民事信託について、他の専門家に相談する場合など

・民事信託士が作成した信託契約書(公正証書)が、他の民事信託士に持ち込まれる場合はどのような場合か?

 民事信託士という民間資格があります。

(一社)民事信託士協会ホームページ

https://www.civiltrust.com/shintakushi/introduce/index.html#

民事信託士の能力担保について、ホームページから抜粋します。

Q7 民事信託士にはどのような能力担保を考えていますか

当協会では、以下のような体制によって民事信託士の能力を担保することとしました。

第1に、民事信託士検定を受けることです。検定を受けることができるのは、司法書士と、弁護士資格のある方です。研修プログラムを終了した後、合否の判定を経て「民事信託士」となる資格が付与されます。

第2に、民事信託士名簿の作成です。検定に合格した方は、当協会に入会していただくことで「民事信託士」の名称を使用することが可能となります。当協会は、民事信託士に関して「民事信託士名簿」を作成し管理します。民事信託士の資格は、3年で更新することを予定しております。 第3に、継続研修の実施です。民事信託士は、日々その研鑚を行い、能力の向上に努める必要があります。また、情報交換を行い、顔の見える関係をつくることが重要となります。そこで、義務研修を予定しております。この研修への参加は、3年毎の名簿更新の際の判断材料となります。

 費用は確実ではありませんが、(一社)民事信託推進センターに入会していること(24,000円/年)、民事信託士検定60,000円、民事信託士会員の入会金25,000円、民事信託士会員の会費年額(12000円/年)、民事信託士会員の更新登録料(10,000円/3年)というところです。月額最低4,000円というところでしょうか。

参考 (一社)民事信託士協会 入会金・会費規定

https://www.civiltrust.com/shintakushi/gaiyou/kitei.pdf

 民事信託士が作成した信託契約書について、他の民事信託士に持ち込まれる場合としては、委託者の親族、友人、勤務先などから「ちょっと他の専門家にみせた方が良いんじゃない?」と勧められる場合が考えられます。また委託者、受託者当人が、「こんなはずじゃなかったのに。」と考えて他の専門家の意見を聴きに行くということも考えられます。民事信託士協会のホームページには名簿があるので、どちらかというと他の専門家に相談したらたまたまその方が民事信託士だった、という可能性が高いような気がします。

 他の専門家に相談することは、信託当事者にとっては何も責められる行為ではありません。かえって現在依頼している民事信託士への信頼が深まる可能性もありますし、反対に相談した専門家に代えることで上手くいくならその方が良いと思います。最初に担当した民事信託士も、信託当事者のそのような行動に対しては歓迎する方の方が多いのではないかと思います。私も他の士業の話も聴いてみてくださいと相談の際などに言う事が多くあります。

・受託者が何でも出来る信託は有効か?

 裁量型信託のことだと思いますが、「何でも出来る」の定義によるのではないかと思います。所有者のように何でも出来る、のであれば信託の成立要件を欠く可能性が高いと思いますし(信託法2条1項)、信託法の範囲内で何でも出来る(信託法2条5項、信託法第三章受託者等)ということであれば、原則として有効といえるのではないかと考えます。また信託行為の記録と実際の行動・結果との差異も有効、無効の判断材料の一つになると感じます。

・公証人には、受託者に対して受託者の権利義務を説明する必要があるか?専門家が就いている場合とそうでない場合で違いはあるか?

 公証人は、法令に違反する契約などを認証することが出来ないこと、当事者の前で読み聞かせることが必要なことから、受託者はその範囲で縛られると思います。他に公証人法その他の関連法令を守っている限り、各公証人の独立した判断に任せられていると考えます。

1条ずつ、1項ずつ受託者に対して確認していく公証人は今までみたことがなく、どちらかというと委託者に時々話しかけるような方が多いと感じます。

公証人法26条 公証人ハ法令ニ違反シタル事項、無効ノ法律行為及行為能力ノ制限ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ法律行為ニ付証書ヲ作成スルコトヲ得ス

公証人法39条1項 公証人ハ其ノ作成シタル証書ヲ列席者ニ読聞カセ又ハ閲覧セシメ嘱託人又ハ其ノ代理人ノ承認ヲ得且其ノ旨ヲ証書ニ記載スルコトヲ要ス

・信託財産は、誰のものでもない財産か?

