法制審議会家族法制部会 第4回会議議事録を読もうの会

詳細
法制審議会家族法制部会 第4回会議議事録が公開されました。
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00073.html

http://www.moj.go.jp/content/001353853.pdf

■読み解きのパネラー:古賀礼子(弁護士)、松村直人(子育て改革のための共同親権プロジェクト 発起人)+ご希望される方、是非!

弁護士古賀礼子 明日 9月8日ウェビナー

https://note.com/kogareiko/n/nd9bf33acaa4c

■日時:2021年9月8日 (水)

引き続き、本議事録を読み込もうの会を実施したいと思います。
弁護士の古賀礼子さんと、子育て改革のための共同親権プロジェクト発起人の松村が読み込み、気になるところを確認する流れを考えていますが、プロジェクトにご賛同頂いた方で是非、読み解きの議論に参加したい方は、ご連絡ください。

■料金:無料
■参加可能な方:以下のいずれかの方で上限495名までご参加いただけます
・プロジェクト賛同者※プロジェクト賛同は↓からお願いします。
https://joint-custody.org/
・法制審議会家族法制部会の議論が気になる方

第1回  離婚及びこれに関連する制度の見直しについて
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00058.html

第2回 参考人ヒアリング
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00063.html

第3回 養育費及び面会交流に関する論点の検討
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00068.html

加工

第3 議 題

第4 議 事  (次のとおり)

議        事
○大村部会長 予定した時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第4回会議を開会いたします。
  本日は御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。
  本日も前回と同様,ウェブ会議の方法を併用した開催となりますが,引き続きよろしくお願い申し上げます。
  前回からの変更点として,外務省の西森首席事務官が新たに関係官となられるということで,御出席されているので,お名前と所属の自己紹介をお願いしたいと思います。
  西森関係官,よろしくお願いいたします。
○西森関係官 外務省領事局ハーグ条約室で首席事務官をしております西森と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○大村部会長 どうぞよろしくお願いいたします。
  続きまして,本日の会議の配布資料の確認を,事務当局からお願いします。
○藤田幹事 事務局です。本日もよろしくお願いいたします。
  まず,お手元の資料について御確認頂きたいと思います。
  三つの資料を御用意しています。まず,意見交換用の参考資料として,これまでのヒアリング実施状況を一覧にしたもの,次に,家族法制部会の進め方に関する事務局たたき台一案ということで,後ほど御議論いただく,部会の今後の進め方に関する意見交換のために用意したもの,それから,部会資料3を前回と同じく配布しております。
  このうち,初めの2つにつきましては,いずれも本日皆様に御議論いただくためのお手元の参考として用意したものになりますが,こちらは,ホームページ等での掲載はせず,非公表としたいと存じますので,取扱いには御留意下さい。
  また,原田委員から文献を資料として御提出頂いておりますので,こちらについても配布させていただいております。
  資料の説明は以上ですが,追加で,本日の議事に当たり,発言に際してのお願い事を一つ申し上げます。

  本日の会議でもウェブ参加の方がおられますから,御発言される際には,まずお名前をおっしゃってから御発言いただけるよう,改めてお願いいたします。
○大村部会長 それでは,本日の審議に入らせていただきたいと存じます。
  前回,これまでに実施した参考人ヒアリングを踏まえて,委員,幹事の間で意見交換をしたらいかがかという御意見を複数頂きましたので,本日はまず,参考人ヒアリングを踏まえた意見交換を行わせていただきたいと考えております。
  それに続きまして,やはり前回,今後の議論の進め方につきましても,御意見を頂いたところでございます。そこで,事務当局の方から,今後の進め方のたたき台の案を配布してもらっておりますので,ヒアリングを踏まえた意見交換をいたしました後に,このメモを参考にしつつ,今後の検討の進め方についても,併せて意見交換の機会を設けたいと考えております。
  最後に,残った時間で前回検討していただきました部会資料3,これは大部分が積み残しとなっておりますので,この積み残し部分についての意見交換を行わせていただきたいと考えております。途中で2回ぐらい休憩を入れる形で進めさせていただきたいと思っております。
  そこで,まず,前回,前々回の2回のヒアリングを踏まえた意見交換ということで,テーマや取り上げる順序などについて特に限定はいたしませんので,自由に御発言を頂ければと思っております。

○武田委員 前回,前々回のヒアリングを踏まえてということで,この2回にわたるヒアリングに関して,お子さんのお立場,同居親,別居親のお立場,あと支援の立場にある様々なお立場の方からヒアリングができたこと,非常によかったと思います。ご尽力いただきました事務当局の皆様,参考人の皆様にまずは御礼を申し上げたいと思います。
  まずは感想を述べさせていただいて,今後ヒアリングをどうするかというところを,簡単に意見を述べさせていただければと思います。
  お子さんの当事者からの話で,やはり私といたしましては,離婚前の親教育という必要性を改めて痛感したというのが,まず感じた点でございます。あと,DV被害者の同居親の方からお話を受けてということですけれども,やはり離婚後に限らず,婚姻中から困難に陥っている父母への支援の必要性ということを,改めてこちらも痛感いたしました。別居親のお母さんの感想といたしましては,同意なき連れ去りから始まって,監護の継続性というところから,現状の家裁の親権,監護権の決定基準,あとお子さんの意思の捉え方に関して実情をお話しいただき,家庭裁判所の現行実務の問題が明らかになったように感じました。
  支援者の皆さんからのヒアリングでは,ここ数年で,やはり我が国の中での価値観の進展が見られたなと感じております。委員,幹事の先生方には御存じない方もいらっしゃると思いますけれども,2016年,17年にかけて,国会で共同養育支援法という超党派の議員による議員立法を進める動きがございました。この法案は,簡単に申し上げると,家族法研究会でもテーマに挙がっておりました離婚前共同養育計画を議員立法で法制化しようという法案であって,私ども親子ネットも推進の立場として議論に参画させていただいておりました。当時,思い起こせば五,六年前ですかね,先だってお越しになっていただきました泉市長も取り組み始めてまだ間もない頃,政府が注目し始めた頃だったように記憶しております。しばはしさんや小泉さんの活動に至ってはまだ始まっていなかったと思います。ここ五,六年くらいで,法改正なくとも離婚後も双方の親が子の養育に関わるということを少しでも支援する志のある方が,多様な取組をしていただいていると,こんなふうに感じております。こういった取組を参考にしながら制度化していくために,委員・幹事の先生方と有用な議論が進められればよいなと思ったのが,まず感想でございます。
  今後に関してということについて,2点ほど述べさせていただきます。配布されている資料の中に,海外法制に関するヒアリングというものがございました。これはちょっと,どんな方をイメージされているのかというのは,まだ分かりませんけれども,比較法の学者の先生なんかが呼ばれるのかなとも思っております。ただ,私といたしましては,こういった法制面の海外の実態に加えて,諸外国がなぜ共同養育や非同居親との人的な関係,つまり面会交流ですね,こういったものを大事なものと考えているのかと,こういった考え方の背景を,一度きちんと聞いてみて理解を深めたいと思っております。今更私が話すまでもなく,1990年代,諸外国は子どもの権利条約を批准以降,共同養育,共同監護へとかじを切ってきたと認識しております。こういった諸外国の国民意識を語れる方から話を聞いてみたいと感じております。個人的には,2回目の資料で配布されました参考資料2-7ですね,昨年7月,EU議会で日本における子の連れ去りに関する決議が圧倒的多数で採択されましたが,そういったEUの関係者,具体的には,例えば,EU大使館でありますとかEU諸国の大使館関係者からヒアリングはできないかということを提案させていただきたいと思います。
  また,ヒアリングについていろいろな意見あろうかと思いますが,ヒアリングはヒアリングとして,継続的に必要に応じて取り入れるということでよいかと思っております。順次議論を進めつつ,必要に応じてヒアリングを組み込んでいくという方法がよいのではないかと,個人的には感じております。
  ちょっと長くなりましたが,以上でございます。

○大村部会長 ありがとうございます。感想と,それから今後の進め方についても御意見を頂いたと理解しております。
  ウェブの方で,大石委員,小粥委員から手が挙がっておりますので,大石委員,小粥委員の順番でお願いいたします。


○大石委員 千葉大学の大石です。
  これまでの当事者の方や専門家の方のヒアリングによって,多くを学ばせていただきました。ありがとうございます。
  その過程で,離婚のダメージを最小限に抑えて,子どもの健全な発達を確保することの重要性,特にどのようにして子どもの意見を聴取し,葛藤を抱える両親と調整しながら子どもに寄り添っていくかが非常に重要な問題であると,私自身,認識を新たにいたしました次第です。
  つきましては,発達心理学の第一人者でおられる菅原ますみ委員がこちらの部会にはいらっしゃいますので,父母の離婚やその後の養育が子どもに与える影響に関して,国内外の研究に基づく心理学の御知見を報告いただけましたら大変有り難いなと,私自身,専門は経済学ですので,分野外ということもあり,そういった知識を委員間で共有したいと考えてあります。御検討いただけましたら,大変有り難いと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。感想と,それから今後のヒアリングについて,具体的なお名前を挙げての御提案がありました。御提案につきましては,また後で進め方との関係でお諮りさせていただきたいと思います。
  続きまして小粥委員からお願いいたします。

○小粥委員 小粥でございます。
  私からは,まず,これまでのヒアリング,調査結果の開示等,事務局を中心に御尽力を賜りまして,また,ヒアリングに応じてくださった皆様に大変感謝しておりますし,大変勉強させていただいたということを,まず申し上げたいと思います。
  その上で,今後のことについて申し上げると,抽象的な形で申し上げざるを得ませんけれども,やはりこの法制審議会の部会のミッションというものを再確認する必要があるのではないかと考えます。つまり,これは,法務大臣が法制審議会に諮問して,法制審議会の総会がこの部会を立ち上げて,最終的には法務大臣に対する答申という形で,基本的には民事法制の改正という形でどのようなことをするのか,ということを考えなければならないと。そうしますと,即物的な言い方になってしまいますけれども,民法のどこをどう変えるのか,あるいは家事事件手続法のどこをどう変えるのか,あるいは民事執行法のどこをどう変えるのかというような形で,結論をしかるべき時期までに得るということが必要だろうと考えます。改めて申し上げるまでもないことかもしれませんが,このような形で部会を立ち上げているということは,離婚に伴う子の養育の問題について,一歩,二歩前進する千載一遇のチャンスなんだろうと思うのです。ですので,この機会を生かして,何とか前向きに一歩でも二歩でも前進するような成果を,この部会のミッションの範囲内で実現するという,そこに少しフォーカスしていくということが必要ではないかと考えます。
  現時点では,このような抽象的な言い方にとどめさせていただきますけれども,追って具体的なことを,また補足する機会があればと存じます。
○大村部会長 ありがとうございます。主として今後の進め方について,この部会の果たす役割との関係で御指摘を頂いたと受け止めました。
  そのほかに,御発言いかがでございましょうか。


○柿本委員 柿本でございます。これまでヒアリングに御参加していただきました当事者や専門家の方々に感謝いたします。現状や実態を知ることができ,大変多くのことを学ばせていただきました。ありがとうございました。
  私からはコメントが4点でございます。只今,小粥委員より部会のミッションについての御意見を頂いたところでございますが,民事法制以外の公的支援に関わるところも問題がたくさんあぶりだされてきたように,思いました。本論から外れてしまっているかもしれませんが,第2回会議のときのA参考人「お金がないと子どもは育ちません」という言葉は,養育費の重要性として強く,私の心に残っております。また第3回会議,野沢先生の資料4ページの離婚後の養育費や面会交流の実施状況というところで,養育費も面会交流も,離婚後三,四年たつとほとんどのケースで途絶えるという説明がありました。継続性を維持するための法整備が必要ではないかと,考えたところでございます。
  3点目は,浅井さんと光本さんからの,子どものための第三者機関のカウンセリングの充実を,というところは,非常に重要ではないかなと感じております。お子様が調査官による調査のときに「黙る,忘れちゃった」というようなことが起きたという話をお聞きしまして,調査官の養成機関の充実ですとかトレーニング方法の研究などが非常に重要になってくるのではないかと考えました。
  4点目ですが,面会交流支援事業をなさっている団体の方たちは,非常に一生懸命活動されているということを知りましたが,相談料などが高額な場合も多いようですので,金銭的に余裕のない方たちも受けられるような,そういう仕組みができたらいいのではないかというところなどが私が感じたコメントでございます。


○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングを聞いていただいて,民事法制以外の問題がかなりあるのではないかという感想を抱かれたと承りました。
  最後に本論から外れるかもしれないけれどもという留保の上での御指摘もありましたが,先ほど御指摘のあった,本部会でやるべきこと,できることとの関係で考える必要があろうかと思いますけれども,貴重な御指摘として伺いました。
  石綿幹事,大山委員からお手が挙がっているようですので,その順番でお願いいたします。


○石綿幹事 石綿でございます。
  まずは,ヒアリングでお話くださった皆様,また,それをアレンジしてくださった事務局の皆様,どうもありがとうございました。
  ヒアリングを通じて,感じたことを二つ述べさせていただければと思います。
 まず,子どもの視点を伺えたことは大変参考になったと考えております。人によってそれぞれではありますが,何らかの形で離婚後も別居親との交流,別居親の関与を求める視点というのが感じられましたので,事務局から既に提示された面会交流,養育費の課題に加えて,離婚後の父母の子どもの養育の在り方について検討してみるというのは,子どもの利益,子どもの意思の尊重という点からも意味があるのではないかと思いました。
  ヒアリングを通じてもう1点感じたのは,光本参考人だったと思いますが,離婚が増えるということは再婚が増えるということだという御指摘がありまして,それとの関係でも,連れ子養子の問題など未成年養子縁組等についての検討をすることも必要ではないかと思ったところです。
  今後の議論の進め方ですが,ヒアリングを通じて,民事法制以外のことについても対応する必要があることは様々あるのではないかということは私自身も感じておりまして,先ほど柿本委員がおっしゃったというところにも共感をいたしますが,それと同時に,小粥委員が御指摘なさったように,ここは法制審であって,主に民事法制の在り方について検討する場だと理解しております。ですから,これからは,民法をはじめとした民事法の具体的な議論に入っていければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からも感想と今後の進め方についての御意見を頂きました。これまで出ていない項目でいうと,再婚の場合も考える必要があるのではないかといった御指摘も頂きました。


○大山委員 経団連の大山でございます。
  私もこれまでのヒアリングで,いろいろな角度から,それぞれの御専門のお立場の方や,当事者の方からのお話をお伺いできて,大変勉強になりました。ありがとうございました。
  その上で,いろいろお話を伺って,まさに今,先生方から既に御指摘いただいているとおり,法制審の場でありますので,民事法制の在り方や法改正につながるような検討を進め,最終的には法改正に収束するよう目指していくべきと感じております。その一方で,前回の明石市長のお話にもございましたように,例えば自治体でも熱心に取り組めば,いろいろなことができるということも感じており,法制度以外にも,様々な課題に対する事前の防止策や対応策を含め,自治体でできること,民間でできること,それぞれいろいろな役割があると思います。ただ,最終的には,どの論点につきましても,法制度の見直しにうまくつながっていくよう検討を進めていただければ有り難いと思っております。
  その上で,ヒアリングも必要に応じて是非行っていただければと思っております。特に前回も御指摘いただいており,また今後の進め方のたたき台にも記載いただいております海外法制に関するヒアリングについては,海外の民間のお立場の方というよりは,学者の方で,また,あまり細かいことではなく大きな法制度に関するご説明と,そういった制度が実際にどれぐらいどのように使われているかといったことを,私個人としては是非お伺いしたいと感じております。
  それから,今後の大まかな進め方につきましては,今回の法制審における検討事項は,多岐にわたる論点があると思いますので,事務局のたたき台の案にあるとおり,まずは一巡,いろいろな論点について総ざらいした上で,その後,二巡目という進め方であれば,その過程で議論を収束できる論点は明確にあると思います。その一方で,例えば,DVの問題をはじめ,個別事情によって様々な形があり,なかなか一つのケースに論点を絞り込めないものもあると思いますので,二巡目については,よりテーマを絞り込んで法制度につながるような論点に関する議論を,進めていただければ良いと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。全体としての進め方と,それから具体的な議論の手順について御発言を頂きました。
  海外法制のヒアリングについては,基本的な枠組みと,それから実態について聞きたいという御要望を頂いたと承りました。
  落合委員,赤石委員の順番でお願いいたします。

○落合委員 落合です。
  法制審ということで法制度が中心になるわけですけれども,私はやはり,第三者機関の方たちの頑張りとか,そのサポートの重要性ということが非常に印象に残りました。法を作っても,それをどのように実施可能にしていくかというようなことまでの提言というのは,法制審でどうなんでしょうかね。答申の中に含むべきものなのでしょうか。これまでの慣例はよく知りませんが,含まないと現実的ではないとむしろ思いました。
  フランスで調査をしたときに,第三者機関に予算がたっぷり付いているというのが印象的でした。公的な予算が付いている。明石市長もおっしゃっていましたけれども,やはり予算をきちんと付けて人を雇用するということが,サポートを充実させるということに直結するわけですよね。そこまでの提言が付けられると,本当に意味のあることになるなと思いました。
  それから,海外法制についてなんですけれども,タイの法制についてヒアリングさせていただく機会を別に頂きました。協議離婚がタイでは多いので,日本と比較可能だからです。おかげさまでいろいろな示唆がありました。日本よりもずっと早く,1930年代から,協議離婚だけれども,養育費についてですとか,そのほか親権もですかね,かなりかっちりと法的な枠組みが作られていたそうです。すなわち,日本より早くから,欧米からの批判に耐えるような協議離婚制度というのを作っていたということが分かりました。欧米の国と直接に比べると違いが際立つことが多いですけれども,結婚も離婚も割と自由な日本のような伝統を持つ社会が,欧米的な法と出会ってどのように工夫してきたかという辺りから,学べる点があるんではないかと思います。海外法といっても,そういう東南アジアの法などを見る機会があるのも,重要ではないかと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。委員,幹事からは,サポートのシステムが重要だという御指摘が相次いでおりますけれども,それについて,この答申の中にどのような形で書き込めるだろうかという御趣旨の御指摘を頂きました。
  それから,海外調査については,東南アジアの国も興味深いという御指摘を頂いたかと思います。
  赤石委員,それから原田委員という順番でお願いいたします。


○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。よろしくお願いします。
  ヒアリングの,まずちょっと振り返りをさせていただきますが,お子さんたちのお話を聞かせていただきまして,やはり第三者の大人の重要性というのがあり,法制度でどうそこをカバーできるのかというのは,私も課題として感じました。また,取決めというのが,子どもの生活にとっては非常に圧迫感があり,かえってなじまないものであるという御発言がありましたので,こういったことをどう生かすのか,今やはりちょっと部会資料3を見ていますと,取決めありきのようになっておりますが,ここをどうできるのかということがあります。
  私が感じているのは,面会交流と養育費というのを議論するときに,そもそも非監護親と子どもが面会交流することが,あらゆる場合に子の福祉に合致するのかどうかというエビデンスが果たしてあるのかどうかということを,いつも疑問に思ってしまいます。ですので,そういったところからやはり議論が行われるべきかなと思っています。
  これと関連しまして,葛藤状態にあって,夫婦の子が,これまでの家裁の原則面会交流実施という流れの中で,面会交流を嫌だと言っていても強制されてしまったといったお子さんの事例がなかったので,是非ヒアリングの中でやっていけたらいいなと思っております。私も紹介もしたいと思っております。
  続いて,DV被害者の事例のヒアリングなのですけれども,Bさん,要約で議事録が出ているかと思いますが,協議離婚事例なんですね。しかも,DV被害としては重いという認識になっていなく,保護命令も出ていない。こういうケースが,DV被害については危険性があるという認識は皆さん持たれたと思うんですけれども,では,この人たちをどうケアするのかといったときに,どこまでの範囲をケアするべきかというときに,こういった事例が落ちてしまう可能性があるということを,如実に表していたと思います。協議離婚後も,相談しても,あなたは軽いよねと言われていたが,しかし,協議離婚後に親が学校に電話して退学を迫ったという事例でございます。もしここに本当に共同養育のような親の権利を与えていたら,間違いなく子どもに非常に大きなダメージがあった。彼女は,今回の議事録に関しても,お子さんにはそこまで伝えないために必死にカバーして要約だけにしてほしいということをおっしゃっている。終わった後も,お子さんへの影響を考えていかなければいけない親と,してしまう親,もちろんしてしまう親の方のケアも必要だということが,とても如実に出てきていたと思います。
  それから,非監護親のヒアリングなんですが,お父さんの非監護親のヒアリングがなかったのですが,実際には一番多く,法制審が開かれる背景もそこにあったかと思いますので,是非お父さんの側からもお話を聞けたらいいのかなと思いました。
  あと,家裁のこれまでの2011年からの対応についての,やはり振り返りといったものが必要かと思っております。家裁の調査,子どもの調査ですね,調査官調査についても,浅井氏からやはり問題点が指摘されました。非常に短時間で環境も整備されていないところで,子どもの本心が聞けていなかったのではないかというようなお話があり,私もそういうことをよく聞いております。
  私が聞いたケースでは,幼稚園のお子さんが,家族の絵を描いてごらんって調査官に言われて,お母さんとお兄ちゃんと自分を描く,そうすると,お父さんはどこって言って,お父さんを紙の隅っこの方に描く。そうすると,調査官がそこに線を引いて,仲間外れっていけないことだよね,何々ちゃん,お友達いるの,お父さんを仲間外れにしているのは誰かなって言って,何とかしてお父さんと会うということを子どもに言わせようとする,こういった調査官調査があったとお母さんから報告を受けました。また,お兄ちゃんは本当に支配をされていたんだけれども,お兄ちゃんには,お父さんに会いたくないって言ったら,お父さん自殺してしまうかもしれないよ,それでもいいのとまで誘導しようとした,こういった暴力的な調査官調査が行われていたとお聞きしておりますので,やはり2011年からの家裁で起こったことというのは何なのかということが,まず明らかになってからでないと,その次の法制度の検討というのができない。もし子どもの意見を聴取するのであれば,中立な環境であり,人手を増員し,予算拡充で,何度でもお子さんの話が聞ける,こういった体制が,子どもの代理人制度などと一緒に,池田先生が御専門ですけれども,在るべきではないのかなというのは改めて思い,ちょっと法制度に行く前の振り返りというものが,余りにもないのかなというふうに思いました。
  今後の進め方なんですけれども,私は前回も,まずは,整理されているところでは養育費からお願いしますと申し上げたところです。その意見は変わらないです。そして,その上で,海外法制のことは,本当に欧米は1980年代から共同養育の流れをしてきて,今,反省点に立っているんですね。今日,原田委員が出した英国の報告書は,正にそれでございます。今までのイギリスの対応がDA,ドメスティックアビューズについて対応し切れてこなかったという反省点に基づいた報告書についての論文です。こういうことを考えますと,あるいは,アメリカで本当に子どもたちが性虐待を訴えたら,お母さんが親権を取れなくなってしまった,なぜならフレンドリーペアレントルールに反するから。そして,父親,その加害者の下で子どもたちは過ごさなければいけなかった,こういう子どもたちの叫びが出ています。これは,エンパワメント・センターの森田ゆりさんが報告していらっしゃいます。こういった反省点が出てきている欧米の在り方を,今,まねする必要があるのかという,そういう論点を是非組み込んでいただきたいと思います。そういう点で,海外法制については,そういう点がきちんと出されるべきではないかなと思います。
  もちろん,離婚後も仲のよい,ある程度コミュニケーションができる,そういうカップルのお子さんにとっては,交流はいいことになります。しかし,全ての方にとって良くはないんですね。ここのところを見極めていきたい,そして,それの介入が果たしてでき得るのか,日本の今の脆弱な子どもの保護の体制でということを考えて,法制度をすべきだと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。これまでのヒアリングについての様々な御感想と併せて,更なるヒアリングについての御要望もお出しいただきました。
  それから,家裁実務の話もございましたけれども,海外法制についてのヒアリングとの関係では,現在どのように考えられているのかという視点も取り込んでお話いただくように依頼してほしいという御要望を頂きました。
  今後の議論の仕方については,課題を取り上げる順序などについても御意見を承りましたけれども,これは後で,今後の進め方について御意見をいただく際に,改めて取り上げさせていただきたいと思います。
  では,原田委員,池田委員の順番でお願いします。

