月刊登記情報2024年12月号757号

月刊登記情報2024年12月号757号(一社)金融財政事情研究会

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T

CONTENTS 法窓一言 

事業価値把握のための担保権の議論動向

島田法律事務所 弁護士 本多知則

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00226.html

法制審議会担保法制部会第41回会議(令和5年11月22日開催)部会資料38 担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討⑼

 ある事業によって発生する債権に集合債権譲渡担保権が設定されていると共にその事業を営むのに必要な財産についても別途担保権が設定されている場合において、その事業を継続して営むことによって得られる利益が見込まれるときには、少なくとも、その利益を勘案した上で、当該事業を営むのに必要な財産の評価を行い、それに基づく別除権協定を締結することは必ずしも再生債務者の義務には反しないように思われる。・・・固定化にかかわらず、継続事業価値による評価を肯定するものと解される。

民法等の一部を改正する法律(家族法制の見直し)の概要

法務省民事局参事官 北村治樹

法務省民事局付 太田健介

法務省民事局付 今村謙介

現行民法

(親権者)

第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。

2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。

3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

改正民法

(親権)

第八百十八条 親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない。

2 父母の婚姻中はその双方を親権者とする。

3 子が養子であるときは、次に掲げる者を親権者とする。

一 養親(当該子を養子とする縁組が二以上あるときは、直近の縁組により養親となった者に限る。)

二 子の父母であって、前号に掲げる養親の配偶者であるもの

(一般の先取特権)

第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。

一 共益の費用

二 雇用関係

三 子の監護の費用

四 葬式の費用

五 日用品の供給

・・・合意を証明する情報が必要。

(子の監護に要する費用の分担の定めがない場合の特例)

第七百六十六条の三 父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合には、父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは、他の一方に対し、離婚の日から、次に掲げる日のいずれか早い日までの間、毎月末に、その子の監護に要する費用の分担として、父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額の支払を請求することができる。ただし、当該他の一方は、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと又はその支払をすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払を拒むことができる。

一 父母がその協議により子の監護に要する費用の分担についての定めをした日

二 子の監護に要する費用の分担についての審判が確定した日

三 子が成年に達した日

2 離婚の日の属する月又は前項各号に掲げる日のいずれか早い日の属する月における同項の額は、法務省令で定めるところにより日割りで計算する。

3 家庭裁判所は、第七百六十六条第二項又は第三項の規定により子の監護に要する費用の分担についての定めをし又はその定めを変更する場合には、第一項の規定による債務を負う他の一方の支払能力を考慮して、当該債務の全部若しくは一部の免除又は支払の猶予その他相当な処分を命ずることができる。

・・・原則として、債務者の収入に関わらず一定額。

「外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて」の解説

法務省民事局付 森下宏輝

法務省民事局民事第二課補佐官 河瀬貴之

法務省民事局民事第二課補佐官 太田裕介

法務省HP

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00589.html

住所変更登記は、虚無人名義の登記を防止するという制度の趣旨から外れるので、通達の対象外。

 外国の政府等や公証人の作成する書面は、不動産登記令17条1項に該当しない。

不動産登記令(代表者の資格を証する情報を記載した書面の期間制限等)

第十七条第七条第一項第一号ロ又は第二号に掲げる情報を記載した書面であって、市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成したものは、作成後三月以内のものでなければならない。

2前項の規定は、官庁又は公署が登記の嘱託をする場合には、適用しない。

境界紛争調停手続における留意事項

摂南大学法学部特任教授 田中 敦

 公正と公正らしさ。中身の公正と、外面の公正らしさが求められる。調停委員として、名前を言うか言わないかは、当事者をみて考えていきたい。修正写真、望遠写真に気を付ける。専門用語の翻訳。折り合えるように、抽象的にいう。

BOOK REVIEW 金森真吾 著 『供託法・供託規則コンメンタール』

【評者】早稲田大学教授 山野目章夫

供託規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/334M50000010002/#Mp-Ch_4

(供託金利息)第三十三条供託金利息は、一年について〇・〇〇一二パーセントとする。

2供託金利息は、供託金受入れの月及び払渡しの月については付さない。供託金の全額が一万円未満であるとき、又は供託金に一万円未満の端数があるときは、その全額又はその端数金額に対しても同様とする。

狭あい道路の解消に向けた取組み

国土交通省住宅局市街地建築課課長補佐 中世古英昭

 国土交通省 狭あい道路対策に関するガイドラインについて(令和6年3月)

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000082.html

更新日:2019年3月18日 那覇市狭あい道路整備事業の改正について「事前協議制度の導入」

https://www.city.naha.okinawa.jp/kurasitetuduki/life/kentiku/todokede/kyouai.html

士業法人に関する出資持分の承継問題と運営における注意点

税理士 柿沼慶一

2023年6月14日東京都税理士会調査研究部「税理士法人出資の評価について」

https://www.tokyozeirishikai.or.jp/news/tax_accountant/detail/1885.html

 税理士法人は税理士法に基づき、社員を税理士に限定した特別法人であり、会社法上の合名会社に準ずる。社員を税理士に限定しているので、社員死亡時に出資持分の相続は認められていない。払戻請求権に転化し、配当所得課税、源泉所得税課税。相続人が税理士でも同じ。税理士法48条の21は、会社法608条を準用していない。

 死亡以外の退社、社員の入社時の課税関係。

国税庁 「持分会社の退社時の出資の評価」

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/13/03.htm

 各士業法人の制度比較。

NEWS 戸籍に氏名の振り仮名を記載する取組が始まります!~皆様のお手元に通知が届いたら~

法務省民事局民事第一課

 施行日は2025(令和7)年5月26日。振り仮名通知は、戸籍単位で送付される予定。通知の振り仮名と実際の振り仮名が違う場合、2026(令和8)年5月25日までに市町村に届け出ることが重要。

商業登記規則逐条解説 第24回

土手敏行

(登記申請の方法)

