「Legal Innovation Conference 〜法務のDX〜」イベントレポート、の記事を読んで。

「Legal Innovation Conference 〜法務のDX〜」

https://www.businesslawyers.jp/seminars/84

下の記事を読みました。実際にイベントを聴いていません。

https://note.com/ruc/n/na51f4d52969e

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―略―

1. Hubble酒井パート

◆リーガルテック導入によっては何も変わらない。

酒井) 本日は、私とVisionalグループでビズリーチの法務室長の小田さんとで「リーガルテックは法務組織のどんな課題を解決するのか」というテーマについてディスカッションしていきたいと思います。

私は、これまで法務関係者約1000名近くの方々とお会いして、課題のヒアリングなどをさせていただきました。その中で、「ちょっとリーガルテックの導入を検討してるんですよね。」とか、「来期何かリーガルテック入れたいと思ってます。」とかっていうお話をよく伺います。

ただ、私からは本日、「リーガルテック導入によっては何も変わらない。すべては、何を解決し、何を実現したいか。」であるというメッセージをお伝えしたいと思っております。

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聴く人を惹きつけることが大事なんだなと感じました。

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どういうことかというと、「あくまでリーガルテックは手段であるということを前提に、理想の業務フロー・理想の組織・理想の働き方の実現に向けて、今ボトルネックになっている課題を特定して、それを解決していく」、

そういう考えで、リーガルテックについてお考えいただいたうえ、導入に向けて進んでいくというステップが非常に重要なのかなと思っています。

特に今回のセッションでは、小田さんと一緒に、解決すべき課題というものにフォーカスしてお話ができればと思っております。

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実際に、私たちが使っている登記情報サービス、登記・供託オンラインシステム、申請用総合ソフトもリーガルテックに入ると思います。司法書士用の電子証明書、マイナンバーカード附属の電子証明書も当事者による電子署名を行う上で必要です。

サムポローニア、権などの登記申請を行いやすくするシステムもリーガルテックに入ると思います。申請用総合ソフトなどの無料のシステムを比べて、スピードやミスが減るのがITベンダーと呼ばれる企業が提供するシステムの良さだと思います。他に検索機能、一覧性、保存性も重要です。またセキュリティに配慮しながら誰が入力しても同じように申請書などを作成することが出来る、分からないときはサポートセンターに聴くことが出来ます。最後の司法書士によるチェックは必須ですが、そこに至るまでの情報を整理してくれます。

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◆法務組織の課題とは

酒井) まず、実際に課題を特定していくために、いま自分たちがどういうワークフローで業務を行っているのかを考えていく必要があると思っています。

弊社のサービスは契約業務にフォーカスしたサービスですので、たとえばHubbleのユーザー様で、既存の契約業務のフローがどのようになっているのかについて、ユーザー様にヒアリングさせていただいています。簡単に整理した図の一例がこちらです。

まず①事業部門からの契約審査の依頼、そして依頼部門とのやりとりはメールであったり、最近だとTeams、Slackというチャットツールで行います。依頼があったと同時に、Excelで並行して案件管理表を作ります。

社内でのやり取りと相手方とのやり取りを踏まえて、②契約の承認プロセスに入ると、社内の既存システムが走るということになります。

③締結する段階に入れば、ほとんどはまだ紙ベースで行われていて、一部は電子契約に置き換わっています。

④締結後の管理に関しても、Excelで台帳を作り、紙で保管するものに関してはファイリングするという形で契約業務を行っている企業様は少なからずあるのではないかなと思っています。

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どちらが良いのか、私も分かりませんが法務部の人はslackやteamsに入ることは出来ないのかなと感じました。

Excelで案件管理、紙で台帳管理に関して、Excelで検索や情報の並べ替え、タイムスケジュールが分かりやすく管理出来るのなら、それはそれで良いんじゃないかと思いました。

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こうしたワークフローにどういった課題があるかということを考えてみると、例えばこのような感じで出てきます。

