登記情報2024年10月号

登記情報2024年10月号(755号)、(一社)金融財政事情研究会

https://store.kinzai.jp/public/item/magazine/A/T

 法窓一言 境界紛争解決とADR

東京土地家屋調査士会境界紛争解決センター センター長 味田昌也

 筆界と占有界、所有権界に誤差の範囲内では処理しきれない誤差が生じる場合。

特 集 近時の民事法制・重要判例先例

民事基本法制の立法動向

法務省大臣官房司法法制部長(前大臣官房審議官) 松井信憲

 法務省 民法等の一部を改正する法律について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00315.html

 公益Information 公益信託に関する法律

https://www.koeki-info.go.jp

 法務省 法制審議会-区分所有法制部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00004

 法務省において、法案の立案作業中。

 衆議院 事業性融資の推進等に関する法律案

https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/213/meisai/m213080213057.htm

 譲渡担保権の内容や被担保債権の範囲に関する規律。

 集合動産譲渡担保契約について対抗要件の特例等を定めること。

 所有権留保契約の効力について。

法務省 法制審議会-担保法制部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003008.html

金融庁 金融審議会 事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html

 法務省 法制審議会-商法(船荷証券等関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00002

 商法(船荷証券等関係)等の改正に関する要綱案

法務所 法制審議会-民法(遺言関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00009

 自筆証書遺言のデジタル化について

公益社団法人商事法務研究会 成年後見制度の在り方に関する研究会

https://www.shojihomu.or.jp/list/seinenkoken

 法制審議会民法部会において調査審議中。

近時の重要判例と士業実務

司法書士 早川将和

最判二小判令5・11・27判タ1519号162頁

 抵当権の登記を重視。登記後は差押え前であっても、将来賃料債権を受働債権とする相殺をして抵当権者に対抗することは出来ない。

最三小決令6・3・19銀法912号69頁

 真正相続人の相続回復請求権(民法884条)の消滅時効の前後に関わらず、表見相続人は、真正相続人が相続した財産の所有権を時効により取得することができる。

最二小判令6・6・21LLI/DB判例秘書L07910030

 親の現在の法的性別は認知の届出(民法781条)は受理される。

最三小決令6・3・27LLI/DB判例秘書L07910009

 医療法46条の3の2第4項、理事長は、総社員の五分の一以上の社員から社員総会の目的である事項を示して臨時社員総会の招集を請求された場合には、その請求のあつた日から二十日以内に、これを招集しなければならない。ただし、総社員の五分の一の割合については、定款でこれを下回る割合を定めることができる。について、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律37条2項、次に掲げる場合には、前項の規定による請求をした社員は、裁判所の許可を得て、社員総会を招集することができる。一前項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、二前項の規定による請求があった日から六週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を社員総会の日とする社員総会の招集の通知が発せられない場合、を準用規定がないので、類推適用することは出来ない。

最二小判令6・4・19LLI/DB判例秘書L07910011

 株券発行会社における株主間の株式の譲渡は、株券発行前であれば、契約のみで効力が生じる。

大阪高判令4・128法学教室511号136頁

 取締役の善管注意義務、忠実義務について(会社法330条、355条)。

近時の重要先例と士業実務

司法書士 田口真一郎

令和5年3月30日民二第555号回答

 本人確認情報(不動産登記法23条4項1号、不動産登記規則72条)を作成するにあたり、テレビ電話会議システムによる方法が可能と考えられる要件について。

・・・遠隔の場合、テレビ電話会議に依頼者の現地に事務所を持つ司法書士に同席してもらい、同時に画面で映って確認する方法もあるのかなと思います。

令和5年9月12日民二第927号通達

 相続登記における過料の消極要件について。

令和5年12月15日民二第1596号通達

 外国に住所がある外国人・外国を本店等とする法人の住所・本店等を証する情報について。

令和5年12月18日民二第1619号回答

 相続を広義の原因とする登記申請において添付する被相続人の同一性を証する情報について、性別を補完する情報。

令和6年3月15日民二第535号通達

 相続人申告登記の抹消申出を、次順位相続人が出来るかについて。

令和6年3月19日法務省民事局民事第二課補佐官事務連絡

 租税特別措置法84条の2の3の第1項と第2項の関係について

令和6年3月21日民二第569号通達

 登記申請時における法定相続情報の提供について。

令和6年3月22日民二第551号通達

 所有権の登記事項に法人等が記録される場合の取扱いについて。

令和6年3月22日民二第552号通達

 所有権の登記名義人に、ローマ字併記が認められる場合と添付が必要な情報について。

令和6年3月27日民二第553号通達

 所有権の登記名義人が旧氏併記の申出が可能な場合と必要な情報について。

令和6年4月1日付け民二第555号通達

 不動産登記法116条6項に関する通達。信託目録に記録されている者について、不動産登記法97条1項11号その他の信託の条項に記録される者についても適用があるのか、分かりませんでした。

法制審議会だより

民法(成年後見等関係)部会、第1回~第4回会議を開催

編集部

法務省 法制審議会-民法(成年後見等関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00008

 現在7回まで開催。重度の身体障害により意思疎通が困難な場合など、法定後見制度の対象となる範囲について。

 

民法(遺言関係)部会、第1回~第4回会議を開催

編集部

法務省 法制審議会-民法(遺言関係)部会

https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007_00009

 遺言が要式行為であることの趣旨を確認。死亡危急時遺言や一般隔絶地遺言等の見直しについて検討。

検討会だより

定款認証の負担軽減に向けたデジタル活用のための実務検討会の第2回会議が開催される

編集部

https://www.kinzai.jp/seminar/digital_utilization

 金融財政事情研究会の主催。現在、4回まで開催。モデル定款に取締役会設置会社を含めることについて。既存システム(登記・供託オンライン申請システムや法人設立OSS)を有効活用し、モデル定款の作成を既存システムの新たな機能として位置付けた上で、国がその基本的機能を開発することとし、そのAPIを提供して民間が広く活用する方向で検討。

