信託契約書
信託の終了
1、信託の終了事由が発生することによって、原則として信託が清算の手続きを開始する(信託法175条、176条)。
・信託財産破産(破産法244条の2~244条の13、信託法175条、179条)
・信託の終了に関するリスク
(1)信託法、信託行為の定めにない方法による終了
(2)終了により、信託財産を引き渡すことができない
(3)貸金を誰に請求すれば良いか分からない
(4)信託債権者からの信託財産差押え
(5)受益者(受益債権者)からの信託財産差押え
(6)残余財産の受益者、残余財産の帰属権利者からの信託財産の引き渡し請求
(7)受益者の相続人からの遺留分請求
(8)清算受託者が決まらない、決まっても仕事をしない。亡くなった後、後任を決める定めがない
【条項例】
(信託の終了)
第○条 本信託は、次の場合に終了する。ただし、信託法164条1項を適用しない。
(1)
(2)
(3)
(信託の終了)
第○条
1 本信託は、委託者、受託者及び受益者の合意により、将来に向かってこれを終了させることができる。ただし、信託法第164条1項の規定による終了の場合を除く。
2 本信託は、前項の場合のほか、次に掲げる事由により終了する。
(1) 委託者が死亡したとき。
(2) 信託財産が無くなったとき。
(3) その他法定の終了事由に該当するとき
信託していない他の通帳の預貯金に関しても、信託財産として残余財産の受益者または残余財産の帰属権利者に渡す場合
【条項例】
(信託の終了)
第○条 本信託は、次の場合に終了する。ただし、信託法164条1項を適用しない。
(1)
(2)
(3)
2 本信託終了時における受益者の全ての預貯金は、その預貯金にかかる債務返済後に信託財産とする。
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受託者 第三者への委託
1、第三者への委託が可能な場合
(1)信託行為に定めがあるとき
(2)信託行為に定めがない場合は、信託の目的を達成するために必要なとき。
(3)信託行為で禁止されている場合は、信託の目的を達成するために仕方がない事情があるとき。
2、第三者は、誰か
(1)第三者ではない人⇒当然に委託できるから、信託行為に記載しなくても良い。
ア 弁護士、税理士、司法書士、宅地建物取引士などの専門家[1][2]
イ タクシー、宅配便など
(2)第三者となり得る人
ア 委託者
イ 受益者
ウ 共同受託者(信託法82)
ア、ウについては、もちろん無理との指摘[3]がありますが、その理由について受益者の利益のためだとあり、委託者や共同受託者の1人が受託した方が受益者の利益になる場合もあるので妥当とはいえません。
3、委託する事務の範囲
(1)限界の判断
例えば、全部の個別的な事務を委託しても良いか。
信託の有効要件に当てはまるか、文脈を個別に判断する。
4、責任
(1)受託者の責任
第3者への委託が受託者の注意義務の水準からして適法な場合は、委託先の選任・委託契約の内容のみについて責任を負う。 適法な場合とは、信託法28条と受託者の信託事務を処理するについての一般的な義務(忠実義務など)に違反していないこと。受託者が負う第三者への選任・監督義務、受益者への通知義務などを排除する信託は、信託制度の否定との指摘[4]がある。しかし、各種義務が信託行為によって排除されたとしても、受託者は忠実義務、善管注意義務を負っており、排除する規定がある信託が、すぐに信託制度を否定すると考えることはできない。
違反したために信託財産に損害を与えた場合は、損失の穴埋め(信託法40条)。
(2)第三者の責任
受託者との委託契約上の責任。信託とは関係がない。
【条項例】
第○条
1 受託者は、信託事務の一部について必要があるときは、受託者と同様の管理方法を定め、第3者へ委託することができる。
(1) 委託先○○(住所、生年月日、受託者との関係)について委託する事務の内容は、以下のように受託者が仕事などで処理できない場合の日中の事務とする。
(ア)預貯金の引落し及び信託事務処理費用の支払い
(イ)官公庁における諸手続き
第○条
1 受託者は、信託財産の事務の一部の処理につき、必要な場合は専門知識を有する第三者に委託することができる。
信託法
第三章 受託者等
第一節 受託者の権限
(信託事務の処理の第三者への委託)
第28条 受託者は、次に掲げる場合には、信託事務の処理を第三者に委託することができる。
一 信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めがあるとき。
二 信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき。
三 信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき。
(信託事務の処理の委託における第三者の選任及び監督に関する義務)
第35条