契約審査の依頼の段階では、先ほどのようにメールやチャットでバラバラに五月雨式に依頼が来ること、契約審査の段階でいえば、メールとWordで大量にバージョン管理が発生したり、ドキュメントの管理が煩雑になっていることという課題が出てきます。

しかし、これで既存のワークフローを前提に課題が特定できたかというと、これだけでは個人的には不十分だと思っています。

なぜなら、これはまだまだいわゆるメンバー、手を動かす方々のみの課題です。これを抽象化して、組織として見たときにどういう課題になっているのか、さらに言うと会社全体としてどういう課題を抱えることになっているのかというところまでを紐解いていくことで、リーガルテックにより解決すべき課題を特定できるようになると思いますし、そこまで考えるべきだと思っています。

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入口の段階で、バラバラで来ると、さすがにその後の処理も難しくなるかもしれません。表紙だけでも、ワードやエクセルなどに統一出来ると良いのかなと感じます。

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では、どういう風にやっていくかっていう私の考えを、後ほどのパネルディスカッションの中で、小田さんと一緒にディスカッションをさせていただければと思っております。それでは一旦、小田さんの方にバトンタッチしたいと思います。

2. Visionalグループ小田様パート

◆ツールを導入する前に課題を明確にすること

小田) 私の方からは、Visionalグループの法務組織において、どんなことを考えてリーガルテックのツールを導入しているのかという背景を、簡単にお話しできたらなと思っております。

―略―

今日伝えたいことはこちらで、ツールの導入というのはたしかに大事なことではありますが、それを考える前にどんな課題を解決したいのか、ということを明確にしないといけないという、人によっては当たり前の話です。ただ、結構見落とされがちというか、意外と深く考えられていないこともあるのかなと思いますので、今日はここを強調してお話ししたいなと思っております。

まず、当グループの法務組織の背景を理解していただくために、簡単にご紹介できればと思っております。

ビズリーチという会社をCMなどでご覧いただいた方も多いかと思うのですが、今年2月にビズリーチは持株会社の体制に移行しておりまして、ホールディングスとしてビジョナル株式会社というものがございます。私が所属している法務室が株式会社ビズリーチという子会社に所属し、そこでグループ全体の法務機能を統括しているという形です。

まず法務組織のメンバーの人員構成、これが実は私が一番直近苦労してきたところでした。私が法務室長に着任した今年の2月の時点で、法務の正社員は3人しかいませんでした。従業員数も当グループ全体でいうと1000名を超えていますし、事業の数も10前後というところで、その業務の量としては他社と比べても少なくはない水準だったと思います。その中で3名というのは、皆さんも想像していただけると分かると思うのですが、相当苦しい状態からのスタートになりました。

その当時を支えてくれたメンバーには今でも感謝してるんですが、それが今では6名、もうすぐ増員して7名になる予定というところまで来ております。

◆Visonalグループ法務の課題

そんな当グループの法務組織の課題についてお話ししますと、先ほど事業の多さについてお話ししましたが、まず1つ目が、これに付随する問い合わせ件数の多さでした。

色々と前提が違うので数を単純比較できませんが、大体皆さん月間でいうと100件とかその前後で問い合わせ件数が推移されている会社さんが多かったんですが、当グループだと約300件ありました。これを3人で対応するのは、ボリューム的に非常に難しい状態でした。

その中で業務の属人化が顕在化していました。

例えば、次に示す会話って皆さんももしかしたら記憶にあるかもしれません。同じような問い合わせがきた時に「ああ、よくあるアレですね。」という内容を聞いた時です。

僕も着任した当初はよく「これって、過去に質問あったの?」と聞くと、その担当者の頭の中にはあるんだけれども、それが文書化されてなかったり、ファイル自体が担当者のデスクトップに置いてあったりとかして、それを取り出すのにちょっと時間がかかるような状態でした。それが法務組織の課題でした。