第百二条前条第一項第一号の規定により登記の申請をするには、申請人又はその代表者若しくは代理人(以下この章において「申請人等」という。)は、法務大臣の定めるところに従い、法令の規定により申請書に記載すべき事項に係る情報に第三十三条の四に定める措置を講じたもの(以下「申請書情報」という。)を送信しなければならない。

2申請人等は、法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面(法第十九条の二に規定する電磁的記録を含む。)があるときは、法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報にその作成者(認証を要するものについては、作成者及び認証者。第五項において同じ。)が前項に規定する措置を講じたもの(以下「添付書面情報」という。)を送信しなければならない。ただし、添付書面情報の送信に代えて、登記所に当該書面を提出し、又は送付することを妨げない。

3申請人等(委任による代理人を除く。)が登記の申請をする場合において、申請書情報を送信するときは、当該申請人等が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて次のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。

一第三十三条の八第二項(他の省令において準用する場合を含む。)に規定する電子証明書

二電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律第三条第一項の規定により作成された署名用電子証明書

三電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第八条に規定する認定認証事業者が作成した電子証明書(電子署名及び認証業務に関する法律施行規則(平成十三年総務省・法務省・経済産業省令第二号)第四条第一号に規定する電子証明書をいう。)その他の電子証明書であつて、氏名、住所、出生の年月日その他の事項により当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの

四官庁が嘱託する場合にあつては、官庁が作成した電子証明書であつて、登記官が当該措置を講じた者を確認することができるものとして法務大臣の定めるもの

4委任による代理人によつて登記の申請をする場合において、申請書情報を送信するときは、当該代理人が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて次のいずれかに該当するものを併せて送信しなければならない。

一前項各号に掲げる電子証明書

二当該措置を講じた者を確認することができる電子証明書であつて、前号に掲げるものに準ずるものとして法務大臣の定めるもの

5申請人等が添付書面情報を送信するときは、次の各号に掲げる情報の区分に応じ、それぞれ当該情報の作成者が第一項に規定する措置を講じたものであることを確認するために必要な事項を証する情報であつて当該各号に定めるものを併せて送信しなければならない。

一委任による代理人の権限を証する情報 第三項各号に掲げる電子証明書

二前号に規定する情報以外の情報 前項各号に掲げる電子証明書又は指定公証人の行う電磁的記録に関する事務に関する省令第三条第一項に規定する指定公証人電子証明書

 3項1号は、商業登記電子証明書。3項2号はマイナンバーカードによる電子証明書。3項3号はセコムパスポートfor G-IDなど。3条4項は政府認証基盤発行の官職証明書、地方公共団体組織認証基盤発行の職責証明書。

 令和3年3月1日施行、会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)以後は、オンラインによる登記の申請と同時に印鑑届書が提出されることは、原則ではなく例外という位置づけになるから、登記官は印鑑届書の到達を待つことなく登記を処理する。

 4項は登記申請の代理人が利用可能な電子証明書の定め。4項2号の電子証明書には、生年月日の情報がなくてもよい。旧氏が併記されている電子証明書の取扱い。

 5項2号はリモート署名。クラウドサインなど。登記所は、電子署名の有効性と、電子署名の情報に書面に代えて作成した情報の名義人がその作成に関与している情報が記録されていることを確認する。

リスクベース・アプローチに基づくマネロン対策⑹―“司法書士ガイドライン”から考える―

司法書士 末光祐一

 会社設立登記を司法書士が代理申請した事例。 

 判例解説 

1筆の土地の一部分についての所有権移転登記請求権を有する債権者が当該登記請求権を被保全権利として当該土地の全部について処分禁止の仮処分命令の申立てをした場合における保全の必要性の有無(最三小決令5・10・6)

 保全の必要が認められる場合・・・分筆の登記を申請することができない場合や、それが著しく困難な場合。

登記研究59号P26、昭和27年9月19日民事甲第308号民事局長回答 「登記及び台帳事務の取扱について」・・・一筆の土地の一部分について処分禁止の仮処分命令を得た債権者は、その仮処分命令正本を代位原因を証明する書面として、債務者に代位して分筆の登記を申請することができる。

 昭和27年回答の後、分筆の登記の申請に必要な情報として地積測量図が定められた。不動産登記規則78条など。地積測量図を作成することが可能であれば、土地の全部について処分禁止の仮処分命令は認められない。地積測量図を作成することが難しいときは、そのことを陳述、疎明して申立てをしてみる。

実務の現場から

司法書士業務とエンジェル投資家コミュニティの運営

司法書士法人丸山洋一郎事務所 丸山洋一郎

 沖縄県で1年半動いてみましたが、無理でした。

THINK司法書士論叢会報第122号

THINK司法書士論叢会報第122号2024年、日本司法書士会連合会

https://www.shiho-shoshi.or.jp/gallery/think/index

社会的マイノリティの人たちの財産をめぐる諸問題-相続と財産承継を中心として

早稲田大学法学学術院教授 棚村政行

 令和6年3月22日出入国在留管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」・・・令和5年末の在留外国人数は、341万992人(前年末比33万5,779人、10.9%増)で、過去最高を更新

https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html

 2023.10.19電通グループ「LGBTQ+調査2023」・・・パートナーシップ制度のある自治体に住む回答者のうち68.5%(当事者層58.4%、非当事者層69.4%)が制度の存在を知らないという結果

https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/001046.html

2024/09/05国立国会図書館更新 法務省「新種契約についての裁判例の動向に関する調査研究報告書」

https://dl.ndl.go.jp/pid/13737863

法の適用に関する通則法

https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078

(相続)

第三十六条相続は、被相続人の本国法による。

(物権及びその他の登記をすべき権利)

第十三条動産又は不動産に関する物権及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による。

2前項の規定にかかわらず、同項に規定する権利の得喪は、その原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による。

(不法行為)

