内閣官房法案誤り等再発防止プロジェクトチーム取りまとめ 

令和3年6月29日内閣官房法案誤り等再発防止プロジェクトチーム取りまとめ 

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/houan_ayamaribousi_pt/index.html

・改め文とは

参議院法制局「改め文」―法令の一部改正方式―

https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column050.htm

例「第○条中「△△△」を「×××」に改める。」

・新旧対照表の方式とは

平成28年3月25日 事務連絡 内閣官房行政改革推進本部事務局

「新旧対照表の方式による府省令等の改正について」

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/f9/%E5%B9%B3%E6%88%9028%E5%B9%B43%E6%9C%8825%E6%97%A5%E4%BB%98%E3%81%91%E3%80%8C%E6%96%B0%E6%97%A7%E5%AF%BE%E7%85%A7%E8%A1%A8%E3%81%AE%E6%96%B9%E5%BC%8F%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%BA%9C%E7%9C%81%E4%BB%A4%E7%AD%89%E3%81%AE%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%80%8D.pdf

新旧対照表ドットコム(株)マカビ―カタガイ

新旧対照表の書き方(Excel編)

http://shinkyutaishohyo.com/

 Excelから新規作成を開きAとBの列を選択。右クリックで『列の幅』を選択し数値を入力。1行目を選択して右クリックで『行の高さ』を選択し数値を入力。同様に2行目以降も高さを調整。対象範囲のセルを選択して右クリックから『セルの書式設定』を選択し罫線をいれる。セルA1、A2を選択して結合。中央揃えをクリック。左側に改定前のテキストを、右側に改定後のテキスト。修正ルール(下線、削除、(略)、(新設)など。)に従い修正内容を記入。テキストサイズ、揃えを調整し、『セルの書式設定』(右クリック)からインデントで体裁。

参照条文とは

参議院法制局「法律の構成」

https://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column044.htm

要綱とは

参議院法制局「職務」

https://houseikyoku.sangiin.go.jp/introduction/bureau/job.htm

誤りの内容

・ 案文

条文番号・文言等の誤りや、条文の欠落・重複が 12件

インデントの様式面での不備が 2 件

・ 新旧対照表

法改正に関わる箇所(新旧で改正内容を示している箇所)のうち、文言等の誤りが 6 件

上記以外の箇所(改正されていない箇所)のうち、電子データからの転記や手入力によるミス等による単純な誤記が 21 件

インデント、見出しや注記の欠落等の様式面での不備が 12 件

・ 参照条文について

電子データからの転記や手入力によるミス等による単純な誤記が 90 件

インデント、見出しやルビの欠落等の様式面での不備が 21 件

・ 要綱について、送り仮名や数字記載の誤記を含め、誤字・脱字等による誤りが 17 件

総務省において開発した法制執務業務支援システム(e-LAWS)

・法令データについては、データ更新が遅れがちであるほか、法令を所管する府省庁の認証が行われないまま掲載されている法令も多いことから、現時点では、法令案作成の基礎資料として用いることが難しく、法制局審査で使用が認められていない。e-LAWS を活用して作成される新旧対照表は、一部の文字(環境依存文字、数字、英字等)や表・別表が適切に表示できず、様式面で問題があるほか、法制執務で広く利用されている一太郎への出力機能がないこと。

 新旧対照表からの案文作成等の機能が限定的であるほか、法令作成過程において多数生ずる改め文の修正を反映できないなど、操作性や編集機能に限界があること。

 e-LAWS と、内閣法制局の法令審査支援システムや国立印刷局の編集・印刷システム等が連携していないこと。

日本の法令

・例えば、条番号の前に見出しがある、第1項の項番号が付されない、号番号等が付されずに並列で規定される例があるなど、視覚的には認識できるが、システムでは判読しづらい構造となっている。AI技術を活用し、表記揺れやインデントの乱れ、条項ズレなどを自動的に検出・補正するようなサービスが提供されている。

具体的方策

案文(改め文)について

・平成16年12月 内閣法制局

法令案における誤りの防止について(手引き)(増補版)

https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2020/04/%E6%B3%95%E4%BB%A4%E6%A1%88%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E8%AA%A4%E3%82%8A%E3%81%AE%E9%98%B2%E6%AD%A2%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%EF%BC%88%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8D%EF%BC%89%EF%BC%88%E5%A2%97%E8%A3%9C%E7%89%88%EF%BC%89%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%91%EF%BC%96%E5%B9%B4%EF%BC%91%EF%BC%92%E6%9C%88%E3%81%AE%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%81%AE%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%89.pdf

新旧対照表について

・過去の法案資料ではなく、基本的には、法務省が編纂している法規集や官報を用いて、正確に、「現行」部分を作成すること。

・法規集の法令データは、電子的にも提供されており、法案提出省庁において、これを活用し、手入力を極力減らすことが、誤り防止につながると考えられるが、電子データの特徴(改正履歴の残存、レイアウトの違い等)に留意して作業することが重要。

・法制執務業務支援システム(e-LAWS)の法令データが法務省により整備された後には、e-LAWS を新旧対照表の「現行」部分の作成に活用する。

・ページを跨ぐ修正を行う場合や、最終段階での内閣法制局による職権修正が行われる場合には、案文とともに、誤りが生じやすいことに十分留意して、作業・確認する。

・誤り防止のため、法令名・法律番号・条項番号などの正確な記載は当然であるが、法案提出省庁の作成方法等も踏まえ、形式面を含め、最低限確認すべき項目や誤りやすいポイントを整理する必要。

参照条文について

・電子データからの転記や手入力によるミス等による誤記を防ぐため、基本的には、正確な電子データの活用を始めとして、新旧対照表と同様の対応が必要。

要綱

・案文や新旧対照表の内容が決まってきた段階で、法案を取りまとめている担当部局において、文言や条文番号等に誤記がないかに加え、改正内容や案文等に整合的であるかなど、横断的に確認。要綱は法案を作るために最初に出来るものと、成立した後にまとめるために作られるものがある。

読み合わせ

・法案担当経験者の参加、確認すべき資料の的確な分担、余裕のある日程管理をしながら何度も実施。職員による読み合わせ等に加え、音声の自動読み上げ、文書ソフトの校閲機能、民間事業者による校正サービス等を活用。法案誤り等再発防止プロジェクトチームが、府省庁横断的に確認すべきと考えられる事項をとりまとめ、2021年夏を目途に作成。

法制執務業務支援システム(e-LAWS)

・データ更新の業務フローを見直し、法令編纂を所管する法務省が、各府省庁や法令の専門業者の協力を得て、効率的に法令データを整備することとし、法律は、公布後速やかに(原則として、公布と同日を目指し、国会修正等があった場合も、できる限り速やかに)e-LAWS に掲載する。また、この法令データから、参照条文を自動的に作成する機能を整備する。e-LAWS について、出力時の体裁不備の解消、システムの操作性の向上や案文及び新旧対照表等の自動作成機能をはじめとする編集機能の改善。

  こうした法令データの整備等については、IT室、総務省、法務省が連携し、各府省庁の協力を得て、次期通常国会における法案提出に間に合うよう取り組む。

その他

・法案提出に先立ち、官房部局や第三者によるチェックを含め、複層的なチェック。

法令審査支援システムの活用

(操作マニュアル)

https://yamanaka-bengoshi.jp/wp-content/uploads/2021/01/%E5%86%85%E9%96%A3%E6%B3%95%E5%88%B6%E5%B1%80%E3%81%AE%E6%B3%95%E4%BB%A4%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%93%8D%E4%BD%9C%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%90%EF%BC%92%EF%BC%97%E5%B9%B4%EF%BC%98%E6%9C%88%E3%81%AE%E9%96%8B%E7%A4%BA%E6%96%87%E6%9B%B8%EF%BC%89.pdf

(配字・禁則処理)

・ワープロソフトでの1ページあたりの文字数と行数は、1行48字、1ページ13行詰めの設定とする。また、ワープロソフトで設定可能な禁則処理(追い込み)を行い、句読点のぶら下げは行わない設定とする。

相続人イギリス籍の日本の不動産の相続とイギリスにある銀行預金

20210703渉外司法書士協会令和3年度・東京定例会中級編メモ

被相続人イギリス籍の日本の不動産の相続とイギリスにある銀行預金

不動産の相続

・相続関係図

・宣誓供述書(イギリスの公証人)

銀行預金

上の二つに加えて

・日本民法意見書

被相続人フランス籍の日本にある不動産の相続

・非訟事案判決の通知(夫婦財産制の変更書を認証)

・フランス公証人宛照会書

・フランス公証人の回答、証明書(翻訳に規制)

・遺産相続に関する宣誓供述書

被相続人日本籍のロシアに所在する遺産相続

・宣誓供述書

相続の準拠法

ロシアの相続法

弟による宣誓供述書の日本での認証

地方の公証人の認証についての宣誓供述書

ロシアはハーグ条約加盟国

被相続人が韓国籍で、朝鮮民事法令を適用する相続

・遺産分割協議書

・上申書(準拠法は日本)法の適用に関する通則36条、朝鮮民主主義人民共和国対外民事関係法45条1項但書き

・外国人登録原票のコピー

法の適用に関する通則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000

(本国法)

第三十八条 当事者が二以上の国籍を有する場合には、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国があるときはその国の法を、その国籍を有する国のうちに当事者が常居所を有する国がないときは当事者に最も密接な関係がある国の法を当事者の本国法とする。ただし、その国籍のうちのいずれかが日本の国籍であるときは、日本法を当事者の本国法とする。

2 当事者の本国法によるべき場合において、当事者が国籍を有しないときは、その常居所地法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)及び第三十二条の規定の適用については、この限りでない。

3 当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。

朝鮮民主主義人民共和国の対外民事関係法に関する若干の考察

木棚照一

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/96-5/kitana.htm

山北英仁『渉外不動産登記の法律と実務』日本加除出版、2014

P515~イギリス国籍の相続

『家庭裁判月報』29巻6(1977.6)千種秀夫の「イギリスにおける相続法の改正について」P157~P186

「・相続を証する書面

イギリスには、公証人がほとんどおらず、通常はSolicitorが認証業務をしている。

P206~海外の認証―イギリスのソリシター(Solicitor)の認証について

Legal Services Act 2007 Chapter29」

https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2007/29/contents

「 イ ソリシター(Solicitor)には、結局のところ認証権限があるのか

 1801年の公証人法(Public Notaries Act 1801(c.79))は、1990年の裁判所及び法的サービス法によって、ほとんどの条項が廃止されており、同法は機能していない状態である。そこで、ソリシター団体であるローソサエティを含めたすべての承認規律団体が指定法律業務としての宣誓執行業務ができることが法的サービス法(2007年)で確認されたことにより、ソリシターはもちろんのこと指定法律資格者団体の全ては認証業務ができることになることがわかった。 」

Births, deaths, marriages and care. 駐日英国大使館

https://www.gov.uk/browse/births-deaths-marriages

意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン

2020年(令和2年)10月30日

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20201030guideline.pdf

意思決定支援ワーキング・グループ

目 次

第1 はじめに

 1 ガイドライン策定の背景 …………………………………. 1

2 ガイドラインの趣旨・目的等 ……………………………… 2

 第2 基本的な考え方

1 本ガイドラインにおける意思決定支援の定義 …………………. 2

 2 本ガイドラインにおける意思決定能力の定義 …………………. 3

3 本ガイドラインにおける意思決定支援及び代行決定のプロセスの原則 3

(1) 意思決定支援の基本原則 ……………………………….. 3

 (2) 代行決定への移行場面・代行決定の基本原則 ……………….. 3

 4 後見人等として意思決定支援を行う局面 …………………….. 4

 第3 意思決定支援における後見人等の役割

1 関連する基本原則の確認 …………………………………. 5

2 意思決定支援のための環境整備(事前準備) …………………. 5

環境整備の必要性・目的 ……………………………….. 5

  • 本人のエンパワメント ……………………………….. 5

② 支援者側の共通認識・基本的姿勢 ………………………. 5

(2) 環境整備の手順、環境整備に対する後見人等の関与の仕方・役割 ..

