―略―
そのうえで、家族信託の契約書を作成していくことになりますが、作成時見落としがちなのが「信託の終わらせ方」です。この記事では「終わらせ方」を基準にして、契約書の作成を見ていきたいと思います。
今回の記事のポイントは下記の通りです。
信託契約書は「最終的に信託財産を、①誰に②どのように帰属させたいか(=終わらせ方)」が重要。
信託契約書を作成する段階で、信託財産をだれに帰属させるかを今判断できない場合は「協議型」がオススメ!ただ、リスクがあることを知っておこう!
信託契約書数を、当事者ごと・財産ごとにするか等いくつにするか要検討
「終わらせ方」を考える際は、事前にいくつかのチェック項目を考慮して設計することが必要。
下記の方に特におススメの記事です
・ご自身で契約書を作成したい
・「ご自身の要望を実現する契約書が作れているか判断できるようになりたい」
目次 [非表示]
「終わらせ方」から考える家族信託契約書4つの型
事例 高齢アパートオーナーの資産管理
認知症対策・財産管理対策を速やかに行いたい方は「協議型」を活用!
資産管理方針、承継先が複数ある場合は「契約複数型」だと効果的!
信託契約書で「終わらせ方」を考える際は・・・
まとめ
「終わらせ方」から考える家族信託契約書4つの型
家族信託は、「終わらせ方」が非常に重要です。
どうしても家族信託の目的である「認知症対策」や「財産管理対策」に意識がいってしまいます。しかし、家族信託で可能になる財産管理権限がいつまで続くのか、どのように終わらせるのが適切かを考えることは、何年後かわからない未来を考えた設計をするわけですから、ご家族間の考え、調整が必要不可欠なのです。
また、その終わらせるタイミングの多くは、委託者兼受益者の死亡時になります。それは、死亡時に信託財産をだれが受け取るのか、という相続の分野にもなってきますね。
そうなると「親が認知症になってしまうと、財産管理ができなくなってしまうから困るからやってみよう」で家族信託に手をつけた人にとっては、信託を行うのが難しく感じるでしょう。
「終わらせ方」=「信託財産の相続の仕方」を考えるために、以下4つの型を参考にしていただきたいと思います。
(1)基本型
(2)遺言代用型
(3)協議型
(4)契約複数型
※これらのパターンは、1つの型のみ使用する場合もありますし、組み合わせて使用する場合もあります。今回の記事では「協議型」「契約複数型」をご紹介していきます。
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認知症対策・財産管理対策を速やかに行いたい方は「協議型」を活用!
「協議型」とは、その名の通り信託終了時に相続人間で話し合って決めるという方法です。
この型の特徴として、今はだれがどの財産を相続するかは決められないが、認知症対策・財産管理対策速やかに行いたい方が活用する傾向があります。認知症対策として活用する成年後見制度の代用として、財産管理機能のみを家族信託で用いることができるのがメリットです。
その場合、委託者兼受益者の法定相続人、特定の複数人などを帰属権利者とします。
―略―
信託終了事由 父郎さんの死亡
帰属権利者 法定相続人(協議で帰属先及び帰属割合を定める )
協議がまとまらない場合のリスクも想定しておこう!
当然、資産承継先を具体的に定めていないので、帰属権利者間の協議がまとまらない可能性は大いにあります。その場合、いつまでも信託を終了し、財産の引き渡し手続き等をすることができず、相続税申告期限に間に合わないなど、相続財産が確定しないリスクがあるので、注意と対策が必要です。
そのため、協議型を用いる場合には、ご家族の関係性が重要です。ご家族の関係が良好であれば、協議型を活用しても問題ないと思いますが、不仲の場合で協議型を活用する場合は、いつまでたって協議がまとまらず信託財産を取得する者を定められない、相続税の納税期限(被相続人が死亡したことを知った日から10か月以内)までに協議がまとまらず、小規模宅地の特例など、相続税上の軽減特例を活用することができない、といった問題が発生する可能性もあります。
そのため、必ず協議をまとめるために、協議に期限を信託契約書上に設ける等の対策を考えておくとよいでしょう。
「(協議で帰属先及び帰属割合を定める )」というやり方を私は使ったことがないです。何故かというと、残余財産の帰属権利者(受益者)は決めておいて、信託の終了事由が発生したときに残余財産(信託行為で定められたり、第三者から求められる債務引き受けなどのマイナスの財産を含みます。)が欲しくなければその権利を放棄すれば良いと考えているからです。放棄した場合、次順位の残余財産の帰属権利者(受益者)が指定されていれば、その人、いなければ信託法182条2項、3項によって処理されるので問題がないのかなと考えています。
帰属割合、というのがどのようなものなのか、私には分かりませんでした。受益権割合というのがどのようなものかについても未だに分かりません。残余財産が全て金銭(債権)であれば計算できると思いますが、それ以外の非公開会社の株式や不動産などがある場合、計算方法で意見が食い違ってしまうと分ける前の段階で止まってしまわないかな、などと考えてしまいます。
協議に期限を設けるというのは、思い付きませんでした。例えば、9か月以内に協議がまとまらない場合は、残余財産は法定相続分で帰属させる、というようなことなのかなと想像します。期限を経過した場合で、残余財産の帰属権利者(受益者)の協力がないとき、この信託行為の定めで相続税の申告が出来るか、不動産登記が出来るかというと出来ないと思います。とすると、信託行為に定める事例は、そんなに多くはないのかなと感じました。
資産管理方針、承継先が複数ある場合は「契約複数型」だと効果的!
信託財産の目的に応じて信託契約を複数にする方法が「契約複数型」です。これは、資産の管理方針、または承継先などを考慮したうえで複数の契約書にわけていきます。
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契約を承継先ごとにつくると、「父郎さんと一郎さん」「父郎さんと花子さん」がそれぞれ話し合って、それぞれの要望がしっかりと反映された信託契約をつくることができます。
このように、「契約複数型」は、それぞれが受託者兼帰属権利者として承継予定の財産を管理できるので、契約内容が複雑にならないのが大きなメリットです。
「信託複数型」をすると、損益通算ができない!
契約が複数になるとそれぞれの信託財産の「損益通算ができない」というデメリットがあります。
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また、Bアパートの損失は通常であれば翌年以降への繰越しが認められますが、信託財産の場合は、損失を翌年へ繰越すこともできません。この損失の繰り越すことができないという論点は、信託複数型のみならず、1つの信託契約で複数の収益物件を信託した場合にも適用され、複数物件の利益と損失を通算し発生した赤字部分も同様に翌年に損失を繰り越しすることができません。
損益通算の禁止については、アパートなど収益が発生する物件を信託する際には重要な論点になるので、信託に強い専門家に相談しながら進めていってください。
信託契約が複数だと損益通算が出来ないというのは、税理士さんの見解も同じようなので、実務でも固まっている運用なのだと思います。私だけかもしれませんが、何で出来ないのだろうと思ってしまいます。理由は、追加信託だと損益通算が出来ること、信託契約が複数の場合でも第2次受益者以降の条項以外の信託行為の定めが同じ場合、1つの信託契約と同じと理解しても良いのではないかなと考えるからです。おそらく理由の後者は当事者が分かりやすいように、というところから来ている場合もあるので、それで税務上の不利益を受けるのはなんだかなぁ、と考えたりします。
損益通算と繰越控除は違う制度ではないでしょうか。記事を読んでいると、私は繰越控除も損益通算に含まれるのかなと読めました。
国税庁HP 損益通算
[blogcard url=”https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm”]
青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
[blogcard url=”https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5762.htm”]