権利能力なき社団

委託者(3名)と受託者が一般社団法人(社員3名)、最初の受益者(3名、次の受益者は、それぞれの受益者の相続人全員)で同じ人の場合、信託契約は成立するのか。

信託財産がお金だけだと、有限責任事業組合や権利能力なき社団が受託者になるかもしれません。預貯金通帳が作成できるので不都合がありません。

何か気になります。『信託フォーラム7「権利能力なき社団を当事者とする信託」』について、委任契約で同じことはできないのでしょうか。

詐害信託については除きます。

・自己信託に当たるのか。

・受託者と受益者は同じといえるか。

・実際に信託が機能していたらそれで良いか。

信託法8条

(受託者の利益享受の禁止)

第八条 受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができない。

・利益相反・自己取引にはならないのか?

(利益相反行為の制限)

第三十一条   受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。

四   信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

2   前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第二号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一   信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。

二   受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

三   相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。

四   受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。

3項略

4  第一項及び第二項の規定に違反して第一項第一号又は第二号に掲げる行為がされた場合には、これらの行為は、無効とする。

5  前項の行為は、受益者の追認により、当該行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。

6  第四項に規定する場合において、受託者が第三者との間において第一項第一号又は第二号の財産について処分その他の行為をしたときは、当該第三者が同項及び第二項の規定に違反して第一項第一号又は第二号に掲げる行為がされたことを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該処分その他の行為を取り消すことができる。この場合においては、第二十七条第三項及び第四項の規定を準用する。

7  第一項及び第二項の規定に違反して第一項第三号又は第四号に掲げる行為がされた場合には、当該第三者がこれを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。この場合においては、第二十七条第三項及び第四項の規定を準用する。

受益証券を発行しないって

受益証券は、受益権がここにありますと表示してくれる券。受益権は目に見えないから、見えるようにしたものです。

信託行為に定めると、受益証券を発行することができます。逆に契約書などに書いておかないと発行することはできません。

家族信託・民事信託における契約書の中に、あえて受益証券を発行しない、と記載する必要は原則としてありません。

参考

信託法185条

民事信託の受託者が亡くなった場合

信託の受託者が亡くなった場合、金融機関が受託者自身の預貯金と同じだと判断して、受託者の相続手続きが必要になった場合(口座名義は問いません)

どうしたら良いんでしょう。後任の受託者に引き継げば手続きは終わりだと思っていたら、通常の相続手続きが必要で、受託者の相続人全員の印鑑が必要だと言われたら。

 ・口座を作る時に、前もって確認しておくこと。

 ・相続人全員の印鑑をもらうこと。

 ・大きな病気をしたときには早めに受託者の交代をすること。

ぐらいしか思いつきません。

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参考

吉原毅「家族信託の発展と金融機関の対応について」

損益通算が駄目だという点は、注意すべき点なのか。

アパートなど、大規模修繕をしてたくさんの費用がかかった場合、その年の所得と合わせて所得を減らすことができない(税金が安くならない)から注意。

よく分からないことで、説明はする必要があると思うんですが、注意しないといけない点なのかと考えてしまいます。

修繕のための積立をしていると思うので、所得の分は払うか、所得税の分まで積み立てるかしておけば良いのかなと。軽く考え過ぎでしょうか。

損益通算が出来ない理由は、受益者が事業に関与する度合いが低いからだとされています。

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租税特別措置法41条の4の2

(特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例)

第四十一条の四の二   特定組合員(組合契約を締結している組合員(これに類する者で政令で定めるものを含む。以下この項において同じ。)のうち、組合事業に係る重要な財産の処分若しくは譲受け又は組合事業に係る多額の借財に関する業務の執行の決定に関与し、かつ、当該業務のうち契約を締結するための交渉その他の重要な部分を自ら執行する組合員以外のものをいう。)又は特定受益者(信託の所得税法第十三条第一項 に規定する受益者(同条第二項 の規定により同条第一項 に規定する受益者とみなされる者を含む。)をいう。)に該当する個人が、平成十八年以後の各年において、組合事業又は信託から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上当該組合事業又は信託による不動産所得の損失の金額として政令で定める金額があるときは、当該損失の金額に相当する金額は、同法第二十六条第二項 及び第六十九条第一項 の規定その他の所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかつたものとみなす。