 信託法2条3項には、この法律において「信託財産」とは、受託者に属する財産であって、信託により管理又は処分をすべき一切の財産をいう。とあります。信託法2条1項には、この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう、とあります。よって、信託財産は受託者に属する財産で、一定の目的に従い必要な行為をすべき財産である、ということが出来ます。

・信託法29条2項本文の「善管注意義務」を全く排除することは、信託設定意思はなく、そもそも信託ではないことになるか?軽減はどの程度許されるのか?信託口口座と損失補てん義務との関係は?

 信託法29条2項本文を読んでみます。受託者は、信託事務を処理するに当たっては、善良な管理者の注意をもって、これをしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる注意をもって、これをするものとする、とあります。    信託行為の別段の定めとして、善管注意義務を全て排除することは信託法の制度趣旨上、出来ません[1]。この場合、受託者が実際の信託事務で善管注意義務を果たしていると認められる場合はどうなるのでしょうか。そもそも信託の成立要件を欠くので、受託者が信託事務を行うことは不可能と考えることも出来るように思います。そうであれば、何らかの事情で善管注意義務を軽減したい場合は、信託行為に何も記録しない方が良いといえるのではないかと考えます。

 信託口口座を開設する際には、善管注意義務の定めが条文通りに記録されていないと開設出来ないという金融機関があります。金融機関としては、そのような姿勢にならざるを得ないと思います。

 受託者の損失補てん義務(信託法40条~)との関係については、受託者の行為時を基準とするので、信託行為時において善管注意義務を定めたから、自己の財産と同一の注意義務を定めたから、というのは私はあまり関係がないと考えています。それよりも、どれだけ損失・変更が生じたか、原状回復を行うか否かを計算する基準を設けることが委託者、受託者、受益者にとって信託を滞りなく進めていくために大切だと思います。

・何らの限定なく利益相反行為が可能な仕組みになっている場合には、受託者が自らの完全な所有物として、そこからの利益を受ける仕組みになっているというべきであり、委託者に信託設定意思はなく、信託ではないといえるか?

 信託法31条2項1号の定めがある信託行為のことを指しているのだと思います。私は原則として有効だと考えます。利益相反行為について、信託行為で事前承認を得ていると考えられるからです。利益相反行為が可能な仕組みになっているからといって、受託者が専ら利益を受けるわけではありません。受託者じゃないと買う人がいない不動産、受託者の所有にしないと利用できない不動産などはあるのではないかと思います。

・脳梗塞で3回以上倒れている方は、意思能力がないといえるのか?

 一概に決めることは出来ないと思いますが、受託者の任務終了事由や受益者代理人、信託監督人の就任要件として定めることは可能だと思います。

・家族民事信託とはなにか?家族民事信託と一般的な信託の要件に違いはあるか?

 家族信託や民事信託と呼ばれる信託を合わせて家族民事信託と呼んでいるのかなと思われます。一般的な信託は、信託法が定める要件を満たす信託のことだと思われます。私は違いはないと考えています。もし違いがあれば、家族民事信託は信託ではないということになります。

・委託者と受託者に信託契約を締結するという認識はない事例の場合にあっても、信託法3条1号によれば、信託契約は、委託者と受託者との間に、財産処分の合意と、受託者が一定の目的に従いその財産の管理処分等の行為をすべき旨の合意があるときに成立するのか?

 信託法3条1項1号では、特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法、と記載されています。条文通り、当事者間では信託契約が成立していると考えることが出来ます。金融機関や親族をはじめとする第三者が、このような信託に対してどのような対応をするのかは別の問題です。


[1] 寺本昌広「逐条解説新しい信託法[補訂版]」平成20年商事法務P113

民事信託に関する指摘に対して

・信託事務を遂行しがたいと二次受託者が判断したとき、という定めは妥当か?

 受託者の任務終了事由として、「信託事務を遂行しがたいと二次受託者が判断したとき」という定めは妥当でしょうか。二次受託者の主観的な判断で決められてしまうのではないか、という懸念が残ります。法定事由以外では、受託者が、受益者からの報告請求に対して2回続けて報告を怠った場合、受託者が○○歳になったときなど具体的に定める必要があると思います。

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・法定されている事項(受託者の任務終了事由など)でも信託行為に記載する必要があるか?あるとすればどの程度か?

