「居住用マンションの信託に係る諸問題」、海野千宏「賃貸用マンションの信託に係る諸問題―区分所有法等の適用を踏まえて―」

 信託フォーラム[1]の記事から、気になった部分です。あまり関係がないのかもしれませんが、いきなり区分所有法1条などと書いても大丈夫なんだと感じました。マンションを信託財産とする信託契約書を作成したことがないので、区分所有法って何だっけと思ってしまいました。

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  • 管理規約により認められる場合

管理規約において、組合員が代理人によって議決権を行使する場合の代理人の範囲が「三親等以内の親族」だった場合、委託者(受益者)と受託者が三親等の別居の親族である本事例では、委託者(受益者)は受託者の代理人として総会出席及び議決権行使ができる。またこの場合、少なくとも信託行為において、信託受益権の内容として信託財産に属する居住用マンションに受益者が居住できる旨のみならず、マンション管理組合の組合員たる受託者の代理人として総会出席及び議決権行使ができる旨を、さらに受託者の権限として同代理権を受益者に授与できる旨を定めることが考えられる。

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「マンション管理組合の組合員たる受託者の代理人として総会出席及び議決権行使ができる旨を」は、必要的記載事項かといわれると違うのかなと感じました。

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イ受託者たる法人と役員個人の責任

―略―法人の役員個人が責任を負うのは、原則として受託者たる法人であり、法人の役員個人が責任を負うのは、あくまで「当該法人が行った法令又は信託行為」について悪意又は重大な過失があるとき(同法41条)にすぎない。したがって、本事案において、仮に委託者(受益者)の甥(姪)を役員とする法人が受託者だった場合には、委託者(受益者)の甥(姪)は、居住用マンションの水道管の設置・保存に関する過失がない事例のため、法人としては責任をおうものの、個人としての責任は基本的には負わないことになる。

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「法人としては責任をおうものの、個人としての責任は基本的には負わないことになる。」は、受益者に対してであって、他の人に対しては責任を負うのではないかと思います。

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そこで、これらの場合には、管理会社の指定に関するものに加えて、信託行為に別段の定めとして、免責規定をも定める(信託法35条4項参照)などにより対応すべきであろう。

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別段の定めによって、受託者の責任を加重するか軽減するかは規定を置けますが[2]、免責は出来ないのではないかと思います。


[1] Vol.14 2020.10日本加除出版p54~

[2] 寺本昌広「逐条解説新しい信託法〔補訂版〕」商事法務P142

その他

 

マンション管理組合における役員等の立場と、専有部分所有者としての受託者の利益相反

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何故利益相反?と思いましたが、受託者報酬をもらうと、建て替え決議や売却決議が出来なくなる、という考えがあるようです。場合によっては、信託の終了(信託の目的の達成することができなくなったとき)という考えもあるようです。

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・形式上は、あくまで達成すべき究極目的とは分けて規定し、マンション管理はあく まで受託者の行為指針である、という位置付けである。 イ 懸念点 予防法務としての観点 最も恐れること:受託者の権限外と判断される?

・目的達成不能終了とされる?

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書いたらなるんじゃないかなと感じます。

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 ・信託目的を定めた条項において、マンション管理を中心とした視点で同側面が全面的に強調され、管理組合を主導していくかのようにさえ読める当該条項を前提として、 受託者権限につき、これらが不能となるマンション売却、あるいは、建替え時の建替 組合への売渡等を認める(信託目的により制限されていないと解する)ことは可能なのか。

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書いたらそうなるんじゃないかなと感じます。

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 ・あるいは、この点を可能と明示する受託者信託事務ないし権限条項を別途置くことで仮に可能になるとして、売却等で管理組合の一員でなくなった際や、役員に就任できない場合、信託目的達成不能として信託は終了してしまわないか。

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可能とする、であれば終了しないと感じます。

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 想定される利益相反

 受益者の意向と管理組合の意向の衝突 =受託者の忠実義務と理事の誠実義務の衝突する 

例:受益者の反対する決議事項に対して、理事として執行を行うケース

区分所有者の立場と役員としての立場の衝突

専有部分と共用部分の調整。

例:役員として、区分所有法 17 条 1 項における共用部分の変更の手続きを進め、決議さ れたにも関らず、同条 2 項における専有部分の所有者の承諾を拒否できるのか。 

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信託は関係ないのではないかと感じました。

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「マンション管理会社が「日常の管理業務」と「信託契約に基づく信託業務」を同時に行 うため、得てして利益相反が生じます。」 ・・・受託者をだれが担うかという文脈の中での記載である。そもそも、一般的なマンショ ン管理会社は、業法上の問題で受託者となれるケースは多くないため、筆者の意図し ているところがわかりにくい。確かに、マンション管理会社が受託者となった場合は 管理業務の発注先等などについて利益相反が生じるおそれがあると思われる。 

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なぜ利益相反が生じるのか、信託と関係があるのか分かりませんでした。

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 議決権行使段階

受託者が役員として参加する理事会において、総会の目的とした議案がある。この議案に対して、受益者が反対の意向を有している場合、受託者は、反対の議決権行使を行うこ とは可能か?

