財産分離型自己信託(事業資産) 個人事業者の事業と家計は、法律上分けられていないので事業の失敗が家計を支える資産(たとえば住宅)に及んだり、逆に家計の問題が事業に及んだりするリスクがあり、金融機関は個人事業者に対する事業融資や住宅ローンの貸付けに対して慎重にならざるを得ない


(『民事信託の理論と実務』2016 日本加徐出版(株)P279~)

1、個人事業者の事業と家計は、法律上分けられていないので事業の失敗が家計を支える資産(たとえば住宅)に及んだり、逆に家計の問題が事業に及んだりするリスクがあり、金融機関は個人事業者に対する事業融資や住宅ローンの貸付けに対して慎重にならざるを得ない。

2、個人事業者が事業資産全体を対象に自己信託を設定すると同時に、事業関連の負債を信託財産責任負担債務とし、受益者を債権者、残余財産の帰属権利者を個人事業者とする。

3、自己信託設定後に発生した家計債務の債権者は、事業資産に強制執行することが出来ない。受託者は信託財産責任負担債務について無限責任を負担するので、信託債権者からみると債権保全上の問題はない。


自己信託設定公正証書

(事業融資を設定日に受ける場合)

(信託の目的)
第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用する。
(1)自らとその家族の生活の安定に資すること
(2)事業資産と家計資産を分けて、事業の継続と家計の安定を図ること

(信託設定者)
第〇条 自己信託を設定する者は、次の者とする。
住所
氏名 甲 生年月日

(後任受託者)
第○条 受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。
住所                     
氏名 ○○
生年月日 

(信託財産)
第○条 本信託設定日の信託財産は、次の第1号から第2号までとする。設定後に第3号から第4号によって発生した財産も信託財産とする。
(1) 別紙1記載の甲が経営する屋号「○○屋」の事業遂行のために所有又は保有する有形資産及び無形資産(以下、「信託事業」という。)
(2) 金銭○○万円(以下、「信託金銭」という。)
(3) 受益者から追加信託を受けた財産
(4) その他の信託財産より生じる全ての利益

(信託財産責任負担債務)
第○条 受託者は、別紙2記載の債務を信託財産責任負担債務として引き受ける。

(信託事業の管理方法)
第○条 受託者は、信託事業について次の信託事務を行う。
(1)信託事業における財産と自己の財産を分別して管理
(2)信託事業の運営
(3)会計・税務に関する事務(方法は、本信託設定前と同様のものとする)
(4)第3者への委託
(5)その他信託目的を達成するために必要な事務

(信託金銭の管理方法)
第○条
1 受託者は、信託金銭について次の信託事務を行う。
(1)信託に必要な表示または記録等
(2)受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理
(3)信託金銭から受益者への信託財産責任負担債務の返済
 (4)その他信託目的を達成するために必要な事務
2 受託者が信託事務処理費用を信託財産から支出する場合、支出の前に受益者に対して前払いを受ける額及びその算定根拠を通知する必要はない。

(計算期間)
第○条 この信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。
最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了日までとする。

(公租公課の精算)
第○条 本信託の税金や保険料などは、信託設定日の前は甲、信託設定日とその後は、信託財産から支払う。

(信託財産に関する報告)
第○条 受託者は、計算期間に行った計算を会計帳簿、税務申告書を受益者へ提示する方法により報告する。

(受益者)
第〇条 
1 本信託設定時の受益者は、次の者とする。
(1)本店
   商号 
   
(2)本店
    商号 ○○銀行
    取扱店○○支店

(受益権)
第○条
1 次のものは、元本とする。
 (1)信託事業
 (2)信託金銭
2 次のものは、収益とする。
 (1)信託事業から発生した利益
3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。
4 受益者は信託金銭から、信託財産責任負担債務の範囲で利益を受けることができる。
5 受益者は、受益権を譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができない。

