7月の相談会と講座のご案内

□ 認知症や急な病気への備え
□ 次世代へ確実に引き継ぎたいものを持っている。
□ 家族・親族がお金や土地の話で仲悪くなるのは嫌。
□ 収益不動産オーナーの経営者としての信託 
□ ファミリー企業の事業の承継
その他:
・共有不動産の管理一本化・予防
・配偶者なき後、障がいを持つ子の親なき後への備え
後援(株)ラジオ沖縄 

日時:令和2年7月31日(金)14時~17時  
場所: 司法書士宮城事務所(西原町)
要予約 電話・HP・メール
問い合わせ先:司法書士宮城事務所(098)945-9268、HP,メール【shi_sunao@salsa.ocn.ne.jp】
料金:1組5000円

7月30日は講座です。

信託契約書に記載されている金銭と、口座に入金した金額が違う場合

 

 

あるメールマガジンの記事です。下線は私です。

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2000万円の金銭信託、3000万円口座に入金したらどうなる?

今回はこのような内容をメインで議論しました。その逆もあり得ますよね。

3000万円の金銭信託で、2000万円しか口座に入れなかったらどうなるか。

つまり、信託の設定より少ない場合と、設定より多い場合ですね。

いずれにしても、書籍にはまず書いていない内容でしょうね。実務をしているからこそ出てくる問題。

少ない場合 (3000万円の金銭信託で、2000万円しか口座に入れなかった)

協会のメンバーからは、そもそも、聞き取りが上手くいっていなかったという厳しい指摘も。

残りの1000万円を管理していいないのだから、受託者の責任が問われますよね。

親から子の信託で、信託契約3000万円、口座に入金2000万円、残りの1000万円を填補する責任が問われます。

誰が問うか?受益者です。?

つまり、受益者である親が、受託者である子に対して「残りの1000万円ちゃんと口座に入金して管理しなさい」って言える(信託法40条1項)

でも、その親が1000万円入れてくれないのだから、しょうがないです。

関与した、専門家としては、信託の変更をすべき場面と言えるでしょう。

でも、協会メンバーからはこんなシーンもあったそうです。

3000万円の信託、1000万円を口座に入れた。

残り2000万円を入れようと思っていたら、コロナ騒動。銀行に行くにいけない状態。その間に、委託者がすっかり認知症で判断能力がなくなったそう。そうすると、残りの2000万円は信託の口座に動かせないですよね。ですから、認知症対策で信託を組む場合は、迅速さが求められるでしょう。

今回のコロナはしょうがないとしても、転んでけがしたとか、病気になって、急遽入院することになったとかも、あり得ます。

何があるかわかりませんから、素早く財産の移動まで行う必要がありますよね。

■ 多い場合 (2000万円の金銭信託で、3000万円入金した)追加信託をしましょう!と言うことですね。(笑)

では、追加信託の書類を作っていなかったらどうなるか?つまり、贈与税の問題です。

これについては、受益者が誰かがポイントになりそうです。委託者兼受益者の自益信託の場合は、自分のお金を余計に信託の口座に入金して、そして自分が受益者。

となると、税務的には、贈与税の問題はなさそうと、協会のメンバーからの意見でした。確かに、自益信託ですから贈与税の問題はなさそうですね。(相続税法9条の2 第1項)

でも、税務的には問題がなくても民事的には問題です。親から子の信託で、他の子からクレームがでるかもしれません。

ですからの後々のトラブルを防ぐためにも、早めに追加信託の手続きをしておくべきでしょうね。

 

いずれにしても、信託の設定金額と、信託の口座への入金金額が、大きく異なる場合、問題が生じる可能性があります。(特に民事上)

ですから、その場合は、信託の変更や追加信託をするなりして、迅速に対処した方が良さそうですね。

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少ない場合 (3000万円の金銭信託で、2000万円しか口座に入れなかった)

私に関しては、今のところ金融機関が事前に契約書をチェックして、信託口通帳作成時に入金確認をするので、金額がずれる、ということはないのですが、今後何かの事情でこのようなことはあり得るかもしれません。

少ない場合も多い場合も、最初に考えるのは分別管理が可能か否か、ではないかなと考えます。

これは信託口通帳は必ずしも作成する必要はない、と記載している専門家の方々がいつも言っていることです。信託契約書で口座が特定されていたら、受託者名義の通帳で良い、というような主張です。

 

分別管理が不可能であれば、その後信託法40条、103条、149条、163条などの順番で考えていくのが筋として良いのかなと感じます。

この点については、税務と民事法に異なる点はないのではないかと考えます。

またコロナも関係がないと考えます。

 

 

 

 

