令和6年7月26日法務省民商第116号商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)

令和6年7月26日法務省民商第116号商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)

商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号。以下「改正省令」という。)が本年4月16日に公布され、同年10月1日から施行されることとなりましたが、これに伴う商業登記事務の取扱いについては、下記の点に留意するよう、貴管下登記官に周知方取り計らい願います。

 なお、本通達中「規則」及び「提供規則」とあるのは、それぞれ改正省令にる改正後の商業登記規則(昭和39年法務省令第23号)及び電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行規則(平成12年法務省令第28号)をいい、引用する条文は、全て改正後のものです。

第1 本通達の趣旨

本通達は、改正省令の施行に伴い、登記事項証明書等の記載事項に関する特例に係る改正等(規則第31条の3等)について、事務処理上の留意事項を明らかにしたものである。

第2 登記事項証明書等の記載事項に関する特例に係る改正

1 代表取締役等住所非表示措置の申出

(1) 代表取締役等住所非表示措置の対象

 株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」という。)は、登記の申請と併せて、当該登記により登記簿に記録すべき住所について、登記事項証明書又は登記事項要約書(以下「登記事項証明書等」という。)に、当該住所につき行政区画以外のものを記載しない措置(以下「代表取締役等住所非表示措置」という。)を講ずるよう申し出ることができるものとされた(規則第31条の3第1項前段)。

 なお、ここでいう「行政区画」とは、都道府県及び市区町村をいい、指定都市(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項に規定する指定都市をいう。)においては、同法第252条の20第1項に規定する区を含むものとする。

 また、代表取締役等住所非表示措置の対象となる会社は、株式会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)第3条第2項に規定する特例有限会社を除く。)であり、その他の会社並びに各種の法人、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合及び限定責任信託については対象外である(改正省令第2条から第7条まで)。

(2) 申出を行うことができる登記の申請

 代表取締役等住所非表示措置は、登記の申請と併せて申し出るものとされたところ、この対象となる株式会社の登記は、設立の登記、本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記、代表取締役若しくは代表執行役の就任若しくは住所変更による変更の登記、清算人の登記又は代表清算人の就任若しくは住所変更による変更の登記とされた(規則第31条の3第1項前段)。

 なお、代表取締役又は代表執行役の就任の登記には、重任の登記を含み、また、重任の登記や本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記であって、既に登記されている代表取締役又は代表執行役の住所から変更がない場合であっても、代表取締役等住所非表示措置の申出をすることができる。

(3) 申出の方法

 代表取締役等は、代表取締役等住所非表示措置の申出をする場合には、上記(2)の登記の申請書に代表取締役等住所非表示措置を講ずべき代表取締役等の氏名及び住所を記載するとともに、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第16項に規定する金融商品取引所(以下「金融商品取引所」という。)に上場されている株式を発行している株式会社(以下「上場会社」という。)であって、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられているものを除き、以下のとおり必要な書面を添付しなければならないものとされた(規則第31条の3第1項後段)。

 なお、上場会社であって、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられているものが、申出の時点において上場会社であることについては、登記記録等から登記の申請をした会社が公開会社であることを確認することをもって足りる。

ア 上場会社以外の株式会社であって、代表取締役等住所非表示措置が講じられていない場合(規則第31条の3第1項第1号)

(ア) 株式会社の本店所在場所における実在性を証する書面(規則第31条の3第1項第1号イ)

 代表取締役等住所非表示措置の申出をする株式会社の本店所在場所における実在性を証する書面として、当該申出と併せて行う登記の申請を受任した資格者代理人(登記の申請の代理を業として行うことができる代理人に限られる。)によって当該株式会社が本店の所在場所において実在することを確認した書面又は当該株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便若しくはこれに準ずるものとして法務大臣が定めるものにより送付されたことを証する書面の添付を要するものとされた。

 前者の書面には、別紙様式1の例により当該資格者代理人において当該株式会社の本店所在場所における実在性を確認した日時及び具体的な方法等を記載した当該資格者代理人の職印(当該資格者代理人が法人の場合は、当該法人が登記所に提出している印鑑)を押印した書面等が該当する。

 後者の書面を添付する場合には、配達証明書と併せて当該株式会社の商号及び本店所在場所が送付先として記載された郵便物受領証の添付を要し、当該配達証明書及び郵便物受領証に記載された当該株式会社の商号又は本店所在場所が登記記録と合致しない場合には、代表取締役等住所非表示措置を講ずることはできない。

(イ  代表取締役等の住所等を証する書面(規則第31条の3第1項第1号ロ)

 代表取締役等住所非表示措置の対象となる代表取締役等について、氏名及び住所が記載された市町村長その他の公務員が作成した証明書の添付を要するものとされた。

 この証明書には、住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書、戸籍の附票の写し又は当該代表取締役等の氏名及び住所が記載された日本国領事が作成した証明書のほか、運転免許証や個人番号カード等の写しであって、当該代表取締役等が原本と相違ない旨記載し、記名したものが該当する。

 なお、これらの証明書が代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請書に添付されている場合には、当該申出のための改めての添付は要しないものとされているが、当該登記の申請で登記される代表取締役等の住所については、これらの証明書に記載されている住所と合致することを要する。

(ウ  株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(規則第31条の3第1項第1号ハ)

 代表取締役等住所非表示措置の申出をする株式会社の実質的支配者の本人特定事項(以下単に「本人特定事項」という。)を証する書面の添付を要するものとされた。

 この書面として、当該申出と併せて行う登記の申請を受任した資格者代理人(司法書士又は司法書士法人に限られる。)が犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第4条第1項の規定に基づき確認を行った本人特定事項の証明書が例示されているところ、同法第6条の規定に基づき作成及び保存される確認記録(同条第1項に規定する「確認記録」をいう。)の写しがこれに該当する。

 このほか、本人特定事項を証する書面には、本人特定事項についての当該株式会社の代表取締役等の供述を記載した書面であって当該申出と併せて行う登記の申請の日の属する年度又はその前年度において公証人法(明治41年法律第53号)第58条の2第1項の認証を受けたものや公証人法施行規則(昭和24年法務府令第9号)第13条の4第1項の規定に基づき申告した本人特定事項についての申告受理及び認証証明書(当該申出と併せて行う登記の申請が当該株式会社の設立の日の属する年度又はその翌年度に行われる場合に限る。)が該当する。

 なお、当該株式会社について、当該申出と併せて行う登記の申請の日の属する年度又はその前年度において、商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則(令和3年法務省告示第187号)第7条に規定する実質的支配者情報一覧の写しの交付又は同告示第2条の申出がされており、かつ、その旨が当該登記の申請書に記載されている場合には、本人特定事項を証する書面の添付は要しないものとされた。

イ 上場会社以外の株式会社であって、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合(規則第31条の3第1項第2号)

 既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている代表取締役等の住所の変更の登記や代表取締役等住所非表示措置の対象となる代表取締役等を追加する場合においては、上記ア(イの代表取締役等住所非表示措置の対象となる代表取締役等の住所等を証する書面の添付を要するが、その他の書面の添付は要しないものとされた。

 なお、これらの証明書が代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請書に添付されている場合には、当該申出のための改めての添付を要しないのは、上記ア(イなお書きと同様である。

ウ 上場会社であって、代表取締役等住所非表示措置を講じていない場合(規則第31条の3第1項第3号)