 6 (3) 本人と後見人等の信頼関係の構築 ………………………… 6

 3 後見人等の関与する意思決定支援の具体的なプロセス(個別課題が生じ た後の対応) …………………………………………….. 7

 (1) 本人にとって重大な影響を与えるような意思決定について …….. 7

 (2) 支援チームの編成と支援環境の調整 ………………………. 7

① 支援チームの編成 …………………………………… 7

② 支援環境の調整・開催方法等の検討 …………………….. 8

(3) 本人への趣旨説明とミーティング参加のための準備 ………… 10

(4) ミーティングの招集 …………………………………. 10

(5) 本人を交えたミーティング ……………………………. 10

 ① 進行方法の工夫 …………………………………… 10

  •  意思形成支援におけるポイント ………………………. 11

 ③ 意思表明支援におけるポイント ………………………. 12

 (6) 意思が表明された場合 ……………………………….. 12

(7) アセスメントシートへの記録 ………………………….. 13

第4 意思決定や意思確認が困難とみられる局面における後見人等の役割

 1 関連する基本原則の確認 ……………………………….. 13

2 意思決定や意思確認が困難とみられる局面とは ……………… 13

3 意思決定能力アセスメントの方法 ………………………… 13

(1) 意思決定能力アセスメント ……………………………. 13

(2) アセスメントシートへの記録 ………………………….. 14

4 本人の意思推定(意思と選好に基づく最善の解釈)アプローチ …. 14

 (1) 基本的な考え方 …………………………………….. 14

(2) 検討結果に基づく後見人等としての行動原則 ……………… 15

 (3) アセスメントシートへの記録 ………………………….. 15

 第5 本人にとって見過ごすことができない重大な影響が懸念される局面等にお ける後見人等の役割

1 関連する基本原則の確認 ……………………………….. 16

 2 本人にとって見過ごすことができない重大な影響が生じる場合等 .. 16

(1) 基本的な考え方 …………………………………….. 16

 (2) 検討方法 ………………………………………….. 16

 (3) 検討結果に基づく後見人等としての行動原則 ……………… 17

 (4) アセスメントシートへの記録 ………………………….. 17

第6 本人にとっての最善の利益に基づく代行決定

1 関連する基本原則の確認 ……………………………….. 17

 2 本ガイドラインにおける「最善の利益」に基づく代行決定 …….. 18

 3 本人にとっての「最善」を検討するための方法 ……………… 18

(1) 最後の手段としての位置付け ………………………….. 18

 (2) 本人にとっての最善の利益を検討するための前提条件 ………. 18

 (3) 本人にとっての最善の利益を検討する際の協議事項 ………… 19

4 検討結果に基づく後見人等としての行動原則 ……………….. 20

5 アセスメントシートへの記録 ……………………………. 21

第1 はじめに

1 ガイドライン策定の背景

2017年(平成29年)3月24日に閣議決定された成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」という。)では、成年後見制度の利用者がメリットを実感できる制度・運用へ改善を進めることが目標とされ、後見人等が本人の特性に応じた適切な配慮を行うことができるよう、意思決定支援の在り方についての指針の策定に向けた検討が進められるべきであるとされている。このような背景には、2000年(平成12年)の成年後見制度発足以来、財産保全の観点のみが重視され、本人の意思尊重の視点が十分でないなどの課題が指摘されてきたことがある。

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「財産保全の観点のみが重視され」については、私の感覚とは違いました。私が司法書士として、成年後見に関わった2009年以来、実務上重視してきたのは身上監護です。財産保全の観点が重視され始めたのは、専門職後見人の横領事件が発覚し始めてからだと考えます。

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そのため、今後、成年後見制度の利用促進を図っていくためには、本人の意思決定支援や身上保護等の福祉的な観点も重視した運用とする必要がある。民法858条、876条の5第1項、876条の10第1項においても、後見人等が本人の意思を尊重し、その心身の状態及び生活の状況に配慮することが求められている。しかし、実務においては、本人の判断能力が低下していることを理由に、本人の意思や希望への配慮や支援者等との接触のないまま後見人等自身の価値観に基づき権限を行使するなどといった反省すべき実例があったことは 否定できない1。 後見人等を含め、本人に関わる支援者らが常に、「意思決定の中心に本人を置く」という本人中心主義を実現するためには、意思決定支援についての共通理解が必要である。そこで、意思決定支援を踏まえた後見事務についての理解が深まるよう、最高裁判所、厚生労働省、日本弁護士連合会、成年後見センター・リーガルサポート及び日本社会福祉士会により構成される意思決定支援ワーキング・ グループにおいて検討を重ね、成年後見制度の利用者の立場にある団体からのヒアリング等の結果を踏まえつつ、本ガイドラインを策定した。ガイドラインに記載されていることが意思決定支援の全てではないことは 言うまでもなく、意思決定支援については他にも多数のガイドラインやテキストが存在するものの、本ガイドラインが、専門職後見人、親族後見人、市民後見人等のいずれにとっても、本人の意思決定支援を踏まえた後見事務を行う上で参考にされ、活用されることを期待するものであり、そのためには、今後、関係各団体等において、それぞれの後見人等の属性に合わせた普及・啓発方法が展開されることが望ましい。また、本ガイドラインは意思決定支援を踏まえた後見事務の実現に向けた一つの出発点にすぎず、完成形ではない。

認知症や精神障害、知的障害、発達障害等の内容や程度には個人差があるが、適切な意思決定支援は本人の権利擁護につながるものであることからすれば、今後、専門職団体における本ガイドラインに基づく意思決定支援の経験の蓄積を経て、本人の属性や特性に応じた更なる深化・ 発展が期待されるところである。

2 ガイドラインの趣旨・目的等

本ガイドラインは、専門職後見人はもとより、親族後見人や市民後見人を含め て、後見人、保佐人、補助人(以下「後見人等」という。)に就任した者が、意思決定支援を踏まえた後見事務、保佐事務、補助事務を適切に行うことができるように、また、中核機関や自治体の職員等の執務の参考2となるよう、後見人等に求められている役割の具体的なイメージ(通常行うことが期待されること、行うことが望ましいこと)を示すものである3。なお、本ガイドラインには、意思決定支援及び代行決定の場面で使用できるアセスメントシートを5種類添付している(様式1~5)。後見人等がそれぞれのプロセスごとにアセスメントシートへの記録を行うことで、意思決定支援を踏まえた後見事務を適切に実践できているかを省みることができると考えられる4。

第2基本的な考え方

 1 ガイドラインにおける意思決定支援の定義意思決定支援とは、特定の行為に関し本人の判断能力に課題のある局面において、本人に必要な情報を提供し、本人の意思や考えを引き出すなど、後見人等を含めた本人に関わる支援者らによって行われる、本人が自らの価値観や選好に基 づく意思決定をするための活動をいう。

本ガイドラインにおける意思決定支援は、本人の意思決定をプロセスとして支援するものであり、通常、そのプロセスは、本人が意思を形成することの支援(意思形成支援)と、本人が意思を表明することの支援(意思表明支援)を中心とする(なお、形成・表明された意思をどのように実現するかという意思実現支援は、本ガイドラインにいう意思決定支援には直接には含まれないが、後見人等による身上保護の一環として実践されることが期待される。)5。

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本人に関わる人(医療、福祉、生活、法律など)でチームを作って、意思形成と意思表明の支援をする、ということは以前から言われていたような気がしますし、実務上も行っていました。5種類のアセスメントシートを作成したことが、基準となり得て、新しいことだと思います。

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 3 本ガイドラインにおける意思決定支援は、後見人等による「代行決定」とは明確に区別される。すなわち、①意思決定支援が尽くされても本人による意思決定や意思確認が困難な場合、又は②本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる可能性が高い場合のいずれかにおいて、最後の手段として、後見人等が法定代理権に基づき本人に代わって行う決定 (代行決定)とは区別されるものである。

2 本ガイドラインにおける意思決定能力の定義

意思決定能力6とは、支援を受けて自らの意思を自分で決定することのできる能力であるが、意思決定を行う場面では通常次の4つの要素が必要と考えられる。 (1)意思決定に必要な情報を理解すること(情報の理解) (2)意思決定に必要な情報を記憶として保持すること(記憶保持) (3)意思決定に必要な情報を選択肢の中で比べて考えることができること(比較検討) (4)自分の意思決定を口頭又は手話その他の手段を用いて表現すること(意思の表現)

 3 本ガイドラインにおける意思決定支援及び代行決定のプロセスの原則 (1) 意思決定支援の基本原則

第1 全ての人は意思決定能力があることが推定される。

第2 本人が自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を尽くさ なければ、代行決定に移ってはならない。

第3 一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで本人に意思決定能力がないと判断してはならない。

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 本人にとっても意思決定支援に関わるチームにとっても(特に固定給で働いていない人にとっては)負担が大きいと感じます。負担の分はどのように反映されるのか、気になります。以前、後見事務にかかった時間と報酬を割ってみましたが、200円を切っていました。

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(2) 代行決定への移行場面・代行決定の基本原則

第4 意思決定支援が尽くされても、どうしても本人の意思決定や意思確 認が困難な場合には、代行決定に移行するが、その場合であっても、 後見人等は、まずは、明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思(推定意思)に基づき行動することを基本とする7 。

