加工_法制審議会担保法制部会第40回会議(令和5年11月7日開催)

加工_法制審議会担保法制部会第40回会議(令和5年11月7日開催)部会資料37―1

法務省

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00223.html

担保法制部会資料37―1

担保法制の見直しに関する要綱案のたた き 台 1⑴

目次

第1

定義 3

第2

譲渡担保契約に関する総則規定 4

1譲渡担保権の内容 4

2譲渡担保権の被担保債権の範囲 4

3譲渡担保権者による譲 渡担保財産の譲渡 4

4譲渡担保権設定者の処分権限 5

5同一の譲渡担保財産についての重複する譲渡担保契約 5

6譲渡担保権の不可分性 5

7物上代位 5

8物上保証人の求償権 6

9根譲渡担保契約の効力 6

第3

動産譲渡担保契約の効力 13

1動産譲渡担保権の及ぶ範囲 13

2動産譲渡担保権者による果 実の収取 13

3動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用及び収益 13

4妨害の停止の請求等 14

5牽連性のある金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権の対抗力 14

6動産譲渡担保権の順位 15

7動産譲渡担保権の順位の変更 15

8動産譲渡担保権と先取特権との競合 15

9動産譲渡担保権と動産質権との競合 16

10占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例 16

11牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例 16

12転動産譲渡担保 16

第4

集合動産譲渡担保契約の効力 17

1特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約 17

2集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例 18

3集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分 18

4補充義務 19

5集合動産譲渡担保権に基づく物上代位等 19

6動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求 20

第5

債権譲渡担保契約の効力 20

1混同の特例混同の特例 ………….. 20

2債権譲渡担保権の順位債権譲渡担保権の順位 .20

3債権譲渡担保権と先取特権との競合債権譲渡担保権と先取特権との競合 ………………. 20

4 債権譲渡担保権と債権譲渡担保権と債権を目的とする質権との競合債権を目的とする質権との競合 .21

5債権譲渡担保権の順位の変更債権譲渡担保権の順位の変更 .21

6転債権譲渡担保転債権譲渡担保 …..21

第6 集合債権譲渡担保契約の効力集合債権譲渡担保契約の効力 …………22

1 集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て .22

2 補充義務の規定等の準用補充義務の規定等の準用 ..22

第1 定義

次の1から15 までに掲げる 用語の意義は、それぞれに定めるところによる ものとする 。

1譲渡担保契約 金銭債務を担保するため、債務者又は第三者が動産、債権その他の財産【財産の範囲についてはP】を債権者に譲渡することを約する契約をいう。

2譲渡担保財産 譲渡担保契約の目的である財産をいう。

3譲渡担保権 譲渡担保契約に基づいて譲渡担保財産の譲渡を受ける者が譲渡担保財産について取得する権利をいう。

4譲渡担保権者 譲渡担保権を有する者をいう。

5譲渡担保権設定者 譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保財産を譲渡する者(その者が譲渡担保財産について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。

6動産譲渡担保契約 譲渡担保契約のうち、動産を目的とするものをいう。

譲渡担保動産 動産譲渡担保契約の目的である 動産をいう。

8動産譲渡担保権 動産譲渡担保契約に基づいて譲渡担保動産の譲渡を受ける者が譲渡担保動産について取得する権利をいう。

9動産譲渡担保権者 動産譲渡担保権を有する者をいう。

10動産譲渡担保権設定者 動産譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保動産を譲渡する者(その者が譲渡担保動産について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。

11債権譲渡担保契約 譲渡担保契約のうち、債権を目的とするものをいう。

12譲渡担保債権 債権譲渡担保契約の目的である債権をいう。

13債権譲渡担保権 債権譲渡担保契約に基づいて譲渡担保債権の譲渡を受ける者が譲渡担保債権について取得する権利をいう。

14債権譲渡担保権者 債権譲渡担保権を有する者をいう。

15債権譲渡担保権設定者 債権譲渡担保契約の当事者のうち譲渡担保債権を譲渡する者 (その者が譲渡担保債権について有する権利を他の者に譲渡した場合にあっては、その権利を現に有する者)をいう。

説明

1本文は、 譲渡担保契約に関する用語を定義するものである。所有権留保に関する定義については次回以降に改めて 提示する予定である。

なお、 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する規定を設けるに当たっては、 その効力、実行及び破産手続等の取扱いについての規定を含む新法を制定する方向で検討している 。

2「譲渡担保契約」の定義は、 部会資料 28 第1、 2と実質的な変更はない。 現在の譲渡担保権は譲渡することができればどのような財産であっても 目的 とすることができるため、新たに設ける規定においても 、その目的となる財産の範囲について、(不動産及びこれに関する権利を除くほか)特段の制限を設けないことが考えられる。しかし、動産であっても抵当権の目的となり得るものや物的編成主義による登記登録制度を有する財産については、非占有型の担保権に関する新たな規定を適用する必要性に疑問がある上、例えば譲渡担保権と抵当権との優劣関係をどのように規定するかという問題や、動産譲渡登記が対抗要件としての意味を有しないなどの特殊性があるため、譲渡担保権に関する新たな規定の適用対象とするかどうかについて、改めて検討する必要がある。

そこで、本文においては【P】としてとしており、別途その点を取り扱う予定である。

3 「譲渡担保権」のうち、「譲渡担保財産の譲渡を受ける者」は、譲渡担保契約によって譲譲渡担保権者となる者をいい、その具体的な権利の内容は、後記第2、1の「譲渡担保権の「譲渡担保権の内容」において示している。

4 譲渡担保権を有する者は、必ずしも譲渡担保契約において譲渡担保財産の譲渡を受けた者に限定されるものではなく、被担保債権が譲渡された場合にはこれに随伴して譲渡担保者に限定されるものではなく、被担保債権が譲渡された場合にはこれに随伴して譲渡担保権も移転することになる。「譲渡担保権者」は、このような譲渡担保権の移転を受けた者も「譲渡担保権者」は、このような譲渡担保権の移転を受けた者も含まれる。

5 「譲渡担保権設定者」は、譲渡担保契約の当事者である譲渡担保財産を譲渡する者のほか、その者が譲渡担保財産について有する権利を他の者に譲渡(担保権付きの財産の譲渡)した場合譲渡を受けた者が設定者としての地位に立つため、「譲渡担保権設定者」をこのような譲渡を受けた者をも含むもの者をも含むものとして定義している。

6 動産譲渡担保契約及び債権譲渡担保契約についても、以上に倣ってそれぞれ定義規定を設けている。

第2 譲渡担保契約譲渡担保契約に関する総則規定

1 譲渡担保権の内容

譲渡担保権者は、譲渡担保財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有するものとする。

(説明)

譲渡担保権の中心的内容が、譲渡担保財産に対する優先弁済権にあることを定めるものであり、部会資料28第第2、1と同様である。

2 譲渡担保権の被担保債権の範囲譲渡担保権の被担保債権の範囲

譲渡担保権は、元本、利息、違約金、譲渡担保権の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を担保するものとする。ただし、譲渡担保契約に別段の定めがあるときは、この限りでないものとする。

(説明)

譲渡担保権の被担保債権の範囲を定めるものであり、部会資料28(第2、2)から変更はない。

3 譲渡担保権者による譲渡担保財産の譲渡

譲渡担保権者による譲渡担保財産の譲渡担保権者は、譲渡担保権の実行手続によらなければ、譲渡担保財産を譲渡することができないものとする。

(説明)

譲渡担保契約の効力は、債権を担保するために必要な限度で制限されており、譲渡担保権が、その実行手続によらなければ譲渡担保財産の譲渡をすることができない旨の性質を有することを定めるものであり、部会資料8第2、4から変更はない。

4 譲渡担保権設定者の処分権限譲渡担保権設定者の処分権限

譲渡担保権設定者は、譲渡担保財産について、その有する権利を第三者に譲渡することができるものとする。

(説明)

譲渡担保権設定者の処分権限に関し、設定者が、譲渡担保財産を担保権の負担付きで第三者に有効に譲渡することができる譲渡することができるか否かについて、これをすることができるとする旨の規律であり、部会資料33第3の【案3.1】を前提としたものである。

なお、設定者が有する譲渡担保財産についての権利が譲渡された場合の実行の場面における通知等については当初の設定者に対してすることができる等の規律を設ける予定である。

部会資料33第3第3の【案の3.1】においては、上記の譲渡について、譲渡担保契約により、禁止又は制限することができる旨の規律を隅付き括弧により示していた。

しかし、原則として譲渡することができる財産を当事者の合意によって譲渡することができないものとする(第三者への譲渡の効力を無効とする)ことについては疑問もある。そこで、実行手続において、担保権者が当初の設定者に対して通知等をすれば足りる旨の規律を設けることとし、担保権付きの譲渡を制限又は禁止する旨の約定を可能とする旨の規定は設けないこととしている。

5 同一の譲渡担保財産についての重複する譲渡担保契約

譲渡担保財産は、重ねて譲渡担保契約の目的とすることができる財産は、重ねて譲渡担保契約の目的とすることができるものとするものとする。

(説明)

同一の譲渡担保財産について後順位の譲渡担保権を設定することができる旨の規定であり、部会資料28第2、3から変更はない。

6 譲渡担保権の不可分性

譲渡担保権者は、被担保債権の全部の弁済を受けるまでは、譲渡担保財産の全部について、譲渡担保権を行使することができるものとする。

(説明)