 代表取締役等住所非表示措置の申出をする株式会社について、金融商品取引所に当該株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面の添付を要するものとされた。

 この書面には、当該株式会社の上場に係る情報が掲載された金融商品取引所のホームページの写し等が該当する。なお、この書面の当該株式会社の代表取締役等による奥書等は不要である。

2 代表取締役等住所非表示措置の実施

 登記官は、代表取締役等住所非表示措置の申出があった場合において、当該申出が適当と認めるときは、代表取締役等住所非表示措置を講ずるものとされた(規則第31条の3第2項)。この場合の記録例は、別紙記録例によるものとする。

 なお、当該申出が規則第31条の3第1項に規定する要件を満たしていることをもって、当該申出が適当と認めて差し支えない。

 また、代表取締役等住所非表示措置が講じられた登記記録が閉鎖され、又は代表取締役等の登記事項が退任等により現に効力を有しないこととなった場合においても、代表取締役等住所非表示措置は終了させない。

3 代表取締役等住所非表示措置の継続

 代表取締役等住所非表示措置が講じられている株式会社の登記の申請があった場合において、代表取締役等住所非表示措置が講じられている代表取締役等の住所と同一のものを登記するときは、登記官は、当該代表取締役等の住所につき、引き続き代表取締役等住所非表示措置を講ずるものとされた(規則第31条の3第3項)。

 「同一のものを登記するとき」とは、本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記、重任又は再任の登記(いずれも当該代表取締役等の住所に変更がない場合に限る。)が該当し、この場合には、改めて代表取締役等住所非表示措置の申出をすることを要しない。

 他方で、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている代表取締役等であっても、当該代表取締役等の住所に変更がある登記の申請をする場合には、改めて代表取締役等住所非表示措置の申出が必要となる。

4 代表取締役等住所非表示措置の終了

 登記官は、以下の場合には、現に効力を有する登記事項(清算結了又は規則第81条第1項若しくは第117条第3項の規定により登記記録が閉鎖されている場合においては、当該閉鎖時に現に効力を有していた登記事項)について、代表取締役等住所非表示措置を終了させるものとされた(規則第31条の3第4項柱書き)。

(1) 代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出があった場合

 登記官は、代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社から、代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出があったときは、代表取締役等住所非表示措置を終了させるものとされた(規則第31条の3第4項第1号。申出書の様式については別紙様式2のとおり。)。

 この場合において、代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出をする株式会社は、申出書に代表取締役等住所非表示措置を希望しない代表取締役等の氏名及び住所を記載するとともに、申出書又は委任による代理人の権限を証する書面に当該株式会社が登記所に提出している印鑑を押印しなければならないものとされた(規則第31条の3第5項)。

 なお、代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出については、登記の申請と併せてすることを要しない。

(2) 株式会社の本店所在場所における実在性が認められない場合

 登記官は、代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社について、その本店が登記上の所在場所において実在すると認められないときは、当該株式会社の登記記録が清算結了等により閉鎖されている場合を除き、代表取締役等住所非表示措置を終了させるものとされた(規則第31条の3第4項第2号)。

 登記官が当該株式会社の本店が登記上の所在場所に実在すると認められないときと判断するに当たっては、第三者から当該株式会社を受取人とした郵便物が宛所不明により不達となったことを明らかにする書面(以下「不達となったことを明らかにする書面」という。)を添付した上で当該株式会社がその本店所在場所において実在しない旨の情報提供が登記官に対してあったことなどが端緒となる。この場合において、当該情報提供につき事実であることの蓋然性が高いものと登記官が判断したときには、規則第31条の3第6項の規定に基づき、登記官は、当該株式会社に対し別紙様式3による通知を転送不要郵便で送付するものとし、一定の期間内に返送等がないことをもって、当該株式会社の本店が登記上の所在場所において実在しないことを確認するものとする。

 なお、弁護士又は司法書士法(昭和25年法律第197号)第3条第2項に規定する司法書士(以下「弁護士等」という。)から、当該弁護士等の資格を証する書面の提示又は当該弁護士の職印につき当該弁護士が所属する弁護士会が作成した証明書の提出と併せて、当該株式会社がその本店所在場所において実在しないため代表取締役等住所非表示措置を終了すべき旨を記載した当該弁護士等の職印が押印された上申書及び不達となったことを明らかにする書面が提出された場合には、別紙様式3による通知をすることなく、代表取締役等住所非表示措置を終了して差し支えない。この場合において、弁護士等の資格を証する書面及び不達となったことを明らかにする書面については、当該弁護士等が原本と相違がない旨を記載した写しの提出であっても差し支えない。また、弁護士等の資格を証する書面について原本が提示された場合には、登記官は、当該弁護士等の了解を得て、これらの書面の写しを作成し保存するものとする。

 このほか、別紙様式3による通知、会社法(平成17年法律第86号)第472条第2項に基づく通知その他の登記所から株式会社に対して発出した通知等が宛所不明により不達となった場合においても、別紙様式3に記載された期間を待つことなく、又は別紙様式3による通知をすることなく、代表取締役等住所非表示措置を終了して差し支えない。

(3) 上場会社でなくなったと認められる場合

 登記官は、上場会社として代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社が上場会社でなくなったと認められるときは、代表取締役等住所非表示措置を終了させるものとされた(規則第31条の3第4項第2号)。

 ここでいう「上場会社でなくなったと認められるとき」とは、株式譲渡制限の定款の定めの設定による変更の登記が申請されたとき等が該当する。

 なお、この場合において、同時に上記1(2)の登記の申請がされ、これと併せて規則第31条の3第1項第1号に規定する書面を添付した上で代表取締役等住所非表示措置の申出があったときは、代表取締役等住所非表示措置を終了させることなく、引き続き代表取締役等住所非表示措置を講じるものとする。

(4) 閉鎖された登記記録について復活すべき事由があると認められる場合

 登記官は、代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社の閉鎖された登記記録について復活すべき事由があると認められるときは、代表取締役等住所非表示措置を終了させるものとされた(規則第31条の3第4項第3号)。

 ここでいう「閉鎖された登記記録について復活すべき事由があると認められるとき」とは、第三者から当該株式会社を所有権の登記名義人とする不動産の登記事項証明書等を添付した上で当該株式会社の清算が未了である旨の情報提供が登記官に対してあった場合などが該当する。

5 登記官による調査

 登記官は、上記2から4までに掲げる措置を講ずるに当たって必要があると認めるときは、これらの措置の対象となる株式会社の代表取締役等に対して必要な情報提供等を求めることができるものとされた(規則第31条の3第6項)。

6 オンラインによる申出

 上記1及び4(1)の申出は、オンラインによる登記の申請と同時に行う場合に限り、オンラインにより行うことができるものとされた(規則第101条第1項第1号の2)。

7 書類の保存

 代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出に関する書類(添付書面を含む。)については、住所非表示措置申出等書類つづり込み帳につづり込むものとされた(規則第34条第3項第7号の2)。

 なお、代表取締役等住所非表示措置の申出は、上記1のとおり登記の申請と同時に行うこととされたため、その添付書面については当該登記の申請書と併せて申請書類つづり込み帳につづり込むものとする。

 また、規則第31条の3第1項第1号ハただし書に基づき本人特定事項を証する書面の添付が省略された場合には、登記官は、登記所に保管されている当該申出をした株式会社の実質的支配者情報一覧の写しを作成の上、併せて申請書類つづり込み帳につづり込むものとする。