 第5 ①本人の意思推定すら困難な場合、又は②本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合 には、後見人等は本人の信条・価値観・選好を最大限尊重した、本人にとっての最善の利益に基づく方針を採らなければならない。

第6本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、法的保護の観点からこれ以上意思決定を先延ばしにできず、かつ、他に採ることのできる手段がない場合に限り、必要最小限度の範囲で行われなければならない。

第7 一度代行決定が行われた場合であっても、次の意思決定の場面では、第1原則に戻り、意思決定能力の推定から始めなければならな い。

4 後見人等として意思決定支援を行う局面

 後見人等による意思決定支援は、飽くまで後見事務の一環として行われるものである以上、後見人等が直接関与して意思決定支援を行うことが求められる場 は、原則として、本人にとって重大な影響を与えるような法律行為及びそれに 随した事実行為の場面8 に限られる。

本人の特性を踏まえ、ケース・バイ・ケースで判断する必要があるが、一般的 な例としては、①施設への入所契約など本人の居所に関する重要な決定を行う場合、②自宅の売却、高額な資産の売却等、法的に重要な決定をする場合、③特定の親族に対する贈与・経済的援助を行う場合など、直接的には本人のためとは言い難い支出をする場合などが挙げられる9。

ただし、それ以外の局面における意思決定支援に関しても、後見人等として、 後記第3の2(2)に記載した関与が求められる10。

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  • 2について、本人が信仰している宗教に基づく場合、バランスのとり方が必要だと思います。親族を無視するわけにはいかない場合があるのではないかと思います。
  • 3について、以前から毎年贈与を行っていた場合などは考慮したいと思います。

第3 意思決定支援における後見人等の役割

*本項に対応するアセスメントシート:様式1

1 関連する基本原則の確認

第1 全ての人は意思決定能力があることが推定される。

第2 本人が自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を尽くさなけ れば、代行決定に移ってはならない。

第3 一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで本人に意思決定能 力がないと判断してはならない。

2 意思決定支援のための環境整備(事前準備)

  • 環境整備の必要性・目的 後見人等が直接関わる意思決定支援の事務としては、本人に重大な影響を与える法律行為及びそれに付随する事実行為が主である。しかしながら、そのような課題が生じてからいきなり意思決定支援をしようとしても容易ではなく、日頃から日常的な事柄について、本人が自ら意思決定 をすることができるような支援がされ、そのような意思決定をした経験が蓄積 されるという環境が整備されている必要がある。
  •  本人のエンパワメント

特に、本人が自信を持って意思決定を行うことができるためには、本人の 自尊心や達成感が日頃から満たされていることが重要である。したがって、日常的に、本人が自ら意思決定を行う機会に接し、成功・失敗に至る過程を経ながら、「自らの意思決定が他者に尊重された」という経験を本人が得られるよう、後見人等も含めた本人に関わる支援者らが協力して支援をする(エンパワメント)環境が整備されることが求められる1112。

  •  支援者側の共通認識・基本的姿勢

 本人の意思決定に向けた支援は、これを支援する者の態度や本人との信頼関係、立ち会う人との関係性や環境による影響を受ける。また、意思決定支援をする支援者側の共通理解が乏しい場合、本人の意思決定や意思表明を引き出す支援が十分に行われなかったり、本人の意思を都合よく解釈した事実上の代行決定が行われたりするおそれもある。さらに、職業倫理や価値観の違いから、本人と支援者間、支援者相互の対立を招くことも懸念される13。

 したがって、意思決定支援を行うに際しては、後見人等を含めた本人に関わる各支援者が、本人の意思決定を尊重する基本的姿勢を身につけておく必要がある。そこで、本ガイドラインないし関連する他の意思決定支援ガイドライン14をあらかじめ読み合わせておく、又は研修等に参加するなど、意思決定支援を行うに当たっての共通認識を得ておくことも重要である。

  • 環境整備の手順、環境整備に対する後見人等の関与の仕方・役割

 後見人等が就任した時点では、既に本人は、親族や介護サービス、障害者福祉サービス事業者のスタッフや医療従事者等による支援を受けていることが 多い(潜在的なチームの存在)。後見人等としては、本人が日常生活を送るに当たって、これらの支援者によって、本人の意思決定が適切に支援され、表明された意思が十分に尊重されているかどうかを把握しつつ、以下の点に留意して 活動を進める必要がある。

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法定後見などが想定され、任意後見は想定されていないような記載だと感じました。

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 <留意するポイント>

 ▶ 後見人等に就任した後、なるべく早期に本人や支援者らと接触すること15

 ▶ 本人の状況や支援状況を把握し、支援者らの輪に参加すること

▶ 本人の意思が周囲の支援者らから十分に尊重されていないとみられる場合には、環境の改善を試みること

 特に専門職後見人の場合は、選任された時点では本人に関する情報量が親族や介護サービス事業者と比べて圧倒的に少ないことを自覚し、意識的に本人と話をしたり、本人のことを知ろうと努めることが重要である。なお、意思決定を支援するチームが編成されていないような場合や、チーム の編成を変更する必要があるような場合には、地域包括支援センターや障害者基幹相談支援センター、発達障害者支援センターがチーム支援の起点となるよう、中核機関のサポートを受けながら働きかけを行うことが望ましい。

  • 本人と後見人等の信頼関係の構築

 後見人等としては、本人と定期的な面談、日常生活の観察や支援者らからの情報収集、生活歴の把握等を通じて積極的にコミュニケーションを図ることにより、本人が安心して自分の意思を伝えることができ、後見人等とともに意思決定支援のプロセスに参加することに意欲を持つことができるような信頼関係を構築しておくことも重要と考えられる。後見人等が本人にとってどのような存在であるのかを本人自身に正しく認識してもらうことにより、本人としても安心して支援を受けることができるようになるはずである。

3 後見人等の関与する意思決定支援の具体的なプロセス(個別課題が生じた後の対応)

  • 本人にとって重大な影響を与えるような意思決定について

 本人にとって重大な影響を与えるような法律行為及びそれに付随する事実行為に関して意思決定を行う場面において、後見人等に求められるのは、本人の意思決定のプロセスを丁寧に踏むという意識及びそのプロセスに積極的に関わるということである。

具体的には、後見人等は、基本的に以下の場面で一 定の重要な役割を担うことになる。

  •  支援チームの編成と支援環境の調整
  •  本人を交えたミーティング

もっとも、本人にとって重大な影響を与えるような法律行為及びそれに付随する事実行為に関して意思決定を行う場合においても、本人の意思が明らかであり、支援者においても本人の意思に沿うことで異論がないような場合には、本ガイドラインのプロセスを必ずしも全て経る必要があるわけではない。

  • 支援チームの編成と支援環境の調整
  •  支援チームの編成

支援チームの編成は、本来は福祉関係者において責任を持って行うことが想定された事柄ではあるが、後見人等も、日頃から本人の意思決定支援のた めの環境整備がなされていることを前提に、ミーティング主催者とともに意思決定を支援するメンバーの選定に主体性を持って関わっていくことが望ましい。一般的には、親族、介護支援専門員、相談支援専門員、施設長・施設ケア マネジャー等相談支援専門職・相談員、地域包括支援センター等行政機関の担当者、主治医・看護師・臨床心理士、医療ソーシャルワーカー・精神保健福祉士などが支援メンバー候補者であるが、これらの者に限るわけではなく、 本人が希望する場合には、本人が信頼する友人やボランティア、当事者団体のメンバーなどが加わることもあり得る。第三者的な立場のメンバーが加わることで、支援者らが無意識のうちに自分達の価値観に基づきプロセスを進めることを防ぐという効果も期待される。

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 第三者を入れることが薦められる場合と、入れない方が良い場合があると思います。その基準は曖昧ですが、周りの人の関係性から見極め、最後は決定権を持っている人が決めることになるのかなと感じます。

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本人の思いや意思が反映されやす いチームとすることを意識しつつ、課題に応じて適切なメンバーを選ぶことが重要である16。

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 課題に応じて、メンバーの心情や都合に応じて、選ぶことが重要だと思います。

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 基本的には、本人との日常のコミュニケーションの方法をよく知る者、専門的見地から発言ができる者、その課題について本人に適切な選択肢を示す ことができる者などがバランス良くメンバーに加わることが望ましい。メンバーには、本人の意思が明確に表明されない場合であっても本人の意思自体は存在するということを十分に理解し、その意思を汲もうとする姿勢が求められる。

 一方で、当該事案において本人と利害が明らかに対立する者、本人の意思決定に不当な影響を与える可能性のある者の参加は好ましくなく、慎重な判 断が求められる。

  •  支援環境の調整・開催方法等の検討

 本人を交えたミーティングに先立ち、支援チームのメンバー間において、 ミーティングの趣旨やミーティングにおける留意点をお互いに理解するように努め、また本人にとってどのような形でミーティングを開催するのが適 切であるかを、以下の点に留意して慎重に検討することが望ましい。

 チームが機能しているような場合、後見人等は、コーディネーターとして 振る舞う必要はなく、以下の留意事項も踏まえ、他の支援者らが本人の意思や特性を尊重しながら適切に準備を進めているのかをチェックし、問題がある場合には改善を促すという形での関与をしていくことが求められる17。

また、後見人等のみならず、他の支援者においても、意思決定支援が適切なプロセスをたどっているかについて、相互にチェックし合うような環境が整備できると更に望ましい。他方で、後見人等は、他の支援者らとは異なり、最終的な決定権限(法定代理権)を有しているが、自分の価値観が最終的な決 定に影響しないよう、意思決定支援の準備につき他の支援者らの意向を尊重するという意識を持つことも重要である。

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相互にチェックし合う、とう言葉は、何か別の言葉が使えないかなと思います。私なら、お互いに意見を言っても否定しない場づくりを心掛ける、くらいにしておきます。

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 これに対し、チームがうまく機能していないような場合には、後見人等は、中核機関等からの支援を受けて他の支援者らに働きかけを行い、支援者らの意識の改善を図った上で検討を進めたり、チームの再編成を試みたり(上記 2⑵参照)するなど、支援環境の調整段階から主体的に関与することが望ましい。

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働きかけ自体は出来ると思いますが、負担が大きいと感じます。

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 <ミーティング開催に当たっての留意事項>

▶ 本人は、いつ、どこで、どのような方法であれば安心して参加できるか。 また、誰に意思決定支援のチームに参加してほしいか。

 本人の特性・生活スタイルから避けた方がよい時間帯がないか、本人が一番安心して意思を表明できる場所はどこか、本人が安心して話をすることができる支援者が誰かについて十分に配慮すべきである。必ずしも「ケース検討会議」のような場面がいつも適切とは限らず、たとえば本人との少人数でのミーティングを行い本人の意思を十分に引き出した上で、本人意思の確認・ 共有のために支援メンバーが揃う場を設けるなど、段階的にミーティングを行っていく ことが望ましいケースもあり得る。