(委託者の地位)
第○条 委託者は、追加信託をする権利義務のみを受益者(2)に移転し、本信託設定以後、その他の権利義務を持たない。

(信託の変更)
第○条 本信託の変更は、受託者と受益者の合意による。

(信託の期間)
第○条 本信託の期間は、設定日から終了した日までとする。

(信託の終了)
第○条 本信託は、次の事由により終了する。
(1)信託事業の廃止
(2)受託者と受益者が合意したとき
(3)信託財産責任負担債務の期限の利益が喪失したとき

(清算受託者)
第○条 この信託が終了したときの受託者は、清算受託者として次の清算事務を行う。
(1)信託財産に属する債権の回収及び信託債権にかかる債務の返済
(2)受益債権にかかる債務の返済

(清算事務の終了)
第○条 清算受託者が、次の事務を終えたときに清算事務は終了する。
(1)受益者および残余財産の帰属権利者に最終計算の承認を得たとき、または信託法184条3項に当たるとき
(2)残余財産がある場合は、帰属権利者への給付


(残余財産の帰属権利者)
第○条 本信託における残余財産の帰属権利者は、甲とする。

(契約に定めのない事項)
第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。


別紙1


信託財産目録

1 資産
資産については、本信託設定日における○○屋の貸借対照表を基準とする。

(1)(流動資産)
事業に係る現金・預貯金、売掛金、棚卸資産、立替金、前払費用、未収入金及びその他流動資産
(2)(固定資産)
事業に係る建物付属設備、構築物、機械措置、及び建設仮勘定、工具器具備品、車両運搬費、ソフトウェア、保証金、長期前払費用及びその他固定資産

2 承継する契約上の地位
事業に係る売買契約、継続的資材購入契約、不動産の賃貸借契約、リース契約、その他の契約における契約上の地位

3 その他
(1)事業に係る免許、許可、承認、登録、届出のうち、受託者の承継が法令上可能であるもの
(2)事業に属する知的財産権及びノウハウ並びにこれらの使用権及び実施権

以上


別紙2


信託財産責任負担債務

1 債務
債務については、本信託設定日における○○屋の貸借対照表を基準とする。

(1)甲が経営する屋号「○○屋」の事業に係る買掛金、未払金、未払費用、前受金、預り金及びその他の流動負債

(2)甲が経営する屋号「○○屋」の事業に係る長期未払金、預かり保証金及びその他の固定負債

以上

財産分離型自己信託(家計資産) これから個人事業を始めるにあたり、万が一うまくいかない場合も家族のために住むところだけは保証したい。

 

(『民事信託の理論と実務』2016 日本加徐出版(株)P279~)

1、これから個人事業を始めるにあたり、万が一うまくいかない場合も家族のために住むところだけは保証したい。

2、債権者の承諾を得て、あらかじめ住宅・土地について家族と住宅ローンの借入先銀行を受益者とする自己信託を設定し、住宅ローンを信託財産責任負担債務とする。

3、仮に事業が破綻しても、別途家族が連帯保証人等の立場で住宅ローンの返済を継続できるなら、事業資産に対する強制執行等に連動して住宅ローンにかかる期限の利益を喪失するといった事態を回避することができる。

自己信託設定公正証書

(目的)
第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用する。
(1)受益者の安定した生活
(2)家計資産と事業資産の分離

(信託財産)
第○条 本信託設定日の信託財産は、次の第1号から第2号までとする。設定後に第3
号から第4号によって発生した財産も信託財産とする。
(1) 別紙1記載の不動産の所有権(以下、「信託不動産」という。)
(2) 金銭○○万円(以下、「信託金銭」という。)
 (3) 受益者から追加信託を受けた財産
 (4) その他の信託財産より生じる全ての利益

(信託設定者)
第〇条 自己信託を設定する者の住所及び氏名は、次の者とする。
住所                       
氏名 甲  生年月日

(後任受託者)
第○条 受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。
住所                                            
氏名 ○○  生年月日

