加工令和5年3月所有者不明土地等関係法令の主な改正項目(新たな財産管理人制度について)

加工令和5年3月所有者不明土地等関係法令の主な改正項目(新たな財産管理人制度について)

日本司法書士会連合会 民事信託等財産管理業務対策部 財産管理WT

目次

1.問題の背景 … 5

2.表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律 … 5

(1)所有者等探索委員制度の創設・不動産登記法の特例 … 5

(2)裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度の創設 … 5

① 特定不能土地等管理者による管理の対象となる財産(=所有者等特定不能土地等) … 6

② 申立権者 … 6

③ 発令等要件 … 6

④ 管理者の権限・義務等 … 6

⑤ 手続の流れ … 6

3.所有者不明土地・建物管理制度 … 7

(1)現行法における所有者不明土地・建物の管理 … 7

① 問題の所在 … 7

(2)所有者不明土地建物管理制度に関する改正 … 8

① 概要 … 8

② 管理人による管理の対象となる財産 … 8

③ 申立権者 … 8

④ 発令要件等 … 8

⑤ 申立てに関するその他の事項 … 8

⑥ 管理人の権限・義務等 … 9

⑦ 共有持分についての所有者不明土地管理人 … 9

⑧ 手続の流れ … 10

4.管理不全土地・建物管理制度 … 11

(1)管理不全土地・建物への対応 … 11

(2)問題の所在 …………………………………………….. 11

(3)管理不全土地・建物管理制度に関する改正 ……………………. 11

① 申立権者・発令要件等 ……………………………………. 11

② 管理人による管理の対象となる財産 …………………………. 12

③ 管理人の権限・義務等 ……………………………………. 12

④ 手続の流れ …………………………………………….. 12

主な財産管理人制度一覧表 ……………………………………….. 14

ケーススタディ ………………………………………………… 15

設例1 甲区に所有者が登記されている場合 ……………………….. 15

設例2 甲が記録例2-1の登記事項証明書を持参した場合 …………… 39

設例3 甲が記録例2-3の登記事項証明書を持参した場合 …………… 44

設例4 甲が記録例2-4の登記事項証明書を持参した場合 …………… 52

2

法令・通達・申立書書式 …………………………………………. 53

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律 …………… 53

民法(抄) ………………………………………………….. 59

会社法(抄) ………………………………………………… 63

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 ………………… 64

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令 …………… 85

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の

特例に関する省令 …………………………………………….. 89

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行規則 …………. 91

建物の区分所有等に関する法律(抄) ……………………………. 104

非訟事件手続法(抄) ………………………………………… 104

共有に関する非訟事件及び土地等の管理に関する非訟事件に関する手続規則 107

民事訴訟法(抄) ……………………………………………. 111

家事事件手続法(抄) ………………………………………… 112

不動産登記令(抄) ………………………………………….. 112

所有権の登記がない土地の登記記録の表題部の所有者欄に氏名のみが記録されて

いる場合の所有権の保存の登記の可否について(通知) ……………… 114

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(通達) ……………………………. 114

特定不能土地等管理者等から売買等により所有権を取得した者による自己を表題部所有者とする表題登記の取扱いについて(通達) …………………. 114

共有に関する事件(非訟事件手続法第三編第一章)、土地等の管理に関する事件(非訟事件手続法第三編第二章)申立書式 ……………………………. 114

参考文献・資料

東京司法書士会民法改正対策委員会「Q&Aでマスターする民法・不動産登記法改正と司法書士実務 重要条文ポイント解説152 問」(日本加除出版/2021)

村松秀樹・大谷太「Q&A令和3年改正民法・改正不登法相続土地国庫帰属法」(金融財政事情研究会/2022)

第一東京弁護士会家事法制委員会・司法制度調査委員会「Q&A・事例解説 令和5年4月施行対応 民法等改正の実務ポイント-相隣、共有、所有者不明土地、相続、登記-」(新日本法規出版/2022)

荒井達也「Q&A令和3年民法・不動産登記法改正の要点と実務への影響」(日本加除出版/2022)

中里功・神谷忠勝・倉田和宏・内納隆治「所有者不明土地解消・活用のレシピ―令和3年改正民法・不動産登記法の徹底利用術」(民事法研究会/2023)

「登記研究」(テイハン)

法務省民事局「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し【民法等一部改正法・相続土地国庫帰属法の概要】」

https://www.moj.go.jp/content/001362336.pdf

<法令等の表記>

根拠となる法令等の略記例及び略語並びに表示例は次のとおり

表題部法 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法律第15 号・令和3年法律第24 号による改正)

共有手続規則 共有に関する非訟事件及び土地等の管理に関する非訟事件に関する手続規則(令和4年5月13 日最高裁判所規則第13 号)

非訟法 非訟事件手続法(平成23 年法律第51 号・令和3年法律第24 号による改正)

民 民法(明治29 年法律第89 号・令和3年法律第24 号による改正)

会社 会社法(平成17 年法律第86 号・令和2年法律第33 号による改正)

所有者不明土地特措法 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

(平成30 年法律第49 号・令和4年法律第38 号による改正)

区分所有法 建物の区分所有等に関する法律(昭和37 年法律第69 号・令和3年法律第24 号による改正)

民訴法 民事訴訟法(平成8年法律第109 号・令和3年法律第24 号による改正)

家事法 家事事件手続法(平成23 年法律第52 号・令和3年法律第24 号による改正)

不登令 不動産登記令(平成16 年政令第379 号・令和4年政令第315 号による改正)

職務上等請求書 戸籍謄本・住民票の写し等職務上請求書及び戸籍謄本・住民票の写し等請求書【司法書士用】

表示例 表題部法§14Ⅰ④イ 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律第14 条第1項4号イ

1.問題の背景

相続登記がされないこと等により、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や所有者が所在不明で連絡がつかない土地、いわゆる所有者不明土地が発生し、公共事業や大規模災害からの復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引や土地の利活用が阻害されることから社会問題となっている。今後高齢化社会の進展に伴い、死亡者数の増加が予想されることからますます深刻化するおそれがあり、その解決は喫緊の課題とされている。

そこで、所有者不明土地問題への対策の一環として、不動産登記簿の表題部所有

者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が正常に登記されていない「表題部所有者不明土地」について、その登記及び管理の適正化を図るために必要となる措置を講ずることにより、その権利関係の明確化及びその適正な利用を促進しようとする方策と所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化の観点からの抜本的な見直しが図られた。

しかし、表題部所有者不明土地は通常の所有者不明土地と発生原因や解消措置が異なるため、民法や不動産登記法の見直しと切り離して、令和元年5月17 日に、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法律第15 号)が先行して成立した。そして、令和3年4月21 日、「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24 号)」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25 号)」が成立した。

本資料では、司法書士が管理人として選任される可能性が高い財産管理制度を中心に解説をする。

2.表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

所有者不明土地問題への対策の一環として、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律は、不動産登記簿の表題部所有者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が正常に登記されていない「表題部所有者不明土地」[1]1について、その登記及び管理の適正化を図るために必要となる措置を講ずることにより、その権利関係の明確化及びその適正な利用を促進しようとするものである。

(1)所有者等探索委員制度の創設・不動産登記法の特例

表題部所有者不明土地の登記の適正化を図るための措置として、登記官に所有者の探索のために必要となる調査権限を付与するとともに、所有者等探索委員制度が創設された。また、所有者探索の結果を登記に反映させるための不動産登記法の特例が設けられた。

(2)裁判所の選任した管理者による管理を可能とする制度の創設

所有者の探索を行った結果、所有者を特定することができなかった表題部所有者不明土地について、その適正な管理を図るための措置として、裁判所の選任した「特定不能土地等管理者」による管理を可能とする制度が設けられた。

① 特定不能土地等管理者による管理の対象となる財産(=所有者等特定不能土地等)所有者等特定不能土地[2]及びその管理、処分その他の事由により特定不能土地等管理者が得た財産(表題部法§21 本文)。

② 申立権者

所有者等特定不能土地について利害関係を有する利害関係人(表題部法§19 本文)。具体的には個別の事案に応じて所有者等特定不能土地管理命令の制度趣旨に照らして裁判所において判断されることとなる。

【利害関係人に当たり得る者の例】

・公共事業の実施者等不動産の利用・取得を希望する者

・共有地における不明共有者以外の共有者

・土地の所有権移転登記を求める者(ある土地を時効取得したと主張する者等)

③ 発令等要件

所有者等特定不能土地であること、及び管理者選任の必要があること(表題部法§19 本文)。

④ 管理者の権限・義務等

対象財産の管理処分権は特定不能土地等管理者に専属し、特定不能土地等管理者は原告又は被告となる(表題部法§23 本文)。

特定不能土地等管理者は、保存・利用・改良行為を行うほか、裁判所の許可を得て、対象財産の処分(売却、建物取壊し等)をすることも可能である(表題部法§21Ⅱ)。

なお、特定不能土地等管理者が、裁判所の許可を得るべきであるにも関わらず、許可なく行った行為は無効となる。ただし取引の安全を図る観点からこの許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない(表題部法§21Ⅲ)。

特定不能土地等管理者は所有者に対して善管注意義務(表題部法§24Ⅰ)及び誠実公平義務(表題部法§24Ⅱ)を負う。

特定不能土地等管理者は特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等から、裁判所の定める額の費用の前払い及び報酬を受け取ることができる(表題部法§27Ⅰ)。

土地等の売却等により金銭が生じたときは、特定不能土地等管理者は所有者のために供託をすることができる(表題部法§28Ⅰ)。またその旨を公告しなければならない(表題部法§28Ⅱ)。

⑤ 手続の流れ

ア)申立て・証拠提出

・管轄裁判所は、不動産所在地の地方裁判所(表題部法§31)

・申立人は、利害関係人(表題部法§19)

・特定不能土地等管理命令の申立書における記載事項(共有手続規則§16・同9)

・手続進行資料の提出(共有手続規則§16・同11)

・戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(1号様式)の使用が可能

イ)管理命令の発令・管理人の選任

・所有者等特定不能土地であること、申立人が利害関係を有すること、必要があることを要件として発令(表題部法§19)

ウ)特定不能土地等管理者による管理

・保存、利用、改良行為に限る(表題部法§21)

・戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(2号様式)の使用が可能

エ)管理人による所定の範囲を超える行為をする際の許可申立

・処分行為をする場合には権限外行為許可が必要(表題部法§21)

オ)職務の終了(管理命令の取消)

・特定不能土地等管理者に対する報酬等(表題部法§27)

・売却代金は特定不能土地等管理者が供託・公告(表題部法§28)

・管理すべき財産がなくなる等管理の継続が相当でなくなったときは、管理命令を取消し(表題部法§29)

・管理命令の登記を抹消(共有手続規則§13・非訟法§90Ⅶ)

3.所有者不明土地・建物管理制度

調査を尽くしても土地の所有者が特定できず、又は所在が不明な場合には、土地の円滑な利用や管理が困難である。また、所有者不明土地問題を契機に、現行民法の規律が現代の社会経済情勢にそぐわないことが顕在化した。そこで、現行民法の財産管理制度の見直しが行われることとなった。

(1)現行法における所有者不明土地・建物の管理

調査を尽くしても土地・建物の所有者が不明である場合には、土地・建物の管理・処分が困難になる。

公共事業の用地取得や空き家の管理等所有者の所在が不明な土地・建物の管理・処分が必要であるケースでは、現行法上、所有者の属性等に応じて下記の財産管理制度が活用されている。

【不在者財産管理人】(民§25Ⅰ)

従来の住所等を不在にしている自然人の財産の管理をすべき者がいない場合に、家庭裁判所により選任され、不在者の財産の管理を行う。

【相続財産管理人】(民§952Ⅰ)

自然人が死亡して相続人がいることが明らかでない場合に、家庭裁判所により選任され、相続財産の管理・清算を行う。

【清算人】(会社§478Ⅱ)

法人が解散した(みなし解散を含む)が、清算人となる者がない場合に、地方裁判所により選任され、法人の財産の清算を行う。

① 問題の所在

現行の財産管理制度は、対象者の財産全般を管理する「人単位」の仕組みとなっているため、一般的に、財産管理が非効率になりがちであり、また、土地・建物以外の財産も調査して管理しなければならず、管理期間も長期化し、予納金も高額になりがちで申立人の負担が大きいとされている。また、土地・建物が共有であった場合、共有者のうち、複数名が所在不明者であるときは、不明者ごとに管理人を選任する必要があり、更にこれらの負担がかさむ。

そもそも、所有者を全く特定できない土地・建物については、既存の各種の財産管理制度を利用することができないといった問題が指摘されていた。

(2)所有者不明土地建物管理制度に関する改正

① 概要

特定の土地・建物のみに特化して管理を行う所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度を創設(民§264 の2から264 の8)し、土地・建物の効率的かつ適切な管理の実現を図る。

他の財産の調査・管理は不要であり、管理期間が短縮化することが予想される結果、予納金等の負担も軽減されると期待される。

複数の共有者が不明となっているときであっても、不明共有持分の総体について一人の管理人を選任することが可能になる。

また、所有者が特定できないケースについても対応が可能になる。

② 管理人による管理の対象となる財産

管理命令の効力は、所有者不明土地(建物)のほか、土地(建物)にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)、建物の場合はその敷地利用権(借地権等)にも及ぶが、その他の財産には及ばない(民§264 の2Ⅱ、同§264 の8Ⅱ)。

所有者不明土地上に所有者不明建物が存在している場合、土地・建物両方を管理

命令の対象とするためには、土地管理命令と建物管理命令の双方を申し立てる必要がある。この場合、土地・建物の管理人を同一の者とすることも可能だが、土地・建物の所有者が異なる場合には、同一の者を管理人候補者として申し立てるかどうか利益相反の可能性も考慮して慎重に判断する。

→誰が?・・・最終的に裁判所。土地・建物の所有者が同じ場合は同一の者を管理人候補者として申立てし、選任されるのか。土地・建物の所有者が異なる場合、どのような場合に利益相反になるのか。

③ 申立権者

所有者不明土地・建物の管理について利害関係を有する利害関係人(民§264 の2Ⅰ、同§264 の8Ⅰ)。具体的には個別の事案に応じて所有者不明土地管理命令の制度趣旨に照らして裁判所において判断されることとなる[3]

【利害関係人に当たり得る者の例】

・公共事業の実施者等不動産の利用・取得を希望する者

・共有地における不明共有者以外の共有者

・土地の所有権移転登記を求める者(ある土地を時効取得したと主張する者等)[4]

※地方公共団体の長等には所有者不明土地管理命令等の申立権の特例あり(所有者不明土地特措法§42Ⅱ・Ⅴ)。

④ 発令要件等

・調査を尽くしても所有者又はその所在を知ることができないこと

・管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること

⑤ 申立てに関するその他の事項

売却代金額の相当性や、数人の者の共有持分を対象として管理命令が発せられ、誠実公平義務の履行が問題となるケース等、処分の是非の法的判断が必要となるケースでは弁護士・司法書士を、境界の確認等が必要となるケースでは土地家屋調査士を管理人として選任することが考えられる。

所有者不明土地について、家庭裁判所においてすでに不在者財産管理人や相続財産管理人等が選任され管理している場合は、所有者不明土地管理人選任の必要性は無いと考えられる[5]

区分所有建物については、所有者不明建物管理制度は適用されない(区分所有法§6Ⅳ)。

【所有者の調査方法の例】

事案に応じて現地調査が求められる。

・登記名義人が自然人である場合

…登記事項証明書、住民票上の住所、戸籍等を調査。

・登記名義人が法人である場合

…法人登記記録上の主たる事務所の存否のほか、代表者の法人登記記録上・住民票上の住所等を調査。

・所有者が法人でない社団である場合

…代表者及び構成員の住民票上の住所等を調査。

⑥ 管理人の権限・義務等

対象財産の管理処分権は管理人に専属し、所有者不明土地・建物等に関する訴訟(例:不法占拠者に対する明け渡し請求訴訟)においても、管理人が原告又は被告となる(民§264 の4、同§264 の8Ⅴ)。

管理人は、保存・利用・改良行為を行うほか、裁判所の許可を得て、対象財産の処分(売却、建物の取壊し等)をすることも可能(民§264 の3Ⅱ、同§264 の8Ⅴ)。

売却の際には、管理人は、借地関係等の利用状況や売買の相手方を慎重に調査することが重要。なお、所有者不明土地管理人が、裁判所の許可を得るべきであるにも関わらず、許可なく行った行為は土地所有者に対して効力を生じない。ただし取引の安全を図る観点からこの許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない(民§264 の3Ⅱただし書)

不明相続人の遺産共有持分について選任された管理人は、遺産分割をする権限はないが、遺産共有持分に係る権限の範囲内での管理行為や、持分の処分が可能。

管理人は、所有者に対して善管注意義務を負う。また、数人の共有者の共有持分に係る管理人は、その対象となる共有者全員のために誠実公平義務を負う(民§264 の5、同§264 の8Ⅴ)。

土地所有者の負う債務は、所有者不明土地管理人の管理の対象ではない。しかし例えば土地に抵当権等が設定されており、被担保債権に係る債務を弁済することでその抵当権等が抹消され、管理対象不動産の管理・処分が適切に進む等の事情があれば管理対象不動産の処分権限を行使し弁済の原資に充てることも可能と解される。

ただし別途裁判所の許可が必要となる(民§264 の3Ⅱ本文)[6]

管理人は、所有者不明土地等[7](予納金を含む)から、裁判所が定める額の費用の前払・報酬を受ける(民§264 の7Ⅰ・Ⅱ)。費用・報酬は所有者の負担である。

土地・建物の売却等により金銭が生じたときは、管理人は、供託をし、その旨を公告する(非訟法§90Ⅷ、XⅥ)。

戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(2号様式)の使用が可能。

⑦ 共有持分についての所有者不明土地管理人

土地が数人の共有に属する場合であって、その共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分において、共有者の一部が不特定又は所在不明であるときは、その共有持分を対象として、所有者不明土地管理命令を発することができ、当該共有持分について、所有者不明土地管理人が選任される(民§264 の2Ⅰ)。

また数人の共有持分につき不特定又は所在不明である場合、数人の共有持分を対象として一人の管理人が選任されることがある(民§264 の5Ⅱ)。ただし実質的な利益相反関係が生じるおそれがある場合等では、最終的には裁判所の判断となるが別々の管理人をそれぞれの共有持分のある所有者ごとに選任することも考えられる[8]

共有持分にかかる所有者不明土地管理人の権限も通常の所有者不明土地管理人と同等である。すなわち共有持分につき保存・利用・改良行為について裁判所の許可無く行うことができ、裁判所の許可を得て処分(売却)をすることも可能である(民§264 の3Ⅱ)

共有物に対して共有者として行使できる権限も、保存・利用・改良行為のほか、これを超える行為については裁判所の許可及び他の共有者の同意が必要である(民§251Ⅰ)。

⑧ 手続の流れ

ア)申立て・証拠提出

・不動産所在地の地方裁判所が管轄(非訟法§90Ⅰ)

・利害関係人が申立て(民§264 の2Ⅰ)

・管理費用の確保のため基本的に予納金の納付が必要(非訟法§26)

・戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(1号様式)の使用が可能

イ)異議届出期間の公告

・裁判所は1か月以上の異議届出期間等を定めて、当該土地に所有者不明土地管理命令申立てがあったこと、及び所有者不明土地管理命令をすることについて異議がある場合には期間内にその旨の届け出をすることを公告(非訟法§90Ⅱ)

20230425官報

ウ)管理命令の発令・管理人の選任

・一部の共有者が不明であるときは、その持分を対象として発令(民§264 の2Ⅰ)

・管理人としてふさわしい者(弁護士、司法書士、土地家屋調査士等)を事案に応じて選任(民§264 の2Ⅳ)

・裁判所は所有者不明土地管理人に告知しなければならない(非訟法§56Ⅰ)が、所有者不明土地等の所有者に告知する必要はない(非訟法§56Ⅱ)。

・所有者不明土地管理命令の効力は、所有者不明土地管理人に告知することによってその効力が生ずる(非訟法§56Ⅱ)。

・管理命令があった場合、書記官は職権で所有者不明土地管理命令の登記を嘱託しなければならない(非訟法§90Ⅵ)

エ)管理人による管理

・保存、利用、改良行為に限る

・戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(2号様式)の使用が可能

オ)管理人による所定の範囲を超える行為をする際の許可申立

・処分行為をする場合には権限外行為許可が必要

カ)職務の終了(管理命令の取消)

・売却代金は管理人が供託・公告(非訟法§90Ⅷ)

【利害関係人に当たり得る者の例】

・倒壊のおそれが生じている隣地所有者

・管理不全によって受忍限度を超える被害を受けている者

・管理不全土地の所有者の親族やキーパーソン等、現に所有者の保護者的な立場で管理不全土地の管理を事実上行っている者

② 管理人による管理の対象となる財産

管理命令の効力は、管理不全土地(建物)のほか、土地(建物)にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)、建物の場合はその敷地利用権(借地権等)にも及ぶが、その他の財産には及ばない。

管理不全土地上に管理不全建物があるケースで、土地・建物両方を管理命令の対象とするためには、土地管理命令と建物管理命令の双方を申し立てる必要がある。

③ 管理人の権限・義務等

管理人は、保存・利用・改良行為を行うほか、裁判所の許可を得ることにより、これを超える行為をすることも可能。

土地・建物の処分(売却、建物の取壊し等)をするには、その所有者の同意も必要とされる。動産の処分については所有者の同意は不要(民§264 の10Ⅲ、同§264 の14Ⅳ)。

管理処分権は管理人に専属しない。管理不全土地・建物等に関する訴訟においても、所有者自身が原告又は被告となる。

管理費用・報酬は、所有者の負担となる(民§264 の13Ⅱ)。もっとも、諸般の事情で所有者自身がこれらを負担しないときは、管理人は、管理不全土地等(民§264の10Ⅰ・予納金を含む)から、裁判所が定める額の費用の前払・報酬を受けることが可能(民§264 の13Ⅰ、同§264 の14Ⅳ)。

金銭が生じたときは、原則、所有者に直接受領させれば足りる。ただし、諸般の事情で所有者が当該受領をしないときは、管理人において当該金銭を供託することができ、その旨が公告される(非訟法§91Ⅴ・Ⅹ)。

管理人は、管理不全土地等[9](予納金を含む)から、裁判所が定める額の費用の前払・報酬を受ける(管理費用・報酬は、所有者の負担)(民§264 の13Ⅰ・Ⅱ、同§264 の14Ⅳ)。

金銭が生じたときは、管理人は、供託をし、その旨を公告(非訟法§91Ⅴ・Ⅹ)。

【管理人が行う管理行為の例】

・ひび割れ・破損が生じている擁壁の補修工事

・ゴミの撤去、害虫の駆除

管理人を訴訟担当者として原告又は被告とすることはされておらず、管理命令発令後も土地・建物の所有者が原告又は被告となる[10]

④ 手続の流れ

ア)申立て・証拠提出

・不動産所在地の地方裁判所が管轄(非訟法§90Ⅰ)

・利害関係人が申立て(民§264 の9Ⅰ)

・管理費用の確保のため基本的に予納金の納付が必要(非訟法§26)

→予納金計算の基準

・戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(1号様式)の使用が可能

イ)所有者の陳述の聴取

・原則として、所有者の陳述聴取が必要(非訟法§91Ⅲ)

ただし、これにより申立ての目的を達することができない事情があるとき(例:緊急に修繕措置を施す必要があるケース)は不要(非訟法§91Ⅲただし書)。

ウ)管理命令の発令・管理人の選任

・管理命令は、所有者に告知され、所有者等の利害関係人は即時抗告可(非訟法§56Ⅰ、同§91Ⅷ①、同§91Ⅹ)

・共有の土地・建物であっても、共有持分単位ではなく、土地・建物を対象として発令

・管理人として、弁護士、司法書士等のふさわしい者を事案に応じて選任

・所有者不明土地建物管理命令と異なり管理命令発令前の公告はされない(非訟法§91)

・所有者不明土地建物管理命令と異なり管理命令についての登記はされない(非訟法§91)

エ)管理人による管理

・保存、利用、改良行為に限る(民§264 の10Ⅱ)

・戸籍等の資料収集にあたって職務上等請求書(2号様式)の使用が可能

オ)管理人による所定の範囲を超える行為をする際の許可申立

・処分行為をする場合には権限外行為許可が必要(民§264 の10Ⅱ)

カ)職務の終了(管理命令の取消)

・売却代金は必要に応じて管理人が供託・公告(非訟法§91Ⅴ)

・土地建物の管理不全状態が解消し又は所有者が管理人による管理継続に強く反対する等、管理の継続が相当でなくなったときは、管理命令を取消し(非訟法§91Ⅶ)

ケーススタディ

設例1 甲区に所有者が登記されている場合

登記記録例1 甲区あり

~事案の概要~

司法書士は、下記記録例1の登記事項証明書を持参した甲から以下のような相談を受けた。

甲所有地の隣接地が荒れ果てている。ここ数年は特に、台風が来るたびに隣接地上の倒木や土砂が甲所有地に流入して甲は困っている。所有者として登記されている訟務一郎とは全く面識がない。

甲は、取り急ぎ隣接地上の不安定な樹木の伐採等、災害防止の工事を希望している。今は無理だが将来的には、隣接地を時効取得するか、あるいは買取りたいと考えている。甲から相談を受けた司法書士はどのように対応すべきか。

Q1:この登記で確認できる内容はどのようなものか。

A1:甲区2番で訟務一郎が登記簿上所有者として登記されていること。

Q2:司法書士はまず何を調査すべきか。

A2:訟務一郎の所在を確認する。具体的には、甲区2番の訟務一郎の住所から本籍地の記載のある住民票の写しや住所地を本籍地とする戸籍の交付請求をする。交付請求により次のような結果が得られる場合を以下検討する。

(ケース1)訟務一郎の現在戸籍(死亡の記載はない)と住民票の写しが取れて現在の住所も確認することができた場合

→Q3~Q13 へ

(ケース2)訟務一郎の現在戸籍(死亡の記載はない)は取れたが、住民票が職権抹消されている場合

→Q14 へ

(ケース3)訟務一郎が死亡し、相続人がいない場合

→Q32 へ

(ケース4)訟務一郎が現在戸籍・改製原戸籍・除籍でも確認できなかった場合

→Q35 へ

≪設例1 ケース1 戸籍・住民票あり≫

Q3:ケース1の場合、司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A3:管理不全土地管理命令申立(民§264 の9)の利用が考えられる。

所有者を知ることができ、その所在も知ることができた以上、所有者が不明であることにはならない。①所有者に本件土地の管理を請求する、②それでも所有者が適切な管理をしない場合は管理不全土地管理命令申立をし、管理不全土地管理人を選任してもらい、その管理人に本件土地の管理を請求することを検討すべきである。

Q4:管理不全土地管理命令申立の手続きとはどのようなものか。

A4:管理不全土地管理命令の申立要件等は以下のとおりである。

・申立人:利害関係人(民§264 の9Ⅰ)

・管 轄:不動産の所在地を管轄する地方裁判所(非訟法§91Ⅰ)

・要 件(民§264 の9):

①所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがあること

②申立人が利害関係を有すること

③必要があること

・添付書類(共有手続規則§15・同§9から§11)

①登記事項証明書(共有手続規則§15・同§10)

②発令土地の公図又は14 条地図(共有手続規則§15・同§11Ⅰ)

③発令土地の所在地に至るまでの通常の経路及び方法を記載した図面(共有手続規則§15・同§11Ⅰ)

④申立人が保有していれば土地の現況の調査の結果又は評価を記載した文書(共有手続規則§15・同§11Ⅰ)

⑤地積測量図(共有手続規則§15・同§11Ⅰ)

・申立書:(参考書式1)参照

・審 理:

①手続期日の開催

②管理人候補者への照会

③予納金額の提示及び納付時期

④原則として所有者の陳述が聴取される(非訟法§91Ⅲ①)

・事実の調査及び証拠調べ

原則として職権探知主義が取られているため、基本的には裁判所は職権で事実の調査をし、かつ、申立により又は職権で、必要と認める証拠調べをしなければならない(非訟法§49Ⅰ)。

(参考書式1)

管理不全土地管理命令申立書(なお、参考書式と設例は関連しない。以下同じ)

管理不全土地管理命令申立書

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇地方裁判所××支部 御中

申 立 人 X 印

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

対象土地の表示 別紙土地目録記載のとおり

管理不全土地管理命令申立事件

ちょう用印紙額 金1,000円

証 拠 方 法

1 甲第1号証 登記事項証明書(附属書類1を兼ねる)

2 甲第2号証 地図に準ずる図面(附属書類2を兼ねる)

3 甲第3号証 現地までの経路図(附属書類3を兼ねる)

4 甲第4号証 地積測量図

5 甲第5号証 登記事項証明書

6 甲第6号証 住民票の写し

7 甲第7号証 写真撮影報告書

8 甲第8号証 陳述書

附 属 書 類

1 土地登記事項証明書 1通

2 地図に準ずる図面 1通

3 現地までの経路図 1通

第1 申立ての趣旨

別紙土地目録記載の土地について、管理不全土地管理人による管理をすることを命ずる旨の裁判を求める。

第2 申立ての原因

1 申立人は、別紙土地目録記載の土地(以下、「対象土地」という。)に隣接する土地(以下、「隣接土地」という。)の所有者である(甲1から甲5)

2(1) 対象土地の所有者は、Cである(甲1)。

(2) Cは、3年前にH県の有料老人ホームへ転居している(甲6)。

3(1) 対象土地は、荒廃した山林であり、加齢による衰えのため、Cによる管理ができない状況が続いている(甲7及び甲8)。

(2) そのため、毎年台風シーズンになると、対象土地から隣接土地に倒木や土砂の流入が起こり、申立人による対象土地の使用収益に支障を生じている(甲7及び甲8)。

4 なお、Cは、本申立てをすること及び対象土地につき管理不全土地管理人が選任されることについて既に内諾しており、特段、争う姿勢も見受けられない。

5 よって、申立ての趣旨記載のとおりの裁判を求める。

第3 管理の方針等

対象土地の管理処分方針

まずは、管理不全土地管理人において、隣接土地に倒れかねない不安定な樹木の伐採等、災害防止工事を希望する。

その後も、可能な限り、管理不全土地管理人において対象土地の適切な管理を継続することを希望する。

2 権限外許可の申立ての可能性

災害防止工事の規模・費用次第では、権限外許可の申立てを要する可能性がある。

3 申立て後の費用・報酬の取扱い

申立て後の費用及び報酬は、後述4のとおりCが困窮しているため、予納金をもって充てることとするが、災害防止工事に要する費用については、H県が実施する助成金の交付対象事業となる可能性があるので、その場合の当該費用は、当該助成金をもって充てる。なお、仮に、後述第4の者が管理不全土地管理人となるときは、当該者がCの親族であるため、報酬を請求しない予定である。

4 その他管理処分において支障となりうる事情

Cは、高齢かつ困窮している一方、対象土地の売却につき消極である。そのため、Cが管理費用を捻出するために対象土地を任意売却することにつき同意する可能性は、低い。

第4 管理不全土地管理人の候補者

以下の者を希望する。

〒000-0000 A県B市C町E0003番地

電 話 00-0000-0000

FAX 00-0000-0000

理由

Dは、Cの孫の配偶者であり、対象土地の近隣に居住している。そのため、対象土地の管理処分につき利害を強く有している。

また、Dは、対象土地の管理を行うことについて既にCから内諾を得ており、今後の管理処分についても十分意欲がある。

他方、法律専門職等の第三者を対象土地の管理不全土地管理人とした場合、対象土地の実情把握に時間と労力を要するほか、その報酬が問題となるところ、対象土地の価値、市場流動性及び上記第3からして当該報酬の原資が乏しく、対象土地の管理処分に支障を生じるおそれがある。

当事者目録

〒000-0000 A県B市C町D0000番地(送達場所)

申立人 X

電 話 000-0000-0000

FAX 000-0000-0000

〒000-0000 H県I市J町S0000番地

(登記記録上の住所 A県B市C町D0002番地)

対象土地の所有者 C

土地目録

所 在 A県B市C町D

地 番 WWWW番

地 目 山林

地 積 120㎡

Q5:管理不全土地管理人にはどのような人が選任されるのか。

A5:裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない(民§264 の9Ⅲ)。

管理不全土地管理人は、他人の土地を適切に管理することを職務とするものであり、その職務内容に照らしてふさわしい者が選任されることになる。

「どのような者を管理不全土地管理人として選任するかは、個別の事案において管理人が行う具体的な職務内容に応じて裁判所が判断することになるが、例えば、管理不全状態にある土地を適切に管理する職務を行うに当たって法的判断が必要となるケース(第三者との間で土地の工事の請負契約を締結する必要があるものや、管理行為を行うにつき土地の所有者との調製が必要となるもの等)では、弁護士・司法書士であるものを選任することが考えられる。」とされている[11]

Q6:管理不全土地管理人が選任された場合、その効力はいつ発生するか。

A6:裁判所は、管理不全土地管理命令を、申立人並びに管理不全土地管理人及び管理不全土地等の所有者に告知しなければならない(非訟法§56Ⅰ)。そして、管理不全土地管理命令の効力は、管理不全土地管理人又は管理不全土地等の所有者に告知することによってその効力を生ずる(非訟法§56Ⅱ)。

Q7:選任された管理不全土地管理人にはどのような権限が認められるか。

A7:管理不全土地管理人には「管理不全土地等」の「管理処分の権限」が認められる。

(1)「管理処分土地等」とは具体的には①管理不全土地管理命令の対象とされた土地、②管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産、③①・②の管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産をいう(民§264 の10Ⅰ)。

(2)「管理処分の権限」の行使のために、裁判所の許可が不要な行為と裁判所の許可が必要な行為とがある。

一 裁判所の許可が不要な行為とは、①保存行為又は②管理不全土地等の性質を変えない範囲内での利用・改良行為である(民§264 の10Ⅱ)。

二 裁判所の許可が必要な行為とは、上記①②の範囲を超える行為(民§264 の10Ⅱ)である。

Q8:管理不全土地管理人の管理処分の権限の特徴はなにか。

A8:管理処分権は管理不全土地管理人に専属しない。

管理不全土地管理命令は、土地の所有者の所在等が判明していても発せられるものであり、その対象となる土地について、所有者が自ら管理処分権を行使することが考えられるからである[12]

Q9:管理不全土地管理人は誰に対してどのような義務を負うのか。

A9:① 管理不全土地等の所有者(管理不全土地等が共有に属する場合は共有者全員と解されている)に対して善管注意義務(民§264 の11Ⅰ)を負う。

② 管理不全土地等が数人の共有に属する場合は共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平に権限を行使する義務(民§264 の11Ⅱ)を負う。

Q10:所有者が管理不全土地管理命令の利用に明確に反対している場合、司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A10:所有者が管理不全土地管理命令の利用に明確に反対している場合、管理不全土地管理人が選任される可能性が低いため、管理不全土地管理人の選任を図る方法ではなく、所有者を被告とする物権的請求権の行使を勧めた方がよい場合がある。

管理不全土地管理命令に関する裁判の手続においては、所有者の手続保障を図る観点から、管理不全土地管理命令をする場合には土地の所有者の陳述を聴かなければならないこととされている(非訟法§91Ⅲ①)。

そして陳述の聴取の結果、土地所有者が管理不全土地管理命令の利用に明確に反対している場合は、管理不全土地管理人を選任したとしても、実効的な管理をすることが困難であると見込まれ、管理命令を発することが必要かつ相当とは認められず申立てが却下されることになると考えられている。

ただ、「土地の所有者が管理不全土地管理命令に反対していても法律上は発令することが可能であるが、管理不全土地管理人は、土地の所有者による妨害を直ちに排除する権限を有しているものではない。そのため、土地に所有者が居住しており、管理不全土地管理人による管理行為を妨害することが予想される等、実効的な管理を期待することができないときは、管理不全土地管理命令ではなく、従来どおり、訴訟(物権的請求権の行使等)によって対応することが適切であると考えられている。」[13]

Q11:管理不全土地等に関する訴えについて、管理不全土地管理人は原告又は被告になることができるか。

A11:管理不全土地管理人は管理不全土地等に関する訴えの原告又は被告となることはできない。そのため、管理不全土地管理命令が発せられた後であっても、管理不全土地等の所有者は、自ら管理不全土地等に関する訴えを提起することができるし、また、第三者が管理不全土地等に関する訴えを提起しようとするときは、管理不全土地等の所有者が被告となって応訴することになる。

Q12:土地所有者が不当に管理不全土地管理人の管理行為を阻害する場合、管理不全土地管理人はどのように対応すべきか。

A12:管理不全土地管理人は、管理権侵害を理由として、実体法上その行為の停止を求めることができる請求権を有し、その権利の主体として、自ら訴えを提起することができると解されている。ただし、下記の問題が生じる可能性があるのでその旨を司法書士は甲に説明する必要がある。

「管理不全土地管理人がそのような行為の停止を強制執行の方法によって実現するためには、訴訟手続によらざるを得ないし、それに伴う費用や報酬を賄うために管理不全土地管理命令の請求者に対して予納金の追納が求められる等、新たな負担が生じることもあると思われる。そのような負担を伴ってもなお管理不全土地管理人による管理を継続するか、管理不全土地管理命令を取り消して別の方策(物権的請求権の行使等)により是正を図るかについては管理不全土地管理命令の請求者の意向等の諸般の事情を踏まえ、事案に応じて判断されることになると思われる。」[14]

Q13:管理不全土地管理人が裁判所の許可が必要な行為をする為に権限外行為許可を求める場合の留意点はなにか。

A13:① 所有者の同意が必要な場合があること。(参考書式2)参照。

管理不全土地管理命令の対象とされた土地を処分する際には、その所有者の意思を尊重する観点から、その所有者の同意がなければ裁判所は処分について許可をすることができない(民§264 の10Ⅲ)。そのため、所有者の同意が得られない場合、管理不全土地管理人は必要な処分行為ができない可能性がある。

② 非訟事件の手続については原則として職権探知主義が取られている(非訟法§49Ⅰ)が、権限外行為許可を求める場合、申立人はその許可を求める理由を疎明しなければならない(非訟法§91Ⅱ)。

(参考書式2)

権限外行為許可決定申立書(管理不全土地)(参考)

権限外行為許可決定申立書

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇地方裁判所××支部 御中

管理不全土地管理人 D 印

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

対象土地の表示 別紙土地目録記載のとおり

権限外行為許可決定申立事件

ちょう用印紙額 金1,000円

第1 申立ての趣旨

対象土地につき別添工事契約書のとおりの造成工事をすることを許可する旨の裁判を求める。

第2 申立ての原因

1 申立人は、別紙土地目録記載の土地(以下、「対象土地」という。)の管理不全土地管理人である。

2 申立人は、対象土地につき災害防止工事をするため、建設業者である株式会社Vに対象土地の調査をさせたところ、対象土地からの倒木や土砂流出を永続的に防止するためには、別途、別添工事契約書のとおりの造成工事を要することが判明した。

3 なお、別添工事契約書記載の造成工事は、いずれもH県が実施する助成金の交付対象事業となっているので、当該造成工事の費用は、当該助成金をもってこれに充てる予定である。

4 そのため、申立人としては、対象土地につき別添工事契約書のとおりの造成工事をすることが、管理処分上相当と考える。

5 なお、対象土地の所有者は、上記4の工事をすることに同意している。

6 よって、本申立てに及んだ。

添 付 書 類

1 工事契約書

2 助成金交付申請書

3 同意書

(当事者目録及び土地目録は、省略)

≪設例1 ケース2 戸籍あり、住民票職権消除≫

Q14:設例1ケース2の場合、司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A14:司法書士は次の3種類の管理人の選任申立が可能である旨を伝えるべきである。

① 所有者不明土地管理人(民§264 の2)→Q15~Q28 へ

② 管理不全土地管理人(民§264 の9) →Q29 へ

③ 相続財産の清算人(民§952) →Q30、31 へ

このケースの場合、訟務一郎の生存は確認できたが、住所が不明であるので所有者不明土地管理人、不在者財産管理人の選任が考えられる。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人の選任も考えられる。

実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている。司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

ケース2 方法①所有者不明土地管理人選択の場合

Q15:所有者不明土地管理命令申立の手続きとはどのようなものか。

A15:所有者不明土地管理命令申立の要件等は以下のとおりである。

・申立人:利害関係人(民§264 の2Ⅰ)