▶ 本人は、どのようなコミュニケーションの方法を望んでいるか。また、本人の意思決定を支援するために必要な調整・コミュニケーション手段について意識されているか。 本人がミーティングにおいて適切に意思形成・表明ができるよう、本人が意思決定を行う場合の課題を整理し(関連する情報の理解・記憶・比較・表現等の各要素に留意し て)、支援者らが本人の意思の形成を促し、引き出していくための手段を検討する18。

また、本人が課題を理解し、自分なりの意思決定を行うためには、ミーティングの進行における工夫や本人の特性に合わせたコミュニケーションスキル(意思疎通の技術)が必要である。そのため、誰が進行役(ファシリテーター)を務め、本人との意思疎通を誰 がどのように図り、本人が実質的にミーティングに参加できるようにどのように工夫す るか等、支援チーム全体で予め検討しておくべきである。

▶ 意思決定支援に関するミーティングであることが参加者により理解され ているかどうか。ミーティングの呼びかけ方によっては、参加者が会議の趣旨について抱くイメージが 変容してしまう危険性がある。支援者らの価値観に基づく結論が先にありき(いわゆる 「落としどころ」を決めて臨む)での本人を説得するために集まる場では決してないことを予め留意事項として認識させることが重要である。

 ▶ ミーティングにおけるメンバーの役割やルールが参加者により理解されているか。

ミーティングの参加者がすることは「本人の意見、考えを引き出す」こと、「支援者ら の価値観を押し付けない」ことであり、避けなければならないことは参加者が望ましいと考えることを押しつけたり、その方向に誘導・説得したりしないこと、本人の話を頭ごなしに否定・批判をしないことである。なお、検討のための手段としては、支援チームのメンバーが直接会って事 前の打合せをするほか、電話、メール、ファックス等で確認・意見交換する など、支援チームの構成や従来の支援実績、対象となる課題、本人の状況等 により、その方法は様々であってよい。

  • 本人への趣旨説明とミーティング参加のための準備 支援チームのメンバー、環境整備、開催方法を検討していく過程において、本人が信頼している意思決定支援のキーパーソンによって、本人にあらかじめミーティングの趣旨を説明しておくことが必要である。たとえば、支援メンバーの情報やミーティングの予定日時、場所のほか、自分で自分のことを決めていくことが大切であること、意思を決めていくためにメンバーができる限り協力すること、本人の意思を尊重し、受け止めてくれるメンバーがいるので安心 して意見を述べてよいことなどを丁寧に説明する。

その際、本人としては、課題についての自分の思いを聞いてもらうことが会議に向けた心の準備になることもあるため、本人が何か課題について思いを伝えようとしている場合には、 本人の話に耳を傾けることも重要である1920。

  • ミーティングの招集

進行管理に責任を持つ者において、関係者を招集する。その際、必要な資料の準備も行う21。

  • 本人を交えたミーティング

 ① 進行方法の工夫 ミーティングでは、主催者等(後見人等が兼ねることもある)は、事前の 環境調整を踏まえて設定されたテーマ及びミーティングのルールに沿って以下②・③の支援プロセスが展開されているかに注意しながら、会議を適切 に進行する必要がある。ミーティングは必ずしも1回とは限らず、複数回開 催したり22、本人の意思形成の状況によっては、その間に見学や体験を導入 したりすることが有効な場合もある。

 事前の環境調整で確認したことなどを踏まえ、本人の置かれている状況を、本人の特性を踏まえつつ分かりやすく説明するとともに、課題となる意思決 定事項に関連する本人の意思や考えを引き出すことができるよう最大限努力する。加えて、本人の意思や考えを踏まえつつ、現在の本人が採り得る選択肢を分かりやすく示す。選択肢については、それぞれのメリット・デメリットなどを説明する必要がある場合もあるが、その際には、殊更誘導や本人の選択を意図的に狭めるような説明、プレッシャーを与える言動のないよう配慮する必要がある。説明方法は、言葉によるものに限らず、タブレット端末、パ ンフレット、写真、絵カード等の視覚的な資料を用いるなどの工夫も考えられる。

このような本人の意思形成支援を行った上で、他者の不当な影響が及ばない状態において、本人が自らの意思を表明できるよう支援する。適切なコミ ュニケーション手段の選択はもちろん、表明を直接受け取る支援者、場所、 時間、雰囲気などにも配慮すべきである。

後見人等は、本人の権利擁護者として、本人が意思決定の主体として実質的にミーティングに参加できるよう、本人のペースに合わせた進行を主催 者・参加者に促していくことが期待される。ただし、後見人等だけで一連の意思決定支援を全て提供できるものではないため、主催者、参加者と適宜役 割分担をし、以下のポイントに留意しながら、チーム全体として意思決定支 援のプロセスを展開できるようにすることが大切である。

2 意思形成支援におけるポイント

 □支援者らの価値判断が先行していないか?

 ▶ 判断の前に本人の希望に着目し、できる限り「開かれた質問」23で尋 ねる。 □本人の「理解」と支援者らの「理解」に相違はないか?

▶ 本人に説明してもらう。同じ趣旨の質問を、時間をおいて、違う角度 から行ってみる。

 ▶ 説明された内容を忘れてしまうことがあるため、その都度説明する。

 ▶ 本人に体験してもらうことによって本人の理解を深める。 □選択肢を提示する際の工夫ができているか?

 ▶ 比較のポイント、重要なポイントを分かりやすく示す。

 ▶ 文字にする。図や表を使う。ホワイトボードなども活用する。 □他者からの「不当な影響」はないか? ③ 意思表明支援におけるポイント □決断を迫るあまり、本人を焦らせていないか?

▶ 時間をかけてコミュニケーションを取る。

▶ 重要な意思決定の場合には、時間をおいて、再度、意思を確認する。

 ▶ 時間の経過や置かれた状況、同席者の影響によって意思は変わり得る ことを許容する。

 ▶ 本人の意思決定を強いるものではない(本人がむしろ支援者らに判断 を任せたいという意思を持つこともあり得る。)。 □本人の表明した意思が、これまでの本人の生活歴や価値観等から見て整合 性があるか?

 ▶ これまでと異なる判断の場合には、より慎重に本人の意思を吟味する。

 ▶ 表面上の言葉にとらわれず、本人の心からの希望を探求する。 □意思を表明しにくい要因や他者からの「不当な影響」はないか? ▶ 支援者らの態度、人的・物的環境に配慮する。時には、いつものメン バーとは異なる支援者が意思を確認してみることも必要。

  • 意思が表明された場合

第1原則において、全ての人は意思決定能力があることが推定されている。 したがって、本人及び支援者らにおいて意思決定能力について特段疑問を持 たない限り、後見人等は、本人の意思決定に沿った支援を展開することが通常 である(なお、意思実現支援は本ガイドラインにおける意思決定支援には直接 含まれないものの、後見人等としては、身上保護の一環として、後見人等が本 人の意思の実現に向けて適切に行動することが期待される。)。 もっとも、表明された意思が本人の意思であるかは慎重に確認する必要があ り、支援者らによる意思決定支援が適切にされていないおそれがある場合24や、 本人の表明された意思に関し、支援者らの評価・解釈に齟齬や対立がみられる 場合には、再度意思決定支援を行う必要がある。

 また、本人の意思に揺らぎがみられるような場合には、一旦本人が意思を表明した場合であっても、直ちにその実現に移るのではなく、一定期間見守り、 表明された意思が最終的なものであるかを確認する必要がある。

  • アセスメントシートへの記録

後見人等は、(1)~(6)における意思決定支援のプロセスについて、アセスメ ントシート様式1に随時記録する。

 第4 意思決定や意思確認が困難とみられる局面における後見人等の役割

*本項に対応するアセスメントシート:様式2・様式3 1 関連する基本原則の確認

第2 本人が自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を尽くさなければ、代行決定に移ってはならない。

第4 意思決定支援が尽くされても、どうしても本人の意思決定や意思確認が困難な場合には、代行決定に移行するが、その場合であっても、後見人等は、まずは、明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思(推定意 思)に基づき行動することを基本とする。

2 意思決定や意思確認が困難とみられる局面とは

特定の意思決定について、意思決定支援を尽くしたにもかかわらず、本人の意思や意向を把握することが困難であり(本人とのコミュニケーションが困難である場合や、本人の意思の揺らぎが大きい場合など)、かつ、法的保護の観点から決 定を先延ばしにすることができない場合もある。その場合には、下記3のとおり、 本人の意思決定能力のアセスメント(評価)を行った上で、意思決定をすること が困難であると判断された場合には、代行決定のプロセスに移行することになる。 なお、決定を先延ばしにすることができる場合には、改めて意思決定支援を行うことになる。

3 意思決定能力アセスメントの方法

  • 意思決定能力アセスメント

本ガイドラインにおける意思決定能力の定義からすれば(第2の2)、意 思決定能力アセスメントは、本人が独力で特定の意思決定ができるか否かを 評価するものではなく、支援者ら自身が意思決定支援を尽くしたにもかかわ らず、意思決定を行う場面で通常必要と考えられる4要素につき満たされな いものがあるかを評価することとなる。

 理解 :与えられた情報を理解する力

 ▶ 支援者側が実践上可能な工夫・努力を尽くしたにもかかわら ず、本人が意思決定に関連する情報を理解することができな かったかを評価する。

記憶保持:決定するためにその情報を十分に保持する力 ▶ 支援者側が実践上可能な工夫・努力を尽くしたにもかかわら ず、本人が情報を必要な時間、頭の中に保持することができな かったかを評価する。

比較検討:決定するためにその情報を検討する力 ▶ 支援者側が実践上可能な工夫・努力を尽くしたにもかかわら ず、本人がその情報に基づく選択肢を比較検討することがで きなかったかを評価する。

 表現 :決定について他者に伝える力 ▶ 支援者側が実践上可能な工夫・努力を尽くしたにもかかわら ず、本人が意思決定の内容を他者に伝えることができなかっ たかを評価する。

ここで重要なことは、意思決定能力は、あるかないかという二者択一的な ものではなく、支援の有無や程度によって変動するものであることから25、本人に意思決定能力がないと決めつけることなく、4要素を満たすことができるように、後見人等を含めたチーム全体で支援をすることが必要であるとい うことである。このように、意思決定能力アセスメントは本人の能力の有無のみを判定するアプローチではなく、支援を尽くしたといえるかどうかについても、チー ム内で適切に検討することが求められる。

