遺言記載の遺贈金額に相続財産が伴わない場合

遺言・相続実務問題研究会編『実務家も迷う 遺言相続の難事件 事例式 解決への戦略的道しるべ』2021、新日本法規出版、Case23からです。

・平成18年4月15日頃 相続人がいないCが、自筆証書遺言を作成。

・仮の日付

・2018(平成30)年1月1日 遺言者C死亡。

・2018(平成30)年1月8日 Cの親類縁者が、Cの遺骨をD寺に納骨。

・2018(平成30)年2月1日 Aが遺言執行者選任申立て(民法1010条)。

・2018(平成30)年4月1日 弁護士が遺言執行者選任。

・2018(平成30)年7月1日 遺言執行者の、Cの相続財産調査結果。

・2018(平成30)年8月1日 D寺と異なる寺から、遺言執行者に対し、遺贈金2,000万円の請求。

手続選択の視点
1、遺言者Cには相続人がいないが、遺言執行者として相続人不存在にかかる相続財産管理人選任の申立て(民法952①、現行民法952)の必要性および申立ての可否。
2、遺産中に現金は300万円程度しかなく、遺贈するとされている3,100万円に満たないが、本Case遺言に基づき遺言執行者は預貯金の解約ないし不動産の売却を行うことができるか。
3、遺言の内容が『Aに現金一千万、Bに現金百万、お寺さんに二千万』だった場合はどうか。
4、遺言の内容が『Aに金銭一千万、Bに金銭百万、お寺さんに金銭二千万』だった場合はどうか。
5、遺言執行者が遺贈の履行を行わない場合、D寺と異なる寺院は遺贈金請求訴訟を提起することになると思われるが、ア、誰を被告として訴えを提起すべきか、イ、被告とされた者は何をすべきか、ウ、遺贈金支払を命ずる判決が確定した時は、どういう手順で支払うか。
6、『お寺さん』をどのように特定すればよいか。
7、Aは、遺言執行者選任の申立て以外に、本Case遺言の内容を実現する方法はあるか。

1、遺言者Cには相続人がいないが、遺言執行者として相続人不存在にかかる相続財産管理人選任の申立て(民法952条、現行民法952条)の要否
・全てを相続させる、のような遺言でない場合、相続財産全部とは、どのように判断するのか?

手続選択の視点
2、本Case遺言に基づき遺言執行者は預貯金の解約ないし不動産の売却の可否

・遺言執行者としての権限の有無
著者の遺言の解釈
・現金がなければその余の遺産を換価して取得させる(最判昭58・3・18判時1075・115。)。
・権限有り(民法1012条。)。
・預貯金の解約方法・・・相続財産管理人の選任申立てを行った上で、相続財産管理人の同意を求める。

手続選択の視点
2、本Case遺言に基づき遺言執行者は預貯金の解約ないし不動産の売却の可否

参考
遠藤俊英ほか『金融機関の法務対策5000講 1巻』金融財政事情研究会、2018、P1506~。
問 遺言執行者(相続人でない)と称する者から、相続預金の有無や取引明細について紹介を受けた場合、どのように対応するか。
結論 遺言執行の職務遂行上の必要性が明確に示されない限り、開示を控えるのが無難な対応といえる。最判平成21年1月22日(民集63巻1号228項)。

『登記研究』538号、カウンター相談27
相続財産管理人と遺言執行者が併存する場合の遺贈による所有権移転登記の登記手続きについて

問 特定の不動産を甲に遺贈する旨の遺言において遺言執行者の指定がなされたが、遺言者に相続人がいなかったことから、さらに相続財産管理人が選任された場合、遺言に係る受遺者への所有権移転の登記の申請人及びその代理人は誰になるのでしょうか。
答 登記権利者は受遺者、登記義務者は現在の登記名義人(遺贈者または相続財産法人)であり、義務者の代理人は遺言執行者となるものと考えます。 

・不動産の売却手続の手順
1、相続財産管理人選任申立て。
2、相続財産管理人が、相続財産法人への名義変更登記申請。
3、相続財産管理人が換価し、相続債務を弁済後に残余の財産を遺言執行者に引き渡す。
4、遺言執行者が遺贈の履行。
5、遺贈の履行後に残余財産があれば、相続財産管理人が特別縁故者、国庫帰属の手続き。