 理由としては、受託者は専門家ではないから、法定されているから書かなくても良いという事にはならない、ということのようです。少なくとも受託者の任務が終了する場合くらいは記載が必要ではないか、という指摘です。私は信託法56条1項、57条1項については、解任を除いて記載しています。

 その他に法定されている事項でも、信託行為に記載する必要があると感じるのでは、信託行為の効力発生時期、信託の変更、信託の終了などでしょうか。

・清算受託者に士業が就任することは可能か。

 ある信託銀行の方の指摘では、清算受託者に士業が就任することは不可能ということでした。指摘のとおり、清算受託者も受託者であり、信託業法2条に抵触すると考えられます。士業が参画するとすれば、第三者委託の受託者だと考えます。

・「残余財産の帰属権利者は令和○○年○○月○○日第○○号の公正証書遺言による。」という規定は有効か。

 規定自体は有効です(信託法182条)。信託口口座を開設する金融機関からすると、遺言をチェックしなければならず、このような規定がある信託契約書で信託口口座を作成するのは難しいとのことです。ただ、その前に金融機関はどのような根拠で残余財産の帰属権利者の特定をすることが認められているのかが分かりませんでした。私も信託契約書は公正証書にする前に金融機関のチェックを受けますが、信託契約書の中には長男、次男などの家族関係、所有不動産の詳細、第2次受益者の住所、氏名、生年月日などの個人情報が入っています。金融機関が信託口口座を開設する際にチェックする条項に、所有不動産の詳細、第2次受益者の住所、氏名、生年月日などが必要なのか疑問です。借入れの有無にもよりますが、原則として信託金銭の額、委託者・受託者・受益者の個人情報、信託の目的、信託の効力発生・変更・終了事由、受託者の任務終了事由と財産管理方法で良いのではないでしょうか。

 私はこのような規定は利用せず、信託財産については信託行為の中で全て完結するようにしています。当事者も分かりやすいと思います。

・法定代理人(成年後見人など)の権限を略奪するものは無効か。

 私は制限(略奪?)しています。例えば法定後見人は受託者の辞任申し出に対する同意をすることは出来ない、などです。何故制限しているのかというと、適切な判断が出来ず、成年後見人が困るのではないかと考えているからです。この場合、受益者が判断能力を喪失している場合は、受益者の同意を得ての辞任は出来ないことになり、他の任務終了事由で任務終了することになります。または受益者の成年後見人開始の審判が発効した場合に受益者代理人が就任するという条項にチェックを付けている場合は、受益者代理人の同意を得て辞任することになります。受益者代理人も法定代理人なので、成年後見制度と抵触することはなく、信託と成年後見、任意後見それぞれの制度趣旨とも合致すると考えています。

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・委託者名義の口座に入金された年金を、信託口口座に定期定額で送金(振替など)を行うことは可能か?

 可能という信託銀行はあります。この方法だと、追加信託を公正証書にするのは1回で良いという意味もあるのかもしれません。私は、受託者が定期定額で自動的に信託口口座に送金されるような仕組みを作るのは少し違うような気がします。身上監護を主とする成年後見制度と抵触すると考えるからです。やるとすれば、1年の終わりに1回、来年の身上監護にかかる費用も考えて、余裕のある金額を信託口口座に移す、という方法ではないかと思います。成年後見人等が就任している場合、家庭裁判所にもその方が理解が得られやすいのではないかと考えています。

・必要な財産(例:自宅のみ、老後のお金のみ)だけ信託する。その後、必要な度に(追加)信託するという紹介、営業方法は有効か?

 4,5年前から、自宅の他に、例えば葬儀費用のみ信託して、信託口口座だけまずは作ってみるというような紹介の方法はあったので、目新しいことはないと思います。

民事信託に関する問い

・受益者代理人と後見監督人の性質の違いはあるか?

受益者代理人は、受益者の代わりに受益者の権利をを行使します(信託法139条、140条)。信託監督人は、受益者とは独立した機関として受益者に認められている権利を行使します(信託法92条、132条、133条)。

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・受益者代理人の定めを設置しなければいけないことは流布されたのか?

 一時期、そのような記載がある書籍や勧める研修もありましたが、設置しなければならない、というような流布はなく、実務も専門家、案件それぞれの個別具体的な事情により設置したりしなかったりしていたのではないかというのが私の感覚です。

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・受益者代理人が就任すると、受益者の権限が制限されるのか?