 可能。 総会決議において、役員の議決権行使を制約する根拠はない。特別利害関係人おいて も特段の制限はない(標準管理規約 46 条。46 条コメント③など)。 

株主総会と比較しても株主が取締役に就任している場合、それを理由として株主総 会での議決権が制限されることはない。 したがって、受益者の意向通りの議決権行使が可能。

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なぜ利益相反何だろう、忠実義務違反になるのだろうと考えました。

理事会の決議についても何故、利益相反、忠実義務違反になるのだろうと感じました。区分所有者と管理組合を何か私が分けられていないのか、話している人が整理されていないのか、分からなかったです。

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そもそも、組合員に対する善管注意義務を負うことが役員選任となる前提である以上、その義務違反を前提とする信託事務の設定はできないと考えるべきではないか(社会通 念上履行不能)。そうであるならば、「受託者は、受益者の意向を実現する目的で理事会で の議決権行使等を行うこと」を信託事務の一内容として信託行為の設定はできず、受益者 の意向と異なる理事会での議決権行使を行ったとしても、一般忠実義務の違反を構成し ない。

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何故ここで疑問を持つのだろうと思い、興味深かったです。

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役員報酬について 

*そもそも論として、役員としての事務処理が信託事務となる場合、権限内行為により得 られた利益として、報酬は信託財産に属する整理が考えれる。一方、委任の対価という 報酬の性質を考えると、組合員側として、受託者固有の働きに対する報酬として払って いるものであり、受益者に帰属させることに違和感がある(働いていないのに給与所 得)。 仮に、報酬が受託者の固有資産に属するもの考える場合、一般忠実義務に抵触する可能性があるものの、通常、総会決議などにより決定されるので、報酬額の決定等について透 明性が確保されるので、問題とならないか。 

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大した話ではない、どうでもよい、というのであれば、やらなければ良いと思います。信託行為で定めなかった場合、役員報酬は固有財産?違うと感じます。

民事信託に関する著書がある税理士に訊いてみました。
Q. 居住用マンションを信託財産に属する財産とした信託において、 個人(例えば子)が受託者に就任し、マンション管理組合の理事に就任した場合で 理事報酬が定められていたとき、報酬は受託者の固有財産に帰属するのでしょうか。それとも信託財産に属する財産に帰属するのでしょうか。? 税務会計処理で問題となる点があれば、指摘願います。
A.
マンションの管理組合の理事が報酬を受け取るということがまずないので、違和感があります。
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研修の題材として扱われていた問題でした。
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居住用マンションといっても、マンション一棟ですか? 一室ですか? 契約はどうなっているのですか。
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マンションの一室です。
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信託契約だったら 信託の収入が何、費用が何とだいたいでも書いてると思いますが、理事報酬みたいなものも信託契約に入っているのですか?それとも信託の受託者になるのと理事報酬がリンクしているのですか? 関係あるなら信託の収入なのかもしれませんが、 理事報酬は、通常は理事が信託とは関係なく個別に管理組合の活動をしているからもらえるものだから、その場合は固有財産の方で、個人的な所得として計算するじゃないのですか。
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信託契約に理事収入は入っていません。
信託の受託者になるのと理事報酬はリンクしていません。
受託者は、信託契約が発効したときに、原則としてマンション管理組合の組合員となります(国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)30条)。
指図権、集会における代理権などは設定していないものとします。
受託者は、信託契約がなければ、マンション管理組合の組合員にもなっていないので、理事にもなっていません。
受託者は、受益者の利益を無視して事務を行うことが出来ません(信託法29条、30条)。
信託法29条、30条の義務は、理事に就任しても適用されます。
マンション管理組合の目的は、区分所有者の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保すること(国土交通省 マンション標準管理規約(単棟型)1条)と考えると、利益相反などが生じる場合もほとんどないと思います。
このように考えると、理事が信託とは関係なく個別に管理組合の活動をしているからもらえるもの、とはいえないのかなと感じたのですが(一度信託財産に入れて、信託報酬としてもらう、でも源泉徴収とかどうするんだろう)、
固有財産の方で、個人的な所得として計算する、ということで納得します。ありがとうございます。

 

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管理組合の役員として選任されることは、信託事務として設定可能なのか? (株式を信託して、取締役になることを信託事務とすることができるのか?)

