外国籍の人がいる場合の商業・法人登記など

令和3年度 渉外商業登記入門1(株式会社)

講師:渉外司法書士協会会員 豊田則幸  平岩綾子

Ⅰ 定義等  渉外商業登記とは?

外国人・外国法人が関与する、日本における外国会社に関する登記及び内国会社に関する登記。

 cf. 外国会社

  外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいう(会社法2条2号)。

通常の商業・法人登記との違い

 外国人・外国法人が手続の主体となるため、登記手続や定款認証の手続きで必要となる書類が異なります。外国会社に関する登記については特有の登記事項があります。

 渉外不動産登記との違い

  例えば、渉外相続登記においては、被相続人の国籍により、どの国の法律に準拠するか、という国際私法上の問題があります。

 cf. 相続における準拠法

  相続は、被相続人の本国法による(法の適用に関する通則法 36 条。)。 渉外商業登記においては、日本の会社法と商業登記法が適用されるため、準拠法をどちらにするかとの国際私法上の問題はありません。

法の適用に関する通則法(相続)第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000078_20150801_000000000000000

Ⅱ 渉外商業登記の実務上の注意点、 外国企業が日本でビジネスを行う場合、どのような形態があるか

  1.駐在員事務所の設置 <事例1>日本において継続的な取引は行わず、情報収集、広告・宣伝、物品の調達、市場調査などの準備活動の拠点として設置する進出形態

 2.日本法人(子会社)の設立 <事例2>外国会社の「日本支社」として、日本の会社法に基づいて設立された内国会社(株式会社 or 合同会社)を置き、継続して取引を行う場合

  基本的には通常の会社設立手続と同様ですが、渉外商業登記の手続面において、出資者や役員が外国人や外国会社である点に注意が必要。

 3.日本における営業所(日本支店)の設置

 外国会社として営業活動の拠点たる「日本支店」を置き、継続して取引を行う場合

  外国会社が日本において継続的に取引しようとする場合には、日本における代表者を定め(会社法 817 条 1 項)、以下の区分により外国会社の登記をする必要(会社法 933 条 1 項)。 継続して取引を行うため、日本における代表者に加えて「営業所」を置く場合 → 営業所の所在地で登記。置かない場合 → 日本における代表者の住所地で登記

会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

(外国会社の日本における代表者)

第八百十七条 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。

(外国会社の登記)

第九百三十三条 外国会社が第八百十七条第一項の規定により初めて日本における代表者を定めたときは、三週間以内に、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める地において、外国会社の登記をしなければならない。

一 日本に営業所を設けていない場合 日本における代表者(日本に住所を有するものに限る。以下この節において同じ。)の住所地

二 日本に営業所を設けた場合 当該営業所の所在地

Ⅲ 駐在員事務所の設置

Q外国企業が駐在員事務所を設置する場合、何か登記手続きが必要になるか?

A 登記が必要かどうかは、その事務所で収益を伴う直接的な営業活動(取引先企業との契約締結、商品・サービスの販売等)をするかどうか。外国企業が考える「駐在員事務所」「支店」「支社」「ブランチ」等の名称は関係ない。外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができないため(会社法 818 条)、営業活動を行うのであれば、外国会社の登記をする必要がある旨を説明する必要。

  駐在員事務所の設置は自由に行うことができ、登記申請は不要。 駐在員事務所は会社法の概念ではなく、その名称を問わず、実質的に営業活動を行わない(行えない)。駐在員事務所として行うことができる活動は、業務に関する情報収集や本社への情報提供、広告・宣伝、市場調査、基礎研究等、日本国内での収益を伴わない活動に限定。

  収益を伴わない=売上を日本で計上しないため、原則として法人税や消費税の課税対象とはなりませんが、駐在員事務所における従業員への給与に対する源泉徴収義務や社会保険などの負担義務は負う。

  駐在員事務所である限り登記は不要ですが、事業内容によっては例外的に、各事業法において、駐在員事務所の設置につき届出等が必要な場合もある。例えば、外国銀行は日本において駐在員事務所その他の施設を設置しようとする場合には、あらかじめ当該業務の内容を内閣総理大臣に届け出る(銀行法 52 条)。