(信託財産責任負担債務)
第○条 受託者は、別紙2記載の債務を信託財産責任負担債務として引き受ける。


(信託財産の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託不動産について次の信託事務を行う。
(1)所有権の権利の変更登記と信託登記の申請
(2)信託不動産の性質を変えない修繕・改良行為
2 受託者は、信託金銭について次の信託事務を行う。
(1)信託に必要な表示または記録
(2)受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理
(3)信託財産責任負担債務の返済
3 受託者は、信託財産から次の費用を支出することができる。
(1)登記申請費用
(2)その他の本信託に必要な諸費用

(計算期間)
第○条 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了した日までとする。

(公租公課の精算)
第○条 本信託の税金や保険料などは、設定日の前は甲、設定日とその後は、信託財産から支払う。なお、支出の前に受益者に対して前払いを受ける額及びその算定根拠を通知する必要はない。

(信託財産に関する報告)
第○条 受託者は、計算期間に行った計算を、信託口通帳と固定資産評価証明書を提示する方法により受益者へ報告する。

(受益者)
第〇条 本信託の受益者は、次の者とする。
 (1)本店                    
    商号        ○○銀行        
    取扱店                   
・受益権の割合は、住宅ローンの残債務の金額/信託財産の価額
  
(2)氏名 ○○
     住所
     生年月日   続柄:配偶者
     ・受益権の割合は、(1)の受益者の残りの割合

(受益権)
第○条
1 次のものは、元本とする。
 (1)信託不動産
 (2)信託金銭
2 次のものは、収益とする。
 (1)信託財産から発生した利益
3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。
4 受益者(1)は信託金銭から、信託財産責任負担債務の範囲で、住宅ローン契約に基づき利益を受けることができる。
5 受益者(2)は、信託財産に無償で居住することができる。
6 受益者(2)は、受益権を譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができない。

(委託者の地位)
第○条 委託者は、追加信託をする権利義務のみを受益者に移転し、本信託設定以後、
その他の権利義務を持たない。

(信託の変更)
第○条 本信託の変更は、受託者と受益者の合意による。

(信託の期間)
第○条 本信託の期間は、設定日から終了した日までとする。

(信託の終了)
第○条 本信託は、次の場合に終了する。
(1)受託者と受益者が合意したとき
(2)信託財産責任負担債務の期限の利益が喪失したとき

(清算受託者)
第○条 この信託が終了したときの受託者は、引き続き清算の事務を行う。

(残余財産の引渡し方法)
第○条 清算受託者が、残余財産の帰属権利者に、信託財産の全てをその債権債務関係
とともに引き渡し、最終計算の承認を得たときに、清算手続は終了する。

(残余財産の帰属権利者)
第○条 本信託における残余財産の受益者は、甲とする。

(契約に定めのない事項)
第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。

別紙1

信託財産目録

第1 信託不動産
(1)土地
所在      
地番      
地目      
地積

(2)建物      
所在 
家屋番号 
種類 
構造 
床面積㎡


第2 信託金銭 
金○○万円


以上


別紙2
信託財産責任負担債務

本店                    
商号○○銀行        
取扱店                   
債務者 甲
設定時の債務金○○万円
(平成○○年○月○日付住宅ローン契約金○○万円における残債務)

遺言代用信託における自己信託の利用 生前に認知症や傷病で自己決定が難しくなった場合でも、自分以外の特定の受益者に対して一定の給付を行いたい

 

(「民事信託の理論と実務」2016 日本加徐出版(株)P284~)

