信託フォーラム[1]の記事、金森健一弁護士「民事信託実務入門第5回―民事信託の標準仕様を備える公正証書と信託口口座(下)―」からです。
金融機関による信託契約書案のチェックポイントについて、FATF第4次対日相互審査報告書に基づくマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策[2]の要請を付け加えたいと思います。
あるべき信託口口座の要件について、著者の記載に同意です。
3,信託口口座の危殆について、多くの金融機関は、信託口口座の出入金について、それが信託財産に属する金銭の入金であるか、出金が信託事務処理に必要なものであるかを確認しない、としています。法人口座で事業用ローンを利用していない場合と同じく、現状の預金契約と信託契約書の事前審査のみでは、金融機関には、そこまで確認する権利や義務もないのではないと考えます。必要性について、信託口口座の入出金について確認を入れたい場合は、信託監督人を設置するか、そこまで気を付けないといけない信託であれば、設定しない方が良いのではないか、と感じました。
信託口口座という名称が口座に記載されれば、倒産隔離機能と呼ばれる一定の効果が当然に生じるといった誤解や、どこまでを金融機関が引き受けるのが明確でないゆえに、リスクが特定できない、という指摘には同意です。
県内では現在、信託口口座の開設に手数料、管理料が必要、とはなっていませんが、今後記事記載のように料金が必要になってくる可能性はあると思います。少なくとも信託契約書の事前審査は、全部審査できる権限がなぜあるのか、という疑問を除いて、金融機関はコストを払っています。
信託口口座について、そのリスクを許容可能な範囲に低減させることが可能となる余地の有無についての検討はまだ十分になされていない、という部分について、法人口座を参考にしていくことが望ましいと思います。
[1] Vol.20、2023年10月、日本加除出版、P131~
[2] 財務省HP
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/councils/aml_cft_policy/index.html