日本司法書士会連合会、令和5年度商業登記分野研修会 「各種法人の役員変更登記の横断的整理~任期を制するものは、顧客の人気も制す~」2024年2月19日
第2講各種法人の役員変更
第1部 商業登記・企業法務対策部委員、日高啓太郎
一般社団・一般財団法人~株式会社との比較
一般財団法人は、法人状態区に、理事会・監事・評議員・評議員会を置く法人である旨は登記事項ではない・・・設置しないといけないから。
一般社団法人等登記規則 別表第二(一般財団法人登記簿)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000010048
公証人法施行規則13条の4
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324M50000001009
設立時には定款認証のため、実質的支配者申告書の提出(定款認証時)を行うのに、役員変更などの登記申請時には社員リストなどの提供が必要ないのは何故なんだろう、と思いました。
大規模一般社団法人
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000048
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 略
二 大規模一般社団法人 最終事業年度(各事業年度に係る第百二十三条第二項に規定する計算書類につき第百二十六条第二項の承認(第百二十七条前段に規定する場合にあっては、第百二十四条第三項の承認)を受けた場合における当該各事業年度のうち最も遅いものをいう。)に係る貸借対照表(第百二十七条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時社員総会に報告された貸借対照表をいい、一般社団法人の成立後最初の定時社員総会までの間においては、第百二十三条第一項の貸借対照表をいう。)の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上である一般社団法人をいう。
大規模一般社団法人は、初めて知りました。資本金制度がないため、負債要件で判定。
一般社団法人の評議員会の決議
(評議員会の決議)
第百八十九条 評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
・・・緩和は不可。
(理事の任期)
第六十六条 理事の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする。ただし、定款又は社員総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
社員総会議事録
(議事録)
第五十七条 社員総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
2 一般社団法人は、社員総会の日から十年間、前項の議事録をその主たる事務所に備え置かなければならない。
3 一般社団法人は、社員総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその従たる事務所に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、従たる事務所における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
4 社員及び債権者は、一般社団法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 第一項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求
二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
(社員総会の決議の省略)
第五十八条 理事又は社員が社員総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき社員の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の社員総会の決議があったものとみなす。
2 一般社団法人は、前項の規定により社員総会の決議があったものとみなされた日から十年間、同項の書面又は電磁的記録をその主たる事務所に備え置かなければならない。
3 社員及び債権者は、一般社団法人の業務時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
一 前項の書面の閲覧又は謄写の請求
二 前項の電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
4 第一項の規定により定時社員総会の目的である事項のすべてについての提案を可決する旨の社員総会の決議があったものとみなされた場合には、その時に当該定時社員総会が終結したものとみなす。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則
(社員総会の議事録)
第十一条 法第五十七条第一項の規定による社員総会の議事録の作成については、この条の定めるところによる。
2 社員総会の議事録は、書面又は電磁的記録(法第十条第二項に規定する電磁的記録をいう。第六章第四節第二款を除き、以下同じ。)をもって作成しなければならない。
3 社員総会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。
一 社員総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない理事、監事、会計監査人又は社員が社員総会に出席した場合における当該出席の方法を含む。)
二 社員総会の議事の経過の要領及びその結果
三 次に掲げる規定により社員総会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
イ 法第七十四条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)
ロ 法第七十四条第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)
ハ 法第百二条
ニ 法第百五条第三項
ホ 法第百九条第一項
へ 法第百九条第二項
四 社員総会に出席した理事、監事又は会計監査人の氏名又は名称
五 社員総会の議長が存するときは、議長の氏名
六 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名