もう少し抽象化すると、そもそもの問い合わせ件数300件というのが3人で処理できる限界を超えているということもあって、業務自体がひっ迫している中で、先ほどの属人化を解消するためにリーガルテックを入れて活用しようと言ったところで、その活動をする余力すら残ってない状態でした。

また、当グループ全体でいうと、まだ成長フェーズにございますので、事業の数とともに法的論点も増えている。さらに、グループ経営体制への移行も今年の2月のタイミングだったので、その前後というのは様々な対応に追われました。そういった状況下で、このスパイラルを一向に解消できないという状態が続いてしまっていた、というのが今年の初めまでです。

◆導き出した解決への「3つの柱」

ただ手をこまねいているわけにもいかないので、どういう順番で課題を解決すればいいのか考えました。ツールを導入して云々というところも当然頭にはよぎるんですが、いきなりそこから考えるのではなくて、まずは順を追って考えていこうと、問題を紐解いていきました。私の中ではこの3つを大きな柱として考え、これらを戦略としました。

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やっぱり検索できるようなシステム、一覧性のあるデータベースが必要なんだろうなと感じます。

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1つ目がまず採用です。

兎にも角にも、改善のためのリソースが足りていなかったため、まずはその組織の立ち上げフェーズにジョインしてくれる仲間を募るため、採用に踏み切りました。結果的に今日の時点で3人から6人まで増えているので、そこに関しては大成功しているかなというところで。これでようやく下の二つが着手できる状態になりました。

下の2つというのが、当グループではもともと問い合わせの経路が、Slack で来ていたり、営業側で使っている Salesforce から問い合わせが来たり、色んな所に問い合わせの経路が分岐していて、総数などの管理も難しい状態でした。なので、それを一元化・可視化することをまずやりました。

私自身もすごく手を動かして色々な質問に対応してたのですが、「これまた同じこと聞かれてるな」とか、「隣の人に聞いたら一発でわかるかもしれないのにな」みたいな問合せが、さきほどの300件を構成していたことがわかりました。それらをナレッジ化することで問い合わせの数をそもそも減らしていこうと考えたわけです。

最後に、「車輪の再発明」っていうことを私はよく言うんですけれども、一度一人が苦労して作り上げたものというのは、もう一人が同じ苦労する必要はありません。一度作ったドキュメントをベースに次の人が考えられるようにしておきたいというところで、3点目の知見の共有化を進めて行こうと考えていました。

◆「知見の共有化」とHubble

小田) 2つ目の業務効率の改善は、問い合わせ件数が可視化されるなど、実際に社内向けに公開した事業部向けのナレッジがクォーターだけで133件、法務のメンバー総動員で対応してその作成を完了しました。最後に大事なポイントとして、Hubbleも導入させていただいて、762件のドキュメントが今日の時点で共有されている状態です。

問い合わせ施策の実行による変化を、分かりやすく当グループの中にあるデータとかを使ってご説明できればと思います。問い合わせの件数が、元々300件あったが現在は減少しています。そもそも可視化できなかった状態から可視化できるようになったというところが大きな進歩です。

その次が、社内のナレッジで、「わかりやすくて困る約款解説シリーズ」と名付けた物を作り、社内向けに公開して、これ見たら解決するよっていう状態を作っていこうとしています。ナレッジの閲覧件数などもデータで取れるので、これをもとにナレッジのブラッシュアップに使っていきたいなと思っています。

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サムポローニアが出している説明書の社内向けのようなものをイメージしています。または司法書士必携(検索できるんでしたっけ)。

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さて、Hubbleがどんな活用がされてるなんですけども、ちょうど5月から6月で大きなジャンプをしてるのが分かると思います。実は5月に入社してくれたメンバーに、このHubbleの活用の担当をお願いしました。こちらの担当者が活用のルールなどを定めてくれて、法務のメンバー内で活用を促進してくれたことから一気に活用が進みました。

