登記研究929号(令和7年7月号)
【論説・解説】■民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(所有権の登記の登記事項の追加関係)(3・完)
東京地方裁判所判事(前法務省民事局付) 森 下 宏 輝、法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之、法務省民事局商事課補佐官(前法務省民事局民事第二課補佐官) 太 田 裕 介
第3 施行通達の解説
○第2部 所有権の登記の登記事項の追加に関する事務の取扱い
○第6 経過措置
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00589.html
令和6年4月1日より前に所有権の登記名義人となっている法人についても、職権で、会社法人等番号を登記することができる。
■公益信託に関する法律の解説
法務省民事局参事官
(前内閣府大臣官房公益法人行政担当室企画官) 古 谷 真 良、法務省民事局民事第二課補佐官(前内閣府大臣官房公益法人行政担当室参事官補佐) 太 田 道 寛、元調査員 藤 井 梨 絵
第1 はじめに
第2 公益信託制度の現状
第3 旧公益信託法改正に至る経緯
1 信託法改正等の経過
平成18年信託法改正時には、公益法人制度の全面的な見直し作業が並行して進んでいたため、実質的な改正は行われなかった。
2 公益法人制度改正の経過
3 旧公益信託法に係る法制審議会等の経過
内閣府 新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議
https://www.koeki-info.go.jp/regulations/4j6ctnyjht.html
4 令和6年通常国会における公益二法の改正法案の成立
第4 新公益信託法の概要
1 公益信託制度改革の文脈と改正のポイント
平成18年改正は行政改革の一環。令和6年改正は経済政策の一環。
2 主務官庁制の廃止と公益法人と共通の行政庁による認可・監督制等の創設
3 公益信託の受託者の範囲の拡大
4 公益信託の公益信託事務及び信託財産の範囲の拡大等
第5 今後の見通し等
■ポイント解説 基礎から考える商業登記実務(第10回)
東京法務局民事行政部第一法人登記部門首席登記官 山 森 航 太
ポイント: 株式会社の役員等及び代表取締役の重任による変更の登記について(その1)
1 はじめに
2 役員等及び代表取締役の重任による変更の登記を理解するための基本的な事項
取締役と代表取締役の地位が分化している場合→取締役会の決議によって選定された代表取締役、定款の定めに基づく取締役の互選によって定められた代表取締役。
取締役と代表取締役の地位が一体化している場合→定款で定めた代表取締役、株主総会の決議によって選任された代表取締役。
登記研究188号P64、昭和38年5月18日民事甲第1356号民事局長回答二七一四「取締役及び監査役の任期満了による退任の日並びに株主総会の延期続行について」
任期が特定の定時株主総会の終結の時までと定められている役員等について、当該定時株主総会が所定の時期に開催されなかった場合の役員等の任期満了退任日。
定款で代表取締役を定める場合は、定款変更決議。
株主総会が定時株主総会であるか、判断する基準。定時株主総会を招集すべき時期に招集された株主総会を定時株主総会とする招集時期説、定時株主総会において確定・承認等しなければならない計算書類等の承認等が議題となっている株主総会を定時株主総会とする議題内容説がある。実務は、定時株主総会を招集すべき時期に招集され、計算書類等の承認などが議題となっていることを要するとして取り扱われている。
著者の考えは、定時株主総会議事録に計算書類等の承認等が記載・記録されていない場合であっても、このことが直ちに却下事由(商業登記法24条)に該当しない。
会社法上、重任という文言はない。
登記研究333号P73、1975年8月20日質疑・応答五一八〇「株式会社の役員の変更登記における重任の概念について」
登記研究453号P126、1985年10月30日改正司法書士法土地家屋調査士法関係特集号 質疑応答六六一七「代表取締役の重任の登記」
登記研究832号P175、2017年6月30日【質疑応答】〔7986〕「代表取締役の「重任」について」
3 役員等の任期の満了時=重任の年月日の判断
登記記録の役員区、「役員に関する事項」に記録されている就任(重任)年月日、定時株主総会議事録の議事の経過の要領のうち、計算書類等の承認等の議案中、事業年度の初日及び末日の記載、末日に3か月を足す。公開会社か否かの確認。
松井信憲『商業登記ハンドブック〔第5版〕』2025商事法務P425、厳密には、任期の起算点である選任時を明らかにするための株主総会議事録も必要かに思われるが、通常、選任時から就任時までの時間が近接していることから、登記実務上、原則として、選任に係る議事録の添付を要しないものとして取り扱われている。
登記記録の役員等の就任の年月日及び登記の申請書の添付書面である定時株主総会の議事録の記載内容が想定される役員等の任期の満了時と矛盾しないこと。
