登記研究916号、令和6年6月号

登記研究916号(令和6年6月号)、テイハン

https://www.teihan.co.jp/search/g17615.html

【論説・解説】■「供託規則の一部を改正する省令等の施行に伴う供託事務の取扱いについて(令和5年9月11日付け法務省民商第173号法務省民事局長通達)」の解説

法務省民事局民事第二課補佐官(前法務省民事局商事課補佐官) 金 森 真 吾

はじめに

第1 本通達の趣旨

 提出書類の契印に変わる措置の導入、委任契約書における押印の特則設置、文字の訂正における押印の特則設置、登記事項証明書の添付省略、提示省略対象の明確化。

第2 供託所に提出すべき書類への措置等

 総ページ数何枚目のうちの、何枚目であるか、分かるように明示。署名。

第3 供託物払渡請求書等への押印の特則等

 供託有価証券払渡請求書を除いて、代理人の記名があれば、代理人の押印不要。

 一定の書類について、訂正印が不要に。

第4 簡易確認手続の対象の明確化等

 登記された法人が代理人になっている場合、簡易確認手続きの対象となることの明文化。

第5 経過措置

 改正前の印刷した用紙が無くなるまで、使える。

第6 規則書式、準則附録第10号様式の改正等について

 書式などの若干の変更。

第7 その他

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第122回)

一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問、神 﨑 満治郎

243 労働組合の設立の登記の添付書類等について

労働組合法施行令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324CO0000000231_20150801_000000000000000

(法人である労働組合の登記)

第三条 法第十一条第一項の規定による登記には、左の事項を掲げなければならない。

一 名称

二 主たる事務所の所在場所

三 目的及び事業

四 代表者の氏名及び住所

五 解散事由を定めたときはその事由

第八条 法第十一条第一項の規定による登記の申請書には、規約、第二条第二項の証明書及び代表者の資格を証する書面を添附しなければならない。

第十一条 商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第二条から第五条まで、第七条から第十五条まで、第十七条第一項、第二項及び第四項、第十八条、第十九条の二、第二十条第一項及び第二項、第二十一条から第二十三条の二まで、第二十四条第一号から第十四号まで、第二十六条、第二十七条、第五十一条から第五十三条まで、第百三十二条から第百三十七条まで並びに第百三十九条から第百四十八条までの規定は、法人である労働組合の登記に準用する。この場合において、同法第十七条第四項中「事項又は前項の規定により申請書に記載すべき事項」とあるのは「事項」と、「前二項」とあるのは「同項」と読み替えるものとする。

労働組合法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000174_20230614_505AC0000000053

(労働組合として設立されたものの取扱)

第五条 労働組合は、労働委員会に証拠を提出して第二条及び第二項の規定に適合することを立証しなければ、この法律に規定する手続に参与する資格を有せず、且つ、この法律に規定する救済を与えられない。但し、第七条第一号の規定に基く個々の労働者に対する保護を否定する趣旨に解釈されるべきではない。

 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。

一 名称

二 主たる事務所の所在地

三 連合団体である労働組合以外の労働組合(以下「単位労働組合」という。)の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利及び均等の取扱を受ける権利を有すること。

四 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。

五 単位労働組合にあつては、その役員は、組合員の直接無記名投票により選挙されること、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その役員は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により選挙されること。

六 総会は、少くとも毎年一回開催すること。

七 すべての財源及び使途、主要な寄附者の氏名並びに現在の経理状況を示す会計報告は、組合員によつて委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少くとも毎年一回組合員に公表されること。

八 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと。

九 単位労働組合にあつては、その規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと、及び連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合にあつては、その規約は、単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと。

・・・規約には、定められている事項以外も規定することができる。

(法人である労働組合)

第十一条 この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによつて法人となる。

2 この法律に規定するものの外、労働組合の登記に関して必要な事項は、政令で定める。

3 労働組合に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ第三者に対抗することができない。

・・・労働組合は規約の作成、総会の開催による組織に関する事項の決定で成立し、労働委員会の証明を得て第三者に立証。法人として活動するには登記が必要。

■Q&A不動産表示登記(92)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

第四章 建物(区分建物)

 第一節 登記事項 Q261 区分建物に関する登記の沿革はどのようなものか。

家屋税法・御署名原本・昭和十五年・法律第一〇八号5条。税務署に家屋台帳の備え付け。

https://www.digital.archives.go.jp/DAS/meta/listPhoto?LANG=default&BID=F0000000000000037671&ID=&TYPE=

登記研究420号P108昭和35年4月1日民事甲第685号民事局長通達「登記簿・台帳一元化実施要領」(抄)

当時の共用部分の取扱いについて、登記研究112号P28昭和32年2月16日民事甲第330号通達「普通分譲住宅の階段室の所有権に関する登記について」

昭和38年4月1日区分所有法施行。

昭和59年1月1日改正区分所有法施行、専有部分と敷地利用権の分離処分禁止につき、昭和63年12月18日施行。

■商業登記の変遷(62)

司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

第7章 商業登記に関する運用等の歩み

 第7節 電子認証制度

  • 序 説

 本人性、法人格の存在、代表権限の存在を電子的に証明。

  • 経緯等

 1997年(平成9年)5月 経済構造の変革と創造のための行動計画

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h13/html/D3012000.htm

 1999年(平成11年)高度情報通信社会推進に向けた基本方針

https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/japanese/papers/h12/html/C3110000.html

 2000年(平成12年)書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法

  3.制度創設と概要等

 2000年(平成12年)平成12年4月19日法律40号改正商業登記法

 電子認証制度、」商業登記電子証明書の発行手続きに関する規定の創設、

 平成12年9月22日法務省令37号改正商業登記規則

 商業登記電子証明書に関する細則の規定。

 2005年(平成17年)3月22日 すべての商業登記所が電子認証登記所の指定を受けて電子認証事務を取り扱う。

法務省 商業登記に基づく電子認証制度

https://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION

 法務省 電子認証に関する事件の概況

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00126.html

 

■民事信託の登記の諸問題(33)渋 谷 陽一郎

第234 家族信託の登記に固有な申請構造を巡る令和6年1月10日登記先例

第235 令和6年1月10日登記先例の意義、第236 令和6年1月10日登記先例の事案、第237 本登記先例に対する解説のポイント1──不動産登記法104条の2第2項の登記申請構造の適用、第238 本解説のポイント2──不動産登記法62条の適用の原則、第239 受益者の地位の相続という問題