○原田委員 弁護士の原田です。
  今,赤石委員がおっしゃったこととかなり重なるかもしれませんけれども,当事者のお話を聞いていて,子どもが蚊帳の外に置かれているということと,親の葛藤が高い間の面会というものの問題点というのは,これまた毎日の実務で感じていることと一致するなと思いました。
  離婚するか否かを決めるのは当事者,この場合は親ですから,少なくとも子どもに対しては,その年齢に応じた説明をする必要があるということ,それから,これに対して,面会交流は正しく子どもの利益のために行うものですから,当事者抜きには考えられないということだろうと思います。面会交流の場合,現状では,協議できる関係であれば,裁判所なんか使わなくても,ヒアリングのAさんのように,子どもの意思を反映した面会交流はできるのかなと思いますけれども,両親の対立が激しくて,したがって,最も子どもの意見を尊重すべき裁判手続において,子どもは初めて会う家裁調査官から意見を聞かれたり,しかも説得的な調査,赤石さんのおっしゃったような例までは直接聞いていませんが,やはりかなり説得的な調査が行われているということは,私もよく聞くところです。それから,子どもの手続代理人という制度がありますけれども,ほとんど利用されていないというのが実態だと思います。ですから,子どもの意思が反映される制度というものを考える必要があるのではないかと思います。
  しかも,養育費というのは,1回決めたら,それがそのまま続いても弊害は余り起こらないと思いますけれども,面会交流というのは,子どもの成長に合わせて形が変わってくるのではないかと思いますが,一度決めるとその後のフォローはないので,幼児期に決めた面会交流が中学や高校になってもそのまま行われて,変更しようと思っても,変更が決まるまではそのまましなくちゃいけないと,場合によっては,間接強制されてお金を払わなくちゃいけないというようなことになっている点が,やはり子どもにとってかなり負担になっているのではないかと思います。
  それから,親の葛藤の問題では,今回のヒアリングで,お子さんのヒアリングでも支援の方のヒアリングでも,親の葛藤が高い場合の面会が難しいというお話がありました。同時に,子どもには安定した養育環境を保障するということが必要で,養育者の安定,これは精神的にも経済的にも必要だと思います。したがって,制度を考える場合は,紛争が続くような制度は考えるべきではないと同時に,その両親の葛藤状態の緩和のためにどうするのかという検討も必要だと思います。この点,私は,支援の方にその点をどう考えられますかという質問をしたつもりだったんですけれども,明確なお答えが頂けなかったように思っております。
  家庭裁判所では,面会交流は子の利益を最も重視するとされていますけれども,子の利益に反する場合というのがとても狭く解されているように思っていて,高葛藤のまま調停ないし審判で決められて,支援機関に流れてくると。審判というのは,合意ができなくて調停から審判に移行するということですから,正しく高葛藤の状態が維持されている見本のような状態で,支援機関のところに流れてきているというのが現実だろうと思います。
  調停で合意される場合も,早く終わらせるためにやむなく合意したというケースもたくさんあります。考えていただきたいのは,北仲参考人が言われたような,DVの力関係の差ということで,本当に真の対等,平等な関係での合意が形成されているとはなかなか言えないのではないかということです。もめる理由というのは,やはり非監護親は面会したい,監護親の方はDVのために監護親自身が会うのが怖いとか,子どもが嫌がっているとか,子どもが気に入らないことがあるとどなられるのではないかと心配だとか,いろいろで,なかなか面会に積極的になれないというところがあるんですけれども,結局は,監護親が説得されて義務が課せられて,一旦合意すると義務化してしまうというところが問題で,途中で子どもが嫌だと言い出しても止められないです。
  それから,支援については,面会交流の実施がゴールということではなくて,そうすると,どうしても消極的な方は説得に陥りがちですので,子どもの利益ということをゴールにして,面会交流するかしないか,するとしたらどういう方法でするか,仮にしないとしても,一定期間後に見直しをするなどの,こういう制度の検討が必要なのではないかと思っています。
  それからもう一つ,この会は民事法の検討会でありますけれども,支援に関する制度や立法も両輪でやらないと,私としては,民事立法だけで支援制度ができないということでは,とても安心して提言ができないと考えています。ここで作るということではないにしても,各省庁の方もお見えですので,支援に関する制度又は立法にも,目に見える形で並行して話を進めていただきたいと。それに合わせて立法,あるいはその立法を実現するような支援というのが一緒に進んでいくということが,とても大事なのではないかと思っております。
  それから,ちょっとこれは余談ですけれども,前回養育費の法的性質について検討するのに,どんな意味があるのかという私の発言について,意味がないと取られたり,養育費も扶養料も同じだと言っていると取られたようですけれども,これは弁護士同士で議論したときに,違うからこそ,どちらか一方に固めてしまうと,いろいろな場面で問題が生じるというような議論があったということをお伝えしたかった,ちょっと先走った議論になってしまいましたが,そのような趣旨に御理解いただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。たくさんの御指摘を頂いたかと思いますけれども,民事法の外の問題との関係につきましては,既に出ているものと共通の方向の御指摘を頂いたと思います。
  そのほかに,高葛藤のケースにおける子どもの利益,子どもの意思をどう考えるかということ,一旦決めたことの変更ということが重要だという御指摘は,非常に興味深いものとして伺いました。
  具体的な問題についての御意見は,またそれぞれのところで頂戴したいと思います。


○池田委員 池田でございます。
  これまでたくさんの方々からヒアリングさせていただいて,大変勉強になりまして,どうもありがとうございました。
  その中で,私からは,主として父母の離婚を経験した子の立場からのお三方へのヒアリングに触発されて考えたことを,2点ばかり申し上げたいと思います。一つがそういった子どもへの直接の支援の必要性,二つ目が父母への支援の必要性,いずれも支援についてです。
  まず,子どもへの支援ですが,私の代理人としての活動を振り返りますと,裁判所の外で父母間で合意がスムーズに進んでいく,つまり,協議離婚へと流れていくようなケースですけれども,そういったところでは,どうしてもやはり合意を優先してしまうというような傾向があると思っています。例えば,お子さんをどちらが養育するかというところで争いがなければ,同居親がしっかりとした養育体制を取るだろうと信頼をしますし,心理的ケアも同居親が中心となってやってくださるだろうというふうな信頼をして,よほど気になるところがなければ,同居親の代理人であっても,直接子どもに会ったりということはあまりしないというところがあります。さすがに,養育費を定めないということはほとんどないですけれども,面会交流については,引き続き協議しましょうねというところでとどめておくということも,しばしばあります。弁護士が関わる場合でもそうですから,弁護士が付かないという場合には,やはりその傾向は一層強いのではないかなと思っています。
  しかし,ヒアリングで子どもの立場からのお話を伺いますと,やはり,いずれも協議離婚のケースだったと思いますけれども,お母さんと会いたいと思ったけれども言えなかったというお話とか,養育費が支払われていないことに対する不満を実は感じていたんだというお話ですとか,あとは,ヤングケアラーの役割を担わざるを得なかったというふうなお話もあったと思いますし,それから,何より父母の離婚に関する情報がほとんど与えられていないんだなということを,改めて認識したところでした。
  そういうことを考えますと,やはり一見スムーズに父母間で合意が進むような協議離婚でこそ,子どもへの直接の支援というのが必要なのではないかなと思っています。やはり子どもが一人で悩みを抱えて,お父さんとお母さんの離婚という事態に折り合いを付けられずにいるというような状態というのはできるだけ回避されるべきで,子どもの年齢とか発達状態とかに応じた,分かりやすい言葉で情報提供を受け,何か疑問や悩み事があれば相談できるという仕組みの必要があると思います。もちろん,親が一義的にはそういった役割を担うのでしょうけれども,あるいは親族が担うのでしょうけれども,親密な関係にあるからこそ相談しにくいというところもよく指摘されているところで,一定の相談支援の枠組みというのを用意しておいて,その枠組みに守られながら子どもが相談するという支援があればいいなと思っています。
  そういった支援をどのように制度化するか,先ほど来,民事法制との関わりという指摘がありましたが,そこについてもちょっと申し上げたいと思います。そういった支援というのは,基本的には福祉的な関わりだと思いますので,そういった機関が担うということになるんだろうと思います。この点,現状でもひとり親家庭の支援という枠組みで,親への支援というのはあると思うんですけれども,子どもへの直接の支援というのをきちんと組み込んだ形にしていくべきだろうと思います。そして,それを全国的なものとしていくためには,やはり支援の枠組みを定めた立法というのも必要になってくるかもしれないなと思います。おそらくそれは厚労省の所管になるのだろうと思います。ですので,せっかく厚労省にも御参加いただいていますので,そういった支援の現状ですとか今後の支援の在り方について,是非御検討いただければ有り難いと思います。
  他方,この部会で議論をすべき離婚法制においては,それらの支援との連携がスムーズにいくということを,おそらく注意しながら考えていくべきなんだろうと思います。例えばですけれども仮に,離婚のときに,親が子どもの意見や意向を年齢や成熟度において尊重しなければならないと,民事法制で定めるとすると,やはり親が第一義的に,とにかく真摯に子どもに向き合わないといけないということの動機付けになるだろうと思います。あるいは,協議離婚に関して,一定のガイダンスを受講するということにすれば,一定のそういった動機付けにもやはりなると思います。協議離婚時に定める事項について,子どもの意見や意向を適切に尊重した合意をしなければいけないと,仮に定めるとすれば,やはりそういったところの支援に流れて行き得るというところはあるので,そういったきっかけといいますか,連携の始まりになるような規定の仕方を,ここで議論するということではないかなと思っています。
  それから,あと,民間団体,支援団体がいろいろと役割を担うということになれば,その認証基準に子どもの意見や意向をきちんと尊重するような,そういう業務活動をしているということを含めることも,一つ方法になってくるかなと思います。
  以上が,子どもへの支援の話でしたけれども,手短に父母への支援というのを,最後に少しだけお話ししたいと思います。やはり子どもの養育に関する取決めというのは必要だと思います。極端な話,離婚時の取決めがなくて,養育費も払われず,養育支援もなされず,孤独の中,同居親が子どもをネグレクトして死に至らせてしまうというようなケースもやはり現実にありますので,こうしたことが起こらないように取決め支援をしっかりする必要があります。明石市はじめ自治体でやっているところもあると思います。ますます進めていくという必要があると思います。離婚法制においても,やはりそれを後押しするような連携の始まりとなるような仕組みというのを議論していく必要があるのかなと思っております。
  ちょっと長くなりましたが,以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。子どもへの支援と,それから親への支援ということを分けて御感想,御意見を頂きました。
  議論の仕方についても御指摘を頂きまして,民事の立法をするときに,福祉的な支援との関係について,どういう考え方をするのかということに関しまして,親への動機付けとか,あるいは支援のつなぎの契機になるといった観点から規律をするということでつないでいけるのではないかという御指摘を頂きました。
  久保野幹事,それから戒能委員の順にお願いいたしたいと思います。


○久保野幹事 久保野です。
  まず,ヒアリングにつきましては,取り分け当事者の方,また支援の方々の,文献などからは知ることのできないような事柄ですとか,あるいは思いの重さといいますか,ちょっと曖昧な言い方ですけれども,そのようなものに触れさせていただく機会を頂けたというのを,非常に有り難く思いました。
  意見は主に今後の方向性についてなんですけれども,冒頭の会のときに,民法を改正していく際に,子どもの利益といったことについて,正面から,児童虐待の対応といった狭い意味ではなく,子どものことを捉えた親権法の改正が実現していくことに期待を持つと言わせていただいたのですけれども,先ほど指摘が出ましたとおり,子どもの利益に限りませんけれども,千載一遇のチャンスという表現,もう一度何か胸に留めたいと思います。この機会は,そのような非常に大事な場だと思います。
  現行法につきましては,改めて言うまでもないかもしれませんけれども,親族の関係につきまして,当事者の協議ですとか合意に任されている点の多い,白地規定の多い特徴があると,かねて指摘されてきているところでありまして,親権法にしましても,766条にしましても,未成年養子につきましても,具体的基準が条文にはほとんど具体的には記されていないという現状ですので,正に今,議論になっていますような,両親が非常に高葛藤であるということをどう捉えるかですとか,DVの事案やDVという要素をどう考えていくのかですとか,子どもの意見や意向をどう考えるのかということについても,実は手掛かりがないという問題があります。この点については,家事事件手続法にはしっかり入りながら,民法の方では手当てがされていないといったようなこと等につきまして,具体的基準が示されていない民法を,変えるところがあれば少しでも変えていこうということが,積極的に進めていけたらという思いを強く持ちます。
  その上で,支援が大事ですとか,福祉との連携が大事ですとか,人材育成がまず必要ではないかといったことは,これはこれで本当にそうだと強く思うところでありますけれども,ヒアリングの中で泉市長さんが,第三者機関や行政の支援をあれほど独自に手厚くなさっていて,人材育成にも乗り出していらっしゃると伺って,不勉強で申し訳ないですけれども,感心して驚いたんですけれども,その泉市長さんが,裁判所にもっと頑張ってもらわないと困るのだというような趣旨のことをおっしゃったように思いまして,やはり法制度でやるべきことも残っているという,残っているという言い方は変ですけれども,印象を持ちました。
  ということが1点です。
  もう一つ,少し細かい点になるんですけれども,海外法制につきまして,難しい問題なので,海外法制が原則論のところだけではなく,細かいところにどう対処しているかということは知りたいとは思います。ただ,注目が高いテーマなので,これまで複数の国を取り上げての報告書やまとまったものが何回か出ていると思いますし,また,先ほど真似する必要があるのか疑問が存するという意味で,参考にするべき国々があるということにつきましても,今日提出されました資料も含めまして,詳しい形で比較的紹介されているようにも思いますので,文献で調査が付くところにつきましては,むしろそれらのものを,ほかの法制審議会などでも行われていますとおり,分かりやすく一覧性にするといったような形で共有することが大事なのではないかと思います。文書では分からない点について,もし聞くことができるといったものがあれば,それはそれで有益かとは思いますけれども,それも,もう少し日本の課題として,どの辺りが特にポイントかということが分かってからの方がふさわしいのではないかという気がしておりまして,海外法制のヒアリングを急ぐというのは,どちらかというと控えた方がいいのではないかという意見を持っております。
○大村部会長 ありがとうございます。大きく分けて2点だったかと思いますけれども,現行の民法の規定が,相対的に手薄になっていることに伴う問題があり,これについて対処すべきではないかということと,それから海外法制については,調査は必要であろうけれども,既に調査されているものがあるので,その先の調査についてはもう少し後でもいいのではないかという御指摘を頂いたかと思います。

○戒能委員 戒能と申します。
  3点,もう論点がいろいろ出ておりますので,簡単に申し上げます。
  一つは,ヒアリングで気付いた点というのは大変大きかったと思うんですが,その中で,養育費の位置付けということなんですね。養育費について,先ほど不満が出たというお話もありましたが,実は,その子どもさんの進学という問題に関わる,そして,その進学というのは就労と深く結び付いている,どういう人生を送るかということを,言わば10代の後半で決めていく,そこに,養育費の不払いとか取決めがないというようなことが,大変多くあるんではないか痛感させられました。
  そういう意味では,一つは,養育費という,これは先ほど来,この法制審のミッションの範囲に絞った議論をすべきだという意見と,やはり連携,関係している分野との総合的な検討が,どうしても必要となるという意見があったと思いますが,私は後者の方の,私的な責任だけではもう覆い切れないんではないかと,お二人ですね,男性の方と,それからAさんのお話を聞いていて,強く感じました。それが1点目です。
  ですから,確かに家族法制部会でありますけれども,そこで民法の改正に至るまでに,もう少し視野を広く見たいと思います。私が伺っていたところによりますと,この家族法制部会は,民法研究者だけではなく他領域の専門家も入って,総合的に議論するということに大きなメリットがあるんではないか,今までの家族法の考え方を打ち破っていくというようなことを,子どもをどうやって守るか,あるいは子どもの利益をどうやって実現していくかという,外国だと子ども法という範ちゅうになるかもしれませんが,そういうことを使命としていると,個人的には考えております。
  2番目ですが,支援機関のお話を聞いて,特にFPICと,それから明石市長のお話を聞いて,高葛藤の中でもDV事案が,数量的にどうかということは示されませんでしたが,対応が困難であると,支援が困難であると感じました。その背景には,余りにも公的な支援体制が貧弱であり,それを前提として議論しなければいけないと。その中でも,面会交流の問題になりますけれども,DV被害の継続であるという北仲さんの指摘とか,それから,何といっても母親に対する被害の影響と同時に子どもへの影響ですね,それをもっと,これは他領域の専門家の援助が必要かと思いますが,そこまで見ていかないと,本当に子どもの利益,子どもの安全ですよね,安全は守られないのではないかというのが2番目です。
  それから,3番目が海外法制,外国法制なんですが,これは,相当時間がたって,見直しの時期に入っている,今まで前提としてきた価値観とか考え方あるいは制度が見直しされているということに敏感でありたいと思っております。ですから,後からという考えもあるでしょうけれども,事務局の案のように,海外法制を見ておくことが,必要なのではないか。そのときにやはり,外国のことだけではないわけで,日本の課題とどうつながっているのか,関連しているのかという視点が大事だと思います。その意味では,日本の家裁の運用の観点からのヒアリングも必要ではないかなと感じております。
○大村部会長 ありがとうございます。ヒアリングについての個別の感想とともに,これからの議論の仕方についても御意見を頂きました。大きな議論の仕方につきましては,先ほどから御意見が出ているところでございますけれども,海外法制については,最近の状況を捉えるという意味で,少し早めにやった方がいいのではないかという御意見を頂きました。それから,日本の実務の状況についても,という御意見も頂きました。
  では,青竹幹事,棚村委員という順番でお願いいたします。


○青竹幹事 青竹と申します。
  ヒアリングは,非常に参考になり,勉強させていただきました。
  1点目は,子の立場で御報告された方のお話を伺って感じたことですけれども,やはり多様な家族がありますので,法制度を考えていくときに,一律に定めるというのではなくて,共同での父母の子との関わりということについても,必要な場合と不要な場合もあるでしょうし,逆に害になるケースもあるというのも認識されていることですので,硬直的な制度というのではなくて,やはり様々なケースに対応できる仕組みという方向を目指すべきではないかと感じました。
  2点目は,進め方に関わることですけれども,これもヒアリングで,お子様だったという立場でお話ししていただいた方は,面会交流と養育費について,両方重要な意味を持つように捉えられているということが分かったように思います。面会交流も,もちろんマイナスの意味も含めてなんですけれども,マイナスの意味も持ち得るということも含めて検討すべきですので,やはり養育費,面会交流,両方同じように重要なものだという捉え方で検討していってはどうかと考えております。
  それから,3点目に,先生方がおっしゃったことですが,海外の仕組みは参考になりますので検討すべきだと思うのですけれども,やはり一部の国でこういうふうになっているということで,すぐに結論に結び付けない方がいいのではないか,諸外国でとられている制度の仕組みの意味を慎重に検討すべきだと考えております。また,比較する対象の数も増やして,比較していった方がいいのではないかという印象を持ちました。
○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングを踏まえて,家族により様々な状況があるので,その多様な状況に対応できる立法が必要ではないかということと,養育費と面会交流それぞれに重要な課題があるという御認識,最後に海外法制については,それぞれの制度に慎重な評価が必要ではないかという御指摘を頂きました。
  次に,棚村委員,よろしくお願いします。


○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  参考人のヒアリングについては,時間が限られていましたけれども,いろいろな立場の方から御意見を伺い,また御経験をお話しいただき,大変参考になりました。お礼を申し上げたいと思います。
  それから,法制度と支援との関わりについてですが,実は,私の方から最初に,法制と支援というのはセットで考えてほしいということを申し上げました。ただ,私自身がお話しした趣旨としては,法制審議会では,主として民事法制を議論する場ですので,ただ,支援を全く度外視して法制度を作っても,実効性も担保できないし,いいものはできないのではないかという意味で,是非支援も議論の中に入れてやるべきだということを申し上げました。その辺りをもう一回,きちっと確認をしていきたいと思います。理解していただいたと思うのですけれども,ここは法制度の在り方を議論するというのが主であって,ただ,支援というものを全く考えに入れないで考慮せずに作るとすれば,決していい法制度はできないということでお話ししたものです。
  それで,子どもの養育のあり方を見直すということが焦点になっていて,子どもの利益や子どもの権利を守ろうということでは,共通認識が皆さんにあると思いますから,是非,今後の進め方でもそのようにお願いしたいと考えております。前回も,私が言いましたように,民法は,明治民法典として当時の状況下では優れたものができたのですけれども,ただ,時代とか社会の変化に適応するためには,きちっと改めるところは改めざるを得ないということでも,異論はないと思われます。しかし,どの範囲の問題を取り上げるかということでいうと,子どもの養育に関係するのは,親権と監護の法制だけではなくて,未成年養子という,連れ子養子とか,再婚されて養子縁組をされるということもあるので,是非未成年普通養子についても議論するせっかくの機会ですから,すべきだろうと思います。
  それから,財産分与についても,婚姻費用の分担とか,それから財産分与というお金の面のことですけれども,養育費といろいろとリンクする経済状態の問題ですから,これも是非取り上げていただきたいと思います。どこにどんな順番でウエイトをかけてやるかということは別として,せっかくの家族法制を見直す千載一遇のチャンスですから,特に民法を中心とした基本法の見直しである以上,それも取り上げてほしいと考えています。
  海外法制とヒアリングの御希望が結構あったと思うのですけれども,私もアメリカを含めて,イギリスとかコモンウェルスの国々を中心に見ているのですが,本当に比較しようとなると,時間も労力も掛かるだけではなくて,短期間では実態にどこまで迫れるかはかなり難しいところがあります。ですから,もちろんエッセンスということで,先ほども出ていましたけれども,法制審議会で私も協力をしたりしてきたのは,一覧表みたいなのを作って,この項目についてはこういうふうになっているとか,こういう制度があるとか,条文とか書いていただいて,日本法の審議の参考にする。ただ,実際の運用とかそういうところまではよく分からないところもあるので,必要があれば,そういうことについて専門家からコメントを頂くとか,参考文献を付していただくということでよいのではないでしょうか。海外法制については,日本と全く同じように比較するとか実態を知るということは案外難しいところがあるので,日本の法制を作る上で,海外の法制をどの程度参考にできるだろうかという観点でやってほしいと思います。ですから,特別に海外法制についての時間を作るとか,調査の機会を作っていくということよりは,調査報告書や研究論文等の文献を示していただき,本当に必要最小限に限っていいのではないか。ヒアリングも大分聞かせていただいていますから,ヒアリングそれ自体に時間をかけるというよりは,今後の進め方にも関わるのですけれども,養育費,面会交流を含めて,やはり具体的な問題ごとに話を進めていってはと思います。
  それで,私も養育費から検討を始めるということに賛成です。逆に言うと,面会交流については法的には別のものではあるのですけれども,一定程度関連したりしますし,海外法制を調べているとよく分かると思いますけれども,別のものとしてスタートさせたところでも,面会交流をさせてもらえないから養育費を払わないという話が出てきたりして,どうしてもある程度は,別のものとしながらも関連付けてやっていくというところがあります。例えば,面会交流の時間とか共同養育で使った時間,そういうものを養育費の算定なんかで考慮するというところもあります。結局,両方がむしろ一体となって協力をしてうまくいったときは,ある意味では,子どもを応援する経済側面と精神的な側面という場合もあり得るし,逆に,ブレーキになって,むしろ問題をこじらせるということもありますので。その辺りは慎重にすればいいと思います。取りあえず具体的な問題から入っていくということが重要でして,養育費とか面会交流とか,現状がどうなっているのか,現行法の規定がどうなっているか,それにどういう課題があるかという,事務局で整理していただいたような方向で議論をしていただければと思っています。
  いずれにしても,ここでは,民事法制,家事法制,この改正につなげられるかどうかということである点は確認しておく必要があると思います。支援を全く度外視するとか,実情を無視するとか,海外の法制を全く考慮しないという意味ではなくて,ここの場ではその主たる目的に沿って,必要な範囲で参照させていただいたり,資料を用意していただいたり,議論の対象にしていくということで進めていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。最初に民事法制と支援の諸方策の関係についての御意見を頂きました。具体的な方向性については,親権,監護,それから未成年養子,財産分与といった問題を,一つずつ順次検討に入るべきではないか,まず養育費と面会交流の問題から始めようという御提案を頂いたと承りました。
  また海外法制については,必要な限度でやるということでよいのではないか,なかなか取扱いに難しいところがあるのではないかといった御指摘も頂きました。
  まだ御発言があろうかと思いますけれども,ここで10分休憩させていただいて,さらにヒアリングに関する御意見,御感想を承った上で,次の話題である今後の進め方に入っていきたいと思います。

          (休     憩)

○大村部会長 それでは,再開させていただきます。
  先ほどから,ヒアリングを踏まえた皆様の御意見,御感想を頂いておりましたけれども,更に御発言があれば承りたいと思います。委員,幹事の御発言も頂きたいと思いますし,役所の方々,厚労省ですとか裁判所で何か御発言があれば,そちらもどうぞよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。

○佐野幹事 もう既に,次の議論をどういうふうにしていくかという話が入っているようですので,そちらについてちょっと希望を申し上げさせていただきます。
  まず,面会交流と養育費の話を途中までやっていたかと思うのですが,やはり私としては,議論をするのは別々の方が議論をしやすいなと感じております。やはり問題の性質が大分違うので,その方がすっきり議論ができるかなと思っております。
  それから,やはり海外法制の研究については,いろいろ議論があるところのように思いますけれども,私としては,是非,韓国の話も聞いてみたいと思っています。特にアジアで,非常に制度が進んでいるところですので,ベースの内容については文献等で頂いて,運用とかについてよく知っている方に聞かせていただくような形で,コンパクトでも結構ですので,具体的にどういった問題が生じているのか,そういった辺りを聞きたいとは思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。議論の進め方について,二つ御意見を頂いたかと思います。
  養育費と面会交流は一応分けて議論を,という御発言でしたけれども,これは,これを続けてやるという前提で,しかし分けてやりたいという御希望だと承りました。
  それから,海外法制については様々な御意見を頂いておりますけれども,韓国も含めてどうかということと,コンパクトに運用の実態などに焦点を当てて行うとよいという御指摘を頂きました。
  ほかに御意見いかがでしょうか。