商業登記規則逐条解説 第22回

土手敏行

https://laws.e-gov.go.jp/law/339M50000010023

(登記すべき登記記録等)

第九十四条外国会社の登記は、その登記をするに最も適する登記簿の種類に従つた登記記録にしなければならない。

2登記すべき事項の記録は、これに最も適する区に記録しなければならない。

 商号規定は適用されない。

(設立の準拠法等の記録)

第九十五条外国会社の設立の準拠法に関する登記は商号区に、外国会社の日本における代表者に関する登記は社員区又は役員区にしなければならない。

 外国会社の設立の準拠法は、具体的な法律名。外国会社の日本における代表者は、代表取締役や支配人の地位を持つ者でなくても良い。

(登記記録の閉鎖等)

第九十六条次の登記は、登記記録区にしなければならない。

一営業所を登記所の管轄区域外に移転した場合において、当該営業所の旧所在地においてする移転の登記(登記所の管轄区域内に他の営業所がある場合を除く。)

二営業所を閉鎖した場合において、当該営業所の旧所在地においてする閉鎖の登記(登記所の管轄区域内に他の営業所がある場合及び登記所の管轄区域内に日本における代表者の住所地がある場合(すべての日本における営業所を閉鎖した場合に限る。)を除く。)

三日本に営業所を設置している外国会社のすべての日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。)の退任の登記(清算の開始の命令がある場合を除く。)

四日本に営業所を設置していない外国会社の日本における代表者がその住所を登記所の管轄区域外に移転した場合において、当該代表者の旧住所地においてする移転の登記(登記所の管轄区域内に他の日本における代表者の住所地がある場合を除く。)

五日本に営業所を設置していない外国会社が登記所の管轄区域外に営業所を設置した場合において、当該外国会社の日本における代表者の住所地においてする営業所の設置の登記

六日本に営業所を設置していない外国会社の日本における代表者の住所地においてする当該代表者の退任の登記(登記所の管轄区域内に他の日本における代表者の住所地がある場合及び清算の開始の命令がある場合を除く。)

七清算結了の登記

2前項各号に掲げる登記をしたときは、その登記記録を閉鎖しなければならない。

 外国会社の登記のうち、登記記録区にする登記を規定。登記記録の閉鎖について。

(準用規定)

第九十七条第九条の四第二項の規定は、外国会社の日本における代表者である法人の代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、当該外国会社の日本における代表者である法人の代表者の職務を行うべき者)が登記の申請をする場合について準用する。

2第六十五条第一項の規定は、法第百三十一条において準用する法第五十二条第二項の規定による申請書の送付について準用する。

3第七十四条及び第七十五条の規定は、外国会社の登記について準用する。

 国税庁 アイルランド共和国に本店を有する法人が我が国会社法の規定に基づき日本における代表者の選任及び外国会社の登記をし、その代表者が日本において一定の行為をした場合の恒久的施設の有無の判定

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/hojin/230222/index.htm

空き家問題の解消および相続登記の申請義務化における司法書士の役割

江島・猪之鼻司法書士事務所、日本司法書士会連合会 常任理事 猪之鼻久美子

 一般財団法人国土計画協会 所有者不明土地問題研究会

https://www.kok.or.jp/project/research.html

 各市町村における空き家対策協議会への参加。海外に移住した相続人や国内に居住する外国籍の方からの相談など、渉外登記業務についての対応。

リスクベース・アプローチに基づくマネロン対策⑷―“司法書士ガイドライン”から考える―

司法書士 末光祐一

 依頼者の属性、依頼の種類・目的、形態、同種の依頼との比較など。

法律業務が楽になる心理学の基礎第13回 産業・組織心理学から見た社会的手抜きと働く意義

弁護士(認定心理士) 渡部友一郎

 社会手抜き。集団で仕事をすると生産性が低くなる原因。キャリアの自己責任化との関係。

供託ねっと―実務から学ぶ供託―第113回 不法行為に基づく損害賠償金の供託について、供託者による取戻請求をさせないために被供託者が採り得る手段について

甲府地方法務局供託課長 小山真治

 供託受諾書について(供託規則48条)。

第66話 「共済」って知っていますか?

司法書士法人鈴木事務所、司法書士 鈴木龍介

 全税共年金

http://www.zenzeikyo.com/nenkin.html

実務の現場から

台湾人の相続登記―令和5年12月15日付け法務省民二第1596号通達を踏まえて

司法書士 竹内淳史

 登記研究804号P325、2015年2月28日発行【登記簿】台湾の会社を登記権利者とする所有権の移転の登記に係る添付情報について

登記研究919号

登記研究919号、2024年9月号、テイハン

https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html

【論説・解説】

■後見登記等に関する法令の改正経緯等について(下)

法務省民事局民事第一課長 櫻 庭  倫

第3 後見登記等に関する省令の改正経緯

後見登記等に関する省令

https://laws.e-gov.go.jp/law/412M50000010002

(副記録)

第四条登記官は、後見登記等ファイル等に記録した事項と同一の事項を記録する副記録を備えなければならない。

2登記官は、後見登記等ファイル等の記録によって登記の事務を行うことができないときは、前項の副記録によってこれを行うことができる。この場合において、副記録に記録した事項は、後見登記等ファイル等の記録に記録した事項とみなす。

