2024/12/20沖縄県司法書士会「民事信託研修会」伊庭潔弁護士
・民事信託の契約書作成業務とコーディネーター業務がある。
・遺言信託も増えている。
民事信託を活用する事例中、将来の施設利用料の工面についての相談-不動産の処分(定期預金の解約)については、居住用不動産の売却許可審判を考慮しても、後見制度で対応できる可能性があると考えます。
「親亡き後」の問題について、信託契約作成時点で残余財産の帰属先として寄付先と定める形になっており、信託当初から寄付先を決めることが出来るのか、分かりませんでした。
積極財産しか信託できない、と法律には書いていない?
信託財産の処分を認めないケースの信託の目的として、帰属権利者〇及び帰属権利者〇が信託財産を確実に承継すること。の記載がありますが、この記載で信託財産をその性状のまま承継することであり、処分(換価)を認めない、と解釈することにはならないのかなと思います。
不動産の「瑕疵」について、委託者と受託者の内部取決めの条項(契約不適合責任(民法 562条以下)、土地工作物責任(民法717条))は、受託者が委託者に請求する権利があることになっています。委託者が亡くなっている場合は誰に請求するのか、分かりませんでした。
委託者の権利と委託者の地位は異なりますが、基本的な条項例では(委託者の権利)となっており、分かりませんでした。委託者の地位は、民法の相続一般原則により、委託者の相続人に相続される。私人間の合意で「委託者の地位」の相続性は否定できない。とレジュメに記載がありますが、次の基本条項例では、委託者の地位は受益権を取得する者に移転する。という条項が示されています。
沖縄県の三つの地銀では、信託口口座の開設が出来る、というコメントがありましたが、沖縄海邦銀行については、2024/12/20現在、口座名義に信託口と記載される屋号口座以上の効果はありません。
レジュメでは受益債権の内容と記載があり、基本条項例では(受益権の内容)となっています。なぜ異なるのか分かりませんでした。受益権は信託法で法定されており、制限が出来ないので、受益債権のみ定めることで足りるという趣旨なのかなと考えました。
東京高判令和6年2月8日(ウエストロー・ジャパン)は、被控訴人(受益者)による主張、立証が不十分であったことが原因。
信託契約書の基本条項例を基に作成する場合、アレンジする箇所
信託目的、信託事務、受益債権の内容、信託の終了事由、帰属権利者又は残余財産受益者。
受益権は1個しかない、各不動産について1個の受益権を設定しておく、とのコメントについて・・・受益権は信託行為で何個でも設定可能です。金銭のみであれば、1円に付き1個、という受益権の定め方も可能です。
民事信託と遺産分割協議。信託契約書において、委託者の死亡により受益権が消滅しないことを定める。