多いようであれば,それも可能であるというような御対応が示されておりますけれども,いかがでしょうか。特になければ,議事録に御発言を残すということで対応するということでよろしいでしょうか。   それでは,ほかに御発言ございませんようですので,今のような取扱いにさせていただきたいと存じます。   ほかに,全体を通じてで結構ですけれども,お気付きの点はございますか。 ○新井委員 申し訳ありません。前の方に戻りますけれども,第3の2です。「不認可処分を受けた信託の効力」についての(注2)というのが,3ページの一番最後にあります。「(注2)行政庁から不認可処分を受けた受益者の定めのない信託について,信託法第11章の規定を適用する」のところは,私はよく理解できるのですが,その後の「一定の事項につき信託法第11章の特則を設けるべきであるという考え方がある。」ということなのですが,これはこのまま存置しておくということでよろしいでしょうか。というのは,この特則の例として挙がっているのは,信託法附則第3項の受託者要件であるからです。   もしこれが認められると,こういうことを考える人がいるのではないかと思うのです。例えば,初めから認可を受けることを予定せず,不認可処分があったことを前提として,信託法の規定している目的信託の内容を少し変えてしまうことができるのではないでしょうか。具体的に言うと,受託者要件を適用しない目的信託を創設することを目的にして,あえて認可を申請して,不認可処分になって,予定どおり,受託者要件のない目的信託を創設するということが考えられるのですね。ですから,一種の脱法的な目的信託の創設に道を開くように思うのですが,これが入れられた趣旨というのはどういうことだったのでしょうか。そこのところを今一度確認させていただければと思います。 ○中田部会長 ありがとうございます。   前回,これについて御審議いただきまして,確か深山委員の御発言と道垣内委員の御発言などがあって,それを踏まえて,今このような形になっているのだと思いますけれども,関連する御意見,御質問等ございましたら,お出しいただけますでしょうか。 ○深山委員 今,部会長御説明のとおり,前回私の発言と,それを受けて道垣内委員の発言があったわけですが,そこでは,専ら新井委員御指摘の受託者要件のところをめぐっての議論でした。ただ,ここでは,受託者要件だけが特則として想定されているわけではないということは御案内のとおりです。   まず,受託者要件に関していえば,今の附則3項がそのまま維持されるかどうか。公益信託について,5,000万円等の要件がそのまま適用されるのか,されないのかということも,一つの議論としてはあると思います。補足説明の中でも,附則の書きぶりが変わるというようなことも書かれておりますので,そういう意味では,いろいろと,そこはまだ議論が残っているのではないかなというふうに感じているところです。   また,受託者要件の問題だけではなくて,例えば,20年という目的信託の期間が,公益を目的とする目的信託の場合に必要かどうかであるとか,あるいは,信託管理人を,契約で信託設定した場合でも必置とするかどうかとか,ほかの要件のところも,一般の目的信託とは違う規律を設けるべきではないかということも,この場で議論が出たと思います。そういう意味では,いろいろな観点で,目的信託の中で,公益を目的とするということに着目した特則を設けるということは,あり得るのだろうと思います。   ただ,全く別の3類型的なものまでを考えるという意見は多分なかったので,あくまで目的信託の特則というぐらいの位置付けでしょうけれども,しかし,それを設ける余地というのはあっていいと思います。もちろん,新井委員御懸念のように,脱法的なものにならないようにという配慮も必要ですけれども,そういうことも配慮しながら特則を設けるという議論はなお残っているというふうに私は理解しております。 ○中田部会長 ほかに関連する御意見はございますか。 ○沖野幹事 内容を確認させていただきたいのですけれども,認可との関係では,また後ほどある話かもしれませんが,説明資料に言及してもよろしいですか。 ○中田部会長 はい,ゴシックについて御審議いただく上での御言及ということですね。 ○沖野幹事 はい,その関係で。   参考資料6の13ページの「もっとも」という6行目ですね。この提案には,「公益を目的とするが行政庁の認可を受けない受益者の定めのない信託を一律に無効とはしない」という点を明らかにする意味があるとされております。したがいまして,行政庁の認可を受けずに,第11章の規定を使って公益目的の信託を行うということは可能であろう。少なくとも直ちに無効にはならない。そうしたときに,不認可処分を受けた信託について,(注2)の考え方により,第11章の規定の適用のある信託だけれども,公益の場合は幾つかの特則が働く,受託者要件ですとか存続期間ですとかといったときに,それはやはり公益で用いるからということだとしますと,認可の手続をとらなくとも,公益目的で使う場合には,同様にその特則が働くと考えるのが素直なようにも思われます。   一方,新井委員のお考えは,この特則が妥当するのは,飽くまで認可の申請を経たものなので,そういう一段階を採らないものは認めない,逆に言うと,本当は認可を受けるつもりはないけれども,そのルートを形式的にだけ採ることで潜脱するというお考えだと思うのですけれども,その点が,特則を設けるというときの射程の問題としてあるようにも思われまして,認可処分,認可について,不認可処分を受けたものについてだけの特則なのか,それとも,公益目的で用いる場合には妥当し得るということなのか。その点も明らかにしていただくと,お考えの違いが鮮明になるのではないかと思っております。   私個人は,趣旨は公益目的だからというところにあって,一旦認可の手続を経たから,しかし不認可だったということが根拠ではないように思われまして,そうすると,最初から認可の手続を経ないというような場合にも,その特則は妥当するのかなというふうに考えていたものですから,そうでないということであれば,それはそれで明らかにしていただくと有用かと思います。 ○中田部会長 この点は,何度か議論していただきまして,それで,公益信託としての認可を受けない目的信託であっても,公益を目的とする事務を行うことはできる,しかし,それについて,新たなカテゴリーというか類型を設けるということにまでは,一致した御意見にはなっていなかったのではないかと思います。それを前提とした上で,深山委員から,認可を受けられなかった場合について,何らかの特則を置いてはどうかという,限定的にされた上での御意見があり,それに対して道垣内委員から反論がありというのが,これまでの議論の経過だったと思いますけれども,沖野幹事としては,三つ目の類型を設けるべきだという御意見でしょうか。 ○沖野幹事 いえ。三つ目の類型をわざわざ,特別目的信託ですとか,そういうふうに設けて,全てを作り出すということは適切ではないというふうに考えており,私自身は,特則自体も余り適切ではないのではないかというふうに,基本的には考えているわけなのですが,ただ,若干の特則を設けるというものは,第3カテゴリーを作るというタイプとは違うのかなというふうに考えていたものですから,何らかの特則を設ける,ここに掲げられているのは1,2,3ですから,三つぐらいでしょうか。私自身は消極的ではありますが,第3カテゴリーを設けるまでのことはしないことから,特則を幾つかは置くという考え方を当然に排除するわけではないと考えていたものですから。   しかし,今の御説明ですと,飽くまで認可,不認可処分を受けたものについてのみ妥当する特則だという前提であるということが確認できれば,それはそれで結構です。 ○中田部会長 これまでの様々な御議論を集約した結果,今,このような形になっているということだと思います。それに対して,更にまた戻って,認可を受けられなかったことを要件としないで特則を設けるということですと,これまた新たな御提案になろうかと思うのですけれども。 ○沖野幹事 そのつもりはありません。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。 ○沖野幹事 はい。 ○中田部会長 それでは,関連する御意見が更にございましたら,頂きたいと思います。 ○平川委員 私は,この(注2)というのは不要であるというふうに,むしろ考える方なのですけれども,設けるべきであるという考え方があるという程度にとどめて,それが実現されることがないことを強く願うものでありまして,やはり公益認可を受けられなかったような,何といいますか,準公益と称して,それを公益を標榜して,むしろ詐欺の温床になるというふうに考えますので,そのような制度は絶対に設けるべきではないと考えます。 ○道垣内委員 中間試案としての内容としては,これで私は異存はありませんが,沖野幹事のお話に関連して,不認可だけれども公益目的であるという場合を特別扱いするためには,不認可に理由を付けなければいけないのですよね。公益目的であることは認められるが,ほかの要件がないから,というようなかたちの不認可処分を前提にしなければいけないことになりますね。そうしないと公益目的であると言って認可申請をして,それが不認可になったときも,でも公益目的であることはたしかなのだというのは,本人が言っているだけかもしれない。この点は指摘しておきたいと思います。 ○中田部会長 ほかに,いかがでしょうか。 ○深山委員 触発されて,少し言いたくなってしまったのですけれども,不認可というのにも,いろいろな場合があると思います。この間,これだけ議論して,いろいろな基準を設けてきたわけですが,それを全部クリアすれば,認可が受けられますよという仕組みですから,やろうとしている目的は非常に,公益というにふさわしい立派な目的だという場合であっても,例えば,担い手である受託者が何らかの要件を欠くとか,あるいは財産が乏しいとか,やろうとしていることは立派であっても,あるいは公益というにふさわしくても,別な要件で切れるということは,少なくとも論理的にはあるし,現実的にもあり得るのだと思うのです。   ですから,平川委員が言うように,そんなものは世の中にあってはいけないというようなものも,それはあるかもしれませんけれども,不認可になったものが,すべてそういう評価を受けるものでは決してないだろうというふうに思うのですね。   そういう意味で,そもそも公益性自体に問題があれば,それは公益と勝手に称しているだけだということにすぎず,おっしゃるとおりだと思いますけれども,そうではなく,結果として不認可になった信託というようなものもあるのではないかと思いますし,そうだとしたら,それを目的信託として活かす道というのは,あっていいのではないかなというふうに考えております。 ○中田部会長 ほかに,よろしいでしょうか。 ○明渡関係官 今の関係でございますけれども,公益法人の認定の場合,不認定とする場合には,不認定理由は記載します。ただし,それ以外の要件を全て満たしているかというと,そうとまでは言い切れない。よく分からない部分が残っていたとしても,明らかにこの要件を満たさないというようなことがあれば,それを理由として不認定とすることがあります。したがいまして,認定書,答申書,若しくは最後の結論だけを見た場合に,そこの公益性があるかどうかというの,それは書いていない,表に出ていないというようなことは多々あります。   そういった意味で,道垣内委員がおっしゃったように,公益性があるというのは自分が思っているだけというような事態が生じることは,十分考えられるというふうなことに思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   では,この辺りで,事務当局の方からお願いします。 ○中辻幹事 もう既に沖野幹事とのやりとりの間に部会長の方でまとめていただいたとおりなのですけれども,元々,深山委員,それから,小野委員からも御支持のあった(注2)ですので,今の時点でゴシックから落とすのはよろしくなかろうというように感じます。   一つ付け加えますと,私どもは目的信託を悪者とは全く思っていなくて,目的信託の制度を使って当事者が公益でも共益でも私益でも自由に活動するというのは,あってしかるべきだと思っています。   ただ,公益と共益ないしは私益の間にどのように境目を作るかというのは非常に難しくて,やはり目的が公益であることを明確化する手立ては行政庁の認可しかなかろうというのが,今の部会の到達点なのだろうと思います。そうしますと,目的信託の中で公益を目的とするが行政庁の認可を受けていないもの一般について,存続期間とか,委託者の関与の度合いとか,受託者要件もそうですけれども,私益目的や共益目的の目的信託と別の規律を設けるのはなかなか難しいということになろうかと考えます。「たたき台(1)」の時点では,行政庁に公益信託の認可を申請することが予定されている場合と,認可の申請を予定していない場合に分けて考えてみたわけですけれども,それも,以前道垣内委員から御指摘ありましたような問題があり難しい。神田委員もその二分法には疑義があるとおっしゃっておられました。ただ,不認可の場面に限定してではありますが,公益信託の認可を受けられなくても目的信託として有効にやっていきたいという真摯な思いを持つ方がいらっしゃったような場合にまで,一律に無効とするのは不合理だと考えていて,その部分は深山委員のお考えと一致するように感じます。実をいえば,そこは(注1)のような解釈論でおそらく対処できると思っているのですけれども,今はそうではないという,現行公益信託法2条の解釈として,行政庁の許可がなければ公益を目的とする目的信託は無効であるという解釈がございますので,そうではなくなりますよ,公益目的で目的信託を使うことはできますし不認可処分を受けた場合でもその信託を生かすことは可能であるということを明らかにしておいた方が良い,そのためにゴシック本文に掲げておこうというのが,今回の資料の考え方でございます。 ○中田部会長 当初,新井委員が問題提起をされまして,また議論が根本に戻って,様々な御意見を頂きましたけれども,御発言がありました深山委員,あるいはお名前が出ました小野委員は,やはりこの(注2)は,このような形で維持すべきであろうという御意見かと存じます。また,(注2)の特則の内容については,様々あり得ることですので,今の段階では,広く意見を聴くという趣旨で残すということかなと思っておりますが,新井委員,そういうことでよろしいでしょうか。 ○新井委員 はい,それで結構です。私としては内容をきちんと確認をしたかったのですが,十分確認できましたので,パブリックコメントに付す内容としてはこれで結構だと思います。 ○中田部会長 ありがとうございます。   ほかに,この点に関して御意見がないようでしたら。小幡委員,お願いします。 ○小幡委員 このゴシック全体で,意見というわけではないのですが,1点確認ですが,今も(注)のことがありましたが,裁判所と行政庁との関係として,裁判所が決めてから更に行政庁の認可を得るか,それとも,裁判所が結論を出す前に行政庁に聞くことにするかということについて,2か所ぐらいでしたか,第15の1のウの(注),それと,第13の3の(注)ですかね。その(注)の意味合いですが,これでパブリックコメントに掛けるので,一応もう一つの考え方もあり得るので付記しておいて,広く皆さんの意見を聞くという趣旨であって,これに対して,甲案,乙案となっているのは両論併記という意味で異なる,(注)は,一応これで提案するが,こういう考え方もある,そういうふうに理解すればよいかという確認です。   その趣旨は,説明資料のところを読めば,結構書いてあると思ったのですが,念のための確認です。 ○中田部会長 いかがでしょうか。 ○中辻幹事 小幡委員の御理解のとおりです。甲案,乙案は,重要な論点でそれぞれの案を支持する複数の委員幹事の意見が部会で示されていることから両論併記としております。甲案は乙案に比べて許可審査基準を含む現行制度に近いというだけで甲案乙案に優劣はありません。一方,(注)は,ゴシックの本文を支持する意見がこの部会では比較的多数なのだけれども,少数とはいえ委員幹事の一部の方からご提案された,ゴシック本文に反対する考え方や別の視点からの考え方を示しているものでございます。   この中間試案では,角括弧を使っているところもございます。例えば受託者の辞任の論点で,その辞任の要件をやむを得ない事由とするか正当な理由とするかについてそれぞれ支持する意見があるのですが,そのような論点については,ゴチックで甲案乙案を両論併記するほど重要な論点ではないけれども,両案併記という意味で角括弧を使っているということでございます。   事務局としては,中間試案をパブコメに付すに際してできるだけ国民がその内容を容易に理解でき意見を述べやすいようにしたいと考えまして,少数意見の委員幹事には申し訳ない思いも持ちつつも,甲乙の両論併記や角括弧の部分はたたき台の時からできるだけ減らすように努力してきました。そして,前回の最後にも,甲乙の分布を見た場合に,比較的分布が多かった案への一本化について御意見をいただきまして,今回の17の1(2),17の2ではゴチック本文の提案を一つにしております。しかし,本文の提案とは反対の考え方や別の視点からの考え方も提示して広く国民の意見を求めることも重要ですし,飽くまで中間試案の段階ですので,その趣旨で(注)に色々な考え方を示しているということになります。なお,18の4,受益者の定めのある信託から公益信託への変更につきましては,事務局としては,部会では乙案支持の方が多かったと認識しているのですけれども,前回吉谷委員から乙案は制度を複雑化するだけで効率化などのメリットもなく反対だが,甲乙両案併記についてまでは反対しないという御意見があり,部会長のまとめで甲乙両案併記を維持しているのですが,受託者の範囲や自己信託の方法による公益信託の設定の可否のような論点とは少し色合いが違うかもしれません。 ○中田部会長 小幡委員,よろしいでしょうか。 ○小幡委員 はい。 ○中田部会長 ほかに。 ○吉谷委員 (注)が甲案乙案として提案されたが,少数な意見だった場合が多いというのは,そのとおりかと思いますのですけれども,第19の2の既存の公益信託の取扱いのところの(注)は,確かに案にはなりませんでしたけれども,補足説明にあるとおり,どのようなやり方がいいのかというのを引き続き検討を要するという事項であるというふうな位置付けで,(注)になっているということだと思いますので,両論併記とならなかった(注)とは,ちょっと違うのではないかというふうに考えております。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○長谷川幹事 今の点に関連しまして,20ページの同じく第19の2の(1)の(注)のところで,「届出等」ということで,簡易な移行手続について御説明を加えていただき,どうもありがとうございました。   その上で,2点質問がございます。前回の議論では,旧法適用をそのまま残す考え方を何らかの形で残すべきとの意見が,私も含め,複数の方から出されたかと思いますけれども,これを落とされています。残していただきたいというのが私の意見ではありますが,この段階でございますし,中間試案でもございますので,そこまで強く申しあげることはいたしませんけれども,落としておられる理由を教えていただきたいというのが1点目でございます。   もう1点は,関連いたしますけれども,補足説明の87ページの(2)の一番最後から2行目において,前回私も言及させていただきまして,「会社法の特例有限会社の制度も参考にしつつ」と書いていただいています。この「参考にしつつ」の意味合いを,もしあれば教えていただければと存じます。   以上2点,質問でございます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   補足説明につきましては,後ほどまた時間を設けて,御意見を頂戴しようと思いますので,今の第1点について,現時点ではお答えいただきたいと思います。 ○中辻幹事 第19の2の,いわゆる経過措置的な部分についてのゴシックなのですけれども,これも前回,確か道垣内委員がおっしゃいましたとおり,まずは新たな制度の枠組みを固めるのが先決で,それを踏まえて経過措置は考えられるべきものでして,ただ,この部会では当初から今動いている公益信託は改正の際にどうなるのだろうという関心が強かったところなので,当初から論点として挙げておりましたし,中間試案でも掲げております。   その上で,長谷川幹事から前回御意見をいただきましたように,平成18年の新信託法制定のときには新法信託と旧法信託が併存する形がとられていたわけですけれども,旧法信託的に,旧制度の公益信託を主務官庁制のまま残す,あるいは,みなしというのでしょうか,新たな制度下における公益信託として残すということについては,林幹事や山田委員,新井委員から反対する意見があり,私の把握が間違っていたら申し訳ないのですが,現在の公益信託をそのまま何の手続も経ずに残すことは部会の大勢としてはなっていなかったのではなかろうかと。   そこで,飽くまで現時点の暫定的な案ではありますし,既存の公益信託についても新たな公益信託法の適用対象とした上で,移行の認可よりも(注)で書きました届出制にする方が支持が多いのかもしれませんけれども,それらの手続を経ることにより新法が適用される公益信託になるという提案をさせていただいているということでございます。 ○中田部会長 これまでの検討の結果が,(注)も含めて,こういう形になっているかと存じます。パブリックコメントに付する際に,このような表現でやろうというのが原案だと思いますが,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。   ほかに,全体を通じて御意見ございませんでしょうか。 ○樋口委員 また例によって,あえて一言ということなのですけれども,これでパブリックコメントに出されますね。これを読んで分かるかというと,一番肝心なことが分からない。   日本では,総論とか各論という区別がきちんとあるわけだから,そういうの大好きですよね。だから,総論として,今回の改正は何を,目的は書いてあるのですけれども,従前の公益信託はこういうもので,それに対して,こういうことを狙って,正に狙いというのですかね。それで,こういうところが変更されているのですという,何か総論的なまとめが1ページあれば,その上で,具体的にはこういうことが提案されていますというような形で提案してくださる方が,ずっと分かりやすいと思うのですけれども,そういうことというのは今までも,こういう法制審議会ではやったことがないものなのでしょうか。 ○中辻幹事 私もそれほど法制審のベテランではないので,過去の例をすべて知っているわけではありませんけれども,樋口委員がおっしゃったことはよく分かりますし重要な御指摘であると思います。最近,中間試案がそろそろまとまるということでマスコミの取材を受けるのですね。そのときに,中間試案の総論的な要点,ポイントとして説明している点が3点あり,それらの点については。役所用語でいわゆるポンチ絵みたいのがあると良いと思いまして,今説明のために作っているのです。   そのポイントの3点をご紹介しますと,一つ目は,公益信託の信託事務及び信託財産の拡大です。現在は許可審査基準等により信託事務は助成型に制限され,信託財産は金銭に限定されているわけですが,不動産や美術品を信託財産として美術品の展示や学生寮の運営などを可能にして,もっと公益信託を広く使えるようにしましょうと。   二つ目は,受託者の拡大です。現在は,これも事実上信託銀行に限定されているわけですが,信託事務及び信託財産の拡大に合わせた形で,公益の増進のために活動する受託者の担い手を拡大する必要がありますねと。   三つ目は,主務官庁制の廃止です。もう10年も前に,公益法人の世界では主務官庁制が廃止されており,統一的な認定行政庁が存在しているということなので,公益信託も主務官庁による許可や監督を廃止し,公益信託内部のガバナンスを充実させた上で行政庁の関与はそれを補充するような仕組みにすると。   ということで,中間試案の補足説明の冒頭にはこれら3点のポイントを記載することを予定しておりますし,国民の皆様に試案のポイントが分かっていただけるような広報活動をしたいと考えております。 ○中田部会長 中間試案自体としては,この中身を提示し,説明資料の中で若干,今の改正の趣旨のようなことも入っているかと思いますけれども,しかし,それでもなお分かりにくいかもしれないから,更に今,中辻幹事からおっしゃっていただいたような,分かりやすく制度改正の趣旨を明らかにする広報活動をしていただくということかと存じます。   樋口委員,そういうことでよろしいでしょうか。 ○樋口委員 はい。 ○中田部会長 ありがとうございます。   ほかに,全体を通じて,ございますでしょうか。もしないようでしたら,様々な御意見を頂戴しましたけれども,ゴシック自体については,この原案でパブリックコメントの手続に付すということでよろしかろうというのが,現時点での部会の皆様の御意見と存じます。ただ,本日は,更に時間がございますので,この後,参考資料6についても,御意見や御指摘を頂きたいと存じます。   そこで,参考資料6についての意見交換の中で,やはりこれは中間試案のゴシックの部分を手直しした方がいいという部分がもしも見付かれば,またそれは必要に応じて検討するということにする,その余地を残しておきたいと存じますので,最終的な御決定は後ほどにしたいと思います。   ということで,現時点では取りあえず,この形でということで御了解いただけたものと承りました。   それでは,参考資料6につきまして,事務当局からの説明を伺うというところまでを休憩の前にしたいと思います。 ○福崎関係官 それでは,御説明申し上げます。   参考資料6のタイトルは,「中間試案(案)の説明資料」としておりますが,この部会で決定いただくことになる中間試案を公表し,パブリックコメントに付すに当たり,中間試案とともに公表される補足説明の内容も意識して,事務局で作成したものでございます。   参考資料6の内容については,これまでの部会の審議において,委員,幹事の皆様から頂戴いたしました御意見や御指摘等を踏まえ,中間試案の提案及び(注)とした考え方の理由や問題点につき,公平に記載することを心掛けております。   本部会の冒頭でも御説明させていただきましたが,中間試案の補足説明は,民事局参事官室の責任において作成するものでございまして,参考資料6は,その暫定版という位置付けになりますが,委員,幹事の皆様から,もし本日御意見等を頂くことができましたら,それを補足説明にも反映させたいと考え,提示させていただきました。   なお,参考資料6は非常に大部なものとなっておりますので,事務当局からの説明は,部会資料45の中で,本文の提案とはしないものの,広く国民の意見を公平に聞く観点から,パブリックコメントに付すに際して,その理由及び問題点が明らかになるように努めたいとしていた箇所を中心にさせていただきます。   まず,参考資料6の第3の2,不認可処分を受けた信託の効力の補足説明でございます。   部会において,公益信託としての不認可処分を受けた信託について,その信託行為に当該信託を有効とする旨の信託行為の定めがあるときに成立する受益者の定めのない信託については,信託法第11章を適用するものの,一定の事項につき,信託法第11章の特則を設けるべきである旨の御意見がございまして,その中間試案では,(注)の考え方として示していることを踏まえ,その特則の具体例等を示しつつ,問題点についての説明をしております。   次に,第9の2,「公益信託の受託者の行う信託事務に関する基準」の補足説明でございます。   部会において,受託者が行う信託事務が当該公益信託の目的の達成のために必要な信託事務であることを認可基準とした上で,その信託事務が収益を伴うことは許容されるという中間試案第9の2の提案の内容をより明らかにすべきである旨の指摘がありましたことを踏まえ,部会資料38でも御提示いたしました,想定される公益信託事務の例の表に記載した美術館の運営や学生寮の運営の具体例を用いて,公益信託の目的の達成のために直接又は間接的に必要な信託事務であれば許容され,公益信託の目的の達成のために必要性を欠く信託事務は許容されないことを分かりやすく説明しようとしております。   次に,第13,「公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任」の補足説明では,部会において,受託者の辞任・解任に行政庁の認可を必要とする旨の代案の理由として挙げられていた事項を踏まえ,受託者の解任を,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたこと,その他重要な事由があるときに該当するとして,裁判所の命令がされた場合に限定するのでは,受託者の能力に不足が見られ,かつ,よりふさわしい新受託者候補が存在するような場合においても,裁判所が受託者を解任することはないであろうから,公益信託事務を停滞させるおそれがあるとの問題点の指摘があることの説明をしております。   次に,第14,「公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」の補足説明でございます。   新たな公益信託における信託管理人の役割の重要性に触れた上で,部会において,受託者と信託管理人の位置付けの違いや,信託管理人の解任の申立権を受託者に与える考え方があることも明らかにすべきである旨の指摘がされていたことを踏まえまして,受託者に信託管理人の解任申立権を付与することが相当であるとの考え方を示しつつ,信託管理人の申立権を監督される立場の受託者に与えることは矛盾するとの考え方もあることなどから,引き続き検討を要するという説明をしております。   次に,第15,「公益信託の変更,併合及び分割」でございます。   まず,第15の1(1)ウの(注)の補足説明では,部会において,行政庁による変更の認可を必要とせず,裁判所が変更を命ずる前に,変更後の信託が公益信託の成立の認可基準を充足するか否かについて,行政庁に意見を聴く仕組みを採用すべきであるとの意見がございまして,それを中間試案では(注)の考え方として示していることを踏まえ,その考え方には,当事者が行政庁と裁判所の両方に行く手間を省けるという利点がある一方で,裁判所の変更命令の判断が困難となる可能性があることなどから,かえって当事者に過度な負担を強いるおそれや,公益信託の変更が遅延するなどの問題点について説明しております。   また,第15の3の(注)の補足説明では,部会において,裁判所による公益信託の併合・分割命令を認めるべきであるという意見があり,それを中間試案では(注)の考え方として示していることを踏まえ,その考え方には,信託の変更と同じく,信託関係人の合意が調わない場合にも,裁判所という第三者のチェックを経て,信託の併合・分割をすることが可能となるという利点がある一方で,裁判所の私的自治への介入の程度が大きいなどの問題について説明しております。   次に,第16,「公益信託の終了」です。   第16の5,「公益信託の成立の認可の取消しによる終了」の(注)の補足説明では,部会において,公益信託の成立の認可を取り消された信託は原則として終了するが,信託行為に認可の取消し後は受益者の定めのない信託として存続させる旨の定めがあるときは,当該信託は受益者の定めのない信託として存続できるものとするという意見があり,それを中間試案では(注)の考え方として示していることを踏まえ,その考え方には委託者の意思を尊重することができるという利点がある一方で,公益信託の軽量・軽装備のメリットを害するおそれがあるなどの問題点について説明しております。   最後に,第17,「公益信託の終了時の残余財産の処理」です。   第17の1(2)の(注)の補足説明では,部会において,公益信託の成立後の寄附等により信託財産に加わった信託財産の帰属権利者については,中間試案の本文に掲げたものを指定するものでなければならないとした上で,公益信託の成立時に拠出された信託財産の帰属権利者については,委託者等の私人を指定することを許容する旨の意見がございまして,それを中間試案では(注)の考え方としていることを踏まえ,その考え方の意図には合理性が認められる一方で,税制優遇を伴うことが困難となるおそれがあることなどの問題点について説明しております。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ただいま,部分的にではありますけれども,パブリックコメントに付するに際して,丁寧に説明するという内容について御説明を頂きました。   この後,この全体について,皆様から御意見,御質問等を頂戴したいと思いますが,ちょっと中途半端な時間になりますので,少し早いですけれども,ここで休憩を15分間入れさせていただきます。3時5分から再開したいと思います。           (休     憩) ○中田部会長 時間が来ましたので再開します。   参考資料につきまして,先ほど事務当局から説明をしていただきましたが,これにつきましても,全体を三つに区切って御意見を頂くことにしたいと思います。先ほどと同じように,第1から第7,第8から第14,第15から第19までの区分といたします。   まず,第1から第7までにつきまして,御意見を頂きたいと思います。   なお,御意見を頂きますときに,第幾つの何,というのに加えまして,もしできましたら,何ページということまでおっしゃっていただくと参照しやすいかと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○道垣内委員 16ページの(2)の4行目の「子ども食堂」というのには,何らかの説明が必要なのではないかという気がします。おもちゃの「子ども銀行」というのとは違いますよね。それだけです。 ○中田部会長 ありがとうございます。 ○神作幹事 11ページの第3の2の(注2)で,(注2)を含めパブリックコメントに付することについては,私も異存ございません。実際に活発に議論され,先ほども議論の対象になっていたところでございます。けれども,説明の方で,具体的には13ページの3の2段落目ですが,特則の例として挙がっているものは,どちらかといえば規制を,今の規律よりも緩和する方向のものだけが挙げられているように思うのです。規律を強化するといったら変ですけれども,例えば,受託者の資格を緩和した場合には,公益財団法人においても一定のガバナンスの仕組みが用意されていることとの均衡からしても,信託は,もしそのようなことがないとすると,受益者も存在しない中,ガバナンスの確保が十分なのかという疑問が生じ得ると思います。目的信託にかかる規律の一部がもし緩和されるということになると,何かそれを補うガバナンスの強化にかかる規律を考えるということが当然出てくるべきだと思いますので,13ページの説明の例を挙げるのであれば,ガバナンスの確保を担保する規律について考える方向の例も挙げていただいた方がよろしいように思いました。 ○中田部会長 ただいまのは,13ページの3の第2パラグラフについての御意見でございますね。 ○神作幹事 はい。 ○中田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。 ○新井委員 第4,「公益信託の受託者」のところで,ページでいうと17ページ,(注1)と(注2)について発言したいと思います。   (注1)については,17ページの(4)のところに説明がなされています。ここの説明の最後から2行目ですけれども,「受託者が従前の運営委員会等と同様の機能を有する機関を任意的に設けることが否定されるものではない。」については,私も全面的に賛成で,法律上,運営委員会等を必置とはしないけれども,任意に設けることはできるという規定については大変結構だと思います。ただ,この書き方,つまり「受託者が従前の運営委員会等と同様の機能を有する機関」ということの意味について質問があります。   というのは,どういうことかというと,従前の運営委員会についての説明は,その上にありまして,「信託財産の処分について当該公益信託の目的に関し助言を行う」ということになっています。しかし,ここの例にもありますように,美術館とか学生寮の運営を目的とする事業型も許容するということになると,運営委員会の在り方も,もう少し広くなることがあると思います。現に私の経験でも,運営委員会というのは,信託財産の処分よりも,もう少し広い助言をしていることがあります。   ですから,任意的に運営委員会等を設置するということはそのままにした上で,従前の運営委員会と同様の機能を有する機関というのは,少し狭過ぎるのではないかという印象を持ちます。したがって,少しここのところの文章を修正していただいた方がよろしいのかなというのが,まず第1点目の意見です。   2点目が,今度は(注2)で,その下,やはり17ページになります。ここでは,「共同受託者は相互にその業務執行を監視する義務を負う」となっているのですが,監視する義務を負うというのは,ちょっと私は強過ぎるように思います。それはどうしてかというと,信託法79条は,共同受託の場合,信託財産は合有であると規定しておりますけれども,旧信託法と異なって,受託者には相互的監視義務というのは負わせていないと私は理解しているからです。ですから,義務というのは,少し強過ぎるように思いますので,ここは,もう少し柔らかい表現にしていただいた方が適切ではないかなと思います。   以上2点です。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ただいま,3人の委員,幹事から御指摘いただきましたが,これらについて,もし何かありましたらお願いします。 ○中辻幹事 子ども食堂は,説明を少し加えさせていただければと思います。   次に,神作幹事から御指摘がございました(注2)の特則の例示なのですけれども,おっしゃるとおり,今の案に書かれているのは緩める方向の特則しかないのですが,以前,深山委員からも御指摘頂いていたように,信託管理人の必置とか,ガバナンスを強める方向の特則も考えられますので,特則の例を加えさせて頂こうと思います。   それから,新井委員より御指摘ございました運営委員会につきましては,新井委員の御指摘のとおり,従前の助成型の公益信託であれば,従前の運営委員会で良いのだろうと思います。けれども,今回は新たに事業型というのも想定していることから,その場合には,運営委員会のやることについても少し変わってくる余地があると私も思いますので,表現を修正することも含めて考えたいと思います。   そして,(注2)の方ですね。信託法セミナーという本でも共同受託者の問題が取り上げられていて,職務分掌の定めがあるような場合を除き共同受託の場合には基本的に相互監視義務があるように思うのですけれども,旧信託法にあった共同受託者の合手的行動義務が新信託法ではなくなったということを踏まえての新井委員の御発言だったと思いますので,少しこちらの方でも考えさせていただきます。 ○中田部会長 ほかに,第1から第7につきまして,御意見を頂きたいと思います。   それでは,取りあえず先に進ませていただきます。   第8から第14までの間で,御意見,御質問等ございましたら,お出しいただきたいと思います。大部のものですので,なかなか出にくいかもしれませんが,先に進んだ上で,またお気付きの点をと思いますが。 ○神作幹事 31ページの第9について申し上げます。「一方」と始まる段落でございますけれども,その5行目辺りなのですけれども,「しかし,公益信託の受託者が収益事業を行うことを許容する場合には,受託者がその収益事業を遂行するために金銭の借入れや売買等の取引を恒常的に行うことから」,会計が非常に複雑になり,そうすると公益信託のメリットが損なわれるという趣旨の記述がございます。他方,17ページのところでは,例えば美術館や学生寮の運営を目的とする事業型も許容するということになっておりまして,本来の公益目的の事業であれば複雑なことはできるけれども,収益事業としてだと複雑なことはできないというのは,説明が必要なのではないかと思いました。   それから,ついでにもう1点よろしいでしょうか。33ページの表でございますけれども,32ページの文章の説明と併せて読みますと,収益を伴う信託事務が上記②,すなわち,目的達成のために間接的に必要な信託事務として許容されるのか,それとも,目的達成のための必要性を欠く信託事務として許容されないかは,行政庁が公益信託の成立の認可の時点で,計画書等に基づいて判断すると,記載されております。   ちょっと細かな御質問になりますけれども,例えば②で,美術館内でミュージアムショップやカフェを営業することは,間接的に必要な信託事務だとされています。では,例えば,そこで売っている商品をインターネットで販売することなどは,一体どのように考えるのしょうか。例をお示しいただいているのは,イメージしやすく大変結構なことであると思います。しかし,先ほどのような例で,インターネットで販売することはいいですよということになると,ではなぜ,ほかのお店で売ることはできるのか,依然として限界が不明確であるように思います。   ②と③について,もう少し詳しく説明をしないと,一体どこまでが許容されて,②と③の境界でございますけれども,なかなかちょっと分かりづらいという面が依然として残るように思います。特に32ページで,行政庁が一体何を基準に,例えば今申し上げたような,インターネットで販売するというような例について,どのように判断することになるのか,教えていただければ幸いでございます。 ○中田部会長 ただいまの御質問について,いかがでしょうか。 ○中辻幹事 具体例を挙げていただいて大変有り難かったですけれども,インターネットでミュージアムショップにおいて売られるような美術品の販売をすることは,表の②と③,どちらに入るのかという御質問については,今の事務局の整理でお答えしますと,公益,すなわち不特定多数人の利益の増進に寄与するものであるならば,公益信託の目的達成のために直接的又は間接的に必要な信託事務ということになりますので,インターネットでの美術品の販売により美術の普及啓発という公益目的に資するのであれば,②の方に寄せて考えることができるように思います。ただ,逆に,何でも②に寄せてしまうというのもいかがなものかと,それが公益目的に資するとは言えないという事例も,個別の申請では出てくるような気が致しました。   ついでに申し上げますと,以前,神作幹事や神田委員から御指摘を受けた点を踏まえて,今回の表では,助成型の①の枠に,信託財産である金銭の投資運用を入れたほか,事業型の①の枠に,展示品入替えのための美術品の売却や購入,一時的な金銭の借入れ,いわゆるファイナンスも当該信託の目的の達成のために直接必要な信託事務として入れているのですけれども,これらが直接必要なのか間接的に必要なのかは,截然と分けられない面もございまして,何でも①の枠に入れれば良いのかといえば,そうでもなかろうと,個別具体の事案に応じて,③の枠に入れるべき例もあるように考えています。 ○中田部会長 個別的な判断というのは,恐らく行政庁において,具体的な詰めをしていくことになるのだろうと思います。公益法人のときも,一定のガイドラインのようなものが出て,その上で,更に個別については,各委員会や審議会で判断していって,積み重ねがあるのだろうと思いますが,ここで挙げる例として,どのようなものが適切かという観点から,今の神作幹事の御指摘も踏まえて,説明を追加するかどうかということを含めて御検討いただくことになろうと思います。   神作幹事の第1点の御質問ですけれども,つまり,31ページには,関連しない収益事業を否定する理由として複雑化すると書いてあるのに対して,17ページで,本体の側においては事業型のものも可能であるということで,必ずしも両者の平仄が合っていないのではないか,説明をもう少し付加すべきではないかというのが第1点だったと思いますが,その点についてはいかがでしょうか。 ○中辻幹事 失礼いたしました。   神作幹事の御指摘のとおり,確かに現在の資料では若干,両者で平仄が合っていないところがございます。公益法人と公益信託を全く同じような制度とする必要はないという共通の認識のもとで,この部会は進んできたと理解しておりますが,公益法人では,公益目的事業も収益事業もでき、その行う事業を公益目的事業と収益事業のいずれに位置付けて行政庁に申請するかは,法人の側で選ぶことができます。そして,公益信託でも公益法人で言うところの収益事業を行えるようにするならば,公益法人並びの複雑な制度が必要であるということになるのだけれども,公益信託では公益法人で言うところの公益目的事業,こちらでいえば公益信託事務を行えるようにすれば足りるのであって,収益事業を行えるようにする必要はないと事務局としては考えているところです。   ただ,そうであるからといって逆に公益信託事務を現在のまま助成型に限定してしまうことも将来的な利用の拡大のためには適切でなく,公益信託事務がある程度収益を伴うことも許容した方が良いと考えていて,そこを手当てするためには,公益法人の仕組みと同じように,事業型には第9の会計的な認可基準,収支相償や遊休財産の基準を必要な範囲で取り入れるけれども,それを超えた複雑な制度にする必要はないし,むしろ相当でないという考え方を取っているのですが,今のような考え方がきちんと伝わるように補足説明の表現を工夫したいと思います。 ○中田部会長 今の御説明でよろしいでしょうか。 ○神作幹事 はい。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○小幡委員 今の関連ですが,例えば33ページの表で,③の「寮生と関係のない一般の宿泊客に対する学生寮の部屋の賃貸」ですが,例えば,たまたまちょっと寮生が入らなくて,空いているので,空いているのは無駄なので,一時的に貸すということはできるのではないかとも思うのですが,今,公益認定との関係,公益認定法人の収益事業と公益事業との関係の説明がありましたが,あちらは結局,公益認定の法人は,そもそも収益事業ができるので,ただ,それを公益事業として申請するか,収益事業として申請するか,いずれにしても,どのような収益事業でもできるので,公序良俗に反するようなのは駄目ですが,収益で儲けてよいという考え方で作っているのですが,今度のこれは,目的達成のために間接的にせよ,少し資すればよいということで,やってよいか,いけないかという,非常に,シビアに決まってくるわけです。公益認定法人の場合は,いずれにしてもできるので,どちらかというと,事業の区分けだけの問題なのですが,こちらはそもそもやっていけないということになると,かなり厳しいことになるので,今まで公益認定法人で考えていた収益事業とか,そういう分類で判断すると,やや狭くなりすぎるのではないかという感じがしているのです。   ですから,この③のところのも,必ずしも必要性を欠くことにならないかもしれないとも思うので,ここに入れてしまうと,どうですかね,少し狭いような感じが私自身はしていますが。 ○中田部会長 そうしますと,具体例について,特に留学生向けの学生寮の運営についての③は,若干異論があり得るだろうということでしょうか。 ○小幡委員 初めから,ここを別枠にして,ほかの貸出し方をするというのは駄目なのですが。余りいろいろ書き過ぎると複雑になりますが,おそらく,今年は寮生が半年間は入らないだろうという可能性はあると思うのです。運用を柔軟にすることを認めればよいと思うのですけれども。 ○中田部会長 具体的な運用をどのようにするかという問題と,パブリックコメントに付するに当たって,イメージを分かりやすく抱いていただくというのと,若干ずれるところがあるかもしれませんけれども,今の御指摘を受けて,更に御検討いただくということになろうかと思いますが,いかがでしょうか。 ○中辻幹事 貴重な御指摘をありがとうございます。   今の学生寮の空き部屋の話でいえば,ここの③でイメージしているのは,別に空いている,空いていないに関係なく,その学生寮の1階部分を恒常的に寮生とは関係ない人たちに貸し出すような事例を想定していたものでして,小幡委員が言われたような,たまたま出た空き部屋を貸すような事例であれば,③の枠に入らない場合もあるように思います。   ここでは,例えば,寮生の親御さんとか友達が遠方から訪れてきた。その場合に,その人たちを泊めて良いのかと聞かれれば,それは泊めて良いということを表現したかったものでして,どこまでこの表に書き込むかは難しいのですけれども,小幡委員御指摘のとおり,そもそも収益事業を行うことが認められていて,公益目的事業と収益事業の区別がそれほど問題にならない公益法人とは違いまして,公益信託事務についてはそれが収益を伴うものであっても膨らみを持って行政庁に審査していただくことが肝要だと考えていますので,それがより明確に伝わるような補足説明の表現にできないか検討してみたいと思います。 ○中田部会長 よろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ○小幡委員 もう1点,第15からのところと,少し重なるのですが,先ほど私が(注)のところで申し上げたところで,裁判所と行政庁の役割分担のところですが,57ページから58ページのところと,それから,第15に入ってしまいますが,64ページのところなのですが,裁判所が全部引き受けてしまって,裁判所から行政庁に意見を聞けば足りるという,その(注)のところで利点があるとありますが,確かに,当事者が裁判所だけに出せばよいという利点があって,「もっとも」というところなのですが,「不服申立てとの関係も含めて理論的な整理が必要であるという問題点の指摘」,これは多分,整理というよりは,裁判所がやることになってしまいますので,行政庁が直接出てこないから,そこは整理も何もなくて,直接行政庁に不服申立てはできないということに決まってくると思うのですが,ただ,それを裁判所に対してやるのがおかしいと,そういう意味なのでしょうか。   それで,もちろんそちらの責任の文書ですから,このまま残してもよろしいとは思いますが,もう一つ,ここでは書きにくいと思うのですが,行政庁に後で行く場合には,行政庁に行政手続法の適用があるので,標準処理期間とか,いつまでに答えなければいけないとか,そういう縛りで行きますが,こういうふうに,裁判所から行政庁に聞くというと,なかなか行政庁から返事が来なかったりすると,ずるずる長くなったりしますよね。こういうシステムは,少しそういうリスクがあるので,もし行政庁に直接行けば,それはそれで,余り遅かったら,なぜ返事が来ないのかとか,直接私人から不服を言いやすいので,そのような切り離したメリットというのもあるとは思うのですね。   ただ,これは,こういう文書では書きにくい話,実態の話なので,つまり,かえって遅くなるというリスクはあるかもしれない。裁判所にお願いして,裁判所から行政庁に問い合わせたけれども,行政庁のほうからなかなか返事が来ないという,そういう感じですよね。   そういうことが,実際上の運用ではあるかもしれないので,(注)ではない方がよいのかと思ってはいるのですが,そこまで書くと,行政がサボるということを前提にしているようになるので,書きにくいですが,そういうリスクもありうるかと思っています。 ○中田部会長 ありがとうございました。   57ページから58ページにかけてと64ページにかけて,共通する問題を御指摘いただいたわけですが,どこまで書けるかという問題があるかもしれませんけれども,今の御意見について,いかがでしょうか。 ○中辻幹事 小幡委員がおっしゃったとおり,裁判所が一元的に行政庁の意見を聞いて判断するということであれば,それは行政処分ではないので,取消訴訟を提起することは考えられなくて,裁判所の処分に対する不服申立てということになると思います。 ○小幡委員 理論的な整理というと,何を言っているのかがちょっと…… ○中辻幹事 はい。そこで,では,その裁判所の処分に対する不服申立の手続の中で,なぜ裁判所が判断したことではない,行政庁が判断したことの当否を審査することができるのだろうか,その理由がよく分からないという意味で,理論的な問題点と書かせていただいているのですが,御指摘を踏まえてもう少し敷衍して書いてみます。   あと,行政の方に裁判所が意見を求めることによって,かえって手続が遅れるという懸念も確かにあるように思いつつ,標準審査期間のように,裁判所が行政庁に対し期限までの回答を確保するための方法はあり得るように感じました。 ○中田部会長 ありがとうございました。   既に15以降にも入っておりますので,それも含めて御意見を頂ければと存じます。 ○沖野幹事 長谷川委員からの保留になっていた質問事項があったのではないでしょうか。 ○中田部会長 ありがとうございます。長谷川委員からの御質問で,先ほど保留になっていた,87ページのところですが,念のためにもう一度,長谷川幹事からお出しくださいますか。 ○長谷川幹事 87ページの一番下のパラグラフの2の前の行でございますが,「会社法の特例有限会社の制度も参考にしつつ引き続き検討」としていただいております。この,「参考にしつつ」という意味合いを教えていただきたいという質問でございました。 ○中辻幹事 これは,前回でしたか,長谷川幹事の方から御指摘があった特例有限会社の制度を,確かに参考になると思いまして掲げさせて頂いたものでございます。   会社法は,平成17年に商法から独立する大きな改正がされたのですが,そのときに,有限会社法も,会社法に統合されました。その際に,従前わが国で株式会社に次ぐ位置付けを占めていた有限会社をできるだけ生かしていこうという趣旨で特例有限会社の制度が設けられ,特例有限会社については公益法人のように5年の移行期間の実現が設けられているわけではなく,これからも続いていく,ある意味,旧法信託に近い仕組みがございます。   このような先例も参考とした上で,どのような経過措置がより良いものなのか,引き続き検討していくという意味で挙げさせていただいております。 ○中田部会長 今の御説明でよろしいでしょうか。 ○長谷川幹事 はい。 ○中田部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。第15以降だけでなく,全体を通じてでも結構でございますので,お気付きの点などありましたら,御指摘いただければと存じます。 ○林幹事 先ほどの33ページの図について,修正というか,コメントさせていただけたらと思います。下の③に書かれているものについては,私も個人的には,②より上にあたる場合があり得て,この整理が本当にいいのかという問題がありうることは,従前から申し上げていたところです。一方,この資料を作られるにあたって,整理に御苦労されていて,こうなっているという部分もあるので,それも踏まえると,非常に悩ましいとは思っています。   ただ,先ほど中辻幹事が言われたとおり,必要な範囲で収益事業ができて,それは個別具体的な事案において判断するというところが重要なところだと思います。ですから,②か③かは,事案に応じて変わってくるし,あるいは解釈や状況によって区分が違ってくる可能性があるものだと思います。そういう理解の下に,補足説明のためにこの図が作られている,そういうふうにこの図を読むべきだということを申し上げたいと思います。だから,そういう意味で,この図は暫定的に説明のために書いていただいているのであって,将来的には,これに拘束されるのではなくて,先ほど言われた個別事案に応じて,必要性の中で判断していくから,状況に応じて変化していく可能性のあるものだと,その前提で作られるのだということを申し上げたいと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。   先ほどの小幡委員の御発言とも共通すると思いますけれども,ここに挙げている例というのは,これが絶対的に固定のものではなくて,個別具体的な判断を要するけれども,差し当たって挙げるとすればこういうものだというような,何か留保というか,説明のようなものがあればという御趣旨かと思います。そういったことを工夫していただくということでよろしいでしょうか。   では,そのように御意見を反映していただくということにしたいと思います。   ほかに,全体を通じて,ございませんでしょうか。もしないようでしたら,参考資料6についての御意見を頂くというテーマは,この程度にしたいと思います。   そこで,部会資料45「公益信託法に関する見直しの中間試案(案)」に戻りたいと思います。   先ほど暫定的に,ゴシック部分について,御了解を頂いたところでございますけれども,ただいまの参考資料6に関する意見交換の結果として,現段階で,ゴシックの部分に何か修正をすべき点がありますでしょうか。特にないということでよろしいでしょうか。   それでは,ないようですので,部会資料45につきまして,皆様から御了解を頂けたものと承りました。今後,事務当局において,本日の審議の結果を踏まえまして,更に確認等の作業を進めていただくことになります。作業に当たりましては,字句の用法など内容にわたらない細部の修正もあるかもしれませんけれども,それにつきましては,部会長と事務当局に御一任を頂くということで,本日の会議をもちまして,この部会として,中間試案の取りまとめを行ったという取扱いにさせていただければと存じますが,よろしいでしょうか。 ○一同 異議なし。 ○中田部会長 ありがとうございます。   それでは,本日の審議をもちまして,公益信託法の見直しに関する中間試案の取りまとめが行われたということにさせていただきます。   次に,参考資料6ですが,本日様々な御意見をお出しいただきました。それらを踏まえて,事務当局において,中間試案に付する補足説明を作成されることになります。これは事務当局として,その責任で作成されるものですけれども,お出しいただきました様々な御意見が補足説明に適切に反映されるように,事務当局に対して,私からもお願いを申し上げておきたいと思います。このような取扱いでよろしいでしょうか。   ありがとうございました。   最後に,次回の日程等について,事務当局から説明をしてもらいます。 ○中辻幹事 今後につきましては,皆様から頂いた御指摘を踏まえて,本日取りまとめていただきました中間試案を完成した上で,事務局の方で作成する補足説明とともに,中間試案をパブリックコメントの手続に付すことを予定しております。   中間試案のパブリックコメントの期間ですけれども,現在のところ,平成30年の年明け1月9日から2月19日までの期間を予定しております。そこでお寄せいただきました一般からの御意見も踏まえまして,3月から,また信託法部会の会議を開催させていただければと思っております。   次回の日程は,平成30年3月20日火曜日の午後1時半から午後5時半まで,場所は法務省ですが,まだ部屋は決まっておりませんので,決まり次第御連絡いたします。   3月以降の部会では,中間試案のパブリックコメントの結果を踏まえて公益信託法の見直しに関する要綱案の取りまとめに向けた御審議をいただくことを予定しております。また,2月中旬には法制審議会の総会が開催されることになっており,その場で,信託法部会の審議状況の報告として,中間試案について中田部会長から総会に報告していただくことを予定しております。   法制審議会の総会で,この案件について御指摘がありますれば,それも踏まえつつ,来年3月以降の御審議に向けた準備を進めてまいります。 ○中田部会長 ほかに何かございますでしょうか。   それでは,本日の審議はこれで終了といたします。本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。 -了-

法制審議会信託法部会 第46回会議 議事録






法制審議会信託法部会
第46回会議 議事録







第1 日 時  平成29年11月7日(火)  自 午後1時30分
                       至 午後5時32分

第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室

第3 議 題    公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台の検討 

第4 議 事 (次のとおり)