手続選択の視点
3、遺言の内容が『Aに現金一千万、Bに現金百万、お寺さんに二千万』だった場合はどうか。
2(1)と同様の結論(現金がなければその余の遺産を換価して取得させる。)。
理由・・・現金に限定がない(最終的に現金を渡すことが出来れば良い。)、現金が相続財産の(換価)価格の範囲内だから。

手続選択の視点
4、遺言の内容が『Aに金銭一千万、Bに金銭百万、お寺さんに金銭二千万』だった場合はどうか・・・3、と同じ。

手続選択の視点
5、遺言執行者が遺贈の履行を行わない場合、D寺と異なる寺院は遺贈金請求訴訟を提起することになると思われるが、ア、誰を被告として訴えを提起すべきか、イ、被告とされた者は何をすべきか、ウ、遺贈金支払を命ずる判決が確定した時は、どういう手順で支払うか

ア、誰を被告として訴えを提起すべきか・・・遺贈の履行義務者となる遺言執行者。
イ、被告とされた者は何をすべきか
1、「お寺さん」の原告適格を満たすのか、確定させるように活動。
2、相続財産管理人の選任申立てと、相続財産管理人への訴訟告知(民事訴訟法53条。遺言執行者と相続財産管理人の見解を一致させる目的。)。
3、訴訟終結後、相続財産管理人→遺言執行者→受遺者の手順で支払い。

手続選択の視点
6、『お寺さん』をどのように特定すればよいか
裁判所の認定
・原告は『お寺さん』である。
事実認定
・被相続人が祖父母の代から原告において葬儀、ご先祖の月忌詣り(がっきまいり)、年忌法要、永代経志(えいだいきょうし)の寄進などの執り行い。
・母と原告の婦人会に所属して各種行事に参加し、原告が管理者となっている墓地に母の墓碑を建立して納骨していること。
証拠
・婦人会名簿、過去帳、永代経志木札の写真、月忌詣り控えなど。
手続選択の視点
7 Aは、遺言執行者選任の申立て以外に、本Case遺言の内容を実現する方法はあるか
・遺言執行者選任の申立ては行わず、相続財産管理人の選任を申し立てる。


渋谷陽一郎「日弁連ガイドラインにみる司法書士業務としての民事信託支援の難しさ(1)」

市民と法[1]の記事、渋谷陽一郎「日弁連ガイドラインにみる司法書士業務としての民事信託支援の難しさ(1)」からです。

1、の東京青年司法書士協議会の民事信託研究会については、沖縄県では働きかけても参加する方がいない、率直に良いなと思います。ゲストに関しては記載されている方々が、同業の司法書士等に対してどのようなビジネスを行っているのか、考えた方が良いように感じましたが、能力や経験があると勉強会の主催者が判断出来れば良い、という考えかもしれません。記事の筆者は、民事信託に関する記事で、何度も公益、市民のための、という用語を使用します。

司法書士の執務規律としては、ガイドラインに対して、どのように向き合うべきだろうか。司法書士の場合、子ども世代を依頼者として認識する人もいるようであるし、さらには、委託者と受託者の双方から受任を行っていると思う人もあろう。親族全体を依頼者であると感じている人もいるそうだ。

 日本司法書士会連合会の指針は、依頼者は委託者のみ、依頼者は委託者及び受託者の双方、という2つです[2]。依頼者は委託者及び受託者の双方、という考え方について、司法書士法関連法令に基づく根拠は記載されていません[3]

 1、利益相反による不当性の回避措置、2法律整序としての執務方法に注意、3、利用者に対して、そのリスクを説明し、明示的に委託者と受託者の承諾を得ることが出来れば、双方受任は適当(適法)と認められるのか、分かりませんでした。