そして、私がHubbleを使わせて頂いていて、一番肝の機能だなと思っているのが、本文の検索機能です。これがちょっと優秀すぎて手放せないなという感じが正直しています。

本文・文言ベースで検索できるってことが本当にありがたくて、何も考えずにポンポンとドキュメントを放り込むだけで、後でその文言を引っ張り出せる安心感が本当にうれしいなと。Hubbleには本当にお世話になっているという感じです。

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やはり検索機能がくるのですが、これが一番なのかな、なんだろうな、と感じました。

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◆大事なことは「課題ファースト」であること

小田) ―略―まずは入れてみようという発想も大事ではあるんですが、基本的にはどの課題を解決しに行くのか?という点を大事にしないといけない、と私は強く心がけています。

なぜかと言うと、結局、どんな良いツールであっても、徹底的に使わなければその価値を感じられないんですよね。Hubbleも実は5月まで私が導入して使ってみようとか言っていたんですけど、月に10件くらいしか書類がアップロードできなくて、Hubbleのありがたみを感じることができなかったんですよ、正直。それを徹底的に使いこなすところまで行って初めてすごいなと思えるようになったので、実行することを考えた時に、やはりその課題が明確でないと、結局その実行は続かない。そういう意味でこの課題を考えるということが大事になるのかなというところです。

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徹底的に使いこなしてみる、というのは大事だと感じます。システムの癖みたいなところもあると思います。現に私はまだサムポローニアは使いこなせていません。

また、ユーザーが少し調整できる部分があると良いと思うのですが、その余地が少なく感じます。例えば、信託契約書について案件管理や契約書の条項をいくつか登録しておいてパターンごとに大雑把に当てはめる(そこから人が微調整)みたいなことが出来ません。

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民事信託・家族信託に関する質問

メールによる質問を一部加工しています。

委託者:父

受託者:息子が代表取締役の法人

受益者:父、母

・父が亡くなりました。 銀行の了解が必要ですか?他にどんな影響があるでしょうか?

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 ・銀行借入があり、銀行が民事信託の設定を支援した軍用地について

銀行に連絡は必要です。

基本的には、登記は少し特殊ですが、普通の相続が起きたときと同じような処理をします。

登記申請は銀行の提携司法書士がやるのか確認をお願いします。

・銀行借入のない自宅の土地建物について

 準備書類を添付します。私が登記する場合、除籍謄本と、息子様の長男の運転免許証の写真を先にメールしていただければ、書類、見積書は作成出来ます。

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信託財産の土地は、信託の終了が必要になると思われるが、その際に不動産取得税がかかるのか否か等お教えください。

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信託財産の土地について、信託法上は信託は終了しません。次の受益者に指定されている方への受益者変更の登記申請を行います。

税務上、相続と扱われて不動産取得税はかかりません。相続税の対象となります。

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・建物を信託財産に属する財産にした後に建物を取り壊した際に信託は終了することになると思いますが、この認識でよいでしょうか。

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信託法上、信託は終了しません。土地と一緒に信託契約をしているからです。次に指定されている受益者への受益者変更の登記を行います。

受託者と受益者の合意で、土地と一緒に信託を終了させることも可能です。

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・信託の目的物である建物を取り壊す際の税務処理について

 信託財産(この場合建物)を取り壊す際に信託上の処理が必要か。

 例えば、信託財産の建物は、信託を終了してからでないと取り壊せないなど。

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税務上の処理は今年中に取り壊しが完了して、受託者が役所に建物滅失の届け出を提出した場合、来年の建物の固定資産税が課税されません。

信託上の処理は必要ありません。受託者が解体業者と契約して取り壊します。

取り壊した後、受託者が建物滅失登記を申請します。

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・私から長男への信託受益権の暦年贈与を実施したいと思います。

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可能です。お父様から息子様への受益者の変更登記申請を行った後、長男を受益者に追加する受益者の変更登記申請を行う必要があります。