3登記官は、後見登記等ファイル等の記録によって登記の事務を行うことができるようになったときは、直ちに、前項の規定により副記録に記録した事項を後見登記等ファイル等の記録に記録しなければならない。

(登記申請書等の送付方法)

第八条 登記の申請をしようとする者が登記申請書等を送付するときは、書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)の役務であって当該一般信書便事業者若しくは当該特定信書便事業者において引受け及び配達の記録を行うものによらなければならない。

(登記の方法等)

第十二条登記をするには、登記の事由及びその年月日並びに登記の年月日をも後見登記等ファイルに記録しなければならない。

2登記官が、法令の規定により、磁気ディスクをもって記録等を調製する場合においては、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術(官民データ活用推進基本法(平成二十八年法律第百三号)第二条第四項に規定するクラウド・コンピューティング・サービス関連技術をいう。)その他の情報通信技術の進展の状況を踏まえた適切な方法によるものとする。

(登記事項証明書等の交付請求の方式)

第十七条登記事項証明書等の交付の請求は、書面でしなければならない。

2前項の申請書には、次に掲げる事項を記載し、申請人又はその代表者若しくは代理人が記名しなければならない。

一申請人の氏名又は名称及び住所並びに申請人の資格

二後見登記等ファイル等に記録されている事項を証明した登記事項証明書等の交付を請求するときは、請求に係る登記記録又は閉鎖登記記録を特定するために必要な事項

三後見登記等ファイル等に成年被後見人等、任意後見契約の本人若しくは後見命令等の本人又はこれらの者であった者としての記録がない旨を証明した登記事項証明書等の交付を請求するときは、その旨並びに証明の対象となる者の氏名、出生の年月日及び住所又は本籍(外国人にあっては、国籍)

四後見登記等ファイル等に前号に規定する者以外の者としての記録がない旨を証明した登記事項証明書等の交付を請求するときは、その旨並びに証明の対象となる者の氏名又は名称及び住所

五請求する登記事項証明書等の数

六手数料の額

七年月日

八登記所の表示

(登記事項証明書等の作成方法)

第二十条 登記事項証明書等を作成するには、登記官は、証明すべき事項(令第八条の規定による更正前の登記事項を除く。)を記載した書面の末尾に認証文を付記し、年月日及び職氏名を記載し、職印を押し、毎葉のつづり目に契印又はこれに準ずる措置をしなければならない。

2前項の規定にかかわらず、法第七条第一項の規定による変更の登記の記録があるときは、特別の請求がない限り、変更前の登記事項の記載をすることを要しない。

・・・自宅の住所記載を不要に。

(登記事項証明書等の交付の請求方法)

第二十五条 第二十二条の規定により同条第二号の請求をするには、申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務大臣の定めるところに従い、第十七条第二項各号に掲げる事項に係る情報を、これについて電子署名を行い、送信しなければならない。

2申請人又はその代表者若しくは代理人は、法令の規定により登記事項証明書等の交付の申請書に添付すべき書面があるときは、法務大臣の定めるところに従い、当該書面に代わるべき情報にその作成者による電子署名が行われたものを併せて送信しなければならない。

3第二十三条第三項の規定は、前二項の電子署名が行われた情報を送信するときに準用する。

・後見登記等に関する省令の一部を改正する省令(平成24年法務省令第44号)による改正・・・自然人と法人をまとめた形で表現。

第4 その他

 欠格事由の見直し。・・・登記されていないことの証明書の発行件数の減少。

■外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて

法務省民事局付 森 下 宏 輝、法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之、法務省民事局民事第二課補佐官 太 田 裕 介

1 はじめに

外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて」(令和5年12月15日付け法務省民二第1596号民事局長通達

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00589.html

従前

登記研究124号P28、昭和33年1月22日民事甲第205号民事局長心得回答「住所を証する書面について」

 国外移住者であるときは、住所地を管轄する在外公館の証明を得た書面を提出。

登記研究213号P37、昭和40年6月18日民事甲第1096号民事局長回答「米国に住所を有する者が登記を申請する場合の不動産登記法第四十三条の規定による書面等について」

 アメリカ国籍の者、アメリカに住所がある日本人の住所を証する書面として、アメリカ合衆国公証人の証明にかかるものを提出するときは、便宜受理してさしつかえない。

2 本通達の発出の経緯等

民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00049.html

(2)外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直し

外国に住所を有する外国人(法人を含む。)が所有権の登記名義人となろうとする場合に必要となる住所証明情報については、次の①又は②のいずれかとするものとする。

①外国政府等の発行した住所証明情報

②住所を証明する公証人の作成に係る書面(外国政府等の発行した本人確認書類の写しが添付されたものに限る。)

民法・不動産登記法部会資料35、P15

3 外国に住所を有する外国人の住所証明情報の見直しについて

前記1のパブリック・コメントの結果等を踏まえると、現在の登記実務で用いられている外国の公証人による証明書を住所証明情報として利用することを一切認めないこととすると、不動産登記をするコストを増大させるだけでなく、住所証明制度がない国においては登記申請が事実上困難となり、かえって所有者不明土地が発生しやすくなるおそれがある。

所有権の登記名義人について住所証明情報の提供を求めている趣旨は、①正確な住所を登記するとともに、②虚無人名義の登記を防止する点にあるが、①正確な住所を登記する観点からは、住所証明制度が整備されていない国においては、次善の策として、公証人による証明の方法で一定の正確性を担保することとせざるを得ないと考えられる。この点については、各国における法人の登録制度によっては法人自体についても問題となり得るものと考えられる。 他方で、②虚無人名義の登記を防止するという観点からは、外国政府等の発行する本人確認書類(旅券や身分証明書等)をもって本人の実在性の確認を補強することが考えられる。