8 登記簿の附属書類の取扱い

 代表取締役等住所非表示措置の申出の旨が記載された登記の申請書及びその添付書面等の代表取締役等住所非表示措置の対象となる代表取締役等の住所が記載されている登記簿の附属書類について、利害関係を有する者から閲覧の請求があった場合の対応については従前のとおりであり、当該住所が記載されている部分を塗抹するなどの特段の対応は要しない。

9 その他

(1) 登記義務について

 代表取締役等住所非表示措置は登記事項証明書の記載事項に関する特例であるため、代表取締役等住所非表示措置が講じられたことをもって、会社法第915条第1項に規定する登記の義務を免れるものではない。

(2) 官公署への対応について

 代表取締役等住所非表示措置の対象である代表取締役等の住所に係る情報につき、官公署(官公署から嘱託を受けた者を含む。)から請求等があった場合には、当該情報を提供して差し支えない。

第3 電気通信回線を使用して提供することに適しない情報に係る改正商業登記簿に記録されている登記情報のうち、規則第31条の3第2項の規定により代表取締役等住所非表示措置が講じられることとなるものについて、電気通信回線を使用して提供することに適しない情報とされた(提供規則第1条の2第1項第2号の2)。

1 商業登記規則第31条の3第1項の申出があった場合

(1) 設立の登記と同時の申出

役員に関する事項東京都千代田区

代表取締役法務太郎

(2) 本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記と同時の申出

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

(3) 就任の登記と同時の申出

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

(4) 住所変更を伴わない重任の登記と同時の申出

役員に関する事項東京都千代田区霞が関一丁目1番1号

代表取締役法務太郎

東京都千代田区令和6年10月1日重任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

(5) 住所変更を伴う重任の登記と同時の申出

役員に関する事項東京都千代田区霞が関一丁目1番1号

代表取締役法務太郎

東京都港区令和6年10月1日重任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

(6) 住所移転の登記と同時の申出

役員に関する事項東京都千代田区霞が関一丁目1番1号

代表取締役法務太郎

横浜市中区令和6年10月1日住所

代表取締役法務太郎移転

令和6年10月4日登記

20240919追加 Q&A

Q 住所非表示措置が講じられた場合、既登記の代表取締役等の住所の登記はどのように表示されるか?

A あくまで今後登記をする代表取締役等の住所が対象であり、既登記の代表取締役等の住所については非表示とならず、従来どおりの表示が維持されます。

Q 住所非表示措置の申出はいつでもすることができるのか?

A  次のいずれかの株式会社の登記申請と併せて申出をしなければなりません。

・設立登記

・管轄外へ本店移転する場合の新本店の登記

・代表取締役等の就任(重任含む)登記

・代表取締役等の住所移転等による変更登記

Q 住所非表示措置が講じられた会社が自らの登記事項証明書等の交付請求を行う場合、住所の全部を表示することができるか?

A 会社自らが登記事項証明書等の交付請求をする場合であっても、住所非表示措置が講じられた代表取締役等の住所の全部を登記事項証明書等に表示することはできません。また、当該交付請求をするときに限り当該措置を解除することもできません。

(1) Application at the same time as the registration of establishment

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Representative Director Taro Houmu

(2) Application at the same time as the registration at the new location when the head office is relocated to an area under the authority of another registration office

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

(3) Application at the same time as the registration of appointment

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

(4) Application at the same time as the registration of reappointment without address change

Matters related to officers.

1-1-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo

Representative Director Taro Houmu

Reappointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

(5) Application at the same time as the registration of reappointment with address change

Matters related to officers.

1-1-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo

Representative Director Taro Houmu

Reappointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

(6) Application at the same time as the registration of address relocation

Matters related to officers.

1-1-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo

Representative Director Taro Houmu

Moved to Naka-ku, Yokohama on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

別紙記録例

2 商業登記規則第31条の3第2項の措置を講じた後、申出と併せて登記の申請がされた場合

(1) 同一行政区画内での住所移転の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都千代田区令和6年11月1日住所

代表取締役法務太郎移転

令和6年11月8日登記

(2) 他の行政区画への住所移転の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都港区令和6年11月1日住所

代表取締役法務太郎移転

令和6年11月8日登記

(3) 住所変更を伴わない重任の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都千代田区令和8年10月1日重任

代表取締役法務太郎

令和8年10月7日登記

(4) 住所変更を伴う重任の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都港区令和8年10月1日重任

代表取締役法務太郎

令和8年10月7日登記

(1) Registration of address relocation within the same administrative district

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

Chiyoda-ku, Tokyo

Moved on November 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on November 8, 2024

(2) Registration of address relocation to another administrative district

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

Minato-ku, Tokyo

Moved on November 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on November 8, 2024

(3) Registration of reappointment without address change

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

Chiyoda-ku, Tokyo

Reappointed on October 1, 2026

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 7, 2026

(4) Registration of reappointment with address change

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

Minato-ku, Tokyo

Reappointed on October 1, 2026

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 7, 2026

3 商業登記規則第31条の3第2項の措置を講じた後、登記の申請のみがされた場合

(1) 同一行政区画内での住所移転の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

(1) Registration of address relocation within the same administrative district

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

別紙記録例

東京都千代田区霞が関一丁目1番1号令和6年11月1日住所

代表取締役法務太郎移転

令和6年11月8日登記

(2) 他の行政区画への住所移転の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都港区東麻布二丁目11番11号令和6年11月1日住所

代表取締役法務太郎移転

令和6年11月8日登記

(3) 住所変更を伴わない重任の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都千代田区令和8年10月1日重任

代表取締役法務太郎

令和8年10月7日登記

(1) Registration of address relocation within the same administrative district

1-1-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo

Moved on November 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on November 8, 2024

(2) Registration of address relocation to another administrative district

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

2-11-11 Higashi-Azabu, Minato-ku, Tokyo

Moved on November 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on November 8, 2024

(3) Registration of reappointment without address change

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

Chiyoda-ku, Tokyo

Reappointed on October 1, 2026

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 7, 2026

※住所変更を伴わない場合は、申出がない場合であっても、引き続き代表取締役等住所非表示措置を講ずる(規則第31条の3第3項)。

(4) 住所変更を伴う重任の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都港区東麻布二丁目11番11号令和8年10月1日重任

代表取締役法務太郎

令和8年10月7日登記

(5) 辞任の登記

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

令和7年10月1日辞任

令和7年10月7日登記

4 商業登記規則第31条の3第4項の措置を講じた場合

役員に関する事項東京都千代田区令和6年10月1日就任

代表取締役法務太郎

令和6年10月4日登記

東京都千代田区霞が関一丁目1番1号令和7年10月1日住所

代表取締役法務太郎非表示終了

令和7年10月1日登記

(4) Registration of reappointment with address change

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

2-11-11 Higashi-Azabu, Minato-ku, Tokyo

Reappointed on October 1, 2026

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 7, 2026

(5) Registration of resignation

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

Resigned on October 1, 2025

Registered on October 7, 2025

Measures taken under Article 31-3, Paragraph 4 of the Commercial Registration Regulations

Matters related to officers.

Chiyoda-ku, Tokyo

Appointed on October 1, 2024

Representative Director Taro Houmu

Registered on October 4, 2024

1-1-1 Kasumigaseki, Chiyoda-ku, Tokyo

Address as of October 1, 2025

Representative Director Taro Houmu, non-disclosure terminated.