4 役員等及び代表取締役の重任による変更の登記を審査する際に登記記録の内容から確認すべき事項
公開会社か否か。大会社か否か。
登記研究698号P73、平成18年3月31日民商第782号民事局長通達 「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」・・・事業年度の途中で大会社に該当、該当しなくなる場合はない。
■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第134回)
一般社団法人商業登記倶楽部 最高顧問・名誉主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、日本司法書士会連合会顧問 神 﨑 満治郎
255 医療法人の主たる事務所移転の決議機関について
定款変更の社員総会決議で、具体的な移転場所・時期を決議した場合の理事会決議の要否。定款の定めの要否。
医療法
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205#Mp-Ch_6-Se_2
第四十四条 医療法人は、その主たる事務所の所在地の都道府県知事(以下この章(第三項及び第六十六条の三を除く。)において単に「都道府県知事」という。)の認可を受けなければ、これを設立することができない。
2 医療法人を設立しようとする者は、定款又は寄附行為をもつて、少なくとも次に掲げる事項を定めなければならない。
一 目的
二 名称
三 その開設しようとする病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(地方自治法第二百四十四条の二第三項に規定する指定管理者として管理しようとする公の施設である病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を含む。)の名称及び開設場所
四 事務所の所在地
五 資産及び会計に関する規定
六 役員に関する規定
七 理事会に関する規定
八 社団たる医療法人にあつては、社員総会及び社員たる資格の得喪に関する規定
九 財団たる医療法人にあつては、評議員会及び評議員に関する規定
十 解散に関する規定
十一 定款又は寄附行為の変更に関する規定
十二 公告の方法
3項以下略。
■逐条解説不動産登記規則(58)
元法務省民事局民事第二課地図企画官 小宮山 秀 史
第108条 分合筆の登記
(分合筆の登記)
第百八条 登記官は、甲土地の一部を分筆して、これを乙土地に合筆する場合において、分筆の登記及び合筆の登記をするときは、乙土地の登記記録の表題部に、合筆後の土地の表題部の登記事項、何番の土地の一部を合併した旨及び従前の土地の表題部の登記事項の変更部分を抹消する記号を記録しなければならない。この場合には、第百六条の規定は、適用しない。
2 登記官は、前項に規定する登記をするときは、甲土地の登記記録の表題部に、残余部分の土地の表題部の登記事項、何番の土地に一部を合併した旨及び従前の土地の表題部の登記事項の変更部分を抹消する記号を記録しなければならない。この場合には、第百一条第一項及び第二項の規定は、適用しない。
3 第百二条第一項(承役地についてする地役権の登記に係る部分に限る。)、第百三条、第百四条及び前条の規定は、第一項の場合について準用する。
分筆の登記と合筆の登記を1回の申請で行う具体的手続の定め。地積欄と原因及びその日付欄。不動産登記規則(合筆の登記における権利部の記録方法)第百七条1項5号の信託に関する登記の準用。
■旧民法の相続と相続適格者の認定(3・完)
横浜地方法務局戸籍課 大 野 正 雄
第2 相続適格者の認定
1 被相続人・相続人の戸籍調査の基準
法定の推定家督相続人がある場合において、家督相続開始後。
家督相続後の新戸籍の本籍の表示と登記簿上の被相続人の住所の表示が異なるとき。
家督相続の開始原因が死亡以外の隠居その他の場合。
遺産相続の場合。
2 旧法当時の継親子関係、嫡母庶子関係
3 旧法当時の相続順位等
登記研究136号P38、昭和34年1月29日民事甲第150号民事局長回答「家督相続による所有権移転登記について」
4 旧法当時の廃家
戸主権の移転。
5 旧法当時の絶家
戸主に遺産があるか否か。
登記研究127号P38、昭和33年5月12日民事甲第950号民事局長心得回答「民法附則第二十五條第二項による相続の登記の可否等について」
6 旧法と新法に関連した相続特例等
登記研究844号P133、昭和24年2月4日民事甲第3876号民事局長回答「戸籍事務の取扱方に関する件」
登記研究35号P30、昭和25年10月7日民事甲第2682号民事局長回答
登記研究35号P30、昭和23年6月9日民事甲第1663号民事局長回答
【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(21・完)
登記研究623号P127、平成10年10月22日法務省民四第2050号民事局長通達「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて」
