
登記研究930号(令和7年8月号)、テイハン
https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html
【論説・解説】■不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(旧氏併記関係)(1)
東京地方裁判所判事(前法務省民事局付) 森 下 宏 輝、法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之、法務省民事局商事課補佐官(前法務省民事局民事第二課補佐官) 太 田 裕 介
第1 はじめに
不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第7号)(令和6年3月1日公布)
不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(旧氏併記関係)(法務省民二第553号通達)(令和6年3月27日)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00608.html
第2 制度の背景
法制審議会-民法・不動産登記法部会15回会議(令和2年7月14日開催)
https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html
○橋本幹事 すみませんです。第2関係の日弁連の議論状況ですが,まず「1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し」については,会社の法人番号等を新たに追加するということについて異論はありません。
補足説明で書かれているマイナンバーを含めないという点についても異論はありません。
その他,12ページの一番上のところで,以上を踏まえ,それ以外どのように考えるかという問い掛けがありますものですから,提案として,個人の方について会社の役員登記のように選択的に旧姓の併記というものをできるようにしていただけないかという御要望を提案したいと思います。
それと,2の外国に住所を有する登記名義人の関係ですが,これについても今回中間試案と変更して連絡先を必要的に登記させるという点について異論はありません。異論はないんですが,ということは,これ登記申請に当たって連絡先を併せて明記しなければ,登記申請は受け付けられないという扱いになるんだろうと思うんですが,そこで割り切るという決断なんでしょうけれども,それによって外国に住所を有する方が日本の不動産の登記を取得できないというハードルが上がってしまうけれども,しようがないのかなということ。ただ,それとの関係で更に14ページの上から5行目のところで連絡先をなしといった記載に変更するということが認められるように書いてあるので,そうすると登記申請に当たって連絡先なしという登記申請は許されるんですかというのをちょっと質問としてお聞きしたいです。
それと,(2)の外国に住所を有する外国人の住所証明書の関係,これについても賛成です。ただ,確認なんですが,このうち公証人と言っているのは日本の公証人を指して言うという理解でよろしいのか,外国の公証人を含んでいるのかということをちょっと教えていただきたいです。
最後の3の「附属書類の閲覧制度の見直し」についても賛成の方向です。ただ,意見として,現状で閲覧のときに附属書類の写真撮影,閲覧が許可される場合に写真撮影も許されていると思うんですが,それを法務省令で写真撮影が許されるということを明記するということも考えていただけないかという意見がありました。
第3 施行通達の解説
○第2部 旧氏併記に関する事務の取扱い
○第1 通則
旧氏は、所有権の登記の登記事項ではなく、所有権の登記名義人の氏名の識別性を向上させるための補足事項という位置づけ。
旧氏併記の申出をする場合の代理権限を証する情報においては、当該申出は登記申請に付随する手続きであるから、委任状において登記申請に係る委任がされていれば足りる。
登記申請と独立して旧氏併記の申出書が提出されることはないから、申出に係る特別の受付処理は行わなれない。
旧氏を証する情報の内容。原則として、住所を証する情報と戸籍謄本等に記載された名、本籍、生年月日等が一致している必要がある。
○第2 登記申請に伴う旧氏併記の申出
旧氏併記の申出に対する登記官の応答には、行政処分性はないと考えられ、却下の手続は規則ではなく施行通達に定められている。却下に対して審査請求や取消訴訟の提起をすることはできないと考えられている。
■ポイント解説 基礎から考える商業登記実務(第11回)
東京法務局民事行政部第一法人登記部門首席登記官 山 森 航 太
ポイント:株式会社の役員等及び代表取締役の重任による変更の登記について(その2)
5 役員等及び代表取締役の重任による変更の登記の申請書の添付書面
(1)役員等の選任・就任を証する書面
登記研究698号P127、平成18年3月31日民商第782号事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」・・・役員等の選任に係る定時株主総会の決議が株主総会の決議の省略(会社法319条)によって行われた場合には、当該場合に該当することを証する書面を添付しなければならない(商業登記法46条3項)が、会社法施行規則72条4項1号に規定する事項を内容として作成された株主総会の議事録をもって当該場合に該当することを証する書面として取り扱って差し支えないとされている。
(2) 代表取締役の選定等・就任を証する書面
定款の定めにもよるが、取締役が1人のみの株式会社においては、定時株主総会において取締役を選任すれば、別に当該取締役を代表取締役と定めなくても、当該取締役は代表取締役となる(会社法349条)ことから、代表取締役を定めたことを証する書面の添付を要しない。
(3) 役員等及び代表取締役の退任を証する書面(商登法第54条第4項)