譲渡担保権の不可分性は、部会資料28第3、6において動産譲渡担保契約の規律として提案していたものであるが、これは、動産譲渡担保契約に限られず、譲渡担保契約一般に妥当すると考えられることから、譲渡担保契約の総則規定として設けることとしている。

7 物上代位

(1) 譲渡担保権は、譲渡担保財産の売却、賃貸、滅失又は損傷によって譲渡担保権設定者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができるものとする。この場合においては、譲渡担保権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならなものとするものとする。

(2)上記(1)前段の規定に基づいて譲渡担保権者が行使する権利は、その金銭その他の物の払渡し又は引渡しを目的とする債権を目的とする質権又は譲渡担保権であって、上記(1)後段の規定による差押えの後に対抗要件が具備されたものに優先するものとする。

(3)譲渡担保権の目的である財産について、その譲渡担保権に劣後する先取特権、質権又その譲渡担保権に劣後する先取特権、質権又は他の譲渡担保権を有する者(以下この(3)において「劣後担保権者」という。)は、その順位により、譲渡担保権設定者が支払を受けるべき帰属清算金、処分清算金又は債権譲渡担保権者が譲渡担保債権について受けた給付の価額と被担保債権の額の差額に相当する金銭若しくは残額に対しても、その権利を行使することができるものとする。

この場合においては、劣後担保権者は、その払渡し前に差押えをしなければならないものとする。

(説明)

譲渡担保権の物上代位に関する規律であり、(1)及び(2)は、部会資料28第2、5第から変更はない。

なお、(2)について、部会資料部会資料28第2、5については、公示性の低い占有改定による対抗要件具備を維持すること自体について検討が必要である。先取特権は対抗要件具備自体がなく、譲渡担保権の物上代位は追求効の観点から、抵当権と同様のルールとすることも考えられる、等の意見が出されたところである。

譲渡担保権の負担付きの財産が譲渡された場合、譲渡担保権の負担も移転することからすると、抵当権と同様と考えることもできるが、譲渡担保権につき占有改定の方法による対抗要件具備自体は残ることからすると、公示の観点からは本文の規律については維持することとしている。

本文(3)は、後順位担保権者による清算金等に対する物上代位の規定である。これは、(1)の規律からは直接導かれないと考えられることから、仮登記担保法第4条第1項の規定に倣い、これを明文で設けるものである。

8 物上保証人の求償権

他人の債務を担保するため譲渡担保契約を締結した譲渡担保権設定者は、その債務を弁済し、又は譲渡担保権の実行によって譲渡担保財産を失ったときは、民法に規定する保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有するものとする。

(説明)

物上保証人の求償権については、部会資料28第3、6において動産譲渡担保契約の規律として提案していたものであるが、譲渡担保契約一般に妥当すると考えられることから、譲渡担保契約の総則規定として設けている。譲渡担保契約の総則規定として設けている。

9 根譲渡担保契約の効力根譲渡担保契約の効力

  • 不特定の債権を担保するための譲渡担保契約

譲渡担保契約は、債務者との間に生ずる不特定の債権を担保するためにも締結することができるものとする。

  • 根譲渡担保権の被担保債権の範囲

ア 上記(1)の債権を担保するために締結された譲渡担保契約(以下「根譲渡担保契約」という。)に基づく譲渡担保権(以下「根譲渡担保権」という。)を有する者(以下「根譲渡担保権者」という。)は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、その根譲渡担保権を行使することができるものとする。ただし、当事者は、根譲渡担保契約において極度額(根譲渡担保権を行使することができる被担保債権の上限の額をいう。以下同じ。)を定めることができるものとする。

イ 債務者との取引によらないで取得する手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権を根譲渡担保権の被担保債権とした場合において、次に掲げる事由があったときは、その前に取得したものについてのみ、その権利を行使することができるものとする。ただし、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては、これを行使することを妨げないものとする。

(ア)債務者の支払の停止

(イ)債務者についての破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始

(ウ)譲渡担保財産に対する強制執行若しくは担保権の実行としての競売による差押え

(3)根譲渡担保権の被担保債権の債務者の変更

ア 元本の確定前においては、根譲渡担保権の被担保債権の債務者の変更をすることができるものとする。

イ 根譲渡担保権の極度額の定めがない場合における債務者の変更は、根譲渡担保権に劣後する譲渡担保権を有する者その他の利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないものとする。

(4)根譲渡担保権の極度額の変更根譲渡担保権の極度額の変更

根譲渡担保権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができないものとする。

(5)根譲渡担保根譲渡担保権の元本確定期日の定め権の元本確定期日の定め

ア 根譲渡担保権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができるものとする。

イ 上記(3)イの規定は、アの場合について準用するものとする。

ウ アの期日は、これを定め又は変更した日から5年以内でなければならないものとする。

(6)根譲渡担保権の被担保債権の譲渡等

ア 元本の確定前に根譲渡担保権者から債権を取得した者は、その債権について根譲渡担保権を行使することができないものとする。元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とするものとする。

イ 元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根譲渡担保権者は、引受人の債務について、その根譲渡担保権を行使することができないものとする。

ウ 元本の確定前に免責的債務引受があった場合における債権者は、民法第472条の4条第1項の規定にかかわらず、根譲渡担保権を引受人が負担する債務に移すことができないものとする。

エ 元本の確定前に債権者の交替による更改があった場合における更改前の債権者は、民法第518条第1項の規定にかかわらず、根譲渡担保権を更改後の債務に移すことができないものとする。元本の確定前に債務者の交替による更改があった場合における債権者も、同様とするものとする。

(7) 根譲渡担保権者又は債務者の合併根譲渡担保権者又は債務者の合併

ア 元本の確定前に根譲渡担保権者について合併があったときは、当該根譲渡担保権は、合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保するものとする。

イ 元本の確定前にその債務者について合併があったときは、根譲渡担保権は、合併の時に存する債務のほか、合併後存続する法人又は合併によって設立された法人が合併後に負担する債務を担保するものとする。

ウ ア又はイの場合には、根譲渡担保契約における譲渡担保権設定者(以下「根譲渡担保権設定者」という。)は、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。ただし、イの場合において、その債務者が根譲渡担保権設定者であるときは、この限りでないものとする。

エ ウの規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなすものとする。

オ ウの規定による請求は、根譲渡担保権設定者が合併のあったことを知った日から2週間を経過したときは、することができないものとする。合併の日から1月を経過したときも、同様とするものとする。

(8)根譲渡担保権者又は債務者の会社分割

ア 元本の確定前に根譲渡担保権者を分割をする会社とする分割があったときは、根譲渡担保権は、分割の時に存する債権のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部をた会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に取得する債権を担保するものとする。

イ 元本の確定前にその債務者を分割をする会社とする分割があったときは、根譲渡担保権は、分割の時に存する債務のほか、分割をした会社及び分割により設立された会社又は当該分割をした会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継した会社が分割後に負担する債務を担保するものとする。

ウ 上記(7)ウからオまでの規定は、ア又はイの場合について準用するものとする。

(9)根譲渡担保権の譲渡根譲渡担保権の譲渡

ア 元本の確定前においては、根譲渡担保権者は、根譲渡担保権設定者の承諾を得て、その根譲渡担保権(極度額の定めがあるものに限る。イ及び後記(10)において同じ。)を譲り渡すことができるものとする。

イ 根譲渡担保権者は、その根譲渡担保権を二個の権利に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができるものとする。この場合において、その根譲渡担保権を目的とする権利は、譲り渡した根譲渡担保権について消滅するものとする。

ウ 前項の規定による譲渡をするには、分割する権利を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならないものとする。

(10)根譲渡担保権の一部譲渡

元本の確定前においては、根譲渡担保権者は、根譲渡担保権設定者の承諾を得て、その根譲渡担保権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根譲渡担保権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。)をすることができるものとする。

(11)根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡の対抗要件

ア 根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(平成10年法律第104号。以下「特例法」という。)の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

イ 債権を目的と債権を目的とする根譲渡担保権の譲渡又は一部譲渡は、当該譲渡又は一部譲渡及びその譲渡又は一部譲渡につき登記がされたことについて、譲渡人若しくは譲受人が当該債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、当該債務者に対抗することができないものとする。

(12)根譲渡担保権の共有

ア 根譲渡担保権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受けるものとする。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従うものとする。

イ 根譲渡担保権の共有者は、他の共有者の同意を得て、上記.アの規定によりその権利を譲り渡すことができるものとする。

(13)根譲渡担保権の元本の確定請求根譲渡担保権の元本の確定請求

ア 根譲渡担保権設定者は、根譲渡担保契約に基づく財産の譲渡の時から3年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から2週間を経過することによって確定するものとする。

イ 根譲渡担保権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができるものとする。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定するものとする。

ウ ア及びイの規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しないものとする。

(14)根譲渡担保権の元本の確定事由根譲渡担保権の元本の確定事由

ア 次に掲げる場合には、根譲渡担保権の担保すべき元本は、確定するものとする。

(ア)根譲渡担保権者が譲渡担保財産について強制執行、担保権の実行又は前記7(1)後段の規定による差押えを申し立てたとき。ただし、強制執行若しくは担保権の実行の手続の開始又は差押えがあったときに限る。

(イ)根譲渡担保権者が譲渡担保財産に対して滞納処分による差押えをしたとき。

(ウ)根譲渡担保権者が譲渡担保財産に対する強制執行(集合動産譲渡担保契約における第4、1の動産特定範囲に属する動産に対する強制執行を除く。)若しくは担保権の実行の手続の開始若しくは滞納処分による差押えがあったことを知った時から1週間を経過したとき又は譲渡担保財産に対する強制執行若しくは担保権の実行の手続について配当要求をしたとき。