不動産登記法104条の2第2項(権利の変更の登記等の特則)の登記申請構造の適用。・・・不動産登記法104条の2第2項を準用する結果、登記申請構造を適用し、変更登記を行うことを明示。特例のもととなる原則は、不動産登記法62条(一般承継人による申請)。登記研究143号P21昭和34年9月15日民事甲第2067号民事局長回答「相続を放棄した者の登記申請義務等について」。

P63、登記申請人適格の所在、について。・・・所在の意味が分かりませんでした。

P64、委託者兼受益者の相続人(子たる兄弟姉妹)が複数存在する場合、登記申請権の承継は不可分であるとして、委託者兼受益者の相続人全員が、登記義務者となって、その全員の印鑑証明書を提供すべきということになるのだろうか。・・・分かりませんでした。

 P64、信託法91条の受益者連続の規定によらずして、それ以外にも、信託行為で、信託行為でもって、受益権の相続を禁止できるのか、について・・・分かりませんでした。

【資 料】

会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(9)

登記研究184号P55昭和37年6月13日民事甲第1563号民事局長回答 「仙台法務局管内登記課長会同協議問題の決議について」

 払込期日の繰り上げ。

登記研究207号P60昭和40年1月13日民事甲第79号民事局長回答「払込期日を延期して新株発行をした場合の変更登記申請の添付書面について」

 払込期日の延期。

登記研究697号P225 、2006年3月30日【質疑応答】〔七八二六〕再生計画に記載された払込期日とは異なる払込期日に払込みが行われた場合における新株発行による変更の登記の可否

 再生計画で定められた払込期日は、あくまで予定を記載したもの。

登記研究228号P41昭和41年10月5日民事甲第2875号民事局長通達 「新株発行による変更登記について」

 株主保護のための規定。

登記研究91号P34昭和30年6月25日民事甲第1333号民事局長通達 「商法の一部を改正する法律等の施行に伴う登記事務取扱について(商通第二十三号)」

 通達が発せられた当時は、既存株主の持ち株比率の維持が株主の利益とされていた面があった。現在は、重視されていない。登記研究561号P49から、1994年10月30日発行、菊池 洋一:法務省民事局第四課長、鳥本 喜章:法務省民事局付検事、小林 健二:法務省民事局第四課補佐官、片岡 貞敏:法務省民事局第四課補佐官、林 久義:法務省民事局第四課係長、高村 一之:法務省民事局第四課係長、早貸 淳子:法務省民事局第四課係長、松本 昌 【論説・解説】株式会社に関する先例をめぐって(47)

登記研究698号P73から、平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 会社法207条。会計帳簿には、必ずしも金銭債権の弁済期が到来した事実を確認できることを要しない。

登記研究877号P191から、令和3年1月29日法務省民商第14号法務省民事局長通達「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 会社法202条の2。上場会社であることを証明する情報の提供の可否。

登記研究721号P177から、2008年3月30日【質疑応答】〔七八六六〕会社法第一九九条第一項第一号の募集株式数の定め方について

 株主割当ての決議後、申込みがなかった数を第三者に割り当てる、という数の定め方の可否。

登記研究590号P156から、平成8年7月25日法務省民四第1350号民事局第四課長通知「転換社債の転換条件変更の登記申請について」

 転換社債の総額引き受け契約。条件変更の場合、会社の決議、変更契約を証する情報、社債権者の保護が必要。

登記研究664号P146から、平成14年8月28日法務省民商第2037号 民事局商事課長通知「新株予約権の登記の申請書に添付すべき書面について」

 申込みと契約書の案、引受人の一覧表を合綴した書面が、新株予約権の申し込み又は引き受けがあったことを証する書面(商業登記法57条)に該当するか。民事月報平成27年5月号、櫻庭倫「平成26年商業・法人登記実務における諸問題」

登記研究698号P116から、平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 分配可能額が存在することを証する書面(会社法170条)について。

登記研究804号P215から、平成27年2月6日法務省民商第13号法務省民事局長通達「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 会社法279条3項に基づく登記申請について。

登記研究736号P178から、2009年6月30日【質疑応答】「新株予約権の行使に際して出資される財産の価額の登記について」

 価額を定める時期について。

登記研究767号P138から、2012年1月30日【質疑応答】〔7934〕新株予約権1個当たりの目的となる株式の数及び株式分割等に伴ういわゆる希薄化条項を募集事項である「募集新株予約権の内容及び数」として定めたときの登記について

 登記事項(会社法911条3項12号)となるか、について。

登記研究660号P208から、2003年1月30日【質疑応答】 〔七七六七〕新株予約権について譲渡禁止特約を付すことの可否

 発行決議で譲渡制限、契約で譲渡禁止を定めることの可否について。

【法 令】

福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する 政令(令和5年6月9日政令第205号)

商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年4月16日法務省令第28号)

 株式会社の代表取締役等の住居非表示措置について。

後見登記等に関する省令の一部を改正する省令(令和6年4月18日法務省令第29号)

 登記申請をオンラインで行う場合にクラウド・コンピューティング・サービス技術を使用可能な定めを規定。

不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年4月22日法務省令第32号)

 ビデオ電話方式による登記簿の附属書類の閲覧について規定。

 【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6230〕地役権設定の仮登記における要役地への職権登記の可否について【解説付】(令和5年11月22日付け法務省民二第1511号法務局民事行政部長、地方法務局長(岡山を除く。)宛て法務省民事局民事第二課長通知)

 不動産登記法80条4項が規定する、地役権の設定の登記、に仮登記も含まれるか。

 

〔6231〕外国に住所を有する外国人又は法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報の取扱いについて(令和5年12月15日付け法務省民二第1596号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

 各法務局での取り扱いの取りまとめ。

▽商業・法人登記関係

〔6232〕商業登記等事務取扱手続準則の一部改正について(令和5年11月20日付け法務省民商第210号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

 内部処理の様式などを定める。

登記研究915号(令和6年5月号)

登記研究915号(令和6年5月号)2024/05、テイハン

https://www.teihan.co.jp/book/b10084677.html

【論説・解説】

■「遺言書保管事務取扱手続準則の一部改正について(令和5年8月31日付け法務省民商第168号法務省民事局長通達)」の解説

法務省訟務局訟務企画課予算係長(前法務省民事局商事課遺言書保管第一係長兼第二係長) 菅 野 裕 紀

1 はじめに

https://www.moj.go.jp/MINJI/12.html

 指定者通知を行う人の、範囲と人数を改正。

2 本通達の発出の背景

 ⑴ 指定者通知の対象者となる者の範囲の拡大について

 想定ニーズ・・・士業者、信託銀行、葬儀会社など。

 ⑵ 指定者通知の対象となる人数の拡大について

3 事務処理上の留意点

遺言書情報証明書の交付請求を出来る者かは、遺言の内容によります(遺言書事実証明書の交付請求をしてみてください。)、という注意書き。

■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第121回)一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート理事、一般社団法人日本財産管理協会顧問、日本司法書士会連合会顧問 神 﨑 満治郎