議        事
○中田部会長 予定した時刻がまいりましたので,法制審議会信託法部会の第46回会議を開会いたします。
  本日は御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
  本日は,小野瀬委員,小幡委員,能見委員,平川委員,岡田幹事,堂園幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席です。
  まず,本日の会議資料の確認等を,事務当局からお願いします。
○中辻幹事 お手元の資料について確認いただければと存じます。
  事前に部会資料44「公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台(2)」を送付いたしました。また,本日の配布資料として,今回御欠席の平川委員からいただいた「公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台(2)への意見」と題する書面がございます。平川委員の意見書の内容については,関連の箇所で適宜ご紹介させていただきます。
  もしこれらの資料がお手元にない方がいらっしゃいましたら,お申し付けください。
  よろしいでしょうか。
  それから,次回,12月12日の部会ですけれども,できますれば,中間試案の取りまとめに至ることを目標としておりまして,その後,年明けから来年2月中旬頃までの間,中間試案をパブリックコメントに付して,広く国民の意見をお聞きしたいと考えております。
 また,パブコメの後は,信託法部会を再開し,パブコメで頂いた意見も踏まえて,公益信託法の見直しに関する要綱案の作成に向かっていくことを予定しておりますことから,平成30年3月から7月までの日程を確保させていただきました。いずれも第3火曜日ということになります。それ以降の日程につきましては,もう少し先の時点で調整させていただきたいと存じます。
  皆様には,御多忙のところ誠に恐縮ですが,何とぞよろしくお願いいたします。
○中田部会長 本日は,部会資料44「公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台(2)」について御審議いただきます。部会資料44は,部会資料43「中間試案のたたき台(1)」について,9月と10月の2回の部会で皆様から頂きました御意見や御指摘を踏まえて,事務当局の方で修正されたものだということです。
  本日は,部会資料44の全部について御審議いただくことを予定しております。
  審議の進め方ですが,全体を三つに分けることを考えております。すなわち,第1から第7,第8から第11,そして第12から第19の三つです。分量が多いのですけれども,何とぞよろしく御協力をお願いいたします。
  なお,本日は中間試案としてどのような形でパブリックコメントの手続に付すのが適切かという観点から,ゴシック体の部分の内容や表現の当否を中心に御意見を賜われればと思います。
  途中,午後3時半頃,切りのよいところで休憩を挟むことを考えています。
  それでは,本日の審議に入ります。
  まず,第1から第7までの部分について,事務当局から説明してもらいます。
○福崎関係官 それでは,御説明申し上げます。
  今回は,部会資料43の本文の提案から変更している箇所についてのみ,その変更の理由等も含めて御説明させていただきます。
  なお,今回の部会資料の枠囲みの中に記載した部会資料43の本文は,今回の部会資料で変更があったものであり,今回の部会資料で変更がないものについては,第2の2及び3のように枠囲みの中で略と記載するか,第7のように枠囲み自体付けないことにしております。また,第3の1以降では,本文の前に項目名を付ける変更をしておりますが,これは,できるだけ見出しを付けたほうが分かりやすいという趣旨で付けたものでございます。
  まず,「第1 新公益信託法の目的」について御説明いたします。
  第44回会議では,部会資料43の第1の提案のうち,角括弧を付した「公益の増進への寄与を目的とする他の法律と相まって」の部分について,これを積極的に必要とする意見もありましたが,同じく公益の増進を目的とする公益法人認定法及びNPO法にはそのような表現がないことを踏まえて,角括弧の部分を不要とする意見の方が多かったことに加え,あえて上記部分についてパブリックコメントで当否を問うまでの必要性は高くないと考えられることから,本部会資料第1の本文の提案では上記部分を削除しております。
  次に,第2の「1 公益信託の定義」について御説明いたします。
  第44回会議では,部会資料43の第2の1の提案に対し,公益信託の定義としては「公益を目的とする」ことを「受益者の定めのない信託」よりも先に置くべきである旨の意見がありました。
  確かに,公益信託について信託法上の規律と別の規律を定めることの意義は,それが行政庁による審査を経て「公益を目的とする」ことなどの要件を満たすことが公に認められることであることを前提として,当該信託に20年の期間制限などの信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託の規定が適用されず,名称が保護されるなどの公的な保護を受けられる地位を設定することにあると考えられます。また,旧信託法第67条は,公益信託を「公益ヲ目的トスル信託」として定義していました。これらを踏まえ,本部会資料第2の1の本文の提案においては,公益信託の定義を「公益を目的とする」を「受益者の定めのない」よりも先に置くものに変更しております。
  なお,第44回会議では,第2の2の「公益信託事務」と信託法上の「信託事務」との区別を明確にすべきである旨の指摘がありましたが,「公益信託事務」は公益法人認定法第2条第4号の「公益目的事業」と同様の概念であり,受託者が行う個別の信託事務を束ねたものを想定しております。
  次に,第3の「2 不認可処分を受けた信託の効力」について御説明いたします。
  第44回会議では,部会資料43の第3の2,後段の甲案を支持する意見が多かったことから,本部会資料第3の2の本文の提案は,部会資料43の第3の2後段の甲案に一本化し,部会資料43の第3の2後段の乙案は,(注2)に示すこととしております。そして,この修正に伴い,受益者の定めのない信託の目的が公益であるか,私益又は共益であるかは截然と区別できない面があることに鑑み,本部会資料第3の2の本文の提案では,部会資料43の第3の2前段で角括弧を付した「公益を目的とする」という部分を削除しております。
  また,第44回会議では,部会資料43の第3の2後段の乙案について,信託法第11章の規定を全面的に適用しないというのではなく,第11章の特則を設けるという提案にしたほうが良く,乙案の別の規定がどのようなものであるのかを補足説明等で例示すべきであるとの指摘がありました。
  そこで,本部会資料第3の2(注2)では,不認可処分を受けた受益者の定めのない信託についても,信託法第11章の規定を適用するが,一定の事項につき信託法第11章の特則を設けるべきであるとの考え方を示しています。上記の特則の例としては,受託者の資格に関する信託法附則第3項の受託者要件を適用しないことなどが考えられます。
  もっとも,行政庁から不認可処分を受けた受益者の定めのない信託について,受託者要件の不適用等の追加的な効果を発生させるということは,当該信託の受託者による公益信託の成立の認可の申請により,当該信託が認可要件を満たしていなくとも,本来は信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託に付与されていない効果を発生させることを意味するものであり,そのような取扱いは合理性に疑いがあると考えられます。したがって,不認可処分を受けた受益者の定めのない信託について,一定の事項につき,信託法第11章の特則を設けることについては,慎重な検討を要するものと考えられます。
  さらに,第44回会議において,部会資料43の第3の3の提案は不要であるとの指摘があり,確かに当事者が将来的に公益信託の成立の認可申請を行う予定を有しているか否かの区別をすることは困難であることからすると,部会資料43の第3の2の規定と第3の3の規定を併存させることは相当でないと考えられることなどから,本部会資料第3の本文の提案からは,部会資料43の第3の3の提案を削除しております。
  次に,第4の「2 公益信託の受託者の権限,義務及び責任」について御説明いたします。
  本部会資料第4の2の本文の提案について,部会資料43の第4の2の提案から大きな内容の変更はありません。もっとも,公益信託は受益者の定めがない点で,受益者の定めがある信託とは異なるものであり,公益信託の受託者の権限,義務及び責任を,受益者の定めのある信託の受託者の権限,義務及び責任と全く同一とすることは予定していないことから,そのことを表現するために,本部会資料第4の2(1)の本文の提案では,部会資料43の第4の2の提案の「同一」という文言を「同様」という文言に改めております。
  また,受益者の定めのある信託の受託者の善管注意義務の軽減が信託法第29条第2項で可能とされているのと異なり,公益信託の受託者の善管注意義務を信託行為で軽減することができないようにするか否かの論点は,上記受託者の権限も含めた論点とは異なる論点であるため,本部会資料第4の2の本文(1),(2)の提案は,部会資料43の第4の2の提案を2文に分割した表現に改めております。
  次に,第5の「2 公益信託の信託管理人の資格」について御説明いたします。
  部会資料43の第5の2(1)の提案では,「委託者又は受託者若しくはこれらの者の親族,使用人等の委託者又は受託者と特別の関係を有する者に該当しないこと」と記載していましたが,その該当者が委託者,受託者,委託者と特別の関係を有する者及び受託者と特別の関係を有する者の4者であることが分かりにくいことから,本部会資料第5の2(1)の本文の提案では,受託者とその関係者をア,委託者とその関係者をイにそれぞれ整理して記載することとしました。なお,受託者とその関係者及び委託者が信託管理人になることを認めないとすることは当然でありますが,委託者の関係者が信託管理人になることの可否については,引き続き検討を要します。
  また,部会資料43の第5の2の提案では,(注)の考え方を第5の2(1)の直後に記載していましたが,(注)の考え方は第5の2(1)から(4)の資格に加えて,「学識,経験及び信用」を信託管理人の資格として要求するものであるため,本部会資料第5の2の(4)の直後に記載することとしました。
  さらに,第5の「3 公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任」について,第44回会議では,部会資料43の第5の3の提案について特段の異論はなかったことから,本部会資料第5の3の本文の提案に大きな内容の変更はありません。ただし,公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任を受益者の定めのある信託の信託管理人の権限,義務及び責任と全く同一とすることは予定していないことから,そのことを表現するために,本部会資料第5の3(1)の本文の提案では,部会資料43の第5の3の提案の「同一」という文言を「同様」という文言に改めております。また,当該論点と信託管理人の権限の信託行為による制限の可否は異なる論点であることから,本文第5の3(1),(2)の提案は,部会資料43の第5の3の提案を2文に分割した表現に改めております。
  次に,第6の「1 公益信託の委託者の権限」について御説明いたします。
  第44回会議では,部会資料43の第6の1の提案に対し,公益信託の場合は内部ガバナンスの担い手として委託者が存在しなくても成り立つような仕組みが必要であるとして,委託者には原則として利害関係人の権限を持たせることとし,信託行為の定めによって受益者の定めのある信託の委託者と同一の権限を持たせることができるようにすべきであるという意見がありました。
  確かに公益信託の委託者に過大な権限を持たせ,公益信託事務の実施に支障が生じることは,公益信託の運営上の観点からも,新たな公益信託が税制優遇を受けることを視野に入れる観点からも望ましいものではないため,信託行為により公益信託の委託者に受益者の定めのある信託の委託者の権限よりも増加した権限を与える必要はないと考えられます。そのため,公益信託の委託者の権限,義務及び責任を,受益者の定めのある信託の委託者の権限,義務及び責任と全く同一にすることは予定しておりません。他方,信託法上の利害関係人は信託財産に対する債権者等であり,委託者と利害関係人は立場を異にするものでありますし,本部会資料第6の1の本文の提案は,任意規定として提案するものであって,仮に公益信託の運営上の観点から委託者の権限を制限する必要があるのであれば,そのような定めを信託行為に置けば足りることに照らすと,公益信託の委託者の権限を原則として受益者の定めのある信託の利害関係人の権限とすることは相当でないと考えられます。
  以上の検討を踏まえ,本部会資料第6の1の本文の提案では,部会資料43の第6の1の提案のうち,公益信託の委託者の行使できる権限は,受益者の定めのある信託の委託者の権限と「同様」と修正した上で,信託行為による「増減」を「制限」に変更しております。
  「第7 行政庁」につきましては変更点がないので,御説明を省略させていただきます。
○中田部会長 それでは,第1から第7までの部分について,御意見を頂きたいと思います。
  どこからでも結構でございますので,御自由に御発言をお願いいたします。
○深山委員 「第3 公益信託の効力の発生」の「2 不認可処分を受けた信託の効力」のところについて,御意見を申し上げたいと思います。
  ここについては,部会資料43のときには甲案,乙案という二つの案が提示されておりましたが,乙案が(注2)というふうに(注)に落とされております。その理由は,今も御説明がありましたように,第44回会議で甲案を支持する意見が多かったということが書かれておりますが,私の印象は必ずしもそういう印象ではなかったので,ここは議事録を読み返したのですけれども,かなりいろいろな意見が出ておりました。
  その中で,私と小野委員は明確に乙案を支持する意見を表明しております。恐らく林幹事も,発言はないけれども,2人が言ったからあえて言わなかったのだと思います。これに対して,甲案を支持することをはっきり発言された委員,幹事の方は,新井委員,それから,能見委員,沖野幹事はそういうことをおっしゃっておりました。ただ,沖野幹事は,御自身の考えを甲案とおっしゃりつつも,ここはいろいろ議論が分かれているので,甲案,乙案と併記をしてパブコメに付すべきだということをおっしゃっております。能見委員も,自身の考えを述べつつも,甲案,乙案,両論を併記することを前提に,それに関連した御意見をおっしゃっております。
  そうしますと,必ずしも甲案多数という取りまとめは異なるのではないかなということを思い,ここは,従来の甲案,乙案という形に戻していただきたいというのが,私の意見であります。
  その点とも関連をするのですが,1点質問をさせていただきたいと思います。
  今回の部会資料の補足説明,7ページの第2パラグラフの「もっとも」以下のところについて,ちょっと趣旨をもう少し解説いただきたいと思います。
  恐らくここの部分が,乙案から(注2)に落ちた実質的な理由なのかなと思いながら読んでいたので,先ほどの点も関連するわけですけれども,ここで,乙案のような考え方を採ったときに,そのような取扱いは合理性に疑いがあるというようなことが書かれております。この合理性に疑いがあるという意味合いをもう少し,私の理解が不十分というか,理解できていないので教えていただきたいというのが質問なのですが,私自身は,むしろ甲案のようにストレートに目的信託の規定を単純に適用したときに,逆にやや不合理な面が出るのではないかなと考えております。
  といいますのは,不認可処分を受けた信託において,受託者要件がどうなるのか,現行信託法の附則3項に定める法人についての5,000万円の純資産という要件がどうなるのかということは非常に大きな問題で,もちろんこの附則3項がそのまま残るかどうかももちろん決まってはいないと思いますし,残ったとしたときに,今の括弧書きの公益目的を除くという点の読み方もいろいろ見解があると思います。そこにも関係しますけれども,例えば,このような不認可処分を受けた信託については,これはもう公益信託ではなく目的信託であるとして,この受託者要件がかかってくるのだということになると,受託者が5,000万円以上の資産を有していないと,公益信託の認定を受けられなかっただけではなくて,目的信託としても不適法ということになって,全く信託として残る道が閉ざされてしまいます。
  もちろん5,000万円以上持っていれば残る余地はあるわけですが,そういうことを考えますと,事実上,非常に狭き門になってしまうというようなことが,むしろこういう信託を当然には無効としないという,ここの部会のコンセンサスからすると,やや不合理ではないかと感じるところです。
  そんなこともありますので,ちょっとこの補足説明に書かれている合理性に疑いがあるというところについて,もう少し教えていただければと思います。
○中田部会長 ただ今の第3の2について,関連する御意見がございましたらお出しいただきまして,その上で,事務当局の方からコメントを頂きたいと思いますが。
○林幹事 深山委員と基本的には同じ,従前から同じ意見なのですが,若干補足させていただきます。認可を受けられないときに,その受けられない根拠が,公益目的なのだけれども認可を受けられないという場合も想定されます。それから,附則3項の関係ですが,いろいろな理解の仕方もあるところかと思いますけれども,要するに,学術,技芸,慈善,公益の場合は適用されないという理解もあるという前提の下に,また一方では,認可を受けられないからといって直ちに無効とはしないという前提の下に今まで議論をしてきて,あるいはそれに併せて附則の改正も視野に入れてというような御提案だったかと思います。そうしたときに,先ほど言われたような従前の乙案である,この(注)のような考え方も,一つ有力な考え方だと思っています。前回の委員幹事の方々もそのような,少なくとも甲案,乙案でパブリックコメントに付すというようなことだったかと思いますので,私も,従前のように甲案,乙案のように戻していただくのがいいのではないかと思っています。
○道垣内委員 甲案,乙案の二つを載せるということに対して,特に反対をするというつもりはないのですが,バランス上,一言申し上げます。
  つまり,深山委員は不合理だとおっしゃったのですが,それでは,最初から公益認定を受けられそうもないような定めでやれば,純資産5,000万円という目的信託の要件は潜脱できるということになるわけですよね。したがって,私は,現在本文として残っている見解は十分に合理的だと思います。しかしながら,二つの意見を並べてパブコメに付すということにすべきであるということであれば,別にそれに反対するものではありませんが,議事録上,不合理であるという言葉だけが残るというのはいかがかと存じますので,一言いたしました。
○中田部会長 ほかにございますでしょうか。
○吉谷委員 どちらに賛成かということについて,前回意見を表明しておりませんでしたけれども,それは従来同様の意見だったからです。前回の乙案は,提案しようということであれば,法制審議会として中間試案を出すのであれば,もう少し具体的な形にまで詰めた上でないと,ちょっと不親切ではないのかと思いますので,(注)の程度にしておいて,そこで自由に意見を述べていただくのがよろしいのではないかと考えております。
○中田部会長 それでは,この辺りで事務当局の方からコメントいただきたいと思います。
○中辻幹事 まず,深山委員から第3の2の論点に関する第44回の部会での意見分布について御指摘がありました。今回もそうですが,第44回では,平川委員からも,部会資料43の第3の2の甲案に賛成という御意見を頂きました。また,その回,道垣内委員は御欠席でしたけれども,メールで甲案に賛成の御意見を頂いたことを事務局から紹介いたしました。それらも踏まえて,部会の御意見としては甲案支持が多かったということを今回の部会資料44に記載したものでございます。その上で,深山委員の御理解のとおり,今回第3の2の乙案が(注2)に落ちた実質的な理由は,部会資料44の7ページの「もっとも」以下で書きました理論的な問題が大きいということがございます。
  もちろん,第44回では,乙案を支持する意見も複数ありましたし,また乙案のいう別の規定の具体化の必要性を示唆する意見もございましたので,それにお答えするという意味で,(注2)の補足説明で別の規定,特則を例示しております。けれども,部会資料43で第3の3の論点としておりました「認可の申請を予定していない受益者の定めのない信託」の取扱いも含めて考えますと,第3の2の従前の乙案というのを検討すればするほど,なかなか実現困難な面があると。ちょっと私が真面目過ぎるのかもしれませんけれども,甲,乙両案併記のままパブコメにかけて,余り乙案支持の方に期待させておいて結局駄目でしたというのでは,かえって申し訳ないという思いから,(注2)に落としたということでございます。
  特に,不認可処分を受けたことによって,何らかの追加的な効果が発生する,元々目的信託としては効力を生じなかったものが効力を生じることになるというのは,解決困難な問題であるように思います。そこが解決できるということであれば良いのですが,私どもとしても,乙案を何とか生かせないかということで考えた末に,今このような提案の仕方になっておるということは,是非御理解いただければと思います。
  結局のところ,林幹事もおっしゃっておりましたけれども,現在の目的信託の5,000万円の受託者要件というのが厳し過ぎることが問題の本質であるような気がし,もし乙案の趣旨を推していくのであれば,むしろ目的信託の受託者要件について考え直すというのが筋なのようにも思います。
  また,現在の附則第3項では,「受益者の定めのない信託(学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他公益を目的とするものを除く。)」と規定されていて,公益目的の受益者の定めのない信託にも5,000万円の受託者要件が課されることになっており,部会資料43の第3の2の乙案を採用するのであれば,不認可処分を受けた公益目的の受益者の定めのない信託について特則を設けるために改正が必要ですし,その時の甲案すなわち今回の第3の2の本文の提案を採用したとしても,附則第3項は,公益を目的とするものとして行政庁の認可を受けたものを除くというような文言に改める必要がございます。ですから,いずれにせよ附則第3項は改正する必要はあるのですが,そこは,従前の甲,乙,どちらを採るかで,改正後の文言は変わってくるということでございます。 
○中田部会長 今,御説明いただきましたが,この点について。
○深山委員 説明は説明で分かりました。
  その上で,乙案について,受託者要件のところは,正に今,中辻幹事がおっしゃったように,元々の附則第3項の問題もありますし,私は別にそこにこだわっているということでもなくて,むしろ,道垣内委員がおっしゃったことはもっともだとは思いつつ,逆に,例えば,信託管理人を必置にするとか,むしろ通常の目的信託よりも厳しい要件という方向も含めての特則ということで考えています。潜脱するということを許すのはもちろんよろしくないのですが,いろいろな角度から特則が必要なのではないかなという気がしております。つまり,受託者要件の点に限らずですね。
  そういう意味で,前回というか前々回ですかね,中辻幹事の方では,そういうことを踏まえて表現を検討しますとおっしゃっていたので,期待していたところ,注に落ちちゃったので,ちょっと今がっくりしているので,つい意見を申し上げたということです。要は,こういう認可を受けられなかった信託の中には,もちろんおよそ好ましくないものもあれば,それなりに社会的に価値のあるものではあるけれども,何らかの理由で認可を受けられなかったものもあり得るというときに,当然には無効にしない道を残すという,元々のこの議論の出発点からすると,場合によっては,厳しい要件を課してでも,なお信託として残るという道を残すべきではないかというのが,私の根本的な考え方です。ですから,受託者要件は,そのまま5,000万円が残ってもいいのかもしれませんが,何らかの単純な目的信託とは違う特則を設けるべきかという問題は,そういう観点から検討すべきではないかという点を,ちょっと補足させていただきます。
○中田部会長 ほかに,この点についてございますでしょうか。
  7ページの先ほど御指摘のあった「もっとも」というパラグラフについては,ただ今の中辻幹事からの御説明で,説明としては一応は理解したということで,その上で,中辻幹事からの御発言もありました,むしろその目的信託の要件の厳重さというのが問題の本質ではないかということが出てきたのかもしれません。これは,また今後,それはそれとして検討するということになろうかと思います。
  その上で,甲案,乙案を復活するという御意見と,これはこれでいいのではないかという御意見と両方あるわけですけれども,乙案に盛り込まれた考え方自体は,(注2)というところで生かされているということであって,かつ,先ほどの「もっとも」以下の説明が一応はあり得るということであれば,これでいってはどうかというのが事務当局の考えだと思うのですけれども,いかがでしょうか。
  取りあえず,今日,ここまで御意見いただいたということで,更にまた検討いたしますけれども,今のところは,必ずしも甲案,乙案,両案にしろということが大多数という感じでもないかなと,今伺って感じました。
  今の点でも結構でございますし,ほかの点でも,第1から第7までお出しいただければと存じますが。
○中辻幹事 では,平川委員の意見書の紹介を,ここでさせていただきたいと思います。
  第1から第7までの論点につきましては,概ね賛成の御意見を頂いております。
  ただし,第2の「1 公益信託の定義」については,現在のたたき台とは別の表現が望ましいのではないか。具体的には,平川委員の意見書1ページの「改正案」として,「公益を目的とする受益者の定めのない信託」という現在の中間試案のたたき台の提案を,単に「公益を目的とする信託」とし,「受益者の定めのない」という部分を削除することが相当ではないかという御意見を頂いております。
○中田部会長 この第2の1の定義について,平川委員からゴシックの部分についての修正案をお出しいただいているわけですけれども,いかがでしょうか。
○樋口委員 ちょっと,議事録に残そうということですね,これから申し上げることは。
  この第2というところ,ずっと昔から,もしかしたらこの場でも申し上げたことがあるのかもしれないのですけれども,今の1を,平川委員と関連するということで発言させていただきますけれども,この1がまず公益信託の定義になっていて,2で公益信託事務の定義になっているわけですね。普通,公益信託の定義と事務の定義は一緒ではないかなとか思うのですけれども,わざわざこうやって二つ書いてあって,上の方には,この目的とする,今の受益者の定めのない信託という話,公益を目的とする受益者の定めのない信託で,次の方は,こういう公益に関する種類のものであって,不特定かつ多数の者の利益で,不特定の者というのは,受益者の定めのないというのに重なると思うのですけれども,多数のっていうのを加えてあるのですね。
  それで,私は,たまたまですが,アメリカでこういう公益団体のリステートメントというのを作っていて,その定義を見ることがあって,それは,これよりちょっと項目は多かったりしますけれども,こういう公益の種類が書いてありますね,そのリステートメントには何が公益かがはっきり書いてあるのです。昔からの歴史のある概念だから,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教というのは。でも,アメリカの場合プラスアルファがありますけれども,何であれこういう,正にこれは公益ですよというようなものがある。それに加えているのは,インデフェニットベネフィシャリーズ(不特定の受益者)という話だけなのですね。だから,つまり,デフェニット(特定)であれば,普通,私益信託になりますから,特定の受益者ということになればね。だから,特定の受益者はいない。だから不特定のというのは,私は別に構わない,受益者の定めのないというのは構わないと思うのですけれども,更に「かつ多数」というのを付けたのは解せない。だから一番初めに申し上げる必要すらないのですけれども,日本の伝統では,私が知っているあらゆる学説であれ,それからほかの公益法人法制であれ,不特定かつ多数というのが公益だという,確信というのが何かあって,しかし,その結果どうなっているかというと,この多数というものが入っている分だけ限定解釈になっているわけです。
  それで,場合によっては,例えば私が出身の高校の卒業生で大学へ行く人に奨学金を与えたい,特定の高校ですか,これは公益ではないですねって,多数とは言えないからですね。不特定ではあると思うのですけれどもね,誰になるかは分からないから。そういう狭い解釈というのが,日本では通用してきて,一体多数っていうのはどういうことなのですかという,定義としては誠に不明確な,しかも,どこからやってきたのだろうというのがよく分からない。もしかしたら,ヨーロッパ大陸法の伝統では,こういうような解釈がなされているのかもしれないのですけれども,英米の世界ではないので,どうしてこれが入っているのかなというのを,ずっと疑問に思っているということなのです。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかに,この第2についていかがでしょうか。
○小野委員 前回話題になった藤谷前関係官の論文に関してですが,公益法人法には,祭祀,宗教が入っていないが,宗教法人法がカバーしているからだというような議論がありました。祭祀,宗教が絶対入っちゃいかんという強い信念を持っているわけではないのですが,パラレルな議論からしても,宗教法人法があるからということもあって,公益信託においてもなくてもよいという議論もあってもよいのかなと思って,発言させていただきました。
  弁護士会での意見では,法人ではなくて信託だから,宗教法人法と公益法人の議論とは異なるという趣旨ではないかという議論もありましたけれども,この点について,事務局の御意見を賜われればと思います。
○中田部会長 祭祀,宗教を入れるかどうかというのは,どこかの段階で確か少し御審議いただいたかと思いますけれども,民法の法人のところには入っているわけですよね。それをどうするかということだと思うのですけれども。
○中辻幹事 今,部会長がおっしゃったとおり,民法第33条の法人の規定には,公益の例示として祭祀,宗教が入っています。そして,その規定の存在を前提とした場合に,法人の方は祭祀,宗教を目的とする宗教法人法があるから公益法人認定法における公益の例示の中に祭祀,宗教を入れなくても良いわけですけれども,信託の方は宗教信託法というのはないので,祭祀,宗教を外してしまうと,信託の方で祭祀,宗教を受け切れない可能性があるように思います。
  祭祀,宗教のために公益信託が利用される場面というのが実際どれほどあるのかというのは,少し疑問が残るところではございますけれども,今申し上げたような理論的な観点から,中間試案における公益信託の定義においては,公益の例示として祭祀,宗教を入れているということでございます。
○神田委員 第2について1点と,もう1点,第3についてもよろしいですか。
  第2については,てにをはで恐縮なのですけれども,前に議論されたかもしれませんし,樋口委員がおっしゃったことともちょっとは関連するのですが,1の定義と2の定義で違いがあって,例えば,1の方は「を目的とする」,2は「に関する」になっていると。それから,2の方は「不特定多数の者の利益の増進に寄与する」となっているのですけれども,これは,あとの第9のときにお伺いすべきことかもしれませんけれども,第9も拝見すると,公益信託というのは,公益信託事務を行うことを目的とする信託ということではないのでしょうか,ということなのですけれども。
  ですから,てにをはとして,1,2と第9との関係を見るとちょっと分かりにくいので,パブリックコメントに付すと,何か予想外の回答が出てくるのではないかということを,やや危惧します。
  それから,第3については,前に申し上げたことで,第3の2なのですけれども,既に信託が存在していて,公益信託の認可申請をして不認可になった場合,これもありだということを補足説明の1で明言していただいているのですけれども,少なくとも,今の第3の2の文章本文では読めないですよね。といいますのは,不認可処分を受けたときから,その効力を生ずると書いてあるものですから。
  ですから,これも,実質は補足説明の1で結構なのですけれども,やはり読めるような本文にしていただいたほうがいいように思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  今,第3についても御意見いただいておりますが,第2,第3について,ほかにいかがでしょうか。
  今までの樋口委員,神田委員からの御意見について,何かございますでしょうか。
○中辻幹事 まず,神田委員の第2についての御意見ですけれども,前々回山本委員から御指摘があった点に関連すると思います。少し第2の1,2の定義がダブりぎみ,また第9の認可基準で公益信託の目的という言葉が出てきますので,整理が必要というのは,そのとおりであると感じます。
  この前山本委員が御指摘になったとおり,公益法人認定法の方を見ると,その認定基準を満たしたものを公益法人とするというような定義付けがされていますので,公益信託も最終的にはそのような条文になるのかもしれません。
  ただ,今のこの中間試案の段階では,公益信託は公益信託として定義をし,公益信託事務を公益法人認定法の公益目的事業と同じような形で定義する,そして更にダブるのですけれども,第9の認可基準でも公益信託の目的について述べておくというのが,いささか重複感はあるものの,このような形でパブリックコメントをかけたほうが読み手にとって分かりやすいのではないかと事務局としては考えているところでございます。
  それから,樋口委員から不特定かつ多数について御指摘がございました。
  おっしゃるとおり,この不特定かつ多数という文言があることによって,公益信託が活用される場面というのが狭くなるというのは望ましくないというように,事務局としても考えております。ただ,既に公益法人認定法あるいはNPO法で,公益を表す具体的な文言として,不特定かつ多数という文言が使われている中で,公益信託の公益についてのみ異なる文言を使うというのもなかなか難しい状況にあるということで,ここは,不特定かつ多数という文言は使うのだけれども,余り限定的に狭く解するべきではないというようなことを,中間試案の補足説明などで示していきたいと感じます。
  それから,神田委員から,第3について御指摘がありました。今回の補足説明に書いた部分は,第44回での神田委員の御示唆を受けて正しく反映できていると思うのですけれども,確かに,今回の第3の2のゴシック本文では,対応しきれていない部分があるように思います。ちょっと引き取って,できるだけ神田委員の御示唆を反映できるように検討しますと,あまり簡単に約束するとまたがっかりさせてしまうかもしれないのであれですけれども,考えてみたいと思います。
○山本委員 今の公益信託の定義の点について以前に発言したのですけれども,恐らく分かりやすさを優先して今回このような形にされたのだろうと,一応理解はしていました。しかし,その際にも申し上げましたように,認可は公益を目的するものとして受けているのではなく,公益事務を行うことを目的とするものであることが認可基準になっているとしますと,確かにこのパプコメを求める段階で,何条の認可を受けた者とするというような,木で鼻をくくったような定義にするのはいかがなものかとは思いますけれども,認可の基準ともう少し整合性のあるような形で提案しておくほうが,混乱が少なくなるのではないかと思います。
  その意味で,神田委員の御指摘に,私も賛成したいと思います。
○中田部会長 では,今頂きました山本委員,あるいはその前の神田委員の御指摘を踏まえて,更に検討していただくということにいたします。
  ほかにいかがでしようか。この第2,第3に限らず,第1から第7までのどこでも結構です。
○道垣内委員 第5の2なのですが,以前の文章ですと,四つのことを書いているというのが分かりにくいので,受託者と委託者とを分けて書こうというのは大変結構なのですが,直していただいた文章を読みましても,最初は理解できませんでした。
  つまり,例えばアで,「受託者又はその親族,使用人等の受託者と特別の関係を有する者」なのですが,今,僕は,分かってから読み始めたのでさり気なく続けて読んでいますけれども,これ,日本語としては,「受託者又はその親族,使用人等の」で切れる可能性というのを十分に持っている文章ではないかなと思います。そうすると,何を言っているのかさっぱり分からないというのが,私の最初の印象だったのですね。
  では,どういうふうにすれば,語の固まりがはっきりするのかというと,「等の」という箇所は「等その他」とすべきではないかなと思います。法制執務的な言葉でパブコメにするには適切ではないという感じもしないではないのですが,何と何とが固まりをなしているのかというのは,そちらの方が分かりやすいのではないかなという気がしました。最初は読んで分からなかったという,その原体験に根差した叫びですね。
○中田部会長 「その親族,使用人その他受託者と」ということですね。ありがとうございました。
  法文がどうなるかということと,適切な意見を出していただくように分かりやすい表現にするというのと,少し違うところがあると思います。その上で,このゴシックの部分をどう書くのか,あるいは補足説明との関係でどう分担するのかと,そんなことだろうと思うのですけれども,更に工夫をしていただこうと思います。
  この点について,今たまたまここに来たわけですけれども,先ほど福崎関係官から,2の(1)のイについて,委託者と特別の関係を有する者が信託管理人になることがいいのか,悪いのかについて検討を要するという御指摘がございました。資料の12ページの3行目から4行目にかけてですけれども,これは,やや実質に関する問いかけですが,もしこの点について御意見ございましたら頂きたいのですけれども。
○吉谷委員 委託者の関係者が信託管理人になるということにつきましては,現在の他の提案と併せて考えますと,委託者の影響力が大きくなり過ぎるという点に問題があると考えておりまして,受託者の解任のところを見ていただくと,委託者と信託管理人で解任できるということになっておりますので,これですと,委託者の関係人が信託管理人になりますと,事実上,委託者が単独で解任できるということに等しくなってしまうと思います。
  これは,委託者が受託者を含む関係者の人事権を握るということになりますので,委託者が信託事務処理に影響力を発揮できるということにつながりやすいと思います。ですので,公益の概念であるとか税の考え方との整合の点で問題があると考えておりますので,その点について,論点として解説等で分かりやすく書いていただけないかなと考えております。
○中田部会長 その部分については,現在のまま変えないほうがよいということでございますね。
○吉谷委員 そうです,はい。
○中田部会長 ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。
○小野委員 当然と言われてしまうかもしれませんが,目的信託前置主義ではなくても,認可を受けることを効力発生条件として信託行為によって信託契約を結んで,受託者であることを明確にした上で申請することもあり得るかと思うのですけれども,当然できますというべきか,逆に,この補足説明の書き方とか全体のトーンからすると,仮に効力発生要件が後だとしても,そういうものは公益信託でない以上は契約自体が目的信託になるとかいう議論もないとは思いますがいかがでしょうか。その方が,誰が委託者で誰が受託者で,信託行為の内容も明らかな感じがするのですけれども,それも許容されているという理解でよろしいかどうか,確認させていただけたらと思います。
○中田部会長 それは,先ほどの「第3 公益信託の効力の発生」のところですね。
○小野委員 そうです。補足説明の部分で,目的信託前置主義又は目的信託が残る場合はそれもありますよ,と書いてあるので,そうではないケースでも,事前に条件付きであれば可能ではないかと思っての発言です。
○中辻幹事 小野委員の御理解のとおりだとは思っておるのですけれども,一応,念のためですが,第3の1の「公益信託の成立の認可」のゴシックで,信託行為プラス行政庁による成立の認可があって初めて公益信託の効力が発生するというのは,信託法第4条の特則であり,行政庁による認可がない以前の信託行為がある状態というのは,言わば公益信託の準備状態という意味で,目的信託の規制はかかってこないという説明を,補足説明の方でしています。
  小野委員がおっしゃられた,行政庁の認可を停止条件として,認可があって初めてその公益信託としてやっていきますよという契約であるならば,それは公益信託の認可があるまでは目的信託としても公益信託としても効力を生じることにはならないというのが今の部会資料の考え方でございます。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
  ほかにいかがでしょうか。
○新井委員 まず,第1点目が,8ページ,第4の「公益信託の受託者」についてです。
  これについては,甲案,乙案とありまして,乙案の下に(注1)というのがあります。ここで,運営委員とか運営委員会について言及していただいているのは,大変いいことではないかと思います。その上で,現状の実務では,運営委員,運営委員会の役割で一番大きなものは,恐らく受給者の選定です。そうすると,ここでの説明ですと,信託財産の処分となっているので,その受給者の選定が信託財産の処分に当たるとも言えるのですが,なかなかその辺の理解が難しいので,信託の処分というのは,もう少し別の言葉に変えるなり,補充していただいたほうがいいのではないかと思います。
  これが第1点目ですが,少し前後してもよろしいでしょうか。
  第2点目ですが,5ページに戻りまして,第3の「公益信託の効力の発生」ということについては,私は,この事務局案でよろしいと思います。それで,乙案をもし支持するパブリックコメントが出てくるとしたら,この(注2)に関していろいろ意見が出てくると思いますので,実質的には,乙案にも十分配慮した立て付けになっているのではないかと理解をしております。
  それと,第3点目が,第2の「公益信託の定義等」です。
  平川委員のこの文書の意見を読ませていただいたのですが,私も,この第2の「1 公益信託の定義」については,「受益者の定めのない」という部分は不要でもいいのではないか,旧信託法どおりの定義の仕方で,それで十分ではないかなと考えます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  今,第4,第3,第2について御意見いただきましたが,関連する御意見ございましたらお願いします。
  それでは,事務当局の方から。
○中辻幹事 新井委員から,第4の1(1)の(注1)の考え方と表現について御指摘をいただきました。ここは,正に新井委員御指摘のとおり,現在の実務,信託銀行が運営委員会等の意見を聴いて奨学金等の支給を行っていることと,税法の規定を意識したものでございます。その上で,信託法第2条で受託者は,信託財産の管理又は処分を行う者と定義されており,その処分に当たる奨学金等の支給を誰に対して行うのか最終的に決めるのは飽くまで受託者であり,運営委員会等は誰に奨学金等を支給するかを助言するという建て付けになっていることから,(注2)では信託財産の処分という言葉を使っています。
  それから,遡って第2について新井委員から平川委員の御意見を支持し,第2の1の公益信託の定義から「受益者の定めのない信託」という部分を削り,旧信託法のように公益を目的とする信託とシンプルに書くことで十分ではないかという御意見をいただきました。
  ただ,従前平川委員も新井委員も公益信託に受益者の定めのある信託は入らないというご理解を示されており,そこについては他の委員幹事も事務局も同じ考えであるとすると,結局どちらが分かりやすいといえば「受益者の定めのない信託」と書いてあった方が分かりやすいようにも思います。また,平成18年の信託法改正のときに,公益信託については受益者の定めのない信託のうち公益を目的するものという定義付けがされているということがあって,「公益を目的とする」と「受益者の定めのない信託」のどちらを先にするのかというのは信託の分類論で,それこそ解釈学,研究者の方にお任せすべき話なのであって,むしろパブリックコメントをする際に読んだ皆さんが分かりやすい方が良いのではないかということで本文の提案はしているものでございます。
○中田部会長 いかがでしょうか。
○小野委員 運営委員会の関連の質問です。信託法で指図権の議論があって,信託法上どう位置付けられるのかみたいな議論と思うのですけれども,何となく運営委員会が指図権者的な,運営委員会という名前からして違うという議論かもしれませんけれども,位置付けもなきにしもあらずかと思うのですがいかがでしょうか。公益信託の場合は,全体像からしたら,それが許容されるとは思わないのですが,禁止もされていないようにも思われるので,それについてはどんなふうなお考えなのか教えていただければと思います。
○中辻幹事 実務の話も関係しますので,吉谷委員の方が正確にお答えできるのかもしれませんが,私の現在の理解では,現在の許可審査基準における運営委員会等は,指図権者ではありません。飽くまで受託者が公益信託事務を行うに際しての諮問機関であって,その助言を受けて受託者が奨学金等の支給分配を行っているという理解をしておりますし,たしかに禁止されてもいませんが,公益信託で指図権者を設ける必要性もないように思います。
○中田部会長 よろしいでしょうか。
○神田委員 第6について,てにをはなのですが,1,2を見ますと,1の「公益信託の委託者」,2は「公益信託がされた場合には」,ほかを見ますと,公益信託の委託者でいいように思いますし,行使できる権限とまで書かなくても,1の方で言うと,「公益信託の委託者の権限は」「受益者の定めのある信託の受託者の権限と同様とした上で」とし,次の「委託者の権限は」は不要で,「信託行為により制限できる」。2の方は,「公益信託の委託者の相続人は」で,「公益信託」も要らないぐらいなのですけれども,ほかを見ますと,「公益信託の信託管理人」とか「公益信託の受託者」という文章で始まっていますので,シンプルでいいように思います。
○中田部会長 表現については,また検討していただこうと思います。できるだけ紛れがなく,分かりやすくということだと思います。
○深山委員 第2の定義のところで,平川委員からも新たな意見が出たので,その点に関して申し上げたいと思います。
  結論から言うと,今の提案の「受益者の定めのない」というのを残していいと,個人的には考えております。その上でパブコメということで,(注)でそれを不要という意見があるというのを紹介することは差し支えないと考えておりますが,やはり,先ほどの不認可処分を受けた信託の効力のところなどでも,その他のところもそうですけれども,やはり公益信託というのはかなり特殊な信託ではあるものの,やはり目的信託の,ある意味一種だという理解が,この場では多数の認識ではないかと思うのです。
  先ほどの第3の2のところでは,甲案というのはストレートに目的信託という位置付けですし,そうではない考え方でも,それに特則を設けるというような議論をしているということは,やはりベースにおいては目的信託を意識した立て付けになっているという気がするので,そういう意味では,ここで受益者の定めのないというのを定義の中に入れるのが自然ではないかなと思うということを,一つの意見として申し上げておきたいと思います。
○中田部会長 今の点,いかがでしょうか。
  目的信託の一種かどうかについては,多分いろいろ御議論があるところだろうと思います。その上で,パブリックコメントに出す際に,公益信託という制度をより簡単に理解してもらうために,受益者の定めのないというのを入れたほうが分かりやすいだろうということなのだろうと思います。その性質論としては意見が分かれるとしても,実質として受益者の定めのない信託であることは動かないわけでしょうから,そのことを踏まえた上で,どうしたら無用の誤解を避けて意見を出していただくことができるかということなのかなと考えておりますが,さらに,この点について御意見がございましたらお出しいただきたいと思いますけれども。
  深山委員のおっしゃった,その(注)のような書き方にすると,公益信託の中で受益者の定めのある公益信託というものも,実質論としてあり得るのだというような誤解が生じるのもどうかなという気もします。そこは,どちらにしても,考えていることは皆同じだと思いますので,疑義のないようにするにはどうしたらいいのかという観点で,更に詰めていただこうと思います。
  そういう辺りでよろしいでしょうか。
  ほかに,第1から第7まで,よろしいでしょうか。
○吉谷委員 第5の「公益信託の信託管理人」の2のところで,1点御意見申し上げます。
  (4)の後に(注)がありまして,これは,信託管理人に対して能力要件が必要であるという考え方だと理解しておりますけれども,ここの,これも文言の,表現の問題ではありますけれども,「当該公益信託の目的に照らしてふさわしい学識,経験及び信用を有する者」というような表現になっておりますけれども,まず,「公益信託の目的に照らして」というところは,以前に受託者のところでも議論されていましたけれども,もはや使っていない用語であります。その後の学識,経験,信用についても同様かと思います。
  ですので,表現としては,受託者のところが「公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有すること」となっておりますので,それに合わせれば,公益信託事務の適正な処理の状況の監督をなし得る能力を有する者とか,公益信託事務の適正な処理の監督をなし得る能力を有する者とか,そういう形で合わせたほうが,受託者の能力要件との比較では分かりやすい表現になっているのかなと思っております。
○中田部会長 ありがとうございました。
  これも,これまで若干議論を経た上でこういう表現になっていったのかと思いますけれども,今の御指摘をまた踏まえて,御検討いただくことにしたいと思います。
  第1から第7までについては大体よろしいでしょうか。
  それでは,次に進めさせていただきます。
  第8から第11までの部分について,御審議いただきたいと思います。
  事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 それでは,「第8 公益信託の成立の認可の申請」について御説明いたします。
  部会資料43の第8の提案に対して,第44回会議では,特段の異論はありませんでしたが,当該提案の趣旨は,公益信託の認可の申請を行う主体及び申請の手続の骨格を新公益信託法の中に定めておくというものであることから,それをより明らかにするためには,本文第8の標題を「公益信託の成立の認可の申請」に改めた上,第8の1の本文の提案について,部会資料第43の第8の1の提案のうち,「認可を受けることができる」という部分を,「認可の申請をすることができる」という表現に変更しております。
  次に,「第9 公益信託の成立の認可基準」について御説明いたします。
  第44回会議では,部会資料43の第9の「1 公益信託の目的に関する基準」の本文の提案に対し,特段の異論は示されませんでした。
  もっとも,部会資料43の第9の1の「公益信託は,収益事業を目的としてはならないものとする」という提案では,公益目的の信託事務が収益を伴うものであることが許容されるのか否かが分かりにくい旨の指摘がありました。部会資料38の第3に記載しましたとおり,公益信託の受託者が行う信託事務の中には,まず,①当該公益信託の目的の達成のために直接必要な信託事務,②当該公益信託の目的達成のために間接的に必要な信託事務,③当該公益信託の目的の達成のために必要性を欠く信託事務が想定されるところ,公益信託の受託者が行うことができる信託事務は,今御説明いたしました①及び②に限定し,③の目的達成のために必要性を欠く信託事務は許容しないようにするべきであり,そのことをパブリックコメントに付す提案としては明らかにすることが必要であると考えられます。
  そこで,本部会資料第9の1の本文の提案では,部会資料43の第9の1において,「公益信託事務を行うことを目的とするものであること。公益信託は,収益事業を目的としてはならないものとする。」としていた部分を,「公益信託事務を行うことのみを目的とするものであること」に修正した上で,本部会資料第9の2の本文の提案を追加し,公益信託の受託者が行う信託事務に関する基準として,公益信託の受託者は,当該公益信託の目的の達成のために必要な信託事務を行わなければならないことを明らかにするため,「公益信託の受託者は,当該公益信託の目的の達成のために必要な信託事務を行わなければならず,その目的の達成のために必要性を欠く信託事務を行ってはならないものとする。」という基準を明示しております。
  なお,本部会資料第9の1及び2の本文の提案は,公益信託の受託者が収益を伴う信託事務を行ったとしても,それが公益信託の目的の達成のために必要な範囲であれば許容されることを前提としているものです。収益を伴う信託事務が,先ほど御説明いたしました②として許容されるか,③として許容されないかは,行政庁が公益信託の成立の認可の時点で,当該信託の信託行為や事業計画書等に基づいて判断し,成立の認可後も,当該公益信託の目的の達成のために必要な範囲外の収益を伴う信託事務を受託者が行うことがないように,行政庁が監督することを想定しております。
  また,第9の「3 公益信託の信託財産に関する基準」の本文のうち,(2)の公益信託事務を遂行することが可能な信託財産を保有していることにつきましては,部会資料43の第9の2(2)の提案では,括弧書きで,信託財産の取崩しを内容とする場合には,その存続期間を通じて,当該公益信託事務を遂行することができる見込みがあることと記載しておりましたが,当該括弧内の信託財産の取崩しを内容とする場合の公益信託事務の遂行見込みは,当該括弧以前の一般的な公益信託事務の遂行見込みに包含されるものであることから,本部会資料第9の3(2)の本文の提案では,その括弧の部分を削除しております。
  なお,本部会資料のゴシックの本文につきましては,基本的に条文化されるものを記載しておりますが,本部会資料の第9の3(1)本文の公益信託の信託財産は,金銭に限定しないものとするとの提案につきましては,新公益信託法の条文として,規律を設けることにはならないため,パブリックコメントに付す際には,本文の提案とはしないものの,重要な見直しの一つでありますので,その旨が明らかになるよう努めたいと存じます。
  さらに,第9の「4 公益信託の信託行為の定めに関する基準」の本文につきましては,公益信託事務が金銭の助成等に限定されている公益信託と,それ以外の公益信託とに適用される基準の違いを明確にするために,第9の4(1)では,新たな公益信託一般について適用される基準を明記した上で,第9の4(2)において,公益信託事務が金銭の助成等に限定されている公益信託については,会計に関する基準を適用しないことを明記しております。
  なお,部会資料43の第9の3(3)に提案しておりました,公益信託の信託財産の投資運用についての基準は,第44回会議における指摘を踏まえますと,新たな公益信託の認可基準に投資運用についての基準を設けるまでの必要はないと考えられることから,部会資料43の第9の3(3)の甲案及び乙案をいずれも削除しております。
  第10及び第11につきましては,特段変更点はございませんので,説明は省略させていだきます。
○中田部会長 それでは,ただ今御説明いただきました第8から第11までの部分につきまして,御意見を頂きたいと思います。
○道垣内委員 第9の2について,まったく読み間違いをしてしまったのです。私が最初思いましたのは,信託行為において,受託者が必要な信託事務を行わなければならず,必要ではないものは行ってはならないということを明文で書きなさい,書かないと認可はしませんよという趣旨であるのかなと思ったのです。
  どうしてなのかというと,受託者が目的達成に必要な行為をしなければいけなくて,目的達成に不要な行為をしてはいけないというのは,全ての信託においてそうなのですから,それを書くということ自体の意味が最初分からなかったのですが,このようにクリアに書いておかないと認可しないという意味なのだなと思って,初めて,そうかと思ったのです。ところが,そうではなくて,これは,収益行為のようなものがどこまでできるかというような基準を定めているのだと言われますと,またびっくりいたしまして,ほかの信託においては受託者は不要な行為をしてもよいのですかという疑問が生じてしまうのです。どうなのでしょうか。
○中田部会長 実質というよりも,この表現の仕方ですよね。
○道垣内委員 そうです。実質的にこうだというのは,そのとおりなのです。そして,認可基準として,これがきちんと明記されていることというのを要求することは分かりますが,一般論としては,それは全ての信託においてそうでしょうという感じがするということです。
○吉谷委員 私どもの方でも同じような疑問を持っておりましたのですけれども,ここの表現が,受託者の権限や義務の規定のように見えるということですので,認可基準ということでありましたら,これは,信託事務処理の内容について,目的達成のために必要性を欠く信託事務を行うことになっていないかというような認可基準なのではないかと思いました。
  信託行為に書いてあるかどうかということのチェックというよりは,書いてあってもいいと思うのですけれども,書いてある信託事務処理の内容が公益と関係のないことが書いてあれば駄目だということだと思いますし,それ以外に,事業計画のようなもので,公益目的の達成のために必要なことが書いていたりしたら,駄目だということを認可の際に判断されるのだと思いましたので,そういう表現に直したほうがいいかなと思いました。
○中田部会長 ありがとうございます。
  ほかに関連する御意見等ございますでしょうか。
○樋口委員 ここで,細かな規定を書くことはできないのだろうと思いますが,やはり具体的な例が挙がっていましたよね。それをどう読むかというのが,ここからではちょっと分からないような気がしたのです。
  具体的に言うと,例えば,今度は美術館の事業運営みたいなものも公益信託としてやれるという話は,そういうことですよね。そうすると,ちょっと私の想像力が乏しいせいだと思うけれども,ミュージアムストアとか附属のレストランなんていうのはどうなるのだろうか,喫茶店でもいいのですけれども。それは,厳密に言えば,目的達成のために必要性があるかといえば,ないのですね。しかし,17ページのところを見れば,当該公益信託の目的達成のために,間接的に必要なものは可能だとする。きっと上記のような信託事務だという意識だと思うのですけれども,この表現だけでは本当に分かるのだろうか,結局行政庁の裁量で,何であれという。だから,もう少し,これに,つまり目的に関連する収益事業は別に構いませんということをはっきりさせていただいたほうが,分かるのではないかなと思うのですけれども。あとは,行政庁の判断でというほどの議論はしていなくて,もう少し緩やかな議論がここではあったのではないかと思うので,結局,この表現では,必要性という言葉の解釈の問題になるのですけれども,ちょっとどうかなという疑問を抱いたということです。
○中田部会長 ありがとうございます。
○神田委員 第9の3なのですけれども,これは,あくまで認可基準だとすると,認可時における信託財産を意味しているのでしょうか。
  例えば,今の(2)で言いますと,認可時では金銭なのだけれども,これからそれで(2)に該当するような信託財産を買っていきます,取得していきますということを書いておけばいいと思いますし,補足説明の18ページの2で,それはいいという趣旨に読めるのですけれども。ちょっとそれが,認可時において,3の(2)のような信託財産を保有していないと認可されないということになると,狭過ぎる,事後に取得しますでもいいと思うのですけれども。
  それからもう1点,違う点なのですが,(3)について前にちょっと発言したことがあるのですけれども,本文でちょっと読めないかなと思うのは,資産管理会社があって,何か税制とかの理由で株式という形で持っていて,その株式を公益信託にといった場合に,ここを文字どおり読みますと,その資産管理会社の意思決定に関与することができる株式というか,あるいは,実質的に支配していることになる。ただ,たまたま保有形態が何らかの理由で別会社形態になっていて,株式という形をとっている。本来なら,財産そのものをということなのだとは思うのですけれども,いろいろな事情でそうなっていて,その事情にそれなりの理由があるというような場合には,例外であっていいように思うものですから,前にちょっと発言させていただいた記憶もあるのですけれども。そんな細かいことは,補足説明かどこかで,今は触れられていないと思うのですけれども,いいとは思うのですけれども,抽象的に言いますと,いい場合とよくない場合の線引きをもう少し明確に書いていただくことができれば,有り難く思います。
○中田部会長 ありがとうございます。
  第9について引き続き御意見をいただきたいと思いますけれども,第9の2について,3人の委員から御意見を頂き,また,3の基準時と,3の(3)について,今,神田委員から御意見を頂きましたので,これらについて,この段階でお答えいただけますでしょうか。
○中辻幹事 では,まず最初に,先ほど同様に平川委員の意見書の御紹介ですけれども,第8から第11までの論点につきましても,割と賛成していただいているところが多いなと思います。ただ,第9の「4 公益信託の信託行為の定めに関する基準」というところでは,(1)のアからウについては賛成だけれども,エの(ア),収支相償ですね,この要件については要検討。それから(2),これは助成型と事業型と分けるというふうな御提案ですけれども,これについては反対というふうな御意見を頂いております。
  その上で,今皆様から頂いた御意見に対するコメントですけれども,まず,道垣内委員と吉谷委員から,第9の2の基準は,信託行為や事業計画書において受託者の行う信託事務とされているものにつき収益を伴うものも含めて目的達成との関係で必要性の有無を判断する際の基準なのでしょうねという善解をしていただきまして,それはそのとおりでございます。
  第9の2は,こちらも書いているときになかなか悩ましいなと感じていたところで,くどいんですね。必要な信託事務を行わなければならない,その上に,必要性を欠く信託事務を行ってはならない,これはある意味表裏の話ですし,現に信託法第26条に,受託者は信託目的の達成のために必要な行為をする権限を有するという条文もあるので,その規律との重複感もあって,今の第9の2のゴシック本文をそのまま条文化することはまず不可能ですし,吉谷委員からの御指摘もありましたので,もう一度考え込んでみたいと思います。
  その上で,樋口委員からも御指摘ありましたけれども,以前の部会資料では,美術館ではこう,留学生の学生寮ならこうみたいな,具体的事例の表を作って,それは事例ごとに認可行政庁の方で,ここまでは認められるよ,認められないよということを,個別具体の事案に即して判断するという提案をしておりました。その提案の実質は維持するということを考えておりまして,公益信託の認可申請をする場合には,受託者が公益信託事務としてどのようなことをするかというのを具体的に列挙して,それを事業計画書なりなんなりの形で認可行政庁に提出するわけですが,その内容をクリアに書いてもらい,その内容を見て,認可行政庁の方で公益信託の受託者の行う信託事務として許容されるものかどうかの判断をされるということを想定しております。
  それで,中間試案の補足説明には,今のような表ですね,例があったほうが分かりやすいのだろうと思っています。表を作っていると,だんだん楽しくなってきていろいろ考えるのですけれども,樋口委員が以前の部会で言われたように,例えば留学生の学生寮の地下にコンビニが入るのは,留学生にとっても便利で役に立つ話かもしれず,そこも結局個別具体の判断なのだろうと。また,ミュージアムショップの営業ですけれども,以前は,美術館の館内で営業するものは公益性が認められ,館外で営業するものは公益性が認められないという整理でいたわけですけれども,ここも突き詰めていくと,美術館の館外だけども隣の敷地で営業していたらどうなのだみたいな話があって,もう全然関係ないところでやっているのだったらともかくとして,美術館を訪れる人たちの利便性に資するのであれば,それは場合によっては認められても良いのではないのですか,みたいな話もあると思いますので,より分かりやすく補足説明で説明させていただければと思います。
  それから,第9の3について,神田委員から御指摘を受けました。まず,第9の3の認可基準は,最初に認可を受ける時もそうですし,公益信託が続いている間はその認可基準を満たさなくてはいけないという趣旨で提案しているものですが,第9の3の(2)の基準は,確かに設定時のことしか考えていないように読める余地があるのかもしれません。もっとも,神田委員には既にご理解頂いているとおり,設定当初の信託財産が金銭であってもそれを使って公益信託事務のために必要な信託財産を事後的に取得することはできると事務局としても考えていて,信託設定後の信託財産の運用も含めて,存続期間を通じての遂行見込みがあることがあればいいという趣旨で書かせていただいておるのですけれども,信託設定時と設定後の基準の働き方を意識してもっと分かりやすくできないか,考えてみたいと思います。また,資産管理会社の話は,ゴシック本文の修正意見ではないと受け止めましたが,前から御指摘されていたところでもありますので,補足説明に書かせていただければと思います。
○中田部会長 ただ今の御説明について。
○松元関係官 
  今の神田委員御発言の趣旨について,ちょっと確認させていただきたいので,1点だけ質問なのですけれども,第9の3の(3)のところで,「信託財産に他の団体の意思決定に関与することができる株式等の財産が原則として含まれないこと」と書いているのは,公益法人の場合の要件と同じようなものを想定していて,なので,50%を超える議決権を持っているかどうかということだけで区別するという,そういう基準を導入してはどうかということを考えているということなのだと理解しています。50%を超える議決権を持っていたら駄目だけれども,それより下であれば認められるであろうというようなことを考えていたのですけれども,今,神田委員の御発言を聞いていると,それだけでは不十分であるという御趣旨なのかなと思いまして,資産管理会社の場合というのは,議決権は100%持っていても認めるべきだろうという御趣旨でしょうか。ちょっと発言の趣旨を教えていただければと思います。
○神田委員 おっしゃるとおりというか,原則は,今前半でおっしゃっていただいたとおりの整理でいいと思います。
  ただ,例外として,どういう形態があり得るのかよく分かりませんけれども,例えば,美術館といった場合に,美術館の土地建物そのものが信託財産になるのが通常だとはもちろん思いますけれども,何らかの合理的な理由があってということですけれども,美術館の土地建物が別の法人形態になっていて,その法人の意思決定権を有する,極端な場合で言えば,例えば100%議決権を持っていると。それは他の団体ですと,形式的に言うと,ですから駄目ですという必要はなくて,それは,実質的には土地建物を信託財産にするような場合に準じて考えられる場合もあると思いますので,そういう場合を排除する必要はないので,そういう意味では,例外的な場合ということなのかもしれませんけれども,何かちょっと,どこまでこれ書くのがいいのかよく分からないのですけれども,少なくとも補足説明での言及は,多少していただいたほうがいいと思うということです。
  なお,実際のニーズや実態のところが私はよく分かりませんので,何となく予想で発言しているというところはあります。
○松元関係官 そうすると,完全に質問で申し訳ないのですが,要件の立て方というのは,どういう場合を例外にすればいいのか,ちょっとその要件の立て方が想像がつかないようなところもありまして,何かいいアイデアがあれば,教えていただきたいという感じもするのですが,何を基準にすればよろしいでしょうか。
○神田委員 条文ではなくて中間試案で聴くのでしたら,原則はこの(3)でいいので,例外として,公益信託の目的に整合するというか,そういう場合には,文字どおり言えば,他の団体の意思決定に関与,あるいは実質的に支配と,形式的にはそうであっても,実質的に見て公益信託にはふさわしいというのですかね,そういうものであればというような表現でいけるのではないかと思いますが。
○中田部会長 神田委員の御指摘も,このゴシックの第9の2ということよりも,補足説明でも構わないということでございますので,厳密な要件をこの時点でどうするというよりも,むしろ頂いた御指摘を補足説明の中で的確に反映するということかなと承ってよろしいでしょうか。
  では,そういうふうにさせていただきます。
  第9の2につきまして,趣旨が分かりにくい,あるいは表現がやや重複感がある,あるいは中辻幹事からも御指摘のありましたように,信託法に既に規定があることとの関係をどうするのかということで,補足説明の中でいろいろ具体的な例を挙げて書いていただくということは,大体共通の理解になっていると思うのですけれども,第9の2について,具体的にこういう表現がいいのではないかという考えがございましたら,お出しいただけますと更に検討をしていただけると思うのですが,何かいいお知恵はありますでしょうか。
○深山委員 考えが余り練れていないのですが,収益事務をどの範囲でできるのか,できないのかというところが,やはり議論の実質的なポイントだと思うのですね。補足説明で例を挙げて説明していただくというのは,大変よろしいと思うのですが,ただ,ゴシックだけを見ていると,全くその視点といいますか,ポイントが,この場で議論している人は分かるわけですが,一般の人は分かりにくい。しっかりと補足説明を読んで,ああ,そういうことが問題になっているのかというのが初めて分かるということだとすると,やはりやや不親切な気がして,そういう意味では,正面からは公益信託事務を目的とするということをうたいつつ,ただし書のような形で,当該公益信託事務に必要又は有益な収益事業を行うことを妨げないというようなことを入れるというのが,やはり分かりやすいのではないかという気がします。
○中田部会長 ありがとうございます。
  ほかにもし何かアイデアございましたら,是非お出しいただければと思いますけれども。
○吉谷委員 深山委員がおっしゃったような内容を(注)として入れて,本文の方には,端的に目的達成のために必要性を欠く信託事務を行うことになっていないかというぐらいの文章でもよろしいかと思いました。
○中田部会長 それでは,この第9の2につきましては,頂いた御指摘,あるいはアイデアを検討させていただきまして,次回の中間試案の案に盛り込むということにしたいと思いますが。
○道垣内委員 吉谷委員がおっしゃったことに全く反対ではないのですが,基準を示すにあたって,ほかのところは「こと」で終わっているのに,3の(1)だけが「ものとする」となっている。積極的に満たさなければならない基準が「こと」で結ばれていないところに,恐らく問題の発端があるのではないかという気がします。
  吉谷委員がおっしゃったのは,恐らく受託者が当該公益信託の目的に必要な事務を行うべき権限をきちんと有することとか,あるいは逆に,そうではないものの権限は有しないことを,きちんと書くということなのだろうと思いますが,問題は「こと」にありそうな気がします。
○中田部会長 貴重な御指摘ありがとうございました。
○神田委員 私もちょっと便乗して,同じ趣旨なのですけれども,ここでいう信託事務という概念は,先ほどの公益信託事務と,その束ねるというレベルだけではなくて,運用とか例えばそういうものも含まれるというので,はみ出る概念なのですよね,恐らく。ですから,そういうことで言えば,公益信託の受託者が行う信託事務は,「公益信託事務及び」というか,「その他」でもいいのですけれども,ここの言葉でいうと,公益信託目的達成のために必要なものに限られる,つまり公益信託事務プラス必要な信託事務に限られると,普通に書くのが一番素直なように思いますけれども。
○中田部会長 ありがとうございました。
  公益信託事務の概念を限定した上でプラスアルファにするのか,そちらの概念をむしろ広げるのかというのとも関係すると思いますけれども,その辺りも更に検討していただこうと思います。
  もしいいお知恵がありましたら,今でなくても,このあと,5時ぐらいになってでも結構ですから,是非お出しいただければと思いますけれども。ほかに,今の点も含めまして,第8から第11までについて御意見を頂きたいと存じます。
○林幹事 大きな意味において,中間試案に向けた整理に反対という趣旨ではないのですが,弁護士会での議論で出たことを,幾つかポイントだけ申し上げたいと思います。まず,第8の1なのですけれども,申請の主体について,受託者になろうとする者とされているのですけれども,委託者だったら駄目なのかという素朴な意見もありました。実質的には受託者が事務をしているから,受託者候補者がやればいいのでしょうけれども,契約の場合は,実質的には一緒になってやるのでしょうし,委託者も申請主体になる余地もあってもいいのではないかという意見がありました。
  それから,第9の1ですが,2との絡みもあって,あえてここに「のみ」を意識的に入れられているのだと思うのですけれども,2がきちんと整理されれば,1の「のみ」はなくてもいいのではないのかという意見がありました。
  それから,あとは,9の4の(1)の,特にエなのですが,先ほど言われたように,認可のときと,その後の基準との関係が問題で,そういう問題意識を持つべきだと中辻幹事がおっしゃられたのはそのとおりなのですが,特にエに関しては,「一定の」という言葉があるので,認可のときはいいのですけれども,事後的な取消しのときは,具体的なものがないと,多分判断基準にならないので,そういう違いはあると思います。また,ここは,問題意識は従前議論したところで,非常に基準というかが微妙なところでもあったので,(注)では,事業型については(ウ)の基準が不要という考え方もあったのですけれども,(ウ)だけではなくて(ア),(イ)も合わせて不要という意見もあったことは申し上げます。
○中田部会長 ありがとうございました。今の御発言について何か,よろしいでしょうか。
  第8から第11までについて,大体御意見を頂いたということでよろしいでしょうか。よろしければ,この辺りで一旦休憩にしたいと思います。
  15分後の15時28分に再開いたしますので,その時間になりましたら,御参集ください。