11月の相談会のお知らせ

お気軽にどうぞ。

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え
後援(株)ラジオ沖縄 

日時:令和2年11月27日(金)14時~17時 (3組) 
場所: 司法書士宮城事務所(西原町)
要予約 電話・HP・メール
問い合わせ先:司法書士宮城事務所(098)945-9268、HP,メール【shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp】
料金:1組5000円

ほっこり記事

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201103/k10012693431000.html

横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(5)」

登記情報[1]の記事です。

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1つの信託契約に属する信託受益権を量的に分割することを「受益権の分割」といい、受益権を分割して譲渡することを「受益権の分割譲渡」と呼ぶことがあります。

この場合でも、信託契約は、あくまでも1つでであり、受益者ごとに信託契約が複数存在するわけではありません。したがって、信託目録に記録される受益者は、信託契約上の受益者をすべて記録すべきであって、不動産ごとに割り当てられた(分割された)受益者のみが記録されるものではないと考えられます。

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「この場合でも、信託契約は、あくまでも1つでであり、受益者ごとに信託契約が複数存在するわけではありません。」から、「信託目録に記録される受益者は、信託契約上の受益者をすべて記録すべきであって、不動産ごとに割り当てられた(分割された)受益者のみが記録されるものではない」という結論が導かれるものではないと考えます。

信託行為における受益権の内容により、不動産ごとに受益権を割り当てることは可能ですし(信託法88条)、不動産登記法の技術上も可能です。また、受益権を持っていない不動産の信託目録に受益者として記録されると、税務上、実体と異なる解釈をされる可能性があります。

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上記の事例で、A不動産につき信託を一部合意解除する場合には、一部合意解除の当事者は、受託者と受益者全員となるのであって、A不動産の信託受益権を享受しているaのみが当事者たる受益者となるものではないと解されます。

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一部合意解除、を信託の変更を読み替えます(信託法149条)。受託者と受益者全員となるかどうかは、信託行為の定めによります。

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 しかしながら、何人も届出されすれば、自益者になることができるという①の解釈は、実際問題として考えにくいことから、②の解釈が相当と思われますが、さらにこの場合には、だれが指定権を有しているのかが判然としません。そこで、前後の文脈から、「所定の様式による届出書を受託者に提出することにより、(受託者が)指定することができる。」と解するのが妥当のように思われます。

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私は、受益者の相続人全員が受益権を誰が取得するか協議して(遺産分割協議とは異なります。)受益権を取得するとされた者が受益者となる、と読みました。受託者が指定するとは読むことが出来ませんでした。

もし私にこのような定めのある信託目録が持ち込まれたら、信託行為と照合して、信託の変更で出来るのであれば信託の変更(信託目録のその他の事項欄の変更登記申請)と受益者の変更(登記申請)を行うと思います。

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したがって、受益者の変更の登記原因証明情報については、その申請が単独申請であるにもかかわらず、別表に個別列挙されなかったことで、特別な配慮をする必要はなく、原則に従った登記原因証明情報を提供すれば足りるものと考えます。つまり、受益者の変更の登記の申請には、報告的な内容の登記原因証明情報が認められるべきであり、旧不動産登記法の申請書副本の提出の比較において、登記申請人が登記原因を確認した書面を作成するのであれば負担にはならないという点を考慮し、登記申請人である受託者がその作成者となり、登記の原因となる事実又は法律行為があったことを積極的に承認するというレベルまでの証明をすれば、最低限の目的を達すると考えられます。

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受益者の変更の登記原因証明情報の作成は、受託者のみで報告的な内容の登記原因証明情報が認められる、の部分が何故なのか分かりませんでした。信託行為に、信託法149条2項2号について、具体的に「受益権の売買による受益者の変更」が記載されており、受託者の信託事務に、変更にかかる登記原因正目情報の単独作成が記載されていれば、可能かもしれません。