ただし、旅券や身分証明書をそのまま登記所に提供することはできないことから、公証人において外国政府等の発行する本人確認書類を確認し、住所を証明した公証人の作成に係る書面に当該本人確認書類の写しを添付するといった方法によることがあり得るものと考えられる。 また、法人については、設立準拠法国と営業上の本拠地国とが異なることがあるが、実在性を確認する観点からすると、設立準拠法国による証明書を提供することを要するものとすることが相当である。

3 本通達の解説

外国に住所を有する外国人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報

(1)住所証明情報・・・外国に住所を有する外国人・法人が、新たに所有権の登記名義人となる登記申請(所有権保存・所有権移転・合体)の住所を証する情報に限る。登記名義人の住所変更登記の申請をする場合には、本通達の住所証明情報の対象とならない。→対象とならないものは、従前の取扱い。

・原本であること。

・有効期限確認。

・記載事項を証明する文言があるもの。

・公印がなくても、通達の要件を確認することが可能で、本人が原本であることを説明した書面を添付すれば良い。

・政府機関の作成した情報は、書面に限られデータを含まない。

・登記名義人となる者の国籍の政府・居住国の政府の作成によるもの、どちらでも良い。

・本国等政府の作成に係る住所を証明する書面と同視できるものの例。

・・・本国等政府の作成に係る住所を証明するデータの内容を書面に出力したものであって、当該本国等政府のウェブサイトにおいて当該書面に記載された番号を入力することなどにより当該電磁的記録が当該本国等政府の作成に係るものであることを確認できるものについては、その確認結果画面の内容を書面に出力したものと併せて提供された場合には、その証明力に疑義を生じさせる事情がない限り、住所証明情報と認められる可能性が高い。

→そのような国があるのか、分かりませんでした。

(2)登記名義人となる者の本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面(宣誓供述書)と、それを補足する情報

・登記申請時点において、期限が有効な旅券(パスポート)の写し

・登記申請時点において、期限が有効ではない(パスポート)の写しで合っても、宣誓供述書とともに旅券(パスポート)の写しが公証人の認証文書の一部を構成しているケース(公証人の作成に係る住所を証明する書面と旅券の写しが合綴されていて一体となっているケースなど。)

・旅券(パスポート)を持っていない場合は、登記名義人となる者の作成に係る旅券を所持していない旨の上申書(作成者の記名押印のあるもの)と、本国等政府の作成に係る書面(運転免許証、IDカード、永住者カードなど。データを書面に出力したものも可能。)の全てのページの写し。

・外国語の書面は、日本語の訳文を併せて提出。証明に関する書面の名称、氏名、住所、発行日、有効期間、有効期限、発行機関、証明する旨の記載(証明力の制限に係る事項があればその事項)の訳文で足りると考えられるが、全文訳した方が無難。

(3)日本の公証人の作成に係る本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨の上申書

・該当要件は、本国・居住国のいずれも公証制度がない、登記名義人となる者が疾病、障害等により本国・居住国のいずれにも帰国できないなどの事情がある、などを上申書として提出。宣誓認証書と一体として作成した方が望ましいと考えます。

・登記名義人となる者がその住所が真実であることを宣誓して公証人が認証して作成したもの(宣誓認証)を併せて提出。

外国に住所を有する法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報

(1)設立準拠法国の発行した書面

・原本であること。

・記載事項を証明する文言があるもの。

・公印がなくても、通達の要件を確認することが可能で、本人が原本であることを説明した書面を添付すれば良い。

・設立準拠法国の政府の作成に係る書面と同視できるものの例。日本における履歴事項全部証明書に該当する書面。

・外国語の書面は、日本語の訳文を併せて提出。証明に関する書面の名称、氏名、住所、発行日、有効期間、有効期限、発行機関、証明する旨の記載(証明力の制限に係る事項があればその事項)の訳文で足りると考えられるが、全文訳した方が無難。

・政府機関の作成した情報は、書面に限られデータを含まない。

(2)住所を証明する申請人の設立準拠法国の公証人の作成に係る書面(宣誓供述書)と、それを補足する情報

・登記申請時点において、期限が有効な設立準拠法国の発行した住所証明情報の写しなどを併せて提出。

・法人の代表者などが書き記した登記名義人となる者の名称及び住所が真実であることを宣誓したうえで署名した文書であって、設立準拠法国の公証人が認証した宣誓供述書。

・宣誓供述書の内容として、宣誓人が法人の代表者であることを含む。

・従業員等が宣誓する場合は、その権限に係る本国法の該当箇所と訳文を併せて提出。例えば日本の会社法第十一条、支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する、など。

・外国語の書面は、日本語の訳文を併せて提出。証明に関する書面の名称、氏名、住所、発行日、有効期間、有効期限、発行機関、証明する旨の記載(証明力の制限に係る事項があればその事項)の訳文で足りると考えられるが、全文訳した方が無難。

・例えばアメリカの場合、法人の本店所在地と宣誓供述書を作成する公証人が所属する州が異なっていても可能。

・設立準拠法国の政府の作成に係る書面が発行されない国(発行機関の記載のない形式でのみ法人情報が提供される国)の場合は、設立準拠法国の作成に係るものであることを証する書面を併せて提出。設立準拠法国政府においては設立準拠法国政府の作成に係るものであることを確認することができるものが発行されていない旨、当該写し等に係る原本が当該国の政府の作成に係るものである旨及び当該写し等に係る原本の請求先・請求方法を説明した書面など)を当該写しなどと併せて提出。

(3)日本の公証人の作成に係る本国等の公証人の作成に係る住所を証明する書面を取得することができない旨の上申書

・該当要件は、設立準拠法国には公証制度がない、代表者等が設立準拠法国に居住していない、代表者等が疾病、障害等により本国・居住国のいずれにも帰国できないなどの事情がある、などを上申書として提出。宣誓認証書と一体として作成した方が望ましいと考えます。

