渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』 第7章民事信託の融資(民事信託案件に対するファイナンス)

  • 渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令。
  • 第7章民事信託の融資(民事信託案件に対するファイナンス)

P337、信託財産責任負担債務として受託者が借入人となる場合、一般の実績では、通常の融資の金利・手数料の約2倍前後の水準となっているようだ(もちろん、各金融機関によって取扱事例の金利実績は異なる)。について・・・一般の実績の出典はどこからなのか、記載が必要だと思います。

P345、信託目的達成のため、高齢者の介護費または施設入所費用などを使用使途とする受託者による借入が可能なのか否かという論点がある。・・・もし、介護費などで借り入れが必要な状況であることが信託行為時に予想される場合、信託制度を利用するのではなく、任意後見制度を含む後見制度を利用する方が良いのかなと思いました。

P406、信託法の清算規定は、会社制度を参照した結果、会社の清算のように、バランスシートをゼロとする必要があるとの想定なのか。・・・信託法177条1号の現務の結了が、事業や契約の終了を必ずしも意味しない(道垣内弘人『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻 (現代民法 別巻)』2022年、有斐閣、P439、P440)ので、信託法177条2号の信託債権に係る債務の弁済は、残余財産の給付との関係では、強行規定には該当しないと考えます。

P411、信託法179条の、清算受託者は、直ちに信託財産についての破産手続開始の申立て、信託法181条の、信託債権に係る債務の弁済と受益債権に係る債務の弁済をした後でなければ、の強行法規性について。・・・債権者の合意があれば、強行法規とはならないと考えます(道垣内弘人編著『条解信託法』)2017、弘文堂、P782)。

P427~、Q343~Q346にかけて、抵当権が設定されている不動産に対して、抵当権者の金融機関に黙って信託行為を行う事例が、実際にある前提の記載があり、このような実務を行うことがあるのだと初めて知りました。

Q352、担保物件を任意売却する場合、債務者が委託者であり認知症などにより判断能力を欠いているときは、成年後見制度を利用することが原則になると考えます。任意後見契約を締結していない場合、任意売却に関わらず、委託者が判断能力を欠いた時点で成年後見制度を利用することが必要となり、任意売却が必要となってから何かしら特別な手続をする、ということにはならないのではないかと思いました。

Q353、信託登記と抵当権設定登記の連件申請において、信託登記の信託目録記載事項、信託財産の管理方法として被担保債権を特定することが必要か。・・・被担保債権を特定すると抵当権設定登記との連続性が、より保たれることになり、確実性が増すといえます。この場合、抵当権設定登記が完了した後も信託目録に被担保債権の特定事項は残り、権利部の登記記録と重複する部分が出てくることになります。そこまで必要なのか分かりませんでした。抵当権設定の権限のみを信託条項とするのでは足りないのかなと、個人的に思いました。

Q354、信託行為に、信託財産責任負担債務として委託者の債務引き受け、などと注意書きとして受託差の権限を定める方法があるのではないかなと思いました。

Q341,で信託監督人はあくまで受益者の保護という観点から監督を行うのであり、債権者のために監督を行うのではないことに注意しておきたい、との記載があります。Q355、において金融機関に対する債務の利率変更について記載があります。本書では専門職の信託監督人が推奨されています。信託監督人が利下げなどの交渉を受託者と同行して出来るのはないか、状況によっては義務にもなり得るのではないかと思いました。

Q357、について、解説記載のとおり新受託者が債務引き受けの特約を行う場合に審査を行えばよく、事前に予備的受託者の審査をする必要性は、原則としてないのではないかと思います。

Q372、並存的債務引受は、併存的債務引受の誤植かと思います。

Q375、なぜ受益者全員を連帯保証人にする必要があるのか、分かりませんでした。連帯保証人が必要であれば、委託者兼受益者のみで足りるのではないかと思いました。

Q376、受託者、予備的受託者は抵当権消滅請求(民法379条から386条。)における第三取得者に該当するか、について。・・・第三取得者に該当する可能性は低いと考えます。受託者は委託者に対価を支払っているわけではないことが理由です。