(エ)根譲渡担保権者が帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしたとき。

(オ)後順位の動産譲渡担保権者(根譲渡担保権に劣後する動産譲渡担保権の動産譲渡担保権者に限る。)が先順位の動産譲渡担保権者の全員の同意を得て帰属清算の通知等又は処分清算譲渡権者が根譲渡担保権設定者に対して帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしたとき。

(カ)第4、1の特定範囲所属動産を一体として目的とする根譲渡担保権の根譲渡担保権者が根譲渡担保権設定者に対して帰属清算の通知等又は処分清算譲渡をしようとするときにおける集合動産譲渡担保権設定者に対する事前の通知をしたとき。

(キ)債権を目的とする根譲渡担保権の根譲渡担保権者が被担保債権の不履行があった場合に譲渡担保債権に係る債務の履行を請求したとき。

(ク)根譲渡担保権者が譲渡担保動産(集合動産譲渡担保契約における第4、1の動産引渡特定範囲に属する動産を含む。)について引渡命令を申し立てたとき。ただし、引渡命令が発せられたときに限る。

(ケ)根譲渡担保権者又は債務者について相続が開始したとき。

(コ)債務者又は根譲渡担保契約における根譲渡担保権設定者が破産手続開始の決定を受けたとき。

イ 上記ア(ウ)の強制執行若しくは担保権の実行の手続の開始若しくは差押え、同(カ)の通知、同(ク)の引渡命令又は同(コ)の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとは、担保すべき元本は、確定しなかったものとみなす。ただし、元本が確定したものとしてその根譲渡担保権又はこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りでない。

(説明)

根譲渡担保契約の効力について、部会資料28第2、6、部会資料35第5などの内容を踏まえた規律としている。

根抵当権の規定と同旨又は類似の規定を設けるものを、下記表のとおり整理し、説明を加えている。

これに対し、根抵当権の規定と同旨の規定を設けないものは、下記表のとおりである。

第3動産譲渡担保契約の効力

1動産譲渡担保権の及ぶ範囲

動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権設定者が動産譲渡担保契約の締結後にその動産の常用に供するために附属させた他の動産であって動産譲渡担保権設定者の所有に属するものについても、動産譲渡担保権を行使することができるものとするものとする。ただし、譲渡担保契約に別段の定めがある場合及び譲渡担保権設定者の行為について民法第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合は、この限りではないものとするものとする。

(説明)

部会資料28第3、1から実質的変更はない。

2動産譲渡担保権者による果実の収取

動産譲渡担保権者は、その被担保債権について不履行があったときは、譲渡担保動産の果実(収取されていないものに限る。)についても、動産譲渡担保権を行使することができるものとする。

(説明)

動産譲渡担保権の果実に対する効力に関する規律を定めるものであり、部会資28第3、2と実質的に同様である。設定者が既に収取した果実に動産譲渡担保権の効力を及ぼすことはできないため、括弧書きによりその点を明らかにしている。

3動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用及び収益

⑴動産譲渡担保権設定者は、譲渡担保動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができるものとする。

⑵動産譲渡担保権設定者は、善良な管理者の注意をもって、譲渡担保動産の使用及び収益をしなければならないものとする。

(説明)

動産譲渡担保権設定者による譲渡担保動産の使用収益権限及び善管注意義務に関する規律であり、部会資料28第3、3と基本的に同様である。

4妨害の停止の請求等

動産譲渡担保権設定者又は動産譲渡担保権者は、次の各号に掲げるときは、当該各号に定める請求をすることができるものとする。

⑴譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害しているときその第三者に対する妨害の停止の請求

⑵譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害するおそれがあるときその第三者に対する妨害の予防の請求

⑶譲渡担保動産を第三者が占有しているときその第三者に対する返還の請求

(説明)

 動産譲渡担保権設定者又は動産譲渡担保権者による妨害の停止等の請求を認めるものである。部会資料28第3、4では、譲渡担保権設定者について、目的である動産に関する権利を妨害されたときなどについて、設定が妨害の停止等の請求をすることができる旨の規律を提案していた。この点について、譲渡担保権設定者の譲渡担保動産に関する権利の中心は、譲渡担保動産の使用収益権限であり(3⑴)、賃借人に関する民法第605条の4を参考に、「譲渡担保動産の使用又は収益を第三者が妨害しているとき」等について、妨害の停止の請求を認める旨の規律とした。また、部会資料28第3、4では、「目的である動産の占有が奪われたとき」に、当該動産の返還の請求を認めることとしていたところ、詐取や遺失の場合にも認めるべきとの部会における議論も踏まえて、「譲渡担保動産を第三者が占有しているとき」とした。

部会資料28第3、4においては、動産譲渡担保権者の妨害の停止請求等の規律は記載していなかったが、動産譲渡担保権者もその権利が侵害される場合には、譲渡担保権に基づく物権的請求を認めるべきである(中間試案第1、5(補足説明)の注4)。動産譲渡担保権設定者についてのみ本文のような規律を設けると、動産譲渡担保権者はそのような請求権を有しないとの反対解釈を招くおそれがあるため、譲渡担保権者についても、譲渡担保権設定者がすることができる請求について、同様の請求をすることができる旨を定めることとしている。

5牽連性のある金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権の対抗力

  • 次に掲げる債務(その利息、違約金、権利の実行の費用及び債務の不履行によって生じた損害の賠償を含む。11において「牽連性のある金銭債務」という。)のみを担保する動産譲渡担保権は、譲渡担保動産の引渡しがなくても、これをもって第三者に対抗することができるものとする。

ア譲渡担保動産の代金債務

イ譲渡担保動産の代金債務の債務者から委託を受けた者が当該代金債務を履行したことによって生ずるその者の当該債務者に対する求償権に係る債務

⑵上記⑴の場合には、6及び9から11までの規定の適用については、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡の時に民法第183条に規定する方法(以下「占有改定」という。)以外の方法で当該動産の引渡しがあったものとみなす。

(説明)

狭義の留保所有権と同様の金銭債務のみを担保する動産譲渡担保権について、引渡しなくして第三者に対抗できることとし、担保権の競合の場合の優劣については動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡時に占有改定以外の方法により引渡しがあったものとみなすこととするもので、部会資料33第4、3から実質的変更はない。

6動産譲渡担保権の順位

同一の動産について数個の動産譲渡担保権が互いに競合する場合には、その動産譲渡担保権の順位は、その動産の引渡しの前後によるものとする。

(説明)

部会資料33第4、2から実質的変更はない。

7動産譲渡担保権の順位の変更

⑴動産譲渡担保権の順位は、各動産譲渡担保権者の合意によって変更することができるものとする。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないものとする。

⑵上記⑴の規定による順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

(説明)

部会資料28第3、7から実質的変更はない。

8動産譲渡担保権と先取特権との競合

⑴動産譲渡担保権と先取特権とが競合する場合には、動産譲渡担保権者は、民法第330条の規定による第1順位の先取特権者と同一の権利を有するものとする。

⑵上記⑴の場合において、動産譲渡担保権者が数人あるときは、各動産譲渡担保権者は、同項及び民法第332条の規定に従ってこれらの者が弁済を受けるべき金額の合計額について、6、9及び10の規定による順位に従って弁済を受けるものとする。

(説明)

部会資料33第4、1では、占有改定劣後ルールを民法第330条の規定による第1順位の先取特権との関係でも適用するかについて2案を提案した。本文⑴は、適用しないとする部会資料33の【案4.1.1】を採用したものである。これは、占有改定劣後ルールは約定動産担保権同士の規律であり、その適用範囲を第1順位の先取特権との関係にまで拡張する必要はないとの意見を踏まえたものである。

なお、部会では、民法第330条第2項前段の適用除外に言及する意見もあった。しかし、各種動産抵当権についても本文⑴と同旨の規定が置かれており、民法第330条第2項前段の適用の有無については解釈に委ねられていることからすると、動産譲渡担保権についてのみ明文で適用を除外するとの規定を設けることは適切でないように思われる。そこで、本文⑴では、この点について解釈に委ねることとしている。

9動産譲渡担保権と動産質権との競合

同一の動産について動産譲渡担保権と動産質権とが競合するときは、その順位は、動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡についての引渡しと動産質権の設定の前後によるものとする。

(説明)

部会資料33第5、2から実質的変更はない。

10占有改定で対抗要件を備えた動産譲渡担保権の順位の特例

6及び9の規定にかかわらず、占有改定で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権は、占有改定以外の方法で譲渡担保動産の引渡しを受けることにより対抗要件を備えた動産譲渡担保権(動産譲渡担保契約に基づく動産の譲渡につき動産譲渡登記がされたものを含む。)又は動産質権に劣後するものとする。

【P:占有改定劣後ルールの潜脱への対応については、改めて部会で取り上げる予定。】

(説明)

動産譲渡担保権と約定動産担保権が競合する場合に占有改定劣後ルールを採用するもので、部会資料33第5、2から実質的変更はない。なお、占有改定劣後ルールの潜脱への対応については、改めて部会で取り上げる予定である。

11  牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権の順位の特例

6及び8から10までの規定にかかわらず、牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権は、牽連性のある金銭債務を担保する限度において、競合する他の動産譲渡担保権、動産質権又は先取特権に優先するものとする。ただし、動産譲渡担保権者が次に掲げる時のうち最も早いものより後に譲渡担保動産の引渡しを受けたときは、この限りでないものとする。