4 次の各号に掲げる場合には、社員総会の議事録は、当該各号に定める事項を内容とするものとする。
一 法第五十八条第一項の規定により社員総会の決議があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 社員総会の決議があったものとみなされた事項の内容
ロ イの事項の提案をした者の氏名又は名称
ハ 社員総会の決議があったものとみなされた日
ニ 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名
二 法第五十九条の規定により社員総会への報告があったものとみなされた場合 次に掲げる事項
イ 社員総会への報告があったものとみなされた事項の内容
ロ 社員総会への報告があったものとみなされた日
ハ 議事録の作成に係る職務を行った者の氏名
理事会を設置している一般社団法人の代表理事の選定の方法
社員総会で代表理事を選定する場合、定款に記載。・・・根拠が分かりませんでした。
(理事会の権限等)
第九十条 理事会は、すべての理事で組織する。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一 理事会設置一般社団法人の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 代表理事の選定及び解職
3 理事会は、理事の中から代表理事を選定しなければならない。
4項以下略
理事会非設置法人における代表理事の選定の方法など
代表理事のみ辞任して、理事に留まることは可能。
(一般社団法人の代表)
第七十七条 理事は、一般社団法人を代表する。ただし、他に代表理事その他一般社団法人を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の理事が二人以上ある場合には、理事は、各自、一般社団法人を代表する。
3 一般社団法人(理事会設置一般社団法人を除く。)は、定款、定款の定めに基づく理事の互選又は社員総会の決議によって、理事の中から代表理事を定めることができる。
4項以下略
・議事録押印者の定款の定め
(理事会の決議)
第九十五条 1項、2項略
3 理事会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した代表理事とする旨の定めがある場合にあっては、当該代表理事)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4項以下略
5 理事会の決議に参加した理事であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
・平成14 年12 月18 日民商3044 号回答(登記研究662号P171)
第2部 商業登記・企業法務対策部委員 立花 宏「医療法人、社会福祉法人、NPO法人、労働者協同組合~横断的整理」
社団型の医療法人
各種法人等登記規則
組合等登記令
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029
・理事
(設立の登記)
第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。
2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。
一 目的及び業務
二 名称
三 事務所の所在場所
四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
六 別表の登記事項の欄に掲げる事項
(変更の登記)
第三条 組合等において前条第二項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その主たる事務所の所在地において、変更の登記をしなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、出資若しくは払い込んだ出資の総額又は出資の総口数の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から四週間以内にすれば足りる。
3 第一項の規定にかかわらず、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から三月以内にすれば足りる。
・理事長
医療法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000205
第四十六条の五 医療法人には、役員として、理事三人以上及び監事一人以上を置かなければならない。ただし、理事について、都道府県知事の認可を受けた場合は、一人又は二人の理事を置けば足りる。
2 社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によって選任する。
3項から8項略
9 役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。
第四十六条の六 医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。
2項略
第四十六条の六の二 理事長は、医療法人を代表し、医療法人の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
2項3項略
平成15年4月22日民商第1223号民事局商事課長通知
・社員総会
年に2回、定時社員総会を開催することを想定。
厚生労働省モデル定款例
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135131.html
第17 条 理事長は、定時社員総会を、毎年○回、○月に開催する。
社員総会決議の省略(みなし決議)の規定は法令にない。
社会福祉法人
役員
社会福祉法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000045
(役員の資格等)
第四十四条 第四十条第一項の規定は、役員について準用する。
2 監事は、理事又は当該社会福祉法人の職員を兼ねることができない。
3 理事は六人以上、監事は二人以上でなければならない。
(理事会の権限等)
第四十五条の十三 理事会は、全ての理事で組織する。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。
一 社会福祉法人の業務執行の決定
二 理事の職務の執行の監督