  • アセスメントシートへの記録 意思決定能力アセスメントの検討プロセスについては、アセスメントシート様式2に記録する。

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おそらく、アセスメントシートその他の情報共有ツールが必要だと思います。パソコンなどから入力出来るような。情報漏洩が起きる危険があるので、ガイドライン作成が必要だと思います。

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 4 本人の意思推定(意思と選好に基づく最善の解釈)アプローチ

  • 基本的な考え方

意思決定能力アセスメントを実施した結果、本人の意思決定や意思確認 が、その時点ではどうしても困難と評価された場合、代行決定が検討される ことになる。もっとも、その場合であっても、後見人等が直ちに自らの価値判断に従って何が本人にとって最善であるかを決定することは避けるべきで ある。

後見人等を含めた支援チームが集まって、本人の日常生活の場面や事 業者のサービス提供場面における表情や感情、行動に関する記録などの情報 に加え、これまでの生活史、人間関係等様々な情報を把握し、根拠を明確に しながら本人の意思及び選好を推定することを試みることが必要である26。

すなわち、本人が自ら意思決定をすることができたとすれば、本人はどのような意思決定をしていたのかをまずは推定する必要がある。 収集された事実については、一見すると矛盾していたり、古すぎる情報、 又聞き情報といったものも存在したりするため、信頼できる情報を適切に選 別していく必要もある。さらに整理された事実に基づいて、本人の意思や価 値観を合理的に推定していくために関係者による評価が行われる。後見人等は、本人の権利擁護の代弁者であるという意識を持ち、十分な根拠に基づいて本人の意思推定が行われているか、関係者による恣意的な本人の意思推定が行われていないかどうか等を注視していくことが求められる。

 このような整理や評価は、単独で行うことは通常困難であり、意思決定支 援の場面で構築されたチームを活用し、複合的な視点から検討する必要がある。意思推定は、本人に意思決定能力があればどのような決断をしていたのかを第三者が推定し、判断するものである。支援チームがいかに努力したとしても本人の意思そのものとは異なって解釈される可能性があることから、慎重な取扱いが求められる。

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 本人も時間や状況によって意思は変わると思うので、支援チームが割く時間を予め決めておかないと、疲弊が起きると感じます。

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  • 検討結果に基づく後見人等としての行動原則

 ミーティングの結果、本人の意思が推定できる場合には、第5原則「本人にとって見過ごすことのできない重大な影響」に該当しない限り、後見人等も含めた支援者らは、本人の信条・価値観・選好に基づいて支援を展開する こととなる。他方、意思推定すら困難な場面では、第5原則及び第6原則に沿って行動することが検討される(最善の利益に基づくアプローチ。第5参照)。

  • アセスメントシートへの記録

 後見人等は、上記4(1)の本人の意思推定に基づく代行決定の検討プロセス について、アセスメントシート様式3に記録する。

第5 本人にとって見過ごすことができない重大な影響が懸念される局面等における後見人等の役割

*本項に対応するアセスメントシート:様式4 1 関連する基本原則の確認 第3 一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで本人に意思決定能 力がないと判断してはならない。

第5 ①本人の意思推定すら困難な場合、又は②本人により表明された意思等 が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合等には、 後見人等は本人の信条・価値観・選好を最大限尊重した、本人にとっての 最善の利益に基づく方針を採らなければならない。

 第6 本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、法的保護の観点からこ れ以上意思決定を先延ばしにできず、かつ、他に採ることのできる手段がない場合に限り、必要最小限度の範囲で行われなければならない。

 2 本人にとって見過ごすことができない重大な影響が生じる場合等 (1) 基本的な考え方 意思決定支援の結果として、本人が意思を示した場合や、第4のプロセスを踏むことにより本人の意思が推定できた場合であっても、その意思をそのまま実現させてしまうと、本人にとって見過ごすことができない重大な影響が生じるような場合がある。その場合、当該意思をそのまま実現することは 適切ではないため、法的保護の観点から、「最善の利益」に基づいた代行決 定を行うことが許容される。

 また、本人の意思を実現すると、権利侵害を第三者に生じさせるような場面においても、個別具体的な事情に応じて、「最善の利益」に基づく代行決定を検討すべき場合がある。

検討方法 「重大な影響」といえるかどうかについては、以下の要素から判断する。

 ① 本人が他に採り得る選択肢と比較して、明らかに本人にとって不利益な 選択肢といえるか

2 一旦発生してしまえば、回復困難なほど重大な影響を生ずるといえるか

  •  その発生の可能性に確実性があるか

 例として、自宅での生活では本人が基本的な日常生活すら維持できない場合や、本人が現在有する財産の処分の結果、基本的な日常生活すら維持でき ないような場合が挙げられる。

 意思推定の場面と同様、このような整理や評価は、単独で行うことは通常困難であり、意思決定支援の場面で構築されたチームを活用し、複合的な視点から、明確な根拠を示して検討する必要がある。

(3)検討結果に基づく後見人等としての行動原則

 ミーティングを踏まえて、「本人にとって見過ごすことができない重大な影響」が発生する可能性が高いと評価される場合等には、後見人等は、本人が示した意思決定(推定意思の場合には、本人に意思決定能力があれば示したであろう意思決定)であったとしても、法的保護の観点から、同意しない(同意権・代理権の不行使)又は本人の示した意思とは異なる形での代行決定(代理権、取消権の行使)を行うことがある27。

他方、第三者からみれば必ずしも合理的でない意思決定であったとしても、「本人にとって見過ごすことができない重大な影響」が発生する可能性が高いとまでは評価できない場合には、本人なりの価値判断に基づく意思決定であることを踏まえ、後見人等も含めた支援者らは、本人の信条・価値 観・選好に基づいて支援を展開することが期待される。

  • アセスメントシートへの記録

後見人等は、本人にとって見過ごすことができない重大な影響が生じるかどうかの検討プロセスについて、アセスメントシート様式4に記録する。

 第6 本人にとっての最善の利益に基づく代行決定

 *本項に対応するアセスメントシート:様式5

1 関連する基本原則の確認 第5 ①本人の意思推定すら困難な場合、又は②本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合には、後見人等は本人の信条・価値観・選好を最大限尊重した、本人にとっての最 善の利益に基づく方針を採らなければならない。

 第6 本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、法的保護の観点からこれ以上意思決定を先延ばしにできず、かつ、他に採ることのできる手段がない場合に限り、必要最小限度の範囲で行われなければならない。

 第7 一度代行決定が行われた場合であっても、次の意思決定の場面では、第 1原則に戻り、意思決定能力の推定から始めなければならない。

2 本ガイドラインにおける「最善の利益」に基づく代行決定 これまで述べてきたとおり、①意思決定支援を尽くしても本人の意思が明確 ではなく、かつ、本人の意思を推定することさえできない場合や、②本人が表 明した意思や推定される本人の意思を実現すると本人にとって見過ごすことが できない重大な影響が生じてしまう場合には、後見人等は、「最善の利益」に基づく代行決定を行うことになる。

 本ガイドラインで採用されている最善の利益は「本人にとっての最善の利益」、すなわち、本人の意向・感情・価値観を最大限尊重することを前提に他の要素も考慮するという考え方である。この点、「自分ならこうする。この方が本人のためだ。この人はこういうふうに行動すべきだ。」と、第三者の価値観で決めるという客観的・社会的利益を重視した考え方は採用していないことに注意が必要である

 3 本人にとっての「最善」を検討するための方法

  • 最後の手段としての位置付け

本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、意思推定の場面とは異なり、 本人の意思よりも他者の判断が優越し得る場合がある(本人の意思や推定意思 とは異なる他者決定があり得る)ということに留意する必要がある。したがっ て、使い方を誤るとかえって本人の自己決定権の侵害となる可能性もあるため、 最後の手段として慎重に検討されるべきものである。 特に後見人等としては、付与された代理権、取消権をどのように行使すべき かを検討する上で、第6原則を踏まえて、下記(2)のように検討すべきである。

 (2) 本人にとっての最善の利益を検討するための前提条件

 □ 意思決定能力アセスメントが実施されているか?当該意思決定について、 意思決定支援が尽くされているか否かを吟味する過程があったか? □ その結果、意思決定支援の限界場面と評価できるか? ▶ 意思決定支援が尽くされたにもかかわらず、本人の意思決定や意思確認 がどうしても困難であり、かつ、意思推定すら困難といえるか?

 ▶ 本人にとって見過ごすことができない重大な影響に該当するといえる か? □ これ以上決定を先延ばしできない場面と評価できるか?

 ▶ 意思決定をしないこと(思うようにさせておくこと)もまた決定であり、 行動しないことが本人に与える結果についても念頭におく必要がある。 □ 後見人等による代行決定が及ぶ意思決定か? 後見人等が代行決定することができない意思決定(身分関係の変動、身体への侵襲を伴う医療に関する意思決定等)には当たらないことの確認が必要 である。 また、他の法律による介入が必要と判断される場合(例えば虐待防止法に おける「やむを得ない事由による措置」の発動など)には、所管する関係機 関に対して会議への同席を求めることも検討する。 □課題とされている意思決定に関与する本人の支援者らから、本人の選好・価値観その他本人にとって重要な情報が十分に得られているか? □ 本人が最善の利益の検討過程に参加・関与できる機会が考慮されているか? 後見人等は、本人にとっての最善の利益の判断に至る過程が適切に議論されているかどうかを確認する必要があるが、このような議論の整理や評価は、後見人等や支援者らが単独で行うことは通常困難である。

 したがって、緊急判断が求められる場面でない限り、意思決定支援の場面で構築されたチームを活用し、複合的な視点から検討する必要があるが、その際 には、無意識のうちに支援のしやすさを優先していないか、最初から結論を決めており、代行決定を後付けの根拠としようとしていないかといった点に注意しなければならない。

 (3) 本人にとっての最善の利益を検討する際の協議事項28

 ① 本人の立場に立って考えられるメリット、デメリット(本人の主観的利益・ 損失を含む)を可能な限り挙げた上で、比較検討する。表(バランスシート) に記録することが望ましい。

2相反する選択肢の両立可能性があるかどうかを検討する。 二者択一の選択が求められる場合においても、一見相反する選択肢を両立 させることができないか考える。

  •  本人にとっての最善の利益を実現するに当たり、本人の自由の制約が可能 な限り最小化できるような選択肢はどれかを検討する。 例えば、住まいの場を選択する場合、選択可能な中から、本人にとって自由の制限がより少ない方を選択する。また、本人の生命又は身体の安全を守るために、本人の最善の利益の観点からやむを得ず行動の自由を制限しなくてはならない場合は、行動の自由を制限するより他に選択肢がないか、制限せざるを得ない場合でも、その程度がより少なくて済むような方法が他にないか慎重に検討し、自由の制限を最小化する。その場合、本人が理解できるように説明し、本人の納得と同意が得られるように、最大限の努力をすることが求められる。