第十七条不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。

名古屋地方裁判所平成15年12月26日判決 民事第7部平成7(ワ)4179号

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=7587

P69・・・本件では,本件事故により死亡した台湾居住被害者に係る損害賠償請求権の成立,その効力は日本法により,当該賠償請求権の請求権者は被害者の相続人とされるから,被相続人たる被害者が台湾人である場合には,その本国法である台湾法によって決せられる相続人がその相続分に応じて賠償請求権を取得するものである。

最高裁判所第三小法廷平成6年3月8日判決平成2(オ)1455号土地持分移転登記抹消登記、土地建物持分移転登記抹消登記等、民集 第48巻3号835頁

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52460

 中華民国(台湾)籍の被相続人が日本に残した土地・建物について、日本人の母が子らの相続持分を親権者として第三者に譲渡する契約を締結し、所有権移転登記完了。

 子らから、中華民国法上、分割前の遺産の共有は「合同共有(合有)」(中華民国民法1151条)であり、その処分には共有者全員の合意が必要であり処分は無効と主張。

結論・・・共同相続人が遺産分割前の遺産の持分を処分しうるか否かは相続の効果の問題として相続準拠法に依るが、その処分が権利移転の効果を生ずるかどうかは、物権の問題として目的物の所在地法(法の適用に関する通則法13条2項)により、処分権制限について公示方法もないことから、日本法により処分は有効。

法の適用に関する通則法(遺言)

第三十七条遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

2遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。

ドイツ連邦共和国大使館・総領事館

https://japan.diplo.de/ja-ja/service/2097590-2097590

相続人証書の申請

ドイツ国内に相続財産がある場合、ドイツ大使館(東京)では、申請人様が相続人証書申請手続きをドイツに行って行うようお願いしております。特に日本での相続税申告期限のある場合には、現状ではドイツ大使館での期限内での対応ができません。ドイツ国内に残された相続財産に関して英語またはドイツ語で直接ドイツ人担当者と連絡をご希望の方は当館ドイツ語HPのお問合せフォームにてご連絡ください。内容の専門性が高く、スタッフの人員に限りがあるため、日本語でのお問い合わせには対応しておりません。

日本私法学会 遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約(昭和39年6月10日-条約第9号)

http://www.pilaj.jp/text/yuigon_j.html

(相続に関する審判事件の管轄権)

家事事件手続法(相続に関する審判事件の管轄権)第三条の十一 裁判所は、相続に関する審判事件(別表第一の八十六の項から百十の項まで及び百三十三の項並びに別表第二の十一の項から十五の項までの事項についての審判事件をいう。)について、相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき、住所がない場合又は住所が知れない場合には相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき、居所がない場合又は居所が知れない場合には被相続人が相続開始のに日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く。)は、管轄権を有する。

渋谷区人権を尊重し差別をなくす社会を推進する条例

令和6年4月1日施行

https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/shisaku/jorei-toshin/lgbt.html

(区が行うパートナーシップ証明)

第17条 区長は、前条に規定する理念に基づき、公序良俗に反しない限りにおいて、パートナーシップに関する証明(以下「パートナーシップ証明」という。)をすることができる。

2 区長は、前項のパートナーシップ証明を行う場合は、次の各号に掲げる事項を確認するものとする。ただし、区長が特に理由があると認めるときは、この限りでない。

⑴ 当事者双方が、相互に相手方当事者を任意後見契約に関する法律(平成11年法律第150号)第2条第3号に規定する任意後見受任者の1人とする任意後見契約に係る公正証書を作成し、かつ、登記を行っていること。

⑵ 共同生活を営むに当たり、当事者間において、区規則で定める事項についての合意契約が公正証書により交わされていること。

3 前項に定めるもののほか、パートナーシップ証明の申請手続その他必要な事項は、区規則で定める。

「無宗教」社会の日本において「宗教」の多様性を達成するために何が求められているか

関東学院大学教授 髙井啓介

宗教法人令(抄)(昭和二十年十二月二十八日勅令第七百十九号)

https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318169.htm

文化庁文化部宗務課「宗務時報No.119」平成27年3月

https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/shuppanbutsu/shumujiho/index.html

法人化の現状

滞日ムスリムの日常生活にとって不可欠なモスク存続のためには,経済的課題への対処が求められる。モスクの恒常的な維持管理と運営の費用として,備品の購入・修繕費,建物の維持管理費,イマームへの謝礼,水道光熱費や固定資産税など様々な費用が発生する。ムスリムの喜捨などがその費用に充当されるが,不足しがちである。対策として, 法人名義での不動産登記が可能で,固定資産税や喜捨が非課税となり,事業収入の税制優遇などの利点がある宗教法人化がある。―中略―もう一つの対策は,一般社団法人格の取得である。一般社団法人格を有するのは,三重モスク,春日井モスクなど12法人であるが,三重モスクでは宗教法人化を目指して活動している。宗教法人の認証手続きが煩瑣なことや認証までに数年かかることを考えれば,法務局への登記だけで完了し,法人名義での不動産登記が可能となる一般社団法人格を取得することは有用である。しかし,事業収入の税制優遇や不動産への非課税という経済的な利点に加え,内外の政府や諸組織に対する社会的信用という点では,宗教法人格の取得がより有用であろう。現状でも,モスクによる法人制度の積極的な利用はかなり浸透してきているようだが,日本社会における法人制度や団体運営のノウハウがモスクの運営者たちに共有されているとは言い難く,モスク等の不動産の個人名義での登記も依然として各地で見られる。経済的課題の解決のために,法人制度の積極的活用を検討しても良いと考えられる。

硬直的な住宅政策が生み出す新たな住宅問題 居住支援のダイバーシティを展望する

追手門学院大学地域創造学部准教授 葛西リサ

 年齢と問わず、低所得単身者の住宅。

投稿論文

成年被後見人の遺言をめぐる諸問題-イギリスにおける制定法上の遺言制度を参考に-

 東京司法書士会 鹿島久実子

Introducing the MCA

Mental Capacity Act principle 5: Less restrictive option

Code of practice giving guidance for decisions made under the Mental Capacity Act 2005.

