家族信託専門コンサルタント、川嵜一夫司法書士のメールマガジンです。
川嵜先生とは、小冊子の件でお世話になっています。
以下全文引用です。
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信託の遺留分のお話し
おはようございます。
家族信託専門コンサルタントで司法書士の川嵜です。
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一般の人はちょっと難しいかも。
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先週のメルマガはお休みさせていただきました。
m(_ _)m
ちょっと最近、忙しすぎて、休みが必要だなと思いましたので。
すいません。
自主休刊でした。
先週は、
火曜に新潟大学で講義。
水、木は神奈川に出張。
金は事務所で仕事。(週に1日だけ)
土曜は宮城県司法書士会で研修会。
こんな感じで、大変なんです。(汗)
ご容赦ください。
新潟大学のテーマは民事信託。学生にとって身近な話題でお話しさせていただきました。
親や祖父母が認知症になったらどうなるか。
宮城県司法書士会さんでは、民事信託を使った事業承継をテーマに研修会をさせていただきました。
上層部の人もこのメルマガを読んでいるとのこと。
恐縮してしまいました。(汗)
どちらも、100名を超える参加者で、熱気ムンムン。
私もパワー全開でお話しさせていただきました。
今日も新潟大学で講義なので、頑張ってきます!
■■ 今回は遺留分のお話し
最近のメルマガは、信託の終了シリーズ
受益者連続の信託の終了のタイミング
信託の清算と結了
帰属権利者
今回は終了シリーズの4回目です。
内容は遺留分。特に受益者連続の。
まだ判決等で確定していませんが、主流な考え方をお伝えしますね。
■■ 家族構成
父、母、長男、二男
の4人家族
お父さんが、自分の資産の多くを長男に信託
委託者:父
受託者:長男
受益者:父 ⇒ 母 ⇒ 長男(帰属権利者)
何ももらえなかった二男は、遺留分の請求をできるかという問題です。
■■ お父さん死亡時
受益権が
父 ⇒ 母
に移ります。
このとき、二男は、お母さんに遺留分の請求ができます。
7月以降は、民法が変わるので、金銭請求になるのだと思います。
■■ お母さん死亡時
受益権が
母 ⇒ 長男
に移ります。
このとき、二男は、長男に遺留分の請求ができません。
え?!
もう一度言いますよ。
このとき、二男は、長男に遺留分の請求ができません。
これ、通説的な考えです。
なぜか?
実は、信託で後継ぎ遺贈型の受益者連続が認められた理由と深く結びついています。
■■ 遺言では後継ぎ遺贈型は無効
このような遺言ね。
*************
私の財産は、妻に相続させる。
妻が私から相続した財産は、妻が亡くなったら、長男に相続させる。
*************
これは、最高裁判決で明確に無効とされています。
しかし、これが信託なら可能になる。
遺言で無効な内容が、信託では有効。
どう理論づけたらいいのか?
立法担当者たちは、頭をひねったと思います。
(と、勝手に想像(汗))
■■ ポイントは、長男は受益権をだれから取得するのか?
後継ぎ遺贈型の【遺言】では、
母の財産を、
母 ⇒ 息子
とする内容。これを「父」が遺言で、書く。
自分の財産でないものを遺言ではかけないですよね。
信託ではどうか?
受益者が
父 ⇒ 母 ⇒ 長男
と動く。
ポイントは受益権の「期限」
●母が取得する受益権
母が取得する受益権は
母が死亡するまでの不確定な「終期」つきの受益権。
これを「父」から取得します。
当然ですね。
ですから遺留分の対象になる。
●息子が取得する受益権
息子が取得する受益権は、
母が死亡してから始まる不確定な「始期」つきの受益権。
これを「父」から取得するんです。
もう一度言います。
母が死亡してから始まる不確定な「始期」つきの受益権を
「父」から取得するんです。
息子は受益権を「父」から取得するんです。
ですから、何ももらえなかった二男は、
「父」が死亡したときに、長男にも遺留分の請求をすることになります。
つまり、二男は
父死亡時
母と長男に遺留分の請求(その割合は不明)
母死亡時
遺留分の請求はできない
もちろん最高裁判決はありませんが、通説的な説です。
■■ 実は、お母さんは遺贈の意思表示をしていない
別な見方です。
遺留分の請求は遺贈や贈与に対してできますよね。意思表示がともなっています。
「お父さん、私に何も渡さない遺言書くなんて、ちょっと不公平。
だから、私にも少しちょうだい」
っていうのが遺留分の請求。
お父さんは、信託という形で意思表示していますよね。
でも、お母さんは、何も意思表示していない。
「お母さん、私に何も渡さない信託で、ちょっと不公平。
だから、私にも少しちょうだい。
って、その信託、お父さんが書いたんだっけ」
というものです。お母さん、意思表示(遺贈や信託)していないんです。
ですから、お母さんが亡くなったときに、遺留分の請求というのもちょっと違和感があります。
■■ 参考書籍
ちなみにこの考え方(終期つき、始期付きの受益権を父から取得)ですが、
信託法改正の立法担当官だった寺本昌広先生の
「逐条解説 新しい信託法」に、詳しく記載されています。
残念ながらこの本は廃版です。
アマゾンで、目玉が飛び出るような価格で中古本が取引されていますが。
でも、新井誠教授や、道垣内弘人教授などの書籍でも、同じような内容で解説されていますよ。
「条解信託法」 道垣内 弘人
「信託法 第4版」 新井 誠
僕もこの2冊は時々目を通しています。
特に道垣内先生の本は、逐条解説ですから、おすすめです。(ちょっと高いけど)
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最後までお読みいただきありがとうございました。
バックナンバーはこちらです。
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家族信託コンサルタント
司法書士 川嵜 一夫 (かわさき かずお)
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「つまり、二男は
父死亡時
母と長男に遺留分の請求(その割合は不明)」
「その割合は不明」、の部分について考えてみたいと思います。
前提
- 仮に父死亡時の受益権は3000万円
考え方
父死亡時に母に移転する受益権は3000万円、長男に移転する受益権は0円
よって弟は3000万円の8分の1(4分の1法定相続分×2分の1遺留分割合)の金銭債権を母に請求。
となります。