銀行法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=356AC0000000059

(外国銀行の駐在員事務所の設置の届出等)第五十二条 外国銀行(外国銀行が外国銀行支店を設けている場合は、当該外国銀行支店。以下この条において同じ。)は、次に掲げる業務を行うため、日本において駐在員事務所その他の施設を設置しようとする場合(他の目的により設置している事務所その他の施設において当該業務を行おうとする場合を含む。)には、あらかじめ、当該業務の内容、当該業務を行う施設の所在地その他内閣府令で定める事項を内閣総理大臣に届け出なければならない。

一 銀行の業務に関する情報の収集又は提供

二 その他銀行の業務に関連を有する業務

2 内閣総理大臣は、公益上必要があると認めるときは、外国銀行に対し、前項の施設において行う同項各号に掲げる業務に関し報告又は資料の提出を求めることができる。

3 外国銀行は、その設置した第一項の施設を廃止したとき、当該施設において行う同項各号に掲げる業務を廃止したときその他同項の規定により届け出た事項を変更したときは、遅滞なくその旨を内閣総理大臣に届け出なければならない。

注意点

 日本での活動内容によっては、駐在員事務所ではないと税務署に判断され、課税されるリスクもある。

株式会社の設立

  外国企業が、日本市場に本格的に参入するため、日本法人として株式会社を設立することを決定、代表取締役は日本に住所を有しない外国籍の方が就任することになりそう。この場合の注意点。主な手続内容は通常の株式会社の設立手続の場合と同様に、会社法 25 条以下の適用の問題。外国法人が出資する点、日本に居住していない外国人が役員に就任する点など、通常とは異なる点により注意。

■登記申請までの手続の流れ

1設立会社に関する情報の聴取

2発起人・役員等に関する資料の確認

3定款案の作成

4外為法上の手続(事前届出)手続の要否を確認、提出[事前届出手続が必要な場合]

5署名・押印や添付が必要となる書類の作成 公証手続が必要となる書類(署名証明書・宣誓供述書)の作成

6出資金の払込み

7定款の認証

8実質的支配者に関する申告 「定款認証及び設立登記の同時申請」も可(令和3年2月15日施行)

9登記申請

10 外為法上の手続(事後報告)所定の報告書を提出

会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

第二十五条 株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。

一 次節から第八節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式(株式会社の設立に際して発行する株式をいう。以下同じ。)の全部を引き受ける方法

二 次節、第三節、第三十九条及び第六節から第九節までに規定するところにより、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法

2 各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。

cf.「定款認証及び設立登記の同時申請」について

(令和3年1月29日法務省⺠商第10号⺠事局⻑通達)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

【手順7から9を一度に行う】

同時申請の具体的手順

1捺印済の書面(実質的支配者の申告書、定款認証委任状等)や印鑑証明書を 公証役場に郵送(または電子署名済のpdfを送信)。

2公証人とのオンライン面談を設立予定日にて予約し、認証手数料を振込む。

3設立当日、法務局に設立登記を申請(同時に公証役場に定款認証申請)後、公証人とのオンライン面談を行い、定款認証。

4認証済定款は公証役場から管轄法務局に直接送信。

【24時間以内処理の要件】

1役員が5名以内。2全ての添付書面(情報)がpdfで作成され、電子署名されている。3登録免許税は電子納付。4補正がない。

【注意点】・設立登記の申請日中に定款認証がされなかった場合、設立登記申請は却下(但し、定款認証の嘱託自体は有効)。

1設立会社に関する情報の確認

 外国人・外国法人が発起人となる場合でも、通常の会社設立手続の場合と同様に、定款作成のための所定のチェックシート等により、設立会社に関する情報を確認。

cf. 代表取締役の居住要件について

 代表取締役のうち、少なくとも1名は日本に住所を有しなければならないとの居住者要件が実務上設けられておりましたが、平成 27 年 3 月 16 日付でこの制限が撤廃(平成 27 年 3 月 16 日法務省⺠商第 29 号法務省⺠事局商事課⻑通知。)。現在は、代表取締役の全員を日本に住所を有しない外国人とする株式会社の設立も可能。

法務省HP【代表取締役が日本に住所を有しない場合の申請に関する通知】平成27年3月16日民商第29号通知

 内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html#03

cf. 外国会社の日本支店の日本における代表者の居住要件については、従来どおり1名以上は日本に住所を有する者でなければなりません。

(会社法 817 条 1 項)注意点

  代表取締役の全員を日本に住所を有しない外国人とする設立登記は受理されますが、会社設立後に会社名義の銀行口座を開設することが困難なケースが多く、実際の手続きにあたっては慎重な検討が必要です。