242 登記手続において、組合等登記令の適用を受ける法人の種類及びその登記手続の概要について

1 登記手続において、組合等登記令の適用を受ける法人

組合等登記令別表

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=339CO0000000029

2 登記手続の概要

(設立の登記)第二条 組合等の設立の登記は、その主たる事務所の所在地において、設立の認可、出資の払込みその他設立に必要な手続が終了した日から二週間以内にしなければならない。

2 前項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

一 目的及び業務

二 名称

三 事務所の所在場所

四 代表権を有する者の氏名、住所及び資格

五 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由

六 別表の登記事項の欄に掲げる事項

(変更の登記)第三条、(他の登記所の管轄区域内への主たる事務所の移転の登記)第四条、(代理人の登記)第六条、(解散の登記)第七条、(継続の登記)第七条の二、(合併等の登記)第八条、(分割の登記)第八条の二、(移行等の登記)第九条、(清算結了の登記)第十条、二週間以内。

 添付書面、商業登記法の準用、各登記の特則など。

■Q&A不動産表示登記(91)

(一社)テミス総合支援センター理事、都城市代表監査委員 新 井 克 美

第三章 建物(非区分建物)

 第二節 各種の登記の申請

  Q260 建物を取り壊した場合はどのような登記を申請するのか。

 不動産登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(建物の滅失の登記の申請)第五十七条 建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

 滅失の判断・・・建物の同一性。建物の効用、売買の実例など。

不動産登記準則

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00465.html

(建物の再築)第83条 既存の建物全部を取り壊し、その材料を用いて建物を建築した場合(再築)は、既存の建物が滅失し、新たな建物が建築されたものとして取り扱うものとする。

(建物の移転)第85条 建物を解体移転した場合は、既存の建物が滅失し、新たな建物が建築されたものとして取り扱うものとする。

2 建物をえい行移転した場合は、建物の所在の変更として取り扱うものとする。

(附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の変更の登記の記録方法)第102条 附属建物がある主たる建物の滅失による表題部の登記事項に関する変更の登記をする場合には、表題部の主たる建物の表示欄の原因及びその日付欄に滅失の登記原因及びその日付を記録し、当該表示欄に主たる建物となるべき附属建物に関する種類、構造及び床面積を記録し、当該原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録するものとする。この場合には、当該附属建物の表示欄の原因及びその日付欄に「令和何年何月何日主たる建物に変更」のように記録して、当該附属建物についての従前の登記事項を抹消するものとする。

登記研究255号昭和43年12月23日民事三発第1075号民事局第三課長回答「建物の滅失登記申請における申請人について」

 取り壊しの場合は工事証明書など。

■商業登記の変遷(61)司法書士 鈴 木 龍 介(司法書士法人鈴木事務所)

 印鑑証明。直接証明方式→間接証明方式類似→コンピュータ方式→印鑑カード方式(間接証明方式)へ。

■民事信託の登記の諸問題(32)渋 谷 陽一郎

第228 信託法の条文の読み方

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受託者の権限の範囲)

第二十六条 受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし、信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。

第229 信託法26条の構造

 接続詞の読み方。

第230 信託法26条の解釈における見解の対立

 このように解した場合でも、この「管理又は処分」は、後段の「信託の目的の達成のために必要な行為」である必要があるのだろうか。・・・一定の目的の従う必要がある(信託法2条1項)。

第231 信託法26条における本文とただし書の関係

 信託の目的の達成のために必要な行為の中に、管理又は処分は含まれていると考えます。例示、具体化することによって、結果的に、受託者の権限を信託の目的に加えて更に制限することになる場合も出てくると考えられます。

第232 信託契約書の信託条項──目的と権限の関係

 目的が上位規範、権限が目的を第三者にも分かるように具体化したものだと考えます。

第233 信託条項間の整合性とは何か

 信託の目的と、受託者の権限(信託目録では信託財産の管理方法)が矛盾しないこと。・・・受託者、第三者が混乱する。

【資 料】会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(8)

登記研究804号平成27年2月6日法務省民商第13号法務省民事局長通達 「会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

登記研究804号2015年2月、南野 雅司:法務省民事局商事課法規係長 「商業登記規則等の一部を改正する省令の解説」

 株式の譲渡制限に関する定めの廃止・変更、株式の併合、合併。

登記研究 698号平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」・・・発行可能株式総数、発行可能種類株式総数の変更には、定款変更の株主総会決議が必要。

登記研究423号昭和57年11月13日法務省民四第6854号「民事局第四課長回答「株式の併合による会社が発行する株式の総数の変更について」

 株式の併合の割合に比例して、株主総会決議がなくても発行可能株式総数を減少する取扱い・・・廃止。

登記研究698号平成18年3月31日民商第782号民事局長通達「会社法の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて」

 株式の消却と発行可能株式総数、発行可能種類株式総数。

登記研究143号昭和34年8月29日民事甲第1923号民事局長電報回答 「株式会社の新株発行について」

 発行可能株式総数の増加決議を条件とする新株の超過発行を行う取締役会の決議。

登記研究218号昭和40年11月13日民事甲第3214号民事局長電報回答 「新株発行を条件とする授権資本の枠増加の変更登記の受否について」

 新株発行の前後と発行可能株式総数、発行可能種類株式総数の変更決議・登記申請の可否。

登記研究273号昭和45年6月29日民事四発第468号民事局第四課長電報回答「枠外発行を条件とする授権資本の枠拡大の決議について」

 株主総会の条件付き決議の限界。条件決議自体が決議時点で定款、法令に違反しないこと。

登記研究423号昭和57年11月12日法務省民四第6853号民事局第四課長回答「授権資本の枠を超える新株発行による変更登記の受否について」

 新株発行の無効の訴え(会社法828条1項2号)は株主を守るためなので、株主全員が同意する株主総会決議がある場合は無効が治癒される。

登記研究731号平成20年9月30日法務省民商第2665号民事局商事課長通知「吸収合併に際しての発行可能株式総数を超えた株式の発行及び当該枠外発行の数を前提とする発行可能株式総数の増加に係る条件付定款変更の可否について」

