日本不動産学会誌No150不動産相続登記の義務化をめぐる成果と次の課題

日本不動産学会誌No150不動産相続登記の義務化をめぐる成果と次の課題

慶応義塾大学大学院法務研究科 松尾弘「不動産相続登記申請の義務化を民事法性の中でどうとらえるか」

 民法および不動産登記法の原則に照らし、相続登記申請の義務化をどのように位置づけることができるか、法理上の整合性。

 民法899条の2による判例法理の変更。民法177条とは別に、法定相続分についての当然承継と、それを超える部分についての意思表示に特定承継の中間類型として。

 

東北学院大学法学部法律学科准教授 梶谷康久「「相続登記の義務化」と登記の位置付け」

 相続登記の義務化は、所有者不明土地対策として導入されたものではあるが、登記によって所有者を明確化する必要があるという問題意識から定められたものなのであるから、登記を効力要件化する必要性を示すものの一つであると評価。

拓殖大学 長友昭「農地をめぐる相続登記の課題―不動産法から見た土地改良における登記活用事例と課題解消に向けた取り組み―」

 一般的な土地や建物などの不動産関連の制度では、一筆の土地や区画、集落・市町村・県単位という土地のまとまりで課題に対応しようとしているのに対し、土地改良制度では、水ないし水利施設に関する制度である性質上、確認の不動産の単位、流域単位で対応。流域は土地のまとまりを超える。土地改良区における事例。土地改良区が利害関係人として申立人となり、所有者不明土地管理命令の申立て。

信州大学農学部 三木敦郎、合同会社ちいもり 杉本由起、合同会社ちいもり 杉本健輔「相続登記だけでは解決しない森林管理問題」

 入会権等、相続登記すべきではない森林がある。相続登記をしても境界が不明な土地がある、との指摘は相続登記とは関係がないのではないかと思います。集材路など。山地災害を免れたいという意識はおよそ共通。

拓殖大学政経学部教授 宮下量久「特定空家等の略式代執行をめぐる相続登記の課題」

 特定空家等に対する措置状況の推移。人口密度が低い市区町村ほど、略式代執行の実施回数が多い。

日本大学経済学部 中川雅之「情報資本ストックとしての登記情報」

 相続登記という行為は、情報資本ストックの経年劣化に対応した投資として位置付けることができる。

栃木県司法書士会会長 髙橋宏治「相続登記実務上の課題―栃木県の例―」

 司法書士総合センターの相談件数の推移。過料と相続登記にかかる費用のバランス。

新潟県司法書士会 八田賢司「相続登記実務上の課題―新潟県上越地域の実務を通じてー」

 相談者の傾向、相続登記対象物件の特徴。家庭裁判所における相続放棄申述に関する書類の保存期間。

裁判所 事件記録等の特別保存に関する規則

https://www.courts.go.jp/about/topics/tokubetuhozonkisoku/index.html

常葉大学 胡光輝「中国における不動産物件変動と登記」

 登記を不動産物権変動の効力発生要件としている。

(台湾)国立政治大学法学院助教授 張韻琪「台湾法における不動産相続登記の現状と原因」

 相続登記は義務化されており、義務違反には過料の規定がある。その他に競売、代金の供託の制度もあるが、相続登記未了の不動産は増加している。

常葉大学 小川祐之「登記情報の透明性確保と開発・まちづくり:イギリスの場合」

 充分な住宅供給のための登記情報の透明性向上策。

獨協大学 小柳春一郎「フランスの義務的相続登記」

 相続を含め、登記申請の書類は、必ず公証人が作成する。相続登記の義務化違反としての過料の規定は削除され、損害賠償の規定の効果は不明。

国士舘大学 藤巻梓「ドイツにおける相続登記」

 遺産裁判所から相続人に付与される相続権の証明としての相続証書。推定力と公信力を有する。

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