民事信託に関する問いかけ

・帳簿と財産状況開示資料(信託法37条)は違うのか?

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

信託法(帳簿等の作成等、報告及び保存の義務)

第三十七条 受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

2 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。

3 受託者は、前項の書類又は電磁的記録を作成したときは、その内容について受益者(信託管理人が現に存する場合にあっては、信託管理人)に報告しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 受託者は、第一項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、その作成の日から十年間(当該期間内に信託の清算の結了があったときは、その日までの間。次項において同じ。)、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、受益者(二人以上の受益者が現に存する場合にあってはそのすべての受益者、信託管理人が現に存する場合にあっては信託管理人。第六項ただし書において同じ。)に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

5 受託者は、信託財産に属する財産の処分に係る契約書その他の信託事務の処理に関する書類又は電磁的記録を作成し、又は取得した場合には、その作成又は取得の日から十年間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

6 受託者は、第二項の書類又は電磁的記録を作成した場合には、信託の清算の結了の日までの間、当該書類(当該書類に代えて電磁的記録を法務省令で定める方法により作成した場合にあっては、当該電磁的記録)又は電磁的記録(当該電磁的記録に代えて書面を作成した場合にあっては、当該書面)を保存しなければならない。ただし、その作成の日から十年間を経過した後において、受益者に対し、当該書類若しくはその写しを交付し、又は当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により提供したときは、この限りでない。

信託法施行規則

第八章 計算

第三十三条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定めるべき事項は、信託計算規則の定めるところによる。

一 法第三十七条第一項及び第二項

二 法第二百二十二条第二項、第三項及び第四項

三 法第二百二十五条

四 法第二百五十二条第一項

信託計算規則

(信託帳簿等の作成)

第四条 法第三十七条第一項の規定による信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録(以下この条及び次条において「信託帳簿」という。)の作成及び法第三十七条第二項の規定による同項の書類又は電磁的記録の作成については、この条に定めるところによる。

2 信託帳簿は、一の書面その他の資料として作成することを要せず、他の目的で作成された書類又は電磁的記録をもって信託帳簿とすることができる。

3 法第三十七条第二項に規定する法務省令で定める書類又は電磁的記録は、この条の規定により作成される財産状況開示資料とする。

4 財産状況開示資料は、信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の概況を明らかにするものでなければならない。

5 財産状況開示資料は、信託帳簿に基づいて作成しなければならない。

6 信託帳簿又は財産状況開示資料の作成に当たっては、信託行為の趣旨をしん酌しなければならない。

(会計帳簿等を作成すべき信託の特例)

第五条 前条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する信託については、法第二百二十二条第二項の会計帳簿を受託者が作成すべき信託帳簿とし、同条第四項の規定により作成すべき書類又は電磁的記録を受託者が作成すべき財産状況開示資料とする。

一 当該信託の受益権(二以上の受益権がある場合にあっては、そのすべての受益権)について法第九十三条第一項ただし書の規定の適用がなく、かつ、当該受益権について譲渡の制限がないこと。

二 第三者の同意又は承諾を得ることなく信託財産に属する財産のうち主要なものの売却若しくは信託財産に属する財産の全部若しくは大部分の売却又はこれらに準ずる行為を行う権限を当該信託の受託者が信託行為によって有していること。

2 前条の規定にかかわらず、前項に規定する信託においては、信託帳簿及び財産状況開示資料の作成は、次章(第二十条及び第三節を除く。)の規定に従って行わなければならない。

以前受けた質問と回答を再掲します。この回答に関しての質問です。

・一般社団法人が解散した場合の、保留利益は社員や設立者に帰属しないので相続税の対象外になるとは?

相続税の関係については、最終的に税理士の判断を仰ぎます。一般社団法人が解散した後の残余財産の帰属先については、非営利型でない限り、解散後に清算法人の社員総会で定めることが出来ます。

・他の専門家に聞いたが、一般社団法人の設立は、法改正によって相続税対策にならないし、税理士が必要になり、かえって費用がかかるか?

 上の質問のうち、「法改正によって相続税対策にならないし」の部分は、一般社団法人が財産の所有者になった場合に関してです。信託の受託者になる場合とは関係がありません。「税理士が必要になり、かえって費用がかかるか」については、一般社団法人を設立するか、信託を設定するかと税理士が必要かとは関係がありません。税について安心して業務を行いたい場合は、専門家である税理士に依頼するのが良いと思います。反対に自分でやるという場合は、法人を設立しても信託を設定しても、税務署に聞いたり調べたりしながら自分でやれば良いと思います。

国税庁 No.4143 特定の一般社団法人等に対する課税

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4143.htm

・(受託者の信託事務)として、「信託不動産の売却代金を管理し、受益者の生活費、医療費及び介護費用等に充てるために支出すること」は可能か。

 上の記載だと、信託不動産の売却が前提となっています。私なら信託不動産の売却が確実な場合以外は、このような記載はしません。受託者の信託事務として、信託不動産の管理方法に売却することが出来る、信託金銭の管理方法に受益者の生活費、医療費及び介護費用と分けて書くと思います。

・信託監督人・受益者代理人に、受託者の配偶者、子、兄弟姉妹が就任することに問題はないか。

 民法850条、任意後見契約に関する法律5条が根拠として考えられているようです。私は少し分かりませんでした。各信託ごとに構成出来るのか良いのかなと思います。士業の考え方に近すぎないかなというのが正直な感想です。信託監督人、受益者代理人という言葉は堅いので、士業など専門家が就任してもらうと安心出来る、という側面もあると思うのでそれは否定しません。ただ、多くの民事信託において、信託監督人が必要か、受益者代理人が必要かは少し考える必要があると思います。私は、信託監督人・受益者代理人を置くことが出来ることと、具体的な選任方法は信託行為に記載しますが、信託設定時にはほとんど置いていません。

民法

(後見監督人の欠格事由)

第八百五十条 後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない。

任意後見契約に関する法律

(任意後見監督人の欠格事由)

第五条 任意後見受任者又は任意後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、任意後見監督人となることができない。

・受託者に法律上、会計上、税法上の義務を理解させるとは、どの程度のことをいうのか?

 民事信託を支援する専門家には、受託者に法律上、会計上、税法上の義務を理解させなければならない、と言われましたが、どの程度なのでしょうか。完全に理解することはおそらく専門家でも出来ません。少なくとも私はそのような専門家を知りません。

 受託者の義務について、どんな時に義務が発生するか、そのとき何処に、誰に頼めば良いのかの窓口になることが必要だと思います。そして、それは信託設定時に全て出来ることではなく、受託者としての事務をこなしながらじゃないと出来ないのではないかと思います。

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