 4 検討結果に基づく後見人等としての行動原則

後見人等は、最善の利益に関する協議結果を踏まえて、与えられた裁量・権 限の範囲において、代行決定を行う。 最善の利益に関する協議が、後見人等及び関連する支援者らにおいて真摯に行われることによって、当該代行決定が合理的かつ適切な情報に基づいて行われたことが推定される。将来的には、後見人等による権限行使・不行使が適切 であったことを担保するための根拠資料となることも想定される。重要なことは、第1原則である。特定の意思決定についてこれ以上先延ばしができない場面において、後見人等による代行決定がされたとしても、将来にわたり本人が当該意思決定をすることができないと評価されることはないし、ましてやそれ以外の意思決定を行う能力がないと評価されることもない。

なぜならば、意思決定能力アセスメントや代行決定は、意思決定をする・しないといった判断が迫られている限定的な場面の中で行われる本人の意思決定プロセスに対するその場限りの介入であり、異なる時点・場面においては、同じ意思 決定に関する課題に対しても、本人(及び支援者らの意思決定支援力の総体と して)の意思決定能力は変化し得るからである。

 例えば、生命・身体の具体的危機に直面しているセルフ・ネグレクト状態に 置かれた本人に対する介入の場面では、本人の意思決定支援を十分に行う余裕 がない中で検討が進み、限られた時間の中での支援では本人自身の意思決定・ 意思確認がどうしても困難、又は意思が推定できても「見過ごすことのできな い重大な影響」が既に発生している場面として評価され、自宅から施設へ本人 の住まいの変更に関する諸契約について、後見人等が代行決定せざるを得ない 場面も考えられる。

しかし、一旦本人が安全な環境に置かれ、意思決定支援を行う時間的余裕が確保でき、再び意思決定支援のプロセスを丁寧に経ることが可能となった段階においては、本人の住まいや生活に関わる意思決定を本人自身が行うことのできる可能性も十分考えられる。本人の自由の制約を可能な限り最小化する観点からも、一旦代行決定がなされたからといって、本人が今後意思決定することのできる機会を取り上げるのではなく、再編成された意思決定支援チームによって、本人による意思決定の機会が最大限提供され、本人自身の意向・身上・価値観を踏まえた今後の住まいや生活を可能な限り保障していくことが求められる。

 したがって、再び何らかの意思決定が課題となる場面が生じた場合には、改めて意思決定支援のプロセスに立ち戻って支援が展開される必要がある。

5 アセスメントシートへの記録

後見人等は、本人にとっての最善の利益に基づく代行決定の検討プロセスにつ いて、アセスメントシート様式5に記録する。

以上

1 典型的には、本人が在宅での地域生活を希望しているのに十分な検討をせずに施設等の利用を支援者らが選択し、本人の保護という名目の下、本人に説得をしてしまう例などが挙げられる。

2 後述のとおり、本ガイドラインはチームによる意思決定支援を前提とするものである。そのため、チーム形成やチームの連携に向けて中核機関がサポートを行う際や、中核機関、地域包括支援センター、基幹相談支援センター等と後見人等を含めたチームが連携する際の参考として活用されることも期待される。

3 後見監督人は直接、意思決定支援に関与する者ではないが、意思決定支援を踏まえた後見事務を監督する立場 にあることからすれば、後見監督人においても意思決定支援について理解をしておくことが望ましい。

 4 既に実践において活用されている他のアセスメントシート等を使用することでも問題ない。

5 意思実現支援としては、例えば、生活の本拠について検討する場面において、本ガイドラインのプロセスに沿って意思形成支援・意思表明支援が行われた結果、自宅をリフォームした上で在宅での生活を継続する旨の本人 意思が示されたのであれば、後見人等としては、身上保護活動の一環として、自宅のリフォームのための契約締 結など必要な後見事務を適切に行うことが求められる。

 6 意思決定能力は法律で定められた概念ではなく、意思能力や行為能力とは異なるものである。本ガイドラインでは、意思決定能力は、あるかないかという二者択一的なものではなく、支援の有無や程度によって変動するも のであるという考え方を採用している。

7 成年後見人等の権限の広さや本人の生活に与える影響の大きさに鑑み、意思決定支援のプロセスを踏まえない安易な推定に基づく法定代理権の行使・不行使を戒めるという趣旨から、本ガイドラインでは、意思推定を代行 決定と捉え、濫用を防止するための慎重な検討を求めるという立場を採用している。

8 一般的には日常的と評価される行為でも、本人にとっては日常的とは言えない場合もあり得る。そのような場 面では、本人にとっての重要性に鑑みて、後見人等がその意思決定支援に関与することが求められていると考え られることから(例えば、これまで携帯電話やスマートフォンを所有していなかった本人が初めてこれらを購入 することになったため、機種や料金プランを選択する場合など)、本ガイドラインでは、「本人にとっての影響の 大小」を基準としている。

9 「成人した本人の人生周期(ライフサイクル、ライフステージ)」においては本人にとっていくつかの重大な意 思決定を求められる場面が考えられる(就職、転居、転職、サービスの契約と利用、入院、施設入所、相続 等)。これらの課題は、本人からの相談や家族や支援者らからの情報提供だけではなく、後見人等が本人の生活 状況を確認することからも発見される。

10 後見人等は医療行為に関する同意権は有していないが、医療の局面における後見人等の関与の在り方について は、厚生労働省 2018 年度厚生労働行政推進調査事業費補助地域医療基盤開発推進研究事業「身寄りがない人の 入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(2019年5月)を参照されたい。

11 従前、本人が自ら意思決定をしたという経験の少ない人については、日常生活において何を食べるか、今日何 を着るかなどの身近な決定を支援者らの支援によって繰り返すことにより、自身の意思を尊重される体験を積む ことができ、自信を持って意思を表明することができるようになる。

 12 本人がエンパワメントを受けて変化した結果、支援者らがそのような本人の姿に感化され、支援活動に一層前向きになることもある。

13 他方で、それぞれの立場や考え方が異なることを認識し、多角的な視点から検討することによって本人の多面 的な生活を支援することができるという認識を持つことが重要である。

 14 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(2 017年3月)、厚生労働省医政局地域医療計画課「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関す るガイドライン」(2018年3月)、厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室「認知症の人の日常生活・社会 生活における意思決定支援ガイドライン」(2018年6月)、厚生労働省 2018 年度厚生労働行政推進調査事業 費補助地域医療基盤開発推進研究事業「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関 するガイドライン」(2019年5月)。

15 本人との信頼関係が構築されていない段階では、本人から直接得られる情報は限定的になりがちであるため、 親族等の周囲の支援者らからの情報収集に努めることが有益な場合も多い。

16 毎回、メンバー全員が形式的に集まる必要はない。

17 支援環境の調整段階で他の支援者らが中心となって検討を行うことも少なくなく、後見人等が必ずしも検討の 場に常に同席を求められるとは限らない。

18 例えば、本人の状況によっては、支援メンバーの些細な言葉や態度に敏感に反応し、影響されることもあり得 るため、何気ない感想やコメント(例えば「○○だと大変そうだね」という言葉で当該選択肢は避けるべきと考 えてしまう)にも気を遣う必要があるかもしれない。また、質問の仕方によっては、本人へのプレッシャーにな ることもあるかもしれない(例えば「どうして〇〇しないの?」「〇〇したいと思わない?」など)。さらに、本 人の意思疎通手段が限られている場合には、本人にとって最も意思が表出しやすいコミュニケーション手段が何 かを考え、適切な通訳者の確保、タブレット端末、絵カード、写真等の準備等が必要になるかもしれない。

19 この確認に当たっては、例えば、本人が「はい」等と了解するような言葉を述べていても、本人の表情や動作等を観察しながら本人の意思を確認することが望ましい場合もある。

20 支援メンバーを通じて本人の思いを聞き出し、後見人等に伝えてもらうこともあり得る。

21 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(2 017年3月)、厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決 定支援ガイドライン」(2018年6月)等参照。

22 本人の反応や意見次第では、支援チームのメンバーや開催方法等を再検討することも考えられる。

23 「開かれた質問」とは、「はい」「いいえ」では答えられない自由な答えを求める質問のこと。「どうして?」「どんな点が?」など。

24 例えば、過剰な誘導や、周りの思惑に基づき本人を説得するようなアプローチを繰り返し、本人が「同意」せざるを得ないような状況に追い込んだ上で、それが本人の意思決定と取り扱われているような場面などが考えられる。

25 意思決定能力に関する基本的な考え方については、厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室「認知症の人の 日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」(2018年6月)4 頁脚注 ix を参照

26 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(2 017年3月)参照。

27 この場合、本人の意思とは異なる結果を招くことになるため、それによって本人に生じる負担等に対し、継続 的な支援が必要となり得ることに留意する必要がある。

28 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」(2 017年3月)参照。

モデル契約書ver1.0 秘密保持契約書(新素材)の前文に、日本語NLPライブラリGiNZAを当てはめてみました。

この記事について

「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」の改訂に向けた、GitHub(ギットハブ)を用いた意見募集
(https://github.com/meti-oi-startups/METI-JPO-Model-Contract)
のモデル契約書ver1.0 秘密保持契約書(新素材)の前文に、日本語NLPライブラリGiNZAにより、形態素解析を行ってみました。

前提
windows10
pyhton3.8.10
Visual Studio Code

Ginzaについて

https://www.recruit.co.jp/newsroom/pdf/20190402_01.pdf

2019年04月02日株式会社リクルート Ginzaの概要

「GiNZA」は、ワンステップでの導入、高速・高精度な解析処理、単語依存構造解析レベルの国際化対応などの特長を備えた日本語自然言語処理オープンソースライブラリです。「GiNZA」は、最先端の機械学習技術を取り入れた自然言語処理ライブラリ「spaCy」※5)をフレームワークとして利用しており、また、オープンソース形態素解析器「SudachiPy」(※6)を内部に組み込み、トークン化処理に利用しています。「GiNZA日本語UDモデル」にはMegagon Labsと国立国語研究所の共同研究成果が組み込まれています。「GiNZA」の主な特長は以下のとおりです。

▼「GiNZA」の主な特長

①高度な自然言語処理をワンステップで導入完了

これまで、高度な自然言語処理を行うためには複雑な導入作業が必要でしたが、「GiNZA」はワンステップでモジュールとモデルファイルの導入を完了できます。これにより、エンジニアは即座に解析が可能です。

