日本登記法学会 第9回研究大会

日本登記法学会 第9回研究大会

令和6年11月23日、共催日本司法書士会連合会、日本土地家屋調査士会連合会

テーマ 「担保法制の見直しの行方」

報告① 和田 勝行氏(京都大学大学院法学研究科教授)

担保法制の見直しによる「対抗要件」概念の課題

法務省 法制審議会-担保法制部会 部会資料46

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003008.html

 動産について占有改定で真正譲渡がされていた場合。譲渡担保権者の調査負担が減る。

1 集合動産譲渡担保権の目的である集合動産が存在する場所がある。

2 個別動産について、集合動産譲渡担保権設定者Aが、Bからお金を借りて(個別)動産譲渡担保を設定する。

3 個別動産について、集合動産譲渡担保権設定者Aが、個別動産の所有者Cから個別動産を購入する。

4 Aが、Bのための占有改定により引き渡し、その後、集合動産が存在する場所に、個別動産を搬入した場合の優劣。

集合動産譲渡担保の所在場所の指定。

報告② 伊見 真希氏(司法書士)

「担保法制の見直しによる登記実務上の課題」

 法制審議会-担保法制部会 部会資料46。

動産譲渡担保権の順位の変更

 動産譲渡担保権の順位は、各動産譲渡担保権者の合意によって変更可能。利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じない。

 動産譲渡担保権と抵当権について、同一の農業用動産について動産譲渡担保権と抵当権とが競合する場合には、その順位は、動産譲渡担保契約に基づく農業用動産の譲渡についての引渡しと抵当権の登記の前後による。占有改定で農業用動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権は、抵当権に劣後する。同一の登録自動車について動産譲渡担保権と抵当権とが競合する場合には、その順位は、登録の前後による。

 債権譲渡担保権の順位の変更について。債権譲渡担保権の順位は、各債権譲渡担保者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じない。

 根譲渡担保契約の効力について。根抵当権の極度額に関する規定はない。 不特定の債権を担保するための譲渡担保契約。譲渡担保契約は、債務者との間に生ずる一定の範囲に属する不特定の債権を担保するためにも締結することができる。

 根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡の対抗要件について。根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができない。債権を目的とする根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、当該譲渡又は一部譲渡及びその譲渡又は一部譲渡につき登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、これをもって当該債務者に対抗することができない。

 登記原因を譲渡担保とする譲渡登記の必要的記録事項の見直しについて。譲渡担保権者の氏名及び住所(法人にあっては、商号又は名称及び本店又は主たる事務所)並びに譲渡担保権者が会社法人等番号を有する法人であるときは当該法人の会社法人等番号(以下「氏名及び住所等」という。)を加える。→譲渡担保権者を変更することができるようになる。

 競合する譲渡担保権を記録するための競合担保登記目録制度について。譲渡人及び譲渡担保権の登記名義人は、共同して、競合担保登記目録の作成を申請することができる。

 動産譲渡担保権者による他の動産譲渡担保権者等に対する通知について。担保権実行の局面。

 動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡につき動産譲渡登記がされた動産譲渡担保権の動産譲渡担保権者は、その被担保債権について不履行があり、かつ、譲渡担保動産の引渡しを受けたとき(譲渡担保動産の引渡しに先立って帰属清算の通知又は処分清算譲渡をした場合にあっては、帰属清算の通知又は処分清算譲渡をしたとき)は、遅滞なく、その時にその動産譲渡登記の競合担保登記目録に特定事項が記録されている他の動産譲渡登記又は所有権留保登記において動産譲渡担保権者又は留保売主等として登記されている全ての者に対し、その旨を通知しなければならないものとする。通知は、通知を受ける者の動産譲渡登記ファイル上の住所又は事務所に宛てて発すれば足りるものとする。

テーマ 「震災と登記」

報告① 「不動産登記の機能・再考」舟橋 秀明氏(金沢大学大学院法学研究科准教授)