・管 轄:不動産の所在地を管轄する地方裁判所(非訟法§90Ⅰ)

・要 件(民§264 の2):

① 所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)があること

② 申立人が利害関係を有すること

③ 必要があること

・添付書類:

① 登記事項証明書(共有手続規則§10Ⅰ)

② 発令土地の公図又は14 条地図(共有手続規則§11Ⅰ)

③ 発令土地の所在地に至るまでの通常の経路及び方法を記載した図面(共有手続規則§11Ⅰ)

④ 申立人が保有していれば土地の現況の調査の結果又は評価を記載した文書(共有手続規則§11Ⅰ)

⑤ 地積測量図(共有手続規則§11Ⅰ)

・申立書:(参考書式3)参照

・審 理:

① 手続期日の開催

② 管理人候補者への照会

③ 予納金額の提示及び納付時期

事実の調査と証拠調べについて原則として職権探知主義(非訟法§49Ⅰ)

(参考書式3)

所有者不明土地管理命令申立書(参考)

所有者不明土地管理命令申立書

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇地方裁判所××支部 御中

申 立 人 X 印

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

対象土地の表示 別紙土地目録記載のとおり

所有者不明土地管理命令申立事件

ちょう用印紙額 金1,000円

証 拠 方 法

1 甲第1号証 登記事項証明書(附属書類1を兼ねる)

2 甲第2号証 地図に準ずる図面(附属書類2を兼ねる)

3 甲第3号証 現地までの経路図(附属書類3を兼ねる)

4 甲第4号証 地積測量図

5 甲第5号証 登記事項証明書

6 甲第6号証 戸籍全部事項証明書

7 甲第7号証 除籍謄本

8 甲第8号証 改製原戸籍謄本

9 甲第9号証 戸籍を発行することができない旨の証明書

10 甲第10号証 写真撮影報告書

11 甲第11号証 陳述書

附 属 書 類

1 土地登記事項証明書 1通

2 地図に準ずる図面 1通

3 現地までの経路図 1通

第1 申立ての趣旨

別紙土地目録記載の土地について、所有者不明土地管理人による管理をすることを命ずる旨の裁判を求める。

第2 申立ての原因

1 申立人は、別紙土地目録記載の土地(以下、「対象土地」という。)に隣接する土地(以下、「隣接土地」という。)の所有者である(甲1から甲5)

2(1) 対象土地の所有者は、Aである(甲1)。

(2) Aは、平成28年4月1日に死亡したが、同人に配偶者や子はいない(甲6から甲8)。

(3) Aにつき、戸籍全部事項証明書等によって他の相続人の有無の調査をしたが、出生から昭和〇〇年〇〇月〇〇日転籍までの間の戸籍全部事項証明書等が存在しないので、他の相続人の有無を確定できない(甲6から甲9)。

3(1) 対象土地は、荒廃した山林であり、長年、管理する者がいない状況が続いている(甲10及び甲11)。

(2) そのため、毎年台風シーズンになると、対象土地から隣接土地に倒木や土砂の流入が起こり、申立人による対象土地の使用収益に支障を生じている(甲10及び甲11)。

4 よって、申立ての趣旨記載のとおりの裁判を求める。

第3 管理の方針等

1 対象土地の管理処分方針

まずは、所有者不明土地管理人において、隣接土地に倒れかねない不安定な樹木の伐採等、災害防止工事を希望する。

その後、申立人において準備が出来次第、対象土地の時効取得又は買取りの申出をする予定である。

2 権限外許可の申立ての可能性

災害防止工事の規模・費用次第では、権限外許可の申立てを要する可能性がある。また、上記1の対象土地の時効取得又は買取りについても、同様である。

3 申立て後の費用・報酬の取扱い

当初は、予納金をもって充てることとし、上記1の対象土地の買取りとなったときには、当該買取りに係る売買代金をもって充てる。

4 その他管理処分において支障となりうる事情

Aは、過去に債務整理をし、その後も知人から借金をして訴訟を提起されている旨のうわさがある。

また、Aは、生前、親族関係にないB(住居所不明)と同居していたので、所有者不明土地管理人による管理開始後、Bが帰来し、何らかの権利主張がされる可能性がある。

さらに、Aは、大昔に国内外の不動産を購入していたといううわさがあり、それらの管理処分費用をめぐって、何らかの権利主張がされる可能性がある。

第4 所有者不明土地管理人の候補者

対象土地近隣の司法書士を希望する。

当事者目録

〒000-0000 A県B市C町D0000番地(送達場所)

申立人 X

電 話 00-0000-0000

FAX 00-0000-0000

(最後の住所・登記記録上の住所)

〒000-0000 A県B市C町D0001番地

対象土地の所有者 A

土地目録

所 在 A県B市C町D

地 番 ZZZZ番

地 目 山林

地 積 100㎡

Q16:甲は購入希望者として所有者不明土地管理命令申立ができるか。

A16:その購入計画に具体性があり土地をより適切に管理しようとするケース等では利害関係人と認められ得ると解されている[15]。その結果、設例1のように将来的に買い受ける可能性があるという程度では利害関係があるとはいえない。

Q17:甲は時効取得者として所有者不明土地管理命令申立ができるか。

A17:できる。

所有者不明土地管理人は登記義務者たる土地所有者の管理処分権の行使の一環として、土地の所有権の移転の登記を申請する権限も有すると解されている。そのため、対象となる土地を時効取得したと主張するものは、その所有権の移転の登記を求めるため利害関係人として所有者不明土地管理人の選任の請求ができると解されている[16]

Q18:甲以外の者が所有者不明土地管理命令申立をすることはできるか。

A18:国の行政機関の長又は地方公共団体の長も申立権者になることをアドバイスすべきである。

国の行政機関の長又は地方公共団体の長はその適切な管理のため特に必要があると認めるときは所有者不明土地管理命令の請求をすることができる(所有者不明土地特措法§42Ⅱ)。

Q19:所有者不明土地管理人選任までに特別な手続がなされるか。

A19:裁判所は次の内容の公告をし、その期間が経過した後でなければ所有者不明土地管理命令をすることができない(非訟法90Ⅱ前段)。その期間は1か月を下ってはならず(同項後段)、公告に際し、裁判所は具体的な期間を定めることになる。

① 所有者不明土地管理命令の申立てが、その対象となるべき土地又は共有持分についてあったこと。

② 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内にその旨の届出をすべきこと。

③ ②の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

この公告は所有者不明土地の所有者の所在を裁判所が探索するとともに、所有者不明土地の所有者に対する手続保障を図るためであると解されている[17]

Q20:所有者不明土地管理人にはどのような人が選任されるのか。

A20:裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない(民§264 の2Ⅳ)。

所有者不明土地管理人は、他人の土地を適切に管理することを職務とするものであり、その職務内容に照らしてふさわしい者が選任されることになる。

「どのような者を所有者不明土地管理人として選任するかは、個別の事案において管理人が行う具体的な職務内容を勘案して裁判所が判断することになるが、例えば、処分の是非等について専門的な判断が必要となるケース(売却代金額の相当性の判断を要するものや、数人の者の共有持分を対象として管理命令が発せられ、誠実公平義務の履行を確保すべきもの等)では、弁護士・司法書士であるものを選任することが考えられる。また、境界の確認等が必要となるケースでは土地家屋調査士である者を選任することが考えられる。」とされている[18]

なお、衆議院法務委員会及び参議院法務委員会における附帯決議では、政府が本法の施行に当たり格段の配慮をすべき事項として、「所有者不明土地等の新たな財産管理制度の諸施策を実施するに当たっては、司法書士や土地家屋調査士等の専門職の積極的な活用を図る」ことが挙げられている(第204 回国会閣法第55号)。

Q21:所有者不明土地管理人が選任された場合その効力はいつ発生するか。

A21:裁判所は、所有者不明土地管理命令を、申立人並びに所有者不明土地管理人に告知しなければならない(非訟法§56Ⅰ)が、所有者不明土地等の所有者に告知する必要はない(非訟法§90ⅩⅡ)。そして、所有者不明土地管理命令の効力は、所有者不明土地管理人に告知することによってその効力を生ずる(非訟法§56Ⅱ)。

Q22:所有者不明土地管理人が選任された場合どのように公示されるのか。

A22:所有者不明土地管理命令があった場合、その管理処分権が所有者不明土地管理人に専属する(民§264 の3Ⅰ)等の法的効果を生ずる(Q24 参照)ことから、その旨を公示するために、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、その対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令の登記の嘱託をしなければならない(非訟法§90Ⅵ・共有手続規則§13)。

不動産登記簿における登記の記録のあり方等、その詳細については、今後通達等において明らかにされる予定である。

Q23:選任された所有者不明土地管理人にはどのような権限が認められるか。

A23:所有者不明土地管理人には「所有者不明土地等」の「管理処分の権限」が認められる。

(1)「所有者不明土地等」とは具体的には①所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分、②所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産、③①②の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(売却代金等)をいう(民§264 の3Ⅰ)。

(2)「管理処分の権限」の行使のために、裁判所の許可が不要な行為と裁判所の許可が必要な行為とがある。裁判所に権限外行為許可を求める場合の申立書につき、(参考書式4)参照。

一 裁判所の許可が不要な行為とは、①保存行為又は②管理不全土地等の性質

を変えない範囲内での利用・改良行為である(民§264 の3Ⅱ)。

二 裁判所の許可が必要な行為とは、上記①②の範囲を超える行為である(民§264 の3Ⅱ)。

(参考書式4)

権限外行為許可決定申立書(所有者不明土地)(参考)

権限外行為許可決定申立書

令和〇〇年〇〇月〇〇日

〇〇地方裁判所××支部 御中

所有者不明土地管理人 Y 印

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

対象土地の表示 別紙土地目録記載のとおり

権限外行為許可決定申立事件

ちょう用印紙額 金1,000円

第1 申立ての趣旨

株式会社Xに対して、別紙土地目録記載の不動産を別添売買契約書のとおり売却することを許可する旨の裁判を求める。

第2 申立ての原因

1(1) 申立人は、別紙土地目録記載の土地(以下、「対象土地」という。)の所有者不明土地管理人である。

(2) 株式会社Xは、本件所有者不明土地管理命令の申立人Xが代表取締役を務める株式会社である。

2 申立人は、対象土地を管理しているが、対象土地以外に他に所有者名義の財産が一切ないため、対象土地の公租公課等の支払いの目途がたたない状況である。また、対象土地は、荒廃した山林であるため市場流動性に乏しく、賃貸による収益も期待できない。さらに、相続財産管理人又は相続財産清算人への業務引継ぎも、それらの選任申立てに係る予納金の原資がないので、困難である。

3 申立人は、上記の工事終了後、Xから対象土地の取得時効の援用の意思表示があったので、Xとの間で協議を続けてきた。その結果、別添売買契約書のとおり、Xが代表取締役を務める株式会社Xに対象土地を売却する方向で、話がまとまった。

4 そのため、申立人としては、対象土地を別添売買契約書のとおり売却して、公租公課等の負担から免れることが、管理処分上相当と考える。

5 よって、本申立てに及んだ。

添 付 書 類

1 売買契約書

(当事者目録及び土地目録は、省略)

Q24:所有者不明土地管理人の管理処分の権限の特徴はなにか。

A24:管理処分権は所有者不明土地管理人に専属する(民§264 の3Ⅰ)。なぜなら所有者不明土地管理人による職務の円滑な遂行を可能とする観点からは管理処分権を管理人に集中することが望ましく、また、管理不全土地管理人の場合と異なり、所在等が不明な所有者が土地等について自ら管理処分権を行使することが実際には考えがたいからである[19]

Q25:所有者不明土地管理人は誰に対してどのような義務を負うのか。

A25:

① 所有者不明土地等の所有者(共有持分を対象として発令された場合には共有持分を有する者)に対して善管注意義務(民§264 の5Ⅰ)を負う。

② 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平に権限を行使する義務(民264 の5Ⅱ)を負う。

Q26:所有者不明土地等に関する訴えについて、所有者不明土地管理人は原告又は被告になることができるか。

A26:所有者不明土地管理人は所有者不明土地等に関する訴えの原告又は被告となることができる(民§264 の4)。

ただし、所有者不明土地管理人が行おうとする訴訟行為の内容によっては、裁判所の許可を得なければならない場合(民§264 の3Ⅱ)があるので注意を要する。例えば訴えの提起や、訴訟上の和解をする場合には基本的には裁判所の許可が必要となると解されている[20]

Q27:甲は所有者不明土地管理人にどのような請求をするか。

A27:甲は所有者不明土地管理人に対して所有権に基づき妨害排除請求をすることになる。

Q28:既に甲以外の乙が当該所有者不明土地の所有者に対して妨害排除請求訴訟を提起していた場合、所有者不明土地管理人はどのように対応すべきか。

A28:所有者不明土地管理命令が発せられたときは、乙の提起した訴訟手続は中断するので(民訴法§125Ⅰ)、所有者不明土地管理人は受継の申立て(民訴法§126)をすることにより訴訟の進行が再開することになる。

ケース2 方法②管理不全土地管理人選択の場合

Q3からQ13 の他に次の点が問題となる

Q29:所有者不明土地管理人が既に選任されている場合に、管理不全土地管理命令申立がなされた場合の関係はどうなるか。

逆に、管理不全土地管理人が既に選任されている場合に、所有者不明土地管理申立がなされた場合の関係はどうなるか。

A29:

① 所有者不明土地管理人が既に選任されている場合

別個に管理不全土地管理人を選任する必要性は基本的にはないと考えられる。

そのため、このような場合に管理不全土地管理命令の請求がされたときは通常は却下されるものと解されている。

② 管理不全土地管理人が既に選任されている場合

例えばその土地を処分する必要があるケース等では所有者不明土地管理人の選任が必要となることもあり得る。そのため、所有者不明土地管理命令の請求がされたときは当該請求が認められ、管理不全土地管理命令を取り消すことになると解されている[21]

ケース2 方法③不在者財産管理人選択の場合

Q30:不在者財産管理人制度は令和5年4月1日施行民法によりどのように改正されたか。

A30:改正の内容は以下のとおりである。

① 供託制度の新設(家事法§146 の2Ⅰ)

不在者財産管理人は不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のためにその金銭を不在者財産管理人を選任した裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

② 供託の事実の公告(家事法§146 の2Ⅱ)

不在者財産管理人は金銭を①の供託をした場合にはその旨を公告しなければならない。

③ 家庭裁判所が選任した管理人により管理すべき財産の全部が供託され、管理すべき財産がなくなったときは、家庭裁判所は、不在者、管理人、利害関係人の申立により、管理人の選任その他の不在者の管理に関する処分の取消しの審判をしなければならない。(家事法§147)。

Q31:不在者財産管理人が既に選任されている場合に、所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令の申立てがなされた場合の関係はどうなるか。逆に、所有者不明土地管理人・管理不全土地管理人が既に選任されている場合に、不在者財産管理人申立てがなされた場合の関係はどうなるか。

A31:

① 不在者財産管理人が既に選任されている場合

その土地を含む当該所有者の財産全般の管理がその管理人に委ねられることになるから、それとは別に、所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令を発する必要は基本的にはないものと考えられる。そのため、当該土地について所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令の請求がされたときは通常は却下されることになると解されている[22]

② 所有者不明土地管理人又は管理不全土地管理人が既に選任されている場合その土地を含む当該所有者の財産全般を管理するために不在者財産管理人の選任が必要になることもある。そのような場合に当該土地の所有者について不在者財産管理人の選任の申立てがされたときは不在者財産管理人の選任が認められることもあると解されている。そのため、不在者財産管理人が選任されたときは所有者不明土地管理人又は管理不全土地管理人による管理を継続する必要はなくなるため、基本的には所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令を取り消すことになると解されている。

③ 所有者不明土地管理人と不在者財産管理人とがいずれも選任されている場合所有者不明土地管理命令に係る土地の管理処分権は所有者不明土地管理人に専属する(民§264 の3Ⅰ)から、不在者財産管理人がその土地について管理処分権を行使することはできない。そのため、不在者財産管理人が当該土地について権限を行使するためには、所有者不明土地管理命令の取消しを求める必要があると解されている[23]

≪設例1 ケース3 名義人死亡で相続人がいない≫

Q32:ケース3の場合、司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A32:司法書士は次の4種類の管理人の選任申立が可能である旨を伝えるべきである。

① 相続財産清算人(民§952) →Q33 へ

② 所有者不明土地管理人(民§264 の2)→Q15~28 へ

③ 管理不全土地管理人(民§264 の9) →Q3~13 へ

④ 相続財産の管理人(民§897 の2)

このケースの場合、訟務一郎の死亡は確認できたが、相続人のあることが明らかでなかった。そのため、相続財産清算人、所有者不明土地管理人の選任が考えられる。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人又は相続財産の管理人の選任も考えられる。実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている[24]。司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

ケース3 方法①相続財産清算人選択の場合

Q33:相続財産の清算人は令和5年4月1日施行民法によりどのように改正されたか。

A33:改正の内容は以下のとおりである。

① 相続財産の管理人とされていた者が相続財産の清算人とされた(民§952Ⅰ)。

② 公告の方法が変更され公告期間は最短で6ヶ月間となった。

ⅰ 選任並びに相続人探索の公告

家庭裁判所は管理人選任後遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。その期間は6ヶ月を下ることができない(民§952Ⅱ)。

ⅱ 相続債権者及び受遺者に対する公告

相続財産の清算人は上記の公告期間内で2ヶ月以上の期間を定めて全ての相続債権者及び受遺者に対してその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない(民§957)。

ケース3 方法④相続財産の管理人選択の場合

Q33-2:相続財産の管理人は令和5年4月1日施行民法によりどのように改正されたか。

A33-2:改正の内容は以下のとおりである。

(1)改正趣旨

これまで相続財産が相続人によって管理されないケースに対応するために、相続の段階ごとに、家庭裁判所が相続財産管理人を選任する等の相続財産の保存に必要な処分をすることができる仕組みが設けられていた(改正前民§918Ⅱ・同§926Ⅱ・同§940Ⅱ)。しかし、①共同相続人が相続の単純承認をしたが遺産分割が未了である場合において相続財産の管理を行うものがいない場合や、②相続人のあることが明らかでない場合において相続財産清算人の選任もされておらず相続財産の管理を行う者がいない場合に相続財産管理人が選任できる旨の規定がなかった。改正法は、①②の場合を含め相続が開始すれば相続の段階にかかわらず、いつでも家庭裁判所は相続財産管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分をすることができるとの包括的な規定を設けた(民897 の2Ⅰ)。

(2)選任申立の方法

申立人 利害関係人又は検察官(民§897 の2Ⅰ)

管 轄 相続が開始した地を管轄する家庭裁判所(家事法§190 の2Ⅰ)

要 件(民§897 の2Ⅰ)

① 相続財産の保存のためであること

② 利害関係があること

③ 必要があること

④ 次の場合でないこと(民§897 の2Ⅰただし書)

相続財産が特定の相続人に確定的な帰属をした場合や、相続財産清算人が選任されている場合には、相続財産はそれらの者において管理されるべきであるので相続財産管理人による管理の対象とすることは相当でないことから

ⅰ 相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき

ⅱ 相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき

ⅲ 民法952 条1項の規定により相続財産清算人が選任されているとき

(3)相続財産管理人の権限と売却

相続財産管理人が相続財産の保存のために家庭裁判所の許可なく行うことができる行為は、保存行為や目的物等の性質を変えない範囲内における利用・改良行為に限られ、これらを超える行為をするときは、家庭裁判所の許可を得る必要がある(民§897 の2Ⅱ・民§28)。しかし、同時に相続財産管理人は相続財産の保存のために選任されるものであるから相続人に代わって相続財産の一部を売却する等の相続財産の処分行為をすることは基本的に想定されないと解されている。そのため、例えば相続財産を保存するための費用を捻出するために相続財産の一部を売却することが必要かつ相当であるという事情がないのに相続財産の一部を売却する等の処分行為をすることは職務上の義務に反し、裁判所も許可しないと考えられている。[25]

(4)甲の請求

甲が相続財産管理人に対してどのような請求をするかについてはA27 と同様と解される。

Q34:既に相続財産清算人が選任されている場合に所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令の申立てがなされた場合の関係はどうなるか。

逆に既に管理不全土地管理人・所有者不明土地管理人が選任されている場合に、相続財産清算人選任申立てがなされた場合の関係はどうなるか。

A34:

① 相続財産清算人が既に選任されている場合

その土地を含む当該所有者の財産全般の清算が相続財産清算人に委ねられることになるから、それとは別に、所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令を発する必要は基本的にはないものと考えられる。そのため、当該土地について所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令の請求がされたときは通常は却下されることになると解されている[26]

② 所有者不明土地管理人又は管理不全土地管理人が既に選任されている場合

その土地を含む当該所有者の財産全般を清算するために相続財産清算人の選任が必要になることもある。そのような場合に当該土地の所有者について相続財産清算人の選任の申立てがされたときは相続財産清算人の選任が認められることもあると解されている。そのため、相続財産清算人が選任されたときは所有者不明土地管理人又は管理不全土地管理人による管理を継続する必要はなくなるため、基本的には所有者不明土地管理命令又は管理不全土地管理命令を取り消すことになると解されている[27]

≪設例1 ケース4 生死不明≫

Q35:ケース4の場合、司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A35:司法書士は次の3種類の管理人の選任申立が可能である旨を伝えるべきである。

① 所有者不明土地管理人(民§264 の2)

② 管理不全土地管理人(民§264 の9)

③ 不在者財産管理人(民§952)

このケースの場合、訟務一郎の生存も死亡も確認できず、住所も不明であるので所有者不明土地管理人、不在者財産管理人の選任が考えられる。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人の選任も考えられる。実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている。

司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

ケーススタディ

設例2 甲が記録例2-1の登記事項証明書を持参した場合

~事案の概要~

司法書士は下記記録例2-1の登記事項証明書を持参した甲から以下のような相談を受けた。甲所有地の隣接地が荒れ果てており、ここ数年は特に、台風が来るたびに隣接地上の倒木や土砂が自己所有地に流入して困っている。隣接地の登記事項証明書を取り寄せたところ表題部に法務太郎の名があるのみである。法務太郎とは全く面識がない。甲は、取り急ぎ隣接地上の不安定な樹木の伐採等、災害防止の工事を希望している。今は無理だが将来的には、隣接地を時効取得するか、あるいは買取りたいと考えている。甲から相談を受けた司法書士はどのように対応すべきか。

Q36:この登記で確認できる内容はどのようなものか。

A36:

① 表題部しかできていない。

② 表題部所有者欄に氏名(法務太郎)のみしか記載されていない。

③ 変則登記の一つとして「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」(表題部法)の適用が考えられること。

Q37:司法書士はまず何を調査すべきか。

A37:法務太郎の所在確認をする。

具体的には、閉鎖登記簿、旧土地台帳を取り寄せて法務太郎を特定する住所や相続に関する情報が記載されていないかを調査する。また、隣接地の所在と地番を本籍地又は住所地とする法務太郎の戸籍や戸籍の附票の交付請求をする。これらの情報により戸籍の取り寄せができる場合は、Q2と同じケース分けで検討することになる。

しかし、これらの調査によっても法務太郎の生存も死亡も確認できず、住所も不明である場合は、所有者不明土地管理人、不在者財産管理人の選任が考えられ

る。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人の選任も考えられる。

実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている。司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

① 所有者不明土地管理人(民§264 の2)→Q41 へ

② 管理不全土地管理人(民§264 の9)

③ 不在者財産管理人(民§952) →Q42 へ

Q38:表題部法の適用の余地はあるか。そもそも表題部法の適用を受ける表題部所有者不明土地とはなにか。

A38:表題部所有者不明土地とは不動産登記簿の表題部所有者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が正常に登記されていない土地をいう(表題部法§2)。

そして、不動産登記簿の表題部所有者欄の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が正常に記録されていない登記を「変則登記」という。変則登記には、例えば本設例2のように表題部の所有者欄に氏名のみ又は住所のみしか記載されていないもの、A外○名というような記載しかないもの(記名共有地)、大字○というような記載しかないもの(字持地)等がありその処理に苦慮していた。

表題部法は、登記官による表題部所有者不明土地の所有者等の探索及び探索の結果に基づく表題部所有者の登記並びに所有者等特定不能土地及び特定社団等帰属土地の管理に関する措置を講ずることによって、表題部所有者不明土地に係る権利関係の明確化及びその適正な利用を促進することを目的として令和元年5月24 日制定された。同法中第1章と第2章は同年11 月22 日に施行され、同法中第3章から第5章までは令和2年11月2日に施行された。非訟事件の手続に関し必要な事項は令和4年5月13 日共有に関する非訟事件及び土地等の管理に関する非訟事件に関する手続規則として制定され、令和5年4月1日施行された。

Q39:表題部法は、表題部所有者不明土地の適正化を図るためどのような措置を講じているか。

A39:A38 で挙げたように、表題部法は、①登記官による表題部所有者不明土地の所有者等の探索及び②探索の結果に基づく③表題部所有者の登記並びに④所有者等特定不能土地及び特定社団等帰属土地について管理命令申立による管理者の選任、⑤管理者による管理処分を講ずることによって、表題部所有者不明土地に係る権利関係の明確化及びその適正な利用を促進することを目的として制定された。

そのため、具体的な措置は下記①~⑤である。

① 登記官が所有者の探索を行う(表題部法§3)。

なお、所有者の探索のために必要な調査をさせるため法務局及び地方法務局に所有者等探索委員を置く(表題部法§9)。

② 所有者の探索の結果、下記ⅰⅱⅲⅳのいずれに該当するのかの判断をする(表題部法§14)。

ⅰ 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者があるとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者があるとき)

ⅱ 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がないとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては全ての共有持分について表題部所有者として登記すべきものがないとき)

ⅲ 当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合において、表題部所有者として登記すべき者がない共有持分があるとき

ⅳ 上記ⅱⅲに該当する場合は次のイロのいずれであるか

イ 当該表題部所有者不明土地(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあってはその共有持分)の所有者等を特定することができなかったこと(表題部法§14Ⅰ④イ)

※この土地のことを所有者等特定不能土地という(表題部法§2Ⅲ)。

ロ 当該表題部所有者不明土地(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあってはその共有持分)の所有者等を特定することができた場合であって、当該表題部所有者不明土地が法人でない社団等に属するとき又は法人でない社団等に属していたときにおいて、表題部所有者として登記すべき者を特定することができないこと(表題部法§14Ⅰ④ロ)

※この土地のことを特定社団等帰属土地という(表題部法§2Ⅳ)。

③ 登記官は所有者の探索の結果を登記する(表題部法§15)。

登記記録例につき「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和2年10 月30 日民二第796 号通達)。

登記官は登記の前と後に公告しなければならない(表題部法§15Ⅱ・同§16)。

④ 利害関係人からの地方裁判所に特定不能土地管理命令又は特定社団等帰属土地管理命令申立(表題部法§19・同§20・同§30ⅠⅡ)。

地方裁判所は、必要があると認めるときは、特定不能土地管理者による管理を命ずる処分をすることができる。その後、裁判所書記官による管理者の嘱託登記がなされる。

※特定不能土地等管理命令による管理者を特定不能土地等管理者という。

※特定社団等帰属土地等管理命令による管理者を特定社団等帰属土地等管理者という。

登記記録例につき「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律等の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和2年10 月30 日民二第796号通達)。

⑤ 特定不能土地等管理者、特定社団等帰属土地等管理者による管理処分が行われる(表題部法§21・同§30Ⅱ)。

Q40:記録例2-1のように、所有者探索の結果が登記されていない場合でも、甲は、特定不能土地等管理命令又は特定社団等帰属土地等管理命令の申立はできるか。

A40:できない(表題部法§19・30)。

裁判所は所有者等特定不能土地、特定社団等帰属土地等について利害関係人からの申立てにより管理者を選任することになっている。記録例2-1の場合はまだ所有者探索の結果が登記されていないので本件土地はまだ所有者等特定不能土地又は特定社団等帰属土地等と認定されていないからである。

設例2 ①所有者不明土地管理人選択の場合

Q41:所有者不明土地管理人が権限行為許可を得て甲に隣接地を売却した場合、甲はどのように登記申請すればよいか。

A41:申請の方法については現状では明らかにされていない。

不動産登記簿における登記の記録のあり方等、その詳細については、今後通達等において明らかにされる予定である。

設例2 ③不在者財産管理人選択の場合

Q42:不在者財産管理人が権限外行為許可を得て甲に隣接地を売却した場合、甲はどのように登記申請すればよいか。

A42:平成30 年7月24 日法務省民二第279 号法務省民事局民事第二課長回答の解説(登記研究850 号111 頁~119 頁)。

表題部所有者に不在者財産管理人が選任され、当該不在者財産管理人と買主との間で売買契約が成立した場合において、当該買主から当該表題部所有者を登記名義人とする所有権の保存の登記の申請情報(所有権の登記名義人となる者の住所の記載はない。)と所有権の移転の登記の申請情報とを、その登記の前後を明らかにして同時に提供するとともに、その代位原因を証する情報(不登令§7Ⅰ③)の一部として、不在者財産管理人の選任の審判書(本件土地の表題部所有者の氏名と不在者の氏名とが同一であるものに限る。)及び当該不在者財産管理人の権限外行為許可の審判書(物件目録に本件土地が記載されているものに限る。)が提供されたときは、所有権の保存の登記の申請情報に所有権の登記名義人の住所を証する情報の提供がなくとも、便宜、当該申請に基づく登記をすることができる(記録例2-2参照)。

ケーススタディ

設例3 甲が記録例2-3の登記事項証明書を持参した場合

記録例2-3 表題部に「表題部所有者として登記すべき者がない」の記載

Q43:司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A43:記録例2-3には表題部に表題部所有者として登記すべき者がない〔令和元年法律第15 号第14Ⅰ④イ〕の記載がある。これは、表題部所有者不明土地につき登記官により所有者の探索がなされた結果、当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がなく、当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができなかったことを意味する。

表題部法の適用があるため特定不能土地等管理者の選任が考えられる。所有者を特定することができなかったのであるから所有者不明土地管理人、不在者財産管理人の選任も考えられる。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人の選任も考えられる。実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている。司法書士は次の4種類の管理人の選任申立が可能である旨を伝えるべきである。司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

① 特定不能土地等管理者(表題部法§19・同§20)→Q44~58 へ

② 所有者不明土地管理人(民§264 の2)

③ 不在者財産管理人(民§25)

④ 管理不全土地管理人(民§264 の9)

~事案の概要~

設例2において甲が持参したのが下記記録例2-3であった場合。

Q43:司法書士は甲にどのようなアドバイスをすべきか。

A43:記録例2-3には表題部に表題部所有者として登記すべき者がない〔令和元年法律第15 号第14Ⅰ④イ〕の記載がある。これは、表題部所有者不明土地につき登記官により所有者の探索がなされた結果、当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がなく、当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができなかったことを意味する。

表題部法の適用があるため特定不能土地等管理者の選任が考えられる。所有者を特定することができなかったのであるから所有者不明土地管理人、不在者財産管理人の選任も考えられる。更にこの土地の管理が不適当であることによって甲の権利等が侵害されているので管理不全土地管理人の選任も考えられる。実際にどの財産管理人を利用するかは、手続の目的、対象となる財産の状況や、管理人の権限等の違いを踏まえ、個別具体的なケースに応じて、適切な制度を申立人自身が適宜選択することが可能とされている。司法書士は次の4種類の管理人の選任申立が可能である旨を伝えるべきである。司法書士にはこの制度選択に際してのアドバイスが期待されていることになる(14 頁「主な財産管理人制度一覧表」参照)。

① 特定不能土地等管理者(表題部法§19・同§20)→Q44~58 へ

② 所有者不明土地管理人(民§264 の2)

③ 不在者財産管理人(民§25)

④ 管理不全土地管理人(民§264 の9)

~事案の概要~

設例2において甲が持参したのが下記記録例2-3であった場合。

設例3 方法①特定不能土地等管理者選択の場合

Q44:特定不能土地等管理命令申立の手続とはどのようなものか。

A44:特定不能土地等管理命令申立の要件等は以下のとおりである。

・申立人:利害関係人(表題部法§19)

・管 轄:不動産の所在地を管轄する地方裁判所(表題部法§31)

・要 件(表題部法§19):

① 所有者等特定不能土地であること

② 申立人が利害関係を有すること

③ 必要があること

・添付書類:

① 登記事項証明書(共有手続規則§16・同§10Ⅰ)

② 発令土地の公図又は14 条地図(共有手続規則§16・同§11Ⅰ①)

③ 発令土地の所在地に至るまでの通常の経路及び方法を記載した図面(共有手続規則§16・同§11Ⅰ②)

④ 申立人が保有していれば土地の現況の調査の結果又は評価を記載した文書(共有手続規則§11Ⅰ③)

・審 理:

① 手続期日の開催

② 管理者候補者への照会

③ 予納金額の提示及び納付時期

事実の調査と証拠調べについて原則として職権探知主義(非訟法§49Ⅰ)

Q45:甲は購入希望者として特定不能土地等管理命令申立ができるか。

A45:特定不能土地等管理命令の要件である「利害関係」を所有者不明土地管理命令の要件である「利害関係」と別異に解する必要はないと思われる。そのため、その購入計画に具体性があり土地の利用に利害があるケース等では利害関係人と認められ得ると解される。その結果、設例3のように将来的に買い受ける可能性があるという程度では利害関係があるとはいえないと解される。

Q46:甲は時効取得者として特定不能土地等管理命令申立ができるか。

A46:できる。

特定不能土地等管理命令の要件である「利害関係」を所有者不明土地管理命令

の要件である「利害関係」と別異に解する必要はないと思われる。とすると、特定不能土地等管理者は登記義務者たる土地所有者の管理処分権の行使の一環として、土地の所有権の移転の登記を申請する権限も有すると解されている。そのため、対象となる土地を時効取得したと主張するものは、その所有権の移転の登記を求めるため利害関係人として特定不能土地等管理者の選任の請求ができると解される。

Q47:特定不能土地等管理者にはどのような人が選任されるのか。

A47:裁判所は、特定不能土地等管理命令をする場合には、当該特定不能土地等管理命令において、特定不能土地等管理者を選任しなければならない(表題部法§20)。

特定不能土地等管理者は、他人の土地を適切に管理することを職務とするものであり、その職務内容に照らしてふさわしい者が選任されることになる。とすれば、特定不能土地等管理者を選任する場合を所有者不明土地管理人を選任する場合と別異に解する必要はないと思われる。

その結果どのような者を特定不能土地等管理者として選任するかは、個別の事案において管理人が行う具体的な職務内容に応じて裁判所が判断することになるが、例えば、処分の是非等について専門的な判断が必要となるケース(売却代金額の相当性の判断を要するもの等)では弁護士・司法書士であるものを選任することが考えられる。また、境界の確認等が必要となるケースでは土地家屋調査士である者を選任することが考えられる。

Q48:特定不能土地等管理者が選任された場合、その効力は何時発生するか。

A48:裁判所は、特定不能土地等管理命令を、申立人並びに特定不能土地等管理者に告知しなければならない(非訟法§56Ⅰ)。そして、特定不能土地等管理命令の効力は、特定不能土地等管理者に告知することによってその効力を生ずる(非訟法§56Ⅱ)。

Q49:特定不能土地等管理者が選任された場合どのように公示されるのか。

A49:特定不能土地等管理命令があった場合、その管理処分権が特定不能土地等管理者に専属する(表題部法§21Ⅰ)等の法的効果を生ずる(Q51 参照)ことから、その旨を公示するために、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、その対象とされた土地又は共有持分について、特定不能土地等管理命令の登記の嘱託をしなければならない(表題部法§20Ⅲ)。

不動産登記簿における登記の記録については、記録例2-4参照。

Q50:選任された特定不能土地等管理者にはどのような権限が認められるか。

A50:特定不能土地等管理者には「所有者等特定不能土地等」の「管理処分の権限」が認められる。

(1)「所有者等特定不能土地等」とは具体的には①特定不能土地等管理命令の対象とされた土地、②①の管理、処分その他の事由により特定不能土地等管理者が得た財産(売却代金等)をいう(表題部法§21Ⅰ)。

(2)「管理処分の権限」の行使のために、裁判所の許可が不要な行為と裁判所の許可が必要な行為とがある。

一 裁判所の許可が不要な行為とは、①保存行為又は②管理不全土地等の性質を変えない範囲内での利用・改良行為である(表題部法§21Ⅱ)。

二 裁判所の許可が必要な行為とは、上記①②の範囲を超える行為(表題部法§21Ⅱ)である。

Q51:特定不能土地等管理者の管理処分の権限の特徴はなにか。

A51:管理処分権は特定不能土地等管理者に専属する(表題部法§21Ⅰ)。

なぜなら特定不能土地等管理者による職務の円滑な遂行を可能とする観点からは管理処分権を管理者に集中することが望ましく、また、登記官により所有者探索の結果所有者等特定不能土地と認定されているので真実の所有者が土地等について自ら管理処分権を主張することは実際には考えがたいからである。

Q52:特定不能土地等管理者は、誰に対してどのような義務を負うのか。

A52:

① 特定不能土地等管理者は所有者等特定不能土地等の所有者に対して善管注意義務を負う(表題部法§24Ⅰ)。

② 数人の者の共有持分を対象として特定不能土地等管理命令が発せられたときは、命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平に権限を行使する義務を負う(表題部法§24Ⅱ)。

Q53:表題部所有者不明土地等に関する訴えについて、特定不能土地等管理者は原告又は被告になることができるか。

A53:特定不能土地等管理者は特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等に関する訴えの原告又は被告となることができる(表題部法§23Ⅰ)。

ただ、所有者不明土地管理人の場合と同様に、特定不能土地等管理者が行おうとする訴訟行為の内容によっては裁判所の許可を得なければならない場合(表題部法§21Ⅱ)があるので注意を要する。例えば訴えの提起や、訴訟上の和解をする場合には基本的には裁判所の許可が必要となると解される。

Q54:甲は、特定不能土地等管理者にどのような請求をするか。

A54:甲は特定不能土地等管理者に対して所有権に基づき妨害排除請求をすることになる。

Q55:既に甲以外の乙が当該所有者等特定不能土地の所有者に対して妨害排除請求訴訟を提起していた場合、特定不能土地等管理者はどのように対応すべきか。

A55:特定不能土地管理命令が発せられたときは、乙の提起した訴訟手続は中断するので(表題部法§23Ⅱ)、特定不能土地等管理者は受継の申立て(表題部法§23Ⅲ)をすることにより訴訟の進行が再開することになる。

Q56:特定不能土地等管理者が将来、甲への売却の権限外行為許可を得た場合、誰がどのような手続をとるか。

A56:

① 甲は表題部に自己の住所氏名を記載するべく表示登記を申請する。

※特定不能土地等管理者から売買等により所有権を取得した者による、自己を表題部所有者とする表題登記の取扱いについて(令和4年4月1日民二第523 号民事局通達)(登記研究897 号)。

記録例2-5(表示登記申請)

② 甲は保存登記を申請する。

Q57:A56 の①の表示登記と②の保存登記は連件で申請することができるか。

A57:このような申請方法が可能かについては令和5年3月時点では明らかにされていない。

Q58:A56 の①の表示登記を司法書士が代理申請できるか。

A58:司法書士が代理申請できるかについても令和5年3月時点では明らかにされていない。

Q59:特定不能土地等管理者と所有者不明土地管理人との適用関係はどうなっているか。

A59:特定不能土地等管理者と所有者不明土地管理人は当該土地の管理処分権が専属している点で同様である。

① 所有者等特定不能土地として既に登記されている場合

表題部法における所有者等特定不能土地については所有者不明土地管理命令の規律の適用が除外されるので(表題部法§32Ⅰ)、所有者不明土地管理命令は却下されると解される。

なぜなら、「特定不能土地等管理命令等の対象となる土地は、所有者不明土地管理制度における所有者を知ることができない土地にも当たり得るが、表題部所有者不明土地となる原因となった旧土地台帳と不動産登記簿との一元化作業が開始された昭和35 年からでも既に60 年以上経過し、登記官等による専門的知見に基づいた探索を経てもなお所有者を特定することができないものであり、このような土地の管理については、表題部法上の特定不能土地等管理命令等の制度に委ねるのが適当であると考えられる。」。[28]