          (休     憩)

○中田部会長 時間が来ましたので再開します。
  部会資料44の第12から第19まで御審議いただきたいと思います。
  事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 それでは,第12以降を説明させていただきたいと思います。
  まず「第12 公益信託の監督」につきましては,変更点は特にございませんので,説明は省略させていただきます。
  「第13 公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任」の本文の提案は,部会資料43の第13の提案からいずれも変更はございませんが,部会資料43の第13の1及び2の提案に対しては,第45回会議において,新受託者の選任だけでなく受託者の辞任・解任の場面においても裁判所に加えて行政庁の関与を必要とし,公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任については,委託者に受託者の辞任の同意権や受託者の解任及び新選任の合意権を原則として与えない任意規定とすべきであるとの代案が示されました。
  確かに,公益信託には私益の排除という観点から,当事者の都合で安易に信託を終了することを認めるべきではなく,受託者の辞任・解任後1年が経過した後に信託が終了することからすると,委託者及び信託管理人の合意等による受託者の辞任・解任を認めることは,事実上これらの者の合意による公益信託の終了を認めることになるおそれがあります。しかし,そのような事態は,例えば利害関係人の申立てに基づき裁判所が新受託者の選任をすることにより防止することが可能であると考えられます。また,やむを得ない事由等の判断を裁判所と行政庁が重複して行うことは合理性を欠きますし,受託者は信託の仕組みにおける重要な役割を担っていることからすると,受託者の辞任等は委託者及び信託管理人の合意によって判断されることが望ましく,信託管理人単独での受託者の解任権を認めることにも慎重にならざるを得ません。そのため当該代案を第13の本文の提案に採り入れることはしておりませんが,広く国民の意見を公平に聴く観点から,パブリックコメントに付すに際しては,代案の理由及び問題点が明らかになるよう努めたいと存じます。
  次に,「第14 公益信託の信託管理人の辞任・解任,新信託管理人の選任」の本文の提案についても,部会資料43の第14の提案から変更はございませんが,この提案に対して第45回会議では,パブリックコメントに付すに際しては,公益信託の受託者と信託管理人の位置付けの違いや公益信託の信託管理人の解任の申立権を受託者に与える考え方があることも明らかにすべきである旨の指摘が出されておりますので,広く国民の意見を公平に聴く観点から,パブリックコメントに付すに際しては,その旨が明らかになるように努めたいと存じます。
  次に,「第15 公益信託の変更,併合及び分割」のうち,第15の1及び3の本文の提案については,いずれも部会資料43の第15の1及び3の提案から変更はございません。ただ,第45回会議では,部会資料43の第15の1及び3の(注)の考え方を本文の提案としてパブリックコメントに付すべきである旨の意見を頂きました。その意見が部会の大勢を占めるまでには至らなかったことから(注)のままとしておりますが,広く国民の意見を公平に聴く観点から,パブリックコメントに付すに際しては,(注)の考え方の理由及び問題点が明らかになるように努めたいと存じます。
  また,部会資料43の第15の2(1)の提案に対して,第45回会議では,公益目的の変更や公益信託事務の範囲の変更が,公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の変更に該当するのかが分かりにくい旨の指摘があったことから,その点を明確にするため,本部会資料第15の2(1)の本文の提案では「公益信託事務の処理の方法以外の公益信託行為の変更(公益目的の変更及び公益信託事務の範囲の変更を含む。)」という記載に変更しております。
  また,第45回会議では,部会資料43の第15の2(2)の提案に対して,シ・プレ原則の適用範囲として狭過ぎ,帰属権利者の同意があるような場合もシ・プレ原則を適用すべきである旨の指摘,部会資料43の第15の2(2)の提案において,帰属権利者が定まらない場合にシ・プレ原則を適用するとしていることと,第17の本文の提案において信託行為に帰属権利者の定めを必ず置くこととしていることとの関係を整理すべきである旨の指摘がありました。
  これらを踏まえ再度検討しますと,本部会資料の第17の本文の提案を前提としますと,信託財産の帰属権利者が定まらないという事態が発生することは想定しにくいですし,信託財産をできるだけ民間による公益活動のために活用しようという観点からは,仮に公益目的の達成又は不達成の場合に,公益信託の残余財産の帰属権利者として定められた国,地方公共団体等がその権利を放棄していないときであっても,委託者,受託者及び信託管理人の合意により,その目的を変更することは可能とすべきであると考えられます。その上で,公益目的の達成又は不達成の前の時点では,類似目的への変更という制約は課されていないこととの均衡も考慮して,当初の公益目的と類似していない他の公益目的への変更を認めることが相当であると考えられます。一方,委託者が現に存しない場合は,当初の公益目的のために信託財産を拠出した委託者の意思を尊重する必要があることから,当初の公益目的と類似の目的の公益信託への変更のみを許容することが相当であると考えられます。
  そこで,本部会資料第15の2(2)の本文の提案では,部会資料43の第15の2(2)の提案から「残余財産が存在するが帰属権利者が定まらないときは」という部分を削除した上で,(ア)として,委託者が現に存する場合には委託者,受託者及び信託管理人の合意に加え,行政庁の変更の認可を受けることにより他の公益目的に変更できる。(イ)として,委託者が現に存しない場合には,受託者及び信託管理人の合意に加え,行政庁の変更の認可を受けることにより類似の目的に変更できるという二つの場合に分けた提案に変更しております。
  なお,部会資料42の中で御説明しておりますが,本部会資料の第15の1(1)アの本文の「委託者,受託者及び信託管理人の合意等」には,信託法第149条第2項第2号などの受託者単独の意思表示による変更も含まれていることから「合意『等』」との表現を用いております。他方,本部会資料の第15の2(1)の本文につきまして,こちらは公益信託の目的の変更等を含んでおりますが,目的の変更は必ず委託者,受託者及び信託管理人の合意に基づいて行わなければならず,信託法第149条第2項第2号などの受託者単独の意思表示はできないものと解されますので,「委託者,受託者及び信託管理人の合意」という表現としております。パブリックコメントに付すに際しては,これらの点も本文の提案の中で明らかにすることも含め検討してまいりたいと存じます。
  次に,「第16 公益信託の終了」についてですが,第44回会議及び第45回会議では,新たな公益信託の終了事由の全体像を明示して,パブリックコメントに付すべきであるとの意見が出されました。これを踏まえ,本部会資料第16には(前注)を設け,信託法第163条に規定される信託の終了事由が同条第2号を除き新たな公益信託にも原則として適用されることを前提としていることを明示するとともに,本部会資料の27ページの補足説明の1に,新たな公益信託の終了事由について具体的に記載しております。
  また,本部会資料の第16の「2 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了」では,部会資料43の16の2の本文の提案を本部会資料第16の2の甲案としております。第16の2の甲案に関しましては,外部の第三者機関としての行政庁の関与を求めるものとして角括弧を付した上で,行政庁による終了の認可又は成立の認可の取消しを受けることを提案しております。この場面においては,行政庁は残余財産の分配が信託行為の定めに従い適切に行われるか否かという観点から終了の可否を判断することを想定しておりますが,やむを得ない事由や正当な理由があることを確認しなければならない可能性などもあり得ますので,その点についても御意見等がございましたら頂戴できればと存じます。その上で,パブリックコメントに付す際にやむを得ない事由や正当な理由があることを本文の提案に加えるか否かは検討できればと存じます。
  これに対し,第45回会議では,残余財産の帰属先について適切な帰属権利者の定めがされるのであれば,公益信託を合意によって終了させてもよいとする意見がありました。
  確かに,現行税法において,「合意による終了ができないものであること」が税制優遇を受けるための要件とされている趣旨は,公益目的に拠出された信託財産に対する私益の排除であると考えられることから,その観点から,残余財産の帰属先が適切であれば,委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了を認めることも一定の合理性があると考えられます。また,信託の終了と清算は区別される概念であることからすると,信託財産の清算処理に行政庁の監督が必要であるとしても,信託の終了に行政庁が関与することが必要であるとまではいい難いと言えます。さらに,信託目的の達成又は不達成による終了のような場合には,行政庁の認可は不要であることからすると,委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,行政庁の認可を得ずに公益信託の終了を認めるべきであるという考え方があり得ます。そこで,本部会資料第16の2の本文では,そのような考え方を乙案として新たに提案しております。なお,本論点の検討に当たっては,一般社団法人の解散事由に社員総会の決議が存在するのと異なり,一般財団法人の解散事由には評議員会の決議が存在しないことにも留意する必要があるものと考えられます。
  次に,「第17 公益信託の終了時の残余財産の処理」につきましては,部会資料43の第17の提案から変更点はございませんが,第45回会議では,本文第17の1(2)(注)の考え方を本文の提案としてパブリックコメントに付すべきであるとの意見が出されましたが,残余財産の一部でも,帰属先として私人を指定することを認めた場合には,新たな公益信託が税制優遇を受けることは困難になること,そのような意見の趣旨を実現するには別の方法があることなどを理由に反対する意見も複数出され,積極意見が部会の大勢を占めるまでには至らなかったことから(注)のままとしております。もっとも,広く国民の意見を公平に聴く観点から,パブリックコメントに付すに際しては,(注)の考え方の理由及び問題点が明らかになるように努めたいと存じます。
  次に,「第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等」につきましては,特段変更はございませんので説明は省略させていただきます。
  最後に,「第19 その他」の論点についてですが,本部会資料の第19の2の提案のみ御説明させていただきます。
  第45回会議では,部会資料43の第19の「2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い」の提案に対して,新公益信託法の施行時に存在する既存の公益信託に対する現公益信託法及び新公益信託法の適用関係を整理すべきであるとの意見,既存の公益信託については,簡易な手続で新公益信託法の適用を受ける公益信託に移行できるようにすべき旨の意見,みなし認可のように,移行に関する手続を不要とする場合であっても,新公益信託法に定める強行規定の充足性については確認する必要がある旨の指摘などがありました。
  公益法人制度改革の際の特例民法法人は,移行の認定又は認可を受けることで,旧法から新法への適用関係の切替えが行われていたと考えられます。
  また,新たな公益信託においては,現在の公益信託と比べて主務官庁制を廃止し,信託管理人を必置とするなど,公益信託の内部ガバナンスを厳格なものとすることが想定されていることなどから,現行公益信託法から新公益信託法への適用関係の切替えについて,公益法人制度改革当時と同様の明確化の要請があるものと考えられます。したがって,新たな公益信託においても,移行の認可を受けることで新公益信託法の適用を受けるものとすることが相当であると考えられることから,本部会資料第19の2(1)の本文の提案をしております。
  また,特例民法法人という制度が,旧公益法人が新制度の法人に移行するまでの間の一時的な存在として設けられた趣旨は,特例民法法人である間は実質的には民法法人であったときと同じ扱いをしようとするものであり,特例民法法人である間は旧主務官庁が引き続き指導監督を行うこととされていました。これを踏まえ,本部会資料第19の2(2)の本文の提案では,新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託について,新公益信託法の施行日以降も移行の認可を受けるまでは現行公益信託法が適用され,移行の認可を受けた後は新公益信託法が適用されることを明示しております。
  なお,移行の認可の手続については,既存の公益信託が新たな公益信託の成立の認可の審査を受けるものとすること,一定の要件を満たす既存の公益信託については,新たな行政庁への届出のみとするなど,移行の手続を簡易なものとすること,既存の公益信託にみなし認可を与え,移行に関する一切の手続を不要とすることなどの選択肢が考えられますが,先ほど御説明いたしましたように,新たな公益信託は現在の公益信託とは根幹の部分で異なるものとなることが想定されていますし,移行の認可には既存の公益信託に対する旧法及び新法の適用関係の明確化という重要な意味があると考えられることから,みなし認可のように一切の手続を不要とすることは相当でないと考えられます。ただし,部会資料43の第19の2の補足説明にも記載いたしましたとおり,既存の公益信託の移行手続に伴う事務負担の増加による信託財産の減少を看過することは相当でないと考えられることから,その点を念頭に置いて引き続き検討を要します。
  また,本部会資料第19の2(1)の行政庁による移行の認可を受けない公益信託については,当該信託は終了するものとするほかに,信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託として存続するものとすることも考えられます。
  しかし,公益法人は一般社団法人又は一般財団法人が公益認定を受けることで公益法人となる仕組みを採用していることから,既存の公益法人が5年の移行期間内に一般法人に移行する選択肢も用意されたものと考えられるのに対し,新たな公益信託は,本部会資料第3の1の本文の提案のとおり,信託行為かつ行政庁による成立の認可を受けることで成立する仕組みを採用し,信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託の前置を不要とするものでありますし,また,移行の認可を受けない意思を有する公益信託の当事者に,当該公益信託を信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託として存続させることのニーズも見いだし難いことから,本部会資料第19の2(3)の本文の提案では,部会資料43の第19の2(3)の甲案と同様に,一定の期間内に行政庁から移行の認可を受けなかった公益信託は終了するものとする考え方を示しております。
○中田部会長 それでは,第12から第19までの部分につきまして,御意見を頂きたいと存じます。御自由に御発言をお願いいたします。
○棚橋幹事 第13の1の提案について1点申し上げます。前々回の部会でも申し上げましたが,第13の1の公益信託の受託者の辞任許可事由について,正当な理由を中間試案に含めるという御提案をされるのであれば,正当な理由という文言を提案する理由,例えば私益信託において何らかの不都合が生じているといったような立法事実や,信託法と異なる文言が必要となる理由,そもそも正当な理由には何が含まれるのか,正当な理由の内容,裁判所はどういった観点で何を判断すべきなのかについて,中間試案の補足説明などで何らかの説明をしていただきたいと考えております。
  この点について,部会の内部で認識が一致しているのかどうか疑問もございますし,説明がないまま中間試案として提案してパブリックコメント手続を行った場合に,読み手の方に,先ほど申し上げた点が正確に伝わらずにそれぞれの解釈で意見が出されると,パブリックコメント手続の効果が減少してしまうようにも思われますので,御検討をお願いできればと思います。
○中田部会長 ただ今の御発言は,第13の1の角括弧の中にやむを得ない事由と正当な理由とが選択としてあるわけですが,むしろやむを得ない事由に一本化すべきであるということでしょうか。それとも,これはこれで残しておいて,補足説明の中でその理由を説明することとし,その理由について,この部会で更に意見を交換してほしいという,そういうことでございましょうか。
○棚橋幹事 部会で出された意見は中間試案に含めるという前提でほかの論点も整理されていると思いますが,部会の中では正当な理由という文言を採用すべきという意見も出されていましたので,中間試案に含めるべきでないとまでは申し上げませんが,中間試案に含めるのであれば御説明を頂きたいということでございます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  御指摘のように,信託法自体はやむを得ない事由ということになっていますし,公益信託法もそうだと。それで,ここで正当な理由に,言わば広げることについて積極的な説明をする必要があるだろう。それが統一的な認識があるんだろうかということをもう少し議論してほしいということのようですけれども,いかがでしょうか。その正当な理由という要件の方がいいという御意見の方から,あるいはそれ以外の方でも結構ですけれども,説明が十分できないと,せっかくパブリックコメントをしても余り十分な効果が出ないかもしれませんので,もし何か御説明をいただけますと……。
○小野委員 かつて議論した立場から述べさせていただきますと,法律間の整合性という議論ももちろんあるかもしれませんが,より新しい法律ですから,解釈論的に分かりにくいという御議論でしたけれども,やむを得ない事由が持つ不都合さというものよりも,正当な理由の方がいいのではないかと思いますし,これまでそのような趣旨の発言をしてきました。
  やむを得ない事由が持つ不都合さというのは,かつての公益信託法のコンメンタール,確か三菱信託銀行の法務部長をされた松本崇さんがコンメンタールで書いたのは,病気と洋行であったと記憶します。ですから,病気というのは正にインポッシブルですけれども,洋行というのは海外旅行ですから,決して物理的不可能,身体的不可能を意味しているわけではなくその趣旨でそのように述べられたのではないかと思いますが,やはりやむを得ないという言葉が持つ強さというのはあるかと思います。
  正当な理由というのは,かつて議論したことの繰り返しになりますけれども,旧受託者と新受託者,あと当該公益信託を取り囲む環境,状況,特に継続性があるものですから,信託行為設定のときとか認可のときと受託者も変わっているかもしれませんし,公益信託の内容も変わっているかもしれないということで,いろいろな総合的判断になることを示唆する表現と思います。今の御意見ですと,裁判所は総合的判断ができないという趣旨も多少あったかもしれませんけれども,正当という言葉自体が日本語として十分意味のある表現だと思うので,それは主張立証する側が正当性についてきちんと主張立証といいますか,疎明し,裁判所も,それであれば,この公益信託の目的に沿った形で辞任を認める,解任を認めるということで判断できるかと思います。
  ということで,正当な理由というほうがより新しい法律,新しい公益信託法を目指した場合にはふさわしいのではないかと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかに関連して。
○林幹事 特に辞任のところの正当な理由につきましては,次の新たな受託者の候補者がきちんといて,信託の継続性を阻害しないような場合は,その事情も含めた形で辞任を裁判所の判断によって認めてよいのではないかという議論があったかと思います。そういう観点からすると,やむを得ない事由だと若干狭きに失してしまうので,正当な理由というような考え方があり得るという議論であったと思います。解任の場合だと,重要な事由なのか正当な理由かは私個人としては悩みますけれども,辞任の場合は受託者そのものが,受託者として活動ができないことについて積極的に言っているような場面で,意に反してやめさせられる場合でもないですし,特に新たな受託者の候補者がいて,継続性に問題がない場合においては緩やかであってもよいと,そういう理解でおります。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかに。
○吉谷委員 今回の提案であれば,正当な理由の方がよいと思っておりまして,それは委託者及び信託管理人の同意を得て辞任することができるということになっているんですけれども,委託者は死亡した場合にはもういないということになりますので,そうすると全て裁判所の許可を得て辞任するのかということにもなりかねないと思っております。そういうこともあって,前回,行政庁による辞任の認可ということもお話しておりましたんですけれども,その点については正当な理由というところの中に,後任の受託者の存在というものも入れておかなければ,うまく回らない場合が出てきかねないと思っております。
○中田部会長 ありがとうございました。
○道垣内委員 吉谷委員のご発言で,私の申し上げたいところに近づいているのですが,このパブリックコメントのための中間試案を出すときに,信託法と異なるのはなぜなのかということに対して何らかの方向性を示さないといけない,と思うのです。そして,それが棚橋幹事がおっしゃった「正当な理由って何なの」という話につながってくるんだと思うんですね。
  新しい法律だからというのでは,多分不十分なのではないかという気がするときに,なぜ正当な理由で辞任できるとするのかは,なかなか説明が難しいような気はします。しかし,今まで意見が出ているので,書くことには全く反対ではありません。ただ,やはり説明しようと思うと,そこを説明しないと正当の理由の意味は分からないのではないかなという気がいたします。
○中田部会長 ありがとうございました。
  その説明の仕方について,特に信託法とどこが違うのかということですね。後任の受託者の存在を考慮できるかとかということを,挙げていただいているわけですけれども,なぜ公益信託に限って考慮すべきなのかというところの説明が,もし追加して,今御発言いただいた方々から何か頂けましたら有り難いんですけれども。
○吉谷委員 その後任の受託者について,前任の受託者が勝手にこの人なら大丈夫と思っているだけでは難しいのかもしれなくて,そこにはやはり行政庁が新しい受託者についても,これは認可の基準を満たしているというようなことが内々に言ってもらえるのか,あるいは認可基準に照らせば,もうこの人ならできるんだということが分かるのか,何かそのようなものがあって公益なんだからというロジックが一つ入るということが考えられるのかなと思いました。
○道垣内委員 ですから,残余財産の死亡後の話を勝手に理解して拡大するとするならば,委託者は自分の目的を達成しようとして,及び受益者は利益を受ける主体として,そして,その達成を引き受けている受託者がいるというときに,やむを得ない事由がないのにやめるということはできない。それに対して,公益信託というのが公益というものを目指してする以上,委託者のコントロールからの離脱の程度が私益信託よりも高く,ゆえに,そこは自律的に,その後運営されるようにするためには,受託者の辞任についても,委託者,受益者の利益ないしは意思というものを尊重する度合いを一般の信託の場合よりも低下させてもおかしくないという説明はできるのかもしれない。
  しかし,あまり説得的だとも思えませんので,今の説明を批判しないでください。
○中田部会長 ありがとうございました。
○中辻幹事 棚橋幹事から的確な御指摘を頂きまして議論が深まったので,大変有り難いことだと思います。
  その中で,小野委員から松本崇さんの信託法コンメンタールの御紹介がありました。その元をたどるとおそらく,四宮教授が書かれた信託法の本に書いてあるフレーズだろうと思います。四宮教授の本は,旧信託法の時代に書かれたものですけれども,やむを得ない事由の例として天災,病気,洋行というのが挙がっていると。これは今の時点で読みますと,ある意味広過ぎるし,ある意味狭過ぎます。受託者の洋行,これがやむを得ない事由というのは,現代社会では当てはまらないことも多いと思うんですね。それに法人が受託者である場合には病気はないけれども,それ以外のやむを得ない事由の例は考えられるようにも思います。
  そうしますと,公益信託の受託者の辞任の要件が,天災,病気などに限られるのか,新受託者の存在というのを考慮できないのか,ここはもう信託法57条1項の「やむを得ない事由」という文言の解釈論に委ねるべき事柄のような気もします。なので,信託法57条1項に厳然として定められている「やむを得ない事由」の解釈の範囲内で解決できる問題なのか,それともやはり別の視点から,「正当な理由」に条文の文言を変えなければ,新受託者の存在を考慮できないのかという問題なのかなと私としては理解しまして,それが伝わるような形で,ここは現在の角括弧を維持したまま両論併記で中間試案に出すのが良いのかなと考えていたところでございます。
○中田部会長 今のような取扱いでよろしいでしょうか。
  それでは,この点については補足説明の中で今の点を丁寧に書いていただくということになろうかと存じます。
  ほかはいかがでしょうか。
○吉谷委員 辞任のところもそうなのかもしれないんですけれども,解任について,前回の提案について,補足説明でも言及していただいているところですが,意見は余り変わらないのですけれども,それは繰り返さず,受託者の解任が現在の提案のままで困難にならないのかというところについて危惧しています。それは,先ほど申し上げたように委託者の死亡,その他の場合において,裁判所の決定がなければ受託者を解任できないというような制度というのが,ちょっと厳し過ぎるのではないかということで,あるいは合意と裁判所の間に行政庁の解任というもう一つの手段があってもいいのではないかなと,まだ思わないではないというところがございます。
  ただ,1点ちょっと確認したいところなのですけれども,「第12 公益信託の監督」のところで,認可基準不適合の場合に勧告,命令の措置をとることができるというふうになっておりまして,そのような勧告,命令に対して従わないような受託者が存在するというような場合には,裁判所はその他重要な事由,あるいは正当な理由,どちらでも受託者を解任することができるということを前提に,この案ができているのでしょうか。また,裁判所がそういう判断をしている間は行政庁は認可の取消しというのは行わないで待っていて,裁判所の方で後任の受託者を選んでもらえるような状態になれば,もうそこで前任の受託者が解任されているのであれば,信託の終了にはならないような形にできるのでしょうかというのが,一つ確認させていただきたいところです。
  その上で,そのような場合ではなくて,受託者が正当な事由なのか,その他重要な事由というふうなところに当てはまるものであれば解任できるということではあるかと思うのですが,受託者が余り真剣に取り組んでいないような場合に,後任の受託者候補が存在するというような理由で,裁判所が解任を決定することができるのかというところが疑問点であるというところでございます。行政庁単独で解任や辞任ができたほうがいいのかということについて,信託協会の中でも統一した意見があるわけではないのですけれども,よりふさわしい受託者がいるということを理由に裁判所が解任できないということであれば,やはり行政庁による何らかの関与というものがあってもいいのではないかというふうに考えているところです。
○中田部会長 ありがとうございました。
  今の御発言は,裁判所にせよ行政庁にせよ,その解任事由をより柔軟にすべきであるという部分と,それからこの提案とは違って,裁判所に加えて行政庁独自の解任権を与えるべきであるということと二つの内容というふうに伺ってよろしいでしょうか。
○吉谷委員 はい。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ただいまの御発言に関連いたしまして,御意見ございましたら頂きたいと思います。
  事務当局の方から何かありますでしょうか。
○中辻幹事 受託者の解任事由についても,先ほど道垣内委員から辞任事由のところで御指摘ありましたとおり,仮に信託法58条4項と異なる解任事由を公益信託では定めよう,その解任事由を正当な理由という文言にしようということを提案するのであれば,それなりの理由付けが必要なんだろうと思います。そして,またここも結局のところ58条4項の解任事由の解釈に行き着くのかもしれません。
  四宮教授の影響というのは非常に大きくて,平成18年信託法改正の立案を担当された寺本元参事官の逐条解説でも四宮教授の本に書かれた解釈が引用されていて,58条4項の受託者の解任事由について,受託者が任務に背いたように見える行為であっても,ささいなミスや怠慢や不正確な行為は解任事由には当たらないという解釈を踏襲することを改正で明示したと書かれています。
  吉谷委員が例として挙げられた,受託者が余り真剣に取り組んでいなかったり能力が不足している一方で,よりふさわしい後任の受託者候補が存在するような場合ですけれども,これはなかなか,今申し上げた四宮教授の本や寺本参事官の逐条解説を踏まえると,58条4項の解任事由に当たらないときが多いように思います。また,公益信託の受託者が行政庁の勧告命令に全然従わないという状況である場合,これは私益信託ではあり得ない状況ですけれども,その場合には,裁判所は58条4項に該当するとして解任できそうな気もし,行政庁が裁判所の判断が出るまで認可の取消しを待つということもあり得るでしょうが,逆に行政庁が裁判所の解任の判断を待たなければならない理由もないように思います。いかんせん,事案ごとの判断になるとしか申し上げようがない面がございます。
  それから,吉谷委員からは,行政庁に受託者の解任権限を付与したほうがよいのではないかという御意見を一貫して頂いているところでございます。この点につきまして,事務局としては,主務官庁制を廃止し,行政庁の権限を認可基準の充足性を確保するために必要な範囲に限定することを前提とすると,認可基準の充足性と直接関連しない受託者の辞任,解任の場面において行政庁の介入を認めることは不要ではないかと考えています。けれども,吉谷委員の御意見の理由の中には大変合理性があると感ずる部分もございまして,なぜならば,認可基準を充足しないと,行政庁が認可の取消権限を行使してその公益信託を終了させるということになるのですが,そこまでしなくても,公益信託内部のガバナンスで公益信託の受託者を解任するなどその任務を終了させれば問題が解決する場合もあるというのはそのとおりであると受け止めております。
○中田部会長 今の点についていかがでしょうか。
  これは,前回,吉谷委員から代案を具体的に御提案いただきまして,それについて前回御審議いただき,また事務当局の方でも検討した結果,ゴシックはこのような形にした上で,その御意見の内容について説明するというようなことが今回の提案になっているかと存じます。前半の部分については,結局は正当な理由,あるいはもう一つ,重要な事由でしょうか,それの解釈の問題として,それはどういうふうに説明で盛り込むのかは分かりませんけれども,ゴシックの部分自体に更に別の事由を書き込むということよりも,解釈の問題かなというふうには思います。行政庁の権限については,ずっと吉谷委員から御提言頂いておりますが,その提言を受けて,特に成立認可の取消しに至らないような事態にどういうふうに対処するのかということが,御指摘によって問題点が明らかになってきたと思いますので,それを更に説明をし,検討していただくということになろうかと存じます。
○吉谷委員 ちょっと先ほど辞任と解任のところをごちゃごちゃにして少し話してしまいましたので,特に解任につきましては,信託管理人が後任の受託者に替わってほしいなと思っている程度では,裁判所は解任することができないという,そういう御提案であるというふうに理解をしておりますので,そういう提案でいいのかというところについて問題提起があるということで,何らかの形で反映させていただけないかなと思います。
○中田部会長 関連してございますでしょうか。
  それでは,今の御意見を受け止めまして,説明の中になるかどうかというところだと思いますけれども,検討していただくということになろうかと存じます。
  ほかに。
○中辻幹事 先ほどと同様に第12以降についても平川委員の方から御意見を頂いておりますので,ここで御紹介させていただきます。
  有り難いことに,第12以降もおおむね賛成の御意見を頂いてございます。甲乙分かれているところ,第16の2,それから第17の1,第17の2,第18の4,第19の1については,いずれも乙案に賛成というふうな御意見を頂いています。これらを踏まえて,また御審議いただければと思います。
○中田部会長 ただ今第12と第13について御意見を頂いておりますが,ここでも結構ですし,それ以外のところでも結構でございますので,御意見をお出しいただければと存じます。
○新井委員 31ページの「第19 その他」の1について発言をしたいと思います。
  この部分につきましての私の前回の発言については,小野委員からの御指摘もありましたように,私の発言内容が必ずしも正確ではなかったのではないかと思い,そこで改めて発言させていただき,私の意のあるところを議事録に残しておきたいと思います。
  まず第1点として私は,自己信託,それ自体を否定するものでは全くありません。法律で認められた以上,それは健全に発達するということを願っております。その上で,目的信託と公益信託というのは,ここでの部会での議論では一応切り離すことにはなっているわけですけれども,実際には両者にはかなりの類似性があります。それで,目的信託については自己信託による設定が認められておりません(信託法258条)。自己信託による公益信託の設定をもし認めるとすると,目的信託と公益信託は,機能的には類似であるにもかかわらず,極めて大きな違いが出るということになります。ですから,そこのところは是非慎重に考えていただきたいというのが第1点の問題提起でした。
  それから,第2点についてですが,自己信託が本当に効力を持つためには,やはり何らかの財産の切り離しというのが必要だと思いますが,一体何をもって財産の切り離しとするのかということについては,私,前回のこちらの信託法部会に参加しておりませんので,議論の内実が分かりません。それで,立案担当者のものを読んでも,何をもって自己信託における財産の切り離しとするかということについては,必ずしも十分な記述を見付けることはできません。実務においても,ややそこは混乱が見られるような気が私はしているわけです。例えば,公正証書だけ作ればそれでいいのか,あるいはどういう内実のある切り離しが必要かということについてやや混乱がありまして,私としては,そういう問題を認可のところに持ち込むのはやはりかなり混乱をするのではないかという心配とか危惧がありまして,それで前回のような発言をさせていただきました。
  ですから,自己信託自体を否定するものでは全然ありませんけれども,今申し上げた二つの点で,私としては甲案を指示するわけです。ただし,乙案賛成の意見もありますので,パブリックコメントとしては甲案,乙案を並べて意見を聴くというのがフェアではないかと考えます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  甲案を指示する,その理由付けについて明確に今御説明いただいたかと存じます。
  この点でも結構ですし,ほかの点でも結構ですが,いかがでしょうか。
○小野委員 前回の議論を繰り返すことはいたしませんけれども,私の趣旨としては前回と同様であるということと,あと今の新井委員の御発言の中で切り離しという言葉,表現がなされましたけれども,それは何か法律用語としてよく分かりにくいんですけれども,意を解すると,処分行為があるや否やという議論かと思います。この点は典型的な自己信託における論点ですが,それもある意味では既に議論が十分なされた点で,要するに処分はないが,信託法の適用があるということに尽きるのではないかと思います。
  もちろん自己信託においても,そこで民法的な意味における処分というものを観念すべきだという議論は法律論としてはあり得るかと思うんですけれども,それは恐らく私法体系全体にまで及ぶようなことなので,なかなかこの場での議論だけですむような話ではないと思います。今の法制度の中においても切り離しといいますか,信託財産の独立性,独自性を認めるための措置は講じられていると思いますから,新井委員が自己信託制度そのものは制度として認めるとおっしゃっていながら,切り離しがないというのは議論として整合してなく,やはり自己信託に対する新井委員としてのやや疑問符を持っているという趣旨で理解すれば,よく理解できるところでもあると思うんですけれども,切り離しがないという議論というのはちょっと違うのではないかと思って,発言させていただきました。
○中田部会長 それぞれのお立場から御意見頂きまして,それを踏まえて説明の方に御趣旨をいかせるような形で取り込んでいただくことになるかと存じます。
  このほかいかがでしょうか,ただ今の点でも結構ですし。
○長谷川幹事 別の論点について申しあげます。
  31ページの第19の「2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い」というところでございます。前回議論があり,反対するご意見もあったわけですが,旧法適用の公益信託をそのまま残す考え方につきまして,甲案・乙案と併記するか,(注)として挙げるかという問題はあるかもしれませんが,いずれにしても,何らかの形で残していただきたいというのが意見でございます。
  理由といたしましては,これまでの議論の中でも,特段現行の公益信託について弊害は生じていないということがほぼコンセンサスだったのではないかと理解をしておりまして,そうした中で,移行時及び移行した後も含めて,新たな負担を課していくということについては,やや疑問があると思っているのが1点です。
  2点目の理由といたしまして,これは前回も議論がありましたけれども,公益活動を活性化させていくために公益信託をより活用させる観点から,そういった負担を増加させるというのはいかがなものかということでございます。
  3点目といたしまして,先ほど申し上げた理由の2点目と関連するわけでございますけれども,今ある公益信託を利用している方々へのインパクトが不明であるものですから,そういったことも含めて確認できる形でパブリックコメントに付すほうが適当なのではないかと思う次第でございます。
  あと,前回の議論も踏まえてということだと思いますけれども,補足説明の中で,適用関係の明確化が必要だということが書かれてございます。この点は,会社法施行時の特例有限会社の例もありますように,表示といいますか名称といいますか,そのあたりのルールをある程度明確化していけば解決される部分もあるのかと,前回も申し上げましたけれども,思っているところでございます。
  また,別の論点として,主務官庁制を廃止するということについては,新たにできる公益信託についてはそういう方向性だと理解していますけれども,厳正かどうかという議論はあるものの,既存のものについても廃するということであったかどうかというのは,必ずしも議論が詰まっていなかったと理解しているところでございます。
  以上は意見にわたるところでございます。
  大きな2点目といたしまして,質問と意見がございますけれども,31ページの2の(1)の(注)で,「一定の要件を満たしている公益信託については,簡易な手続とする旨の考え方がある」と書いていただいているのは有り難いと思っておりますけれども,補足説明の中にあるように,新しい公益信託は従来のものと根本的に違う点があるものだと考えると,一体その簡易な手続というのはどういったものを想定しておられるのかというのが,まず質問でございます。その上で,意見としては,今申しあげた点が分からず,ある程度のイメージも描けないままパブリックコメントに付すというのは,読み手の立場からすると不親切なのではないかという気がいたします。こちらは意見にわたるところでございます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  では,今の移行について御意見をお出しいただきたいと思います。
○深山委員 正に,長谷川幹事がおっしゃったところですが,私も,この19の2の(1)の(注)のところが,その簡易な手続というのが,どの点がどう簡易なのかというのが分かりにくいなと思っていました。それは,そもそも,(1)のところの移行の認可というものが,何をどう審査されるのかということが,必ずしもはっきりしないからなのかなという気がしました。何となくのニュアンスとしては,通常の公益信託における認可基準に照らしてということなんだろうなというのは漠然とは分かるんですけれども,既存の公益信託について,それは全く新規に作る際の認可基準の判断と全く同じ判断をするということなのか,そうではなくて,既に存在しているということを踏まえて何かそれなりに移行の認可の基準というものを設けて,新規のものとはやや異なる,アレンジした物差しで考えるのかということがあって,それとの関係で,更にそれより簡易なものというのが初めて,それぞれの比較において出てくるんだと思うんですね。
  なので,本文の方の移行の認可がどういう判断基準でなされるのかということを明らかにした上で,それとの比較でどこがどう簡易なのかということを,補足説明になるのかもしれませんけれども,やはり示さないと,どう違うのかが分からないというのは私も同じ意見であります。
○中田部会長 ありがとうございます。
  ほかに関連する御意見はございますでしょうか。
○小野委員 今の議論の関連なんですけれども,現在,信託銀行以外の法人が行っている給付型の公益信託がそれなりに存在しているという前提に立ち,なおかつそういうものは全部不特定多数の方に対する給付を公益目的でやっているという前提に立つと,簡易という以上に自動的に認可を与えてもよいのではないかと思います。事後的に監督の中で何か不適切とか改善すべきものがあれば,それは是正措置とかをするというようなことで,簡易が実質自動につながるのかもしれませんけれども,簡易ということを細かく要件定義をするようなことをしなくても,今現在,各官庁がそれぞれの所管において,また地方公共団体の所管において認可しているものは,かつての公益法人法の改正のときのように,ちょっと問題がある,ため込んだりとか,何となくいろいろ問題があるというものが現在あるわけではないという前提に立つことは十分できると思うので,簡易が何かという議論以上にほぼ自動でよろしいのではないかと思っております。それがいけないという理由とか立法事実とか社会的問題があったという話は聞いたこともないですし,元々助成型,給付型ですから,問題になりようもないと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  3種類の問題をお出しいただいているわけでして,まず,移行の認可の基準を示すべきではないかと。2番目に,簡易な手続というのは一体,要件,効果がどういうものなのか。場合によっては簡易な手続ではなくて,ほぼ自動でよいと。ほぼ自動というのと簡易なというのがどういう関係にあるのか,ひょっとしたら考えていることはそれほど違わないのかもしれませんけれども。それから,三つ目といたしまして,第19の2(3)に,期間経過後に終了するという規律に対して,長谷川幹事の方から,そうではなくて,むしろいつまでも現行の制度の公益信託を残すべきであるという御発言だったかというふうに承りました。3種類の問題が出ているかと思います。
  関連して御意見ございますでしょうか。
○道垣内委員 簡易な手続というのは具体的に何かという話なんですが,この中間試案において,簡易な手続というのはこういうものですというふうに決め打ちをして聴くというのが唯一在るべき選択肢ではないと思います。実際問題として公益信託に関心を持ち,あるいは公益信託を運営し,あるいは利害関係を持っている人が,どのような部分について負担を感じるのかということを正にパブリックコメントを通じて明らかにしていただくということは十分にあり得ると思います。ただ,確かにこれのみを書きますと,何について簡易化することが考えられるのかということになり,若干の例がないと何にも分からないであろうかと思いますので,それは例を,何とか書くということはあり得るかもしれません。ただし,ここで一つの具体的な簡易な方法を特定的に提示して,その簡易化方法の是非について聴く必要はないのではないかなと思います。
  2番目に,フリーパスという選択肢は,本来的には,この中間試案をもとにしたパブリックコメントでは聞けない事柄ではないかと思うんですね。と申しますのは,公益信託法の全体についてパブリックコメントをしているときに,こういうふうな機関を置きなさい,こういうふうな制度を置きなさいというふうに,かなり根本的に現在の公益信託とは違った枠組みというのが採られる可能性はまだ排除されていないわけですよね。排除されていないとなりますと,これはもう既存の公益信託は,新しい公益信託法における要件を,ほとんどの場合,満たさないということだって考えられるわけですから,それは実体要件が定まった後に考えてみるほかはない。現在,公益信託として行われているものは今回も実体要件を全部満たすよねと,だからほぼフリーパスでいいのではないかということも考えられるんですが,フリーパスという選択肢を掲げるというのは難しいのではないかという気がいたします。ただ,今私が申し上げましたように,新しい公益信託法における実体的な要件というものの作り込み次第によっては,ほぼ現在のままのものをそのまま認めてよいということはあり得るというのは,補足説明等で明記するということは必要なのかもしれないと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
○吉谷委員 (注)のところで簡易な手続とする旨の考え方があるという形で書いていただいておるわけですけれども,この議場では考え方があるというよりは,それについてはもうコンセンサスが得られているということではないかと思いますので,もう少し強い表現でもよろしいのではないかと思います。
  ただ,ちょっとそれは表現の問題でありまして,小野委員のおっしゃっていただいた御意見は,私が前回,みなし認可という形で申し上げたことと結構よく似た考え方だろうと思いまして,それにつきましては,解説等で例示で挙げるのであれば,事後的な形で新しい行政庁がチェックに入るという形でも済むというような考え方があるんだというようなことを例示として示していただければよろしいのではないかと思っております。それで,そういう簡易な手続というのが,それが届出なのか何になるかというのはまだもちろん分からないわけではあると思いますが,簡易な手続で移行できるということを前提としまして,そういうのが認められない場合であれば,長谷川幹事がおっしゃったような考え方というのが対極あるということについて,お示しいただくのがいいんではないかなと思いました。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  吉谷委員の御発言の中で,あるいは小野委員もそうかもしれませんけれども,事後的にというのですと,今回のこの事務局提案というのは明確性ということを重視していると思うんですけれども,事後的ですと,いつの時点で新法の適用を受けているのかということがやや不明確になるのではないかなというふうに,今伺っていて思ったんですが,その点はいかがでしょうか。
○吉谷委員 新法の適用については,みなし認可なのか何か分かりませんけれども,みなし認可にも一定の要件がまた掛かるのかもしれませんけれども,その場合には施行時に新法適用に切り替わるということだと理解しております。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ほかにいかがでしょうか。
○山田委員 難しい問題ではありません。小さなことです。31ページの第19で今話題になっているところと一緒なんですが,2の(3)の冒頭ですが「上記(2)の移行の認可は」とありますが,この上記(2)のというのが必要かどうか。上記(1)ではないかなという気もするんですが,そうすると,(2)のところの移行の認可には何も付いていないので,すいません,整理をお願いいたします。
○中田部会長 御指摘ありがとうございました。
  ほかに。
○林幹事 第19についてですが,繰り返しかもしれませんが,私自身は旧法の適用をした形での現行の公益信託法の下での主務官庁制の公益信託がずっと続くというのはやはりよろしくないと考えます。何十年先にも主務官庁制の公益信託と新しい行政庁による公益信託が両建てで残るというのはよろしくないと思います。そういう意味においては,今回の御提案に賛成しているところです。
  それで,手間の問題というのは非常によく分かるのですが,道垣内委員がおっしゃったように,法がどういうふうになって,それで現行の公益信託がどういう状況にあるのかというのが分からないと決まらないところです。簡易な手続でというのは,できればそれがいいというのは分かっていますし,場合によっては紙一枚出すだけかもしれません。そういう事例が多いのであれば,それを踏まえた上で,そこからはみ出る手間のかかる事例だけきちんと手当てすればよいと,そういう可能性もあるところと思います。そういう前提では,今の時点においては私としては今の御提案のような形で聞いていただいても,それは全然問題ではないと考えています。
○中田部会長 ありがとうございました。
○中辻幹事 いろいろ御指摘をありがとうございました。
  林幹事もおっしゃいましたけれども,道垣内委員が正に本質を突かれていて,新たな公益信託の認可基準がどうなるかが先決であって,それを踏まえて移行措置について検討するというのが本筋です。ただ,実務的には関心の高いところですので,第一読会以来論点として掲げさせていただいているということになります。
  また,簡易な手続について例示した方が良いと言う御指摘がありました。私どもが考えていた典型的な例としては認可行政庁への届出制なのですけれども,それが33ページの上の方に書いてある②のように,現行の特定公益信託なり認定特定公益信託の要件を満たすものなら届出で良いというくくりにすると,なぜ税法の要件が入ってくるかちょっと説明がつかないようなところがありますし,仮に届出制にしたとしても,実際その届出を受けた認可行政庁の方が認可基準を満たしているかどうかを判断するのであれば,結局のところ認可制度と何も変わらないということになりますので,引き続き検討したいと思います。
  それから,長谷川幹事から旧法適用の公益信託を新法施行後もそのまま旧法信託として存続させる案を提案として本文又は(注)に残すべきであるという趣旨の御提案がございました,長谷川幹事は,川島委員もですが,ある意味民間,実務家のユーザーの代表ですので,重く意見は受け止めたいと思います。それに対し,林幹事からは,いや,旧法適用の公益信託がいつまでも残るのはどうかという御意見もありました。この点については,他の委員幹事の方々からもぜひ御意見をいただければと存じます。
○中田部会長 御意見を頂きたいということですけれども,特に先ほど私三つの問題点の御指摘があるということで,その三つ目ですね,現行法の下での既存の公益信託をそのままずっと残す可能性を認めるかどうかについて,長谷川幹事と林幹事からそれぞれ御意見を頂いたわけですけれども,ほかに。
○山田委員 私の意見は,林幹事がおっしゃったのと一緒で,この(3)の考え方は是非残すべきだと思います。その理由は,廃止する立法事実があるかと言われると,ちょっと具体的には持ち出せないんですけれども,公益信託という制度をやはり二本立てで続けていくということについての過剰感というんでしょうか,制度の過剰感。そして,今各省庁に分けて行われている主務官庁制というのが,規模としては余り大きくないのかもしれませんが,当面残るということの行政コストの説明というんでしょうか。いいものを作って導入しようということですので,やはり過剰なコストが移行に生じないようにすべきだという点は全く異論ありませんけれども,(3)のところは是非残していただきたいと思います。
○新井委員 私も林幹事,山田委員の意見に賛成です。
  現状では,確か公益信託は400件台だったと思いますけれども,公益法人のときの法人数に比べれば少ないので,やはり全面的に移行させるというのがよろしいのではないかと思います。二つの法律があって,公益信託がそれぞれ別の法律の下にあるというのは一般にも理解は容易ではなく,これだけ努力して新しい公益信託を作るわけですから,やはり統一化したほうがいいのではないかと思います。
○中田部会長 ほかに。
○小野委員 前回の議論,前回の発言の延長になるんですけれども,利便性からしたらおっしゃられるとおりなんですけれども,信託法が変わったときも,別に旧法信託は契約時基準で残っているわけです。いまだにおびただしい数の旧法信託があるかと思いますけれども,別に契約だからしようがないと思います。公益信託は契約プラス認可という視点がありますけれども,契約としての将来的に旧法公益信託が強制的に認可を取れないから取らなかった,もしかしたら善意でどこか地の果ての方の公益信託が,よく知らない間に終了させられるという必要もないような気がします。利便性からしたら,そういうのもどうぞ新しいものに移行してくださいという努力は必要かと思うんですけれども,そこに何か強権を発動しなければいけないような状況もないと思いますし,大した議論ではありませんけれども,私法的な契約をそういう形で終了させなければいけないという意味も,合理性といいますか,公共の利益もないような気がいたします。
○中田部会長 ありがとうございました。
  今の御発言は,主務官庁の監督は続くという前提で理解してよろしいですね。
○小野委員 先ほどの吉谷委員との議論に戻るかもしれませんけれども,主務官庁のところは認可は新しいものに移行するということでもいいと思います。そういう立て付けになれば,新しい認可に自動的に移行しつつ,それによって強制的に終了しないことになると思います。そっちはまた別の議論だということになれば主務官庁も残ることになって,それでは不都合ではないかという議論はよく理解しますけれども,かといって信託契約そのものが終了になりますというのも何となく納得感がないということであります。
○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。
  19の2以降については,大体御意見いただきましたでしょうか。
○長谷川幹事 1点だけ申しあげます。先ほど申し上げたことを踏まえても,やはり旧法適用のものはなくすべきだという考え方はあるとは思うのですけれども,先ほど新井委員もおっしゃられましたように,前々回の資料において472件という数字が出ており,これらに与えるインパクトを聴くという意味で,パブリックコメントでは置いておいてもいいのではないかというのが私の意見でございます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  それでは,頂いた御意見を事務局の方でまた検討していただくことにしたいと思います。
  ほかはいかがでしょうか。今回,新しい提案も出ているところでございますが。特にシ・プレの部分ですね。第15の2の(2)について,これまでのここでの御審議を踏まえて事務当局の方から新しい提案が出ているわけですが,これについて,もし御意見を頂ければと存じますけれども。
○林幹事 第15の2の(2)のシ・プレのところについてご質問です。第17との関係です。前回の提案だと第17にいってからこちらの方に来るというので,一応,論理的には流れていたと思っていましたが,この提案だと両者の優先関係というのがどうなるのでしょうか。一見,並行して同時にあるように思ったものの,実質的には第15の2の(2)の方が優先するようにも思えたのですが,その関係に関する御提案の趣旨を教えていただければと思います。
○中辻幹事 特に第15の2の方が優先するという関係ではなく,第17と並行して存在する規律という趣旨で提案しております。
○吉谷委員 第15については,御提案のとおりでよろしいのではないかと思っております。
  一応ちょっと念のための確認として,先ほども御説明があったのかもしれないですけれども,今回,第15の本文及び(注)のところでは,前の部会資料42の(注2)で書かれていた合意等の意味について特に言及がされておりませんで,信託法第149条の第2項や第3項の適用がここにはあるのだということだと私は理解しておるのですけれども,それはそのとおりということでよろしいのでしょうかということと,パブコメに付すときにはそれはどんな形で示されるのでしょうかということを教えていただけますでしょうか。
○中辻幹事 第15における「合意等」の意味については,前回沖野幹事からも御指摘がありましたが,部会資料42の(注2)で書きました「合意等」の意味合いを変えるものではなく,「合意等」という用語を使うことにより信託法149条2項及び3項の適用があるということを含意しているものでございます。
  少し前までの資料では(注)というのをけっこう自由に使っているので,今さら大きなことは言えないのですが,この中間試案のゴシックを提案するに際し(注)を余り便利使いするとかえって分かりにくくなると思いまして,中間試案では,本文の提案と反対の考え方又は別の考え方に限り,(注)で摘示するという構成にしております。
  したがって,今の「合意等」の意味のようなゴシックの内容の説明的なものについては,(注)ではなく補足説明の方に書いてパブリックコメントに付すということを考えているところでございます。
○道垣内委員 別のことでもよろしいでしょうか。
  林幹事がおっしゃったことに関連するのですけれども,恐らくこの仕組みというのは,例えば信託の目的が達成できないとなった場合に,第16の3か2か分かりませんが,委託者,受託者,信託管理人は,いずれでも信託の終了を求めて裁判所に申し立てることができ,その3人が合意をすると,合意によってやめることもできるかもしれませんけれども,第15の2の(2)のアによって,その別の公益目的に使うというふうに転換することもできるという,そういう仕組みであって,その合意が調達できないときには仕方なく,仕方ないかどうか分かりませんが,やめるという,そういう仕組みになっているんだろうと私は理解いたしました。
  それはそれで私は結構だと思うんですが,1点だけ気になりますのは,第16の3は,第2文において「委託者については信託行為において公益信託の終了命令の申立権を有しない旨を定めることができる」となっているわけですね。この委託者が公益信託の終了の申立権を有しないときにも,第15の2の(2)においては,その人の合意がないと,他の公益目的に変更をするということはできないのだろうか。つまり,そうなると委託者について,信託行為において公益信託の終了命令の申立権を有しない旨を定めてしまったら,委託者が現に存しないわけではありませんので,もはや終了させるほかないということになってしまうのではないか。ならば,2の(2)のアにおいて,本当は,委託者が終了の申立権を有しないときには,委託者以外の人の合意で目的の変更ができるというふうにしないと,整合性がとれなくなるのではないかという気がします。ちょっと今,急に思い付いたことなので,どこかに論理の誤りがあるかもしれませんけれども,御検討いただければと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  ここは第16の(前注)で信託法第163条の適用が前提となっておりまして,27ページの補足説明にもありますように,信託の目的達成,あるいは達成不能によって終了するというのは前提となっていて,しかし,その合意があれば変更ができるという規律なんだろうと思います。しかし,その上で,やはり実質的に委託者の取扱いが第15の2の(2)と第16の3とで齟齬があるのではないかという御指摘だったと思いますので,その点を更に御指摘を踏まえて検討するということになろうかと存じます。ありがとうございました。
  今回のこの部分は新しい御提案ですけれども,今,道垣内委員から御指摘を頂きましたが,ほかに何か御意見を頂くことがございましたら,お出しいただきたいと存じますけれども。
  こういう形でパブリックコメントに付するということで,特に御異論はございませんでしょうか。
  それでは,頂きました御意見を更に検討し,あるいは事務当局の方で次回までに更に検討を深めて,この規律について練り上げていくということになろうかと存じます。
  今の点を含めまして,ほかに第12から第19までどこでも結構ですけれども,ございませんでしょうか。
○林幹事 第12ですが,ちょっと細かい話で恐縮ですが,4の下の(注)が今回削られていて,そこについてのコメントがいただけてなかったと思いますので,一応意図を確認させていただければと思います。その点を削ることに特に異論はないのですが,補足説明がなかったからという趣旨において伺いたいです。それから,従前来の繰り返しですが,一応ここで述べるだけ述べますと,第13の3の(2)の(注),あるいは「第15 公益信託の変更,併合及び分割」のところの1の(1)のウのところですね。行政庁の許可を必要とするのではなくて事前に行政庁の意見なりを聴くという,これについて,ちょっとこだわりますが,(注)ではなくて格上げしていただいてよかったというのが率直なところなんですが,ただ,先ほど御説明あったように,その内容について補足説明なりできちんと説明の上していただくということなので,そのとおりしていただいて,意見も聞いていただけたらというところです。
  細かいのですが第12のところだけ,意図があればお教えいただければと思います。
○中辻幹事 第12の1のゴシックの(注)を削除した理由ですけれども,これは,深山委員から,第45回の部会で,行政庁の公益信託の認可の取消しというのもいろいろ場合があって,強制的に取り消すべき場合もあれば,任意的に取り消すべき場合も御指摘があったことを踏まえたものでございます。それを受け,今回の部会資料44の28ページで公益信託の認可の取消しの効果というのを一応整理して記載しているわけですが,その際に,従前あった第12の1の(注)はゴシック本文の提案とは対立する考え方ではないということに気付きまして削除したということでございます。
  もう一つ付け加えておきますと,今の第12の1で認可行政庁の監督権限が書き尽くされているかというと,そうではありません。これだけですと行政庁は受託者が勧告命令に従わなかった場合のみ認可を取り消すという読み方もできそうですけれども,それ以外の場合にも行政庁が公益信託の認可を取り消すことは想定されますので,補足説明なりできちんと御説明したいと考えているところでございます。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
  先ほど,舘野関係官から第16の2について,甲案,乙案に関しまして,甲案を採る場合に終了の認可あるいは成立認可の取消しの基準といいますか,そういうものを示すかどうかについてのお話もあったかと存じますけれども,この第16の2の甲案,乙案について,更に御意見をお聞かせいただければと存じますが。
○林幹事 乙案ですけれども,今回新たに出されたもので,改めて弁護士会でも議論したところですが,先ほどの御説明を含めてそれなりに合理性あると思っており,弁護士会でも乙案に賛成という意見もそれなりに出たところですので,パブリックコメントでこのような形で聞いていただくのもいいのではないかと思っています。
  特に行政庁なりの監視というか,行政庁の目が必要だというのは,その事後的に資産がどのように処理されるかというところがポイントだったかと思いますが,そういう意味においては,それは清算の問題であって終了の問題は別だと整理した上で,このようにされるということについて,一つの考えとして十分合理性はあると思いました。
○中田部会長 ありがとうございます。
  今回,乙案を立てるということについては,御異論はございませんでしょうか。
  では,この形で出すことにいたしまして,その上で甲案について何らかの基準を示すかどうかですけれども,特に示さずにこのような形でよろしいでしょうか。それとも,何らかの認可の基準を,ゴシックで入れるか説明になるかはともかくとして,示したほうがよろしいということでしょうか。
○深山委員 以前も意見というか,質問的な意見を申し上げたような気がするんですが,終了の認可と成立の認可の取消しというのが両方掲げられていて,それが単に言葉の問題であったり形式的な用語の問題としてどちらが適切かということなのか,そもそも違う基準をイメージしているのかということが,どちらなのかなという気がして,以前も申し上げたのは,いわゆる取消しすべき事由があって,認可基準に照らしてそこから外れるような場合と,別にそういうことはないんだけれども,何らかの理由でもう終わりにすべきだというような場合があり,後者の終了を妥当なものとして認めるというような意味での認可というものは,やはり判断している中身が違うと思うんですね。ですから,この終了の認可というのが,そういう認可基準に外れるということではない部分を判断基準としているのであれば,そういう言葉の方がふさわしいという気がします。
  従前の立法例では,そういうものも含めて取消しという言葉を使っている例があるような気はするんですが,それはそれとして,認可基準から外れるというのではない終了の認可という概念というのも要るのかなという気がいたします。そのことから,部会長の質問にあるように,そもそもここで言う認可というのは何をどう判断するものなのかということはやはり明確であったほうがいいし,そのこととの関係で,用語としてのどちらがいいのかということも決まってくるのかもしれないので,できれば何か基準めいたものが示せたほうがいいと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  重ねて恐縮でございますけれども,もし具体例がありましたらお示しくだされば,事務当局は喜ばれると思いますが。
  では,またそれは検討していただくことにいたします。
  第16の2については,ほかに御意見ございますでしょうか。
  それでは,今の点を含めてまして,ほかに……
○沖野幹事 今の認可の基準の点は非常に難しく,そうだとすると,乙案の方がよろしいのかなというふうに傾いているところではあるんですけれども,1つ確認させていただきたいことがあります。行政庁によるチェックの主眼は,公益という目的が最後まで貫徹されるかということであり,終了のときも清算の在り方が適切になされているか,残余財産の帰属等がきちんとされているかの確認といった観点からの関与が考えられるということだと思うんですけれども,そこのチェックはどの段階でどのように行われるかです。認可の際にどういう決め方になっているかを判断するというところでその確認は終わっているのでしょうか。それとも,清算終了段階の,例えば最終計算報告の相手方に行政庁が含まれるとか,あるいは前回に公示の問題も取り上げられたかと思いますけれども,行政庁への届出などをすることで,その際に適切にされているかということも事実上,チェックされるとか,そういったプロセスが後に控えているという想定だったのでしょうか。そこの確認をさせていただければと思います。
○中辻幹事 乙案は前回の山田委員の御示唆を受けたものでして,従前の部回資料43では,清算段階について行政庁の関与が必要だからということを一つの理由として甲案のみを提案していたわけですが,終了が妥当か否かの判断と,清算段階での残余財産の帰属内容の処理が適切に行われているかの判断は別の問題であり,現時点では清算段階について行政庁の関与が必要であるということは甲案の理由にはならないと事務局としては考えています。
  また,先ほど深山委員から,終了の認可と,成立の認可の取消しの意味合いの違いについて御示唆をいただきましたように,公益法人認定法29条1項4号では,公益法人が公益認定の取消しを行政庁に申請した場合には,それは任意的取消事由でなく,強制的取消事由であり,必ず公益認定が取り消されるということになっており,終了の認可という用語は使われておりません。もっとも,公益法人には終了という概念がなくてそれに対比されるのは公益認定の取消し又は法人の解散ということになりますから,いちがいに比較することはできないとも思います。
  その上で,現在の甲案の理由なのですが,清算段階での公益性は終了の認可や認可の取消という方法とは別に確保するのですが,成立から終了に至るまでの間の公益性の確保という観点から,やむを得ない事由なり正当な理由なりといった要件を設け,その中で,沖野幹事が以前おっしゃっておられた,受託者や信託管理人が1年間不在となった場合に公益信託が自動的に終了することの不都合を回避するための方策というか抑えとして行政庁の認可が必要なのではないかという理由なのであれば一定の合理性があるようにも思われ,そのような趣旨で行政庁が公益信託の終了の可否を判断するというのが現在の甲案でございます。
○沖野幹事 適切に整理してくださったと思うんですけれども,従来言われていたことは,一つは自由にやめられるということが適切なのかです。自由に終了させて,一度やり出した活動をもう明日にはやめますというようなことでもいいのかという,その問題が一つはあったかと思われ,その問題を捉えるならば正当な理由とかそういうことになるんだと思います。これに対して,もう一つは,やめるのはもう終了事由があるならというか,三者合意でやめられるということは構わないという考え方を採って,三者で合意でやめるのも構わないのだから,潜脱ではないのかもしれませんけれども,どのようなものであれやめるのは構わないと,ただ財産だけどうするかということが問題なんだという理解です。これらのどちらに力点を置くのか,あるいは両方の話をするのかということだと思います。ただ,いずれにしましても,あるいはどちらからしましても,財産の点は押さえておかなければいけないのではないかという感じがするものですから,終了の認可というのも,清算もきちんとやれますかということも含めて当初の認可をするということは考えられるのかと思いますけれども,時期的に具体化した段階での確認の問題があるように思われます。乙案に立った場合は,その押さえは何か別途されるのか,それともそもそも残余財産の帰属の在り方がどうなるかというのは認可の段階で,最初の段階でもう決めてあるところなので,そのとおりされましたかというところのチェックは特にされないということなんでしょうか。それとも,それはやはりそれは行われるのだと,方法としては計算報告であるとか届出であるとか,あるいはさらに別途考えるとか,そういうことなのか,そこを念のため確認させていただければと思います。
○中辻幹事 分かりました。事務局としては,残余財産の帰属先について公益性が確保されることは最初の信託成立の段階でも最後の清算の段階でも必要であると考えておりまして,現在の第16の2の甲案と乙案のいずれを採ろうとも,そこは確保されていることが前提になっています。
○沖野幹事 どのように確保されているのでしょうか。
○中辻幹事 以前の甲案のように残余財産の帰属先について,それが正当な帰属先に行き着いているか否かをチェックしてそれがなければ公益信託を終了させないという選択肢ではなくて,例えば,最後の清算の段階であれば行政庁への報告を義務付け,残余財産の帰属先を不正に違えた受託者に対しては,当分認可を与えないことにするなどのサンクションを課すなどの方法は考えられるように思います。ただ,まだその方法については詰め切れておりませんので,沖野幹事の御指摘を踏まえて検討したいと思います。
○中田部会長 沖野委員のおっしゃっているのは,「第17 公益信託の終了時の残余財産の処理」について,ここは定めを置かなければならない。それから,最終的な帰属についての規律があるのだけれども,それを最終的に何らかの形で確認する制度が必要ではないかということになりましょうか。
○沖野幹事 ええ,すみません。きちんとそう言えばよかったんですけれども,そういうのを置いたほうがいいのではないかという感覚を持っており,手法としては,繰り返しですけれども,計算報告か届出か,そういった,清算はきちんと終わりましたということを行政庁が関知できるプロセスを入れなくていいんだろうか。ただ,信託だけそうなのかという問題はほかの制度との関係であるかと思いますけれども,そういうことはなくていいんだろうかということが元々の関心ではあります。
○中田部会長 ありがとうございました。
  第16の2の甲案,乙案のどちらを採るかというのとはまた別の問題として,新たな御指摘を頂いたかと存じます。
○小野委員 公益信託が終了しても,まだ信託財産は残っているわけですから,監督は清算が結了するまで継続しているというような理解で私はいるんですけれども。そうすればきちんとしたところに財産がいかなければ,終了していても行政処分が可能かと思うのですがいかがでしょうか。
○中田部会長 ありがとうございます。
  今の御発言を前提にしますと,監督権限は最後まで残っているわけだから,特段の規律を置かなくても,その監督権限の運用によって対応できるのではないか,こういう御指摘ですね。
○小野委員 はい。
○中田部会長 ありがとうございました。
  沖野委員の御指摘と小野委員の御指摘と関連すると思いますので,両方併せて検討していただこうと思います。
  ほかにございますでしょうか。
○明渡関係官 第16の2で甲案,乙案を採るかということについては,ほかに影響するところとして8ページ,第4の(2)の部分に跳ねてくるんだろうと思います。乙案のような形で合意によって仮に届出があったとしても,認可の取消し等を行わないというようなことになりますと,この第4の1の(2)のオの条項は掛かってこないというような形になります。仮にそうなった場合に,どういうふうなことが生じるのかというと,監督上の措置を採ろうとしていた場合に,その実際の措置を採る前に合意によってやめますというようなことが出てくることがあり得ます。公益法人においては,公益認定の取消申請というのは,そういうふうな場合によく出てきます。そうなった場合に,こちらの方の第4の(2)のオのような条項が掛からなくていいのかと。やはりどんどん作って勝手にやめちゃって,そこの受託者については何も,また手を挙げてやりますというような形ができるような仕組みというふうな形にならないかというふうなことは懸念しております。
○中田部会長 ありがとうございました。
  16の2の甲案,乙案について,仮に乙案を採る場合に今の問題点が出てくるということでございますね。
  ほかに関連して,あるいはその他の点でも結構でございます。
  一応これで部会資料44についての御審議を頂いたとしますと,次回に予定どおり中間試案(案)がここに出されて,取りまとめることができればという段階になろうと思いますので,パブリックコメントの前の本日は実質的に非常に重要な会議でございますので,もしほかにお気付きの点がございましたら,何でもこの機会におっしゃっていただければと思いますが。
○中辻幹事 少し残された時間がありますので,もし御意見があれば頂ければと思います。
  現在,第17の1の(2),第17の2,第18の4の3つの論点につきましては,甲案,乙案の両論を併記しております。ただ,これまでの部会での意見分布の状況としては,いずれの論点でも乙案支持の方が多かったと思っています。ですので,いやこれはもうこのまま両論併記で良いということであればこのままパブコメにかけますが,ほかの論点ではかなり絞り込んでいるのだから,これらの論点でも甲案は(注)に落とすべきであるという御意見もあり得るように思っておりまして,この3点についてもう少し御意見をいただければ大変助かります。
○中田部会長 第17の終了時の残余財産の処理,そして第18の相互変更について両論立ててはいますけれども,甲案御支持の方,あるいは両論を載せておくべきだという方,が全体なのか,それとも乙案だけでいいのではないかという辺りについて御意見を頂ければと思いますが,三つのうちのどれでも結構でございます。
○沖野幹事 19ページの第17の2については,従前二つの話があったと思われます。一つは信託法の規律との違いということですが,これは公益活動の場合にはというような理由で説明されます。もう一つは,財産として残るものが,それが望ましい財産であるとは限らないという,むしろマイナスの価値があるようなものについてどうするかという問題があって,その観点から甲乙の当否の問題もあったかと思いますけれども,前回でしょうか,前々回でしょうか,その資料によりますと,無価値財産なり迷惑財産なり,そういうものの処理についての対応をどうするかということは別途考えるという留保が付いた上で,乙案でいいのではないかという,そういう姿勢であったように思われますから,ここはそういった問題は少し残っているけれどもということは補足説明なりで書いていただいて,一本化するということが十分考えられると思います。
○中田部会長 ありがとうございます。
  では,ここからいきましょうか。最終的な残余財産の帰属について,清算受託者に帰属するという案を甲案という形で残しておくべきなのか,(注)に落とすか。いずれにしても,無価値財産等についてはコメントをするという御提案でございますけれども。あるいは,(注)にさえ要らないということかもしれませんが。
○沖野幹事 きちんと把握しているわけではないですけれども,乙案でいいのではないかという考え方が大勢というか,ほとんど全てを占めていたように思います。ただ,若干の留意事項がありますねということではなかったかという認識をしておりますので,そうであるとすれば,注記するまでもなく一本化し,ただ,検討すべき事項は補足説明などで書いていただくということではないかと考えます。
○中田部会長 ありがとうございました。
  甲案を残しておくべきである,あるいは(注)で残しておくべきであるという御意見がございましたらお出しいただきたいと存じますが。
  よろしいでしょうか。それでは,第17の2については国庫に帰属するということを提案し,しかし,問題点として,今,沖野幹事から御指摘を頂いたようなことを説明をするというふうにしたいと存じます。
  あとの2点についてはいかがでしょうか。
○吉谷委員 第17の1の(2)の甲案につきましては,私の理解ではこれは現行の税制との整合性のようなところが言われていて残っているのかなと思っていたんですけれども,そういう問題が全くないのであれば,乙案でもいいのかなと思うんですが,ちょっと本当にそうなんだろうかというところはかなり不安があるので,不安を残すままであれば両論併記でもよろしいかと思っております。
  あと,第18の4につきましては,私どもは従来から甲案賛成ということで申し上げ続けておりまして,その理由としては,制度を複雑化するだけで,効率化などのメリットはないというところでございます。ただ,両論併記についてまで反対するということは申し上げませんということで意見を言っていたかと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  最初におっしゃった第17の1の(2)については,現行税制との関係についても更に精査していただきまして,問題がないということであれば,先ほど皆様から御了解いただきましたような形で乙案一本化ということでしょうし,なお不安があるということであれば,現在のような形を残すということでしょうか。
  それから,第18の4につきましては,確かに従前から吉谷委員は甲案を主張してこられたと思いますので,特にこれを消していいということで一致しているわけではないようですから,これはもうこの形で残すということにしたいと思います。
○沖野幹事 終わり際にすみません。
  第17の1の(2)なんですけれども,以前から非常に分かりにくい対比であるということがありまして,表現の仕方と対象が誰かということを比べたときの甲案と乙案との対比が必ずしもよく分からないところがあり,対象としましては,甲案の方は国,地方公共団体か類似目的を有する他の公益信託ということになっているのに対して,乙案は,それに加えて類似の目的を有する公益法人等が入っています。
  それで,以前の説明によると,相互性といいますか,公益法人の方の扱いと対応させたときに,公益法人の方では公益信託が入っていないからというような話もあったかと思いますが,それは余りさしたる理由ではないというか,別に公益法人を含んで構わないのではないかというふうに考えられます。税法上,それが入ることによって問題があるという感じはしないんですけれども,もしあるならば,もちろん検討していただいたらいいと思いますけれども。もう一つは書き方といいますか,前回でしたか,問題になったのは「寄附」という表現と「帰属」という表現で,ただ,そのときには「帰属」という表現,あるいはとりわけ「帰属権利者」という表現をここで使うことが適切なのかという問題提起もされまして,それは甲案と乙案でそう明確に対比されるべきことでもないように思われ,「寄附」の方が適切であるならば,乙案についても「寄附」ということを使えばいいということですので,この2案をわざわざ立てておく意味が,結局は公益法人等を含むだけであれば,余りないというか,また公益法人等を含んでいいのではないかと思われますので,その意味では乙案で一本化し,その場合にも,表現がこれでいいのかというのは更に検討していただくということになるのではないでしょうか。ただ,吉谷委員がおっしゃったように,私にはちょっとそこが分かりませんけれども,これが含まれるか,含まれないかで税制上の扱いがかなり違うということであれば,そういうことを考慮したものかもしれませんけれども。
  結論としては,乙案でこれも一本化して,ただ表現は全体についてこれでいいのかを考える必要があるのではないかということかと考えます。
○松元関係官 第17の1の(2)の乙案につきまして,これは乙案を採ると,「公益法人認定法第5条第17号イないしトに掲げる法人を含む」ということになっていますので,例えば学校法人とか社会福祉法人に対して残余財産を与えて,譲り渡していいということになるので,そうしますと,甲案との違いとして,甲案だと類似の目的を有するところにしか残った財産は与えられないんだけれども,乙案だと大分広く,学校法人とか社会福祉法人であればどこでも渡せるということになってしまうということにならないでしょうか。
○沖野幹事 資料では,かっこ書きを含めたこの公益法人等にも類似の目的を有するというのが掛かっているんですけれども,これは公益法人に掛かる場合と公益信託に掛かる場合で意味なり範囲なりが違ってくるという前提ですか。
○中辻幹事 私の方から補足して説明しますと,今の第17の1(2)の乙案は,「類似の目的を有する公益法人等(公益法人認定法第5条第17号イないしトに掲げる法人を含む。)」と書いておりますので,普通に読めば,私立学校であっても社会福祉法人であっても,その類似の目的を有するというのは掛かってくるということになると思います。ただ,最近公益法人認定法の方を見直したときに,第5条第17号には,類似の事業を目的とする他の公益法人若しくは次に掲げる法人又は国若しくは地方公共団体に贈与する旨を定款で定めているものとすると書かれていて,類似の事業を目的とするというのは公益法人にのみ掛かり,次に掲げるというところで対象となる社会福祉法人や私立学校には掛からないという読み方ができるのではないかということが事務局内部で議論になったので,もう少し詰めて検討する必要があると考えているところでございます。
○中田部会長 この甲案,乙案につきましては,乙案が実質的に何を意味しているのかについて,今の御説明で課題が明確になったと思いますので,それを踏まえた上で,甲案,乙案の違いがどこにあるのかということを検討した上で,税制も含めて両案を立てるべきなのか,それとも一本化すべきなのかを検討していただきたいと思います。さらに,沖野幹事から御指摘いただきましたように,表現の面での無用な不統一というのがあるのであれば,それは統一できるところは統一するということで,その上で果たして,なお2案を出す必要があるのか,ないのかということを次回までに検討していただくということにしたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。
  ありがとうございます。
  それでは,ほかに。
○明渡関係官 ちょっと今のところですけれども,公益法人認定法第5条第17号の柱書きですが,確かこちらの方の類似の事業を目的とするというのは,確か次に掲げる法人まで掛かるというふうなことだったように思います。もう一度ちょっと解釈を確認して次回までには御説明しますけれども,公益法人だけではなくて,そちらのほかの方にも掛かったのではないかというふうには思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  実質が公益法人認定法の方でどうかということと,それからここで提案しようとしている乙案の中身が何なのかということとありまして,いずれにしても,この乙案の内容を明確にする必要があると思います。また明渡関係官の方から御教示も頂きながら,明確な案を次回までに用意していただこうと思います。
  ほかに,全体についていかがでしょうか。
○道垣内委員 第18の4と第19の1なんですが,これは甲案,乙案になっていないような気がするんですね。つまり甲に反対というのが乙ですよね,乙に反対というのが甲ですよね。二つの種類の異なる規律があって,どっちがいいですかというのならば,甲案,乙案と掲げる意味があるんですが,一方に賛成ですかと聞いているだけですので,どっちかにすればいいと思いますけれども。
○中田部会長 そこは意見の聞き方として,一方のみ出したとすると,何かそれを支持しているようで,反対があれば出してくださいということになるかもしれませんので,フラットに出すというのが多分事務局の御意向だと思いますが,今の御指摘を踏まえてまた検討してもらおうと思います。ありがとうございました。
  ほかによろしいでしょうか。今日は時間が早く終わるかなと思ったら,ちょうど時間がやってまいりました。
  それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきまして,最後に次回の日程等について事務当局から説明してもらいます。
○中辻幹事 次回の日程ですけれども,12月12日火曜日午後1時半から午後5時半まで,場所は法務省ですが,具体的な部屋は未定ですので,決まり次第御連絡いたします。
  次回は,本日の部会での皆様の御意見を踏まえて,「公益信託法の見直しに関する中間試案(案)」と題する部会資料を用意して皆様に御審議いただくことを予定しております。また,事務局の責において作成する中間試案の補足説明につきましても,参考資料として用意し,中間試案の審議の参考にしていただこうと思います。余り無理をする必要もないのですけれども,冒頭申し上げましたとおり,現時点では来月の部会における中間試案の取りまとめを予定しておりますので,何とぞよろしくお願いいたします。
○中田部会長 ほかにございませんでしょうか。
  それでは,本日の審議はこれで終了といたします。本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。
-了-




