Q 与信管理とは何ですか。
・与信・・・取引の相手方に返済能力があることを信用してモノ・お金を供与すること。
・与信取引・・・商品を販売する場合において、先に商品を提供して、後で代金を回収する形態の取引。
・与信管理・・・「与信取引を行ってもよいか」、「与信取引を行う場合、取引限度額をいくらに設定すべきか」について取引先ごとに判断し、定期的に見直していく業務プロセス。
与信管理の目的
取引を行う場合に、事前に許容できるリスクを把握し、リスクが発生しても損害を最小限に抑えること。
・・・与信管理を全くしていない場合(相手方の本店所在地も特定できない。)。預貯金債権の仮差押空振り→一部取下げ→今後、取引時に相手方に信用情報(銀行支店等)を提供するようにアドバイス。
・・・会社応接室においてある金融機関のカレンダー、ティッシュなど。
・・・業種による管理(卸売業)。
与信管理の方法
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信用情報の分類 | |
入手先 | 入手情報 |
取引先 | 決算書(直近3年分) |
勘定科目明細書 | |
法人税申告書 | |
会社案内、商品カタログ | |
信用調査会社 | 信用調書 |
法務局 | 法人の履歴事項全部証明書 |
不動産がある場合、全部事項証明書・公図 |
法人の履歴事項全部証明書のチェックポイント
項目 | チェックポイント | 対応 | |
□ | 商号 | 商号を変更している場合 | 旧社名のネット検索、経営者への変更理由確認。 |
□ | 本店 | 登記記録が新たに編成される、別管轄の登記所への本店移転。家賃が安いエリアへの本店移転。頻繁に移転を繰り返している。 | 閉鎖事項証明書の取得、経営者へ移転理由を確認。 |
□ | 目的 | 本業と関係なさそうな業務が追加されている。 | 経営者へ確認。 |
□ | 資本金の額 | 減資 | 取引の相手方に、減資の理由(欠損填補、大会社に該当することの回避、外形標準課税の節約)を確認。 |
□ | 役員 | 解任、辞任の登記がされている場合。任期が過ぎているのに何らの登記もされていな場合。 | 経営者に経緯を確認。 |
代表者の住所非表示措置に伴う影響。
項目 | チェックポイント | 対応 | |
□ | 不動産の特定 | 本店・営業所の所在場所、代表者の自宅の土地建物。 | |
□ | 所有権の登記名義人 | 取引先の法人、法人の代表者、関連会社。 | |
□ | 差押・仮差押・所有権移転の仮登記の有無 | 取引の回避 | |
□ | 抵当権者・共同担保の確認 | ノンバンクや個人名義の抵当権者の有無。 | |
与信管理を意識した契約交渉
契約書に規定すべき条項
- 期限の利益喪失条項・・・消滅時効の起算開始時に関わる。
・・・到来・経過させる。
- 所有権留保条項・・・買主が占有していることで、商品の回収困難の可能性(民法192条など。)。
- 出荷停止条項・・・継続的な契約の場合。
担保の取得
物的担保の取得
法定担保物権・・・留置権(民法295条、商法31条、521条)、先取特権(民法303条、商法842条等)。
約定担保物権
典型担保物権・・・質権・抵当権など。
非典型担保物権・・・仮登記担保権、譲渡担保権、所有権留保など。
約定担保権の取得時
迅速性が求められる。・・・担保を取得しようとしている物が、売却や付合などで無くなる可能性。他の債権者が先に担保を取得する可能性がある。
価値が明白で、担保取得や(実行)処分が容易な物から。・・・債権がいくら回収できるのか、担保取得や実行のコストと比較して。
人的担保の取得
保証・・・根保証かつ連帯保証。個人を保証人とする場合、民法465条の2の適用。
連帯保証取得時
債務弁済の資力がある者が優先。取引先の親会社、関係会社、代表者個人。保証意思を確認できる書面・情報を入手すること(保証契約書、取締役会議事録、公正証書など)。