② 所有者不明土地管理命令が発せられた後に、表題部所有者として登記すべき者がない旨の登記がされた場合

所有者不明土地管理人によって既に開始している管理を打ち切ることは適当でないので、所有者不明土地の規律の適用を除外する対象とはせず(表題部法§32Ⅰ括弧書)、表題部所有者として登記すべき者がない旨の登記がされた後も、既に選任されている所有者不明土地管理人による管理を継続することが可能とされている。[29]

ケーススタディ

設例4 甲が記録例2-4の登記事項証明書を持参した場合

記録例2-4 表題部に特定不能土地等管理者の記載あり

Q60:司法書士は甲にどのようにアドバイスすべきか。

A60:特定不能土地等管理者乙が選任されているので乙が本件土地の管理処分権を有している。そのため、乙に連絡して、管理又は処分の協議をするよう勧める。ただ、既に管理者が選任されているということは、甲以外に利害関係人がいることになるので乙とその利害関係人との間で既に売却の話が進んでいる可能性がある。

~事案の概要~

設例2において甲が持参したのが下記記録例2-4であった場合。

法令・通達・申立書書式

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律(令和元年法律第15 号・令和3年法律第24 号による改正)

第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化を図るため、登記官による表題部所有者不明土地の所有者等の探索及び当該探索の結果に基づく表題部所有者の登記並びに所有者等特定不能土地及び特定社団等帰属土地の管理に関する措置を講ずることにより、表題部所有者不明土地に係る権利関係の明確化及びその適正な利用を促進し、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この法律において「表題部所有者不明土地」とは、所有権(その共有持分を含む。次項において同じ。)の登記がない一筆の土地のうち、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないもの(国、地方公共団体その他法務省令で定める者が所有していることが登記記録上明らかであるものを除く。)をいう。

2 この法律において「所有者等」とは、所有権が帰属し、又は帰属していた自然人又は法人(法人でない社団又は財団(以下「法人でない社団等」という。)を含む。)をいう。

3 この法律において「所有者等特定不能土地」とは、第15Ⅰ④イに定める登記がある表題部所有者不明土地(表題部所有者不明土地の共有持分について当該登記がされている場合にあっては、その共有持分)をいう。

4 この法律において「特定社団等帰属土地」とは、第15 条第1項第4号ロに定める登記がある表題部所有者不明土地(表題部所有者不明土地の共有持分について当該登記がされている場合にあっては、その共有持分)であって、現に法人でない社団等に属するものをいう。

5 この法律において「登記記録」、「表題部」又は「表題部所有者」とは、それぞれ不動産登記法(平成16 年法律第123 号)第2条第5号、第7号又は第10号に規定する登記記録、表題部又は表題部所有者をいう。

第2章 表題部所有者不明土地の表題部所有者の登記

第1節 登記官による所有者等の探索

(所有者等の探索の開始)

第3条 登記官は、表題部所有者不明土地(第15 条第1項第4号に定める登記があるものを除く。以下この章において同じ。)について、当該表題部所有者不明土地の利用の現況、当該表題部所有者不明土地の周辺の地域の自然的社会的諸条件及び当該地域における他の表題部所有者不明土地の分布状況その他の事情を考慮して、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図る必要があると認めるときは、職権で、その所有者等の探索を行うものとする。

2 登記官は、前項の探索を行おうとするときは、あらかじめ、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(意見又は資料の提出)

第4条 前条第2項の規定による公告があったときは、利害関係人は、登記官に対し、表題部所有者不明土地の所有者等について、意見又は資料を提出することができる。この場合において、登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定め、かつ、法務省令で定めるところによりその旨を公告したときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

(登記官による調査)

第5条 登記官は、第3条第1項の探索のため、表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をすること、表題部所有者不明土地の所有者、占有者その他の関係者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他表題部所有者不明土地の所有者等の探索のために必要な調査をすることができる。

(立入調査)

第6条 法務局又は地方法務局の長は、登記官が前条の規定により表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査をする場合において、必要があると認めるときは、その必要の限度において、登記官に、他人の土地に立ち入らせることができる。

2 法務局又は地方法務局の長は、前項の規定により登記官を他人の土地に立ち入らせようとするときは、あらかじめ、その旨並びにその日時及び場所を当該土地の占有者に通知しなければならない。

3 第1項の規定により宅地又は垣、柵等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする登記官は、その立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。

4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。

5 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第1項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。

6 第1項の規定による立入りをする場合には、登記官は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

7 国は、第1項の規定による立入りによって損失を受けた者があるときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

(調査の嘱託)

第7条 登記官は、表題部所有者不明土地の関係者が遠隔の地に居住しているとき、その他相当と認めるときは、他の登記所の登記官に第5条の調査を嘱託することができる。

(情報の提供の求め)

第8条 登記官は、第3条第1項の探索のために必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対し、表題部所有者不明土地の所有者等に関する情報の提供を求めることができる

第2節 所有者等探索委員による調査

(所有者等探索委員)

第9条 法務局及び地方法務局に、第3条第1項の探索のために必要な調査をさせ、登記官に意見を提出させるため、所有者等探索委員若干人を置く。

2 所有者等探索委員は、前項の職務を行うのに必要な知識及び経験を有する者のうちから、法務局又は地方法務局の長が任命する。

3 所有者等探索委員の任期は、2年とする。

4 所有者等探索委員は、再任されることができる。

5 所有者等探索委員は、非常勤とする。

(所有者等探索委員の解任)

第10 条 法務局又は地方法務局の長は、所有者等探索委員が次の各号のいずれかに該当するときは、その所有者等探索委員を解任することができる。

1 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。

2 職務上の義務違反その他所有者等探索委員たるに適しない非行があると認められるとき。

(所有者等探索委員による調査等)

第11 条 登記官は、第3条第1項の探索を行う場合において、必要があると認めるときは、所有者等探索委員に必要な調査をさせることができる。

2 前項の規定により調査を行うべき所有者等探索委員は、法務局又は地方法務局の長が指定する。

3 法務局又は地方法務局の長は、その職員に、第1項の調査を補助させることができる。

(所有者等探索委員による調査への準用)

第12 条 第5条及び第6条の規定は、所有者等探索委員による前条第1項の調査について準用する。この場合において、第6条第1項中「登記官に」とあるのは「所有者等探索委員又は第11 条第3項の職員(以下この条において「所有者等探索委員等」という。)に」と、同条第2項、第3項及び第6項中「登記官」とあるのは「所有者等探索委員等」と読み替えるものとする。

(所有者等探索委員の意見の提出)

第13 条 所有者等探索委員は、第11 条第1項の調査を終了したときは、遅滞なく、登記官に対し、その意見を提出しなければならない。

第3節 所有者等の特定及び表題部所有者の登記

(所有者等の特定)

第14 条 登記官は、前2節の規定による探索(次節において「所有者等の探索」という。)により得られた情報の内容その他の事情を総合的に考慮して、当該探索に係る表題部所有者不明土地が第1号から第3号までのいずれに該当するかの判断(第1号又は第3号にあっては、表題部所有者として登記すべき者(表題部所有者不明土地の所有者等のうち、表題部所有者として登記することが適当である者をいう。以下同じ。)の氏名又は名称及び住所の特定を含む。)をするとともに、第4号に掲げる場合には、その事由が同号イ又はロのいずれに該当するかの判断をするものとする。この場合において、当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属し、かつ、その共有持分の特定をすることができるときは、当該共有持分についても特定をするものとする。

一 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者があるとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者があるとき。)。

二 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がないとき(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、全ての共有持分について表題部所有者として登記すべき者がないとき。)。

三 当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合において、表題部所有者として登記すべき者がない共有持分があるとき(前号に掲げる場合を除く。)。

四 前2号のいずれかに該当する場合において、その事由が次のいずれかに該当するとき。

イ 当該表題部所有者不明土地(当該表題部所有者不明土地が数人の共有に属する場合にあっては、その共有持分。ロにおいて同じ。)の所有者等を特定することができなかったこと。

ロ 当該表題部所有者不明土地の所有者等を特定することができた場合であって、当該表題部所有者不明土地が法人でない社団等に属するとき又は法人でない社団等に属していたとき(当該法人でない社団等以外の所有者等に属するときを除く。)において、表題部所有者として登記すべき者を特定することができないこと。

2 登記官は、前項の判断(同項の特定を含む。以下この章において「所有者等の特定」という。)をしたときは、その理由その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。)を作成しなければならない。

(表題部所有者の登記)

第15 条 登記官は、所有者等の特定をしたときは、当該所有者等の特定に係る表題部所有者不明土地につき、職権で、遅滞なく、表題部所有者の登記を抹消しなければならない。

この場合において、登記官は、不動産登記法第27 条第3号の規定にかかわらず、当該表題部所有者不明土地の表題部に、次の各号に掲げる所有者等の特定の区分に応じ、当該各号に定める事項を登記するものとする。

一 前条第1項第1号に掲げる場合 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者の氏名又は名称及び住所(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)

二 前条第1項第2号に掲げる場合 その旨(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)

三 前条第1項第3号に掲げる場合 当該表題部所有者不明土地の表題部所有者として登記すべき者がある共有持分についてはその者の氏名又は名称及び住所(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)、表題部所有者として登記すべき者がない共有持分についてはその旨(同項後段の特定をした場合にあっては、その共有持分を含む。)

四 前条第1項第4号に掲げる場合 次のイ又はロに掲げる同号の事由の区分に応じ、当該イ又はロに定める事項

イ 前Ⅰ④イに掲げる場合 その旨

ロ 前条第1項第4号ロに掲げる場合 その旨

2 登記官は、前項の規定による登記をしようとするときは、あらかじめ、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(登記後の公告)

第16 条 登記官は、前条第1項の規定による登記をしたときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

第4節 雑則

(所有者等の探索の中止)

第17 条 登記官は、表題部所有者不明土地に関する権利関係について訴訟が係属しているとき、その他相当でないと認めるときは、前3節の規定にかかわらず、表題部所有者不明土地に係る所有者等の探索、所有者等の特定及び登記に係る手続を中止することができる。

この場合においては、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(法務省令への委任)

第18 条 この章に定めるもののほか、表題部所有者不明土地に係る所有者等の探索、所有者等の特定及び登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

第3章 所有者等特定不能土地の管理

(特定不能土地等管理命令)

第19 条 裁判所は、所有者等特定不能土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、その申立てに係る所有者等特定不能土地を対象として、特定不能土地等管理者(次条第1項に規定する特定不能土地等管理者をいう。第5項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下「特定不能土地等管理命令」という。)をすることができる。

2 前項の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

3 裁判所は、特定不能土地等管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

4 特定不能土地等管理命令及び前項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

5 特定不能土地等管理命令は、特定不能土地等管理命令が発令された後に当該特定不能土地等管理命令が取り消された場合において、所有者等特定不能土地の管理、処分その他の事由により特定不能土地等管理者が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

(特定不能土地等管理者の選任等)

第20 条 裁判所は、特定不能土地等管理命令をする場合には、当該特定不能土地等管理命令において、特定不能土地等管理者を選任しなければならない。

2 前項の規定による特定不能土地等管理者の選任の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

3 特定不能土地等管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地について、特定不能土地等管理命令の登記を嘱託しなければならない。

4 特定不能土地等管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、特定不能土地等管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

(特定不能土地等管理者の権限)

第21 条 前条第1項の規定により特定不能土地等管理者が選任された場合には、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地及びその管理、処分その他の事由により特定不能土地等管理者が得た財産(以下「所有者等特定不能土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、特定不能土地等管理者に専属する。

2 特定不能土地等管理者が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。

一 保存行為

二 所有者等特定不能土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

三 前項の規定に違反して行った特定不能土地等管理者の行為は、無効とする。ただし、特定不能土地等管理者は、これをもって善意の第3者に対抗することができない。

四 特定不能土地等管理者は、第2項の許可の申立てをする場合には、その許可を求める理由を疎明しなければならない。

五 第2項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

六 第2項の規定による許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(所有者等特定不能土地等の管理)

第22 条 特定不能土地等管理者は、就職の後直ちに特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理に着手しなければならない。

(特定不能土地等管理命令が発せられた場合の所有者等特定不能土地等に関する訴えの取扱い)

第23 条 特定不能土地等管理命令が発せられた場合には、所有者等特定不能土地等に関する訴えについては、特定不能土地等管理者を原告又は被告とする。

2 特定不能土地等管理命令が発せられた場合には、当該特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等に関する訴訟手続で当該所有者等特定不能土地等の所有者(所有権(その共有持分を含む。)が帰属する自然人又は法人(法人でない社団等を含む。)をいう。以下この章において同じ。)を当事者とするものは、中断する。

3 前項の規定により中断した訴訟手続は、特定不能土地等管理者においてこれを受け継ぐことができる。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

4 特定不能土地等管理命令が取り消されたときは、特定不能土地等管理者を当事者とする所有者等特定不能土地等に関する訴訟手続は、中断する。

5 所有者等特定不能土地等の所有者は、前項の規定により中断した訴訟手続を受け継がなければならない。この場合においては、受継の申立ては、相手方もすることができる。

(特定不能土地等管理者の義務)

第24 条 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、第21 条第1項の権限を行使しなければならない。

2 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者のために、誠実かつ公平に第21 条第1項の権限を行使しなければならない。

(特定不能土地等管理者の辞任)

第25 条 特定不能土地等管理者は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

2 特定不能土地等管理者は、前項の許可の申立てをする場合には、その原因となる事実を疎明しなければならない。

3 第1項の許可の申立てを却下する裁判には、理由を付さなければならない。

4 第1項の規定による辞任の許可の裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(特定不能土地等管理者の解任)

第26 条 特定不能土地等管理者がその任務に違反して特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、特定不能土地等管理者を解任することができる。

2 裁判所は、前項の規定により特定不能土地等管理者を解任する場合には、特定不能土地等管理者の陳述を聴かなければならない。

3 第1項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。

4 第1項の規定による解任の裁判に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

(特定不能土地等管理者の報酬等)

第27 条 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

2 前項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判をする場合には、特定不能土地等管理者の陳述を聴かなければならない。

3 第1項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判に対しては、特定不能土地等管理者に限り、即時抗告をすることができる。

(供託等)

第28 条 特定不能土地等管理者は、特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その所有者のために、当該金銭を当該所有者等特定不能土地の所在地の供託所に供託することができる。

2 特定不能土地等管理者は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(特定不能土地等管理命令の取消し)

第29 条 裁判所は、特定不能土地等管理者が管理すべき財産がなくなったとき(特定不能土地等管理者が管理すべき財産の全部が前条第1項の規定により供託されたときを含む。)、その他特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の管理を継続することが相当でなくなったときは、特定不能土地等管理者若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならない。

2 特定不能土地等管理命令の対象とされた所有者等特定不能土地等の所有者が当該所有者等特定不能土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、特定不能土地等管理命令を取り消さなければならない。

3 前項の規定により当該特定不能土地等管理命令が取り消されたときは、特定不能土地等管理者は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当該所有者等特定不能土地等を引き渡さなければならない。

4 第1項又は第2項の規定による決定に対しては、利害関係人に限り、即時抗告をすることができる。

第4章 特定社団等帰属土地の管理

第30 条 裁判所は、特定社団等帰属土地について、当該特定社団等帰属土地が帰属する法人でない社団等の代表者又は管理人が選任されておらず、かつ、当該法人でない社団等の全ての構成員を特定することができず、又はその所在が明らかでない場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、その申立てに係る特定社団等帰属土地を対象として、特定社団等帰属土地等管理者による管理を命ずる処分(次項において「特定社団等帰属土地等管理命令」という。)をすることができる。

2 前章(第19 条第1項を除く。)の規定は、特定社団等帰属土地等管理命令について準用する。この場合において、同条第2項中「前項」とあるのは「第30 条第1項」と、第21 条第1項及び第2項第2号、第22 条、第23 条(第3項を除く。)、第24 条、第26 条第1項、第27 条第1項、第28 条第1項並びに前条第1項及び第3項中「所有者等特定不能土地等」とあるのは「特定社団等帰属土地等」と、第23 条第2項中「自然人又は法人(法人でない社団等を含む。)」とあるのは「法人でない社団等」と、前条第2項中「所有者等特定不能土地等の所有者」とあるのは「特定社団等帰属土地等の所有者」と、「所有者等特定不能土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属すること」とあるのは「特定社団等帰属土地等が帰属する法人でない社団等の代表者又は管理人が選任されたこと」と読み替えるものとする。

第5章 雑則

(非訟事件の管轄)

第31 条 この法律の規定による非訟事件は、表題部所有者不明土地の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

(適用除外)

第32 条 所有者等特定不能土地及び特定社団等帰属土地(いずれも第15Ⅰ④イ又はロに定める登記をする前に民法(明治29 年法律第819 号)第264 条の2第1項の規定による命令がされたものを除く。)については、同条から同法第264 条の7までの規定は、適用しない。

2 この法律の規定による非訟事件については、非訟事件手続法(平成23 年法律第511 号)第410 条及び第517 条第2項第2号の規定は、適用しない。

(最高裁判所規則)

第33 条 この法律に定めるもののほか、この法律の規定による非訟事件の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第6章 罰則

第34 条 第6条第5項(第12 条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、第6条第1項(第12 条において準用する場合を含む。)の規定による立入りを拒み、又は妨げた者は、30 万円以下の罰金に処する。

第35 条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、同条の刑を科する。

民法(抄)

(明治29 年法律第89 号・令和3年法律第24 号による改正)

第1編 総則

第2章 人

第5節 不在者の財産の管理及び失踪の宣告

(不在者の財産の管理)

第25 条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。

2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

第28 条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

第3章 所有権

第4節 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令

(所有者不明土地管理命令)

第264 条の2 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第4項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。

2 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

3 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

4 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。

(所有者不明土地管理人の権限)

第264 条の3 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。

2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)

第264 条の4 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。

(所有者不明土地管理人の義務)

第264 条の5 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)

第264 条の6 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。

2 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(所有者不明土地管理人の報酬等)

第264 条の7 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

2 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

(所有者不明建物管理命令)

第264 条の8 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。

2 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

3 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。

4 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。

5 第264 条の三から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

第5節 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令

(管理不全土地管理命令)

第264 条の9 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。

2 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。

3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。

(管理不全土地管理人の権限)

第264 条の10 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。

2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。

一 保存行為

二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。

(管理不全土地管理人の義務)

第264 条の11 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。

2 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。

(管理不全土地管理人の解任及び辞任)

第264 条の12 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。

2 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。

(管理不全土地管理人の報酬等)

第264 条の13 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。

2 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。

(管理不全建物管理命令)

第264 条の14 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第3項に規定する管理不全建物管理人をいう。第4項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。

2 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。

3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。

4 第264 条の10 から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

(相続財産の保存)

第897 条の2 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952 条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。

2 第27 条から第29 条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

第5編 相続

第6章 相続人の不存在

(相続財産の管理人の選任)

第952 条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。

第957 条 第952 条第2項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。

2 第927 条第2項から第4項まで及び第928 条から第935 条まで(第932 条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

会社法(抄)

(平成17 年法律第86 号・令和2年法律第33 号による改正)

第2編 株式会社

第9章 清算

第2款 清算株式会社の機関

(清算人の就任)

第478 条 次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。

一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)

二 定款で定める者

三 株主総会の決議によって選任された者

2 前項の規定により清算人となる者がないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。

3 前2項の規定にかかわらず、第471 条第6号に掲げる事由によって解散した清算株式会社については、裁判所は、利害関係人若しくは法務大臣の申立てにより又は職権で、清算人を選任する。

4 第1項及び第2項の規定にかかわらず、第475 条第2号又は第3号に掲げる場合に該当することとなった清算株式会社については、裁判所は、利害関係人の申立てにより、清算人を選任する。

5 第475 条各号に掲げる場合に該当することとなった時において監査等委員会設置会社であった清算株式会社における第1項第1号の規定の適用については、同号中「取締役」とあるのは、「監査等委員である取締役以外の取締役」とする。

6 第475 条各号に掲げる場合に該当することとなった時において指名委員会等設置会社であった清算株式会社における第1項第1号の規定の適用については、同号中「取締役」とあるのは、「監査委員以外の取締役」とする。

7 第335 条第3項の規定にかかわらず、第475 条各号に掲げる場合に該当することとなった時において監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社であった清算株式会社である監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、次に掲げる要件のいずれにも該当するものでなければならない。

一 その就任の前十年間当該監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社又はその子会社の取締役(社外取締役を除く。)、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。次号において同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

二 その就任の前十年内のいずれかの時において当該監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社又はその子会社の社外取締役又は監査役であったことがある者にあっては、当該社外取締役又は監査役への就任の前十年間当該監査等委員会設置会社若しくは指名委員会等設置会社又はその子会社の取締役(社外取締役を除く。)、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。

三 第2条第16 号ハからホまでに掲げる要件

8 第330 条、第331 条第1項及び第331 条の2の規定は清算人について、第331 条第5項の規定は清算人会設置会社(清算人会を置く清算株式会社又はこの法律の規定により清算人会を置かなければならない清算株式会社をいう。以下同じ。)について、それぞれ準用する。この場合において、同項中「取締役は」とあるのは、「清算人は」と読み替えるものとする。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法

(平成30 年法律第49 号・令和4年法律第38 号による改正)

第1章 総則

(目的)

第1条 この法律は、社会経済情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、所有者不明土地の利用の円滑化及び管理の適正化並びに土地の所有者の効果的な探索を図るため、国土交通大臣及び法務大臣による基本方針の策定について定めるとともに、地域福利増進事業の実施のための措置、所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法(昭和26 年法律第219 号)の特例、土地の所有者等に関する情報の利用及び提供その他の特別の措置を講じ、もって国土の適正かつ合理的な利用に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この法律において「所有者不明土地」とは、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を確知することができない一筆の土地をいう。

2 この法律において「特定所有者不明土地」とは、所有者不明土地のうち、現に建築物(物

置その他の政令で定める簡易な構造の建築物で政令で定める規模未満のもの又はその利

用が困難であり、かつ、引き続き利用されないことが確実であると見込まれる建築物とし

て建築物の損傷、腐食その他の劣化の状況、建築時からの経過年数その他の事情を勘案し

て政令で定める基準に該当するもの(以下「簡易建築物等」という。)を除く。)が存せ

ず、かつ、業務の用その他の特別の用途に供されていない土地をいう。

3 この法律において「地域福利増進事業」とは、次に掲げる事業であって、地域住民その

他の者の共同の福祉又は利便の増進を図るために行われるものをいう。

一 道路法(昭和27 年法律第180 号)による道路、駐車場法(昭和32 年法律第106 号)

による路外駐車場その他一般交通の用に供する施設の整備に関する事業

二 学校教育法(昭和22 年法律第26 号)による学校又はこれに準ずるその他の教育のた

めの施設の整備に関する事業

三 社会教育法(昭和24 年法律第207 号)による公民館(同法第42 条に規定する公民館

に類似する施設を含む。)又は図書館法(昭和25 年法律第118 号)による図書館(同

法第29 条に規定する図書館と同種の施設を含む。)の整備に関する事業

四 社会福祉法(昭和26 年法律第45 号)による社会福祉事業の用に供する施設の整備に

関する事業

五 病院、療養所、診療所又は助産所の整備に関する事業

六 公園、緑地、広場又は運動場の整備に関する事業

七 住宅(被災者の居住の用に供するものに限る。)の整備に関する事業であって、災害

(発生した日から起算して3年を経過していないものに限る。次号イにおいて同じ。)

に際し災害救助法(昭和22 年法律第118 号)が適用された同法第2条第1項に規定す

る災害発生市町村の区域内において行われるもの

65

八 購買施設、教養文化施設その他の施設で地域住民その他の者の共同の福祉又は利便の

増進に資するものとして政令で定めるものの整備に関する事業であって、次に掲げる区

域内において行われるもの

イ 災害に際し災害救助法が適用された同法第2条第1項に規定する災害発生市町村

の区域

ロ その周辺の地域において当該施設と同種の施設が著しく不足している区域

九 備蓄倉庫、非常用電気等供給施設(非常用の電気又は熱の供給施設をいう。)その他

の施設で災害対策の実施の用に供するものとして政令で定めるものの整備に関する事

十 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23 年法律第108 号)

による再生可能エネルギー発電設備のうち、地域住民その他の者の共同の福祉又は利便

の増進に資するものとして政令で定める要件に適合するものの整備に関する事業

十一 前各号に掲げる事業のほか、土地収用法第3条各号に掲げるもののうち地域住民そ

の他の者の共同の福祉又は利便の増進に資するものとして政令で定めるものの整備に

関する事業

十二 前各号に掲げる事業のために欠くことができない通路、材料置場その他の施設の整

備に関する事業

4 この法律において「特定登記未了土地」とは、所有権の登記名義人の死亡後に相続登記

等(相続による所有権の移転の登記その他の所有権の登記をいう。以下同じ。)がされて

いない土地であって、土地収用法第3条各号に掲げるものに関する事業(第27 条第1項

及び第43 条第1項において「収用適格事業」という。)を実施しようとする区域の適切

な選定その他の公共の利益となる事業の円滑な遂行を図るため当該土地の所有権の登記

名義人となり得る者を探索する必要があるものをいう。

第2章 基本方針等

(基本方針)

第3条 国土交通大臣及び法務大臣は、所有者不明土地の利用の円滑化及び管理の適正化並

びに土地の所有者の効果的な探索(以下「所有者不明土地の利用の円滑化等」という。)

に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 所有者不明土地の利用の円滑化等の意義及び基本的な方向

二 所有者不明土地の利用の円滑化等のための施策に関する基本的な事項

三 特定所有者不明土地を使用する地域福利増進事業に関する基本的な事項

四 特定登記未了土地の相続登記等の促進に関する基本的な事項

五 第45 条第1項に規定する所有者不明土地対策計画の作成に関する基本的な事項

六 前各号に掲げるもののほか、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する重要事項

3 国土交通大臣及び法務大臣は、基本方針を定めようとするときは、関係行政機関の長に

協議しなければならない。

4 国土交通大臣及び法務大臣は、基本方針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなけ

ればならない。

5 前2項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(国の責務)

第4条 国は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する施策を総合的に策定し、及び実施

する責務を有する。

2 国は、地方公共団体その他の者が行う所有者不明土地の利用の円滑化等に関する取組の

ために必要となる情報の収集及び提供その他の支援を行うよう努めなければならない。

3 国は、広報活動、啓発活動その他の活動を通じて、所有者不明土地の利用の円滑化等に

関し、国民の理解を深めるよう努めなければならない。

(地方公共団体の責務)

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第5条 地方公共団体は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関し、国との適切な役割分担

を踏まえて、その地方公共団体の区域の実情に応じた施策を策定し、及び実施する責務を

有する。

2 市町村は、その区域内における所有者不明土地の利用の円滑化等の的確な実施が図られ

るよう、この法律に基づく措置その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

3 都道府県は、前項の市町村の責務が十分に果たされるよう、市町村相互間の連絡調整を

行うとともに、市町村に対し、市町村の区域を超えた広域的な見地からの助言その他の援

助を行うよう努めなければならない。

第3章 所有者不明土地の利用の円滑化及び管理の適正化のための特別の措置

第1節 地域福利増進事業の実施のための措置

第1款 地域福利増進事業の実施の準備

(特定所有者不明土地への立入り等)

第6条 地域福利増進事業を実施しようとする者は、その準備のため他人の土地(特定所有

者不明土地に限る。次条第1項及び第8条第1項において同じ。)又は当該土地にある簡

易建築物等その他の工作物に立ち入って測量又は調査を行う必要があるときは、その必要

の限度において、当該土地又は工作物に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任

した者に立ち入らせることができる。ただし、地域福利増進事業を実施しようとする者が

国及び地方公共団体以外の者であるときは、あらかじめ、国土交通省令で定めるところに

より、当該土地の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けた場合に限る。

(障害物の伐採等)

第7条 前条の規定により他人の土地又は工作物に立ち入って測量又は調査を行う者は、そ

の測量又は調査を行うに当たり、やむを得ない必要があって、障害となる植物又は垣、柵

その他の工作物(以下「障害物」という。)の伐採又は除去(以下「伐採等」という。)

をしようとするときは、国土交通省令で定めるところにより当該障害物の所在地を管轄す

る都道府県知事の許可を受けて、伐採等をすることができる。この場合において、都道府

県知事は、許可を与えようとするときは、あらかじめ、当該障害物の確知所有者(所有者

で知れているものをいう。以下同じ。)に対し、意見を述べる機会を与えなければならな

い。

2 前項の規定により障害物の伐採等をしようとする者は、国土交通省令で定めるところに

より、その旨を、伐採等をしようとする日の15 日前までに公告するとともに、伐採等を

しようとする日の3日前までに当該障害物の確知所有者に通知しなければならない。

3 第1項の規定により障害物の伐採等をしようとする者は、その現状を著しく損傷しない

ときは、前2項の規定にかかわらず、国土交通省令で定めるところにより当該障害物の所

在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて、直ちに伐採等をすることができる。この場

合においては、伐採等をした後遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨を、

公告するとともに、当該障害物の確知所有者に通知しなければならない。

(証明書等の携帯)

第8条 第6条の規定により他人の土地又は工作物に立ち入ろうとする者は、その身分を示

す証明書(国及び地方公共団体以外の者にあっては、その身分を示す証明書及び同条ただ

し書の許可を受けたことを証する書面)を携帯しなければならない。

2 前条第1項又は第3項の規定により障害物の伐採等をしようとする者は、その身分を示

す証明書及び同条第1項又は第3項の許可を受けたことを証する書面を携帯しなければ

ならない。

3 前2項の証明書又は書面は、関係者の請求があったときは、これを提示しなければなら

ない。

(損失の補償)

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第9条 地域福利増進事業を実施しようとする者は、第6条又は第7条第1項若しくは第3

項の規定による行為により他人に損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通

常生ずべき損失を補償しなければならない。

2 前項の規定による損失の補償については、損失を与えた者と損失を受けた者とが協議し

なければならない。

3 前項の規定による協議が成立しないときは、損失を与えた者又は損失を受けた者は、政

令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第914 条第2項の規定による裁決を申

請することができる。

第2款 裁定による特定所有者不明土地の使用

(裁定申請)

第10 条 地域福利増進事業を実施する者(以下「事業者」という。)は、当該事業を実施

する区域(以下「事業区域」という。)内にある特定所有者不明土地を使用しようとする

ときは、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、次に掲げる権

利(以下「土地使用権等」という。)の取得についての裁定を申請することができる。

一 当該特定所有者不明土地の使用権(以下「土地使用権」という。)

二 当該特定所有者不明土地にある所有者不明物件(相当な努力が払われたと認められる

ものとして政令で定める方法により探索を行ってもなおその所有者の全部又は一部を

確知することができない物件をいう。第3項第2号において同じ。)の所有権(次項第

7号において「物件所有権」という。)又はその使用権(同項第8号において「物件使

用権」という。)

2 前項の規定による裁定の申請(以下この款において「裁定申請」という。)をしようと

する事業者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した裁定申請

書を都道府県知事に提出しなければならない。

一 事業者の氏名又は名称及び住所

二 事業の種別(第2条第3項各号に掲げる事業の別をいう。)

三 事業区域

四 裁定申請をする理由

五 土地使用権の目的となる特定所有者不明土地(以下この款(次条第1項第2号を除く。)

において単に「特定所有者不明土地」という。)の所在、地番、地目及び地積

六 特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

七 土地使用権等の始期(物件所有権にあっては、その取得の時期。第13 条第2項第2

号及び第24 条において同じ。)

八 土地等使用権(土地使用権又は物件使用権をいう。以下同じ。)の存続期間

3 前項の裁定申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 次に掲げる事項を記載した事業計画書

イ 事業により整備する施設の種類、位置、規模、構造及び利用条件

ロ 事業区域

ハ 事業区域内にある土地で特定所有者不明土地以外のもの及び当該土地にある物件

に関する所有権その他の権利の取得に関する計画(次条第1項第5号において「権利

取得計画」という。)

ニ 資金計画

ホ 土地等使用権の存続期間の満了後に特定所有者不明土地を原状に回復するための

措置の内容

ヘ その他国土交通省令で定める事項

二 次に掲げる事項を記載した補償金額見積書

イ 特定所有者不明土地の面積(特定所有者不明土地を含む一団の土地が分割されるこ

ととなる場合にあっては、当該一団の土地の全部の面積を含む。)

ロ 特定所有者不明土地にある所有者不明物件の種類及び数量

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ハ 特定所有者不明土地等(特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある所

有者不明物件をいう。以下この款において同じ。)の確知所有者の全部の氏名又は名

称及び住所

ニ 特定所有者不明土地等の確知権利者(土地又は当該土地にある物件に関し所有権以

外の権利を有する者であって、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で

定める方法により探索を行ってもなお確知することができないもの以外の者をいう。

次条第5項及び第17 条第1項において同じ。)の全部の氏名又は名称及び住所並び

にその権利の種類及び内容

ホ 土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等(特定所有者不明

土地等に関し所有権その他の権利を有する者をいう。以下この款において同じ。)が

受ける損失の補償金の見積額及びその内訳並びに当該補償金の支払の時期

3 事業区域の利用について法令の規定による制限があるときは、当該法令の施行につい

て権限を有する行政機関の長の意見書

4 事業の実施に関して行政機関の長の許可、認可その他の処分を必要とする場合におい

ては、これらの処分があったことを証する書類又は当該行政機関の長の意見書

5 その他国土交通省令で定める書類

4 前項第3号及び第4号の意見書は、事業者が意見を求めた日から3週間を経過してもこ

れを得ることができなかったときは、添付することを要しない。この場合においては、意

見書を得ることができなかった事情を疎明する書類を添付しなければならない。

5 事業者は、裁定申請をしようとするときは、当該裁定申請に係る事業の内容について、

あらかじめ、協議会の開催その他の国土交通省令で定める方法により、住民の意見を反映

させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(公告及び縦覧)

第11 条 都道府県知事は、裁定申請があったときは、当該裁定申請に係る事業が次の各号

に掲げる要件のいずれにも該当するかどうかを確認しなければならない。

一 事業が地域福利増進事業に該当し、かつ、土地の適正かつ合理的な利用に寄与するも

のであること。

二 土地使用権の目的となる土地が特定所有者不明土地に該当するものであること。

三 土地等使用権の存続期間が事業の実施のために必要な期間を超えないものであるこ

と。

四 事業により整備される施設の利用条件がその公平かつ適正な利用を図る観点から適

切なものであること。

五 権利取得計画及び資金計画が事業を確実に遂行するため適切なものであること。

六 土地等使用権の存続期間の満了後に第2号の土地を原状に回復するための措置が適

正かつ確実に行われると見込まれるものであること。

七 事業者が事業を遂行する十分な意思と能力を有する者であること。

八 その他基本方針に照らして適切なものであること。

2 都道府県知事は、前項の規定による確認をしようとするときは、あらかじめ、地域住民

その他の者の共同の福祉又は利便の増進を図る見地からの関係市町村長の意見を聴かな

ければならない。

3 都道府県知事は、第1項の規定による確認をしようとする場合において、前条第4項の

規定により意見書の添付がなかったときその他必要があると認めるときは、裁定申請に係

る事業の実施について関係のある行政機関の長の意見を求めなければならない。

4 都道府県知事は、第1項の規定による確認の結果、裁定申請に係る事業が同項各号に掲

げる要件のいずれにも該当すると認めるときは、国土交通省令で定めるところにより、次

に掲げる事項を公告し、前条第2項の裁定申請書及びこれに添付された同条第3項各号に

掲げる書類を当該公告の日から2月間公衆の縦覧に供しなければならない。

一 裁定申請があった旨

69

二 特定所有者不明土地の所在、地番及び地目

三 次のイ又はロに掲げる者は、縦覧期間内に、国土交通省令で定めるところにより、そ

の権原を証する書面を添えて、都道府県知事に当該イ又はロに定める事項を申し出るべ

き旨

イ 特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある物件に関し所有権その他

の権利を有する者であって、前条第2項の裁定申請書、同条第3項第1号の事業計画

書又は同項第2号の補償金額見積書に記載された事項(裁定申請書にあっては、同条

第2項第1号及び第6号に掲げる事項を除く。)について異議のあるもの 当該異議

の内容及びその理由

ロ 特定所有者不明土地の所有者であって、前条第3項第2号の補償金額見積書に特定

所有者不明土地の確知所有者として記載されていないもの(イに掲げる者を除く。)

当該特定所有者不明土地の所有者である旨

四 その他国土交通省令で定める事項

五 都道府県知事は、前項の規定による公告をしようとするときは、あらかじめ、国土交

通省令で定めるところにより、裁定申請があった旨を、前条第3項第2号の補償金額見

積書に記載された特定所有者不明土地等の確知所有者及び確知権利者に通知しなけれ

ばならない。

(裁定申請の却下)

第12 条 都道府県知事は、前条第1項の規定による確認の結果、裁定申請に係る事業が同

項各号に掲げる要件のいずれかに該当しないと認めるときは、当該裁定申請を却下しなけ

ればならない。

2 都道府県知事は、前条第4項の規定による公告をした場合において、同項の縦覧期間内

に同項第3号イの規定による申出があったとき又は同号ロに掲げる者の全てから同号ロ

の規定による申出があったときは、当該公告に係る裁定申請を却下しなければならない。

3 都道府県知事は、前2項の規定により裁定申請を却下したときは、遅滞なく、国土交通

省令で定めるところにより、その理由を示して、その旨を当該裁定申請をした事業者に通

知しなければならない。

(裁定)

第13 条 都道府県知事は、前条第1項又は第2項の規定により裁定申請を却下する場合を

除き、裁定申請をした事業者が土地使用権等を取得することが当該裁定申請に係る事業を

実施するため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、土地使用権

等の取得についての裁定をしなければならない。

2 前項の裁定(以下この条から第18 条までにおいて単に「裁定」という。)においては、

次に掲げる事項を定めなければならない。

一 特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び面積

二 土地使用権等の始期

三 土地等使用権の存続期間

四 土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失の補

償金の額及びその支払の時期

3 裁定は、前項第1号に掲げる事項については裁定申請の範囲を超えてはならず、同項第

3号の存続期間については裁定申請の範囲内かつ10 年(第2条第3項第1号、第6号及

び第8号から第10 号までに掲げる事業のうち、当該事業の内容その他の事情を勘案して

長期にわたる土地の使用を要するものとして政令で定める事業にあっては、20 年)を限度

としなければならず、前項第4号の補償金の額については裁定申請に係る補償金の見積額

を下限としなければならない。

4 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、第2項第4号に掲げる事項(同号の補償

金の額に係るものに限る。)について、あらかじめ、収用委員会の意見を聴かなければな

らない。

70

5 収用委員会は、前項の規定により意見を述べるため必要があると認めるときは、その委

員又はその事務を整理する職員に、裁定申請に係る特定所有者不明土地又は当該特定所有

者不明土地にある簡易建築物等その他の工作物に立ち入り、その状況を調査させることが

できる。

6 前項の規定により立入調査をする委員又は職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関

係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

7 第5項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはな

らない。

(裁定の通知等)

第14 条 都道府県知事は、裁定をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところに

より、その旨及び前条第2項各号に掲げる事項を、裁定申請をした事業者及び当該事業に

係る特定所有者不明土地所有者等で知れているものに文書で通知するとともに、公告しな

ければならない。

(裁定の効果)

第15 条 裁定について前条の規定による公告があったときは、当該裁定の定めるところに

より、裁定申請をした事業者は、土地使用権等を取得し、特定所有者不明土地等に関する

その他の権利は、当該事業者による当該特定所有者不明土地等の使用のため必要な限度に

おいてその行使を制限される。

(損失の補償)

第16 条 裁定申請をした事業者は、次項から第6項までに定めるところにより、土地使用

権等を取得することにより特定所有者不明土地所有者等が受ける損失を補償しなければ

ならない。

2 損失の補償は、金銭をもってするものとする。

3 土地使用権等の取得の対価の額に相当する補償金の額は、近傍類似の土地又は近傍同種

の物件の借賃その他の当該補償金の額の算定の基礎となる事項を考慮して定める相当の

額(土地等使用権の取得に係る当該補償金の額にあっては、当該相当の額から特定所有者

不明土地等の管理に要する費用に相当する額を控除して得た額)とする。

4 特定所有者不明土地の一部を使用することにより残地の価格が減じ、その他残地に関し

て損失が生ずるときは、当該損失を補償しなければならない。

5 特定所有者不明土地の一部を使用することにより残地に通路、溝、垣その他の工作物の

新築、改築、増築若しくは修繕又は盛土若しくは切土をする必要が生ずるときは、これに

要する費用を補償しなければならない。

6 前3項の規定による補償のほか、土地使用権等を取得することにより特定所有者不明土

地所有者等が通常受ける損失は、補償しなければならない。

(補償金の供託)