 信託法139条4項で、原則として信託法92条に記載がある権利と信託行為において定めた権利を除いて、その権利を行使することができない、として受益者の権限を制限しています。ただし、信託行為に定めることで受益者の権限の制限を緩めたり、受益者代理人の権限を制限したりすることが出来ます。

・信託監督人に加えて、または信託監督人に代えて受益者代理人の設置を検討する場合とはどのような場合か?

 受益者代理人の設置が必須になる場合として、どのような場面が考えられるでしょうか。信託監督人という言葉に当事者が違和感を覚えてためらう場合、直ぐに成年後見制度を利用することを当事者が躊躇する場合、受益者の性格や年齢など、考えられることはありますが、必須とまではいえないなと感じます。

・会計法上の計算期間と税法上の計算期間の違いとはどのようなものか?

会計法上の計算期間・・・会社法431条、会社計算規則3条、法人税法22条4項。

税法上の計算期間・・・所得税法13条、所得税基本通達13-2。

 信託行為によって4月1日から3月末日までの計算期間としても、税法上は1月1日から12月末日となる。

・武田昌輔「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/03/25/ronsou.pdf

税法において明確な別段の定めのあるものについては、税法固有の目的から収益、損益について明確にされているので立法論の問題は別として、この公正処理基準の効力は及ばない。もっとも、別段の定めにおいても種々の会計的処理を定めているので、その処理について明確でない点は、この公正処理基準に従って計算すべきものと解される。

・法定調書とはどのようなものか?

所得税法227条、242条、信託受益権の譲渡の対価の支払調書(同合計表)、信託の計算書(同合計表)(所得税法227条)、信託に関する受益者別(委託者別)調書(同合計表)(相続税法59条3項)など。

・損益通算の規定とは何か?

規定を読んでいると、組合を参考にして信託に関しても定められているのかなと感じます。

国税庁タックスアンサー「No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm

改正税法のすべて 平成19年版112~P115

租税特別措置法41条の4の2、同法施行令26の6の2、同法施行規則18条の24

・信託銀行で信託口口座を作成する場合に、士業が関わる意味は何か?

 信託銀行は信託のプロ、信託銀行から学ぶことは多い、と民事信託に関わった頃からあらゆる書籍、研修で言及され続けています。なのに、なぜ信託銀行で民事信託の信託口口座を作成する際に士業が関わる必要があるのでしょうか。信託銀行で全て支援を行えば良いのかなと思います。信託銀行としては、全て信託行為の設定から終了まで支援して報酬をいただくことも考えているようです(実際に実施している信託銀行もあるのかもしれません。)ただし、現在は第三者委託の受託者(信託法35条)としての業務を主に行っているようです。責任の重さと報酬額の釣り合い、紛争性の大きさ、未確定な部分の多さなど、規模が大きい企業だからこそ、色々と考慮することがあるんだなと感じました。

・信託監督人の適任は税理士か?

 私は税理士が適任だと思います。会社法における会計参与(会社法374条~)のような感じでしょうか。信託財産に不動産がある場合、不動産登記申請時に司法書士から信託監督人の氏名か名称の記録を求められる可能性が高いと思います。おそらく住所や事務所の所在地は抵抗があるのではないでしょうか。会社の場合は、1つの会社に対して、1回履歴事項全部証明書に記録されますが、信託監督人の場合は、信託財産である不動産全てに記録されることが違いなのかなと思います。税理士にとって、どのようなメリットがあるのかが私には分からないので、今のところ税理士さんに信託監督人への就任をお願いしたことはありません。

・認知症の疑いはないか、受託者主導ではないか?

 まず、医師から認知症の診断をされたことで、直ぐに信託設定は不可能と判断するのは少し違うのかなと思います。親族とは日常生活、財産管理についてやり取りが支障なく出来る方がいらっしゃるからです。金融機関などから借入れがあり、第三者が関わっているかなどによっても変わりますが、直ぐに信託設定は不可能と決めつけることは委託者本人の意思を摘むことになるのではないかと思います。

 受託者主導、というのがどのようなことを指しているのか。委託者の子供のうちの一人が自分が全ての財産を引き継ぎたいために、委託者を引っ張って信託行為を半ば無理やり設定させる、ということなのでしょうか。このような傾向は遺言でも任意後見(判断能力喪失後から亡くなるまでの財産管理について)でもあるのではないでしょうか。民事信託だけの問題ではないと思います。