1、ゆいごん代用信託の設定にあたり、ゆいごんと同様、生前においては財産の使用・処分を自ら行いコストを抑え、撤回の自由も確保しておきたい。

2、生前に認知症や傷病で自己決定が難しくなった場合でも、自分以外の特定の受益者に対して一定の給付を行いたい。

3、
(1)ゆいごん代用信託を自己信託により設定し、受託者の死亡や、認知症や傷病により判断能力が衰えた場合には、受託者の任務を終了させ、信託受託者を信託銀行、信託会社、または親族その他の非営利受託者とする。
(2)受益者は設定者自身と設定者の法定相続人とする。
(3)法定相続人の受益者の受益権は、扶養の範囲内の生活費の給付や自宅などの居住権とする。
(4)設定者が受託者の間は、受益者の承諾がなくても信託の内容を変更、終了させることができる。

4、
(1)設定者=受託者が信託を終了させた場合は、設定者を残余財産の帰属権利者とする。
(2)新受託者が就任後に信託が終了した場合は、終了時の受益者を残余財産の帰属権利者とする。


自己信託設定公正証書

(信託の目的)
第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用、処分する。
(1)自らとその家族の生活の安定に資すること

(信託財産)
第○条 本信託設定日における信託財産は、下の第1号から第2号までとする。設定後に第3号から第5号によって発生した財産も信託財産とする。
(1) 別紙1記載の不動産の所有権(以下、「信託不動産」という。)
(2) 金銭○○万円(以下、「信託金銭」という。)
(3) 信託不動産を売却した場合の代金や、信託財産の運用により得られた金銭
(4) 受益者から追加信託を受けた財産
(5) その他の信託財産より生じる全ての利益
2 設定者は、本信託に関して特別受益の持戻しを免除する。

(信託設定者)
第〇条 自己信託を設定する者の住所及び氏名は、次の者とする。
 住所                                 
 氏名 A 生年月日           

(後任受託者)
第○条 受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。
本店・住所                      
商号・氏名  ○○信託銀行、○○信託会社またはB
        
(信託不動産の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託不動産に関し所有権の権利の変更登記と信託登記の申請を行う。
2 受託者の信託不動産に関する事務は次のとおりとする。
(1) 修繕
(2) リフォーム工事
(3) 第3者への委託
(4)その他の管理、運用及び換価(売却)等の処分のために必要な事務
3 受託者は、受益者との合意により信託財産の譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。ただし、受託者がAの間は、その裁量により、信託財産の譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。

(信託金銭の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託金銭について、信託に必要な表示または記録等を行い、受託者個人の財産と分けて性質を変えずに管理する。
2 受託者の信託金銭に関する事務は次のとおりとする。
(1) 受益者に対する扶養義務の範囲内での生活費の給付
(2) 信託帳簿と財産状況開示資料の作成
3 受託者が信託事務処理費用を信託財産から支出する場合、支出の前に受益者に対して前払いを受ける額及びその算定根拠を通知する必要はない。

(計算期間)
第○条 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了した日までとする。

(公租公課の精算)
第○条 本信託の税金や保険料などは、信託の設定日の前は設定者、信託の設定日とその後は信託財産から支払う。

(信託財産に関する報告)
第○条 受託者は計算期間に行った計算を、固定資産税の納税通知書及び領収書と信託口通帳を受益者へ提示する方法により報告する。

(受益者)
第〇条 本信託の受益者は、次の者とする。なおB及びCの受益権の割合は、扶養義務の範囲内とし、各受益者は受益権を1個取得する。
(1) 
住所                                
氏名 A 生年月日   
(2)
住所           
氏名 B 生年月日             
(3)
住所           
氏名 C 生年月日

(受益者代理人)
第○条 受益者(1)が受託者の任務を終了した場合、次の者を受益者代理人とする。
住所
氏名 ○○ 生年月日

(受益権)
第○条
1 次のものは、元本とする。
(1)信託不動産
(2)信託金銭
2 次のものは、収益とする。
(1)信託財産から発生した利益
3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。
4 受益者は、信託不動産に無償で居住することができる。
5 受益者(2)、(3)は、月額○○万円を限度として信託金銭から給付を受けることができる。また、傷病など特別の支出が必要なときは、受託者の同意を得て必要な金額の給付を受けることができる。
6 受益者Aは、受益権を譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。

