株式会社スマートラウンド×BAMBOO INCUBATOR「スタートアップ向けモデル原始定款」

株式会社スマートラウンド×BAMBOO INCUBATOR「スタートアップ向けモデル原始定款」

株式会社スマートラウンド

https://jp.smartround.com/corporate/news/posts/4sZpHU4R

BAMBOO INCUBATOR

https://bambooincubator.jp/template/startup/aoi

日本公証人連合会の定款記載例の中の、中小規模の会社(Small and Medium-Sized Company)を中心に比較してみたいと思います。

前提

想定しているスタートアップ

●       資本金:100万円

●       ビジネスモデル:IT・ソフトウェア(SaaSやメディア、アプリなど)

●       exit目標:5年以内のIPOを目指す

●       資本金と連動するような許認可の取得予定:なし

●       取締役会:非設置

電子定款として作成することを前提。

定款

株式会社●●●●

株式会社●●●●定款

第1章         総     則

(公告方法)

第4条  当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う。

説明

「電子公告」にすることでコストは抑えられるものの、新規性のあるビジネスを展開するスタートアップにおいて競合対策として開示範囲を狭めることが重要であるため、開示範囲が限定的な官報とすることを推奨する。

第2章         株     式

(発行可能株式総数)

第5条  当会社の発行可能株式総数は、1億株とする。

説明

設立時の発行済株式総数の100倍程度あれば十分であるため、後述の通り1株あたりの価額を1円とし、「前提」記載の通り資本金100万円程度であれば、1億株とすることを推奨する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」

(発行可能株式総数)

第5条 当会社の発行可能株式総数は、1万株とする。

(株式の譲渡制限)

第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、株主総会の承認を受けなければならない。

説明

「当会社」とした場合、起業家が譲渡承認機関を誤解して誤った判断をするリスクがある。「当会社」とすることで取締役会設置会社となった際の変更コストを節約できるものの、2~3万円程度にすぎず、誤判断を防止することを優先すべきであるため、「株主総会」とすることを推奨する。

「代表取締役」とすることも可能だが、法的に疑義ありとする見解もある。

 譲渡承認機関を当会社とするのは、会社法の条文通りに規定した場合(会社法107条2項)。譲渡承認機関を代表取締役とすることについて、法的に疑義ありとする見解について、江頭憲治郎『株式会社法〔第8版〕』2021年、有斐閣、P240、齋藤雅代「株式の譲渡制限の定めがある場合の譲渡の承認について」など。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」、「小規模な会社」。

(株式の譲渡制限)

第7条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合には、承認をしたものとみなす。

(相続人等に対する売渡請求)

第8条 当会社は、相続、合併その他の一般承継により当会社の譲渡制限の付された株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

説明

創業者が死亡し、かつ相続人間で権利行使者が決められずデッドロックになることを避けるために含めることが望ましい。なお創業株主間契約でカバーすることも可能だが、創業株主間契約の締結を失念することも多いため、原始定款に含めることを推奨する。

(特定の株主からの自己株式の取得)

第14条 当会社は、会社法第160条第1項の規定による決定をするときは、同条第2項及び第3項の規定を適用しない。

推奨値

特定の株主からの自己株式の取得(会社法第156条・第160条1項)につき、他の株主が自ら保有する株式も含めて取得するよう請求できる(同第160条2項3項)規定を適用しない旨(同第164条)を、原始定款にて定める。

説明

ある株主に問題が発生して発行体が株式を買い取る場合、本条項を定めないと、他の株主が便乗して買取請求することができてしまう。この問題を回避し、問題のある株主からの買取をスムーズに進めるため、本条のように定めることを推奨する。

会社法

(特定の株主からの取得に関する定款の定め)

第百六十四条 株式会社は、株式(種類株式発行会社にあっては、ある種類の株式。次項において同じ。)の取得について第百六十条第一項の規定による決定をするときは同条第二項及び第三項の規定を適用しない旨を定款で定めることができる。

2 株式の発行後に定款を変更して当該株式について前項の規定による定款の定めを設け、又は当該定めについての定款の変更(同項の定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該株式を有する株主全員の同意を得なければならない。

(募集株式の割当ての決定又は総数引受契約の承認)

第15条 当会社は、会社法第204条第2項本文の定めにかかわらず、募集株式が譲渡制限株式であるときは、その申込者に対する割当てを、取締役の決定(取締役が2名以上ある場合は取締役の過半数による決定。本条において以下同じ。)により定める。

2 当会社は、会社法205条第2項本文の定めにかかわらず、募集株式が譲渡制限株式であるときは、その総数引受契約を取締役の決定により承認する。

推奨値

募集株式が譲渡制限株式であるときの割当て又は総数引受契約を、株主総会の決議を要しないように原始定款にて定める。

説明

募集事項の決定を取締役に委任した場合(会社法第200条)でも、会社法のデフォルトルールでは、募集株式の割当ては株主総会の決議による。

このデフォルトルールのままだと、株主総会を開催する手間がかかり、迅速に募集株式の発行をすることができない。

そこで、本条のように、募集株式の割当てを取締役が決定できるようにすることを推奨する(会社法204条2項ただし書き)。※募集株式が譲渡制限株式である場合の総数引受契約(会社法第205条)も同様

