(あるメールマガジンより)
・認知症になったら、なにができなくなるの?お答えしていきます。認知症になったらできなくなる主な行為は、・預金口座の解約、引出し、送金・不動産の売買や賃貸契約・遺言書の作成・養子縁組・生前贈与・生命保険の加入や保険金の請求・遺産分割協議・株主の場合は議決権の行使などがあげられます。
認知症になったら、というのは医師から認知症の診断を受けた場合のことを指しているのだと思います。認知症の診断を受けたから、上の行為が出来なくなると断言されるのには違和感があります。症状にも色々あり、法律行為を行う場面やそれまでの経緯にも私たちは目を配る必要があると考えるからです。反対に、医師から認知症と診断されていなくても、明らかに理解出来ない行為をしている場合は、他の医師か士業に交代した方が良いと思います。介護職の方なら頷いてくれると思うのですが、依頼者(利用者)との相性というものも、高齢者や障害を持つ方によってはあると考えるからです。
・『認知症になったら口座からお金をおろしたり解約したりできなくなくなるの?』ちょっと様子がおかしいな・・・かかりつけのお医者さまにみてもらったら少し認知症の症状がありますね。と診断されました。「すぐにお金が引き出せなくなるの?」と心配になりますよね。いいえ、すぐにお金が引き出せなくなる状態になる、ということではありません。どの様な段階でお金が引き出せなくなるのでしょうか。こんな『シチュエーション』が多いようです。親御さんが銀行に出向けなくなり、代わって身辺のお手伝いをするご子息や娘様がお金の引き出しに行く事が出てくると想定されます。普段はそれでやっていけるのですが(本来は良いとは言えませんが)カードの磁気不良などで窓口での手続きが必要になることがあります。その時に「口座名義ご本人様が窓口に来てください」となるわけです。ご本人の判断能力が問われ、意思確認ができないと判断された場合、お金がおろせなくなる、「口座凍結」となるのです。
口座凍結になるのでしょうか。私は初めて聞きました。利用目的などを聞かれ、成年後見制度の利用を勧められ、キャッシュカードが発行出来なくなると思っていました。規模の大きい金融機関だとそのような対応になるのかもしれません。判断能力と意思確認は少し違うのではないかなと思います。
クレジットカードの場合はどうでしょうか。家族がサポートセンターに連絡すると、本人様でしょうかと訊かれ、生年月日や住所を答えるように言われます。もし、家族が電話して本人の生年月日や住所を答えた場合はどうなるのでしょう。
オンラインでクレジットカードを無効化して、再発行することも可能なようです(法人カードは、窓口での受付が必要と記載がありました)。
https://www.smbc-card.com/mem/goriyo/lost.jsp
私の利用しているクレジットカードは、サポートセンターに電話連絡しないとクレジットカードの無効化と再発行は出来ませんでした。既にキャッシュカードの再発行も、オンラインでの手続きが可能な金融機関があるのかもしれません。
最近では「オレオレ詐欺」の対策で「70歳以上、又は直近3年間振込をしていない、入出金がない場合はATMでの出金と振込の限度額が20万円となります。利用制限の対象となるお客さまで、ATMでのキャッシュカードによる「お振込」をご希望される場合は、お手数ですがキャッシュカード・ご本人さま確認資料(運転免許証・個人番号カードなど)をお持ちいただき、お近くの当行本支店窓口へご来店ください。」と案内されています。銀行により限度額金額は違ってはいるものの、70歳以上の方の出金、振込には制限が設定されています。お客様の実際のお話しです!!!お母さまの振込手続きを娘様がATMからしたところ、振込限度額制限で振込ができず、窓口で手続きをすることになりました。お母さま名義の口座からの振込でしたので、ご本人様が手続きできない理由などを問われ、次回はお母様(介護施設に入所中)をお連れください。と言われたそうです。
初めて知りましたが、実際にありました。70歳以上の場合で、過去3年間ATMでのキャッシュカードによる振込みがない、または過去1年間、ATMで一度に20万円超のお引出しがないとき、に適用されるようです。
https://www.chibabank.co.jp/safety/attention/attention17.html
また、こんなお客様もいらっしゃいました。入院費用を払える様にと、限度額を毎日続けてキャッシュカードで出金したところ、数日で、「お手続きができません、窓口へお越しください」とATMでのキャッシュカードが使えなくなりました。窓口で本人確認を求められ、ご本人の判断能力がない、と判断された時には、お金がおろせない状態となるのです。もし、口座が凍結してしまった場合どうしたら良いのでしょう。ご本人様が認知症などで判断能力がない場合は、「成年後見人」をつけ、後見人に財産管理をしてもらうほかありません。(この制度については、ブログでお話しします)けれども予防策はあります!!『家族信託』を利用する。または、銀行で取り扱っている認知症に備える『代理出金機能付信託の商品』をつかう。などです。しかしながら、これらはお元気なうちにしかできない対策です。親のお金を親のために使えるようにするために。そのための方法として、「家族信託・実家信託」「任意後見契約」などを提案しています!!