遠藤英嗣先生「民事信託の基礎と実務」講義メモ

6月17日、(一社)民事信託推進センターの実務入門講座が、zoomを利用してオンライン生中継で行われました。運営の皆さまありがとうございます。

ついに物理的な距離がなくなって、個人的には嬉しいことです。

内容メモ

・相続は(換金可能性が高い)財産がないほど苛烈に揉める。

そのようなことは一概にはいえないと思います。もともと財産が少ない人の割合の方が多いと思います。遺産分割調停などに持ち込まれる事件の割合と相関があるのか、調べてみないと断言出来ないと感じました。

・遺言は効力を失った。

相続法改正を踏まえてのことだと思いますが、効力は失ってないし登記を先にすれば良いことだと思います。また法定相続分の登記が先にされたとしても、第三者に対抗することが出来ないだけで、当事者同士で和解、強制執行などの解決方法はあるのではないかと考えます。

・家族信託の3つの成立要件のうちの1つ、受託者と受益者の信認関係が確立されていること。受益者代理人が設置されていること。

遠藤弁護士は、提携している金融機関で家族信託をチェックする立場からこのことを成立要件の1つとしていました。信認関係についての具体的基準は示されません。受益者代理人を選任することが出来る、と信託契約書に入っていて、内容がよっぽど受託者中心でない限り、金融機関のチェックは通るのかなと感じました。個人的には、受益者代理人は必須ではないし、置く場合は慎重になる必要があると考えます。東京に事務所がなくて良かったと感じました。

・誰のものでもない財産

私の考えでは、民法上は受託者の財産です。税法上は受益者の財産です。

・物がないと信託は成立しない

譲渡制限のついていない、法律上制約がない債権はどうなるのかなと感じます。

・信託の目的と信託の設定目的がある

信託の目的は信託法上の目的で、信託の設定目的は信託を設定するにいたった目的のようでした。ここは理解できませんでした。

・信託の変更と信託行為の変更がある

ここも理解出来ませんでした。

・受託者と受益者の合意による信託の終了はだめ

遠藤弁護士は、提携している金融機関で家族信託をチェックする立場からこのことを指摘していました。理由は終了基準が曖昧だから、受益者が認知症になっていた場合は受益者の意思に反することになるから、ということでした。

「その他信託法による終了事由により本信託は終了する。」などを追加することで解決できるのではないかと感じました。

・自筆遺言証書保管制度は使えない

理由は、利用者が書類を揃えることが大変なこと、相続人が適切に処理することは難しい、ということでした。

個人的に問題ないと感じました。

1行で書いていますが、文脈は捉えているつもりです。間違っていたら指摘していただきたいと思います。

唯一残念だったのは、みんながオンラインで同じ時間にみているのに、チャットが運営の方しか見えないようになっていたことです。これでは同じ時間に観る意味があまりありません。講師に質問は出来ないとしても、受講者同士でやり取り出来る環境は必要だと感じました。私は1人でチャット欄に書き込んでいました。

「信託管理人・信託監督人・受益者代理人制度の隙間問題への実務的対応」について

田中和明「信託管理人・信託監督人・受益者代理人制度の隙間問題への実務的対応」[1]について、考えてみたいと思います。

信託管理人、信託監督人、受益者代理人の制度について、制度創設の理由から、信託法の解釈から出来ること、出来ないことが簡潔に分かりやすく解説されていると感じました。

・隙間問題はどこか。

下線は私です。

p9 ―民事信託の実務においては、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託のように、信託期間が長期にわたり、かつ、現存の受益者と将来に受益者となるべき者とが存在するような信託においては、これらすべての受益者となるべき者の公平を勘案しながら、数十年の長期間にわたり、受益者への金銭交付の時期・金額・方法等を定める権限を有する者や受益者指定権・変更権を行使する者が求められている。

 このような場合、信託管理人、信託監督人、受益者代理人、さらには、信託行為の定めにより授権した第三者が、この役割を担うことが想定される。

 しかし、私見はさておき、前述したとおり、学説の通説的見解では、信託管理人、信託監督人のいずれも、この役割を担うことはできないものと解されている。-

・すべての受益者となるべき者の公平を勘案しながら、数十年の長期間にわたり、受益者への金銭交付の時期・金額・方法等を定める権限を有する者や受益者指定権・変更権を行使する者が求められているのか。

それを行うのが受託者の仕事なのかなと感じます。

著者は、これらの権限を持つ者を信託監督人が兼任することを提唱されています。信託監督人に適正な人(法人を含めます。)を充てることが可能であれば、機能すると考えます。想像ではありますが、信託監督人には専門職の士業などが想定されているのではないかと思いました。

一般市民は受託者の仕事でも簡単ではないのに、受益者を指定・変更したり将来の受益者との公平を勘案することは、少し難しく感じます。私が信託監督人なら、現段階では無理です。

私がやるとすれば、任意後見契約の同意権目録に記載して、任意後見監督人に行ってもらいます。信託監督人を就ける必要がある民事信託・家族信託の状況によって使い分けを行えるようになると、幅も広がるのかなと感じます。


[1]  『市民と法123号P3~』2020年(株)民事法研究会

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