たとえば、終了に関する別段の定めなどを信託条項化する場合、委託者と受託者との間の利益相反を生じうるリスクがあるが、そのような局面では、委託者と受託者の双方が、それぞれリスクを認識しておく必要があることから、それぞれに別の司法書士が助言する、弁護士のオピニオンをとるなどの手当てが必要となる場合があり、一人の司法書士が、双方を(特に委託者のリスク認識が曖昧なまま)、仲裁人的な立場で丸め込むようなことに加担してはならない(仮に仲裁であれば簡裁訴訟代理等関係業務の範疇ともなりうる)。司法書士法3条の法律整序事務であればこそ、適正な許容要件を踏まえた双方受任の理論構成を試行しうる(アプリオリに許容されるわけではない)。

 なお、民事信託支援業務に携わる司法書士の人々は、法律整序事務とは何か、その方法はいかなるものなのかを熟知しておく必要がある。

 別の司法書士が助言する、弁護士のオピニオンをとるなどの手当てが必要となる場合があり・・・同意です。費用面で上がりますが後の過誤や紛争を防ぐ可能性を上げることで、依頼者には説明することになると思います。定型がない現在、図を付けるとして、助言やセカンドオピニオンを得やすい提示の方法は模索が必要だと思います。信託設定書類のチェックは、事案によっては案の作成よりも時間や労力を使うことがあります。

 仲裁人的な立場で丸め込む・・・仲裁人的な立場と、日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部が考えている調整役の違いが分かりませんでした。また仲裁法上の仲裁人は、依頼者を丸め込むこともあるのか、分かりませんでした。

 民事信託支援業務に携わる司法書士の人々は、法律整序事務とは何か、その方法はいかなるものなのか・・・著者が本記事P115で記載している裁判事務におけるメニュー論、に同意です。

受託者支援は、司法書士にとって、司法書士法施行規則(以下、「規則」という)31条1項業務となり得るので、情報提供およびリスク説明義務の履行が重要となる(同条1号の文言上、委託者支援は、同様の要件には該当しない)。

 文脈から、信託期中ではなく、信託設定時の場面であると想定されますが、司法書士法施行規則31条1項を根拠に、受託者支援業務を委託者との委任契約と同時進行で行い得るのか、分かりませんでした。私なら、信託設定時と信託期中は分けて考えます。

 記事で触れている、利益相反のリスクを最小化、という表現についても、分かりませんでした。私なら、信託設定時の受託者支援業務について、司法書士法施行規則31条1項を根拠にするのであれば、利益相反関係にあることを前提にします。

この点、家族信託契約書の自動作成ソフトやひな形提供サービスを利用することにリーガルリスクはないのだろうか、慎重に考えてみたい。

たたき台として利用する分には、良いのではないかと思います。最終的に責任を問われるのは司法書士個人です。

司法書士にとっての、遺留分侵害の有無に対する着眼点は、紛争性(法定紛議性)の蓋然性の有無である。遺留分が侵害される推定相続人(遺留分権者)の理解と納得があるか否かを確認しておきたい。

 たとえば、司法書士による遺留分対抗(潜脱)のしくみの教示や、司法書士が組成に関与した家族信託のしくみが遺留分権利者の意向に反し、結果として紛争を生じれば、司法書士の関与形態に応じて、潜在的に紛争性ある事件関与であると評価され、評価規範上、職務範囲の逸脱であると判断されるリスクも生じうる危険な領域である。

 遺留分侵害の有無に対する着眼点は、紛争性(法定紛議性)の蓋然性の有無・・・信託設定時に遺留分を侵害していると職務範囲の逸脱と判断されるリスクがあるのか、分かりませんでした。

 記事のように考えると、遺言書の作成支援で、全ての財産を相続させる、という内容だった場合、司法書士法3条の業務範囲で行っている限りでも、違法とされるリスクがある、とされる可能性が出てくるのではないかと考えられます。

 例として挙げられている、司法書士による遺留分対抗(潜脱)のしくみの教示と、遺留分権利者の意向に反し結果として紛争を生じた場合では、分けて考える必要があると思います。

 前者については、判例や法改正がない限り、法令の独自解釈であり、紛争性があると判断されるリスクがあると考えても良いと思います。

 後者については、記事記載のとおり関与形態が問われ、司法書士法3条の業務範囲である限り、紛争性がある判断された例は現在、ないと思われます。

 遺留分が侵害される推定相続人(遺留分権者)の理解と納得があるか否かを確認・・・本記事に記載の推定相続人(遺留分権者)は、信託設定時の人であると思われます。理解と納得がどの程度のものなのか分かりませんでした。私なら、説明をして、説明を受けました、という書類に署名(記名押印)を求めます。