(委託者の地位)
第○条 委託者は、追加信託をする権利義務のみを受益者に移転し、その他の信託行為に記載のある権利は、亡くなったときに委託者の地位は消滅する。

(信託の変更)
第○条 
1 本信託の変更は、受託者と受益者の合意による。ただし、受託者がAの間は、受託者が単独で変更することができる。
2 受益者の人数に変更があった場合、各受益者に1個の受益権が指定される受益権の分割・併合があったものとする。

(信託の期間)
第○条 本信託の期間は、設定日から終了日までとする。

(信託の終了)
第○条 本信託は、受託者と受益者が合意したときに終了する。ただし、受託者がAの間は、受託者が単独で終了することができる。

(清算受託者)
第○条 この信託が終了したときの受託者は、引き続き清算の事務を行う。

(残余財産の引渡し方法)
第○条 清算受託者が、残余財産の帰属権利者に、信託財産の全てをその債権関係とともに引き渡し、最終計算の承認を得たときに、清算手続は終了する。

(残余財産の帰属権利者)
第○条 本信託における残余財産の帰属権利者は次の者とし、法定相続分の割合で帰属する。ただし、受託者Aが単独で信託を終了した場合は、残余財産の帰属権利者はAとする。
(1)A 住所 生年月日
(2)B 住所 生年月日
(3)C 住所 生年月日

(契約に定めのない事項)
第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。

                                   別紙1


                   信託財産目録
第1 信託不動産

(1)土地
所在      
地番      
地目      
地積  

(2)建物      
所在
家屋番号 
種類 
構造 
床面積㎡


第2 信託金銭 
金○○ 万円


                             以上

ライフセトルメント型自己信託 終身生命保険の保険契約者が、実質的な譲受人(金融機関など)を受益者として、終身生命保険の契約者の地位を信託財産、設定者生存中の契約の保全と死亡時における保険金の受益者に対する分配を目的とする自己信託を設定する。  設定者が亡くなった際の新受託者には、生命保険の受取人に指定された相続人などが就任する。


(『民事信託の理論と実務』2016 日本加徐出版(株)P282~)

1、終身生命保険の保険契約者が、実質的な譲受人(金融機関など)を受益者として、終身生命保険の契約者の地位を信託財産、設定者生存中の契約の保全と死亡時における保険金の受益者に対する分配を目的とする自己信託を設定する。
 設定者が亡くなった際の新受託者には、生命保険の受取人に指定された相続人などが就任する。

2、金融機関などは、購入した受益権を担保にして設定者(保険契約者)にお金を貸す。生命保険会社の承諾を得ることなく生命保険契約を実質的に換価することができる。

3、設定者(保険契約者であり、被保険者である人)が亡くなり、新受託者(受取人)が生命保険会社より保険金を受け取り、受益者(金融機関など)に分配して残りがあれば、残余財産の帰属権利者が取得して信託の終了。


自己信託設定公正証書


(目的)
第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用する。
(1)設定者が存命中の契約の保全
(2)設定者の死亡時における保険金の受益者に対する分配

(信託財産)
第○条 本信託設定日における信託財産は、次の第1号から第2号までとする。設定後に第3号から第4号によって生じた財産も信託財産とする。
(1) 別紙1記載の生命保険契約の保険契約者の地位(以下、「信託保険上の保険契約者の地位」という。)
(2) 金銭○○万円(以下、「信託金銭」という。)
(3) 受益者から追加信託を受けた財産
(4) その他の信託財産より生じる全ての利益

(信託設定者)
第〇条 自己信託を設定する者の住所及び氏名は、次の者とする。
 住所                                 
 氏名 A 生年月日           

(後任受託者)
第○条 
1、受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。
住所                     
氏名 生命保険の受取人B 生年月日
2、前受託者の任務終了事由が死亡の場合、後任受託者は保険者に通知する。 