登記研究344号昭和51年3月18日法務省民四第2157号民事局第四課長回答「株式の譲渡制限に関する規定の設定による変更の登記の受否について」

 株式の譲渡制限に関する規定の設定決議を行う株主総会に参加していない新株主は、株式買い取り請求も不可能であって、不利。

登記研究231号昭和41年12月23日民事四発第772号民事局第四課長電報回答「株式の譲渡制限に関する規定の登記事務取扱いについて」

 全株主から株券の提供がされている場合でも、法令に定める株券提供公告期間が満了していることが必要。公告期間中に株式の譲渡があった場合の譲受人保護。

登記研究707号2007年1月【質疑応答】〔七八四五〕株式会社の定時株主総会における株券を発行する旨の定款の定めの廃止決議と株式譲渡制限の定款の定めの設定決議について

登記研究 708号2007年2月【質疑応答】〔七八四七〕株式会社が解散した場合における株式譲渡制限規定の変更の登記の要否について

 当会社、株主総会、清算人会等へ変更。取締役会という機関がなくなるから(会社法477条)。

登記研究206号71頁昭和39年12月26日民事甲第4024号民事局長回答「後配株式を普通株式に変更するための手続について」

 普通株式も種類株式の一種だから。

登記研究725号平成20年3月21日法務省民商第990号民事局商事課長通知「端株発行会社が普通株式を分割する際に取得条項付種類株式の内容を変更する場合における会社法第一一一条第一項の当該種類株式の株主全員の同意及び同法第三二二条第一項の当該種類の株式を有する株主を構成員とする種類株主総会の決議の要否について」

 取得条項付種類株主が、その地位を知らないうちに奪われる可能性があるかないか。取得対価として受ける財産の種類等に変更があるか否か。

【法 令】不動産登記規則等の一部を改正する省令(令和6年3月1日法務省令第7号)

 相続人申告登記、ローマ字氏名の併記、旧氏の併記など。

【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6227〕信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記の可否について【解説付】(令和6年1月10日付け法務省民二第17号法務局民事行政部長(東京を除く。)、地方法務局長宛て法務省民事局民事第二課長通知)

 登記義務者は原則受益者の法定相続人。信託の変更の登記は、受託者による単独申請(不動産登記法103条2項、98条2項、信託目録に定めがない場合、受託者作成の、利益相反行為を許容する定めのある報告的登記原因証明情報の提供。)。登記権利者を受託者、登記義務者を受益者の同一人として、信託財産を受託者の固有財産とする旨の登記申請。

▽商業・法人登記関係

〔6228〕商業・法人登記における印鑑関係事務取扱要領の一部改正について(令和5年11月10日付け法務省民商第202号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

 印鑑記録の更生申し出の追加。

▽遺言書保管関係

〔6229〕遺言書保管事務取扱手続準則の一部改正について(令和5年8月31日付け法務省民商第168号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

【質疑応答】

▽商業・法人登記関係

〔8010〕一般財団法人設立において、金銭による財産の拠出を設立者又は遺言執行者から委任を受けた設立時理事名義の口座に行った場合について

 口座名義人の範囲について。理事長でない設立時理事名義でも良い。

〔8011〕公証人による定款の認証前に財産の拠出を履行した場合の財産の拠出の履行があったことを証する書面について

 登記研究902号令和4年6月13日法務省民商第286号法務省民事局商事課長通知「株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の払込みの時期について」について、一般財団法人にも適用できる部分は適用。

家族信託の相談会その66

お気軽にどうぞ。

2024年6月28日(木)14時~17時

□ 認知症や急な病気への備え
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□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障害を持つ子の親なき後への備え

1組様 5000円

場所

司法書士宮城事務所(西原町)

要予約

司法書士宮城事務所 shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp

後援  (株)ラジオ沖縄

渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』 第7章民事信託の融資(民事信託案件に対するファイナンス)

  • 渋谷陽一郎『Q&A 家族信託大全』2023年、日本法令。
  • 第7章民事信託の融資(民事信託案件に対するファイナンス)

P337、信託財産責任負担債務として受託者が借入人となる場合、一般の実績では、通常の融資の金利・手数料の約2倍前後の水準となっているようだ(もちろん、各金融機関によって取扱事例の金利実績は異なる)。について・・・一般の実績の出典はどこからなのか、記載が必要だと思います。

P345、信託目的達成のため、高齢者の介護費または施設入所費用などを使用使途とする受託者による借入が可能なのか否かという論点がある。・・・もし、介護費などで借り入れが必要な状況であることが信託行為時に予想される場合、信託制度を利用するのではなく、任意後見制度を含む後見制度を利用する方が良いのかなと思いました。

P406、信託法の清算規定は、会社制度を参照した結果、会社の清算のように、バランスシートをゼロとする必要があるとの想定なのか。・・・信託法177条1号の現務の結了が、事業や契約の終了を必ずしも意味しない(道垣内弘人『信託法〔第2版〕: 現代民法別巻 (現代民法 別巻)』2022年、有斐閣、P439、P440)ので、信託法177条2号の信託債権に係る債務の弁済は、残余財産の給付との関係では、強行規定には該当しないと考えます。

P411、信託法179条の、清算受託者は、直ちに信託財産についての破産手続開始の申立て、信託法181条の、信託債権に係る債務の弁済と受益債権に係る債務の弁済をした後でなければ、の強行法規性について。・・・債権者の合意があれば、強行法規とはならないと考えます(道垣内弘人編著『条解信託法』)2017、弘文堂、P782)。

P427~、Q343~Q346にかけて、抵当権が設定されている不動産に対して、抵当権者の金融機関に黙って信託行為を行う事例が、実際にある前提の記載があり、このような実務を行うことがあるのだと初めて知りました。

Q352、担保物件を任意売却する場合、債務者が委託者であり認知症などにより判断能力を欠いているときは、成年後見制度を利用することが原則になると考えます。任意後見契約を締結していない場合、任意売却に関わらず、委託者が判断能力を欠いた時点で成年後見制度を利用することが必要となり、任意売却が必要となってから何かしら特別な手続をする、ということにはならないのではないかと思いました。

Q353、信託登記と抵当権設定登記の連件申請において、信託登記の信託目録記載事項、信託財産の管理方法として被担保債権を特定することが必要か。・・・被担保債権を特定すると抵当権設定登記との連続性が、より保たれることになり、確実性が増すといえます。この場合、抵当権設定登記が完了した後も信託目録に被担保債権の特定事項は残り、権利部の登記記録と重複する部分が出てくることになります。そこまで必要なのか分かりませんでした。抵当権設定の権限のみを信託条項とするのでは足りないのかなと、個人的に思いました。

Q354、信託行為に、信託財産責任負担債務として委託者の債務引き受け、などと注意書きとして受託差の権限を定める方法があるのではないかなと思いました。

Q341,で信託監督人はあくまで受益者の保護という観点から監督を行うのであり、債権者のために監督を行うのではないことに注意しておきたい、との記載があります。Q355、において金融機関に対する債務の利率変更について記載があります。本書では専門職の信託監督人が推奨されています。信託監督人が利下げなどの交渉を受託者と同行して出来るのはないか、状況によっては義務にもなり得るのではないかと思いました。