⑴他の動産譲渡担保権(第4、1の特定範囲所属動産を目的とするものを除く。)の動産譲渡担保権者が譲渡担保動産の引渡し(占有改定による場合を除く。)を受けた時

⑵他の動産譲渡担保権(第4、1の特定範囲所属動産を目的とするものに限る。)の動産30 譲渡担保権者が第4、2の引渡し(占有改定による場合を除く。)又は譲渡担保動産が第4、1の動産特定範囲に属した時のいずれか遅い時

⑶動産質権の設定時

⑷民法第330条の規定による第一順位の先取特権の成立時

(説明)

牽連性のある金銭債務を担保する動産譲渡担保権についての特別の優先ルールを定めるもので、部会資料33第4、3から実質的変更はない。

12転動産譲渡担保

⑴動産譲渡担保権者は、動産譲渡担保権を譲渡担保契約の目的とすることができるものとする。

⑵⑴の規定による譲渡担保権の設定(以下「転動産譲渡担保」という。)は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができないものとする。

⑶動産譲渡担保権者が数人のために二以上の転動産譲渡担保をしたときは、これらの転動産譲渡担保の権利者の権利の順位は、登記の前後によるものとする。

⑷上記⑴の場合には、民法第467条の規定に従い、動産譲渡担保権の被担保債権の債務者に転動産譲渡担保を通知し、又は当該債務者がこれを承諾しなければ、これをもって当該債務者、保証人、動産譲渡担保権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができないものとする。

⑸動産譲渡担保権の被担保債権の債務者が上記⑷の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、転動産譲渡担保の権利者の承諾を得ないでした弁済は、当該者に対抗することができないものとする。

⑹上記⑸の規定は、動産を目的とする根譲渡担保権の転動産譲渡担保をした場合において、根譲渡担保権の被担保債権の債務者が元本の確定前にした弁済については、適用しないものとする。

(説明)

部会資料28第3、8から実質的変更はない。

第4集合動産譲渡担保契約の効力

1特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約

 動産譲渡担保契約は、その種類及び所在場所の指定その他の方法により定められた範囲(以下「動産特定範囲」という。)によって特定された動産(動産特定範囲に将来において属するもの(以下「特定範囲加入動産」という。)を含む。以下「特定範囲所属動産」という。)を、一体として、その目的とすることができるものとする。

(説明)

 動産譲渡担保契約について、動産特定範囲に属するものとして特定された動産(特定範囲所属動産)を一体としてその目的とすることができる旨の集合動産譲渡担保契約に関する基本的な規律であり、部会資料28第4、1と実質的な変更はない。

集合動産譲渡担保について担保権設定を可能とする規定を設ける意義は、設定後に構成部分が変動した場合でも、新たな設定行為を要せずに新たに構成部分となった動産に担保権が及び、また、初めに対抗要件を具備しておけば、以後集合動産に加入をした個別動産にもその効力を及ぼすことができる点にある。

 そこで、本文は、個別動産と集合動産の違いは、「範囲」によって特定されているか、シリアルナンバーその他の方法でそれぞれの動産が個別に特定されているかという特定方法の違いにあるのではなく、設定時にその目的動産を特定するための範囲に含まれていない動産が将来(設定後)においてその範囲に加入されるかどうかという点にあるという考え方に基づいて、集合動産譲渡担保に関する規定を設けている。

 本文の括弧書きにおいて、動産の集合体に関し、「動産特定範囲に将来において属するものを含む。」としているのは、この点を明らかにする趣旨である。このような理解に従えば、譲渡担保権設定契約において目的物を特定するための範囲が定められ、これに含まれる動産全部が担保権の目的とされた場合であっても、その範囲に新たな動産が将来において加入する可能性がない場合には、ここでいう集合動産譲渡担保には当たらない。

 なお、部会資料28第4、1においては、種類、所在場所のほか、「量的範囲の指定」についても、動産特定範囲を定める方法として例示していた。しかし、動産の種類や所在場所が動産特定範囲に属する動産を特定する要素として重要であると考えられるのに対し、量的範囲の指定について動産の特定性を欠くとされた判例もあることなどを踏まえ、動産特定範囲を定める「他の方法」の一つとなり得ると考えられるものの、「種類及び所在場所」と並ぶ要素としては列挙しないこととしている。

2集合動産譲渡担保権についての対抗要件の特例

 特定範囲所属動産を一体として目的とする動産譲渡担保契約(以下「集合動産譲渡担保契約」という。)における動産譲渡担保権者(以下「集合動産譲渡担保権者」という。)は、動産特定範囲に属する動産の全部の引渡しを受けたときは、特定範囲加入動産についても、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有することを第三者に対抗することができるものとする。

(説明)

 部会資料33第4、2⑶から実質的変更はない。個別動産譲渡担保権と競合する場合の優劣については対抗要件具備時説を採ることを前提としている。

なお、部会資料35第6、2で取り上げた設定者が異なる場合における対抗要件具備時説の修正の要否については、改めて部会で取り上げる予定である。

3集合動産譲渡担保権設定者による特定範囲所属動産の処分

⑴集合動産譲渡担保契約における動産譲渡担保権設定者(以下「集合動産譲渡担保権設定者」という。)は、特定範囲所属動産の処分をすることができるものとする。ただし、25 集合動産譲渡権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってした処分は、その効力を生じないものとする。

⑵上記⑴本文にかかわらず、集合動産譲渡担保契約における別段の定めがあるときは、その定めるところによるものとする。

⑶上記⑵の別段の定めによる集合動産譲渡担保権設定者の処分権限の範囲(以下「権限範囲」という。)を超えて集合動産譲渡担保権者が動産特定範囲に属する動産の処分をした場合において、その処分の相手方は、集合動産譲渡担保権設定者の処分権限につき善意であったときは、その動産についての権利を取得するものとする。

⑷集合動産譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知って特定範囲所属動産の処分をするおそれがあるとき、又は権限範囲を超えて特定範囲所属動産の処分35 をするおそれがあるときは、集合動産譲渡担保権者は、その予防を請求することができるものとする。

(説明)

 集合動産譲渡担保権設定者による動産の処分権限に関する規律であり、部会資料34、第2の規律と同様である。⑶の規律について、処分の相手方が、設定者の処分権限につき善意のみで保護されることとしている趣旨について、部会資料34では、処分の相手方が権限範囲の存在を認識するのが困難であるという点にあるものとしていた。この点については、本文⑴により設定者は担保権者を害することを知ってしたものでない限り動産の処分権限を有するとしていることに伴い、設定者の処分権限の存在に対する信頼を厚く保護して取引の安全を図るという観点から、相手方の保護の要件を緩和したものと説明することも可5 能と考えられる。また、このような考え方を踏まえ、処分の相手方の主観的要件としては、上記部会資料においては権限範囲の定めにつき知らなかったこととしていたが、設定者の処分権限につき善意(処分権限があることを信じていた)であったという表現に修正した。

4補充義務

 集合動産譲渡担保権設定者は、動産特定範囲に属する動産の売却その他の事由によって特定範囲所属動産の総体としての価値が減少したときは、その価値が相当なものとなるよう動産特定範囲に属する動産を補充しなければならないものとする。

(説明)

 集合動産譲渡担保権設定者の処分権限と補充・担保価値の維持は対になることから、処分権限について規定を設けることに伴って、集合動産譲渡担保権設定者の補充義務を定めるものである。担保価値維持義務自体は他の譲渡担保契約においても認められるところ、集合動産譲渡担保契約においては、設定者の処分権限と補充が対になるという点に特徴があることから、補充義務に焦点を当てて規律を設けることとしたものである。

 動産の売却等によって、特定範囲所属動産の総体としての価値が減少した際の補充義務の程度については、集合動産譲渡担保契約の内容や、動産の性質、取引上の社会通念等によって定まると考えられる。そこで、本文では、その価値が減少したときは、その価値が相当なものとなるよう補充しなければならないものとしている。

5集合動産譲渡担保権に基づく物上代位等

 第2、7にかかわらず、集合動産譲渡担保権者は、集合動産譲渡担保権設定者が4の義務(補充義務)を履行することができると認められる間は、特定範囲所属動産の売却、滅失又は損傷によって集合譲渡担保権設定者が受けるべき金銭その他の物に対し、集合動産譲渡担保権を行使することができないものとする。ただし、集合譲渡担保権設定者が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってした行為又は権限範囲を超えてした行為によって受けるべき金銭その他の物に対しては、この限りでないものとする。

(説明)

 集合動産譲渡担保契約における物上代位に関する規律であり、部会資料28第4、6とその趣旨は同様である。集合動産譲渡担保権者による物上代位が制限される時期について、部会資料28第4、6は、「通常の事業を継続している間」としていたが、このような文言35 を使用せず、4の補充義務を基礎とした表現ぶりとしている。すなわち、集合動産譲渡担保契約においては、設定者においてその目的動産の処分と補充を繰り返して、事業を継続することが前提とされており、実質的にも、このような補充の義務の履行がされていると認められる間は、特定範囲所属動産の処分がされても新たに補充される動産によって担保価値が維持されることになるから、その売買代金への物上代位を認める必要はない。そこで、補充義務が履行することができると認められる間は、集合動産譲渡担保権者による物上代位を認めないこととするものである。

6動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求

 集合動産譲渡担保権設定者が動産を動産特定範囲に属させた場合における民法第424条5 の3の規定の適用については、その動産を目的とする担保の供与があったものとみなすものとする。

(説明)