・代表者等が法人の事項が真実であることを宣誓して公証人が認証・作成したもの(宣誓認証)を併せて提出。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第124回)

一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問 神﨑 満治郎

組合等登記令

https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000029

(適用範囲)

第一条別表の名称の欄に掲げる法人(以下「組合等」という。)の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。

(設立の登記)

第二条組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

2前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一目的及び業務

二名称

三事務所の所在場所

四代表権を有する者の氏名、住所及び資格

五存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

六別表の登記事項の欄に掲げる事項

別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)

名称 医療法人

根拠法 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

登記事項

資産の総額

医療法第四十六条の三の六において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四十七条の二に規定する電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め

医療法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205#Mp-Ch_6-Se_3-Ss_6

第四十六条の六医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。

2第四十六条の五第一項ただし書の認可を受けて一人の理事を置く医療法人にあつては、この章(次条第三項を除く。)の規定の適用については、当該理事を理事長とみなす。

第四十六条の七理事会は、全ての理事で組織する。

2理事会は、次に掲げる職務を行う。

一医療法人の業務執行の決定

二理事の職務の執行の監督

理事長の選出及び解職

3項以下略

第四十六条の五 医療法人には、役員として、理事三人以上及び監事一人以上を置かなければならない。ただし、理事について、都道府県知事の認可を受けた場合は、一人又は二人の理事を置けば足りる。

2社団たる医療法人の役員は、社員総会の決議によつて選任する。

3財団たる医療法人の役員は、評議員会の決議によつて選任する。

4医療法人と役員との関係は、委任に関する規定に従う。

5第四十六条の四第二項の規定は、医療法人の役員について準用する。

6医療法人は、その開設する全ての病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院(指定管理者として管理する病院等を含む。)の管理者を理事に加えなければならない。ただし、医療法人が病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院を二以上開設する場合において、都道府県知事の認可を受けたときは、管理者(指定管理者として管理する病院等の管理者を除く。)の一部を理事に加えないことができる。

7前項本文の理事は、管理者の職を退いたときは、理事の職を失うものとする。

8監事は、当該医療法人の理事又は職員を兼ねてはならない。

役員の任期は、二年を超えることはできない。ただし、再任を妨げない。

■Q&A不動産表示登記(95)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

法定敷地。登記記録上は規約敷地との区別はない。

 不動産登記規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018

(表題部にする敷地権の記録方法)

第百十八条登記官は、区分建物である建物の登記記録の表題部に法第四十四条第一項第九号に掲げる敷地権を記録するときは、敷地権の登記原因及びその日付のほか、次に掲げる事項を記録しなければならない。

一敷地権の目的である土地に関する次に掲げる事項

イ当該土地を記録する順序に従って付した符号

ロ当該土地の不動産所在事項

ハ地目

ニ地積

二敷地権の種類

三敷地権の割合

登記研究449号P87、1985年6月30日質疑応答【六五四九】「建物の登記簿の所在欄の記載」

規約敷地

登記研究431号P83、昭和58年11月10日、法務省民三第6400号民事局長通達「建物の区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて」

建物の区分所有等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069

(規約による建物の敷地)

第五条区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。

2建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。

(公正証書による規約の設定)

第三十二条 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。

■逐条解説不動産登記規則(48)

元法務省民事局民事第二課地図企画官 小宮山 秀史

不動産登記規則

https://laws.e-gov.go.jp/law/417M60000010018

(地番区域)

第九十七条地番区域は、市、区、町、村、又はこれに準ずる地域をもって定めるものとする。

大字、子字、地字

地方自治法

https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067

第二百六十条 市町村長は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、市町村の区域内の町若しくはの区域を新たに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、当該市町村の議会の議決を経て定めなければならない。

② 前項の規定による処分をしたときは、市町村長は、これを告示しなければならない。

③ 第一項の規定による処分は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。

登記研究221号P51、1966年4月20日質疑応答四三一七「不動産の表示に関する登記手続についての法令等の規定に関する疑義」

 甲市乙町一丁目の乙町一丁目のような、「大字」又は「字」の付されない地番地域がその例。

■商業登記の変遷(65)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

 登記官の審査権について。公正証書原本不実記載罪(刑法157条)について。

■民事信託の登記の諸問題(36)

渋 谷 陽一郎

 信託監督人の定め、あるいは、信託監督人の表示が登記すべき(できる)という場合、その法的根拠は何なのかである。について・・・信託法26条(受託者の権限の範囲)。信託監督人の同意を要するなどの制限の定めがある場合に、信託財産の管理方法(不動産登記法97条1項9号)として。信託監督人の記載が出てくる場合、第三者が不動産取引に入る前に信託監督人が誰なのか、公示する必要があると考えます。よって、上の信託財産の管理方法に信託監督人の記載がある場合は、信託監督人の表示(住所・本店・主たる事務所、氏名・商号など。)をその他の信託条項(不動産登記法97条1項11号)として登記する必要があると考えます。

【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(12)

登記研究76号P33、昭和29年2月18日民事甲第364号民事局長通達 「株主総会で議長に一任された取締役の解任、選任の登記について(商通第十五号)」

 最後に株主総会の決議が必要。

登記研究238号P44、昭和42年7月6日民事甲第2047号民事局長回答 「登記事務の取扱について」

登記研究166号P45、昭和36年4月24日民事甲第977号民事局長指示 登記官吏会同決議「大阪法務局管内登記課長会同決議」

 取締役の出席を拒否したなどの事由がない限り、株主総会決議の取消事由とはならない。登記研究457号P136、1986年2月28日発行、神崎 満治郎:法務省民事局第一課補佐官「【先例漫歩】商業・法人登記の実務(8)――第5 株主総会」

