会報信託「信託経済カンファレンス」

 会報「信託」[1]の記事からです。翁百合「コロナ後の日本社会の課題―選択する未来2.0を踏まえて―」。

選択する未来 2.0中間報告 2020 年7月1日 内閣府

https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/chuukan.pdf

選択する未来2.0 翁座長報告資料

https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/future2/purezen.pdf

内閣府アンケート調査結果

・家族の重要性を意識するようになった人たちが約半分を占めた。

・20歳代の東京23区に住んでいる人の35.4%の人々については、地方移住への関心が高まっている。

・テレワーク実施率約34%。

・60歳以上のビデオ通話の利用希望・・・約6割が今後も利用したい。

・日本の行政手続きのオンライン利用率7.3%・・・OECD諸国中30位。

提言

・無形資産への投資拡大が必要

・働き方

・経済

・地方活性化

 この記事でいう無形資産というのは、企業にとって、将来の利益を生む現在の労働力・資本・現在の利益のことのようです。

その他のデータ

・非正規雇用では、何年働いても年収300万円を超えるのは難しい。

・労働の質の上昇の要因が近年、非常に少なくなっている?

・女性の非正規雇用率が一番高いのが20代。

・生産性の高い中小企業が退出し、低い中小企業が残ってしまっている。?

提言

・知育アプリ等のコンテンツの充実

・STEM人材の女性比率を上げる。→STEAM人材?

・企業の付加価値生産性を上げていく。

・コーポレートガバナンス改革。

・AIアクティブ・プレイヤー?の割合を上げる。

・地方大学の活性化。

・都市と地方の2地域就労。

・シングルマザー等に対する所得再分配機能を提供。

STEM人材、STEM教育というのは、STEAM教育などと変化があるようです。AIアクティブプレイヤ―、というのは、「一部の業務をAIに置き換えている」または「一部の業務でAIのパイロット運用を行っている」のいずれかに該当し、かつ自社のAI導入を「概ね成功している」と評価した企業、のことで人ではないようです。

参考 総務省HP 

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd112220.html

信託の活用試案

・離職する従業員に、株式を割り当てる(委託者企業(または従業員)、受託者信託銀行、受益者離職従業員)。

・受託者が提供するセキュリティトークン?の基盤を利用して、非上場企業にも社外に出る旧従業員への受益権発行を可能にして、無形資産(将来の利益)の共有と雇用の分離を実現。

 この信託の形は、信託銀行が受託者であることが前提です。非上場企業といっても、ある程度の規模、歴史がある企業(中堅企業)を想定していると思います。私は、信託銀行に管理費用を年間1千万円支払うことが出来る企業だと思います。 中間報告を読んでみると、抽象的な表現が多いという印象を受けました。南場 智子 株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役会長、松尾 豊 東京大学大学院工学系研究科教授などが委員を務めています。最終報告では、具体的な数字が出てくるのではないかと思います。

宮川努「生産性から見た日本経済」

・就業者1人当たりのGDPは、30年以上世界20位前後で推移している。

・建設業、製造業、情報通信業など垂直的な取引が多い産業は、大企業と中小企業で大きな格差がある。情報通信業については、失くすべき。

・複数生産性(財の入れ替え)・・・例:富士フィルム

・2019年のデジタル競争力は23位(世界経営開発研究所)。

・生産性向上と研究開発費、IT投資

・この記事での無形資産投資は、人材投資、組織改革。

・PCR検査数と生産性

 就業者1人当たりのGDPを計算して数字として把握しておくのは良いと思うのですが、何の基準になるのか、良く分かりませんでした。この記事の中で富士フィルムに関しては納得できましたが、他については視点が大き過ぎて、私の周りでご飯を配っている人の方が凄いんじゃないか、あの人の生産性はどのくらいで計算されるのか、10億円くらいはいくのではないか、と想像します。PCR検査数で生産性を計るのは、少し違うと感じます。保健師1人当たりのPCR検査数をどれだけ上げるか、という生産性の問題に置き換えて考えることができる、とありますが置き換えることは出来ないと考えます。保健所の他の業務、政策、感染状況、地理的要因、各都道府県での保健所と医療、行政との関係など、様々な要素がある中で生産性が用いられることは、あまり意味を持たないのではないかと考えます。

 信託に関する記載を探すことは出来ませんでした。

平田卓也「中小企業の事業承継を巡る状況について」

・承継準備

・親族内承継と親族外承継

・承継後の後押し(事業承継補助金・事業承継税制)

・事業承継ネットワーク(事業引継ぎ支援センターなど、売上高で分けて小規模企業)。民間M&A業者との連携構築。

・事業承継税制の要件緩和・・・法人版については、緩和前の10年間の適用件数に対して、緩和後3年間で3倍の申請件数。

・中小企業M&Aガイドライン 2020/3/31

https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200331001/20200331001.html