Q357、について、解説記載のとおり新受託者が債務引き受けの特約を行う場合に審査を行えばよく、事前に予備的受託者の審査をする必要性は、原則としてないのではないかと思います。

Q372、並存的債務引受は、併存的債務引受の誤植かと思います。

Q375、なぜ受益者全員を連帯保証人にする必要があるのか、分かりませんでした。連帯保証人が必要であれば、委託者兼受益者のみで足りるのではないかと思いました。

Q376、受託者、予備的受託者は抵当権消滅請求(民法379条から386条。)における第三取得者に該当するか、について。・・・第三取得者に該当する可能性は低いと考えます。受託者は委託者に対価を支払っているわけではないことが理由です。

Q385、金融機関が、委託者や受託者から、遺留分侵害なきことの表明保証を取得することに対して、どのような意味があるのか、分かりませんでした。通常の融資でも遺言の有無と遺留分侵害なきことの表明保証を取るのでしょうか。

Q386、金融機関が事前に受託者に対する誓約条項を公開していただければ、信託行為の定めを作成するのも、今までよりやるやすくなります。

Q388からQ404、金融機関が予備的受託者として、旧受託者の推定相続人を求める場合があるかもしれない、との記載について。・・・旧受託者の死亡を前提としているなら、旧受託者の推定相続人でも良いのかなと思いました。旧受託者の配偶者としている場合、委託者兼受益者の推定相続人とはならないときでも、受託者交代のときにもう一度審査があると思うので、その時に適切な人を、信託行為に関わらず、必要なら変更して、受託者に就任してもらえば良いと考えます。

Q407、金融機関独自の審査基準を内製化し、可能であれば公表することは必要だと思います。信託口口座開設が出来ない場合、信託行為を予定している当事者の納得と金融機関選定の目安ともなります。金融機関としても、予め自行の審査基準に該当しない人を、支援している専門家を通して選別出来ることで、審査に係る時間を減らすことが出来ると思います。私なら、本書記載の審査項目に、審査時点における委託者の遺言書の有無、任意後見制度利用の有無を追加します。遺言書について、内容の公開は含みません。

Q409、金融機関が、信託に関する審査を同じ地方の士業に委託したとしても、審査結果に対しての根拠付け、質問に対しての法的根拠のある回答が可能であれば問題ないと思います。困るのは融資あり、抵当権付き不動産を信託する場合に、その金融機関が提携している士業でないと、信託は出来ない、と言われることです。地方では地銀は限られており、他の地銀に借り換える労力がある場面は多くありません。委託者が専門家を選ぶことが出来るのが普通ではないかなと思います。

Q411、金融機関の審査コストについて。・・・信託契約書の審査に時間・労力がかかっているのは外部からみている限り確かなので、信託口口座開設のために審査料を設定するのは、適切だと思います。ただし、金融機関は資産を持っている信託行為の当事者の情報、財産承継の計画、親族関係を把握することが出来ます。遺言書より詳細な情報を見ることが出来ます。その情報を基に、融資や保険商品などの話をすることが可能です。このような利益を考えると、審査料は無料という考え方も成り立つと思います。または、審査料を設定する場合は、信託行為の情報に基づく営業活動を禁止する、という取扱いが適切だと思います。

 口座管理費用を徴収するのは、現在のところ他の口座管理とどのように違うのか説明がないので、理屈が分かりません。

 

Q415、受託者が解任されてしまった場合はどうするか。・・・解任前に金融機関への報告を義務付ける取扱いが考えられます。

 受託者が解任された際、「信託口」口座の承継手続は具体的にどうすべきか(いかにして継続が可能となるのか)。・・・原則として受託者の変更手続きになると考えます。いかにして継続が可能となるのか、については、信託財産責任負担債務がある場合で、金融機関の審査に耐えられる新受託者が見つからないときは、担保、保証の追加や信託の終了などの対応になると思います。

Q417、金融機関に対する報告事項を信託行為に定めることについて。・・・信託口口座開設予定の金融機関から、事前にテキストで提示していただけるなら信託行為に定めることが可能ですが、提示がない場合は金融機関から別の契約・合意を委託者、受託者に求めるのが合理的だと考えます。

Q421からQ424、受益者代理人について。利用する場合は、任意後見・成年後見制度との権限の棲み分けを信託行為や任意後見契約書に定める必要があると思います。

Q425からQ435、受託者を法人とする信託について。実質的支配者、特定取引の観点を入れると、判断がしやすくなる面があると思いました。参考、警察庁、犯罪収益移転防止法の概要、令和6年4月1日時点。

Q447、信託内部における受益権の処分禁止(信託法93条など。)や譲渡に受益者以外の者の承諾を要する定めが、信託外の第三者たる受益者の債権者に対して、どこまで主張できるのか、について。・・・信託当事者内部の定めであり、債権者に対して主張出来ないと考えます。

加工司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドライン

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00607.html

司法書士及び司法書士法人の業務のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するガイドライン

令和6年4月1日 法務省・日本司法書士会連合会

目   次 第1 本ガイドラインの目的等 …………………………………………… 2

1 本ガイドラインの目的 …………………………………………….. 2

2 本ガイドラインの基本的な考え方 …………………………………….. 3

  •  リスクベース・アプローチの位置付け ……………………………….. 3
  •  監督指導等の指針 ………………………………………………. 4

第2 司法書士に求められる取組み ………………………………………… 4

1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ ………………………. 4

  •  リスクベース・アプローチの意義 …………………………………… 4
  •  リスクの特定及び評価 …………………………………………… 5
  •  リスク低減措置 ………………………………………………… 6
  •  リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応 … 8

 2 犯収法上の義務との関係 …………………………………………… 9

第3 監督指導等の対応 ………………………………………………… 9

1 基本的な考え方 ………………………………………………….. 9

2 司法書士会による監督指導等 ……………………………………….. 10

3 法務大臣等による監督 ……………………………………………. 10

第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等 ………………………………… 11

 1 日司連による手引の策定 ………………………………………….. 11

2 司法書士会によるアウトリーチ等 ……………………………………. 11

 3 その他留意事項 …………………………………………………. 11 

第1 本ガイドラインの目的等

1 本ガイドラインの目的

 経済・金融サービスのグローバル化、暗号資産の普及といった技術革新により、資金の流れが多様化し、国境を越える取引が容易になっている中で、マネー・ローンダリングやテロ資金供与(以下「マネロン・テロ資金供与」という。)の手口も複雑化・高度化している。 こうした資金の流れを放置すると、不正な資金が将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に利用され、組織的な犯罪及びテロリズムを助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えるおそれがあり、我が国や国際社会にとっての大きな脅威につながる。

