信託契約書から学ぶ民事信託支援業務6「信託契約書の起案の作法(1)」
司法書士 渋谷陽一郎 市民と法 No.146、2024年04月民事法研究会
・民事信託支援業務に関与した司法書士に対する苦情を聴く機会が増えた。・・・月に何回くらい聴くのか、気になりました。苦情内容は、報酬が高いことと、信託契約書の品質の低さのようです。
・信託財産の額の割合的算定を以前から批判されていて、私は何故なんだろうと思っていました。所有権移転登記申請だって、課税価額の高さに応じて、何千円か何万円か上げているので、それも割合的算定方法と近いのではないかというのが理由です。この記事で初めて知ったことは、著者は経済的利益に基づく、という部分を批判しているということです。ただ、登記も重なる部分があるんじゃないかな、と思います。
受益権の内容の記載がないことがあるそうです。
法律整序の前後を比較した信託の目的の例示。
。信託の目的が受益者の死亡に至るまで、継続的な生活支援、の場合、受益者の死亡に至るまで、受託者の信託事務遂行の義務を生じるのだろうか。受益者の生存中は信託の終了を拘束する制限となるのであろうか。・・・死亡までと記載されているので、義務は生じると思います。受益者が生存中であり、継続的な生活支援が必要とされる限度で、信託の終了を拘束する制限になると思います。
・信託の目的に受益者の氏名を記載すると、一身専属的な受益権となるか。・・・信託の目的に受益者の氏名が記載されていない場合、信託行為のその他の条項で受益者は特定されているので、信託の目的条項に氏名を記載したから一身専属的な受益権というのは難しく、信託行為全体を総合的に判断する必要があると思います。
信託法96条の受益権の質入れについて、たとえば、受益者の生活支援のための受益権に対しては一身専属的な受益権として質権設定が出来ないのか。・・・信託法96条は、会社法151条~の株式の質入れの規定に準じて規定されています(寺本昌広『逐条解説新しい信託法補訂版』)。ただし、会社法には、その性質がこれを許さないときは、この限りではない。という、ただし書きがありません。信託法のみに定められています。私は金銭債権が受益債権となっている場合は、債権質権の実行と捉え、差押え禁止財産(民事執行法152条)に該当する受益権か、考えることが出来るのではないかと思います。
・一般に、司法書士が受益権の内容を法律整序する場合、何気なく「受託者が相当と認める」としてしまう場合があろう。・・・一般的なのか、分かりませんでした。
・さいたま地川越支判令4・3・23WLJにおける受託者の裁量について。・・・まず、月々が赤字にならないように、原則として考えます。その後に受益者の希望する生活関連費用を聴きます。それで赤字にならないのなら、受託者は、裁量の余地なく、受益者の希望する生活関連費用を全額支払う義務があると思います。