 設定者が動産特定範囲に動産を属させる行為が「担保の供与」として詐害行為取消請求の対象となり得る旨の規律であり、部会資料32第6、4と同様である。従来は否認と関連することから否認と併せて検討してきたが、詐害行為に関する規律は平時におけるルールであることから、倒産手続における取扱いではなく、集合動産譲渡担保契約の効力に関する規律として設けることとしている。

第5債権譲渡担保契約の効力

1混同の特例

 ある債権の債務者が当該債権を譲渡担保債権として譲渡を受けた場合には、民法第520条本文の規定にかかわらず、当該譲渡担保債権は消滅しないものとする。

(説明)

 通常の債権譲渡においては、債務者が自己の債務に係る債権について譲渡を受けた場合、その債務に係る債権は民法第520条本文により消滅すると考えられる。債権譲渡担保が担保目的での債権の譲渡であることからすると、自己の債務に係る債権について譲渡担保契約により譲渡を受けた場合も同様の効果が生ずるようにも考えられる。しかし、ある債権の債務者がその債権を担保に取る必要がある場合もあり(例えば、銀行が自らに対する預金債権を担保に取る場合)、現に、このような担保取引は、債権質権においては可能であると解されている。また、債権譲渡担保権の設定者は、被担保債権を弁済することによって当該債権を受け戻すことができるなど、目的債権について一定の権利を有している点で、民法第520条ただし書の「第三者の権利の目的である」という状況とも類似している。そこで、自己の債務に係る債権について譲渡担保契約により譲渡を受けても目的債権は混同によって消滅せず、有効な担保権設定が可能であることを定めるものである。

2債権譲渡担保権の順位

 同一の債権について数個の債権譲渡担保権が互いに競合する場合には、その債権譲渡担保権の順位は、民法第467条第2項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によるものとする。

(説明)

部会資料30第4、1⑴から実質的変更はない。

3債権譲渡担保権と先取特権との競合

 債権譲渡担保権と先取特権とが競合する場合には、当該債権譲渡担保権は、先取特権に優先するものとする。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けた全ての債権譲渡担保権者に対して優先する効力を有するものとする。

(説明)

債権譲渡担保権と先取特権とが競合する場合については、動産譲渡担保権と同様に、原則として債権譲渡担保権を先取特権に優先させつつ、共益の費用の先取特権には劣後させることとしている。

4債権譲渡担保権と債権を目的とする質権との競合

同一の債権について債権譲渡担保権と質権とが競合する場合には、その順位は、債権譲渡担保契約に基づく債権の譲渡又は質権の設定についての民法第467条第2項に規定する確定日付のある証書による通知又は承諾の前後によるものとする。

(説明)

部会資料30第4、3⑶から実質的変更はない。

5債権譲渡担保権の順位の変更

⑴債権譲渡担保権の順位は、各債権譲渡担保者の合意によって変更することができるものとする。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならないものとする。

⑵上記⑴の規定による順位の変更は、特例法の定めるところに従いその登記をしなければ、その効力を生じないものとする。

⑶上記⑴の規定による順位の変更は、当該順位の変更及びその順位の変更につき登記がされたことについて、いずれかの債権譲渡担保者が譲渡担保債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、当該債務者に対抗することができないものとする。

(説明)

部会資料28第5、2から実質的変更はない。

6転債権譲渡担保

⑴第3、12の規定は、債権譲渡担保権者がその債権譲渡担保権を譲渡担保契約の目的とした場合について準用するものとする。

⑵上記⑴の規定による譲渡担保権の設定(以下この項において「転債権譲渡担保」という。)は、転債権譲渡担保及びその転債権譲渡担保につき特例法の定めるところに従い登記がされたことについて、上記⑴の譲渡担保契約の当事者の一方が譲渡担保債権の債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、又は当該債務者が承諾をしなければ、これをもって当該債務者に対抗することができないものとする。

(説明)

部会資料28第5、3から実質的変更はない。

第6集合債権譲渡担保契約の効力

1集合債権譲渡担保権設定者による債権特定範囲に属する債権の取立て

【P】

(説明)

集合債権譲渡担保契約の取立権限に関する規律については、前回の部会における議論も踏まえて検討中である。

2補充義務の規定等の準用

集合債権譲渡担保契約について、第4、4(集合動産譲渡担保契約における補充義務)及び第4、6(動産特定範囲に動産を属させる行為に関する詐害行為取消請求)は、集合10 債権譲渡担保契約について準用するものとする。

(説明)

部会資料28第6、2(補充義務)及び部会資料32第6、4(詐害行為取消請求)と同様である。

『月刊登記情報2023年11月号(744号)』

司法書士 伊見真希「相続登記申請のための遺産分割協議促進の支援」

 法定相続人・法定相続分や相続財産である不動産の権利関係などの客観的な情報の説明などを通した支援が必要との指摘。

法務省大臣官房付・司法法制部付 奥村寿行「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」の概要等

https://www.moj.go.jp/housei/shihouseido/housei10_00134.html

 報酬を得る目的、訴訟事件・・・その他一般の法律事件、鑑定・・・その他の法律事務の3点について、一般的な意義や要件該当性を判断する際に考慮すべきと考えられる要素、各要件に該当し得る例、該当しない例を示す、とする。

 間接的な利益供与、非定型的な内容、特定の条項についての個別の事案に応じた法的リスクなどについて、判断が難しいと感じました。これらはサービス提供前にグレーゾーン解消制度の利用、最終的には裁判所の判断を待つものと考えられます。

司法制度改革推進本部事務局「法曹制度検討会(第24回)議事録」平成15年12月8日より抜粋

https://lawcenter.ls.kagoshima-u.ac.jp/shihouseido_content/sihou_suishin/kentoukai/seido/dai24/24gijiroku.html

 実際の案件としては、類型ごとに一律に決まってくるものではなく、個別具体の事例において結論は異なろうかと思いますけれども、とりあえず類型に沿って説明をしたいと思います。

 まず①の契約関係事務は、紛争が生じてからの和解契約の締結等は別としまして、通常の業務に伴う契約の締結、これは法律上の権利義務に関しての具体化又は顕在化した争いや疑義があるとは言えないと考えられますので、このような契約の締結に向けての通常の話し合いや法的問題点の検討は「事件性」のない法律事務であると解されます。

 ②の法律相談は、例えば顧客との間で発生したトラブル等具体的な紛争を背景にしたものであれば、「事件性」のある法律事務であることが多いと解されます。

 ③の株式・社債関係事務は、例えば新株発行に際して行う法律事務は、一般的には事件性のない法律事務であると解されますが、他方、新株発行の適法性、有効性、名義書換等に関する具体的な紛争がある場合は「事件性」があることが多いと解されます。

 ④の株主総会関係事務は、例えば株主総会の開催について、商法等の関係法規との適合性を確保するための法律事務は一般的には「事件性」のない法律事務であると解されます。

 ⑤の訴訟等管理関係事務は、具体的な訴訟の存在を前提とするものですから、一般的には「事件性」があると解されるのではないかと思います。

一般社団法人AI・契約レビューテクノロジー協会事務局長、株式会社LegalOn Technologies企業法務グループディレクター、弁護士 春日 舞「法務省ガイドラインのポイントと士業者の受け止め」

 法務省ガイドラインが過去の法務省見解を踏襲しての公表であることにより、グレーの範囲が狭まり、利用しやすいものとなっているとの評価。

弁護士ドットコム株式会社管理部門担当取締役、経営企画室長 澤田将興、

弁護士ドットコム株式会社コーポレート推進部法務チーム マネージャー、 弁護士 佐竹 亮「法務省ガイドラインを踏まえたリーガルテックの展開」

 リーガルテック事業者からの法務省ガイドラインへの見解。弁護士法72条に関する考え方で整理された要件に該当しない、と示された機能に基づき具体的な6領域21ビジネスを提供していくこと。

弁護士渡部友一郎、司法書士隂山克典「司法書士業務におけるリーガルテックの展望」

 法務省ガイドラインについて。事件性の要件に踏み込んだ内容。弁護士がサービスを利用する場合には、通常違反しないという点が重要との感想。ガイドラインは、現時点での技術を前提としているので、今後どうなっていくのかに関心。

 司法書士業務について。事実の抽出について、司法書士しかできない。地方と都市部、若手とベテランとで姿勢の違い。経済産業省「生成AI時代のDX推進に必要な人材・スキルの考え方」、東京都デジタルサービス局「文章生成AI利活用ガイドライン」など参考になるテキストも公表されている。

法務省民事局商事課長 土手敏行「商業登記規則逐条解説 第11回」

 商業登記規則(登記事項証明書の有効期間)36条の2、(添付書面の特例)36条の3、(数個の同時申請)37条

『登記情報 653号』2016年4月P17~

大澤 玄瑞:法務省民事局総務課登記情報センター室登記情報第七係長(前法務省民事局商事課商業法人登記第一係長)「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

宮崎 拓也:法務省民事局商事課長、福永 宏:法務省民事局付、南野 雅司:法務省民事局商事課法務専門官兼商業法人登記第一係長 改正商業登記法の解説『登記情報 700号』2020年3月P 27~

平成27年9月30日付け法務省民商第122号法務省民事局長通達「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて」

 同時に数個の申請をする場合とは、連続した受付番号で受け付けられる場合。類似した条項として、不動産登記規則37条。

法務省民事局商事課補佐官 金森真吾「平成31年度から令和4年度までにおける供託関連主要通達等について⑹・完」

 令和5年3月27日付け法務省民商第67号民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う供託事務の取扱いについて」