[1] №142、2023年8月、民亊法研究会、P110~。

[2] 日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部『任意後見と民事信託を中心とした財産管理業務対応の手引』2023年、日本加除出版、P20。

[3] 調整役について日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説 弁護士職務基本規程【第三版】』日本弁護士会連合会、2017、P81 。

NPO法人の理事の変更登記の申請

平成24年2月3日付け法務省民商298号商事課長依命通知

3 社員総会の決議の省略

特定非営利活動法人の理事又は社員が社員総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき社員の全員が書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして内閣府令で定めるものをいう。)により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の社員総会の決議があったものとみなすとされ(法14条の9第1項)、また、社員総会の目的である事項の全てについての提案を可決する旨の社員総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該社員総会が終結したものとみなすとされた(同条2項)。

 なお、所轄庁から定款の変更の認証を受けようとする場合、所轄庁に定款の変更をしたことを届け出る場合等においては、社員当会の議事録の謄本を提出し、又は添えなければならないとされている(法第25条第4項、第6項等参照)から、これらの場合には、社員総会の議事録の作成が前提とされている。

したがって、法14条の9第1項の規定により特定非営利活動法人の登記すべき事項について社員総会の決議があったものとみなされる場合であっても、当該登記すべき事項に係る登記の申請書には、上記場合に該当することを証する書面(条例の規定により「社員総会の議事録」などと題する書面となることが考えられる。)を添付しなければならないこととなる。

4 理事の代表権

  • 理事の代表権の範囲又は制限に関する定めと登記

 旧法においては、特定非営利活動法人の理事は、特定非営利活動法人の全ての業務について特定非営利活動法人を代表するとされ、定款をもってその代表権を第三者に対抗することができないとされていた(旧法第16条)。

このため、旧法下においては、「代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め」が登記事項とはされておらず(組登令第2条第2項第6号、施行令による改正前の組合など登記令別表特定非営利活動法人の項の登記事項の欄)、法人の内部において代表権を制限された理事が存在する場合であっても、当該理事を含めた理事全員を「代表権を有する者」(組登令第2条第2項第4号)として「理事」の資格で登記しなければならないとされていた(平成10年8月31日付け法務省民四第1605号民事局長通達参照)。

 改正法により、旧法第16条第2項の規定が削られるとともに、施行令附則第2条により組合等登記令の一部が改正され、特定非営利活動法人の登記事項として、「代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め」が追加された(組登令第2条第2項第6号、別表特定非営利活動法人の項の登記事項の欄)。

 したがって、改正法の施行後は、定款をもって、その代表権の一部が制限された特定非営利活動法人の理事が存在する場合には、当該理事を登記するほか、当該理事に係る代表権の範囲又は制限に関する定めも登記しなければならない。

 また、定款をもって、その代表権の全部が制限された特定非営利活動法人の理事が存在する場合には、当該理事は、「代表権を有する者」に該当しないため、登記することを要しないこととなる(組登令第2条第2項第4号)。

例えば、定款をもって、理事の互選等により特定の理事を理事長に選定し、当該理事長のみが法人を代表することとしている場合には、当該特定の理事のみ「理事」の資格で登記し、その他の理事は、登記することを要しないこととなる(社会福祉法(昭和26年法律第45号)における社会福祉法人の理事に関する取扱い(昭和39年7月7日付け民事甲第2436号民事局長回答参照)と同様の取扱いとなる)。

社員総会の決議の省略と、書面による表決権行使(特定非営利活動促進法14条の7)の違い

社員総会の決議の省略(理事変更の登記の場合)

  • 社員か理事が、理事(長)変更の議案の提案
  • 社員の全員が同意の意思表示
  • 当該社員総会が終結したものとみなされる
  • 登記の申請書には、社員総会の議事録を作成して添付

・定款に、理事の互選等により特定の理事を理事長に選定する旨の記載があり、理事長のみが法人を代表することとしている場合・・・理事の互選書を作成・登記の申請書に添付。