○藤田幹事 事務局でございます。
  先ほどから御指摘がある民事法と公的支援の関係について,関係省庁との状況を少し申し上げておいた方がよいかと思いまして,一言だけ失礼します。
  御指摘があるとおり,この家族法制部会は,諮問事項との関係で民事法制の検討が中心になるのでしょうが,事務局としては,これまでの議論で皆様から様々な御意見を頂いておりまして,それをできるだけ適切な形で受け止めたいと考えてございます。その中でも,離婚前後のDV被害の問題,さらには公的支援の問題については,特に多くの御意見を頂いておりますが,例えば,DV対策の問題であれば,DV法を所管する内閣府に幹事に入っていただいており,部会の場以外にも,離婚に関連したDV問題の対応で連携を図ろうとしているところですし,公的支援の関係では,特に養育費確保の公的支援がこれまでクローズアップされてきたこともあり,それらを中心に厚労省と実務的な連携の枠組みを設けて,公的支援策の検討をしてきたところであります。ですので,これら御指摘の点は,この部会とは別の形でも,同時並行で関係省庁等としっかり検討を進めて,方向や成果を出せるときにはしっかりこちらに報告・還元して,部会での議論と双方向でやるということを考えておりますし,それが重要であると認識しているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。
  そのほかにはいかがでございましょうか。

○水野委員 水野でございます。
  特に今までの御意見と異なる意見を申し上げる自信はないのですけれども,発言をお許しください。ヒアリングでは本当に胸の痛むケースをたくさん伺いまして,改めて,つらい問題で,何とかしなければならない問題だと思いました。ただ,その胸の痛むようなケースは,監護親と非監護親どちら側の立場にもあるわけです。それは,今,事務局からのご発言にもありましたように,育児支援や暴力対策支援がものすごく貧弱だという問題,つまりいわば離婚後共同親権という窓のスタイルを議論しようにも,土台がものすごくぬかるんでいるので,そもそもまずきちんとした家が建っていないという,そういう問題を我々の社会が抱えているのだろうと思います。
  それで,進め方なのですけれども,外国法制のヒアリングという希望が出ましたが,私は外国法制の紹介は,非常に難しいことだと思っております。外国法制は,どこに光を当てるかによって随分イメージが変わってきます。その外国法制は,土台がどういう構造になっているのかということから,全体像を描ける紹介でないと危険で,一部分の紹介ですと,象の一部をなでて,極端な結論が出るということにもなりかねません。そして,日本法は西洋法制と比べますと協議離婚制度がある等,非常に特殊ですし,また,先ほど申し上げたような土台がぐずぐずであるという問題も抱えていますので,まず議論を進めるためには,ある程度論点を絞って進めた方がいいかと思います。
  先ほど小粥委員や久保野幹事から,まずは民事法制の改正という論点ではないかというご意見が出ました。確かに背景の問題を我々は自覚しながら進めなければいけませんけれども,ここでする議論は,やはり民事法制の改正という論点にある程度絞った方がいいように思います。
  ありがとうございました。
○大村部会長 ありがとうございます。海外法制は,先ほども御指摘ありましたが,なかなか実情を知るというのは難しいところがあります。そういうことを考えつつ,やる必要があるということかと思います。
  それから,議論は論点を絞って,民事の法改正に結び付くような形で最終的にはやっていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。
  窪田委員,沖野委員の順番でお願いいたします。
○窪田委員 ヒアリングを踏まえての感想というよりは,専ら今後の進め方ということになってしまうのですが,それでもよろしいでしょうか。議論がそちらの方に移っているのかなと思ったので。
○大村部会長 そうですね。直近で頂いた意見の多くは,議論の進め方の方にシフトしていると思いますので,ここから先は,もちろん引き続きヒアリングの感想を述べていただいても結構ですが,議論の進め方についても御意見を頂くということで,議論の重心を移していきたいと思います。窪田委員,そういう前提で結構ですので,御発言をお願いします。

○窪田委員 もちろんヒアリングの感想についてもいろいろ申し上げるべきなんだろうと思いますが,議論の進め方ということで,今まで出ている論点について,重なることになるかと思いますが,発言させていただければと思います。
  3点ございます。
  一つは,もう先ほど事務局からもお話があったのですが,この法制審の役割と今回できることということは,やはり意識はしておくべきなのだろうと思います。最初に小粥委員から御発言がありましたが,小粥委員は,できないこと,管轄外のことについては議論するなという趣旨では全くなくて,飽くまでそれを踏まえた上で,でも,最後の目的は,民法なり民事法制の改正なのだということを,自覚的に捉えていくべきだったということなのだろうと思います。その周辺の問題が議論できないとその先に進めないというような枠を課してしまいますと,もうちょっと身動きが取れなくなるのではないかなと思いますので,その点が一つ。
  それから比較法,外国法の扱いなのですが,対照的な意見がすごく出ているのだろうと思いますが,これは,外国法を何のために扱うのかということにも関わるかと思います。もちろん,ここには,外国法制,外国の家族法制に詳しい方もおられれば,そうではない方もおられますし,また法律の専門ではないという方もおられる中で,ある程度一般的な外国法の知識を共有しておこうというものであれば,これを早めにやっておいたらよろしいと思いますし,棚村先生からお話があったような一覧性のものをまず作って,概略をお話しいただき,それを出発点にしてということでもよいのかと思います。
  ただ一方で,掘り下げた外国法の紹介というのは,実はものすごく難しいのだろうと思っています。今日,委員から資料で出していただいたもの,オーストラリアに関するものもそうなのですが,非常に立ち入った論文というのも従来から幾つもありますけれども,多くの場合には,やはり一定の,そこから解釈論を導くという性格がかなり強くなっておりますので,単純に外国法の状況,外国の状況を知ろうというのではないかと思います。もちろん議論していく上での参考となるものではあるのですが,それらを全部扱う,それをしないと先に進めないという前提を取らない方がいいだろうと思っております。必要に応じて論点ごとに外国法についてやや詳しく説明をしてもらうということでよいと思いますし,この場合も,私は基本的にはできるだけニュートラルなものをまず出発点とした上で,必要があれば更に立ち入った形でというのが良いと思っています。そういった形での外国法の位置付けの方がいいのではないかなと思っております。
  それから,3点目なのですが,養育費と面会交流の扱いということで,これは,意見の中でそれほど大きな対立があるわけでもないのかなとは思います。私自身も,養育費と面会交流の話,両方とも大事だろうとは思いますし,最終的にまとめる中で,両方ともについて判断を出すべきだと思いますが,セットであるということはあまり強調しない方がいいのかなと思っております。もちろん,養育費の議論をしていって,また面会交流の議論をしていって,最終的に両者の関係として一定の関わりがあるそうだということは出てくるかもしれないですが,それをその時点で,次のステップで扱うべき問題であるのではないかと思っております。
  さきほど棚村先生から,養育費を払わないのだったら面会交流させないというのがありましたけれども,それもよくありそうな話だなと思うのですが,一方で,養育費を払っているのだから会わせろというような形での一体性が出てくると,やはり面会交流の議論というのは出発点でゆがんでしまうのではないかなと思いますので,一応問題としては切り離した上で進めていったらどうでしょうか。切り離すというのは,全く無関係だということではなくて,まずは別の論点だということで柱を立てた上で議論をしていったらどうかなということです。
  今まで出てきた意見とかぶるところも多いのですが,以上3点についての意見でした。
○大村部会長 ありがとうございました。今日のこれまでの議論をまとめていただいたような形になっているかと思いますけれども,まず,法制審の役割に関する捉え方につき,民事法制以外の問題について,議論をしないということではないけれども,最後は立法のあり方,民事法の改正に結び付くような形で議論すべきではないかという御指摘がありました。
  それから,外国法制は,これは研究者の方々がみなさん共有されていることだと思いますが,理解をするというのは本当に難しいことです。そうであるということを踏まえた上で,しかし,一定程度知識を共有するということであれば,ニュートラルな形で紹介していただくというのはよいのではないかという御指摘を頂きました。
  さらに,養育費,面会交流については,一応分けた上で議論はするということでどうかという御意見だったかと思います。
  それぞれについて,異なる御意見も出ておりましたけれども,それを踏まえての御発言だったと理解をいたしました。

○沖野委員 今の窪田委員の御指摘をそのままなぞるような形になってしまって恐縮なんですけれども,同じ項目を3点,やはり申し上げたいと思います。
  一つは,この部会の役割ということで,もうこれは既に,本日問題提起をしていただいたことで共通理解となっているのではないかと思いますけれども,中核としては,法制審議会の部会として,民事法制についての一定の考え方を示すということだと理解しております。しかしながら,取り組むべき問題というものが,民事法制だけで解決するものではないということも共通理解となっており,この民事法制がどう動くか,あるいは,しかるべくように動いていくためには,どういうことが必要なのかという点から,様々な検討が必要だということになってくると思われます。公的支援もそうでしょうし,あるいは民間の団体との協働ですとか,いろいろな形があると思います。
  また,法制度としてどういうものがあるべきかという,その選択においても,他の制度ですとか他のものが関連してきて,こういうことができるのであれば,選択肢Aになるけれども,しかし,そこが難しければ,やはりBになるとか,そういう形で関連してくることが考えられるので法制度だけを独立して論じることもできないと思います。ただ,しかしながら,私たちは全てを同じ比重でやっていくわけではないということは,重々念頭に置いておく必要があるだろうと思います。
  2点目がヒアリングでございますけれども,これまでのヒアリングで,私,途中出られなかったときもあるんですけれども,参加させていただいたところでは,非常に多くを学んだと思います。いろいろな問題,いろいろな経験,そして問題の深刻さ,重さについても,改めて感じ入ったというところがあります。したがいまして,ヒアリングを続けていくということに対しては,更に多くを学ぶ機会だろうとは思っております。
  しかしながら,ヒアリングには一方,限界もあると感じておりまして,様々な御自身の経験を語ってくださるということですが,その経験には,恐らく別の見方もあるだろうと。相手方,あるいは別の立場に立てば,同じ事象が違うように見えてくるとか,違う経験があるということがありまして,そういったことを同じようにヒアリングで補完していくということになりますと,ある意味際限なくなってしまうということがありまして,やはり私たちが最終的に取り組む民事法制の在り方のために,どういうことを考えていくかといったときに,時間も限定されているということもございますけれども,むしろこういうヒアリングが再びやはり必要ですねという指摘がありましたら,正にそれを補充していくというような形で,また,これまでのヒアリングに対し,しかしこういう点も考えなければならないというのは,既にいろいろな専門家の方が知見を持っておられるところですから,そういった留保も十分していくことで,あるいは,今回もそうですけれども,今までのヒアリングになかった,しかし,こういった点が実は重要であるとか,こういった御経験もいろいろとあるんだということは,正に委員や幹事の皆様から伝えてくださって,それを共有しているということもありますので,そういった手法も組み合わせて考えていくべきではないかと思っております。
  同じことは海外法制についても言えまして,海外法制というのは,やはり私たちのこの制度をどういうふうに作っていくかというのに当たって,こういうようなやり方もあるとか,こういう経験もあるとか,そういったことを学びといいますか,それを参照していくものであり,そのための情報入手等としてヒアリングが唯一だとは思われませんので,やはり適宜の方法でということになるのではないか。それもまとめて集中的にということもあり得ますけれども,そうではなくて,例えば,韓国の例でこういうものがあって,こういうところの実態が分かれば,一層参考になるのではないかという御指摘があれば,それについての情報提供ということが,どういう方法があり得るかというようなことで見ていくということもあり得ると思います。もちろん,ヒアリングを否定するというわけではないのですけれども,全てヒアリングをやるべきだということにはならないという前提で,適宜の組合せを考えていくべきではないかと思っております。
  3点目が,具体的な項目につきまして,私も養育費と面会交流というところから始めていくということが適切ではないかと思っております。両者の関係につきましてなのですけれども,これも,ヒアリングですとかこれまでの皆様の御意見を聞いてということなんですが,私は,子どもの養育に親が共にそれを担っていかなければならないと,そういう義務を負っている中で,養育費というのは経済面での担い方ですし,面会交流,あるいはそれだけではないかと思いますけれども,というのは,交流ですとか先ほど精神的ということも言われたと思いますけれども,財産法的にいえば現物給付的ということもあるのかもしれませんけれども,そういう点からの様々な義務を果たす手法の一つと考えますと,両者というのは関係している,あるいは,子どもの養育という点からは,その一環という形で位置付けられるというものではないかと思っております。
  しかしながら,具体的な内容というのはそれぞれかなり違っておりますので,これを一緒に論じていくということの意味がどういうことなのかということで,結局やはり養育費というのはこういうふうに,面会交流というのはこういうふうにというような形で論じていかざるを得ないのではないかと思います。
  両者の関係につきましては,今申し上げたような大きな位置付けといいますか,視点の中で,両者というのをどういうふうに考えていくかという問題と,非常に個別的な点で両者を連動させて考えるのかという問題があり,出てまいりました面会交流がブロックされるならば養育費は払わないとか,あるいは,面会交流をしているなら養育費を減じるべきだとか,これというのは非常に具体的なレベル,それぞれの中身のレベルで両者を関連させ,あるいは連動させていくという考え方ですけれども,果たしてそうかと。そもそもが,子どもの養育というのを担う,あるいは,それが義務であるならば,面会交流をしていても,子どもの養育に費用が必要ならば,それは負担しなければいけないということになりますので,一方が負担できなければ他方が負担すると,中の分担ですとか,最終的な精算をどうするかというのは,また別途考えられると思いますけれども,それはちょっと具体的に立ち入りすぎかもしれませんけれども,そういう具体的なレベルでの関連性があるのかどうかというのは,それぞれの制度を考えた上で,さらに最後,両者の関係性というようなことで考えていくというのがよろしいのではないかと思っているところです。
○大村部会長 ありがとうございました。先ほどの窪田委員の御発言とほぼ対応する形で御意見を頂いたと思います。
  特に最後の3点目ですね。養育費と面会交流について,大枠での捉え方と個別の制度のレベルでの捉え方とを区別して考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をしております。
  それでは,杉山幹事,落合委員の順番でお願いいたします。

○杉山幹事 幹事の杉山でございます。
  私も,これまでのヒアリングで様々な立場の方からの御意見をうかがう機会を頂き,大変勉強になりましたため,感謝申し上げたいと思います。
  私も,このヒアリングに対する感想というよりは,むしろこれからの進め方に関しての意見になりますが,また,既に窪田先生と沖野先生からいただいた御意見とほぼ同じようなものになりますけれども,私自身も,基本的に検討対象を民事法制に絞って,また,事務局が提案されたように,養育費,面会交流の問題からまず議論するという方向性に,基本的に賛成しております。
  先ほど事務局から御紹介がありましたように,例えば,養育費の問題に関しましては,公的な支援とか,あるいは公的な徴収や立替制度の在り方について,他の省庁との協働の上で検討が進められているようですが,少なくとも民事法制,民事執行とか家事手続などの見直しについては,こちらの法制審に委ねられていると理解しておりますので,民事法制については,こちらで議論をするということが必要であると思います。
  また,場合によっては,養育費とか面会交流の問題でも,手続的な面を先に議論するということもあり得るのではないかとは思っております。例えば,養育費の請求権が子の権利か親の権利なのかとか,両親が別居中の取扱いをどうしたらいいのかといったような問題もありますが,実体法の本質的な論点であって,大きく意見の対立する可能性もあります。これらが最終的にどのような方向性になったとしても,手続的な問題,つまり,養育費回収ができない人について手続的な手当てを施すべきだという方向性については,大きな異論はないと思われますし,手続自体は,実体法の議論からはニュートラルなものとして作ることが可能であると理解をしておりますので,場合によっては,手続的な問題から議論を始めて,実体面の方向性がまとまっていけば,その影響が及ぶ範囲で手続についても再度見直すのがよいと思います。一読,二読という機会もありますし,前提が変われば,別途個別に修正していくことはあり得ると思います。
  また,特に養育費に関しましては,これまでのヒアリングの中でも,実際に払われていない実情があることが伺われましたし,これまでにも養育費があまり払われていないことを示す調査があったり,その原因や具体的な問題点が明らかになっているので,議論がしやすいと思います。ヒアリングとか本日の御意見でもあったように,特に面会交流に関して,強制をするのはどうかというような御意見などもあるかと思いますが,他方で,履行を求めたくても,それが実現できないという現状があるのであれば,それを改善する必要性があることは確かでありますので,この問題を先に議論するというのがいいと思います。
  もちろん,これも前の御意見にあったように,面会交流が強制にどれほどなじむのかとか,あるいは後に事情の変更があったらどうするのかとかいったような問題や,養育費と面会交流について今後手続を構築するに当たって考慮要素が違うのかといった点については,今後具体的に詰めていけばいいと思いますけれども,少なくともこれらの問題については,方向性について,この部会全体で大きな意見の対立が出てこないのではないかと思われ,具体的に議論を進めていくのになじみやすいと思います。
  また,これも,ほかの先生方の考えと一緒でありますけれども,海外法制に関して,一覧表を頂くというのは非常に役に立つ,参考になると思っております。他方で,例えば,養育費の回収方法の問題一つをとっても,公的徴収の在り方などについて様々な法制度を並べて比較してみたことはあるのですけれども,その背景にある制度,手続法も実体法も含めて,さらには裁判制度も含めて,どこが違っているからこのように違っているのかというところから立ち返って考えないと結局分からない問題であり,そうすると,たとえ1か国であっても,かなり比較は難しいと思いました。それもありますので,一覧表は参考にさせていただいて,必要があれば少し深めていく,方法はヒアリングなのか文献調査なのか,どれがよいのはちょっと分かりませんけれども,詳細に見ていくのがいいのではないかと思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。最初に全体として,事務局で一案を作られたような進め方に賛同するというご趣旨の御発言があったと思いますが,具体的な問題については,養育費から始めるということで,手続を先にすることも考えられるという御発言がありましたけれども,狭い意味での手続ということではなくて,何をどうするのかという問題で,具体的な議論ができて合意が形成されやすいものからやっていったらいいのではないかという御趣旨の発言としてと伺いました。
  外国法については,もう既に御指摘があるところですが,なかなか扱いが難しいので,慎重な対応が必要ではないかという御意見であると理解しました。
  落合委員,それから菅原委員に,お願いしたいと思います。


○落合委員 落合です。
  ちょっと不協和音というような感じになるかもしれないんですけれども,お話を伺っていて,法学者の方たちのカルチャーってこういうのなのかっていうのを感じました。それは,世間の多くの人たちも思うかもしれませんので,何を思ったかを共有させてください。
  一つは,法制度を変えるのが目的なのだから,支援とかのことは二の次というか,ということになるというような話をされているわけですけれども,社会を変えるために法を変える話をしているんですよね。この社会で今何か問題が起きているから,法を変えることでそれが解決できると思っているから,これを議論しているんですよね。例えば,離婚して子どもを育てているお母さんが経済的に苦しいと,子どもを育てるのが大変だということで,養育費の徴収の仕方を法律にどう書き込むかという話をしているんですよね。そうであれば,夫から取り立てられないときは公的な支援でとか,幾つかの方法でその問題を解決することを考えて,そのうちの一つとして,この法改正の話をしているんだと思うんですね。
  法の社会的な機能というのは,法社会学の中でもそういうふうに論じられていると思いますけれども,社会の何をどう変えるために,今,法を変えるんだと話をしていないと,やはり何をしているのか,ちょっとはたから見て分からないと思うんです。ですから,支援の話とか運用の話とか,そこは必ずしも切り離さなくていいというような論調もありますけれども,基本的には切り離さないものだろうと。ただ,法の整合性を議論するときには,テクニカルに法だけの議論をすればいいと思うんですけれども,全体としては,一体として話さなかったら何の意味があるんだと,私は思います。
  不協和音だと思うんですけれども,社会科学一般をやっている者,あるいはこの社会を生きている者としては,そういうふうに思うということを,ちょっとお伝えしたいんです。
  それから,外国法の話ですけれども,すごい一国主義ですね,今日の御議論は。法学が一国主義なのは知っていますし,それは,法が国ごとにできているから,当然そうなんだというのも知っていますけれども,外国法とすり合わす必要もあります。今や人の移動も多いし,家族も国際化していますので,結構それで問題が起きているわけですよね,連れ去りのこととか。日本はそういうことで批判をされているわけですよね。ですから,国際的にハーモナイズするというのは,やはり一つ考えておくべきことだと思うんです。世界の中のガラパゴスにならないために。だから,日本の中の法を変えるために,参考になるから見る,でも十分に参考にするほど深くは見られないから,余り見なくていいとか,そういう議論をしているのではなくて,国際的な家族が生まれているときに,ある程度,これから世界のルールが向かっていく先というのを想像して,そこに一緒に進んでいくように作っていかないと,浮いてしまうと思います。
  こんなことは,本当は言わずもがなだと思うんですけれども,そういうことが海外の例を見るときの目的なんだということを,言葉にしておきたいと思いました。
  あと,ヒアリングについてですけれども,本当は皆さんも多分遠慮して言っていらっしゃるんでしょうが,今までの実務でもっと御存じなんですよね。みんなで共通して話せる事例をということで,ヒアリングをさせていただいたということだと思っていまして,実態が分かってよかったということではないと,ちょっと気を付けて話をしていった方がいいように思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。落合委員は最初に不協和音ですが,とおっしゃいましたけれども,あえて挑発的な御発言をされたと受け止めております。
  ほかの委員,幹事から反論もおありかもしれませんけれども,私が今伺ったところを受け止めて,整理をさせていただきたいと思います。
  まず,最後の点です。ヒアリング,それから外国法調査もそうですが,それで何か客観的な,私たちが議論のベースにできるような確かなものが分かるのかというと,それは必ずしも分からないという認識は皆さんもお持ちなのだろうと思います。特に外国法について皆さんがそういうことをおっしゃったんだろうと思いますけれども,法改正を考える上で,私たちが気付かなかったことに気付くきっかけになる,発想の幅を広げることができる,そうしたものとして,ヒアリングや外国法の調査というのを受け止めておられるのではないかと思います。ここまで委員,幹事からは,こういうことに気付いた,こう考えるきっかけになったという御発言があったものと理解しております。ですから,外国法の調査をこの後に行うという場合についても,どういう目的でこれを行うかということについて考える必要があるのだろうと思って伺いました。
  それから,前の点ですけれども,これも落合委員は,わざとおっしゃったんだと思いますが,皆さん,この部会で民法あるいは民事手続法について立法に向けての議論をするというときに,法改正以外のことについて全く考慮に入れないとおっしゃっている方は,おそらく一人もおられなかったと思います。ただ,有益だろうと思われる基礎作業を全てやった上でないと立法はできないと考えると,今回のミッションを果たすことは難しいのではないかという御意見であったと受け止めました。
  これは,先ほどもお話がありましたけれども,DV問題については内閣府でその検討が進んでいる,子どもの福祉に関しては厚労省で検討がされているということで,それぞれ異なる立法で子どもの問題について対応がなされつつあるので,それぞれと連携しながらやっていくことが必要だろうということで,先ほどの御発言があったと受け止めました。それはそれで必要なことで,それぞれがそれぞれの立場から考えるときに,どこまでのものを視野に入れて行くのかということではないかと理解しております。
  答申に向けて報告書を書くときに,純粋な立法上の提案以外のことを,どの程度どのような形で書けるのかという問題は,報告書の書き方の問題としてもありますので,後の方で御検討をいただきたいと思います。
  ここでさらに立ち入った論争をするのはなかなか難しいと思いますので,落合委員,今のように受け止めさせていただくということでよろしいでしょうか。
○落合委員 はい,どうもありがとうございました。
  おっしゃるように,論点がはっきりするようにわざと言いました。ありがとうございます。
○大村部会長 ありがとうございます。


○菅原委員 菅原です,よろしくお願いします。
  ヒアリングについては,ほかの委員と共通するところが非常に多いのですけれども,発達心理学の立場で参加させていただいているという点で,特に前半のところでお話を頂戴しました,離婚を経験したお子さんの立場からという3名の方のお話からは,これまで様々発達心理学の中でも言われてきた,子どもにとって養育費の問題,経済の問題が重要であるということ,それから希望や事情に沿って面会交流が自由にできることの大切さ,また発達段階によって子どもの希望や事情はいろいろ変わっていくということを踏まえることの重要さを確認することができました。また,子どもが相談できる場所があることが大事だということも出てきましたが,その辺りにつきましては,子どもにとって重要なことであるというエビデンスも既にあるところですので,今後の法制度の制定のところに生かしていただきたいと思います。
  明石市の泉市長のお話も大変感銘を受けました。非常に細やかな制度をもう作っていらっしゃって,地方行政の中で実行されているというところで感銘を受けたのですが,泉市長が出された資料の中に,法制審議会へのお願いというものがありまして,1番目に子どもの権利の明確化というところで3点挙げられていました。子どもの権利としての養育費の請求権と面会交流を求める権利というのを明記してほしいということ,また離婚に際しての子どもの意見表明権の保障をしてほしいという3点でした。この辺り,私は法制度の専門家ではないので,今回の改正の中でどう生かされるのか詳しくは分からないのですけれども,是非これらが実現される方向性で,子どもの権利として位置付けていただけるような法制度の議論を本部会でしていくことが必要だと思っております。
  今後の進め方ですが,親権,監護権,それから未成年養子の問題,財産分与権は全て離婚後の子どもにとって非常に重要なことですので,一通り議論を先に進めていただいて,適宜必要なものはまたヒアリングをしていくという方法に賛成です。
  それから,海外の制度については非常に奥が深いことだということも分かりましたが,やはり一覧表にしていただいたガイドがあると,私たち領域外の者もおりますので,有り難いと思います。その際に,公的な支援の制度を持っている国については,そのことも一緒に一覧表に入れていただけると大変有り難いと思いました。
  以上です,よろしくお願いいたします。
○大村部会長 ありがとうございました。ヒアリングについての感想のほか,進め方として,一通りまず全体を見渡すことが必要で,子どもの権利という観点から,そうすることが望ましいのではないかという御意見,それから,外国法については,一覧性の高い資料というのが欲しいという御要望を頂きました。
  そのほか,御発言いかがでございましょうか。はじめに,ヒアリングについての感想をと申し上げましたので,最初の方で発言された委員,幹事の中には,進め方ということであれば,また別途意見があるという方もいらっしゃると思いますので,そういう方々の御意見も含めて御意見を頂ければと思いますが,さらに御発言はございますでしょうか。