 供託命令(非訟事件手続法88条2項、87条5項)に基づく供託は、申立人以外の共有不動産全体の譲渡を受ける第三者からも可能。

司法書士 末光祐一「犯罪収益移転防止法の大改正と司法書士の実務⑵」

 国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和4年11月24日)

https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/210/futai_ind.html

一 司法書士等、行政書士等、公認会計士等及び税理士等に対し、新たに取引時の確認事項として、取引を行う目的、職業又は事業の内容及び実質的支配者の本人特定事項が追加されることから、円滑に取引時確認が行われるよう、法改正の内容を国民に対して十分に周知・広報し、実効的なマネー・ローンダリング対策等の実現に万全を期すること。

・犯罪収益移転防止法改正の施行日・・・令和6年6月8日までの政令で定める日。

弁護士(認定心理士) 渡部友一郎「法律業務が楽になる心理学の基礎第2回 集団思考の罠」

 集団思考の特徴として、1,集団成員相互の同調圧力、2.自己検閲、3.逸脱意見から集団を防衛する人物の発生、4.表面上の意見の一致、5.無謬性の幻想、6.道徳性の幻想、7、外集団に対するゆがんだ認識、8。解決方略の拙さがあるとしています。私が所属している業界内部のことを指摘しているのかと思いました。集団思考の原因として、1.集団内での構成員同士のまとまりの強さ(集団疑集性)、2.外部からの批判が集団の構成員に不快感情を生み出し、批判を遮断しようとする感情的要因が挙げられています。

 予防方法や日々の業務への当てはめもされていますが、業界の構造が変わらない限り、無理だと思っている事柄です。

法務省民事局民事第二課地図企画官 楠野智之(日本土地家屋調査士会連合会業務部協力)目で見る筆界の調査・認定事例「第3回 隣接地の所有者不明土地について、土地管理者による立会いにより筆界を認定した事例」

 里道と一体として市が指導として管理している土地が、所有者不明土地の事例。市の道路管理者と立ち合い、筆界確認。

司法書士法人鈴木事務所司法書士 鈴木龍介「中小企業とともに歩む企業法務のピントとヒント第55話 中小企業だって組織再編~②会社分割」

 債権者意義申述手続が、必要な場合と不要な場合がある。

司法書士 小関 弾「成年後見人ノート ~成年後見業務における相続手続」

 補助人の同意行為目録、代理行為目録に遺産分割協議に参加する権限がない場合において、補助人が相続財産管理人として、本人(被補助人)とともに遺産分割協議にする場合に考えることについて

司法書士 本橋寛樹「税理士法人の吸収合併登記に関する備忘録」

 税理士法人には決算公告義務がないため、最終事業年度にかかる貸借対照表の要旨を官報に掲載する必要がない。

民法等の一部を改正する法律の施行に伴う供託事務の取扱いについて(令5・3・ 27民商第67号法務局長・地方法務局長宛て民事局長通達)・・・書式等。

『登記研究2023年10月908号』

『登記研究908号』2023年10月、テイハンからです。

https://www.teihan.co.jp/book/b10040217.html

法務省民事局付 森下宏輝、法務省大臣官房司法法制部審査監督課法務専門官(前法務省民事局民事第二課法務専門官)古田辰美、法務省民事局民事第二課企画係長兼所有者不明土地等対策推進第二係長 光木沙織「■民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて(令和5年4月1日施行関係)」

第1 はじめに、第2 民法等の一部改正の趣旨、第3 改正法の概要、第4 施行通達

 令和5年3月28日付け法務省民二第538号法務省民事局長通達「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和5年4月1日施行関係)、令和5年3月28日付け法務省民二第537号法務省民事局長通達の解説

 1 不登法改正関係

 改正不動産登記法63条第3項について、遺言執行者が指定されている場合には、共同申請となること。

 「登記義務者」から「共同して登記の抹消の申請をすべき者」への改正は、登記義務者に加えて、その相続人その他の一般承継人も含む、という意味。

 改正不動産登記規則第152条の2の規定による調査方法について、不在住証明証書、不在籍証明書の発行は、地方公共団体の裁量に委ねられているので、これらを取得できなかったとしても、調査として不十分であることにはならないこと。

 外国に住所を有する者についても通達の調査方法が適用される。

 改正不動産登記法70条2項について、既判力が生ずるものではないと考えられる。→登記義務者が反対する場合あり。登記義務者が法人の場合の趣旨は、法人としての実体が喪失していると、積極的に認定することができるケースについて、適用すると整理。

 改正不動産登記法70条の3の、30年の期間について。債権の消滅時効期間(民法166条)、解散した法人の清算手続きの期間を考慮した結果。

 改正不動産登記法70条の4について。住民基本台帳ネットワークシステムから情報を取得するためには、費用負担が生じる(住民基本台帳法30条の29)が固定資産課税台帳上の所有者に関する情報を取得するには費用負担はない。

 2 その他運用の見直し関係

 法定相続分による相続登記がされた後に相続人に対する遺贈があったことが判明した場合の更生登記について。遺産分割協議書などを添付、と記載があるが、戸籍などは記載されていない。法定相続分による登記で相続関係が判明している部分については、戸籍などの添付不要?

 法務省民事局民事第二課補佐官 三枝稔宗、法務省民事局民事第二課補佐官 河瀬貴之、法務省訟務局訟務調査室訟務企画課法務専門官(前法務省民事局民事第二課法務専門官)手塚久美子、法務省民事局民事第二課不動産登記第四係長 清水玖美■「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律の施行に伴う相続土地国庫帰属手続に関する事務の取扱いについて(通達)」の解説(2)

第2 本要領の概要

 3 第3節 承認申請者、4 第4節 承認申請書類

 現状、書面申請に限られているので、印鑑証明書など添付書類の取り扱いについて記載。印鑑の届け出をしていない法人について、公証人の認証を受けた署名証明書でも良いのか、新しく印鑑届け出を行うのか、気になりました。

一般社団法人商業登記倶楽部代表理事・主宰者 神﨑満治郎「■商業登記倶楽部の実務相談室から見た商業・法人登記実務上の諸問題(第114回)235 理事会及び監事を設置しない一般社団法人の設立について」

 一人で一般社団法人を設立しようとしている依頼者に対して、設立時のみ妻などに依頼し社員になってもらい、設立後速やかに退社する、という方法を紹介。この方法が紙の専門雑誌に掲載されることに、どうなのだろう、と感じました。

(一社)テミス総合支援センター理事都城市代表監査委員 新井克美「■Q&A不動産表示登記(84)Q254  相接する既登記の2棟の建物の間を増築してその隔壁を除去し1棟の建物とした場合はどのような登記を申請するのか。」

 建物の合体の登記について。未だに実務で見たことはありません。平成5年法律第22号不動産登記法改正により、合体前の建物に抵当権等の登記があるときは、登記官は、職権で、抵当権などの登記を合体後の建物の登記用紙に移記するとされた。

 司法書士は、土地家屋調査士とともにする場合であれば、合体による登記などを申請する場合において、併せて所有権の登記を申請すべきときは、所有権の登記の申請手続をすることができる。2件目の所有権の登記は、共同代理申請になるのでしょうか。

 

司法書士鈴木龍介(司法書士法人鈴木事務所)「■商業登記の変遷(54)」

 登記簿の編成の変化。大福帳→バインダー→ファイル化→コンピュータ化(登記記録へ)。

渋谷陽一郎■民事信託の登記の諸問題(25)

登記研究編集室「会社法施行下で使える登記先例──実務の便覧──(1)」

 平成18年の会社法施行以降の、会社法や商業登記法及び商業登記規則の改正関連の主な先例とその概要の紹介。

【法 令】

所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和4年10月28日政令第334号)

 施行期日、令和4年11月1日

農地中間管理事業の推進に関する法律による不動産登記の特例に関する政令(令和4年12月23日政令第395号)

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令の一部を改正する政令(令和5年3月30日政令第97号)

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令和5年3月30日法務省令第19号)

 審査手数料、施行日の記載。

民法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和5年8月2日政令第251号)

 所有不動産記録証明制度(改正不動産登記法119条の2)の施行日、令和8年2月2日。住所変更登記などの申請義務化(改正不動産登記法76条の5,75条の6)の施行日、令和8年4月1日。

【訓令・通達・回答】

▽不動産登記関係

〔6209〕不動産登記規則等の一部改正に伴う不動産登記事項証明書等の交付事務の取扱いについて(令和5年3月23日付け法務省民二第506号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局長通達)

〔6210〕不動産登記規則等の一部改正に伴う不動産登記事項証明書等の交付事務の取扱いについて(令和5年3月23日付け法務省民二第507号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局民事第二課長依命通知)

 交付請求方法として、スマートフォンの記載。

〔6211〕民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)の施行に関する登記嘱託書の様式について(令和5年3月24日付け法務省民二第518号法務局長、地方法務局長宛て法務省民事局民事第二課長依命通知)

 所有者不明土地管理命令に関連する登記嘱託書の様式について。

『月刊登記情報2023年10月号(743号)』

『月刊登記情報2023年10月号(743号)』(一社)金融財政事情研究会からです。

法務省民事局商事課長土手敏行「遺言書保管制度が更に便利に」

 令和4年1年間の自筆証書遺言書の保管申請件数は、1万6,802件とのこと。

日本司法書士会連合会会長小澤吉徳「さらに前へ! 変革の時代を支える法律家として」

 相続登記の申請義務化と、所有者不明不動産の発生予防に関する関連法令について。家事事件、倒産事件などの各種手続、公証手続のデジタル化法制の公布状況について。成年後見制度の時代に合わせた変化について。