https://www.gov.uk/government/publications/mental-capacity-act-code-of-practice

THE COURT OF PROTECTION RULES 1994

https://www.legislation.gov.uk/uksi/1994/3046/contents/made

家族信託の相談会その70

お気軽にどうぞ。

2024年11月29日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障害を持つ子の親なき後への備え

1組様 5,500円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

登記研究921号令和6年11月号

登記研究921号(令和6年11月号)、テイハン

https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html

【論説・解説】

■民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(登記事項証明書等における代替措置関係)(2)第2 関係法令と施行通達の解説

法務省民事局付 森 下 宏 輝

法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之

法務省民事局民事第二課補佐官 太 田 裕 介

不動産登記規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018#Mp-Ch_5-Se_2-Ss_4

(代替措置等申出)

第二百二条の四 1項から5項まで略。

6代替措置等申出書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

一申出人が代替措置等申出書又は委任状に記名押印した場合におけるその印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。)が作成するものに限る。)その他の申出人となるべき者が申出をしていることを証する書面

二申出人の氏名又は住所が法第百十九条第六項の登記記録に記録されている者の氏名又は住所と異なる場合にあっては、当該者であることを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した書面(公務員が職務上作成した書面がない場合にあっては、これに代わるべき書面)

三代理人によって代替措置等申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

7前項第一号の規定は、申出人が同号の書面(印鑑に関する証明書を除く。)を登記官に提示した場合には、適用しない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。

8第三十七条及び第三十七条の二の規定は、代替措置等申出をする場合について準用する。

9第五十三条の規定は、申出人が代替措置等申出書及びその代替措置等申出添付書面を送付する場合について準用する。

 印鑑証明書を提出する場合、作成期限はない。・・・申出人の置かれている状況により、最新の印鑑証明書を取得することができない事情などが考えられるから。

 代理によって申出を行う場合の委任状の記載条項例(私見)・・・代替措置等申出に関する一切の件。代替措置等の申出に不備がある場合に、当該代替措置等の申出を取下げ、又は補正すること。原本還付請求受領に関する一切の件

 登記されている氏名、住所に変更があった場合、前提としての氏名、住所変更登記申請は不要。現在の氏名、住所とつながりを証する情報の提供は必要。

 登記申請の添付書類を、代替措置等申出の添付書面として援用することは出来ない。→同じ書類が必要なときは、2通準備。

(立件)

第二百二条の五登記官は、代替措置等申出書が提出されたときは、これを立件しなければならない。

2前項の場合には、登記官は、申出立件事件簿に立件の年月日及び立件番号を記録しなければならない。

3登記官は、第一項の規定により立件をする際、代替措置等申出書に立件の年月日及び立件番号を記載しなければならない。

 色々な人から登記事項証明書などの請求がある度、登記事項証明書を公示用住所に書き換えて作成するという継続的な職権発動を伴うので、登記申請における受付ではなく、立件という言葉が用いられる。

(調査)

第二百二条の六登記官は、代替措置等申出があったときは、遅滞なく、申出に関する全ての事項を調査しなければならない。

2登記官は、前項の場合において、必要があると認めるときは、申出人又はその代理人に対し、出頭を求め、質問をし、又は文書の提示その他必要な情報の提供を求める方法により、申出人となるべき者が申出をしているかどうか又は法第百十九条第六項に規定する場合に該当する事実の有無を調査することができる。

3登記官は、前項に規定する申出人又は代理人が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に同項の調査を嘱託することができる。

4登記官は、第二項の規定による調査をしたときは、その調査の結果を記録した調書を作成しなければならない。前項の嘱託を受けて調査をした場合についても、同様とする。

5前項後段の場合には、嘱託を受けて調査をした登記所の登記官は、その調査の結果を記録した調書を嘱託をした登記官に送付しなければならない。

 調査は原則として申出人に対して行い、代理人のみを出頭させて調査の対象とすることはない。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第126回)247 一般社団法人の解散と基金の返還について

一般社団法人商業登記倶楽部 名誉主宰者兼最高顧問、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、日本司法書士会連合会顧問、神 﨑 満治郎

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第四章 清算 第四節 債務の弁済等(基金の返還の制限)第二百三十六条基金の返還に係る債務の弁済は、その余の清算一般社団法人の債務の弁済がされた後でなければ、することができない。は、清算一般社団法人に関する定めであり、第二章 一般社団法 第五節 基金第二款の基金の返還(基金の返還)第百四十一条、(代替基金)第百四十四条の適用はない。参考、熊谷 則一『【第2版】逐条解説一般社団・財団法人法』2021、全国公益法人協会、P466からP476

■Q&A不動産表示登記(97)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

第四章 建物(区分建物) 第一節 登記事項

 Q268 規約の設定はどのようにするのか。

建物の区分所有等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069#Mp-Ch_1-Se_1

(区分所有者の団体)第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

(書面又は電磁的方法による決議)

第四十五条 この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。

2この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。

3この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、集会の決議と同一の効力を有する。

4第三十三条の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第一項及び第二項の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。

5集会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。

■逐条解説不動産登記規則(50)

元法務省民事局民事第二課地図企画官 小宮山 秀 史

第99条 地 目

第九十九条 地目は、土地の主な用途により、田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園及び雑種地に区分して定めるものとする。

 地積は量的、地目は質的な特定の要素。

 田と畑の違い・・・工作に当たり用水を利用するかどうか。

 宅地については不動産登記事務取扱手続準則69条。

 用悪水路・・・用水路のうち、かんがい用・使用後の水をはいせつするための水路(不動産登記事務取扱手続準則68条16号)。

 公衆用道路・・・一般人が通行するために使われている土地(不動産登記事務取扱手続準則68条21号、登記研究177号P44、昭和37年6月20日民事甲第1605号民事局長回答「公衆用道路(個人所有)の地目の定め方について)