2   この条において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一   組合契約 民法第六百六十七条第一項 に規定する組合契約及び投資事業有限責任組合契約に関する法律第三条第一項 に規定する投資事業有限責任組合契約並びに外国におけるこれらに類する契約(政令で定めるものを含む。)をいう。

二   組合事業 各組合契約に基づいて営まれる事業をいう。

3   前項に定めるもののほか、第一項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

議決権行使に関する指図権

信託契約書の中に、

(議決権行使に関する指図権)

第○条 

1 本株式の議決権行使にあたり、委託者兼受益者は、指図権者として受託者に指図することができる。

2 委託者兼受益者の指図がない場合、受託者は自らの裁量に従って議決権を行使することができる。

まとめると、

・委託者兼受益者は、実質的に議決権を行使することができる。

・委託者兼受益者が議決権を行使しない場合は、原則に戻り、受託者が議決権を行使する。

他に、決めておいた方が良いことはあるのでしょうか。

指図権者は、受託者に指図しない場合、株主総会の何日前までに指図しないことを伝えるか。例えば、7日前までに、など。

受託者は、指図権が行使されるのか、されないのかいつまで待てば良いか分からなくて不安定な状況に置かれます。

指図がない場合は、今後も受託者が議決権を行使していいのか、それとも株主総会ごとに指図があるかどうか待つのか。契約書とは別に覚え書や別紙などで最低限定めておく必要があると考えます。

また、受託者が指図に従わなくても良い場合を定めることも考えられます。

・議決権には独立した金銭的価値がなく、

それのみを独立した信託財産とすることはできないし、

受益権の内容とすることもできない、

という考えは取れるのでしょうか。

 信託行為の設定時であれば委託者と受託者、信託開始後であれば、委託者と受託者、受益者との間で金銭的価値を認めることは、契約自由の原則からして可能です。国税庁は原則として金銭的価値を認めていません。

 議決権のみを独立した信託財産とすることはできません。理由としては、信託当事者以外の人に対しての換金可能性の低さ、議決権のみの移転・処分が困難なことが挙げられます。

 議決権のみを受益権の内容とすることはできない、というのは独立した信託財産とすることができない以上、できないと考えられます。上の文章が議決権は受益権の内容とすることはできない、という意味であれば、それは信託行為によって株主が持っている権利の一部として、実質的に受益権の内容とすることはできる、といえます。

・指図権はそもそも委託者が持っているのか、受益者が持っているのか、信託行為で誰に与えるか、委託者と受託者が決めることができるのか。

採れる考え方

 指図権者は契約関係にはないが、受益者に対する信認義務を負っていることを前提とします。

→本来委託者にある権限が信託行為によって、指図権者に移転する。

→信託行為の中で、指図権者と委託者または受託者との委任契約を締結する。

・合併や増資、解散する場合の株主総会決議は、指図権を行使するのに基準があるのでしょうか。

 考えられる備え

  (1)協議

  (2)協議が整わない場合は、信託契約の終了

・信託目的が、指図権を行使する指針の一つとなるか。 

  考えられる備え

(1)信託目的に優先順位をつける

・取引先や従業員に対する説明はどういう風に行うのが良いのでしょうか。あるいは実質的に代表者は変わらないと判断して、説明しない方が良いのでしょうか。

・役員構成はどういうタイミングで代える判断するのが良いのでしょうか。

1、信託行為と同じタイミングで受託者を代表取締役にする。取締役の変更も考える。

2、指図権を受益者が持っていて、行使ができる状態の間は、変えない。

参考

・商事信託法研究会報告「指図型信託における指図権者の位置づけ」

・須田力哉「指図を伴う信託事務処理に関する法的考察―不動産信託を例として―」

・山田裕子「事業承継目的の株式信託について」

・会社法311条

・信託を活用した中小企業の事業承継円滑化に関する研究会「中間整理―信託を活用した中小企業の事業承継の円滑化に向けて」

・資産評価企画官情報第1号 資産課税課情報第6号 審理室情報第1号

平成19年3月9日 国税庁課税部資産評価企画官資産課税課審理室「種類株式の評価について(情報)」

・信託法35条

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