第17 条 裁定申請をした事業者は、裁定において定められた補償金の支払の時期までに、

当該裁定において定められた補償金を特定所有者不明土地所有者等で確知することがで

きないもの(補償金の供託の対象となる特定所有者不明土地等の共有持分の割合が明らか

でない場合にあっては、当該特定所有者不明土地等の確知所有者及び確知権利者を含む。)

のために供託しなければならない。

2 前項の規定による補償金の供託は、当該特定所有者不明土地の所在地の供託所にするも

のとする。

(裁定の失効)

第18 条 裁定申請をした事業者が裁定において定められた補償金の支払の時期までに当該

裁定において定められた補償金の供託をしないときは、当該裁定は、その時以後その効力

を失う。

(土地等使用権の存続期間の延長)

71

第19 条 第15 条の規定により土地使用権等を取得した事業者(以下「使用権者」という。)

は、第13 条第1項の裁定において定められた土地等使用権の存続期間(第4項において

準用する第15 条の規定により土地等使用権の存続期間が延長された場合にあっては、当

該延長後の存続期間。第3項及び第24 条において同じ。)を延長して使用権設定土地(第

15 条の規定により取得された土地使用権の目的となっている土地をいう。以下同じ。)の

全部又は一部を使用しようとするときは、当該存続期間の満了の日の7月前から4月前ま

での間に、当該使用権設定土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、土地等使用権の

存続期間の延長についての裁定を申請することができる。

2 第10 条(第1項及び第5項を除く。)から第12 条までの規定は、前項の規定による裁

定の申請について準用する。この場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄

に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、必要な

技術的読替えは、政令で定める。

テーブル

自動的に生成された説明
テーブル

自動的に生成された説明

3 都道府県知事は、前項において準用する第12 条第1項又は第2項の規定により第1項

の規定による裁定の申請を却下する場合を除き、同項の規定による裁定の申請をした使用

権者が有する土地等使用権の存続期間を延長することが当該申請に係る事業を実施する

ため必要かつ適当であると認めるときは、その必要の限度において、土地等使用権の存続

期間の延長についての裁定をしなければならない。

4 第13 条(第1項を除く。)から前条までの規定は、前項の裁定について準用する。こ

の場合において、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表

の下欄に掲げる字句に読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

(標識の設置)

第20 条 使用権者は、国土交通省令で定めるところにより、使用権設定土地の区域内に、

当該使用権設定土地が地域福利増進事業の用に供されている旨を表示した標識を設けな

ければならない。ただし、当該区域内に設けることが困難であるときは、事業区域内の見

やすい場所にこれを設けることができる。

2 何人も、前項の規定により設けられた標識を使用権者の承諾を得ないで移転し、若しく

は除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。

(裁定に基づく地位の承継)

第21 条 相続人、合併又は分割により設立される法人その他の使用権者の一般承継人(分

割による承継の場合にあっては、当該使用権者が実施する事業の全部を承継する法人に限

る。)は、当該使用権者が有していた第13 条第1項の裁定(第19 条第3項の裁定を含む。

以下この款において単に「裁定」という。)に基づく地位を承継する。

(権利の譲渡)

第22 条 使用権者は、土地使用権等の全部又は一部を譲り渡そうとするときは、国土交通

省令で定めるところにより、都道府県知事の承認を受けなければならない。この場合にお

いて、当該使用権者は、土地使用権等の全部を譲り渡そうとするときはその実施する事業

の全部を、土地使用権等の一部を譲り渡そうとするときはその実施する事業のうち当該土

地使用権等の一部に対応する部分を併せて譲り渡さなければならない。

2 都道府県知事は、前項の承認をしたときは、国土交通省令で定めるところにより、その

旨を公告しなければならない。

3 第1項の承認に係る土地使用権等の全部又は一部を譲り受けた者は、使用権者が有して

いた裁定に基づく地位を承継する。

(裁定の取消し)

第23 条 都道府県知事は、使用権者が次の各号のいずれかに該当するときは、裁定(前条

第1項の承認を含む。以下この条において同じ。)を取り消すことができる。

一 この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したとき。

二 実施する事業が第11 条第1項各号(第2号を除き、第19 条第2項において準用する

場合を含む。)に掲げる要件のいずれかに該当しないこととなったとき。

74

三 正当な理由なく裁定申請(第19 条第1項の規定による裁定の申請を含む。)に係る

事業計画に従って事業を実施していないと認められるとき。

2 都道府県知事は、前項の規定により裁定を取り消したときは、国土交通省令で定めると

ころにより、その旨を公告しなければならない。

3 裁定は、前項の規定による公告があった日以後その効力を失う。

(原状回復の義務)

第24 条 使用権者は、土地等使用権の存続期間が満了したとき、土地使用権等の始期後に

第18 条(第19 条第4項において準用する場合を含む。)の規定により裁定が失効したと

き又は前条第1項の規定により裁定が取り消されたときは、使用権設定土地を原状に回復

し、これを返還しなければならない。ただし、当該使用権設定土地を原状に回復しないこ

とについてその確知所有者の全ての同意が得られたときは、この限りでない。

(原状回復命令等)

第25 条 都道府県知事は、前条の規定に違反した者に対し、相当の期限を定めて、使用権

設定土地を原状に回復することを命ずることができる。

2 都道府県知事は、前項の規定により使用権設定土地の原状回復を命じようとする場合に

おいて、過失がなくて当該原状回復を命ずべき者を確知することができず、かつ、その違

反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、その者の負担において、当

該原状回復を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。

この場合においては、相当の期限を定めて、当該原状回復を行うべき旨及びその期限まで

に当該原状回復を行わないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が

当該原状回復を行うべき旨を、あらかじめ、公告しなければならない。

3 前項の規定により使用権設定土地の原状回復を行おうとする者は、その身分を示す証明

書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

(報告及び立入検査)

第26 条 都道府県知事は、この款の規定の施行に必要な限度において、使用権者(裁定申

請をしている事業者でまだ土地使用権等を取得していないもの及び使用権者であった者

を含む。以下この項において同じ。)に対し、その事業に関し報告をさせ、又はその職員

に、使用権者の事務所、使用権設定土地その他の場所に立ち入り、その事業の状況若しく

は事業に係る施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させるこ

とができる。

2 第13 条第6項及び第7 項の規定は、前項の規定による立入検査について準用する。

第2節 特定所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法の特例

第1款 収用適格事業のための特定所有者不明土地の収用又は使用に関する特例

(裁定申請)

第27 条 起業者(土地収用法第8条第1項に規定する起業者をいう。以下同じ。)は、同

法第20 条の事業の認定を受けた収用適格事業について、その起業地(同法第17 条第1項

第2号に規定する起業地をいう。)内にある特定所有者不明土地を収用し、又は使用しよ

うとするときは、同法第26 条第1項の規定による告示があった日(同法第31 条の規定に

より収用又は使用の手続が保留されていた特定所有者不明土地にあっては、同法第34 条

の3の規定による告示があった日)から1年以内に、当該特定所有者不明土地の所在地を

管轄する都道府県知事に対し、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定を申請

することができる。

2 前項の規定による裁定の申請(以下この款において「裁定申請」という。)をしようと

する起業者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した裁定申請

書を都道府県知事に提出しなければならない。

一 起業者の氏名又は名称及び住所

二 事業の種類

75

三 収用し、又は使用しようとする特定所有者不明土地(以下この款(次条第1項各号列

記以外の部分及び第29 条第1項を除く。)において単に「特定所有者不明土地」とい

う。)の所在、地番、地目及び地積

四 特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

五 特定所有者不明土地に関する所有権その他の権利を取得し、又は消滅させる時期

六 特定所有者不明土地等(特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある物件

をいう。次項第2号ハ及び第31 条第3項において同じ。)の引渡し又は当該物件の移

転の期限(第32 条第2項第3号において「特定所有者不明土地等の引渡し等の期限」

という。)

七 特定所有者不明土地を使用しようとする場合においては、その方法及び期間

3 前項の裁定申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 土地収用法第40 条第1項第1号の事業計画書に記載すべき事項に相当するものとし

て国土交通省令で定める事項を記載した事業計画書

二 次に掲げる事項を記載した補償金額見積書

イ 特定所有者不明土地の面積(特定所有者不明土地を含む一団の土地が分割されるこ

ととなる場合にあっては、当該一団の土地の全部の面積を含む。)

ロ 特定所有者不明土地にある物件の種類及び数量

ハ 特定所有者不明土地等の確知所有者の全部の氏名又は名称及び住所

ニ 特定所有者不明土地の確知関係人(土地収用法第8条第3項に規定する関係人(ホ

において単に「関係人」という。)であって、相当な努力が払われたと認められるも

のとして政令で定める方法により探索を行ってもなお確知することができないもの

以外の者をいう。次条第2項において同じ。)の全部の氏名又は名称及び住所並びに

その権利の種類及び内容

ホ 特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者

等(特定所有者不明土地の所有者又は関係人をいう。以下同じ。)が受ける損失の補

償金の見積額及びその内訳

三 その他国土交通省令で定める書類

(公告及び縦覧)

第28 条 都道府県知事は、裁定申請があった場合においては、起業者が収用し、又は使用

しようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認めるときその他当該裁定申請

が相当でないと認めるときを除き、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項

を公告し、前条第2項の裁定申請書及びこれに添付された同条第3項各号に掲げる書類を

当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければならない。

一 裁定申請があった旨

二 特定所有者不明土地の所在、地番及び地目

三 次のイ又はロに掲げる者は、縦覧期間内に、国土交通省令で定めるところにより、そ

の権原を証する書面を添えて、都道府県知事に当該イ又はロに定める事項を申し出るべ

き旨

イ 特定所有者不明土地所有者等又は特定所有者不明土地の準関係人(土地収用法第

43 条第2項に規定する準関係人をいう。)であって、前条第2項の裁定申請書又は

同条第3項第2号の補償金額見積書に記載された事項(裁定申請書にあっては、同条

第2項第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を除く。)について異議のあるもの

当該異議の内容及びその理由

ロ 特定所有者不明土地の所有者であって、前条第3項第2号の補償金額見積書に特定

所有者不明土地の確知所有者として記載されていないもの(イに掲げる者を除く。)

当該特定所有者不明土地の所有者である旨

四 その他国土交通省令で定める事項

76

2 都道府県知事は、前項の規定による公告をしようとするときは、あらかじめ、国土交通

省令で定めるところにより、裁定申請があった旨を、前条第3項第2号の補償金額見積書

に記載された特定所有者不明土地の確知所有者及び確知関係人に通知しなければならな

い。

(裁定申請の却下)

第29 条 都道府県知事は、裁定申請があった場合において、起業者が収用し、又は使用し

ようとする土地が特定所有者不明土地に該当しないと認めるときその他当該裁定申請が

相当でないと認めるときは、当該裁定申請を却下しなければならない。

2 都道府県知事は、前条第1項の規定による公告をした場合において、同項の縦覧期間内

に同項第3号イの規定による申出があったとき又は同号ロに掲げる者の全てから同号ロ

の規定による申出があったときは、当該公告に係る裁定申請を却下しなければならない。

3 都道府県知事は、前2項の規定により裁定申請を却下したときは、遅滞なく、国土交通

省令で定めるところにより、その理由を示して、その旨を当該裁定申請をした起業者に通

知しなければならない。

(裁定手続の開始の決定等)

第30 条 都道府県知事は、裁定申請があった場合においては、前条第1項又は第2項の規

定により当該裁定申請を却下するときを除き、第28 条第1項の縦覧期間の経過後遅滞な

く、国土交通省令で定めるところにより、特定所有者不明土地の収用又は使用についての

裁定手続の開始を決定してその旨を公告し、かつ、当該特定所有者不明土地の所在地を管

轄する登記所に、当該特定所有者不明土地及び当該特定所有者不明土地に関する権利につ

いて、特定所有者不明土地の収用又は使用についての裁定手続の開始の登記を嘱託しなけ

ればならない。

2 土地収用法第45 条の3の規定は、前項の裁定手続の開始の登記について準用する。

3 第1項の規定による裁定手続の開始の決定については、行政手続法(平成5年法律第88

号)第3章の規定は、適用しない。

(土地収用法との調整)

第31 条 裁定申請に係る特定所有者不明土地については土地収用法第39 条第1項の規定

による裁決の申請をすることができず、同項の規定による裁決の申請に係る特定所有者不

明土地については裁定申請をすることができない。

2 裁定申請に係る特定所有者不明土地については、土地収用法第29 条第1項の規定は、

適用しない。

3 裁定申請に係る特定所有者不明土地等については、土地収用法第36 条第1項の規定に

かかわらず、同項の土地調書及び物件調書を作成することを要しない。

4 裁定申請に係る特定所有者不明土地について、第28 条第1項の規定による公告がある

までの間に土地収用法第39 条第2項の規定による請求があったときは、当該裁定申請は、

なかったものとみなす。

5 裁定申請について第28 条第1項の規定による公告があったときは、当該裁定申請に係

る特定所有者不明土地については、土地収用法第39 条第2項の規定による請求をするこ

とができない。

6 第29 条第2項の規定により裁定申請が却下された場合における当該裁定申請に係る特

定所有者不明土地についての土地収用法第29 条第1項及び第39 条第1項の規定の適用

については、これらの規定中「1年以内」とあるのは、「特定期間(当該事業に係る特定

所有者不明土地(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30 年法律

第49 号)第2条第2項に規定する特定所有者不明土地をいう。)について同法第27 条第

1項の規定による裁定の申請があつた日から同法第29 条第2項の規定による処分に係る

同条第3項の規定による通知があつた日までの期間をいう。)を除いて1年以内」とする。

(裁定)

77

第32 条 都道府県知事は、第29 条第1項又は第2項の規定により裁定申請を却下するとき

及び裁定申請が次の各号のいずれかに該当するときを除き、裁定申請をした起業者が当該

裁定申請に係る事業を実施するため必要な限度において、特定所有者不明土地の収用又は

使用についての裁定をしなければならない。

一 裁定申請に係る事業が土地収用法第26 条第1項の規定により告示された事業と異な

るとき。

二 裁定申請に係る事業計画が土地収用法第18 条第2項の規定により事業認定申請書に

添付された事業計画書に記載された計画と著しく異なるとき。

2 前項の裁定(以下この款において単に「裁定」という。)においては、次に掲げる事項

を定めなければならない。

一 特定所有者不明土地の所在、地番、地目及び面積

二 特定所有者不明土地に関する所有権その他の権利を取得し、又は消滅させる時期

三 特定所有者不明土地等の引渡し等の期限

四 特定所有者不明土地を使用する場合においては、その方法及び期間

五 特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明土地所有者等

が受ける損失の補償金の額

六 第35 条第2項の規定による請求書又は要求書の提出があった場合においては、その

採否の決定その他当該請求又は要求に係る損失の補償の方法に関し必要な事項

3 裁定は、前項第1号及び第4号に掲げる事項については裁定申請の範囲を超えてはなら

ず、同項第5号の補償金の額については裁定申請に係る補償金の見積額を下限としなけれ

ばならない。

4 都道府県知事は、裁定をしようとするときは、第2項第5号に掲げる事項について、あ

らかじめ、収用委員会の意見を聴かなければならない。

5 収用委員会は、前項の規定により意見を述べるため必要があると認めるときは、その委

員又はその事務を整理する職員に、裁定申請に係る特定所有者不明土地又は当該特定所有

者不明土地にある簡易建築物等その他の工作物に立ち入り、その状況を調査させることが

できる。

6 第13 条第6項及び第7 項の規定は、前項の規定による立入調査について準用する。

(裁定の通知等)

第33 条 都道府県知事は、裁定をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところに

より、その旨及び前条第2項各号に掲げる事項を、裁定申請をした起業者及び当該事業に

係る特定所有者不明土地所有者等で知れているものに文書で通知するとともに、公告しな

ければならない。

(裁定の効果)

第34 条 裁定について前条の規定による公告があったときは、当該裁定に係る特定所有者

不明土地について土地収用法第48 条第1項の権利取得裁決及び同法第49 条第1項の明

渡裁決があったものとみなして、同法第7 章の規定を適用する。

(損失の補償に関する土地収用法の準用)

第35 条 土地収用法第6章第1節(第716 条、第717 条後段、第718 条、第811 条から第

813 条まで、第816 条、第817 条及び第910 条の2から第910 条の4 までを除く。)の規

定は、裁定に係る特定所有者不明土地を収用し、又は使用することにより特定所有者不明

土地所有者等が受ける損失の補償について準用する。この場合において、同法第710 条た

だし書中「第812 条から第816 条まで」とあるのは「所有者不明土地の利用の円滑化等に

関する特別措置法(平成30 年法律第49 号。以下「所有者不明土地法」という。)第35 条

第1項において準用する第814 条又は第815 条」と、「収用委員会の裁決」とあるのは「都

道府県知事の裁定」と、同法第711 条中「権利取得裁決」とあり、並びに同法第713 条、

第814 条第2項及び第815 条第2項中「明渡裁決」とあるのは「所有者不明土地法第32

条第1項の裁定」と、同法第810 条中「前2条」とあるのは「所有者不明土地法第35 条

78

第1項において準用する前条」と、同法第814 条第1項中「起業者、土地所有者又は関係

人」とあるのは「起業者」と、同項及び同条第2項、同条第3項において準用する同法第

813 条第3項から第6項まで並びに同法第815 条中「収用委員会」とあるのは「都道府県

知事」と、同法第814 条第2項、同条第3項において準用する同法第813 条第3項及び同

法第815 条第2項中「裁決を」とあるのは「裁定を」と、同条第1項中「起業者又は物件

の所有者」とあるのは「起業者」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、

政令で定める。

2 前項において準用する土地収用法第719 条の規定による請求又は同項において準用す

る同法第814 条第1項若しくは第815 条第1項の規定による要求をしようとする起業者

は、裁定申請をする際に、併せて当該請求又は要求の内容その他国土交通省令で定める事

項を記載した請求書又は要求書を都道府県知事に提出しなければならない。

(立入調査)

第36 条 都道府県知事は、この款の規定の施行に必要な限度において、その職員に、裁定

申請に係る特定所有者不明土地又は当該特定所有者不明土地にある簡易建築物等その他

の工作物に立ち入り、その状況を調査させることができる。

2 第13 条第6項及び第7 項の規定は、前項の規定による立入調査について準用する。

第2款 都市計画事業のための特定所有者不明土地の収用又は使用に関する特例

第37 条 施行者(都市計画法(昭和43 年法律第100 号)第4条第16 項に規定する施行者

をいう。第3項において同じ。)は、同法第59 条第1項から第4項までの認可又は承認

を受けた都市計画事業(同法第4条第15 項に規定する都市計画事業をいう。第43 条第1

項及び第58 条第2号において同じ。)について、その事業地(同法第60 条第2項第1号

に規定する事業地をいう。)内にある特定所有者不明土地を収用し、又は使用しようとす

るときは、当該特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に対し、特定所有者

不明土地の収用又は使用についての裁定を申請することができる。

2 第27 条第2項及び第3項、第28 条から第30 条まで並びに第31 条第1項及び第3項か

ら第5項までの規定は、前項の規定による裁定の申請について準用する。この場合におい

て、第27 条第2項中「起業者は」とあるのは「施行者(都市計画法第4条第16 項に規定

する施行者をいう。以下同じ。)は」と、同項第1号、第28 条第1項並びに第29 条第1

項及び第3項中「起業者」とあるのは「施行者」と、第27 条第3項第1号及び第2号ニ、

第28 条第1項第3号イ、第30 条第2項並びに第31 条第1項及び第3項から第5項まで

の規定中「土地収用法」とあるのは「都市計画法第609 条の規定により適用される土地収

用法」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

3 都道府県知事は、前項において準用する第29 条第1項又は第2項の規定により第1項

の規定による裁定の申請(以下この項において「裁定申請」という。)を却下するとき及

び裁定申請が次の各号のいずれかに該当するときを除き、裁定申請をした施行者が当該裁

定申請に係る事業を実施するため必要な限度において、特定所有者不明土地の収用又は使

用についての裁定をしなければならない。

一 裁定申請に係る事業が都市計画法第602 条第1項の規定により告示された事業と異

なるとき。

二 裁定申請に係る事業計画が都市計画法第60 条第1項第3号(同法第603 条第2項に

おいて準用する場合を含む。)の事業計画と著しく異なるとき。

4 第32 条(第1項を除く。)から前条までの規定は、前項の裁定について準用する。こ

の場合において、第33 条中「起業者」とあるのは「施行者(都市計画法第4条第16 項に

規定する施行者をいう。以下同じ。)」と、第34 条及び第35 条中「土地収用法」とあり、

及び「同法」とあるのは「都市計画法第609 条の規定により適用される土地収用法」と、

同条第1項中「起業者」」とあるのは「施行者」」と、同条第2項中「起業者」とあるの

は「施行者」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。

第3節 所有者不明土地の管理の適正化のための措置

79

(勧告)

第38 条 市町村長は、所有者不明土地のうち、所有者による管理が実施されておらず、か

つ、引き続き管理が実施されないことが確実であると見込まれるもの(以下「管理不全所

有者不明土地」という。)による次に掲げる事態の発生を防止するために必要かつ適当で

あると認める場合には、その必要の限度において、当該管理不全所有者不明土地の確知所

有者に対し、期限を定めて、当該事態の発生の防止のために必要な措置(次条及び第40 条

第1項において「災害等防止措置」という。)を講ずべきことを勧告することができる。

一 当該管理不全所有者不明土地における土砂の流出又は崩壊その他の事象によりその

周辺の土地において災害を発生させること。

二 当該管理不全所有者不明土地の周辺の地域において環境を著しく悪化させること。

2 市町村長は、前項の規定による勧告をする場合において、当該勧告に係る管理不全所有

者不明土地に隣接する土地であって、地目、地形その他の条件が類似し、かつ、当該土地

の管理の状況が当該管理不全所有者不明土地と同1 の状況にあるもの(以下「管理不全隣

接土地」という。)による次に掲げる事態の発生を防止するために必要かつ適当であると

認めるときは、その必要の限度において、当該管理不全隣接土地の所有者に対しても、期

限を定めて、当該管理不全隣接土地について、当該事態の発生の防止のために必要な措置

を講ずべきことを勧告することができる。

一 当該管理不全隣接土地及び当該管理不全隣接土地に係る管理不全所有者不明土地に

おける土砂の流出又は崩壊その他の事象によりその周辺の土地において災害を発生さ

せること。

二 当該管理不全隣接土地及び当該管理不全隣接土地に係る管理不全所有者不明土地の

周辺の地域において環境を著しく悪化させること。

(災害等防止措置命令)

第39 条 市町村長は、前条第1項の勧告に係る確知所有者が正当な理由がなくて当該勧告

に係る災害等防止措置を講じないときは、当該確知所有者に対し、相当の期限を定めて、

当該災害等防止措置を講ずべきことを命ずることができる。ただし、当該確知所有者が当

該災害等防止措置の実施に必要な共有持分を有しない者である場合は、この限りでない。

(代執行)

第40 条 市町村長は、次の各号のいずれかに該当する場合において、管理不全所有者不明

土地における災害等防止措置に係る事態を放置することが著しく公益に反すると認めら

れるときは、当該管理不全所有者不明土地の所有者の負担において、当該災害等防止措置

を自ら講じ、又はその命じた者若しくは委任した者(以下この項において「措置実施者」

という。)に当該災害等防止措置を講じさせることができる。この場合において、第1号

又は第2号に該当すると認めるときは、市町村長は、相当の期限を定めて、当該災害等防

止措置を講ずべき旨及びその期限までに当該災害等防止措置を講じないときは市町村長

又は措置実施者が当該災害等防止措置を講ずる旨を、あらかじめ公告しなければならない。

一 管理不全所有者不明土地の確知所有者がいない場合

二 前条ただし書に規定する場合

3 前条の規定により災害等防止措置を講ずべきことを命ぜられた確知所有者が、当該命令

に係る期限までに当該命令に係る災害等防止措置を講じない場合、講じても十分でない場

合又は講ずる見込みがない場合

2 前項の規定により負担させる費用の徴収については、行政代執行法(昭和23 年法律第

43 号)第5条及び第6条の規定を準用する。

(立入調査)

第41 条 市町村長は、この節の規定の施行に必要な限度において、その職員に、管理不全

所有者不明土地又は管理不全隣接土地に立ち入り、その状況を調査させることができる。

2 第13 条第6項及び第7 項の規定は、前項の規定による立入調査について準用する。

第4節 所有者不明土地の管理に関する民法の特例

80

第42 条 国の行政機関の長又は地方公共団体の長(次項及び第5項並びに次条第2項及び

第5項において「国の行政機関の長等」という。)は、所有者不明土地につき、その適切

な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法(明治29 年法律

第819 号)第25 条第1項の規定による命令又は同法第952 条第1項の規定による相続財

産の清算人の選任の請求をすることができる。

2 国の行政機関の長等は、所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要がある

と認めるときは、地方裁判所に対し、民法第264 条の2第1項の規定による命令の請求を

することができる。

3 市町村長は、管理不全所有者不明土地につき、次に掲げる事態の発生を防止するため特

に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、民法第264 条の9第1項の規定による

命令の請求をすることができる。

一 当該管理不全所有者不明土地における土砂の流出又は崩壊その他の事象によりその

周辺の土地において災害を発生させること。

二 当該管理不全所有者不明土地の周辺の地域において環境を著しく悪化させること。

4 市町村長は、管理不全隣接土地につき、次に掲げる事態の発生を防止するため特に必要

があると認めるときは、地方裁判所に対し、民法第264 条の9第1項の規定による命令の

請求をすることができる。

一 当該管理不全隣接土地及び当該管理不全隣接土地に係る管理不全所有者不明土地に

おける土砂の流出又は崩壊その他の事象によりその周辺の土地において災害を発生さ

せること。

二 当該管理不全隣接土地及び当該管理不全隣接土地に係る管理不全所有者不明土地の

周辺の地域において環境を著しく悪化させること。

5 国の行政機関の長等は、第2項(市町村長にあっては、前3項)の規定による請求をす

る場合において、当該請求に係る土地にある建物につき、その適切な管理のため特に必要

があると認めるときは、地方裁判所に対し、当該請求と併せて民法第264 条の8第1項又

は第264 条の14 第1項の規定による命令の請求をすることができる。

第4章 土地の所有者の効果的な探索のための特別の措置

第1節 土地所有者等関連情報の利用及び提供

第43 条 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業、収用適格事業又は都市計画事

業(以下「地域福利増進事業等」という。)の実施の準備のため当該地域福利増進事業等

を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等(土地又は当該土地にある物件に関し所

有権その他の権利を有する者をいう。以下同じ。)を知る必要があるとき、第38 条第1

項の規定による勧告を行うため当該勧告に係る土地の土地所有者等を知る必要があると

き又は前条第1項から第3項まで若しくは第5項(第4項に係る部分を除く。)の規定に

よる請求を行うため当該請求に係る土地の土地所有者等を知る必要があるときは、当該土

地所有者等の探索に必要な限度で、その保有する土地所有者等関連情報(土地所有者等と

思料される者に関する情報のうちその者の氏名又は名称、住所その他国土交通省令で定め

るものをいう。以下この条において同じ。)を、その保有に当たって特定された利用の目

的以外の目的のために内部で利用することができる。

2 都道府県知事及び市町村長は、地域福利増進事業等を実施しようとする者からその準備

のため当該地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る

必要があるとして、当該市町村長以外の市町村長から第38 条第1項の規定による勧告を

行うため当該勧告に係る土地の土地所有者等を知る必要があるとして、又は国の行政機関

の長等から前条第1項から第3項まで若しくは第5項(第4項に係る部分を除く。)の規

定による請求を行うため当該請求に係る土地の土地所有者等を知る必要があるとして、土

地所有者等関連情報の提供の求めがあったときは、当該土地所有者等の探索に必要な限度

で、当該地域福利増進事業等を実施しようとする者、当該市町村長又は当該国の行政機関

の長等に対し、土地所有者等関連情報を提供するものとする。

81

3 前項の場合において、都道府県知事及び市町村長は、国及び地方公共団体以外の者に対

し土地所有者等関連情報を提供しようとするときは、あらかじめ、当該土地所有者等関連

情報を提供することについて本人(当該土地所有者等関連情報によって識別される特定の

個人をいう。)の同意を得なければならない。

4 前項の同意は、その所在が判明している者に対して求めれば足りる。

5 国の行政機関の長等は、地域福利増進事業等の実施の準備のため当該地域福利増進事業

等を実施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る必要があるとき、第38 条第1

項の規定による勧告を行うため当該勧告に係る土地の土地所有者等を知る必要があると

き又は前条第1項から第3項まで若しくは第5項(第4項に係る部分を除く。)の規定に

よる請求を行うため当該請求に係る土地の土地所有者等を知る必要があるときは、当該土

地所有者等の探索に必要な限度で、当該土地に工作物を設置している者その他の者に対し、

土地所有者等関連情報の提供を求めることができる。

第2節 特定登記未了土地の相続登記等に関する不動産登記法の特例

第44 条 登記官は、起業者その他の公共の利益となる事業を実施しようとする者からの求

めに応じ、当該事業を実施しようとする区域内の土地につきその所有権の登記名義人に係

る死亡の事実の有無を調査した場合において、当該土地が特定登記未了土地に該当し、か

つ、当該土地につきその所有権の登記名義人の死亡後10 年以上30 年以内において政令で

定める期間を超えて相続登記等がされていないと認めるときは、当該土地の所有権の登記

名義人となり得る者を探索した上、職権で、所有権の登記名義人の死亡後長期間にわたり

相続登記等がされていない土地である旨その他当該探索の結果を確認するために必要な

事項として法務省令で定めるものをその所有権の登記に付記することができる。

2 登記官は、前項の規定による探索により当該土地の所有権の登記名義人となり得る者を

知ったときは、その者に対し、当該土地についての相続登記等の申請を勧告することがで

きる。この場合において、登記官は、相当でないと認めるときを除き、相続登記等を申請

するために必要な情報を併せて通知するものとする。

3 登記官は、前2項の規定の施行に必要な限度で、関係地方公共団体の長その他の者に対

し、第1項の土地の所有権の登記名義人に係る死亡の事実その他当該土地の所有権の登記

名義人となり得る者に関する情報の提供を求めることができる。

4 前3項に定めるもののほか、第1項の規定による所有権の登記にする付記についての登

記簿及び登記記録の記録方法その他の登記の事務並びに第2項の規定による勧告及び通

知に関し必要な事項は、法務省令で定める。

第5 章 所有者不明土地対策計画等

(所有者不明土地対策計画)

第45 条 市町村は、単独で又は共同して、基本方針に基づき、所有者不明土地の利用の円

滑化等を図るための施策に関する計画(以下「所有者不明土地対策計画」という。)を作

成することができる。

2 所有者不明土地対策計画には、おおむね次に掲げる事項を記載するものとする。

一 所有者不明土地の利用の円滑化等を図るための施策に関する基本的な方針

二 地域福利増進事業を実施しようとする者に対する情報の提供又は助言その他の所有

者不明土地の利用の円滑化を図るために講ずべき施策に関する事項

三 所有者不明土地の確知所有者に対する情報の提供又は助言その他の所有者不明土地

の管理の適正化を図るために講ずべき施策に関する事項

四 地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地その他の土地に係る土地所有

者等の効果的な探索を図るために講ずべき施策に関する事項

五 低未利用土地(土地基本法(平成元年法律第814 号)第13 条第4項に規定する低未

利用土地をいう。第48 条第6号において同じ。)の適正な利用及び管理の促進その他

所有者不明土地の発生の抑制のために講ずべき施策に関する事項

六 所有者不明土地の利用の円滑化等を図るための体制の整備に関する事項

82

七 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する普及啓発に関する事項

八 前各号に掲げるもののほか、所有者不明土地の利用の円滑化等を図るために必要な事

3 市町村は、所有者不明土地対策計画を作成しようとする場合において、次条第1項に規

定する協議会が組織されているときは、当該所有者不明土地対策計画に記載する事項につ

いて当該協議会において協議しなければならない。

4 市町村は、所有者不明土地対策計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表するとと

もに、都道府県にその写しを送付しなければならない。

5 前2項の規定は、所有者不明土地対策計画の変更について準用する。

6 国は、所有者不明土地対策計画に基づいて所有者不明土地の利用の円滑化等を図るため

に必要な事業又は事務を行う市町村に対し、予算の範囲内において、当該事業又は事務に

要する費用の一部を補助することができる。

(所有者不明土地対策協議会)

第46 条 市町村は、単独で又は共同して、所有者不明土地対策計画の作成及び変更に関す

る協議その他所有者不明土地の利用の円滑化等を図るための施策に関し必要な協議を行

うため、所有者不明土地対策協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織す

ることができる。

2 協議会は、次に掲げる者をもって構成する。

一 前項の市町村

二 次条第1項に規定する推進法人

三 前項の市町村の区域において地域福利増進事業等を実施し、又は実施しようとする者

3 第1項の規定により協議会を組織する市町村は、必要があると認めるときは、前項各号

に掲げる者のほか、協議会に、次に掲げる者を構成員として加えることができる。

一 関係都道府県

二 国の関係行政機関、学識経験者その他の当該市町村が必要と認める者

4 協議会は、必要があると認めるときは、その構成員以外の関係行政機関に対し、資料の

提供、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。

5 協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊

重しなければならない。

6 前各項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。

第6章 所有者不明土地利用円滑化等推進法人

(所有者不明土地利用円滑化等推進法人の指定)

第47 条 市町村長は、特定非営利活動促進法(平成10 年法律第7号)第2条第2項に規定

する特定非営利活動法人、一般社団法人若しくは一般財団法人又は所有者不明土地の利用

の円滑化等の推進を図る活動を行うことを目的とする会社であって、次条各号に掲げる業

務を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により、所有者不明

土地利用円滑化等推進法人(以下「推進法人」という。)として指定することができる。

2 市町村長は、前項の規定による指定をしたときは、当該推進法人の名称又は商号、住所

及び事務所又は営業所の所在地を公示しなければならない。

3 推進法人は、その名称若しくは商号、住所又は事務所若しくは営業所の所在地を変更す

るときは、あらかじめ、その旨を市町村長に届け出なければならない。

4 市町村長は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなけ

ればならない。

(推進法人の業務)

第48 条 推進法人は、次に掲げる業務を行うものとする。

一 地域福利増進事業等を実施し、又は実施しようとする者に対し、情報の提供、相談そ

の他の援助を行うこと。

二 地域福利増進事業を実施すること又は地域福利増進事業に参加すること。

三 所有者不明土地(当該所有者不明土地に隣接する土地であって、地目、地形その他の

条件が類似しているものを含む。以下この号において同じ。)の所有者に対し、当該所

有者不明土地の管理の方法に関する情報の提供又は相談その他の当該所有者不明土地

の適正な管理を図るために必要な援助を行うこと。

四 所有者不明土地の利用の円滑化又は管理の適正化を図るために必要な土地の取得、管

理又は譲渡を行うこと。

五 委託に基づき、地域福利増進事業等を実施しようとする区域内の土地その他の土地の

土地所有者等の探索を行うこと。

六 低未利用土地の適正な利用及び管理の促進その他所有者不明土地の発生の抑制を図

るために必要な事業又は事務を行うこと。

七 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する調査研究を行うこと。

八 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する普及啓発を行うこと。

九 前各号に掲げるもののほか、所有者不明土地の利用の円滑化等を図るために必要な事

業又は事務を行うこと。

(監督等)

第49 条 市町村長は、前条各号に掲げる業務の適正かつ確実な実施を確保するため必要が

あると認めるときは、推進法人に対し、その業務に関し報告をさせることができる。

2 市町村長は、推進法人が前条各号に掲げる業務を適正かつ確実に実施していないと認め

るときは、推進法人に対し、その業務の運営の改善に関し必要な措置を講ずべきことを命

ずることができる。

3 市町村長は、推進法人が前項の規定による命令に違反したときは、第47 条第1項の規

定による指定を取り消すことができる。

4 市町村長は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければなら

ない。

(情報の提供等)

第50 条 国及び関係地方公共団体は、推進法人に対し、その業務の実施に関し必要な情報

の提供又は指導若しくは助言をするものとする。

(市町村長への要請)

第51 条 推進法人は、所有者不明土地につきその適切な管理のため特に必要があると認め

るとき又は管理不全所有者不明土地若しくは管理不全隣接土地につき第42 条第3項各号

若しくは第4項各号に掲げる事態の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、

市町村長に対し、同条各項の規定による請求をするよう要請することができる。

2 市町村長は、前項の規定による要請があった場合において、必要があると認めるときは、

第42 条各項の規定による請求をするものとする。

3 市町村長は、第1項の規定による要請があった場合において、第42 条各項の規定によ

る請求をする必要がないと判断したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該要請

をした推進法人に通知しなければならない。

(推進法人による所有者不明土地対策計画の作成等の提案)

第52 条 推進法人は、その業務を行うために必要があると認めるときは、市町村に対し、

国土交通省令で定めるところにより、所有者不明土地対策計画の作成又は変更をすること

を提案することができる。この場合においては、基本方針に即して、当該提案に係る所有

者不明土地対策計画の素案を作成して、これを提示しなければならない。

2 前項の規定による提案を受けた市町村は、当該提案に基づき所有者不明土地対策計画の

作成又は変更をするか否かについて、遅滞なく、当該提案をした推進法人に通知しなけれ

ばならない。この場合において、所有者不明土地対策計画の作成又は変更をしないことと

するときは、その理由を明らかにしなければならない。

第7 章 雑則

(職員の派遣の要請)

84

第53 条 都道府県知事は、地域福利増進事業等の実施の準備のためその職員に土地所有者

等の探索に関する専門的な知識を習得させる必要があるときは、国土交通省令で定めると

ころにより、国土交通大臣に対し、国土交通省の職員の派遣を要請することができる。

2 市町村長は、次に掲げる場合においては、国土交通省令で定めるところにより、国土交

通大臣に対し、国土交通省の職員の派遣を要請することができる。

一 地域福利増進事業等の実施の準備のため又は第38 条第1項の規定による勧告を適切

に行うためその職員に土地所有者等の探索に関する専門的な知識を習得させる必要が

あるとき。

二 所有者不明土地対策計画の作成若しくは変更又は所有者不明土地の管理の適正化を

図るために行う事業若しくは事務の実施の準備若しくは実施のため必要があるとき。

(職員の派遣の配慮)

第54 条 国土交通大臣は、前条各項の規定による要請があったときは、その所掌事務又は

業務の遂行に著しい支障のない限り、適任と認める職員を派遣するよう努めるものとする。

(地方公共団体の援助)

第55 条 地方公共団体は、地域福利増進事業を実施しようとする者その他の所有者不明土

地を使用しようとする者の求めに応じ、所有者不明土地の使用の方法に関する提案、所有

者不明土地の境界を明らかにするための措置に関する助言、土地の権利関係又は評価につ

いて特別の知識経験を有する者のあっせんその他の援助を行うよう努めるものとする。

(手数料)

第56 条 都道府県は、第27 条第1項又は第37 条第1項の規定による裁定の申請に係る手

数料の徴収については、当該裁定の申請をする者から、実費の範囲内において、当該事務

の性質を考慮して損失の補償金の見積額に応じ政令で定める額を徴収することを標準と

して条例を定めなければならない。

(権限の委任)

第57 条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、

その一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。

(事務の区分)

第58 条 この法律の規定により都道府県が処理することとされている事務のうち次に掲げ

るものは、地方自治法(昭和22 年法律第607 号)第2条第9 項第1号に規定する第1号

法定受託事務とする。

一 第28 条、第29 条、第30 条第1項、第32 条第1項、第33 条、第35 条第1項におい

て準用する土地収用法第814 条第2項、第815 条第2項及び第819 条第1項、第35 条

第1項において準用する同法第814 条第3項において準用する同法第813 条第3項か

ら第6項まで並びに第36 条第1項に規定する事務(同法第17 条第1項各号に掲げる事

業又は同法第27 条第2項若しくは第4項の規定により国土交通大臣の事業の認定を受

けた事業に関するものに限る。)