Q385、金融機関が、委託者や受託者から、遺留分侵害なきことの表明保証を取得することに対して、どのような意味があるのか、分かりませんでした。通常の融資でも遺言の有無と遺留分侵害なきことの表明保証を取るのでしょうか。

Q386、金融機関が事前に受託者に対する誓約条項を公開していただければ、信託行為の定めを作成するのも、今までよりやるやすくなります。

Q388からQ404、金融機関が予備的受託者として、旧受託者の推定相続人を求める場合があるかもしれない、との記載について。・・・旧受託者の死亡を前提としているなら、旧受託者の推定相続人でも良いのかなと思いました。旧受託者の配偶者としている場合、委託者兼受益者の推定相続人とはならないときでも、受託者交代のときにもう一度審査があると思うので、その時に適切な人を、信託行為に関わらず、必要なら変更して、受託者に就任してもらえば良いと考えます。

Q407、金融機関独自の審査基準を内製化し、可能であれば公表することは必要だと思います。信託口口座開設が出来ない場合、信託行為を予定している当事者の納得と金融機関選定の目安ともなります。金融機関としても、予め自行の審査基準に該当しない人を、支援している専門家を通して選別出来ることで、審査に係る時間を減らすことが出来ると思います。私なら、本書記載の審査項目に、審査時点における委託者の遺言書の有無、任意後見制度利用の有無を追加します。遺言書について、内容の公開は含みません。

Q409、金融機関が、信託に関する審査を同じ地方の士業に委託したとしても、審査結果に対しての根拠付け、質問に対しての法的根拠のある回答が可能であれば問題ないと思います。困るのは融資あり、抵当権付き不動産を信託する場合に、その金融機関が提携している士業でないと、信託は出来ない、と言われることです。地方では地銀は限られており、他の地銀に借り換える労力がある場面は多くありません。委託者が専門家を選ぶことが出来るのが普通ではないかなと思います。

Q411、金融機関の審査コストについて。・・・信託契約書の審査に時間・労力がかかっているのは外部からみている限り確かなので、信託口口座開設のために審査料を設定するのは、適切だと思います。ただし、金融機関は資産を持っている信託行為の当事者の情報、財産承継の計画、親族関係を把握することが出来ます。遺言書より詳細な情報を見ることが出来ます。その情報を基に、融資や保険商品などの話をすることが可能です。このような利益を考えると、審査料は無料という考え方も成り立つと思います。または、審査料を設定する場合は、信託行為の情報に基づく営業活動を禁止する、という取扱いが適切だと思います。

 口座管理費用を徴収するのは、現在のところ他の口座管理とどのように違うのか説明がないので、理屈が分かりません。

 

Q415、受託者が解任されてしまった場合はどうするか。・・・解任前に金融機関への報告を義務付ける取扱いが考えられます。

 受託者が解任された際、「信託口」口座の承継手続は具体的にどうすべきか(いかにして継続が可能となるのか)。・・・原則として受託者の変更手続きになると考えます。いかにして継続が可能となるのか、については、信託財産責任負担債務がある場合で、金融機関の審査に耐えられる新受託者が見つからないときは、担保、保証の追加や信託の終了などの対応になると思います。

Q417、金融機関に対する報告事項を信託行為に定めることについて。・・・信託口口座開設予定の金融機関から、事前にテキストで提示していただけるなら信託行為に定めることが可能ですが、提示がない場合は金融機関から別の契約・合意を委託者、受託者に求めるのが合理的だと考えます。

Q421からQ424、受益者代理人について。利用する場合は、任意後見・成年後見制度との権限の棲み分けを信託行為や任意後見契約書に定める必要があると思います。

Q425からQ435、受託者を法人とする信託について。実質的支配者、特定取引の観点を入れると、判断がしやすくなる面があると思いました。参考、警察庁、犯罪収益移転防止法の概要、令和6年4月1日時点。

Q447、信託内部における受益権の処分禁止(信託法93条など。)や譲渡に受益者以外の者の承諾を要する定めが、信託外の第三者たる受益者の債権者に対して、どこまで主張できるのか、について。・・・信託当事者内部の定めであり、債権者に対して主張出来ないと考えます。

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