○武田委員 進め方ということで,ちゃぶ台をひっくり返すわけではないんですが,私は元々,やはり離婚後の子の養育の在り方,ここは議論が錯綜するとか空中戦になるとかという御指摘はそのとおりだと思うんですけれども,本来はそこから方法論として入り,面会交流,養育費ということには個別論として入っていく,そういうアプローチの方が元々はよいのではないかと思っておりました。ただ,今日の先生方のお話をいろいろ聞きまして,養育費と面会交流から分けて検討するという流れについては,それはそれでアプローチとしてよろしいかと思いますので,賛同いたします。
  これも委員の先生方皆さんおっしゃっていただきましたが,面会交流,養育費ともにどちらも重要ということの共通認識の上で,進め方をどう進めていくのかというお話になろうかと思いますので,大筋後半の先生方がおっしゃっていただいた進め方に賛同をいたしたいと思います。
  ただ,やはり私どもは当事者団体でございますので,この養育費と面会交流の関係ということに1点だけ,意見を述べさせていただきたいと思います。
  養育費の重要性,全く異論ございません。子のための養育を考えた場合,養育費という経済面,非常に重要です,ただ,それのみで本当によいのかというところが,非常に私どもが昔から懸念を持っているところでございます。面会交流ができなければ養育費を支払う必要はないと,こういう条件付けは,当然間違いだと思っています。しかしながら,一方,養育費について合意がある,合意どおりに遅滞なく養育費を払っている,しかしながら,一方,面会交流に関しては,裁判所の調停に話合いを委ねて,約1年は合意に至らない,合意に至るまで1年掛かる。合意した場合も,月1回2時間程度という,現状の相場かと思っています。昨今,1年以上,このコロナの影響で親子の交流が断絶してしまっているというケースも非常に多くなっています。法務省さんからの1年前に見解が出ましたけれども,あれで改善する兆しは正直ございません。そういう相談が今,止まらないような状況であること,当然DVはない前提でのお話でございます。こんな中,心がおかしくなったり,それによってリストラされたり職を失う,こういう例も散見されます。
  先生方にお伝えしたいのは,子どもとの交流が多ければ養育費が適切に支払われるという関係,これは,私がこれまで別居親を支援してきた中,実感としてございます。子どもと離れて暮らす親の気持ちとして,是非先生方に御理解いただきたい。すなわち,面会交流を適切に実施するということは,養育費の確保にもつながる。養育費を数年払って終わりとは思っておりません。やはり支払い続けること,これが非常に重要だと思っております。そういった継続的な支払を確保するという観点からも,面会交流の適切な実施を図ることは重要なのではなかろうかと,こんなふうに思っております。
  また,先に面会交流がなされるケース,安全・安心にきちんと面会交流ができたということになりますれば,養育費の請求をちゅうちょしていた監護親の皆さんに,安心して養育費を請求する動機付けにもなろうかと思っています。したがって,子どもたちのためにも,具体的な議論の順序は別ですけれども,関連付けて議論させて終着点に至るのがよいと,このようなことを皆さんにお伝えしたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費と面会交流とを一応分けて議論をするということでも構わないけれども,しかし,その間には関連性があるということについては,留意をして議論を続けたいという御発言として受け止めさせていただきました。
  ほかにも御発言があろうかと思いますけれども,今,具体的な議論の順番の話も出ております。部会の最初で説明がありましたが,事務当局の方で議論の進め方のたたき台として,ごく大まかな一案を作っていただいておりますので,具体的なイメージを持ってこの後のことを考えるために,これについて説明していただいて,更に御意見を頂いたらいかがかと思います。事務当局から御説明を頂けますか。

○藤田幹事 それでは,家族法制部会の進め方に関し,お手元の事務局たたき台一案について,簡単に御説明いたします。
  これは,この部会の全体の進行について大枠のイメージをお持ちいただくとともに,これから具体的にどういった形で検討を進めていただくかの御議論の参考に,これまでの部会で皆様からいただいた御指摘等を踏まえ,事務局で飽くまで一案としてたたき台をお示しするものです。これも参考にしつつ,自由に御議論を頂ければと思っております。
  この部会は本日が第4回会議となり,これまでに養育費の検討,面会交流の検討に着手して,事務局から部会資料3を出させていただいております。
  今後の進め方として,第5回以降ですが,積み残しの課題のほか,これまでの議論では,海外法制の情報,それから発達心理学といった関連の専門分野について,今回の検討に関連してヒアリングを実施してはどうかという御意見が出たことを踏まえ,まず,専門家ヒアリング等を位置付けております。ただ,本日に御議論があったとおり,どういう位置付け,目的の下で海外法制等のヒアリングを実施するのかについては,もう少し詰める必要があるかと拝聴したところです。
  第6回以降の議論ですが,法制審の全体的進行として,一通り議論してそのまま終わるというような扱いではありません。基本法制の在り方という重要な課題を御議論して頂くということになりますと,まずは一通り,一巡目の検討をして,さらにそれを反映してブラッシュアップした形で二巡目の検討に入っていくことになります。さらに,検討のプロセスとして,中間的な方向性を示す中間試案の作成とそれに関するパブリック・コメントの実施,さらには最終的な法案化を見据えた要綱案の取りまとめということで,段階を追って議論をしていただくことが通例となります。そういう意味では,一巡目の検討というのは,事務局から第1回会議に検討事項の例を示したように,既にこれまでに指摘のある論点や課題について一通り幅広く御議論をしていただくということが考えられます。その観点から,年内に予定されている第6回から第10回までの会に順に検討を進めるという形を,一つの進め方の案としてお示ししているところです。
  具体的には,第6回から順に,離婚後の子の養育に関する問題,子の意思・意見の考慮に関する問題,離婚制度以外の関連する問題の検討,未成年養子制度の検討,財産分与制度の検討と,五つの課題を掲げております。これは,今回の諮問の中核である離婚という事象に着目して,離婚時,離婚後,さらにそれを通じて関わる子どもの意思等に関する課題を初めに挙げた上で,周辺的な,例えば別居の問題といった御指摘もこれまであったかと思いますが,そういったものが,離婚制度以外の関連する問題ということになろうと思います。さらに,父母の再婚に伴う未成年養子の問題,さらには,広い意味で子の成長に資する夫婦間の財産分与を挙げています。こういった課題をどういった形でどのように議論するかということにつき,この場で御議論いただければと思っております。
  事務局からの説明は,以上です。
○大村部会長 ありがとうございました。今,説明があったとおりですけれども,皆さんから御意見を頂く前提として,私の方で不正確なところがあるかもしれませんが,多少補足させていただきたいと思います。
  委員,幹事から既に御発言があったところですけれども,本部会では最終的には,法改正に向けての要綱案を取りまとめることになります。要綱案は,諮問に応じた民事法の改正の原案の形を取ったもので,条文に非常に近い形のものを答申することを目指すことになります。これには補足説明が,事務当局によって付けられるのが通例です。その中では,なぜこのような立法が提案されるのか,このような立法をする前提として,現行法にどのような問題があるのか,改正をすることになると,どういう問題が生じそれについてはどう考えるのかといったことについて解説がなされることになります。このように最終的には,民事法制に関する立法案を提案するということになりますが,それ以外のことにつきましては,補足説明の中で,立法案を提案する際に考慮された事情として書き込まれる,こうしたイメージで捉えていただけるとよろしいかと思います。
  最終的な要綱案の取りまとめに至るまでに,先ほどお示しいただいたように,何度か全体を見直すことになります。第一読会,第二読会,第三読会などと呼ぶこともございますけれども,まず中間試案の取りまとめに向けて議論を行う。その後は,この中間試案をパブリックコメントに付して,パブリックコメントで出てきた意見も考慮しつつ,順次問題を絞り込んでいって,最終的な案を取りまとめる。こういうプロセスで議論を進めるというのが通例かと思います。
  そこで,一巡目の議論にあたっては,何を問題にして,どのようなことについて提案をしていくのかということを,おおよそ定めていくということが,大きな課題になるかと思います。事務当局からは,現在議論を始めたところである養育費,面会交流の問題に関し,次回も部会資料3について更に検討した上で,夏休み明けからはその他の問題について一通り順番に見ていくという案が示されているということかと思います。
  これは,最初に藤田幹事から話がありましたように,たたき台としての一つの案ということですので,自由に御議論を頂ければと思います。
  大きな方向性については,先ほどから幾つかの案が出ていて,ある一定の方向のようなものは,大まかには示されているように思いますけれども,皆さんからは,それを踏まえたとして,様々な御意見が更にあろうかと思いますので,御意見を頂ければと思います。
  どなたからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。
  それでは,大石委員,原田委員の順でお願いいたします。

○大石委員 千葉大の大石です。
  最初に,菅原委員から御報告をいただきたいという話をしましたが,最終的な答申に向けて,法律,法体系を整えていくということと,ソフト面といいますか,それを可能にするような体制とか支援作りというのは,車の両輪のようなものであり,両方とも共に進めていかなければいけないと思います。
  その中で,子どもの意見ですとか子どもを中心に据えた新しい制度を実現するに当たっては,子ども自身の意見をどのように聴取する体制を整えるのかとか,どのように聞くことが可能なのかとか,そういったことについての知見をやはり必要としていると思いますし,そういった人材育成も必要ということは,明石市長からのお話でも伺ったところです。私が菅原委員にお話を伺いたいとお願いしましたのは,特にそれが念頭に,まずどのような専門性を持って,子どもの気持ちを聞いたりとか,意見が表明できるような環境を整えるのかとか,それが実現しない場合には,子どもの発達にどのような影響が及ぶのかといったことについて,早いうちに知見をお伺いしたいという希望がありましたものですので,最初にあのようにお話をしたという次第です。ちょっと付け加えさせていただきたいと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。御希望は承りました。
  今の御発言を頂いて,先ほどから挙がっている幾つかの項目のうち,海外法制のヒアリングと子どもの心理面についてのヒアリングについては次回にということになっていますので,この部分についてまずお諮りしたいと思います。原田委員の御発言がもしそこに関わるのであれば,御発言を頂いた上で考えたいと思いますが,それ以外のことに関わるのであれば,私がもう少し話してよろしいですか。
  分かりました,ありがとうございます。
  それでは,進行について,決められそうなところから御提案していきたいと思います。
  まず,大石委員から,菅原委員にお話を頂きたいというお話がありました。この部会のメンバーであられるので,お話をしていただけると言っていただければ,次回のセッティングはこの場で済みますので,もしお話しいただけるということであれば,次回にお話を頂いたらいかがかと思っております。菅原委員,もしお願いをしたら,お引き受けいただくことは可能でしょうか。
○菅原委員 微力ながら,皆さんの御希望があれば。
○大村部会長 ありがとうございます。お引受けを頂けるということですので,もし御異論がなければ,そのようにしてはいかがかと思います。


 赤石委員,どうぞ。
○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。
  菅原委員が家族法研究会で御発言くださっていたレジュメ等を拝見させていただきました。すごくいろいろな研究データに基づいての御発言だったかと思います。
  私がやはり知りたいのは,親が葛藤状態にあるときに,子どもが面会ですとかしたときに,果たしてそれが利益になる,利益にならないというところの状況の調査があるのかどうか,ないのであれば,ないで結構なんですけれども,そこが何かちょっとオブラートのようになっていたので,是非その点をきちんと知りたいなと思っておりまして。元々コミュニケーションできて仲がよければ,いい結果が得られるのは当たり前,ごめんなさい,そんな素人の言い方をしてあれなんですけれども,そうではない場合にどうしたらいいんだろうというところを,私たちが苦慮しているんだと思いますので,そこが,ある程度手探りでも分かるといいなと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。今のような御要望が出ておりますので,それも踏まえてお話を頂くということでお願いしてよろしいでしょうか。赤石委員,そのような形でお願いするということでよろしいですか。
 菅原委員で御準備を頂けるということであれば,それでお願いしたいのですが。
○菅原委員 はい,かしこまりました。
○大村部会長 では,そのようにさせていただきます。
○佐野幹事 もし菅原先生に,こういったところも聞きたいということが事前にあれば,事務局の方にお送りさせていただく,もちろん答えていただけるかどうか分かりませんけれども,そのような形でよろしいですか。
○大村部会長 菅原委員には,もしかすると皆さんから更に御希望が出るかもしれませんが,可能な範囲で御勘案を頂くという形でよろしいでしょうか。
○菅原委員 はい,可能な範囲で対応したいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。では,そのようにさせていただきます。
  次に,外国法ですけれども,これについて本格的なヒアリングをするということになると,これは大変なことになるということで,少し慎重に考えた方がよいのではないかという意見が,かなりたくさん出たと認識しております。
  他方で,今までのヒアリングと同様,この先法改正を考えていく上で,外国法について一定のことを知っておきたいとお考えになられる委員,幹事の方も少なくないと思います。
  民法専門の方々は,それぞれ諸外国の制度について御存じのことが多いと思いますけれども,部会のメンバー全員がそれを共有しているわけではございませんので,一度,御了解が得れるようであれば,次回のうちの一定の時間を割いて,ニュートラルな形で制度がどうなっているのかについて御報告していただき,それとの関係で,皆さんの御関心に応じて質問をしていただいて可能な範囲でお答えをいただくことをする。あとは,特定の点について何か必要が生じた場合に,どなたかに来ていただいてその点に関する知識を補う。こうした形で外国法調査をしたらいかがかと思います。
  既にある調査について,一覧表を作っていただくということも,できれば事務当局にお願いしたいと思います。一覧表は便利ですけれども,しかし,読み取るのはそう簡単でもないところがありますので,それだけで外国法についての一定の理解が持てるかというと,それも難しいところです。
  そういう限界がいろいろあることを前提にして,外国法について少し聞いてみたらどうかと思いますが,窪田委員から手が挙がっていますので,御意見を伺いたいと思います。

○窪田委員 外国法の部分について,追加でお願いということになるのかもしれませんが,一覧表を作るのは大変だろうと思いますし,論点ごとに作るとしても,かなり整理が大変なのだろうと思いますが,それ以外に一つお願いしたいのは,先ほども少し出ておりましたが,面会交流についてなのか養育費の問題についてなのか,問題ごとによって違いはあるとは思うのですけれども,外国法についての資料というのは,既に文献資料としてある程度あるかと思います。
  先ほど出ていた話の中では,場合によっては,参考文献として挙げてということではあったのですが,そうした資料を参考文献として挙げられても,実際にアクセスするというのは,全員にとってそれほど簡単であるわけでもないと思いますので,法的な問題が生じない形で,うまくそれを委員に配布していただくようなことができないかなという,これはもう単純な希望ということでございます。
○戒能委員 今の外国法制なんですけれども,一覧表も必要だと,大事だと思うんですが,もう一つ私が希望しているのは,特に面会交流に関しての新しい動きです。見直しということになって,英国司法省から報告書が2020年6月に出ております。それは,日本でいう家裁の実務の検証をしているわけですね。今までは親子関係の継続性というのが子の福祉を促進するんだという推定規定が児童法にあったんですが,それが,実際の運用でどうなのかということを検証しています。そのきっかけとなったのが,2004年と2016年に出ているんですが,いろいろな事件が起きており,事件の報告書が,ウィメンズエイドという,日本でいう女性支援の団体の連合があるんですが,そこがまとめて,それに裁判官が反応をして,実際どうなっているんだろうか,どこが問題なんだろうかということをかなり,検証しているという報告書が出ています。そうすると,これは,今の日本にとても参考になるのではないかと考えます。
  ですから,報告書を全部自分で読みなさいというのは結構大変なものですから,専門家がもしいらっしゃるならば御紹介を頂く。それを基に議論をするということも,大変有益なんではないだろうかと考えるのですね。ですから,単にこういう法制度がありますということではない,そういう動きも紹介して,共有をするということも必要なのではないかと考えております。
○大村部会長 ありがとうございます。


○赤石委員 私,先ほど,日本の家裁実務について,やはり振り返りが必要ですということを申し上げて,多分,皆さんも結構御賛同いただけるのではないかと思います。だから,それを議論の中に持ち込むときに,さらに,今,戒能先生おっしゃってくださったように,英国あるいはオーストラリアですね,2006年に法改正をして,かなり両親が均等に子どもの時間を持つみたいな法改正をした後に,2011年,2019年と二度の法改正をしている。これはなぜ起こったのか,やはりいろいろな弊害が起きてきたからだということを聞いております。
  こういう動きを踏まえて,日本は一体今,どこに向かっていったらいいのかということが見えてくるだろうと思いますので,日本の振り返りと,それから海外でのこういった新しい動きについてのヒアリングというのが,多分両方があいまって,私どもが子どもを本当に大切に育てられる,そういう社会にするために,参考になるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。幾つかの御発言を頂いたかと思います。
  私が申し上げたのは,ともかく最小限の事柄であっても,まず次回に情報を共有しましょうということでした。その上で,戒能委員からは,イギリスの報告書を紹介してほしいという御要望があり,赤石委員からは,最近の動向に焦点を当てた形での外国法を知りたい,あるいは日本の状況も併せて知りたいという御発言があったかと思います。
  最近動きがあったようなところについては,ヒアリングの中に入れていただき,こういう動きがあったということをご紹介いただいて,それについて皆さんから質問をしていただき,その背景についての御発言を聞くことで,差し当たり対応できるかと思います。他方,外国の報告書の内容や,家裁の実務状況ということについては,次回直ちにということにはならないのかもしれませんが,それは,可能な時期に対応を検討していただくといった方向で,事務当局の方で考えてもらえますか。
○藤田幹事 いろいろと貴重な御示唆をいただいたかと思っていますので,今,部会長におまとめいただいたような形で,事務局としてできる範囲で,次回に向けての準備は可能かと思います。
○大村部会長 実務については,裁判所の方とも相談,調整が必要と思いますので,多少時間が掛かるかもしれませんし,報告書もそう簡単には対応できないということがあると思いますので,少し時間を頂ければと思います。
  そういう留保した上で,次回,一定の時間を使って外国法について話を聞くということについては,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
  どの国を対象に具体的にやるかということにつきましては,先ほどから具体的な国の名前も挙がっています。多少の時間がありますので,御希望があれば事務当局まで早急に寄せていただき,次回の使える時間との関係で絞り込みが必要ではありますが,それについてはお任せいただくということで調整させていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  また,次回の会議に来ていただくという形ではなく,資料を出していただく方法も含めて,検討させていただければと思います。
 外国法については以上のような扱いにさせていただきます。
  そのほか,家裁実務やその他の資料についても,さらにこういうものが必要ではないのかという御要望も出てくるかと思います。それは,随時皆さんの御意見を伺って,可能な範囲で組み込んでいくことにしてはいかがかと思いますが,これは,全体の進行にも関わってまいります。
  全体の進行については,取りあえず,外国法のヒアリングと残っている養育費と面会交流の議論は次回に行うとして,夏休み以降にこの部会で扱う課題を順に見ていこうというのが,事務当局の今後の進行案になっています。その過程で,繰り返しになりますが,必要であればヒアリングや調査等を行っていくということで進めることについて御意見を伺いたいと思います。
 先ほどから原田委員に待っていただいたので,まず原田委員から御意見を頂きたいと思います。

○原田委員 手を挙げたのは,海外調査の件で,一覧表のことなんですけれども,すみません,事務局に御負担を掛けるとは思いますが,先ほど公的支援についても入れてほしいという御意見があったと思いますが,それを支えている,例えば,裁判所の物的な規模とか事件数とか,そういうものも入れていただけると有り難いなと。難しい注文かもしれませんが,一言付け加えさせていただいて。
 今後の進行の問題ですけれども,6回から10回の間に5項目入っていますが,DVをどう切り分けるかというところについて,検討会では安全・安心な面会交流ということが言われていましたけれども,では,どうやって安全・安心な面会交流を確保するのかというところの議論がちょっと少なかったのかなと思っています。
  この中で,例えば,子の意思・意見の考慮に関する問題というのは,全てのところに関わってくる問題だと思うんですけれども,DVをどう切り分けるかというところも,やはり全てのところに関わってくる問題だと思いますので,それを1項目入れていただきたいなと思いました。
○大村部会長 ありがとうございます。DVについて全体的にどうするかということは,先ほども話題になりましたが,内閣府の方で対応いただくことも必要になるかと思いますけれども,この部会で扱う民事法の問題についても,DVが問題になったときに,それをどのように考えるのかということについては,どこかでまとまった形で議論をしたいというのが,今の原田委員の御希望であると捉えてよろしいでしょうか。
  これは,今回のたたき台の中でいうと,どういう位置付けになりますか。
○藤田幹事 事務局です。
  原田委員から御指摘があったDVの問題というのは,我々としても当然念頭にございます。このお示しした進め方の一案では,独立の課題というより,各検討課題のいずれでもそれぞれ問題になると考えており,その前提で位置付けております。具体的には,これから御議論いただく養育費と面会交流の場面でも問題になってまいりますし,その後の離婚後の子の養育から財産分与まで,全ての検討課題のところで,それぞれDVの取扱いや対応が問題になってくるかと思っております。そこで,このたたき台では,各課題,論点のところでそれぞれDVの問題を関連付け必要に応じ取り上げようと,そういう認識で整理していたところです。
○大村部会長 今のような御説明ですけれども,いかがでしょうか。

○赤石委員 DVの問題は,全てに関わるというのはそのとおりでございます。かつ,内閣府がこの間の報告書の中でも,面会交流については慎重にすべきだという,新しい報告書をまとめていたと思います。では,あれが,一つ一つの案件にどう考慮されるのかということはかなり難しい,そして,本当に失礼ながら申し上げますけれども,私は,毎年2,000件ぐらいの御相談を受けています。しかし,そこまでそうした深刻なものに接していない方たちが委員になっていらっしゃるのは,事実だと思うんですね。この切迫感がある中では,きちんと事実を聞いていかないといけないので,やはりもう少し,面会交流をして危険にさらされた方たちの声とかは聞いていかないと,議論の参考にならないというのが私の思いですし,お子さんたちが嫌がっていたにもかかわらずお父さんと会うことを,会えば平和なコミュニケーションができるはずというのは大人の論理でして,嫌だと思っている子は,泣き叫んで嫌だと言っているにもかかわらず,決まったがために,母親さえ裏切らなければいけないということになってしまうときだってあるわけですよね。こういう事態を防ぐ手立てがあるのかどうかということを,やはり。
  私どもも,そういう方をここにお招きしたいと本当に思って探しましたけれども,そういうお子さんたちはメンタルヘルスも病んでいて,ここに来ることすらかなわない方たちがいるということなんですよ。それをどうやってこの議論に反映させるのかということは本当に,基本的に大事な視点ですけれども,見逃されてしまうと思っておりますので,是非適宜,私どもも慎重に,かつ,何とかここに来てもメンタルヘルスがやられないような方を選んで,やはりお聞きしていただきたいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員と赤石委員から同じ方向の御要望を頂きました。
  そして,スケジュールについてですが,まず,本日は,部会資料3の養育費,それから面会交流の検討を残りの時間でやろうと思っておりましたが,だんだんと時間がなくなっております。次回にはヒアリングを行うということですので,養育費と面会交流について議論をする時間は限られてくるだろうと思います。しかし,この課題は,皆さんが最重要課題の一つとして挙げられていることで,一読の段階で,時間を掛けて意見交換をすることが必要かと思います。
  たたき台では,今後の日程が一応組まれていますけれども,このスケジュールに収まるかどうかは,なかなか読めないところもあります。私自身はなかなかタイトなスケジュールではないかという感触を持っております。事務当局からこの案を示していただいているわけですが,これで収まらないこともあり得ると思っておりまして,令和3年中に1巡目の検討を終えるという点に関しては,多少,持ち越しになる部分が残っても仕方がないのではないかと思っております。それが一つと,DVはどの問題にも関わるということで,それぞれの問題において,事務当局の方では注意をして問題提起をしていくということをおっしゃっていただきましたけれども,そういう議論の後で,やはりまとめて議論する必要があるという御意見が出ることもあろうかと思います。その中で,赤石委員がおっしゃったように,どなたかに来ていただくということが必要かつ可能であるという条件が整えば,そういうことも併せて,更に追加的なセッションを加えるということもありうるかと思っています。そうすると,一巡目の検討が年内に終えるということが,必須のスケジュールなのかということについて,事務当局に御感触を伺っておく必要があろうかと思います。

○藤田幹事 事務局でございます。
  今日お示ししたものも一つのたたき台の案でございまして,スケジュールについて,部会長から御心配いただきましたが,特にいつまでに,どこまでを,ということはございません。ただ,改めて整理しますと,議論する項目,論点がかなり多いなということは確かでございますので,御議論を進めていただくことは必要かと思います。先ほど委員から御指摘あったようなDVの問題は,特に留意をして資料を作成することに努めたいと思っています。ですので,このとおりお進めいただければと思います。
○大村部会長 このとおりというのは,今,私が申し上げたような,一巡目の検討が多少長びくこともやむを得ないという趣旨だと理解してよいですか。
○藤田幹事 スケジュールも含めて,もちろん先のことを考えつつというところはありますけれども,その点はその趣旨で構いません。