二 第37 条第2項において準用する第28 条、第29 条及び第30 条第1項、第37 条第3

項、同条第4項において準用する第33 条、同項において準用する第35 条第1項におい

て準用する土地収用法第814 条第2項、第815 条第2項及び第819 条第1項、第37 条

第4項において準用する第35 条第1項において準用する同法第814 条第3項において

準用する同法第813 条第3項から第6項まで並びに第37 条第4項において準用する第

36 条第1項に規定する事務(都市計画法第59 条第1項から第3項までの規定により国

土交通大臣の認可又は承認を受けた都市計画事業に関するものに限る。)

(省令への委任)

第59 条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、国土交通省

令又は法務省令で定める。

(経過措置)

85

第60 条 この法律に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、そ

の制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則

に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第8章 罰則

第601 条 第25 条第1項の規定による命令に違反したときは、その違反行為をした者は、

1年以下の懲役又は30 万円以下の罰金に処する。

第602 条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、30 万円以

下の罰金に処する。

一 第13 条第5項(第19 条第4項において準用する場合を含む。)、第32 条第5項若

しくは第36 条第1項(第37 条第4項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)

又は第41 条第1項の規定による調査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。

二 第20 条第1項又は第2項の規定に違反したとき。

三 第26 条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定

による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくは同項の規定による質問に対して答

弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。

四 第39 条の規定による命令に違反したとき。

2 前項(第2号(第20 条第2項に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定は、

刑法(明治40 年法律第45 号)その他の罰則の適用を妨げない。

第603 条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人

又は人の業務に関し、前2条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又

は人に対して各本条の罰金刑を科する。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令

(平成30 年政令第308 号)

内閣は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30 年法律第49 号)

第2条第1項、第2項並びに第3項第8号及び第9号、第9条第3項、第10 条第1項第2

号及び第3項第2号ニ(同法第19 条第2項において準用する場合を含む。)、第27 条第3

項第2号ニ(同法第37 条第2項において準用する場合を含む。)、第40 条第1項並びに第

44 条並びに同法第35 条第1項(同法第37 条第4項において準用する場合を含む。)におい

て準用する土地収用法(昭和26 年法律第2 百19 号)第818 条の2 の規定に基づき、この政

令を制定する。

(土地の所有者の探索の方法)

第1条 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「法」という。)第2

条第1項の政令で定める方法は、土地の所有者の氏名又は名称及び住所又は居所その他の

当該土地の所有者を確知するために必要な情報(以下この条において「土地所有者確知必

要情報」という。)を取得するため次に掲げる措置をとる方法とする。

一 当該土地の登記事項証明書の交付を請求すること。

二 当該土地を現に占有する者その他の当該土地に係る土地所有者確知必要情報を保有

すると思料される者であって国土交通省令で定めるものに対し、当該土地所有者確知必

要情報の提供を求めること。

三 第1号の登記事項証明書に記載されている所有権の登記名義人又は表題部所有者そ

の他の前2 号の措置により判明した当該土地の所有者と思料される者(以下この号及び

次号において「登記名義人等」という。)が記録されている住民基本台帳、法人の登記

簿その他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村の長又は登記所の

登記官に対し、当該登記名義人等に係る土地所有者確知必要情報の提供を求めること。

四 登記名義人等が死亡し、又は解散していることが判明した場合には、当該登記名義人

等又はその相続人、合併後存続し、若しくは合併により設立された法人その他の当該土

地の所有者と思料される者が記録されている戸籍簿若しくは除籍簿若しくは戸籍の附

86

票又は法人の登記簿その他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村

の長又は登記所の登記官に対し、当該土地に係る土地所有者確知必要情報の提供を求め

ること。

五 前各号の措置により判明した当該土地の所有者と思料される者に対して、当該土地の

所有者を特定するための書面の送付その他の国土交通省令で定める措置をとること。

(簡易建築物等の要件)

第2条 法第2条第2項の政令で定める簡易な構造の建築物は、物置、作業小屋その他これ

らに類するものとする。

2 法第2条第2項の政令で定める規模は、階数2 及び床面積20 平方メートルとする。

3 法第2条第2項の政令で定める基準は、次の各号のいずれにも該当することとする。

一 当該建築物の壁、柱、屋根、建築設備その他の部分の損傷、腐食その他の劣化により、

当該建築物をその本来の用途に供することができない状態となったと認められること。

二 当該建築物の建築時からの経過年数が建築物の構造及び用途の区分に応じて国土交

通大臣が定める耐用年数を超えていること。

(地域住民等の共同の福祉又は利便の増進に資する施設)

第3条 法第2条第3項第8号の政令で定める施設は、次に掲げるものとする。

一 購買施設

二 教養文化施設

(災害対策の実施の用に供する施設)

第4条 法第2条第3項第9号の政令で定める施設は、次に掲げるものとする。

一 備蓄倉庫

二 非常用電気等供給施設

三 貯水槽

(再生可能エネルギー発電設備の要件)

第5条 法第2条第3項第10 号の政令で定める要件は、当該再生可能エネルギー発電設備

を用いて発電した再生可能エネルギー電気(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関す

る特別措置法(平成23 年法律第108 号)第2条第1項に規定する再生可能エネルギー電

気をいう。)を災害時において地域住民その他の者に供給することとする。

(土地収用法第3条各号に掲げるもののうち地域住民等の共同の福祉又は利便の増進に資

するもの)

第6条 法第2条第3項第11 号の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 国、地方公共団体又は土地改良区(土地改良区連合を含む。次号において同じ。)が

設置する用水路、排水路又はかんがい用のため池

二 国、都道府県又は土地改良区が土地改良法(昭和24 年法律第195 号)による土地改

良事業の施行に伴い設置する用排水機又は地下水源の利用に関する設備

三 鉄道事業法(昭和60 年法律第912 号)による鉄道事業者又は索道事業者がその鉄道

事業又は索道事業で一般の需要に応ずるものの用に供する施設

四 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が設置する鉄道又は軌道の用に供する

施設

五 軌道法(大正10 年法律第716 号)による軌道又は同法が準用される無軌条電車の用

に供する施設

六 道路運送法(昭和26 年法律第183 号)による一般乗合旅客自動車運送事業(路線を

定めて定期に運行する自動車により乗合旅客の運送を行うものに限る。)又は貨物自動

車運送事業法(平成元年法律第813 号)による一般貨物自動車運送事業(特別積合せ貨

物運送をするものに限る。)の用に供する施設

七 港湾法(昭和25 年法律第2 百18 号)による港湾施設又は漁港漁場整備法(昭和25

年法律第百37 号)による漁港施設

87

八 日本郵便株式会社が日本郵便株式会社法(平成17 年法律第100 号)第4条第1項第

1号に掲げる業務の用に供する施設

九 電気通信事業法(昭和59 年法律第816 号)による認定電気通信事業者がその認定電

気通信事業の用に供する施設(同法の規定により土地等を使用することができるものを

除く。)

十 電気事業法(昭和39 年法律第170 号)による一般送配電事業、送電事業、配電事業、

特定送配電事業又は発電事業の用に供する電気工作物

十一 ガス事業法(昭和29 年法律第51 号)によるガス工作物

十二 水道法(昭和32 年法律第177 号)による水道事業若しくは水道用水供給事業、工

業用水道事業法(昭和33 年法律第84 号)による工業用水道事業又は下水道法(昭和33

年法律第79 号)による公共下水道、流域下水道若しくは都市下水路の用に供する施設

十三 市町村が消防法(昭和23 年法律第186 号)により設置する消防の用に供する施設

十四 都道府県又は水防法(昭和24 年法律第193 号)による水防管理団体が水防の用に

供する施設

十五 国又は地方公共団体が設置する庁舎

十六 独立行政法人水資源機構が設置する独立行政法人水資源機構法(平成14 年法律第

182 号)による水資源開発施設又は愛知豊川用水施設

(収用委員会の裁決の申請手続)

第7条 法第9条第3項の規定により土地収用法第94 条第2項の規定による裁決を申請し

ようとする者は、国土交通省令で定める様式に従い、次に掲げる事項を記載した裁決申請

書を収用委員会に提出しなければならない。

一 裁決申請者の氏名又は名称及び住所

二 相手方の氏名又は名称及び住所

三 地域福利増進事業の種別(法第2条第3項各号に掲げる事業の別をいう。)

四 損失の事実

五 損失の補償の見積り及びその内訳

六 協議の経過

(物件の所有者の探索の方法)

第8条 法第10 条第1項第2号の政令で定める方法は、物件の所有者の氏名又は名称及び

住所又は居所その他の当該物件の所有者を確知するために必要な情報(以下この条におい

て「物件所有者確知必要情報」という。)を取得するため次に掲げる措置をとる方法とす

る。

一 当該物件(建物又は立木であるものに限る。)の登記事項証明書の交付を請求するこ

と。

二 当該物件を現に占有する者その他の当該物件に係る物件所有者確知必要情報を保有

すると思料される者であって国土交通省令で定めるものに対し、当該物件所有者確知必

要情報の提供を求めること。

三 第1号の登記事項証明書に記載されている所有権の登記名義人又は表題部所有者そ

の他の前2号の措置により判明した当該物件の所有者と思料される者(以下この号及び

次号において「登記名義人等」という。)が記録されている住民基本台帳、法人の登記

簿その他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村の長又は登記所の

登記官に対し、当該登記名義人等に係る物件所有者確知必要情報の提供を求めること。

四 登記名義人等が死亡し、又は解散していることが判明した場合には、当該登記名義人

等又はその相続人、合併後存続し、若しくは合併により設立された法人その他の当該物

件の所有者と思料される者が記録されている戸籍簿若しくは除籍簿若しくは戸籍の附

票又は法人の登記簿その他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村

の長又は登記所の登記官に対し、当該物件に係る物件所有者確知必要情報の提供を求め

ること。

88

五 前各号の措置により判明した当該物件の所有者と思料される者に対して、当該物件の

所有者を特定するための書面の送付その他の国土交通省令で定める措置をとること。

(土地等の権利者の探索の方法)

第9条 法第10 条第3項第2号ニ(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)の政

令で定める方法は、土地等(土地又は当該土地にある物件をいう。以下この条において同

じ。)の権利者(土地等に関し所有権以外の権利を有する者をいう。以下この条において

同じ。)の氏名又は名称及び住所又は居所その他の当該土地等の権利者を確知するために

必要な情報(以下この条において「土地等権利者確知必要情報」という。)を取得するた

め次に掲げる措置をとる方法とする。

一 当該土地等(物件にあっては、建物又は立木であるものに限る。)の登記事項証明書

の交付を請求すること。

二 当該土地等を現に占有する者その他の当該土地等に係る土地等権利者確知必要情報

を保有すると思料される者であって国土交通省令で定めるものに対し、当該土地等権利

者確知必要情報の提供を求めること。

三 第1号の登記事項証明書に記載されている所有権以外の権利の登記名義人その他の

前2号の措置により判明した当該土地等の権利者と思料される者(以下この号及び次号

において「登記名義人等」という。)が記録されている住民基本台帳、法人の登記簿そ

の他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村の長又は登記所の登記

官に対し、当該登記名義人等に係る土地等権利者確知必要情報の提供を求めること。

四 登記名義人等が死亡し、又は解散していることが判明した場合には、当該登記名義人

等又はその相続人、合併後存続し、若しくは合併により設立された法人その他の当該土

地等の権利者と思料される者が記録されている戸籍簿若しくは除籍簿若しくは戸籍の

附票又は法人の登記簿その他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町

村の長又は登記所の登記官に対し、当該土地等に係る土地等権利者確知必要情報の提供

を求めること。

五 前各号の措置により判明した当該土地等の権利者と思料される者に対して、当該土地

等の権利者を特定するための書面の送付その他の国土交通省令で定める措置をとるこ

と。

(長期にわたる土地の使用を要する事業)

第10 条 法第13 条第3項の政令で定める事業は、次に掲げる事業(仮設工作物の設置その

他の一時的な利用に供するため特定所有者不明土地を使用するものを除く。)とする。

一 法第2条第3項第1号に掲げる事業(道路法(昭和27 年法律第180 号)による道路

の整備に関するものを除く。)又は同項第6号に掲げる事業であって、当該事業により

整備される施設と同種の施設がその周辺の地域において不足している区域内において

行われるもの

二 法第2条第3項第8号から第10 号までに掲げる事業

(土地の関係人の探索の方法)

第11 条 法第27 条第3項第2号ニ(法第37 条第2項において準用する場合を含む。)の

政令で定める方法は、土地の関係人の氏名又は名称及び住所又は居所その他の当該土地の

関係人を確知するために必要な情報(以下この条において「土地関係人確知必要情報」と

いう。)を取得するため次に掲げる措置をとる方法とする。

一 当該土地又は当該土地にある物件(建物又は立木であるものに限る。)の登記事項証

明書の交付を請求すること。

二 当該土地又は当該土地にある物件を現に占有する者その他の当該土地に係る土地関

係人確知必要情報を保有すると思料される者であって国土交通省令で定めるものに対

し、当該土地関係人確知必要情報の提供を求めること。

三 第1号の登記事項証明書に記載されている所有権その他の権利の登記名義人又は表

題部所有者(土地の所有権の登記名義人及び表題部所有者を除く。)その他の前2号の

89

措置により判明した当該土地の関係人と思料される者(以下この号及び次号において

「登記名義人等」という。)が記録されている住民基本台帳、法人の登記簿その他の国

土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村の長又は登記所の登記官に対し、

当該登記名義人等に係る土地関係人確知必要情報の提供を求めること。

四 登記名義人等が死亡し、又は解散していることが判明した場合には、当該登記名義人

等又はその相続人、合併後存続し、若しくは合併により設立された法人その他の当該土

地の関係人と思料される者が記録されている戸籍簿若しくは除籍簿若しくは戸籍の附

票又は法人の登記簿その他の国土交通省令で定める書類を備えると思料される市町村

の長又は登記所の登記官に対し、当該土地に係る土地関係人確知必要情報の提供を求め

ること。

五 前各号の措置により判明した当該土地の関係人と思料される者に対して、当該土地の

関係人を特定するための書面の送付その他の国土交通省令で定める措置をとること。

(損失の補償に関する細目)

第12 条 法第35 条第1項(法第37 条第4項において準用する場合を含む。)において準

用する土地収用法第818 条の2 の損失の補償に関する細目については、土地収用法第818

条の2 の細目等を定める政令(平成14 年政令第248 号)第1条から第7条まで、第11 条、

第12 条、第16 条から第19 条まで及び第26 条の規定を準用する。この場合において、同

令第19 条第1項第1号イ中「明渡裁決」とあるのは「所有者不明土地の利用の円滑化等

に関する特別措置法(平成30 年法律第49 号)第32 条第1項の裁定(以下この項におい

て単に「裁定」という。)」と、同号ロ及びハ並びに同項第2号及び第3号中「明渡裁決」

とあるのは「裁定」と読み替えるものとする。

(特定登記未了土地につき相続登記等がされていない期間)

第13 条 法第44 条第1項の政令で定める期間は、10 年とする。

(手数料)

第14 条 法第56 条の政令で定める額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当

該各号に定める額とする。

一 損失の補償金の見積額が10 万円以下の場合 2万7千円

二 損失の補償金の見積額が10 万円を超え100 万円以下の場合 2万7千円に損失の補

償金の見積額の10 万円を超える部分が5万円に達するごとに2700 円を加えた金額

三 損失の補償金の見積額が100 万円を超え500 万円以下の場合 7万5600 円に損失の

補償金の見積額の100 万円を超える部分が10 万円に達するごとに3400 円を加えた金

四 損失の補償金の見積額が500 万円を超え2000 万円以下の場合 21 万1600 円に損失

の補償金の見積額の500 万円を超える部分が100 万円に達するごとに3500 円を加えた

金額

五 損失の補償金の見積額が2000 万円を超え1億円以下の場合 264100 円に損失の補償

金の見積額の2000 万円を超える部分が400 万円に達するごとに4800 円を加えた金額

六 損失の補償金の見積額が一億円を超える場合 36 万100 円

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法の特

例に関する省令

(平成30 年法務省令第28 号・令和4年法務省令第41 号による改正)

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30 年法律第49 号)の施行に

伴い、並びに同法第40 条第4項及び不動産登記令(平成16 年政令第379 号)第27 条の規

定に基づき、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する不動産登記法

の特例に関する省令を次のように定める。

(法定相続人情報)

90

第1条 登記官は、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「法」とい

う。)第44 条第1項の規定により長期相続登記等未了土地(法第2条第4項の特定登記

未了土地に該当し、かつ、当該土地の所有権の登記名義人の死亡後10 年間を超えて相続

による所有権の移転の登記その他の所有権の登記がされていない土地をいう。以下同じ。)

の所有権の登記名義人となり得る者の探索を行った場合には、当該長期相続登記等未了土

地の所有権の登記名義人に係る法定相続人情報を作成するものとする。

2 法定相続人情報には、次の各号に掲げる事項を記録するものとする。

一 被相続人である所有権の登記名義人の氏名、出生の年月日、最後の住所、登記簿上の

住所及び本籍並びに死亡の年月日

二 前号の登記名義人の相続人(被相続人又はその相続人の戸籍及び除かれた戸籍の謄本

又は全部事項証明書により確認することができる相続人となり得る者をいう。以下この

項において同じ。)の氏名、出生の年月日、住所及び当該登記名義人との続柄(当該相

続人が死亡しているときにあっては、氏名、出生の年月日、当該登記名義人との続柄及

び死亡の年月日)

三 第1号の登記名義人の相続人(以下この項において「第一次相続人」という。)が死

亡している場合には、第一次相続人の相続人(次号において「第二次相続人」という。)

の氏名、出生の年月日、住所及び第一次相続人との続柄(当該相続人が死亡していると

きにあっては、氏名、出生の年月日、当該第一次相続人との続柄及び死亡の年月日)

四 第二次相続人が死亡しているときは、第二次相続人を第一次相続人と、第二次相続人

を第一次相続人の相続人とみなして、前号の規定を適用する。当該相続人(その相続人

を含む。)が死亡しているときも、同様とする。

五 相続人の全部又は一部が判明しないときは、その旨

六 作成番号

七 作成の年月日

3 前項第6号に規定する作成番号は、12 桁の番号とし、登記所ごとに第1項の法定相続人

情報を作成する順序に従って付すものとする。

4 登記官は、第1項の法定相続人情報を電磁的記録で作成し、これを保存するものとする。

(付記登記)

第2条 法第44 条第1項の事項の登記は、付記登記によってするものとする。

(登記の手続等)

第3条 登記官は、職権で法第44 条第1項の事項の登記をしようとするときは、職権付記

登記事件簿に登記の目的、立件の年月日及び立件の際に付した番号並びに不動産所在事項

を記録するものとする。

2 法第44 条第1項の法務省令で定める事項は、第1条第2項第5号及び第6号に規定す

る事項とする。

(勧告等)

第4条 法第44 条第2項に規定する勧告は、次に掲げる事項を明らかにしてするものとす

る。

一 長期相続登記等未了土地に係る不動産所在事項及び不動産番号

二 所有権の登記名義人となり得る者

2 法第44 条第2項に規定する通知は、次に掲げる事項を明らかにしてするものとする。

一 長期相続登記等未了土地の所在地を管轄する登記所

二 登記の申請に必要な情報

(帳簿等)

第5条 登記所には、法定相続人情報つづり込み帳及び職権付記登記事件簿を備えるものと

する。

2 法定相続人情報つづり込み帳には、不動産登記規則(平成17 年法務省令第18 号)第19

条の規定にかかわらず、関係地方公共団体の長その他の者への照会書の写し、提出された

91

資料、法定相続人情報の内容を書面に出力したもの及び第2条の付記登記に関する書類を

つづり込むものとする。

(保存期間)

第6条 次の各号に掲げる情報の保存期間は、当該各号に定めるとおりとする。

一 法定相続人情報 付記登記を抹消した日から30 年間

二 職権付記登記事件簿に記録された情報 立件の日から5年間

2 法定相続人情報つづり込み帳の保存期間は、作成の年の翌年から10 年間とする。

(登記の抹消)

第7条 登記官は、法第44 条第1項の事項の登記がされた所有権の登記名義人について所

有権の移転の登記をしたとき(これにより当該登記名義人が所有権の登記名義人でなくな

った場合に限る。)は、職権で、当該法第44 条第1項の事項の登記の抹消の登記をする

とともに、抹消すべき登記を抹消する記号を記録しなければならない。

(添付情報の省略)

第8条 表題部所有者又は登記名義人の相続人が登記の申請をする場合において、当該表題

部所有者又は登記名義人に係る法定相続人情報の作成番号(法定相続人情報に第1条第2

項第5号に規定する事項の記録がないものに限る。)を提供したときは、当該作成番号の

提供をもって、相続があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方

自治法(昭和22 年法律第607 号)第252 条の19 第1項の指定都市にあっては、区長又は

総合区長とする。次項において同じ。)その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代

えることができる。

2 表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記の申請をする場合又は登記名義人の相続

人が相続による権利の移転の登記の申請をする場合において、法定相続人情報の作成番号

(法定相続人情報に当該相続人の住所が記録されている場合に限る。)を提供したときは、

当該作成番号の提供をもって、登記名義人となる者の住所を証する市町村長その他の公務

員が職務上作成した情報の提供に代えることができる。

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行規則

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30 年法律第49 号)第39 条

第1項、第41 条、第45 条及び第47 条並びに所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特

別措置法施行令(平成30 年政令第308 号)第1条第2号から第5号までの規定に基づき、

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行規則を次のように定める。

第1 章 総則

(土地所有者確知必要情報を保有すると思料される者)

第1条 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法施行令(以下「令」という。)

第1条第2号の国土交通省令で定める者は、次に掲げるもの(国の行政機関の長又は地方

公共団体の長(以下「国の行政機関の長等」という。)が所有者不明土地の利用の円滑化

等に関する特別措置法(以下「法」という。)第42 条の規定による命令又は相続財産の

管理人の選任の請求をしようとする場合にあっては、第5号から第8号までに掲げるもの

を除く。)とする。ただし、第2号、第3号、第10 号イ並びに第11 号イ及びロに掲げる

者については、令第1条第1号から第4号まで並びに令第8条第1号から第4号まで及び

令第9条第1号から第4号まで又は令第11 条第1号から第4号までに掲げる措置(法第

42 条の規定による命令又は相続財産の管理人の選任の請求をしようとする場合にあって

は、令第1条第1号から第4号までに掲げる措置)により判明したものに限る。

一 当該土地を現に占有する者

二 当該土地に関し所有権以外の権利を有する者

三 当該土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者

四 令第1条第5号に規定する措置をとってもなお当該土地の所有者の全部又は一部を

確知することができなかった場合においては、当該措置の対象者

92

五 当該土地の固定資産課税台帳を備えると思料される市町村の長(当該土地が特別区の

区域内にある場合にあっては、都の知事)

六 当該土地の地籍調査票を備えると思料される都道府県の知事又は市町村の長

七 当該土地が農地である場合においては、その農地台帳を備えると思料される農業委員

会が置かれている市町村の長

八 当該土地が森林の土地である場合においては、その林地台帳を備えると思料される市

町村の長

九 当該土地が所有者の探索について特別の事情を有するものとして国土交通大臣が定

める土地である場合においては、国土交通大臣が定める者

十 当該土地の所有者と思料される者が個人である場合においては、次に掲げる者

イ 親族

ロ 当該土地の所有者と思料される者が日本の国籍を有し、かつ、外国に住所を有する

と思料される場合であって、探索を行う者が国の行政機関の長等である場合において

は、在外公館の長

十一 当該土地の所有者と思料される者が法人である場合においては、次に掲げる者

イ 当該法人の代表者

ロ 当該法人が合併以外の事由により解散した法人である場合においては、清算人又は

破産管財人

ハ イ又はロに掲げる者が記録されている住民基本台帳、戸籍簿若しくは除籍簿又は戸

籍の附票を備えると思料される市町村の長

(土地の所有者と思料される者が記録されている書類)

第2条 令第1条第3号の国土交通省令で定める書類は、次に掲げるものとする。

一 当該土地の所有者と思料される者が個人である場合においては、次に掲げる書類

イ 住民基本台帳

ロ 戸籍簿又は除籍簿

ハ 戸籍の附票

二 当該土地の所有者と思料される者が法人である場合においては、当該法人の登記簿

(当該法人が地方自治法(昭和22 年法律第607 号)第260 条の2第7項に規定する認

可地縁団体である場合にあっては、地方自治法施行規則(昭和22 年内務省令第29 号)

第21 条第2項に規定する台帳)

2 令第1条第4号の国土交通省令で定める書類は、次に掲げるものとする。

一 当該土地の所有者と思料される者が個人である場合においては、前項第1号イからハ

までに掲げる書類

二 当該土地の所有者と思料される者が法人である場合においては、当該法人の登記簿

(土地の所有者を特定するための措置)

第3条 令第1条第5号の国土交通省令で定める措置は、次に掲げるもののいずれかとする。

一 当該土地の所有者と思料される者(未成年者である場合にあっては、その法定代理人

を含む。次号において同じ。)に対する書面の送付

二 当該土地の所有者と思料される者への訪問

第2章 所有者不明土地の利用の円滑化及び管理の適正化のための特別の措置

第1節 地域福利増進事業の実施のための措置

第1款 地域福利増進事業の実施の準備

(特定所有者不明土地への立入り等の許可の申請手続)

第4条 法第6条の規定による許可の申請をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した

立入許可申請書を特定所有者不明土地の所在地を管轄する都道府県知事に提出しなけれ

ばならない。

一 申請者の氏名又は名称及び住所

93

二 事業の種別(法第2条第3項各号に掲げる事業の別をいう。次条第1項第2号及び第

29 条第1項第2号において同じ。)

三 立入りの目的

四 特定所有者不明土地の所在及び地番

五 特定所有者不明土地の所有者の全部又は一部を確知することができない事情

六 立ち入ろうとする期間

2 前項の立入許可申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 申請者の住民票の写し又はこれに代わる書類(申請者が法人である場合にあっては、

当該法人の登記事項証明書。次条第2項第1号において同じ。)

二 特定所有者不明土地の所有者の探索の過程において得られた前項第5号に掲げる事

項を明らかにする書類

三 特定所有者不明土地の写真

(障害物の伐採等の許可の申請手続)

第5条 法第7条第1項の規定による許可の申請をしようとする者は、次に掲げる事項を記

載した伐採等許可申請書を障害物の所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければな

らない。

一 申請者の氏名又は名称及び住所

二 事業の種別

三 伐採等の目的

四 特定所有者不明土地の所在及び地番

五 障害物の種類及び数量

六 障害物の確知所有者の氏名又は名称及び住所

七 伐採等の方法及び範囲

八 伐採等をしようとする期間

2 前項の伐採等許可申請書には、次に掲げる書類(申請者が国又は地方公共団体である場

合にあっては、第1号に掲げるものを除く。)を添付しなければならない。

一 申請者の住民票の写し又はこれに代わる書類

二 障害物の写真

三 障害物の位置を表示する図面

(障害物の伐採等の公告及び通知の方法)

第6条 法第7条第2項の規定による公告は、官報又は都道府県若しくは市町村の公報への

掲載、インターネットの利用その他の適切な方法により行うものとする。

2 法第7条第2項の規定による通知は、文書により行わなければならない。

(現状を著しく損傷しない場合の障害物の伐採等の許可の申請手続)

第7条 第5条の規定は、法第7条第3項の規定による許可の申請について準用する。

(現状を著しく損傷しない場合の障害物の伐採等の公告及び通知の方法)

第8条 第6条第1項の規定は、法第7条第3項の規定による公告について準用する。

2 第6条第2項の規定は、法第7条第3項の規定による通知について準用する。

(証明書等の様式)

第9条 法第8条第1項に規定する証明書の様式は、別記様式第1 によるものとする。

2 法第8条第1項に規定する書面の様式は、別記様式第2 によるものとする。

3 法第8条第2項に規定する証明書の様式は、別記様式第3によるものとする。

4 法第8条第2項に規定する書面の様式は、別記様式第4 によるものとする。

(裁決申請書の様式)

第10 条 令第7条の国土交通省令で定める様式は、別記様式第5 によるものとする。

第2款 裁定による特定所有者不明土地の使用

(物件所有者確知必要情報を保有すると思料される者)

94

第11 条 令第8条第2号の国土交通省令で定める者は、次に掲げるものとする。ただし、

第2号、第3号、第6号イ並びに第7号イ及びロに掲げる者については、令第1条第1号

から第4号まで、令第8条第1号から第4号まで及び令第9条第1号から第4号までに掲

げる措置により判明したものに限る。

一 当該物件を現に占有する者

二 当該物件に関し所有権以外の権利を有する者

三 当該物件がある土地に関し所有権その他の権利を有する者

四 令第8条第5号に規定する措置をとってもなお当該物件の所有者の全部又は一部を

確知することができなかった場合においては、当該措置の対象者

五 当該物件(地方税法(昭和25 年法律第2 百26 号)第3百41 条第3号に規定する家

屋であるものに限る。)の固定資産課税台帳を備えると思料される市町村の長(当該物

件が特別区の区域内にある場合にあっては、都の知事)

六 当該物件の所有者と思料される者が個人である場合においては、次に掲げる者

イ 親族

ロ 当該物件の所有者と思料される者が日本の国籍を有し、かつ、外国に住所を有する

と思料される場合であって、探索を行う者が国の行政機関の長等である場合において

は、在外公館の長

七 当該物件の所有者と思料される者が法人である場合においては、次に掲げる者

イ 当該法人の代表者

ロ 当該法人が合併以外の事由により解散した法人である場合においては、清算人又は

破産管財人

ハ イ又はロに掲げる者が記録されている住民基本台帳、戸籍簿若しくは除籍簿又は戸

籍の附票を備えると思料される市町村の長

(物件の所有者と思料される者が記録されている書類)

第12 条 第2条第1項の規定は、令第8条第3号の国土交通省令で定める書類について準

用する。

2 第2条第2項の規定は、令第8条第4号の国土交通省令で定める書類について準用する。

(物件の所有者を特定するための措置)

第13 条 第3条の規定は、令第8条第5号の国土交通省令で定める措置について準用する。

(裁定申請書の様式)

第14 条 法第10 条第2項(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)に規定する

裁定申請書の様式は、別記様式第6 によるものとする。

(事業計画書の記載事項)

第15 条 法第10 条第3項第1号ヘの国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとす

る。

一 事業により整備する施設の工事の開始及び完了の予定時期

二 法第10 条第5項に規定する措置を講じた場合においては、当該措置の概要

(土地等権利者確知必要情報を保有すると思料される者)

第16 条 令第9条第2号の国土交通省令で定める者は、次に掲げるものとする。ただし、

第1号ロ及びハ、第2号ロ及びハ、第4号イ並びに第5号イ及びロに掲げる者については、

令第1条第1号から第4号まで、令第8条第1号から第4号まで及び令第9条第1号から

第4号までに掲げる措置により判明したものに限る。

一 当該土地に関し所有権以外の権利を有する者の探索を行う場合においては、次に掲げ

る者

イ 当該土地を現に占有する者

ロ 当該土地の所有者

ハ 当該土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者

95

ニ 当該土地の固定資産課税台帳を備えると思料される市町村の長(当該土地が特別区

の区域内にある場合にあっては、都の知事)

ホ 当該土地が農地である場合においては、その農地台帳を備えると思料される農業委

員会が置かれている市町村の長

二 当該土地にある物件に関し所有権以外の権利を有する者の探索を行う場合において

は、次に掲げる者

イ 当該物件を現に占有する者

ロ 当該物件の所有者

ハ 当該土地に関し所有権その他の権利を有する者

三 令第9条第5号に規定する措置をとってもなお当該土地等の権利者の全部又は一部

を確知することができなかった場合においては、当該措置の対象者

四 当該土地等の権利者と思料される者が個人である場合においては、次に掲げる者

イ 親族

ロ 当該土地等の権利者と思料される者が日本の国籍を有し、かつ、外国に住所を有す

ると思料される場合であって、探索を行う者が国の行政機関の長等である場合におい

ては、在外公館の長

五 当該土地等の権利者と思料される者が法人である場合においては、次に掲げる者

イ 当該法人の代表者

ロ 当該法人が合併以外の事由により解散した法人である場合においては、清算人又は

破産管財人

ハ イ又はロに掲げる者が記録されている住民基本台帳、戸籍簿若しくは除籍簿又は戸

籍の附票を備えると思料される市町村の長

(土地等の権利者と思料される者が記録されている書類)

第17 条 第2条第1項の規定は、令第9条第3号の国土交通省令で定める書類について準

用する。

2 第2条第2項の規定は、令第9条第4号の国土交通省令で定める書類について準用する。

(土地等の権利者を特定するための措置)

第18 条 第3条の規定は、令第9条第5号の国土交通省令で定める措置について準用する。

(裁定申請書の添付書類)

第19 条 法第10 条第3項第5号(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)の国

土交通省令で定める書類は、次に掲げるもの(地域福利増進事業を実施する者(以下この

条において「事業者」といい、法第19 条第1項の規定による裁定の申請をしようとする

場合にあっては、使用権者(同項に規定する使用権者をいう。以下同じ。)。以下この条

において同じ。)が国又は地方公共団体である場合にあっては、第1号、第13 号及び第

14 号に掲げるものを除く。)とする。

一 事業者の住民票の写し又はこれに代わる書類(事業者が法人である場合にあっては、

当該法人の登記事項証明書)

二 事業を実施する区域(以下「事業区域」という。)を表示する図面

三 特定所有者不明土地(法第19 条第1項の規定による裁定の申請をしようとする場合

にあっては、使用権設定土地(同項に規定する使用権設定土地をいう。第28 条におい

て同じ。)。以下この条及び第22 条において同じ。)の実測平面図

四 特定所有者不明土地の所有者の探索の過程において得られた法第10 条第2項第6号

に掲げる事項を明らかにする書類

五 特定所有者不明土地の写真

六 特定所有者不明土地にある物件が簡易建築物等(法第2条第2項に規定する簡易建築

物等をいう。)のうち、法第2条第2項の政令で定める基準に該当するもの(次号及び

第39 条第1項第6号において「朽廃建築物」という。)以外のもの(以下この号及び

96

第39 条第1項第5号において「簡易建築物」という。)である場合においては、次に

掲げる書類

イ 当該簡易建築物の種類、構造及び床面積を記載した書類

ロ 当該簡易建築物の写真

七 特定所有者不明土地にある物件が朽廃建築物である場合においては、次に掲げる書類

イ 当該朽廃建築物の損傷、腐食その他の劣化の状況を記載した書類

ロ 当該朽廃建築物の建築時からの経過年数を明らかにする書類

ハ 当該朽廃建築物の写真

八 法第2条第3項第1号に掲げる事業(道路法(昭和27 年法律第180 号)による道路

の整備に関するものを除く。)又は同項第6号に掲げる事業を実施しようとする場合に

おいて、長期にわたる土地の使用を要するときは、当該事業により整備する施設と同種

の施設がその周辺の地域において不足していることを明らかにする書類

九 事業計画を表示する図面

十 特定所有者不明土地にある物件の所有者の全部又は一部を確知することができない

場合においては、次に掲げる書類

イ 当該物件の所有者の全部又は一部を確知することができない事情を記載した書類

ロ 当該物件の所有者の探索の過程において得られたイに規定する事情を明らかにす

る書類

十一 特定所有者不明土地等の権利者(土地又は当該土地にある物件に関し所有権以外の

権利を有する者をいう。以下この号において同じ。)の全部又は一部を確知することが

できない場合においては、次に掲げる書類

イ 特定所有者不明土地等の権利者の全部又は一部を確知することができない事情を

記載した書類

ロ 特定所有者不明土地等の権利者の探索の過程において得られたイに規定する事情

を明らかにする書類

十二 法第10 条第3項第2号ホの補償金の見積額の積算の基礎を明らかにする書類

十三 事業者の組織体制に関する事項を記載した書類

十四 事業者(法人である場合にあっては、その役員)が暴力団員による不当な行為の防

止等に関する法律(平成3年法律第717 号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号

に規定する暴力団員でなくなった日から5 年を経過しない者(以下「暴力団員等」とい

う。)に該当しないことを誓約する書類

(住民の意見を反映させるために必要な措置)

第20 条 法第10 条第5項の国土交通省令で定める方法は、協議会の開催又は裁定申請に係

る事業計画の案及び当該案に対する住民の意見の提出方法、提出期限、提出先その他住民

の意見の提出に必要な事項を印刷物の配布その他適切な手段により住民に周知する方法

とする。

(裁定申請があった旨等の公告の方法)

第21 条 法第11 条第4項(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)の規定によ

る公告は、都道府県の公報への掲載、インターネットの利用その他の適切な方法により行

うほか、都道府県知事がその公告すべき内容を事業区域内の適当な場所に掲示して行わな

ければならない。ただし、当該事業区域内に掲示して行うことが困難であるときは、当該

事業区域の付近にこれを掲示して行うことができる。

(異議等の申出の方法)

第22 条 法第11 条第4項第3号(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)の規

定による申出をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した申出書を都道府県知事に提

出しなければならない。

一 申出者の氏名又は名称及び住所

二 当該申出に係る特定所有者不明土地の所在及び地番

97

三 法第11 条第4項第3号イの規定による申出をしようとする場合においては、当該異

議の内容及びその理由

四 法第11 条第4項第3号ロの規定による申出をしようとする場合においては、当該特

定所有者不明土地の所有者である旨

(公告事項)

第23 条 法第11 条第4項第4号の国土交通省令で定める事項は、同項の規定による公告の

日から2 月以内に同項第3号の規定による申出がないときは、都道府県知事が法第13 条

第1項の裁定をすることがある旨とする。

2 法第19 条第2項において準用する法第11 条第4項第4号の国土交通省令で定める事

項は、同項の規定による公告の日から1 月以内に同項第3号の規定による申出がないとき

は、都道府県知事が法第19 条第3項の裁定をすることがある旨とする。

(裁定申請があった旨の通知の方法)

第24 条 法第11 条第5項(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)の規定によ

る通知は、文書により行わなければならない。

(裁定申請の却下の通知の方法)

第25 条 法第12 条第3項(法第19 条第2項において準用する場合を含む。)の規定によ

る通知は、文書により行わなければならない。

(証明書の様式)

第26 条 法第13 条第6項(法第19 条第4項において準用する場合を含む。)に規定する

証明書の様式は、別記様式第7 によるものとする。

(裁定の公告の方法)

第27 条 法第14 条(法第19 条第4項において準用する場合を含む。)の規定による公告

は、都道府県の公報への掲載、インターネットの利用その他の適切な方法により行うもの

とする。

(標識の設置の方法)

第28 条 法第20 条第1項の規定による標識の設置は、次に掲げる事項を表示した標識によ

り行わなければならない。

一 使用権設定土地が地域福利増進事業の用に供されている旨

二 使用権者の氏名又は名称

三 使用権設定土地の所在及び地番

四 土地使用権等(法第10 条第1項に規定する土地使用権等をいう。次条において同じ。)

の始期(物件所有権(同項第2号に規定する物件所有権をいう。)にあっては、その取

得の時期。次条第1項第7号において同じ。)

五 土地等使用権(法第10 条第2項第8号に規定する土地等使用権をいう。以下この号

及び次条第1項第8号において同じ。)の存続期間(法第19 条第4項において準用す

る法第15 条の規定により土地等使用権の存続期間が延長された場合にあっては、当該

延長後の存続期間。次条第1項第8号において同じ。)

六 裁定を担当した都道府県の部局の名称及び連絡先

七 法第20 条第2項の規定に違反したときは、法第62 条第1項第2号の規定により罰金

に処せられる旨

(権利の譲渡の承認の申請手続)