 受託者主導だから紛争性がある、信託行為として問題がある、という考え方も専門家からの見方になっているような気がします。結果論ですが、紛争になるときは委託者主導でもなります。専門家の仕事は、誰が主導しているのかに関係なく、信託行為の内容を法令に従った内容にすること、個々の案件に応じて信託行為の内容を考えること(例えば裁量型信託にせず他の親族の同意などを必要とする条項を設ける。)、紛争性があるとして、その発生を抑えるようなアドバイスをすること(例えば法定相続分に関しては保険加入を検討する。)、紛争が起こっても早期に解決出来るような仕組みを作ること(例えば、ADR機関の利用を予め信託行為で定める。)だと思います。

・信託法164条について、日本の信託法において、原則として、受託者の合意だけで信託を終了することは出来ないのが前提か?

 元々委託者の財産について、受託者に所有権を移転し、管理運用を任せるのが信託とすれば、委託者と受益者が、この仕組みが必要なくなったと合意した場合に終了出来ることは、前提であり妥当だと思います。

参考

道垣内弘人編「条解信託法」弘文堂P701~702

・多様な信託形態は遺言代用信託の増加とは相反するか?

 遺言代用信託契約での記載内容は多種多様であり、金融実務、公証実務によって画一的にならざるを得ない面があるのではないか、というのが現在の私の考えです。自己信託の設定や信託契約書の内容について、根拠なく駄目だと言われることが何件かあります。

・監視・監督は必須なのか?信託監督人の利用が少ないのは課題か?

 必須とは言えないのではないかと思います。また監視・監督の関与の強弱によるのではないかと思います。監視されるのは嫌だという方もいると思います。何かあれば直ぐ3日以内に報告書を提出して下さい、と内容証明郵便が送られてくるような監視・監督であれば、受託者としても困ると思います。月に一度、年に2回など定期的に書類を提出しながら世間話でも出来る監視・監督であれば、委託者兼受益者も安心できるのではないかと思います。

・遺留分を侵害している民事信託の設定は、金融機関から信託口口座の開設を拒まれることがあるのか。

 そもそもですが、遺留分を侵害しているかを知るためには、委託者の家族関係を知ることが必要となります。金融機関にそのような権限があるのでしょうか。誰か知っていたら教えてください。

・信託の効力発生時期を財産権の移転を条件にする方がよいのか?

 信託財産目録に記載された金銭を信託口口座に入金し、不動産登記を申請したときを信託の効力発生時期とする、という方法は良いなと感じました。

・本人の意思能力低下後に追加信託を行うことは、禁止されるべきか?

 信託行為に不動産であれば具体的記載、金銭であれば金額か上限が記載されていれば可能だと考えます。ただし、不動産登記法の構造上、本人の判断能力がない場合には、追加信託を行うことが出来ません。

・追加信託は公正証書を必須とするべきか?

 当初の信託行為に記載があるのであれば、委託者と受益者の合意があれば必須とする必要はないと思います。ただし、案件によります。また公証実務の電子化の進み具合にもよります。

・終了時の規定として、一般承継人の協議はどうか。

 残余財産の帰属権利者は一般承継人の協議による、という定めを設けると、信託期中の財産管理について疑義が出たりする可能性が多いのかなと感じます。私は受益者を第2次、第3次まで定めておいて、信託終了時の受益者を残余財産の帰属権利者とすることが多いです。

民事信託に関する問いかけ

・帳簿と財産状況開示資料(信託法37条)は違うのか?

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

信託法(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務)

第三十七条 受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

2 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受託者は、第一項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から十年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第六項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

5 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から十年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 受託者は、第二項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から十年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

信託法施行規則

第八章 計算

第三十三条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定めるべき事項は、信託計算規則の定めるところによる。

一 法第三十七条第一項及び第二項

二 法第二百二十二条第二項、第三項及び第四項

三 法第二百二十五条

四 法第二百五十二条第一項

信託計算規則

(信託帳簿等の作成)

第四条 法第三十七条第一項の規定による信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録(以下この条及び次条において「信託帳簿」という。)の作成及び法第三十七条第二項の規定による同項の書類又は電磁的記録の作成については、この条に定めるところによる。