登記研究698号P73、平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 役員選任決議の効力が有効な期間内は、定款に定めがなくても補欠の取締役を選任することができる(会社法332条、会社法施行規則96条)。登記研究665号P150、平成15年4月9日法務省民商第1079号民事局商事課長通知「定時株主総会における社外監査役補欠者の予選の可否について」補欠監査役の選任に関する定款の定めがある場合、定時株主総会において、社外監査役の予選を行うことができる。定時株主総会の後、補欠者の就任までの間に、新株発行等により株主構成に変動がある場合も同様。

登記研究698号P73、平成18年3月31日、民商第782号民事局長通達 「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

登記研究698号P73、平成18年3月31日、民商第782号民事局長通達 「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 定款を変更して取締役の任期を伸長した場合には、現任の取締役の任期も、特別の事情がない限り伸長される。登記研究506号P31、1990年3月30日発行 柳田 幸三:法務省民事局第四課長、渋佐 愼吾:法務省民事局付、竹田 盛之輔:法務省民事局第四課補佐官、門田 稔永:法務省民事局第四課補佐官、井内 省吾:法務省民事局第四課係長、宮田 和一:法務省民事局第四課係長、藤部 富美男:法務省民事局第四課係長「【論説・解説】 株式会社に関する先例をめぐって(29)」約委任の就任に関する会社と役員間の委任契約については、特段の意思表示がない限り、定款所定の任期内ということが委任契約の内容に含まれると解釈。

登記研究184号P57、昭和37年10月15日民事四発第215号民事局第四課長回答「登記研究問題の決議について」

 定時株主総会で、増員・補欠取締役の任期についての定めを設ける定款変更の決議を行い、同じ定時株主総会において前取締役を任期満了を原因として改選を行うことができる。

登記研究135号P36、昭和33年12月23日民事甲第2655号民事局長回答「株式会社の役員の任期について」

 定款が定める期間内に定時株主総会が開催されなかった場合の取締役の任期は、定款の定めによって株主総会が開催されるべきであった期間の終了時に人気が満了すると取り扱うことができる(会社法332条)。

登記研究170号P79、昭和36年8月8日民事甲第1909号民事局長指示 ◇登記官吏会同決議◎津地方法務局管内登記官吏会同決議

 定時株主総会が延期・続行となった場合の取締役の任期満了の日。

登記研究736号P178、2009年6月30日【質疑応答】〔七八九二〕「取締役の全員の改選の決議に係る定時株主総会の継続会が開催されなかった場合における取締役の任期と選任懈怠について」

 取締役の全員の改選の決議に係る定時株主総会の継続会が開催されなかった場合、再度臨時株主総会で取締役の全員が改選されたとき。

登記研究333号P73、1975年8月20日第六部質疑・応答五一八〇「株式会社の役員の変更登記における重任の概念について」

 取締役が定時株主総会の終結と同時に辞任し、同じ定時株主総会で取締役に選任決議、就任承諾があった場合の登記原因

登記研究409号P86、1982年1月30日第六部質疑応答【六〇三一】役員の重任登記と氏名の変更又は更正の登記の要否

 登記申請書における役員の氏名が登記簿に記録されている役員の氏名と相違している場合、役員を選任した株主総会議事録などで役員の氏名が同一人と認められる場合の変更・更生登記の要否。戸籍抄本、住民票抄本などを添付。

登記研究808号P111、平成27年2月20日法務省民商第18号法務省民事局長通達「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 取締役の住所を確認する書面について。

登記研究325号P73、1974年12月20日第六部質疑・応答五一二六「取締役等が就任を承諾したことを証する書面について」

 役員を選任した株主総会議事録に、選任された役員の記名押印がない場合に就任承諾書として取り扱うことの可否。

登記研究386号P100、1980年1月30日第六部質疑応答【五七五五】「未成年者の取締役の就任について」

 未成年者の法定代理人が創立総会議事録において、未成年者の取締役就任について同意していることの記載がない場合で、法定代理人が署名押印しているときの、法定代理人の同意書の要否。

関連

登記研究409号P79、昭和56年11月9日民四第6427号法務省民事局第四課長回答「株式会社の取締役を特定するために生年月日を登記することの可否について」

 取締役に同姓同名の者がいる場合。

登記研究906号P68、令和4年8月25日法務省民商第411号法務省民事局長通達「商業登記規則及び電気通信回線による登記情報の提供に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 登記可能な旧氏・提出する戸籍抄本等の範囲。

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』第12章民事信託の補充論点と今後の活用

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令、第12章民事信託の補充論点と今後の活用。

Q958、遺言代用信託と成年後見人の権限の限界、現に、信託設定の後に、高齢者本人である委託者兼受益者の法定代理人として就任した後見人が、信託終了や受託者解任の意思表示を行うことで、本人の全体財産の管理を可能とするような試みがあると聞く(委託者兼受益者の後見人にとっては、信託の存在が、本人のための財産管理を計画し、遂行するうえで邪魔になると感じられる場合があるという)。について・・・後見人が委託者兼受益者(本人)の法定代理人として各種権限を行使することは、本人の身上監護・財産管理のために必要であれば、行使する義務があると考えます。ただし、権限行使の際は、受託者との話し合いや、家庭裁判所への事前の情報提供と意思決定判断の根拠を示す過程を経て行われるのが委託者兼受益者(本人)のためになるのではないかと思います。