第3章 株主総会

(招集通知)

第17条  株主総会を招集するには、会日の3日前までに、書面投票又は電子投票を認める場合は2週間前までに、議決権を行使することができる各株主に対して招集通知を発するものとする。ただし、議決権を行使することができる株主全員の同意があるときは、書面投票又は電子投票を認める場合を除き、招集の手続を経ることなく開催することができる。

説明

招集通知の発出から会日までの期間が長すぎるとスタートアップの機動性を害する。ただし短すぎると株主の対応時間が十分に取れない懸念があり、バランスを取って3日前とすることを推奨する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(招集通知)

第16条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の5日前までに発する。ただし、書面投票又は電子投票を認める場合には、会日の2週間前までに発するものとする。

2 前項の規定にかかわらず、株主総会は、その総会において議決権を行使することができる株主の全員の同意があるときは、書面投票又は電子投票を認める場合を除き、招集の手続を経ることなく開催することができる。

(株主総会の決議)

第20条  株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。

2  会社法第309条第2項に定める決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(決議及び報告の省略)

第19条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

2 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

(議事録)

第21条  株主総会の議事については、開催日時、場所、出席した役員並びに議事の経過の要領及びその結果その他法務省令で定める事項を記載又は記録した議事録を作成し、株主総会の日から10年間本店に備え置く。

第4章 取締役及び代表取締役

(取締役の選任及び解任)

第23条  取締役の選任及び解任の決議は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

2 取締役の選任決議は、累積投票によらないものとする。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(取締役の選任)

第23条 取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。

2 取締役の選任については、累積投票によらない。

(取締役の任期)

第24条  取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2  補欠又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又はその選任時に在任する他の取締役の任期の満了する時までとする。

説明

長期間にすると取締役を解任した際に損害賠償リスクが高まることから、任期は短いことが望ましい。しかし1年とすると再任にかかる手間とコストがかかりすぎるため、2年とすることを推奨する。

役員が1名の場合は損害賠償リスクがないため長期間にするという考え方もあるが、役員追加時に任期変更を忘れるリスクもあるため、役員人数を問わず2年とする。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(取締役の任期)

第24条 取締役の任期は、選任後5年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 任期満了前に退任した取締役の補欠として、又は増員により選任された取締役の任期は、前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。

(代表取締役及び社長)

第25条  当会社に取締役を2名以上置く場合には、株主総会の決議により、代表取締役1名以上を定め、そのうち1名を社長と定める。

2  当会社に置く取締役が1名の場合には、その取締役を代表取締役とし、社長とする。

3  社長は、当会社の業務を執行する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

(代表取締役及び社長)

第25条 当会社に取締役を複数置く場合には、代表取締役1名を置き、取締

役の互選により定める。当会社に置く取締役が1名の場合には、当該取締役を代表取締役とする。

2 代表取締役は、社長とし、当会社を代表する。

3 当会社の業務は、専ら取締役社長が執行する。

第5章         計     算

(事業年度)

第27条  当会社の事業年度は、毎年●月●日から翌年●月末日までの年1期とする。

推奨値

決算月を設立日の前月末とする。

説明

税制面・創業融資面でのメリットを最大限享受するため、1期目をなるべく長くとることを推奨する(消費税の免税期間・日本政策金融公庫の創業融資・エンジェル税制など)。

第6章         附     則

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)

第29条  当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金●●,●●●円とする。

2  当会社の成立後の資本金の額は、金●●,●●●円とし、その余りは資本準備金とする。

推奨値

出資金額が100万円未満の場合:全額資本金とする。
出資金額が100万円以上の場合:出資金額の1/2を超えない額を資本準備金に組み入れ、残りを資本金とする。

説明

日本政策金融公庫の融資や定款認証費用の節約などで、資本準備金の組み入れを活用することは重要。しかし出資金額100万未満の場合はこうしたメリットを享受できず、定款認証費用も変わらない。

以上より、出資金額が100万円以上の場合は資本準備金に組み入れ、100万円未満の場合は全額資本金とすることを推奨する。

日本公証人連合会の定款記載例「中小規模の会社」。

第31条 当会社の設立に際して出資される財産の全額を成立後の資本金の額とする。

(発起人の氏名ほか)

第32条  発起人の氏名、住所、発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数及び設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額は次のとおりである。

住所 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

●● ●●  ●●株  金●●●,●●●円

説明

複数回の資金調達を繰り返してバリュエーションが急上昇するスタートアップでは、株式譲渡やSO発行をなるべく細かい単位で実施する必要があるため、1株1円とすることを推奨する。

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