信託フォーラムvol.22/2024年10月号

信託フォーラムvol.22、2024年10月号

信託フォーラム2024年10月号、日本加除出版

 特集1令和6年改正公益信託法制/特集2 民事信託をめぐる近時の紛争事例 vol.22

巻頭言 結婚・子育て支援信託制度~「こどもまんなか社会」の実現に向けて~

(こども家庭庁長官官房参事官(総合政策担当)●中原茂仁)

https://www.cfa.go.jp/policies/shoushika/zouyozei

 贈与された資金を、金融機関において18歳以上の子・孫等(受贈者)名義の専用口座により管理し、専用口座から払い出した金銭が結婚・子育て資金に充てられたことを金融機関が領収書等により確認・記録し、保存します。専用口座は、子・孫が 50 歳に達する日などに終了。

対談 社会的弱者の権利擁護と信託の可能性

(日本弁護士連合会会長●渕上玲子× 中央大学研究開発機構教授●新井 誠)

 認知後見制度について、コスト面で課題。信託監督人への就任。信託契約に、福祉的要求を満たす、という条項を入れると、後見の費用を賄える。については分かりませんでした。

特集1 令和6年改正公益信託法制

公益信託に関する法律の改正の概要(内閣府大臣官房公益法人行政担当室企画官●古谷真良/前内閣府大臣官房公益法人

行政担当室参事官補佐●太田道寛/法務省民事局調査員●藤井梨絵/内閣府大臣官房公益法人行政担当室主査●大塚一輝)

 公益信託に関する法律は、信託法1条の他の法令。33条により、信託法の適用関係について規定。4条、8条、6条、12条などにおいて、信託法の特則を規定。手続の流れに沿うという意味で、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律と同様の条文構成。認定許可基準を法律に規定。2026(令和8)年4月に施行予定。

 

公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の一部を改正する法律について(内閣府大臣官房公益法人行政担当室参事官補佐●勝山貴之)

 公益法人information「新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議 最終報告」

https://www.koeki-info.go.jp/regulation/koueki_meeting.html

 中期的な期間における収支相償原則へ。遊休資産から使途不特定財産へ。収益事業等の内容の変更について、届出事項へ。区分経理を義務付けへ。監事の独立性を保つための、法人内における一定の親族関係廃除。

信託業界の視点から見た新しい公益信託法制(一般社団法人信託協会専務理事●川嶋 真)

 公益信託の信託事務及び信託財産の範囲の拡大。公益信託の受託者の範囲の拡大。主務官庁制の廃止・行政庁一本化。

公益信託に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000030/20260521_000000000000000#506AC0000000030-Sp

(旧公益信託の新法の規定による公益信託への移行)

第四条旧法公益信託及び信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十八年法律第百九号。以下「信託法整備法」という。)第二条の規定によりなお従前の例によることとされた信託法整備法第一条の規定による改正前の信託法(大正十一年法律第六十二号。第三項及び附則第八条第二項において「旧信託法」という。)第六十六条に規定する公益信託(以下この項において「旧信託法公益信託」という。)は、移行期間内において、新法第三条に規定する行政庁(以下「行政庁」という。)の認可(以下「移行認可」という。)を受けた場合には、新法第七条第一項に規定する公益信託認可(附則第十二条において「公益信託認可」という。)を受けたものとして新法の規定による公益信託となることができる。この場合において、移行期間内に当該移行認可を受けていない旧法公益信託及び旧信託法公益信託(以下「旧公益信託」という。)は、移行期間が満了する日に終了するものとする。

2項、3項略。

信託会社を利用した公益信託の活用(ふくし信託株式会社・弁護士●清水 晃)

 高齢者や障碍者のための施設を運営するケースにおいて、公益信託を利用した場合の信託会社の役割を想定。

弁護士から見た新しい公益信託法(弁護士●平井信二)

 内閣府令、政令への委任が数多く存在し、規制法的性格が強い。

 弁護士が公益信託の受託者に就任した場合に想定される事業として人権擁護活動支援事業など。信託管理人に弁護士が就任することの意義。

 新しい公益信託税制(東京大学社会科学研究所教授●藤谷武史)

 公益信託が収益事業を行わないことによる税務の簡素化。特定資産公益信託に該当しない公益信託の財務規制。

法人税法(定義)第二条二十九の二

https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034/20250401_505AC0000000021#Mp-Pa_1-Ch_1