第29 条 法第22 条第1項の規定による承認の申請をしようとする使用権者は、次に掲げる

事項を記載した譲渡承認申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

一 使用権者及び土地使用権等の全部又は一部を譲り受けようとする者(以下この条にお

いて「譲受人」という。)の氏名又は名称及び住所

二 事業の種別

三 譲受人が実施する事業の事業区域

四 承認の申請をする理由

98

五 土地使用権等の目的となっている土地の所在及び地番又は物件の種類及び数量

六 土地使用権等を譲り渡す時期

七 土地使用権等の始期

八 土地等使用権の存続期間

九 土地使用権等の一部を譲り渡そうとする場合においては、使用権者が土地使用権等を

譲り渡した後に実施する事業の事業区域

2 前項の譲渡承認申請書には、次に掲げる書類(使用権者が国又は地方公共団体である場

合にあっては第1号及び第9号ニに掲げるものを除き、譲受人が国又は地方公共団体であ

る場合にあっては第2号、第7号及び第8号に掲げるものを除く。)を添付しなければな

らない。

一 使用権者の住民票の写し又はこれに代わる書類(使用権者が法人である場合にあって

は、当該法人の登記事項証明書)

二 譲受人の住民票の写し又はこれに代わる書類(譲受人が法人である場合にあっては、

当該法人の登記事項証明書)

三 譲受人が実施する事業の事業区域を表示する図面

四 譲受人が実施する事業の事業計画書

五 譲受人が実施する事業の事業計画を表示する図面

六 事業の実施に関して行政機関の長の許可、認可その他の処分を必要とする場合におい

ては、譲受人について、これらの処分があったことを証する書類又は当該行政機関の長

の意見書

七 譲受人の組織体制に関する事項を記載した書類

八 譲受人(法人である場合にあっては、その役員)が暴力団員等に該当しないことを誓

約する書類

九 土地使用権等の一部を譲り渡そうとする場合においては、次に掲げる書類

イ 使用権者が土地使用権等を譲り渡した後に実施する事業の事業区域を表示する図

ロ 使用権者が土地使用権等を譲り渡した後に実施する事業の事業計画書

ハ 使用権者が土地使用権等を譲り渡した後に実施する事業の事業計画を表示する図

ニ 使用権者(法人である場合にあっては、その役員)が暴力団員等に該当しないこと

を誓約する書類

(権利の譲渡の承認の公告の方法)

第30 条 法第22 条第2項の規定による公告は、都道府県の公報への掲載、インターネット

の利用その他の適切な方法により行うものとする。

(裁定の取消しの公告の方法)

第31 条 法第23 条第2項の規定による公告は、都道府県の公報への掲載、インターネット

の利用その他の適切な方法により行うものとする。

(証明書の様式)

第32 条 法第25 条第3項に規定する証明書の様式は、別記様式第8によるものとする。

第33 条 法第26 条第2項において準用する法第13 条第6項に規定する証明書の様式は、

別記様式第9 によるものとする。

第2節 特定所有者不明土地の収用又は使用に関する土地収用法の特例

第1款 収用適格事業のための特定所有者不明土地の収用又は使用に関する特例

(裁定申請書の様式)

第34 条 法第27 条第2項に規定する裁定申請書の様式は、別記様式第10 によるものとす

る。

(事業計画書の記載事項)

第35 条 法第27 条第3項第1号の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

99

一 事業計画の概要

二 事業の開始及び完成の時期

三 事業に要する経費及びその財源

四 事業の施行を必要とする公益上の理由

五 収用又は使用の別を明らかにした事業に必要な土地の面積及び物件の数量の概数並

びにこれらを必要とする理由

六 起業地(土地収用法(昭和26 年法律第219 号)第17 条第1項第2号に規定する起業

地をいう。第39 条において同じ。)を当該事業に用いることが相当であり、又は土地

の適正かつ合理的な利用に寄与することになる理由

(土地関係人確知必要情報を保有すると思料される者)

第36 条 令第11 条第2号の国土交通省令で定める者は、次に掲げるものとする。ただし、

第1号ロ及びハ、第2号ロ及びハ、第3号ロ及びハ、第5号イ並びに第6号イ及びロに掲

げる者については、令第1条第1号から第4号まで及び令第11 条第1号から第4号まで

に掲げる措置により判明したものに限る。

一 当該土地に関し所有権以外の権利を有する者の探索を行う場合においては、次に掲げ

る者

イ 当該土地を現に占有する者

ロ 当該土地の所有者

ハ 当該土地にある物件に関し所有権その他の権利を有する者

ニ 当該土地の固定資産課税台帳を備えると思料される市町村の長(当該土地が特別区

の区域内にある場合にあっては、都の知事)

ホ 当該土地が農地である場合においては、その農地台帳を備えると思料される農業委

員会が置かれている市町村の長

二 当該土地にある物件の所有者の探索を行う場合においては、次に掲げる者

イ 当該物件を現に占有する者

ロ 当該物件に関し所有権以外の権利を有する者

ハ 当該土地に関し所有権その他の権利を有する者

ニ 当該物件(地方税法第3百41 条第3号に規定する家屋であるものに限る。)の固

定資産課税台帳を備えると思料される市町村の長(当該物件が特別区の区域内にある

場合にあっては、都の知事)

三 当該土地にある物件に関し所有権以外の権利を有する者の探索を行う場合において

は、次に掲げる者

イ 当該物件を現に占有する者

ロ 当該物件の所有者

ハ 当該土地に関し所有権その他の権利を有する者

四 令第11 条第5号に規定する措置をとってもなお当該土地の関係人の全部又は一部を

確知することができなかった場合においては、当該措置の対象者

五 当該土地の関係人と思料される者が個人である場合においては、次に掲げる者

イ 親族

ロ 当該土地の関係人と思料される者が日本の国籍を有し、かつ、外国に住所を有する

と思料される場合であって、探索を行う者が国の行政機関の長等である場合において

は、在外公館の長

六 当該土地の関係人と思料される者が法人である場合においては、次に掲げる者

イ 当該法人の代表者

ロ 当該法人が合併以外の事由により解散した法人である場合においては、清算人又は

破産管財人

ハ イ又はロに掲げる者が記録されている住民基本台帳、戸籍簿若しくは除籍簿又は戸

籍の附票を備えると思料される市町村の長

100

(土地の関係人と思料される者が記録されている書類)

第37 条 第2条第1項の規定は、令第11 条第3号の国土交通省令で定める書類について準

用する。

2 第2条第2項の規定は、令第11 条第4号の国土交通省令で定める書類について準用す

る。

(土地の関係人を特定するための措置)

第38 条 第3条の規定は、令第11 条第5号の国土交通省令で定める措置について準用す

る。

(裁定申請書の添付書類)

第39 条 法第27 条第3項第3号の国土交通省令で定める書類は、次に掲げるもの(起業者

(土地収用法第8条第1項に規定する起業者をいう。第1号及び第45 条において同じ。)

が国又は地方公共団体である場合にあっては、第1号に掲げるものを除く。)とする。

一 起業者の住民票の写し又はこれに代わる書類(起業者が法人である場合にあっては、

当該法人の登記事項証明書)

二 特定所有者不明土地の実測平面図

三 特定所有者不明土地の所有者の探索の過程において得られた法第27 条第2項第4号

に掲げる事項を明らかにする書類

四 特定所有者不明土地の写真

五 特定所有者不明土地にある物件が簡易建築物である場合においては、次に掲げる書類

イ 当該簡易建築物の種類、構造及び床面積を記載した書類

ロ 当該簡易建築物の写真

六 特定所有者不明土地にある物件が朽廃建築物である場合においては、次に掲げる書類

イ 当該朽廃建築物の損傷、腐食その他の劣化の状況を記載した書類

ロ 当該朽廃建築物の建築時からの経過年数を明らかにする書類

ハ 当該朽廃建築物の写真

七 起業地を表示する図面

八 事業計画を表示する図面

九 第35 条各号に掲げる事項の内容を説明する書類がある場合においては、当該書類

十 特定所有者不明土地の関係人の全部又は一部を確知することができない場合におい

ては、次に掲げる書類

イ 特定所有者不明土地の関係人の全部又は一部を確知することができない事情を記

載した書類

ロ 特定所有者不明土地の関係人の探索の過程において得られたイに規定する事情を

明らかにする書類

十一 法第27 条第3項第2号ホの補償金の見積額の積算の基礎を明らかにする書類

2 前項第7号に掲げる書類は、次に掲げるところにより作成し、符号は、国土地理院発行

の5 万分の1 の地形図の図式により、これにないものは適宜のものによるものとする。

一 縮尺2万5000 分の1(2万5000 分の1がない場合は5万分の1)の一般図によって

起業地の位置を示すこと。

二 縮尺100 分の1から3000 分の1程度までの間で、起業地を表示するに便利な適宜の

縮尺の地形図によって起業地を収用の部分は薄い黄色で、使用の部分は薄い緑色で着色

し、起業地内に物件があるときは、その主要なものを図示すること。

3 第1項第8号に掲げる書類は、縮尺百分の1 から3000 分の1程度までのもので、施設

の位置を明らかに図示するものとし、施設の内容を明らかにするに足りる平面図を添付す

るものとする。

(裁定申請があった旨等の公告の方法)

第40 条 法第28 条第1項の規定による公告は、都道府県の公報への掲載、インターネット

の利用その他の適切な方法により行うものとする。

101

(異議等の申出の方法)

第41 条 法第28 条第1項第3号の規定による申出をしようとする者は、次に掲げる事項を

記載した申出書を都道府県知事に提出しなければならない。

一 申出者の氏名又は名称及び住所

二 当該申出に係る特定所有者不明土地の所在及び地番

三 法第28 条第1項第3号イの規定による申出をしようとする場合においては、当該異

議の内容及びその理由

四 法第28 条第1項第3号ロの規定による申出をしようとする場合においては、当該特

定所有者不明土地の所有者である旨

(公告事項)

第42 条 法第28 条第1項第4号の国土交通省令で定める事項は、同項の規定による公告の

日から2週間以内に同項第3号の規定による申出がないときは、都道府県知事が法第32

条第1項の裁定をすることがある旨とする。

(裁定申請があった旨の通知の方法)

第43 条 法第28 条第2項の規定による通知は、文書により行わなければならない。

(裁定申請の却下の通知の方法)

第44 条 法第29 条第3項の規定による通知は、文書により行わなければならない。

(裁定手続開始の決定の通知)

第45 条 都道府県知事は、法第30 条第1項の規定により裁定手続の開始を決定したとき

は、直ちに、その旨を起業者に文書で通知しなければならない。

(裁定手続開始の決定の公告の方法)

第46 条 法第30 条第1項の規定による公告は、都道府県の公報への掲載、インターネット

の利用その他の適切な方法により行うものとする。

(証明書の様式)

第47 条 法第32 条第6項において準用する法第13 条第6項に規定する証明書の様式は、

別記様式第11 によるものとする。

(裁定の公告の方法)

第48 条 法第33 条の規定による公告は、都道府県の公報への掲載、インターネットの利用

その他の適切な方法により行うものとする。

(担保の取得及び取戻しに関する手続)

第49 条 法第35 条第1項において準用する土地収用法第84 条第3項において準用する同

法第83 条第7 項の担保の取得及び取戻しに関する手続については、土地収用法施行規則

(昭和26 年建設省令第33 号)第19 条から第22 条までの規定を準用する。この場合にお

いて、同令第19 条、第20 条第1項、第21 条及び第22 条第2項中「収用委員会」とあり、

並びに同令第20 条第2項中「収用委員会の会長」とあるのは、「都道府県知事」と読み

替えるものとする。

(請求書及び要求書の記載事項)

第50 条 法第35 条第2項の国土交通省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

一 法第35 条第1項において準用する土地収用法第719 条の規定による請求をしようと

する場合においては、次に掲げる事項

イ 移転しなければならない物件の種類及び数量

ロ 移転しなければならない物件の移転料の見積額

ハ 移転しなければならない物件に相当するものを取得するのに要する価格の見積額

二 法第35 条第1項において準用する土地収用法第814 条第1項の規定による要求をし

ようとする場合においては、その理由

三 法第35 条第1項において準用する土地収用法第815 条第1項の規定による要求をし

ようとする場合においては、次に掲げる事項

イ 移転しなければならない物件の種類及び数量

102

ロ 要求の理由

(証明書の様式)

第51 条 法第36 条第2項において準用する法第13 条第6項に規定する証明書の様式は、

別記様式第12 によるものとする。

第2款 都市計画事業のための特定所有者不明土地の収用又は使用に関する特例

第52 条 第34 条、第35 条及び第39 条から第46 条までの規定は、法第37 条第1項の規定

による裁定の申請について準用する。この場合において、第35 条第6号中「起業地(土

地収用法(昭和26 年法律第219 号)第17 条第1項第2号に規定する起業地をいう。」と

あるのは「事業地(都市計画法(昭和43 年法律第100 号)第60 条第2項第1号に規定す

る事業地をいう。」と、第39 条第1項中「起業者(土地収用法第8条第1項に規定する

起業者をいう。」とあるのは「施行者(都市計画法第4条第16 項に規定する施行者をい

う。」と、同項第1号及び第45 条中「起業者」とあるのは「施行者」と、第39 条第1項

第6号並びに第2項第1号及び第2号中「起業地」とあるのは「事業地」と読み替えるも

のとする。

2 第47 条から第51 条までの規定は、法第37 条第3項の裁定について準用する。

第3節 所有者不明土地の管理の適正化のための措置

第53 条 法第41 条第2項において準用する法第13 条第6項に規定する証明書の様式は、

別記様式第13 によるものとする。

第3章 土地の所有者の効果的な探索のための特別の措置

(土地所有者等関連情報)

第54 条 法第43 条第1項の国土交通省令で定める情報は、本籍、出生の年月日、死亡の年

月日及び連絡先とする。

(都道府県知事等に対する土地所有者等関連情報の提供の請求手続)

第55 条 法第43 条第2項の規定による土地所有者等関連情報の提供の求めをしようとす

る者(以下この条において「請求者」という。)は、次に掲げる事項(市町村長が法第38

条第1項の規定による勧告を行うため当該勧告に係る土地の土地所有者等(法第43 条第

1項に規定する土地所有者等をいう。以下同じ。)を知る必要があるとして当該求めをし

ようとする場合又は国の行政機関の長等が法第42 条の規定による請求を行うため当該請

求に係る土地の土地所有者等を知る必要があるとして当該求めをしようとする場合にあ

っては、第3号に掲げるものを除く。)を記載した情報提供請求書を土地所有者等を知る

必要がある土地(以下「対象土地」という。)の所在地を管轄する都道府県知事又は市町

村長に提出しなければならない。

一 請求者の氏名又は名称及び住所

二 対象土地の所在及び地番

三 事業の種類及び内容

四 土地所有者等関連情報の提供を求める理由

五 前各号に掲げるもののほか、土地所有者等関連情報の提供について必要な事項

2 前項の情報提供請求書には、次に掲げる書類(請求者が国の行政機関の長等である場合

にあっては、第1号、第3号、第4号及び第6号に掲げるものを除く。)又は次条第1項

に規定する書面を添付しなければならない。

一 請求者の住民票の写し又はこれに代わる書類(請求者が法人である場合にあっては、

当該法人の登記事項証明書)

二 対象土地の登記事項証明書

三 事業の実施に関して行政機関の長の許可、認可その他の処分を必要とする場合におい

ては、これらの処分があったことを証する書類又は当該行政機関の長の意見書

四 前号に掲げるもののほか、事業を実施する意思を有することを疎明する書類

五 土地所有者等の探索の過程において得られた前項第4号に掲げる事項を明らかにす

る書類

103

六 請求者(法人である場合にあっては、その役員)が暴力団員等に該当しないことを誓

約する書類

(土地所有者等を知る必要性を証する書面の交付)

第56 条 地域福利増進事業等(法第43 条第1項に規定する地域福利増進事業等をいう。以

下この項及び第59 条において同じ。)の実施の準備のため当該地域福利増進事業等を実

施しようとする区域内の土地の土地所有者等を知る必要があるとして土地所有者等関連

情報の提供の求めをしようとする者(国の行政機関の長等を除く。以下この条において「請

求者」という。)は、その必要性を証する書面の交付を対象土地の所在地を管轄する市町

村長に求めることができる。

2 前項の規定による書面の交付の求めをしようとする請求者は、次に掲げる事項を記載し

た交付請求書を対象土地の所在地を管轄する市町村長に提出しなければならない。

一 請求者の氏名又は名称及び住所

二 対象土地の所在及び地番

三 事業の種類及び内容

四 土地所有者等関連情報の提供を求める理由

五 土地所有者等関連情報の提供を求めるために必要な氏名及び本籍又は住所

六 前各号に掲げるもののほか、土地所有者等関連情報の提供について必要な事項

3 前項の交付請求書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 請求者の住民票の写し又はこれに代わる書類(請求者が法人である場合にあっては、

当該法人の登記事項証明書)

二 対象土地の登記事項証明書

三 事業の実施に関して行政機関の長の許可、認可その他の処分を必要とする場合におい

ては、これらの処分があったことを証する書類又は当該行政機関の長の意見書

四 前号に掲げるもののほか、事業を実施する意思を有することを疎明する書類

五 土地所有者等の探索の過程において得られた前項第4号に掲げる事項を明らかにす

る書類

六 請求者(法人である場合にあっては、その役員)が暴力団員等に該当しないことを誓

約する書類

(土地に工作物を設置している者等に対する土地所有者等関連情報の提供の請求手続)

第57 条 法第43 条第5項の規定による土地所有者等関連情報の提供の求めをしようとす

る国の行政機関の長等は、次に掲げる事項(市町村長が法第38 条第1項の規定による勧

告を行うため当該勧告に係る土地の土地所有者等を知る必要があるとして当該求めをし

ようとする場合又は国の行政機関の長等が法第42 条の規定による請求を行うため当該請

求に係る土地の土地所有者等を知る必要があるとして当該求めをしようとする場合にあ

っては、第3号に掲げるものを除く。)を記載した情報提供請求書を対象土地に工作物を

設置している者その他の者に提出しなければならない。

一 当該求めをする国又は地方公共団体の機関の名称

二 対象土地の所在及び地番

三 事業の種類及び内容

四 土地所有者等関連情報の提供を求める理由

五 前各号に掲げるもののほか、土地所有者等関連情報の提供について必要な事項

2 前項の情報提供請求書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 対象土地の登記事項証明書

二 土地所有者等の探索の過程において得られた前項第4号に掲げる事項を明らかにす

る書類

第4章 所有者不明土地利用円滑化等推進法人

(所有者不明土地対策計画の作成等の提案)

104

第58 条 法第52 条第1項の規定により所有者不明土地対策計画の作成又は変更の提案を

行おうとする所有者不明土地利用円滑化等推進法人は、その名称又は商号及び主たる事務

所の所在地を記載した提案書に当該提案に係る所有者不明土地対策計画の素案を添えて、

市町村に提出しなければならない。

第5 章 雑則

(職員の派遣の要請手続)

第59 条 法第53 条第1項又は第2項の規定による職員の派遣の要請をしようとする都道

府県知事又は市町村長は、次に掲げる事項(第1号に掲げる事項にあっては、地域福利増

進事業等の実施の準備のためその職員に土地所有者等の探索に関する専門的な知識を習

得させる必要があるときに当該要請をしようとする場合に限る。)を記載した職員派遣要

請書を国土交通大臣に提出しなければならない。

一 事業の種類及び内容

二 派遣を要請する理由

三 前2 号に掲げるもののほか、職員の派遣について必要な事項

(権限の委任)

第60 条 法第53 条第1項及び第2項に規定する国土交通大臣の権限は、地方整備局長及び

北海道開発局長に委任する。ただし、国土交通大臣が自ら行うことを妨げない。

建物の区分所有等に関する法律(抄)

(昭和37 年法律第69 号・令和3年法律第24 号による改正)

(区分所有者の権利義務等)

第6条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有

者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

2 区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内に

おいて、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求する

ことができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支

払わなければならない。

3 第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準

用する。

4 民法(明治29 年法律第89 号)第264 条の8及び第264 条の14 の規定は、専有部分及

び共用部分には適用しない。

非訟事件手続法(抄)

(平成23 年法律第51 号・令和3年法律第24 号による改正)

(手続費用の負担)

第26 条 非訟事件の手続の費用(以下「手続費用」という。)は、特別の定めがある場合

を除き、各自の負担とする。

2 裁判所は、事情により、この法律の他の規定(次項を除く。)又は他の法令の規定によ

れば当事者、利害関係参加人その他の関係人がそれぞれ負担すべき手続費用の全部又は一

部を、その負担すべき者以外の者であって次に掲げるものに負担させることができる。

一 当事者又は利害関係参加人

二 前号に掲げる者以外の裁判を受ける者となるべき者

三 前号に掲げる者に準ずる者であって、その裁判により直接に利益を受けるもの

3 前二項又は他の法令の規定によれば法務大臣又は検察官が負担すべき手続費用は、国庫

の負担とする。

(事実の調査及び証拠調べ等)

第49 条 裁判所は、職権で事実の調査をし、かつ、申立てにより又は職権で、必要と認め

る証拠調べをしなければならない。

2 当事者は、適切かつ迅速な審理及び裁判の実現のため、事実の調査及び証拠調べに協力

するものとする。

(終局決定の告知及び効力の発生等)

第56 条 終局決定は、当事者及び利害関係参加人並びにこれらの者以外の裁判を受ける者

に対し、相当と認める方法で告知しなければならない。

2 終局決定(申立てを却下する決定を除く。)は、裁判を受ける者(裁判を受ける者が数

人あるときは、そのうちの一人)に告知することによってその効力を生ずる。

3 申立てを却下する終局決定は、申立人に告知することによってその効力を生ずる。

4 終局決定は、即時抗告の期間の満了前には確定しないものとする。

5 終局決定の確定は、前項の期間内にした即時抗告の提起により、遮断される。

(所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令)

第90 条 民法第二編第三章第四節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動

産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 裁判所は、次に掲げる事項を公告し、かつ、第2号の期間が経過した後でなければ、所

有者不明土地管理命令(民法第264 条の2第1項に規定する所有者不明土地管理命令をい

う。以下この条において同じ。)をすることができない。この場合において、同号の期間

は、一箇月を下ってはならない。

一 所有者不明土地管理命令の申立てがその対象となるべき土地又は共有持分について

あったこと。

二 所有者不明土地管理命令をすることについて異議があるときは、所有者不明土地管理

命令の対象となるべき土地又は共有持分を有する者は一定の期間内にその旨の届出を

すべきこと。

三 前号の届出がないときは、所有者不明土地管理命令がされること。

3 民法第264 条の3第2項又は第264 条の6第2項の許可の申立てをする場合には、その

許可を求める理由を疎明しなければならない。

4 裁判所は、民法第264 条の6第1項の規定による解任の裁判又は同法第264 条の7第1

項の規定による費用若しくは報酬の額を定める裁判をする場合には、所有者不明土地管理

人(同法第264 条の2第4項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この条におい

て同じ。)の陳述を聴かなければならない。

5 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 所有者不明土地管理命令の申立てを却下する裁判

二 民法第264 条の3第2項又は第264 条の6第2項の許可の申立てを却下する裁判

三 民法第264 条の6第1項の規定による解任の申立てについての裁判

6 所有者不明土地管理命令があった場合には、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、所有

者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分について、所有者不明土地管理命令

の登記を嘱託しなければならない。

7 所有者不明土地管理命令を取り消す裁判があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅

滞なく、所有者不明土地管理命令の登記の抹消を嘱託しなければならない。

8 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及

び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じ

たときは、その土地の所有者又はその共有持分を有する者のために、当該金銭を所有者不

明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発

せられた場合にあっては、共有物である土地)の所在地の供託所に供託することができる。

この場合において、供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法

務省令で定める事項を公告しなければならない。

9 裁判所は、所有者不明土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

10 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたとき

を含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、所有者不明土地

106

管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、所有者不明土地管理命令を取り消

さなければならない。

11 所有者不明土地等(民法第264 条の3第1項に規定する所有者不明土地等をいう。以下

この条において同じ。)の所有者(その共有持分を有する者を含む。以下この条において

同じ。)が所有者不明土地等の所有権(その共有持分を含む。)が自己に帰属することを

証明したときは、裁判所は、当該所有者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り

消さなければならない。この場合において、所有者不明土地管理命令が取り消されたとき

は、所有者不明土地管理人は、当該所有者に対し、その事務の経過及び結果を報告し、当

該所有者に帰属することが証明された財産を引き渡さなければならない。

12 所有者不明土地管理命令及びその変更の裁判は、所有者不明土地等の所有者に告知する

ことを要しない。

13 所有者不明土地管理命令の取消しの裁判は、事件の記録上所有者不明土地等の所有者及

びその所在が判明している場合に限り、その所有者に告知すれば足りる。

14 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることが

できる。

一 所有者不明土地管理命令 利害関係人

二 民法第264 条の6第1項の規定による解任の裁判 利害関係人

三 民法第264 条の7第1項の規定による費用又は報酬の額を定める裁判 所有者不明

土地管理人

四 第9項から第11 項までの規定による変更又は取消しの裁判 利害関係人

15 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第264 条の2第4項の規定による所有者不明土地管理人の選任の裁判

二 民法第264 条の3第2項又は第264 条の6第2項の許可の裁判

16 第2項から前項までの規定は、民法第264 条の8第1項に規定する所有者不明建物管理

命令及び同条第四項に規定する所有者不明建物管理人について準用する。

(管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令)

第91 条 民法第二編第三章第五節の規定による非訟事件は、裁判を求める事項に係る不動

産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 民法第264 条の10 第2項又は第264 条の12 第2項の許可の申立てをする場合には、そ

の許可を求める理由を疎明しなければならない。

3 裁判所は、次の各号に掲げる裁判をする場合には、当該各号に定める者の陳述を聴かな

ければならない。ただし、第1号に掲げる裁判をする場合において、その陳述を聴く手続

を経ることにより当該裁判の申立ての目的を達することができない事情があるときは、こ

の限りでない。

一 管理不全土地管理命令(民法第264 条の9第1項に規定する管理不全土地管理命令を

いう。以下この条において同じ。) 管理不全土地管理命令の対象となるべき土地の所

有者

二 民法第264 条の10 第2項の許可の裁判 管理不全土地管理命令の対象とされた土地

の所有者

三 民法第264 条の12 第1項の規定による解任の裁判 管理不全土地管理人(同法第264

条の9第3項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下この条において同じ。)

四 民法第264 条の13 第1項の規定による費用の額を定める裁判 管理不全土地管理人

五 民法第264 条の13 第1項の規定による報酬の額を定める裁判 管理不全土地管理人

及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

4 次に掲げる裁判には、理由を付さなければならない。

一 管理不全土地管理命令の申立てについての裁判

二 民法第264 条の10 第2項の許可の申立てについての裁判

三 民法第264 条の12 第1項の規定による解任の申立てについての裁判

107

四 民法第264 条の12 第2項の許可の申立てを却下する裁判

5 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管

理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、その土地

の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、当該金銭を管理不全土地管理命

令の対象とされた土地の所在地の供託所に供託することができる。この場合において、供

託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を

公告しなければならない。

6 裁判所は、管理不全土地管理命令を変更し、又は取り消すことができる。

7 裁判所は、管理すべき財産がなくなったとき(管理すべき財産の全部が供託されたとき

を含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、管理不全土地管

理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、管理不全土地管理命令を取り消さな

ければならない。

8 次の各号に掲げる裁判に対しては、当該各号に定める者に限り、即時抗告をすることが

できる。

一 管理不全土地管理命令 利害関係人

二 民法第264 条の10 第2項の許可の裁判 管理不全土地管理命令の対象とされた土地

の所有者

三 民法第264 条の12 第1項の規定による解任の裁判 利害関係人

四 民法第264 条の13 第1項の規定による費用の額を定める裁判 管理不全土地管理人

五 民法第264 条の13 第1項の規定による報酬の額を定める裁判 管理不全土地管理人

及び管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者

六 前2項の規定による変更又は取消しの裁判 利害関係人

9 次に掲げる裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

一 民法第264 条の9第3項の規定による管理不全土地管理人の選任の裁判

二 民法第264 条の12 第2項の許可の裁判

10 第2項から前項までの規定は、民法第264 条の14 第1項に規定する管理不全建物管理

命令及び同条第三項に規定する管理不全建物管理人について準用する。

(適用除外)

第92 条 第40 条及び第57 条第2項第2号の規定は、この章の規定による非訟事件の手続

には、適用しない。

共有に関する非訟事件及び土地等の管理に関する非訟事件に関する手続規則

(令和4年5月13 日最高裁判所規則第13 号)

第1章 総則

(申立て等の方式)

第1条 民法(明治29 年法律第89 号)第2編第3章第3節(同法第262 条の規定を除く。)

から第5節までの規定及び表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

(令和元年法律第15 号)の規定による非訟事件の手続に関する申立て、届出及び裁判所

に対する報告は、特別の定めがある場合を除き、書面でしなければならない。

(申立人に対する資料の提出の求め)

第2条 裁判所は、前条の申立てをした者又はしようとする者に対し、当該申立てに関する

申立書及び当該申立書に添付すべき書類のほか、申立てを理由づける事実に関する資料そ

の他同条の手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができる。

(裁判所書記官の事実調査)

第3条 裁判所は、相当と認めるときは、第1条の申立てを理由づける事実の調査を裁判所

書記官に命じて行わせることができる。

(公告の方法等)

108

第4条 公告は、特別の定めがある場合を除き、裁判所の掲示場その他裁判所内の公衆の見

やすい場所に掲示し、かつ、官報に掲載してする。

2 公告に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。

第2章 共有に関する非訟事件

(申立書の記載事項)

第5条 民法第251 条第2項、第252 条第2項及び第252 条の2第2項(これらの規定を同

法第264 条において準用する場合を含む。)の規定による裁判に係る非訟事件の手続に関

する申立書には、申立ての趣旨及び原因並びに申立てを理由づける事実を記載するほか、

次に掲げる事項を記載し、申立人又は代理人が記名押印しなければならない。

一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所

二 申立てに係る共有物又は民法第264 条に規定する数人で所有権以外の財産権を有す

る場合における当該財産権(以下この条から第7条までにおいて単に「共有物」という。)

の表示

2 前項の申立書には、同項に規定する事項のほか、次に掲げる事項を記載するものとする。

一 代理人(前項第1号の法定代理人を除く。)の氏名及び住所

二 申立てに係る共有物の共有者(申立人を除く。)の氏名又は名称及び住所並びに法定

代理人の氏名及び住所

三 申立てを理由づける具体的な事実ごとの証拠

四 事件の表示

五 附属書類の表示

六 年月日

七 裁判所の表示

八 申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)

九 その他裁判所が定める事項

(申立書の添付書類)

第6条 申立てに係る共有物が不動産又は不動産に関する所有権以外の財産権である場合

には、前条第1項の申立書には、当該不動産の登記事項証明書を添付しなければならない。

(公告すべき事項)

第7条 非訟事件手続法(平成23 年法律第51 号)第85 条第2項の規定による公告には、

同項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を掲げなければならない。

一 申立人の氏名又は名称及び住所

二 申立てに係る共有物の表示

三 当該他の共有者等の氏名又は名称及び住所

(所在等不明共有者の持分の取得の裁判に係る非訟事件及び所在等不明共有者の持分を譲

渡する権限の付与の裁判に係る非訟事件の手続への準用)

第8条 前3条の規定は、所在等不明共有者の持分の取得の裁判に係る非訟事件及び所在等

不明共有者の持分を譲渡する権限の付与の裁判に係る非訟事件の手続について準用する。

この場合において、第5条第1項第2号中「共有物又は民法第264 条に規定する数人で所

有権以外の財産権を有する場合における当該財産権(以下この条から第7条までにおいて

単に「共有物」という。)」とあるのは「不動産」と、第5条第2項第2号中「共有物」

とあるのは「不動産」と、第6条中「申立てに係る共有物が不動産又は不動産に関する所

有権以外の財産権である場合には、前条第1項」とあるのは「第8条において読み替えて

準用する前条第1項」と、前条第2号中「共有物」とあるのは「不動産」と、同条第3号

中「当該他の共有者等」とあるのは「所在等不明共有者」と読み替えるものとする。

第3章 土地等の管理に関する非訟事件

(申立書の記載事項)

109

第9条 民法第2編第3章第4節の規定による非訟事件の手続に関する申立書には、申立て

の趣旨及び原因並びに申立てを理由づける事実を記載するほか、次に掲げる事項を記載し、

申立人又は代理人が記名押印しなければならない。

一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所

二 所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地若しくは共有持分若しくは所有者不

明土地管理命令の対象とされた土地若しくは共有持分又は所有者不明建物管理命令の

対象となるべき建物若しくは共有持分若しくは所有者不明建物管理命令の対象とされ

た建物若しくは共有持分の表示

2 前項の申立書には、同項に規定する事項のほか、次に掲げる事項を記載するものとする。

一 代理人(前項第1号の法定代理人を除く。)の氏名及び住所

二 前項第2号に規定する土地又は建物の所有者又は共有持分を有する者の氏名又は名

称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所

三 申立てを理由づける具体的な事実ごとの証拠

四 事件の表示

五 附属書類の表示

六 年月日

七 裁判所の表示

八 申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)

九 その他裁判所が定める事項

3 前項の規定にかかわらず、第1項の手続に関し、申立人又は代理人から前項第8号に掲

げる事項を記載した申立書が提出されているときは、以後裁判所に提出する当該手続を基

本とする手続の申立書については、これを記載することを要しない。

(申立書の添付書類)

第10 条 前条第1項の申立書には、所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地(共有

持分を対象として所有者不明土地管理命令が申し立てられる場合にあっては、共有物であ

る土地。次条第1項において同じ。)若しくは所有者不明土地管理命令の対象とされた土

地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物

である土地)又は所有者不明建物管理命令の対象となるべき建物(共有持分を対象として

所有者不明建物管理命令が申し立てられる場合にあっては、共有物である建物)若しくは

所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理

命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)の登記事項証明書を添付しなけれ

ばならない。

2 前項の規定にかかわらず、前条第1項の手続に関し、前項に規定する書面が提出されて

いるときは、以後裁判所に提出する当該手続を基本とする手続の申立書には、これを添付

することを要しない。

(手続の進行に資する書類の提出)

第11 条 所有者不明土地管理命令の申立人は、裁判所に対し、次に掲げる書類を提出する

ものとする。

一 所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地に係る不動産登記法(平成16 年法律

第123 号)第14 条第1項の地図又は同条第4項の地図に準ずる図面の写し(当該地図

又は地図に準ずる図面が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内

容を証明した書面)

二 所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地の所在地に至るまでの通常の経路及

び方法を記載した図面

三 申立人が所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地の現況の調査の結果又は評

価を記載した文書を保有するときは、その文書

110

四 所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地について登記がされていないときは、

当該土地についての不動産登記令(平成16 年政令第379 号)第2条第2号に規定する

土地所在図及び同条第3号に規定する地積測量図

2 前項(第1号を除く。)の規定は、所有者不明建物管理命令の申立人について準用する。

この場合において、同項第2号から第4号までの規定中「所有者不明土地管理命令の対象

となるべき土地」とあるのは「所有者不明建物管理命令の対象となるべき建物(共有持分

を対象として所有者不明建物管理命令が申し立てられる場合にあっては、共有物である建

物)」と、同号中「当該土地」とあるのは「当該建物」と、「第2条第2号に規定する土

地所在図及び同条第3号に規定する地積測量図」とあるのは「第2条第5号に規定する建

物図面及び同条第6号に規定する各階平面図」と読み替えるものとする。

(公告すべき事項)

第12 条 非訟事件手続法第90 条第2項(同条第16 項において準用する場合を含む。)の

規定による公告には、同条第2項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を掲げなけれ

ばならない。

一 申立人の氏名又は名称及び住所

二 所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地若しくは共有持分又は所有者不明建

物管理命令の対象となるべき建物若しくは共有持分の表示

三 前号に規定する土地又は建物の所有者又は共有持分を有する者の氏名又は名称及び

住所

(裁判による登記の嘱託)

第13 条 非訟事件手続法第90 条第6項及び第7項(これらの規定を同条第16 項において

準用する場合を含む。)の規定による登記の嘱託は、嘱託書に裁判書の謄本を添付してし

なければならない。

(資格証明書の交付等)

第14 条 裁判所書記官は、所有者不明土地管理人又は所有者不明建物管理人に対し、その

選任を証する書面を交付しなければならない。

2 裁判所書記官は、所有者不明土地管理人又は所有者不明建物管理人があらかじめその職

務のために使用する印鑑を裁判所に提出した場合において、当該所有者不明土地管理人又

は所有者不明建物管理人が所有者不明土地管理命令の対象とされた土地若しくは共有持

分又は所有者不明建物管理命令の対象とされた建物若しくは共有持分についての権利に

関する登記を申請するために登記所に提出する印鑑の証明を請求したときは、当該所有者

不明土地管理人又は所有者不明建物管理人に係る前項の書面に、当該請求に係る印鑑が裁

判所に提出された印鑑と相違ないことを証明する旨をも記載して、これを交付するものと

する。

(民法第2編第3章第5節の規定による非訟事件の手続への準用)

第15 条 第9条から第11 条まで及び前条の規定は、民法第2編第3章第5節の規定による

非訟事件の手続について準用する。この場合において、第9条第1項第2号中「所有者不

明土地管理命令の対象となるべき土地若しくは共有持分若しくは所有者不明土地管理命

令の対象とされた土地若しくは共有持分又は所有者不明建物管理命令の対象となるべき

建物若しくは共有持分若しくは所有者不明建物管理命令の対象とされた建物若しくは共

有持分」とあるのは「管理不全土地管理命令の対象となるべき土地若しくは管理不全土地

管理命令の対象とされた土地又は管理不全建物管理命令の対象となるべき建物若しくは

管理不全建物管理命令の対象とされた建物」と、同条第2項第2号中「所有者又は共有持

分を有する者」とあるのは「所有者」と、第10 条第1項中「所有者不明土地管理命令の

対象となるべき土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が申し立てられる場

合にあっては、共有物である土地。次条第1項において同じ。)若しくは所有者不明土地

管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられ

た場合にあっては、共有物である土地)又は所有者不明建物管理命令の対象となるべき建

111

物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が申し立てられる場合にあっては、共

有物である建物)若しくは所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象

として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)」とあ

るのは「管理不全土地管理命令の対象となるべき土地若しくは管理不全土地管理命令の対

象とされた土地又は管理不全建物管理命令の対象となるべき建物若しくは管理不全建物

管理命令の対象とされた建物」と、第11 条中「所有者不明土地管理命令」とあるのは「管

理不全土地管理命令」と、同条第2項中「、所有者不明建物管理命令」とあるのは「、管

理不全建物管理命令」と、「所有者不明建物管理命令の対象となるべき建物(共有持分を

対象として所有者不明建物管理命令が申し立てられる場合にあっては、共有物である建

物)」とあるのは「管理不全建物管理命令の対象となるべき建物」と、第14 条中「所有

者不明土地管理人」とあるのは「管理不全土地管理人」と、「所有者不明建物管理人」と

あるのは「管理不全建物管理人」と、同条第2項中「所有者不明土地管理命令の対象とさ

れた土地若しくは共有持分」とあるのは「管理不全土地管理命令の対象とされた土地」と、

「所有者不明建物管理命令の対象とされた建物若しくは共有持分」とあるのは「管理不全

建物管理命令の対象とされた建物」と読み替えるものとする。

(表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の規定による非訟事件の手

続への準用)

第16 条 第9条、第10 条、第11 条第1項(第4号を除く。)及び第13 条の規定は、表題

部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の規定による非訟事件の手続に

ついて準用する。この場合において、第9条第1項第2号中「所有者不明土地管理命令の

対象となるべき土地若しくは共有持分若しくは所有者不明土地管理命令の対象とされた

土地若しくは共有持分又は所有者不明建物管理命令の対象となるべき建物若しくは共有

持分若しくは所有者不明建物管理命令の対象とされた建物若しくは共有持分」とあるのは

「所有者等特定不能土地又は特定社団等帰属土地」と、同条第2項第2号中「土地又は建

物の所有者又は共有持分を有する者」とあるのは「土地の所有者」と、第10 条第1項中

「所有者不明土地管理命令の対象となるべき土地(共有持分を対象として所有者不明土地

管理命令が申し立てられる場合にあっては、共有物である土地。次条第1項において同じ。)