2 信託帳簿は、一の書面その他の資料として作成することを要せず、他の目的で作成された書類又は電磁的記録をもって信託帳簿とすることができる。

3 法第三十七条第二項に規定する法務省令で定める書類又は電磁的記録は、この条の規定により作成される財産状況開示資料とする。

4 財産状況開示資料は、信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の概況を明らかにするものでなければならない。

5 財産状況開示資料は、信託帳簿に基づいて作成しなければならない。

6 信託帳簿又は財産状況開示資料の作成に当たっては、信託行為の趣旨をしん酌しなければならない。

(会計帳簿等を作成すべき信託の特例)

第五条 前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する信託については、法第二百二十二条第二項の会計帳簿を受託者が作成すべき信託帳簿とし、同条第四項の規定により作成すべき書類又は電磁的記録を受託者が作成すべき財産状況開示資料とする。

一 当該信託の受益権(二以上の受益権がある場合にあっては、そのすべての受益権)について法第九十三条第一項ただし書の規定の適用がなく、かつ、当該受益権について譲渡の制限がないこと。

二 第三者の同意又は承諾を得ることなく信託財産に属する財産のうち主要なものの売却若しくは信託財産に属する財産の全部若しくは大部分の売却又はこれらに準ずる行為を行う権限を当該信託の受託者が信託行為によって有していること。

2 前条の規定にかかわらず、前項に規定する信託においては、信託帳簿及び財産状況開示資料の作成は、次章(第二十条及び第三節を除く。)の規定に従って行わなければならない。

以前受けた質問と回答を再掲します。この回答に関しての質問です。

・一般社団法人が解散した場合の、保留利益は社員や設立者に帰属しないので相続税の対象外になるとは?

相続税の関係については、最終的に税理士の判断を仰ぎます。一般社団法人が解散した後の残余財産の帰属先については、非営利型でない限り、解散後に清算法人の社員総会で定めることが出来ます。

・他の専門家に聞いたが、一般社団法人の設立は、法改正によって相続税対策にならないし、税理士が必要になり、かえって費用がかかるか?

 上の質問のうち、「法改正によって相続税対策にならないし」の部分は、一般社団法人が財産の所有者になった場合に関してです。信託の受託者になる場合とは関係がありません。「税理士が必要になり、かえって費用がかかるか」については、一般社団法人を設立するか、信託を設定するかと税理士が必要かとは関係がありません。税について安心して業務を行いたい場合は、専門家である税理士に依頼するのが良いと思います。反対に自分でやるという場合は、法人を設立しても信託を設定しても、税務署に聞いたり調べたりしながら自分でやれば良いと思います。

国税庁 No.4143 特定の一般社団法人等に対する課税

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4143.htm

・(受託者の信託事務)として、「信託不動産の売却代金を管理し、受益者の生活費、医療費及び介護費用等に充てるために支出すること」は可能か。

 上の記載だと、信託不動産の売却が前提となっています。私なら信託不動産の売却が確実な場合以外は、このような記載はしません。受託者の信託事務として、信託不動産の管理方法に売却することが出来る、信託金銭の管理方法に受益者の生活費、医療費及び介護費用と分けて書くと思います。

・信託監督人・受益者代理人に、受託者の配偶者、子、兄弟姉妹が就任することに問題はないか。

 民法850条、任意後見契約に関する法律5条が根拠として考えられているようです。私は少し分かりませんでした。各信託ごとに構成出来るのか良いのかなと思います。士業の考え方に近すぎないかなというのが正直な感想です。信託監督人、受益者代理人という言葉は堅いので、士業など専門家が就任してもらうと安心出来る、という側面もあると思うのでそれは否定しません。ただ、多くの民事信託において、信託監督人が必要か、受益者代理人が必要かは少し考える必要があると思います。私は、信託監督人・受益者代理人を置くことが出来ることと、具体的な選任方法は信託行為に記載しますが、信託設定時にはほとんど置いていません。

民法

(後見監督人の欠格事由)

第八百五十条 後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

任意後見契約に関する法律

(任意後見監督人の欠格事由)

第五条 任意後見受任者又は任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。

・受託者に法律上、会計上、税法上の義務を理解させるとは、どの程度のことをいうのか?