立会に関して触れられている箇所もありますが、登記されることとは別に、お金が動く場合は、新旧受益者の受益権売買契約に関して代金決済時の納得感が必要なのかなと感じます。


[1] 708号 2020年11月号 きんざいP58~

「信託口口座開設等に関するガイドライン」

日本弁護士連合会「信託口口座開設等に関するガイドライン」

https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/activity/civil/shintakukouza_guide.pdf

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1 対象とする信託

 民事信託とは,その原因となる経済行為は,長期の財産管理制度と組み合わせられた贈与であり,主として財産の管理・承継のために利用される信託をいう(神田秀樹・折原誠『信託法講義』5頁(弘文堂,2019))。

 また,家族信託とは,一般的に,委託者,受託者及び受益者等の信託の当事者ないし関係者が家族又は家族が運営に関与している法人により構成されている信託をいうとされている(なお,「家族信託」という名称は,一般社団法人家族信託普及協会が商標登録をしている。)。

 本ガイドラインでは,民事信託であり,かつ,信託当事者ないし関係者が家族,家族が運営に関与している法人又は知人等により構成されている信託を対象としている(以下,本ガイドラインでは,単に「民事信託」という。)。

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民事信託について、経済からのみ定義する方法もあるのだなと感じました。金融機関向けだから、というわけではないと思います。

家族の定義についても、おそらく意図的に親族などの用語を使わずに幅を持たせているのかなと感じます。

私には、知人が構成員に入っている民事信託が思い浮かびませんでした。何らかの経済的な要因(例えば、企業の後継者)を理由として構成員に就任していると考えます。

私は民事信託というとき、新井誠、大垣尚司「民事信託の理論と実務」日本加除出版P2の定義を念頭に置いています。

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信託をめぐる法律関係は未解明な点も多いため,信託契約書等は法律の専門家である弁護士の関与のもとで作成すべきである。

 3 公正証書

信託法上,信託行為は,公正証書によることは要件とされていないが(なお,自己信託は,公正証書その他の書面又は電磁的記録によってなされることが規定されている(信託法3条3号)。),信託の有効性を担保するとともに,後日の紛争を防止するため,信託行為は原則として公正証書によって行うべきである。

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このような書き方だと、弁護士は信託の有効性を担保しないのかな、後日の紛争を防止しないのかな、と読まれてしまわないかなと思います。

私なら、契約書が保管されること、公の機関による日付と内容の確認、公証人の面談(必要な場合には医師の判断を含む。)による契約当事者の判断能力の二重、三重の確認、のようなことを書くと思います。

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なお,受益者名を口座名義に入れた場合には,受益者の変更の際に口座名義を変更するかどうかを検討しなければならず,また,受益者が複数の場合に口座名義に全ての受益者名を入れることは事実上困難と考えられる。また,そもそも受託者が複数いる場合には,金融機関のシステム上の問題などから口座開設が認められないことがある点には留意する必要がある。

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私は経験がありません。連名による預金取引、成年後見人が権利分掌せずに複数いる場合、地縁団体との取引、権利能力なき社団との取引に準じて、口座開設の可能性はあるのかなと考えます[1]

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受託者の信託財産に属する預貯金の払戻権限

1 信託行為において,受託者の信託財産に属する預貯金の払戻権限に制約が加えられている場合もある。他方で,金融機関としては,預貯金の払戻しに際し,金融機関が免責されるかが重要な問題である。受託者による預貯金の払戻しの際に,金融機関に当該受託者に預貯金の払戻権限があるか否かのチェックを求めることは,金融機関に過度の負担を強いることになり,金融機関に信託口口座の開設をためらわせる原因となる。

 2 そのため,信託行為に,受託者の信託財産に属する預貯金の払戻権限を制約する条項や預貯金の払戻金額に上限を定める条項を設けることは望ましくない。仮に,信託行為に受託者の信託財産に属する預貯金の払戻権限を制約する条項や預貯金の払戻金額に上限を定める条項があるときには,金融機関から信託口口座の開設を拒絶される可能性や,相応の手数料を請求される可能性がより高くなることに留意が必要である。

