加工司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドライン

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00607.html

司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドライン

令和6年4月1日 法務省・日本司法書士会連合会

目   次 第1 本ガイドラインの目的等 …………………………………………… 2

1 本ガイドラインの目的 …………………………………………….. 2

2 本ガイドラインの基本的な考え方 …………………………………….. 3

  •  リスクベース・アプローチの位置付け ……………………………….. 3
  •  監督指導等の指針 ………………………………………………. 4

第2 司法書士に求められる取組み ………………………………………… 4

1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ ………………………. 4

  •  リスクベース・アプローチの意義 …………………………………… 4
  •  リスクの特定及び評価 …………………………………………… 5
  •  リスク低減措置 ………………………………………………… 6
  •  リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応 … 8

 2 犯収法上の義務との関係 …………………………………………… 9

第3 監督指導等の対応 ………………………………………………… 9

1 基本的な考え方 ………………………………………………….. 9

2 司法書士会による監督指導等 ……………………………………….. 10

3 法務大臣等による監督 ……………………………………………. 10

第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等 ………………………………… 11

 1 日司連による手引の策定 ………………………………………….. 11

2 司法書士会によるアウトリーチ等 ……………………………………. 11

 3 その他留意事項 …………………………………………………. 11 

第1 本ガイドラインの目的等

1 本ガイドラインの目的

 経済・金融サービスのグローバル化、暗号資産の普及といった技術革新により、資金の流れが多様化し、国境を越える取引が容易になっている中で、マネー・ローンダリングやテロ資金供与(以下「マネロン・テロ資金供与」という。)の手口も複雑化・高度化している。 こうした資金の流れを放置すると、不正な資金が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に利用され、組織的な犯罪及びテロリズムを助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えるおそれがあり、我が国や国際社会にとっての大きな脅威につながる。

 このため、国際社会においては、不正な資金の移転が、国境を越え、脆弱な規制や不十分な対策の隙をついて行われるという認識のもと、金融活動作業部会(Financial Action Task Force(以下「FATF」という。))の多国間枠組みを通じて、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散活動への資金供与への対策の国際基準(以下「FATF基準」という。)の策定・履行を協調して行い、世界全体での対策の実効性向上を図っている。我が国でも、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯収法」という。)等を制定するなどして、FATF基準の履行を図っている。

 犯収法は、令和4年12月に改正され(国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和4年法律第97号))、司法書士を含む一定の資格者に義務付けられる取引時確認事項が、犯収法第4条で規定する全ての事項に及ぶこととなった。司法書士及び司法書士法人(以下、両者を併せて「司法書士」という。)については、日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。)が特定取引において果たすべき確認事項を示すチェックシートのモデルを作成し、これに基づいて司法書士が取引時確認の義務を果たすこととなる。また、司法書士は、犯収法第8条に規定される疑わしい取引の届出義務が課されないこととなったが、当該義務に代わる自主的な制度として、各司法書士会(以下、日司連と併せて「日司連等」という。)の会則において「特別事件報告」の制度が設けられた。

 しかし、社会情勢等が刻々と変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に対応し、個々の依頼についてマネロン・テロ資金供与を目的とするものか否かを的確に判断するためには、これまで行われてきた、法令等の整備によるいわゆる「ルールベース・アプローチ」に基づく対策のみでは不十分であり、司法書士が直面するリスクに応じた柔軟な対応を取ることが不可欠である。

 そこで、本ガイドラインは、司法書士を対象とする「リスクベース・アプローチ」の枠組みを示し、これを遵守させることを目的とするものである(リスクベース・アプローチは、FATFによるマネロン・テロ資金供与対策に関する勧告における基本原則とされており、司法書士を含む特定非金融業者及び職業専門家(DNFBPs)に対しても遵守が求められている。)。リスクベース・アプローチは、自らの業務について直面しているマネロン・テロ資金供与のリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、リスクに見合ったリスク低減措置(資産及び収入の状況の確認を含む。)を講ずることをいい、司法書士が業務を行う上での姿勢を示すものである。

 また、司法書士の業務におけるマネロン・テロ資金供与への対策を実効的なものとするために、法務省、日司連等が行うべき取組みや司法書士に対するモニタリングのあり方について明らかにする必要がある。法務省、日司連等が本ガイドラインを踏まえたマネロン・テロ資金供与対策への対応状況等についてモニタリングを行い、適切な是正措置を行うことで司法書士が果たすべき執務の一層の適正化を図るものである。

2 本ガイドラインの基本的な考え方

  •  リスクベース・アプローチの位置付け

 犯収法は、国民生活の安全と平穏を確保し、経済活動の健全な発展に寄与する上でマネロン・テロ資金供与の防止が極めて重要であること(犯収法第1条参照)に鑑みて、その防止のために特定事業者による措置等を規定している。このような法の趣旨及び目的並びに司法書士の職責(司法書士法(昭和25年法律第197号)第2条)に照らすと、司法書士は、自らの業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であると認めた場合には、その依頼を受けてはならないことになる。そのため、自らの業務に関する依頼を受けようとするときは、その依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否かについて慎重かつ的確に検討しなければならない。また、その検討の結果、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できない場合についても、その依頼を受けてはならない。