②高速・高精度な解析処理と依存構造解析レベルの国際化に対応

産業用途で自然言語処理技術を活用するには、一定の処理速度を保ちながら解析精度を高めるためにチューニングを行うことが一般的です。「GiNZA」は、「spaCy」が提供する高速・高精度な依存構造解析器を使用して、産業用途に耐える性能を備えた高度な自然言語処理機能をライブラリとして提供します。同時に、「spaCy」の国際化機能により、複数の欧米言語と日本語の言語リソースを切り替えて使用することが可能となり、エンジニアは複数言語の解析を単一のライブラリで行うことができます。

③国立国語研究所との共同研究成果の学習モデルを提供

自然言語処理系の学会を中心に、人類が用いる多様な言語を、一貫した構文構造・品詞体系で解析可能にする「UniversalDependencies」の取組みが、2014年から全世界で始まっています。日本においても当初からUDの日本語への適用に関する研究と日本語版UDコーパス(データ)構築が同時に進められてきました。Megagon Labsは、国立国語研究所と共同で、日本

語版UDに基づいた高精度な依存構造解析技術の研究を行い、その成果である学習済みモデルを「GiNZA日本語UDモデル」に組み込みました。

「GiNZA日本語UDモデル」は、国立国語研究所が長年の研究を通じて蓄積してきた大規模かつ高品質なテキストコーパスに加えて、日本語Wikipediaテキストも同時に用いて機械学習に適用することで、幅広い分野に適応可能なモデルを構築しています。

実行
Ginzaの環境構築については、下の記事を参考にしました。
日本語NLPライブラリGiNZAのすゝめ
https://qiita.com/poyo46/items/7a4965455a8a2b2d2971

コード

対象テキストを変えただけです。
日本語NLPライブラリGiNZAのすゝめ
ソースコードをGitHubで見る

https://qiita.com/yusa87/items/e25e2dcfb1b01fde13a4

import sys
from typing import List
from pprint import pprint
import spacy
import ginza

nlp = spacy.load('ja_ginza')


def tokenize(text: str) -> List[List[str]]:
    """
    日本語文を形態素解析する。
    Parameters
    ----------
    text : str
        解析対象の日本語テキスト。
    Returns
    -------
    List[List[str]]
        形態素解析結果。
    Notes
    -----
    * Token 属性の詳細については次のリンク先をご覧ください。
      https://spacy.io/api/token#attributes
    * Token.lemma_ の値は SudachiPy の Morpheme.dictionary_form() です。
    * Token.ent_type_ の詳細については次のリンク先をご覧ください。
      http://liat-aip.sakura.ne.jp/ene/ene8/definition_jp/html/enedetail.html
    """
    doc = nlp(text)

    attrs_list = []
    for token in doc:
        token_attrs = [
            token.i,  # トークン番号
            token.text,  # テキスト
            token.lemma_,  # 基本形
            ginza.reading_form(token),  # 読みカナ
            token.pos_,  # 品詞
            token.tag_,  # 品詞詳細
            ginza.inflection(token),  # 活用情報
            token.ent_type_  # 固有表現
        ]
        attrs_list.append([str(a) for a in token_attrs])

    return attrs_list


EXAMPLE_TEXT = 'X社(以下「甲」という。)とY社(以下「乙」という。)とは、甲が開発した放熱特性を有する新規素材αを自動車用ヘッドライトカバーに用いた新製品の開発を行うか否かを甲乙共同で検討するに当たり(以下「本目的」という。)、甲または乙が相手方に開示等する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。'
EXAMPLE_SCRIPT = f'python examples/token_information.py {EXAMPLE_TEXT}'

ATTRS = [
    'i', 'text', 'lemma_', 'reading_form', 'pos_', 'tag_',
    'inflection', 'ent_type_'
]

if __name__ == '__main__':
    if len(sys.argv) > 1:
        input_text = sys.argv[1]
        pprint(tokenize(input_text))
    else:
        print('Please run as follows: \n$ ' + EXAMPLE_SCRIPT)

実行(Visual Studio Codeのターミナル内)

python examples/token_information.py X社(以下「甲」という。)とY社(以下「乙」という。)とは、甲が開発した放熱特性を有する新規素材αを自動車用ヘッドライトカバーに用いた新製品の開発を行うか否かを甲乙共同で検討するに当たり(以下「本目的」という。)、甲または乙が相手方に開示等する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。

結果

「デジタル時代の法律整備と活用」が読めない。

 Kenji Hiramoto「210508 legaltech」を読んで考えてみたいと思います。としていましたが、使用されている用語について、私が分からないことが多く、自分に対して説明する形になります。それでも誤って理解していることがあるかもしれません。

社会全体のアーキテクチャ?・・・世界各国のあらゆる構造。

参考 IPA デジタルアーキテクチャ・デザインセンター

https://www.ipa.go.jp/about/press/20200515.html

データと技術の相互運用性?

データの相互運用性・・・表現が異なっていても、誰もがその意味を共通理解できる状態。

技術の相互運用性・・・情報流通・活用のためのシステムに関する標準化。

データと技術の相互運用性・・・データと、データを活用するシステムの標準化。

データは活用の目的によってシステムの標準化を促し、システムはデータがばらつき始めた場合にデータの標準化を促す。結果として、データ活用の目的が変更となる場合がある。

参考

独立行政法人情報処理推進機構「データの相互運用性向上のためのガイド

データ活用社会の実現へ向けた取組みの手順と実例」2021 年 3 月 25日 第二版

(一社)情報科学技術協会 ISO/TC46/SC4 技術的相互運用性

レイヤ、レイヤー (Layer)?・・・層、階層、重ね合わせ。

法律と組織のレイヤが遅れている?・・・法令の整備にかかる工数・各省庁(横)の調整、省庁と地方公共団体(縦)の調整が、データと技術の相互運用性の変化に追いつけていない。

参考

法律の階層構造について

吉田豊、中川博之、田原康之、大須賀明彦「テンプレートを用いた法定要求抽出・モデリングの実現に向けて」情報処理学会研究報告2013/3/12

引用 P1

「我が国における法令の構造は、憲法を頂点とし、法律、政令、省令という段階でその形式的効力の上下関係が定められている。法律は国会の議決に基づいて、政令は閣議決定に基づいて、省令は各府庁の長の決済に基づいて定められる。」

変化に追随できる考え方への改革?・・・立法から施行までの過程が、デジタル社会・データと技術の相互運用性の変化に追随出来る考え方に変わる必要がある。

法律ドラフティングツール?・・・法律案の原案の作成を行う、または支援するプログラムやソフト。

参考 内閣府法制局 法律案の原案作成

https://www.clb.go.jp/recent-laws/process/

法律のモデリング・・・法令を組み立てること。

法律オントロジー・・・法令の知識と用語を明確化・体系化したもの。

参考

樽松理樹、山口高平、Keywords

「法律知識の体系的定義としての法律オントロジ一」人工知能学会誌 19巻 2号 (2004年 3月)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/19/2/19_144/_pdf

Legal Interoperability?・・・法令、条例、ガイドライン、指針等に沿って運営されている組織が連携出来るようにすること。

参考

National Interoperability Framework Observatory

https://joinup.ec.europa.eu/collection/nifo-national-interoperability-framework-observatory/glossary/term/legal-interoperability

アジャイル・ガバナンス?・・・様々な社会システムにおいて、「ゴール設定」「システムデザイン」「運用」「説明」「評価」「改善」といったサイクルを、マルチステークホルダーで継続的かつ高速に回転させていくこと。

参考

経済産業省Society5.0における新たなガバナンスモデル検討会「Governance  Innovation Ver.2―アジャイル・ガバナンスのデザインと実装に向けて―」2021年2月

https://www.meti.go.jp/press/2020/02/20210219003/20210219003-1.pdf

Better Rules?・・・法律の場合、立法事実の調査確認・立法目的の作成、法律案原案の作成、法律案の議決・公布・施行、を調整することにより、立法目的と実際の結果を近づける。

参考

DIGITAL.DOVT.NZ 「What is Better Rules?」

https://www.digital.govt.nz/blog/what-is-better-rules/

インパクト分析?・・・もしデータ・コードを変更する場合、現在のデータ、コードを探し回り、変化・停止・異常が起きる可能性を予想する。

ELI?・・・欧州立法ID。ヨーロッパ法協会。国境を越えて再利用できるように、標準化されたフォーマットで、オンラインの法律を利活用できるようにするシステム。

参考

EUR-Lex「About ELI」

https://eur-lex.europa.eu/eli-register/about.html

ECLI?・・・?

Ref2Link?・・・欧州連合が提供している、法的(判例法を含む)テキストデータ間の参照の作成、知識の抽出のためのソフト。

参考

European Commission website「Ref2Link」

https://ec.europa.eu/isa2/solutions/ref2link_en

e-Justice?・・・欧州連合の法分野全般(法律知識を手に入れる、法的手続きをの方法を探す、手続費用を調べる、証拠を取得するなど。)について、ワンストップでのサービス提供を目指すソフト。

「政策立案者と利用者の意図のギャップの回避→法律策定時に、関係者が緊密に連携することで、意図のギャップを回避」?・・・有識者会議、ワーキンググループなどはそれには当たらないのかなと思いました。消費者庁など。

私は、下の用語集に凄さを感じました。用語の正確性が増すと、意図のギャップが防げる面もあるのかなと思います。

https://e-justice.europa.eu/content_glossaries_and_terminology-119-en.do

コンセプトモデル?・・・概念を分割して、間に線を引いて、概念がどのように関連しているかを示す。チームが取り組むべき範囲を定義し、理解の共有モデルの開発を可能にするため。

フローモデル?・・・法令の構成要素を見いだし、影響を受け得る人と法律間の情報の流れを記述してみる。

意思決定モデル?・・・情報収集、代替案の作製、状況判断、意思決定と実行、代替案の選択、フィードバックが繰り返される。選挙における電子投票を導入する場合、スマートフォンやマイナンバーの普及率、紙投票を認める場合の方法、普及予測、普及が充分でない場合、新たな施策のための情報収集、のような繰り返しを想像します。実体法より手続法が多く登場してくるように思います。

休日法?・・・ニュージーランド政府に対して、2022年初頭までに立法を要求する休日法改正法案の設計レポート。内容は、仕事を休む日について、家庭内暴力などの取扱い、賃金計算の方法、休暇手当てに関する用語の定義などの改善。

割戻法?・・・改正休日法案における、賃金の計算方法。年や日ではなく、週の平均を基に割り戻す。

参考New Zealand’s Ministry of Business, Innovation and Employment.「Holidays Act Review」

https://www.mbie.govt.nz/business-and-employment/employment-and-skills/employment-legislation-reviews/holidays-act-review/