会社法(外国会社の日本における代表者)

第八百十七条 外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

2発起人・役員等に関する資料の確認

 ・外国人個人に関する資料‐パスポート、公的身分証明書等。

 ・外国法人に関する資料 ‐登記事項証明書(またはこれに相当するもの。)。

  ・定款(またはこれに相当するもの。)。

3定款案の作成

 通常の会社設立の手続と同様に日本語で作成。 *依頼者の要望に合わせて、英語併記で作成または英文で別途作成。

4外為法上の手続 (事前届出・事後報告)

 外国為替及び外国貿易法(「外為法」)の規定により、一定の要件に該当する者(「外国投資家」)が日本国内に「支社を設立して株式または持分を取得すること」や「支店、工場その他の事業所を設置すること」などの一定の行為(「対内直接投資等」)を行う場合は日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して、以下のいずれかの手続。

① 当該行為を行なう前に届け出る「事前届出」

② 当該行為を実際に行なった後に報告する「事後報告」(外為法 27 条 1 項、55 条の 5‐1 項)

外国為替及び外国貿易法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=324AC0000000228

(定義)

第二十六条 外国投資家とは、次に掲げるもので、次項各号に掲げる対内直接投資等又は第三項に規定する特定取得を行うものをいう。

一 非居住者である個人

二 外国法令に基づいて設立された法人その他の団体又は外国に主たる事務所を有する法人その他の団体(第四号に規定する特定組合等を除く。)

三 会社で、前二号に掲げるものにより直接に保有されるその議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。以下この号及び次項第四号において同じ。)の数と他の会社を通じて間接に保有されるものとして政令で定めるその議決権の数とを合計した議決権の数の当該会社の総株主又は総社員の議決権の数(同項において「総議決権」という。)に占める割合が百分の五十以上に相当するもの

四 組合等(民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約で会社に対する投資事業を営むことを約するものによつて成立する組合(一人又は数人の組合員にその業務の執行を委任しているものに限る。以下この号及び次項第七号において「任意組合」という。)若しくは投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第二条第二項に規定する投資事業有限責任組合(以下この号及び次項第七号において「投資事業有限責任組合」という。)又は外国の法令に基づいて設立された団体であつてこれらの組合に類似するもの(以下この号及び次条第十三項において「特定組合類似団体」という。)をいう。以下この号において同じ。)であつて、第一号に掲げるものその他政令で定めるものによる出資の金額の合計の当該組合等の総組合員(特定組合類似団体にあつては全ての構成員)による出資の金額の総額に占める割合が百分の五十以上に相当するもの又は同号に掲げるものその他政令で定めるものが当該組合等の業務執行組合員(任意組合の業務の執行の委任を受けた組合員若しくは投資事業有限責任組合の無限責任組合員又は特定組合類似団体のこれらに類似するものをいう。第七十条第一項及び第七十一条第六号において同じ。)の過半数を占めるもの(以下「特定組合等」という。)

五 前三号に掲げるもののほか、法人その他の団体で、第一号に掲げる者がその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人その他の団体に対し業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。以下この号において同じ。)又は役員で代表する権限を有するもののいずれかの過半数を占めるもの

2 対内直接投資等とは、次のいずれかに該当する行為をいう。

一 会社の株式又は持分の取得(前項各号に掲げるものからの譲受けによるもの及び金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式又はこれに準ずるものとして政令で定める株式を発行している会社(以下この条において「上場会社等」という。)の株式の取得を除く。)

二 非居住者となる以前から引き続き所有する上場会社等以外の会社の株式又は持分の譲渡(非居住者である個人から前項各号に掲げるものに対して行われる譲渡に限る。)

三 上場会社等の株式の取得(当該取得をしたもの(以下この号及び第四項において「株式取得者」という。)が、当該取得の後において所有することとなる当該上場会社等の株式の数、当該株式取得者の密接関係者が所有する当該上場会社等の株式の数並びに当該株式取得者及び当該株式取得者の密接関係者が投資一任契約その他の契約に基づき他のものから委任を受けて株式の運用(その指図をすることを含み、政令で定める要件を満たすものに限る。)をする場合におけるその対象となる当該上場会社等の株式の数を合計した株式の数(これらの株式に重複するものがある場合には、当該重複する数を控除した純計によるもの)の当該上場会社等の発行済株式の総数に占める割合が百分の一を下らない率で政令で定める率以上となる場合に行う取得に限る。)