登記研究666号P198、平成14年12月13日法務省民商第2968号民事局商事課長通知「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部改正に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」
登記研究681号P131、平成16年4月28日法務省民商第1325号民事局商事課長通知「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」
投資事業有限責任組合への名称変更。
登記研究685号P224、平成16年11月24日法務省民商第3297号民事局商事課長通知「証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う投資事業有限責任組合契約の登記に関する事務の取扱いについて」
組合員の人数制限廃止等に伴う取扱い変更。
登記研究668号P44、平成15年2月18日法務省民商第467号民事局商事課長依命通知「中小企業等投資事業有限責任組合契約に係る変更の登記について」
登記申請時の添付情報。
登記研究616号P118、平成10年11月27日法務省民四第2278号民事局長通達「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて」
登記研究809号P151、平成26年11月21日法務省民商第103号民事局商事課長通知「投資信託及び投資法人に関する法律の一部改正に伴う投資法人の登記事務の取扱いについて」
合併の登記における改正など。
登記研究730号P145、平成20年8月25日法務省民商第2307号民事局商事課長通知「投資法人の解散時における監督役員の登記の抹消について」
登記の職権抹消。
登記研究615号P217、平成10年8月31日法務省民四第1606号民事局長通達「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の施行に伴う登記事務の取扱いについて」
特定目的会社制度の創設に伴う登記事務処理。
登記研究732号P96、平成20年3月21日法務省民商第1008号民事局商事課長通知「公認会計士法等の一部を改正する法律の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」
有限責任形態の監査法人の創設等に伴う登記事務処理。
登記研究571号P117、平成7年3月28日法務省民四第2628号民事局第四課長通知「監査法人の社員変更登記の記載方法について」
定款に代表社員を置く旨の定めがある監査法人について。
登記研究639号P149、平成12年11月6日法務省民四第2519号民事局第四課長通知「弁理士法等の施行に伴う登記事務の取扱いについて」
税理士法人制度の創設に伴う登記事務処理。
登記研究681号P254、2004年10月30日〔七八〇一〕「税理士法人の社員の変更登記について」
社員のうち、代表権のない社員に代表権を付与し、全員が代表権を持つことになった場合の表示と原因欄の記載。
登記研究663号P157、平成14年3月25日法務省民商第717号民事局商事課長通知「弁護士法の一部を改正する法律等の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」
弁護士法人制度の創設に伴う登記事務処理。
登記研究822号P175、平成28年2月9日法務省民商第17号民事局商事課長通知「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の一部を改正する法律等の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」
外国法事務弁護士法人制度の創設に伴う登記事務処理。
登記研究202号P60、昭和39年8月15日民事甲第2860号民事局長回答「特殊法人登記令に基づく資産の総額の解釈について」
資産から負債を差し引いた純資産。
登記研究838号P133、2017年12月30日【質疑応答】〔7990〕「理事長の「重任」について」
理事の重任の日と同日に開催した理事会で、それまでの理事長が理事長として選定され就任承諾した場合。
登記研究810号P33、2015年8月30日南野 雅司:法務省民事局総務課法規第二係長(前法務省民事局商事課法規係長)、三浦 富士雄:法務省民事局民事法制管理官付法制第一係主任(前法務省民事局商事課法規係主任) 【論説・解説】「各種の法人における代表権を有する理事の選任又は選定の方法並びにこれを証する書面について」
【法 令】会社計算規則の一部を改正する省令(令和7年3月31日法務省令第14号)
【質疑応答】▽不動産登記関係〔8012〕所有者不明土地管理人の分筆の登記の申請と添付情報
分筆の登記申請時の代理権限証明情報には、裁判所の許可書不要。所有者不明土地の性質を変えるものではないから(民法264条の3第2項第2号)。