法制審議会信託法部会 第45回会議 議事録


法制審議会信託法部会 第45回会議 議事録 第1 日 時  平成29年10月10日(火)   自 午後1時29分                          至 午後5時16分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題 公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台の検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第45回会議を開会いたします。本日は御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   本日は,小幡委員,神田委員,岡田幹事,松下幹事が御欠席です。   まず,本日の会議資料の確認を事務当局からお願いします。 ○中辻幹事 本日の御審議は,前回配布の部会資料43を使用して行うことを予定しておりますが,当日配布資料として,吉谷委員から頂いた「公益信託の受託者の辞任・解任,新受託者の選任に関する意見書」を机上にお配りしております。   これらの資料がお手元にない方がいらっしゃいましたら,お申し付けください。よろしいでしょうか。 ○中田部会長 それでは,前回から引き続き,部会資料43の第12以降について御審議を頂きます。   前回申し上げました進行予定のとおり,本日は「中間試案のたたき台(1)」の審議の2回目ということで,この資料の最後,第19まで審議を進めることを予定しております。大部でございますけれども,御協力をお願いいたします。   途中,3時半頃,切りのよいところで休憩を挟むことを考えています。   それでは,本日の審議に入りますが,まずは,前回,途中で終わりました第12から第14までの審議を行いたいと思います。   事務当局からの説明は前回既にされておりますので,本日は引き続いての意見交換に入ります。御自由に御発言をお願いいたします。 ○吉谷委員 私の方でお配りさせていただいておりますのは,第13につきましての代案という形で,甲案,乙案を作りましたものでございます。前回の発言内容が明確にお伝えできなかったかもしれないと思いまして,信託協会でも協議した上で,文書の形にしてお示ししたものでございます。要旨のみお話しいたします。   辞任と解任ともに,甲案が信託協会の考え方をお示ししたもので,2ページ目の下のところに,1,2の「甲案の要点」というふうに記載しておりますとおり,受託者の辞任・解任に行政庁の認可を必要とすること,委託者の権利を原則なしとする任意規定とすることの,この2点を盛り込んだものが甲案でございます。対しまして乙案は,法務省提案をベースにいたしまして,委託者の権利は原則なしとした場合にはこのようになるのではないかということで作りましたものでございます。   この提案の理由につきましては,3ページ目の冒頭に要旨として御説明しているとおりでございますけれども,更に補足させていただきますと,要旨の更に下に書いてありますとおり,法務省提案では事実上,当事者の合意による信託の終了というのを認めていることと等しくなるのではないかと考えておりまして,この点につきましては,39回会議でも,問題となり得ることについては,ある程度ほかの方からの御意見があったのではないかと考えており,また,要旨あるいは4ページに記載のとおり,税制との整合性の問題もあると考えているところです。   委託者につきましては,4ページに記載しておるのですけれども,元々の提案ですと,第14の信託管理人のところと合わせますと,委託者が単独で人事権を握るに等しいことになってしまいまして,公益信託の在り方や税制との関係で論点となるのではないかと考えております。それで,デフォルトでは権利なしとすることがよいと考えているというところでございます。   もし,今のような委託者の権利を,デフォルトでありとする提案とされる場合には,任意規定の意味であるとか,どういう論点があるとかというところを示していただければと思っております。   あと,意見書からは離れますが,御提案の一番最後の(注)があるのですけれども,(注)の内容について,まだ御意見,御議論があったのかどうかというのが分かりませんで,3の(注)は不要なのではないかというふうにも思ったところでございますので,そういうところについても,ほかの委員,幹事の方の御意見を教えていただければと考えております。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ただ今頂きました資料の甲案,乙案というのは,これは吉谷委員の方で新たな御提案として甲案を出しておられるというわけで,部会資料43の甲案とは別のものだということでよろしゅうございますね。   御意見の骨格としては,第13について,受託者の辞任についての同意ないし合意だけではなくて行政庁の認可が必要である,あるいは裁判所の許可だけではなくて行政庁の認可が必要であるということが一つ。もう一つは,委託者を原則として掲げるのではなくて,むしろ例外的に,追加的に含めることができるようにすべきであると。この2点が主な御意見かと伺いましたが,そういうことでよろしいでしょうか。   それから,最後におっしゃった(注)といいますのは,部会資料43の第13の3の最後にある(注),行政庁に意見を聴くという考え方についてのコメントであったということでよろしいでしょうか。   今の吉谷委員の御意見について,更に御意見,御質問を頂きたいと思いますが,その前に,深山委員からお願いいたします。 ○深山委員 それでは,第12の点について申し上げようと思ったのですが,その前に,第13の話が出ましたので,その点に関連したところから申し上げたいと思います。   今議論しているこの資料は,パブコメに付するための資料ということだと理解しておりますので,基本的にはそれなりに議論が分かれたといいますか,意見の対立のあるところについては,幅広く取上げて,国民一般,社会一般の意見を求めるという姿勢が大事だろうと思います。   そのような意味で,今,吉谷委員からの新たな提案も併せてパブコメに付すということも,そうあってしかるべきだと思いますが,そういう基本的な考え方に従いますと,最後に吉谷委員から指摘のあった第13の3の(注)の考え方,この考え方についても,弁護士会で議論をしたところでは,十分な合理性がある考え方として,(注)ではなくて,例えば本文が甲案であれば,これを乙案という形で,もう少しクローズアップした形で取り上げてもいいのではないかという議論をしました。   それに関連して,補足説明の中では,更に届出制にする考え方もあるというようなことも書かれております。これも,確かに一理あるなと思います。余りこの場で議論がなかったという意味では,全く同格ではないのかもしれませんが,それこそ(注)ぐらいには上げて,ゴチックの方にも届出制という考え方についても言及をしていただき,現在の(注)はむしろ乙案というような形で,もうワンランクアップしていただくと良いと思います。さらには,本日の吉谷委員の提案も含めると,かなり選択肢が増えてしまって,法務省としては余り議論を拡散するのは好ましくないというお考えもあるのかもしれませんけれども,やはり重要なところについては,この段階ではまだ複数案をパブコメに付するという基本姿勢を重視するべきではないかなと考えます。   以上が第13についての意見です。   一つ戻りまして,第12のところについて,全体として異論はないのですけれども,第12の1の「行政庁の権限」の(4)と,それからその後の(注)がございます。(4)のところは,正当な理由なく行政庁の命令に従わなかったときに取り消さなければならないという,必要的な取消しについての規律を提案しており,(注)のところでは,認可基準のいずれかに適合しなかったときに,任意的に取り消すことができるという考え方を御紹介していただいております。   これは,もちろん場面が違う問題であるので,対立するといいますか,考え方の違いというよりは,場面の違うものとして(注)を記載していただいていると思うのですが,そういう意味でいいますと,必要的取消事由というべきものと,任意的取消事由というものはそれぞれ分けて考えるべきです。公益法人認定法29条でも,その1項で必要的取消事由が掲げられ,その2項で任意的取消事由が規定されていることに鑑みますと,基本的には,公益社団法人,公益財団法人と同じような規律として,必要的取消事由と任意的取消事由を分けて,なおかつ併記をし,それぞれ規定をするということでよろしいのではないかと考えておりますので,そこは御検討いただければと思います。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 吉谷委員に,いや吉谷委員ではなくても,深山委員でも他の方でもよいのですけれども,少し伺いたいことがあります。第13で議論があったときに,行政庁の許可にするのか,裁判所の許可にするのかという議論が最初にありましたね。それで,第13に関しては,別に公益認定とかの問題ではなくて,私法上の法律関係というか,そこから離脱をするときに,やむを得ない事由があるいは正当な理由があるかどうかというのを判断するのは裁判所なのではないかという話になり,裁判所とされたわけですね。   さて,このたび,行政庁の認可というのをそこに加えるべきであるという提案がされるとき,行政庁の認可の基準は何なのか,行政庁はそこで何を判断するという前提で,このような提案があるのか,そこをはっきりさせないと,二重に許可が必要なのかという疑問が出てくると思うのです。あるいは,行政庁の認可だけでいいのではないかという話も出るかもしれませんけれども,仮に二重であるならば,また,当事者の合意による離脱のときには,当事者の合意というのは何を行っていて,それに対して,行政庁というのはどのような観点から認可あるいは不認可とするのかという問題があるような気がするのですが,その点についてはどういうつくりとしてお考えなのでしょうか。 ○吉谷委員 私の方でお示しした提案では,行政庁の場合も,やむを得ない事由,正当な理由というような形で書いておるのですけれども,それは今の御指摘からすると,やや手抜きで,コピペをしただけなのかもしれません。ですので,もう少し正確に申し上げますと,行政庁の判断基準は,やはり公益の認可の判断基準によるということになると思います。それは,受託者については,能力要件というものもあると思いますし,実際にこの受託者ではその他の認可基準を満たすことができないというような場合というのも考えられると思っております。 ○道垣内委員 例えばある受託者が,こういう事由があるので辞任したいと言っているときに行政庁により判断されるのは,新受託者候補者の適格性であるというお考えですか。生身の人間が受託者になるというのは余りないかもしれませんけれども,教科書的には,やむを得ない事由の例として,病気によって受託者の任務が遂行できなくなったといった例が書いてあったりするわけですよね。そうすると,病気によってできないと言っている人に対して,何かもう少しやれと言われるのは,かわいそうな感じがするのですけれども,新受託者の適格性について判断をして,新受託者についてきちんと候補を出していかないと駄目ですよというのならばわからないではないような気もします。そういったつくりにするというお考えなのだろうかということをお伺いしたいのです。 ○吉谷委員 資料の方では,甲案の注書きとして,①,②,③というのをお示しさせていただいておりまして,そこに③で「新たな受託者の選任に関する意見を記載した書類」というのを付けているところです。これは,現行の公益認定の基準のところをそのまま引き写したような形で持ってきておるのですけれども,ただ,辞任の場合に,必ずしも新たな候補がもう大体決まっているというようなことまで求めているわけではありませんで,辞任しなければいけない理由として,①の理由だけでも辞任を認めるべき場合というのはあるのではないかと考えております。   ただ,辞任の場合には,後任の受託者が任命されるまでは,引き続き信託事務処理はするという前提になっていると思いますが,多分,辞任が認められたら,受託者の不存在で1年間たてば,そこで終了になってしまうと思いますので,新たな受託者のめどが立っていなくても辞任すべきであるというような場合ということになるのではないかと考えております。 ○沖野幹事 今の吉谷委員の御提案についてなのですけれども,行政庁として認可をするというのは,この受託者でやっていけるのかということが一番主眼になるということで,新受託者の選任の方にはそれが関わってくることになりますので,辞任や解任によって別の受託者が立つ場合は,これでいいのかというチェックはそちらで掛けるようになっているのが今回の40ページの3であると考えております。   そうしたときに,辞任や解任というのは,基本的には信託法の規律に則しており,ただ,公益信託への特殊性がどこまであるのかということで規律が立っているのだと思うのですけれども,そうした場合に,取り分け,問題として指摘されているところで気になりますのは,終了の合意の潜脱にならないかという点でございまして,辞任によって新しい受託者が選任されて,信託を続けていくという場合については,そこはチェックが掛かるのですけれども,同意によって辞任して,そのまま1年たつと終了してしまうということがあります。しかも,辞任の場合ですと,今,吉谷委員がおっしゃいましたように,同意による辞任の場合には,元々の受託者がそのまま権利義務を継続するということになっていて,保管ですとか引継ぎに限られるということでもないですので,ずっと受託者をやっていて,あるときぱっと終わるということになるのが,合意による終了のところには行政庁のチェックを受けるということになっている50ページの第16の2の規律との関係で,問題がなくはないかという点は,確かに御懸念が当てはまるのではないかと思います。そのときに,およそ一般的に辞任・解任について,行政庁の認可を掛けるという考え方により,幅広く網を掛けるような形がよろしいのかどうかというのは,なお気になるところでして,考え方を問うとしても,せいぜい注記ではないかと思います。   もう一つは,そこが取り分け問題であるならば,合意による終了のところで,今の同意を得て辞任して1年たって,ずっと継続はしているのだけれども,新しい受託者も選任できませんでしたということで終わるという場合についても,行政庁のチェックを掛けるということは考えられるのではないかと思っております。 ○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。ただ今の吉谷委員の御提案に限らず,原資料の第12から第14のいずれでも結構でございます。 ○平川委員 第12につきましては前回申し上げたとおりで,第13の点につきまして,吉谷委員の行政庁の認可というお話がございましたけれども,私の意見といたしましては,私的自治の尊重の観点から,当事者の同意を得て辞任することができるということに,むしろ賛成いたします。   この場合,当事者には委託者,信託管理人のほか,また申し上げますと,運営委員会が含まれるべきであると考えておりますが,このことは第13の2及び3の場合も同様の趣旨でございます。   更に申しますと,運営委員会必置論というのは大勢の意見とはならず,パブコメ案では,ないという前提で構成されると考えるとすれば,ここで是非確認していただきたいことは,運営委員会的機関が個別の信託行為で設置し得るということ。その場合,その権限内容等についても,強行法規として,受託者,信託管理人,委託者に付与された権限を奪うことにならない範囲内で,受託者の辞任・解任,新選任に係る合意について権限を有するよう自由に設計できることを,ここで確認していただきたいと思います。    例えば,受託者の解任について,委託者及び信託管理人の合意に加えて,運営委員も合意当事者として,これら3者の合意が得られなければ裁判所の権限とするというようなこと。また,この確認は,次の第14についても同じとするほか,当事者の合意による委任終了の場合も同様と考えます。   受託者の辞任の話に戻しますと,当事者の同意が得られなかった場合に,第三者機関の許可を得て辞任することができるとしますが,第三者機関としては裁判所がふさわしく,その場合,辞任には正当な理由があれば足り,やむを得ない事由を必要としないというふうにするのがよいと思います。   第13の2につきましては,委託者及び信託管理人の合意による解任については,一般的には後任の受託者を予定している場合も考えられることから,広く正当な事由があるときで足りると考えます。合意がない場合の解任については,当事者に争いがあることが予想されることから,重要な事由を必要とする法務省案に賛成いたします。   委託者については,出捐以後は受益者のある民事信託と比べ,極力その権限を縮小すべきであることから,信託行為において,受託者の解任の申立権を有しない旨を定めることができることに賛成します。ただし,委託者の権限縮小の観点から,そもそもその権限を持たないとする考えも検討していただきたいと思います。   第13の3につきまして,新受託者の選任について,信託行為に定めがある場合並びにない場合のいずれの選任についても,法務省案に賛成します。   新受託者が行政庁による選任の認可を受ける必要があるかどうかについては,公益法人制度において,役員等の変更の場合と同様,行政庁への届出,必要により事前届出ということになると思いますが,行政庁への届出で足り,形式要件を備えているかどうかについて,届出受付けの際,チェックすることで足りると考えます。   新受託者が非適格であることが後に判明すれば,それは公益認可の取消しの問題として処理するということになると思います。   また,裁判所が新受託者を選任した場合においても届出で足り,新受託者が行政庁の選任の認可を受けたりする必要はなく,不適格の場合は認可後の取消しの問題として処理すれば十分であると考えます。   また,裁判所が選任する前に行政庁の意見を聴くということは,実務的にもなかなか難しいのではないかと考えますので,不適格の選任であれば,行政庁の上記対応,すなわち不適格の場合は,認可後の取消しの問題として処理すればよいと考えます。 ○棚橋幹事 第13の3について2点申し上げます。まず,先ほど深山委員からお話のあった第13の3の(2)の下の(注)を本文に移動させる点についてです。以前の部会でも変更命令の部分で少し述べましたが,裁判所が事前に意見を聴取するということにした場合に,先ほど道垣内委員も近いことをおっしゃったのかもしれないのですが,行政庁が意見を述べる対象は認可基準の充足性の点であり,裁判所が判断するのは必要性の点であるため,判断事項は別々になると思います。注を本文に移動させるには,それぞれが別々の事項を判断するにもかかわらず裁判所から行政庁に一つの手続内で求意見をする必要があるのか,行政庁の判断部分に不服がある場合にはどうするのかなどの疑問をクリアする必要があるのではないかというのが1点目です。   2点目は,質問なのですが,まず少し前置きのようなことを申し上げると,今回,第13の3の(2)で,合意がないときは,裁判所が私法的な合意に代わって新受託者を選任するという案を御提案されています。当初から述べていたことの繰り返しになりますが,元々公益信託は,目的が公益であるという点や,単なる契約ではなく公益法人にも類似する機能を有する点で,私益信託とはかなり異なるものかと思っており,裁判所が私益の調整という観点から,どこまで監督ができるのかという点は疑問があります。特に新受託者の選任については,一時評議員を選任するというような保全的な場面とは違い,常任の機関である新受託者を選任することになりますので,裁判所が私益の調整という観点から,合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があると認めた場合には,常任の受託者を選任するということが,公益信託の目的や,公益信託の運営に支障を生じさせないのかについて,懸念がないわけではないと考えております。以上が前置きで,1点質問がございまして,以前,変更命令に関して申し上げたことですが,裁判所が新受託者を選任するという案を採った場合に,新受託者を選任した後,今回の提案では行政庁による認可を受けることになりますので,新受託者選任から認可までの間の行為の効力はどのようになるのか,また,認可を受けられなかったときには効力はどのようになるのかという点は,どこかの段階で教えていただければと思っております。 ○中田部会長 2点とおっしゃいましたのは,私が聞き漏らしたのだと思いますけれども,裁判所が新受託者を選任する際に,選任から認可までの間の法律関係がどうかということと,それから--それが1点目ですか。 ○棚橋幹事 申し上げたかった2点のうちの1点目は,最初に申し上げた行政庁の意見を聴くという案に関して,疑問をクリアする必要があるのではないかという点で,2点目が,効力がどうなるのかという点でございます。 ○中田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,今,棚橋幹事からの御質問がございましたし,それまで他の委員,幹事からの御意見も出ておりますので,この辺りで幾つかコメントをお願いしたいと思います。 ○中辻幹事 では,棚橋幹事の御質問からお答えします。   棚橋幹事がおっしゃられたように,この御質問は以前にも頂いておりまして,裁判所による受託者の新選任から行政庁の認可までのタイムラグの間に受託者が行った行為の法的効力については,引き続き整理したいと思いますけれども,第13の3(2)のゴチックでは「新受託者になろうとする者」という表現を使っており,新受託者になろうとする者は,裁判所の決定があり,かつ,行政庁による新選任の認可を受けて初めて新受託者になると考えております。もっとも,裁判所の決定があった時点で新受託者が選任されるのだけれども,新受託者としての事務処理を始める前に行政庁の認可を受けなければならないという考え方もあろうかと思います。   いずれにせよ,行政庁から新選任の認可を受けるまでに公益信託の受託者が行った行為については,無効ないし取消しの対象となると現時点では考えているところでございます。   次に,平川委員から御確認の要望がありました運営委員会ですけれども,運営委員会を個別の信託行為で設置することはできますし,その権限については強行法規に反しない限度で当事者が自由に決められるということでございます。   それから,吉谷委員から頂いた新たな御提案について,道垣内委員,沖野幹事から関連の御指摘がございました。事務局としては,新受託者の選任の場面では,新たな公益信託の認可基準となる受託者の資格を満たしているか否かを行政庁に御判断頂く必要があるのですが,受託者の辞任・解任の場面では,対象となる受託者の辞任・解任に理由があるか否かまで行政庁が判断するというのは,主務官庁制を廃止して信託内部のガバナンスを充実し,新たに認可・監督を行う行政庁には公益性を確保するために必要な範囲内の権限を付与するという立て付けからすると,受託者の辞任・解任に行政庁の認可を必要とするのでは主務官庁制への先祖返りのような印象を持たれるおそれがあるようにも感じます。   確かに,吉谷委員の意見書のとおり,また,沖野幹事からも御指摘ありましたように当事者による受託者の辞任・解任がされただけの状態が1年間続くと公益信託の終了事由になってしまうという懸念はあると思います。ただし,その解決方法として,例えば沖野幹事の御提案のように受託者不在期間の1年超過を理由に公益信託の終了をする場合には行政庁のチェックをかけるという方法もあるかもしれませんし,1年間の間に利害関係人が新受託者の選任を裁判所に対する申し立てることにより対処できるのではないかとも感じました。 ○道垣内委員 先ほどの吉谷委員の案に対する中辻幹事の御回答なのですが,理論的にはそのとおりだろうと思います。ただ,ある人が辞めるといったときに,それがやむを得ないか,あるいは正当な事由があるかというふうなことについて,次の人がいるかどうかというのは結構重要な考慮要素になるのだろうと思うのです。もちろん,それはやむを得ない事由の判断についてであって,合意による辞任において,次の人の適格性を判断の中に位置付けるというのはなかなか難しいのかもしれないのですが,合意のある種の正当性,つまり,沖野幹事もおっしゃったような,脱法行為として,合意によって終了させようとしているのではない,ということを判断するためには,新受託者の候補がいるかどうか,また,その人は行政庁によって認められ得るのかということが考慮要素になることはあり得るような気がします。   それをどういうふうに法文として作るのかというのはなかなか難しいのかもしれませんけれども,そういう論点があるということは,何らかの形で認識をするということはあり得るのかなと思います。 ○長谷川幹事 議論の当初から申し上げておりますとおり,税制上の優遇が確保できるかどうかというのは極めて重要だと思っております。今回の吉谷委員の御提案の中で,税の優遇の観点からもということで書かれておりますとおり,行政庁が関与した方が,あるいは私的自治の範囲を一定程度制限した方が,公益性が維持され,税制上の優遇が確保しやすいということであれば,深山委員もおっしゃられたように,今回,広く国民の意見を聴くということでございますので,どちらを甲案,どちらを乙案とするかは別にいたしまして,中間試案には載せておいていただければと思っております。   その上で,先ほど道垣内委員,あるいは沖野幹事,あるいは事務局から御指摘がございました問題点も,補足説明の中で,国民に分かりやすい形で提示していただくということでいかがでしょうか。以上,意見でございます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○林幹事 今の論点と離れますが,第13の1と2では,やむを得ない事由と正当な理由とにブラケットが付いていますが,パブコメのときはどういう形で聞かれるのか質問させてください。このままでパブコメに付すのか,本日なりの法制審の議論で絞るのか。弁護士会ではいろいろ議論もありましたけれども,少なくとも広く国民の意見を聴くという意味では,両案あることを聞かれるのもパブコメとしてはいいと思ったので,質問させてください。 ○中田部会長 いかがでしょうか。 ○中辻幹事 この部会での皆様の御意見の分布を踏まえてと考えております。すなわち,今回あるいは次回までに,やむを得ない事由の方が正当な理由よりも良いという御意見が多数であれば,やむを得ない事由にゴチックの提案を一本化してパブコメで意見を聴きますし,やむを得ない事由を支持する意見と正当な理由を支持する意見が拮抗するような状況なのであれば,現在のブラケットを付した形のままパブコメで意見を聴くということでございます。 ○林幹事 その趣旨であれば,弁護士会の議論を踏まえた意見を簡単に申し上げます。辞任については,両案あるというものの,正当な理由の意見が多かったところです。特に,先ほどもあったのですが,後任の候補がある場合については,辞任も若干緩やかに認めてもいいのではないかと考えられ,やむを得ない事由と正当な理由を比べたとき,正当な理由の方がベターだという意見の方が多かったところです。   それに対して,解任については,受託者の意に反して解任するというところもあって,要件を厳しくした方がよいとの考えから,正当な理由より,受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由とした方がよいという意見が多かったところです。 ○道垣内委員 私の立場をはっきりさせるためにだけ申し上げるのですが,私は先ほど,後任の人がどういう人かというのが正当事由の判断において組み入れられることは十分にあり得るのではないかと申しましたが,かといって,吉谷委員ご提出の甲案,乙案を出すというのは,私は必ずしも賛成できません。中辻幹事がおっしゃったような,理屈上の問題点が余りに大きいという気がいたします。   したがって,そのような考慮要素をどう位置付けるのかというのが問題となるということを(注)に書くということは十分にあり得るのですけれども,裁判所の話と行政庁の話が並行して存在しているという形の案というのは,理屈上は成り立ち得ないのではないかなという気がします。 ○中田部会長 第12から第14まで,ほかにいかがでしょうか。   本日,吉谷委員から新たな御提案を頂きまして,幅広くパブリックコメントでは意見を聴取した方がいいという御指摘を複数の委員,幹事から頂きました。他方で,余りにも拡散しますと,かえってまた意見の集約が難しくなるかもしれませんので,本日の部会資料第43を基本といたしまして,そこに吉谷委員の御提案をどういう形で反映することができるのか,本日の皆様の御意見に基づいて,事務局の方で練っていただこうかと思っておりますが,そういう取扱いでよろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきます。   ほかにもしございませんようでしたら,先に進みたいと思います。 ○吉谷委員 第14について,まだ意見を述べておりませんでしたので,一言だけ述べさせていただきます。   元々第13で甲案というのを出しているというところはあるのですけれども,甲案のような立場に立った場合でも,受託者と信託管理人の位置付けが異なるのではないかというような意見があるということを,(注)なのか,解説なのか,どこかに入れていただければと思います。   そのような考え方が,信託管理人の1年の不存在を信託終了事由とするべきではないというような考え方にもつながっていると考えております。公益信託を安易に終了できるようにすべきではないという考え方でございます。   あと,御提案につきまして,信託管理人の解任につきましては,委託者以外の者ができるような制度になっておりませんと,委託者の不存在であるとか,委託者のところを起点にしてしまうとかというようなことによって,事実上解任できなくなってしまうというような場合があると思います。ですので,受託者のような関係者も,一定の場合には信託管理人を解任できるようにはするべきだと考えておりまして,今回の御提案は,恐らくそのようなことも踏まえた上で,「同様の規律とするものとする。」というような書き方にされていると思うのですけれども,その同様というところが,合意であるとか,行政庁,裁判所の関わり方については同様という趣旨ではないかと理解をしているのですけれども,そのような解釈でよろしいのかということと。そうであれば,御説明のところでは何か,中間試案を出す場合には補足説明していただければなと思っていますというところです。 ○中田部会長 今の点いかがでしょうか。 ○中辻幹事 吉谷委員の御理解のとおり,公益信託の信託管理人の解任の規律を受託者と同様の規律とするという書き方は,信託管理人の解任と受託者の解任を全く同じ規律とするのではなく,多少違いを持たせるということの含みを持たせた表現ということでございます。   特に,信託管理人の解任については,以前の部会資料39などでも提示させていただいたとおり,公益信託の受託者に裁判所に対する信託管理人の解任申立権を与えるか否かという論点がございます。事務局としては,公益信託の適正な監督のために不適切な信託管理人を交代させなくてはならないけれども委託者も他の信託管理人も存在しないという局面が想定できないわけではないことからすると,公益信託の受託者には信託管理人の解任申立権を付与することが良いのではないかと考えております。ただし,分かりやすい例えを使えば,監督される側の受託者が監督する側の信託管理人の解任申立権を持つのはおかしいという考え方もございますので,その点も含め引き続き詰めて検討していきたいと思います。 ○中田部会長 ほかに,第14についてございますでしょうか,よろしいでしょうか。   それでは,先に進むことにいたします。   続きまして,第15から第17までについて御審議いただきます。   事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,御説明申し上げます。   今回も,本文を中間試案として掲げるに当たって,検討を要する事項を中心に御説明させていただきます。   まず,「第15 公益信託の変更,併合及び分割」について御説明いたします。   第15の「1 公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更」の本文は,(1)として,「ア,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更は,委託者,受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による変更の認可を受けることによってすることができるものとする。」   「イ,裁判所は,信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして公益信託の目的の達成に支障になるに至ったときは,委託者,受託者又は信託管理人の申立てにより,信託の変更を命ずることができるものとする。   委託者については,信託行為について変更命令の申立権を有しない旨を定めることができるものとする。」   「ウ,受託者は,イの変更命令の後,行政庁による変更の認可を受けるものとする。」   (2)として,「(1)アの例外として,信託行為の定めの軽微な変更をするときは,受託者は,その旨を行政庁に届け出るとともに,当該変更について受託者及び信託管理人の同意を得ていない場合には,遅滞なく,委託者及び信託管理人に対し,変更後の信託行為の定めの内容を通知しなければならないものとする」との提案をするものです。   第15の「2 公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更」の本文は,(1)として,「現行公益信託法第6条を廃止又は改正し,公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更は,委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,行政庁による変更の認可を受けることによってすることができるものとする。」   (2)として,「現行公益信託法第9条を改正し,公益信託の目的の達成又は不達成の場合において,残余財産が存在するが帰属権利者が定まらないときは,受託者及び信託管理人(委託者が現に存する場合にあっては,委託者,受託者及び信託管理人)の合意がある場合には,公益信託の目的を類似の目的に変更し,行政庁による変更の認可を受けることによって公益信託を継続できるものとする」との提案をするものです。   第15の「3 公益信託の併合・分割」の本文は,「現行公益信託法第6条を廃止又は改正し,公益信託の併合・分割は,委託者,受託者及び信託管理人の合意等がある場合には,行政庁による併合・分割の認可を受けることによってすることができるものとする」との提案をするものです。   第15の1の本文について,部会資料42の第1の1(2)アの提案に対しては,第43回会議において賛成の意見が多数ありましたが,委託者,受託者及び信託管理人の変更,合意等について行政庁が認可するという構造の方がいい旨の意見もあったことから,それらを踏まえ,部会資料42の第1の1(2)アの提案の実質は維持した上で,変更の主体は信託の当事者であり,行政庁の関与は補充的なものであることを明らかにする旨の表現の修正をしております。   また,公益信託の場合,公益信託の目的と公益信託事務がほぼ同一とされている契約書も多く見受けられ,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更であっても,それが公益信託の目的の変更に相当する場合はあり得ることからすると,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更は,変更後の信託行為の定めが公益信託の成立の認可基準を充足することが行政庁の関与により担保されなければ許容されるべきではないと考えられます。   そして,部会資料42の第1のように「公益信託の目的以外の信託行為の定めの変更」と表現する場合には,公益信託事務の変更がこれに含まれるか否か不明確になることから,第15の1(1)アの本文の提案では,その表現を「公益信託事務の処理の方法にかかる信託行為の定めの変更」に修正しております。   次に,第15の2の本文について,部会資料42の第1の2の提案に対して,第43回会議では,これに賛成する意見が多かったことから,その実質を維持しております。   また,部会資料の42の第1の2(3)の「行政庁が当該信託を継続させることができる」という表現について,行政庁の役割との関係で検討すべきである旨の意見があったことを踏まえ,第15の2(2)本文の提案については,「公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更」の場面であることを明示した上で,第15の1(1)本文と同様の表現の修正をしております。   なお,公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更の具体例としては,公益信託の目的の変更や,公益信託事務の範囲の変更が挙げられます。   第15の3の本文の提案については,部会資料42の第2の2(1)の提案から実質的な変更はありません。   その上で,裁判所が公益信託の併合・分割を命ずることができる旨の規律を設けるものとするとしていた部会資料42の第2の(2)の提案は,第15の3本文の(注)として示しております。   この点,部会資料42の第2の2(2)の提案に対して,第43回会議ではこれに賛成する意見がありましたが,裁判所が併合・分割命令を行うことについては慎重に検討すべき旨の意見もありました。   信託の併合・分割は,いわゆる会社の組織変更に類似するものであると言え,委託者等の信託の関係人に対し信託目的の変更よりも重大な影響をもたらす可能性があり,裁判所が信託の併合・分割を命令できるということになると,当該信託の関係人の意思に反して組織変更を命令することになり,私的自治への介入の程度が大きいと考えられます。そして,裁判所の命令による信託の併合・分割については,信託法上複数の解釈が存在することからしても,新公益信託法に明文の規定を設けるべきではなく,この点は新公益信託法の解釈に委ねることが相当であると考えられます。   したがって,部会資料42の第2の(2)の提案は,本文の提案とせず,本文3の(注)に記載するにとどめることにいたしました。この点については,御意見等がございましたらお願いできればと存じます。   また,裁判所による変更命令に行政庁が関与する仕組みについては,第43回会議において,変更命令の後に行政庁の変更の認可を必要とすることは,屋上屋を重ねるものである旨の意見等もありましたが,裁判所による変更命令は,委託者,受託者及び信託管理人の合意等が整わない場合に,当該合意等の代替として活用されるものであり,認可基準充足性の判断を予定しているものではないため,変更後の信託行為の定めの認可基準充足性について,行政庁の関与により担保することが相当であると考えられます。   したがって,第15の本文1(1)ウの提案をしておりますが,この点についても御意見等を頂ければと存じます。   次に,「第16 公益信託の終了」について御説明いたします。   第16の「1 公益信託の存続期間」の本文は,「公益信託の存続期間については,制限を設けないものとする」との提案をするものです。   第16の「2 委託者,受託者及び信託管理人の合意による終了」の本文は,「公益信託の終了は,委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合には,行政庁による公益信託の終了の認可又は成立の認可の取消しを受けることによってすることができるものとする」との提案をするものです。   第16の「3 公益信託の終了命令」の本文は,「信託行為の当時予見することのできなかった特別の事情により,公益信託を終了することが信託の目的及び信託財産の状況その他の事情に照らして相当になるに至ったことが明らかであるときは,裁判所は,委託者,受託者又は信託管理人の申立てにより,信託の終了を命ずることができるものとする。委託者については,信託行為において公益信託の終了命令の申立権を有しない旨を定めることができるものとする」との提案をするものです。   第16の「4 公益信託の成立の認可の取消しによる終了」の本文は,「公益信託の成立の認可を取り消された公益信託は,終了するものとする」との提案をするものです。   第16の1の本文の提案については,部会資料37の第1の2の提案からの変更はありません。   第16の2の本文の提案については,部会資料40の第1の1の提案に対する第40回会議での御意見や御指摘を踏まえ,「原則として,信託関係人の合意等による終了を禁止するが,例外として,公益信託の委託者,受託者及び信託管理人の合意がある場合に,公益信託を終了することについてやむを得ない事由があるときは,行政庁の許可を受けて公益信託を終了することができるものとする」との提案をしていた部会資料40の第1の1の乙案を修正し,公益信託の委託者,受託者及び信託管理人の合意による信託の終了はできるが,その場合には受託者が行政庁による公益信託の終了の認可を受けることを必要とする考え方を示しています。   また,公益法人認定法第29条第1項第4号では,公益法人の認定の必要的取消事由として,公益法人から公益認定の取消申請があったときが規定されていることなどを参考として,受託者が公益信託の成立の認可の取消しを受けることを必要とする考え方もあることから,上記二つの考え方を角括弧内に並列して表現しております。   第16の2の提案に関しては,委託者が現に存しない場合における受託者及び信託管理人の合意による公益信託の終了の可否及び行政庁による残余財産の分配の適正性担保の方法について検討する必要があると思われることから,それらの点についても御意見等を頂ければと存じます。   第16の3の本文の提案については,第40回会議での御意見等を踏まえ,終了命令の主体は裁判所とすることが相当であると考えられることから,その旨の提案をしております。   また,委託者がその意思により公益信託を支配することは許されるべきではありませんが,その終了時に委託者及びその関係者に信託財産が帰属することが禁止されている前提であれば,終了命令の申立権者に委託者が原則として入っていることが不適切であるとは言い難いと考えられるため,第16の3の本文の提案では,部会資料40の第1の2(2)ただし書の提案を維持しております。   第16の4の本文の提案については,第42回会議での御意見等を踏まえ,公益信託の成立の認可の取消しによって一律に信託が終了するものとする部会資料41の第2の甲案は,制度の簡明さの点で優れていること,公益法人と異なり,公益信託の成立の認可の取消しによって,公益信託の成立の認可を失った受益者の定めのない信託に信託財産を帰属させることに格別の意味を見いだすことはできないこと,公益信託の成立の認可が取り消されるような場合には,委託者及び受託者の通常の意思は,その時点で信託を終了させることになるものと考えられることから,第16の4の本文の提案では,部会資料41の第2の甲案と同一の提案をしております。   次に,「第17 公益信託の終了時の残余財産の処理」について御説明いたします。   第17の「1 残余財産の帰属権利者の指定」の本文は,まず「(1)公益信託の信託行為には,残余財産の帰属すべき者(以下「帰属権利者」という。)の指定に関する定めを置かなければならないものとする」との提案をした上で,(2),(1)の定めの内容は,甲案として,「信託終了時の全ての残余財産が,国若しくは地方公共団体に帰属し,又は当該公益信託と類似の目的を有する他の公益信託に寄附することを定めたものでなければならないものとする。」   乙案として,「信託終了時の全ての残余財産を当該公益信託と類似の目的を有する他の公益信託若しくは類似の目的を有する公益法人等(公益法人認定法第5条第17号イないしトに掲げる法人を含む。)又は国若しくは地方公共団体に帰属させることを定めたものでなければならないものとする」との提案をするものです。   第17の「2 最終的な残余財産の帰属」の本文は,帰属権利者の指定に関する信託行為の定めに掲げられた者の全てがその権利を放棄した場合の残余財産は,甲案として,「清算受託者に帰属するものとする」。乙案として,「国庫に帰属するものとする」との提案をするものです。   第17の1(1)の本文の提案については,部会資料40の第1の3(1)の提案から変更はありません。   第17の1(2)の本文の提案のうち,甲案は,現行の税法及び現在の公益信託の契約書に記載されている条項等を参考として,今回,新たに提案するものです。   他方,乙案は,公益法人認定法第5条第17号を参考にした部会資料40の第1の3(2)の甲案の表現を修正して提案するものです。   乙案の(注)は,部会資料40の第1の3(2)の乙案の表現を修正しているものです。   第17の2の本文の提案については,部会資料40の第1の3(3)の甲案及び乙案から変更点はありません。   第17の1(2)の本文の提案については,第40回会議の御意見,御指摘等を踏まえると,残余財産を私人に帰属させることを許容した場合には,現行の税法の規定からかなり離れたものとなり,公益信託が税制優遇を受けることが非常に難しくなること。また,信託設定当初の信託財産と追加された信託財産とを厳格に区別する運用を確保した上で,公益信託の終了時に公益法人と同様の非常に複雑な計算処理を行う必要があり,さらに,公益信託のガバナンス体制もより規制が強められることも想定されることから,このような公益信託が篤志家による公益実現の手段として選択されるかには疑問が残ります。むしろ,公益信託としての適切な帰属先が定められ,その信頼性が確保されることの効果を重視すべきであると考えられることから,残余財産を私人に帰属させることを許容するとの考え方は,第17の1(2)の本文の(注)に示すにとどめております。   これらの点について,御意見を頂ければと存じます。   また,第17の2の本文の提案については,第40回会議で帰属先が定まらない残余財産については,国に帰属するものとする案を支持する意見が多かったことに加え,現行税法が残余財産の帰属先を国又は地方公共団体等に限定している趣旨に鑑みると,負担を伴う残余財産の帰属についてはなお検討を要しますが,基本的には第17の2の乙案を採用することが相当であると考えられます。   なお,地方公共団体を最終的な残余財産の帰属先とすることは,信託法及び民法第239条第2項との整合性の観点からすると,現時点においてそれを提案することは相当でないと考えられます。   これらの点についても,御意見を頂ければと存じます。 ○中田部会長 それでは,第15から第17まで,併せて御意見を頂きたいと思います。 ○能見委員 第15の2(1)と(2)の関係,さらには,これらと第17の帰属権利者の問題との関係が,少し私にはよく分からない部分があります。少なくともパブリックコメントを求める際に,もう少し説明が必要なのではないかというのが第1点であります。あわせて,私が十分理解できなかったことから来る私の疑問についてもお答えいただければと思います。  そこで私の疑問の第1は,信託終了事由発生前の変更と信託終了事由発生後の変更との関係についてです。第15の2(1)の公益信託事務の処理方法以外の信託行為の定めの変更ということで,公益信託事務の処理の方法に係るような目的の変更は,第15の1(1)によることになり,それに係らない目的の変更は第15の2(1)に含まれるという前提で理解しておりますが,あるいは,信託目的の変更は全て第15の1なのかもしれませんが,この点は私の質問にとってはどちらでもよいので,要は,第15の1や第15の2の(1)は信託終了事由発生前の変更を考えていると思いますが,それと(2)の関係についてです。第15の2の(1)は,一般的に公益信託の事務処理に係らない目的変更もこういう行政庁の認可を受ければできるということが書いてあるというふうに理解できますが,(2)は,信託終了事由が発生した後は,(1)で処理するのではなく,(2)によって処理する。公益信託の場合に,国や自治体以外の者が帰属権利者として定められているのかわかりませんが,また,その場合に帰属権利者にどの程度権利性があるのか分かりませんけれども,帰属権利者の定めがあるが,その定めでは具体的な帰属権利者が定まらないときに,(2)で公益信託の目的を類似の目的に変更して,行政庁の認可を受けて目的の変更された公益信託として継続できるという処理ができる。(2)も信託の変更なのですが,信託終了事由発生前には使えないが,信託終了事由が発生した後は,(2)が使える。そういう振り分けになっているというふうに理解したのですが,そういう理解でよろしいのでしょうかというのが第1であります。   その上で,今の第15の2の(2)の意味なのですが,ここでは帰属権利者が定まらないときは当該公益信託の目的を類似の目的に変更できるということが書いてあるわけですが,信託終了事由発生前は,第15の1(1)なのか第15の2(1)なのかはともかく,委託者,受託者,信託管理人の合意があり,行政庁の認可があれば,ある意味ではどのようにでもできるというのと比較すると,第15の2の(2)はかなり制約されているというふうに思いました。   (2)はシプレー原則の考え方を具体化しているのだと思いますが,現在の公益信託法の9条ですと,帰属権利者の定めない場合についてのシプレー原則であり,それと(2)は余り中身としては違わないのだと思いますが,ただ,第17で必ず帰属権利者に関する定めを置かなければならないとなっていますので,それとの関係でいえば,今の第15の2の(2)というのは,帰属権利者の定めはあるが,帰属権利者が定まらない場合に適用される規律ということになりますが,具体的にどういう場合に(2)が使われるのかわかりにくいと思いました。   そこで,第17の方に話が飛ぶのですが,第17の方で帰属権利者に関する定めを置くというときに,これは,以前に議論したかもしれませんので繰り返しになるかもしれませんが, 例えば,特定の団体に帰属させるとか,国に帰属させるとか,そういうふうに,具体的に決めなくてはいけないのか,もう少し抽象的に,国又は地方団体,又は同種の目的の公益信託ないし公益法人に帰属させるというような,抽象的な定めでもいいのかという質問が一つまずあります。   ここで抽象的な定めでよいとすると,終了事由が発生した後,いざ帰属権利者を具体的に決めようと思ったときに,受託者がいろいろ考えて,どうもどれもしっくりこないので,結局選べないという状態が生じるのかどうか問題ですけれども,それもありうるとすると,第15の2の(2)のところに戻ってきて,帰属権利者が定まらないという場面が一つ考えられると思います。受託者からすると,一定の範囲の中から帰属権利者を選ぶという定めがあるが,受託者の考えではどうも適当な者がいないということで帰属権利者が定まらないということになり,当該公益信託の目的を類似目的に変更して,行政庁の認可を得て存続するということを認めるのか。それとも,この場合には,帰属権利者の定めがあり,かつ,それによって帰属権利者は定まるから,第15の2(2)の問題にはならないと考えるのか,どちらの考え方をするのかという問題が2番目です。   このようなことは認めないとすると,帰属権利者の定めがあるが,帰属権利者が定まらないというのはどういう場合かというと,一番考えられるのは,具体的に特定の帰属権利者が定まっているが,それらの帰属権利者が権利を放棄したときに,第15の2(2)のところに戻って来て,シプレ原則的な解決がされるのだと思います。そこら辺の関係が,すなわち第15と第17の関係ですけれども,これが少し分かりにくいように思いましたので,今述べた点についてどういう立場を採るにせよ,少し説明が必要であろうと思います。   私は,個人的には,実はこれを意見としては申し上げたいと思い,前提の理解となる部分をくどくど述べたのですが,第15の2の(2)のようなシプレー原則的処理がもう少し広く使えていいのではないかと考えています。第17で帰属権利者の定めを置かなくてはいけないというので,取りあえず国と地方自治体を帰属権利者として定めた。しかし,国と地方自治体に残余財産が行くよりは,類似の目的に公益信託の目的を変更して存続した方が,当初設定された公益信託の趣旨に合うと受託者が考えたときに,第15の2の(2)でそれができるとよいと思います。といいますのも,国や自治体は,帰属権利者として受け取る財産について必ずしも関心があるわけではなく,当該公益信託の公益目的と同じような目的で使うことは全く保障されてない。おそらくそのようには使わないでしょう。このように考えると,国や自治体が帰属権利者として定められていても,なお第15の2の(2)のルールが使えるとよいのではないかと思います。しかし,現在ここに書いてある第17,第15の案ですと,先ほど言いましたように,帰属権利者が定まらないということの解釈にもよりますが,国や自治体が帰属権利者として定められていると第15の2(2)は使えないことになりそうですが,私としては,第15の2(2)がもう少し緩い使い方ができるとよいと思います。   私の発言がいろいろな点,多岐にわたって分かりにくかったかもしれませんけれども,以上です。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ただ今,第15の2の(1)と(2)の関係についてが第1点,それから第15と第17との関係について,これが第2点,について御意見を頂きました。関連した御発言がございましたらお出しいただいた上で,事務当局の方からコメントを頂きたいと思います。 ○中辻幹事 それでは,事務局の方からお答えさせていただきます。   まず,能見委員の御質問,第15の2(1)と(2)の関係でございますけれども,ここは能見委員の御理解のとおり,時系列で整理しておりまして,公益信託の目的達成又は不達成の前は(1)の規律を適用し,目的達成又は不達成の後は(2)の規律を適用するという趣旨で御提案しているものでございます。   それから,2点目,第17で挙げている当該公益信託と類似の目的を有する他の公益信託を帰属権利者とする場合の信託行為の定めにつきまして,具体的な類似目的の信託名の定めを置くことも,抽象的に「類似の目的を有する他の公益信託」という定めを置くことも,両方許容されるという整理をしておりますが,実務においては後者の記載が多いようでございます。そして,信託行為の定めが抽象的な場合には,能見委員がおっしゃられたように受託者の側で類似目的の公益信託を探したが見つからなかった,というケースもあり得ると考えていて,その場合にいつまでも探し続ける義務を受託者に負わせることは酷である,そのような場合も第15の2の(2)「帰属権利者が定まらないとき」に該当するという整理をしています。ただ,第17で帰属権利者として国又は地方公共団体を入れているので,結局これらの者が帰属権利者と定められていた場合には国や地方公共団体が残余財産の受領を拒否というのか放棄しなければ第15のシプレー原則は発動しないというのが現在の部会資料の作りです。私どもとしては,特に公益信託の当初の目的が達成されたような場合には,その信託を設定した委託者の意思は実現されているので,基本的には当該公益信託は終了させるべきものであり,シプレー原則については限定的に適用すべきであると考えておりました。   さはさりながら,能見委員のように,シプレー原則の間口を広くとり社会のために公益信託が生き残る可能性を増やす方が良いという考え方にも十分合理性はあると思いますので,また事務局としても再度検討し,皆様の御意見を伺いたいと思います。 ○沖野幹事 ありがとうございました。   一つは,第17の(2)の甲案,乙案について,その意味なのですけれども,乙案には(注)が付いているということなのかと理解したのですけれども,甲案の方は,甲乙比べますと,「類似の目的を有する公益法人等」というのが甲案には入っていないのですけれども,これはあえて除外した案と入れた案という対比なのでしょうか。それにどのくらいの理由があるのか,入れてもいいのではないかと思うものですから。   もう一つは,甲案では「寄附することを定めた」と書かれており,国等の場合は帰属しないのですけれども,乙案の方は全てが帰属になっていまして,ここであえてこの部分だけ寄附という言葉を使っていることには意味があって,甲案と乙案の対比はそのように,(注)のところを置きますと,その他の公益法人等を入れていいのかということと,帰属ではなく,寄附という構成として扱うというところにあるのでしょうか,よく分からなかったものですから,おうかがいします。それは純粋に甲案,乙案の意味についてです。   それから,能見委員の御指摘を伺いまして--能見委員の御指摘を伺う前に気になっていたことなのですが,一つは,(2)の定めについてです。まず(1)で定めを置かなければならないと,その定めの内容としてこういうものでなければならないというときに,変更の規定によって,この(2)の定めを変更することができるかということです。   恐らく,(2)は,これは全部外延というか外枠というか,それ以外のものについては,(注)の点はありますけれども,帰属権利者として指定ができないということだと思うのですが,具体的に書いてしまったのだけれども,例えば地方公共団体が引き受けてくれそうだというようなときに,それなら信託行為の定めを変更して,地方公共団体を指定に入れて,そちらにお願いするということができるのかどうかです。   それから,次が,能見委員の御指摘を伺ってということなのですけれども,今申し上げたような形での変更などができないとなりますと,最初のときにきちんと書いておくか,それとも最初のときに,これはもうその他条項的に,国や地方公共団体は必ず入れておくようにしましょうというような指定の仕方になる可能性があるように思います。   いずれにしてもですが,そのようにしておいたときに,今度,能見委員が御指摘になった点なのですけれども,国や地方公共団体はそれほど関心を寄せていないのだけれども,46ページの2の(2)です。帰属権利者は一応いるし,放棄してもらえばいいのかもしれませんけれども,そう簡単に国や地方公共団体が放棄できるのかというのは少しよく分からないところもありますけれども,そういう場合に,すなわち帰属権利者が同意しているという場合に,この目的を変更する形でそのまま続けてもらったらいいと言っているような場合は受けなくていいのだろうかというのが,今の御指摘を伺っていて気になりました。   ただ,そのときも,もう実体的には信託終了して,帰属権利者に帰属すべき財産が残っているという状態だと思われますので,帰属権利者が定まっていないときはこのルートによれるということで,帰属権利者が定まっているならば,帰属権利者が新たに信託設定をすればいいということになるかと思います。ただ,そのときには,帰属権利者が委託者としての地位を得てしまうことになりますので,そういった地位は望まないという場合も考えられますそのときは,その信託行為に委託者としての地位を有しないと書くことで対応できそうにも思いますので,対応可能ではあるとは思います。   もう一つ,どのくらい手間が掛かるのかということで,新規にといっても,今までの受託者で,今までの信託管理人で,今までと全く同じ形でやるのだけれども,目的は違うものを立てるのだというときに,それほど大して手数等が掛からないのであれば,新たな設定でもいいのではないかとも思うのですけれども,そこは少し飛ばしてといいますか,このルートによってもいいのではないかということはあり得るようにも思いました。そうしますと,もしそういう考え方を入れるとすると,(2)のところに帰属権利者が定まらないときにはこの3者でなのだけれども,帰属権利者の同意を得て,さらに,あるときには帰属権利者の同意を得るときは同じルートでいけるというようなことを考える余地もあるのかと思ったところです。 ○中田部会長 3点,御質問あるいは御意見を頂戴しましたが,事務当局の方からお願いします。 ○中辻幹事 それでは,沖野幹事の御質問にお答えしますと,第17の(2)の甲案,乙案の違いは,社会福祉法人なども含めた公益法人等を入れるか入れないかというところが大きな違いであることはそのとおりでございます。その上で,現行税法は,特定公益信託の要件として,当該信託終了の場合においてその信託財産が国若しくは地方公共団体に帰属し,又は類似の目的の公益信託として継続するものであることを求める,シプレー原則の含みを持たせた表現となっており,そのことを踏まえて現在の公益信託契約書では類似の公益信託への「寄附」という表現が使われていることから,甲案ではその表現を用いたということになります。ただし,類似の目的の公益信託への残余財産の「寄附」が可能なのであれば,類似の目的の公益信託への残余財産の「帰属」も可能ではないかと考えております。   なお,現在の公益法人認定法には,公益法人の残余財産の帰属先に類似目的の公益信託は入っていないので,仮に乙案を採るのであればイーブンの関係ということで,公益法人の残余財産の帰属先にも類似目的の公益信託を入れてもらうということを想定しております。   2点目,第17の帰属権利者の指定の定めの変更について,御質問を受けるまで,それほど深く考えていたわけではないのですが,帰属権利者の指定の定めを第15の公益信託の変更に関する手続を経て変更することは可能ではないかと感じました。けれども,例に挙げられたケースでは既に終了事由が発生していますので,そこからあわてて変更できるかはもっと考えた方が良いのだろうと思います。   それから,沖野幹事がおっしゃられたように,帰属権利者が定まらないとき以外にも例えば帰属権利者が公益信託の継続に同意しているようなケースであればすこしシプレー原則の間口を広く採って適用するという仕組みはあり得るのかなと感じました。 ○樋口委員 2点,発言させていただきます。2点目は質問なのですけれども,1点目は今のシプレーの話ですね。それで,先ほどはっきり,シプレーについては限定的にという趣旨で,この46ページの(2)というところは書いてあるのだというお話で,それについては,本当はこういう条項が働く場面てどれくらいあるかというと,それは英米でもものすごく少ないのです,実際にはね。しかし,やはり真理は--真実は細部に宿るというのでしたか,こういう細かい点で,やはり私は立法政策上何か問題があるような気がするのです。   つまり,先ほどの説明だと,とにかく達成ないし不達成だからもう終了すればいいではないかというとどうなるかというと,公益信託は一つなくなるのですね。数が減るのですね,簡単に言うと。やはり,これは数を増やそうと思ってやっているのではないのだろうかという,そういう気持ちがなくて,できるだけ限定的にするというのが法政策上どうなのだろうかという気がするのです。   もう一つ,それは前にも少し発言したのですけれども,確かに英米でも公益信託の初めの設定目的というのを非常に厳格に解して,シプレーの適用を限定する傾向が歴史的にはあったのですね。しかし,もうアメリカでははっきりその態度を変えて,それはやはり,その当時,委託者が考えたものとは,類似なものであればというか,ジェネラル・チャリタブル・パーパスという,やはり公益のためにというぐらいに広く解釈して--広く解釈しようという話に,私が知っている限りはそうなっているのに,ここで,いやいやそれは採りませんというのがですね。別にアメリカに追随することだけがいいことではないと思いますけれども,どうしてなのだろうと。先ほどの法政策的な発想からしても,少しよく分からない。   更に言えば,先ほどの沖野幹事からの話を何とか類推すれば,どうするかというと,私は実務家でもないので,そんなこと言うのは本当に実務を知らないからだと思いますが,実際には,46ページです。(1)(2)を見ると,信託目的の達成又は不達成ということが見込める時点で,受託者として,樋口が受託者なら何をするかというと,(1)をやりますね。だから,信託行為の定めの変更,(1)によってという部分,まだ達成又は不達成とならない時点で,受託者及び信託管理人の合意があって,行政庁によって変更の認可をもらえば,実際にはシプレーはできる。本当にできるのかどうか,少し分かりませんけれども,組み合わせればそんなことだって考えられると,私は少し今の議論で思ったりしました。   二つ目は,少し質問で,これは教えていただきたいのですよ。帰属先ってどこでしたっけか,最後の帰属先,54ページです。   最終的に残余財産の帰属というのは国庫で,このときに地方公共団体というのはできないのですよというのが,私なんか,つまり法律を知らないからだと思いますが--理解できないのは,だって,その上の17の,54ページの上のところでは,指定はできるのですね,地方公共団体って。指定された場合には帰属されて,何にも書いていなくて,みんなが断った場合には,地方公共団体に行くことができない。そうすると,どうなるかというと,これは少し時間があれば,後で1回だけまた余計なことで発言させてもらおうと思っているのですけれども,今の仕組みは,47都道府県に認定委員会を作ろうとしていますよね。行政庁というのは,47都道府県の委員会も入っているわけですよ。   そうすると,そこのところで,いいですか,何とか県でとにかく勝手に終了--勝手に終了というのかな,終了の認可だか何だかさせておいて,それでそのツケが国に来ることになるのですね,それは。それは大体おかしいような気がするのですけれどもね。だから,しかし,そもそも日本の法理上,国庫以外に最終的な帰属先はないのだということを,もう少しかみ砕いて教えていただきたい。   しかし,帰属先として地方公共団体の指定はできる。指定がない場合には国庫には行くが地方公共団体には行けない。このような不条理のようなことがあっても,それは仕方がない,それは日本の法がそうなっているからだというようなことを,少し御教示願えれば幸いです。 ○中田部会長 関連する御意見ございますでしょうか。 ○能見委員 関連するというか,先ほど沖野幹事が,そもそもの問題として,帰属権利者の定めがあるときに,その定めの変更できないかということに言及されましたが,私も少しその問題を考えていたのですけれども,それと関連して,さらにこの問題の前提問題として,公益信託における帰属権利者というのは一体何なのかというところがはっきりしていないという問題があるように思います。   まず,第17の1(2)甲案にあるような残余財産を帰属権利者に「寄附する」というような意味での帰属権利者という考え方は,一般信託法の方にはないと思います。そこでは,帰属権利者というのは,終了事由が発生すると同時にある種の権利が発生して,私益信託の場合であれば,受益者とみなされて,受益者と同様な地位を取得します。しかし,公益信託の帰属権利者は,公益信託には受益者がいない以上,受益者とみなされないのは当然ですが,何らかの意味での権利性,期待権も恐らくないのではないかと思うのです。   そうだとすると,公益信託で帰属権利者という同じ言葉を使っていますけれども,やはり私益信託の場合と違う。国や自治体が帰属権利者として定められていても,私益信託の帰属権利者とは違う。先ほどの議論につないでしまいますけれども,公益信託で帰属権利者が定められていても,シプレー原則的な法理で,信託財産のより適切な処分,より近似する目的の公益法人や公益信託に寄付もできるし,類似目的に信託目的を変更して存続することもできる。何かそういうふう方向にもつながるかもしれませんので,帰属権利者というのは何なのかということについて,改めて少し詰めておいた方がいいという感じがしました。 ○中田部会長 それでは,事務当局の方からコメントを頂きたいと思います。 ○中辻幹事 樋口委員が先に意見として言われた方からコメントしますと,樋口委員のおっしゃるとおり,信託目的の達成又は不達成が見込まれるような場合にそれを当事者が認識し,変更が必要だと考えた場合には,第15の2(1)の方法で変更できるので,(2)の方法の適用場面は限定的にしても良いのではないかと事務局としては考えておりました。   御質問へのお答えですが,私が民法にとらわれすぎているのかもしれませんけれども,無主物の国庫帰属という条文,不動産の場合ですけれども民法第239条第2項にございまして,その帰属先に地方公共団体は含まれておりません。フランスでは地方公共団体が帰属先になり得るということは知識としては持っておりますし,樋口委員御指摘のように,新たな公益信託の認可は,公益法人の認定と同じく地方公共団体を行政庁として行われるケースもあるので,そのことも踏まえて引き続き考えを巡らしてみたいと思います。 ○中田部会長 能見委員の御指摘で,帰属権利者が公益信託の場合少し違うのではないかということを,具体的にこのゴチックの部分に反映するとすれば,どういう方法がございますでしょうか。もし今すぐでなくても,後でも結構ですけれども。 ○能見委員 そういう文章の作成は私は余り得意ではないので,むしろ沖野幹事など,そのほう方面の能力の長けた方にお願いしたいと思います。 ○道垣内委員 沖野幹事ではないので申し訳ないのですが,簡単に言うと,帰属権利者という言葉をここで使うとミスリーディングといいますか,概念の混合が起こってしまうので,使わないということではないですかね。「残余財産が移転する者」として,「帰属」と書いてしまいますと同じになってしまうので,少し変えるべきだということかなと思います。 ○中田部会長 具体的なヒントを頂きまして,ありがとうございました。最終的に中間試案でどうなるかはともかくとして,今の御指摘を何らかの,例えば補足説明の中になるのか,どこか分かりませんけれども,更に検討していただこうと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○沖野幹事 念のため,能見委員と道垣内委員の御指摘を確認したいだけなのです。つまり,この第17で残余財産の処理の2の最終的な残余財産の帰属の方は,もう最後にここに帰属するだけで,帰属権利者ではないというような処理にすることが考えられるかと思うのですけれども,その前の指定されているものも,信託法上の帰属権利者ではないという形にすることが適切であるという御意見で,したがって,終了事由が発生して,清算段階になったときには,各所の受益者としての権利が与えられることになる,報告を求めるとか。あと,最終計算の報告先としてどうなるかというような話も,帰属権利者で出てくるのですけれども,そういった地位は一切与えないことが適切であるという御意見なのでしょうか。念のため確認させていただきたいと思います。 ○能見委員 私は,むしろ信託法第182条とか第183条で使っている帰属権利者とは違うというふうに捉えた方がいいのだろうと思います。特に,信託法第183条第6項のように,「帰属権利者は,信託の清算中は,受益者とみなす。」というような地位は与えることはきでませんので,公益信託の帰属権利者は権利性の弱い,もっと軽いものとして考えるべきだという意見です。 ○山田委員 第16について,2点ないし3点発言させていただきます。   一つは,中間試案発表時の補足説明についての希望からお話しさせてください。   第16は「公益信託の終了」というタイトルで始まっているのですが,私の理解するところでは,公益信託の終了に関するルールを広く取り上げていなくて,重要なところをピックアップしているように思われました。何が足りないかなと考えると,終了事由の一部しか上がっていないように思います。   ですから,終了事由の例えば目的の達成・不達成の確定というのは,ほかのところでは終了事由として取り上げられているように思いますので,第16のところでゴチックで表現する必要はないようにも思いますが,補足説明の比較的頭の辺りにそういう位置付けを示していただけると有り難いと思います。   そして,同じ性質のものですが,少し細かくなりますけれども,第16の4の「公益信託の成立の認可の取消し」というところですが,これも恐らく取消事由というルールがあって,そしてそれに当たるかどうかを行政庁が判断して,公益信託の成立の認可の取消しというところに進むと思います。   先ほどは,公益法人認定法の,公益法人から公益認定の取消しの申請があったときは,必要的取消事由ですということが,関係官の方の口頭の説明にあったと思いますので,しかし,それを生かすかどうかというのも一つの問題ですが,公益信託の成立の認可の取消しに関するルールの大まかなところというのがあった方が,第16の4について具体的なイメージを持ちやすいように思います。   二つ目が具体的な意見で,中間試案には,第16の2について少し手直しをしていただけないかということです。   それは,ここには公益信託の[終了の認可/成立の認可の取消し],これはどちらでもいいのですが,これを介在させて,公益信託を終了させるという考え方が一つ示されています。   このような御意見もあろうかと思いますが,これに並べて,あるいは乙案でなくて,(注)で考え方があるというのでも結構ですが,行政庁の関与なしに公益信託は終了するというものはあってよいと思います。それで,意見を聞いていただきたいと思います。   一つ目の話と少し関連するのですが,目的の達成で終了するときに,行政庁による公益信託の終了の認可又は成立の認可の取消しというのも想定しているのかな,していないのかなというのがよく分からなかったのですが,多分していないのだろうなと考えました。そこで,もし想定していないのであれば,目的の達成がなくても,要するに信託を支えている当事者全員が,もうこれは終了させようというのであれば,行政庁の介在なしに終了させて私はよいと思いますので,それについても意見を聴く対象に加えていただければと思います。   御説明の中にあったか,なかったか,よく分からないのですが,ここに一つに集約した理由として考えられるのは,事務当局のお考えとして私が推測するのは,このようにして公益信託の公益性というものを確実にしようとされているところかと思います。勝手に辞められたら困るのだということかもしれませんが,私は,基本は,その前に話がありました残余財産の行き先をどうするかというところをしっかりすれば,行政庁の関与なく公益信託の終了というのがあってよい,当事者の合意があれば,あってよいと思います。 ○中田部会長 第16についての御意見,ほかにも頂けるようですので,その後で事務当局の方から御説明いただこうと思います。 ○沖野幹事 先ほど,ちょうど吉谷委員からの問題の指摘を受けて,第16の2の合意による終了のところで,辞任プラス1年,しかも同意による辞任プラス1年というところにも同じようにチェックを掛けなくていいかという点を申し上げたところなのですが,そういうことを考えていきますと,他の終了事由は放置していいのだろうかという問題がありまして,間違いなくそういう判断がされているのか。経済的に立ち行かなくなって,信託法52条による終了の申入れをして終了させるとか,目的の達成・不達成についてもそのとおりなのかといった辺りは,行政庁のお話としては気にしなくていいのかどうかというのが気になりまして,それで実は,山田委員とは逆の方向を考えたものですから。認可になるのか,それとも何か届出などのチェックなのか,チェックのかけかたは必ずしも認可に限らないと思いますけれども,そういうことは掛けなくていいのだろうかというのが気になったものですので,申し上げたいと思います。 ○中田部会長 それでは,対照的な御意見を二つ頂いたわけですが,関連ですか。 ○山本委員 第16の2が少し理解しにくかったので,このついでに確認させていただければと思うのですが,合意がある場合に,終了認可ないし成立認可の取消しを受けることによって終了するとされているわけですけれども,この認可の際に何をどう考慮するのでしょうか。目的の達成,不達成等を考慮するということなのかどうか,あるいはその他のことも含めて考慮するのか。そこで何を考慮するのかという点を少し明示していただかないと,この案をどう受け止めていいかが分かりにくいと思いますので,お聞かせいただければと思います。 ○深山委員 第16の2のところで,私も,鍵括弧で「終了の認可」と「成立認可の取消し」というのが並んでいて,これは中身として違うものなのかなと思ってはいるのですが,単に言葉の問題ではなくて,内容的に違っているのかなと思いながら,ただ,どこがどう違うのかということを考えておりました。   その関連で第16の4のところの本文で,認可を取り消された公益信託は終了するという提案があって,それとの関係もよく分からないのですね。というのは,第16の2のところは,もちろん合意による終了の規律として書かれているということは分かるのですが,その場合に,例えばこの鍵括弧の中の「成立の認可の取消しをすることによって」という要件を課するのだとすると,ある意味,合意があろうとなかろうと,取り消されたときには終了するということと同じことを言っているのであって,逆に言えば,合意があっても取り消されなければ終了しないということですから,結局,2と4というのは論理的には同じ規律,要件になりはせんかと思います。   ただ,そこで,2の「成立の認可の取消し」,あるいはその手前に書いてある「終了の認可」というものが,4のところとは違う場面を想定していて,つまり認可の取消事由があって,行政庁が取り消しますという場面ももちろんあるでしょうが,そうではなくて,当事者がもうこれやめたいのですと言ってきたときに,それを認めてあげましょうという認可について,それを終了の認可というのか,かつて行った認可の取消しというのかは,言い方としては両方あると思うのですが,必ずしも取消事由ではない,当事者の意思によるといいますか,その意味では合意による終了というような,そういう場面を想定しているのだとしたら,2と4というのは別のルールとしてあり得るのかなと,こんなことを感じたので,少しその辺の整理も含めて御検討いただければと思います。 ○中田部会長 取りあえず今,第16について御意見が相当出ておりますので,もし第16について更にございましたら頂いて,事務当局の方から説明してもらおうと思います。 ○平川委員 第16につきまして,2の終了の認可を受けることによって終了するというのはいいとして,「成立の認可の取消し」という言葉だけから来る印象かもしれないのですけれども,目的信託の前置を前提とした考えにつながっているようで,結局,認可によって成立するはずですが,この言葉遣いからは,認可を取り消すと,何か別の信託が生まれて,普通の目的信託になり,それが4の(注)の考え方,目的信託を前置とする考え方につながっているものと思うのですけれども,目的信託の前置を前提とした考えでは必ずしもないということを御確認いただきたいと思います。   「成立の」という言葉が何で必要なのかということも,少しよく分かりません。 ○吉谷委員 第16の3なのですが,これが少しよく分からなくて,信託法165条というのがそもそも何のためにあるのかがよく分からないというところがあるのですけれども,16の3の御提案を読んだときに,どうしてここでは行政庁の認可が不必要なのだろうかというところがよく分からなかった。   変更のところは,裁判所の後に行政庁の認可があるのに,終了の方は裁判所で終わると。これは,目的の達成がされたということだけを裁判所が判断するということであれば,別にこの仕組みを使わなくても,別の確認訴訟とかのやり方とかでもあるのかしらと思いながら読んでおりました。なので,整合性というところからすると,第16の3についても,行政庁の認可を要するとした方がよろしいのではないか。そうでなければ,終了事由とここの各項目の御説明のところについて,何か整合性があった方がいいのではないかと思われました。   そして,実務的な観点からいいますと,やはり信託目的が終了しているのかどうかということに少し自信がないというようなときに,行政庁の認可を受けて終了ということにしたいという,人情のようなものがありまして,そういう役割というのも行政庁に果たしていただくことを期待すると。先ほどの受託者の辞任・解任でもそうなのですけれども,というような実務的な,やはり自分たちで決めていいのかという悩みがあるというところについても御配慮いただけると有り難いと思うわけであります。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○明渡関係官 すみません。今,山田委員がおっしゃられた認可を介在せずに終了させるというような仕組みを設けた場合に,34ページに戻りますけれども,公益信託の情報公開,こちらの方は認可をしたら公示するということを想定しています。ここの部分との整合性,つまり今まで全て認可が掛かってくると,なくなったものが公示されるけれども,何もなく終了できるというふうなことであるのだったら,そこがどういうふうにして,なくなったというふうなことが明らかになるのだろうかという点の整理は必要となってくるのではないかと思います。 ○深山委員 第16の4のところに(注)が付いておるので,この(注)について申し上げます。   先ほども同じようなことで,(注)を格上げしたらどうかということを言って,ここでも結論的に言えば,同じような意見を申したいと思います。   念のために言いますと,決して(注)を全部格上げしろという趣旨ではなくて,重要なものに限ってという趣旨で,ここは格上げをすべきではないかという意見を申し上げます。   これは,以前どこかで議論した記憶があるのですが,一旦成立した公益信託の認可が事後的に取り消されて終了した場面をここでは念頭に置いていると思うのですが,その場合に(注)の考え方というのは,信託行為に定めがあるときを前提にしていますが,単純な終了ではなくて,受益者の定めのない信託として存続する余地を認める考え方です。   似たような議論として,最初の公益信託を創設する段階で認可申請をしたところ,不認可になってしまったときにどうなるかという議論を前回しました。第3の公益信託の効力の発生のところだったと思いますが,ここでは,甲案,乙案という形で,細かい規律についてといいますか,具体的な規律について案が述べられています。少なくとも,当然に効力がなくなるわけではなくて,一定の効力があり得るということをむしろ前提に,では,その不認可になった信託はどういう信託なのか。単純な目的信託なのか,それとはまた違った,言わば第3類型的なものなのかという議論を前回しました。そことの整合性といいますか,平仄を考えたときに,もちろん入口の場面で不認可になったときと,後から不認可になった場合は違うという考え方も,論理的にはあり得ると思います。ですから,そこと全く同じにしなければならないという論理的な必然性はないのですが,しかし,素直に考えれば,不認可といってもいろいろな不認可があるでしょうから,事後的に不認可になった場合であっても,やはり必ず当然終了しかないということではなくて,委託者の意思として,公益信託ではないけれども,公益的な信託として残してもらいたいという意向があり,行政庁から見ても,それが不合理ではないと考えられるときには当然終了にならないという道を残すべきではないかなという気がしております。   そういう観点から,ここは意見が分かれるのかもしれませんが,少なくとも(注)を乙案という形にして,本文を甲案にして,乙案という形でランクアップをして,パブコメに付していただくのがよろしいのではないかということを申し上げたいと思います。 ○中田部会長 第16について様々な御意見を頂きました。行政庁の関与の仕方について,異なった観点からの御指摘を頂きました。また,いずれにしても,認可基準を明らかにすべきである,あるいは取消事由を明らかにして,それとの関係を明確にすべきである。さらに,ただ今取消しの効果について御意見を頂きました。   これらについて,事務当局の方からコメントいただきたいと思います。 ○中辻幹事 では,順にお答えしていきますと,まず山田委員の方から終了事由について御指摘がありました。深山委員からも前回同様の御指摘がありましたけれども,この部会資料43では信託の終了事由をゴチックでは網羅的に上げておりませんので,その点もう少し分かりやすくなるよう工夫したいと思います。   次に,山本委員の御質問について,山田委員と沖野幹事でお考えが二つに分かれたところに関連しますが,事務局としては,信託目的の達成又は不達成という終了事由の有無を行政庁が判断するということは想定しておりません。信託関係人の合意による終了と,信託の目的達成又は不達成による終了とは飽くまで別のものであり,目的達成又は不達成を行政庁が判断することは困難であるし相当でもないという整理をしています。   では,信託関係人の合意による終了の場合に行政庁が何を判断するかということになりますが,補足説明に少し書きましたとおり,残余財産の分配がその信託行為の定めに従って適切に行われているどうかということを想定しているものでございます。公益信託の終了の時点では新たな公益信託が成立することはないので,新受託者の選任の論点でも申し上げているように,公益信託の認可基準を満たしているか否かの判断と直接関係しないのであれば,信託内部のガバナンスを優先し,行政庁は一歩引くべきであるという現在の事務局の考え方は,山田委員の御意見と親和性があるように感じました。   それから,深山委員から御指摘いただいた,終了の認可と成立の認可の取消しをブラケットで囲ってある部分ですけれども,事務局としては,公益信託の成立の時点で最初にされた認可の行政処分がある以上当該信託の終了時にはその取消処分が必要であるという考え方と,取消処分は必須ではなく別に当該信託の終了時に終了の認可という行政処分がされれば自動的に成立の認可は効力を失うという考え方を2つ並べているものでございます。   もう一つ,深山委員から第16の2と4の関係について御指摘を受けました。仮に第16の2のブラケットの部分が成立の認可の取消しということになるのであれば,それも含めた形で第16の4の終了で受けられます。ただし,第16の2が終了の認可ということになったときには,2と4は別の整理ということになると思います。   それから,平川委員から御指摘ありました目的信託の前置との懸念につきましては,この部会の結論として,公益信託の成立のために目的信託の前置を不可欠なものとしないということははっきりさせておきたいと思います。なお,成立の認可という表現を使ったのは,変更の認可や終了の認可など場面ごとで分けるという趣旨でございます。   さらに,吉谷委員の御意見について,実務上という話であればそれは人情も含めて尊重すべきであると感じますし,公益目的の達成又は不達成について当事者の方で自信が持てないという場面は想定できるようにも思います。ただ,信託内部のガバナンスを充実させ,公益信託の認可基準適合性の確保に必要な範囲で行政庁が関与するという建て付けからすると,この場面において行政庁の関与が必要であるとするのは少し過剰な関与であるように思いました。   長くなり恐縮です。最後,明渡関係官から御指摘ありました認可の公示との関係ですけれども,公益信託の成立の認可が公示されるのであれば,公益信託の終了も公示されるのが筋ということになります。おそらく公益法人認定法の仕組みからいえば認可の取消しの公示がしっくりくるのかもしれませんけれども,仮に終了の認可ということになった場合にも,行政庁は終了の公示をすることになるのではないかと考えます。 ○中田部会長 頂いた御意見に今,全てお答えいただいたかどうか,もし確認を求める委員,幹事いらっしゃいましたらどうぞ。一応今のお答えでよろしいですか。   もちろん,本日の御発言については,更に議事録で精査いたしまして,今後の作業に反映していただくことになると思います。   ほかにもしございませんようでしたら,お待ちいただいておりました小野委員にお願いします。 ○小野委員 まず,第15についてコメントといいますか,お願いしたい点を申し述べます。   今,この辺りはずっとこれまで議論してきたところで,「目的」という言葉が「公益信託事務の処理」という言葉に変わったという経緯は,もちろん重々承知しておりますけれども,この中で対立する概念といいますか,「軽微」という表現になっておりまして,目的と軽微の間というのはどうしてもいろいろグラデーションが掛かるという,グラデーションという言葉を使うまでもなく,いろいろな幅があるかと思います。   公益法人認定法との比較とか整合性とを検討することが,絶えずといいますか,要所要所において必要があるかと思うのですけれども,公益法人認定法の方は届出も限定列挙で,なおかつ認可が必要なものは3つに限っているようで,大分立て付けが異なっております。信託と法人ですから,全ての面で必ずしも同じである必要はないと思いますけれども,同じ行政庁が同じような公益事業を扱うときに,行政庁の負担としても発想の仕方としても違う扱いをする必要があるのかと思うところがあります。   何点かお願いしたいところは,「軽微」という言葉をある意味ではもう少し拡大解釈できるような表現を考えていただけないかと。逆に,軽微であれば届出すら要らないという議論もあるかと思います。公益法人認定法の方は,届出すら限定列挙であるということを踏まえると,信託目的の変更に匹敵するような事務処理の変更と,あと「てにをは」のような意味においての軽微といったところと,その間のものがいろいろあるかと思うので,その辺について何か配慮していただけるような記述を考えていただければと思います。   また,パブコメを求める際に,一般の市民の方がどういうふうに考えていいかということの取っ掛かりとして,公益法人認定法においてはこういうような形になっていますというものを要所要所で述べていただきたいと思います。特に,この観点からすると,もし今の表現が変わらないとすると,大分違うということも認識の上で,これでいいのだという議論もあるかもしれませんし,よりもう少し細かい,今2分類ですけれども,3つとか,場合によっては4つとか,間を採るような分類もあるかと思うので,そういうような意見も喚起するという意味において,そういうような配慮も補足説明のところでしていただければと思います。 ○中田部会長 ただ今の小野委員の御発言なのですけれども,第15の1の(1)と(2)についての御発言だったかと承ったのですが。 ○小野委員 そうです。 ○中田部会長 さらに,第15については2の規律もございます。2の規律というのは,目的変更については2の規律があり,第15の1というのは,それ以外のと申しますか,一般的な公益信託事務の処理の方法についての変更で,その中に(1)と(2)があるので,私は3段階あるのかなと思っていたのですけれども。 ○小野委員 その意味においてはそうです。 ○中田部会長 2の(1)が,信託目的の変更や公益信託事務の範囲の変更などを想定しているのが事務局の考えかと理解しておりました。ですので,そうしますと,今の小野委員の御指摘というのは,ある程度は盛り込まれていて,更にきめ細かくするということなのか,あるいは少し分かりにくいところがありますので,それは補足説明等で,場合によっては公益法人認定法の規律も参照しながら分かりやすくするというようなことでも対応することができますでしょうか。 ○小野委員 補足説明等でていねいに公益法人認定法の規律を参照するという点はぜひお願いしたいところです。たださらに軽微基準をもう少し,軽微という言葉ではないものにしていただき届出の対象とし,一方,「てにをは」的なものは軽微基準にも該当しないという扱いにしていただければと思います。4分類と言っておいてよかったと思うのですけれども,届出とするものを,公益法人認定法とのバランスとの関係で,もう少し幅広く捉えてもいいのではないか,それは行政庁の負担からその方がよいではないかということでございます。 ○中田部会長 分かりました。ありがとうございました。 ○平川委員 今の第15の点なのですけれども,そもそもこの分類の公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更というのと,公益信託事務の処理の方法以外の信託行為の定めの変更という,二つの変更の相違というのがどこにあるのか,我々でも分かりにくく,さらに,一般人にはより分かりにくい表現の仕方で,そもそも分ける必要があるのかも疑問があるように思うのですけれども,分けるとしたら,パブコメの際は両者の相違を一般人でも理解できるように,明確にしていただきたいと思います。   また,公益法人認定法第11条1項においては,行政庁の認定を必要とするものは,公益目的事業の実施区域や事務所の変更並びに収益事業等の内容の変更を除けば,公益目的事業の種類又は内容の変更のみとなっております。それと対比した場合に,公益信託事務の処理の方法に係る信託行為の定めの変更というのは,公益法人認定法上の公益目的事業の内容の変更に当たり,その種類の変更ではないと解してよろしいのか,御確認いただきたいと思います。   また,処理の方法以外に係る信託行為の定めの変更の例示として,たたき台48ページにある「公益信託の目的の変更や公益信託事務の範囲の変更」は,公益法人認定法と対比してどの変更に当たるのか,必ずしも明確ではないように思いますが,公益信託事務の処理の方法を内包するものが公益信託事務の種類の変更も含むのか,それは公益信託の目的の変更とどう違うのかについて,分かるようにしていただきたいと思います。   また,公益信託の目的の達成に支障となるに至ったときに,関係人の申立てにより,裁判所が信託の変更を命ずることができることについては,賛成いたします。   裁判所が信託の変更を命じる前に行政庁の意見を聴くという考え方については,手続が複雑となり,遅延も考えられることから,その必要はないと考えます。   信託行為の定めの軽微な変更をするときには,受託者がその旨を行政庁への届出で足りることについては,公益法人の場合と同一であり,賛成いたします。   何が軽微かということについて,より明確にした方がよいのではないかという小野委員の御意見には賛成いたします。   公益信託の目的の達成又は不達成の場合において,一定の場合に公益信託を継続することができることについては,賛成いたします。   第15の3の「公益信託の併合・分割」についてですが,これは信託関係人の合意により,行政庁の認可により行うことができることについては,賛成いたします。   裁判所が関与するルートについては,併合・分割は私的自治の問題であることから,必要がないと考えます。   ちなみに,公益法人制度においては,合併事業の全部又は一部の譲渡について,公益法人認定法第11条1項に該当する場合は行政庁の認定を必要といたしますが,それに該当しない場合は事前の届出をすればよいことになっています。 ○小野委員 細かい質問で恐縮ですが,「合意等」の「等」が何を意味するかというのと,第15の2の(1)とか「合意」だけになっていますが,意図的に区別したのかどうなのか,確認をさせてください。 ○林幹事 まず,1点は,他の方々の繰り返しかもしれませんけれども,先ほどおっしゃられたように,第15の変更について3段階になっていることは理解して,この御提案自体がいろいろ配慮されてできたものだとは理解しているつもりです。ただし,その3段階の相互の間の境界線が若干不明確ですので,何とか具体化できないのかと思います。特に,「軽微」というのも分かりにくいので,この点どう考えられているのかということがあって,公益法人認定法のように,もっと何らか具体的に事由を書くのかなどを御検討いただけたらというのがまず1点です。   それから,(注)の関係の話ばかりしてしまうのですが,弁護士会で議論であったところとしては,まず第15の1の(1)のウのところです。行政庁による変更の認可を受ける点に関して,(注)で,事前に行政庁の意見を聴くことについて,これも考えられる意見なので,(注)ではなくて,格上げをした形でパブコメにしたらどうかと考えます。   それから,第15の3の併合・分割については,裁判所による併合・分割についてです。確かにこれを現実にやろうとすると,それなりに深く関わるということは理解できるのですが,可能性もあるところなので,これも格上げしてはどうかという意見が弁護士会でもあったので申し上げます。 ○新井委員 私の発言は,第15の公益信託の変更について,パブリックコメントに付す際の要望です。   まず,公益信託事務の処理の方法というのと,公益信託事務の処理の方法以外というのと二つに分けたのは,一般の方には分かりにくい点があるかもしれませんけれども,これまでの議論の到達点ですので,これはいいとして,その上でパブリックコメントに付す際に,是非分かりやすい説明をしていただければと思います。   その上で,前者については,行政庁による変更の認可プラス裁判所の信託の変更というのが出てきております。それに対して,後者については行政庁による変更の認可だけで,裁判所の信託の変更を命ずるということはないことになっておりますが,これは一般の方にパブリックコメントで意見を聴くときに,これだけ出されてもなかなか答えようがないのではないでしょうか。なぜ両者が違うかということを,しっかりと理由を述べていただいた上で意見を求めることが必要だと思いますので,そのようにお願いいたしたいと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○吉谷委員 従来述べておりました意見の繰り返しではあるのですけれども,認可当初の信託目的や公益事業の内容を度々変更するとか,委託者の意向によって変更するというような,濫用的なものは行政庁の認可が得られないようにすべきではないかと考えておりまして,このような考え方について,(注)なのか何なのか,何らかの形で示していただければと考えております。 ○棚橋幹事 (注)の格上げについて2点申し上げます。まず1点目は,第15の1の(1)のウの(注)の部分ですけれども,先ほど申し上げた意見と同様で,裁判所の判断対象でない点について意見を聴く理屈の整理がないまま注から本文に格上げすることには難しい面があると考えます。   2点目は,第15の3の「公益信託の併合・分割」の(注)の裁判所による併合・分割命令という点について,部会資料にも記載がありますが,組織変更のように思われますし,信託の目的の変更よりも重大な変更のように思われますので,合意がないのに裁判所が命令できることにすると,私人間の契約関係について,裁判所が新たな契約関係を創造してしまうということになり,監督の域を超えているのではないかと思われますので,その正当化根拠も含めて慎重に検討していただきたいと思います。   また,信託法150条はそのまま併合・分割命令ということの要件には使えないと思いますので,要件が煮詰まっていない段階で中間試案本文に上げることにも難しい面があるように思います。 ○中田部会長 棚橋幹事の御意見は,第15の1(1)ウの(注)については,乙案という形で格上げするのではなくて,(注)にとどめておくべきであると。3の(注),併合・分割命令については,むしろこれは(注)からも落とすべきであるということでございましょうか。 ○棚橋幹事 実際,部会で議論があった点ですので,(注)から落とすことまで申し上げているわけではないですが,こちらの考え方を述べさせていただいたということです。 ○沖野幹事 第15の小野委員の御質問に関してなのですけれども,今回,区分を信託目的の変更とそれ以外というところから,公益信託事務の処理の方法を基準としてそれ以外というふうに分けられたところなのですけれども,それで,合意等の話ですが,元々は目的とそれ以外で分かれていたときには,変更自体は信託法149条2項以下の規律によりまして,信託目的に反しないことが明らかであるようなときには,受託者と受益者の合意でできるといったような規律がベースにあるので,必ずしも3者合意に限らないということで「等」が入っていたのではないかと理解していたのですが,まずそれでよろしいかというのが1点なのです。   それで,そういう理解であればということなのですけれども,そうしましたときに,目的の変更については,それぞれの,いわば主体省略の要件を満たさないので,3者の合意でしかできないということになるのではないかと思うのですけれども,事務処理の範囲の変更などになりますと,目的には反しないことが明らかであるといったような場合が出てくるようにも思われまして,そうすると,元々使い分けていた「合意等」と「合意」というのが必ずしも当てはまらないように思われました。   そうしますと,しかし,2の(1)を「合意等」に改めますと,結局,1の(1)の後が同じになるのではないかと思われまして,あえて分けている意味があるのかと。2の(2)の方は「類似の目的」に変更しますので,目的変更ですから,ここは違ってくると思うのですけれども,少し混乱を招くようにも思いました。元々の「合意等」の理解が間違っていれば,それは前提が違っていますので,確認させていただければと思います。 ○中田部会長 この辺りで事務局の方からコメントを頂きたいと思います。 ○中辻幹事 小野委員,林幹事及び新井委員からは,パブコメにかける中間試案はできる限り分かりやすく作るようにという御指示を頂いたものと受け止めました。   小野委員から御質問のあった「合意等」の意味についてお答えいたしますと,沖野幹事のご理解のとおりですが,少し今回の部会資料では説明をしょってしまったきらいがあって,以前の部会資料42の第1の(注2)では,委託者,受託者及び信託管理人の「合意等」について,委託者,受託者及び信託管理人の合意という,信託法149条1項の場面だけではなく,149条2項以降の,3者合意ではなくて2者合意や信託の目的に反しないことが明らかであるとき等の受託者単独の意思表示も含めた概念を想定していたものでございます。   その上で,沖野幹事がおっしゃられたとおり,第15の2で「委託者,受託者及び信託管理人の合意」と書き,「等」を付けていない理由は,もともとこの項目は公益信託の目的の定めの変更という表題を付け,目的の変更の場合は今申し上げた,信託の目的に反しないことが明らかであるときというような場面は想定できないことから,基本的には3者合意,委託者がいない場合は2者合意で受託者単独の意思表示による変更は認められないという整理をして,あえて「等」を外しているということでございます。   なお,現時点の部会資料は,前と違い公益信託の目的以外の変更か目的の変更かで区別していないこともあり,第15の1と第15の2の違いが分かりにくくなっているというのはそのとおりですし,2(1)についての沖野幹事の御指摘もそのとおりかと思いますので,更に分かりやすくなるよう工夫したいと思います。 ○中田部会長 ほかに御意見も頂いておりますけれども,それも更に検討して,できるだけ次回か,次々回かには何らかの形で応答できるようになるかと存じます。   大分遅くなっておりますけれども,更に第15から第17までについて御意見ございますでしょうか。   ほかにございませんでしたら,では,深山委員と平川委員から御意見を頂いて,そこで休憩に入ることにいたします。 ○深山委員 第17についてですが,また三度(注)の格上げの話で大変恐縮なのですが,先ほども言いましたように,決して全ての(注)を格上げすべきと言っているのではなくて,今回の第17の1の(注)の格上げについては,最も格上げしていただきたいということを申し上げます。   残余財産の帰属先として,委託者等の私人を認めるかどうかということについて,(注)の考え方というのは,一定の場合には認めるという考え方を示すものです。   甲案,乙案というふうにありますので,言わばこれは丙案として並べていただきたいと思います。もちろん,ここの議論も,パブコメの意見も踏まえて,最終的には決まってくるわけですが,私がここで,言わばこの(仮称)丙案にこだわる実質的な趣旨は,これも度々申し上げているように,言わば期間限定の公益信託というものを認めるべきではないか,例えば,10年という確定期限でもいいですし,あるいは委託者が死亡したときという不確定期限でもいいのですが,例えば10年なら10年という期間を限定して,この期間に限って公益信託を設定し,公益に供したいという委託者の意思というものを認めることによって,この制度をそれならば使いたいという人が少なからずいるのではないか,それを認めるニーズはあるのではないかと考えています。   もちろん,いろいろな批判もあるところですが,補足説明には,言わば批判的なことをずらずらっと書いて,従って(注)ですとされています。こういうことで一応(注)に残してはいただいているものの,前回も申し上げたように,もう少しメリット・デメリットみたいなことをニュートラルに書いていただいて,こういうメリットもあるけれども,こういうデメリットもあるというようなニュートラルな書き方をして,意見を取っていただきたいと思います。   この場の議論なりパブコメで,いや,期間限定信託なんていうものは必要ないという意見が大勢であれば,これはいたし方ないのですが,この(注)の書き方あるいは補足説明だけですと,私が言うところの丙案が意図しているところが,恐らく分からないまま葬り去られるのではないかという気がします。それは,やはり私としては納得し難いので,そういう期間限定信託を認める必要があるか,ないかということを土俵にのせた上で,それは要らないというのであれば,それはそれで一つの判断なのだと思います。是非そういう観点で,丙案に格上げするだけではなくて,補足説明の中でも,これを認めればこういうことが可能になるというメリットもありますということを御紹介いただいた上で,他方でデメリットといいますか,問題点があるということももちろん書いていただいて結構なので,例えば税制優遇との関係のことを説明してもらえればと思います。   それから,もう一つ申し上げたいのは,ここでの議論において,信託の設定時に供された財産と,その後入ってきた財産とを会計上も分けなければならないという煩瑣な問題があるという指摘があって,そのこと自体はもっともだと思うのですが,私が想定しているこの場合の例というのは,補足説明に記載されているような,金銭をぼんと信託をして,一定期間それを公益信託において,たとえば10億のうち7億使ってという場合ではなくて,特定の不動産,あるいは動産でもいいと思うのですが,特定の財物を一定の期間,10年なら10年,30年なら30年,公益信託に付するというものです。例えば,アパートのようなものを留学生の学生寮として使うというもので,そのものが終了時に,10年なり30年たったときに,そのままの形で残っている場合に,それを委託者なり第三者に戻すという,そういうことを念頭に置いていて,金銭のような会計上の分別が必ずしも容易でないものとか,あるいは管理上容易でないものまで手間を掛けて区分しておいて,最終的に帰属を分けるということを想定しているわけでもないのです。   ですから,そこは仕組みを仮に作るとしたら,それなりの手当てといいますか工夫をする必要があるのでしょうが,念頭に置いているのは,そういう特定のものが形を変えずに最後まで残っていて,そのまま返すというようなものを想定しております。そのような信託財産を念頭に置いた期間限定公益信託というものについて,あってもいいかどうかということを問題提起した上で,是非を問うていただきたいという意味での格上げ案を御検討いただきたいと思います。 ○平川委員 第17につきまして,甲案を大いに推進したいと考えるものですけれども,先ほど中辻幹事が冒頭で言及されましたように,今後,公益法人認定法改正の際には,公益法人の残余財産を類似の目的を有する公益信託に帰属させることとする条項をリシプロカルに入れる可能性の基となるものですから,公益にささげられた財産の公益な活用が可能となることから,この乙案を推進すべきであると考えます。   ただし,今,深山委員が格上げすべきであるとおっしゃっている(注)の考え方,すなわち公益信託成立後,増殖した財産のみ公益帰属とし,元々の財産は私益に戻り得るという考え方については,制度として複雑化し,公益財産の信託設定後の公益活用を担保できるか否かの問題があることから,(注)に書く程度はよいとしても,格上げすることには反対いたします。 ○中田部会長 ありがとうございました。   更に第17について。 ○道垣内委員 深山委員がおっしゃることはよく分かるのですが,深山委員がおっしゃるとおりに書いたら,それはとてもいいことだというふうに皆さんお考えになると思うのです。しかし,それはキャピタルゲイン課税との関係では,かなり難しい問題が生じると思いますところ,ただ単に税制優遇を伴うことはまず期待できなくなるということだけ書くのではなく,どのような理由でどれだけ難しくなるかということをきちんと書いた方がいいですね。 ○小野委員 今の深山委員の発言を補足するだけなのですけれども,弁護士会での議論でも,米国でも利用例はあって,それで税務上の取扱いも米国ならではの取扱いかもしれませんけれども,信託財産の最低金額を設定するとかのやり方で行われており,決して珍しい,また,あってはならない制度ではないということも付加して,補足説明していただければと思います。 ○吉谷委員 こう申し上げては何なのですけれども,深山委員のおっしゃったような例は,別に不動産を信託しなくても,別のやり方を考えればできるような気が私はしましたので,信託という非常にいろいろな使い方ができる道具ですので,別の工夫をして,同じ目的を実現できれば,別に制度自体を複雑にする必要はないのかなというふうに少し思いましたという感想でございます。 ○渕幹事 私からは二点ございます。一つは今,吉谷委員がおっしゃったことと同じでございます。定期借地権を信託する等のほかの方法を使えば,それほど複雑な制度にせずに,同じことが達成できるのではないかと思う次第です。   もう一つは,第17のところで説明されている,税制優遇のことです。所得税法施行令217条の2を参照して,「税制優遇は期待できなくなる」とはっきり書かれています。先日,藤谷前関係官が雑誌「信託」載せた論文で,税制優遇を公益信託に対して与える前提として,制度の立て付けとしては,まず,公益信託を税法でいう「法人課税信託」という器にのせて,その上で優遇する,というようにしないとうまくいかないだろうということを書いていらっしゃいます。要するに,委託者に帰属したままの財産ではなくて,財産が一旦独立して宙に浮いているのだという状態がまずあって,そのことを前提に,それに対して税制優遇を与えるのだという説明になるのだと思います。   このため,今回,税制優遇が期待できなくなるというのは,程度問題という面ではなく,むしろ,税制優遇の前提となる制度設計の前提が崩れるというような,かなり大きな問題になるかもしれません。   私個人としては,深山委員がおっしゃったような制度設計もありだと思いますし,それで税制優遇が伴わない公益信託というものがあってもいいのかもしれないとは思います。しかし,もしこの補足説明で書かれているように,税制優遇ということを重く見るのであり,かつ整合的な税制ということを仕組もうということを考えるのであれば,やはり以上述べた点は非常に大きいと考えます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   大体それぞれのお立場からのポイントというのは,今までも御議論いただきましたし,また,本日,よりそれぞれのお立場が明確になったと存じます。   ほかにないようでしたら,この辺りで,大分遅くなってしまいましたけれども,15分間の休憩を挟みたいと……。 ○小野委員 今の渕幹事の発言に質問があるのですけれども。 ○中田部会長 これはまだ続きそうですから,休憩後にいたしましょう。申し訳ございません。4時15分まで休憩いたします。           (休     憩) ○中田部会長 それでは,時間が来ましたので,再開いたします。   ただ今,部会資料43の第17について御意見いただいていたわけですが,更に小野委員から御発言がおありかと存じますので,お願いいたします。 ○小野委員 先ほど渕幹事のお話を聞いて,今まで目的信託前置の是非の議論とか,公益目的の目的信託の議論とか,あと目的信託と公益信託の違いとか類似の議論をしたときに,誰もが頭にあったのは,現行の目的信託の信託法上の要件の厳格さということのほか,もう一つ,利用されない最大の理由の一つとして,法人課税信託であるということもあったと思います。   これまでこの微妙な論点を避けるべく部会では議論をしてきたと思います。ところが,税法の世界で,公益信託は目的信託の特例であるという扱いをする可能性,また,それが論理的な整合性があるというような趣旨が,多分,先ほどの渕幹事のお話であったと思うのですけれども,それは今までの部会での公益信託は目的信託とは違うのだという議論と大分方向が違うと思います。   ですから,せっかくこれまでの議論が反映されるような形での税制上の扱いをしていただきたいと。そういう観点から今後議論していただければと思いますし,また,部会長を始め事務局の方もその辺を十分留意していただければと思います。 ○渕幹事 先ほど申し上げた話は,「法人課税信託」なので課税が重いというような話ではございません。税制優遇を与えるとした場合に,どういう仕組みで与えるかという話です。特定の個人に帰属したままの財産であるけれども,それを税法上優遇するというロジックは,なかなか実際問題難しいわけです。本当にその人が公益目的に使うかどうか,なかなか分からないわけです。このため,委託者とは離れた財産であるということを前提に,それは良い目的に使われるので,税制優遇を与える価値がある,というロジックの方が,税制優遇を与えるにしても,制度の設計の仕方としてスマートであろう,合理的であろうと,そういうような話でございます。「法人課税信託」なので常に課税が重いということにはならないと思います。 ○小野委員 原則と例外をひっくり返して,例外を原則まで広げれば確かに同じになりますけれども,今,法人課税信託が導入された時点で,公益信託課税が変更にならなかったという現実,また,当然そういうことは一定の理屈があって変更にならなかったと思うのですけれども,それは公益信託が目的信託とは違うのだということが制度の立て付けだったと思うのです。だからこそ,部会での議論も,従前のものをすっかり変えましょうという議論は,もちろん論点としてはありましたけれども,そうはしないというのが,先ほども事務局の中辻幹事から発言ありましたけれども,部会のほぼ一致した意見であり,また目的信託前置とはしないという議論であり,それが部会でのこれまでの議論だったのですね。   ですから,そういう事実も片やあるということ,また,現行の税法上の取扱いにロジックが当然あったはずだということも重く受け止めていただければと思うのです。 ○渕幹事 私,研究者として個人としては,できるだけあらゆる財産を個人に帰属させて考えた方がよいと思っております。しかし,法人課税信託が入ったときもそうですけれども,ここ15年,20年ぐらいの法人税や所得税の制度設計に当たっては,納税義務者の単位に割と簡単に認めてしまって,それから事を考えようというような発想が出てきております。法人税の納税義務者というのが何なのかということについて,非常に深く考えるというよりは,技術的に課税を受ける単位の一つであるというぐらいに軽く考えているというふうな感じになってきております。要するに,法技術的に財産を個人に寄せて考えるのか,個人と独立の団体に帰属する財産として考えるのかという対立軸において,後者が優勢になってきているわけです。   そうすると,今回の公益信託の課税についても,後者の枠組み,すなわち個人とは独立した財産の固まりであるということを受け入れた上で,それに対して税制優遇を与えるという仕組みにした方がいいのではないかというのが,藤谷論文を読んだ私の理解でございまして,そして,それは非常に合理的なのではないかと思います。   要するに,最終的に税制優遇がどのぐらいの程度認められればいいかということが問題なのであって,個人に寄せて考えて税制優遇が余りない場合と,独立した主体と税法上考えて税制優遇がたくさんあるのであれば,恐らく小野委員も後者の方がいいと考えられるのではないかと思います。 ○中田部会長 ありがとうございます。   ここで税制をどうこうすることはできないわけですが,現在の客観的な情勢について今御説明いただいたかと存じます。   ほかにございませんようでしたら,第17までについては以上といたしまして,続きまして,部会資料43の第18及び第19について御審議いただきたいと思います。   事務当局から説明してもらいます。 ○舘野関係官 それでは,御説明いたします。   まず,「第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等」について御説明いたします。   第18の「1 公益先行信託」の本文は,「公益先行信託について,行政庁が成立の認可を行う制度は設けないものとする」との提案をするものです。   また,本文の提案の括弧内に記載しておりますが,公益先行信託とは,「信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を公益目的のために供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を私益目的のために供する信託」と定義しております。   部会資料40の第2の1の提案では,公益先行信託について規律は設けないとしておりましたが,その意味をより明確にするため,第18の1の本文では「行政庁が成立の認可を行う制度は設けない」とする表現に変更しております。   部会資料40の第2の1の提案に対して,第41回会議では,ニーズが不明であること,税制上の問題,法律関係の複雑化等の理由から,公益先行信託を許容すべきでないという意見があった一方,公益先行信託の先行部分については公益信託の実態を有するものであることや,規律を設けないと行政庁の認可を受けない信託が悪用される可能性があることから,規律を設けるべきである旨の意見や指摘もありました。   それらの御意見等を踏まえて再度検討したところ,現在の法制度の下でも受益者の定めのある信託の仕組みを活用して,公益先行信託の趣旨を実現することが可能であることを示すことには大きな意味がありますが,議論の整理のため,公益先行信託の定義を明確にし,その成立を行政庁が認可する制度を設けるか否かを検討することが適切であると考えられます。したがって,第18の1の本文の括弧内のように,公益先行信託を定義しております。   民間による公益活動を促進するための方法の多様化という観点からは,公益先行信託に関する新たな制度を設けることも一つの考え方ではありますが,特に税制優遇を得て私財の蓄積がされる等の濫用を防止するための規定等の複雑な規定を新公益信託法の中に設ける必要があると考えられるほか,「公益先行信託」という名称の下に,委託者以外の第三者から寄附が集まるとは想定し難いですし,行政庁による監督のコスト等に見合った利用がされるかは疑問が残ります。さらに,税法の観点から見ても,私的利用が見込まれる信託が公益信託と同等の税制優遇を受けることは期待できないものとも考えられます。   したがって,第18の1の本文のような提案をするとともに,先ほど申し上げましたように,現時点では,現在の法制度の下でも受益者の定めのある信託の仕組みを活用して,公益先行信託の趣旨を実現することが可能であることを一般に周知することの方が,より適切かつ現実的な方策であると考えられます。   これらの点について,御意見等を頂ければと存じます。   次に,第18の「2 公益信託から受益者の定めのある信託への変更」ですが,部会資料40の第2の2の提案に対して,第41回会議では,これに賛成する御意見が大多数であったことから,細かな表現の修正のみを行い,当該提案の実質を維持した提案をしております。   次に,第18の「3 残余公益信託」の本文は,「残余公益信託について,行政庁が成立の認可を行う制度は設けないものとする」との提案をするものです。   また,本文の提案の括弧内に記載しておりますが,残余公益信託とは,「信託設定当初の一定期間は信託財産の一部を私的目的のために供するが,一定期間経過後は,残りの信託財産を公益目的のために供する信託」と定義しております。   第18の3の本文の提案については,先ほど御説明いたしました第18の1と同様の観点から,部会資料40の第2の3の提案を変更しているのみであり,当該提案の実質は維持しております。   部会資料40の第2の3の提案に対して,第41回会議ではこれに賛成する意見が多数でありましたが,残余公益信託については,後続の公益目的の信託開始時に存在する信託財産の金額が不確定である上,当初の信託設定時に行政庁が認可基準を満たしているか判断することは困難であるとも考えられます。また,後続の信託が公益目的となる以上,先行する私益選択にも一定の監督がされるべきであると考えられますが,そのような監督を行うことは容易ではありませんし,税制優遇を受けることも期待できません。   また,現在の法制度の下でも受益者の定めのある信託の仕組みを活用して,残余公益信託の趣旨を実現することも可能であることから,公益先行信託と同様に,現時点ではそのことを一般に周知することの方が,より適切かつ現実的な方策であると考えられます。   これらの点について,御意見を頂ければと存じます。   次に,第18の「4 受益者の定めのある信託から公益信託への変更」の本文は,まず甲案として,「受益者の定めのある信託について,信託の変更によって受益者の定めを廃止して,公益信託とすることはできないものとする」。乙案として,「受益者の定めのある信託について,信託の変更によって受益者の定めを廃止して,公益信託とすることができるものとする」との提案をするものです。   部会資料40の第2の4の提案について,第41回会議では,甲案,乙案の両案を支持する意見がありましたが,乙案を支持する意見として,会社法上の組織変更に相当するような仕組みが必要となる可能性がある旨の指摘がありました。信託法上は,受益者の定めのある信託と受益者の定めのない信託とは,基本的な点において大きく異なり,信託の変更によってこの両者の間を言わばまたぐようにすることは相当でないと考えられていることから,第18の4の本文の甲案の提案をしておりますが,甲案に対しては,受益者の定めのある信託から公益信託への変更は,政策的な観点から認める余地があるとの指摘が考えられます。   一方,第18の4の本文の乙案は,本部会資料に記載いたしましたような活用事例も考えられる上,税制優遇の観点からも問題はないと考えられます。ただし,乙案を採用した場合,先行する受益者の定めのある信託の受益者の定めを廃止することにより,当該信託の受益権が消滅することになるため,受益者全員の同意が必要であるほか,受益者の債権者を保護するための規定などを設けることを含め,会社の組織変更のように複雑な制度になる可能性があるという指摘があり得ますので,その点に留意して検討する必要があります。   これらの点について,御意見を頂ければと存じます。   最後に,「第19 その他」の論点について御説明いたします。   まず,第19の「1 信託法第3条第3号に規定する方法による公益信託」について御説明いたします。   第19の1の本文は,甲案として,「信託法第3条第3号に規定する方法により,公益信託をすることはできないものとする」。乙案として,「信託法第3条第3号に規定する方法により,公益信託をすることはできるものとする」との提案をするものです。   これらの提案については,部会資料37の第5の1の提案から実質的な変更はありませんが,第37回会議において,委託者が公益信託を支配しないという基本的な考え方に自己信託は合わず,税制優遇も伴わない可能性があるとの御指摘があったことを踏まえ,甲案の理由として,その旨の懸念を付加することが考えられます。   次に,第19の「2 新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託の取扱い」について御説明いたします。   第19の2の本文は,新公益信託法施行時に存在する既存の公益信託について,甲案として,「新公益信託法の施行日から一定の期間内に新公益信託法に基づく公益信託への移行の認可を行政庁から受けることを必要とし,移行の認可を受けなかった信託は上記の期間経過後に終了するものとする」。乙案として,「新公益信託法の施行日後に新公益信託法に基づく公益信託の移行の認可を行政庁から受けることを必要とせず,移行の認可を行政庁から受けなかった信託も存続するものとする」との提案をするものです。   部会資料37の第5の3の甲案及び乙案に対しては,第38回会議において,両案を支持する意見が複数ありました。   そこで,第19の2の本文の提案では,部会資料37の第5の3の提案において「認定」としていた箇所を「移行の認可」とするなどの表現の変更をした上で,実質を維持しております。   新公益信託法に基づく移行の認可について,公益信託の受託者の事務負担や,当該事務負担に起因する信託財産の減少を看過すべきでないことは当然ではありますが,本部会資料の第9などで提案をしておりますとおり,新たな公益信託においては,内部ガバナンス体制も大きく変わることが想定されていることから,新公益信託法の施行後には,既存の公益信託にも新公益信託法を適用することが相当であると考えられます。   その点も踏まえ,既存の公益信託に与える影響について慎重に検討した上で,第19の2の本文の甲案を採用する,あるいは特定公益信託の要件を満たしている既存の公益信託について,施行日後に新たに成立する公益信託よりも簡易な手続等により,新たな公益信託の移行の認可を受けることを可能とするような案を検討することも考えられます。   これらの点について,御意見を頂ければと存じます。   次に,第19の「3 罰則」について御説明いたします。   第19の3の本文は,「現行公益信託法第12条の規律を改め,罰則について所要の措置を講ずるものとする」との提案をするものです。   平成18年信託法改正時に本規定が設けられた趣旨及び本部会資料において,現行公益信託法第4条第2項,第6条及び第7条などは,廃止又は改正が検討されていることを踏まえると,公益信託に係る科料について定めている同法第12条も改正する必要があるものと考えられます。   そして,新たな公益信託において,仮に受託者による公告を不要とするのであれば同条第1号の規定は不要となりますが,同条第2号及び第3号の規定については,これと同趣旨の罰則が必要になるとも考えられます。   さらに,公益法人認定法第62条から第66条までの規定を参考として,偽りその他不正の手段により公益信託の成立の認可を受けた受託者に対する罰則などを新設することが考えられます。   なお,現行公益信託法第12条は,平成18年の新信託法制定の際に新設された規定であり,公益法人認定法の罰則規定も平成18年に新設されたものであって,その後10年が経過した現時点において,物価や貨幣価値の変動は大きなものでないことからすると,罰金及び科料の金額は,現状の金額を維持することが相当であると考えられます。   これらの点について,御意見を頂ければと存じます。   また,第19の4において,その他所要の規定を整備するものとすることとしております。 ○中田部会長 それでは,まず「第18 公益信託と受益者の定めのある信託等の相互変更等」について,御審議いただきたいと思います。   いかがでしょうか。 ○平川委員 第18の1,2,3の法務省の提案には賛成いたします。   3の「残余公益信託」について,実際上,残余財産が公益帰属された時点で認可要件を充足するなら,その時点で申請・認可を受ければよいのであって,当初,私益信託の段階で,あらかじめ残余公益信託という形の認可を行う必要はないと考えます。   4につきましては,乙案を推進したいと考えます。これを排除する必要のないことから乙案に賛成するのですが,当初受益者への受益が不要となり,信託行為を変更し,その時点で公益信託の認可をとるという理解を前提としまして,特段これを排除する必要はないと考えます。 ○林幹事 まず,第18の「1 公益先行信託」につきましては,弁護士会の中でもいろいろ議論はあって,この御提案に賛成の意見もあるのですが,何らか規定すべきだという意見もありました。   これについては,従来の部会資料40第1の3の乙案,今回の部会資料43で言えば第17の1(2)の(注)の考え方とも関連して,そちらが認められれば,こちらの方はこの御提案でもよいという意見もありました。そういう意味においては,パブリックコメントの際にどう書くかがありますが,そういう考え方もあり得ることは,何らかパブリックコメントにおいて示していただけたらと思います。   それから,3の「残余公益信託」と,それから4の「受益者の定めのある信託から公益信託への変更」の点ですが,4において,乙案に賛成します。そして,それが認められる限度においては,3の「残余公益信託」は御提案のとおりでもよいというようなことが弁護士会の議論では大勢であったところです。   残余公益信託で言われるように,当初から私益の段階から認可を受ける必要はないというのはそのとおりだと思います。私益から公益に変わるときに認可を受ければ足りるので,そういう意味においては4で十分かとは思います。   補足説明の60ページの下のところで,現行法でも実質的には同じようにできると,私益信託が終了してから公益信託を設定し直せばいいという,そういう趣旨で書かれていて,それはそのとおりだと思うのですけれども,信託として同一性を持ったまま私益信託から公益信託に移行することはあってもいいと思います。   それから,個人的な疑問でもあるのですが,途中で公益信託に変わろうと考えるに至ったときに変更手続するのはいいのですが,当初から,後には公益信託に変わるということを想定して信託設定するということがあり得て,それは恐らく信託として一体性を持って私益信託から公益信託となるのだと思いますし,それにおいては,公益信託に変わるときに認定を受ければいいのですが,そのときに必ず変更手続をとらないといけないのかという点が,若干分からなくて,疑問でもあります。事案によりますし,こういう変更手続もいろいろなパターンがありますから,そこを整理し切れていませんけれども,そういう問題意識は持っています。ただ,取りあえずそれは置いて,4の乙案が認められる限りで,3の御提案も賛成と考えます。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。   内容については,これまで御議論を重ねていただいたところでございまして,さらに,本日頂いた御意見を説明の中に更に加えることはできるかどうかを検討していただくということでよろしいでしょうか。   事務局の方から何かありますでしょうか。   それでは次に,「第19 その他」1から3までございますけれども,どこからでも結構でございます。御意見をお願いいたします。 ○新井委員 1ですけれども,自己信託によって公益信託は設定できるかという点については,甲案を支持したいと思います。   それで,「今回検討すべき事項」のところの説明に,台湾信託法の話が書いてあります。どうして台湾信託法はこういうふうにしたかというと,自己信託の導入をめぐって,非常に激しい対立があったのですね。特に,英米法系の学者は自己信託を導入すべきだと主張して,そうでない学系の学者と非常に抜き差しならない対立があって,その妥協策として,公益法人が自己信託の方法によって公益信託を設定できると条文は作られたのですが,利用例は1件もないと理解しております。公益法人がそういうことをやるのであれば,公益法人自体の活動として行えばいいということで,ほとんど実際には機能していないようです。   甲案支持の理由としては,ここに書いてあるとおりで,委託者が公益信託を支配しないという基本的な考え方に自己信託は合わず,税制優遇も伴わない可能性があるという指摘に全面的に賛成です。   それで,そもそも自己信託ですけれども,相当濫用されているようです。信託協会では多分把握していないと思いますけれども,いわゆる民事信託と言われる分野において,執行免脱とか財産隠匿という形で利用されているという実態があります。ですから,そういう実態を踏まえて,そういう自己信託によって公益信託が設定できるということについては,私は賛成できません。   63ページにその説明がありまして,2行目からこう書いてあります。「本文の甲案の理由としては,自己信託は委託者と受託者が同一であることから,公益信託の信託財産について委託者からの分離が確保されていないとして税制優遇は受けられないことが懸念される」ということなのですが,ここの書きぶりは少しあるいは修正した方がいいように思われます。   私はこの理解でいいと思っているのですが,今回,信託法によって自己信託が導入されました。そこでの考え方は,自己信託であっても,委託者の財産と受託者の財産は分離されているという前提に立って自己信託を導入したのではないかと思います。それをこういうふうに「公益信託の信託財産について」はということで書くと,自己信託一般については分離されていないのかというような解釈もできますから,自己信託というのは財産の分離が明確でないと私自身は思っているのですが,ただ,法務省の立場としては,オフィシャルにはこういう書き方は少し注意した方がよろしいのではないかと思います。   結論としては,私は甲案を支持したいと思います。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○小野委員 全く真逆のことをきちんと申し上げなければいけないのですが,今,新井委員は新井委員のご意見として,自己信託そのものが問題であるから,ましてやといいますか,公益信託で利用することについての問題点という形で指摘されたのではないかと思います。しかし,自己信託制度は十分議論されて,正に法制度として存在しているということは重く受け止める必要があると思います。   濫用事例というのは,具体的事例を取り上げないと分かりませんけれども,それが法律違反的な趣旨での濫用であれば法的な問題があるわけでして,法律に違反している方がいるからといって制度そのものが問題だということになれば,ありとあらゆる制度において同じことが議論されてしまいます。   自己信託制度は制度として存在し,なおかつ詐害信託防止など通常の信託より既にいろいろな措置が講じられており,自己信託はけしからんから,公益信託での利用は許容できないという議論は議論としてふさわしくないと思います。   また,以上の議論とは別として,この補足説明のところで,委託者が信託財産を支配しているという表現が使われていますが,自己信託において一旦設定された後は,受託者は信託財産を受託しているのであって決して支配しておりません。だからこそ信託財産としての法的な独立性が認められる扱いがされるわけでございます。   あたかも自己信託制度そのものがけしからんという前提だと,この支配という概念は当てはまるのかもしれませんけれども,自己信託制度というのは法制度として厳として存在しており,法制度としてはニュートラルであって,そういう観点から,公益信託において利用することのさらに留意すべき点があるや否やということで考えればいいと思います。認定制度を採るわけでして,認定のところで,濫用の危険のあるような自己信託がなされるということになれば,そこでチェックすればよく,誰もが認めるような立派な企業や金融機関が,自ら自己信託によって奨学金制度を作りますといったとき,あなたは悪いことをするのでしょうとか,何か執行免脱の目的でしょうと,そういう議論は当てはまらないと思うのです。   ですから,ここでの議論は,また,新井委員の先ほどの議論もそうですけれども,自己信託というのはけしからん,また,自己信託というのは絶えず何か問題を抱えているのだという議論が出発点になっていますけれども,やはりもう少しニュートラルに書いて,また,ニュートラルな議論をしていただきたいと思います。   私自身としては,ニュートラルな議論をすれば,今の信託制度の中に自己信託は厳として存在する立派な制度でございますから,それを利用して何がいけないのだろうかと。支配するようなことをする受託者がいるとしたら,それは認定のところで排除すべきであってと思います。ということで,是非,書きぶりにおいても,自己信託悪しきという書き方ではなくて,是非ニュートラルの補足説明にしていただければと思います。 ○平川委員 第19の1のただ今の自己信託の点ですけれども,公益信託の法形式として,自己信託を特に排除すべき特段の理由はないものと考えますので,そういう意味では乙案に賛成します。   ただし,無条件に自己信託を認めるというのではなく,やはりガバナンス体制がきちんとしているかとか,そういう点を考慮に入れなければならないと思いますので,イギリスのチャリティのように信託宣言の場合には,不当な管理を回避するために受託者を複数にするとか,私どもがこの部会でずっと言っておりますように,運営委員会を要件にするとか,そういうような,自己信託を認める場合のガバナンス体制についての要件を付加していくべきだと考えます。 ○中田部会長 第19の1について,ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。   ゴチックの部分,甲案,乙案,両論あるということは,今の御議論からも維持するということになろうかと存じます。頂きました御意見を,更に補足説明,これは今回の補足説明が必ずしも中間試案の補足説明になるわけではありませんですし,中間試案の補足説明は参事官室でお書きいただくということになりますけれども,今の御議論を踏まえて,また御検討いただくということになろうかと存じます。   それでは,1について,よろしければ先に進みたいと思います。 ○平川委員 それでは,第19の2につきましては,甲案に賛成するものですが,新公益信託がどのようなスキームとなるかにもよるのですが,新しい形となった場合には,公益法人制度における移行と同様,移行期間を定め,その期間終了後は既存の公益信託を終了する整備方式に賛成いたします。   その理由としましては,新公益信託の認可要件を満たしていない既存公益信託も新公益信託と併存するということは,社会的混乱を惹起するおそれがあると考えるからです。現在の信託銀行受託の公益信託は,全てが助成型であり,信託事務も単一で,財産的にも金銭,その運用対象も金融資産を含んでおりますが,単一であり,特例民法法人の移行と異なり,移行申請手続に過大な事務負担を要するとは考えられないと思うからです。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに,既存の公益信託の取扱いについていかがでしょうか。 ○山田委員 中間試案としては,63ページのゴチックの甲案,乙案,両方示して意見を聴くということが,私,積極的によいと思います。乙案を採ってほしいという意見が世の中にどれぐらいあるかということは,考慮したらよいだろうと思います。私自身は甲案がよいと思いますけれども,乙案について意見を言っていただく機会というのを設けるのがいいだろうと思います。   その上で,これはやはり分かりにくいと思うのです。2点あると思います。一つは,乙案の方ですが,移行の認可を行政庁から受けなかった信託も存続するものとすると,全くそのとおりだと思うのですが,結局,現公益信託法に基づく主務官庁による監督が続くと,そして期限なしで続くということになると思います。新たに法律を,今回やろうとしている立法の次にもう一回作って,初めて終わるということになるのかなと思うのです。   乙案が駄目だ,駄目だと言うのはフェアではないと思うのですが,少し乙案の現実的な姿というのをですね。書かれているかもしれませんが,もう少し書いていただくといいかなというふうに思います。   他方で,甲案に関するし,乙案にも関係するのだと思うんですが,移行の認可というのがここで取り上げられています。移行の認可を行政庁が行うという,新たに公益信託について一元的に認可と監督を行政庁がやるというところはそれでよいと思うのですが,補足説明の中に書いてあって,方向が少し別なのですけれども,移行の認可を受けるために信託の変更が必要であるということが問題になると思います。そういう場合がもしあったときにどうするかで,私の理解では,信託の変更の方が論理的に先行しますので,信託の変更は現在の公益信託法に基づいて,主務官庁の許可を得て信託の変更をすることが,何も手当てがないと必要に思われます。その辺りは,行き先が決まっているわけですから,ここでいう行政庁に一元化できるのであれば一元化することが望ましく,そういったことも,それはゴチックではないのですが,中間試案をパブリックコメントに付すときの補足説明に触れていただけると,今の公益信託の受託者は,皆さん,兼営銀行だとするとすぐに分かるのだと思いますが,委託者とか委託者の相続人とかの方々は,もう少しこの問題をよく理解していただけるかなと思います。 ○吉谷委員 山田委員に御指摘いただいた問題意識については,まず共有をしておりましたのですけれども,私が見るところでは,この甲案,乙案には二つの論点があって,認可が必要かどうかということと,旧法適用の公益信託を残すのかどうかという,この2点があると思います。   この提案の問い掛けは,認可の要・不要だけを問うているように見えますので,私どもは今まで,認可は不要であるというふうに申し上げていたのですけれども,その上で,旧法適用ではない,新法適用をするという道もあるのではないかというふうにも考えているところでございます。ですので,二つ論点があると考えてよければ,そのようなことが分かりやすいように,甲案,乙案の解説なのか,何かで示していただければと思います。   認可は不要ということの意味なのですけれども,例えば既存の公益信託は,新法の認可をみなし認可で受けることができるというようなやり方も考えられるのではないかと思っておりまして,それは一体甲案なのだろうか,乙案なのだろうか,どっちなのかというところがよく分からないと思っております。ですので,私は,全て新法に移行していいですとまで,今はまだ言ってはいないのですけれども,そのような二つの論点があるという形で認識しておりまして,それを反映していただければと思います。 ○中田部会長 今の御発言は,乙案の記載の仕方を修正すべきであるということになるのでしょうか。これはこのままで,説明でよろしいでしょうか。 ○吉谷委員 乙案,少し書き方を考えると,また自分でも考えないと,よく整理できないのですけれども,何といいますか,みなし認可で新法適用という道が許されてもいいのではないかということを,意見を募って,それにこたえられるような形の内容になっていればよろしいかと思います。 ○中田部会長 分かりました。 ○長谷川幹事 山田委員がおっしゃられたように,甲案,乙案を両方,中間試案に載せていただくということに賛成でございます。なおかつ,吉谷委員がおっしゃられたように,認可の問題と旧法適用の問題があるというのはそのとおりかと思っておりまして,その点も分かりやすく,補足説明の中でもいいのですけれども,書いていただければと思っております。   あと,恐らく派生的な問題としては,旧法適用を残す場合は,名称を新法適用と異なるものとするかなど,整理が必要な問題もあり得るかと思っております。 ○中田部会長 ありがとうございました。 ○小野委員 事務局への質問となるのですけれども,公益信託は監督とか認可とか,そういう観点からすると,正に規制法というのでしょうか。ですから,その時々の規律に従えばいいと思うのですけれども,ただ,組織法たる会社と違って,元々信託行為,信託契約,私法の範囲でありまして,そうすると,私法のところは,そう易々とこの契約は新法上駄目だよというわけにはいかないと思うのです。そういう観点から見ると,甲案の中で終了するというような規定になっておりますが,本来,有効だった私法上の信託契約をこうやって終了させるというための私法という観点からのロジックに,何となく全体は公益法人法という組織法的な議論をここではしているという観点なのですけれども必要と思います。何か課税では信託を組織法として捉えるという流れがあるようと思われますが,この部会では決してそうではない形で議論してきましたから,そういう観点から,何かきちんと私法上のロジックを考えていただき,そういう説明も補足説明の中でしていただければと思います。 ○中田部会長 御質問ございましたが,樋口委員の御発言いただいてからでよろしいでしょうか。 ○樋口委員 今の御発言で,なかなか甲案,乙案の読み方もいろいろあるのだなと。旧法で,旧法上の何とかっていう発想が私なんかなかったものだから。だって,公益信託というのは,名称独占では別に決まっているわけでしょう。そうすると,旧法公益信託というのが残るという発想は,なかなかユニークでいいですね。それは面白いですね,それが乙案だとするのかなという。   普通は--普通というのは,私が普通でないかもしれないのであれですが,64ページの真ん中にあるように,移行のために,つまり今までやってきた信託よりも簡易な手続で,それを吉谷委員みたいに思い切ってみなしまでいくかどうかはともかくね。簡易な手続で移行させてあげるというのが普通のやり方かなと思うので,普通のやり方ってどうしてかと,ここを言いたいのですけれども。   今回の公益信託法の改正は,やはり私も数だけにこだわっているわけではないけれども,公益信託活動を推進するためのものでないといけない。これは一旦ゼロにするということですよね,基本的に,もし新たに全部という話になるとね。ゼロを472まで本当に戻せるのでしょうか。   我々,先例を持っていますね。公益法人制度というのは,64ページに,2万4,000あった。今,幾つになっていると思いますか。これはきっとここの人たちは御存じなのでしょうけれども,9,400です。4割ぐらいになってしまっているわけですよ,でも公益信託はそもそも472しかないのです。しかし,公益法人は,もしかしたら少しトラの尾を踏んでしまうのかもしれないけれども,本当は2万4,000あるべきではなかったものも一杯あるのかもしれない。だから,9,400は適正な数なのかもしれないけれども,私は,吉谷委員に補足してもらいたいけれども,私らが知っている限りは,公益信託で不祥事があってという話は余り聞いたことがなくて,470というのは先ほどのほとんど助成型で,やはり資産を投げ打って,それを誰かに,とにかく基金として分け与えているというようなものがほとんどで,それを今更もう1回,ここにあるように,この移行の過程を,認可を受けることに伴う事務負担や,当該事務負担に起因する信託財産の減少だって,しかも公益信託って小規模で,それでなくたって財産がないということは分かっているのではないですか。   それで,470しかないということも分かっていて,470しかないから面倒掛けさせようという逆の,2万4,000だから5年も掛かったけれども,つまり発想が,470を減らそうと思っているのですかという,これね,公益信託潰しみたいな感じがするのですよね。それはやはりどうなのかというのは,少しついでに言うと,多分,公益信託も,今どんな法律もあるから,3年間だか5年間で見直し規定というのが入るのでしょう,多分。入らないのかな,こういう特別な立派な法律は。普通の業法は全部入るわけですよね。そうすると,3年ないし5年たったところで,470が幾つになっているかという話。もし,こんな仰々しく条文を一杯並べた挙げ句に3分の1になりました。これは,やはり立法者の失敗ではないでしょうか。そんなふうな方向で物事を考えるのがどうなのかなという気がするということです。   特に今,だから,もう1回繰り返しますけれども,そこにきちんと書いてあるように,特定公益信託ということかもしれないのですけれども,要件を満たしている既存の公益信託については,施行日後に簡易な手続で移行する。とにかく余りコストも掛からないというようなことで,これを470を出発点にしてどうやって増やしていくかということを考えていくのがいいのではないかなと考えました。 ○中田部会長 それでは,ただ今の小野委員の御質問,そのほかの委員,幹事の御発言について,事務当局の方からコメントを頂きます。 ○中辻幹事 小野委員から,公益信託は公益法人の組織法と違い私法上の契約の面があり,既存の公益信託を終了させる方向での議論は避けるべきであるという御指摘があり,また,樋口委員から,できるだけ既存の公益信託を生かしていくべきではないか,増やしていくべきではないかというお言葉をいただきました。事務局としてはいずれもそのとおりであると考えておりますし,特に,立案担当者としては公益信託がより皆様に活用されるものになって欲しいという想いを強く持っているのでありまして,新たに認可を受けることでそれが減少してしまうというのは本末転倒の事態であると思います。   その上で,旧主務官庁から許可を受けた公益信託がなんらの手続なしに新制度の下で存在し続けるというのは,あまり望ましくないのではないかとも考えていて,樋口委員のおっしゃったとおり,公益法人制度改革のときには,不適格な公益法人を振り落とそうという面があり,それは公益信託であってもしかるべきだと思いますが,現状を捉まえれば,現在の公益信託はほとんど信託銀行が受託者となっていることもあり,昔の公益法人に比べれば不祥事みたいのはごくわずかというかあまり聞いたことがございませんので,そのことや先ほどの山田委員のご示唆も踏まえて,届出など簡易な手続も含めて既存の公益信託から新たな公益信託への移行の方法については引き続き検討してまいりたいと思います。 ○道垣内委員 「みなし」というか,何もしなくても自動的に新法公益信託になるというのは,ほとんどの場合それでよろしいのでしょうけれども,私,現状をよく知らなくて恐縮なのですけれども,現在の公益信託においては,信託管理人の定め,あるいは残余財産の帰属すべき者の定めというのは存在しているのですか。 ○中田部会長 もし御存知の方がいらっしゃいましたら,吉谷委員,よろしいでしょうか。 ○吉谷委員 信託管理人は,私の知る限りでは全てに存在していますし,残余財産についても何らかの定めを置いてあると思います。 ○道垣内委員 そのときには,国又は地方公共団体,あるいは当該公益信託と--それは甲案,乙案あるのですが--類似の目的を有する他の公益法人とか,そういう形になっているのですね。はい,分かりました。 ○中田部会長 道垣内委員の御指摘は,現在どうかということについてですが,理屈の上では新法の基準に合致していない公益信託もあるかもしれない,それについて仮に乙案のような考え方を採った場合に,何らかの手当てが必要ないだろうかと,こういう御指摘だということでしょうか。 ○道垣内委員 そのとおりですね。チェックを何らかの形で掛けると,申請手続を同じようにして,何かいろいろしなければいけないというのではなくて,簡易にするということは十分に考えられるのですが,強行法規の基準を満たしているかというチェックのシステムというのは,どこかに置かないと多分駄目なのではないかなという気がします。 ○中田部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○深山委員 既に議論されているところの確認なのですけれども,乙案で想定している特段の移行の認可を受けなくとも存続する信託というのは,先ほど話の出た旧法に基づく信託としてという意味ではないというふうに理解をして読んでいたのですね。そこが旧法信託として残るという考え方と,当然に新法信託になって残るというものが,もし両案あるのであれば,そこは乙案が更に二つに分かれるということだと思うのですが,旧法信託として残るという案はないのだとすれば,そのことは少し説明した方がいいと思うのです。   他方で,先ほどの小野委員の指摘であったのですが,法人格の問題である法人の議論と違って,契約ですから,旧法下で成立した契約というのは,法律が新たになったからといって,当然に新法下での契約にはならないというのが一般論としてはあると思うのですね。そうだとすると,何らかの法的手当てで,旧法下の信託契約であっても新法が適用されるということは,立法技術的には何か手当てをしないと,既存の信託が新法下で新法の適用を受けるということにならないような気がしたものですから,少しそこの整理をお願いしたいと思います。 ○中田部会長 甲案について,これを支持される御意見があった一方,乙案については,このままだと分かりにくいということをいろいろな角度から御指摘いただいたのだと思います。乙案自身の表現,あるいはその説明について,更に検討していただくということになろうかと存じますけれども,この2について,ほかに御意見ございますでしょうか。 ○道垣内委員 乙案が言葉が分かりにくいというのは,甲案に言葉をそろえたからだろうと思います。したがって,無理のないところもあるのですけれども,乙案自体は旧法信託として存続するという案なわけでしょう。違うのですか。必要とせず,そのまま信託が存続するということではないのですか。 ○中田部会長 今のような御指摘が出ること自体が,乙案について不明確な点が多分あるのだろうと思います。それで,補足説明の中でも,旧制度と新制度のというようなこともありますので,いずれにしても,ここはもう少し明確にする必要があるということが今日の御審議で出てきたと思いますので,それは検討していただこうと思います。   ほかに,第19の2について,よろしいでしょうか。   それでは,また戻っていただいても結構ですけれども,残りが第19の「3 罰則」と「4 その他」の全体を通しての御意見を頂ければと存じますが。 ○吉谷委員 第19の4の意見なのかどうかは少し分からないのですけれども,中間試案として世に出されるときに,公益信託が税法上の優遇措置が適用になるとか,税の認可と一体になっているとか,そういうことを視野に入れるべきだということで最初,資料の第1回のときで言っていただいていたと思います。その考え方というのはやはり変わらないと思いますので,仮にこの4でいうのだとしたら,公益法人認定法58条のような,「所要の税制上の措置を講ずる」というようなものを入れるということになりますし,ここではなくて,あるいは前書きみたいなところで,何かそういうベースの考え方があるのだということを書いていただくというようなことが分かりやすいのではないかなと思います。 ○中田部会長 ほかにございますでしょうか。 ○小野委員 私の記憶ですと,公益認定はとっているのだけれども,税制上の特定はとっていないものが幾つか,何十件かあったかと思うのです。ですから,今の吉谷委員の恐らく発言されたことの延長だと思うのですけれども,そういうものが不利にならないような形で,何かきちんと対応する。新制度ですということで,今までオーケーだったものがオーケーではなくなるというものは,特にそれが問題になっているわけではないので,不合理かと思いますので,その辺も配慮していただければと思います。 ○中田部会長 審議の進め方の問題と部会の中間試案という形での決定で,どの辺を書くかというのとまた少しずれがあるかもしれませんで,いろいろ難しいことがあろうかと思います。ただ今のお二人の御意見を承ったということにさせていただきます。   ほかに。   ここまでのところで,事務局の方から何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   以上で予定した審議は全て終えたわけですが,部会資料43の全体を通じて,もし言い残したような点がございましたらお出しいただければと思いますが,特によろしいでしょうか。   よろしければ,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   最後に,次回の日程等について,事務当局から説明してもらいます。 ○中辻幹事 次回の日程ですけれども,11月7日(火曜日)午後1時半から午後5時半まで,場所は,法務省15階の第1531会議室を予定しております。   次回は,部会資料43「中間試案のたたき台(1)」について前回と今回にかけて頂きました皆様の御意見をできるだけ反映する形で,事務局の方で「公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台(2)」と題する部会資料44を用意いたしまして,皆様に御審議いただくことを予定しております。 ○中田部会長 ほかにございませんでしょうか。   それでは,本日の審議はこれで終了といたします。本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。 -了-