 このため、国際社会においては、不正な資金の移転が、国境を越え、脆弱な規制や不十分な対策の隙をついて行われるという認識のもと、金融活動作業部会(Financial Action Task Force(以下「FATF」という。))の多国間枠組みを通じて、マネー・ローンダリング、テロ資金供与、大量破壊兵器の拡散活動への資金供与への対策の国際基準(以下「FATF基準」という。)の策定・履行を協調して行い、世界全体での対策の実効性向上を図っている。我が国でも、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号。以下「犯収法」という。)等を制定するなどして、FATF基準の履行を図っている。

 犯収法は、令和4年12月に改正され(国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律(令和4年法律第97号))、司法書士を含む一定の資格者に義務付けられる取引時確認事項が、犯収法第4条で規定する全ての事項に及ぶこととなった。司法書士及び司法書士法人(以下、両者を併せて「司法書士」という。)については、日本司法書士会連合会(以下「日司連」という。)が特定取引において果たすべき確認事項を示すチェックシートのモデルを作成し、これに基づいて司法書士が取引時確認の義務を果たすこととなる。また、司法書士は、犯収法第8条に規定される疑わしい取引の届出義務が課されないこととなったが、当該義務に代わる自主的な制度として、各司法書士会(以下、日司連と併せて「日司連等」という。)の会則において「特別事件報告」の制度が設けられた。

 しかし、社会情勢等が刻々と変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に対応し、個々の依頼についてマネロン・テロ資金供与を目的とするものか否かを的確に判断するためには、これまで行われてきた、法令等の整備によるいわゆる「ルールベース・アプローチ」に基づく対策のみでは不十分であり、司法書士が直面するリスクに応じた柔軟な対応を取ることが不可欠である。

 そこで、本ガイドラインは、司法書士を対象とする「リスクベース・アプローチ」の枠組みを示し、これを遵守させることを目的とするものである(リスクベース・アプローチは、FATFによるマネロン・テロ資金供与対策に関する勧告における基本原則とされており、司法書士を含む特定非金融業者及び職業専門家(DNFBPs)に対しても遵守が求められている。)。リスクベース・アプローチは、自らの業務について直面しているマネロン・テロ資金供与のリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、リスクに見合ったリスク低減措置(資産及び収入の状況の確認を含む。)を講ずることをいい、司法書士が業務を行う上での姿勢を示すものである。

 また、司法書士の業務におけるマネロン・テロ資金供与への対策を実効的なものとするために、法務省、日司連等が行うべき取組みや司法書士に対するモニタリングのあり方について明らかにする必要がある。法務省、日司連等が本ガイドラインを踏まえたマネロン・テロ資金供与対策への対応状況等についてモニタリングを行い、適切な是正措置を行うことで司法書士が果たすべき執務の一層の適正化を図るものである。

2 本ガイドラインの基本的な考え方

  •  リスクベース・アプローチの位置付け

 犯収法は、国民生活の安全と平穏を確保し、経済活動の健全な発展に寄与する上でマネロン・テロ資金供与の防止が極めて重要であること(犯収法第1条参照)に鑑みて、その防止のために特定事業者による措置等を規定している。このような法の趣旨及び目的並びに司法書士の職責(司法書士法(昭和25年法律第197号)第2条)に照らすと、司法書士は、自らの業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であると認めた場合には、その依頼を受けてはならないことになる。そのため、自らの業務に関する依頼を受けようとするときは、その依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否かについて慎重かつ的確に検討しなければならない。また、その検討の結果、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できない場合についても、その依頼を受けてはならない。

 リスクベース・アプローチは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるか否かを検討するための合理的な方法であり、司法書士は、自らの行う業務がマネロン・テロ資金供与に利用されないことが極めて重要な社会的責務であることに鑑みて、全ての依頼について、マネロン・テロ資金供与に関するリスク(以下単に「リスク」という。)の観点から、犯収法等の趣旨を踏まえ、リスクベース・アプローチに基づく対応を行わなければならない(リスクベース・アプローチに基づく検討を行うまでもなく依頼の目的がマネロン・テロ資金供与を目的とすることが明らかである場合には、当然、その依頼を直ちに拒否しなければならない。)。

  •  監督指導等の指針

 マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、司法書士会及び法務省が、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策の取組状況についてモニタリングを行う必要がある。また、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が明らかに不十分であるなどの場合には、監督指導による是正が必要となる(以下、モニタリング及び監督指導を合わせて「監督指導等」という。)。 このような監督指導等の具体的な内容は、司法書士がマネロン・テロ資金供与に関わるリスク(以下「監督上のリスク」という。)に応じて決められるべきである(第3を参照)。

第2 司法書士に求められる取組み

1 司法書士が取り組むべきリスクベース・アプローチ

  •  リスクベース・アプローチの意義

 リスクベース・アプローチとは、司法書士が、業務に関して依頼を受けようとする際及び依頼を受けた後に、自らが直面しているリスクを適時かつ適切に特定及び評価し、当該依頼を行うことが許容される程度にまで当該リスクを実効的に低減するため、当該リスクに見合った対策を講ずることをいう。

 リスクベース・アプローチの枠組みは、司法書士の業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与にあるか否かを検討するための基本原則であることから、本来的には、その適用対象は犯収法上の特定取引(犯収法第4条第1項)に限定されるものではなく、司法書士の業務(司法書士法第3条若しくは第29条に定める業務又はこれらに付随し、若しくは関連する業務)のうち、依頼者のためにする行為又は手続に係る依頼全般に適用されるべきものである。

  •  リスクの特定及び評価

ア リスクの特定及び評価

  リスクの特定は、司法書士が、自らが依頼を受け、又は依頼を受けようとする行為や依頼者の属性等のリスクを包括的かつ具体的に検証し、マネロン・テロ資金供与に係るリスクを特定するものであり、リスクベース・アプローチの出発点というべきものである。

 リスクの特定について、司法書士は、司法書士の業務について依頼を受けようとする場合には、依頼者の属性、依頼者との業務上の関係、依頼内容及び依頼に関係する事実(例えば、不動産登記の代理申請の依頼においては、当該申請の登記原因に係る事実)等の事情を包括的かつ具体的に検討した上で、これらを総合的に考慮してリスクを特定しなければならない。

 また、依頼を受けたであっても、同様にこれらの事情について新たなリスクが判明した場合には、これを踏まえてリスクの特定を検討する必要がある。そして、司法書士は、特定されたリスクについて、自らへの影響度等を踏まえて総合的な評価を行い、その依頼について高リスクであるか否かの判断を行わなければならない。