日本土地家屋調査士会連合会会長 岡田潤一郎「制度環境の共有から調和を目指して」

 土地家屋調査士会でも、財産管理人養成講座を行っていることを初めて知りました。実務で、お金を預かったりする業務を行うのか、気になりました。

弁護士井奥圭介・土地家屋調査士山脇優子「境界紛争の解決手続における土地家屋調査士の役割第1回総論」

 境界紛争の原因として、所有権登記の錯誤等が挙げられており、分筆前、分筆後の土地の所有権移転に関しては、きちんと地図などで確認が必要だと感じました。

弁護士(認定心理士)渡部友一郎「法律業務が楽になる心理学の基礎第1回ストレス心理学」

 業務上のストレスに対して、上手く切り抜けられるか、の判断を二次的にしている、というところは納得でした。私も無意識に行っていると思います。

司法書士 末光祐一「犯罪収益移転防止法の大改正と司法書士の実務⑴」

 犯罪による収益移転防止に関する法律の制定、改正経緯について。国際的な取り組みに合わせるような改正。

法農林水産省法務支援室長(前法務省民事局参事官) 脇村真治

法務省民事局参事官(前法務省民事法制企画官) 波多野紀夫

法務省大臣官房国際課付(前法務省民事局付) 宮﨑文康

法務省民事局付 大庭陽子

法務省民事局付 森 香太

「民事執行・民事保全・倒産および家事事件等に関する手続のデジタル化―「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」の概要―」

 家事事件の手続における裁判所が行う公告について、裁判所近くの掲示板への紙での掲示と官報が、裁判所ホームページへの掲載に変わる可能性があることを知りました(家事事件手続規則4条)。

法務省民事局商事課長 土手敏行「商業登記規則逐条解説第10回」

 嘱託登記について、地方公共団体組織認証基盤(LGPKY)発行の職責証明書が法務省ホームページに掲載されているようです。嘱託登記もオンライン申請が可能な環境が整えられつつあると感じます(商業登記規則36条4項1号ハ)。

司法書士法人鈴木事務所 司法書士鈴木龍介「中小企業とともに歩む企業法務のピントとヒント第54話中小企業だって組織再編~①合併」

 主に公告スケジュールについて。合併期日から逆算して公告掲載の申込を行う必要がある、ということでした。参考:登記情報 642号 P86~  2015年5月1日 初瀬 智彦:司法書士、小口 文隆:司法書士、浦田 融:司法書士 「司法書士入門~いまさら聞けない登記実務~SeasonⅡ 第8回 吸収合併による変更登記」

令和5年7月31日規制改革推進会議法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び定款認証の改善による起業家の負担軽減について

令和5年7月31日規制改革推進会議

規制改革推進会議 書面議決令和5年7月31日(月)決定(書面議決)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/230731/agenda.html

( 議事 )

法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び定款認証の改善による起業家の負担軽減について

意見書

法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて

令和5年7月31日

規制改革推進会議

1 法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応について

 経済・金融サービスのグローバル化、暗号資産の普及といった技術革新により、資金の流れが多様化し、国境を越える取引が容易になっている中で、犯罪によって得た収益の出所などを分からなくするマネー・ローンダリング(以下「マネロン」という。)等の手口が複雑化・高度化しており、その対策の重要性はこれまで以上に高まっている。

 その中で、国際的にマネロン等対策の中心的な役割を担っているFATF(Financial Action Task Forceの略称。以下「FATF」という。)の勧告24は、法人の実質的支配者情報の取得・把握の実効性を確保する措置を講ずるよう求めているが、令和3年8月に公表された第4次対日相互審査報告書において、我が国の評価は「一部適合」(Partially Compliant:4段階中下から2番目の評価、不合格水準)に留まっており、勧告に適合するために更なる措置が必要である。

令和3年8月30日 令和5年1月4日更新

金融庁

FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について

https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20210830/20210830.html

 さらに、勧告24は、法人の悪用を防止する観点から、令和4年3月に改訂され、捜査当局によって、法人の実質的支配者をタイムリーに特定するメカニズムとして、

1)法人に対して実質的支配者情報の取得・保持の義務化(カンパニーアプローチ)、

2)公的組織(税当局、金融情報機関、登録機関等)による実質的支配者情報の保持(レジストリアプローチ)又はその代替的メカニズムの義務化

 などが求められることとなり、勧告事項が厳格化された。次の第5次対日相互審査では、改訂勧告に基づいて審査が行われるため、対応が必要である。

 これまで、我が国では、公証人による定款認証時における法人の実質的支配者の把握、商業登記所における株式会社の実質的支配者リストの保管等が行われているが、公証人には会社設立後の実質的支配者の把握に関与する仕組みがなく、実質的支配者リストも任意の仕組みであり、現時点では、我が国の国内法制度では、カンパニーアプローチ及びレジストリアプローチ又はその代替的メカニズムを満たすものは存在しておらず、法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備が必要である。

 海外の取組として、英国では、法人自身に対して実質的支配者名簿の作成と当該実質的支配者の政府の登録機関への登録を会社法で義務付けている。ドイツでは、法人自身に対して実質的支配者情報を取得等すること及び登録機関へ通知することを資金洗浄法(Geldwäschegesetz)で義務付けている。

Register an overseas entity and its beneficial owners

https://www.gov.uk/guidance/register-an-overseas-entity

 米国では、Corporate Transparency Actにおいて、法人に対して、自分の実質的支配者を政府の登録機関に報告することを義務付けている。カナダでは、会社法を改正し、法人に対する実質的支配者名簿の作成・保持を義務付けた上で、会社法において、法人に対し、当該実質的支配者の名簿の内容をカナダ企業庁に報告する義務を課す仕組みとしている。

 法務省からは、直接的な目的が公法上である場合は純粋な私法である会社法にはなじみにくいこと、実質的支配者情報については、会社法における解散命令のような抽象的なものではなく、極めて細かいルールになっているため、会社法制に組み込んでいくことは難しい面があること、例えば、市場規制に関する部分は金融商品取引法などに規定があるように、必ずしも会社に関する規定を会社法において一元的に規定されているわけではないこと、商業登記所が実質的支配者情報を登録する受け皿となることは考えられることなどの見解が示された。

 一方で、規制改革推進会議委員からは、FATFは国際的な枠組みであり、会社法は私法だからといっても国際的な理解は得られないこと、会社法には公益に反する場合の解散命令など公益目的の規定も存在し、実質的支配者情報の取得及び保持を全ての会社に義務化することがFATFより求められていることへの対応としては、本来、会社法の規定で行うべきと考えられること、会社という組織形態によって経済活動を行う場合に、適切な形で利用されていくことを確保することは会社法の目的又は目的の大前提に含まれていると考えられること、会社に対する一般的な信頼性を確保するために、実質的支配者の情報を収集することが会社法の目的に反するものとは考えられないことなどの意見が示された。

 規制改革推進会議としては、法務省は、令和5年中に、会社法又は商業登記法を根拠とする実質的支配者情報の取得及び保持並びにその商業登記所への登録を行う制度整備を検討し、結論を得るとともに、当該法務省の検討と並行して、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策関係府省庁(法人の実質的支配者情報に関する府省庁に限る。以下、同じ。)は、令和5年中に、会社法等に代替する方策も検討するべきと考える。

 その上で、警察庁、金融庁、法務省、財務省及び経済産業省(省庁の記載の順序は、建制順。以下、同じ。)は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」(令和4年5月19日マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議決定)に基づき、令和5年度中に、法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備に向けた検討を進め、結論を得るべきである。

 日本の日程は決まっていないものの、FATFの第5次審査が令和7年から順次開始される中で、日本の第5次審査に間に合うようにカンパニーアプローチ及びレジストリアプローチ又はその代替的メカニズムを確立するためには、スピード感を持った取組が必要であることから、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策関係府省庁における迅速かつ前向きな検討を期待している。

 これらを踏まえて、下記の措置を講ずるべきである。この措置については、警察庁、金融庁、法務省、財務省及び経済産業省において結論を得る前に規制改革推進会議で議論等を行うことを予定している。

以上

 警察庁、金融庁、法務省、財務省及び経済産業省(※)は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」(令和4年5月19日マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議決定)に基づき、令和5年度中に、法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備に向けた検討を進め、結論を得る。

※省庁の記載の順序は建制順

2 起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて

(1)政府における動き

 「規制改革推進に関する答申~転換期におけるイノベーション・成長の起点~」(令和5年6月1日規制改革推進会議決定)において、我が国の経済の持続的成長にとって、スタートアップは、イノベーションの担い手として、新たな需要・消費の創出とともに、大きな雇用を生み出す原動力となるものであり、「新しい資本主義」の実現に欠くことのできない要素であり、スタートアップフレンドリーな環境整備に向けた総合的な規制改革を、スピード感を持って進めていく必要があると述べた。

 「経済財政運営と改革の基本方針2023」(令和5年6月16日閣議決定)においても、GX・DXなど新たな産業構造への転換を進め、持続的な成長を確保していくため、新たな参入と再チャレンジの際の退出の障壁を低くし、スタートアップが成長できる環境の整備が不可欠であり、スタートアップ育成の観点から、規制改革の推進等に取り組むこととされるとともに、行政手続のデジタル完結を進めるとされ、マイナポータルの利便性向上に加えて、個人や法人の税務・社会保障を始めとする各種手続の負担軽減に向けた取組を進めるとされた。