Q959、成年後見人による信託変更権限(その1)、現に高齢で認知症である委託者兼受益者の生活支援を優先し、現在の弱者保護を図るべきか、あるいは、将来実現されるべき財産の承継の確実性を図るべきか、双方の目的の間で利益相反が生じている可能性もある。について・・・現に高齢で認知症である委託者兼受益者の生活支援が優先になると考えます(民法858条)。利益相反が生じる余地があるのか、信託行為の条項によるのかもしれませんが、分かりませんでした。

Q960、残余財産受益者の追加と受益権割合の変更であり、代理権の濫用行為になると考えられるので、成年後見人による信託変更行為は、無効となるという見解がある。しかしながら、遺言と信託は異なる制度なので、最終的な解釈がどうなるか、現段階ではよくわからないところが実情であろう。について・・・考え方としては、信託行為に信託変更・終了に関する信託行為の別段の定めはない、と本書では記載されていることから、受託者が合意するならば、信託の変更を行うことが可能となります(信託法149条1項)。また、信託の目的に反しないことが明らかである場合、成年後見人は単独で、信託の変更を行うことが出来ることになります(信託法149条2項)。

 論点としては、信託の目的に反しないことが明らか、という判断は、信託行為全体から行うことから難しい場面があることだと思います。受託者が辞任する可能性もあるのではないかと思います。信託の変更に関して、家庭裁判所が判断できるのか、委託者が契約当事者となって定めた残余財産受益者の受益割合を、1人から3人に変更して1:1:1に変更する合理的な理由があるのか、裁判所の判断になる可能性が出てくるのではないか、その場合の金銭面、時間、精神的コストと比較して他の方法を探ることは出来ないのか、などを考えて判断・決定していくことになると思います。

Q965、受益者代理人が保護すべき受益者の範囲、残余財産受益者となるべき者として指定された者の場合、信託終了の以前から受益者として監督機能を有していると言われるが、残余財産受益者となるべき者として指定された者と、信託期中の第二次、第三次受益者となるべき者として指定された者との違いは何かなどの疑問の声もあり、必ずしも議論が安定しているというわけではないことに注意しておきたい。について・・・委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例(信託法90条1項)では、委託者(兼受益者)の死亡の時までは、受益権を取得していないので、信託期中の第二次、第三受受益者となるべき者として指定された者は、監督機能を持っていないと考えます。

Q966、信託監督人が保護すべき受益者の範囲、について。・・・解説は、信託法の公平義務の範囲内で、未存在の受益者の利益を図ることができる、という記載であり、信託法の条文の範囲内であると考えます。

Q972、受託者の権限濫用、不正行為等、受託者の解任に関しては、信託財産に利害関係を有する受託者が帰属権利者に指定されているような場合どうなるのか(信託条項の定め次第では帰属権利者たる地位だけ残るのか)、について・・・受託者を解任するかどうかと帰属権利者たる地位に関しては別なので、信託条項に別段の定めがなければ、帰属権利者たる地位だけ残るのが原則だと考えます。

 解任により損害が生じたといえるのか、について・・・やむを得ない事由がある場合(信託法58条2項但し書き)とはどのような場合なのかを考えて判断することになると考えます。例えば受託者が病気で信託事務を処理することが出来ない場合等。受託者が帰属権利者に指定されているような場合に解任することは、不利な時期の解任(信託法58条2項本文)には該当しないと考えます。受託者の地位と残余財産の帰属権利者の地位は異なるからです。

 信託行為の定めで信託監督人に対しても受託者解任権を付与することができるのか、について・・・消極に解します(金森健一『民事信託の別段の定め 実務の理論と条項例』2022、日本加除出版、P205)。

Q976、受益権差押の禁止、P1183の受益者は受益権の誤植だと思います。民事信託分野において、いわゆる民事信託による福祉型信託の高齢者、認知症患者、障碍者に対する生活支援のための受益権は、帰属上・行使上の一身専属兼なのか否か、一身専属権なのか否か、未だ議論が深められていない。について・・・受益権に対する差押えは、民事執行法上の債権差押え(民事執行法143条~)と同様に行われ、差押禁止財産の範囲で制限される(民事執行法152条)という考え方がしっくりきます。

Q984、日本における撤回可能自己信託の可能性、論点1は、米国における信託宣言による撤回可能信託は、当初、委託者兼受託者兼受益者であるが、日本の信託法上、委託者兼受託者兼受益者とすると1年で信託が終了してしまうー中略ー。そこで、遺言代用信託の第二次受益権が定められ、それを委託者が取得していないことをもって、当初受益権とは別の受益権が存在するものと考えて(受益権の全部を有するわけではないと考えて)、信託法163条2号の適用はないと考えることができるのか。について・・・どのような考え方で適用があると考えるのか分からないので、適用がないと考えることは可能だと考えます。

 論点2は、第二次受益者に対して監視・監督権を付与することで、信託法163条2号を前提とする受託者と受益者の信頼関係および監督関係という信託の構造が認められると考えて、1年で終了しない状態であるということができるのか。について・・・1年で終了する場合の考え方が分からないので、1年で終了しない状態であるということも可能だと考えます。

 3つ目の論点として、自己信託の受託者を第三者に変える受託者変更は、信託法上可能なのか。例えば、不動産登記手続における受託者変更手続はどうなるのか。について・・・信託法上、禁止されていないので可能だと考えます。不動産登記手続における受託者変更手続は、新受託者と、前受託者・任意後見人、補助人、保佐人、成年後見人などの共同申請により行われると考えます。

経済産業省「スタートアップ育成に向けた政府の取組スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」

経済産業省「スタートアップ育成に向けた政府の取組スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する」