 このようなリスクの特定及び評価は、リスク低減措置の具体的な内容を基礎付けるものであり、リスクベース・アプローチの土台となるものである。

 イ 高リスクの依頼

 高リスクとは、その依頼を受けようとする場合に、特定したリスクの評価の結果、司法書士会の会則(以下「会則」という。)で定められた依頼者等の本人であることの確認並びに依頼の内容及び意思の確認(以下「依頼者等の本人確認等」という。)の義務や犯収法で規定された取引時確認等の義務を履行するだけでは許容されない程度のリスクが残ることをいう。

 ここで、「許容されない程度のリスク」とは、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いを払拭できないことを意味している。この場合には、後記⑶アのとおり、追加的なリスク低減措置が講じられなければならない。

ウ リスクの特定及び評価の具体的方法

 司法書士は、リスクの特定及び評価に当たっては、自らの有する情報のほか、後述するリスクベース・アプローチに関する解説や国家公安委員会作成の「犯罪収益移転危険度調査書」(以下「危険度調査書」という。https://www.npsc.go.jp/policy/)などを参照したり、法務省等の関係省庁から提供される情報や日司連等から提供される情報等を踏まえたりするなどして、高リスクであるか否かの判断を適切に行うように努めなければならない。

 また、特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する場合には、依頼を受けた後においてもリスクの特定及び評価が必要とされる場合がある。

  •  リスク低減措置

ア リスク低減措置としての顧客管理

 前記⑵で特定及び評価されたリスクを許容される程度に実効的に低減するための措置を講ずることは、マネロン・テロ資金供与対策の実効性を決定付けるものである。リスク低減措置のうち、特に個々の依頼者に着目し、自らが特定及び評価したリスクを前提として、個々の依頼者の情報や当該依頼者の依頼内容等を調査し、調査の結果をリスク評価の結果と照らして、講ずべきリスク低減措置を判断及び実施する一連の流れを、本ガイドラインにおいては「顧客管理」という。リスク低減措置の中核的な事項である。

 依頼者との個別的な契約締結を前提とする司法書士の業務において、リスク低減措置は、通常、個々の依頼者を単位として講じられることとなる。そこで、司法書士は、特定及び評価されたリスクについて、個々の依頼者に着目したリスク低減措置を講ずることが基本となる。 顧客管理は、依頼を受けようとする際の顧客管理(以下「依頼時の顧客管理」という。)と依頼を受けた後の顧客管理(以下「依頼後の顧客管理」という。)に分けることができる。

 一般的にいえば、単発的な不動産登記手続の代理申請業務の多くは、依頼時の顧客管理のあり方が中心的な問題となり、財産管理業務など依頼者との間で継続的な関係が予定される場合には、依頼時の顧客管理に加えて依頼後の顧客管理のあり方も問題となることが多い。

イ 依頼時の顧客管理の内容

  依頼時の顧客管理は、依頼者等の本人確認等を典型例とする。講ずべき措置の内容は、特定及び評価されたリスクの内容及び当該リスクが高リスクであるか否かに応じて決められるべきである。本ガイドラインにおいては、高リスクと判断した場合に講ずべき顧客管理を「厳格な顧客管理」といい、高リスクではないと判断した場合に講ずべき顧客管理を「通常の顧客管理」という。 (ア)厳格な顧客管理(高リスクの場合)

  高リスクと判断した場合には、依頼者等の本人確認等を行うだけではリスクを許容される程度に低減することはできないため、追加的なリスク低減措置を講ずることが求められる。追加的なリスク低減措置の具体的な内容は、犯収法第4条第2項に規定する取引(以下「ハイリスク取引」という。)における追加的な確認方法及び後述するリスクベース・アプローチに関する解説や危険度調査書に記載された取組内容等を参照しつつ、司法書士が直面する具体的なリスクの内容に応じて決められるべきである。なお、高リスクと判断した場合には、その判断根拠や講じたリスク低減措置の内容について記録化しておくべきである。

  • 通常の顧客管理

  高リスクではないと判断した場合には、司法書士の職責上求められる依頼者等の本人確認等の義務や犯収法で規定された取引時確認の義務を履行することで、リスクを許容される程度に低減することができる(後述する「簡素な顧客管理」は、「通常の顧客管理」の一態様として整理される。)。

ウ 依頼後の顧客管理

 依頼者との契約に基づく財産管理業務に従事したり、同一の依頼者から継続的に登記申請手続の代理業務に従事したりする場合など、特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事するときには、依頼時の顧客管理によって低減されたリスクを依頼後も適切に管理しなければならない。これに加えて、業務に従事する過程で新たなリスクが判明した場合には、リスクの評価を行い、その内容に応じたリスク低減措置を講じなければならない。このように、依頼後の顧客管理は、継続的なリスク管理と新たなリスク等への対応に分けることができる。

  • 継続的なリスク管理

 継続的なリスク管理は、依頼時の顧客管理において取得した情報を更新していくことが想定されている。その更新の頻度については、高リスクであるか否かに応じて決められるべきであるが、依頼時の顧客管理を実行することにより許容される程度にリスクが低減されていることから、依頼後に新たなリスク等が生じたり、依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合を除いて、適切な顧客管理の実効性が妨げられない範囲で、取引の円滑な遂行等を考慮した顧客管理が許容される(以下、このような顧客管理を「簡素な顧客管理」という。)。

  • 新たなリスク等への対応

 特定の依頼者との関係で継続的に業務に従事する過程で新たなリスク等が判明したり、依頼時に行った適切な顧客管理をもってしても判明しなかった事情が事後的に判明したりしたといった場合には、依頼を受ける際と同様のリスク評価を行わなければならず、これによってその依頼が高リスクと判断された場合には、速やかに依頼時の顧客管理において取得した情報を更新するとともに、厳格な顧客管理として追加的なリスク低減措置を講じなければならない。その内容は、前記イ(ア)に記載したことが基本的には該当する。

  •  リスク低減措置を講じてもリスクが許容される程度に低減されない場合の対応

 リスクベース・アプローチに基づくリスク評価の結果、その依頼が高リスクと判断され、リスク低減措置を講じてもそのリスクが許容される程度まで減ぜられなかったときには、依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場合に該当するとして、司法書士は、その依頼を拒まなければならず、受任後であれば、辞任しなければならない。

 依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であることの疑いが払拭できない場合であるかに関する判断過程は合理的なものである必要があり、前記⑴から⑶までのリスクベース・アプローチの手順に則ったものである必要がある。また、リスクが許容される程度を超えているかについては、リスク低減措置を講じた後に残るリスクの程度が、高リスクと同程度のものといえるかによって判断されることとなる。