さらに、令和5年6月21日の岸田内閣総理大臣の記者会見では、政権の優先課題として、デジタルの力をフルに活用した令和版デジタル行財政改革に挑戦していく、ユーザー視点に立って制度や組織を一体的に変える、こうした取組を進める上で大きな役割を担うのは、デジタル社会のパスポートであるマイナンバー、マイナンバーカードという旨の発言もあった。

(2)総論

経済界からは、以下の意見等が述べられた。

○ スタートアップ・エコシステムの形成は、各国で制度間競争になっており、日本が負けないように、世界最高水準のスタートアップフレンドリーな環境を構築することが喫緊の課題。

○ 定款認証の面前確認が、日本の法人設立手続の完全なワンストップ化、デジタル化の阻害要因。

→1のFATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書によれば、規制を強くする方向に働くので、有効ではないかと感じるのですが、国際き手にはそうではないのか。

○ スタートアップの起業時はやるべきことが山積している中で、起業家にとって時間と費用双方の負担となっていることは極めて遺憾。

○ スタートアップの定款認証については、モデル定款とマイナンバーカードによる本人確認を活用して、デジタル完結可能な、ファストトラックの選択肢が強く要望される。

→デジタル完結には賛成ですが、モデル定款を活用するいは、起業家が定款がどのようなものか一定の理解をする必要があり、大きくスピードに関わるかというと分かりませんでした。

○ 令和4年度に法務省が実施した定款認証に係る公証実務に関する実態を把握するための調査の結果を見ても、公証人による面談と定款認証が必須であることを端的に示す結果は確認できず、むしろ、公証人の指摘事項を見ると、モデル定款のブラッシュアップ等で対応できるのではないか。

○ 公証人による面談、定款認証がなくても差し支えないことを示す結果が多く、モデル定款を修正・改善し、今後のモデル定款の活用方策を検討していく方法が良い。

○ スタートアップ振興の観点から、デジタル原則に照らした改革を是非進めるべき。

○ 一定の定款については公証人による認証を必要とすること自体をゼロベースで見直し、不要とすることを早期に実現していただきたい。

○ 法務省の調査でも発起人及び代理人の面前確認の時間はとても短いことが分かったが、実体験としても、非常に短時間でそれほど会話もなく終わっている。

○ 短時間の面談での実効的な人物評価や不正防止は不可能。こうした不正防止は一律に行う事前チェックではなく、リスクの高さに応じた事後チェックで行うべき。

→リスクの高さに応じた事後チェック、というのは、設立登記で実質的支配者情報を提出義務化し、実質的支配者が海外国籍だったり、法人だったりする場合に、公証人か登記官が面談確認を行う、というような方法なのか、気になりました。

○ デジタル臨時行政調査会で行われたデジタル原則に基づくアナログ規制の

見直しを公証人による定款認証にも適用すべき。

○ 民間のデジタル技術を活用した判断の標準化・自動化・無人化によって、公証人の定款認証の撤廃・任意化を行えないか。

委員からは、以下の意見等が述べられた。

○ 定款認証の目的として、①定款の内容が矛盾していないか、②会社法その他関係法令に違反していないかを確認すること、③定款作成の意思の真正性を確認すること、④不正な起業や会社設立を抑止すること、⑤実質的支配者を把握することがあげられているが、公証人による面前確認という手段には非常に大きな社会コストがかかっているが、他の手段が生まれ始めてきており、ゼロベースでどういうやり方が望ましいのか、制度目的を実現するために、公証人による定款認証が最適な手法であるのか、一番望ましい取るべき方法は何かを検討するべき。

○ 法務省の説明からは、デジタル臨時行政調査会で議論しているデジタル完結や自動化原則といったデジタル原則に沿った検討がなされていないように思われる。会社設立は一定の数がある手続であり、新規事業創出という意味でも極めて重要なものであり、しっかりと見直しを進めるべき。

公証人には、公正証書遺言など社会的な要請がこれから高まってくるような分野もあり、スタートアップという非常に時間と資金の制約に追われている方たちに対することは根本から問い直す必要がある。

→資金面では見直しが出来るなら、低額が望ましいと思います。その場合は、解散・清算する場合の費用も同じ程度の金額に見直して欲しいと思います。

○ FATF勧告で求められている、法人に対する実質的支配者情報の取得・保持の義務化及び公的組織(税当局、金融情報機関、登録機関等)による実質的支配者情報の保持又はその代替的メカニズムの義務化という手段が出てきた場合には、公証人による定款認証の果たす役割はかなり減っていくはず。

(3)モデル定款について

モデル定款に関して、法務省から、以下の意見等が述べられた。

○ 切り分け方として、明確にモデル定款と分かる仕組みがどのような形で担保できるのか。

○ 法制度としてどのような形になるのかわからず、法制的に難しい。

○ 会社法は機関設計だけでも 30~40通りといった様々なものがあり得て、利用者の方がそれを自由に選ぶという立て付け。デフォルトのルールがない中で何をモデルにするのかということが難しい。

現在提供されているサービスでは、システム的なチェックでもまだはじかれていないものがあり、自動化が現時点ではできていない。

→現状システムでは、こんなはずじゃなかった、と後で変更登記、となると余計に時間・金銭費用がかかる。

委員等からは、以下の意見等が述べられた。

○ 民間調査によれば、現在提供されているモデル定款を工夫して独自の内容を追加する必要がないという回答が約7割。

→モデル定款、というのは法務省のサイトにある定款ではないみたい。あとで、こんなはずじゃなかった、がない定款のことを指しているのかなと想像します。そういう定款は、現在思い付く限りではないんじゃないかと思います。

○ 大多数はシンプルな定款の構成。全ての会社形態をモデル定款でカバーする必要はなく、モデル定款の方と弁護士なども活用して独自の定款を作成する方とツートラックを設ければよい。

○ 定款自治の意義はやりたい人がいろいろと自由にできるということにあるのであってシンプルな定款で満足している者に複雑なアレンジをすることを積極的に推奨しなければならないわけではない。

○ 法務省の調査結果における公証人の指摘は、より良いモデル定款をつくったり、選択肢で記載する部分を増やしたりといった機械的なチェックをかけることで対応できそうなものが多い。例えば、違法性を示すようなキーワードをリストとして指定してしまえば、それをはじくこと自体は何ら難しくなく、最終的な人のチェックも、公証人ではなく、登記所で処理すればよい。

○ チェックすること自体を機械に任せた方が速いし、正確だということになっている中で、エラーがある言葉があればはじくという方がチェックのカバレッジ、正確性及び迅速性の観点で、より勝っている。

(4)公証人が面前確認を行っていない事例に関する報告

法務省及び民間の調査において、公証人が面前確認を行っていない事例が報告されたことに関して、法務省から、そのような実態があったかどうかを確認しているが、以下の点を踏まえて評価する必要があるという見解が述べられた。

○ 法務省調査ではそのような回答はごくわずかである。

○ ごく一部の役場を除いて全て面前確認を行っているという説明を受けており、その内容も不自然・不合理ではなく、回答の際に入力や操作ミスがあった可能性がある。

○ 必ずしも公証人が自ら公証人であることを明らかにせず事務的に手続を進め、応対した方が公証人であることを認識されなかったケースがあり、回答者の誤解に基づく回答がされた可能性がある。

これに対して、委員等からは、以下の意見等が述べられた。

○ 弁護士や司法書士などの専門家からの回答でも、公証人が面前確認していないという回答があり、それら全てが誤解といえるのかは疑問である。

○ 法務省の回答からは、公証人が面前確認しなかったという事実はあってはいけない、そういう回答があったのは、回答者の間違いだということにしようという意思が見られ、民間の調査結果を見れば、公証人が面前確認を行わなかったことが常態化していたのではないかと思われる。

○ バイアスをかけずに実態を正しく把握すべき。

○ 公証人が面前確認を行っていないことについて法務省が全体像をつかめないような状況になっており、ガバナンス不全となり、機能していない可能性がある。

○ 自ら規律を守れない公証人が一定数存在し、その改善策ができない中で公証人制度を続けていることができるのかについて疑問が大きい。

○ こうした点について、第三者委員会を設置するなどして、しっかりと調査をしていくことが重要である。

○ コンプライアンス・ガバナンスを欠くものだといわざるを得ず、公証人制度のみならず、我が国の司法や法務省の信用を失墜させる事態だと重く受け止めるべき。

(5)講ずるべき措置

 これらを踏まえて、下記の措置を講ずるべきである。この措置については、必要に応じて、法務省において結論を得る前に規制改革推進会議等で議論等を行うことを予定している。

 法務省は、公証実務に関する実態を把握するための調査の結果分析、定款認証が果たすべき機能・役割の評価及びその結果に基づく定款認証の改善に向けたデジタル完結・自動化原則などのデジタル原則を踏まえた上での面前での確認の在り方の見直しを含めた起業家の負担を軽減する方策の検討に当たっては、事実関係の確認において予断を排除すること、①内容の法令適合性等の確保、発起人の意思の真正等の確保、不正な起業抑止、実質的支配者の把握といった定款認証の機能に関し、それらの効果とリスクや負担・コストとの比較考慮を行い、その際には、デジタル技術の活用等を含め代替となり得る制度・手段についても検討すること。

→公証人による定款認証については、必要、不要、どちらでもなく決まったことに従います。起業に関しては、、FATF勧告に従うことが第1なのか分かりませんでした。金銭的な費用を抑えるよりも、時間や手続の工数を少なくする方向で出来ないかな、と思います。

PAGE TOP