○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  DVの問題が非常に重要で多岐にわたるということと,それからDV,ハラスメント,暴力,虐待,こういうことについて,海外と比べても日本の法制とか対策が非常に弱いというのも,私も全く同感です。
  ただ,問題は,やはり家族の法制度を変えるとか,改めていくというときに,DVとか暴力の問題だけではなくて,子どもの権利とか子どもの意思とかということも含めて,私は全体に関わってくる大切な問題だと思っています。そこで,これらの問題は,具体的にどのような場面で全体にどういうふうに関わって,どの程度,どんなふうに配慮しなければいけないかということについて,養育費,面会交流などの取り決め,実施等で議論になってこようと思います。そこで,やはり早く具体的な事項や問題の検討に移って,各箇所や場面でそれぞれのところで,この場面でこういう対策が必要だとか,支援が必要だというのも出てくると思いますので,私は,DVとか子どもの意思だとかということだけに特化して最初に何かを設けるというよりは,議論をして,制度の問題点,課題,運用,そういうことを議論する中で,子どもの意思が全然反映されていないとか,子どもにきちんと説明がなされないとか,それから,怖くて関わりたくないとか,DVが深刻に作用する,リスクがあるとか,そういう問題の取り上げ方もあるのではないかと思います。もちろんモラハラでも出てくると思います。
  それをまずは議論した上で,そこで出てきた問題をどういうふうに,制度一般の中でどう取り上げるか,それから,先ほど赤石さんからも出ていた問題というのは,正に個別ケースでどう対応するかということは,実務上もどんな法制度を作っても出てくるので,その辺りを法制度一般の中でどういうふうに配慮していくかという,制度設計をするときにどうするかという問題と,それから個別ケースというのは非常に多様なものがあって,それに対して柔軟に対応しないといけないというは,少し区別して考えてもよいのではないか。個別案件では緊急性は非常に高いという問題があるので,法制度一般の設計の見直し,リスクのある個別事案への対応については,その辺りを少し切り分けて,対応した方がいいだろうと思います。
  個別ケースではかなり深刻な問題が出てくるということなので,出てきたときにどう対応するか,法制度一般の制度設計でどうするか,個別の緊急性を要するもので対応がまずかったり,いろいろな問題があるということは,制度設計の中にも出てくると思うので,そういうことをやりながら,個別にその問題について特化して,審議を集中してやるべきだということになったら,ヒアリングも海外の法制も必要に応じてやる,いろいろな知見を調べるなり,是非,必要に応じて柔軟に臨機応変にやっていくということでいいのかなと思っています。
  議論の後ろがそれほど切られていないということも,ある程度,分かりましたので,一通り議論をしながら具体的な問題,どの場面でどういうリスクがあって,どういう制度になるとどういう問題点があるのかという中で,DVとか子どもの意向をどうやって酌んでいくかということで議論してみる。そして,これらは非常に重要だと思いますので,取りあえず具体的な議論を進めてみた上で,特化して取り上げる必要があれば,子どもの権利というものをどういうふうな制度設計の中で取り入れていくとか,DVの問題に対して民事法制の中でもどうやるべきかということを議論した方がいいと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。各論の中で議論することでまず対応して,その上で,必要があれば追加のセッション等を設けるということでしょうか。
○棚村委員 いずれにせよ,必要な論点,重要論点だと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。

○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。
  私と棚村先生は何年来のお付合いで大変仲がよいということを言った上で,前回と今回はちょっと意見が違うということをお伝えしたいと思います。
  やはり海外の法制度は,いろいろな事件が起こって見直しが始まりました。オーストラリアでは,4歳のお子さんが面会交流中に橋の上から投げられ殺されてしまったという事件がございました。英国もいろいろな深刻な事件があったわけです。日本はそれを学んでいかなければいけないというときに,この議論の中で1回はきちんと,2011年から面会交流推進になったときに,どのようなことが起こり,お子さんがどういう思いをしたかということを聞いてくださいと申し上げていることが,やはり予防としてすごく大事であり,そこから照射される各方面のいろいろな取決めがどう見えてくるのかということを,想像力を持って聞いていただきたいということでございます。何か議論を止めたいというようなことではございませんので,是非御理解いただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員も,おっしゃるような議論はすべきではないという御趣旨ではないと思います。
 まず,各論の中で,それぞれの場面でしっかりと議論をした上で,それを通して検討をすべき問題がさらに出てくるかもしれないといった御指摘も,先ほど棚村委員からはございましたけれども,そうした点については,どこかでまとまった検討をすることはあるべしということで進めるというのを,本日の一応の案にしたいと思いますが,この点について更に御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。


○武田委員 質問です。
  今日の議論の中で,親同士,高葛藤のときどうしようと,いろいろ大変だよねと,それはそのとおりだと思います。その葛藤を下げる支援というアプローチもあれば,他方,法制度でどんなふうに担保していくんだという話もあろうかと思っていまして,その辺りの議論はどこに入りますか。
○藤田幹事 事務局でございます。
  武田委員から御指摘あった点は,これからの議論や部会資料の各所で出てくるものではないかと見ております。例えば,部会資料3の中でも,今おっしゃったような葛藤の高い場合に,親である父母に事前にどういった情報を提供するか,又は,取決めであれば,その段階でどういう問題があるか,そういうところをステージごとに課題であるとか,必要な制度の在り方と,それに関連する支援等の問題は取り上げていただければと思っております。
○武田委員 ありがとうございます。
○大村部会長 ほかに御発言いかがでしょうか。
  では,進め方につきましては,今のようなことで進めさせていただくということにさせていただくことにしたいと思います。二巡目の進め方などもございますが,この夏以降の議論の中で,進め方についても随時皆様の御意見を頂いて,更に考えていくことにして,まずは今ここでお諮りしたような形で議論をするということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  その上で,今日,残った時間で,部会資料3について,更に御議論を頂きたいと思っておりますが,ここで10分ほど休憩したいと思います。

          (休     憩)

○大村部会長 再開します。
  今後の進め方について大まかな合意を頂きましたので,具体的な問題に入らせていただきます。
  養育費と,それから面会交流とをあわせた形で資料はできておりますけれども,先ほどからの皆さんの御意見をまとめますと,養育費と面会交流とを一応別々に議論をして,その上で両者の関係について必要な議論をするという御趣旨の御意見が多かったかと思います。
  この二つを別々に議論しつつ大きくばらけてしまわないように,本来ならば1日のセッションの中で,前半で養育費,後半で面会交流といった分け方で議論すればいいと思うのですが,今日はもう1時間しかありませんので,養育費の一部を議論させていただければと思います。ただ,面会交流の議論がずっと後にならないように,次回は面会交流に一定の時間を割き,養育費の残る部分についても時間を割くということにして,それで終わらなければ,さらに持ち越すことあるべしという形で,それぞれ別々に議論をし,そして,二つの問題が大きく離れないという形で進めるということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
  では,残りの時間で御意見を頂きたいと思います。部会資料3の中身は,前回御説明を頂きました。第1ははしがきなので,第2から御意見を頂いて,前回は,第2についてある程度御意見を頂いたところで時間切れになっていたかと思います。
  本日は,資料3の第2についての御意見も頂きますが,第3の養育費の取決めの促進・確保,第4の養育費に関する取決め内容に関する規律という点について御議論を頂くことにします。第5は裁判手続になりますが,そこまでは今日は無理かと思いますので,次回送りにさせていただくということでよろしいでしょうか。
  それでは,資料3の第3,第4の部分を中心に,第2についても御意見を伺うということで御発言を頂ければと思いますので,お願いいたします。

○池田委員 弁護士の池田でございます。
  第2からということで,まず,養育費の件について,5ページの①について,意見を申し上げたいと思います。
  ここでは,養育費について,子を権利者とする子の扶養請求権を中心に据えるということが書かれていまして,これに基本的に賛成です。ただ,一つ検討しなければならないことは,手続法の話で,子どもが権利者と明確にされたとしても,現状,行為能力がない,つまり財産処分権がないということで,子どもが自分で家事調停,審判の申立てをするということはできない仕組みになっていますけれども,かといって,特別の代理人を付けるという手続も特段用意されていませんので,そこの代理人を選任できるということも併せて検討しなければいけないかなと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど杉山幹事から御指摘があったような,手続法上の問題とも関わる問題について,御指摘を頂いたと受け止めました。
  ほかに,今の点と関連してでも結構ですし,そのほかの点でも構いませんので,御発言を頂ければと思います。

○石綿幹事 石綿でございます。
  広い意味では第4に関係する話かと思いますが,休憩前の議論で,養育費については一度決めたら変更もなく払い続ける,それで問題が生じないという御指摘があったかと思うのですが,養育費に関しても,様々な事情で変更を検討する必要性が生じる場面というのはあるのではないかと思います。一つ目は義務者,あるいは権利者の収入の変化が生じた場合,二つ目は子どもに進学等,新たな費用が掛かるような事情や希望が生じたような場合,さらには,8ページの(注1)のような事情,すなわち子どもを監護している親が再婚し,その配偶者と養子縁組をした,あるいは義務者の方が再婚したような場合などに,取決めの変更の必要性があるか,ないかということも,議論をした方がよいのかと思います。これを,第4に絡めて検討するのか,あるいは事情の変更というのは別途取り扱うのかはお任せしますが,その点も検討した方がよいのではないかということです。
○大村部会長 ありがとうございました。先ほど面会交流について,事情が変わったときの手続に関するお話がありましたけれども,養育費もついても事情が変わることがあるので,同様に問題として意識して検討する必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
  ほかにはいかがでございましょうか。

○原田委員 検討の必要性という意味では,婚姻費用の請求というときに,その中身として,子どもの扶養請求と片方の配偶者の扶養請求の関係をどうするのかということも,検討の必要が出てくるんだろうと思いました。ちょっと回答は分かりませんが。
○大村部会長 ありがとうございます。婚姻費用との関係というのも,問題としてあるだろうという御指摘で,確かに問題はあるのではないかと思われます。
  水野委員,どうぞ。

○水野委員 7ページの父母間での取決めの促進・確保という表題についての質問です。御存じのように日本の場合は,養育費にしろ財産分与にしろ,全部,私人間の取決め,当事者の夫婦の取決めに任されてしまっている構造になっていますから,ともかく別れたいと望む側が経済的な権利をすべて放棄して離婚合意を得ようとすることも少なくありませんが,これはとても変わった法制で,離婚裁判で裁判官がチェックして妥当な金額が自動的に決まって命じられる国の方が圧倒的に多いわけです。
  そこで,日本法の場合も,あえて夫婦に相談させる取決めの促進・確保というのが大前提になる必要はないのではないかと,私は思っております。養育費については,ある程度機械的に命じられる,それは必ずしも多額でなくてもいいと思うのですが,最低でも自動的にこれだけの額が命じられる,あるいは収入などによって機械的に決められるのであれば,それは自動的に発生するということにし,その内容がいろいろな事情できついということならば,改めて修正の相談をするというような制度設計もあり得ると思うのです。大前提として,必ず取決めの促進という枠組みは,今度も崩されないということで考えるのか,それとも,そういう自動的にある程度一律のものが命じられるという制度設計まで考えてもよいのかという点をお伺いしたいのですが。
○藤田幹事 事務局でございます。
  部会資料3の7ページの第3の見出しで「取決め」という用語を使っておりますが,用語の使い方としては,父母間の協議・合意によるものも取決めですけれども,それ以外の審判等の合意に基づかないものも含め,具体的内容として定められるものを「取決め」と呼称する整理をしています。
  その上で,今,水野委員から御指摘があった点については,部会資料3の11ページを御覧いただいて,③です。ここに今御指摘があったとおり,養育について,これまでは,基本的な合意なり裁判所の判断によって初めて具体的請求権が発生すると整理していた規律を見直し,今回の一つの提案として,一定の場合には自動的,暫定的に具体化する,要するに合意なり裁判手続によらずに養育費請求権が発生するという規律を設けてはどうかということを挙げており,御指摘の点は十分にあり得るものと考えております。
○水野委員 ありがとうございました。


○棚村委員 早稲田大学の棚村です。
  まず,5ページのところで,基本的に未成熟子に対する扶養について,どういうような規定上の位置付けとするか,養育費請求権という言葉も出てきていますし,原田委員も先ほどおっしゃっていました,婚姻費用の分担ということで別居中に請求をするということも出てきます。それから,監護費用の分担ということで,養育費は766条にも出てきますし,扶養請求権ということになると877条と。この三つの請求権を立法の際に一本化して規定をするのか,それとも,各箇所にサテライトみたいな形で分散して置くという位置付けにするのかということも,議論しなければならないと思っています。
  それから,ここに書いてある,未成熟子という,誰が誰に対していつまでということについても,何らかのルールなり明確化をしないと,未成熟子なのか未成年者なのかということで,随分受け取る人によって混乱も起きますので,その辺りも整理をする必要があります。扶養請求権とか養育費請求権といっても,今言ったように,それぞれ一本化して整理をしていくということなのか,各段階に応じて,場面ごとにサテライトのように複数の場所にそれぞれの段階ごとにあって,それを最終的には統一するような概念とか基準とか,そういうものを構想していくのかでも,大分違うと思います。
  それから,決めるときの考慮要素とか基準とかについても,先ほど事情変更とかいろいろ出てきましたけれども,扶養の必要性とか扶養の可能性とかという資産,収入のことと,それから需要みたいなことでバランスを取って最終的には決めることになると思うのですけれども,その考慮要素や考慮事項みたいなことについても,きちっと明確な規定を置く,例えば,再婚した場合とか,収入が減ったとか,リストラされたとか,いろいろな事情をどんなふうに考慮するかというのも,実務の運用でされているのですが,海外の法制を見ても,裁判官の裁量の範囲を定めたり,当事者にとっての予測可能性も確保する意味でも,ある程度基準なりルールというのを議論して明確にする必要はあるのではないかと思います。
  そういうことを議論していると,水野委員がお話ししたように,取決めだとか話合いが可能なケースと,それから非常に困難なケースというのも出てきますから,やはりスタンダードな算定基準,ガイドライン,今も算定表が,裁判所の紛争の効率的な解決とか,目安として作られています。しかし,海外ですと,関係する中央省庁や,司法だけでなく,統計,福祉,教育に関わるようなところも含めて,最新の統計的な数値を持ち寄って,最低限度生活していく上でこれぐらいのお金が必要だという観点から,数年ごとに改定していたりします。今裁判所の用意した簡易算定表は,飽くまでも権利者と義務者の双方の収入を比較して,そして,できるだけ目安として早く問題の解決をしたいというところに主眼があるものなので,どうしても限界があります。その辺りも,今後の議論ですけれども,どういう基準でもって,どこがどんなふうに決めていくかということについても,裁判所だけでなく,国を挙げて考えなければいけないと思います。つまり,取決めをしたり話合いができないケースに対しても,自動的に算定表・計算ツールなどで決まるなど,どういうふうに対応していくかということも重要だと思います。
  それから,紛争や葛藤が非常に高いケースがあるというのは,よく分かるのですけれども,逆に言うと,早期に親ガイダンスとか,教育的な働きかけや情報提供,啓発プログラムに参加するなども大切だと思います。今,厚労省が音頭を取って,東京都なども力を入れてやろうとしています。また,自治体の離婚前後の親支援講座などについても力を入れ始めていますから,是非,離婚前後の親ガイダンス,親支援講座みたいな形で,一定の知識と情報を与えることが重要だと思います。
  いずれにしても,民法の中で養育費とか扶養請求権とか,いろいろな言い方,婚姻費用分担の中にも一部含まれているのですが,それをある程度整理をして考えていかないといけません。場面ごとにその中身が変わるのも困りますし,要するに,誰が誰に対してどんなものを請求するかというときに,民法の規定や条文が不明確で,あちこちに異なって規定されていますと,齟齬とか不統一が生じたりします。今回は,せっかくの機会ですから,そういう実務の現状を知った上で,子どもの権利を本当に実現するためには,一本化して基準も手続もやっていくのがいいのか,それとも,それぞれのところにある制度や規定の中で,できるだけ齟齬や不整合が生じないように統一をしていくというか,そういうような形で,各箇所にある程度置いておくということにするのか。私自身も今,結論は出ていないのですが,学会でこの問題を取り扱って検討してきたときに,海外でもいろいろな対応の仕方があったが,ただ,少なくとも,扶養請求権のところに,未成熟子の扶養の規定がきちっと置かれていないというのは日本だけなものですから,ある意味では,そういう子どもの権利とか子どもの利益が優先されずに,大人の紛争を解決するということで,どちらかというと子どもの利益が後退している部分は,是非この機会に改正をしてはどうかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。幾つか御指摘いただきましたけれども,5ページの①,②について,出来上がりがどうなるかについては幾つかの考え方があるけれども,この際,この点をきちんと整理することが必要ではないかという御指摘と,それから,高葛藤で協議ができないような場合についての対応が一方で必要である,それは水野委員がおっしゃったことだけれども,他方でそうでないカップルに対する支援も必要ではないかという御指摘を頂いたと受け止めました。
  手が挙がっていますので,大石委員,窪田委員の順番でお願いします。


○大石委員 千葉大学の大石です。
  12ページの具体的な養育費について,幾つか御提案というか,させていただきたいんです。まず,養育費の算定方式ですけれども,日弁連からも問題点を指摘する意見書が出ておりますし,そういう水準について,もう少し包括的な,できれば細かい家計のデータなどを用いた検証というのが行われた方がよいと,かねがね思っておりました。ただ,こちらの部会でするのがよいのか,更にもう少し何かブレークダウンした別のパートですればよいのかは,また検討する必要があるかとは思います。諸外国の事情についても,海外法制との関連でどのような基準に基づいて養育費の水準が決定されているかといったことをお調べいただくとよいかと思いますし,日本の基準の設定の仕方,子ども1人の成長にどのぐらいの費用が掛かるのかといった視点から考えるということが必要と思っております。
  もう一つ。やや超越的なコメントかもしれませんが,養育費というのはフローですよね,月々とか,一定期間ごとの送金となっていると思いますが,私のような経済畑の考えから言うと,ストックでもらっても同じではないかという発想があります。財産分与と絡んでくるかもしれませんが,将来的に支払が不安定になるのであれば,まとめてもらって,それを年金化していっても同じではないかという発想があります。実務でどのようになさっているのか詳しくはないのですが,そういう考え方はあり得るのだろうかということを,問題提起させていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費の算定表に関連する御指摘を二つ頂きました。
  一つ目は,これを細かくする方向で,計算の仕方はこれでいいのだろうかといったことについて,この際見直してみる必要があるのではないか。それをどこで見直すかという問題はあるけれども,という御指摘だったかと思います。
  他方,先ほど棚村委員も触れられましたけれども,現在のこの表を支える考え方がどのようなものかということを見直すという方向もありますので,この表について,あるいは実務について,どこかで皆さんに御意見を頂くということが必要かと思って伺いました。
  二つ目は,一括払いというのはどうかということでしたが,この点については,それぞれ知見をお持ちの方に伺いたいところですけれども,これは,先ほどの石綿幹事の御発言とも関連するところがあろうかと思います。変動しないならば一括払いもあり得るわけですけれども,変動するということになると,それをどのように組み込むかといった問題も考えなければならないと思って伺ったところです。


○窪田委員 窪田です。
  ちょっと答えが分からない状態で,こういう論点もあるのかなということだけなのですが,養育費に関して,面会交流もそうかもしれませんが,父母間での取決めがやはり重要であって,それを促進する必要があるということは,一般論としては,私自身は十分に理解できますし,この方向で準備していただいているのも理解できます。
  ただ,ちょっとよく分からなくなってきてしまったのが,一方で,特に部会資料3の3ページには,養育費の位置付けが,父母間の問題なのか,扶養請求権の言わば代理行使の問題なのかという建付けというような問題があります。今,養育費と言っているときには,父母間の話だという前提でいるわけですけれども,仮に,基礎にあるのが子の扶養請求権にあって,監護親の方は,それについて掛かった費用を求償しているにすぎないのだと考えた場合に,父母間での養育費の合意って一体何なのだろうかというのが,実は法的には結構深刻な問題として出てくるのかなと思います。
  そんなうるさいこと言わなくてもという意見もあるのかもしれませんが,恐らく,例えば,養育費に関しては要らないという取決めをしたとしても,それは,子どもの扶養請求権を否定することにはならないと思いますし,今ちょっと答えがない状態なのですが,少し整理する必要があるのかなと思いました。
  私は,大石先生の先ほどの年金化というのは,すごく面白いなと思って伺ったのですが,これも恐らく財産分与を手掛かりにすると,夫婦間の問題としてはうまく説明できるのですが,子どもとの関係だとすると,実はその説明が難しくなるのかなという気もしますので,いろいろ派生する問題なのかなということで,思い付きで申し訳ないのですが,発言させていただきました。
○大村部会長 ありがとうございます。父母間の養育費請求権と子どもの扶養請求権との関係については,親が子どもの扶養請求権を処分できるのかといった問題が出てくるという御指摘かと思います。それは検討しなければならない問題だろうと思います。
  沖野委員,原田委員,赤石委員の順番でお願いします。

○沖野委員 私も,少し思い付き的なことで,きちんと詰めていないままの発言で申し訳ないのですけれども,この養育費請求権の位置付けに関しましては,各親が子を養育する義務があるということで,ただ,その義務の内容というのは,単にお金でバックアップするということだけではなくて,非常に多様な形で子を養育していくという,そういう義務を負っている,その中で経済的にも対応するということは,その一つなんだろうと思います。
  そのように考えた場合は,やはり養育費請求権というのを持っているのは子であって,子に対してそれぞれの親が,合同でなのかもしれませんが,義務を負っていると。一方で,親同士の話というのは,そういう義務を負っている者の間の分担の請求であったり,取決めであったりと,そういう位置付けではないかと思います。したがいまして,両者の取決めにおいて,全体の内容が適正なのかというと,分担としてはこういうふうに,しかも経済的な部分の分担はこうするというだけのものですから,義務全体としてどれだけかとか,経済的に言ってもそれが足りるのか足りないのかということが,合理性が確保されていないというものとして,したがって,それでは足りないということになれば,子からの請求というのは妨げられないということになるんだろうと思います。
  もっとも,子の請求を誰が具体的にやっていくのかという問題は,最初に池田先生から御指摘のあったとおりかと思いますが,そのような位置付けで考えていくことができないかと思っております。
  そうしたときには,例えば,婚姻費用の分担というときには,共に養育の義務を負い,経済面においても分担していく義務者間において,子どもに対して負う義務をどのように分担していくかという話と,それ以外の夫婦間の婚姻の費用を更にどうするかということを,言わばまとめて請求していくという位置づけができるのではないかと思います。ちょっと直接関係ない別の事項ですけれども,財産分与でも様々な性格があるとか,あるいは不法行為の損害賠償もあり,それらを一緒に請求することもできるとかもありますので,そういう形で整理ができるのではないかと思います。
  それから,離婚後につきましては,元夫婦の間の離婚後扶養というような話も,財産分与の中で出てくる話がありますので,そういう性格を持った中で請求していくというようなことも,あるいはあるのかもしれません。別居中が婚姻費用の分担でないと考えれば,また似たような話も出てくるかと思いますので,少し概念整理として,そのような形で整理をしてはどうかと思います。
  ただ,養育義務は,一種の扶養かもしれませんが,非常に多様であり,こういう性格を持っているので,親子の間の養育義務として取り扱えばいいのではないかと思っておりますけれども,それ自体,やはり義務の具体的な内容自体が,子どもの状況に応じて,どういうものが必要かというのは中身も変わってきますので,そうすると,ある意味不断の見直しというのも表現として適切ではないのかもしれませんが,かなり長期にわたる義務であり,状況に応じて適切に養育する義務だということになりますので,その義務の性格上,見直しの機会というのはきっちり確保されるということと,当事者の取決めについて,飽くまで義務者間の取決めということになりますので,その合理性の確保措置というのが必要になってくるのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。基本的な一つの考え方を示されて,そこからこういう帰結になるというお話を頂きましたけれども,最初の発想は,父母の養育費の取決めというのは,共同で義務を負う者の間での内部的な負担部分の取決めであるということで,子どもにそれは影響しないと考えることができるということかと思います。これが基本的な発想であり,そこから,どのように考えを進めることができるかということですね。

○沖野委員 はい,そのように考えております。
  もっとも,その取決めを子が援用するとか,そういう話が出てくるのかもしれませんけれども。
○大村部会長 ありがとうございます。
○原田委員 すみません,時宜に遅れてしてまって,先ほどの大石委員の一括負担という内容が,ちょっとどういうものなのかをお聞きしたかったのですが,信託の利用とか,そういうこともあり得るということで御紹介をします。
  今の実務では,一括というのは,これは裁判官の方が違うと言われるかもしれませんが,例えば,お子さんが亡くなるとか,そういうときに清算の問題が起きるとか,あるいは,お母さんがというか,養育者がそれを使って,例えば事業を始めたと,それで失敗して,それはなくなってしまったと,その後どうなるのかとかいう,いろいろな問題があって,よほど当事者同士で合意がある場合を除いては,使われていないんだろうと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。

○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。
  養育費の概念がこんなに幾つもあるんだというのは,私も読んで,支援団体としては,そこはちょっとお任せするしかないんですけれども,税制との絡みをどうするのかというのを,一応お伝えしておきます。
  今,親が養育していて,同居親が養育していて,子どもの扶養に関しての税制の控除を受けている場合が多いんですけれども,これは別にどちらでも選択できるということなのか,所得の高い方が先に,自分が税の申告のときに,この子ども2人は自分が扶養していますということを申告してしまえば,こちらの方が所得が高いので,そのまま認められてしまうというようなことが起こっているようなんですね。
  この税の控除の問題をどう整理していくのかというのは,結構後に残る問題で,では,扶養とは何なのか,扶養控除とは何なのか,結構議論が必要なのだなと思っておりますし,もしかしたら分割した方がいいのかもしれませんし,そこもよく分からないというところなので,一応お伝えしておき,先取り勝ちで,扶養控除を取れないため,所得が高くなってしまって,いろいろな手当てとかもらえなくなってしまっておられる方がいらっしゃるということをお伝えしておきます。
○大村部会長 ありがとうございます。請求権の法的性質をどう考えるかということについて,論点が出されていますが,その性質決定が税制に影響するかもしれないということで,そのことも考えて議論しなければいけないという御指摘を頂いたと承りました。