 農地について、登記研究405号P63、昭和56年8月28日法務省民三第5402号民事局長通達「登記簿上の地目が農地である土地について農地以外の地目への地目の変更の登記申請があつた場合の取扱いについて」、登記研究 429号P120、1983年9月30日質疑応答六三〇四「地目変更の時期について」、登記研究352号P104、1977年3月20日質疑応答五三四六「中間地目変更登記の可否について」

■商業登記の変遷(67)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

第9章 商業登記に関する文献等の歩み

 第1節 文 献

  4.先例集

  5.実務書

信山社『商業登記法釋義(電子書籍)日本立法資料全集別巻1327』2022

https://www.shinzansha.co.jp/book/b10083969.html?srsltid=AfmBOoorOxOrsLf5sygbHa8VA32D2x95ylJWr4SWy40HxvN1Id7qfL2t

■民事信託の登記の諸問題(38)

渋 谷 陽一郎

第260 信託監督人の表示は一般的な登記事項となり得るのか

 不動産登記法97条1項11号により、却下事由には該当しないと考えます。ただし、本記事は、信託監督人の表示を一般的な登記事項として、信託目録に積極的に登記できるか、という意味なのかもしれません。

第261 何が望ましい信託監督人の登記の表示なのか

 信託監督人、住所等、氏名・名称が特定という意味で望ましいと考えます。信託監督人になるべきものと指定された者、と登記することも可能だと考えます。根拠は信託法131条です。

 どちらの表示でも、取引に入ろうとする第三者は、信託契約書、変更があれば変更を証する情報による権利義務の確認と、信託監督人本人の本人確認、意思確認を行うことになると考えます。信託監督人と登記されていても、登記されている者は自身が信託監督人とされていることを知らない可能性があります。

第262 士業者の表記は可能なのか

 士業者の肩書については、登記できないという理由はないと考えます。法人が信託監督人になる場合、株式会社、一般社団法人等を登記することはできない理由がないのと同じ理由となります。士業者が強制加入団体に加入していることは、登記事項と関係ないのではないかと考えます。なお省略は信託監督人の意思により自由だと考えます。

第263 信託監督人の就任承諾前に登記できるのか

 就任承諾前に関しては、信託法131条の文言通り、信託監督人となるべき者、という表示になると考えます。

第264 受託者の処分行為に対する同意権者としての信託監督人の表示

第265 信託監督人の権限伸長の可否

 信託監督人の権限の伸長・拡大について、消極論も信託法132条1項の条文上、あり得ると考えます。実務が信託監督人の権限の伸長・拡大で今後も動いていき、信託不動産の取引に支障をきたすようなことがない場合、積極論に固まる方向になるのではないかと考えます。

【資 料】

■会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(14)

第2章 株式会社の登記

 第12節 代表取締役 

1 選 定

登記研究221号P46、昭和41年1月20日民事甲第271号民事局長回答 「代表取締役の選住について」

登記研究529号P31、1992年2月29日発行 吉戒 修一:法務省民事局第四課長、門野坂 修一:法務省民事局付、渡部 房男:法務省民事局第四課補佐官、門田 稔永:佐賀地方法務局総務課長(前法務省民事局第四課補佐官)、片岡 貞敏:法務省民事局第四課係長、吉越 満男:法務省民事局第四課係長、植田 和男:法務 【論説・解説】「株式会社に関する先例をめぐって(40)」・・・取締役の予選も論点。予選をせざるを得ない事情も必要。

登記研究416号P133、1982年8月30日質疑応答【六一一九】「代表取締役の重任の日について」

 権利義務代表取締役の規定(会社法351条)は適用されるが、前提としての取締役の任期満了退任日は、原則として代表取締役の退任日。

  2 辞 任

登記研究808号P111、平成27年2月20日法務省民商第18号法務省民事局長通達「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

登記研究809号P59、佐藤 真紀子:法務省民事局民事第一課総括係長(前法務省民事局商事課商業法人登記第一係長)【論説・解説】「平成27年改正商業登記規則等に基づく商業・法人登記事務の取扱いについて」

 辞任の登記の前提として、住所の変更登記が必要な場合。

  3 権利義務

登記研究91号P30、昭和30年4月26日民事甲第673号民事局長回答 九二八「商業登記事務の取扱について」

 取締役としての権利義務を有する場合と代表取締役としての権利義務を有する場合は一致しない。

登記研究 204号 46頁  昭和39年10月3日 民事甲第3197号 民事局長回答 ◎三〇四八 代表取締役の変更の登記について

 代表取締役としての権利義務を有する者が代表取締役を退任日とその原因について。

登記研究503号P189、平成元年9月5日法務省民四第3520号民事局長回答「代表取締役の変更登記申請の受否について」

 代表取締役としての権利義務を有する者の解任の可否。

  4 死 亡

登記研究182号P157、昭和37年6月28日民事甲第1650号民事局長一部変更指示◇登記官吏会同決議福島地方法務局本局直轄管内及び支局管内事務協議会決議

登記研究646号P117、2001年11月30日【商業登記の栞】(8・有限会社の代表取締役)

 特例有限会社の定款の定めによる代表取締役が死亡した場合の変更の登記の申請は、後任の代表取締役から申請。

 

 5 代表取締役の住所

登記研究808号P142、平成27年3月16日法務省民商第29号法務省民事局商事課長通知「内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて【解説付】」

 代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記申請の受理の可否。

登記研究329号P67、1975年4月20日第六部質疑・応答五一五二「重任する代表取締役の住所が登記簿の記載と抵触する場合の登記の受否」

  6 印鑑証明書の添付省略

登記研究609号P166、平成10年2月10日法務省民四第270号民事局第四課長通知「代表取締役の変更の登記の申請書に添付すべき印鑑証明書の添付の省略が認められる場合について〔解説付〕」

登記研究270号P72、1970年5月20日第五部質疑・応答四八二五「同時になされた代表取締役の改印届と当該代表取締役の重任による変更の登記申請書の印鑑について」