法制審議会信託法部会 第44回会議 議事録

平成29年9月12日(火)  自 午後1時32分
                       至 午後5時27分

第2 場 所  法務省大会議室

第3 議 題    公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台の検討

第4 議 事 (次のとおり)

議        事
○中田部会長 予定した時刻が参りましたので,法制審議会信託法部会の第44回会議を開会いたします。本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
  初めに,前回の会議から今回の会議までの間に,委員等の交代がありましたので御紹介いたします。
  まず,法務省の小野瀬民事局長が委員として参加されることになったほか,従前,幹事であった筒井官房審議官が委員として参加されることになりました。また,民事局の堂薗民事法制管理官が幹事として,溜箭調査員及び福崎局付が関係官として参加されることになっています。
  それでは,新たに部会に参加することになった方々のみ,簡単な自己紹介をその場でお願いいたします。
○小野瀬委員 法務省民事局長の小野瀬でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○溜箭関係官 法務省民事局調査員の溜箭でございます。立教大学で英米法を専攻しております。どうぞよろしくお願いいたします。
○福崎関係官 法務省民事局付として参りました福崎と申します。よろしくお願いします。
○中田部会長 堂薗幹事は後ほどお見えになるかと存じますので,そのときにまた御挨拶いただこうと思います。
  本日は,筒井委員,道垣内委員,岡田幹事,渕幹事,松下幹事が御欠席です。
  では,本日の会議資料の確認等を事務当局からお願いします。
○中辻幹事 お手元の資料について確認いただければと存じます。
  事前に,部会資料43「公益信託法の見直しに関する中間試案のたたき台(1)」を送付いたしました。また,当日配付資料として,吉谷委員から提供いただいた「信託主要法令資料」平成29年9月版を机上にお配りしております。
  以上の資料について,もしお手元にない方がいらっしゃいましたら,お申し付けください。よろしいでしょうか。
  引き続きまして,部会資料43「中間試案のたたき台(1)」の趣旨について御説明いたします。これまでの民事法系の法制審部会の慣例に従いまして,本日の部会からは,ゴシックで記載した部会資料の本文について,このようなゴシック本文の提案内容を中間試案とし,パブリックコメントの手続に付してよいか,修正すべき点があればどのように修正すべきかという観点から御審議いただければと考えております。
  ゴシック本文の提案は,これまでの部会の御審議を踏まえ,概ねの合意が得られそうなものについては一本化しておりますが,意見が分かれているものは甲案及び乙案の両論併記としております。甲案は現行制度に近いというだけで,甲案か乙案かで優劣はありません。(注)としてゴシックに記載した考え方は,本文の提案に対する反対意見や別の考え方でございます。
  このたたき台は大部のものですので,本日1回では最後までの検討が終わらない可能性があります。したがいまして,本日の部会と次回10月の部会の2回に分けて御審議いただくことを事務局としては考えております。
  また,これも従前の慣例によりますと,部会で決定いただいた中間試案については,民事局参事官室の責任において補足説明を別途作成し,中間試案をパブリックコメントの手続に付す際に,その補足説明も併せて公表することが多うございます。もっとも,今回の部会資料43に記載した補足説明は,飽くまでたたき台についての補足説明であり,これがそのまま中間試案の補足説明になるわけではありません。中間試案の補足説明は,現行の公益信託制度からどのような点をどのように見直すことが必要であるのか,その内容及び理由を簡潔に分かりやすく説明するものにしたいと考えております。
○中田部会長 ただいま事務当局から説明がありましたとおり,本日の部会から中間試案の取りまとめに向けた審議というステージに入ります。部会としての案を中間試案としてパブリックコメントの手続に付し,意見をお聞きする際,どのような記載の仕方にすべきかという観点から御審議いただければ幸いです。
  したがいまして,部会資料43で挙げられているそれぞれの論点について,ゴシック体で記載された本文の案のうち,どの案を支持するのかということではなくて,パブリックコメントの手続に当たって,ゴシック体の本文の記載の仕方が適切かどうかを中心に御発言をお願いできればと存じます。
  その上でなのですけれども,補足説明の中で,今回検討すべき事項とされている部分がございます。この部分につきましては,ゴシック体の本文の記載の仕方に関連して,現段階で議論を詰めておく必要があるものが掲げられているものと思いますので,併せて御意見を頂ければと存じます。いずれもこれまでの審議を踏まえてのものだと思いますので,それを前提としまして,本日は詰めの御検討をいただけますとありがたく存じます。
  なお,補足説明には,この部会資料を作成するに当たっての事務当局の認識や問題意識を示すものもあります。その点についての御意見を頂くことはもちろん結構なのですけれども,中心となりますのは飽くまでゴシック体の部分ですので,その旨御理解,御協力をお願いいたします。
  審議の進め方ですが,先ほどの中辻幹事の御発言にもありましたように,このたたき台(1)を今回と次回の2回に分けて審議してはどうかと思います。そこで,本日は,部会資料43の第1から「第11 公益信託の情報公開」までを行い,もしも余裕があれば,更に第12から第14までについて御審議をお願いしたいと考えております。途中,午後3時半頃,切りのよいところで休憩を挟むことを考えています。
  以上のような審議の進め方でよろしいでしょうか。
  ありがとうございます。それではそのように進めさせていただきます。
  では,本日の審議に入りますが,まず,部会資料43の第1から第3までについて,御審議をお願いします。
  事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 それでは,部会資料43に記載の論点について御説明申し上げます。
  今回は,ゴシックの本文を中間試案をとして掲げるに当たって,検討を要する事項等を中心に御説明させていただきます。
  それでは,まず「第1 新公益信託法の目的」について御説明いたします。
  第1の本文は,「新公益信託法は,公益信託の成立の認可を行う制度を設けるとともに,受託者による公益信託事務の適正な処理を確保するための措置等を定めることにより,[公益の増進への寄与を目的とする他の法律と相まって,]民間による公益活動の健全な発展を促進し,もって公益の増進及び活力ある社会の実現に寄与することを目的とするものとする」との提案をするものです。
  第1の本文では,部会資料38の第1において「公益信託事務を適正に処理し得る公益信託」としていた表現を,「受託者による公益信託事務の適正な処理を確保する」という表現に修正するとともに,「民間による公益活動の健全な発展を促進し」という表現を追加しております。
  その上で,今回検討すべき事項に記載しましたように,新公益信託法と公益の増進に寄与することを目的とする他の法律との相乗効果により,公益の増進が図られることは望ましいものと言えることから,社会福祉法の表現を参考に「公益の増進への寄与を目的とする他の法律と相まって」という表現を入れることも考えられますが,公益法人認定法やNPO法にはそのような表現が用いられていないこともあり,中間試案にこの表現を入れるか否かについて御意見を頂ければと存じます。
  なお,(前注3)に記載のとおり,本部会では,従前,公益信託の成立時に行政庁が行う行政行為について,公益信託の認定という用語を暫定的に使用しておりましたが,山本隆司参考人の御意見等を踏まえ,本部会資料では公益信託の成立の「認可」という用語を用いることとしております。
  次に,「第2 公益信託の定義等」について御説明いたします。
  第2の「1 公益信託の定義」の本文は,「公益信託は,受益者の定めのない信託のうち学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とするものとして,行政庁から公益信託の成立の認可を受けたものとする」との提案をするものです。
  第2の1の本文では,部会資料38の第2の1の提案から,「信託法第258条第1項に規定する。」という部分を削除するとともに,新たな公益信託の成立の認可を行う主体を「行政庁」と特定した表現に修正しています。
  その上で,今回検討すべき事項に記載しましたように,信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託と公益信託の異同について改めて検討しましたが,両者の共通点は「受益者の定めのない」という点程度しか見当たりません。他方,信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託は,委託者及び受託者の合意のみによってその効力を生じ,同法第259条で20年の存続期間の制限が課され,同法第260条のように委託者の権限が強化された上で,行政庁による成立の認可や監督を受けないものとされていますが,現時点で想定される新たな公益信託は,委託者及び受託者の合意に加えて,行政庁の成立の認可を受けることによりその効力を生じ,成立後も行政庁の監督を受けるほか,委託者が公益信託に過度に関与するような事態を回避することが予定されているものであって,信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託と公益信託は重要な部分で相違点があり,性質上,大きく異なるものと言えます。
  そうすると,公益信託を受益者の定めのない信託のうちの一つとして定義した上で,公益信託について信託法第1章から第10章までの規定とは異なる特例を設ける場合には,新公益信託法の中に信託法第11章とは別の特例を設けることが相当であると考えられます。なお,その際には,信託法施行令第3条に定める受益者の定めのない信託の受託者要件の適用範囲について,「受益者の定めのない信託(学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他公益を目的とするものを除く)」として,主務官庁の許可を受けた公益信託を除外している信託法附則第3項も改正する必要があるものと考えられます。
  これらの点について,御意見を頂ければと存じます。
  第2の「2 公益信託事務の定義」の本文は,「公益信託事務は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益に関する具体的な種類の信託事務であって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものとする」との提案をするものです。
  第2の2の項目名については,公益信託の目的と公益信託事務は截然と二分できるわけではないと考えられることに加え,公益信託の認可を行う行政庁は,申請書類に記載された公益信託の目的が新公益信託法の定義する公益信託事務に該当するか否かを判断することになると想定されることから,部会資料38の第2の2,「公益信託の目的」から「公益信託事務の定義」に変更しています。
  また,第2の2の本文の「不特定かつ多数」の表現については,現在の公益法人の認定実務において「不特定かつ多数」であるか否かについて柔軟な判断が行われているように,新たな公益信託の成立の認可を行う行政庁により,「不特定かつ多数」の要件について柔軟な判断が行われるのであれば,あえて公益に関する他の法律と異なる公益性判断の仕組みを構築するまでの必要性は認め難いことから,従前の提案同様に「不特定かつ多数」という表現を用いることとしています。
  第2の2の本文の公益信託事務の内容については,公益法人認定法第2条第4号の別表第1号から第22号までの公益目的事業と同様に,新公益信託法の別表に列挙した上で,公益法人認定法別表第23号と同様に政令で定めるものとすることを予定しております。
  第2の「3 現行公益信託法第2条第1項の削除」については,従前の部会で異論はなかったことから変更点はありません。
  次に,「第3 公益信託の効力の発生」について御説明いたします。
  本文1は,「公益信託は,当事者が信託行為をし,かつ,行政庁による公益信託の成立の認可を受けることによってその効力を生ずるものとする」との提案をするものです。
  本文2前段は,「行政庁から不認可処分を受けた場合であっても,当該信託を[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として有効に成立させる旨の信託行為の定めがあるときは,当該信託は,不認可処分を受けた時から[公益を目的とする]受益者の定めのない信託としてその効力を生ずる」との提案をするものです。
  本文2後段の甲案は,本文2前段により効力を生ずる信託について,信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託に関する信託法第11章の規定を適用するもの,本文2後段の乙案は,信託法第258条第1項の受益者の定めのない信託に関する信託法第11章の規定を適用せず,別の規定を適用するものです。
  本文3は,「当事者が本文1の認可の申請を予定していない[公益を目的とする]受益者の定めのない信託については,行政庁から不認可処分を受けた[公益を目的とする]受益者の定めのない信託と同様の規律を適用するものとする」との提案をするものです。
  本文1の提案は,部会資料41の第1の甲案及び丙案をベースとしつつ,公益信託は,委託者及び受託者が信託行為をすること及び行政庁による公益信託の成立の認可を受けることの両方の要素を備えることにより,公益信託としての各種の効力が生じるものであるということを論理的に表現した形に修正したものです。
  また,本文2前段の提案については,特に本文2後段の甲案を採用する場合には,新公益信託法の中に,本文2前段のような規定を設けるのではなく,解釈に委ねるべきであるという考え方があることから,その考え方を(注)に示しています。
  その上で,今回検討すべき事項の(1)及び(2)に記載しましたように,行政庁から不認可処分を受けた場合でも,[公益を目的とする]受益者の定めのない信託として有効とする旨の信託行為の定めがあることにより効力を生ずる信託について,信託法第11章の規定を適用すべきとする本文2後段の甲案を採用するほか,信託法第11章の規定を適用せず,別の規定を適用する乙案を採用するかの論点は,中間試案のゴシック本文に甲乙両案を併記するか,甲案のみを記載するかに関わる重要な部分ですので,特に御意見を頂ければと存じます。
  なお,その際には,信託法附則第3項及び信託法施行令第3条に定める受益者の定めのない信託の受託者要件との関係も踏まえた上での検討が必要となるものと考えられます。
○中田部会長 ただいま説明のありました第1から第3までについて,まとめて御審議いただきたいと思います。
  御自由に御発言をお願いいたします。
○深山委員 順に簡潔に申し上げたいと思います。
  第1については,ゴシックのようにすることについて特段異存はございません。角括弧のところは,二つの考え方を示して意見を問うという意味でしょうから,そういう意味ではこれを,個人的にはなくてもいいかなと思いつつも,残すことについて特に異存はありません。
  公益信託の定義の第2の1についても,結論的には特に異論はございません。第2の1のところは,従前の部会資料38の第2の1では,信託法258条1項に規定するというものがあったところを削除しておりますが,ここは公益信託の性質ないしは目的信託との関係について,目的信託の一種という位置付けをするのか,別類型というふうにするのかは,説明の仕方としては両方あり得ると思います。目的信託の一種だとした上でもろもろの特則を設けるという規定の仕方もあると思いますし,もはや違う類型というのも,どちらもあると思うので,そこは解釈に委ねるという趣旨で,あえてそこは何も書かずにゴシックのような形でよろしいのではないかというふうに考えております。
  第2の2については,ゴシックの本文について特段異存はないんですけれども,タイトルが従来は「公益信託の目的」としてこの内容が記述されていたものが,「公益信託事務の定義」というタイトルになっているところをどう理解するかということについて,申し上げます。定義として書いたときに,条文になったときに,公益信託事務という言葉が用いられて,それについて何らかの規律が設けられるんだろうと思うんですが,どういう規律が設けられるのかが,必ずしも今の段階では分からないので,定義だけ見て,これを定義としていいのかどうかというのがやや判断に苦しむなというふうに,個人的には印象を持っております。ただ,本文に関して言えば異存がないので,その問題意識といいますか,印象だけをお伝えしておきたいと思います。
  第2の3については異存ありません。
  少し意見を申し上げたいのは,第3のところです。第3の1については異存がありません。それから第3の2の前段についても異存ありませんが,甲案,乙案,分かれているところについて意見を申し上げます。
  ここは,更に(注)の考え方も入れれば三つの考え方が併記されておりますので,それはそれでパブコメに付す仕方としては,特段の規定を設けない(注)も含めて並べておくということについては異存はないんですが,甲案と乙案のところで,乙案の表現が信託法11章の規定を適用せず,別の規定を適用するというところが,ここで言う別の規定がどういうものなのか,やや分かりにくいのではないかなと思います。
  考え方として,認定を受けられなかった公益を目的とする信託は,信託法258条1項の目的信託そのもので,同じルールでいいんだという甲案に立つのであれば悩みはないんですけれども,乙案のようにそれとは何らかの点で違った規律をすべきだという考え方を採る,あるいは採るかどうかということを考えるときには,ではどこが目的信託と違う規律にすべきなのかという問題になります。正にこの別の規定の中身が問題になって,私が考えるに,例えば目的信託の20年という存続期間の定めをそのまま適用するのがいいのかどうかとか,あるいは258条4項で,信託管理人について,ここでは遺言で行った場合は必置となっておりますが,そのルールのままでいいのか,むしろ公益信託と同様に,契約でやった場合でも必置とすべきだというような考え方もあり得るような気がいたします。
  そのように,別の規定としてどういうものが考えられるのかということが少し例示されたほうが,乙案にすべきか甲案でいいのかというようなことを考える上では,考えやすいのではないかと思います。もちろん補足説明の中に書けばいいのかもしれないんですが,ゴシックだけを見たときに,別の規定のところがイメージしにくいという点がやや検討をすべきではないかということを感じました。
  あと,第3の3については異存ございません。
○中田部会長 ほかにいかがでしょうか。
○能見委員 ただいまの意見とも重なるところがあるんですが,ただ,ちょっと私が今発言したいのは,第2の1「公益信託の定義」のところです。先ほど説明がありましたように,「受益者の定めのない信託のうち」というふうに書いたことによって,ここでは目的信託の一種であるという考え方を必ずしも採らない,採るということも考えられるけれども,採らないという考え方もありうる,そういう表現に変えたわけですね。この表現自体は私はこれでいいと思うんですが,この定義のところと,先ほど深山委員が問題にされた第3の2の甲案,乙案のところとの関係が気になりました。すなわち,第2の1の定義を是としても,第3の2のところで乙案につながるというものではないこと,甲案と乙案の選択肢はありうるということです。両者の関係について補足説明では特に言及していませんが,第2の1の定義の補足説明では,公益信託は目的信託の一種ではないというニュアンスが出ているようでもあり,そうすると第3の2では乙案につながりやすい。しかし,定義の問題は,第3の2の甲案,乙案とは別の問題であり,定義のところの説明によって,おのずと甲案,乙案のどっちかに流れていくというような,そういう内容にはしないようにすべきだと思います。第3の2の問題は,飽くまでもオープンな,どちらにもなり得るというふうにしておいたほうがいいのではないかということでございます。個人的には,私,甲案に賛成ですけれども。それはともかく,ここの二つの表現,説明の仕方について御注意いただければと思います。
○中田部会長 新井委員,その後,平川委員。
○新井委員 まず,第1については,「公益の増進への寄与を目的とする他の法律と相まって」という文言を追加するということに賛成いたします。積極的賛成です。信託は,これからは信託のみで機能するのではなくて,ネットワークの中で機能することに意味があると言われています。日本の例で言えば,例えば後見制度支援信託があって,成年後見と信託が連携して機能を発揮するというようなことがありますし,それから海外ですと,最近はスペシャル・ニーズ・トラストと言われて,信託と福祉制度が連携しているものがあります。これはシンガポールではもう機能していますし,今度,香港もそういう制度を導入するということが考えられます。したがって,この「他の法律と相まって」というのは非常に意味のあることではないかと思います。もっと広く言うと,最近,信託受託者のアンバンドリングということが言われていますので,受託者は一つの機能を行って,それがほかの社会的機能と連携するということが重要だと思いますので,こういう表現を入れるということは,私は大変いいことではないかと思って積極的に賛成いたします。
  それから,第2「公益信託の定義等」についてです。
  第2の1「公益信託の定義」自体については,これで結構かと思います。
  それで,問題となるのが,信託法の附則との関係です。私としては,目的信託については現在の信託の受託者要件を存置すべきだと考えております。そして,公益信託には,この附則の適用はないわけです。どうしてそう考えるかというと,この附則の意義というのは,目的信託の濫用が心配されるということで,こういう規制を設けたということだと思います。この信託法の濫用ということについて考えてみると,委員・幹事の方々は御存知のように,自己信託が,特に民事信託の分野において相当濫用されているということが言われています。そういう状況の中で,目的信託の現状がどうかということについて必ずしも十分な審議を経ることなくして,この受託者要件を外してしまうことは,やや軽率のようにも思うわけです。他方,公益信託の設定には認可という客観的な縛りがあります。ですから,附則第3条は存置していただきたいと思います。
  その次が,第3「公益信託の効力の発生」についてです。
  ここについては,まず,私は甲案に賛成したいと思います。その上で,第3の2及び第3の3のところで「公益を目的とする」という表現がありますけれども,これは削除したほうが良いのではないでしょうか。「公益信託」と「公益を目的とする目的信託」の区別が非常に分かりにくいので,「公益を目的とする」という文言は全て削除すべきではないかと考えます。
○中田部会長 平川委員の御発言の前に,今,堂薗幹事がお見えになりましたので,一言御挨拶をお願いいたします。
○堂薗幹事 遅参いたしまして,失礼いたしました。民事法制管理官の堂薗でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○中田部会長 それでは,平川委員お願いします。
○平川委員 まず,第1「新公益信託法の目的」のところですけれども,基本的に賛成いたします。
  認定か,認可かということの検討をされておりましたけれども,認可という言葉はやや大時代的な用語ではありますが,学問的検証を経たものであって,容認できるものであると思いますし,この認可という定義を入れることによって,公益信託は目的信託の前置を必要とせず,公益信託そのものを認可するということで成立することが明確になっているということ,そして,公益信託事務の執行の主体が受託者であることが明記されていること,また,公益信託が民間による公益活動であり,この法律はその健全な発展を促進するためのものであることが明確に規定されていることから,この公益信託法の目的についての規定に,基本的に賛成します。
  先ほど,新井委員から御指摘のあった「公益の増進への寄与を目的とする他の法律と相まって」という文言については,積極的に反対するものではありませんが,あえてそのような表現を加える必要はないと思いました。社会福祉法第1条の目的に同じ表現が使われているということですが,去年の社会福祉法の改正で新たに加わった表現というわけでもなく,従前から記載があったところを見ると,新しいトレンドとして異なった法律制度に基づく公益増進の相乗効果をうたうべきという方針があるわけでもなさそうなので,公益法人認定法やNPO法と同じように,特にこのような表現を使うこともないのではないかと考えました。
  第2「公益信託の定義等」について,賛成いたします。
  現行公益信託法において,公益信託を信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託のうち,と定義していたことが,たたき台5ページ記載のとおり,目的信託を規定する信託法第258条第1項への言及が削除され,是正されたことは大いに好ましいことであると考えます。特に,現行法と同様に信託法第258条1項と関連付けた場合には,元々実例のほとんどない目的信託をベースに公益信託が構成され,法技術的にもそれが準用される場合には,一般の人が分かりにくく,公益信託を親しみにくくさせるおそれがあったことから,この解消が図られたことに賛成いたします。
  ただ,「受益者の定めのない信託のうち」というたたき台の記載の仕方が妥当かどうか,検討の要があると思います。公益信託という別の類型の信託であるということをはっきりさせるためには,公益信託は公益を目的とするというだけで公益信託の定義は語り尽くされているので,「受益者の定めのない」という文言は不要であると言えます。先ほど新井委員からは,「公益を目的とする」というのは削除すべきなのではないかというお話がありましたが,むしろよりどころをこの「公益を目的とする」という点に置きたいと考えます。「受益者の定めのない」という文言をもし入れるのであれば「公益信託は,学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とした受益者の定めのない信託として」というように「受益者の定めのない」という文言を入れる場所を後ろの方に持って行ったほうがよいと思います。
  また,「受益者の定めのない」という文言を入れる場合には,受益者の定めがあるが,その背後には不特定多数の地域の団体や,不特定多数の受益する人を抱えた公益法人等がある場合について,公益性の認定の中で受益者の定めのない信託と同視され,受益者の定めのない信託として扱われるということなどの議論を行っておく必要があると思います。また,現行信託法の受益者の定めのない信託の特例である第11章を除外して別の特例の規定を設ける場合には,新公益信託にふさわしい条項とする必要があり,今までの第11章の準用や読み替えで対応することのないようにしていただきたいと考えます。また,信託法附則第3項については,公益信託への言及部分である括弧部分は当然不要となると考えます。
  第2の2「公益信託事務の定義」については賛成いたします。
  第2の3「現行信託法第2条第1項の削除」についても賛成します。さきの第1の4,公益信託の定義において,「信託法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託」から,単に「受益者の定めのない信託」に変更したことの意義が,信託法第11章の受益者の定めのない信託の特例全部を適用しないことを意味するのであれば,現行公益信託法第2条第2項も削除することになると理解しておりますが,それでよろしいでしょうか。信託法第2条第2項は,公益信託の存続期間については信託法第259条の規定はこれを適用せずという存続期間に関する規定です。
  また,第3「公益信託の効力の発生」につきまして,第3の1については賛成いたします。
  第3の2については甲案に賛成し,乙案は不要であると考えます。公益認定を得られない信託については,公益を目的とする信託を標榜させるべきではなく,存続するとしても,単に目的信託となるとすべきです。飽くまでも公益信託と目的信託を峻別する思想からは,乙案のような中途半端な非適格公益信託とも言うべき公益を目的とする信託の新たな創造は,百害あって一利なしと考え,公益信託法に特にこれを書く必要もないように思われます。信託行為の中で,認定が受けられなかった場合は終了すること,又は目的信託として存続すること,などが定められるべきもので,信託行為の解釈に委ねてよい問題なのではないかと思います。
  第3の3につきまして,記載のとおりの考え方に賛成します。行政庁から不認可処分を受けた公益を目的とする信託であろうと,その認可の申請を予定していない信託であろうと,同一の規律を適用すべきであると考えます。
○中田部会長 ほかに。
  沖野幹事,林幹事の順にお願いします。
○沖野幹事 ありがとうございます。
  本当に今確認するのは恥ずかしいことで,どこかで確定的に決まったんじゃないかと思うんですけれども,第1「新公益信託法の目的」ということですが,今回の作業としましては,現在のいわゆる公益信託法を改正するなり,新設するなりして,信託法とは別の立法を行うということが当然の前提であるということで進んでいるのではないかと思うんですけれども,念のため,これが最後の機会かと思いますので確認させていただきたいという趣旨です。
  と申しますのは,この説明の中で,第2に関連して5ページに,今回検討すべき事項の中に,信託法11章とは別の特例を設けるということで,それは新公益信託法の中にということですから,別途の特別法ということが想定されていると思います。しかし,可能性としては,新しい12章とか,そういう可能性もあるように思われますし,それから元々信託法は一本であったところを切り分けた,それは作業が間に合わなかったということが非常に大きな要因であったように思われます。さらには,一般の信託法の規定する受託者の義務等ということが基本的には公益信託にも妥当するというようなことを考えると,規定の在り方自体は特別法は維持するということでよろしいのかどうか。もし信託法に入れてしまうならば,もちろん第1の目的規定などは要らないんじゃないかということにもなりますので,念のため,そこは確認させていただいて,という趣旨です。
  それが1点目ですけれども,個別の中身としましては,第1につきましては,現在,角括弧に入っております内容というのは,個人的には不要だと考えております。言わずもがなであろうと思っておりますけれども,しかし,広く意見を聞くということであれば,飽くまでこのような括弧に入れる形で聞いていただくというのがよろしいのではないか,その意味では原案がよろしいのではないかと考えております。
  次に,第2の2「公益信託事務の定義」ということなんですけれども,これはゴシックにどうこうということではなく,ゴシックになったときにこのような考え方でよろしいのかということが2点あります。
  一つは,別表方式で,かつ公益法人認定法の中身のものを公益信託法の別表に列挙するということなんですけれども,その列挙の文言のイメージなんですが,例えば,今別表を見ますと,1号が学術及び科学技術の振興を目的とする事業となっておりますが,この事業を事務に置き換えると,そういう文言になるのかどうかです。そうしたときになんですけれども,一方で,信託事務という文言は信託法に出てまいりますので,例えば信託法の29条が受託者の注意義務という規定ですけれども,受託者は信託の本旨に従い,信託事務を処理しなければならない。また29条2項の方が,いわゆる善管注意義務ということで,信託事務を処理するに当たってはという形になっておるんですが,これが公益信託事務の定義というのが入ったときに,29条などは,信託の本旨に従い,公益信託事務を処理しなければならないというような読み方になっていくのかどうか。そうすると,例えば,それが学術及び科学技術の振興を目的とする事務を処理しなければならないというような読み方になっていくのかどうかというのがちょっと気になりまして,それとは違う,具体化のレベルも違う話なので,事務という言葉,あるいは信託事務という言葉を使っても,それは違う概念として立てていくんだということになるのかどうか,ちょっとこの下でどうなるのかというのがイメージが湧かなかったものですから,もし御説明いただければ,よりはっきりとしたイメージがつかめるのかと思いました。
  それから,第3の2のところですけれども,これも甲案,乙案とございまして,私は個人的には,特別に規定を設けないという考え方に賛成はしておりますけれども,しかし,いろいろな考え方はなおあり得るところで,現在でも十分に一本化はされていないところですので,パブリックコメントということでは,甲案,乙案という2案で聞いていただいたらいいのではないかと思います。
  ただ,乙案の内容がはっきりしないように思われました。と申しますのは,乙案は信託法11章の規定は適用せず,別の規定を設けるとなっております。これは深山委員からも御指摘のあった点ですけれども,別の規定という,そのあり方として,これですと,11章は排除してしまって違うものをたてるということだと,言わば第3類型というんでしょうか,定義された公益信託,つまり認可を受けた公益信託,それから一般的な目的信託があってそれと,公益を目的とする信託の特例のようなものがもう一つあるようなイメージも受けます。それは非常に大掛かりであって,そこまで果たして本当に,この場であってもそこまでの主張があったのかというのはやや疑問に思うのですが。それに対しまして,基本的には11章であっても,幾つかは特則を設けてはどうか。例えば,その例として,深山委員がおっしゃったようなものがあるかと思いますけれども,信託管理人の置き方をどうするかとか,それから受託者の要件を,経過措置等の関係もあってどうするかとか,幾つかの特例を置くという可能性があるのかと思います。
  乙案はどちらを意味しているのか,あるいは両方もあり得ることだとしているのかという点が気になりまして,もし後の,やはり特例が幾つかは必要じゃないですかということであるならば,今の書き方だと全面的に信託法第11章は適用しないという形になるように思われますので,例えば,第11章に対してさらなる特則を設けるとか,そのような表現の方が分かりやすいかもしれません。
  ただ,更に別の規定というときどのようなものが別の規定なのかというのがよく分からないところで,この中でも若干は議論されていると思いますけれども,そこが余り詰まっていないようには思われます。意見を求めるためには,別の規定についてどういうものかのイメージぐらいは例示として挙げる必要があると思われ,それは補足説明のところでよろしいと思うんですけれども,ただ,別の規定というのが確固としてここで固まっているわけではないとすると,置くとするとどのような規定が考えられるかと,別の規定としてどういうものがあるのかということも問うたほうがよろしいのではないかと思われまして,もし今申し上げたようなことが共有されるならば,この聞き方の表現は,特に乙案については少し考え直したほうがいいのではないかと思います。
○林幹事 先ほど深山委員がおっしゃられたこととほぼ同じなのですが,ポイントだけ申し上げますと,第2「公益信託の定義」の今回検討すべき事項のところで,附則3項の改正ということも触れられていまして,これについては賛成しますし,了解ですので,整理としてはこのようにしていただいたらと思います。
  それから,公益信託事務の定義に関してですが,公益信託の目的から公益信託事務の定義へ変更した点について,弁護士会でも賛成の意見もそれなりに多かったのですが,目的のままの方がよかったではないかという意見もあって,それはそう言われると,それも一理あるなと思いました。
  それで,改めて考えるに,公益信託の目的というのは,信託の具体的な要素のうちの重要なポイントなので,立法の中にそのことが分かるように出てこないといけないのではないのかという気がします。それから,公益信託の目的と,その下にある公益信託事務というのが2段階であるということも間違いないので,立法になったとき,そのことが分かりやすく出るべきなのではないかと思いました。
  それから,沖野幹事もおっしゃられましたが,別表方式でいくとしたとき,何とかの事業じゃなくて何とかの事務と書き換えるのでしょうけれども,そことの関連も考えるときに,目的との区別が分かりにくいという補足説明に書かれた記載内容そのものは全くそのとおりだと思うのですが,整理としては目的のままの方がよかったのではないかというふうにも感じたものですから,申し上げたいと思います。
○中田部会長 これまで頂いた御意見の中に幾つか御質問もありましたので,この辺りで事務局の方から少し御発言をお願いできますでしょうか。
○中辻幹事 まず,平川幹事から,公益信託法2条2項を削除するのかという御質問がございました。公益信託の存続期間について目的信託の20年の期間制限は適用しないという実質を維持することには部会で異論がなかったものと理解しておりまして,その上で,公益信託法2条2項を削除するのか改正するのかは法制上の技術的な問題ですので,条文化の際にこちらで検討させていただきたいと思います。
  次に,沖野幹事からの1つめの御質問にお答えします。今回の公益信託法の見直しに当たっては,現在の公益信託法のように信託法の特別法の形式を維持するのか,それとも公益信託についての条文を含んでいた旧信託法と同様に,信託法の中に第12章「公益信託」のような章を設けるのかという問題はたしかにございまして,旧信託法と同様の形式を採るのであれば私も目的規定は不要であると考えておりますし,以前の部会で道垣内委員が発言されていたのもそれに近いのではないかと思います。その上で,事務局としては,新たな公益信託でも現在の信託法の特別法の形式を維持する可能性が高いという見立てを持って第1の提案をしております。その理由を申しますと,公益信託の主務官庁による許可制を廃止し新たな公益信託の認可は国の行政機関のいずれかにおいて一元的に行うということがこの部会の大勢となっていますが,主務官庁制を先に廃止した公益法人の世界では,旧民法から独立した一般法人法及びその特別法としての公益法人認定法が存在しておりまして,それと公益信託も平仄の取れた形にすることが分かりやすいと考えているからでございます。そして,仮に公益信託の認可を行う行政機関が法務省以外の省庁になるのであれば,新たな公益信託法はその役所と法務省の共管になる可能性があると考えております。
  それから,沖野幹事からの2つめの御質問,今回の部会資料で用いている公益信託事務という用語と,公益法人認定法及びその別表における公益目的事業という用語との関係ですが,事務局としてはほぼ同一の内容を意味するものとして使っています。現在の公益信託契約書でも受託者が行う「事業」という表現が使われているものがあるのですが,そのような実務とは別に現行公益信託法4条で使われている「公益信託事務」という法令用語を生かせるのではないかと考えておりました。一方で,信託法29条などで使われている「信託事務」という用語は,受託者が行う個々の信託事務を想定しているものであり,それらを束ねたものを「公益信託事務」として整理しているものでございます。
  沖野幹事の3つめの御指摘は,深山委員からも御指摘ありましたけれども,第3の2の乙案で出てくる別の規定のイメージですが,遺言でなく契約により成立する公益目的の目的信託でも信託管理人を必置とする,公益信託の目的信託には信託法259条の20年の期間制限や附則3項の5000万の受託者要件をかけない,目的信託の委託者の権限を強めている信託法260条の規定を適用しないなどの特例が思い付くところでございまして,それらの規定を念頭に置きながら乙案の表現ぶりについては更に検討してみたいと思います。
  第3の論点については,今回御欠席の道垣内委員から事前にメールを頂いておりますので御紹介いたします。メールの文章を少し順番を変えて読み上げますと,「全体として謙抑的でよい。目的の話がなくなったのはうれしい。」とされた上で,「第3の2は当然甲案でしょうね。また,第3の3については不要な気がします。というのは,僕が全く申請の気持ちがなく,単に受益者の定めのない信託を設定したつもりであったときに,それが後発的に,かつ外部から,いや,これは公益目的ですねと言われ,不認可処分のときと同様となるとしますと,後で述べる不認可のときの処理にも関係するのですが,通常の場合にも制約が掛かるとするとおかしいのではないでしょうか」という御意見をいただいております。
○神田委員 質問のような形で3点申し上げたいと思います。
  今,事務当局からの御説明で明らかになってはいるとは思うのですけれども,1点目は,第2の2の公益信託事務という概念なのですけれども,公益信託事務とは別に,当然信託事務という概念があって,その信託事務をすることは妨げられないというか,ということです。公益信託事務という概念を使うことによって信託事務ができるか,できないかという問題が出てくるのか。それは先ほどの御説明で言えば,受託者の個々の権限というのですか,行為をする権限の問題として整理されるのかといったあたりが分かるように書いていただければという希望です。これは中間試案でパブリックコメントを求めると思いますので,ちょっと聞き方の問題になるとは思いますけれども,表現にもう少し工夫できるような気がします。ひょっとすると補足説明でそこを書いていただければ済むことかもしれません。
  それから,2点目と3点目は第3に関わるものです。実は今の道垣内委員の御意見と若干かぶるのですけれども。第2点目としては,第3の2で「有効に成立させる」とか,あるいは「信託としてその効力を生ずる」という表現があり,補足説明では「公益信託の準備状態」という言葉が使われていますけれども,例えば信託行為をして,もう信託財産というか,財産を移転して,認可を待つという状態で認可がされた場合には,認可がされて初めて有効に成立させるという選択肢しかないのか,先に,言わば信託を成立させておいて認可を待つというのはありなのかということを聞いたほうがいいと思います。それはパブリックコメントでという意味です。と申しますのは,いろいろなパターンがあると思うのですけれども,認可された後で,何らかの法律問題が信託一般について生じた場合に,認可される前から信託関係は成立していたといったほうがいい場合があるように思いますし,それから,例えば認可が受けられるかどうか分からないというのでいろいろ準備して,駄目そうだというのでまた新たな工夫をしてといってやっているうちに,半年,1年掛かると。それで,半年,1年後に認可が得られましたということもあり得ると思うのですけれども,その場合でも,認可があるまで有効に成立しないというふうに定めておかないといけないというのはちょっと強過ぎるように思います。少なくともパブリックコメントではもうちょっと中立的にというんでしょうか,聞いていいように思います。
  それから3点目は,道垣内委員がおっしゃったこととほぼ同じなのですが,3に関してです。この部会資料を拝見すると,認可の申請を予定している信託と,予定していない信託と,二つに分けられているのですけれども,それがいいのかどうかということです。といいますのは,予定していない信託だと分類されても,1年,2年たっているうちに認可申請しようということになると,その時点から予定する信託になるというふうに,この部会資料ですと整理せざるを得ないと思うのですけれども,その二分法というのは,必ずしも不要というか,適切かどうか疑義があります。少なくとも中間試案としてパブリックコメントに付すには,ちょっとそこは論理的に整理して聞いていただいたほうがいいように思います。
○中辻幹事 少しさかのぼって申し訳ありません。第2の2「公益信託事務の定義」のところの項目名について,従前の「公益信託の目的」という項目名のままでもよかったのではないかと,林幹事から御指摘をいただきました。そこで,もう少し丁寧に説明いたしますと,部会資料43の26ページの第9の1「公益信託の目的に関する基準」では公益信託事務を行うことを目的とするものであることを認可の要件としているところ,ここは,公益法人認定法5条1号が,公益法人は収益事業を行うことができるので,「公益目的事業を行うことを主たる目的とする」という規定になっていることに対応させているのですが,今回の部会資料を作る過程で,公益信託事務については公益法人認定法の「公益目的事業」と同様に定義した上で,「公益信託の目的」は認可の要件の項目名に使った方が分かりやすいと考えたものでございます。
○中田部会長 第9の1については,またそこで御審議いただきますけれども,取りあえずその両者の結び付きということだけ,今御説明いただきました。
○山本委員 今の点について確認をさせていただきたいのですが,定義は,4ページで,「受益者の定めのない信託のうち学術,技芸,慈善,祭祀,宗教その他の公益を目的とするものとして,行政庁から公益信託の成立の認可を受けたものとする。」とされています。これは,これまでの議論の延長線上にあるものでして,それ自体非常に分かりやすいのですが,先ほどのように変えられた結果,後ろの方で出てくる認可の基準では,「公益信託事務を行うことを目的とするものであること」が認可の基準になっています。そうしますと,微妙な差なのですが,「公益を目的とするもの」として認可を受けているわけではなくて,「公益信託事務を行うことを目的とするもの」して認可を受けているという関係になりまして,何か定義とその後の部分とがぴったり一致していないような印象があります。その意味で,定義の部分は,分かりやすさを優先するとこういうことなのですけれども,むしろ公益法人法がそうなっていると思うのですが,定義自体は「何条の認可を受けたもの」というような形で定義せざるを得なくなっていくのではないかと思いました。その点,今後,文言を詰めていく中で検討していただければと思いますけれども,このような変更をすると,そうした問題が生じてくるのかなということです。
○中田部会長 第1から第3までは,御意見は大体よろしいでしょうか。
○山本委員 先ほどから議論になっている第3の2と3なのですが,3に関しては私も同じような印象を持っていまして,「公益を目的とする」という部分がどうなるかによるとはいえ,このままでは実際に条文にするときには規定できないのではないかと思いました。特に2で甲案を採り,3についてもそれと同様の規律にするとなりますと,規定のしようがなくなっていくのではないかと思いました。
  その上で,更に2の意味についてですが,乙案を採る場合は,別の規定の内容がどうなるかということがもちろん大問題であるというのは先ほどのとおりです。その上で,2のような規定を定めることには,「別の規定を適用する」ための要件を定めるという意味があるのだろうと思うのですけれども,甲案を採用する場合には,2のような規定を定める意味はどこにあるかということが問題になるように思います。つまり,行政庁から不認可処分を受けた場合でも,当該信託を受益者の定めのない信託として有効に成立させる旨の信託行為の定めがあるときは,不認可処分を受けた時からその効力を生ずるというのは,それ自体としては分かるような気がするのですが,受益者の定めのない信託として,どういう時から成立させるかということは,信託行為である程度自由に定められる部分があるのではないかと思います。行政庁から不認可処分を受けた場合でも,当該信託を受益者の定めのない信託として有効に成立させる旨の定めがある場合は,当該信託はその効力を生ずるというのは,ある意味では原則どおりかもしれません。そうすると,このような規定を置けるのかという先ほどと同じような問題が生じてくるのですけれども,そこは,疑義を避けるため,このような定めをしていれば効力が認められるということを定めるところに意味があるのではないかと思ったということです。
  少し技術的な問題になって恐縮ですけれども,以上です。
○小野委員 先ほどの事務局の沖野委員からの質問に対する回答で,今後検討されるということの中に含まれることかとも思いますけれども,附則の3項と4項について,今後,仮に,私は甲案ではないんですが,甲案だとしても,3項,4項の関係については,やはり一つの方向性,結論を導くべきではないのかと思います。特にこれまでの審議の中で,公益信託でない公益を目的とする目的信託において,法人要件の適用ありや否やという論点について,普通の読み方からして,ないのではないかという議論であったと思いますが,違う読み方もあり得るかと思います。ということも含めて,私は甲案ではなく乙案で,別の規定を楽しみにしている立場ではあるんですけれども,この3項と4項の関係をどう理解していくかということについては,今後議論をしていただければと思います。
○中田部会長 第3の2について幾つか御意見頂いているんですけれども,伺っていますと,自分は甲案なんだけれども,あるいは(注)の立場なんだけれどもという御意見が多くて,積極的に乙案をお採りになっているというお立場の方から,もし別の規定についてのお考えなどございましたら,お聞かせいただければと思うんですけれども。
○小野委員 先ほどの事務局からの説明は乙案の説明だったと思うので,別の規定というのは,今の目的信託,受益者の定めのない信託について,委託者の権利の見直しとか,又信託管理人の設置義務を強制化するとか,期間制限を場合によっては廃止するとか,それによって別のものを作っていこうというのが乙案であると,私は先ほどの事務局の説明で理解しています。他方において,(注)というのは,そういうことはもう一切触れずに,今後どうぞ解釈論に委ねましょう,要するに,附則も含めて今のままですというのが(注)の趣旨と思っています。そういう意味においては,沖野委員も含めて,乙案が支持されたような気はするんですけれども,いかがでしょうか。
○深山委員 今日以降の議論は,パブコメに付す形としてはどうかということを中心にということだったので,自説はあえて控え目に申し上げたんですけれども,私もやはり乙案のように,11章をそのまま適用するのではない規定がよろしいだろうと思いますし,既に出ているように,20年の期間制限の問題,それから信託管理人の問題,受託者要件の問題,あるいは先ほど中辻幹事がおっしゃったように,委託者の権限のところも,全く11章そのものという考え方はむしろ少数説なのかなと思っていたぐらいです。それをもう全く別の第3類型というふうにするのか,あるいは特則というぐらいにとどめるのかという問題は,もちろん沖野幹事がおっしゃるようにあると思うんですが,少なくとも一定の特則は必要ではないかと思います。
  さらに,もう一つ言うと,解釈に委ねるという考え方もあり得るのかもしれませんけれども,やはり現行の解釈では主務官庁の認可がない公益を目的とするものは無効という考え方が主流のように思えますので,この部会の議論としては,そうはしないで,信託行為に一定の定めがあれば有効になるということについてはコンセンサスがあるので,この第3の2の前段をはっきりさせる意味合いは十分あるので,そうなると,そこから先はどうしても議論が分かれてしまえば書かないで解釈に委ねるというのもあり得るんでしょうけれども,もし一定の規律についてコンセンサスが得られるんであれば設けたほうがいいし,その点については11章そのものではなくて,その特則が必要とする乙案というのを,私は個人的に支持しております。
○中田部会長 ありがとうございました。
  それでは,大体御意見を承りましたので,御意見を踏まえて更に事務当局の方で検討していただこうと思います。かなりの部分はゴシックの部分については御賛成を頂いているかと思いますので,幾つかの点について更に詰めをしてみるということになろうかと存じます。
  それでは,続きまして,第4から第7まで御審議いただきたいと思います。
  事務当局から説明をしてもらいます。
○舘野関係官 それでは,御説明いたします。
  まず,「第4 公益信託の受託者」について御説明いたします。
  本文1は,「公益信託の受託者の資格」について提案するものであり,本文1(1)の甲案は,「受託者が公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する法人であることを必要とするもの」,本文1(1)の乙案は,「受託者が公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する者(法人又は自然人)であることを必要とするもの」です。
  本文1(2)は,受託者が自然人である場合の欠格事由を,「ア 信託法第7条に掲げる者に該当しないこと,イ 禁錮以上の刑に処せられ,その刑の執行を終わり,又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者に該当しないこと,ウ 信託法その他の法律の規定に違反したことにより,罰金の刑に処せられ,その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者に該当しないこと,エ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者に該当しないこと,オ 公益信託の成立の認可を取り消されたことに責任を負う公益信託の受託者又は信託管理人でその取消しの日から5年を経過しない者に該当しないこととすること」を提案するものです。