若しくは所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明

土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)又は所有者不明建物管理

命令の対象となるべき建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が申し立てら

れる場合にあっては、共有物である建物)若しくは所有者不明建物管理命令の対象とされ

た建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共

有物である建物)」とあるのは「所有者等特定不能土地又は特定社団等帰属土地」と、第

11 条第1項中「所有者不明土地管理命令の申立人」とあるのは「特定不能土地等管理命令

又は特定社団等帰属土地等管理命令の申立人」と、同項第1号から第3号までの規定中「所

有者不明土地管理命令の対象となるべき土地」とあるのは「所有者等特定不能土地又は特

定社団等帰属土地」と読み替えるものとする。

民事訴訟法(抄)

(平成8年法律第109 号・令和3年法律第24 号による改正)

第125 条 所有者不明土地管理命令(民法第264 条の2第1項に規定する所有者不明土地管

理命令をいう。以下この項及び次項において同じ。)が発せられたときは、当該所有者不

明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効

力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人(同条第4

項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下この項及び次項において同じ。)が得た

財産(以下この項及び次項において「所有者不明土地等」という。)に関する訴訟手続で

当該所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。同項において同じ。)

112

を当事者とするものは、中断する。この場合においては、所有者不明土地管理人は、訴訟

手続を受け継ぐことができる。

2 所有者不明土地管理命令が取り消されたときは、所有者不明土地管理人を当事者とする

所有者不明土地等に関する訴訟手続は、中断する。この場合においては、所有者不明土地

等の所有者は、訴訟手続を受け継がなければならない。

3 第1項の規定は所有者不明建物管理命令(民法第264 条の8第1項に規定する所有者不

明建物管理命令をいう。以下この項において同じ。)が発せられた場合について、前項の

規定は所有者不明建物管理命令が取り消された場合について準用する。

(相手方による受継の申立て)

第126 条 訴訟手続の受継の申立ては、相手方もすることができる。

家事事件手続法(抄)

(平成23 年法律第52 号・令和3年法律第24 号による改正)

(供託等)

第146 条の2 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由に

より金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分

を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することが

できる。

2 家庭裁判所が選任した管理人は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定め

るところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

(処分の取消し)

第147 条 家庭裁判所は、不在者が財産を管理することができるようになったとき、管理す

べき財産がなくなったとき(家庭裁判所が選任した管理人が管理すべき財産の全部が供託

されたときを含む。)その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときは、不在

者、管理人若しくは利害関係人の申立てにより又は職権で、民法第25 条第1項の規定に

よる管理人の選任その他の不在者の財産の管理に関する処分の取消しの審判をしなけれ

ばならない。

第190 条 相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判事件(別表第二の十一

の項の事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の

管轄に属する。

2 家庭裁判所は、相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審判において、当

事者に対し、系譜、祭具及び墳墓の引渡しを命ずることができる。

3 相続人その他の利害関係人は、相続の場合における祭具等の所有権の承継者の指定の審

判及びその申立てを却下する審判に対し、即時抗告をすることができる。

不動産登記令(抄)

(平成16 年政令第379 号・令和4年政令第315 号による改正)

(添付情報)

第7条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供

しなければならない。

一 申請人が法人であるとき(法務省令で定める場合を除く。)は、次に掲げる情報

イ 会社法人等番号(商業登記法(昭和38 年法律第125 号)第7条(他の法令におい

て準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。以下このイにおいて同

じ。)を有する法人にあっては、当該法人の会社法人等番号

ロ イに規定する法人以外の法人にあっては、当該法人の代表者の資格を証する情報

二 代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理

人の権限を証する情報

113

三 民法第423 条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位

原因を証する情報

四 法第30 条の規定により表示に関する登記を申請するときは、相続その他の一般承継

があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和22

年法律第67 号)第252 条の19 第1項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とす

る。第16 条第2項及び第17 条第1項を除き、以下同じ。)、登記官その他の公務員が

職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わ

るべき情報)

五 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報

イ 法第62 条の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったこ

とを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上

作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)

ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当

該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請

する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報

欄に規定するところによる。

(1) 法第63 条第1項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力の

ある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するもの

の正本を含む。以下同じ。)

(2) 法第108 条に規定する仮登記を命ずる処分があり、法第107 条第1項の規

定による仮登記を申請するとき 当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本

ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可

し、同意し、又は承諾したことを証する情報

六 前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添

付情報欄に掲げる情報

2 前項第1号及び第2号の規定は、不動産に関する国の機関の所管に属する権利について

命令又は規則により指定された官庁又は公署の職員が登記の嘱託をする場合には、適用し

ない。

3 次に掲げる場合には、第一項第五号ロの規定にかかわらず、登記原因を証する情報を提

供することを要しない。

一 法第69 条の2の規定により買戻しの特約に関する登記の抹消を申請する場合

二 所有権の保存の登記を申請する場合(敷地権付き区分建物について法第74 条第2項

の規定により所有権の保存の登記を申請する場合を除く。)

三 法第111 条第1項の規定により民事保全法(平成元年法律第91 号)第53 条第1項の

規定による処分禁止の登記(保全仮登記とともにしたものを除く。次号において同じ。)

に後れる登記の抹消を申請する場合

四 法第111 条第2項において準用する同条第1項の規定により処分禁止の登記に後れ

る登記の抹消を申請する場合

五 法第113 条の規定により保全仮登記とともにした処分禁止の登記に後れる登記の抹

消を申請する場合

114

所有権の登記がない土地の登記記録の表題部の所有者欄に氏名のみが記録されてい

る場合の所有権の保存の登記の可否について(通知)

平成30 年7月24 日付け法務省民二第279 号法務局民事行政部長、地方法務局長(新潟を除

く。)宛て法務省民事局民事第二課長通知

表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律等の施行に伴う不動産

登記事務の取扱いについて(通達)

令和2年10 月30 日付け法務省民二第796 号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通

特定不能土地等管理者等から売買等により所有権を取得した者による自己を表題部

所有者とする表題登記の取扱いについて(通達)

令和4年4月1日付け法務省民二第523 号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達

共有に関する事件(非訟事件手続法第三編第一章)、土地等の管理に関する事件(非

訟事件手続法第三編第二章)申立書式

https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/vcmsFolder_1958/vcms_1958.html


[1] 「表題部所有者不明土地」とは所有権の登記がない土地で、表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないものをいう(表題部法§2Ⅰ)。

[2] 「所有者等特定不能土地」とは表題部所有者不明土地のうち、所有者等の探索をしてもなお表題部所有者として登記すべきものがなく、所有者等を特定できなかった土地であり(表題部法§2Ⅲ・Ⅳ、同法14Ⅰ②③④)、表題部に所有者等を特定することができなかった旨の登記がなされた土地のことをいう(表題部法§2Ⅲ・Ⅳ、同法§15Ⅰ④)。

[3] 村松秀樹・大谷太 前掲書172 頁

[4] 村松秀樹・大谷太 前掲書173 頁

[5] 村松秀樹・大谷太 前掲書169 頁

[6] 村松秀樹・大谷太 前掲書177 頁

[7] ①所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分、②所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産、③①②の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(売却代金等)をいう(民§264 の3Ⅰ)

[8] 村松秀樹・大谷太 前掲書183 頁

[9] ①管理不全土地管理命令の対象とされた土地、②管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産、③①②の管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産をいう(民§264 の10Ⅰ)。

[10] 村松秀樹・大谷太 前掲書206 頁

[11] 村松秀樹・大谷太 前掲書202 頁

[12] 村松秀樹・大谷太 前掲書202 頁

[13] 村松秀樹・大谷太 前掲書200 頁(注2)

[14] 村松秀樹・大谷太 前掲書206 頁(注)

[15] 村松秀樹・大谷太 前掲書172 頁

[16] 村松秀樹・大谷太 前掲書173 頁

[17] 村松秀樹・大谷太 前掲書186 頁

[18] 村松秀樹・大谷太 前掲書174 頁

[19] 村松秀樹・大谷太 前掲書174-175 頁

[20] 村松秀樹・大谷太 前掲書178 頁

[21] 村松秀樹・大谷太 前掲書220 頁

[22] 村松秀樹・大谷太 前掲書218 頁

[23] 村松秀樹・大谷太 前掲書221 頁(注2)

[24] 村松秀樹・大谷太 前掲書218 頁

[25] 村松秀樹・大谷太 前掲書228 頁

[26] 村松秀樹・大谷太 前掲書218 頁

[27] 村松秀樹・大谷太 前掲書219 頁

[28] 村松秀樹・大谷太 前掲書220 頁

[29] 村松秀樹・大谷太 前掲書220 頁

「任意後見ハンドブック2014年版→2022年版」

(公社)成年後見センター・リーガルサポート「任意後見ハンドブック2022年版」が発行されました。「任意後見ハンドブック2014年版」と比較してみたいと思います。

基準は「任意後見ハンドブック2022年版」とします。見落としなどあるかもしれませんが、ご容赦ください。

・構成

追加

任意後見契約の相談から契約まで

任意後見等契約等の重要事項説明書

任意代理契約における当法人の監督に関する説明書

事前指示書

法人後見事務取扱標準報酬規程

削除

遺言公正証書

遺言書の保管等に関する約定書

・文言など

任意後見制度の仕組みについて、図の活用。

高松高判平成5年6月8日を題材としたQ&Aの削除。

意思決定支援と任意後見制度について、障害者の権利に関する条約[1]に触れる。

 任意代理との違い、の章において、持続的代理権[2]という用語を使用。任意代理契約と任意後見契約の併用の問題点について、法務省のアンケート実施を記載[3]

 任意後見契約における代理権目録に、契約の取消しなどについての代理権を予め付与することができることの記載。

 制度説明、動機の確認、制度選択の欄に、受任者のチェックポイントの記載。適切な後見事務が出来るか。受任者の心身の状態などについては削除。

死後事務委任契約についての記載の追加。

 令和4年法務省民事局「成年後見制度の利用促進に関する取り組みについて」アンケートによる、将来一定の公的機関等による監督、がなされる可能性について記載。

財産管理の監督の注意点として、原本確認を要することの記載を追加。

 未成年後見、障害のある子に任意後見任などがいるメリットについて、詳細な記述。注意点、メリットなど。老後の親の任意後見についての記載について、この章では削除。

 任意後見契約の登記について、数回の住所変更をしている場合の登記申請の回数について記載。

 任意後見契約書等作成のための業務委託契約書作成のために、委任者が遺言を作成していない場合、推定相続人の調査が必須、から、必ずしも必要ではない、に変更。

任意後見プランについて、即効型プランの場合は法定後見の利用を検討することを記載。

 任意後見等契約等の重要事項説明書において、報酬を決定する場合は根拠を示し、適正で、依頼者が納得するものであれば個別具体的な報酬で良いことの記載。

家庭裁判所が決定する任意後見監督人の報酬について、委任者に説明することを要することを記載。

 P85、私のライフプラン(案)について、孫の学費として―中略―ただし、私の将来の資産に不安があるときは、援助をやめても構いません。

→私の将来の資産に不安があるとき、が抽象的ではないかなと感じます。

 継続的見守り契約及び財産管理等委任契約書の欄で、(公社)成年後見センター・リーガルサポートでは、任意後見契約を伴わない任意代理契約は原則として締結しないことの記載。任意代理契約の代理権の範囲は、日常業務と一部の身上保護事務に限定することの記載。

任意後見契約書について、報酬規程の追加。

死後事務委任契約書について、費用の問題の記載追加。

参考

登記研究 667号 164頁 平成15年2月27日 法務省民二第601号 民事局民事第二課長通知 不動産登記申請における任意後見人の代理権限を証する書面について

登記研究 890号 145頁 令和4年1月31日 法務省民一第167号 法務省民事局長通達 後見登記等に関する省令の一部を改正する省令の施行に伴う「後見登記等に関する事務の取扱いについて」の一部改正について

入っているかなと思っていたけれど、入っていなかった項目


[1] https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

[2] ニッセイ基礎研究所総合政策研究部研究員坂田紘野「海外の「成年後見制度」を概観する」2023 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74251?pno=2&site=nli

[3] 法務省「任意後見監督人選任に関する御案内及び意識調査への御協力依頼について」令和4年12月5日https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00014.html

[加工]前東京大学法科大学院客員准教授・判事山岸秀彬「法律行為の解釈と法解釈の交錯―定款の解釈をめぐる裁判例を題材として―」

前東京大学法科大学院客員准教授・判事山岸秀彬「法律行為の解釈と法解釈の交錯―定款の解釈をめぐる裁判例を題材として―」

東京大学法科大学院ローレビュー第17巻(2022-12発行)

http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/17.html

注釈は、本文中の番号はそのままにしていますが、出所は省略しています。

Ⅰ.はじめに

Ⅱ.定款の解釈方法

Ⅲ.法律行為の解釈方法

Ⅳ.法解釈の方法

1 文理解釈

2 体系的解釈

3 歴史的解釈

4 目的論的解釈

Ⅴ.定款の解釈が問題となった裁判例の検討

1 最一判平成22年4月8日民集64 巻3号609頁

⑴ 事案の概要

⑵ 第一審による定款の解釈

⑶ 第二審による定款の解釈

⑷ 最高裁による定款の解釈

⑸ 若干の検討

 a 法律行為の解釈の観点から

 b 法解釈の観点から

2 東京地判令和3年6月7日判時2504号102頁

⑴ 事案の概要

⑵ 裁判所による定款の解釈

⑶ 若干の検討

a 法律行為の解釈の観点から

b 法解釈の観点から

Ⅵ.法律行為の解釈と法解釈の交錯

Ⅶ.おわりに

私は,2020年度から2021年度まで,東京大学法科大学院の裁判所派遣教員として,「民事実務基礎」と「民事事実認定論」の講義を担当してきた。これらの科目は,要件事実及び事実認定が民事訴訟におけるいわば車の両輪であることを踏まえて,これらについて,典型的な紛争解決手続である民事訴訟手続と共に学修することで,理論と実務の架橋を図ることを目的とするものである。

このうち,要件事実論については,民事実体法の解釈が要件事実の整理に直結するものであり,理論と実務の繋がりを理解しやすい分野であると思われる。他方で,事実認定論については,弁論主義や二段の推定等の民事訴訟法の理解が前提とはなるものの,多くの法科大学院生にとっては,理論自体をゼロから学修するものであるという印象が強いように見受けられる。また,私自身,事実認定論の導入に際しては,事実認定は基本的には経験則の適用の問題であって,私たちが法理論を離れて日々の日常生活において行っている事実認定と異なるものではないといった説明をしてきた。

こうしてみると,事実認定論において,理論と実務の架橋を図るというのはどういうことかについては,思い悩むところが多い。中村治朗元判事は,「絶対的真実の発見なるものは,その真実性を裏づける客観的なテストを欠くが故に,論理的に不可能であ」るとして,事実認定は弁証的論証の典型であるとしており2),突き詰めると,事実認定は,弁証的論証であるという点において法解釈と共通し,この点において法解釈に関して積み重ねられてきた理論が応用可能なものであると見ることができるかもしれない3)。

この点を,具体的かつ網羅的に論じることは私の能力の限界を超えるものであるが,定款の解釈が問題となった裁判例を検討してみることで,法律行為の解釈という事実認定の問題と,法解釈の問題とが交錯する一場面を素描してみたい。

Ⅱ.定款の解釈方法

最初に,社団の定款の解釈方法をめぐる学説の状況について見ておきたい。

定款の解釈方法をめぐっては,定款の性質発起人を拘束するのみならず,その後に入社した社員や会社の機関をも拘束するものであり,そうした作用・機能に着目すると会社の「自治法」(法規)たる性質を有する。

定款について,前者の法律行為たる性質を重視すれば,定款の解釈は,原則として法律行為の解釈方法によるべきということになり4),当事者がいかなる法律行為をしたのかという事実認定の問題に帰着することになろう。他方で,定款について,後者の法規範たる性質を重視すれば,定款の解釈は,法の解釈と同一の原理によるべきということになり5),法解釈の方法が問われることになろう。わが国においては,後者の見解が通説的な見解であるようであるが,ドイツにおいてはより精緻な議論が展開されているようである6)。すなわち,ドイツにおける議論では,定款の解釈について,原則として法律行為の解釈方法によるべきとする見解も,法人という物的構造等と抵触する限りでは,民法の契約に関する解釈原則は考慮されないとしており,他方,定款の解釈は法解釈の方法によるべきとする見解も,定款中の個人法的規定については,個別的契約の解釈と異なる取扱いを受けないとしている。このようにして,出発点にこそ差があれ,結論には大きな隔たりはないとされているのである7)。

前記のとおり,定款が,法律行為たる性質と自治法たる性質との二面性を有することからすると,定款の解釈手法に関する両説のいずれかが誤りであると断ずることはできないように思われる。その際に,両説からの結論に大きな隔たりがないというのは,両説が相互に他方の説に親和的な修正を受けるからなのであろうか。そもそも,両説が念頭に置くところの法律行為の解釈方法,法解釈の方法とはどのようなものなのか,そこから立ち返って考えてみる必要があるように思われる。

Ⅲ.法律行為の解釈方法

それでは,まず,法律行為の解釈方法がどのようなものかから見ていくことにしよう。

一般に,法律行為,特に「契約における意思表示の解釈においては,両当事者が表示に現実に付与した意味を,まずもって探究するべきである。その意味を確定したうえで,両者の付与した意味が一致していれば,その意味どおりの内容で意思表示,ひいては契約の成立を認める」とする見解(付与意味基準説)8)が通説とされ,これによれば,当事者の共通の主観的意味が表示の客観的意味に優先されることになる。民法(債権関係)の改正に際しても,このような通説的見解に従って,「契約の内容について当事者が共通の理解をしていたときは,契約は,その理解に従って解釈しなければならないものとする」との規定を設けることが検討されていた9)。

上記の通説的な理解によれば,例えば,売主Aと買主Bが,タバコ1000カートンの売買契約を締結した場合において,通常は,タバコ1カートンは10 箱入りパックを意味するから,上記売買契約における表示の客観的意味は,タバコ1万箱の売買ということになる。これに対して,A及びBがいずれも,主観的には,タバコ1カートンは12箱入りパックを意味すると考えていたときは,当事者の共通の主観的意味に従い,タバコ1万2000 箱の売買契約が成立したものと解釈すべきということになる10)。

そして,このような当事者の共通の主観的意味が何であったかは,事実認定の問題であり,売買契約書の文言は,当事者の主観的意味を強く推認させる証拠となるであろう11)。

さらに,契約書の文言を離れて,例えば,契約締結にA 及びB の間でどのような交渉がされていたのか,契約締結時に売主A が交付したのがタバコ何箱であったのか,契約締結後に納品数が過剰であったとして売主Aが返還を求めたことがあったのかといった事情も,当事者の主観的意味を推認させる間接事実として機能することになると考えられる。

なお,上記の設例は,いかにも教室事例であり,現実の紛争においては,契約書の文言からは必ずしも自明とはいえない事態が生じていることが多いと思われる。そのような場合には,広義の解釈として,法規範(任意規定と慣習)ないし契約の趣旨に則した補充がされることになり(裁判例においては,これを「当事者の合理的意思解釈」として認定しているものが多いように思われる。),場合によっては,当事者の合意内容が不適切と判断される場合に,裁判所が当事者の合意を修正して別の内容に置き換えることもあるとされる12)。

Ⅳ.法解釈の方法

次に,法解釈の方法とはどのようなものなのだろうか。法解釈の方法をめぐっては長年の論争もあり,複雑な様相を呈しているが13),伝統的な法解釈の技法としては,①文理解釈,②体系的解釈,③歴史的解釈及び④目的論的解釈があるとされており14),この分類に沿って順に簡単に見ていくことにしたい。

1 文理解釈

文理解釈とは,「法規の文字・文章の意味をその言葉の使用法や文法の規則に従って確定することによってなされる解釈」であり15),明治時代半ばから後期にかけての法典整備の初期段階においては,問題となる条文の文理解釈の手法が主流であったとされる16)。

ただし,その後,わが国の法解釈においては,いくつかの原因により文理解釈があまり重視されてこなかったとの指摘がされている。

その原因の一つが,1910 年代の学説継受の影響である。この頃,わが国の民法は,「個々の規定の母法にかかわりなく,いわばドイツ法学の鋳型にはめこまれることになった」とされ17),ドイツ法に従って,解釈が再構成されることとなった。民法415 条の「責に帰すべき事由」が,過失責任主義に従い,「故意・過失又は信義則上それと同視すべき事由」を意味するものと解釈されてきたのはその例とされる18)。ほかにも,不法行為の成立要件について,伝統的学説は「違法性」を要件としており,これは民法709 条の「権利侵害」の要件を,ドイツ法学の影響の下で違法性要件に読み替えたものであるとされている19)。こうした学説継受を通じて,日本流の概念法学が完成したとされ,その特色について,星野英一博士は,「条文の文字や立法趣旨をあまり考慮せず,持ち込んだ『理論』をあたかも法律そのものであるかのように説いて,そこからより具体的な帰結をひき出している」と評しているのである20)。

わが国において文理解釈が軽視されてきたもう一つの原因として,我妻栄博士の理論の影響も指摘されている。すなわち,前記のようなドイツ法の学説継受による日本流の概念法学は,末弘厳太郎博士によって批判され,末弘博士は,法規範は一定の社会関係を想定してこれを規律するものにすぎず,法規範が想定していない社会関係については裁判官の全人格的な判断による法創造がされるべきであると主張した21)。そして,我妻博士は,このような末弘博士の議論を受けて,裁判官による法創造が恣意的なものとならないようにするため,客観的な指導原理に基づく法的判断がされるべきであることを主張し,具体的な指導原理の攻究のためには「社会生活の実証的研究」が必要であると論じた22)。このような(制定法ではなく)「社会生活の実証的研究」に基づく法解釈の姿勢が,制定法の拘束力の軽視の姿勢につながったと分析されているのである23)。この制定法の拘束力の軽視の姿勢は,文理解釈の軽視と言い換えても良いことのように思われる。

もっとも,実務的には,文理解釈の手法は相当に重視されているように感じられ,文理解釈の重要性をめぐっては,研究者と実務家との間には若干の温度差があるようにも感じられる24)。なお,アメリカにおいては,スカリア元連邦最高裁判事が主唱した,文理解釈を徹底する「テキスト主義(Textualism)」が大きな影響力を有している。テキスト主義は,必ずしも政治的な保守主義と結び付けられるものではないが25),三権分立の建前を尊重する見解として重要であり,こうした見解が実務家(裁判官)により唱えられていることを含めて興味深い。

2 体系的解釈

体系的解釈とは,「ある法規と他の関係諸法規との関連,当該法令・法領域あるいは法体系全体のなかでその法規が占める地位など,解釈の対象たる法規の体系的連関を考慮しながら行われる解釈」である26)。

このような体系的解釈は,論理解釈とも呼ばれるものであり,民法起草者である梅謙次郎博士や富井政章博士自身,条文の字句のみに拘泥する場合には立法目的に反する場合があるとして,条文の文言だけでなく,「法律全体の構成,各規定の相互関係,立法の理由その他立法当時の状況,継受された母法など」を参照してその意味内容を明らかにする論理解釈の手法を提唱していたとされている27)。

このような体系的解釈には,目的論的判断が含まれ得るし28),上記の梅博士や富井博士の見解は,歴史的解釈をも含ませるものともいえるので,体系的解釈と歴史的解釈及び目的論的解釈とは一部重なり合うところがあろう29)。また,行政法解釈の方法として使われる「仕組み解釈」も,体系的解釈の一方法ということができるのではなかろうか30)。

3 歴史的解釈

歴史的解釈とは,「法規の成立過程,とくに,法案・その理由書・立案者の見解・政府委員の説明・議事録など,いわゆる立法資料を参考にして,法規の歴史的意味内容を解明することによってなされる解釈」である31)。

星野博士は,学説継受による日本流の概念法学に対する反省から,文理解釈・論理解釈と並んで,立法者・起草者意思の探求も基礎作業として行うべきであると論じている32)。

実際,法解釈に当たっては,衆議院及び参議院の法務委員会における質疑内容,法制審議会ないしその部会における議論や法務省等の立案担当者による解説資料等が参照されることは,実務上よく行われているところであろう。

ただし,何が立法者意思であるのかを確定することは容易ではない。国会における個々の質疑内容が直ちに立法府の意思を体現しているとはいえないであろうし,法制審議会における議論や立案担当者の解説に至っては,立法府の意思とは直接には関係のないものである。こうしたこともあり,歴史的解釈は,唯一の正しい解釈方法とはいえないとの批判がされている33)。

アメリカの連邦最高裁の判例においても,法規の文言があいまいである場合に,立法者意思を参照することは許されるが34),立法者意思を一義的に認定できない場合にはこれを参照することはできないとされている35)。

また,先に述べたテキスト主義の論者も,文言の原意を探求するために立法者意思を探求することはあり得るとするものの,文理解釈が明白であるときには,立法者意思は無関係であるとしており36),歴史的解釈は補充的な解釈手法であると位置付けているものと思われる。

もっとも,法律行為の解釈の場面においては,事実認定の手法を通じて,当事者の合理的意思解釈が行われているのであり,このことと同様に,法解釈の場面においても,立法資料等を通じて立法者意思を認定するということが行われて良いと思われるし37),さらに現実の社会的条件等をも参照しつつ,立法者の合理的意思の探求が行われるということもあって良いことのように思われる38)。

4 目的論的解釈

目的論的解釈とは,「当該法令の趣旨や目的・基本思想あるいはその法令の適用対象である問題領域の要請などを考慮しつつ,それらに適合するように法規の意味内容を目的合理的に確定する解釈」であるとされる39)。

ここでは,利益衡量論とそれに対する批判が重要であるように思われるので,それらについて触れておきたい。

わが国においては,戦後,裁判官による法解釈が主観的価値判断に過ぎないのではないかということが議論され,来栖三郎博士は,「何と法律家は威武高なことであろう。常に自分の解釈が客観的に正しい唯一の解釈だとして,客観性の名において主張するなんて。しかし,また,見方によっては,何と法律家は気の弱いことであろう。万事法規に頼り,人間生活が法規によつて残りくまなく律せられるように考えなくては心が落着かないなんて。そして何とまた法律家は虚偽で無責任なことであろう。何とかして主観を客観のかげにかくそうとするなんて」という有名な一節を著した40)。また,川島武宜博士も,「法的価値判断はどのようにしてなされるか……それに対する第一の答は,法的感覚である」が,「価値判断が法的感覚のみに基いてなされる場合には,それぞれの価値判断は,その出発点となった法的感覚のちがいを反映して異った結論となり,主観的な『見解の相違』として対立するだけで,客観性を主張する根拠が明白ではない」と論じている41)。

利益衡量論は,このような議論を踏まえて,価値判断の合理化手法として提唱された手法である。

利益衡量論を最初に提唱したのは加藤一郎博士であるとされ,加藤博士は,「最初の判断過程では,既存の法規を意識的に除外して,全く白紙の状態で,この事件をどう処理し解決すべきかをまず考えてみたい」,として,その際に,実質的にどういう利益に重きを置くべきかという利益衡量を行っている42)。このようにみると,加藤博士は,文理解釈・体系的解釈や歴史的解釈を離れて,いわば裸の利益衡量を提唱するもののようにも思われる。加藤博士は,「法的判断は,常識に捉われてはならないが,常識に反するものであってもならない。法律家は,それについて,素人と同じ実質的判断の次元で議論をし,素人を実質的に納得させることができるのでなければならない」として43),上記のような利益衡量を正当化しているように思われる。

これに対し,星野博士は,「法律の解釈である以上,独り言ではなく,関係者に対する説得であり,条文との関係を説明する必要がある。このさい,いきなり価値判断のみを述べるのではなく,文理上はこうなるがこれこれの理由でこう解するのがよい,とか,立法のさいはこういう状況を前提とし,このような価値判断のもとに作られたが,状況がこう変ったり,社会一般の価値判断がこう変ったので,別個に考える必要がある,というように説明するのが説得力があると思われる」としており44),先にも見たとおり,文理解釈,体系的解釈及び歴史的解釈を踏まえた利益衡量を行うべきであると論じている。

ただし,星野博士は,「以上の作業は,現在における解釈にとって,必要なことではない。現在どう解するかは,専ら現在における価値判断の問題である」として,究極的には,法解釈は専ら利益衡量に基づき行うべきであると主張している45)。

こうしてみると,加藤博士も星野博士も,利益衡量に基づく目的論的解釈を優先させるべきであるとする点で共通すると考えられるが,星野博士は,客観的な価値のヒエラルヒア(序列関係)が存在するとしており,そのために,利益衡量に基づく価値判断は客観的たり得ると主張した点で,加藤博士の利益衡量論と大きく異なるとされている46)。

以上のような利益衡量論は,実務家には大きな影響力を有しており,広く浸透している。実務家の法解釈は,あくまでも妥当な解決を導く手段に過ぎないということがいわれ47),利益衡量論が説く「結論志向的手法は,実務的にもなじみの深い思考方法であり,今後も有力かつ不可欠な方法であり続けることと思われる」とされているのである48)。また,客観的な価値のヒエラルヒアが存在するという星野博士の見解は,裁判の客観性を希求する裁判官にとっては魅力的な見解であるということがいえるだろう。

ただし,利益衡量論については,制定法の拘束力を無視するものであり,民主制の観点からも大きな問題であるとする批判があるとされている49)。アメリカにおけるテキスト主義の立場は,正にこのような批判を踏まえて,利益衡量に基づく政策的判断は,立法府の役割であって司法の役割ではないという点を強調するものである。

また,価値観の多様化が指摘されている現代社会において,どのような利益をどのように重み付けして考慮すべきであるかというのは常に悩ましい問題であるように思われ,客観的な価値のヒエラルヒアを見出すのは極めて困難であるように思われる50)。

平井宜雄博士は,ある価値には対立する価値が常にあるから,客観的な価値のヒエラルヒアはあり得ずコンフリクトしかあり得ないとして,星野博士に対する批判を展開しつつ,そのような絶対的な正しさの有無にかかわらず,主張-反論-再反論のプロセスを相互に批判可能な形で行うことで,生き残った弁明が客観性を獲得するのであるという「議論」論を展開した51)。これは,前記Ⅰで述べたとおり,法解釈が弁証的論証であるということを全面的に展開してその方法論を提示したものと見ることができる52)。

Ⅴ.定款の解釈が問題となった裁判例の検討

ここまで,法律行為の解釈と,法解釈の方法とをかいつまんで見てきたが,これを踏まえつつ,定款の解釈が問題となった2 件の裁判例を検討することとしたい。一つが最一判平成22 年4 月8 日民集64 巻3 号609 頁であり,もう一つが東京地判令和3 年6 月7 日判時2504 号102 頁である。いずれも,医療法人の定款の解釈が問題となった事案であるが,以下においては,それぞれ事案の概要と裁判所による定款の解釈を見た上で,当該解釈が,法律行為の解釈及び法解釈の方法の観点からどのように見ることができるのかを検討したい。

 最一判平成22 年4 月8 日民集64 巻3 号609 頁

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=80092

⑴ 事案の概要

Yは,昭和32 年に,Aが442 万5600 円,その妻であるB が20万円を出資して設立された医療法人であり,A及びBはその社員であって,ほかにY への出資者はいなかった。すなわち,Yの設立当時におけるその純資産額は,462 万5600 円であった。Yの定款は,社員はその死亡によって社員の資格を失う旨を規定し(6 条),「退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる」(8 条)と規定していたところ(下線は筆者),A は昭和57 年に死亡し,Bは平成13 年に死亡して,いずれもY を退社し,子であるXがA 及びB の遺産を相続した。A 及びB の死亡による退社当時,Y の純資産額は,少なくとも4 億7110 万1049 円であった。

そこで,X は,A 及びB の死亡退社に伴うY に対する出資金返還請求権を相続したと主張して,Y に対し,4 億7110 万1049 円の支払を求めるなどした。

⑵ 第一審による定款の解釈

第一審53) において,争点は多岐にわたったが,X は,Y の定款8 条によれば,退社した社員は,その出資額に応じて出資金の返還を請求することができるところ,Y の純資産は4 億7110 万1049 円を上回るから,A 及びB は,Y に対し,「その出資額に応じ」,Y の純資産の合計100%である同額の返還を請求することができると主張した。これに対し,Y は,医療法人は,その非営利法人としての性格から,利益配当が禁じられているところ,その趣旨からすれば,出資社員が退社したときの出資金返還請求権の金額は,出資金額の限度(すなわち,A につき442 万5600 円,B につき20 万円)とするべきであるなどと主張した54)。

第一審判決は,上記の争点について,定款8 条の規定のほか,同じくY の定款33 条が,Y が解散したときの残余財産は「払込出資額に応じて分配するものとする」と定めていること(下線は筆者)を認定した上で,「このような定款の定めの文理に照らすと,被告……にあっては,出資をした社員は出資額に応じた法人の純資産に対する出資持分を有するものとし,出資持分を有する社員が退社したときは,当該社員は被告……に対して出資持分に相当する資産の払戻しを請求することができることとしたものであるというべきである」と判断し,この点に関するX の請求を認容した55)。

⑶ 第二審による定款の解釈

これに対し,第二審56) は,Y の主張を認め,X の請求は,A の出資金返還請求権が時効消滅していることを前提に,B の出資額の20 万円の限度で認容すべきであるとした。

裁判所は,平成18 年法律84 号による改正前の医療法(以下「改正前医療法」という。)について,「医療法人が存続してその開設する病院等を経営する限り,医療を提供する体制の確保を図る(〔改正前〕医療法1 条)ために,医療法人の自己資本を充実させ,剰余金の利益処分を禁止しているのであり(同法54 条)……医療法人に対して出資をした社員が退社した場合に剰余金及びその積立金の全部又はその一部を払い戻す行為も禁止していると解するのが相当であり」,Y の定款も同法の趣旨を踏まえて解釈する必要があるとして,Y の定款8 条は,「定款の文言上は基本財産並びに剰余金及びその積立金を含む総資産について持分の返還ないし払戻しを定めているかのように見える部分があるが,定款の全体の定め及びその趣旨にかんがみれば,そのようなことを定めたものと解することはできないのであって,『出資額に応じ』とは,社員の出資額が格別に異なることを想定した上,退社する社員が返還ないし払戻しを請求することができる出資は当該社員が出資した額とする旨を明らかにしたものにすぎないというべきである」と判断した57)。

⑷ 最高裁による定款の解釈

最高裁58) は,改正前医療法44 条,56 条等に照らせば,「同法は,社団たる医療法人の財産の出資社員への分配については,収益又は評価益を剰余金として社員に分配することを禁止する〔改正前〕医療法54 条に反しない限り,基本的に当該医療法人が自律的に定めるところにゆだねていたと解される」とした上で,Y の「定款33 条の『払込出資額に応じて』の用語と対照するなどすれば,本件定款8 条は,出資社員は,退社時に,同時点における被上告人〔注・Y〕の財産の評価額に,同時点における総出資額中の当該出資社員の出資額が占める割合を乗じて算定される額の返還を請求することができることを規定したものと解するのが相当である」と判示し59),原審(第二審)を破棄した。

⑸ 若干の検討

a 法律行為の解釈の観点から

本件において裁判所が行った定款の解釈が,法律行為の解釈手法によったものなのか,法解釈の方法によったものなのかは必ずしも明らかではない。最高裁判決についての調査官解説は,前記Ⅱにおいて見た学説の状況を紹介しているものの,最高裁がいずれの見解に立つものであるかについては言及していない60)。

ただし,最高裁判決の参照条文には民法91条が掲げられており,少なくとも定款は契約に類するものであるとの理解が前提にあるようには思われる。そして,最高裁判決及び第一審判決の説示を見ると,本件定款の文言の解釈に専ら依拠しており,このことは,定款の解釈は法律行為の解釈方法によるべきであるとする立場からは素直に理解できるもののように思われる。すなわち,Y は昭和32 年設立の医療法人であり,設立者であるA 及びB が既に死亡していることからすると,定款の文言を離れて,設立者であるA及びB の共通の主観的意味を認定することは困難であろう。そうすると,第一審当時,既に作成から50 年近くが経過しており,その作成者の供述等が得られない本件においては,定款の文言に専ら依拠して事実認定を行うというのは自然なことであると理解できるのである。

これに対し,第二審は,結論は第一審及び最高裁と反対となっているが,第二審による定款の解釈についても,法律行為の解釈方法をとったものと捉えることが可能である。なぜならば,法律行為の解釈は当事者の共通の主観的意味によるといっても,強行法規に反する合意は認められないとすれば,当事者の共通の主観的意味を,強行法規と抵触しないように合目的的に解釈することも許されると思われるからである61)。第二審が,改正前医療法が退社社員に対する剰余金の払戻しを禁止していると解した上で,定款の文言を解釈しているのは,このような法律行為についての合目的的解釈を採用したものと見ることができるだろう。

このように,第一審判決から最高裁判決までを,法律行為の解釈の枠内で捉えると,第二審と最高裁との判断の相違は,強行法規たる医療法の解釈の差異が影響したものと考えることができる。前記のとおり,第二審は,剰余金の配当を禁止する改正前医療54条62) によれば,実質的には剰余金の分配に当たるような出資金払戻しも止されていると解釈したが,最高裁は,上記の医療法の規定は,社員の退社時における出資金の返還を規制するものではなく,この点については定款自治に委ねられていると解釈しているのである。

b 法解釈の観点から

もっとも,第二審と最高裁との判断のより根本的な違いは,両者を法解釈の方法論の文脈に位置付けるとより明確になるのではないかと思われる。

この点,第二審は,その説示からも明らかなとおり,定款の解釈については,文理解釈や体系的解釈に拘泥することなく,その趣旨及び目的等を踏まえて目的論的に解釈すべきであるとの姿勢をとっているように思われる。そして,このような第二審の目的論的解釈は,改正前医療法54 条の規定に加え,次のような医療法人を取り巻く状況をも考慮すると,より説得的に感じられるところである。すなわち,改正前医療法は,持分の定めのある社団たる医療法人の設立を認めており,Y もそのような医療法人であったが,かねてより,持分の定めのある医療法人においては,退社による払戻額が高額となるため,医療法人の存続そのものが脅かされる事態があるとの指摘がされていた。そこで,厚生労働省の「医業経営の非営利性等に関する検討会」は,平成16 年6 月22 日付け報告書において,医療法人制度の趣旨に照らし,社団医療法人は持分のない法人に移行することが望ましい旨を報告し63),平成18 年法律84 号による改正後の医療法(以下「改正後医療法」という。)は,定款において残余財産の帰属すべき者を定める場合は,国,地方公共団体,医療法人等から選定されなければならないとして(改正後医療法44 条5 項),医療法人の解散時に出資者に対して残余財産の分配をすることは許されなくなり,同法施行後は,持分の定めのある社団たる医療法人の設立は認められないことになったのである。こうした,本件当時から存在した立法事実や政策目的に照らすと,第二審のような解釈は,これらに応えるものであり,法解釈の方法について目的論的解釈を重視する立場からは,歓迎すべき判断ということになるかもしれない64)。

これに対し,最高裁は,第二審のような解釈手法を否定した。最高裁は,前記のような立法事実や政策目的自体は否定していないが,定款の文言からその意味内容が明らかな場合には,(立法事実や政策目的はともかく)これに忠実に解釈すべきであるとの姿勢を貫いているように思われる。そして,文言解釈に当たっては,問題となっている定款8 条の文言に着目することはもとより,他の定款の条文にも目を向け,定款全体の構成,その中での各条項の関係にも着目している。すなわち,最高裁は,Y の定款33 条が,解散時の残余財産の分配について「払込出資額に応じて」分配すると規定しており,同文言が(出資額を限度としない)出資割合に応じた分配を規定していることが明らかであることを指摘した上65),定款8 条と33 条で同じ「出資額に応じて」との文言が用いられていることも考慮すると,定款8 条の「出資額に応じて」との文言も,(出資額を限度としない)出資割合に応じた分配を規定したものであると解釈すべきであるとしたのである。

このような最高裁の定款解釈の手法は,文理解釈に加えて体系的解釈を重視するものであり,これらの解釈手法を目的論的解釈よりも優先させる姿勢を見て取ることができるのではないだろうか66)。