登記研究474号P137、昭和53年9月18日法務省民四第5003号民事局第四課長回答「株式会社の取締役及び監査役の変更登記申請書の添付書類について」・・・定時株主総会の議事録に任期満了の旨の記載があるときは、退任を証する書面として別に定款を添付する必要はない。
6 添付書面の真実性を確保するためのその要件の加重
(1) 定款の添付(商登規第61条第1項)
・役員等(会計監査人を除く。)の選任の決議に係る定足数の下限(会社法341条)を設けている場合
・代表取締役を定款の定めに基づく取締役の互選(会社法349条3項)によって定めている場合
・取締役会の決議の省略(会社法370条)によって代表取締役を選定している場合
(2) 株主リストの添付(商登規第61条第3項)
株主総会の議事録と株主リストの記載内容を対比するなどして、真に株主総会の決議がされたのか、確認するため。
登記研究823号P173、平成28年6月23日法務省民商第99号民事局商事課長依命通知「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」・・・株主リストに、議決権の割合が上位である株主をその順番に記載。
(3) 就任承諾書の要件の加重
・就任する(代表)取締役の印鑑証明書を添付する場合(商業登記規則61条4項)。
・取締役、監査役の本人確認証明書を添付する場合(商業登記規則61条7項)。
(4) 代表取締役を選定等した議事録等に押印した印鑑につき印鑑証明書の添付(商登規第61条第6項)
代表取締役を選定又は定めた議事録等の真実性を担保するため。
登記研究470号P99、1987年3月30日【質疑応答】〔六八四三〕「代表取締役変更(重任)登記申請と同時に取締役会議事録に押印されている従前の代表取締役の印鑑の改印届がされた場合における印鑑証明書添付の要否」
登記研究270号P72、1970年5月20日質疑・応答四八二五「同時になされた代表取締役の改印届と当該代表取締役の重任による変更の登記申請書の印鑑について」
登記研究347号P77、1976年10月20日質疑応答【五二九〇】「改印届と同時になされた代表取締役の重任による変更登記申請における商業登記規則八二条三項ただし書適用の有無」
7 役員等及び代表取締役の重任による変更の登記の申請の審査
(1) 定時株主総会の議事録
出席役員等の氏名の記載(会社法施行規則第72条3項4号)。
登記研究245号P73、1968年4月20日質疑・応答四五四三「役員変更登記の受否について」・・・定時株主総会の議事録に「全員の重任が確定した。」のみが記載されている場合には、再任された役員等の氏名が判断できない。
(2) 代表取締役を選定した取締役会の議事録又は代表取締役を定めた互選書
代表取締役を定めた互選した時期。
(3) 役員等及び代表取締役の就任承諾書
就任日付が適切か。
(4) 会計参与又は会計監査人の資格を証する書面
(5) 重任する代表取締役の住所又は重任する役員等及び代表取締役の氏名が登記記録と異なっている場合
登記研究306号、1973年5月20日、平野文則:民事局第四課長補佐、吉田弘道:民事局第四課長補佐「改正商業登記規則の施行による事務取扱いについて」・・・代表取締役の重任による変更の登記において、登記すべき事項に記載された代表取締役の住所と登記記録に記録されている変更前の代表取締役の住所が相違する場合であっても、代表取締役の住所の変更・更生の登記をすることなく、重任による変更の登記は可能。
8 その他役員等及び代表取締役の重任による変更の登記の審査において留意すべき事項
(1) 旧氏の併記
(2) 代表取締役の住所非表示措置
9 おわりに
■逐条解説不動産登記規則(59)
元法務省民事局民事第二課地図企画官 小宮山 秀 史
第109条 土地の滅失の登記
不動産登記規則
https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018#Mp-Ch_3-Se_2-Ss_2
(土地の滅失の登記)第百九条 登記官は、土地の滅失の登記をするときは、当該土地の登記記録の表題部の登記事項を抹消する記号を記録し、当該登記記録を閉鎖しなければならない。
河川敷地で常時流水下になった場合などは、私権の客体となり得ない。滅失の登記申請は義務(不動産登記法42条)。
登記研究109号P39、昭和31年11月10日民事甲第2612号民事局長事務代理回答「海面に臨接する土地の境界線について」・・・土地と海面の境界について、春分及び秋分の満潮時(最高潮位時)を標準として定める。
登記研究171号P50、昭和36年11月9日民事甲第2801号民事局長回答「海面下の土地の所有権について」・・・土地が海面下に没するに至った経緯が、天災等によるものであり、かつ、その状態が一時的なものである場合には、私人の所有権は消滅しない。
登記研究163号P33、昭和36年2月17日民事三発第173号民事局第三課長心得通知「所属未定地の編入に関する疑義について」・・・公有水面埋立法の規定による免許を受けて海面の一部を区画し、コンクリートによる養鰻場を製造した場合は、地目を池沼として登記することができる。
【法 令】商業登記規則の一部を改正する省令(令和7年3月24日法務省令第10号)
商業登記規則の一部を改正する命令(令和7年3月26日デジタル庁・法務省令第1号)
譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律(令和7年6月6日法律第56号)
法務局及び地方法務局の支局及び出張所設置規則及び登記事務委任規則の一部を改正する省令(令和7年6月20日法務省令第38号)
【訓令・通達・回答】
▽商業・法人登記関係
〔6261〕商業登記等事務取扱手続準則の一部改正について(令和6年12月2日付け法務省民商第182号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)