 民事信託を支援する専門家には、受託者に法律上、会計上、税法上の義務を理解させなければならない、と言われましたが、どの程度なのでしょうか。完全に理解することはおそらく専門家でも出来ません。少なくとも私はそのような専門家を知りません。

 受託者の義務について、どんな時に義務が発生するか、そのとき何処に、誰に頼めば良いのかの窓口になることが必要だと思います。そして、それは信託設定時に全て出来ることではなく、受託者としての事務をこなしながらじゃないと出来ないのではないかと思います。

「家族信託で出来ないこと」について

あるメールマガジンを少し加工しています。読みながら考えてみたいと思います。

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意外と間違いやすい。信託契約でできないことがあるので、今日は紹介していきます!

家族信託でできないこと

(1)親名義の預金は下ろせない

(2)親名義の不動産も動かせない

(3)老人ホーム入居の契約はできない

(1)親名義の預金は下ろせない

「えっ、どういうこと!?」「親の預貯金を使えるように家族信託したいのに・・」

と思われた方もいるかもしれません!しっかり説明しますね(^^)家族信託で「親のお金を使える」ようにできます!しかし、「親の名義の預金は下ろせません」。大切なことは、「信託契約だけではダメ!」ということです。例えば、家族信託契約書を持って銀行に行き、親名義の預金を下ろしたいと言っても、銀行員は対応できません。親名義の口座からお金を下ろせるのは、親だけだからです!そのため、家族信託契約を結んだお客様には契約後に信託用の子供名義の口座を開設いただきます。そして、信託したお金を移動させるのです。子供名義の口座なので、子供の裁量で下ろしたり、振り込んだりできるのです。親の口座から、信託用の口座にお金を移すのは普通の銀行振込になります!そのため注意すべきは、親がまだ契約能力がある間でないとお金を移すことができないのです。

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 「契約後に信託用の子供名義の口座を開設いただきます。」は、おそらく「委託者【親氏名】受託者【子供氏名】信託口」というような名義の口座か信託専用の子供名義の口座を指しているのだと思います(信託法34条)。

 「子供名義の口座なので、子供の裁量で下ろしたり、振り込んだりできるのです。」は、信託行為の内容によります(信託法26条、29条、30条など)。

 「親の口座から、信託用の口座にお金を移すのは普通の銀行振込になります!そのため注意すべきは、親がまだ契約能力がある間でないとお金を移すことができないのです。」。もし信託契約を締結した後、金融機関で信託用の口座を作る前に親の契約能力というものが無くなった場合、お金を移すことは出来ないのでしょうか。私は経験がないのですが、金融機関で事前に信託契約書の内容について調整していることを前提として、お金を移すことは債務の履行のように構成出来ないのかなと考えています。また0円で信託用の口座を開設出来る場合、自益信託の信託契約書に、受益者代理人の定めがあるときは資金の移動が出来ると思われます。

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(2)親名義の不動産も動かせない

こちらも驚いたかもしれませんが、お金の場合とよく似ています!不動産も信託をしただけでは足りず、不動産の登記簿に信託した旨を載せる手続きをして、不動産の名義を子供に変更しないといけません!!不動産の登記簿を子供名義に変えるためにも親の契約能力が必要になります!そのため、信託契約だけしておいて後日に不動産の名義を変える場合に、注意が必要です。もしも、親の契約能力が無くなっていた場合には、成年後見制度を利用しないと不動産を動かすことができません。

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この部分に関しては、信託契約公正証書を作成する際に信託財産に属する財産となる不動産に関して登記申請の委任状にも一緒に署名押印しておけば、不動産登記申請自体は行うことが出来ます(不動産登記法17条)。ただし、印鑑証明書について3か月の有効期限があるので、その期間内の登記申請が必要です。

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(3)老人ホーム入居の契約はできない

家族信託契約をしていても、親に代わって老人ホームなどの入居契約をする権限は子供にはありません。家族信託契約は、信託された財産についての財産管理の契約になります!そのため、施設入居時に親の契約能力が無くなっていて、施設より後見人の利用を求められた場合、成年後見人の手続きをしないと入居契約は出来ません!!!そのため、信託契約と一緒に任意後見契約をして、子供が後見人なれるようにしておくことも合わせて提案をしています!

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 「施設入居時に親の契約能力が無くなっていて、施設より後見人の利用を求められた場合、成年後見人の手続きをしないと入居契約は出来ません。」の部分は契約能力というのがどのようなものか分からないのですが、その通りだと思います。

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