法人課税信託 次に掲げる信託(集団投資信託並びに第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託及び同項第二号に規定する特定公益信託等を除く。)をいう。

以下略

新しい公益法人制度・公益信託制度への期待(多摩大学サステナビリティ経営研究所教授・主任研究員●小林立明)

 NPO法人等への寄付、公益法人設立との違い。財産の隔離。信託契約で寄付金の使途や運営について規定可能。受託者を変更することが出来る可能性がある。設立・運営コストが高い。

 人材派遣会社が公益信託の認定を受けることが出来る可能性がある。社会的インパクト評価の専門家関与の必要性。

 特集2 民事信託をめぐる近時の紛争事例

受託者の裁量をめぐる裁判例─東京高裁令和6年2月8日判決(弁護士●志田博文)

 平成29年6月15日、母、遺言作成。母と次女による信託契約1を締結。委託者長女、受託者次女、受益者長女。および信託契約1に基づく登記申請。

 平成29年10月26日、母、死亡。母死亡による信託契約2の委託者を孫とする変更、受益者を孫とする変更登記申請。

 平成29年12月7日、長女と次女との間で、受託者を母と次女とする信託契約2を締結。委託者母、受託者母および次女、受益者母および長女。および信託契約2に基づく登記申請。

 平成30年6月27日、長女が次女に対して、信託契約1の解除による終了と、信託契約1の受託者の解任を通知。

 受益権(信託法2条2項7号)と受託者の裁量(信託法26条)について。

・受託者の信託事務として、

信託金融資産から公租公課、保険料、修繕費その他の必要経費を支払い又は控除した上、受託者が相当と認める額の生活費等を受益者に交付し、受益者の施設利用費、病気療養費等を銀行振り込み等の方法で支払う。また、「受益者の希望に沿った必要な費用」、祭祀に係る費用を支払う。

・受益権の内容として、

 委託者の長女に対する扶養の範囲で受益権を与える。

との記載がある場合。

・賃料収入から、

受益者の施設利用費、病気療養費、信託不動産の管理費、固定資産税等、火災保険料、電気料金及び雑費、受託者報酬、リフォーム代、専門家費用を控除した額の受益者が2人なので、2分の1の額を長女が取得することは認められない。

・理由

 受託者の信託事務・受益権の内容に、生活費等の具体的金額や計算方法、交付時期は明記されていない。

 信託契約の締結後、定期的に賃料収入の一部を、施設利用費、病気療養費を除く生活費等として交付していた事実を認めることが出来ない。

 受託者には、信託不動産の修繕等に備えて、賃料収入を留保する裁量が認められる。

・感想

受益権について具体的に明記していない場合、給付の事実がなければ、受託者の裁量が認められる可能性が高い。信託の目的などから総合的に判断して認められる、という可能性は低い。

・対応

 受益権について、給付される最低額や具体的な算定方法を定める。

 

民事信託において委託者兼受益者による受託者の解任が認められなかった事案 ─ 東京地裁令和5年3月17日判決(弁護士●金子順一)

平成28年11月、信託契約締結。委託者父、受託者次男、受益者父。残余財産の帰属権利者次男。

(信託の変更、終了に関する規定)受益者は受託者との合意により、本件信託契約の内容を変更し、若しくは本件信託を一部解除し、又は終了することができる。

令和3年9月、受益者父から受託者次男に対して、信託財産に関する目録や帳簿の開示、未精算賃料全額の支払い、今後は毎月の賃料収入から必要経費を控除した残額の給付を請求。

令和3年10月、令和3年9月の請求に受託者次男が応じなかったため、受益者父から受託者次男に対して、受託者を解任する意思表示。

令和3年10月、受益者父の配偶者が新しい受託者に就任する意思表示。

(争点)

受託者次男の解任は有効か。

(結論)

有効ではない。

(理由)

 信託の終了に制限をかけているから。信託の終了を受益者が任意に出来ない場合に、任意に受託者を解任することが出来ると、信託の終了と同様の形を作り出すことができる。例えば、受託者を交代して、新しい受託者との合意により信託を終了することができる。

 また、受託者は無報酬であり、残余財産の帰属権利者に指定されているので、受益者の任意で受託者の解任を認める信託と認めるのは難しい。

 だから、信託の受託者の解任にも制限を付けた(信託法58条3項)と解釈するのが相当。

(対応)

 受託者の解任について、信託行為に規定を置く。

信託財産の追加時における委託者の意思内容及び意思能力の有無が問題となった事例 ─ 横浜地裁令和5年12月15日判決(東洋大学法学部准教授●根岸 謙)