Registered on October 1, 2025

別紙様式1

本店の実在性を確認したことを証する書面

年月日

当職は、本件登記申請の代理人として、以下のとおり、申請に係る株式会社が登記上の本店所在場所に実在することを確認したことから、その旨を証明する。

〒-

住所

氏名又は名称[印]

1 本店

2 商号

3 代表取締役等住所非表示措置の対象者

資格:

住所:

氏名:

4 本店実在性の確認の日時・方法

日時: 年月日

方法:□現認□郵送□その他( )

5 本店実在性の具体的確認方法

別紙様式2

代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出書

申出年月日 年 月 日

商号

本店

申出人の表示

住所

資格

氏名 印(注1)

連絡先 - -

代理人の表示

(注2)

住所

氏名

連絡先 - -

代表取締役等住所

非表示措置を希望しない代表取締役等の氏名等

住所

資格

氏名

(申出会社の本店所在地を管轄する登記所) (地方)法務局 宛て

(注1)申出をする株式会社の代表取締役等が登記所に提出している印鑑を押印してください。なお、代理人によって申出をする場合、申出書への押印は不要です。

(注2)代理人によって申出をする場合、代理人の権限を証する書面に、申出をする株式会社の代表取締役等が登記所に提出している印鑑を押印してください。

別紙様式3_

日記第  号

年月日

株式会社○○○○

代表取締役○○ ○○ 殿

○○市○○町○丁目○番○号

○○(地方)法務局法人登記部門

貴社について、本店の所在場所における実在性につき疑義がありますので、商業登記規則第31条の3第6項の規定に基づき、お尋ねします。

現在においても登記上の本店の所在場所において貴社が実在する場合は、下記回答欄に商号及び代表者氏名を記載するとともに、登記所に提出している印鑑を押印の上、○年○月○日までに、登記所に持参し、又は返送してください。

なお、期限までに回答がない場合は、商業登記規則第31条の3第4項第2号の規定に基づき、代表取締役等住所非表示措置を終了します。

登記上の本店の所在場所に実在することにつき間違いありません。

登記所に提出した印鑑の押印欄

回答欄

商号

本店

代表者氏名

※(注意)

なお、この書面の内容に不明な点がありましたら、直ちに、上記の登記所に連絡してください。

連絡先電話番号○○-○○○○-○○○○

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第10章

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令。  

  • 第10章 民事信託の実務論点

Q669、受益権証書と受益証券について。受益権証書と受益証券の違いについての解説がなされています。信託法185条は、受益証券を発行する場合のみ、信託行為に定めるとしており、受益証券を発行しない旨の信託条項は、不要だと考えます。信託法に規定のない受益権証書についても、同じ考え方になると考えます。

Q676、受益者等が存しなくなってしまった信託と税務リスクについて、受益者連続型信託において、信託期中、個人である受益者、指定していた次の受益者も想定外に死亡、その次の順位に指定した受益者は出生していないなどの事情で、信託の終了事由に該当しない場合には、受託者が法人とみなされ、死亡した受益者から受託者に対する信託財産の遺贈とみなされ、課税リスクが生じる。について・・・信託の終了事由をどのように定めているのか、気になりました。また、目的不達成により終了させることも可能だと思います(信託法165条)。

Q677、跡継ぎ遺贈型の受益者連続信託(信託法91条)の期間経過の都度、信託を再設定すれば事実上永久信託も可能という士業者もいるが、信託法の潜脱とならないか注意したい。について・・・経験はありませんが、委託者・受託者が個人であれば、信託を再設定する場合は委託者・受託者ともに異なる人物である可能性が高く、信託法の潜脱には当たらないと考えます。よって、もし私に依頼が来た場合は、原則として受任すると思います。

Q678、連続受益権に対する差押え、中間の連続受益者は、連続受益権の処分を禁止されるのが一般だ。の記載について・・・連続受益権の処分が禁止されるのが一般というのが実務であるということを、初めて知りました。後順位受益者を予備的に定めている場合は、禁止されないのではないかと思いましたが、一般的に禁止される実務が浸透している理由は、信託の目的で明確に定めている場合を除いて、何なのだろうと思いました。

 受託者の承諾を得て処分できるとする民事信託契約書もあるが、受託者が許諾した場合、その後の連続はどうなるか(許可の基準は何か)。について・・・受託者の許諾の基準とその後の連続については、受益権の処分(譲渡)に関する契約書と信託契約書の整合性によると考えます。

 中間の連続受益権への差押えや連続受益者の破産開始決定申立てによる連続受益権の破産財団化の場合は、どうなるのか。事実上、中間の連続受益者の信用力が信託に混入しないか。について・・・中間の受益者の連続受益権に差押えが行われることによって、中間の連続受益者の信用力が信託に混入する理由が分かりませんでした。差押えが禁止・制限される債権など、原則として民事執行法の債権執行(民事執行法143条~。)の規定に従うと考えます。

 受益権の譲渡禁止・制限の定めがある場合はどうなるのか、について・・・受益権の譲渡禁止・制限の定めは、信託関係者内部の定めであり、信託債権者には及ばないと考えます(信託法93条)。

Q681、受益者連続と遺留分、第二次受益者や第三次受益者が、委託者の地位を承継している場合はどうなるか。について・・・委託者の地位を承継しているか否かに関係なく、受益者に相続が開始した場合に遺留分権者がいるときには、遺留分が生じると考えます(民法1042条~)。

Q683、複層化信託と税務リスク、節税目的の信託の組成それ自体が租税回避行為と評価されるリスクはないだろうか注意したい。について・・・私は信託の期間が分からないこと、信託財産の価額評価が変わり得ること、税務通達が変更し得ることが、複層化信託を利用するリスクだと考えていて、利用したことがありません。信託の組成それ自体が租税回避行為と評価されるとすると、相続税法基本通達9の3-1は、どのような場合に利用されることを想定しているのか、気になりました。

Q685、受益者連続における登記実行処分の確実性、祖父が、孫の代まで資産や事業の承継関係を拘束してしまってよいのか、という論点もある。について・・・孫(第2次受益者以降の順位の受益者)は受益権の放棄が出来るので(信託法99条)、問題はないと思います。

Q688、帰属権利者の決定と遺産分割協議という論点(その2)、について、帰属権利者の指定や変更を、信託の変更によって行うという学説(能見善久=道垣内弘人『信託法セミナー4』2016年、有斐閣、P111~。)に同意です。

Q690、受益者間の遺産分割協議という論点、遺産分割協議が成立しない、という可能性はあり得ることだと思います。成立しない場合は、通常の相続と同じく、遺産分割調停などの家事手続に載せて処理することになると考えます。

Q695、信託監督人の普及の遅れ、野球において、選手経験のない監督は存在しないし、いても役に立たない。について・・・野球に関する規則の中に、監督就任の要件に選手経験が必要とされる記載は、見つけることが出来ませんでした。いても役に立たないのか、選手・野球未経験で甲子園に出場した監督はいます。インターネット上で調べていただきたいと思います。