1 第二十八条の規定により信託事務の処理を第三者に委託するときは、受託者は、信託の目的に照らして適切な者に委託しなければならない。
2 第二十八条の規定により信託事務の処理を第三者に委託したときは、受託者は、当該第三者に対し、信託の目的の達成のために必要かつ適切な監督を行わなければならない。
3 受託者が信託事務の処理を次に掲げる第三者に委託したときは、前二項の規定は、適用しない。ただし、受託者は、当該第三者が不適任若しくは不誠実であること又は当該第三者による事務の処理が不適切であることを知ったときは、その旨の受益者に対する通知、当該第三者への委託の解除その他の必要な措置をとらなければならない。
一 信託行為において指名された第三者
二 信託行為において受託者が委託者又は受益者の指名に従い信託事務の処理を第三者に委託する旨の定めがある場合において、当該定めに従い指名された第三者
4 前項ただし書の規定にかかわらず、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
信託業法
第二章 信託会社
第三節 業務
(信託業務の委託)
第22条
1 信託会社は、次に掲げるすべての要件を満たす場合に限り、その受託する信託財産について、信託業務の一部を第三者に委託することができる。
一 信託業務の一部を委託すること及びその信託業務の委託先(委託先が確定していない場合は、委託先の選定に係る基準及び手続)が信託行為において明らかにされていること。
二 委託先が委託された信託業務を的確に遂行することができる者であること。
2 信託会社が信託業務を委託した場合における第二十八条及び第二十九条(第三項を除く。)の規定並びにこれらの規定に係る第七章の規定の適用については、これらの規定中「信託会社」とあるのは、「信託会社(当該信託会社から委託を受けた者を含む。)」とする。
3 前二項の規定(第一項第二号を除く。)は、次に掲げる業務を委託する場合には、適用しない。
一 信託財産の保存行為に係る業務
二 信託財産の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする業務
三 前二号のいずれにも該当しない業務であって、受益者の保護に支障を生ずることがないと認められるものとして内閣府令で定めるもの
(信託業務の委託に係る信託会社の責任)
第23条
1 信託会社は、信託業務の委託先が委託を受けて行う業務につき受益者に加えた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、信託会社が委託先の選任につき相当の注意をし、かつ、委託先が委託を受けて行う業務につき受益者に加えた損害の発生の防止に努めたときは、この限りでない。
2 信託会社が信託業務を次に掲げる第三者(第一号又は第二号にあっては、株式の所有関係又は人的関係において、委託者と密接な関係を有する者として政令で定める者に該当し、かつ、受託者と密接な関係を有する者として政令で定める者に該当しない者に限る。)に委託したときは、前項の規定は、適用しない。ただし、信託会社が、当該委託先が不適任若しくは不誠実であること又は当該委託先が委託された信託業務を的確に遂行していないことを知りながら、その旨の受益者(信託管理人又は受益者代理人が現に存する場合にあっては、当該信託管理人又は受益者代理人を含む。第三号、第二十九条の三及び第五十一条第一項第五号において同じ。)に対する通知、当該委託先への委託の解除その他の必要な措置をとることを怠ったときは、この限りでない。
一 信託行為において指名された第三者
二 信託行為において信託会社が委託者の指名に従い信託業務を第三者に委託する旨の定めがある場合において、当該定めに従い指名された第三者
三 信託行為において信託会社が受益者の指名に従い信託業務を第三者に委託する旨の定めがある場合において、当該定めに従い指名された第三者
[1]四宮和夫『信託法』有斐閣 平成元年 P236~P237
[2] 道垣内弘人ほか『信託法セミナー2』P33
[3] 遠藤英嗣『新しい家族信託』日本加除出版 P225~。なお、信託事務処理代行者と第3者へ委託した場合の委託契約の受託者との違いについて不明。
[4]遠藤英嗣『新しい家族信託』日本加除出版 P226~。
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受託者の債務と個人の債務
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信託財産限定責任負担債務
参考
道垣内弘人『信託法』2017有斐閣
村松秀樹『概説 新信託法』2008きんざい
寺本昌広『逐条解説 新しい信託法』2007商事法務
【条項例】
第〇条 受益者は、本信託に基づき受託者に対して負担する債務につき、本信託契約において定める責任財産の限度においてのみ、履行の責任を負う。
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