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任意後見に倣って、信託監督人の同意を必要とする、などの制約を付けると金融機関の負担も少しは減るのかなと感じます。

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もっとも,債権差押命令を申し立てる場合,債権者には債権執行の目的である差押債権を特定することが要求されている(民事執行規則133条2項)。また,同条にいう特定の程度と,債権差押命令の送達を受けた第三債務者において,差押えの効力が差押命令送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別できるものでなければならないとされている(最決平成23年9月20日民集65巻6号2710頁)。かかる最高裁判例は信託口口座に係る預貯金債権を対象とする債権差押命令にも妥当するものと考えられる。そのため,信託財産を対象とする強制執行は例外的なものであることに鑑みれば,信託財産を差押えの対象とするのであれば,現行の最高裁判例や,現行執行実務の下においても,差押債権者においてそのように明記しなければ,第三債務者が速やかに,かつ,確実に,差し押さえられた債権を識別できるとはいえない。

すなわち,債権差押命令書において,差押債権目録において信託財産が差押対象に含まれることが記載されていない限り,当該差押命令は受託者の固有財産である預貯金のみを対象とするものと解すれば足りるとする考え方もある。この考え方による場合,仮に信託口口座から預貯金が流出した後に,差押債権者から当該差押命令は信託口口座の預貯金をその対象に含むとの主張があったとしても,第三債務者たる金融機関は,民法478条にいう無過失であるとして免責されるものと考えられる。

なお,このように考えても,通常は債務名義を取得し債権執行に至る過程において,債権者において自己の債権が信託財産責任負担債務に係る債権であることを知るのが通常であると考えられる。さらには,新民事執行法施行後は,債権差押命令申立てに先立ち,新民事執行法207条に基づき裁判所に対する預金債権等の情報取得手続を経て,当該金融機関における受託者名義の預金債権の存在及びその内容の情報を取得し得ることとなる。こうした観点からは,差押債権目録に差押対象として信託口口座の記載を求めたとしても,債権者に対して特段酷とは言えない。

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実務がこうなって欲しいと思います。

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7 信託内借入に関連して,受託者の固有債務や第三者の債務のために信託財産へ担保設定(物上保証)をするようなケースも想定される。このときには,そうした物上保証を伴う当該信託内借入が信託の目的に合致していることやそのような借入が受託者の権限の範囲内であることなどを前提とした上で,それに加えて当該行為(特に受託者の固有債務や第三者の債務のために信託財産へ担保設定(物上保証)すること)が利益相反行為に当たらないことなどが必要である。

受託者が利益相反行為を行った場合には,当該行為は無効となったり,取り消されたりするリスクがある(信託法31条4項,6項,7項)。よって,弁護士としては受託者の利益相反行為に注意して信託契約書等を作成しなければならない。

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たしかに信託行為に記載するだけではなく、こういう時に信託監督人、または任意後見監督人が必要なんだなと思いました。

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そのため,信託行為において任務終了事由から除外されている場合には,任務終了しないこととなるものの,受託者に後見・保佐が開始したときに金融機関としてどのように取り扱うことになるかは,個々の金融機関の判断によることとなると思われる。

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「受託者に後見・保佐が開始したときに金融機関としてどのように取り扱うことになるかは,個々の金融機関の判断によることとなると思われる。」は、私なら、成年後見人、保佐人との取引に準ずる判断によると思われる、と書きます。

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2 ただし,信託行為に別段の定めがある場合には,受託者に破産手続が開始したとしても任務終了はせず,従前同様,破産者が受託者としての業務を継続する(信託法56条4項)。

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おそらく金融機関は、信託法による対応はしないのではないかなと感じます。

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[1] 「金融機関の法務対策5000講1巻」2018金融財政事情研究会P1028、P1052、P1146、P1147

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