四 上場会社等の議決権の取得(当該取得をしたもの(以下この号及び第四項において「議決権取得者」という。)が、当該取得の後において保有することとなる当該上場会社等の保有等議決権(自己又は他人の名義をもつて保有する議決権及び投資一任契約その他の契約に基づき行使することができる議決権として政令で定めるものをいう。以下この号及び次号において同じ。)の数及び当該議決権取得者の密接関係者が保有する当該上場会社等の保有等議決権の数を合計した純議決権数(議決権のうち重複するものがある場合には、当該重複する数を控除した純計によるもの。同号において同じ。)の当該上場会社等の総議決権に占める割合が百分の一を下らない率で政令で定める率以上となる場合に行う取得に限り、前号に掲げる行為を伴うものを除く。)

五 会社の事業目的の実質的な変更その他会社の経営に重要な影響を与える事項として政令で定めるものに関し行う同意(上場会社等にあつては、当該同意をするもの(以下この号及び第四項において「同意者」という。)が保有する当該上場会社等の保有等議決権の数及び当該同意者の密接関係者が保有する当該上場会社等の保有等議決権の数を合計した純議決権数の当該上場会社等の総議決権に占める割合が百分の一を下らない率で政令で定める率以上となる場合に行う同意に限る。)

六 本邦における支店等の設置又は本邦にある支店等の種類若しくは事業目的の実質的な変更(前項第一号又は第二号に掲げるものが行う政令で定める設置又は変更に限る。)

七 本邦に主たる事務所を有する法人に対する政令で定める金額を超える金銭の貸付け(銀行業を営む者その他政令で定める金融機関がその業務として行う貸付け及び前項第三号、第四号(任意組合又は投資事業有限責任組合に該当するものに限る。)又は第五号に掲げるものが行う本邦通貨による貸付けを除く。)でその期間が一年を超えるもの

八 居住者(法人に限る。)からの事業の譲受け、吸収分割及び合併による事業の承継(第一号から第三号までに掲げる行為を伴うものを除く。)

九 前各号に掲げる行為に準ずるものとして政令で定めるもの

3 特定取得とは、上場会社等以外の会社の株式又は持分の第一項各号に掲げるものからの譲受けによる取得をいう。

4 第二項第三号から第五号までに規定する密接関係者とは、第一項各号に掲げるものであつて、株式取得者、議決権取得者又は同意者と株式の所有関係等に基づく永続的な経済関係、親族関係その他これらに準ずる特別の関係にあるものとして政令で定めるものをいう。

(対内直接投資等の届出及び変更勧告等)

第二十七条 外国投資家(前条第一項に規定する外国投資家をいう。以下この条、第二十八条、第二十九条第一項から第四項まで、第五十五条の五及び第九章において同じ。)は、対内直接投資等(前条第二項に規定する対内直接投資等をいい、相続、遺贈、法人の合併その他の事情を勘案して政令で定めるものを除く。以下この条、第二十九条第一項から第四項まで、第五十五条の五、第六十九条の二第二項及び第七十条第一項において同じ。)のうち第三項の規定による審査が必要となる対内直接投資等に該当するおそれがあるものとして政令で定めるものを行おうとするときは、政令で定めるところにより、あらかじめ、当該対内直接投資等について、事業目的、金額、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に届け出なければならない。

外国為替及び外国貿易法(対内直接投資等及び特定取得の報告)

第五十五条の五 外国投資家は、対内直接投資等又は特定取得(第二十八条第一項の規定により届け出なければならないとされるものに限る。以下この条において同じ。)を行つたときは、政令で定めるところにより、当該対内直接投資等又は特定取得の内容、実行の時期その他の政令で定める事項を財務大臣及び事業所管大臣に報告しなければならない。ただし、第二十七条第一項又は第二十八条第一項の規定により届け出た対内直接投資等又は特定取得については、この限りでない。

手続を行う主体

 対内直接投資等の事前届出・事後報告を行う主体は「外国投資家」。(直投令 3 条1項4号、直投令 6 条の 3‐2 項)