登記研究241号P68、1967年12月20日第五部質疑・応答四五〇四「印鑑証明書の添付について」

 取締役会設置会社の株式会社で、代表取締役の就任による変更登記の申請書に添付されている取締役会議事録の印鑑と登記申請時に提出されている印鑑が同一の場合、就任する代表取締役個人の印鑑証明書の省略の可否。

【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6248〕民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有権の登記の登記事項の追加関係)(令和6年3月22日付け法務省民二第551号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

▽供託関係

〔6249〕出入国管理及び難民認定法第37条の2第2項の規定による領置物件等の公売に係る代金の供託に関する手続について(令和6年6月10日付け法務省民商第108号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局商事課長依命通知)

信託フォーラムvol.22/2024年10月号

信託フォーラムvol.22、2024年10月号

信託フォーラム2024年10月号、日本加除出版

 特集1令和6年改正公益信託法制/特集2 民事信託をめぐる近時の紛争事例 vol.22

巻頭言 結婚・子育て支援信託制度~「こどもまんなか社会」の実現に向けて~

(こども家庭庁長官官房参事官(総合政策担当)●中原茂仁)

https://www.cfa.go.jp/policies/shoushika/zouyozei

 贈与された資金を、金融機関において18歳以上の子・孫等(受贈者)名義の専用口座により管理し、専用口座から払い出した金銭が結婚・子育て資金に充てられたことを金融機関が領収書等により確認・記録し、保存します。専用口座は、子・孫が 50 歳に達する日などに終了。

対談 社会的弱者の権利擁護と信託の可能性

(日本弁護士連合会会長●渕上玲子× 中央大学研究開発機構教授●新井 誠)

 認知後見制度について、コスト面で課題。信託監督人への就任。信託契約に、福祉的要求を満たす、という条項を入れると、後見の費用を賄える。については分かりませんでした。

特集1 令和6年改正公益信託法制

公益信託に関する法律の改正の概要(内閣府大臣官房公益法人行政担当室企画官●古谷真良/前内閣府大臣官房公益法人

行政担当室参事官補佐●太田道寛/法務省民事局調査員●藤井梨絵/内閣府大臣官房公益法人行政担当室主査●大塚一輝)

 公益信託に関する法律は、信託法1条の他の法令。33条により、信託法の適用関係について規定。4条、8条、6条、12条などにおいて、信託法の特則を規定。手続の流れに沿うという意味で、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律と同様の条文構成。認定許可基準を法律に規定。2026(令和8)年4月に施行予定。

 

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の一部を改正する法律について(内閣府大臣官房公益法人行政担当室参事官補佐●勝山貴之)

 公益法人information「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議 最終報告」

https://www.koeki-info.go.jp/regulation/koueki_meeting.html

 中期的な期間における収支相償原則へ。遊休資産から使途不特定財産へ。収益事業等の内容の変更について、届出事項へ。区分経理を義務付けへ。監事の独立性を保つための、法人内における一定の親族関係廃除。

信託業界の視点から見た新しい公益信託法制(一般社団法人信託協会専務理事●川嶋 真)

 公益信託の信託事務及び信託財産の範囲の拡大。公益信託の受託者の範囲の拡大。主務官庁制の廃止・行政庁一本化。

公益信託に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000030/20260521_000000000000000#506AC0000000030-Sp

(旧公益信託の新法の規定による公益信託への移行)

第四条旧法公益信託及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十八年法律第百九号。以下「信託法整備法」という。)第二条の規定によりなお従前の例によることとされた信託法整備法第一条の規定による改正前の信託法(大正十一年法律第六十二号。第三項及び附則第八条第二項において「旧信託法」という。)第六十六条に規定する公益信託(以下この項において「旧信託法公益信託」という。)は、移行期間内において、新法第三条に規定する行政庁(以下「行政庁」という。)の認可(以下「移行認可」という。)を受けた場合には、新法第七条第一項に規定する公益信託認可(附則第十二条において「公益信託認可」という。)を受けたものとして新法の規定による公益信託となることができる。この場合において、移行期間内に当該移行認可を受けていない旧法公益信託及び旧信託法公益信託(以下「旧公益信託」という。)は、移行期間が満了する日に終了するものとする。

2項、3項略。

信託会社を利用した公益信託の活用(ふくし信託株式会社・弁護士●清水 晃)

 高齢者や障碍者のための施設を運営するケースにおいて、公益信託を利用した場合の信託会社の役割を想定。

弁護士から見た新しい公益信託法(弁護士●平井信二)

 内閣府令、政令への委任が数多く存在し、規制法的性格が強い。

 弁護士が公益信託の受託者に就任した場合に想定される事業として人権擁護活動支援事業など。信託管理人に弁護士が就任することの意義。

 新しい公益信託税制(東京大学社会科学研究所教授●藤谷武史)

 公益信託が収益事業を行わないことによる税務の簡素化。特定資産公益信託に該当しない公益信託の財務規制。

法人税法(定義)第二条二十九の二

https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034/20250401_505AC0000000021#Mp-Pa_1-Ch_1

法人課税信託 次に掲げる信託(集団投資信託並びに第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託及び同項第二号に規定する特定公益信託等を除く。)をいう。

以下略

新しい公益法人制度・公益信託制度への期待(多摩大学サステナビリティ経営研究所教授・主任研究員●小林立明)

 NPO法人等への寄付、公益法人設立との違い。財産の隔離。信託契約で寄付金の使途や運営について規定可能。受託者を変更することが出来る可能性がある。設立・運営コストが高い。

 人材派遣会社が公益信託の認定を受けることが出来る可能性がある。社会的インパクト評価の専門家関与の必要性。

 特集2 民事信託をめぐる近時の紛争事例

受託者の裁量をめぐる裁判例─東京高裁令和6年2月8日判決(弁護士●志田博文)

 平成29年6月15日、母、遺言作成。母と次女による信託契約1を締結。委託者長女、受託者次女、受益者長女。および信託契約1に基づく登記申請。

 平成29年10月26日、母、死亡。母死亡による信託契約2の委託者を孫とする変更、受益者を孫とする変更登記申請。

 平成29年12月7日、長女と次女との間で、受託者を母と次女とする信託契約2を締結。委託者母、受託者母および次女、受益者母および長女。および信託契約2に基づく登記申請。