平成19年9月30日、信託契約締結。委託者X、受託者Xの弟、受益者X。

(追加信託に関する条項)

 Xの配偶者死亡によりXが相続人となった場合は、受託者Xの弟がXに代わって遺産分割協議を行うことが可能。取得した遺産について管理処分する権限を持つ。

平成22年3月30日、公正証書遺言作成。遺言者X、受遺者はXの姪。

令和2年5月、Xの配偶者死亡。

令和2年9月28日、Xの配偶者名義の不動産について、Xに対する所有権移転登記。

令和2年10月9日、Xについて後見開始の審判確定。

令和2年10月19日、信託を原因として、受託者Xの弟に対する所有権移転登記及び信託登記。

令和2年12月28日、Xの成年後見人が、受託者Xの弟に対して、信託契約の解除及び所有権移転及び信託登記抹消の意思表示。

令和3年1月7日、Xが自筆証書遺言作成。受遺者はXの弟。

令和3年4月、X死亡。平成23年3月30日付公正証書遺言に基づく遺言執行者就任。

(結論)

令和2年10月19日、信託を原因として、受託者Xの弟に対する所有権移転登記及び信託登記の抹消について。・・・認められる。

(理由)

・信託契約書に、信託する旨の文言がない。

・信託契約書作成後、Xの弟が受託者として信託事務を具体的に行っていたことが認められない。

・平成22年3月30日付の公正証書遺言で、受遺者はXの姪としていることと整合性が取れない。

(論点)

・平成22年3月30日付の公正証書遺言がなく、信託契約書に、Xの配偶者が死亡しXが相続した不動産は、信託財産たる不動産とする。受託者Xの弟は、Xが相続により取得した不動産について、所有権移転及び信託登記を行う。と記載されていた場合、信託法149条4項に基づく追加信託として有効か。

民事信託に関する裁判外紛争(弁護士●伊庭 潔)

 信託設定後に親族間の関係が悪化したケース。追加信託の際に書面を作成しなかったケース。第二次受益者に対して十分な給付が行われないケース。借地上の建物を信託する場合。

P79、受託者が無償で信託の引受けを行っているのであれば、信託業に該当せず受託者になることは信託業法に違反しない。について・・・無償であっても反復継続して信託の引受けを行う場合、信託業法2条に違反します(小出 卓哉『逐条解説信託業法』2008年、清文社、P17)。

白鳥教授の投資信託研究入門 第22回(一般社団法人投資信託協会●青山直子)

 1,月々に投資できる額や投資期間、目標とする資産額のイメージ。

 2.期待リターンとリスクの設定。

 3.設定に合う投資対象があるか探してみる。

家族信託への招待 第22回(弁護士●遠藤英嗣)

 現状、裁判所の考えは、信託が信託契約によって設定された場合、その契約性を重視され、新任関係破壊の法理はまだ確立されていない。

P123、信託行為に信託が途中で終了したときの残余財産の帰属者を終了時の受益者とする定めがないことが多く、結果信託が終了しても信託財産は信託設定者には戻ってこないのである。について・・・そのような状況であることについて知りませんでした。

信託と税金 no.22(税理士●菅野真美)

消費税法

https://laws.e-gov.go.jp/law/363AC0000000108#Mp-Ch_1-At_14

(信託財産に係る資産の譲渡等の帰属)

第十四条信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る。)は当該信託の信託財産に属する資産を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に係る資産等取引(資産の譲渡等、課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りをいう。以下この項及び次条第一項において同じ。)は当該受益者の資産等取引とみなして、この法律の規定を適用する。ただし、法人税法第二条第二十九号(定義)に規定する集団投資信託、同条第二十九号の二に規定する法人課税信託又は同法第十二条第四項第一号(信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属)に規定する退職年金等信託若しくは同項第二号に規定する特定公益信託等の信託財産に属する資産及び当該信託財産に係る資産等取引については、この限りでない。

2項、3項略。

民事信託と登記 第13回(渋谷陽一郎)

登記研究915号P139、令和6年1月10日法務省民二第17号法務省民事局民事第二課長通知「信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記の可否について」

 受益者変更登記を、受託者が報告形式の登記原因証明情報を提供して単独で申請するための要件。

 受益者変更登記を受託者が申請する義務の有無。

ここからはじめる! 民事信託実務入門 第7回(弁護士●金森健一)