2024年9月

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/index.html

・経済産業省が現在考えるスタートアップの定義

スタートアップとは① スタートアップとは、一般に、以下のような企業をいう。

1. 新しい企業であって、

2. 新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、

3. 急成長を目指す企業

エンジェル税制

https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angeltax/index.html

・経済金融活性化特別地区によるエンジェル税制の特例

名護市HP

https://www.city.nago.okinawa.jp/kurashi/2021052700036

税の種類

所得税(特区版エンジェル税制)

根 拠

沖振法第57条の2、租税特別措置法第37条の13・第37条の13の2・第41条の19

租税特別措置法施行令第25条の12、所得税法第78条

対象法人

沖縄県知事の指定を受けた対象法人(指定会社)へ投資を行った個人に対する特例措置

※エンジェル税制に係る「指定」を受けるためには、まず「事業認定」を受けることが必要です。

内容

1.指定会社へ投資した年(1と2の選択制)

 1 「投資額-2,000円」を総所得金額から控除

 2 投資額を他の株式譲渡益から控除

2.指定会社の株式を売却した年

 売却により生じた損失を、翌年以降3年にわたって、他の株式譲渡益と通算(相殺)可能

※通常のエンジェル税制の要件を緩和(研究者等人数要件や赤字要件なし)

【参考】外形標準課税(減資対応)の制度変更について

外形標準課税の対象外となっている中小企業やスタートアップ(資本金1億円以下)について、引き続き対象外(新設法人も、事業年度末日時点で資本金1億円以下であれば対象外)。

ただし、当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人(資本金1億円超)であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象となる(令和7年4月1日施行予定)。

対象外

地域を支える中小企業が成長するために、自己資本の充実・資本蓄積の結果、資本剰余金が増加した場合。

「スタートアップの創業等のための融資・保証制度」

スタートアップ創出促進保証

「未公開株式の公正価値評価の促進」

・投資事業有限責任組合会計規則について

https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/kumiaihou.html

インパクトコンソーシアム

窓口:EY新日本有限責任監査法人(事務局:金融庁 総合政策局総合政策課)(共同事務局:経済産業省 経済産業政策局新規事業創造推進室)

ロールモデルとなるスタートアップの表彰

J-Startup

https://www.j-startup.go.jp/?lang=ja

第4次選定から総務省、文科省、厚労省、農水省、国交省、環境省が推薦する有識者及びインパクト投資・インパクトスタートアップ分野の有識者を委員に追加し、新たに50社を選定。各種補助金等における優遇、民間企業「J-Startup Supporters」との連携支援などの取組を実施。

・・・あえて選定されない選択肢もあるのかなと思いました。選定された後、資金調達など長期に渡る支援を受けていなければ、選定を取り下げてもらう個とも出来るのか、分かりませんでした。

J-Startup Impact  インパクトスタートアップ支援プログラム

https://www.meti.go.jp/press/2023/10/20231006008/20231006008.html

外部有識者の推薦などに基づき、ロールモデルとなることが期待されるインパクトスタートアップ(社会的・環境的課題の解決や新たなビジョンの実現と、持続的な経済成長をともに目指す企業)を「J-Startup Impact」企業として選定し、官民連携で集中支援するプログラム。

J-Startup 地域版スタートアップ育成支援プログラム

https://www.j-startup.go.jp/local_3

J-startup OKINAWA

https://www.ogb.go.jp/keisan/policy_list/policy_01/startup

EF Polymer株式会社

https://ja.efpolymer.com

HelloWorld株式会社

株式会社Alpaca.Lab

https://alpacalab.jp

LiLz株式会社

https://lilz.jp

株式会社Payke

https://payke.co.jp

スタートアップ支援に積極的な地方自治体と連携し、政府の施策での加点や、J-Startupサポーターズからの支援等の各種施策を通じ、東京に集中するヒト・モノ・カネを地方へ流入させることで、地方でのスタートアップの成長の促進とエコシステムの拡大を目指す。

新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等(※)の一部を改正する法律

2024年9月2日

https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240902001/20240902001.html

税理士法人における社員の資格変更

税理士法人の社員の資格変更

社員A

代表社員 B

と社員2名が登記されている税理士法人。社員Aも税理士法人を代表することが出来るようにするために。理由は社員Aが従たる事務所における唯一の社員であるため、従たる事務所の近くで金融機関口座を開設したいなど。

税理士法人を代表する社員

税理士法

https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237#Mp-Ch_5_2

48条の21(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び会社法の準用等)において準用する会社法599条。

会社法

https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086#Mp-Pa_3-Ch_3-Se_2

(持分会社の代表)

第五百九十九条 業務を執行する社員は、持分会社を代表する。ただし、他に持分会社を代表する社員その他持分会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。

2 前項本文の業務を執行する社員が二人以上ある場合には、業務を執行する社員は、各自、持分会社を代表する。

3 持分会社は、定款又は定款の定めに基づく社員の互選によって、業務を執行する社員の中から持分会社を代表する社員を定めることができる。

4 持分会社を代表する社員は、持分会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

・税理士法人の社員は、原則として、全社員が代表です。しかし、社員Aは現在、会社法599条1項但し書きにより、代表権を制限されている状態といえます。社員Aに税理士法人の代表権を持たせるためには、制限されている代表権を解くため、代表社員Bを資格変更により社員Bとする登記申請を行うための準備が必要となります。

・総社員の同意書(今回は定款で代表社員を定めていたため、定款変更に係る税理士法48条13)。

・社員Aの印鑑届を行う場合は印鑑届出書・印鑑カード交付申請書など(組合等登記令1条、別表記載により税理士法人の登記について組合等登記令を適用。組合等登記令25条で準用されている商業登記法9条、9条の4など。)。

・登録免許税・・・非課税(課税根拠が記載されている法令がないため。)。

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