○小粥委員 小粥です。
  現在,養育費の件でどのように理解するかということが議論されていると思うんですけれども,債権者は誰なのかというような問題とは別に,実体法上,ただの金銭債権という扱いのままでよいのか,現状でも民事執行法で養育費請求権については特別扱いがされているわけですけれども,今般の改正論議の中で,民事執行法,つまり債権回収の手続でより強力な特別扱いをしようとする際に,実体法というか,民法で現在のようなただの金銭債権という扱いのままで,手続法上の特別扱いがどこまで正当化できるのかという問題は考えなくてよいのかと。つまり,養育費は債務名義をより簡単に取れるようにするといったことが示唆されていますけれども,ただの金銭債権ではなく,若干の特殊性がある金銭債権ということで,あるいは,例えば先取特権を付与するような形にした方が,取扱いが正当化できるというようなことがあるんだとすると,そこも考えた方がいいのではないかと思っております。
○大村部会長 ありがとうございます。先ほど棚村委員から資料5ページの①,②について御指摘がありましたけれども,小粥委員の今の御発言は③に関わるのだろうと思って伺いました。
  ここには,極めて重要な権利であると書かれているのですが,民事手続において,ここでいう養育費請求権に特別な保護を与えるというときに,何か理由付けが必要になるのではないか。小粥委員がおっしゃったように,優先権にかかわる問題が一つありますけれども,優先権に尽きない問題も多分あって,それらをどうやって正当化するかのということを議論する必要があるだろうという御指摘かと思いますが,資料としては③のところで扱っていることかと思います。
  そのほか,いかがでしょうか。

○井上委員 連合の井上です。
  養育費については,子の利益だと考えていますので,支払が親の責任であることを明確にした上で,取決めの作成支援のみならず,受取り側に代わって取立てや立替えなどを行う公的な仕組みを検討すべきではないかと考えています。これは,明石市長のヒアリングのときにも孤軍奮闘されている様子が話されましたけれども,やはり国として一定の水準,基準は持つべきだと思っています。
  特に,ひとり親家庭の貧困問題が深刻化している中で,養育費を確保するための方策は,優先的に検討すべきではないかと考えています。
○大村部会長 ありがとうございます。養育費の履行確保についての方策が重要ではないかという御指摘を頂きました。公的なということですけれども,民事法の外でやるということもあるだろうと思いますし,民事執行法の中で,あるいは他の手続法の中でどこまでできるかという問題もあるかもしれません。問題提起として承りました。

○久保野幹事 幹事の久保野です。
  一つ前の話に戻るのですけれども,5ページの③のような方向で,未成熟子からの扶養請求権,子どもの方からの請求権の実体法的手続法的な特性を詰めていくことが大事だということだというのに私も賛成ですけれども,この件について,少し前だったか,沖野委員の方から,扶養請求権という名称を変えて,何かいい言葉に置き換えられるとよいだろうというような方向性についての御発言があったかと思います。繰り返すのも変ですけれども,扶養請求権という言葉を使うことによって,現在扶養について取られている考え方と結び付けてということになりやすいというようなこともありますし,いつ変えるかはともかくとしましても,扶養請求権という言葉を非常に気を付けて,どういう実態,例えば,成長発達権と結び付けるのかどうかとか,いろいろなことがこれから議論されるんだと思いますけれども,その実態に合わせてどのような言葉を使っていくかということについても,積極的に議論をしていけるとよいなと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。他の請求権と性質が違うものだと考えるならば,概念の方も区別するということが望ましいのではないか,そういう方向の議論も必要であろうという御指摘として承りました。


○佐野幹事 佐野です。
  11ページのところで,ちょっとまた支援の話になってしまうかもしれないのですけれども,最初,①ガイダンスを実施すること,これは非常に賛成なのですが,ただ,ガイダンスだけではなかなか心情的に受け入れられない当事者の方もいらっしゃるというところを踏まえると,やはりそういう方には,その後個別の相談につなげるという何らかの枠組みが必要なのではないかなと思います。それは,韓国でもやっているのではないかと思います。
  それから,先ほど窪田委員からあったような,やはり養育費の額を取り決めるとしても0で取り決めてしまうというインセンティブが働いてしまうということを防止するためには,やはり税制上など何らかの,養育費を払うことによる利益といったところも考えなければいけないのではないかなと思いました。
  12ページの算定方式,考慮要素を法定してはということは,今は裁判官だけで決められているところですので,これは非常に賛成です。ただ,その前提となる収入の部分について,その後の話なのかもしれないですけれども,ここでも指摘されているように,やはり自営の方などで経費をかなり多く計上している事案などもあり,それを適正化するためにはどうしたらいいのかというところは,また別途検討する必要があると思っています。
○大村部会長 ありがとうございました。ガイダンスという話が出ていますが,ガイダンスには来ない人がいるということが,いろいろなところで問題になりますので,そうした問題についても対応が必要であるということ,また,算定表につき実際の算定の方法に関する問題などに関する御指摘を頂きました。
  ほかに御発言いかがでしょうか。
  青竹幹事,窪田委員,落合委員の順番でお願いします。

○青竹幹事 先ほど,国による立替払いについての御指摘がありましたので,それに関連して一言だけなんですけれども,義務者から何が何でも徴収するという発想だけではなくて,国による立替払いもそうなのですけれども,公的機関の仕組みというのも,民法の外ですけれども,払えなかった場合ということにはなるんですけれども,むしろ少し積極的に検討するという方向があってもいいのかと思いました。
  落合委員が,第1回のときだったかと思うんですけれども,子の養育というのが,親だけの義務ではなくて社会が負担すべきという視点を御提示されていたのを,印象的に伺ったのですけれども,少しそういったことからも検討してもいいのではないかと思いました。
○大村部会長 ありがとうございました。履行確保以外あるいは,それ以上の対策というのも必要だという御指摘として承りました。
○窪田委員 窪田です。
  5ページの①,②,③に関わる部分で,前回も確か私,未成熟という概念をそう簡単に使っていいのかという発言をしたと思いますので,それと重なってしまうのですが,特に今回もう一度資料を見直していたときに,②の親が未成熟子に対して重い扶養義務を負っていることを民法において明らかにしてはどうかというのは,重い扶養義務を負っていることが当然の前提になっているのですが,本当にそうなのだろうかという点について,少し違和感を持ちました。
  つまり,未成年であるというのは,行為能力も制限されていて,言わばまだ法的に完全には自立していない,そういった未成年者に対する関係と,大学に行っていて,成年には達しているけれども,経済的に自立していないという場合とでは,扶養をめぐる関係はやはり違うのかなという気もしますので,全部何かひっくるめてこういう形で重い扶養義務と言われてしまうと,成年の未成熟子に対して重い扶養義務を負っているのはどうしてなのというのを,やはり聞いてみたくなってしまいます。そういう点も含めて,少し慎重な書き方をしていただく,あるいは,もし書くのだとすると,成年の未成熟子,それから未成年の成熟子という概念があるのかどうか分からないですが,未成年であるけれども経済的に自立している子どもとか,幾つかきちんと整理した上で書き分ける必要があるのかなと思いました。前回の話と同じことになってしまいますが,感想です。
○大村部会長 ありがとうございました。5ページの②について,言葉遣いと,それから実質についても,この問題についてはより慎重に考える必要があるのではないかという御指摘を頂きました。
○落合委員 子を権利者とする子の扶養請求権という話なんですけれども,子どもの権利だというのはものすごく賛成です。ただ,その場合,母親と考えが違うときに何が起きるのかというのを,現状でも起きているのではないかと思うんですけれども,どういうふうに処理するものなのかというのを,ちょっと伺いたいなと思いました。
  母親は,例えば,養育費をものすごく少なく合意してしまったとか,でも,子どもとしては,自分は大学に行きたいんで,やはり本当はもっと欲しいんだけれどもとか,あるいは,母親がほかのことに使ってしまっているというようなことも,先ほどありましたよね,例として。母親と子どもの間の関係は,どういうふうに扱われることになるんでしょうか。
○大村部会長 ありがとうございます。今,質問という形でおっしゃっていただいたのですけれども,先ほどから,それに関わる御指摘が出ていて,その問題について,今回一定の考え方を示す必要があるのではないかということで,複数の委員から御意見を頂いたところかと思います。落合委員がおっしゃっているような危惧に対応できるような形で,制度を組む必要があるのではないか。その基盤として,沖野委員のような発言があったということではないかと思います。
  具体的にどうするかということを,規定を詰めた形で,この先で議論する必要があると思いますけれども,問題の御指摘は落合委員がおっしゃるとおりなのではないかと思います。
○落合委員 ありがとうございます。
○大村部会長 杉山幹事,武田委員の順番でお願いします。
○杉山幹事 幹事の杉山です。
  先ほど養育費の支払が一括なのか,それとも,定期的に少額に払うのかという話が出ましたが,今の執行法などは,基本的に定期的に少額で毎月払うということを前提にしていると思います。ただ,一括での支払いが絶対排除されるのかというと,必ずしもそうではないような気がしています。
  先ほど一括払いですと,後の事情の変更に対応できないという問題がありますが,必ずできないかというと,事後的な調整は不可能ではないと思いますし,一括で払った後に,子どものために使われない可能性があるという問題についても,毎月払う場合でも同じような問題が出てくるかとは思います。
  ただ,子どもの養育のための費用であるということであれば,一括払いよりも定期的に払うことを基本的に念頭に置いて検討するのでいいと思いますが,11ページにあるような取決めができないときに,そもそも取決めをする必要性があるかどうかとの関係で,離婚時に一定額,恐らくはかなり低い額で,自動的に請求権が発生するという考え方も検討に値するとありますが,そのような制度自体はあり得るとは思いますが,他方で,自動的に債務名義となるとした場合に,先ほどから養育費の額が変動する可能性があるという話がありましたが,その場合に債務者側にも修正のための重い負担を課すということになると思います。また,仮に追加請求もできるとして,その追加部分も債務名義にしなければならないといった問題も出てきます。いずれにしても,債務名義としない限りは実効性のある制度にならない点は理解できますが,何も手続的な保障がないまま,債務名義として修正の負担を債務者側に課すというのがいいかという点は,少し慎重に検討した方がいいのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。手続的な面からの非常に重要な御指摘を頂いたかと思います。その点について注意をするとともに,どこかで皆様の意見を伺いたいと思います。
  武田委員,大石委員の順番で伺って,その辺りで今日はまとめたいと思います。
○武田委員 私どもは,養育費を払うことが常識というふうな中でやっておりますので,まずは,ずっと払い続けられるという観点と,もう一つは,継続的な支払確保のために収入に合わせて流動的に変動させるという2点が必要なのかなと,そんなふうに思っています。
  基準に関して,また別途整理いただいて情報提供いただけるという話ですけれども,今,基礎収入をベースにした考え方,今それだけで「えいや」って決めているように,やはり見えておりまして,払うのは全然当たり前のことなんですけれども,そこに対する納得感というところが,今はまだ足りないのかなと,そんなふうに思います。特に昨今,年収が上下することは,同じ会社に勤めながらもということは,非常に当たり前の世の中になっております。これはちょっとどこの国か忘れましたけれども,毎年双方の収入証明を出すと,それに伴って自動的に再計算すると,そのような仕掛けを持っている国もあるやに聞いております。そういった事例も踏まえて,払い続けられるようにという観点で,今後どう整理していくのかということが必要になろうかというのが,私からのコメントの1点目です。
  あともう1点は,次回のテーマになりますが,裁判手続の中でということで,先だって民事執行法が改正になっております。一定,回収に当たっても使いやすくなったとは聞いております。これは,可能であれば,新民事執行法改正以後,具体的にデータとしてどこがどういうふうに変わった,そういうようなものを,次回の部会の前に資料として御提供いただきたいというのがお願いでございます。
○大村部会長 ありがとうございました。第2点は,次回に間に合うかどうか分かりませんけれども,事務当局で御検討いただきたいと思います。
  第1点については,収入が変動するということが,かつてに比べて多い時代になっていますので,それを見込んだ支払可能な制度を考えてほしいという御要望として承りました。
○大石委員 千葉大の大石です。ありがとうございます。
  先ほど発言に追加なのですが,一括というときに,例えば,離婚が比較的若い時期に行われるとすると,そのときの余り蓄積していない資産で一括払いするというのは,もしかしたら子どもにとっては不利な状況に,あるいは子と同居する側に不利になるかもしれないという問題はあるかと思います。
  それと関連して,もう一つ問題提起させていただきたいのは,定額にするのか,定率にするのかということもありまして,今ですと,離別時に決めた金額がずっと続くということが多いと理解いたしましたけれども,例えば,年功賃金体系のもとでは年齢が上がっていくにつれて収入は増えていくわけですけれども,若いうちに定額で決めてしまうというのは,後々多くなるかもしれない支払能力というものを反映できないというリスクがあるかもしれないというのが一つ。ただし,賃金の年功度も緩やかになってきていると言われておりますので,今申し上げた問題点がどの程度当てはまるかどうかはまた別かもしれません。
  それから,定率にするということは,それぞれの時期に変動する収入に応じて,その一定割合を支払うということですね。アメリカの州によってはそういうシステムを取り入れている州もあります。ただ,これは海外の研究ですけれども,そういうふうに定率になってしまうと,今度は,例えば,払わなければいけない側が一生懸命働かなくなるというような,つまり収入を増やす努力を怠っていくというような行動を惹起するということも指摘されています。定額・定率のどちらも長所短所があり,両者をミックスした方がいいのかもしれませんが,そういったディテールについても,何らかの機会に検討することができればよいと考えています。
○大村部会長 ありがとうございました。直前の武田委員の発言と同じ方向で,収入の状況が変動するので,それをどのように考慮するのかということを,様々な選択肢の得失を考えて検討すべきではないかという御指摘を頂きました。
  現在の雇用状況について,どのように認識をするのかといったことも関わると思いますけれども,その辺はまた,大石委員からも知見を披露していただくこともあろうかと思いますが,引き続き議論をしていきたいと思います。
  ほかに御発言ございますでしょうか。
○落合委員 この際,質問させてほしいと思うのですけれども,養育費というのは,両親以外の義務にはならないでしょうけれども,実態として払っていたりしますね。祖父母などが。息子が払えなくなったときに,おばあちゃんが払っているとか,例はいろいろ見たりしています。
  お父さんが払えなくなったら,誰かにその義務が移転していくようなことはあり得るんでしょうか。それがいいと言っているのではないのですけれども,質問です。
○大村部会長 お尋ねは,実態についての質問ということになりますか。
○落合委員 はい,実態ですね。日本と,それからほかの国で。
○武田委員 日本国内でも事例としてはございます。お父さん払えなくなって,今,おじいちゃん,おばあちゃんが一生懸命なんで,何とか孫と接点を持つために払うというケースは,実はあります。
  もう一つ,大学の学費ですね。大学の学費,お父さんだけではどうしても出せなくて,お母さんも出せない,その中,おじいちゃん,おばあちゃんが田んぼを売って学費を出してあげると,そんなケースも実態としては耳に入っております。
○落合委員 あるなと思ったんですけれども。
  それが,扶養控除など,税制上何か優遇されるとか,養育費一般についてあるんでしたら,祖父母のも入るのかなと,お尋ねさせてください。
○大村部会長 実態についてどうなのかというのは,なかなか難しい問題だろうと思いますが,親の義務を祖父母が代わりに履行しているという話なのか,あるいは,祖父母が子どもに対して直接金銭的な給付をしているという話なのか,そういうことも,考えていく上では整理が必要なのかと思います。
  この問題は,監護者として,祖父母をどう考えるのかという問題とも,緩やかにつながるところがあるかと思いますので,またその辺りで御議論を頂ければと思います。
  窪田委員,原田委員の順番でお願いします。
○窪田委員 窪田です。
  大村先生から御説明があったとおりなんですが,おじいちゃん,おばあちゃんが代わって払うことがあるというのは,別におじいちゃん,おばあちゃんが義務を引き受けているわけではありませんので,ちょっとそこの部分は丁寧に,次回にでも結構ですから説明していただいた方がよろしいのかなと思いました。
  基本的には,おじいちゃん,おばあちゃんが払う場合があったとしても,お父さん,お母さんの義務が移っているわけではありませんので,法的には,それを前提として,直系親族の,血族の関係だけだということだと思いますから,改めて説明していただいたらよろしいかと思います。
○大村部会長 ありがとうございました。
○原田委員 私も今,同じことを言おうとしていました。
  実態的には,おじいちゃん,おばあちゃんがお金を出すことは一杯あります。でも,それが義務として裁判所で例えば認められるかといったら,それは違う話だということだと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。
  ほかに御発言ございますか。よろしいでしょうか。
  それでは,取りあえず今日のところは資料3の第4まで,13ページの3行目まで御意見を頂いたということにいたしまして,次回,ヒアリングと併せて,残りの部分と,それから面会交流について取り扱うということで検討を続けたいと思います。
  次回に面会交流も併せて終わらないかもしれませんが,その場合には,残ったものはその次に持ち越して,継続して議論をするということにさせていただこうと思います。
  それでは,次回の予定等について,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。
○藤田幹事 本日も御議論をありがとうございました。
  次回は,7月27日の午後1時半からということで,場所は改めて御連絡いたします。
  部会長から御説明がありましたとおり,次回は,まず部会資料3の養育費に関する残りの部分を御議論いただいた後に,面会交流に関する御検討を引き続きお願いするということになります。その後に,海外に関する研究者からのヒアリングと,菅原委員からお話を伺うということになりましたので,そのような進行で次回はお願いしたいと思います。
○大村部会長 次回のヒアリングでは皆様からいろいろな質問が出ると思いますけれども,次回は,今日の養育費の残りの問題と面会交流の問題について意見交換をしたいと思いますので,そちらを先にさせていただきまして,ヒアリングをお願いした方がお越しいただく時間になりましたら,議論はそこで一旦打ち切って,ヒアリングに移らせていただくという形で,時間配分をしたいと思っております。この点,どうぞよろしくお願い申し上げます。
  今日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。
-了-

照会事例から見る信託の登記実務(15)

登記情報[1]の横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(15)」からです。

信託目録中の「信託財産の処分につき受益者の指図を要する。」の定めは、信託契約の当事者でない受益者の指図、すなわち、第三者の許可、同意、承諾を要件としていることから、信託財産処分の成立要件となっていると考えられます。―中略―信託行為の特約を登記事項とし、登記官を含む第三者にこれを公示している趣旨からすれば、受益者は、物権変動の原因となる法律行為につき第三者の許可、同意、承諾をする立場であり、それが信託財産処分の成立要件となっていることからも、登記実務上、受益者の指図についての情報の提供が求められるべきと解されます。

不動産登記令(平成十六年政令第三百七十九号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416CO0000000379

(添付情報)

第七条登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。

五 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報

ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報

(承諾を証する情報を記載した書面への記名押印等)

第十九条 第七条第一項第五号ハ若しくは第六号の規定又はその他の法令の規定により申請情報と併せて提供しなければならない同意又は承諾を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、その作成者が記名押印しなければならない。

2 前項の書面には、官庁又は公署の作成に係る場合その他法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。

 信託目録に、AとBが結婚(婚姻届を提出した日)したときに売買契約が成立する、という定めがあるときには、第三者の許可などは不要とされています。

 信託目録中に、信託財産の処分につき受益者の指図を要する、という定めがある場合も、処分(売買契約)の成立要件であるのかは不明ですが、受益者の指図についての情報の提供が求められるべき、とされています。AとBが結婚(婚姻届を提出した日)した事実についての情報の提供と、受益者の指図についての情報の提供は、不動産登記令7条1項5号ハで定めるものではありません。

信託目録に、「受益者は、受益者の承諾を得て、信託財産を管理処分することができる。」旨の定めがある場合について、受託者が信託財産を第三者に売却し、所有権の移転の登記の申請をするときは、添付情報として受益者の承諾を証する情報を提供する必要がありますか。あるいは、登記原因証明情報にその旨が記録されていればよいでしょうか。

 受益者の承諾を証する情報(不動産登記令7条1項5号ハ)と印鑑証明書の添付が必要とされています。記事では、登記原因証明情報中において、受益者の承諾を証する情報の作成名義が受益者でない場合は、承諾の文言があったとしても、不動産登記令7条1項5号ハの要件を満たさないとされていますが、どうでしょうか。差し入れ方式の承諾書や受託者が作成した承諾情報に、受益者が署名押印している情報は要件を満たさないのでしょうか。不動産登記令7条1項5号ハの情報について、作成者は問わないとされています[2]。よって作成者が受託者などの受益者以外の者であっても、不動産登記令7条1項5号ハの要件を満たすと考えることが出来ます。

信託が終了した場合には、不動産登記法の規定に従い、既にされている「所有権移転の登記(民法177条)」の登記事項が変更という形で整理されるとともに、「信託の登記(信託法14条)」が抹消されることになると考えており、本問の場合には、所有権移転の登記及び信託の登記の抹消ではなく、受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記の抹消がされると理解しています。

 受託者の固有財産となった旨の登記及び信託登記の抹消登記申請時において、登記識別情報の提供は不要とされています。理由は登記義務者である受益者に、登記識別情報が通知されていないから、ということです。

 登録免許税については、通常の所有権の移転に変更する登記(権利の変更)と位置付け、原則として不動産1個につき1000円(登録免許税法2条別表第1(十四)(十五))と考えられるが、先例(昭和41年12月13日民事甲3615号民事局長電報)により1000分の20とされています。記事では登録免許税法7条1項2号、2項の適用を排除していません。理由は、信託の設定時に、移転分について登録免許税が減免されているから、徴収漏れを防ぐ目的であることがあげられています(登録免許税法7条1項。)。

 私は、そのような理由であれば信託設定時の信託の登記の税率を上げて、民事信託については、ただし書きなどで手当てすれば良いのかなと思います。理由は利益を受ける受益者については、課税を所有権移転登記と同程度にしても、どちらかというと不公平感が少ないと感じるからです。

申請書様式要素構造(登記識別情報関係様式編)

民法(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

信託法(信託財産に属する財産の対抗要件)

第十四条 登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。

登録免許税法(信託財産の登記等の課税の特例)

第七条 信託による財産権の移転の登記又は登録で次の各号のいずれかに該当するものについては、登録免許税を課さない。

一 委託者から受託者に信託のために財産を移す場合における財産権の移転の登記又は登録

二 信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託の信託財産を受託者から当該受益者(当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者である者に限る。)に移す場合における財産権の移転の登記又は登録

三 受託者の変更に伴い受託者であつた者から新たな受託者に信託財産を移す場合における財産権の移転の登記又は登録

2 信託の信託財産を受託者から受益者に移す場合であつて、かつ、当該信託の効力が生じた時から引き続き委託者のみが信託財産の元本の受益者である場合において、当該受益者が当該信託の効力が生じた時における委託者の相続人(当該委託者が合併により消滅した場合にあつては、当該合併後存続する法人又は当該合併により設立された法人)であるときは、当該信託による財産権の移転の登記又は登録を相続(当該受益者が当該存続する法人又は当該設立された法人である場合にあつては、合併)による財産権の移転の登記又は登録とみなして、この法律の規定を適用する。


[1] 718号、2021年9月金融財政事情研究会P21~

[2] 河合芳光『逐条不動産登記令』P79、2005(平成17)年金融財政事情研究会

9月相談会のご案内ー家族信託の相談会その35ー

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家族信託の相談会その35
2021年9月24日(金)14時~17時
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1組様 5000円

場所 司法書士宮城事務所(西原町)
要予約   司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp
後援  (株)ラジオ沖縄

法定相続情報証明制度について―その2―

法務局 「法定相続情報証明制度」について

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000013.html

名古屋法務局チャンネル 法定相続情報証明制度について

https://www.youtube.com/watch?v=djhtquCGvZc

日本司法書士会連合会 新しい相続手続「法定相続証明制度」とは

https://www.shiho-shoshi.or.jp/html/hoteisozoku/

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)施行日: 令和三年四月一日

(令和三年法務省令第十四号による改正)

第六章 法定相続情報(法定相続情報一覧図)247条、248条

・不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付け法務省民二第456号民事局長通達)

・不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務等の取扱いについて(平成29年4月17日付け法務省民二第292号民事局長通達)

・法定相続情報証明制度に関する事務の取扱いの一部改正について(平成30年3月29日付け法務省民二第166号民事局長通達)

・不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う法定相続情報証明制度に関する事務の取扱いについて(通達)〔令和3年3月29 日付法務省民二第655 号民事局長通達〕

Q 住民票の除票が保存されている場合、不在住証明書も併せて発行することが出来るか。

A 可能。理由「申請日において、対象者が、対象期間に、請求住所において住民登録がなかったことを証明するから。」。例えば、住民票の除票に記載されている前の住所の住民(市民)となった日以前に、申請した市区町村に住民登録をしていなかったことを証明する。

Q 相続登記の申請時に、相続関係説明図に、法定相続情報一覧図の写しでは確認することができない身分事項等が記載されている場合(例えば,被相続人の子のうちの一人が先に死亡している場合であって、一覧図の写しには先に亡くなった子の存在が記載されていないが、相続関係説明図には亡くなった子が記載されているとき)であっても、一覧図の写しを還付可能か。

A 可能。

Q 法定相続情報一覧図の写しに、被相続人の最後の住所が記載され,これが登記記録上の住所と同一であった場合は,被相続人の同一性について確認がとれたものとして取り扱うことが可能か。