 リスクベース・アプローチは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否かを検討するための合理的な方法であり、司法書士は、自らの行う業務がマネロン・テロ資金供与に利用されないことが極めて重要な社会的責務であることに鑑みて、全ての依頼について、マネロン・テロ資金供与に関するリスク(以下単に「リスク」という。)の観点から、犯収法等の趣旨を踏まえ、リスクベース・アプローチに基づく対応を行わなければならない(リスクベース・アプローチに基づく検討を行うまでもなく依頼の目的がマネロン・テロ資金供与を目的とすることが明らかである場合には、当然、その依頼を直ちに拒否しなければならない。)。

  •  監督指導等の指針

 マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、司法書士会及び法務省が、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策の取組状況についてモニタリングを行う必要がある。また、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が明らかに不十分であるなどの場合には、監督指導による是正が必要となる(以下、モニタリング及び監督指導を合わせて「監督指導等」という。)。 このような監督指導等の具体的な内容は、司法書士がマネロン・テロ資金供与に関わるリスク(以下「監督上のリスク」という。)に応じて決められるべきである(第3を参照)。

第2 司法書士に求められる取組み

1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ

  •  リスクベース・アプローチの意義

 リスクベース・アプローチとは、司法書士が、業務に関して依頼を受けようとする際及び依頼を受けた後に、自らが直面しているリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、当該依頼を行うことが許容される程度にまで当該リスクを実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。

 リスクベース・アプローチの枠組みは、司法書士の業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与にあるか否かを検討するための基本原則であることから、本来的には、その適用対象は犯収法上の特定取引(犯収法第4条第1項)に限定されるものではなく、司法書士の業務(司法書士法第3条若しくは第29条に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務)のうち、依頼者のためにする行為又は手続に係る依頼全般に適用されるべきものである。

  •  リスクの特定及び評価

ア リスクの特定及び評価

  リスクの特定は、司法書士が、自らが依頼を受け、又は依頼を受けようとする行為や依頼者の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、マネロン・テロ資金供与に係るリスクを特定するものであり、リスクベース・アプローチの出発点というべきものである。

 リスクの特定について、司法書士は、司法書士の業務について依頼を受けようとする場合には、依頼者の属性、依頼者との業務上の関係、依頼内容及び依頼に関係する事実(例えば、不動産登記の代理申請の依頼においては、当該申請の登記原因に係る事実)等の事情を包括的かつ具体的に検討した上で、これらを総合的に考慮してリスクを特定しなければならない。

 また、依頼を受けたであっても、同様にこれらの事情について新たなリスクが判明した場合には、これを踏まえてリスクの特定を検討する必要がある。そして、司法書士は、特定されたリスクについて、自らへの影響度等を踏まえて総合的な評価を行い、その依頼について高リスクであるか否かの判断を行わなければならない。

 このようなリスクの特定及び評価は、リスク低減措置の具体的な内容を基礎付けるものであり、リスクベース・アプローチの土台となるものである。

 イ 高リスクの依頼

 高リスクとは、その依頼を受けようとする場合に、特定したリスクの評価の結果、司法書士会の会則(以下「会則」という。)で定められた依頼者等の本人であることの確認並びに依頼の内容及び意思の確認(以下「依頼者等の本人確認等」という。)の義務や犯収法で規定された取引時確認等の義務を履行するだけでは許容されない程度のリスクが残ることをいう。

 ここで、「許容されない程度のリスク」とは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できないことを意味している。この場合には、後記⑶アのとおり、追加的なリスク低減措置が講じられなければならない。

ウ リスクの特定及び評価の具体的方法

 司法書士は、リスクの特定及び評価に当たっては、自らの有する情報のほか、後述するリスクベース・アプローチに関する解説や国家公安委員会作成の「犯罪収益移転危険度調査書」(以下「危険度調査書」という。https://www.npsc.go.jp/policy/)などを参照したり、法務省等の関係省庁から提供される情報や日司連等から提供される情報等を踏まえたりするなどして、高リスクであるか否かの判断を適切に行うように努めなければならない。

 また、特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する場合には、依頼を受けた後においてもリスクの特定及び評価が必要とされる場合がある。

  •  リスク低減措置

ア リスク低減措置としての顧客管理

 前記⑵で特定及び評価されたリスクを許容される程度に実効的に低減するための措置を講ずることは、マネロン・テロ資金供与対策の実効性を決定付けるものである。リスク低減措置のうち、特に個々の依頼者に着目し、自らが特定及び評価したリスクを前提として、個々の依頼者の情報や当該依頼者の依頼内容等を調査し、調査の結果をリスク評価の結果と照らして、講ずべきリスク低減措置を判断及び実施する一連の流れを、本ガイドラインにおいては「顧客管理」という。リスク低減措置の中核的な事項である。