ただし,最高裁が目的論的解釈に目を瞑っているわけではないことは,法廷意見からは必ずしも明らかではないものの,宮川光治裁判官及び金築誠志裁判官の各補足意見には表れている。すなわち,昭和25 年8 月9 日医発521 号厚生省医務局長発各都道府県知事あて通知「医療法の一部を改正する法律の施行について」に添付された定款例(モデル定款)は,その9 条において,Y の定款8 条とほぼ同様に,「社員資格を喪失した者は,その出資額に応じて払戻しを請求することができる」と規定していたところ,昭和32 年12月7 日総43 号厚生省医務局総務課長回答は,上記のモデル定款と同様の定款の規定がある場合に,出資が現物でされた場合の払戻しについて,「退社社員に対する持分の払戻は,退社当時当該医療法人が有する財産の総額を基準として,当該社員の出資額に応ずる金銭でなしても差し支えないものと解する」としていた(下線は筆者)。このような状況も踏まえ,金築裁判官の補足意見は,「本件定款のような規定を持つ医療法人における退社した社員の財産上の請求権については,租税上の取扱いを含めた長年にわたる行政実務及び多くの裁判例を通じて,退社時の法人財産評価額に対する出資割合に応じた金額の請求権を意味するものと解されてきた。医療法人の存続を優先的に考える見地からの原判決のような解釈は,その意図は理解できなくはないものの,今卒然とこうした解釈を採用することは,本件定款と同様の規定を有するきわめて多くの医療法人の出資者等に対し,予期せざる重大な不利益を及ぼすおそれがあり,著しく法的安定性を害するものといわざるを得ない。私が,原判決を支持できないと考える最大の実質的な理由は,ここにある」と述べているのである67)。

以上のとおり,第二審と最高裁の結論の相違は,法解釈の方法として,文理解釈及び体系的解釈と目的論的解釈とのいずれを重視すべきであるかという姿勢の違いが表れたものと見ることができ,また,目的論的解釈に際して,いかなる利益を考慮すべきかという点の違いが表れたものと見ることもできるように思われる68)。

 東京地判令和3年6月7日判時2504号102頁

⑴ 事案の概要

事案の概要は,次のとおりである。すなわち,Y1は,昭和56年に,X1の兄である理事長C が1 億4698 万0225 円,X1が1 億4698万0224 円を出資するなどして設立された医療法人であり,Y1 の設立当時の出資持分は,X1 及びC がそれぞれ約40%,X1 及びC の兄弟であるD が約19%であり,この3 名の出資持分が約99%を占めていた。

Y1 の定款には,次のような規定があった(下線は筆者)。

「第7 条 社員は,次に掲げる理由によりその資格を失う。

一 除名

二 死亡

三 退社

2 社員であって,社員たる義務を履行せず本社団の定款に違反し又は品位を傷つける行為のあった者は,社員総会の決議を経て除名することができる。

第8 条 前条に定める場合の外やむを得ない理由のあるときは,社員はその旨を理事長に届け出て,その同意を得て退社することができる。

第9 条 社員資格を喪失した者は,その出資額に応じて払戻しを請求することができる。」

X らは,平成29 年9 月14 日頃,Y1 に対し,同月16日付けでY1 を退社する旨を通知したが,理事長C が,X らの退社に同意したことはない。

かかる事実関係の下で,X らは,定款8 条の「前条に定める場合の外」との文言からすれば,理事長C による同意がなくとも,Xらの退社は定款7条により有効であると主張し,同日当時のY1 の総資産額である14 億7496 万4181 円を基準に,出資金の払戻しを請求した。これに対し,Y1 は,理事長C による同意がない以上,X らの退社は認められないと主張した。退社が認められる場合の「出資額に応じ」た払戻金額は,前記の平成22 年最判が判示したところであるが,その前提としての退社が認められるかという点に関し,再び定款の解釈が問題となったのである。

⑵ 裁判所による定款の解釈

裁判所69) は,定款8 条の「『前条に定める場合の外』との文言を形式的に解釈し,同条及び同7 条1 項3 号の『退社』は別異の概念であって,同号の『退社』については理事長の同意は要件ではないと解する場合には,原告らは本件通知をもって退社したこととなると考えられる。もっとも,上記解釈によれば,『退社』について理事長の同意を要する場合(同8 条)とこれを要しない場合(同7条1 項3 号)が生ずることとなり,本件定款における『退社』の概念の統一が損なわれることとなるところ,本件定款においては,社員の一方的意思表示による退社と,理事長の同意による退社とを殊更に別異の概念として区別するような規定は見当たらないことからすれば,同8 条の『前条に定める場合の外』との文言のみをもって,同7 条1 項3 号の退社は,同8 条の退社と別異の概念であると直ちに認めることは相当ではない。そうすると,本件定款において,一方的意思表示による退社が許容されているか否かについては,同7 条1 項3 号及び同8 条の文言のみに形式的に依拠するのではなく,その内容を合理的に解釈して適用するのが相当である」とした70)。

その上で,裁判所は,次の3つの理由を挙げて,本件定款8 条は,「『前条に定める場合の外』との文言にかかわらず,同7 条1 項3号に規定する退社についての手続を定めた規定であると解するのが相当である」と結論付けた。すなわち,①まず,「本件定款において,退社の手続について規定するものは本件定款8 条のみであり,このほかに社員の一方的意思表示による退社の場合の手続を定めた規定は見当たらない。そうすると,同7 条1項3 号により社員の一方的意思表示のみによる退社が認められると解する場合には,その手続については何らの定めがないこととなり,同8 条において,退社するためのやむを得ない理由,理事長への届出及び理事長による同意という厳格な要件を課した意義は,およそ失われることになる」というのであり,②また,「本件定款は,被告Y1 設立に当たって定められたものであり,前記……のとおり,被告Y1 設立時,その出資持分は,C 及び原告X1 がそれぞれ約40%を有し,D が約19%を有していたところ,このようにごく少数の者が多額の持分を有しているときに,被告Y1の存立が直ちに危うくなるような,社員による自由で一方的な意思表示による退社及びこれに伴う持分の払戻しを認容する規定を置いたとは俄かに考え難い」というのであり,③さらに,「かねてより,医業については安定的な継続が必要であるにもかかわらず,出資持分のある医療法人においては,出資持分の払戻請求によりその存続が脅かされる事態が生じることが懸念され,そのため平成19 年以降は出資持分のある医療法人の新設はできないこととされており,既存の出資持分のある医療法人についても,出資持分のない医療法人に円滑に移行できるようにするためのマニュアルが厚生労働省により作成・整備されていることが認められる」というのである71)。

⑶ 若干の検討72)

a 法律行為の解釈の観点から

本判決も,前記の平成22 年最判と同様,定款の解釈方法について,法律行為の解釈の方法によるべきか,法解釈の方法によるべきかを明言していない。そして,本判決についても,上記のいずれの見解からも説明が可能であるように思われる。

法律行為の解釈という観点から見ると,本判決は,オーソドックスな事実認定の手法をとるものとして理解することができるだろう。すなわち,前記⑵の理由の①は,定款の文言が強い証拠力を持つことを前提に,その定款の文言をその字句のみならず定款の構成を基に探求するという点を重視しているように読める。

その上で,本判決は,当事者の共通の主観的意味の探求という視点から,定款作成者であるX1,C 及びD らの意思を,設立時の出資比率が上記3 人のみで約99%であったという間接事実から推認しようとしている(前記⑵の理由の②)。

現在の医療法人を取り巻く事情(前記⑵の理由の③)をどのような位置付けの事実として考慮したのかは,判決文からは必ずしも明らかではないが,これを設立当時の定款作成者の意思を推認させる事後的な間接事実と位置付けることも可能であるように思われる。

こうしてみると,本判決は,直接証拠たる定款の文言に加えて,定款の作成当時及び事後的な間接事実も総合して,定款作成者の共通の主観的意味内容を認定したものと見ることができるように思われる。

b 法解釈の観点から

また,本判決は,法解釈の方法を採用したものと捉えても,その手法をオーソドックスに適用しているもののように思われる。

まず,本判決は,文理解釈を出発点としているが,文理解釈によれば定款の全体的な構成が極めて不自然なことになるとして,次いで体系的解釈による正当化を試みている(前記⑵の理由の①)。

そして,定款作成者であるX1,C 及びDらの意思の推認(前記⑵の理由の②)については,立法者・起草者意思を探求する歴史的解釈の手法をとるものと見て取ることができるだろう。なお,法解釈において,立法者意思を確定することは一般に困難なことであるが,定款については,その作成経過が立法に比して単純であることから,その起草者意思を認定しやすいという面があるように思われる。

さらに,現在の医療法人を取り巻く事情(前記⑵の理由の③)については,こうした体系的解釈及び歴史的解釈から導かれる結論が,目的論的解釈とも整合しているということを指摘するものと捉えることができるように思われる。

こうしてみると,本件判決は,法解釈の方法論に従って,文理解釈,体系的解釈,歴史的解釈及び目的論的解釈を総合して結論を導いたものと理解できるように思われるのである。

そして,説示において,まずは文理解釈を踏まえた体系的解釈を基本に据えていると考えられることからすれば,本判決についても,前記の平成22 年最判と同様,法解釈の手法としては文理解釈及び体系的解釈を重視するものと見て取ることができるように思われる。

なお,本件におけるY1 の定款は,モデル定款と同一ではなく,定款8 条の「前条に定める場合の外」という文言は,モデル定款の文言に付加されたものであった。そうすると,本件においては,定款8 条のような文言を採用したのはY1 固有の事情ということになり,法的安定性については考慮する必要がなかった事案であると思われる。

・・・遺言の解釈と似ている箇所があるように感じます(定款作成者の本意を総合的に考慮するなど。)。しかし、自然人ではなく法人であること、単独行為ではなく契約に近い解釈がなされること、法人の種類によっては判決の医療法など政策的な考慮が必要になることが異なる箇所だと思います。

Ⅵ法律行為の解釈と法解釈の交錯

ここまで,定款の解釈が問題となった2件の裁判例を検討してきた。これらの検討を通してみると,定款の解釈について,法律行為の解釈の方法をとったとしても,法解釈の方法をとったとしても,結論が変わるわけではないように思われ,それは,異なる両者の方法論が修正を受けて相互に歩み寄る結果というよりは,そもそも両者の方法論がほとんど共通するからであるということができるのではないだろうか。

事実認定においては,要証事実について直接証拠がある場合,まずはその証明力を検討すべきことになろう。特に,当該直接証拠が,契約書等の類型的に信用性が高いと認められる文書である場合には,(当該文書に形式的証拠力があることを前提に)特段の事情がない限り,その記載どおりの事実を認定すべきことになる73)。ただし,訴訟に至る事案においては,多くの場合,かかる特段の事情の存否が問題となるから,事実認定に慎重を期すためには,当該直接証拠のみならず,他の間接証拠から認められる間接事実をも総合して判断するのが相当であると考えられる。そして,間接事実に関しては,法律行為以前や法律行為当時の事情から要証事実の存否を推認することができるのはもちろん,事後的な事情から遡って要証事実の存否を推認するという場合もあろう。

このように,事実認定において,直接証拠たる類型的信用文書を重視する姿勢は,法解釈において,制定法の拘束力を重視し,その文理解釈及び体系的解釈を重視するべきであるとの姿勢と共通するのではないだろうか。

また,直接証拠に加えて,間接事実からの推認をも行うという点も,文理解釈・体系的解釈に加えて,歴史的解釈及び目的論的解釈を行うという法解釈の手法と共通するもののように思われる。歴史的解釈は,法律行為以前や法律行為当時の間接事実からの推認とパラレルに考えることができようし,目的論的解釈は,事後的な事情からの推認とパラレルに考えることができるだろうが,事実認定において,こうした事前・当時・事後の間接事実を総合して当事者の合理的意思解釈が行われていることとの対比からすれば,法解釈においても,歴史的解釈及び目的論的解釈を総合して立法者の合理的意思74) の探求が行われていると見ることもできるだろう。

こうしてみると,文理解釈・体系的解釈を基本としつつ,歴史的解釈及び目的論的解釈をも考慮して法解釈を行うという方法は,事実認定に慣れ親しんでいる法曹実務家にとっては,極めて自然な解釈方法であるということがいえるのではないだろうか。

以上のような,安易なアナロジーに対しては,いくつか批判も考えられる。

一つには,法律行為の解釈と法解釈の方法とは飽くまでも異なるという批判があるだろう。

そもそも,法律行為の解釈においては,当事者の主観的意味内容の認定が問題となるのに対し,法解釈においては客観的意味内容が問題となるという点で両は異なるという考えもあろうが75),当事者の主観的意味内容といっても,それが争われる場合には,これを直接覚知することができない以上,客観的な証拠等によって認定する必要があるのであり,解釈に当たり,主観を重視するのか客観を重視するのかという点が,法律行為の解釈と法解釈との本質的な差異となるとは考え難い。

より本質的には,特にいわゆるハードケースにおける法解釈に際しては,文理解釈・体系的解釈や歴史的解釈から導かれる結論と,目的論的に妥当と考えられる結論とが異なる場合が生じ得ることとなり,そのような場合に目的論的解釈を優先すべきであるというのが法解釈のあるべき姿であって76),この点において単純に直接証拠を重視する事実認定と法解釈とは根本的に性質を異にするという考えもあるかもしれない。

確かに,法律行為の解釈において,契約後の事情変動等の事情を殊更に重視して,直接証拠たる契約書の内容や契約締結当時の事情から導かれる解釈と異なる解釈を採用するというのは,通常は考え難いことであろう。

もっとも,具体的に妥当な事案の解決を図るためには,法的構成を柔軟に考えるとともに,事実認定にも操作を加え,擬制的な事実を認定することも許されるという指摘がなされていることにも留意する必要があろう77),

例えば,前記Ⅲの教室設例でいえば,契約当事者が,当初は,タバコ1 カートンは10箱入りパックを意味するものとして,タバコ1000 カートン(1 万箱)の売買契約を締結したのであったが,売主の従業員が誤ってタバコ1万2000 箱を納品し,その後,売主も買主も,タバコ1 カートンを12 箱入りパックと解する余地もあったと思い直してそのままにしたという場合,契約の変更や追認といった法的構成をとるまでもなく,当初からタバコ1万2000 箱についての売買契約が成立したものと評価できる場合もあり得るのではなかろうか。

また,そのような教室設例を離れて,まさにハードケースといい得る事例において,擬制的な事実認定が行われたといい得る事例として,「共同相続人の1 人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは,特段の事情のない限り,被相続人と右の相続人との間において,右建物について,相続開始時を始期とする使用貸借契約が成立していたものと推認される」とした最三判平成8年12月17日民集50巻10号2778 頁を挙げることもできるのではないかと思われる。

以上のとおり,最初のあり得る批判に対して一応の応答を試みたところで,もう一つ考えられる批判としては,法律行為の解釈も法解釈も,いずれも弁証的論証という点で共通するのであるから78),その方法論が抽象的な類型のレベルで共通するのは当たり前のことに過ぎないという意見もあるかもしれない79)。

しかし,方法論(解釈技法)を類型化した上で,その類似性を見出し,法律行為の解釈と法解釈のそれぞれの場面において,その各技法がどの程度重視されているのかを比較検討して分析してみることは,事実認定及び法解釈の双方の精度を高めていく上で有益なのではないかと思われる。

多くの民事訴訟事件においては,法解釈が争われることはなく,専ら事実の有無及びその評価が争点となる。そして,事実認定については既に優れた論考が数多く発表されており,事件類型ごとに事実認定に際して考慮すべき事情を整理・紹介するものは,実務家が経験則を獲得・補充するに当たって極めて有用なものとなっている。もっとも,個別の事案にはそれぞれの特殊性があることからすると,そうした整理に依拠するだけで直ちに正しい事実認定ができるということにはならないだろう。裁判官が,個々の事案の解決に際し,当事者が納得する適切妥当な事実認定を行い,ひいては司法に対する国民の信頼を獲得・維持するためには,法解釈についての学修及び研究を通じて培った方法論を応用して,事案の個別の事情を踏まえた認定を説得的に論証することが必要であり,そのような論証は,法解釈について共通の方法論を身に着けた実務家及び研究者による建設的な批判の対象になるものと考える80)。

なお,事実認定においては,直接には覚知し得ないとはいえ,絶対的真実が存在し,裁判官は,かかる絶対的真実の解明を目指して事実認定を行っている。そうであるとすると,法解釈において,事実認定と同様のアプローチを意識することは,裁判官にとって,客観的な法解釈を目指すよすがともなるのではないだろうか。

Ⅶ.おわりに

一般に法曹実務家は法解釈に関心が薄く,研究者は事実認定に関心が薄いということが指摘されている。しかし,実務家として,法解釈の方法に関心を深めることは,事実認定の精度を高めることにつながるかもしれないし,そこに事実認定論における理論と実務の架橋のヒントがあるのかもしれない。

本稿は,そのような期待をもとに,東京大学法科大学院の3 年生を対象とした勉強会において発表した内容を,その際の参加者の皆さんとの議論を踏まえて大幅に修正して執筆したものである。もとより文責は私が負うものであるが,先輩教員として指導助言を下さった石田佳世子判事と,勉強会に参加して貴重な議論を提供してくれた和泉里佳さん,林載允さん,大井俊哉さん,完山聖奈さん,柴崎英之さん,清水理桜子さん,成政優太さん,吉沢健太郎さんに心から感謝を申し上げたい。法科大学院が,引き続き理論と実務の架橋を果たす場であり続けることを強く願っている。

* 脱稿後に次の情報に接した。まず,前記Ⅴ2で紹介した東京地判令和3 年6 月7 日判時2504 号102 頁は控訴されたが,控訴審において和解が成立したようである。また,山本=中川・前掲注13) の続編として,民商法雑誌において「法解釈の方法論Ⅱ」の特別企画が始まっている。その一編である西内康人「民法の解釈――紛争解決と社会統制の関係を巡る理解の試み」民商法雑誌158 巻3 号102 頁(2022)は,その末尾の脚注において,本稿末尾の脚注と同じ文献に触れているが,これは面白い偶然である。(やまぎし・ひであき)

参考

登記研究 715号 185頁 平成19年3月30日 法務省民商第811号 民事局商事課長通知 〔五六七二〕良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて

登記研究 832号 147頁 平成28年9月1日 法務省民商第132号 民事局商事課長通知 医療法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて

登記研究 833号 134頁 平成29年3月7日 法務省民商第36号 民事局商事課長通知 医療法の一部を改正する法律等の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて

家族信託の相談会その54

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2023年4月28日(金)14時~17時

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場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

令和5年3月30日法務省民二第555号司法書士による本人確認情報の作成について(回答)

要件

申請人と面識がある場合

・医療機関・施設などから、入所者の健康上の理由等により、直接面談が困難であるとの要請があった場合→自宅療養の場合でケースワーカー、介護支援専門員から要請された場合は?家族の要請の場合は?

・直接面談と変わらない、相互に意思の疎通ができる状況であること。

・資格者代理人は、テレビ会議による面談を行った合理的理由(医療機関・施設などから、入所者の健康上の理由等により、直接面談が困難であるとの要請があった場合)を明らかにして提供すること。

・同席した施設の職員又は申請人等の家族等から、画面越しに映された申請人等が本人に相違ない旨を聴取して具体的に記録して提供。

・テレビ会議による面談の際に本人に間違いないという判断をした理由を、本人確認情報の内容として提供。

・登記官への事前照会。

申請人と面識がない場合

申請人と面識がある場合に加えて、

・事前に、申請人を知る者から、不動産登記規則第72 条第2項各号に掲げる本人確認書類の原本の提示を受け、提示された当該書類の内容を直接確認。

申請人を知る者の例

・親族、ケースワーカー、社会福祉士、介護支援専門員、顧問税理士、取引に関わっていた宅地建物取引士、登記義務者と同じ会社の社員、登記義務者が入所直前に居住していたマンションの管理組合の理事長。

施設に現に赴いた司法書士によるテレビ会議を用いた本人確認情報の作成について

日本司法書士会連合会 不動産登記法改正等対策部

部長 里村美喜夫

当対策部において、標記の件について意見をまとめましたのでご意見を求めます。

【意見の趣旨と概要】

不動産登記法第23 条第4項第1号の規定により、登記官が資格者代理人から提供を受ける、申請人が申請の権限を有する登記名義人であることを確認するために必要な情報(以下「本人確認情報」という。)を提供する方法により登記を申請する場合においては、不動産登記規則第72 条第1項第1号の規定により申請人(申請人が法人である場合にあっては、代表者又はこれに代わるべき者。以下「申請人等」という。)と面談した日時、場所及びその状況を明らかにするものでなければならないとされている。

一方、近時、医療機関や高齢者施設等(以下「施設」という。)での面談について、新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、対面による直接の面談(以下「直接面談」という。)をすることができない状況になっているとの事例報告が増えている。よって、本人確認情報を提供する面談方法については、直接面談以外のこれに準じる方法により、提供する情報を明らかにすることが要請されている。

そこで、申請人等が入院・入所している施設に現に赴いた資格者代理人が、同じ施設内の申請人等とは別室または施設内の別の場所において、申請人等とテレビ会議やウェブ会議等を用いた面談(資格者代理人と申請人等が、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に同時に認識しながら通話をすることができる方法。以下「テレビ会議による面談」という。)により、本人確認情報を得た場合においては、下記のとおり、一定の要件のもとに、不動産登記規則第72 条第1項第1号に該当すると考える。

(前提条件)

1.前提として、テレビ会議による面談であっても、直接面談と変わらない意思の疎通ができる状況である必要がある。

(面識がある場合)

2.資格者代理人が申請人等の氏名を知り、かつ、当該申請人等と面識があるとき施設に入所している申請人等の施設から、入所者の健康上の理由等[1]1により、直接面談が困難であるとの要請があった場合において、直接面談ができない合理的理由があると認められるときは、テレビ会議による面談により、資格者代理人は本人確認情報の提供をすることができる。なお、資格者代理人は、テレビ会議による面談を行った合理的理由を明らかにして提供しなければならない。

併せて、本人確認をする資格者代理人は、同席した施設の職員又は申請人等の家

族等(以下「申請人を知る者」という。)から、画面越しに映された申請人等が本人に相違ない旨を聴取してその旨を具体的に記録することにより、テレビ会議による面談の際に本人に間違いないという判断をした理由を、本人確認情報の内容として提供しなければならない。

この場合、テレビ会議による面談によって、資格者代理人が適式に本人確認をし

ており、本人確認情報の内容として登記官がその内容を相当と認めるときは、登記官はこれを受理して差し支えない。

→現時点で、事前照会必要。

(面識がない場合)

3.資格者代理人が申請人等の氏名を知らず、又は当該申請人等と面識がないとき上記「2.資格者代理人が申請人等の氏名を知り、かつ、当該申請人等と面識があるとき」に加え、資格者代理人は、申請人を知る者から、不動産登記規則第72 条第2項各号に掲げる本人確認書類の原本の提示をあらかじめ受け、提示された当該書類の内容を直接確認した上で、テレビ会議による面談を行わなければならない。

この場合、テレビ会議による面談によって、資格者代理人が適式に本人確認をし

ており、本人確認情報の内容として登記官がその内容を相当と認めるときは、登記官はこれを受理して差し支えない。

考え方

面識がある場合においても、面識がない場合においても、資格者代理人が現に赴いた施設の別室に申請人等がおり、当該施設内で映像と音声の送受信により相手方と相互に通話をし、直接面談と変わらない状態で意思の疎通や本人の確認ができること。

テレビ会議による面談を行ったやむを得ない事由が、申請人等の入所する施設から、健康上の理由等により直接面談が困難であるとの要請があったものであり、本人確認情報の内容として、テレビ会議による面談を実施する合理的理由が明らかにされていること。

施設におけるテレビ会議による面談に同席した申請人を知る者から、画面越しに映された申請人等が本人に相違ない旨を資格者代理人が聴取して、本人に間違いないという判断した理由が本人確認情報の内容として具体的に明らかにされていること。

資格者代理人が申請人等の氏名を知らず、又は当該申請人等と面識がない場合には、申請人を知る者から、不動産登記規則第72 条第2項各号に掲げる本人確認書類の原本の提示をあらかじめ受け、かつ、提示された当該書類の内容を直接確認しなければならないこと(同条第1項第3号)。

資格者代理人が行った本人確認情報の提供について、登記官がその内容を相当と認めること。

別室・面識あり・同席者あり

本 人 確 認 情 報

○○法務局 御中

当職は、本件登記申請の代理人として、下記のとおり、申請人が申請の権限を有

する所有権登記名義人であることを確認するため必要な情報を提供します。

令和4年12月11日

○○○○市西区○○一丁目2番3号 司法書士 司法三郎

(登録番号 ●●県司法書士会第○○○○号)

1 登記の目的 所有権移転

2 不動産の表示 ●●県○○市〇〇区○町○番 宅地 111・11㎡

3 登記済証を提出できない理由 紛失

4 申 請 人 ○○市〇〇区○丁目○番○号 法務一郎

生年月日 昭和**年**月**日生

5 面談した日時・場所・状況

日 時 令和4年12月11日 午前10時30分より

場 所 司法書士 司法三郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 1階 面会室

法務一郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 3階 面会室

面談状況 本件登記申請人が本件不動産について所有権移転登記をするにあたり、所有権移転登記申請の必要書類の確認等を行うため、当職が登記義務者と面談した。

〇〇病院から、現在職員以外の人間と原則として面会禁止としているので、ZOOMを用いて、司法書士 司法三郎の面談場所である面会室と、登記義務者の面談場所である面会室を接続して面談する方法以外での面談は認められないという要請があり、このような方法で面談を行った。

映像及び音声のやり取りは司法書士 司法三郎の携帯電話と病院が用意したパソコンを接続して行い、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に同時に認識しながら通話をすることができる状態で、対面の面談と変わらない状態での意思疎通、本人の確認ができる状態で行われた。

同 席 者 登記権利者 法務太郎氏(長男)1階 面会室で同席した。

6 申請人との面識の有無 当職は申請人とは過去に面識がある。

7 面識の経緯・時期 具体的な事由

当職は本件登記申請の3ケ月以上前に当該申請人について、資格者代理人として本人確認情報を提供して次の所有権移転登記の申請をしている。

御庁 平成**年**月**日 受付第 ****** 号

(以下省略)

事例1

別室・面識なし・同席者あり

本 人 確 認 情 報

○○法務局 御中

当職は、本件登記申請の代理人として、下記のとおり、申請人が申請の権限を有する所有権登記名義人であることを確認するため必要な情報を提供します。

令和4年12月11日

○○市西区○○一丁目2番3号 司法書士 司法三郎

(登録番号 ●●県司法書士会第○○○○号)

1 登記の目的 所有権移転

2 不動産の表示 ●●県○○市〇〇区○町○番 宅地 111・11㎡

3 登記済証を提出できない理由 紛失

4 申 請 人 ○○市〇〇区○丁目○番○号 法務一郎

生年月日 昭和**年**月**日生

5 面談した日時・場所・状況

日 時 令和4年12月11日 午前10時30分より

場 所 司法書士 司法三郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 1階 面会室

法務一郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 3階 面会室

面談状況 本件登記申請人が本件不動産について所有権移転登記をするにあたり、所有権移転登記申請の必要書類の確認等を行うため、当職が登記義務者と面談した。

〇〇病院から、現在職員以外の人間と原則として面会禁止としているので、ZOOMを用いて、司法書士 司法三郎の面談場所である面会室と、登記義務者の面談場所である面会室を接続して面談する方法以外での面談は認められないという要請があり、このような方法で面談を行った。

映像及び音声のやり取りは司法書士 司法三郎の携帯電話と病院が用意したパソコンを接続して行い、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に同時に認識しながら通話をすることができる状態で、対面の面談と変わらない状態での意思疎通、本人の確認ができる状態で行われた。

面談に同席した○○病院の職員〇〇○○氏より、画面に映し出された登記義務者は同病院に入院している者で、本人に間違いないことを聴取した。

同 席 者 ○○病院の職員〇〇○○氏 1階 面会室で同席した。(注)

6 申請人との面識の有無 当職は申請人とは過去に面識はない。

7 面識がない場合における確認資料

職は、申請人の氏名を知らず、又は面識がないため、申請人から次の確認資料の提示を受け確認した。

確認資料のうち次の①②の原本は〇〇病院が登記義務者から預かり、保管していたので、登記義務者の同意を得て、面談当日に、〇〇病院の職員からあらかじめ当職に手渡された。

①確認資料の特定事項及び有効期限

名称 国民健康保険の被保険者証

令和*年1月まで有効

②確認資料の特定事項及び有効期限

名称 基礎年金番号通知書

8 登記名義人であることを確認した理由

前項の本人確認書類につき、以下のとおり確認した。

①②の確認資料に記載されている氏名及び住所が一致していること、及び記載されている氏名及び住所が登記名義人本人のものであることを確認した。加えて、証明書の外観・形状に異常がないことを視認した。

さらに、住所・氏名・生年月日、本件不動産に関すること、本件不動産の取得の経緯、登記済証紛失に関することについて申述を求めたところ正確に矛盾なく回答した。

(以下省略)

(注)司法書士が申請人と面識がない場合においては、当該申請人を知る者に面談状況を確認させ、その内容を本人確認情報に記載して提供したときは、当該記載は、登記官が本人確認情報の内容を相当と評価する際の重要な判断材料であると考える。

事例2

別室・面識なし・同席者あり

本 人 確 認 情 報

○○法務局 御中

当職は、本件登記申請の代理人として、下記のとおり、申請人が申請の権限を有する所有権登記名義人であることを確認するため必要な情報を提供します。

令和4年12月11日

○○市西区○○一丁目2番3号 司法書士 司法三郎

(登録番号 ●●県司法書士会第○○○○号)

1 登記の目的 所有権移転

2 不動産の表示 ●●県○○市〇〇区○町○番 宅地 111・11㎡

3 登記済証を提出できない理由 紛失

4 申 請 人 ○○市〇〇区○丁目○番○号 法務一郎

生年月日 昭和**年**月**日生

5 面談した日時・場所・状況

日 時 令和4年12月11日 午前10時30分より

場 所 司法書士 司法三郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 1階 面会室

法務一郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 3階 面会室

面談状況 本件登記申請人が本件不動産について所有権移転登記をするにあたり、所有権移転登記申請の必要書類の確認等を行うため、当職が登記義務者と面談した。

〇〇病院から、現在職員以外の人間と原則として面会禁止としているので、ZOOMを用いて、司法書士 司法三郎の面談場所である面会室と、登記義務者の面談場所である面会室を接続して面談する方法以外での面談は認められないという要請があり、このような方法で面談を行った。

映像及び音声のやり取りは司法書士 司法三郎の携帯電話と病院が用意したパソコンを接続して行い、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に同時に認識しながら通話をすることができる状態で、対面の面談と変わらない状態での意思疎通、本人の確認ができる状態で行われた。

当職は、面談に同席した、登記義務者の息子である法務太郎氏より、画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取した。(注)

同 席 者 登記権利者 法務太郎氏(長男)1階 面会室で同席した。

6 申請人との面識の有無 当職は申請人とは過去に面識はない。

7 面識がない場合における確認資料

当職は、申請人の氏名を知らず、又は面識がないため、申請人から次の確認資料の提示を受け確認した。

確認資料の原本は〇〇病院の職員を介して面談当日にあらかじめ当職に手渡された。

確認資料の特定事項及び有効期限

名称 普通自動車運転免許証

20**(令和*年)**月**日まで有効

写真の添付 別紙のとおり

8 登記名義人であることを確認した理由

前項の本人確認書類につき、以下のとおり確認した。

証明書の写真により本人との同一性を確認し、証明書の外観・形状に異常がないことを視認した。

また、住所・氏名・生年月日、本件不動産に関すること、本件不動産の取得の経緯、登記済証紛失に関することについて申述を求めたところ正確に矛盾なく回答した。

(以下省略)

(注)司法書士が申請人と面識がない場合においては、当該申請人を知る者に面談状況を確認させ、その内容を本人確認情報に記載して提供したときは、当該記載は、登記官が本人確認情報の内容を相当と評価する際の重要な判断材料であると考える。

■親族以外の「当該申請人を知る者」の事例について

1.登記義務者のケースワーカーである(相談員である社会福祉士である)○○○○氏より画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取した。

2.登記義務者の顧問税理士、○○○○氏より画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取した。

3.不動産売買の仲介業者であり、本件取引に関わっていた、宅地建物取引士、○○○○氏より画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取した。

4.登記義務者と同じ会社の社員○○○○氏より画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取した。

5.登記義務者が入所直前に居住していたマンションの管理組合の理事長である○○○○氏より画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取した。

事例3

別室・面識なし・同席者なし

本 人 確 認 情 報

○○法務局 御中

当職は、本件登記申請の代理人として、下記のとおり、申請人が申請の権限を有する所有権登記名義人であることを確認するため必要な情報を提供します。

令和4年12月11日

○○市西区○○一丁目2番3号 司法書士 司法三郎

(登録番号 ●●県司法書士会第○○○○号)

1 登記の目的 所有権移転

2 不動産の表示 ●●県○○市〇〇区○町○番 宅地 111・11㎡

3 登記済証を提出できない理由 紛失

4 申 請 人 ○○市〇〇区○丁目○番○号 法務一郎

生年月日 昭和**年**月**日生

5 面談した日時・場所・状況

日 時 令和4年12月11日 午前10時30分より

場 所 司法書士 司法三郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 1階 面会室

法務一郎:○○市〇〇区〇〇二丁目2番2号

〇〇病院 3階 面会室

法務花子:○○市〇〇区○丁目○番○号(登記義務者の自宅)

面談状況 本件登記申請人が本件不動産について所有権移転登記をするにあたり、所有権移転登記申請の必要書類の確認等を行うにため、当職が登記義務者と面談した。

〇〇病院から、現在職員以外の人間と原則として面会禁止としているので、ZOOMを用いて、司法書士 司法三郎の面談場所である面会室と、登記義務者の面談場所である面会室を接続して面談する方法以外での面談は認められないという要請があり、このような方法で面談を行った。同時に登記義務者の自宅を接続し、登記義務者の妻、法務花子ともZOOMを用いて面談を行った

映像及び音声のやり取りは司法書士 司法三郎の携帯電話と病院が用意したパソコン、同時に法務花子が用意したパソコンを接続して行い、映像と音声の送受信により三者が相手の状態を相互に同時に認識しながら通話をすることができる状態で、対面の面談と変わらない状態での意思疎通、本人の確認ができる状態で行われた。(注)

当職は、同時に接続した法務花子氏から、画面に映し出された登記義務者が本人に間違いないことを聴取し、確認した。

同 席 者 なし。

6 申請人との面識の有無 当職は申請人とは過去に面識はない。

7 面識がない場合における確認資料

当職は、申請人の氏名を知らず、又は面識がないため、申請人から次の確認資

料の提示を受け確認した。

確認資料の原本は〇〇病院の職員を介して面談当日にあらかじめ当職に手渡された。

確認資料の特定事項及び有効期限

名称 普通自動車運転免許証

20**(令和*年)**月**日まで有効

写真の添付 別紙のとおり

8 登記名義人であることを確認した理由

前項の本人確認書類につき、以下のとおり確認した。

証明書の写真により本人との同一性を確認し、証明書の外観・形状に異常がないことを視認した。

また、住所・氏名・生年月日、本件不動産に関すること、本件不動産の取得の経緯、登記済証紛失に関することについて申述を求めたところ正確に矛盾なく回答した。

(以下省略)

(注)司法書士が申請人と面識がない場合においては、当該申請人を知る者に面談状況を確認させ、その内容を本人確認情報に記載して提供したときは、当該記載は、登記官が本人確認情報の内容を相当と評価する際の重要な判断材料であると考える。

申請人を知る者の登記義務者の確認は、同時の機会にテレビ会議で相互に認識しながら行うのであれば、必ずしも登記義務者や司法書士と同一の場所に赴いて同席して行われる必要はないと考える。

資格者代理人による不動産登記法第23条第4項の本人確認の取扱いについて

○ 医療機関・高齢者施設では、新型コロナウイルス感染症対策として、入居者と外部の者との直接的な面会を制限する傾向にあり、対面が困難な状況にあることを踏まえ、次の条件を満たす場合には、テレビ会議やウェブ会議を用いた面談であっても適式な面談とする。

前提となる現行制度

○ 申請人(登記義務者)が、登記識別情報を(失念した等の理由で)提供できない場合において、資格者代理人が申請人と面談を行い、(本人確認を行った上で作成した)本人確認情報を登記申請時に提供し、登記官がこれを相当と認めたときは、事前通知手続が省略される(不動産登記法第23条第4項)。

①現在の面談方法

資格者代理人が申請人と対面にて面談を行う(申請人と面識がない場合には、対面で身分証の提示を求める。)。

②新たな面談方法

★ 実施に必要な条件

① ウェブ会議によっても、対面の面談と変わらない意思疎通ができること。

② 施設側の要請に基づくものであり、感染拡大防止等、申請人と直接面談ができない合理的理由があること。

③ 資格者代理人と申請人との間に面識がない場合には、事前に申請人の身分証(運転免許証等)原本の提示を受けること。

④ 同一施設内(資格者代理人は施設に現に赴く)で、かつ、施設の職員又は申請人の家族の同席の下で行われること(具体的な面談事例は以下のとおり。)。

直接面談が困難な状況にある施設に入所中の申請人を対象とした本人確認情報の提供について(お知らせ)

新型コロナウイルス感染症の拡大などに伴い、集団感染の防止の観点から、高齢者施設・医療機関等(以下「施設」という。)においては、申請人や申請人たる法人の代表者である入所者・患者等(以下「申請人等」という。)と対面による直接の面談(以下「直接面談」という。)ができない場合があります。

そこで、不動産登記制度の円滑な運用のため、下記のとおり、資格者代理人が施設に直接赴いた上で、テレビ会議を用いて本人確認を行った場合の不動産登記法第23 条第4項第1号に規定する本人確認情報(以下「本人確認情報」という。)の提供について、下記のとおり取りまとめましたので(概要は別添資料を参照)、お知らせいたします。貴会会員にご周知くださるようお願いいたします。

なお、下記の内容は、法務省民事局に確認済みですので、申し添えます。

【本通知の趣旨と理由】

施設において申請人等と直接面談ができない状況下において、資格者代理人が施設に直接赴き、申請人等とは直接接触しない施設内の別室等においてテレビ会議を用いて本人確認を行った場合において、以下の【要件】を満たしているときは、不動産登記規則第72 条の本人確認情報に該当するものとして差し支えない。

【要件】

・面識がある場合においても、面識がない場合においても、資格者代理人が現に赴いた施設の別室に申請人等がおり、当該施設内で映像と音声の送受信により相手方と相互に通話をし、直接面談と変わらない状態で意思の疎通や本人の確認ができること。

・テレビ会議による面談を行ったやむを得ない事由が、申請人等の入所する施設から、健康上の理由等により直接面談が困難であるとの要請があったものであり、本人確認情報の内容として、テレビ会議による面談を実施する合理的理由が明らかにされていること。

・施設におけるテレビ会議による面談に同席した施設の職員や申請人等の家族等から、画面越しに映された申請人等が本人に相違ない旨を資格者代理人が聴取して、本人に間違いないという判断をした理由が本人確認情報の内容として具体的に明らかにされていること。

・資格者代理人が申請人等の氏名を知らず、又は当該申請人等と面識がない場合には、施設の職員又は申請人等の家族等から、不動産登記規則第72 条第2項各号に掲げる本人

【別紙2】

確認書類の原本の提示をあらかじめ受け、かつ、提示された当該書類の内容を直接確認しなければならないこと(同条第1項第3号)。

・資格者代理人が行った本人確認情報の提供について、登記官がその内容を相当と認めること。

(ご留意)具体的な事案の対応にあたっては、管轄法務局と事前協議をしてください。

参考

登記研究 745号 127頁  2010年3月30日 【質疑応答】 〔七九〇七〕遺言執行者である司法書士が自身に申請権限があることを証明するために作成した本人確認情報の提供があった場合の事前通知の省略の可否

登記研究 735号 159頁  2009年5月30日 【質疑応答】 〔七八八九〕破産管財人代理と面談した結果をもって法二三条四項一号の本人確認情報とすることの可否について

登記研究 714号 197頁  2007年8月30日 【質疑応答】 〔七八五四〕海外に居住する日本人が登記識別情報の提供を要する登記の申請をする場合において、登記識別情報を提供できないときに、日本領事の署名証明書をもって本人確認情報とすることの可否


[1] コロナなどの感染の拡大を防止する場合。施設の衛生上の必要性がある場合。

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