(信託財産責任負担債務)
第○条 受託者は、別紙2記載の債務を信託財産責任負担債務として引き受ける。        

(信託財産の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託保険上の保険契約者の地位について、次の信託事務を行う。
(1)受託者個人の財産と分けて性質を変えずに管理する。
(2)保険契約上の書類の保管
2 受託者は、信託金銭について、次の信託事務を行う。
(1)信託に必要な表示または記録
(2)受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理
(3)保険者に対する保険料の支払いがある場合は、その支払い

(計算期間)
第○条 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了した日までとする。

(公租公課の精算)
第○条 本信託の保険料などは、信託の設定日の前は設定者、設定日とその後は、信託財産から支払う。

(信託財産に関する報告)
第○条 受託者は、計算期間に行った計算を、通帳の提示などの方法により受益者へ報告する。

(受益者)
第〇条 本信託の受益者は、次の者とする。
本店                                
商号○○銀行
取扱店○○支店 
                   
(受益権)
第○条
1 次のものは、元本とする。
(1)生命保険契約の保険契約者の地位
(2)信託金銭
2 次のものは、収益とする。
(1)信託財産から発生した利益
3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。
4 受益者は、受益権を譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。

(委託者の地位)
第○条 委託者は、追加信託をする権利義務のみを受益者に移転し、本信託設定以後、その他の権利義務を持たない。

(信託の変更)
第○条 本信託の変更は、受託者と受益者の合意による。

(信託の期間)
第○条 本信託の期間は、設定日から終了日までとする。

(信託の終了)
第○条 本信託は、次のいずれかの場合に終了する。
 (1)Aが亡くなったとき
 (2)受託者と受益者が合意したとき

(清算受託者)
第○条 
1 本信託が終了したときの受託者は、引き続き清算の次の事務を行う。
(1)現務の結了
(2)本信託が、自己信託設定者の死亡により終了した時は、受益債権に係る債務の弁済
(3)残余財産の給付

(残余財産の引渡し方法)
第○条 清算受託者が、残余財産の帰属権利者に、信託財産の全てをその債権関係とともに引き渡し、最終計算の承認を得たときに、清算手続は終了する。


(残余財産の帰属権利者)
第○条 本信託における残余財産の帰属権利者は次の者とする。
住所                     
氏名 生命保険の受取人B 生年月日

(契約に定めのない事項)
第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。
                                   

別紙1

                   信託財産目録

第1 生命保険契約の保険契約者の地位

(1)契約年月日:〇〇年〇〇月〇〇日
(2)保険契約者A
(3)被保険者A
(4)保険者〇〇生命保険会社
(5)保険金受取人B
(6)保険の種類:終身生命保険
(7)保険契約証書番号:○○○○
(8)死亡保険金:○○○万円
      
第2 信託金銭 
金○○ 万円


以上


別紙2

信託財産責任負担債務

本店                                
商号○○銀行
取扱店○○支店
債務 金○○万円(平成○○年○月○日付ローン契約書)

以上

物権的自己信託  共有者間のたすきがけ自己信託 不動産の共有者が、共有物の分割請求を10年を超えて制限したい、共有物の使用方法について制限を設けたい、処分、変更について全員一致ではなく多数決を導入したい。

 

(『民事信託の理論と実務』2016 日本加徐出版P289~)

1、不動産の共有者が、共有物の分割請求(民法256条)を10年を超えて制限したい、共有物の使用方法について制限を設けたい(民法249条、252条など)、処分、変更について全員一致ではなく多数決を導入したい。

2、共有者が、それぞれ自己の持分について相手を受益者として同一内容の自己信託を設定する。

3、信託目的に反する持分の処分等ができなくなることから、ニーズに即した共有物の利用を図ることができる。

4、信託の内容は登記事項となるため、共有者間の取り決めを第3者にも対抗することができる。


自己信託設定公正証書


・今回、各共有者の持分は2分の1であることを前提にします。

(目的)
第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用、処分する。
(1)受益者の安定した生活
(2)共有物の分割を15年間制限すること
(3)共有物の使用方法について制限を設けること
(4)共有物の変更、処分の意思決定について多数決を導入すること