法律から一気にコードにするのではなく、中間に疑似コードを置い て、読む人に理解しやすくしている?・・・

from crawler.spiders import DietTableSpiderTemplate

class MaffSpider(DietTableSpiderTemplate):

    name = ‘maff’  # 農林水産省

    domain = ‘maff.go.jp’

    bill_category = ‘KAKUHOU’

    table_idx = 0

    bill_col = 1

    url_col = 2

    @staticmethod

    def build_start_url(diet_number):

        return f’https://www.maff.go.jp/j/law/bill/{diet_number}/index.html’

というような良く分からない文字列がある場合、間に、

1,もし

2,農林水産省

3.ホームページ

4.新着情報

5.発表された場合

6.指針に

7.反映

みたいに書いておくと(用語や記載方法は統一が必要。)、良く分からない文字列に変換されるようになる。

ICT Impact Assessment Guideline?・・・政策にデジタルを活用するためのガイドライン。環境、経済などへの影響を計り取捨選択することが目的。

参考

ICT Impact Assessment Guideline

https://ec.europa.eu/isa2/sites/default/files/ict_impact_assessment_guidelines.pdf

ICT Impact Assessment and IA process?・・・

  • 目的と必要なデータの範囲を定義
  • ガイドラインのコンテキストで実行されたデータ収集活動
  • 概要レポート作成(ターゲットを明確に、オープンに収集されたデータを基に協議
  • 方針および情報の準備

(5)フィードバックメカニズムを介して受信

ICT Impact Assessment Guideline(P8~P10)

https://ec.europa.eu/isa2/sites/default/files/ict_impact_assessment_guidelines.pdf

デジタル原則?・・・デンマーク政府がデジタル対応の立法を行う際の7つの原則。シンプルで明確なルール、デジタル通信、自動処理の可能性、官公庁間の一貫性(統一された概念)とデータの再利用、安全で安全なデータ処理、公共インフラの利用、詐欺やエラーの防止。

参考

Agency for Digitisation「Public implementation impacts」

https://en.digst.dk/policy-and-strategy/digital-ready-legislation/guidances-and-tools/

デジタル時代に対応するチーム編成?・・・立法過程編成チーム、システム全体の方向性、仕組みの策定、運用・保守チーム、利用者にとっての使いやすさを考えて実装するチーム、通信とコンピュータ、データに関する課題を解決するチーム、他のチームが生み出す成果物の方向性を決めるチーム、利用者からの問合せなどに対応するチーム。

インターオペラビリティ?・・・異なる組織やシステム間で業務をスムーズに行うための情報交換の仕組み。

参考

平本健二「世界で進む行政のデジタル・トランスフォーメーション。今、日本がすべきこととは?」

https://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/article03.html

法律における表記と意味の揺らぎ(日本)  印に関する法律は、印章(32)、印鑑(133)、印影(34)、押印(590)、押捺(14) (捺印(0))が混在し、定義が曖昧なものがほとんどである。 24 例「正本に添える図書にあっては、当該図書の設計者の記名及び押印があるものに限る。 実印? 定義がない。?・・・コンピュータは全てに定義がないと困る。法律の中で定義するのではなく、他の用語表記基準を作成するのだと思います。私は、実印?と箇所は、政省令などで印鑑証明書の添付が義務なら実印、という考え方をするのですが、法律を読んで分かるようにする、という方向に向かっているのだと思います。

その他の用語の問題同じ用語で違う意味の場合もある世帯の定義が法律毎に違う従業員数等の基準日が法律毎に違う同じ対象に違う分類をすることがある?・・・これは確かにあります。まず管轄官庁や根拠法令を探さないといけない、という手間を省くのと、コンピュータが困る、という事だと思います。

ELIの法律策定への展開?・・・策定までの流れが分かるように、時系列順に図解されている。

参考

EUR-Lex「Procedure 2021/0125/NLE」

https://eur-lex.europa.eu/procedure/EN/2021_125?qid=1622014458837&rid=3

schema.org?・・・検索エンジンから情報をより詳しく伝えるための表記方法。利用者にとって、探したいことが明確でない場合に助かることがある。

参考

schema.org

https://schema.org/docs/about.html

ELI  Data Platform?・・・利用者が「土地を買う」と検索をかけた場合、ヨーロッパ法協会で用語識別、データボックスにあるデータと似ているものがあるか探す、各国のデータセットと照らし合わせる、ヨーロッパ法協会の集約されたデータセットとも照らし合わせる、利用者に表示される、ヨーロッパ法協会のデータプラットフォームに反映・蓄積される、という順序を辿る。

参考

EUROPEAN COMMISSION

Brussels, 19.2.2020  COM(2020) 66 final

COMMUNICATION FROM THE COMMISSION TO THE EUROPEAN PARLIAMENT, THE COUNCIL, THE EUROPEAN ECONOMIC AND SOCIAL COMMITTEE AND THE COMMITTEE OF THE REGIONS

「A European strategy for data」

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A52020DC0066&qid=1622072666629

ECLI eXtension Language?・・・ヨーロッパ法協会のサーバーからコードで情報を利用者の検索エンジンに送り、利用者の検索エンジン側で利用者が理解できる言語に変換する。

XMLスキーマはできたが、関連文書が整備がされていないので、活用できていない・・・木のような情報と意味を関連付ける構造は出来たけれど、関連文書(官報、新旧対照表、標準契約書など?)と相互運用出来る状態ではない。

参考 

国立国会図書館「メタデータを理解する」

https://www.ndl.go.jp/jp/dlib/standards/translation/understandingmetadata.html

e-Gov「申請書/申請データ構造について」

https://developer.e-gov.go.jp/sites/default/files/filebrowser/e-gov/doc/specification/shinsei-api/shinseisyodata.pdf

「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書ver1.0」の改訂に向けた、GitHub(ギットハブ)を用いた意見募集

https://github.com/meti-oi-startups/METI-JPO-Model-Contract

e-Gov 法令 API 仕様書(Version 1)1.3 版2020 年 11 月 24 日

https://elaws.e-gov.go.jp/file/houreiapi_shiyosyo.pdf

eLawsの法令IDと条番号・法令IDとArticle番号、Paragraph番号でELIのような表現が可能 例:415AC0000000057-11-1 34 マニュアルは、APIのパラメータに漢数字を使うように 記述されており、わかりにくい。 実際には半角数字でも検索できるようである。?・・・e-Gov 法令 API 仕様書(Version 1)1.3 版2020 年 11 月 24 日のP4にある、

https://elaws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=415AC0000000057;article=第十一条

をGoogleクロームで検索すると、

が出てきました。

オーストリアの電子立法システム

https://www.parlament.gv.at/PERK/GES/ERECHT/

LEOS(法律作成支援システム)?・・・オープンソフトウエアを利用して、ISA2作業プログラムに沿って立法を行う。法令改正の場合、削除や追加は色分けされて表示される。

参考

LEOS – Drafting tool Action 2016.38 of the ISA2 program

https://joinup.ec.europa.eu/sites/default/files/document/2021-01/LEOS%20-%20Getting%20started%20v1.10.pdf

フィンランドでは、データ、ターミノロジ、コードリストの相互運用性・プラットフォームが財務省とデジタル庁により整備されており、そ れを基盤として法律エディタ(XMLベース)が考えられている。?・・・仕様にしたがってテキストを挿入していくと、法令案が完成する。

参考

Tietomallit

https://tietomallit.suomi.fi/

Yhteentoimivuusalusta

https://www.suomidigi.fi/ohjeet-ja-tuki/yhteentoimivuusalusta

Interoperability platform

https://dvv.fi/en/interoperability-platform

Interoperability platform – data creates the greatest value when it is shared

日本の法律ドラフティング支援ツール?・・・総務省、内閣府法制局、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室で進められている。

参考

2021年(令和3年)X月X日最終改定

デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン- サービス・業務改革並びに政府情報システムの整備及び管理について -

 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/cio/dai90/siryou1-2.pdf

法制執務業務支援システム(e-LAWS)の本格運用開始に際しての総務大臣談話

平成28年9月30日

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyokan01_02000052.html

政府CIOポータル「標準ガイドライン群」

https://cio.go.jp/guides

政府CIOポータル「2021年(令和3年)3月30日最終改定デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン- サービス・業務改革並びに政府情報システムの整備及び管理について -」

各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/hyoujun_guideline_20210330.pdf

総務省令和2年度行政事業レビューシート

https://www.soumu.go.jp/main_content/000721468.pdf

内閣法制局「次期法令審査支援システムの構築等一式令和3年1月29日」

https://www.clb.go.jp/news/procurement/general_bid/detail/id=3809

ベース・レジストリの指定について令和3年5月 2 6 日

内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/SpecifyingBaseRegistry.pdf

法律モデリング?・・・一定のルールに従って、過程や結果、フィードバックの流れを可視化する。

参考

Regler for begrebs- og datamodellering

https://arkitektur.digst.dk/metoder/regler-begrebs-og-datamodellering

法律モジュール化の検討(2011年経済産業省)?・・・探せませんでした。

法令と手引書の比較(2011年経済産業省)?・・・探せませんでした。

法律へのモデリングへの試行の結果(2011年経済産業省)?・・・探せませんでした。

法律に対するコンプライアンス?・・・ネットワーク空間にある法令情報が改ざんされたりしないためのサイバーセキュリティ対策をする。

EULynx

https://www.eulynx.eu/index.php/news

Linked Data・・・EUと国内の判例法のデータセットを組み合わせて、ヨーロッパの判例法の相互接続性に関する独自のビューを可能にする直感的なツール。

参考

Smartfiles Network

https://smartfiles.lereto.at/#demo

民事判決情報のデータベース化の意義  仮名化?・・・判決文からデータプラットフォームに入れる前にAとかBにすると思うのですが、計算機で出来るのでしょうか。

公益財団法人日弁連法務研究財団「民事判決情報のオープンデータ化に向けた取りまとめ」令和3年3月25日

https://www.jlf.or.jp/wp-content/uploads/2021/04/pt-houkoku20210325.pdf

日本のリーガルテック・・・法令テキストをコードとして考える。法案起草時からITに関する技術者が入る。匿名化した判例の全てを公開。実務家と研究者の不足は、どのように補うのか私には分かりません。

参考

可視化法学

https://www.lawvis.info/

Gephi(可視化ツール)

https://gephi.org/

lawgue (民間企業)

https://lawgue.com/

参考

経済産業委員会調査室 篠窪容子

「政策分析の基本的手法― E.Bardach の8ステップを基礎として ―」

https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2012pdf/20120702069.pdf

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