 上記の枠組みは、依頼後に新たなリスク等が生じた場合についても同様に当てはまる。

 2 犯収法上の義務との関係

  前記1のリスクベース・アプローチは、司法書士の業務に関する依頼の目的がマネロン・テロ資金供与であるかどうかを合理的に検討する枠組みであり、これをもって司法書士が犯収法上の義務の履行を免れるものではないことに注意する必要がある。

  例えば、司法書士は、リスクベース・アプローチの枠組みに基づき依頼を高リスクではないと判断した場合であっても、犯収法上の取引時確認等を要する取引類型については、これを実施しなければならないのは当然である。

第3 監督指導等の対応

 1 基本的な考え方

  マネロン・テロ資金供与対策の実効性を確保するためには、司法書士に対する適切な監督指導等が行われる必要がある。監督指導等は、大きく分けて、司法書士会による監督指導等と法務大臣又は法務局及び地方法務局の長による監督(以下「法務大臣等による監督」という。)に区別することができる。司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策には、犯収法上の取引時確認等や会則上の依頼者等の本人確認等のように、法令又は会則に基づいて司法書士による遵守が義務付けられている対策(以下「法令等に基づく対策」という。)と、リスクベース・アプローチのように、法令又は会則に基づいて義務付けられているものではないが、ガイドライン等によって取組みが求められている対策(以下「ガイドライン等に基づく対策」といい、法令等に基づく対策と合わせて「司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策」という。)が存在する。

 司法書士会による監督指導等は、法令等に基づく対策とガイドライン等に基づく対策の双方について行われるのに対し、法務大臣等による監督は、特に法令等に基づく対策の不遵守等を対象として行われることが想定されている。 司法書士会による監督指導等や法務大臣等による監督の方法は、いずれも監督上のリスクの内容及び性質、当該リスクの程度等に応じて決められるべきである。

2 司法書士会による監督指導等

  司法書士会は、司法書士によるマネロン・テロ資金供与対策が十分であるかについてモニタリングを行う。司法書士会によるモニタリングは、司法書士から提出された特定事件報告書に基づいて行うこととなる(特定事件報告書は、司法書士会によるモニタリング等の基礎となるものであるから、その記載事項は、その時点での社会的情勢等に反映した適切なものとされなければならない。そのため、必要に応じて、記載内容は改定されることとなる。)。

 司法書士会は、特定事件報告書の記載内容を通じて司法書士のマネロン・テロ資金供与対策について確認を行う。特定事件報告書に記載された内容に照らすと司法書士が行うべきマネロン・テロ資金供与対策として不十分な措置がとられていると認めた場合には、当該司法書士から事情聴取をした上で、当該司法書士に対して適切な助言及び指導を行うこととなる。 特定事件報告書の性質やこれに基づいた司法書士会による助言及び指導の実効性を確保する必要性があることを踏まえると、司法書士が特定事件報告書の提出に全く応じない場合、特定事件報告書の内容に基づく司法書士会による助言や指導に従わず、執務の内容等に改善がみられない場合、特定事件報告書に虚偽の記載をした場合には、監督上のリスクが高いものとして、司法書士会による注意勧告等の的確な対応をとることが要請される。 日司連は、司法書士会に対し、司法書士会による監督指導等の対応指針を示し、助言及び指導を行うこととする。

3 法務大臣等による監督

 司法書士会は、その会に所属する司法書士に対する指導権限があることから、まずもって司法書士会による監督指導等によって改善が図られることとなる。 しかし、司法書士会による監督指導が功を奏しない事案、法令等の違反の程度が重大である事案、司法書士会による自治的な取組みに委ねることが相当でない事案など、監督上のリスクが特に高いと認められる場合には、法務大臣等による監督が検討されなければならない。

 法務大臣等による監督は、犯収法上の監督権限(犯収法第15条以下)及び懲戒権限(司法書士法第47条及び第48条)の行使を通じて行われる。

 法務局及び地方法務局の長は、犯収法上の監督権限として、報告等を求める権限(同法第15条)、立入検査等の権限(同法第16条第1項)、指導等の権限(同法第17条)及び是正命令の権限(同法第18条)を有している(犯収法第15条以下、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成20年政令第20号)第35条。

 なお、罰則規定につき犯収法第25条、第26条及び第31条)。また、法務大臣は、司法書士法上、司法書士に対する懲戒権限を有しており、「司法書士及び司法書士法人に対する懲戒処分の考え方(処分基準等)」において、犯収法違反を伴う本人確認等義務違反が違反行為として明記されている(別表番号8及び15)。

  法務大臣等による監督は、対象となる事案の性質及び内容、法令等の違反の程度、それぞれの権限の性質や趣旨を踏まえて、どの措置をとるかが決定されるべきである。また、具体的な法務大臣等による監督の内容は、司法書士による法令等の違反の内容やその程度等から評価される監督上のリスクに応じて決定されるべきである。

第4 ガイドラインの実現に向けた取組み等

1 日司連による手引の策定

 司法書士がリスクの特定及び評価を適切に行い、実効的なリスク低減措置を可能とするためには、広くマネロン・テロ資金供与に関する最新の情報を収集し、分析することが有益である。そこで、日司連は、司法書士会と連携して参考事例を集積及び分析し、リスクベース・アプローチに基づく対応を行う上で参考となる事項をまとめた手引を策定し、司法書士に提供するものとする。

 リスクベース・アプローチに関する解説の内容は、社会情勢等が日々大きく変化することに伴うマネロン・テロ資金供与のリスクの変化等に機動的に対応するために、定期的に更新されることが想定される。

2 司法書士会によるアウトリーチ等

 司法書士会は、日司連及び法務省とも連携しつつ、リスクベース・アプローチその他のマネロン・テロ資金供与への対策に関する情報を、引き続き研修その他の機会を通じて司法書士に提供するものとする。また、日司連は、関係機関からの情報提供を受けたり、関係機関との間で意見交換等をしたりすることで、適時情報を把握して、司法書士会を通じて会員に情報提供をするものとする。

3 その他留意事項

 日本では、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)や国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号)に基づいてタリバーン関係者やテロリスト等に対し、資金その他資産の使用・資金の流れを防止するための資産凍結措置を実施している。司法書士においても、個々の依頼者に着目するほか、下記の対応をとることが求められる。

・取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)等)について最新の制裁リストと照合するなど、的確な運用を図ること

・制裁対象者が新たに指定された際には、遅滞なく、特定受任行為の代理等の依頼者に係る情報と照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずること

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