信託フォーラム[1]の金森健一弁護士「第1回民事信託実務入門―業務の始まり―」からです。
そこで、民事信託の利用の入り口となる、民事信託契約書とこれに付随する業務(以下「民事信託セッティング業務」という。)を担う者もフィデュ―シャリーに他ならないとの認識の下に、その実務について論じることとしたい。
この記事では、民事信託セッティング業務という言葉が使われています。同じ信託フォーラムで記事を掲載している渋谷陽一郎先生は、司法書士が民事信託に関する業務を行う場合の名称を、民事信託支援業務[2]としています。この記事と同じ信託フォーラム16号「特集2民事信託をめぐる裁判例の動向」の座談会で、春口剛寛司法書士は「民事信託支援業務」としています。山﨑芳乃司法書士は、「民事信託支援業務」、「信託組成」という用語を使用しています。同じく信託フォーラム16号の高橋宏治「民事信託士協会と地域金融機関との連携について」では、「民事信託に関する業務」としています。また司法書士が民事信託に関する業務を行うことが可能である根拠を、司法書士法施行規則31条第1項第2号としています。
信託が欲しい(さらに、その信託で目的や希望を叶えたい)のであって、信託契約書そのものが欲しいわけではない。契約書を作って登記名義だけを移したいという者も稀にいる(それに呼応するように、名義変更のための登記代理のみを業務内容と考える者もいる)。
個人的な意見ですが、信託が欲しい、というよりは信託をしないことによって被るかもしれない不利益を避けたい、というのが大きいような気がします。そこも信託の目的や希望に入るのかもしれません。「契約書を作って登記名義だけを移したいという者も稀にいる(それに呼応するように、名義変更のための登記代理のみを業務内容と考える者もいる)。」に関しては、初めて知りました。
信託は、他の制度よりも、当事者において高度な意思能力を要求される。
初めて知りました。個別具体的な事案に拠るのだと思います。例えば子が親の依頼に応えて、収益不動産を適切に分別管理してきた場合などは、他の制度、任意後見制度などと同程度の意思能力で足りるのではないかなと思います。
参考:厚生労働省「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html
民事信託契約書の作成業務が「法律事務」(弁護士法3条)に当たることは争いの余地がない。弁護士であれば、依頼者との間で委任契約を締結する。
この文章には、注釈も付いていて、弁護士法72条との関係については検討しないとしています。司法書士は可能でしょうか(司法書士法1条、3条)。
現在の法制上、日本の民事信託の推進及び普及のトップランナーがマネーロンダリング・テロ資金供与リスク対策のループホールとなっている。
犯罪による収益移転防止法4条1項、別表・同法施行規令8条3項9号・同4項6号イロハ、についての言及です。私はこの指摘に関しては、受け止めて早めの対策が必要だと思います。個人として関係省庁に要望は提出しました。ループホールとは、抜け穴・逃げ道のことのようです。
真の、正確、不正確、異なる特殊性、複雑なプロセス、
[1] 16号,2021年10月日本加除出版P97~。
[2] 「民事信託支援業務のための執務指針案100条(8)」市民と法2021年8月130号,民事法研究会,p21~