 依頼者との個別的な契約締結を前提とする司法書士の業務において、リスク低減措置は、通常、個々の依頼者を単位として講じられることとなる。そこで、司法書士は、特定及び評価されたリスクについて、個々の依頼者に着目したリスク低減措置を講ずることが基本となる。 顧客管理は、依頼を受けようとする際の顧客管理(以下「依頼時の顧客管理」という。)と依頼を受けた後の顧客管理(以下「依頼後の顧客管理」という。)に分けることができる。

 一般的にいえば、単発的な不動産登記手続の代理申請業務の多くは、依頼時の顧客管理のあり方が中心的な問題となり、財産管理業務など依頼者との間で継続的な関係が予定される場合には、依頼時の顧客管理に加えて依頼後の顧客管理のあり方も問題となることが多い。

イ 依頼時の顧客管理の内容

  依頼時の顧客管理は、依頼者等の本人確認等を典型例とする。講ずべき措置の内容は、特定及び評価されたリスクの内容及び当該リスクが高リスクであるか否かに応じて決められるべきである。本ガイドラインにおいては、高リスクと判断した場合に講ずべき顧客管理を「厳格な顧客管理」といい、高リスクではないと判断した場合に講ずべき顧客管理を「通常の顧客管理」という。 (ア)厳格な顧客管理(高リスクの場合)

  高リスクと判断した場合には、依頼者等の本人確認等を行うだけではリスクを許容される程度に低減することはできないため、追加的なリスク低減措置を講ずることが求められる。追加的なリスク低減措置の具体的な内容は、犯収法第4条第2項に規定する取引(以下「ハイリスク取引」という。)における追加的な確認方法及び後述するリスクベース・アプローチに関する解説や危険度調査書に記載された取組内容等を参照しつつ、司法書士が直面する具体的なリスクの内容に応じて決められるべきである。なお、高リスクと判断した場合には、その判断根拠や講じたリスク低減措置の内容について記録化しておくべきである。

  • 通常の顧客管理

  高リスクではないと判断した場合には、司法書士の職責上求められる依頼者等の本人確認等の義務や犯収法で規定された取引時確認の義務を履行することで、リスクを許容される程度に低減することができる(後述する「簡素な顧客管理」は、「通常の顧客管理」の一態様として整理される。)。

ウ 依頼後の顧客管理

 依頼者との契約に基づく財産管理業務に従事したり、同一の依頼者から継続的に登記申請手続の代理業務に従事したりする場合など、特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事するときには、依頼時の顧客管理によって低減されたリスクを依頼後も適切に管理しなければならない。これに加えて、業務に従事する過程で新たなリスクが判明した場合には、リスクの評価を行い、その内容に応じたリスク低減措置を講じなければならない。このように、依頼後の顧客管理は、継続的なリスク管理と新たなリスク等への対応に分けることができる。

  • 継続的なリスク管理

 継続的なリスク管理は、依頼時の顧客管理において取得した情報を更新していくことが想定されている。その更新の頻度については、高リスクであるか否かに応じて決められるべきであるが、依頼時の顧客管理を実行することにより許容される程度にリスクが低減されていることから、依頼後に新たなリスク等が生じたり、依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合を除いて、適切な顧客管理の実効性が妨げられない範囲で、取引の円滑な遂行等を考慮した顧客管理が許容される(以下、このような顧客管理を「簡素な顧客管理」という。)。

  • 新たなリスク等への対応

 特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する過程で新たなリスク等が判明したり、依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合には、依頼を受ける際と同様のリスク評価を行わなければならず、これによってその依頼が高リスクと判断された場合には、速やかに依頼時の顧客管理において取得した情報を更新するとともに、厳格な顧客管理として追加的なリスク低減措置を講じなければならない。その内容は、前記イ(ア)に記載したことが基本的には該当する。

  •  リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応

 リスクベース・アプローチに基づくリスク評価の結果、その依頼が高リスクと判断され、リスク低減措置を講じてもそのリスクが許容される程度まで減ぜられなかったときには、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場合に該当するとして、司法書士は、その依頼を拒まなければならず、受任後であれば、辞任しなければならない。

 依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場合であるかに関する判断過程は合理的なものである必要があり、前記⑴から⑶までのリスクベース・アプローチの手順に則ったものである必要がある。また、リスクが許容される程度を超えているかについては、リスク低減措置を講じた後に残るリスクの程度が、高リスクと同程度のものといえるかによって判断されることとなる。

 上記の枠組みは、依頼後に新たなリスク等が生じた場合についても同様に当てはまる。

 2 犯収法上の義務との関係

  前記1のリスクベース・アプローチは、司法書士の業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるかどうかを合理的に検討する枠組みであり、これをもって司法書士が犯収法上の義務の履行を免れるものではないことに注意する必要がある。

  例えば、司法書士は、リスクベース・アプローチの枠組みに基づき依頼を高リスクではないと判断した場合であっても、犯収法上の取引時確認等を要する取引類型については、これを実施しなければならないのは当然である。