Q697、後見人の権限行使不可条項、受益者に対しては制限せず、後見人についてだけ、その代理行為を禁止するという信託条項は、そのままの規定通り、実効性があるのだろうか。について・・・受益者と後見人の権限が重複するよりは、先に委託者の意思が入っている信託の安定性を重視して権限を分けるのは、悪いことなのか、分かりませんでした。私は権限を分ける条項を利用しますが、後見人の法定代理権を、信託行為で不可に出来ると考えているわけではなく、信託行為時の委託者の意思として記載しています。受託者と後見人が対立関係に至るかどうかは、受託者による趣旨説明と個人差がある後見人の理解度によると考えます。Q698の、万が一法定後見人が選任される事態に至ることも想定して、どこまで信託に関する権利を委ねるかをよく考えて、信託行為の定め(信託契約書の信託条項)を検討すべきという指摘がある。という他の書籍の引用をしていることとの整合性が分かりませんでした。

登記研究917号

登記研究917号(令和6年7月号)、テイハン

https://www.teihan.co.jp/book/b10086597.html

【論説・解説】新連載 ポイント解説

■基礎から考える商業登記実務(第1回)

横浜地方法務局法人登記部門首席登記官 山 森 航 太

ポイント:株式会社の取締役の就任承諾書について

本連載について

 実体法である会社法と手続法である商業登記法その他の関連法令との関係性の理解が必要。・・・記事に記載の通り、実体法上、登記申請で添付情報が求められる理由、添付情報として成立するための要件について整理出来ると理解が深まると感じます。

1 はじめに

 商業登記法54条1項

(取締役等の変更の登記)

第五十四条 取締役、監査役、代表取締役又は特別取締役(監査等委員会設置会社にあっては監査等委員である取締役若しくはそれ以外の取締役、代表取締役又は特別取締役、指名委員会等設置会社にあっては取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役)の就任による変更の登記の申請書には、就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。

2 取締役の就任承諾書が必要とされる理由

 会社との委任関係(会社法330条、民法643条)。株式会社での取締役選任決議(会社法329条1項)が委託、選任された者が承諾することにより、委任契約の成立。任期満了が契約の消滅、辞任・解任が契約の一方当事者からの解除、自然人の死亡・破産手続の開始は委任の終了事由に該当(民法135条2項、540条、651条、653条、会社法339条1項)。

3 就任承諾書の態様と基本的な要件

 誰が、いつ、どの会社の取締役に就任することを承諾したかが明らかにされていることが必要・・・就任承諾書に、令和〇年〇月〇日開催の貴社株主総会において、という記載も、必須の記載事項なのか、分かりませんでした。

4 取締役に就任する時期(日付)

 選任決議で、取締役に就任する日を決めた場合は、取締役の就任承諾があれば、選任決議で決めた日から取締役に就任する。

 取締役に選任された者が、就任する日を定めて承諾した場合は、その日に取締役に就任する。

 ある人が、株主総会で取締役に選任された場合、就任承諾すると意思表示していた場合、株主総会決議の日に取締役に就任する。

5 商業登記手続における就任承諾書の要件の加重

商業登記規則61条4項、7項

(添付書面)第六十一条

4 設立(合併及び組織変更による設立を除く。)の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したこと(成年後見人又は保佐人が本人に代わって承諾する場合にあっては、当該成年後見人又は保佐人が本人に代わって就任を承諾したこと。以下この項において同じ。)を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。取締役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書に添付すべき取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑についても、同様とする。

7 設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項及び第百三条において「取締役等」という。)が就任を承諾したこと(成年後見人又は保佐人が本人に代わって承諾する場合にあっては、当該成年後見人又は保佐人が本人に代わって就任を承諾したこと)を証する書面に記載した取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等(その者の成年後見人又は保佐人が本人に代わって就任を承諾した場合にあっては、当該成年後見人又は保佐人)が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。

6 就任承諾書として株主総会の議事録の記載を援用する場合と出席した取締役の氏名の記載

 新たに取締役に就任する場合と、現在の取締役が辞任する場合の後任の取締役に就任する場合は、分けて考える。

 株主総会で席上就任承諾した新任取締役がいる場合で、株主総会議事録に出席取締役(会社法施行規則72条4項)として記名しないときは、取締役の就任時期が株主総会終結後であることを、株主総会議事録に記載することが必要との見解。

7 おわりに

 記事を鵜呑みにしないこと。

・ご本人に確認していないのですが、この記事に対してなのかな、と思った金子先生の記事。

2024.07.22(月)【登記所と実業界との感覚差】(金子登志雄)

http://www.esg-hp.com/

■民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係)

法務省民事局付 森 下 宏 輝、法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之、法務省民事局民事第二課補佐官 太 田 裕 介

1 はじめに

令和5年9月12日法務省民二第927号通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(相続登記等の申請義務化関係)」について

2 解 説

 条文では義務として規定されていますが(不動産登記法76条の2、76条の3)、相続人に対する特定承継遺言がある場合で相続人申告登記の申出をする必要があるときは、どのような場合が想定されるのか、気になりました。

 通達3の2、登記官が相続登記などの申請義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったとき、について。登記官は、相続登記申請のチェックの際、遺言書や遺産分割協議書などに登記申請しない不動産があった場合は、その不動産について相続登記がなされているかどうかを調べていることになります。相続登記がなされていない場合、遺産分割協議書の日付なども3年以内か確認しているのかなと思われます。仕事が1つ増えたのだなと思いました。

■Q&A不動産表示登記(93)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

第四章 建物(区分建物)

 第一節 登記事項 Q262 区分建物とは何か。

 壁やシャッターで仕切られている場合(登記研究249号、昭和40年3月1日民事三発第307号民事局第三課長回答「区分所有建物について」)。

■商業登記の変遷(63)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

 印鑑証明書の交付請求手数料の計算方法について、大工の工賃と白米小売価格の相乗平均値をもとに換算、企業物価指数と消費者物価指数の相乗平均値をもとに換算、などの方法が1998年(平成10年)までは導入されていたと初めて知りました。

■民事信託の登記の諸問題(34)

渋 谷 陽一郎

第240 本解説のポイント3──みなし受益者の登記

 不動産登記法103条記載の、受託者の義務について確認。

第241 本解説のポイント4──受益者変更登記の要否

 不動産登記法103条により受託者が受益者変更登記申請をしない場合の、信託財産を固有財産とする旨の登記申請の登記義務者の確認。

第242 本解説のポイント5──信託変更登記申請における登記原因証明情報

 不動産登記法、不動産登記令の構造上、受託者が単独で報告登記原因証明情報を作成することが出来る。もし、受益者の変更原因がないことを利害関係人が争う場合、別途争うことになる。

第243 本解説のポイント6──共同申請構造と登記義務者・権利者の同一人性

第244 本解説のポイント7──受託者=帰属権利者における利益相反の許容

 不動産登記法104条の2第2項の信託財産を固有財産とする旨の登記申請を行う場合は、利益相反行為に該当する。よって、信託目録か登記原因証明情報において、信託法31条2項但し書きの記録・記載が必要とされる。