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何故このような疑問が出るのか、興味深く感じました。

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マンションの区分所有権の管理処分に係る信託契約に際しては、区分所有法との関係 はもとより、個々のマンションの管理組合が定める管理規約等に十分配慮し、オーダーメ イドで、適正かつ的確な信託の組成に努める必要がある。

しかし、これまで、これらマンション法分野と信託法との関係は、必ずしも十分に検討 がなされてきたとは言えないように思う。 現在発表者らは、一般社団法人民事信託推進センターのマンション支援信託推進委員 会の一員として、民事信託をもって、マンションに関する空き家問題、その他高齢化と老朽化の進行により影響を受けるマンションの長期的な管理運営上の問題の解決に資する ことを目的とした、マンション管理支援信託の研究を行っている。

本研究発表も、今後の議論の発展のため、ごく一部の問題を試論として取り上げたに過 ぎず、内容の妥当性も含めて、今後の更なる検討が不可欠であると感じている。 本研究発表が、今後の、区分所有者による民事信託の適切かつ円滑な活用の一助になれ ば幸いである。 

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目的に役員就任・管理組合員になる、を入れるか?標準管理規約、社会問題から。広告として。

入れなくてもよいと思います。

売却したら○○、建て替えのときは○○、という条件を入れることはどう思うか?

信託行為時に確定していない限り、入れない方が良いと思います。

公表しないのに、なぜレコーディングしているのだろう?

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横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(3)」

登記情報[1]の記事から、気になった部分です。タイトルからも分かる通り、この連載記事は(法務局または横山亘登記官への)照会事例に対する回答、照会と回答のやり取りの分析という形を採っています[2]。この記事が不動産登記申請の実務に対して、どのような位置付けで、影響はあるのかがよく分かりません。ただ、登記官が持ち出してくる根拠とする書籍が「元登記官が~」のタイトルであることが時々あります。通達と同程度に扱うことは出来ないと思いますが、実務がこの記事に一定程度従うのかなと少し気になります。

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受益権は債権であり、受益権の譲渡の対抗要件は、民法上の指名債権譲渡の場合と同様、受益権譲渡人が受託者に通知すること、又は受託者が承諾すること(信託法94条1項)、-以下略-

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受益権は受益債権及び信託法2条7項で定める権利です。

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受益者の変更の登記は、あくまでも受益者の住所及び氏名を公示することが目的であって、受益権の譲渡の変動過程を公示することを目的とするものではありません。

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受益者の変更の過程は、公示することが必要であり(不動産登記法103条、記事でも後述されています。)、不動産登記法が目的とするところでもあると思います。

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信託目録に記録されるのは、受益者の氏名住所であり、信託受益権者の氏名住所ではありません。―中略― 筆者は、これを「信託目録の信託受益権登記簿化」と呼んでおり、不動産登記制度の趣旨を逸脱した運用であるとの認識を持っています。

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受益者と信託受益権者が区別されているのですが、信託受益権者がどのような者を指しているのか、よく分かりませんでした。登記簿は登記記録のことだと思います。本記事では、受益権の持分を、信託目録の受益者に関する事項等に記録することについての是非が記載されています。個人的には、持分は記録するのであれば信託目録の信託条項に記録すれば良いと思います。また、私は民事信託にの受益権については、持分を用いるのではなく、信託行為で個数に分割しておくことにしています。

追記:

今日は研修があるのですが、主催者から下のメールをいただきました。

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なお、当日の動画及び資料掲載情報については、無断転載転用の無いようお願いいた します。

また、質問等はQ&Aではなく、当日のご発言にてお願いいたします。当会は約2時間 の中で議論をすることにより理解を深めるための勉強会です。講演会ではありませ ん。(このような趣旨から、当日の議論の動画はHP掲載をせず、公開することもあり ません。)

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「なお、当日の動画及び資料掲載情報については、無断転載転用の無いようお願いいた します。」は、私に向けてかもしれません。引用のつもりですが、無断転載と捉えるなら指摘して欲しいと思います。