第3 監督指導等の対応

 1 基本的な考え方

  マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、司法書士に対する適切な監督指導等が行われる必要がある。監督指導等は、大きく分けて、司法書士会による監督指導等と法務大臣又は法務局及び地方法務局の長による監督(以下「法務大臣等による監督」という。)に区別することができる。司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策には、犯収法上の取引時確認等や会則上の依頼者等の本人確認等のように、法令又は会則に基づいて司法書士による遵守が義務付けられている対策(以下「法令等に基づく対策」という。)と、リスクベース・アプローチのように、法令又は会則に基づいて義務付けられているものではないが、ガイドライン等によって取組みが求められている対策(以下「ガイドライン等に基づく対策」といい、法令等に基づく対策と合わせて「司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策」という。)が存在する。

 司法書士会による監督指導等は、法令等に基づく対策とガイドライン等に基づく対策の双方について行われるのに対し、法務大臣等による監督は、特に法令等に基づく対策の不遵守等を対象として行われることが想定されている。 司法書士会による監督指導等や法務大臣等による監督の方法は、いずれも監督上のリスクの内容及び性質、当該リスクの程度等に応じて決められるべきである。

2 司法書士会による監督指導等

  司法書士会は、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が十分であるかについてモニタリングを行う。司法書士会によるモニタリングは、司法書士から提出された特定事件報告書に基づいて行うこととなる(特定事件報告書は、司法書士会によるモニタリング等の基礎となるものであるから、その記載事項は、その時点での社会的情勢等に反映した適切なものとされなければならない。そのため、必要に応じて、記載内容は改定されることとなる。)。

 司法書士会は、特定事件報告書の記載内容を通じて司法書士のマネロン・テロ資金供与対策について確認を行う。特定事件報告書に記載された内容に照らすと司法書士が行うべきマネロン・テロ資金供与対策として不十分な措置がとられていると認めた場合には、当該司法書士から事情聴取をした上で、当該司法書士に対して適切な助言及び指導を行うこととなる。 特定事件報告書の性質やこれに基づいた司法書士会による助言及び指導の実効性を確保する必要性があることを踏まえると、司法書士が特定事件報告書の提出に全く応じない場合、特定事件報告書の内容に基づく司法書士会による助言や指導に従わず、執務の内容等に改善がみられない場合、特定事件報告書に虚偽の記載をした場合には、監督上のリスクが高いものとして、司法書士会による注意勧告等の的確な対応をとることが要請される。 日司連は、司法書士会に対し、司法書士会による監督指導等の対応指針を示し、助言及び指導を行うこととする。

3 法務大臣等による監督

 司法書士会は、その会に所属する司法書士に対する指導権限があることから、まずもって司法書士会による監督指導等によって改善が図られることとなる。 しかし、司法書士会による監督指導が功を奏しない事案、法令等の違反の程度が重大である事案、司法書士会による自治的な取組みに委ねることが相当でない事案など、監督上のリスクが特に高いと認められる場合には、法務大臣等による監督が検討されなければならない。

 法務大臣等による監督は、犯収法上の監督権限(犯収法第15条以下)及び懲戒権限(司法書士法第47条及び第48条)の行使を通じて行われる。

 法務局及び地方法務局の長は、犯収法上の監督権限として、報告等を求める権限(同法第15条)、立入検査等の権限(同法第16条第1項)、指導等の権限(同法第17条)及び是正命令の権限(同法第18条)を有している(犯収法第15条以下、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成20年政令第20号)第35条。

 なお、罰則規定につき犯収法第25条、第26条及び第31条)。また、法務大臣は、司法書士法上、司法書士に対する懲戒権限を有しており、「司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)」において、犯収法違反を伴う本人確認等義務違反が違反行為として明記されている(別表番号8及び15)。

  法務大臣等による監督は、対象となる事案の性質及び内容、法令等の違反の程度、それぞれの権限の性質や趣旨を踏まえて、どの措置をとるかが決定されるべきである。また、具体的な法務大臣等による監督の内容は、司法書士による法令等の違反の内容やその程度等から評価される監督上のリスクに応じて決定されるべきである。

第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等

1 日司連による手引の策定

 司法書士がリスクの特定及び評価を適切に行い、実効的なリスク低減措置を可能とするためには、広くマネロン・テロ資金供与に関する最新の情報を収集し、分析することが有益である。そこで、日司連は、司法書士会と連携して参考事例を集積及び分析し、リスクベース・アプローチに基づく対応を行う上で参考となる事項をまとめた手引を策定し、司法書士に提供するものとする。

 リスクベース・アプローチに関する解説の内容は、社会情勢等が日々大きく変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に対応するために、定期的に更新されることが想定される。