 平成30年6月27日、長女が次女に対して、信託契約1の解除による終了と、信託契約1の受託者の解任を通知。

 受益権(信託法2条2項7号)と受託者の裁量(信託法26条)について。

・受託者の信託事務として、

信託金融資産から公租公課、保険料、修繕費その他の必要経費を支払い又は控除した上、受託者が相当と認める額の生活費等を受益者に交付し、受益者の施設利用費、病気療養費等を銀行振り込み等の方法で支払う。また、「受益者の希望に沿った必要な費用」、祭祀に係る費用を支払う。

・受益権の内容として、

 委託者の長女に対する扶養の範囲で受益権を与える。

との記載がある場合。

・賃料収入から、

受益者の施設利用費、病気療養費、信託不動産の管理費、固定資産税等、火災保険料、電気料金及び雑費、受託者報酬、リフォーム代、専門家費用を控除した額の受益者が2人なので、2分の1の額を長女が取得することは認められない。

・理由

 受託者の信託事務・受益権の内容に、生活費等の具体的金額や計算方法、交付時期は明記されていない。

 信託契約の締結後、定期的に賃料収入の一部を、施設利用費、病気療養費を除く生活費等として交付していた事実を認めることが出来ない。

 受託者には、信託不動産の修繕等に備えて、賃料収入を留保する裁量が認められる。

・感想

受益権について具体的に明記していない場合、給付の事実がなければ、受託者の裁量が認められる可能性が高い。信託の目的などから総合的に判断して認められる、という可能性は低い。

・対応

 受益権について、給付される最低額や具体的な算定方法を定める。

 

民事信託において委託者兼受益者による受託者の解任が認められなかった事案 ─ 東京地裁令和5年3月17日判決(弁護士●金子順一)

平成28年11月、信託契約締結。委託者父、受託者次男、受益者父。残余財産の帰属権利者次男。

(信託の変更、終了に関する規定)受益者は受託者との合意により、本件信託契約の内容を変更し、若しくは本件信託を一部解除し、又は終了することができる。

令和3年9月、受益者父から受託者次男に対して、信託財産に関する目録や帳簿の開示、未精算賃料全額の支払い、今後は毎月の賃料収入から必要経費を控除した残額の給付を請求。

令和3年10月、令和3年9月の請求に受託者次男が応じなかったため、受益者父から受託者次男に対して、受託者を解任する意思表示。

令和3年10月、受益者父の配偶者が新しい受託者に就任する意思表示。

(争点)

受託者次男の解任は有効か。

(結論)

有効ではない。

(理由)

 信託の終了に制限をかけているから。信託の終了を受益者が任意に出来ない場合に、任意に受託者を解任することが出来ると、信託の終了と同様の形を作り出すことができる。例えば、受託者を交代して、新しい受託者との合意により信託を終了することができる。

 また、受託者は無報酬であり、残余財産の帰属権利者に指定されているので、受益者の任意で受託者の解任を認める信託と認めるのは難しい。

 だから、信託の受託者の解任にも制限を付けた(信託法58条3項)と解釈するのが相当。

(対応)

 受託者の解任について、信託行為に規定を置く。

信託財産の追加時における委託者の意思内容及び意思能力の有無が問題となった事例 ─ 横浜地裁令和5年12月15日判決(東洋大学法学部准教授●根岸 謙)

平成19年9月30日、信託契約締結。委託者X、受託者Xの弟、受益者X。

(追加信託に関する条項)

 Xの配偶者死亡によりXが相続人となった場合は、受託者Xの弟がXに代わって遺産分割協議を行うことが可能。取得した遺産について管理処分する権限を持つ。

平成22年3月30日、公正証書遺言作成。遺言者X、受遺者はXの姪。

令和2年5月、Xの配偶者死亡。

令和2年9月28日、Xの配偶者名義の不動産について、Xに対する所有権移転登記。

令和2年10月9日、Xについて後見開始の審判確定。

令和2年10月19日、信託を原因として、受託者Xの弟に対する所有権移転登記及び信託登記。

令和2年12月28日、Xの成年後見人が、受託者Xの弟に対して、信託契約の解除及び所有権移転及び信託登記抹消の意思表示。

令和3年1月7日、Xが自筆証書遺言作成。受遺者はXの弟。

令和3年4月、X死亡。平成23年3月30日付公正証書遺言に基づく遺言執行者就任。

(結論)

令和2年10月19日、信託を原因として、受託者Xの弟に対する所有権移転登記及び信託登記の抹消について。・・・認められる。

(理由)

・信託契約書に、信託する旨の文言がない。

・信託契約書作成後、Xの弟が受託者として信託事務を具体的に行っていたことが認められない。

・平成22年3月30日付の公正証書遺言で、受遺者はXの姪としていることと整合性が取れない。

(論点)

・平成22年3月30日付の公正証書遺言がなく、信託契約書に、Xの配偶者が死亡しXが相続した不動産は、信託財産たる不動産とする。受託者Xの弟は、Xが相続により取得した不動産について、所有権移転及び信託登記を行う。と記載されていた場合、信託法149条4項に基づく追加信託として有効か。

民事信託に関する裁判外紛争(弁護士●伊庭 潔)

 信託設定後に親族間の関係が悪化したケース。追加信託の際に書面を作成しなかったケース。第二次受益者に対して十分な給付が行われないケース。借地上の建物を信託する場合。

P79、受託者が無償で信託の引受けを行っているのであれば、信託業に該当せず受託者になることは信託業法に違反しない。について・・・無償であっても反復継続して信託の引受けを行う場合、信託業法2条に違反します(小出 卓哉『逐条解説信託業法』2008年、清文社、P17)。

白鳥教授の投資信託研究入門 第22回(一般社団法人投資信託協会●青山直子)