「質問等はQ&Aではなく、当日のご発言にてお願いいたします。当会は約2時間の中で議論をすることにより理解を深めるための勉強会です。」には賛成です。ただ、資料共有やチャットで聴講者同士が議論することは勧められても良いのではないかと感じます。何故かというと、2時間の中で全員が発言して議論を深めることは、難しいと感じるからです。テキストによる議論の方が有効である場合があります。参加者が聴講のみの方を含めて50名以上います。画面上の発言+使える機能は全て使って2時間を有意義に過ごす方が良いのかなと感じます。参加される方も、チャットへ質問を書き込んで、講師(テーマ設定の方)の返答を待っている方がいるのですが、他の会員の意見を聞いて返信する姿勢もあると、横の繋がりも出来るし、もう少し活性化するのではないかなと感じます。

 でも、コロナ禍がなければこのようなライブ配信によるオンライン研修が開催されることはありませんでした。動画も公開されず、資料も公開されたりされなかったりが、2019年までの状況です。オンラインのライブ配信研修は、財政的に可能です。


[1] 706号 2020年9月 きんざいP9~

[2] 登記情報704号、2020年7月きんざいP25

渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(3)」

「市民と法」[1]の記事から、気になる部分です。

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第55条 受託者と任意後見人の兼務 解説部分

―略―しかし、昨今、受託者と任意後見人は、受益者保護という同じ方向を向いているのだから兼任可能であるという意見が主に弁護士側からいわれるようになっている。この点、どちらの見解が正しいか否か、という問題以上に認識すべき重要なことは、民事信託分野では、議論が対立するうえ、意見のトレンドが数年ごとに推移する論点も少なくない。論者の価値観にもかかわる。かような見解の多様性は、信託契約書の起案内容にも直接的に関係し、現段階では標準形が存在し得ないゆえんである。

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 多数意見が数年で変わる、というのはあるなと感じます。平成23年(2011年)の(一社)民事信託推進センターの実務入門講座では、受託者を一般社団法人にする場合、理事の1人に司法書士が就任するという事例が紹介されています。他にも、遺言信託の事例を紹介しつつ、成年後見制度に触れていない資料もあります。その当時、私も違和感を感じなかったのだと思います。今年2020年の実務入門講座では、任意後見人の代理権から受託者の任務を外す、というような考えも出てきました。信託契約書の受託者の任務を、詳細にするか限定するかになると思いますが、そのような考えもあるのだなと感じました。

指針案の

・正当事由の有無

・牽制構造の有無

・予防策の有無

・情報提供

は、個別具体的に、定期的にチェックする必要があると感じます。やっていると難しいですが、最初の任意後見契約の締結部分と、相談から信託期中、信託終了までの情報提供は出来るように努めたいと思います。

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第56条 「信託口」口座 解説部分

―略―信託の独立性や倒産隔離等の信託の効果は、受託者が受益者が訴訟で主張すればよいという助言は、支援者が、訴訟で現に支援できることが前提の助言である。実際に訴訟を提起せざるを得ない状況となった場合、司法書士は、どのようにして、認知症が進行した受益者を支援できるのだろうか。

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 私の個人的な予想ですが、受託者名義の預貯金口座で良いと断言する専門家の中では、受益者の支援という観点はなく、受託者が第三者異議などを申し立てることを前提にしているのだと思います。

 ただ、受託者が申し立てることのみを考えると、信託財産に(仮)差押え申立てをされる受託者って大丈夫なのかな、受託者の固有財産に対して(仮)差押えの申立てをされる受託者って大丈夫なのかなと感じます。税金をうっかり払い忘れていた場合でも、大丈夫かなと感じてしまいます。また、事例によりますが、信託財産に(仮)差押えの申立てを受けた受託者が第三者異議などの申立てを行うよりも、受託者を交代してから申し立てる方が良いと思います。その際、受託者を交代する権限を持つのは誰にするのか、考えてみる必要がありそうです。

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第59条 公正証書化の助言 解説部分

―略―最近は、信託に詳しい公証人も増えつつあり、信託の有効な成立や信託内容の適法性の確認を協働しうるとともに、司法書士と公証人という専門家間の連携と牽制という側面も重要である。

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 一度だけあったのですが、ある事例で公証人と何度かやり取りさせていただき、結果として私の案が修正されることになりました。その時、「もう少し時代が進めば理論的には出来るから、もう少し待ってて。」というようなことを言われたことがありました。個人的に、頭ごなしに否定するのではなく、牽制しつつも連携できる、このような話が出来る公証人が増えて欲しいと思います。