第245 本解説のポイント8──変更登記であるが実質的な移転登記

 実質的な権利変動が登録免許税法7条2項の要件を満たしている限り、適用される。

本解説の表現は、やや微妙であるが、直截的に、変更登記申請の登記原因を「委付」にすることが許容される、としていると解すべきではないだろうか。について・・・登記研究624号P126は、「委付」とは,自己の所有物又は権利を相手方に交付し,自己と相手方との間の法律関係を消滅させるとの意味であり,昭和50年法律第94号による改正前の商法691条1項に おいて,船舶所有者は海産を債権者に「委付」して責任を免れることができることを規定していたことから,受託者の固有財産とした場合にも,「委付」という登記原因が用いられるようになった、としています。相手方を受託者兼残余財産の帰属権利者、信託財産を固有財産とする旨の登記及び信託登記抹消登記申請を、法律関係を消滅させ、清算受託者が信託債権者への責任を免れる行為だと考えることが出来るのであれば、登記原因を委付とすることは認められると思います。

【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(10)

登記研究46号P30、昭和26年10月3日民事甲第1940号民事局長回答 「商業登記事務取扱について」

 会社法298条、299条の株主総会招集通知に記載する株主総会の目的である事項について、どこまで具体的に記載する必要があるか。

登記研究251号P51、昭和43年8月30日民事甲第2770号民事局長通達「株式会社役員の変更登記申請の受否について(商通第七十三号)」

 株主総会の招集者と出席者について。昭和31年12月18日民事甲第2822号民事局長回答「商業登記事務取扱について」の変更。

登記研究152号P43、昭和35年6月3日民事四発第107号民事局第四課長心得電報回答「株主総会における議決権の行使について」

登記研究495号P33、柳田幸三:法務省民事局第四課長、渋佐愼吾:法務省民事局局付、山田紘:法務省民事局第四課補佐官、門田稔永:法務省民事局第四課補佐官、浅野克男:法務省民事局第四課係長、藤部富美男:法務省民事局第四課係長 【第一部 論説・解説】「株式会社に関する先例をめぐって(22)」

 株主総会決議の要件を軽減するような、議決権に定めないという解釈は、法令上議決権が認められない種類株式などを除いて、行うことは出来ない。

登記研究666号P195、平成14年6月10日法務省民商第1408号民事局商事課長通知「基準日後に発行された新株の株主の議決権について〔解説付〕」

 基準日(会社法124条)を定めた場合の効力について。

登記研究495号P56、昭和44年3月6日民事甲第381号民事局長通達 「議決権行使の代理人資格を株主に制限する定款の定めの効力について(商通第七〇号)」

 登記研究164号P36、昭和36年5月1日民事甲第949号民事局長通達 「議決権行使の代理人の資格を制限する定款の定めについて」の変更。議決権行使の代理人資格を株主に制限することは、議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由のうちに入る。

最高裁判所第二小法廷判決昭和43年11月1日昭和40(オ)1206 株主総会決議無効確認請求

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54982

登記研究884号P131、令和3年6月16日法務省民商第103号法務省民事局商事課長通知「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律等の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて【解説付】」

 株主総会議事録における開催場所の記載(会社法298条)と定款添付の要否について。

登記研究896号P126、令和4年8月3日法務省民商第378号法務省民事局長通達「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 社債、株式等の振替に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413AC0000000075_20240522_506AC0000000032

(電子提供措置に関する会社法の特例)第百五十九条の二第1項 振替株式を発行する会社は、電子提供措置(会社法第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をいう。)をとる旨を定款で定めなければならない。

会社法911条3項12号の2、915条1項。登記研究896号P19、村上裕貴:法務省民事局商事課法規係長【論説・解説】「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて(通達)」の解説。

登記研究493号P43、昭和38年10月9日民事甲第2817号民事局長電報回答「株主総会の議事録等について」

 株主総会特別決議(会社法309条2項)の要件について、株主総会議事録の記載方法。

登記研究 223号、昭和41年3月22日民事甲第982号民事局長回答「取締役、監査役変更登記申請の受否について」

 役員変更登記申請の前提として、新株発行に伴う変更登記が必要。登記研究 496号、柳田 幸三:法務省民事局第四課長、渋佐 愼吾:法務省民事局局付、山田 紘:富山地方法務局総務課長(前法務省民事局第四課補佐官)、門田 稔永:法務省民事局第四課補佐官、浅野 克男:人事院公平局調整課審理官(前法務省民事局第四課係長)、藤部 富美男:法務省民事 【第一部 論説・解説】 株式会社に関する先例をめぐって(23)・

登記研究452号、昭和60年7月8日法務省民四第3952号民事局第四課長回答「外国文字をもって作成された株主総会議事録を添付した登記申請の受否について」

 日本の会社法に基づいて設立された株式会社の株主総会議事録は、日本語で記載されていることを要する。外国語を併記することは禁止されていない。

登記研究698号、平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 株主総会議事録の議長及び出席した取締役の記名押印について、原則と例外。

登記研究496号、昭和38年12月18日民事四発第313号民事局第四課回答「株主総会議事録と出席取締役の署名拒否について」

 登記研究496号、柳田 幸三:法務省民事局第四課長、渋佐 愼吾:法務省民事局局付、山田 紘:富山地方法務局総務課長(前法務省民事局第四課補佐官)、門田 稔永:法務省民事局第四課補佐官、浅野 克男:人事院公平局調整課審理官(前法務省民事局第四課係長)、藤部 富美男:法務省民事【第一部 論説・解説】「株式会社に関する先例をめぐって(23)」

 株主総会議事録に、出席取締役の署名または記名押印が必要な場合についての処理。

登記研究164号昭和36年5月1日民事四発第81号民事局第四課長事務代理回答「株主総会等の議事録の作成に関する件について」

 議事録全般について。1通の議事録で完成したものである必要がある。登記研究463号、神崎満治郎:東京法務局総務部職員課長(前法務省民事局第一課補佐官)【先例漫歩】商業・法人登記の実務(10)。

登記研究698号、民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

会社法319条、325条、会社法施行規則72条、95条について。

登記研究823号P165、平成28年6月23日法務省民商第98号民事局長通達「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 株主総会において登記すべき事項を議決している場合、登記すべき事項ごとに株主リストの要否と株主の変動を考慮する。登記研究832号、辻 雄介:法務省民事局付、大西 勇:法務省民事局商事課係長(商業法人登記第一係担当)【論説・解説】株主リストに関する一考察。

【法 令】

国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和6年3月25日政令第63号)

 施行期日は2024年(令和6年)4月1日。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和6年3月25日政令64号)

 改正附則4条(旧法確認及び目的等相当確認を行っている顧客等との取引に準ずる取引等)

会社法施行規則の一部を改正する省令(令和6年3月27日法務省令第11号)

 公開会社が株式・新株予約券の募集事項の決定を取締役会により定めた場合、株主への通知に代えて、誰でも閲覧できる状態にしておく情報の中から、四半期報告書などを削除。

【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6233〕被相続人の同一性の証明に関する不動産登記事務の取扱いについて【解説付】(令和5年12月18日付け法務省民二第1620号法務局民事行政部長(東京を除く。)、地方法務局長宛て法務省民事局民事第二課長通知)