2 司法書士会によるアウトリーチ等

 司法書士会は、日司連及び法務省とも連携しつつ、リスクベース・アプローチその他のマネロン・テロ資金供与への対策に関する情報を、引き続き研修その他の機会を通じて司法書士に提供するものとする。また、日司連は、関係機関からの情報提供を受けたり、関係機関との間で意見交換等をしたりすることで、適時情報を把握して、司法書士会を通じて会員に情報提供をするものとする。

3 その他留意事項

 日本では、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)や国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号)に基づいてタリバーン関係者やテロリスト等に対し、資金その他資産の使用・資金の流れを防止するための資産凍結措置を実施している。司法書士においても、個々の依頼者に着目するほか、下記の対応をとることが求められる。

・取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)等)について最新の制裁リストと照合するなど、的確な運用を図ること

・制裁対象者が新たに指定された際には、遅滞なく、特定受任行為の代理等の依頼者に係る情報と照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずること

家族信託の相談会その66

お気軽にどうぞ。

2024年5月24日(金)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
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その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障害を持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

登記研究914号(令和6年4月号)

登記研究914号(令和6年4月号)テイハン

https://www.teihan.co.jp/book/b10081494.html

【論説・解説】

■「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(通達)」の解説(8・完)

法務省民事局民事第二課補佐官 三 枝 稔 宗

法務省民事局民事第二課補佐官 河 瀬 貴 之

法務省訟務局訟務企画課訟務調査室法務専門官(前法務省民事局民事第二課法務専門官) 手 塚 久美子

法務省民事局民事第二課不動産登記第四係長 清 水 玖 美

第2 本要領の概要

 14 第14節 負担金

 15 第15節 国庫帰属による所有権移転

登記原因日付は、負担金が納付された日。

 16 第16節 承認の取消し

  職権ではなく、申請による。

 17 第17節 損害賠償責任

 18 第18節 審査請求

 承認、負担金の額の通知も行政処分にあたり、審査請求の対象となる。審査請求先は法務大臣。

 19 第19節 行政文書開示請求及び保有個人情報開示請求

 20 第20節 帳 簿

 附 則

相続土地国庫帰属制度事務取扱処理要領の施行日は、2023(令和5)年4月27日。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第120回)

一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問、神 﨑 満治郎

241 医療法人の理事長の登記をめぐる諸問題について

 組合等登記令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029

設立の登記)

第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 目的及び業務

二 名称

三 事務所の所在場所

四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格

五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

別表(第一条、第二条、第六条、第七条の二、第八条、第十四条、第十七条、第二十条、第二十一条の三関係)

医療法人

医療法(昭和二十三年法律第二百五号)

資産の総額

医療法第四十六条の三の六において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第四十七条の二に規定する電子提供措置をとる旨の定めがあるときは、その定め

医療法

第四十六条の六 医療法人(次項に規定する医療法人を除く。)の理事のうち一人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。ただし、都道府県知事の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。

・・・理事長の前提資格となる理事の任期が、理事長の任期。

■商業登記の変遷(60)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

会社は商号を刻印した届出印を登記所に届け出。

→印鑑紙によって登記所に提出。

→改印する場合、印鑑保証人方式の導入。

→登記申請書等に押印された印鑑と、届出印の相違が却下事由として明文化。

→印鑑保証人方式の廃止と、印鑑届出・改印時に、個人の印鑑証明書を添付すること。

→届出印の大きさについて規定。

→印鑑紙の廃止。

→印鑑の提出の任意化。

法務省 法務資料展示室「歴史の壺」第12回

https://www.moj.go.jp/housei/tosho-tenji/housei06_00010.html

最初、商法を作るときにドイツの法学者ヘルマン・ロエスレルという人の商法草案を基にしたようです。では、ドイツでは会社について印鑑を届ける制度があるのか。

・JETRO 外国企業の会社設立手続き・必要書類 ドイツ

https://www.jetro.go.jp/world/europe/de/invest_09.html

JETROのページを見る限りでは、印鑑届のような制度を見つけることは出来ませんでした。

■民事信託の登記の諸問題(31)

渋 谷 陽一郎

受託者が帰属権利者に指定されていることで生じ得る利益相反リスク

信託法(利益相反行為の制限)第三十一条

(略)

2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第二号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。

二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。

(略)

・信託法183条3項の想定は、最終的に残余財産の帰属権利者が決まらないような、やむを得ない事由がある場合を想定したものか。

・信託行為で受託者を残余財産の帰属権利者として指定している場合、信託目録に、受託者【氏名】と、受託者の肩書を入れる方が良いのか。このようなとき、信託法31条2項1号定めも信託行為に定めて、信託目録に登記申請するのが信託法上、不動産登記法上、あるべき姿か。・・・特定の人を残余財産の帰属権利者として指定したことがないので分かりませんが、受託者の肩書を入れるかに関わらず、受託者の住所氏名を特定するなら、受託者の肩書を入れるかどうかに関わらず信託法31条2項1号定めがあった方がしっくりきます。受託者は信託条項として登記されているので、肩書を入れているかいないかは、問題にならないのではないかと思いました。