 信託契約の効力発生要件を、債権契約の構成にするか、要物契約の構成にするか。

■信託のひろば

事業性融資の推進等に関する法律について─企業価値担保権に係る信託に関する規律を中心に

(金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室課長補佐●水谷登美男)

(森・濱田松本法律事務所 弁護士・NY州弁護士(元・金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室課長補佐)●飯島隆博)

(金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室課長補佐●五十嵐一裕)

事業性融資の推進等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/506AC0000000052/20280613_000000000000000#Mp-Ch_3-Se_1

6条3項

3 この章及び次章において「企業価値担保権信託契約」とは、債務者と企業価値担保権信託会社との間で締結される信託契約であって、債務者を委託者とし、企業価値担保権信託会社を受託者とするものをいう。

(登記)

第十五条企業価値担保権の得喪及び変更は、債務者の本店の所在地において、商業登記簿にその登記をしなければ、その効力を生じない。ただし、一般承継、混同又は特定被担保債権の消滅による得喪及び変更については、この限りでない。

(他の権利との関係)

第十八条債務者の財産の上に存する先取特権(民法第三百二十五条に規定する先取特権(同条第三号に係るものに限る。)に限る。)、質権又は抵当権(以下この款において「他の担保権」という。)と企業価値担保権とが競合する場合には、それらの優先権の順位は、他の担保権に係る登記、登録その他の対抗要件の具備と企業価値担保権に係る登記の前後による。

2項以下略

 担保付社債信託法が適用される場合の適用除外について、225条。

 担保権の実行、換価は事情譲渡等によってすることについて、157条。

■論 説 家族信託と専門職の在り方─ 台湾(中華民国)との比較を通じて

( 大阪経済大学経営学部ビジネス法学科教授●橋谷聡一)

台湾(中華民国)民法

https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=B0000001

金融監督管理委員會 信託2.0

https://www.fsc.gov.tw/ch/home.jsp?id=834&parentpath=0,2,310

中華民國信託業商業同業公會 我國辦理家族信託模式建議與架構分析

https://www.trust.org.tw/tw/research?page=2

家族信託規劃顧問師という資格がある。国家資格ではない。72時間の授業。

https://web.tabf.org.tw/page/1110615

高齡金融規劃顧問師における地政士の言及。

https://web.tabf.org.tw/page/1100317

P92、民事信託士検定を行っている。対象は弁護士・司法書士である。―中略―弁護士会、司法書士会、行政書士会に所属する者を対象としている。について・・・行政書士会の位置付けが分かりませんでした。

■ガバナンスの潮流

紅麹健康被害問題におけるコーポレート・ガバナンスの冤罪─「死体蹴り」や「目くらまし」からの脱却

(一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻教授●得津 晶)

2024年7月23日 小林製薬株式会社 事実検証委員会の調査報告を踏まえた取締役会の総括について

https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2024/20240723_01

 各規定に整合性が取れていない部分があること。経営者の業績評価の必要性。

■信託事例紹介

若年者の民事信託(弁護士 田中智芳)

委託者兼受益者は、成人後数カ月を経過したA。受託者は叔母。信託監督人は未成年後見人であった弁護士。

(信託の目的)

 詐欺被害、浪費の予防

 Aが一定の年齢に達するまで、またはAの財産承継者が現れるまで(Aが結婚するなど。)

(信託財産)

委託者兼受益者の父母が遺した遺産。不動産は信託契約前に換価。

(信託財産の管理方法)

投資信託・・・現状維持。

金銭・・・大学生活に必要なお金は信託財産たる金銭に含めず、Aに渡し、残りを信託財産として、不足した時に随時給付。

預貯金口座の解約要件・・・受託者の同意。

(追加信託)

 信託監督人の意見を参考にして、数年ごとにAと受託者Bが協議。

(信託の終了事由)

 Aが死亡したとき。

 Aが婚姻したとき。

 Aが25歳になったとき。

 Aが紺養子縁組したとき。

 Aが婚姻前にこどもができたとき。

(残余財産の帰属権利者)

 Bと親戚1名。

■民事信託の最新動向

民事信託士検定10期を迎えて─ 軌跡と展望

(一般社団法人民事信託推進センター代表理事・民事信託士検定委員長・司法書士●押井 崇)

 信託会社を受託者とする選択肢。

 P111、極論ではあるが、民事信託は、財産管理、財産承継に関し、どのような事例においても採用することが可能である。について・・・どのような文脈なのか分かりませんが、疑問です。

PAGE TOP