・固定資産税の納税証明書・評価証明書・不在籍証明書・不在住証明書を提供

  ・登記記録上の不動産の表示・所有者の氏名が、提供された情報と一致。

  ・提供された情報に記載された納税義務者の住所・氏名が、住民票の写し等に記載された被相続人の住所・氏名と一致。

  ・住民票の写し等に記載された被相続人の本籍及び氏名が、戸籍等の謄本に記載された本籍・氏名と一致。

3つが揃っている場合は、所有権の登記名義人と戸籍上の被相続人とは同一である旨の相続人全員の上申書は不要。

・遺言公正証書が登記原因証明情報の一部として提供された場合に、固定資産税の納税証明書・評価証明書・不在籍証明書・不在住証明書を提供。

  ・登記記録上の不動産の表示・所有者の氏名が、提供された情報と一致。

  ・提供された情報に記載された納税義務者の住所・氏名が、遺言公正証書に記載された被相続人の住所・氏名と一致。

  ・遺言公正証書に記載された遺言者・相続人の氏名・生年月日が戸籍等の謄本に記載された被相続人・相続人の氏名及び生年月日と一致

3つが揃っている場合は、所有権の登記名義人と戸籍上の被相続人とは同一である旨の相続人全員の上申書は不要。

 登記研究831号、平成29年3月23日法務省民二第175号民事局民事第二課長通知「被相続人の同一性を証する情報として住民票の写し等が提供された場合における相続による所有権の移転の登記の可否について」が適用されない場合の補充的措置。

株式会社スマートラウンド×BAMBOO INCUBATOR「スタートアップ向けモデル原始定款」

株式会社スマートラウンド×BAMBOO INCUBATOR「スタートアップ向けモデル原始定款」

株式会社スマートラウンド

https://jp.smartround.com/corporate/news/posts/4sZpHU4R

BAMBOO INCUBATOR

https://bambooincubator.jp/template/startup/aoi

日本公証人連合会の定款記載例の中の、中小規模の会社(Small and Medium-Sized Company)を中心に比較してみたいと思います。

前提

想定しているスタートアップ

●       資本金:100万円

●       ビジネスモデル:IT・ソフトウェア(SaaSやメディア、アプリなど)

●       exit目標:5年以内のIPOを目指す

●       資本金と連動するような許認可の取得予定:なし

●       取締役会:非設置

電子定款として作成することを前提。

定款

株式会社●●●●

株式会社●●●●定款

第1章         総     則

(公告方法)

第4条  当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。

説明

「電子公告」にすることでコストは抑えられるものの、新規性のあるビジネスを展開するスタートアップにおいて競合対策として開示範囲を狭めることが重要であるため、開示範囲が限定的な官報とすることを推奨する。

第2章         株     式

(発行可能株式総数)

第5条  当会社の発行可能株式総数は、1億株とする。

説明

設立時の発行済株式総数の100倍程度あれば十分であるため、後述の通り1株あたりの価額を1円とし、「前提」記載の通り資本金100万円程度であれば、1億株とすることを推奨する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」

(発行可能株式総数)

第5条 当会社の発行可能株式総数は、1万株とする。

(株式の譲渡制限)

第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会の承認を受けなければならない。

説明

「当会社」とした場合、起業家が譲渡承認機関を誤解して誤った判断をするリスクがある。「当会社」とすることで取締役会設置会社となった際の変更コストを節約できるものの、2~3万円程度にすぎず、誤判断を防止することを優先すべきであるため、「株主総会」とすることを推奨する。

「代表取締役」とすることも可能だが、法的に疑義ありとする見解もある。

 譲渡承認機関を当会社とするのは、会社法の条文通りに規定した場合(会社法107条2項)。譲渡承認機関を代表取締役とすることについて、法的に疑義ありとする見解について、江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』2021年、有斐閣、P240、齋藤雅代「株式の譲渡制限の定めがある場合の譲渡の承認について」など。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」、「小規模な会社」。

(株式の譲渡制限)

第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

(相続人等に対する売渡請求)

第8条 当会社は、相続、合併その他の一般承継により当会社の譲渡制限の付された株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

説明

創業者が死亡し、かつ相続人間で権利行使者が決められずデッドロックになることを避けるために含めることが望ましい。なお創業株主間契約でカバーすることも可能だが、創業株主間契約の締結を失念することも多いため、原始定款に含めることを推奨する。

(特定の株主からの自己株式の取得)

第14条 当会社は、会社法第160条第1項の規定による決定をするときは、同条第2項及び第3項の規定を適用しない。

推奨値

特定の株主からの自己株式の取得(会社法第156条・第160条1項)につき、他の株主が自ら保有する株式も含めて取得するよう請求できる(同第160条2項3項)規定を適用しない旨(同第164条)を、原始定款にて定める。

説明

ある株主に問題が発生して発行体が株式を買い取る場合、本条項を定めないと、他の株主が便乗して買取請求することができてしまう。この問題を回避し、問題のある株主からの買取をスムーズに進めるため、本条のように定めることを推奨する。

会社法

(特定の株主からの取得に関する定款の定め)

第百六十四条 株式会社は、株式(種類株式発行会社にあっては、ある種類の株式。次項において同じ。)の取得について第百六十条第一項の規定による決定をするときは同条第二項及び第三項の規定を適用しない旨を定款で定めることができる。

2 株式の発行後に定款を変更して当該株式について前項の規定による定款の定めを設け、又は当該定めについての定款の変更(同項の定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該株式を有する株主全員の同意を得なければならない。

(募集株式の割当ての決定又は総数引受契約の承認)

第15条 当会社は、会社法第204条第2項本文の定めにかかわらず、募集株式が譲渡制限株式であるときは、その申込者に対する割当てを、取締役の決定(取締役が2名以上ある場合は取締役の過半数による決定。本条において以下同じ。)により定める。

2 当会社は、会社法205条第2項本文の定めにかかわらず、募集株式が譲渡制限株式であるときは、その総数引受契約を取締役の決定により承認する。

推奨値

募集株式が譲渡制限株式であるときの割当て又は総数引受契約を、株主総会の決議を要しないように原始定款にて定める。

説明

募集事項の決定を取締役に委任した場合(会社法第200条)でも、会社法のデフォルトルールでは、募集株式の割当ては株主総会の決議による。

このデフォルトルールのままだと、株主総会を開催する手間がかかり、迅速に募集株式の発行をすることができない。

そこで、本条のように、募集株式の割当てを取締役が決定できるようにすることを推奨する(会社法204条2項ただし書き)。※募集株式が譲渡制限株式である場合の総数引受契約(会社法第205条)も同様

第3章 株主総会

(招集通知)

第17条  株主総会を招集するには、会日の3日前までに、書面投票又は電子投票を認める場合は2週間前までに、議決権を行使することができる各株主に対して招集通知を発するものとする。ただし、議決権を行使することができる株主全員の同意があるときは、書面投票又は電子投票を認める場合を除き、招集の手続を経ることなく開催することができる。

説明

招集通知の発出から会日までの期間が長すぎるとスタートアップの機動性を害する。ただし短すぎると株主の対応時間が十分に取れない懸念があり、バランスを取って3日前とすることを推奨する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(招集通知)

第16条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の5日前までに発する。ただし、書面投票又は電子投票を認める場合には、会日の2週間前までに発するものとする。

2 前項の規定にかかわらず、株主総会は、その総会において議決権を行使することができる株主の全員の同意があるときは、書面投票又は電子投票を認める場合を除き、招集の手続を経ることなく開催することができる。

(株主総会の決議)

第20条  株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。

2  会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(決議及び報告の省略)

第19条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

2 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

(議事録)

第21条  株主総会の議事については、開催日時、場所、出席した役員並びに議事の経過の要領及びその結果その他法務省令で定める事項を記載又は記録した議事録を作成し、株主総会の日から10年間本店に備え置く。

第4章 取締役及び代表取締役

(取締役の選任及び解任)