A 可能。

第3 法定相続情報一覧図

Q 相続登記等の申請(相続関係説明図利の移の提出あり)と併せて、法定相続情報一覧図の保管と、一覧図の写しの交付の申出がされた場合、どのように対応するのか。登記申請が電子申請による場合は、特例方式により紙で添付書面が提出されたときに、併せて法定相続情報一覧図の保管及び一覧図の写しの交付が紙によって申出がされた場合。

A 相続の登記等の申請を登記する。その後に、原本還付された戸除籍謄抄本、法定相続情報一覧図の保管と、一覧図の写しの交付の申出書の添付書面として取り扱って、内容を確認する。登記等の申請の審査の過程において、併せて法定相続情報一覧図の内容の確認まで行う。この場合には、戸除籍謄抄本は一式の添付で足りる。

Q 不動産の所在地を管轄する登記所に、法定相続情報一覧図の保管と、一覧図の写しの交付の申出がされた場合に、登記情報を参照するなどして、登記名義人等を確認する必要はあるか。

A 必要はない。不動産番号のみが記載された場合は、登記所コードが合致しているかどうかを確認する。

登記所コードの調べ方

https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/toukinet/mock/SC01WS01.html

Q法定相続情報一覧図の保管と、一覧図の写しの交付の申出を行った登記所について,規則第247条第1項に規定される被相続人の本籍地は,被相続人の死亡時点の本籍地(最後の本籍地)でよいか。

A 相続人の死亡時点の本籍地(最後の本籍地)でよい。

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018

(法定相続情報一覧図)第二百四十七条 表題部所有者、登記名義人又はその他の者について

相続が開始した場合において、当該相続に起因する登記その他の手続のために必要があるときは、その相続人(第三項第二号に掲げる書面の記載により確認することができる者に限る。以下本条において同じ。)又は当該相続人の地位を相続により承継した者は、被相続人の本籍地若しくは最後の住所地、申出人の住所地又は被相続人を表題部所有者若しくは所有権の登記名義人とする不動産の所在地を管轄する登記所の登記官に対し、法定相続情報(次の各号に掲げる情報をいう。以下同じ。)を記載した書面(以下「法定相続情報一覧図」という。)の保管及び法定相続情報一覧図の写しの交付の申出をすることができる。

一 被相続人の氏名、生年月日、最後の住所及び死亡の年月日

二 相続開始の時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人との続柄

Q 規則第247条第3項第3号に規定する被相続人の最後の住所を証する書面が添付されない場合は、申出先登記所を被相続人の最後の住所地を管轄する登記所とすることは可能か。

A できない。

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018

(法定相続情報一覧図)第二百四十七条第3項第3号

三 被相続人の最後の住所を証する書面

Q 申出人が東日本大震災における原子力発電所の事故により避難している避難者については,避難場所の地を管轄する登記所に対して申出をすることができると考えるがどうか。

A 可能。この場合、規則第247条第3項第6号に規定する添付書面として,届出避難場所証明書の添付を求めることとなる。

不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417M60000010018

(法定相続情報一覧図)第二百四十七条第3項第6号

六 申出書に記載されている申出人の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出人が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

総務省 ・概要資料「届出避難場所に関する証明書の交付について」PDF

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei03_02000012.html

Q 相続が起きた後、遺産分割などをしない間に相続人の1人が亡くなった場合について。それぞれの相続に係る申出先の登記所が異なる場合。

 例えば,最初の相続において、被相続人Aが不動産を管轄する甲登記所に申出をしようとした場合に、同時に申出をしようとする次の相続の被相続人Bについては、規則第247条第1項本文に掲げられる申出先登記所のいずれにも甲登記所が当たらないときなど。

 一次相続(二次相続)の申出先登記所において,二次相続(又は一次相続)の申出も受付出来るのか。

A 2つの相続に係る申出が同時にされる場合、受領可能。

Q 申出書及び添付書面は、家族等が登記所に持っていくことが出来るか。

A 可能。

Q 法定相続情報を登記官が確認している途中で,申出人が申出の取りやめを求めた場合は,これを認めて差し支えないか。

A 差し支えない。その場合には,申出書と添付書面を申出人に返却する。

Q 申出の取りやめは、電話でも良いのか。委任による代理人から申出の取りやめをする場合は,取りやめに関する委任が必要か。

A 電話でも良い。取りやめに関する委任は必要ない。

Q 昭和22年5月2日までの間のいわゆる旧民法(明治31年法律第9号)下において生じた相続についても,法定相続情報一覧図の保管及び一覧図の写しの交付の申出をすることができるか。

A 可能。

外国籍の人がいる場合の商業・法人登記など

令和3年度 渉外商業登記入門1(株式会社)

講師:渉外司法書士協会会員 豊田則幸  平岩綾子

Ⅰ 定義等  渉外商業登記とは?

外国人・外国法人が関与する、日本における外国会社に関する登記及び内国会社に関する登記。

 cf. 外国会社

  外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう(会社法2条2号)。

通常の商業・法人登記との違い

 外国人・外国法人が手続の主体となるため、登記手続や定款認証の手続きで必要となる書類が異なります。外国会社に関する登記については特有の登記事項があります。

 渉外不動産登記との違い

  例えば、渉外相続登記においては、被相続人の国籍により、どの国の法律に準拠するか、という国際私法上の問題があります。

 cf. 相続における準拠法

  相続は、被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法 36 条。)。 渉外商業登記においては、日本の会社法と商業登記法が適用されるため、準拠法をどちらにするかとの国際私法上の問題はありません。

法の適用に関する通則法(相続)第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000

Ⅱ 渉外商業登記の実務上の注意点、 外国企業が日本でビジネスを行う場合、どのような形態があるか

  1.駐在員事務所の設置 <事例1>日本において継続的な取引は行わず、情報収集、広告・宣伝、物品の調達、市場調査などの準備活動の拠点として設置する進出形態

 2.日本法人(子会社)の設立 <事例2>外国会社の「日本支社」として、日本の会社法に基づいて設立された内国会社(株式会社 or 合同会社)を置き、継続して取引を行う場合

  基本的には通常の会社設立手続と同様ですが、渉外商業登記の手続面において、出資者や役員が外国人や外国会社である点に注意が必要。

 3.日本における営業所(日本支店)の設置

 外国会社として営業活動の拠点たる「日本支店」を置き、継続して取引を行う場合

  外国会社が日本において継続的に取引しようとする場合には、日本における代表者を定め(会社法 817 条 1 項)、以下の区分により外国会社の登記をする必要(会社法 933 条 1 項)。 継続して取引を行うため、日本における代表者に加えて「営業所」を置く場合 → 営業所の所在地で登記。置かない場合 → 日本における代表者の住所地で登記

会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

(外国会社の日本における代表者)

第八百十七条 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。

(外国会社の登記)

第九百三十三条 外国会社が第八百十七条第一項の規定により初めて日本における代表者を定めたときは、三週間以内に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める地において、外国会社の登記をしなければならない。

一 日本に営業所を設けていない場合 日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。以下この節において同じ。)の住所地

二 日本に営業所を設けた場合 当該営業所の所在地

Ⅲ 駐在員事務所の設置

Q外国企業が駐在員事務所を設置する場合、何か登記手続きが必要になるか?

A 登記が必要かどうかは、その事務所で収益を伴う直接的な営業活動(取引先企業との契約締結、商品・サービスの販売等)をするかどうか。外国企業が考える「駐在員事務所」「支店」「支社」「ブランチ」等の名称は関係ない。外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができないため(会社法 818 条)、営業活動を行うのであれば、外国会社の登記をする必要がある旨を説明する必要。

  駐在員事務所の設置は自由に行うことができ、登記申請は不要。 駐在員事務所は会社法の概念ではなく、その名称を問わず、実質的に営業活動を行わない(行えない)。駐在員事務所として行うことができる活動は、業務に関する情報収集や本社への情報提供、広告・宣伝、市場調査、基礎研究等、日本国内での収益を伴わない活動に限定。

  収益を伴わない=売上を日本で計上しないため、原則として法人税や消費税の課税対象とはなりませんが、駐在員事務所における従業員への給与に対する源泉徴収義務や社会保険などの負担義務は負う。

  駐在員事務所である限り登記は不要ですが、事業内容によっては例外的に、各事業法において、駐在員事務所の設置につき届出等が必要な場合もある。例えば、外国銀行は日本において駐在員事務所その他の施設を設置しようとする場合には、あらかじめ当該業務の内容を内閣総理大臣に届け出る(銀行法 52 条)。

銀行法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=356AC0000000059

(外国銀行の駐在員事務所の設置の届出等)第五十二条 外国銀行(外国銀行が外国銀行支店を設けている場合は、当該外国銀行支店。以下この条において同じ。)は、次に掲げる業務を行うため、日本において駐在員事務所その他の施設を設置しようとする場合(他の目的により設置している事務所その他の施設において当該業務を行おうとする場合を含む。)には、あらかじめ、当該業務の内容、当該業務を行う施設の所在地その他内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に届け出なければならない。

一 銀行の業務に関する情報の収集又は提供

二 その他銀行の業務に関連を有する業務

2 内閣総理大臣は、公益上必要があると認めるときは、外国銀行に対し、前項の施設において行う同項各号に掲げる業務に関し報告又は資料の提出を求めることができる。

3 外国銀行は、その設置した第一項の施設を廃止したとき、当該施設において行う同項各号に掲げる業務を廃止したときその他同項の規定により届け出た事項を変更したときは、遅滞なくその旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。

注意点

 日本での活動内容によっては、駐在員事務所ではないと税務署に判断され、課税されるリスクもある。

株式会社の設立

  外国企業が、日本市場に本格的に参入するため、日本法人として株式会社を設立することを決定、代表取締役は日本に住所を有しない外国籍の方が就任することになりそう。この場合の注意点。主な手続内容は通常の株式会社の設立手続の場合と同様に、会社法 25 条以下の適用の問題。外国法人が出資する点、日本に居住していない外国人が役員に就任する点など、通常とは異なる点により注意。

■登記申請までの手続の流れ

1設立会社に関する情報の聴取

2発起人・役員等に関する資料の確認

3定款案の作成

4外為法上の手続(事前届出)手続の要否を確認、提出[事前届出手続が必要な場合]

5署名・押印や添付が必要となる書類の作成 公証手続が必要となる書類(署名証明書・宣誓供述書)の作成

6出資金の払込み

7定款の認証

8実質的支配者に関する申告 「定款認証及び設立登記の同時申請」も可(令和3年2月15日施行)

9登記申請

10 外為法上の手続(事後報告)所定の報告書を提出

会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

第二十五条 株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。

一 次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法

二 次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法

2 各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。

cf.「定款認証及び設立登記の同時申請」について

(令和3年1月29日法務省⺠商第10号⺠事局⻑通達)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

【手順7から9を一度に行う】

同時申請の具体的手順

1捺印済の書面(実質的支配者の申告書、定款認証委任状等)や印鑑証明書を 公証役場に郵送(または電子署名済のpdfを送信)。

2公証人とのオンライン面談を設立予定日にて予約し、認証手数料を振込む。

3設立当日、法務局に設立登記を申請(同時に公証役場に定款認証申請)後、公証人とのオンライン面談を行い、定款認証。

4認証済定款は公証役場から管轄法務局に直接送信。

【24時間以内処理の要件】

1役員が5名以内。2全ての添付書面(情報)がpdfで作成され、電子署名されている。3登録免許税は電子納付。4補正がない。

【注意点】・設立登記の申請日中に定款認証がされなかった場合、設立登記申請は却下(但し、定款認証の嘱託自体は有効)。

1設立会社に関する情報の確認

 外国人・外国法人が発起人となる場合でも、通常の会社設立手続の場合と同様に、定款作成のための所定のチェックシート等により、設立会社に関する情報を確認。

cf. 代表取締役の居住要件について

 代表取締役のうち、少なくとも1名は日本に住所を有しなければならないとの居住者要件が実務上設けられておりましたが、平成 27 年 3 月 16 日付でこの制限が撤廃(平成 27 年 3 月 16 日法務省⺠商第 29 号法務省⺠事局商事課⻑通知。)。現在は、代表取締役の全員を日本に住所を有しない外国人とする株式会社の設立も可能。

法務省HP【代表取締役が日本に住所を有しない場合の申請に関する通知】平成27年3月16日民商第29号通知

 内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html#03

cf. 外国会社の日本支店の日本における代表者の居住要件については、従来どおり1名以上は日本に住所を有する者でなければなりません。

(会社法 817 条 1 項)注意点

  代表取締役の全員を日本に住所を有しない外国人とする設立登記は受理されますが、会社設立後に会社名義の銀行口座を開設することが困難なケースが多く、実際の手続きにあたっては慎重な検討が必要です。

会社法(外国会社の日本における代表者)

第八百十七条 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

2発起人・役員等に関する資料の確認

 ・外国人個人に関する資料‐パスポート、公的身分証明書等。

 ・外国法人に関する資料 ‐登記事項証明書(またはこれに相当するもの。)。

  ・定款(またはこれに相当するもの。)。

3定款案の作成

 通常の会社設立の手続と同様に日本語で作成。 *依頼者の要望に合わせて、英語併記で作成または英文で別途作成。

4外為法上の手続 (事前届出・事後報告)

 外国為替及び外国貿易法(「外為法」)の規定により、一定の要件に該当する者(「外国投資家」)が日本国内に「支社を設立して株式または持分を取得すること」や「支店、工場その他の事業所を設置すること」などの一定の行為(「対内直接投資等」)を行う場合は日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して、以下のいずれかの手続。

① 当該行為を行なう前に届け出る「事前届出」

② 当該行為を実際に行なった後に報告する「事後報告」(外為法 27 条 1 項、55 条の 5‐1 項)

外国為替及び外国貿易法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000228

(定義)

第二十六条 外国投資家とは、次に掲げるもので、次項各号に掲げる対内直接投資等又は第三項に規定する特定取得を行うものをいう。

一 非居住者である個人

二 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体(第四号に規定する特定組合等を除く。)

三 会社で、前二号に掲げるものにより直接に保有されるその議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。以下この号及び次項第四号において同じ。)の数と他の会社を通じて間接に保有されるものとして政令で定めるその議決権の数とを合計した議決権の数の当該会社の総株主又は総社員の議決権の数(同項において「総議決権」という。)に占める割合が百分の五十以上に相当するもの

四 組合等(民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約で会社に対する投資事業を営むことを約するものによつて成立する組合(一人又は数人の組合員にその業務の執行を委任しているものに限る。以下この号及び次項第七号において「任意組合」という。)若しくは投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第二条第二項に規定する投資事業有限責任組合(以下この号及び次項第七号において「投資事業有限責任組合」という。)又は外国の法令に基づいて設立された団体であつてこれらの組合に類似するもの(以下この号及び次条第十三項において「特定組合類似団体」という。)をいう。以下この号において同じ。)であつて、第一号に掲げるものその他政令で定めるものによる出資の金額の合計の当該組合等の総組合員(特定組合類似団体にあつては全ての構成員)による出資の金額の総額に占める割合が百分の五十以上に相当するもの又は同号に掲げるものその他政令で定めるものが当該組合等の業務執行組合員(任意組合の業務の執行の委任を受けた組合員若しくは投資事業有限責任組合の無限責任組合員又は特定組合類似団体のこれらに類似するものをいう。第七十条第一項及び第七十一条第六号において同じ。)の過半数を占めるもの(以下「特定組合等」という。)

五 前三号に掲げるもののほか、法人その他の団体で、第一号に掲げる者がその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人その他の団体に対し業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この号において同じ。)又は役員で代表する権限を有するもののいずれかの過半数を占めるもの

2 対内直接投資等とは、次のいずれかに該当する行為をいう。

一 会社の株式又は持分の取得(前項各号に掲げるものからの譲受けによるもの及び金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式又はこれに準ずるものとして政令で定める株式を発行している会社(以下この条において「上場会社等」という。)の株式の取得を除く。)

二 非居住者となる以前から引き続き所有する上場会社等以外の会社の株式又は持分の譲渡(非居住者である個人から前項各号に掲げるものに対して行われる譲渡に限る。)

三 上場会社等の株式の取得(当該取得をしたもの(以下この号及び第四項において「株式取得者」という。)が、当該取得の後において所有することとなる当該上場会社等の株式の数、当該株式取得者の密接関係者が所有する当該上場会社等の株式の数並びに当該株式取得者及び当該株式取得者の密接関係者が投資一任契約その他の契約に基づき他のものから委任を受けて株式の運用(その指図をすることを含み、政令で定める要件を満たすものに限る。)をする場合におけるその対象となる当該上場会社等の株式の数を合計した株式の数(これらの株式に重複するものがある場合には、当該重複する数を控除した純計によるもの)の当該上場会社等の発行済株式の総数に占める割合が百分の一を下らない率で政令で定める率以上となる場合に行う取得に限る。)

四 上場会社等の議決権の取得(当該取得をしたもの(以下この号及び第四項において「議決権取得者」という。)が、当該取得の後において保有することとなる当該上場会社等の保有等議決権(自己又は他人の名義をもつて保有する議決権及び投資一任契約その他の契約に基づき行使することができる議決権として政令で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)の数及び当該議決権取得者の密接関係者が保有する当該上場会社等の保有等議決権の数を合計した純議決権数(議決権のうち重複するものがある場合には、当該重複する数を控除した純計によるもの。同号において同じ。)の当該上場会社等の総議決権に占める割合が百分の一を下らない率で政令で定める率以上となる場合に行う取得に限り、前号に掲げる行為を伴うものを除く。)

五 会社の事業目的の実質的な変更その他会社の経営に重要な影響を与える事項として政令で定めるものに関し行う同意(上場会社等にあつては、当該同意をするもの(以下この号及び第四項において「同意者」という。)が保有する当該上場会社等の保有等議決権の数及び当該同意者の密接関係者が保有する当該上場会社等の保有等議決権の数を合計した純議決権数の当該上場会社等の総議決権に占める割合が百分の一を下らない率で政令で定める率以上となる場合に行う同意に限る。)

六 本邦における支店等の設置又は本邦にある支店等の種類若しくは事業目的の実質的な変更(前項第一号又は第二号に掲げるものが行う政令で定める設置又は変更に限る。)

七 本邦に主たる事務所を有する法人に対する政令で定める金額を超える金銭の貸付け(銀行業を営む者その他政令で定める金融機関がその業務として行う貸付け及び前項第三号、第四号(任意組合又は投資事業有限責任組合に該当するものに限る。)又は第五号に掲げるものが行う本邦通貨による貸付けを除く。)でその期間が一年を超えるもの

八 居住者(法人に限る。)からの事業の譲受け、吸収分割及び合併による事業の承継(第一号から第三号までに掲げる行為を伴うものを除く。)

九 前各号に掲げる行為に準ずるものとして政令で定めるもの

3 特定取得とは、上場会社等以外の会社の株式又は持分の第一項各号に掲げるものからの譲受けによる取得をいう。

4 第二項第三号から第五号までに規定する密接関係者とは、第一項各号に掲げるものであつて、株式取得者、議決権取得者又は同意者と株式の所有関係等に基づく永続的な経済関係、親族関係その他これらに準ずる特別の関係にあるものとして政令で定めるものをいう。

(対内直接投資等の届出及び変更勧告等)

第二十七条 外国投資家(前条第一項に規定する外国投資家をいう。以下この条、第二十八条、第二十九条第一項から第四項まで、第五十五条の五及び第九章において同じ。)は、対内直接投資等(前条第二項に規定する対内直接投資等をいい、相続、遺贈、法人の合併その他の事情を勘案して政令で定めるものを除く。以下この条、第二十九条第一項から第四項まで、第五十五条の五、第六十九条の二第二項及び第七十条第一項において同じ。)のうち第三項の規定による審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものとして政令で定めるものを行おうとするときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、当該対内直接投資等について、事業目的、金額、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に届け出なければならない。

外国為替及び外国貿易法(対内直接投資等及び特定取得の報告)

第五十五条の五 外国投資家は、対内直接投資等又は特定取得(第二十八条第一項の規定により届け出なければならないとされるものに限る。以下この条において同じ。)を行つたときは、政令で定めるところにより、当該対内直接投資等又は特定取得の内容、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に報告しなければならない。ただし、第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定により届け出た対内直接投資等又は特定取得については、この限りでない。

手続を行う主体

 対内直接投資等の事前届出・事後報告を行う主体は「外国投資家」。(直投令 3 条1項4号、直投令 6 条の 3‐2 項)

対内直接投資等に関する政令(昭和五十五年政令第二百六十一号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=355CO0000000261

財務省令和2年4月24日「対内直接投資等に関する政令等の一部を改正する政令」について

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/press_release/kanrenshiryou01_20200424.pdf

(対内直接投資等の届出及び変更勧告の送達等)

第三条 法第二十七条第一項に規定する相続、遺贈、法人の合併その他の事情を勘案して政令で定めるものは、次に掲げる行為に該当する対内直接投資等とする。

一 相続又は遺贈による会社の株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権の取得

二 非上場会社(国の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい対内直接投資等に係る業種として主務省令で定める業種に属する事業を営んでいるものを除く。次号において「特定非上場会社」という。)の株式又は持分を所有する法人の合併により合併後存続する法人又は新たに設立される法人が当該株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権を取得する場合における当該取得

三 特定非上場会社の株式又は持分を所有する法人の分割により分割後新たに設立される法人又は事業を承継する法人が当該株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権を取得する場合における当該取得

四 非上場会社の株式若しくは持分又は議決権の取得(当該取得の後における当該取得をしたもの(以下この号において「株式等取得者」という。)の所有等株式等(直接に所有する非上場会社の株式の数若しくは非上場会社に出資する金額又は直接に保有する非上場会社の議決権の数と議決権代理行使受任(前条第十六項第四号イに該当するものに限る。)に係る議決権の数を合計した純議決権数をいう。以下この号において同じ。)と当該株式等取得者を前条第十九項第一号に規定する株式取得者等とした場合に同項各号に掲げるものに該当することとなる非居住者である個人又は法人等の所有等株式等とを合計した株式の数若しくは出資の金額又は純議決権数の当該非上場会社の発行済株式の総数若しくは出資の金額の総額又は総議決権に占める割合が百分の十以上となる場合の当該取得を除く。)であつて、次項各号に掲げる対内直接投資等に該当する非上場会社の株式若しくは持分又は議決権の取得以外のもの

(対内直接投資等及び特定取得の報告)

第六条の三 法第五十五条の五第一項の規定による報告は、主務省令で定める期間内に、主務省令で定める手続により、しなければならない。

2 法第五十五条の五第一項の規定による報告をしなければならない外国投資家が法第二十六条第一項第一号、第二号又は第四号に掲げるものに該当する場合には、当該外国投資家は、居住者である代理人(法第二十七条の二第一項又は法第二十八条の二第一項の規定により法第二十七条第一項又は法第二十八条第一項の規定による届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家にあつては、第三条の二第三項又は第四条の三第三項の規定により送達される文書を受理する権限を有するものに限る。)により当該報告をしなければならない。

■「対内直接投資等」に該当する行為とは?(外為法 26 条2項ほか)

外為法・対内直接投資審査制度に関する手続き[日本銀行ホームページ]

「外為法Q&A」(対内直接投資・特定取得編)

届出書様式および記入の手引等

報告書様式および記入の手引等

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm

・国内の上場会社の株式または議決権の取得で、それぞれ出資比率または議決権比率が 1%以上となるもの

・国内の非上場会社の株式または持分を取得すること

・個人が居住者であるときに取得した国内の非上場会社の株式または持分を、非居住者となった後に外国投資家に譲渡すること

・外国投資家が、①国内の会社の事業目的の実質的な変更または、②取締役もしくは監査役の選任に係る議案、③事業の全部の譲渡等の議案について同意すること

・非居住者個人または外国法人である外国投資家が、国内に支店、工場その他の事業所(駐在員事務所を除く)を設置、またはその種類や事業目的を実質的に変更すること 等

■提出先 日本銀行国際局国際収支課外為法手続グループ(50 番窓口)日本銀行支店(営業課または総務課)*「日本銀行外為法手続きオンラインシステム」を利用した提出も可能 (但し、事前に利用申込みが必要。)。

対内直接投資であっても事前届出・事後報告が不要な場合

  相続、遺贈により株式、持分等を取得するとき

 事業目的が事後報告業種に該当する非上場会社の株式又は持分の取得で、出資比率が特別の関係にある者と併せて 10%未満であるとき

 日本支店を設置する場合で、事業目的が事後報告業種に該当するとき等

事前届出

いずれかに該当する場合。

⑴ 外国投資家の国籍が「対内直接投資等に関する命令 別表1」に掲載されている国または地域以外のもの

⑵ 投資先が営む事業に「指定業種」に属する事業が含まれるもの

対内直接投資等に関する命令第 3 条第 3 項の規定に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件(告示)の別表に該当しない業種

対内直接投資等に関する命令 別表1

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=355M50007fc2001

指定業種を定める告示(PDF:47KB)(対内直接投資等に関する命令第三条第三項の規定に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件)

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm

財務省令和2年4月24日「対内直接投資等に関する政令等の一部を改正する政令」について

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/press_release/kanrenshiryou01_20200424.pdf

⑶ イラン関係者により行われる一定の行為に該当するもの

事前届出の書式

提出時期  対内直接投資等に該当する行為を行おうとする日の前6か月以内に、所定の様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して行う。(オンライン提出も可)※対内直接投資等に該当する行為の基準となる日