・みなし受益者としての受益者変更登記申請(原因、年月日信託の清算開始による受益者変更、みなし受益者の肩書を入れる。)の可否。・・・原因とみなし受益者の肩書を入れることについて、考えたことがありませんでした。

・信託法31条2項2号の受益者の承諾の限界について。信託行為、信託目録と矛盾する登記申請は不可能だと考えられる。例えば、信託不動産の処分が禁止されているのに、受益者の承諾書(信託法27条の取消権を放棄する文言入り。)を提出して所有権移転及び信託登記の抹消登記の申請をすること・・・同意です。

■改正民法と不動産登記実務(12)

 民法473条(弁済)、474条(第三者の弁済)、476条(弁済として引き渡した物の消費又は譲渡がされた場合の弁済の効力等)、477条(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)、弁済日は、被仕向け金融機関が受取人の預貯金口座に入金記録をした日。

 482条(代物弁済)、所有権移転の日付は、原則として代物弁済契約の締結日、債務消滅の日付は、弁済者が給付した日。

 486条(受取証書の交付請求等)、同時履行の関係にあることを明文化。

【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(7)

・公告の記載誤りがあった場合

昭和38年9月12日民事甲第2596号民事局長回答「会社の本店所在地の大字名を遺漏して公告された組織変更に関する登記申請の受否について」登記研究191号 ・・・訂正公告なし、上申書添付で登記申請受理。

昭和44年5月12日民事甲1036号民事局長回答「商法第百条第一項の規定による公告をしたことを証する書面の適否について」登記研究 259号・・・吸収合併に関する債権者保護手続きの公告(会社法793条、789条、790条)につき、商号間違い。異議申出期日前に訂正公告のうえ、公告情報を添付して登記申請受理。

昭和44年8月15日民事四発第733号民事局第四課長電報回答「株式譲渡制限のための株券提供公告について」登記研究262号 ・・商号間違いの場合、訂正公告後1カ月(会社法219条)を経過して登記申請があった場合、受理。

2009年10月30日【質疑応答】〔七九〇〇〕「吸収合併消滅会社又は吸収合併存続会社がする官報公告において表示すべき会社の所在場所について」登記研究740号・・・合併契約締結後、本店移転をした場合は、官報公告は新本店を表示。本店移転登記は消滅会社においても必要か、必要な場合、いつの時点で必要か、は分かりませんでした。

2023年7月30日【質疑応答】〔8007〕「組織再編に係る債権者保護手続の公告を、定款上の公告方法の変更に係る登記申請前に、変更後の公告方法により行った場合の登記の受否について」登記研究905号・・・不受理。

・資本金の額

平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」登記研究698号・・・商業登記規則61条11項に該当する書面は、代表者の作成に係る証明書等。商業登記規則61条11項の事実を証する書面は、代表者の作成に係る証明書等。

・会社法施行規則の一部を改正する省令(令和5年12月27日法務省令第50号)

・電子公告規則の一部を改正する省令(令和5年12月27日法務省令第51号)

・一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和5年12月27日法務省令第52号)

・・・磁気ディスクから電磁的記録媒体への変更。

【訓令・通達・回答】

▽供託関係

〔6225〕供託規則の一部を改正する省令等の施行に伴う供託事務の取扱いについて(令和5年9月11日付け法務省民商第173号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)・・・契印からページ数の記載へ変更。供託物払渡請求書等に押印不要となる場合を規定。委任による代理人の権限を証する書面へ押印する者を供託者に限定。

【質疑応答】▽不動産登記関係

〔8009〕共同相続における租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用の可否について・・・2023年3月30日【質疑応答】〔8006〕「共同相続における租税特別措置法第84条の2の3第2項の適用の可否について」登記研究 901号の変更。土地を死亡した相続人と共同相続登記申請する場合について、死亡した相続人については租税特別措置法84条の2の3第1項適用、存命の相続人について、租税特別措置法84条の2の3第2項(不動産の価格が100万円以下の場合の免税)は不適用。

信渋谷陽一郎「託契約書の起案の作法(1)」

信託契約書から学ぶ民事信託支援業務6「信託契約書の起案の作法(1)」

司法書士 渋谷陽一郎  市民と法 No.146、2024年04月民事法研究会

・民事信託支援業務に関与した司法書士に対する苦情を聴く機会が増えた。・・・月に何回くらい聴くのか、気になりました。苦情内容は、報酬が高いことと、信託契約書の品質の低さのようです。

・信託財産の額の割合的算定を以前から批判されていて、私は何故なんだろうと思っていました。所有権移転登記申請だって、課税価額の高さに応じて、何千円か何万円か上げているので、それも割合的算定方法と近いのではないかというのが理由です。この記事で初めて知ったことは、著者は経済的利益に基づく、という部分を批判しているということです。ただ、登記も重なる部分があるんじゃないかな、と思います。