三 理事長の選定及び解職
3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
4項以下略
厚生労働省 社会福祉法人 モデル定款例
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000142657.html
(役員<及び会計監査人>の任期)
第一九条 理事又は監事の任期は、選任後二年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとし、再任を妨げない。
2 理事又は監事は、第一五条に定める定数に足りなくなるときは、任期の満了又は辞任により退任した後も、新たに選任された者が就任するまで、なお理事又は監事としての権利義務を有する。
3 会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、その定時評議員会において別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなす。>
(備考一)
会計監査人を置いていない場合、<>内は不要。
(備考二)
理事の任期は、定款によって短縮することもできる(法第45条)。
法第45条に基づき、補欠理事又は監事の任期を退任した理事又は監事の任期満了時までとする場合には、第1項の次に次の一項を加えること。
2 補欠として選任された理事又は監事の任期は、前任者の任期の満了する時までとすることができる。
理事会議事録
(理事会の運営)
第四十五条の十四
1項から5項略
6 理事会の議事については、厚生労働省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもつて作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した理事長とする旨の定めがある場合にあつては、当該理事長)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
NPO法人
役員
特定非営利活動促進法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=410AC1000000007
第十五条 特定非営利活動法人には、役員として、理事三人以上及び監事一人以上を置かなければならない。
(理事の代表権)
第十六条 理事は、すべて特定非営利活動法人の業務について、特定非営利活動法人を代表する。ただし、定款をもって、その代表権を制限することができる。
登記する資格は、理事。理事長ではない。
労働者協同組合
労働者協同組合法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=502AC1000000078
役員
(役員)
第三十二条 組合に、役員として理事及び監事を置く。
2 理事の定数は三人以上とし、監事の定数は一人以上とする。
3 役員は、定款で定めるところにより、総会において選挙する。ただし、設立当時の役員は、創立総会において選挙する。
4 理事は、組合員でなければならない。ただし、設立当時の理事は、組合員になろうとする者でなければならない。
5 組合員の総数が政令で定める基準を超える組合は、監事のうち一人以上は、次に掲げる要件のいずれにも該当する者でなければならない。
一 当該組合の組合員以外の者であること。
二 その就任の前五年間当該組合の理事若しくは使用人又はその子会社(組合が総株主(総社員を含む。)の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。第六十三条第一項第四号ロにおいて同じ。)の過半数を有する会社をいう。同号において同じ。)の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)、執行役若しくは使用人でなかったこと。
三 当該組合の理事又は重要な使用人の配偶者又は二親等内の親族以外の者であること。
6 理事又は監事のうち、その定数の三分の一を超えるものが欠けたときは、三月以内に補充しなければならない。
(代表理事)
第四十二条 理事会は、理事の中から組合を代表する理事(以下この章及び次章において「代表理事」という。)を選定しなければならない。
2項以下略
機関
(総会の招集)
第五十八条 通常総会は、定款で定めるところにより、毎事業年度一回招集しなければならない。
(総代会)
第七十一条 組合員の総数が二百人を超える組合は、定款で定めるところにより、総会に代わるべき総代会を設けることができる。
(理事会の権限等)
第三十九条 組合は、理事会を置かなければならない。
(理事会の決議)
第四十条
4 組合は、理事が理事会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき理事(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監事が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
・・・理事会のみ、みなし決議可能。
選挙と選任の違い 法令用語研究会編『法律用語辞典』有斐閣、2012年
選挙・・・特定の地位に就くべきものを多数人によって選定する行為及びその手続の総称。通常、投票によって行われる。近代的民主国家では、多くの国家機関を選挙によって選任すべきものとし、かつ、その選挙については、普通、直接、秘密、平等を保障している。国会議員、地方議会の議員及び地方公共団体の長の選挙については公職選挙法が規定する。
選任・・・一般にある人を、ある地位又は任務に就かせること。選挙による場合を含んだ広い意味で用いられる。
投票・・・選挙や採決などに際して、選定や賛否の意思表示としての票を投ずること。公職選挙法上の投票、衆参両議院規則上の投票地方自治法上の議会の解散の請求に関する投票などの制度がある。
選挙は、投票で決める。選定は、選挙を含む色々な方法を使って決める。例えば定款で定める、ある者の提案に対する同意など。
(役員の任期)
第三十六条 理事の任期は、二年以内において定款で定める期間とする。
2 監事の任期は、四年以内において定款で定める期間とする。
3 設立当時の役員の任期は、前二項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。ただし、その期間は、一年を超えてはならない。
4 前三項の規定は、定款によって、これらの規定の任期を任期中の最終の決算期に関する通常総会の終結の時まで伸長することを妨げない。