 1,月々に投資できる額や投資期間、目標とする資産額のイメージ。

 2.期待リターンとリスクの設定。

 3.設定に合う投資対象があるか探してみる。

家族信託への招待 第22回(弁護士●遠藤英嗣)

 現状、裁判所の考えは、信託が信託契約によって設定された場合、その契約性を重視され、新任関係破壊の法理はまだ確立されていない。

P123、信託行為に信託が途中で終了したときの残余財産の帰属者を終了時の受益者とする定めがないことが多く、結果信託が終了しても信託財産は信託設定者には戻ってこないのである。について・・・そのような状況であることについて知りませんでした。

信託と税金 no.22(税理士●菅野真美)

消費税法

https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108#Mp-Ch_1-At_14

(信託財産に係る資産の譲渡等の帰属)

第十四条信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に係る資産等取引(資産の譲渡等、課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りをいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)は当該受益者の資産等取引とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、法人税法第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託若しくは同項第二号に規定する特定公益信託等の信託財産に属する資産及び当該信託財産に係る資産等取引については、この限りでない。

2項、3項略。

民事信託と登記 第13回(渋谷陽一郎)

登記研究915号P139、令和6年1月10日法務省民二第17号法務省民事局民事第二課長通知「信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記の可否について」

 受益者変更登記を、受託者が報告形式の登記原因証明情報を提供して単独で申請するための要件。

 受益者変更登記を受託者が申請する義務の有無。

ここからはじめる! 民事信託実務入門 第7回(弁護士●金森健一)

 信託契約の効力発生要件を、債権契約の構成にするか、要物契約の構成にするか。

■信託のひろば

事業性融資の推進等に関する法律について─企業価値担保権に係る信託に関する規律を中心に

(金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室課長補佐●水谷登美男)

(森・濱田松本法律事務所 弁護士・NY州弁護士(元・金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室課長補佐)●飯島隆博)

(金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室課長補佐●五十嵐一裕)

事業性融資の推進等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000052/20280613_000000000000000#Mp-Ch_3-Se_1

6条3項

3 この章及び次章において「企業価値担保権信託契約」とは、債務者と企業価値担保権信託会社との間で締結される信託契約であって、債務者を委託者とし、企業価値担保権信託会社を受託者とするものをいう。

(登記)

第十五条企業価値担保権の得喪及び変更は、債務者の本店の所在地において、商業登記簿にその登記をしなければ、その効力を生じない。ただし、一般承継、混同又は特定被担保債権の消滅による得喪及び変更については、この限りでない。

(他の権利との関係)

第十八条債務者の財産の上に存する先取特権(民法第三百二十五条に規定する先取特権(同条第三号に係るものに限る。)に限る。)、質権又は抵当権(以下この款において「他の担保権」という。)と企業価値担保権とが競合する場合には、それらの優先権の順位は、他の担保権に係る登記、登録その他の対抗要件の具備と企業価値担保権に係る登記の前後による。

2項以下略

 担保付社債信託法が適用される場合の適用除外について、225条。

 担保権の実行、換価は事情譲渡等によってすることについて、157条。

■論 説 家族信託と専門職の在り方─ 台湾(中華民国)との比較を通じて

( 大阪経済大学経営学部ビジネス法学科教授●橋谷聡一)

台湾(中華民国)民法

https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0000001

金融監督管理委員會 信託2.0

https://www.fsc.gov.tw/ch/home.jsp?id=834&parentpath=0,2,310

中華民國信託業商業同業公會 我國辦理家族信託模式建議與架構分析

https://www.trust.org.tw/tw/research?page=2

家族信託規劃顧問師という資格がある。国家資格ではない。72時間の授業。

https://web.tabf.org.tw/page/1110615

高齡金融規劃顧問師における地政士の言及。

https://web.tabf.org.tw/page/1100317

P92、民事信託士検定を行っている。対象は弁護士・司法書士である。―中略―弁護士会、司法書士会、行政書士会に所属する者を対象としている。について・・・行政書士会の位置付けが分かりませんでした。

■ガバナンスの潮流

紅麹健康被害問題におけるコーポレート・ガバナンスの冤罪─「死体蹴り」や「目くらまし」からの脱却

(一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻教授●得津 晶)

2024年7月23日 小林製薬株式会社 事実検証委員会の調査報告を踏まえた取締役会の総括について

https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240723_01

 各規定に整合性が取れていない部分があること。経営者の業績評価の必要性。

■信託事例紹介

若年者の民事信託(弁護士 田中智芳)

委託者兼受益者は、成人後数カ月を経過したA。受託者は叔母。信託監督人は未成年後見人であった弁護士。

(信託の目的)

 詐欺被害、浪費の予防

 Aが一定の年齢に達するまで、またはAの財産承継者が現れるまで(Aが結婚するなど。)

(信託財産)

委託者兼受益者の父母が遺した遺産。不動産は信託契約前に換価。

(信託財産の管理方法)

投資信託・・・現状維持。

金銭・・・大学生活に必要なお金は信託財産たる金銭に含めず、Aに渡し、残りを信託財産として、不足した時に随時給付。

預貯金口座の解約要件・・・受託者の同意。

(追加信託)

 信託監督人の意見を参考にして、数年ごとにAと受託者Bが協議。

(信託の終了事由)

 Aが死亡したとき。

 Aが婚姻したとき。

 Aが25歳になったとき。

 Aが紺養子縁組したとき。

 Aが婚姻前にこどもができたとき。

(残余財産の帰属権利者)

 Bと親戚1名。

■民事信託の最新動向

民事信託士検定10期を迎えて─ 軌跡と展望

(一般社団法人民事信託推進センター代表理事・民事信託士検定委員長・司法書士●押井 崇)

 信託会社を受託者とする選択肢。

 P111、極論ではあるが、民事信託は、財産管理、財産承継に関し、どのような事例においても採用することが可能である。について・・・どのような文脈なのか分かりませんが、疑問です。

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