[1] №125号2020年10月号 民事法研究会P3~

リーガルテックNews Pickup 10月2日版


・株式会社サピエンス
金融庁パブコメの全文・横断検索サービスを「LION BOLT」で提供開始
https://lp.sapiens-inc.jp/finance_compliance_riskmanagement


月10万円~

・株式会社クラウドサイン
“印鑑不要”の電子契約サービス 提供企業に相談相次ぐ
4月は6500社と契約。これまでは紙を使うことが多い金融機関や不動産業との契約が多かったということですが、最近はユーチューバーなどとの契約も増えてきている、とのこと。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200927/k10012636441000.html
クラウド型の電子署名サービス。民間企業なので、保険などをかけているのか気になります。
メールの送受信が当事者に残っていれば、契約などが無効になることは少ないのかなと感じます。

・NTTデータ、「サイバー攻撃の痕跡」をアナリストが調べる新サービス
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2009/28/news148.html
「情報処理安全確保支援士」という国家資格を初めて知りました。
これからのニーズはあるように感じます。

・「禊」のツールとなった「第三者委員会」再考
報告書の格付け委員会設置
https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12280-808481/
「第三者」だと何が良いのか、考えるきっかけになるのかなと感じます。

・テレワークに伴う個人情報漏えい事案と対策を紹介(個人情報保護委員会)
https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/telework/・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以前も紹介しましたが。
https://politylink.jp/about
内容としては、「金融庁パブコメの全文・横断検索サービスを「LION BOLT」で提供開始」に近いと思います。

「受託者の任務終了事由と予備的受託者」

「家族信託実務ガイド」の記事[1]から、気になった部分です。

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「受託者の判断能力が低下したとき」「受託者が認知症と診断されたとき」というような受託者の任務終了事由もみかけることがあります。(略)受託者の意思表示を待たずに自動的に任務を終了させたい意図は理解できますが、信託不動産の実務については、後継受託者の名前を登記簿に記載する手続きに際して、旧受託者と新受託者が協力して登記手続きを行う必要があるので、旧受託者が自主的に「辞任」することと手続き上何ら変わりはないものと考えます。

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現在「登記簿」はないというところは措きます。

「受託者の判断能力が低下したとき」「受託者が認知症と診断されたとき」という条項を私は置かないのですが、判断能力の低下は徐々に進み、認知症も軽いうちに診断されるという理解です。その際に不動産登記申請の意思表示が出来なくなるかというと、信託行為に記載していることと照らして、当然出来ないという判断は出来ないと思いました。信託行為の当事者ではない第2次、第3次受託者に関しても、信託行為に同意の上で就任してもらうので、この考え方は変わりません。

不動産登記の申請手続きについて、受託者の辞任と解任では、手続き上変わりがあると思いました(信託法57条1項、58条1項)。

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また、予備的受託者の有無に左右されないように、受託者が単独の判断で辞任できるような条項を置くことも検討に値するでしょう。

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このような場合に不動産登記申請手続き上、どのようになるのかなと感じました。

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予備的受託者として指定されたとしても、その方に順番が回ってくるまでは、

何らの責任も義務も生じませんし、嫌ならその時点で就任を拒絶することも可能ですので、信託契約書で指定されること自体にリスクは全く生じません。

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法律上は妥当なのかなと思いますが、社会生活上、心理的な圧迫を受ける可能性があると思います。

受託者の固有財産が少ない信託が効力を発生した後、信託財産責任負担債務が増加した場合で受託者の任務が終了したとき、就任承諾前でも信託債権の債権者や受益者は、予備的受託者に指定されている人に請求するか、債務引受を求めるか、信託財産管理命令を申し立てるかを行うと思います。リスクは全く生じない、ということはないのではないかと感じます。

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家族信託の組成にかかわった法律専門職を信託契約書の中で予備的な清算受託者として指定していくことが現実的でしょう。

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ここは私も分かりませんが、清算受託者に法律専門職が就任することが出来る根拠条文を示した方が良いのではないかと思いました。

会社の清算人に司法書士が就任出来ること(会社法478条)と比較して、信託の場合、信託財産に不動産があると登記記録上、受託者として法律専門職の住所氏名が記録されることになります。清算の文字は付かないので、信託業法2条違反ではないことの根拠が必要ではないかと感じます。信託財産である預貯金口座についても、受託者〔司法書士氏名〕になると思うのですが、一旦自身の氏名に変更するのか気になります。


[1] 2020年11月第19号、P60~

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