遺言代用信託における自己信託の利用 生前に認知症や傷病で自己決定が難しくなった場合でも、自分以外の特定の受益者に対して一定の給付を行いたい

 

(「民事信託の理論と実務」2016 日本加徐出版(株)P284~)

1、ゆいごん代用信託の設定にあたり、ゆいごんと同様、生前においては財産の使用・処分を自ら行いコストを抑え、撤回の自由も確保しておきたい。

2、生前に認知症や傷病で自己決定が難しくなった場合でも、自分以外の特定の受益者に対して一定の給付を行いたい。

3、
(1)ゆいごん代用信託を自己信託により設定し、受託者の死亡や、認知症や傷病により判断能力が衰えた場合には、受託者の任務を終了させ、信託受託者を信託銀行、信託会社、または親族その他の非営利受託者とする。
(2)受益者は設定者自身と設定者の法定相続人とする。
(3)法定相続人の受益者の受益権は、扶養の範囲内の生活費の給付や自宅などの居住権とする。
(4)設定者が受託者の間は、受益者の承諾がなくても信託の内容を変更、終了させることができる。

4、
(1)設定者=受託者が信託を終了させた場合は、設定者を残余財産の帰属権利者とする。
(2)新受託者が就任後に信託が終了した場合は、終了時の受益者を残余財産の帰属権利者とする。


自己信託設定公正証書

(信託の目的)
第○条 本信託は、次の事項を目的として、第○条記載の信託財産を受託者が管理、運用、処分する。
(1)自らとその家族の生活の安定に資すること

(信託財産)
第○条 本信託設定日における信託財産は、下の第1号から第2号までとする。設定後に第3号から第5号によって発生した財産も信託財産とする。
(1) 別紙1記載の不動産の所有権(以下、「信託不動産」という。)
(2) 金銭○○万円(以下、「信託金銭」という。)
(3) 信託不動産を売却した場合の代金や、信託財産の運用により得られた金銭
(4) 受益者から追加信託を受けた財産
(5) その他の信託財産より生じる全ての利益
2 設定者は、本信託に関して特別受益の持戻しを免除する。

(信託設定者)
第〇条 自己信託を設定する者の住所及び氏名は、次の者とする。
 住所                                 
 氏名 A 生年月日           

(後任受託者)
第○条 受託者の任務が終了した場合の後任受託者は、次の者とする。
本店・住所                      
商号・氏名  ○○信託銀行、○○信託会社またはB
        
(信託不動産の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託不動産に関し所有権の権利の変更登記と信託登記の申請を行う。
2 受託者の信託不動産に関する事務は次のとおりとする。
(1) 修繕
(2) リフォーム工事
(3) 第3者への委託
(4)その他の管理、運用及び換価(売却)等の処分のために必要な事務
3 受託者は、受益者との合意により信託財産の譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。ただし、受託者がAの間は、その裁量により、信託財産の譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。

(信託金銭の管理方法)
第○条 
1 受託者は、信託金銭について、信託に必要な表示または記録等を行い、受託者個人の財産と分けて性質を変えずに管理する。
2 受託者の信託金銭に関する事務は次のとおりとする。
(1) 受益者に対する扶養義務の範囲内での生活費の給付
(2) 信託帳簿と財産状況開示資料の作成
3 受託者が信託事務処理費用を信託財産から支出する場合、支出の前に受益者に対して前払いを受ける額及びその算定根拠を通知する必要はない。

(計算期間)
第○条 本信託の計算期間は、毎年1月1日から12月31日までとする。最初の計算期間は信託の設定日から始まり、最後の計算期間は信託の終了した日までとする。

(公租公課の精算)
第○条 本信託の税金や保険料などは、信託の設定日の前は設定者、信託の設定日とその後は信託財産から支払う。

(信託財産に関する報告)
第○条 受託者は計算期間に行った計算を、固定資産税の納税通知書及び領収書と信託口通帳を受益者へ提示する方法により報告する。

(受益者)
第〇条 本信託の受益者は、次の者とする。なおB及びCの受益権の割合は、扶養義務の範囲内とし、各受益者は受益権を1個取得する。
(1) 
住所                                
氏名 A 生年月日   
(2)
住所           
氏名 B 生年月日             
(3)
住所           
氏名 C 生年月日

(受益者代理人)
第○条 受益者(1)が受託者の任務を終了した場合、次の者を受益者代理人とする。
住所
氏名 ○○ 生年月日

(受益権)
第○条
1 次のものは、元本とする。
(1)信託不動産
(2)信託金銭
2 次のものは、収益とする。
(1)信託財産から発生した利益
3 元本又は収益のいずれか不分明なものは、受託者が判断する。
4 受益者は、信託不動産に無償で居住することができる。
5 受益者(2)、(3)は、月額○○万円を限度として信託金銭から給付を受けることができる。また、傷病など特別の支出が必要なときは、受託者の同意を得て必要な金額の給付を受けることができる。
6 受益者Aは、受益権を譲渡、質入れ、分割及び担保設定その他の処分をすることができる。

(委託者の地位)
第○条 委託者は、追加信託をする権利義務のみを受益者に移転し、その他の信託行為に記載のある権利は、亡くなったときに委託者の地位は消滅する。

(信託の変更)
第○条 
1 本信託の変更は、受託者と受益者の合意による。ただし、受託者がAの間は、受託者が単独で変更することができる。
2 受益者の人数に変更があった場合、各受益者に1個の受益権が指定される受益権の分割・併合があったものとする。

(信託の期間)
第○条 本信託の期間は、設定日から終了日までとする。

(信託の終了)
第○条 本信託は、受託者と受益者が合意したときに終了する。ただし、受託者がAの間は、受託者が単独で終了することができる。

(清算受託者)
第○条 この信託が終了したときの受託者は、引き続き清算の事務を行う。

(残余財産の引渡し方法)
第○条 清算受託者が、残余財産の帰属権利者に、信託財産の全てをその債権関係とともに引き渡し、最終計算の承認を得たときに、清算手続は終了する。

(残余財産の帰属権利者)
第○条 本信託における残余財産の帰属権利者は次の者とし、法定相続分の割合で帰属する。ただし、受託者Aが単独で信託を終了した場合は、残余財産の帰属権利者はAとする。
(1)A 住所 生年月日
(2)B 住所 生年月日
(3)C 住所 生年月日

(契約に定めのない事項)
第○条 本信託に定めのない事項は、受託者と受益者が協議の上決定する。

                                   別紙1


                   信託財産目録
第1 信託不動産

(1)土地
所在      
地番      
地目      
地積  

(2)建物      
所在
家屋番号 
種類 
構造 
床面積㎡


第2 信託金銭 
金○○ 万円


                             以上

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