日本支社設立の場合:会社設立登記の日

日本支店設置の場合:支店の開設の日

▪「国の安全」武器、航空機、原子力、宇宙関連、軍事転用可能な汎用品の製造業、サイバーセキュリティ関連

▪「公の秩序」電気・ガス、熱供給、通信事業、放送事業、水道、鉄道、旅客運送

▪「公衆の安全」ワクチン製造業、警備業

▪「我が国経済の円滑運営」農林水産、石油、皮革関連、航空運輸、海運

審査期間

 日本銀行が届出書を受理した日から起算して 30 日を経過するまでは、届け出た取引または行為を行うことはできません(「禁止期間」)。ただし、国の安全等を損なう事態を生ずる対内直接投資等に該当しない場合、2週間に短縮されます。(日本銀行のホームページに掲載され、短縮が通知される。)

実行報告

 対内直接投資等に該当する行為後、45 日以内に、所定の様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して報告(「実行報告」)が必要。

事前届出免除制度

  一定の外国投資家が、株式、持分、議決権、議決権行使等権限の取得等のうち、国の安全等に係る対内直接投資等に該当するおそれが大きいもの以外の対内直接投資等を行う場合は、事前届出が不要となり、所定の様式による事後報告の提出で足りる。

■事後報告

事後報告が必要となるのは、次のいずれにも該当する場合。

外国投資家の国籍国が日本または直投命令別表1に掲げる国または地域であるもの

投資先が営む事業に指定業種に属する事業が含まれないもの、または、投資先が営む事業に指定業種に属する事業が含まれる場合であって、外国投資家が事前届出免除制度を利用しているもの

イラン関係者により行われる、一定の行為以外のもの

 報告書の提出時期

 行為を行った日から起算して 45 日以内に、所定の様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣あてに行う必要があります。(オンラインも可)

 署名・押印や添付が必要となる書類の作成、公証手続が必要となる書類(署名証明書・宣誓供述書)の作成。

 通常の会社設立の手続と同様に、押印が必要となる書類を日本語(または、 日英併記)で作成し、添付が必要となる書類についても取得または作成。

【押印や添付が必要となる書類】

 法令上、押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面の押印は審査しない(無くても可)。(令和3年1月29日法務省⺠商第10号⺠事局⻑通達)

【商業登記法改正(印鑑提出任意化)及び商業登記規則改正(オンライン申請の利便性向上等)等に関する通達】令和3年1月29日民商第10号通達

 会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

(以下、押印やサインが無くても登記可能となる書面には△。)

①役員の就任承諾書

・取締役会設置会社の場合

 代表取締役:実印+印鑑証明書

 代取以外の役員:押印(△)+身分証(△。但し、証明文言は必要。)

外国人役員の場合

 代表取締役:サイン+署名証明書

 代取以外の役員:サイン(△)+身分証(住所記載要)に原本証明(△) or本人確認証明書(宣誓供述書)

・取締役会非設置会社の場合

 取締役:実印+印鑑証明書

 取締役以外の役員:押印(△)+身分証(△)

外国人役員の場合

取締役:サイン+署名証明書

取締役以外の役員:サイン(△)+身分証に原本証明(△)or本人確認証明書(宣誓供述書)

・定款認証委任状

 個人:実印+印鑑証明書

 法人:会社代表印+印鑑証明書+登記事項証明書

外国人・外国法人が発起人の場合

 個人:サイン+署名証明書

 法人:代表者のサイン+署名証明書+登記事項証明書(宣誓供述書)

印鑑届出書

 個人実印+印鑑証明書

代取が外国人の場合:サイン+署名証明書

印鑑証明書に代わる「署名証明書」

 外国人の署名証明書については、当該外国人が居住する国等に所在する当該外国人の本国官憲が作成したものでも差し支えない。

(平成 28 年 6 月 28 日⺠商第 100 号通達、平成 29 年 2 月 10 日⺠商第 15 号通達)

【外国人の署名証明書に関する通達】平成28年6月28日民商第100号通達(改正)平成29年2月10日民商第15号通達

 登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することが できない場合等の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

平成29年2月10日民商第16号依命通知(やむを得ない事情があるとして,上申書及び日本の公証人等が作成した署名証明書が使用可能な具体例)

 「登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて」の一部改正について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 <添付可能な署名証明書(B国に居住するA国人の場合)>

本国に所在する本国官憲作成(例:A国にあるA国の行政機関) ○

日本に所在する本国官憲作成(例:日本にあるA国の領事) ○

第三国に所在する本国官憲作成(例:B国にあるA国の領事) ○

本国に所在する公証人作成(例:A国の公証人) ○

*本国官憲の署名証明書を取得できないやむを得ない事情がある場合には、以下の署名証明書も認められる場合がある。(平成 29 年 2 月 10 日⺠商第 16 号依命通知)

第三国に所在する公証人作成(例:B国にあるB国の公証人) ○

日本に所在する公証人作成(例:日本の公証人) ○

やむを得ない事情の例

・日本における本国領事若しくは日本における権限がある本国官憲が署名証明書を発行していない場合。

・日本に当該外国人の本国官憲がない場合(たとえ日本以外の国における本国 官憲において署名証明書を取得することが可能であってもOK。)。

・当該外国人の本国に署名証明書の制度自体がないため、本国官憲において署 名証明書を取得することができない場合。

・当該外国人の本国においては署名証明書の取得が可能であるが、当該外国人 が居住している本国以外の国等に所在する当該外国人の本国官憲では署名証明書を取得することができない場合等。

取締役・監査役の本人確認証明書について

▪日本在住の日本人・外国人例)住⺠票 or 住⺠票記載事項証明書 or ⼾籍附票 or 印鑑証明書。

運転免許証(運転経歴証明書) or 在留カード or 特別永住者証明書or マイナンバーカード のコピー+原本証明(△)。個人番号の「通知カード」は不可。

▪外国在住の日本人(平成 27 年 2 月 20 日⺠商第 18 号)

【代表取締役が日本に住所を有しない場合の申請に関する通知】平成27年3月16日民商第29号通知

 内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

⑴ 日本大使館で作成した証明書(在留証明)

⑵ 外国官憲の作成に係る取締役等の氏名及び住所が記載された証明書

⑶ 外国官憲の発行に係る身分証明書等のコピー+原本証明(△)

▪外国在住の外国人

⑴ 外国官憲の作成に係る取締役等の氏名及び住所が記載された証明書

 <添付可能な本人確認証明書(B国に居住するA国人の場合)>

本国に所在する本国官憲作成(例:A国にあるA国の行政機関) ○

日本に所在する本国官憲作成(例:日本にあるA国の領事) ○

第三国に所在する本国官憲作成(例:B国にあるA国の領事) ○

本国に所在する公証人作成(例:A国の公証人) ○

居住国に所在する公証人作成(例:B国の公証人) 〇

⑵ 外国官憲の発行に係る身分証明書等(住所の記載があるもの)のコピー+ 取締役本人の原本証明(△)

■外国法人の登記事項証明書に代わる「宣誓供述書」

 日本法人が発起人となる場合、定款認証時に発起人たる法人の登記事項証明書・印鑑証明書の提出が必要となりますが、この扱いは外国法人が発起人となる場合も同様。ただし、外国によっては法人の登記事項証明書・印鑑証明書の制度がないことも多く、添付ができない場合、本店、商号、目的、代表者の資格・氏名、設立準拠法等を記載した書類に準拠法国の本国官憲が認証したもの(「宣誓供述書」)を法人の登記事項証明書の代替として利用。

 実務上では外国会社の登記の添付書類に準じて、「外国法人の設立準拠法国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲」の認証を受けたものが必要。

 <A 国が設立準拠法国である外国法人の場合>

本国の公証人が作成(例:A国の公証人) ○

本国に所在する本国官憲が作成(例:A国にあるA国の行政機関) ○

日本に所在する本国官憲が作成(例:日本にあるA国の領事) ○

第三国に所在する本国官憲が作成(例:第三国にあるA国の領事) ×

6出資金の払込み

発起人が外国人・外国法人の場合、内国銀行の口座を有していないことが多く、設立時取締役の個人口座や、委任を受けた第三者の口座を使用することがある。

■預金通帳の口座名義人について

 発起人、 設立時取締役、第三者(発起人・設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合に限る)(平成29年3月 17 日⺠商第 41 号通達)

【出資の払込みを証する書面(預金通帳の口座名義人)に関する通達】平成29年3月17日民商第41号通達

 株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の一部として払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを添付する場合における当該預金通帳の口座名義人の範囲について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 ※発起人名義以外の口座を使用する場合、登記添付書類として払込金の受領に関する発起人の委任状が必要。

■払込取扱機関

内国銀行の日本国内本支店だけでなく、外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行)、内国銀行の海外支店を含む(平成 28 年 12 月 20 日⺠商第 179 号通達 )。

【払込取扱機関(邦銀の海外支店)に関する通達】平成28年12月20日民商第179号通達

 会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 このような支店かどうかは、銀行の登記事項証明書により確認可能。 外国法に基づき設立されたいわゆる現地法人は、内国銀行の海外支店ではなく、「払込取扱機関」に含まれません。

 <「払込取扱機関」の該当の有無>

内国銀行の日本国内本支店(例:東京銀行の大阪支店) ○

内国銀行の海外支店(例:東京銀行のニューヨーク支店) ○

外国銀行の日本国内支店(例:ニューヨーク銀行の東京支店) ○

外国銀行の海外本支店(例:ニューヨーク銀行のボストン支店) ×

法務省 Website「出資の払込みを証する書面について」

資本金の送金の際には以下の内容をアドバイス。

⑴ 外貨でなく円建てで送金すること

⑵ 銀行手数料は送金元がすべて負担すること

 (送金先銀行の手数料のほか、中継銀行の手数料にも注意が必要)

送金の目的が「会社設立のための出資金」の明示

*「払い込みがあったことを証する書面」に押印も契印も不要(令和3年1月29日法務省⺠商第10号⺠事局⻑通達) 。

【商業登記法改正(印鑑提出任意化)及び商業登記規則改正(オンライン申請の利便性向上等)等に関する通達】令和3年1月29日民商第10号通達

 会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

7 定款の認証

■手続時に必要となる書類

▪発起人が外国人個人の場合  印鑑証明書(署名証明書)

▪発起人が外国法人の場合

 登記事項証明書(登記事項証明書に相当するもの)

 本国官憲の認証を受けた宣誓供述書

 印鑑証明書(法人代表者個人の署名証明書)

8 実質的支配者に関する申告

  公証人法施行規則の改正により、法人成立の時に実質的支配者となるべき者について、その氏名、住居、生年月日等と、その者が暴力団員等に該当するか否かにつき公証人への申告が必要。(公証人法施行規則13条の4)

*公証人法施行規則改正の趣旨

  暴力団による事件や資金源の根絶(マネーロンダリング・テロ資金供与の抑止)を図るため。株式会社等を設立する際、その実質的支配者が反社会的勢力に所属していないこと等を公証人に対して申告させるように義務付け、公証人が確認する仕組みを設けることとされた。FATF(金融活動作業部会)勧告により、株式会社等の実質的支配者に関する情報を明らかにさせる仕組みを整えることが国際的な要請となっている。

公証人法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=324M50000001009_20190701_501M60000010015

第十三条の四 公証人は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。

一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項第四号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日

二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十四号)第三条第一項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第四条第一項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か

2 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第一号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。

実質的支配者となるべき者

⑴設立する会社の議決権の 50%を超える議決権を、直接又は間接に有する自然人

⑵⑴に該当する者がいない場合、設立する会社の議決権の 25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人全員

⑶⑴・⑵に該当する者がいない場合、出資・融資・取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人全員

⑷⑴・⑵・⑶に該当する者がいない場合、設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人

 議決権を直接に有するとは、自然人が発起人となり株式を保有すること。

議決権を間接に有する例。

例 1)CがB社を通じて25%超のA社の議決権を保有している例

CはB社の議決権の51%の議決権を有しています。このように過半数の議決権を有している場合、CがB社を支配していると考えます。

Cの支配法人であるB社は,新設会社A社の25%を超える議決権を有しています。この場合、CがB社を通じてA社の25%超の議決権を有していると考える。

例 2)Cが直接10%、B社を通じてA社の 15%超の議決権を保有している。

*実質的支配者に該当する者は原則として自然人ですが、発起人が上場企業又はその子会社である場合、その法人が自然人とみなされる。

*有価証券の売買を行う外国(国家公安委員会及び金融庁⻑官が指定する国又は地域に限る)の市場で上場している会社も自然人とみなされます(犯収法施行令 14条6号、犯収法施行規則18条11号。)。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成二十年政令第二十号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420CO0000000020

(法第四条第五項に規定する政令で定めるもの)

第十四条

六 前各号に掲げるものに準ずるものとして主務省令で定めるもの

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成二十年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第一号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(国等に準ずる者)

第十八条 令第十四条第六号に規定する主務省令で定めるものは、次の各号に掲げるものとする。

十一 有価証券の売買を行う外国(国家公安委員会及び金融庁長官が指定する国又は地域に限る。)の市場に上場又は登録している会社

■実質的支配者該当性の根拠資料 発起人間の議決権保有割合を証するものとして定款、発起人の決定書等を添付することになります。発起人が法人の場合には、当該法人の議決権保有状況に関する資料(株主名簿等)も添付する必要がありますが、発起人が外国法人の場合には、原則として「外国官憲等の証明に係る証明書」を添付。

Cは、直接に10%、支配法人であるB社を通じて16%の議決権を保有し、直接保有と間接保有を合わせて26%、すなわち25%超の議決権を保有していると考えます。

C、D、Eは、A社の 100%親会社であるB社議決権を各 25%以上有していることから、(2)に該当し、A社の実質的支配者にあたるように思える。しかし、B社の議決権の 50%超を有する自然人はいないため、B社は特定の自然人の被支配法人にはあたらない。

A 社設立時の判断としてはB社の実質的支配者となる特定の自然人は存在せず、(2)ではなく、(4)に該当することになる。A社の代取が該当。

 実質的支配者該当性の根拠資料が外国語で作成されている場合、その訳文を添付。実質的支配者の氏名・住居に関する情報は外国語原文。

■本人特定事項等が明らかになる資料

  実質的支配者の氏名、住居及び生年月日の本人特定事項が明らかになる資料を添付することになります。パスポート等で住居の記載がない資料については、自筆で記載しているものを利用することも可能。 例)運転免許証、パスポート、個人番号カード等の写し

実質的支配者に該当する者が外国人である場合、日本国政府が承認した外国政府発行の書類(台湾や外国の地方政府発行の書類を含む)を利用。

■日本語の訳文の作成・添付

 外国語で作成された書面を添付書面として添付する場合、原則としてそのすべての日本語の訳文を併せて添付する必要があります。ただし、一定の場合には、翻訳の一部を省略することが可能。

外国官憲発行の各種証明書

 登記の内容や証明の対象とは関係のない部分の翻訳は省略して差し支えありません。(本国官憲使用欄や領収書部分等)証明書の発行主体(領事、公証人等)に関する記載の翻訳を省略することはできない。

 2つの外国語(当該外国の公用語と英語等)で同様の内容が記載がされているものについては、どちらか一方の翻訳で足り、両方の翻訳は不要。

*各種証明書の例 署名証明書、本人確認証明書、宣誓供述書、パスポートの写し等

【参考】外国会社の登記の添付書面

▪株主総会議事録等を添付する場合

 商業登記法 129 条 1 項、2 項、130 条 1 項の規定に基づき、外国会社の株主総会議事録や取締役会議事録(外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたもの)を添付する場合、日本における営業所又は日本における代表者の登記とは関連しない内容については、翻訳を省略。

▪登記事項証明書に相当する書面を添付する場合

 商業登記法 130 条 1 項の変更の登記の書面として、外国における登記事項証明書等を添付する場合、変更の登記と関係のない部分については、翻訳を省略できます。*翻訳を省略した場合、日本語の訳文には省略した箇所・当該変更の登記と関係のない旨を記載

商業登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

(外国会社の登記)

第百二十九条 会社法第九百三十三条第一項の規定による外国会社の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。

一 本店の存在を認めるに足りる書面

二 日本における代表者の資格を証する書面

三 外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面

四 会社法第九百三十九条第二項の規定による公告方法についての定めがあるときは、これを証する書面

2 前項の書類は、外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたものでなければならない。

3 第一項の登記の申請書に他の登記所の登記事項証明書で日本における代表者を定めた旨又は日本に営業所を設けた旨の記載があるものを添付したときは、同項の書面の添付を要しない。

(変更の登記)

第百三十条 日本における代表者の変更又は外国において生じた登記事項の変更についての登記の申請書には、その変更の事実を証する外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けた書面を添付しなければならない。

2 日本における代表者の全員が退任しようとする場合には、その登記の申請書には、前項の書面のほか、会社法第八百二十条第一項の規定による公告及び催告をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は退任をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面を添付しなければならない。ただし、当該外国会社が同法第八百二十二条第一項の規定により清算の開始を命じられたときは、この限りでない。

3 前二項の登記の申請書に他の登記所において既に前二項の登記をしたことを証する書面を添付したときは、前二項の書面の添付を要しない。

営業所の設置(外国会社の登記)

駐在員事務所、支店、支社の違いを説明した上で、実体に合致しているのかを法務・税務の面からそれぞれ検討。

①営業所設置と日本法人設立の違いは理解したが、手続面・税金面でどちらが有利なのか。

②営業所または日本法人で働く外国人の在留資格について知りたい。

③スケジュールと費用イメージを知りたい。

JETROホームページ参考情報。

https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/sectionl/page2.html

 企業(中国・上海)から、日本における営業所設置の依頼を受けました。日本における代表者は日本人が就任。本国で準備する書類は中国語で作成。書籍を見ると、宣誓供述書を準備すればよいようですが、宣誓供述書の実物を見たことがないのでよく分かりません。日本の会社のように、中国の会社の登記簿謄本、代表者の印鑑証明書や各議事録等に翻訳文を添付するだけではだめか?

 営業所設置(外国会社の支店)に決定している場合、営業所設置の必要書類の準備、宣誓供述書起案のための情報収集、宣誓供述書の認証、外為法の事前届出、事後報告の要否を検討。

【営業所設置の必要書類の準備】

宣誓供述書起案のための情報収集

日本における営業所設置の必要書類は、商業登記法に規定。

商業登記法第129条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

会社法第933条第l項の規定による外国会社の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。

1本店の存在を認めるに足りる書面

2日本における代表者の資格を証する書面

3外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面

4会社法第939条第2項の規定による公告方法についての定めがあるときは、これを証する書面

2前項の喜類は、外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたものでなければならない。

本店の存在を認めるに足りる書面→登記事項全部証明書(韓国)、企業登録証明書(ベトナム)

宣誓供述書

日本公証人連合会

https://www.koshonin.gr.jp/business/b07_2

Q.アフィダビットと宣誓供述書は、同じものですか。

 アフィダビット(一般的に「宣誓供述書」と訳されています。)とは、法廷外で公証人その他宣誓を司る者の面前で宣誓した上、記載内容が真実であることを確約し、署名したものをいい、英米両国をはじめ多くの国で使われています。Affidavitと言う表題があっても、必ずしも我が国の「宣誓供述書」(宣誓認証された私書証書)と法律的に同一の性質を持つ文書とは限りません。

 しかし、Affidavitの表題を掲げ、あるいは、swear、takeanoathといった宣誓を表すような文言がある外国文書の認証については、単なる署名認証ではなく、宣誓認証が要求されていることが多いと思われます。なお、署名の真正の確認方法についても、自認認証や代理自認(代理認証)ではなく、目撃認証(面前認証)が求められることも少なくありません。ですから、嘱託人としては、その証書の提出を求める外国機関等の意向を十分理解して、これを公証人に正確に伝えることが重要です。

公証人法(明治四十一年法律第五十三号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=141AC0000000053_20150801_000000000000000

第五十八条ノ二 公証人私署証書ニ認証ヲ与フル場合ニ於テ当事者其ノ面前ニ於テ証書ノ記載ノ真実ナルコトヲ宣誓シタル上証書ニ署名若ハ捺印シ又ハ証書ノ署名若ハ捺印ヲ自認シタルトキハ其ノ旨ヲ記載シテ之ヲ為スコトヲ要ス

② 前項ノ認証ノ嘱託ハ証書二通ヲ提出シテ之ヲ為スコトヲ要ス

③ 第一項ノ認証ノ嘱託ハ代理人ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得ズ

④ 公証人ハ第一項ノ規定ニ依ル記載ヲ為シタル証書ノ中一通ヲ自ラ保存シ他ノ一通ヲ嘱託人ニ還付スルコトヲ要ス

Q. 宣誓認証とは、どういう制度ですか。

 宣誓認証制度は、公証人法58条ノ2の規定の新設により設けられた制度です(平成10年1月1日施行)。公証人が私署証書(作成者の署名、署名押印又は記名押印のある私文書のこと)に認証を与える場合において、当事者がその面前で証書の記載が真実であることを宣誓した上、証書に署名若しくは押印し、または証書の署名若しくは押印を自認したときは、その旨を記載して認証する制度です。宣誓認証を受けた文書を宣誓供述書といいます。

 公証人が、私文書について、作成の真正を認証するとともに、制裁の裏付けのある宣誓によって、その記載内容が真実、正確であることを作成者が表明した事実をも公証するものです。

 簡体字の場合、正字に引き直して登記申請。有限公司を付加する必要はない。住所の表示の一部にローマ字が符号として使用されている場合、そのまま登記申請可能。役員の住所氏名の表記は原則としてカタカナに引き直す。漢字使用国の役員については、正字に引き直した後、そのまま表記することが可能。

設立準拠法の記録

×アメリカ合衆国デラウェア州法

〇アメリカ合衆国デラウェア州一般会社法

昭和60年1月21日民四207→探せない。

登記研究86-42→探せない。

昭和44年1月14日民甲第32号民事局長通達→探せない。

外務省 公印確認・アポスティーユとは 令和2年6月22日

https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html

公印確認

 日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事による認証(=領事認証)を取得するために事前に必要となる外務省の証明のことです。外務省では公文書上に押印されている公印についてその公文書上に証明を行っています。外務省で公印確認を受けた後は必ず日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事認証を取得して下さい。

 外務省における公印確認は,その後の駐日外国大使館・(総)領事館での領事認証が必要となる証明ですので,必ず駐日外国領事による認証を受けてから提出国関係機関へ提出して下さい。

 提出先機関の意向で日本外務省の公印確認証明ではなく,現地にある日本大使館や総領事館の証明が求められている場合があります。外務省で公印確認証明を受けた書類は,現地日本大使館や総領事館で重ねて証明することはできませんので,ご注意ください。

アポスティーユ

「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。提出先国はハーグ条約締約国のみです。アポスティーユを取得すると日本にある大使館・(総)領事館の領事認証があるものと同等のものとして,提出先国で使用することができます。

提出先国がハーグ条約(認証不要条約)の締約国であっても,領事認証が必要となり,公印確認を求められる場合があります。事前に提出先または日本にある提出先国の大使館・(総)領事館にご確認ください。

ハーグ条約に加入していない国へ提出する公文書の証明は全て公印確認となります。

日本法人の設立(合同会社の設立)

 日本で子会社を設立することを決定したドイツの会社があるので、手続を進めてほしい、と依頼されました。簡単な構造の会社の設立を希望しているので、合同会社の設立を勧めようと思います。この場合の注意点。

《回答〉

 基本的には内国合同会社の設立と同じく、会社法第575条以下が適用。但し、外国会社が出資するということから、以下の点に注意が必要です。

(1)外為法の事前届出と事後報告の要否(2)合同会社の定款の内容(3)定款以外の添付書類

《解説》

1外為法の事前届出と事後報告の要否株式会社の設立と同様です。(料資18)   2合同会社の定款作成のための情報収集

社員となる外国人、外国法人の確認

合同会社は、定款に社員の氏名又は名称及び住所、並びに出資の目的として金銭等の価額を記載することとされています。(会社法第576 条第 1 項第4 号及び第6号)

社員が外国人又は外国法人の場合の確認方法:

個人:旅券、国籍国で交付される身分証明書、滞在国で交付さ滞れ在る許可証、運転免許証等(できれば複数の証明書)を確認。

職務執行者(住所、氏名、生年月日)の選任についても宣誓供述書に盛り込む。職務執行者の就任承諾書の宛先は、選任した社員。

外国会社から連絡を受け、日本の合同会社の持分の全てを取得することになった場合。

商業登記法(添付書面の通則)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

第九十三条 登記すべき事項につき総社員の同意又はある社員若しくは清算人の一致を要するときは、申請書にその同意又は一致があつたことを証する書面を添付しなければならない。

(準用規定)

第百十八条 第四十七条第一項、第四十八条から第五十三条まで、第九十三条、第九十四条、第九十六条から第百一条まで及び第百三条の規定は、合同会社の登記について準用する。

会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

(持分の譲渡)

第五百八十五条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。

2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。

3 第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。

4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

(社員の加入)

第六百四条 持分会社は、新たに社員を加入させることができる。

2 持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。

3 前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。

商業登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

(社員の加入又は退社等による変更の登記)

第九十六条 合名会社の社員の加入又は退社による変更の登記の申請書には、その事実を証する書面(法人である社員の加入の場合にあつては、第九十四条第二号又は第三号に掲げる書面を含む。)を添付しなければならない。

2 合名会社の社員が法人であるときは、その商号若しくは名称又は本店若しくは主たる事務所の変更の登記の申請書には、第九十四条第二号イに掲げる書面を添付しなければならない。ただし、同号イただし書に規定する場合は、この限りでない。

参考

月刊登記情報2022年9月号(730号)きんざい

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業弁護士菅原佐知子、三浦司法書士事務所司法書士三浦真紀「Q&A日本に進出する外国法人に関する登記第4回 外国会社を発起人とする株式会社の設立登記申請」


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