 不動産登記とは、不動産物権に関する情報提供装置。抵当権は、抵当目的物の占有を要素としないため(非占有担保性)、引渡しをもって公示することができなかった。また、所有権と異なり順位の概念が伴うため、順位を明確にするために、目的物の引渡しに代わる公示方法を採用せざるを得なかった。それが登記(帳簿)。

 地図について。登記によって不動産物権の公示機能が十全に効果を発揮するためには、登記記録に記載された内容がどの不動産に関するものであるかが特定できることを要する。そのための手段が地図(地籍図)の作成であり、土地については、地図によって物権(所有権)の対象となる区画(筆)を確定し、その位置や形状等を正確に表現することが要請される。

不動産の物権を持つ者の確定について。ドイツ法との比較。権利保護資格要件としての登記として、民法605条の2第3項。物権的請求権の相手方として、最三判平6・2・8民集48巻2号373頁。

被災地域の権利関係の証明・・・登記上の権利関係を根拠に、自らが権利者であることを容易に証明することができることで、補償金や支援金を受け取るのに役立つ。臨時の避難場所や仮設住宅の用地を確保するため、登記上の情報をもとに土地・建物の所有者や管理者を確認できる。

報告② 「震災後における登記実務の諸問題〜令和6年能登半島地震を踏まえ〜」曽根 裕氏(司法書士)

 公費による建物の解体のための、相続等の相談。宣誓書方式による公費解体・・・被相続人名義の被災建物の公費解体につき、相続人全員の同意が得られない場合において、相続人の代表者による宣誓書等の提出を受け、自治体が被災建物の公費解体を行う場合(以下「宣誓書方式」という。)には、自治体が被災建物の取壊しにつき法的責任を負わないとする制度の構築や、法的責任が免除される具体例などを示すなど、自治体が円滑に公費解体を行える環境を国が整備すること。

 令和6年3月29日民事2課第678号通知において、令和5年度の賦課期日における登録価格を課税標準として登録免許税を算出することとなった。

租税特別措置法第84条の4第1項(自然災害の被災者等は新築又は取得をした建物に係る所有権保存の登記等の免税措置)、

租税特別措置法第84条の4第2項(法84条の4第1項の規定の適用を受ける建物の新築又は取得の資金貸付等に係る抵当権の設定の登記に係る登録免許税の免税措置)、

租税特別措置法第84条の5第1項(被災者等が被災代替建物に係る土地を取得した場合の所有権移転の登記等に係る登録免許税の免税措置)、

租税特別措置法第84条の5第2項(法第84条の5第1項の免税措置の適用を受ける土地の所有者又は地上権若しくは賃借権の取得のための資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に係る登録免許税の免税措置)。

報告③ 「震災後における登記実務の諸問題~表題部に関する登記~」石野 芳治氏(土地家屋調査士)

 罹災証明書発行にかかる調査補助。倒壊等した建物の滅失調査。職権滅失登記に係る実地調査書の補助資料作成。過去の災害、阪神・淡路大震災(平成7年1月17日、東日本大震災(平成23年3月11日)、熊本地震(平成28年4月14日、16日)に関する対処方法を参考にしつつ、災害によって違う。

 •公費解体等に関する問題・・・申請物件と固定資産課税台帳との照合、相続・共有名義による障害、不登法第14条第1項に規定される地図がない、現地に行ってここが何番の土地かわからない、建物所在地の特定に非常に手間がかかる、液状化被害に関して筆界は移動しないが、家は動いた。これからの雪の季節。

•未登記に関する問題・・・権利登記に関して、登記が旧住所。問題、表題部登記に関して、増築、附属建物に係る変更登記の未登記が多かった。

環境省 令和6年能登半島地震を踏まえた公費解体の取組と課題について令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループ(第4回)令和6年8月20日

http://kouikishori.env.go.jp/archive/r06_shinsai/efforts/

コーディネーター 今川 嘉典氏(司法書士)

コメンテーター 山野目 章夫氏(早稲田大学大学院法務研究科教授)

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