  本文1(3)は,受託者が法人である場合の欠格事由を,「業務を執行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しくはその職務を行うべき社員又は監事若しくは監査役のうちに,(2)アないしオのいずれに該当する者がないこととすること」を提案するものです。
  本文2は,「公益信託の受託者の権限,義務及び責任は,受益者の定めのある信託の受託者の権限,義務及び責任と同一であるとした上で,受託者の善管注意義務については,軽減することはできないものとする」との提案をするものです。
  本文1(1)の提案では,部会資料38の第4の甲案及び乙案と同様に,公益信託の受託者の資格を公益信託事務の適正な処理をなし得る法人に限定する甲案と,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する者であれば,法人に加え自然人も許容するとする乙案の両案を掲げています。税制優遇を受けることを視野に入れる観点から,特定公益信託の要件を定めた所得税法施行令第217条の2の規定等を参考として,受託者がその信託財産の処分を行う場合には,当該公益信託の目的に関し,学識経験を有する者又は組織の意見を聴くことを必要とするべきであるという考え方もありますが,そのような仕組みを委託者及び受託者に強制することは相当でないと考えられることから,(注1)で示すにとどめています。
  なお,公益信託の委託者及び受託者が任意で(注1)のような仕組みを採用することを妨げるものではありません。また,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有する法人との共同受託であれば,自然人を受託者として許容するものとする部会資料の38の第4の丙案は,(注2)に示すことにしております。
  本文2の提案では,先ほど御説明しましたとおり,公益信託は信託法第258条1項に規定する受益者の定めのない信託と,その性質上,大きく異なるものであることから,部会資料39の第1の「目的信託の受託者の権限,義務及び責任と同一とする」という提案を「受益者の定めのある信託の受託者の権限,義務及び責任と同一であるとし」という提案に改めています。また,公益目的のために拠出された公益信託の信託財産の管理処分を行う受託者については,一定の資格が要求された上で,より信託財産の保全に重きが置かれるべきであるため,善管注意義務の軽減を許さない旨の強行規定を設けるものとする提案に修正しております。
  その上で,今回検討すべき事項の(1)に記載しましたように,公益信託の受託者の資格として,法人であることの要件を設けるか否かについては,公益信託の社会的信用を維持するために信託法第40条の損失填補責任を果たせるだけの資力を受託者が有していることが必要となること,自然人受託者の場合には,複層的な組織による業務の執行,監督の仕組みを備えている法人におけるようなチェック機能が働かず,そのために複雑で費用の掛かる仕組みを公益信託に持ち込むということになりかねないこと,現在の税法において,信託会社以外の者が受託者となったときには,各種の優遇措置を与えられていないことからすると,受託者の資格を法人に限定しないこととした場合には,公益認定を受けることにより,税法上の優遇措置が与えられている公益法人制度と新たな公益信託制度が整合しない制度となる可能性もあることなどを踏まえると,将来的には公益信託の受託者として自然人を許容することが望ましいとしても,今般の見直しに際しては公益信託の受託者の資格を一定の固有資産を有する法人に限定するなどを本文1(1)の甲案に類似する案を採用することが相当ではないかと考えられるとしております。
  公益信託の受託者の資格として,法人であることの要件を設けるか否かの検討は,中間試案に本文1(1)の甲案及び乙案の両案を併記するか,本文1(1)の甲案のみを掲げるかに関わる重要な部分ですので,特に御意見を頂ければと存じます。
  なお,今回検討すべき事項の(2)及び(3)において,公益信託の受託者要件として公序良俗要件,学識経験及び信用等の要件は不要とする提案をしておりますので,御意見があれば頂きたく存じます。
  次に,「第5 公益信託の信託管理人」について御説明いたします。
  本文1は,「公益信託の信託行為には,信託管理人を指定する旨の定めを設けなければならないものとする」との提案をするものです。
  本文2は,「公益信託の信託管理人の資格」について提案するものであり,「(1)委託者又は受託者若しくはこれらの者の親族,使用人等の委託者又は受託者と特別の関係を有する者に該当しないこと,(2)信託法第124条に掲げる者に該当しないこと」の2点を信託管理人が自然人であるか,法人であるかにかかわらず必要とした上で,「(3)信託管理人が自然人である場合には,先ほど受託者の欠格事由として述べました第4の1(2)に掲げる者に該当しないこと」,「(4)信託管理人が法人である場合には,業務を執行する社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しくはその職務を行うべき社員又は監事若しくは監査役のうちに,(3)のいずれかに該当する者がないこと」を必要とするものとしています。
  本文3は,「公益信託の信託管理人の権限,義務及び責任は,受益者の定めのある信託の信託管理人の権限,義務及び責任と同一とした上で,信託管理人の権限は,信託行為の定めによって原則として制限することはできないものとする」との提案をするものです。
  本文1の提案については,従前の提案から変更点はありません。
  なお,第43回会議における佐久間参考人の意見を踏まえ,公益信託事務の規模等によって公益信託に事務処理及び会計の監査権限を有する者を設置しなければならないとの考え方を本文1の(注)として示しております。
  本文2(1)の提案では,先ほどの公益信託の受託者と同じく,学識経験及び信用等を信託管理人が有することを新たな公益信託の成立の認可基準としておりませんが,受託者と信託管理人とで異なる扱いをする可能性もありますので,これらを信託管理人の資格とする考え方を本文2(1)の(注)として示しております。
  本文3の提案については,先ほどの公益信託の受託者の権限,義務及び責任と同様に,部会資料39の第2の2(1)で,「目的信託の信託管理人の権限,義務及び責任と同等のものとする」という提案をしていたものを,「受益者の定めのある信託の信託管理人の権限,義務及び責任と同一とし」という提案に変更しておりますが,信託行為の定めによる信託管理人の権限を制限することは,原則としてできないとしている部会資料39の第2の(2)の提案は変更しておりません。
  その上で,今回検討すべき事項の(1)に記載しましたように,公益信託の信託管理人が1年間不在となったことを公益信託の終了事由とするとの考え方を改めて示しましたほか,今回検討すべき事項の(2)では,新たな公益信託の信託管理人の権限を別表1のとおり整理しておりますので,これらについても御意見があれば頂きたく存じます。
  次に,「第6 公益信託の委託者」について御説明いたします。
  本文1は,「公益信託の委託者の行使できる権限は,受益者の定めのある信託の委託者の権限と同一とした上で,委託者の権限は信託行為により増減できるものとする」との提案をするものです。
  本文2は,「公益信託がされた場合には,委託者の相続人は,委託者の地位を相続により承継しないものとする」との提案をするものです。
  本文1の提案は,部会資料39の第3の乙案をベースに(注)の記載を統合した提案としています。
  なお,信託法第260条第1項において,同法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託の委託者は,受託者の行為の差止請求権等を有し,それを変更することはできないと規定されていることを参考に,公益信託の委託者に対し,受託者の行為の差止請求権等の権限を強行規定として付与することも検討しましたが,公益信託について公益性を確保する観点からすると,委託者の権限を大きなものと位置付けている同法第258条第1項に規定する受益者の定めのない信託の委託者の権限を公益信託の委託者に付与することは相当ではなく,同法第260条第1項のような規定を公益信託に設ける必要なはいと考えられます。
  その上で,今回検討すべき事項の(1)に記載しましたとおり,本文2の提案では,委託者死亡の場合の委託者の地位の承継について,公益信託の委託者が設定した公益目的と委託者の相続人との間では利益相反的な面があることから,設定の方法が契約か遺言かを問わず,委託者の地位の相続を禁止するものとしておりますが,本文2の(注)のように,信託法第147条ただし書を参考にして,信託行為で別段の定めがあるときは,相続人による委託者の地位の承継を認めるとの考え方もあり,この点は,今回新たに明示的な論点として取り上げたものですので,特に御意見を頂ければと存じます。
  また,今回検討すべき事項(2)の委託者の権限を別表2のとおり整理しておりますので,御意見があれば頂きたく存じます。
  次に,「第7 行政庁」について御説明いたします。
  本文1は,「現行公益信託法第2条第1項及び第3条の規律を廃止し,公益信託の成立の認可・監督は,民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて,特定の行政庁が行うものとする」との提案をするものです。
  本文2は,「現行公益信託法第10条及び第11条の規律を改め,公益信託事務が行われる範囲が1の都道府県の区域内に限られる公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁は都道府県知事とし,公益信託事務が行われる範囲が2以上の都道府県の区域内である公益信託の成立の認可・監督を行う行政庁は国の行政庁とするものとする」との提案をするものです。
  部会資料38の第5の1の提案に対して,第39回会議で異論はなかったことから,本文1の提案に実質的な変更はありませんが,現行公益信託法第2条第1項及び第3条の規律を廃止し,主務官庁による許可制を廃止することが前提であることを明示しております。
  また,部会資料38の第5の2の提案から本文2の提案に実質的な変更はありませんが,現行公益信託法第10条及び第11条の規律を改めることが前提であることを明示しております。
○中田部会長 ただいま説明のありました第4から第7のうち,まず,第4と第5について御審議いただきたいと思います。御自由に御発言ください。
○吉谷委員 第4の1の(1)につきまして,2点発言させていただきます。
  後ろの検討すべき事項として挙げられているところですけれども,これについては特に加える必要はなく,御提案のとおりでよろしいかというふうに考えております。
  その理由のうち,資料16ページの(3)について更に述べさせていただきますと,ここについては少し議論がございましたが,この要件というのは,結論として,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力という要件に吸収されているというふうに理解しました。なので,ちょっと御説明の仕方ではあると思うんですけれども,学識や経験や信用等も含めた受託者の能力を行政庁と有識者委員会で判断するということなのではないかというふうに理解して,今回の提案でよろしいかと考えたところでございます。
  2点目ですけれども,(注1)のところで,運営委員会等について御説明がされております。私が理解いたしましたところでは,ここの(注1)の内容というのは,受託者の資格についての議論そのものではなくて,運営委員会などの受託者あるいは信託管理人といったもの以外の機関を置くべきかどうかという議論であるというふうに理解いたしました。ですので,場所としてここにあるというのにはちょっと違和感がありまして,むしろ第9「公益信託の成立の認可基準」の議論ではないかというふうに考えております。
  若干補足しますと,私どもとしては,公益信託事務処理や監督についての体制が整備されているべきというようなことを前から言っておりましたので,もし移されるのであれば,第9のところに(注)なのか案なのかはともかくといたしまして,もう少し一般的な書き方にした上で,この内容を盛り込んでいただくのがよろしいと考えております。
○中田部会長 ほかに。
  能見委員,それから川島委員,深山委員の順にお願いいたします。
○能見委員 取りあえず第4についてだけ申し上げます。受託者の資格でございます。
  一つは,まだ私の頭の中でもうまく整理できていないんですが,受託者の資格が問題となる場面は何かという観点からの発言です。これには2つあると思います。1つは,公益信託の認可を受けるときに,受託者としての必要な要件を備えているかどうかという観点からの問題と,もう1つは,いったん公益信託が成立した後,その後,受託者の資格という観点からの要件が満たされなくなって,それでその信託はどうなるかというときの問題です。両者はかなりオーバーラップするとは思いますけれども,完全には同じではないような気がしました。
  そういう意味で,まず,問題点を今のように二つに分けたほうが分かりやすいのではないかと思うわけです。まず,認可の段階での問題というのは,受託者の資格の一部ではもちろんあるんですけれども,正にここに書いてある1の(1)のところの甲案,乙案に書いてありますように,公益信託事務の適正な処理をなしうる能力を有する法人であるとか,自然人を許容するのであれば,そのような能力を有する自然人であるとか,こういうのがある意味で一番上位というか基本となる資格の基準だと思いますが,この基準に基づいて,適切な受託者であるかどうかというのを判断する,これが恐らく認可の段階の問題だろうと思います。もちろん,そのほかに受託者の欠格事由に該当する事実があれば,それも公益認定の際にその受託者では駄目だということになるとは思いますが,1の(2)や(3)の問題は,認可の申請をする際に注意していれば避けられますので,あまり認可の段階で問題になることはないだろうと思います。これに対して,いったん公益信託が成立した後は,1の(1)で書かれている能力の問題ではなく,今度は,1の(2)や(3)が問題となるのではないかと思います。自然人である受託者が(2)で書かれている事由に該当することになった場合,例えば成年後見や保佐の審判を受けたりした場合に,公益信託はどうなるか,ということですが,この場合には,公益信託の認可が取り消されるのではなくて,適切な受託者への交替の問題になるのだと思います。法人受託者についての(3)についても同様です。
  このように,受託者の資格が問題となる局面が2つあり,二つの問題というのを分けてパブコメにかけたほうがいいのかなというのが第1点でございます。
  それから第2点目は,1の(3)についてです。これは受託者が法人である場合にこういうことに該当するような理事であるとか取締役などがいると,それは法人全体が受託者として欠格であるということになりますという話なわけですが,この点については以前に,この部会でも疑問の意見として申し上げました。改めてこういう形で中間試案として出てきたときに,違和感を感じます。現在の典型的な受託者である信託銀行について言えば,信託を受託しているのは法的には信託銀行という法人ですが,受託者としての業務はその全体の業務の中の一部でしかない。銀行そのものとしては,いろいろな業務を行っている。そういう銀行の取締役の一人が,信託の業務に関与していない取締役が,例えば金融犯罪を犯したというようなことは,当然に受託者の資格というものを失わせることになるのだろうか。正に吉谷委員が言われたように,そういうことがあったことも考慮して,銀行全体としての受託者の能力がなくなるのかどうかという判断がされるべきなのだろうと思います。
  ですから,ちょっとこの(3)の書き方は,これは受託者が自然人の場合とある意味でパラレルに書かれていて,これもおかしいと思いますけれども,もう少し今述べたような趣旨が伝わるような形の問いかけ方にしたほうがいいのではないかということでございます。
○川島委員 ありがとうございます。
  第4の1「受託者の資格」について賛成であることを前提に,16ページの(2)公序良俗要件について一言申し上げます。
  私は第38回会議で,公益信託の受託者が社会的信用を維持する上でふさわしくない,又は公の秩序や善良の風俗を害するおそれのある事業を行っていることを不適格事由とすべきとの意見を申し上げました。公益信託の社会的信用を維持するためにも,このような規律が望ましいという考えに変わりはありませんが,他の委員や幹事の御意見にありました公序良俗を害するおそれがあることを認定の段階では判断できないのではないのか,また過剰な規制となる可能性があるとの指摘も否定し難いと考えました。
  そこで,(2)の最後に記載されている公序良俗に反する事業を行っていることを受託者の法律上の不適格事由とするまでの必要はないとの考えについては,部会におけるこれまでの議論の積み重ねを踏まえた中間試案の内容として受け止め,異存ないことを申し上げます。
○中田部会長 どうもありがとうございました。
○深山委員 第4の1のゴシックのところで甲案,乙案という形で自然人の受託者の余地を認めるかどうかということを両論併記をしていただいておりますので,これについて,このとおりパブコメに付していただきたいと思います。
  先ほどの事務局の説明で,乙案を残すかどうか意見が欲しいということでしたので,ストレートに答えるとしたら,是非とも残していただきたい,残すべきだと私は思います。私が乙案論者だということは今さら申し上げるまでもないですけれども,必ずしも私一人の意見でもないというふうに私は理解しております。この場で多数かどうかはともかくとして,パブコメに付して,国民一般の意見を是非尋ねたいと思います。そういう意味で,是非乙案を残して聞いていただきたいと思うんです。その上でというか,その延長線上の問題なんですけれども,補足説明が,これはパブコメに付されるときにどういう形で,このとおりの補足説明になるのかどうかは,必ずしもそうじゃないのかもしれませんが,少なくとも今日頂いたたたき台⑴の資料を見ると,ゴシックではニュートラルに甲案,乙案を並べていただいていますが,この補足説明は明らかに甲案を推薦しております。同じぐらいの量で乙案の根拠も挙げていただくんであれば,ニュートラルで公平だと思いますが,このような形で書かれると,素直に読んだ人は甲案でいいですよねというふうに聞かれているというふうに考えてしまうと思います。
  しかし,そこは最終的にはもちろん総意で決めるべきことなので,最後の最後までこだわるというふうには申し上げませんけれども,少なくとも聞き方としてはもう少しニュートラルに,例えばガバナンス一つとっても,こういう考え方はもちろんあるでしょうが,いやいや,法人だからといって常に個人よりもガバナンスが利いているという保証はないじゃないかという意見だってあるでしょうし,一つ一つ挙げれば,同じような反論は乙案からもできると思っていますので,この説明についてはもう少し公平,ニュートラルにお願いしたいということであります。
  それから,もう1点,第5について,内容的には異存はないんですけれども,1年間,信託管理人が不在になったときのことについて補足説明の中で問われていまして,やはり1年間,必置の機関が不在というのはよろしくないと思うので,終了事由とすることによって,そういう事態を避けるような仕組みにしたほうがいいと思うんですけれども,従前の議論ですと,信託の終了事由というような形で項目が上がって,そこの一つとして取り上げられていたかと思うんです。このたたき台⑴の第1から19までの中には,終了事由というのをストレートに取り上げていない関係で,ここで取り上げるのであれば,もう少しゴシックのところに格上げというか,何らかの形で明示していただいて,それについて異論がないかどうかをパブコメに付していただいたほうがいいのかなということをちょっと申し上げたいと思います。
○中田部会長 樋口委員,平川委員,林幹事の順に御意見を頂きたいと思いますけれども,今までのところでも幾つか御提言,御質問が出ておりますので,いったん事務局の方から御発言いただきたいと思います。
  吉谷委員,あるいは能見委員,そして今,深山委員から幾つかの御質問と申しますか,御提言があったかと存じます。
○中辻幹事 能見委員がおっしゃられたように,第4の1(3)では,受託者が法人である場合について,社員,理事若しくは取締役,執行役,会計参与若しくはその職務を行うべき社員と規定しているところ,この中の一人でも金融犯罪を行ったときに受託者の任務終了事由になるのは少し厳し過ぎるのではないかということは従前の部会でも御指摘されており,一つの合理的な考え方であると思います。ただし,私どもが主に参考にしている公益法人認定法なりその他の法律を見渡しますと,信託銀行を特別扱いしていないことはもちろんですし,法人について今のような例を除く規定を設けているものが見当たらなかったことから,ゴシック本文では一般的な書き方をしているということでございます。
○中田部会長 あとは認可を受けるときの要件と,それから事後的な要件の欠如とを分けたほうがいいのではないかとか,あるいは終了事由について,今のと関係しますけれども,もう少しまとめて明確にしたほうがいいんじゃないかというような御提言も頂いておりますが,それは更に検討するということになりましょうか。
○中辻幹事 そうですね。能見委員から御指摘ありましたとおり,受託者の資格については,その信託の受託者が資格を欠くことによって信託の設定自体が無効になる場面と,信託の設定後に受託者が資格を欠いたことにより受託者の任務終了事由となるけれども信託自体は有効に維持される場面の二つに分けて考える必要がございます。
  その上で,第4の1にあるような公益信託の受託者の資格要件については,受託者が行政庁に対する認可申請のときにこれらを欠いていれば認可を受けられないし,仮に認可を受けたとしてもその公益信託は無効になる,公益信託の成立後にこれらを欠いた場合には受託者の任務終了事由になると事務局として一応の整理をしてはおりましたが,能見委員の御意見をもう少し詳しく伺えれば有難いと思います。
  もう1点,深山委員から公益信託の終了事由についてゴシックに掲げるべきであるという御意見を頂きました。事務局としては,公益信託の終了事由について基本的には信託法163条の規定を同条2号以外は適用するのだけれども,同条9号の信託行為において定めた事由も終了事由とするかどうかについては詰めて検討したいというスタンスで変わっておりませんが,いずれにせよ公益信託の終了事由のような重要論点についてはゴシックに掲げることは十分あり得ると感じましたので,更に検討させていただきます。
○能見委員 一つは,あんまりこれはここでこだわるつもりはないのですけれども,公益法人の方の法制と,公益信託といいますか,信託の仕組みというのはやはり違うところがあると思います。信託銀行などの大きな法人が受託者である場合は特にそうだと思いますけれども,法人の全人格を使って信託の受託をしているわけではなくて,法人組織全体の一部で信託をやっているだけだと思いますので,たしかに取締役は全ての業務を監督していなくてはいけないということは言えますけれども,公益法人の中の理事などが欠格事由に該当した場合に,その公益法人の解散事由になるというのとはちょっと違う構造になっているのだろうというのが一つです。
  それから,成立の段階ないし認可の段階とその後というのを分けるというのは,先ほど言い忘れたのですけれども,深山委員が言われたので,それも追加したいと思います。すなわち,認可の段階で一番重要な問題は,やはり公益信託の受託者として自然人も許容するかどうかという問題だと思います。これは正に認可の段階の受託者の資格の問題として検討すべき課題です。この問題について,どちらかの立場をとった上で,次の段階で,公益信託として認可された際の受託者が,その後何かをしたときにどうなるかということが問題となります。ここでも受託者の資格が問題とはありますが,問題の性質がかなり違うので,中間試案でパブリック・コメントを求める場合に,この点をよく理解してもらうために分けたほうがいいのではないかというのが一番私の言いたかったことの中心部分です。
○中田部会長 ありがとうございました。
  それでは,先ほど挙手を頂いておりました順に樋口委員からお願いします。
○樋口委員 私は第4について,二つ,三つ,ちょっと考えを申し述べますけれども,前提として,これでパブリックコメントに付すためにどういうやり方がいいかというので,議論をそこへ集中してくれというお話なんです。これだけの労作だと思いますけれども,これはパブリックの一人として読んで,これでどう判断すればよいか理解しにくい部分があります。今まで出てきた中で最もわかりにくい,例えば私が分かりにくいのは,第3の先ほどの公益信託の信託法258条うんぬんをどうするこうするという甲案,これなんかはパブリックは分からないですね。だから,どういう形で提示したらいいのかというのを考えていたんですけれども,私はパブリックコメントのとり方も知らないから,ちょっとこれから無知をさらけ出しますけれども,とにかく目的は設定されたという点を強調することが大事だと思います。この目的についてもパブリックコメントの対象になるんでしょうけれども,とにかく民間による公益活動の健全な発展を促進しという話ですね。そうすると,そのためにはどうしたらいいのかなという話で,例えば第4のところだけ申し上げますけれども,これはやはり,まず,受託者は法人にしておいたほうがいいよねというのか,そうじゃなくて,自然人もまじえたほうがいいのかなということでパブリックコメントをとるというのがいいんじゃないかと思うんですね。
  そうすると,深山委員がおっしゃってくださったように,私なんかは,法人だから信頼できるというエビデンスはない,ガバナンスという形だけはあるけれども,しかし,信託の方だって一種のガバナンスをとろうと思えばとれるわけで,たとえば複数の自然人という形とか,法人との共同受託とか。だから,やはり受託者のところは広い選択肢を広げておいて,それは健全な発展につながるということが望みなんですけれども,そのほうが今後公益信託が発展する方向にはいくんじゃないかな,増やそうと思うんだったら,ここで狭めることはないんじゃないかなというような気が本当はします。これが第1点です。
  同じように,部会資料43の13ページの一番上にある部分です。ここなんかは問題にならないみたいなんですけれども,受託者の権限,義務及び責任というので,受託者の善管注意義務については軽減することはできないものとする,これなんかも,考え方によっては公益信託を広げるためには,公益信託の受託者になる人には重い責任を課さないほうがいい場合もあるんですね,本当を言えば。それは考え方です。私がそれを採るかどうかは別としてですけれども。それで,まさかここは,この善管注意義務については軽減することはできないが,責任を軽減することはできるというふうに読んでいいんですか,それはそうじゃないですよね。だから,義務はきちんとしたもので,義務違反はきちんと問うのだけれども,最終的な責任は,あなたが一生懸命やっていたというんだったら問わないというか,そういうことができるというようなことではないと思うんですけれども,そういうのはもっとはっきりしたほうがいい。だから,先ほどの健全な発展という意味では,受託者の権限,義務及び責任を簡単に任意規定にしてしまうわけにはいかんのかなというふうに,私も何だか急に保守的に考えているんですけれども,その上で2点目は,忠実義務はどこに行ったんだろうということなんですね。受益者その他についての忠実義務と信託法に書いてあって,公益信託には受益者はいないんだから忠実義務が働かないなんていう理屈は,私にはちょっと考えられない,本当は。それとも,ただ忘れているだけなのか,あるいは善管注意義務の中に,ここは忠実義務も含めるという話なのか,ちょっとここは質問なんです。
  三つ目は,この受託者の資格でネガティブなことが書かれてありますよね。結局,こんな悪いやつはなっちゃいかんよという。何かやはり健全な発展というので,健全にだからこういうことを書かんといかんのでしょうけれども,それよりも,ごく普通の人が公益信託というのが,あんたを信頼してとにかくやってみようと言われたときに,すごく困ると思うんですね。受託者になったらどんなことになるんだろうというので,これはちょっと別のところにも書いたんですけれども,イギリスの話だけれども,例えば年金の受託者というのになった場合には,やはり研修義務なんかがあるんです。一体,受託者になるということはどういうことなのかというような話を公益信託で,こういうところで書くのがいいのかどうか分からないんですけれども,受託者というのはこういうことがあるんだよと,いわんや,ここで強行規定にするとか言っているんだったら,紙の上で強行規定にするというだけではなくて,強行規定になるということはどういうことなのかという,その善管注意義務。ただ,あんまりおびえさせると誰も受託者になりようがなくなるから,ごくリーズナブルな話にしてもらいたいと思うんですけれどもね。それで,こういうリーズナブルなことだけきちんとやっていれば,それは善管注意義務に違反することもないし,本当に自分の利益を図るみたいなことをやらなければ,ごく普通にきちんと,先ほどの公益的な事務というのを普通にというかな,果たしておいてくれればいいんです,こういうのはアウトですというような研修を義務付けるようなことは,むしろ公益信託だから必要なんじゃないかなというふうに思って,今日聞いていました。
○平川委員 第4「公益信託の受託者」につきましては,乙案に賛成します。
  ただし,自然人のみの場合,少なくとも3名の受託者を要するという要件を唱えた人がいたというのを注記していただきたいんですけれども,自然人を排除するという考えにつきましては,信託先進諸国でも英米でも個人というのは認められており,特に弁護士は,他人から信託を受けることはそもそもの職務の内容と密接な関連性と親和性があり,弁護士が受託者資格を有さないとすることは,職能的に不条理であると思います。また,不祥事が生じた場合に,自主規制団体である弁護士会も懲戒権を有しております。したがって,弁護士ではなくても,このように信託を受けることについて親和性があるような職業につき,また自主規制団体,懲戒権があるような団体に属している者も可能性はあると思います。
  ただし,自然人であることから,複数人数で受けることを要件とすべきことは必須であると考えます。突然死のことなどを考えれば,1名で受任ということは無責任であり,あり得ないと思います。また3人いれば,損害賠償責任を受ける場合にも連帯債務を負うと思いますので,何とかやっていけるのではないかと思います。
  次に,受託者の公序良俗要件につきまして,先ほど川島委員より,入れないことについて納得したという御意見がございましたけれども,やはり公益認定法第5条第5号の要件と同じような公序良俗要件を資格要件とすべきであると考えます。仮に資格要件とすることに無理があるというのであれば,何らかのほかの方法でもよいから規制の中に入れていただきたいと思います。
  学識経験,信用等の条件を規定しないことには賛成します。
  また,たたき台の第4の1の(注1)において,運営委員会の設置について,必置とすることはここで不要としておりますが,私どもが従前より述べておりますのは,財産処分の場面のみならず,受託者と信託関係人の選解任など,信託のガバナンスを保つ上で必須の機関とすべきことにつき申し上げておりますので,ここで再度申し上げたいと思いますし,また,第9のところで十分に議論していただくのであれば,大変有り難いと思います。
  次に,第4の2の受託者の権限,義務,責任ですけれども,これには賛成いたします。
  権限,義務,責任は,私益信託のそれと同一とした上で,かつ善管注意義務の軽減は認めないとする考え方に賛成します。信託法第258条1項に規定する受益者の定めのない信託,いわゆる目的信託との関係が絶たれたことから,受益者の定めのある信託の受託者の権限,義務及び責任と同一とされたことは好ましいことであると考えます。
  その上で,公益信託の受託者の善管注意義務は,公益目的のために拠出された公益信託の信託財産を預かり,それをもとにして公益信託事務を行う権限と義務があることから,非常に大きいものと言えます。したがって,公益信託の受託者に対しては,信託業法の適用を受ける受託者や会社法上の取締役等と同様に善管注意義務の軽減は認められるべきではなく,法律上もそれを強行規定とすることに賛成します。
  第5「公益信託の信託管理人」の1について,本文について賛成します。(注)につきましては,公益信託法で規定すべき事項ではなく,公益法人制度の場合と同様に公益認定あるいは認可申請のガイドライン等で示すべき事項ではないかと考えます。
  第5の2につきまして,公益法人制度の法律及び経験から考えまして,1から4の資格要件で十分であり,(注)に記載された積極要件は必要ではないと考えています。
  第5の3につきましては,基本的に賛成します。
  信託管理人の権限,義務,責任を受益者の定める信託管理人と同一とし,原則として制限不可とすることについては,個別の権限を更にチェックすることを前提として賛成します。本文には記載されていませんが,たたき台19ページから20ページに記載の信託管理人の不在が1年間継続した場合において,それを強制的取消事由とすることには反対です。公益法人制度と同様に,その不在はしかるべき期間に治癒すれば足り,その意味では行政庁による任意的取消事由であるべきと考えます。
  また,信託管理人の権限に関して,別表1の△記載の欄は×とすべきではないかと考えます。利益相反行為,信託財産の状況に関する書類の報告,受託者の任務終了,併合・分割による一定事由,これらは信託管理人が受託者を監督する上で重要な事項であり,これらの通知受領権は信託行為で任意に定められるようにすべき事項ではないと考えますので,×として提示すべきと考えます。
○林幹事 第4と第5につきましては,御提案について,中間試案をパブリックコメントに付するという,そういう趣旨においては基本的には賛成いたします。
  主として第4の1の乙案のことを申し上げたいのですが,その前に細かい点について申し上げます。第5の今回検討すべき事項となっているところで,信託管理人が1年間不在でどうなるかということについては,1年で終了であったり,取消しであったり,1年とするべきではないなど,考えはいろいろあると思うので,これは中間試案に格上げすることを検討していただければと思います。
  それから,第5の補足説明(2)の別表1のことについては,弁護士会で議論した中では,△のところは,△ではなく×とすべきだという意見もそれなりに出たので,そのことについてもパブリックコメントでも△か×かを聞いていただくような形に,中間試案に格上げしてもよいのではないかと思います。
  それから,問題の受託者の資格の第4の1(1)の乙案についてなのですが,パブリックコメントとしてこのように聞いていただくことは理解します。ただ,乙案を残すかどうかという形でおっしゃられたので,それはもう必ず残していただいて,パブリックコメントに付していただきたいです。もちろん乙案に賛成だからということではあるのですが,先ほど深山委員が言われたのと同じで,今回の補足説明は理解するとして,パブリックコメントではニュートラルに是非書いてくださいということです。
  それで,今回の補足説明にこう書かれているので,反論しないといけないことになりますが,例えば不特定多数を対象とするから信託事務遂行に社会的影響が大きく,自然人が受託者として何かがあって損失が填補されないような事態となったら,公益信託の社会的信用性が失われるという御指摘もありますが,結局,公益信託もいろいろな規模のものを想定しているので,その影響というのも大小様々ですし,そういった弊害を考えるのであれば,その自然人に合った規模の公益信託を考えるとか,あるいはガバナンスを更に適正に利かせるような工夫をするとか,特に今回は信託管理人を設置しているわけですから,そういう観点からの対応も可能だと思います。
  自然人において,その信託財産の規模を一定程度制限するとかいうのもあり得るのかという気はしますが,ただ,一律に自然人は排除するということは,公益信託の拡大や,広く利用してもらおうとする点に反すると思います。法人であれば不正な目的での利用を制御できるかという点については,必ずしもそうではないということは深山委員や樋口委員がおっしゃるとおりだと思います。
  それから,自然人を受託者にするから逆に複雑にしてしまうのではないかという,そういう類いの指摘もあるのですけれども,それは規模によるし,状況にもよります。今回,助成型と事業型で収支相償原則の適用等について異なるものとする提案もされています。いずれにせよ,自然人に見合ったものというのを受託していくということは間違いないように思います。とすれば,それをどう取り込んでいくのか,法の外で考えるのか,その点はいろいろ工夫ができそうな気がします。また,コストにおいてもそうで,自然人が複数であったり,自然人と法人の組み合わせというのを考えたときに,法人と比較して,どちらがどうコストが高いかどうかというのは,それはやってみないと分からないことではないかと思います。
  あとは,現在の公益信託の受託者がほとんど信託会社であるとか,あるいは税法上のことや,優遇措置のことが書かれていて,それなら法人でなければ,自然人では難しいのではないかという御指摘もありますが,繰り返しになりますが,今回この法改正で公益信託をより広く利用してもらえるものにしようということをやっているわけですから,自然人に広げないと今と変わらないものとなる可能性もあります。それで,法人と言っていても,結局,信託会社,信託銀行に限られてしまう可能性はあります。特に,ここで乙案を否定するという理由で指摘されているものは,公益法人にもそれなりに妥当するものもあるわけで,そういう観点から言うと,現状と変わらない可能性があります。やはりこの法制審で目指していること,軽量軽装備の公益信託をもっと利用してもらおうという精神に反してしまうのではないかと思います。
  ですから,少なくとも乙案も掲げてパブリックコメントには付していただいて,乙案もニュートラルにきちんと平等に書いていただいて,中間試案を作っていただきたいと思います。やってみないと分かりませんが,個人的に言うと,民事信託自体に,それなりに世の中的にも注目が集まってきているので,公益信託についてもそれなりにリアクションがある可能性があるので,そういう中でやはり公益信託の利用を広げるために,個人も受託者となったほうがいいんだという意見がパブリックコメントでそれなりに出てくる可能性は,私はあると思います。
  もう1点は,現行法と比較して考えたとき,認可基準の問題はありますが,現行法においても自然人は受託者になれるのであり,業法のことも気にしますけれども,少なくとも,例えば無償で一回的なものとか,反復継続ではなければ今でも受託者になれるわけですから,現行法上可能なことをここで遮断してしまうというのはおかしいし,もったいないと思います。将来の可能,広がりというものを遮断してしまうのはよろしくないと思います。
  最後に,こういう場合は公益信託を使えそうだという事例があったので申し上げますと,最近,遺言とかの場面で,子供さんがいらっしゃらないような場合は,寄附とかをしたいという方がそれなりにいらっしゃるようです。寄附はいろいろタイプはあるし,額にもよるし,奨学金をやりたいという方もいらっしゃるようなのですけれども,今はそれは多分,公益法人等に依頼していろいろやっているんでしょうけれども,正に公益信託であれば絶対使えると思います。規模によってはそれは受託者が自然人であれば,より簡便にできるのではないかと思います。
  テレビとかの情報ですけれども,相続の資産の規模は50兆円ぐらいあるけれども,そのうち寄付をしたいシニアは2割程度はいるようで,現在はそのうち現実に寄付されるのは数%程度にとどまるとの指摘もあるようです。そういうものに公益信託がなお使えるようになれば,社会にとっていろいろな意味でプラスになるので,[HK3]パブリックコメントでは乙案はきちんと残していただいて,補足説明もニュートラルに書いていただきたいと思います。
○中田部会長 それでは,まだ御発言のない小幡委員,そして新井委員,小野委員,そして平川委員の順にお願いします。
○小幡委員 今,林幹事の話にもあったのですが,第4のところ,16ページの3行目のところで税法との関係が書いてありますが,税法のことは後でついてくるものだろうと思われるので,なかなかどちらを先に,どういう議論をするかは非常に難しいところです。今の書き方ですと,現状は信託会社に限定されていて,それ以外に税制優遇を取るのはなかなか難しいことを前提にしているようですが,いずれにしても,新しい公益信託になったときに,税法上は働き掛けをして,優遇をとれるようにということをしなければいけないと思うので,そこはその制度が固まった後,どのようにやっていくかという話になると思います。現実的にはよく分かるのですが,しかし,そうはいっても,林幹事がおっしゃったように,公益法人とは違うものができているわけなので,自然人は全く駄目というようにするのも,同じようなものが並ぶことになり余りよくないという感じはしますので,余りここで,多分税法が駄目なので法人しかできないと書いてしまうのは,これから先,もっと頑張って税の優遇をとるように,これからやらなければいけないという面がありますので,多少引き過ぎかなという感じがします。
○新井委員 受託者の資格ですけれども,私は甲案を支持いたします。
  ただ,甲案を支持するといっても,その法人を現行のように信託銀行と信託会社に限定するということではなくて,やはり受託者は拡大していくべきであり,どういう法人が職務遂行に耐えられるのかということを考えてみる必要があると思います。例えば弁護士法人なり,司法書士法人なり,税理士法人というものが受託者になった場合,受託は恐らく1回だけではないでしょうから,反復継続することになりますので,当然,信託業法の規制が掛かってくるわけですね。ですから,ここで甲案を支持するといって,信託銀行と信託会社よりも拡大するときに,どういう法人が新たに登場するのか,そのときの法的対応をどうするのかということをきちんと考えておくべきだと思います。
  それから,乙案の自然人については,弁護士の委員・幹事の方々が「自然人でも構わない」と言われると,これは弁護士を受託者にすることを推奨している主張ではないかと考えてしまうのですが,前にも議論がありました能力担保はどうするのでしょうか。司法書士,税理士はどうなのかという問題も出てくると思います。
  先ほど民事信託の話がありましたが,民事信託では委託者,受託者,受益者の三当事者が全て親族ですね。そういう公益信託が行われた場合に,一体適正な処理ということがそもそも可能なのかということで,ここでも能力担保ということがあると思います。ですから,私は甲案を支持しますけれども,パブリックコメントとしては甲案,乙案,両方提示していただいて結構です。
  ただし,それぞれどちらが採用されても,現行の受託者を拡大する場合の具体的な対応については,あらかじめきちんと準備しておいたほうがいいと思います。
  それと,信託法7条の欠格事由が挙がっていますけれども,これは今,内閣府の方で成年後見制度の利用促進が検討されており,成年被後見人等の欠格事由の見直しが議論されていることとの関係で,パブリックコメントを出すときには御留意いただきたいと思います。
○小野委員 第4の乙案についてお話ししたいと思います。今ほどの皆さんの意見と重複しないように,なるべく簡潔に意見を言いたいと思います。
  まず,法人がふさわしいケース,自然人がふさわしいケース,自然人の中でもより専門,一般の人というよりも,弁護士とかの専門家がふさわしいケース,いろいろあるかと思います。従来の議論では,正確に把握しているわけではありませんけれども,事業型の場合に,美術館と学生会館がよく取り上げられてきたような気がするんですけれども,特に美術館といったとき,我々は何か根津美術館とかブリヂストン美術館みたいなものをつい想像してしまいます。しかし,仮に弁護士又は美術の専門家が自然人として受託者になるような場合というのは,別に信託財産として建物としての美術館を運営するとかいうことではなくて,1枚又は複数枚の著名な絵画あるいは鑑賞する価値のある絵画を信託財産として受託し,それをどこかの美術館に貸すとかいう形で多分行われることになると思います。ですから,是非事業型の受託者として自然人がふさわしいような事例も書いていただかないと,先ほどの樋口委員のお話のように,一般の方が見たときに,美術館は法人だろうみたいに思われてしまうと,ちょっと議論の前提が違ってしまうと思います。それぞれ適性があるという観点からは,当然乙案であるべきだと思います。
  それから,今の新井委員のお話とも関連するんですけれども,学識経験及び信用等の要件については,今回は要求しないという話なんですが,やはり法人にしろ,特に自然人の場合は,定性的要件が必要だと思うんですね。誰でもいいから,犯罪者じゃなければどうぞというわけにはいかないと思います。学識経験,信用という言葉は,他の法律等で使われている用語ですから,この用語を使いつつ定性要件を,ある意味では申請する側が立証していくと,疎明していくということで,行政庁に納得してもらうということもあっていいと思います。このように,自然人で誰でもいいというのではとんでもないことになるじゃないかという議論もありますし,先ほどの深山委員の話にもありましたとおり,乙案を否定する意見があった後に反論する機会が与えられていないので,それぞれについてこういう議論もあるということで,今まで他の委員幹事の方々がおっしゃったようなことも,是非含めていただきたいと思います。
  特に,契約を守るということを損害賠償の支払資力の観点からのみ議論していまして,それで法人はふさわしいんだというのもかなり論理の飛躍があります。契約を守る,善管注意義務を果たす,受託者としての義務を果たすという観点からは,損害賠償の支払資力の問題は一部にすぎず,本当に契約を守るかどうかということが重要ですし,その他いろいろ反論は可能と思います。
  受託者としてやはり弁護士はふさわしいと思うし,それは他の専門家でもいいと思う状況もあります。今後,公益信託は日本全国津々浦々に広がるものだと思うんですね。その場合に法人が津々浦々に存在するかというと,東京とか大都市を前提とすれば,いろいろあるじゃないかということかもしれませんけれども,それぞれの地域のそれぞれの公益信託にふさわしい受託者というものが,場合によっては法人であるかもしれませんけれども,自然人として適切な専門家がいる可能性は,自然人ですから,日本各地に広がっていますし,そういう方が公益信託の受託者としてふさわしいと思います。そういうロケーションとか,人の分布とか,今後の利用可能性という観点も,是非この乙案のもつプラスの意味という観点で加えていただければと思います。
○平川委員 小野委員が言ってくださいましたので結構です。
○中田部会長 乙案についての補足説明は,冒頭にもございましたように,これは必ずしも中間試案の補足説明ではなくて,今日議論を詰めていただくということで,従来,乙案のメリットが強調されていたわけですけれども,検討すべき点を更に今回出していただいたということかと思います。それについて,本日様々な御意見を頂いたということを踏まえて,中間試案に向けて練り上げていくということになろうかと存じます。
  ほかに,第4,第5について。
  山田委員,その次に吉谷委員,お願いします。
○山田委員 第4と第5について,共通することを一言お話ししたいと思います。
  中間試案になったときの補足説明を御検討いただきたいという趣旨のことです。受託者の権限,義務及び責任というのが第4にあります。それから,信託管理人の権限,義務,責任というのが第5の3にございます。そこで受益者の定めのある信託の受託者又は信託管理人と「同一とした上で」と説明されているのですが,信託法について十分な知識,理解を持っていらっしゃる方はここで意味しているところが分かりますが,そうでない人たちも名宛人になり得ると思いますので,全部補足説明で書き切るというのは難しいのかもしれませんが,もう少し手掛かりというか,条数を分けるとか,何かそういう工夫をしていただけるといいように思います。
  信託管理人の権限については,別表があって詳細な検討が加わっておりますが,それ以外のところは知っているということを前提に進めていただかないようにお願いをしたいと思います。
○吉谷委員 第5の信託管理人について,3点申し上げます。
  1点目は,もう深山委員がおっしゃっていただいたことで,信託管理人の1年間の不在によることを公益信託の終了の強行事由としないという意見があることについてはゴシックのところで何らかの形で出していただければということを,それに賛成する側の意見として申し上げたいと思います。
  2点目は,第5の2(1)の(注)について,不要ではないかという御意見がございました。ここについては,このような表現である必要はなく,むしろ受託者の能力要件のところと同じような記載であるほうがよろしいと思いますが,信託管理人について能力要件が必要であると考えておりますので,そのような趣旨で残していただけたらと思います。
  最後,3点目です。別表1のところにつきまして,×と△がございまして,×ばかりでいいのではないかという御意見もありました,ここは△を残したほうがいいと考えております。△の付いている事項については別段の定めを信託行為に許す余地があると思いますので,そのような内容でパブリックコメントで意見を出していただければよろしいのではないかと思います。×ばかりになってしまいますと,何が違うのかというところが分かりませんので,△を出すことによって意見が出てくるというようにも考えております。
○中田部会長 ただいまの2点目ですけれども,第5の2の学識要件について,受託者と同じだけれども,信託管理人は必要だということでしょうか。私の誤解かもしれませんが,もう少し補足をお願いできますでしょうか。
○吉谷委員 第4の1のところだと,公益信託事務の適正な処理をなし得る能力を有することというのがありまして,信託管理人の方には,それに対応する項目がありませんで,公益信託事務の適正な監督をなし得る能力を有することでも何でもいいと思うんですけれども,何かそういうような能力要件についての記載が必要ではないかというふうに考えました。
○中田部会長 分かりました。
○神田委員 てにをは的なことで恐縮ですけれども,1点だけ。
  第4の1(3)ですけれども,業務を執行するという言葉が社員にだけ掛かるのか,理事,取締役にも掛かるのか。「若しくは」というので明らかだという趣旨かとは思いますけれども,重要な点なので明確にしていただければと思います。
○中田部会長 それでは,その点,検討していただきます。
  ほかに。
○小野委員 別表1に関連して,大分以前にも議論したところなんですけれども,限定責任信託におけるという表現がありまして,私の理解としては,限定責任型の公益信託というものも認められるべきであり,その場合には,限定責任信託に関連する条文の中で受益者という言葉が出てくる条文もあるように見受けられなくもないので,それに対応する改正も必要かなと思います。先ほどの樋口委員の発言でもありましたけれども,善管注意義務とは少し側面は違いますけれども,個人が全資力を損害賠償義務に向けて,賠償義務の担保として受託者となるという必要も,逆に有限責任の法人と比べると個人は随分不利な状況に置かれてしまいますから,限定責任型の公益信託というものも認めていただきたく,この表でそういうことが書かれていることでほっとしたんですけれども,今後とも維持していただければと思います。
○中田部会長 第4,第5については大体よろしいでしょうか。
  ここまでのところで,もしございましたら。
○中辻幹事 樋口委員からは,国民一般に分かりやすい中間試案とするようにというご指示を頂いたものと受け止めましたけれども,その中に御質問も含まれておりましたので,それだけお答えしようと思います。
  まず,善管注意義務の軽減は認めないが責任の軽減を認めるということはありません。義務と責任はセットとして捉えております。また,この部会資料では公益信託の受託者の忠実義務について明示的に触れておりませんが,樋口委員と同様に,事務局としても,公益信託の受託者は信託目的の達成のための忠実義務を負うという理解をしています。その上で,従前は忠実義務及び善管注意義務のいずれも任意規定とする旨の提案をしていたのですが,第39回会議で沖野幹事から新信託法を制定するときに受託者の忠実義務と善管注意義務を任意規定としたのは別の理由に基づくという指摘があり,神作幹事からは会社法の取締役等の善管注意義務は強行法規だと解されていることについての紹介もされ,それらを踏まえて今回の部会資料では,公益信託の受託者の善管注意義務を強行規定とする提案に改め,受託者の忠実義務は任意規定とすることを維持しているものでございます。
  あと,道垣内委員から事前にこの論点についてメールで質問を頂いています。これも該当部分を読み上げますと,「第4の2につき,不認可となったときには,このルールは適用されるのでしょうか。不認可だと全く本法と関係がなく,制約をかける理由がないように思います。第5の1についても同様。3についても。」というものです。これにお答えすると,事務局としては,申請された公益信託が不認可の処分を受けた場合には,第4の2や第5の1及び3のルールは適用されないという整理をしているということでございます。
○中田部会長 第4,第5について,よろしいでしょうか。
  それでは,まだ第6,7は残っておりますけれども,時間が大分たっておりますので,ここで15分間休憩を挟みたいと思います。4時10分まで休憩したいと思います。