・書面による表決権行使

  • 社員総会の招集通知に記載されている理事(長)変更の議案に、書面で表決権行使。
  • 登記の申請書には、社員総会議事録を添付

・定款に、理事の互選等により特定の理事を理事長に選定する旨の記載があり、理事長のみが法人を代表することとしている場合・・・理事の互選書を作成・登記の申請書に添付。

・コロナ禍で、社員全員に書面で表決権行使を求めた場合でも、社員総会の開催が必要。例えば法人の事務局で、表決権行使書面の取りまとめを行った場合、取りまとめを行った日を社員総会の開催日として、審議経過を記載。

沖縄県 NPO法人運営で活用できる様式 更新日:2016年8月12日

https://www.pref.okinawa.jp/site/kodomo/shohikurashi/anzenkatsudo/npo/h260415.html

法務省 商業・法人登記申請手続き/その他の会社・法人(特例有限会社・NPO法人・その他) 更新日:2018年10月1日

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/houjin4.html

村松秀樹 (著, 編集), 富澤賢一郎 (著), 鈴木秀昭 (著), 三木原聡 『概説信託法』2008年版と2023年版比較、第四章から第10章まで。

村松秀樹 (著, 編集), 富澤賢一郎 (著), 鈴木秀昭 (著), 三木原聡 『概説信託法』、2023、金融財政事情研究会が出版されました。

旧版にあたる、村松秀樹,富澤賢一郎,鈴木秀昭,三木原聡著『概説信託法』2008年版との比較です。

誤りなどありましたら指摘願います。

第4章 受託者の変更関係

P189 1 受託者の任務の終了事由

注2【後見開始又は保佐開始の審判】の追加。

→成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律施行に伴う変更。

P203 2 相続人・成年後見人・補佐人又は破産管財人の義務

注13【成年後見制度適正化法による改正の影響】追加。

第5章 受益者・受益権等関係

P220 受益者指定権(信託法88条1項)について、記載の追加。

P233 3 信託と遺留分侵害請求

遺留分減殺請求から遺留分侵害請求に改められたことの記載を追加。

P234 (1)遺留分身体の対象の項、追加。

・民法1046条の贈与と実質的に同視することが出来る場合の考え方・例について記載。

(2)遺留分侵害額請求の相手方の項、追加。

侵害行為を受益権の付与などとみる場合・・・受益者など。

侵害行為を財産の移転とみる場合・・・受託者。

(3)財産の評価の項、追加。

受益権の価額を評価。

(4)侵害額請求の相手方が複数存在する場合における請求の順序

受益権・残余財産の付与の前後。

P244~ 1 受益権の譲渡 注4【旧信託法との関係】

契約上の地位一般については、譲渡当事者間の譲渡の合意に加えて、譲渡しようとする契約上の地位に係る契約の相手方の承諾が必要(民法539条の2。)。

注9【債権法整備法による改正前の信託法との異同】

受益権については、譲渡制限の定めを明文で制限する改正が行われていない理由を追加。

 受益権については同様に流通性を確保する具体的なニーズは必ずしも指摘されていない。信託行為の定めによって受益者を固定する必要性は、民法における債権譲渡の場合と比較して高いともいえる。