受益権の内容の記載がないことがあるそうです。

法律整序の前後を比較した信託の目的の例示。

。信託の目的が受益者の死亡に至るまで、継続的な生活支援、の場合、受益者の死亡に至るまで、受託者の信託事務遂行の義務を生じるのだろうか。受益者の生存中は信託の終了を拘束する制限となるのであろうか。・・・死亡までと記載されているので、義務は生じると思います。受益者が生存中であり、継続的な生活支援が必要とされる限度で、信託の終了を拘束する制限になると思います。

・信託の目的に受益者の氏名を記載すると、一身専属的な受益権となるか。・・・信託の目的に受益者の氏名が記載されていない場合、信託行為のその他の条項で受益者は特定されているので、信託の目的条項に氏名を記載したから一身専属的な受益権というのは難しく、信託行為全体を総合的に判断する必要があると思います。

信託法96条の受益権の質入れについて、たとえば、受益者の生活支援のための受益権に対しては一身専属的な受益権として質権設定が出来ないのか。・・・信託法96条は、会社法151条~の株式の質入れの規定に準じて規定されています(寺本昌広『逐条解説新しい信託法補訂版』)。ただし、会社法には、その性質がこれを許さないときは、この限りではない。という、ただし書きがありません。信託法のみに定められています。私は金銭債権が受益債権となっている場合は、債権質権の実行と捉え、差押え禁止財産(民事執行法152条)に該当する受益権か、考えることが出来るのではないかと思います。

・一般に、司法書士が受益権の内容を法律整序する場合、何気なく「受託者が相当と認める」としてしまう場合があろう。・・・一般的なのか、分かりませんでした。

・さいたま地川越支判令4・3・23WLJにおける受託者の裁量について。・・・まず、月々が赤字にならないように、原則として考えます。その後に受益者の希望する生活関連費用を聴きます。それで赤字にならないのなら、受託者は、裁量の余地なく、受益者の希望する生活関連費用を全額支払う義務があると思います。

信託フォーラム 2024年4月号

 信託フォーラム 2024年4月号特集1 公証実務から見た民事信託の現状と課題/特集2 特定信託受益権のステーブルコインとしての活用の現状と課題 vol.21、日本加除出版

https://www.kajo.co.jp/c/magazine/007/31010000021

巻頭言 民事信託の推進と権利擁護~横断的な対応と適正な規律に向けて~(日本司法書士会連合会 会長●小澤吉徳)

 司法書士行為規範から具体的な実務指針やガイドラインを策定中。

対 談 信託法研究と信託法学界のこれから(関西学院大学法学部教授●木村 仁×中央大学研究開発機構教授●新井 誠)

 裁量信託。

  当初受益者死亡後における財産の継続的承継時に発揮。

  銀行子会社と信託銀行本体の連携。

  民法や会社法、民事執行法などの基礎を理解していた方が良い。

法と政治72巻4号(2022年2月)「アメリカにおける信託のデカント: 2015年統一信託デカント法を中心に」

https://kwansei.repo.nii.ac.jp/records/30143

信託法研究 第44号(2019)「遺言代用信託の利用と課題:アメリカの撤回可能信託を中心に」

http://shintakuhogakkai.jp/journal/44%E5%8F%B7.html

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://shintakuhogakkai.jp/journal/pdf/studies_of_the_law_of_trust_vol44_part5-5.pdf.

特集1 公証実務から見た民事信託の現状と課題

日本公証人連合会における民事信託に係る取組(日本公証人連合会会長●小坂敏幸)

民事信託は令和2年と令和4年を比較すると78%増。

委託者への事前質問。

信託契約書のチェックポイント(浅草公証役場公証人●澤野芳夫)

 不動産は全部事項証明書ではなく、登記情報等の確認で良い。農地について、その現状によっては農業委員会や都道府県知事の許可を停止条件とすることも可能。

 借地権について、賃貸人への説明状況を口頭で確認。

 信託財産に属する金銭について、○○銀行○○支店普通預金、口座番号、の信託契約締結時の口座残高相当額の金銭、は可能。・・・特定していなくても良いと初めて知りました。

 委託者の地位

 委託者の地位は、委託者の死亡により受益権を取得する者に移転する。信託法上の委託者の権利は委託者に死亡により消滅する。・・・金銭の追加信託はどのような根拠で行うのか、分かりませんでした。 

 受益権の内容

 具体的な金額を定める場合、執行認諾文言を加えることに、法令上制限はない。

民事執行法22条5項 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

例・受益権の内容

  • 受託者は、毎月、生活費その他の費用として、受益者に対して50万円を支払う。
  • 受託者は、第1項の受益債務の不履行が生じた場合には、公正証書によって強制執行を受けることを承諾した。

という定めがされた場合、信託口口座の強制執行がされる(信託法21条1項1号、同条2項1号)。その後は、受益者が金融機関に行って取り立て(民事執行法155条)、取立完了届を裁判所へ提出。

 このようなことを、毎月繰り返すことも出来る。例えば、2回同じく強制執行がされたら、受託者の任務終了事由(信託法56条1項ただし書)になるなどの規定で対応できるのかなと思いました。