          (休     憩)

○中田部会長 それでは,時間が来ましたので再開したいと思います。
  第6と第7について,併せて御審議お願いいたします。御自由に御発言ください。
○吉谷委員 第6について発言させていただきます。
  第6の1の提案でございますが,提案としては,前回の甲案の方がよろしいのではないか,利害関係人の方がよろしいのではないか。あるいは,甲案か乙案かということが,あえてパブコメするような内容でないということであれば,委託者の権限は任意規定で,信託行為の定めによって受託者の定めのある信託の委託者の権限と同一まですることができるというような趣旨の内容にしていただいたほうが良いと思います。
  その理由は,一般の信託というのは,委託者がいて,信託の仕組みの変更について判断する,判断に関わるというのが確かに原則なんですけれども,公益信託の場合は,内部ガバナンスの担い手として,委託者が存在しないでも成り立つような仕組みでないといけないと考えています。ですので,パブコメのときには,委託者がいなくても機能します,でも,委託者を加えることもできますという形の提案にしていただいたほうが良いと考えているので,このような提案をさせていただいているというところです。
  そのところは,個別には,後半の第12以降のとこら辺で出てまいりますので,またそこで述べさせていただきます。
○中田部会長 ほかに,第6,第7についていかがでしょうか。
○小幡委員 第7はこのとおりでよろしいかと思います。
  都道府県か国かというその区分は,結局公益信託事務が行われる範囲,公益法人の場合は事務所とかがあるわけですが,公益信託の場合,その公益信託事務がどこまで及ぶかということで区分しているので,それが全国的に及ぶ可能性があれば国にしておいたらよいというような,比較的柔軟な扱いができれば,特に問題ないのではないかと思います。
○中田部会長 ほかにございませんでしょうか。
○平川委員 公益信託の委託者の第6の1についてですけれども,私は,部会資料39の第3の甲案のとおり,公益信託の委託者は,信託の利害関係人が有する権限のみを行使できるものとするという見解をとっております。委託者が,受益者の定めのある信託の委託者と同一の権限を保有し,公益信託に介入することができるということは,基本的には信託財産が公益のために出捐されたものであり,それに伴って各種の税法上の優遇が得られることからすると,考え難いと思います。
  委託者の権限には,信託に関する意思決定に係る権利と,受託者の監督に係る権利の双方が含まれるという説に従うとすれば,少なくとも,前者についてはできるだけ公益法人における寄付者同様に少なくする一方で,後者については運営委員会が存在しない場合を前提とすると,受託者が不適切な行為をする場合の対応策として委託者に一定の権限を与えることはやむを得ないと考えます。たたき台の別表2では,大部分△とされておりますが,○とされている信託行為で制限可能という点も含め,今後慎重に検討すべきであると考えます。
  第6の2につきまして,ゴシック本文の提案に賛成いたします。(注)の信託行為に別段の定めがあるときに相続人への承継を認めるとする考えは採るべきでないと考えます。
  第7「行政庁」につきまして,ゴシック本文の提案に賛成します。公益法人制度と同様,民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて,特定の行政庁が行うことが好ましく,行政庁の区分については,公益信託の出捐者の申請等の便宜並びに,行政庁において公益信託の認定の扱いと平仄をとって扱える可能性が高いことから,国の行政庁と都道府県知事に分ける法務省案に賛成いたします。
○中田部会長 第6の1については,お二方から,この案と別の案を何らかの形で示すべきではないかというご意見を頂戴いたしました。また,これは事務当局に検討していただきます。
  第6の2の(注)なんですけれども,これは,信託行為に別段の定めがあるときの除外というのはなくていいのではないかということを平川委員から御提案いただきました。これについて,検討すべき事項として掲げているわけですが,この(注)をやはりパブリックコメントにおいては残したほうがよいという御意見はございますでしょうか。
○吉谷委員 この(注)は残してよろしいかと思います。相続人を念頭に置いている委託者もいらっしゃるんではないかと思うところです。
  ついでにちょっと申し上げておきますと,別表2の△は要らない,すべて○かなと思っています。
○深山委員 第6の2の(注)については,今の吉谷委員と同じような意味で,被相続人にも自分の意思を継いでといいますか,自分が公益信託を設定しようとしたその意思を相続人に委託者として受け継いでもらいたいという人もいてもおかしくはないので,そういう委託者の意思も尊重すべきだという観点から,別の定めについて,私自身あっていいと思いますし,少なくともそれはパブコメに付して意見を求めたらよろしいと思います。
○中田部会長 ありがとうございました。
  それでは,第6と第7については,第6の1について,御提案があった部分をどういうふうにするかということを検討していただき,その他については今回の案で,少なくともゴシックの部分については,大体これでいいのではないかというように伺いました。
  よろしければ,次に進みたいと思います。
  部会資料43の第8から第11までについて,事務当局から説明してもらいます。
○舘野関係官 それでは御説明いたします。
  まず,「第8 公益信託の成立の認可」について御説明いたします。
  本文1は,「公益信託の受託者になろうとする者は,当該信託について行政庁による公益信託の成立の認可を受けることができるものとする。」との提案をするものです。本文2は,「公益信託の成立の認可の申請は,必要事項を記載した申請書等を行政庁に提出してしなければならないものとする。」との提案をするものです。
  本文1の提案は,第39回会議において,新たな公益信託制度の下では,公益法人制度を参考に,民間の有識者により構成される委員会の意見に基づいて行政庁が公益信託の成立の認可を行うものとすることについて異論がなく,その申請を行う者は,受託者になろうとする者が想定されることに基づき提案をするものです。
  また,公益信託の成立の認可を申請する際には,必要事項を記載した申請書等が必要になると考えられることから,本文2の提案をしております。その種類,内容等については,公益法人認定法第7条に掲げられている書類等々を参考にして,引き続き検討を要しますが,具体的には補足説明2のアからクまでのような書類が考えられます。
  次に,「第9 公益信託の成立の認可基準」について御説明いたします。
  まず,第9の「1 公益信託の目的に関する基準」の本文は,公益信託は,公益信託事務を行うことを目的とするものでなければならず,収益事業を目的としてはならないも