注13【異議をとどめない承諾についての抗弁切断効】

債権譲渡の受益権の譲渡との差異が亡くなったことの記載。

P249 3 受益権の相続による承継(対抗要件を含む)の項、追加。

信託法94条、95条の説明。

P256~ 2 受益債権の消滅時効

債権法改正による、主観的起算点からの消滅時効5年と客観的起算点からの消滅時効からの消滅時効10年が通常の信託における受益債権に適用されることの記載追加。

注4【消滅時効の具体的な当てはめ】追加。

民法166条に従い、確定期限が付されている場合など、ケース別の記載。

注6【債権法改正後における定期金債権の取扱い】追加

 定期金債権について民法168条1項が適用。定期給付債権について、民法166条1項、信託法102条2項が適用。

P260 (3)除斥期間

除斥期間が消滅時効とは異なるものであること、起算点は受益債権を行使することができる時、であることの記載追加。

P264~ 3受益権取得請求権の行使手続

注12【価格決定前の支払制度】追加。

会社法117条5項、信託法104条9項の説明。

P271~ 3 受益権者集会

注15【書面の要求】

信託法110条2項ただし書の記載追加。

P281~ 【54】信託管理人・信託監督人・受益者代理人

注9【不適格事由の削除】の追加。

→成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律施行に伴う変更。

P290~ 【55】委託者の権利義務

注3【委託者に権限を留保した理由】

 信託法182条2項が適用される者は、信託の終了後の地位であるため、性質を異にすることの記載追加。

P422~ 2 定型約款に関する規律と受益者との関係、の追加。

 委託者兼受益者と受託者とが信託契約と締結するという取引が並行的に多数行われる取引が並行的に多数行われるケースにおいては、定型約款に関する規律が適用され得る旨の記載。

P423~ 3 定型約款の変更と信託の変更、の追加。

 特別法である信託法の規定が優先的に適用され、一般法である民法の規定は、特別法である信託法の規定に矛盾しない範囲で補充的に適用される。

注1【具体例】の追加。

貸付信託、合同運用金銭信託、委託者非指図型投資信託等が該当。

注2【類推適用の要否】

 受益者による受益の意思表示とこれによる受益の意思表示について、類推適用の余地がある。

注3【業法上の特例】の追加。

信託業法29条の2について記載。

P430 (3)公益信託の特例

 主務官庁は、信託の本旨に反しない限り、適用される法律を新法とする旨の信託の変更を命じて、新法信託とすることができる(信託法整備法6条1項)、の追加。

注9【主務官庁による変更命令】の追加。

主務官庁のみが新法信託への移行を決定することが出来る、旨の記載。

不動産登記申請の委任状に署名した場合、押印が不要になるケース

原則

押印必要

不動産登記令18条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416CO0000000379

(代理人の権限を証する情報を記載した書面への記名押印等)

第十八条 委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。復代理人によって申請する場合における代理人についても、同様とする。

2項~4項略

例外

署名があれば、押印不要

例外の例外として押印が必要なケースを、不動産登記規則47条3項で限定列挙。この中に該当しない場合、押印不要という構成。

・当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)

・共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記

・所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消

→所有権保存登記の抹消登記申請。

・信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記

→自己信託の権利の変更登記申請

・仮登記の抹消(法第百十条前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)

・合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記

・所有権の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの

・所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの

・所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの

→自己信託の変更登記申請で、登記識別情報を提供しない場合。

・法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人→新たに登記名義人になる場合はここに当てはまります。所有権移転登記申請、(根)抵当権設定登記申請などが該当します。

該当しない登記申請

・(根)抵当権抹消登記申請の登記権利者の委任状・

・所有権登記名義人の住所変更登記申請・氏名変更登記申請の委任状。

不動産登記規則47条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018

(申請書に記名押印を要しない場合)

第四十七条 令第十六条第一項の法務省令で定める場合は、次に掲げる場合とする。

一 委任による代理人が申請書に署名した場合

二 申請人又はその代表者若しくは代理人が署名した申請書について公証人又はこれに準ずる者の認証を受けた場合

三 申請人が次に掲げる者のいずれにも該当せず、かつ、当該申請人又はその代表者若しくは代理人が申請書に署名した場合(前号に掲げる場合を除く。)

イ 所有権の登記名義人(所有権に関する仮登記の登記名義人を含む。)であって、次に掲げる登記を申請するもの

(1) 当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記(担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記及び更正の登記を除く。)

(2) 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記

(3) 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消

(4) 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記

(5) 仮登記の抹消(法第百十条前段の規定により所有権に関する仮登記の登記名義人が単独で申請するものに限る。)

(6) 合筆の登記、合体による登記等又は建物の合併の登記

ロ 所有権の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく担保権(根抵当権及び根質権を除く。)の債務者に関する変更の登記又は更正の登記を申請するもの

ハ 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が登記義務者となる権利に関する登記を申請するもの

ニ 所有権以外の権利の登記名義人であって、法第二十二条ただし書の規定により登記識別情報を提供することなく当該登記名義人が信託法第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記を申請するもの

ホ 法第二十一条本文の規定により登記識別情報の通知を受けることとなる申請人

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