・中小企業経営力強化支援ファンド

・承継実証トライアル事業

 事業承継の話は、私が司法書士になった2007年からずっと聞かされてきました。中小の企業にとっては、事情が千差万別なのでそれぞれの経営者の考え方で良いのかなと思います。事業を誰にも引き継がず廃業を選択する方もいますが、話を聞いているとなるほど、と思うことが多いです。法人版事業承継税制は、適用件数と申請件数なので一概に比較は出来ないけれど、結果が出ている、といえると思います。税制ありきではないですが、承継直後は大変なことも多そうなので、適切な補助は必要なのかなと感じます。特に町の風景の一部になっているような企業、銭湯のような許認可の問題がある企業は、事業が無くなる以上の損失があるのかなと考えます。

 中小企業庁からも信託の話は出てきませんでした。

児島哲郎「With/Afterコロナ時代の事業承継と信託」

・事業承継が進まない一番の原因は経営承継。

・財産の問題(主に自社株評価)

・コロナ後は事業承継についての関心が高くなった。する/しないを含めて。

・所属のみずほグループ全体で支援

・事業承継信託・・・株価が安くなったコロナ禍のうちに。指図権付。生前贈与タイプと遺言代用タイプがある。

・特別目的会社(SPC)と黄金株を利用した事業承継。

・M&A仲介と信託(株式を売却した代金について、一定金額を一定期間に分けて交付)を利用した事業承継。

 経営承継、コロナ禍、グループ全体で、の部分はそうなんだろうなと思います。自社株の評価額については、高いなーと思うことも多いです。信託銀行が受託者になる事業承継信託については、私には規模が大きくついていけません。

参考:みずほ信託銀行自社株承継サービス【遺言代用タイプ・生前贈与タイプ】

 設定時信託報酬…550,000円(税抜500,000円)~

 税務上のお取扱については、今後税制が変更された場合に取扱自体が変わる可能性があります。みずほ信託銀行はお客さまに対して税務上の取扱を保証するものではありません。税務上のお取扱については、事前に顧問税理士・所轄税務署等にご確認ください。

https://www.mizuho-tb.co.jp/souzoku/jigyoushoukei.html

 特別目的会社(SPC)と黄金株を利用した事業承継は、金融機関の協力なくして出来ないことなので、みずほグループとしての強みが活かされるのだろうと思います。

柳川範之、吉野直行「アフターコロナ時代に企業に求められるもの」

柳川範之

・デジタル化と生産性はリンク。

・社会コストをなるべくかけずに、産業転換(企業の入れ替わりを含む。)が必要。

・その役割としての信託・金融機関。

・子育てをしながら仕事ができる。?

・他の仕事も一緒にできる?

・事業承継の後継者も場所を問わない?

・働く場所を問わなくなったことはチャンス?あまり活躍場所のない都市部の大企業で働いている人材は圧倒的に多いので、地方の企業で活躍してもらう?

・金融機関による斡旋。

・経営は組織の改革。

・事業承継時のお金(業種転換、相続)について信託の利用が有効。

 難しかったです。デジタル化と生産性はある程度リンクしていると思います。効率化を除けば、まだ伸びる余地はあると思いますが、私にはその方法が未だ分かりません。社会コストをなるべくかけずに、産業転換(企業の入れ替わりを含む。)が必要で、その役割としての信託・金融機関があるというのは、ある程度納得感があります。

 子育てをしながら仕事ができる?。実際にやっているのかな、という感想を持ちました。出来るのですが、それが仕事に良い影響を与えるかは各家庭違うとおもいますし、私は負担が大きかったです。他の仕事も一緒にできる?。通勤時間に充てていた時間を、という意味だと思います。確かにそのような面もあると思いますが、業種は限られます。

 事業承継の後継者も場所を問わない?東京に居ても地方の企業経営が出来るか、といっても各企業によって違うと思いますし、地方の企業経営ってそんな感覚で出来るんだっけ?と感じます。働く場所を問わなくなったことはチャンス?あまり活躍場所のない都市部の大企業で働いている人材は圧倒的に多いので、地方の企業で活躍してもらう?本当にそうなんでしょうか。都市の大企業に勤めていると、地方の企業で活躍出来るのでしょうか。金融機関による斡旋は、あり得る、というかもうやっていると思います。

参考

金融仲介機能の発揮に向けたプログレスレポート

令和2年 10 月 金融庁

https://www.fsa.go.jp/news/r2/ginkou/20201014-1/01.pdf

吉野直行

・米国(レバレッジ・バイアウト、プライベート・エクイティ・ファンド)との比較。M&Aとは違う。

・日本にも米国のように活発になるのが良い。

・中小企業の技能を伝えていくデジタル。

・デジタル教育。

・中小企業のお金に関して、信託銀行は応援できる(出資、融資)。

・人材の信託、商談会の信託(情報の信託)。

・土地の所有権と使用権を分離する信託→道路整備など。

 米国の事例は、東京のスタートアップと呼ばれるような企業(沖縄にもあります。)の一部が目指しているような形だと思います。第〇シードとかいうやつでしょうか。中小企業の技能を伝えていくデジタル、デジタル教育については、記載の通り大切だと思います。ここで記載されている中小企業に関しては、信託銀行が選ぶような中小企業、という意味だと思います。私が関わっている信託とは別のものだと考えています。人材の信託に関して興味はありませんが、商談会の信託については、どのような仕組みにするのか興味があり可能であればやってみたいと思います。所有権と使用(利用)権の分離は、信託の基本です。


[1] 2021年季刊第1号(一社)信託協会