 信託法164条1項ただし書による信託の終了の制限は、認められている。

「本信託の残余財産の帰属は、A及びBの遺産分割協議により決定する。」という複数の帰属者間の協議により信託財産は遺産を構成しないことから、これを遺産分割の対象とするのは誤り、との記載。

 残余財産の帰属権利者を(信託法182条1項2号)、「信託終了時の受益者」と定める。相談者死亡後に信託が終了した場合は、遺産分割によって受益権を取得した者が信託を終了させれば、信託終了時の受益者であるその者が帰属権となる。」と委託者の地位が受益者に承継されることを定め、肯定している考えもあります(日本司法書士会連合会民事信託等財産管理業務対策部「任意後見と民事信託を中心とした財産管理業務対応の手引き」2023、日本加除出版、P134)。受益権は遺産分割の対象となるのか、私には分かりませんでした。

公証人からみた民事信託の実務上・法律上の諸問題(丸の内公証役場公証人●原啓一郎)

受託者の契約不適合責任を信託行為に記載する場合

信託法91条の要件

任意後見契約の代理権目録に、信託に関する代理権を具体的に明記する。・・・私は信託行為に関しても、任意後見人が信託行為を尊重して欲しい事項について書きます。

信託契約公正証書作成手続上の留意点(霞ヶ関公証役場公証人●萩原秀紀)

 停止条件付信託契約の停止条件。2名以上の医師が、委託者について後見相当との診断書が作成されたとき。

 分別管理義務を果たす(信託口口座の開設)、対抗要件(不動産登記申請など)を得るための手続は、受託者のみで可能か。

特集2 特定信託受益権のステーブルコインとしての活用の現状と課題

ステーブルコインを巡る近時の法改正─特定信託受益権に関する制度を中心に

(元金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室専門官●大野一行/金融庁企画市場局総務課信用制度参事官室係長●高橋俊介)

パーミッションレス型ブロックチェーン

https://www.hitachi.co.jp/products/it/blockchain/features/form/index.html

信託型ステーブルコインを巡る実務動向と法律上の諸問題

(三菱UFJ信託銀行株式会社デジタルアセット事業室調査役・弁護士●齊藤 彰)

資金移動業

暗号資産交換業

電子決済手段等取引業

全額要求払い預金・・・無利息・要求払い・決済サービスを提供できること」という3要件を満たし、ペイオフ解禁範囲拡大以降も、預金保険制度により全額が保護される普通預金と比較して、信託とすることで、利用者(受益者)の権利内容が明確になり、発行体(委託者)から受託者(信託会社)に財産が移転する。

特定信託受益権を活用したステーブルコインを巡る税務上の諸問題

(PwC税理士法人 公認会計士・税理士●鬼頭朱実)

第二種資金移動業者

資金決済に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=421AC0000000059

2条5項 この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)

三 特定信託受益権

四 前三号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの

 現状は、発行体が資金管理をしない第3号電子決済手段(信託型ステーブルコイン)を利用することが望ましい。

三菱UFJ信託、Promat、STANDAGE、Gincoが国産ステーブルコインの貿易決済活用で共同検討を開始

https://coinpost.jp/?p=507031

信託受益権の移転を消滅・発生と構成。

所得税法第二条

十七 有価証券 金融商品取引法第二条第一項に規定する有価証券その他これに準ずるもので政令で定めるものをいう。

家族信託への招待 第21回(弁護士●遠藤英嗣)

 相続時における債務控除の適用を確実に受けるために、信託期間を延ばす事例。

民事信託と登記 第12回(渋谷陽一郎)

日本法令実務研究会◆家族信託実務研究会【渋谷ゼミ】毎月第2火曜日 18:30~20:30、一般価格:16,500円(税込)

https://www.horei.co.jp/iec/seminars/view/626.html

 今後、渋谷陽一郎先生も同業を顧客としたビジネス目的の民事信託・家族信託実務家の批判は出来ません。今まで書いてきたことと実際にやっていることの整合性が取れているのか、分かりませんでした。

ここからはじめる! 民事信託実務入門 第6回(弁護士●金森健一)

 監督か支援か(士業からの視線)。

公益信託改正の動向( 弁護士●濱口博史)

公益法人インフォメーション

新しい時代の公益法人制度の在り方に関する有識者会議 最終報告

https://www.koeki-info.go.jp/regulation/koueki_meeting.html

 主務官庁制の廃止。認可基準等を法律に明記。

事業承継・資産承継のために一般社団法人を活用した事例 ~委託者の想いを実現する民事信託~(司法書士・民事信託士●谷 松生)

 不動産の共有名義解消、資産管理法人設立。」

不動産取引における日本版エスクローの必要性と信託及び司法書士の役割 ─台湾の不動産取引におけるエスクローを参考にして(司法書士法人キャストグローバル代表社員、キャストグローバル信託株式会社代表取締役●上野興一)

 不動産取引のエスクローは、供託と何か似ているなと感じました。エスクロー会社の手数料が気になりました。

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