第23条  取締役の選任及び解任の決議は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

2 取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(取締役の選任)

第23条 取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。

2 取締役の選任については、累積投票によらない。

(取締役の任期)

第24条  取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2  補欠又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又はその選任時に在任する他の取締役の任期の満了する時までとする。

説明

長期間にすると取締役を解任した際に損害賠償リスクが高まることから、任期は短いことが望ましい。しかし1年とすると再任にかかる手間とコストがかかりすぎるため、2年とすることを推奨する。

役員が1名の場合は損害賠償リスクがないため長期間にするという考え方もあるが、役員追加時に任期変更を忘れるリスクもあるため、役員人数を問わず2年とする。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(取締役の任期)

第24条 取締役の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

(代表取締役及び社長)

第25条  当会社に取締役を2名以上置く場合には、株主総会の決議により、代表取締役1名以上を定め、そのうち1名を社長と定める。

2  当会社に置く取締役が1名の場合には、その取締役を代表取締役とし、社長とする。

3  社長は、当会社の業務を執行する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(代表取締役及び社長)

第25条 当会社に取締役を複数置く場合には、代表取締役1名を置き、取締

役の互選により定める。当会社に置く取締役が1名の場合には、当該取締役を代表取締役とする。

2 代表取締役は、社長とし、当会社を代表する。

3 当会社の業務は、専ら取締役社長が執行する。

第5章         計     算

(事業年度)

第27条  当会社の事業年度は、毎年●月●日から翌年●月末日までの年1期とする。

推奨値

決算月を設立日の前月末とする。

説明

税制面・創業融資面でのメリットを最大限享受するため、1期目をなるべく長くとることを推奨する(消費税の免税期間・日本政策金融公庫の創業融資・エンジェル税制など)。

第6章         附     則

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)

第29条  当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金●●,●●●円とする。

2  当会社の成立後の資本金の額は、金●●,●●●円とし、その余りは資本準備金とする。

推奨値

出資金額が100万円未満の場合:全額資本金とする。
出資金額が100万円以上の場合:出資金額の1/2を超えない額を資本準備金に組み入れ、残りを資本金とする。

説明

日本政策金融公庫の融資や定款認証費用の節約などで、資本準備金の組み入れを活用することは重要。しかし出資金額100万未満の場合はこうしたメリットを享受できず、定款認証費用も変わらない。

以上より、出資金額が100万円以上の場合は資本準備金に組み入れ、100万円未満の場合は全額資本金とすることを推奨する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

第31条 当会社の設立に際して出資される財産の全額を成立後の資本金の額とする。

(発起人の氏名ほか)

第32条  発起人の氏名、住所、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数及び設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額は次のとおりである。

住所 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●● ●●  ●●株  金●●●,●●●円

説明

複数回の資金調達を繰り返してバリュエーションが急上昇するスタートアップでは、株式譲渡やSO発行をなるべく細かい単位で実施する必要があるため、1株1円とすることを推奨する。

一般社団法人・一般財団法人の役員登記記録の旧氏併記申請

一般社団法人・一般財団法人の役員登記記録の旧氏併記申請(商業登記規則82条の2、一般社団法人等登記規則3条)

令和4年8月25日法務省民商第411号通達「商業登記規則及び電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

商業登記規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339M50000010023

(役員等の氏の記録に関する申出等)

第八十一条の二 会社の代表者は、役員(取締役、監査役、執行役、会計参与又は会計監査人をいう。以下この条において同じ。)又は清算人の一の旧氏(住民基本台帳法施行令(昭和四十二年政令第二百九十二号)第三十条の十三に規定する旧氏であって、記録すべき氏と同一であるときを除く。以下同じ。)を登記簿に記録するよう申し出ることができる。この場合において、当該登記簿(閉鎖した登記事項を除く。)にその役員又は清算人について旧氏の記録がされていたことがあるときは、最後に記録されていた旧氏より後に称していた旧氏に限り、登記簿に記録するよう申し出ることができる。

2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を登記所に提出してしなければならない。

一 申出に係る会社の商号及び本店の所在場所並びに当該会社の代表者の資格、氏名、住所及び連絡先

二 旧氏を記録すべき役員又は清算人の氏名

三 前号の役員又は清算人について記録すべき旧氏

四 代理人によつて申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の資格及び氏名

五 申出の年月日

3 前項の申出書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

一 前項第三号に掲げる事項を証する書面

二 代理人によつて第一項の申出をするときは、当該代理人の権限を証する書面

4 第二項の申出書又は委任による代理人の権限を証する書面には、申出をする会社の代表者が登記所に提出している印鑑を押印しなければならない。

5 第一項の申出があつた場合には、登記官は、同項の申出に係る旧氏を登記簿に記録するものとする。

6 登記官は、旧氏が記録された役員又は清算人の氏の変更の登記の申請があつた場合において、当該旧氏と登記簿に記録すべき氏とが同一であるときは、当該申請により登記簿に氏名を記録すべき役員又は清算人につき、当該旧氏を記録しないものとする。

7 会社の代表者は、当該会社の登記簿に旧氏の記録がされている者について氏の変更の登記がされた場合には、登記簿に記録がされている旧氏を当該変更の登記の直前に称していた旧氏に変更するよう申し出ることができる。

8 第二項から第五項までの規定は、前項の申出について準用する。

9 会社の代表者は、当該会社の登記簿に記録がされている旧氏の記録を希望しない旨を申し出ることができる。

10 第二項から第五項までの規定(第三項第一号を除く。)は、前項の申出について準用する。この場合において、第二項第二号中「旧氏を記録すべき」とあるのは「旧氏の記録を希望しない」と、同項第三号中「清算人について記録すべき旧氏」とあるのは「清算人について記録されている旧氏」と、第五項中「記録するものとする。」とあるのは「記録しないものとする。」と読み替えるものとする。

法務省

添付書面としての本人確認証明書及び旧氏の併記について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00085.html

・登記記録例

役員に関する事項理事 山内○○(喜屋武○○)
理事 宮里○○
理事 金城○○
理事長 山内○○(喜屋武○○)
監事 島袋○○(伊佐○○)

・旧氏併記申出書

・申出の方法

法人の代表者が、申出書と必要な書類を添えて管轄法務局に提出。

・申出書に記載すべき事項

(1) 申出に係る会社の商号及び本店の所在場所並びに当該会社の代表者の資格、氏名、住所及び連絡先

(2) 旧氏を記録すべき役員又は清算人の氏名

(3) (2)の役員又は清算人について記録すべき旧氏

(4) (代理人による申出の場合)代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の資格及び氏名

(5) 申出の年月日

・記録すべき旧氏を証する書面の例

 併記しようとする旧氏の記載がある除籍抄本等から現在の氏の記載がある戸籍に至る全ての戸除籍謄抄本等

(初めて旧氏を記録する場合)住民票やマイナンバーカード、運転免許証に既に併記されている旧氏と同じ旧氏の併記を希望するときは、これらの写し

・同時に旧氏の記録の申出をすることができる登記申請

・・・設立登記や役員就任登記の際に、旧氏併記の申出を行う場合など。

○設立の登記の申請

○清算人の登記の申請

○役員(理事、監事、取締役、監査役、執行役、会計参与若しくは会計監査人)又は清算人の就任による変更の登記の申請

○役員又は清算人の氏の変更の登記の申請

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