(信託財産)
第○条 本信託設定日の信託財産は、次の第1号から第2号までとする。設定後
に第3号から第4号によって発生した財産も信託財産とする。
(1) 別紙1記載の不動産の所有権(以下、「信託不動産」という。)
(2) 金銭○○万円(今後、「信託金銭」という。)
 (3) 受益者から追加信託を受けた財産
 (4) その他の信託財産より生じる全ての利益

(信託設定者)
第〇条 自己信託を設定する者は、次のとおりである。
 住所                       
 氏名 甲 生年月日

(後任の受託者)
第○条 受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。
住所                     
氏名 ○○ 生年月日 


信託財産の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託不動産について次の信託事務を行う。
(1)所有権の権利の変更登記と信託登記の申請
(2)信託不動産の性質を変えない修繕・改良行為
2 受託者は、信託金銭について次の信託事務を行う。
(1)信託に必要な表示または記録
(2)受託者個人の財産と分けて、性質を変えずに管理
3 受託者が信託事務処理費用を信託財産から支出する場合、支出の前に受益者に対して前払いを受ける額及びその算定根拠を通知する必要はない。

(計算期間)
第○条 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了した日までとする。

(公租公課の精算)
第○条 本信託の税金や保険料などは、設定日の前は設定者、設定日以後は、信託財産から支払う。

(信託財産に関する報告)
第○条 受託者は、計算期間に行った計算を、固定資産税の納税通知書及び領収書と信託口通帳を受益者へ提示する方法により受益者へ報告する。

(受益者)
第〇条 本信託の受益者は、次の者とする。
住所                       
氏名 乙 生年月日  

(受益権)
第○条
1 次のものは、元本とする。
 (1)信託不動産の所有権
 (2)信託不動産への居住権
 (3)信託金銭
2 次のものは、収益とする。
 (1)信託財産から発生した利益
3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。
4 本信託の信託不動産と同一の不動産(以下、「共有信託不動産」という。)の権利関係および管理、運用、処分の方法は次のとおりとする。
(1)共有信託不動産の共有物分割請求は、本信託設定の日から15年を経過する日まですることができない。
(2)共有信託不動産について受益者の過半数が合意した場合、受益権を変更、処分することできる。
(3)共有信託不動産を共有者の配偶者、子、両親以外に使用させるには、受益者全員の同意を必要とする。
5 信託金銭は甲

(委託者の地位)
第○条 委託者は、追加信託をする権利義務のみを受益者に移転し、その他の信託行為に記載のある権利は、亡くなったときに委託者の地位と伴に消滅する。

(信託の変更)
第○条 本信託の変更は、受託者と受益者の過半数の合意による。

(信託の期間)
第○条 本信託の期間は、設定日から終了した日までとする。

(信託の終了)
第○条 本信託は、次の場合に終了する。
(1)受託者と受益者の過半数が合意したとき
(2)受益者の一親等親族が全員亡くなったとき

(清算受託者)
第○条 この信託が終了したときの受託者は、引き続き清算の事務を行う。

(残余財産の引渡し方法)
第○条 清算受託者が、残余財産の帰属権利者に、信託財産の全てをその債権関係とともに引き渡し、最終計算の承認を得たときに、清算手続は終了する。

(残余財産の帰属権利者)
第○条 本信託における残余財産の帰属権利者は、終了時の受益者とする。

(契約に定めのない事項)
第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。
別紙1

信託財産目録
第1 信託不動産
(1)土地
所在      
地番      
地目      
地積
(2)建物      
所在 
家屋番号 
種類 
構造 
床面積㎡
第2 信託金銭金○○万円
以上

PAGE TOP