限度額を毎日引き落としていると、金融機関から連絡が来るだろうなというのは、想像が出来ます。口座引き落としか振込み、最近はクレジットカード決済対応の病院もあるので、そのようにした方が良かったのかなと思います。
(他のあるメールマガジンより)・■■ ローンが残る信託不動産 2つの質問
アパートの大家さんの認知症対策。それで、信託を活用することは良くありますよね。ところが、アパートの融資が残っていることも多いですよね。そこで、質問1つめこのアパートローン。信託を設定すると、受託者が当然に債務の返済義務を負うか?答え:No 信託された不動産のアパートローンって信託法21条の2号に該当するか3号に該当するかという問題です。ちょっと条文
信託法第21条次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
(1号 略)2号 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利3号 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
あ、「信託財産責任負担債務」って、簡単にいうと受託者が信託された財産から履行する責任がある債務ってことです。もっともメインなものは、受益者に渡すお金とか。それって、受託者が自分の財布から渡すのではなく、信託されたお金から渡しますよね。話を元に戻します。このアパートローンって、21条2号に該当するなら、信託すれば当然に受託者は返済義務が生じます。3号なら、信託契約書にその旨記載しなければ、受託者に返済義務が生じません。それで答え。アパートローンは3号に該当です。理由は、アパートとこの融資は、直接は結びついていないから。
確かに、融資を受けたお金でアパートを建築したかもしれませんが、でも、融資をしたお金を別に使って、別なところからお金を持ってきて、アパートを建築することもできますよね。たまたま、結びついているように見えるだけ。抵当権もついていますが、それを持って、直接結びついているわけではありません。
2号に該当するものは、・敷金返還債務・マンションの滞納した管理料など
ちなみに、未払いの固定資産税は2号に該当せず3号のようです。理由は・・・すいません。よくわかりません。(苦笑)『条解 信託法』でそのような解説がありますが理由は書いてありません。(わかる人、教えて)と言うことで、アパートローンを受託者が返済できるようにするためには、信託契約書に、その旨記載しなければならないです。「そのローンは、信託財産責任財産とする」という感じで。
「「信託財産責任負担債務」って、簡単にいうと受託者が信託された財産から履行する責任がある債務ってことです。」は誤りで、信託財産と受託者の財産から履行する責任がある債務です(信託法21条)。
「ちなみに、未払いの固定資産税は2号に該当せず3号のようです。理由は・・・すいません。よくわかりません。(苦笑)」。未払いの固定資産税の債務者は、通常委託者(地方税法 第343条)です。信託の設定のために、不動産が委託者から受託者に移転されても滞納している固定資産税に関する徴収権が存続するのは、市区町村が滞納されている固定資産税の存在を受託者に対抗することができるからであり(地方税法 第373条)、また、徴収権が存在していたからといって受託者がその債務を負うわけではないからです。委託者が支払うか、信託法21条1項3号の要件を満たし、信託財産責任負担債務として支払うことになると考えます。
■■ 質問2つめ そのローンは、受託者の口座から返済する?委託者(受益者)の口座から返済する?
「返済は受託者がするのが当然!」と思うかもしれませんが、実は、単純じゃないんです。答え:債権者、つまり銀行と協議ですね。(笑)理由は、委託者と受託者の間では、信託財産責任負担債務となり、受託者が弁済の義務を負いますが、銀行とは、話しが違うからです。3号の場合は、銀行と協議して債務引受が必要です。つまり、受託者が債務引受をすれば、受託者が払い、債務引受をしなければ、これまでどおり、委託者(受益者)が払うことになります。債務引受をして、受託者が払うようにしたこともありますし、銀行と協議をした結果、委託者(受益者)が引き続き払うようにしたこともあります。ホント、銀行次第。
■■ アパートローンがあるときの注意点
委託者は任意後見を設定しておきましょう!これ超大事。なぜか?理由は2つ
理由1つめ
アパートローンって、10年固定金利とか、金利の切り替えがある契約のことが多いです。その時、委託者が認知症だとこの切り替えができなくなってしまいます。そうすると、金利がすごーく上がってしまうことも。これまずいですよね。『免責的』債務引受をしていればいいのですが、受託者だけで、切り替えができますが、それは少数派。通常は債務引受をしたとしても、『重畳的』になることが多いでしょう。そうすると切り替えのときに委託者のハンコが必要です。その時、委託者が認知症だと・・・・ほら、任意後見しておきたいでしょ?(笑)
理由2つめ
そもそも債務引受は不要、と銀行から言われたら、委託者がこれまでどおり返済します。それで委託者が認知症になったら・・・返済ができなくなる。ほら、やっぱり任意後見いるでしょう?(笑)
■■ 利益相反に注意
問題は、親と子で信託する場合で、子が一人のケース。子が受託者であり、任意後見の受任者になってしまいます。つまり利益相反。法的にはかなり問題がありますが、実務上はやらざるを得ないケースも多いです。子供が一人しかいなかったらしょうがない。その場合は、利益相反の規定(信託法31条や民法108条)に注意しながら、信託契約を作成してくださいね。今回は、信託の実務のお話しをしました。最近、試験に合格されて、このメルマガを読み始められた方もいると思います。このように、実務では条文は超重要!ですので、何かあったら条文に戻る癖をつけてくださいね。
債権者からみた場合、受託者と債務者は違うということを考えると、理解しやすいのかなと感じます。
「そもそも債務引受は不要、と銀行から言われたら、委託者がこれまでどおり返済します。それで委託者が認知症になったら・・・返済ができなくなる。ほら、やっぱり任意後見いるでしょう?(笑)」。ここは私には良く分かりませんでした。