対内直接投資等に関する政令(昭和五十五年政令第二百六十一号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=355CO0000000261

財務省令和2年4月24日「対内直接投資等に関する政令等の一部を改正する政令」について

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/press_release/kanrenshiryou01_20200424.pdf

(対内直接投資等の届出及び変更勧告の送達等)

第三条 法第二十七条第一項に規定する相続、遺贈、法人の合併その他の事情を勘案して政令で定めるものは、次に掲げる行為に該当する対内直接投資等とする。

一 相続又は遺贈による会社の株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権の取得

二 非上場会社(国の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい対内直接投資等に係る業種として主務省令で定める業種に属する事業を営んでいるものを除く。次号において「特定非上場会社」という。)の株式又は持分を所有する法人の合併により合併後存続する法人又は新たに設立される法人が当該株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権を取得する場合における当該取得

三 特定非上場会社の株式又は持分を所有する法人の分割により分割後新たに設立される法人又は事業を承継する法人が当該株式若しくは持分又は当該株式若しくは持分に係る議決権を取得する場合における当該取得

四 非上場会社の株式若しくは持分又は議決権の取得(当該取得の後における当該取得をしたもの(以下この号において「株式等取得者」という。)の所有等株式等(直接に所有する非上場会社の株式の数若しくは非上場会社に出資する金額又は直接に保有する非上場会社の議決権の数と議決権代理行使受任(前条第十六項第四号イに該当するものに限る。)に係る議決権の数を合計した純議決権数をいう。以下この号において同じ。)と当該株式等取得者を前条第十九項第一号に規定する株式取得者等とした場合に同項各号に掲げるものに該当することとなる非居住者である個人又は法人等の所有等株式等とを合計した株式の数若しくは出資の金額又は純議決権数の当該非上場会社の発行済株式の総数若しくは出資の金額の総額又は総議決権に占める割合が百分の十以上となる場合の当該取得を除く。)であつて、次項各号に掲げる対内直接投資等に該当する非上場会社の株式若しくは持分又は議決権の取得以外のもの

(対内直接投資等及び特定取得の報告)

第六条の三 法第五十五条の五第一項の規定による報告は、主務省令で定める期間内に、主務省令で定める手続により、しなければならない。

2 法第五十五条の五第一項の規定による報告をしなければならない外国投資家が法第二十六条第一項第一号、第二号又は第四号に掲げるものに該当する場合には、当該外国投資家は、居住者である代理人(法第二十七条の二第一項又は法第二十八条の二第一項の規定により法第二十七条第一項又は法第二十八条第一項の規定による届出をせずに対内直接投資等又は特定取得を行つた外国投資家にあつては、第三条の二第三項又は第四条の三第三項の規定により送達される文書を受理する権限を有するものに限る。)により当該報告をしなければならない。

■「対内直接投資等」に該当する行為とは?(外為法 26 条2項ほか)

外為法・対内直接投資審査制度に関する手続き[日本銀行ホームページ]

「外為法Q&A」(対内直接投資・特定取得編)

届出書様式および記入の手引等

報告書様式および記入の手引等

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm

・国内の上場会社の株式または議決権の取得で、それぞれ出資比率または議決権比率が 1%以上となるもの

・国内の非上場会社の株式または持分を取得すること

・個人が居住者であるときに取得した国内の非上場会社の株式または持分を、非居住者となった後に外国投資家に譲渡すること

・外国投資家が、①国内の会社の事業目的の実質的な変更または、②取締役もしくは監査役の選任に係る議案、③事業の全部の譲渡等の議案について同意すること

・非居住者個人または外国法人である外国投資家が、国内に支店、工場その他の事業所(駐在員事務所を除く)を設置、またはその種類や事業目的を実質的に変更すること 等

■提出先 日本銀行国際局国際収支課外為法手続グループ(50 番窓口)日本銀行支店(営業課または総務課)*「日本銀行外為法手続きオンラインシステム」を利用した提出も可能 (但し、事前に利用申込みが必要。)。

対内直接投資であっても事前届出・事後報告が不要な場合

  相続、遺贈により株式、持分等を取得するとき

 事業目的が事後報告業種に該当する非上場会社の株式又は持分の取得で、出資比率が特別の関係にある者と併せて 10%未満であるとき

 日本支店を設置する場合で、事業目的が事後報告業種に該当するとき等

事前届出

いずれかに該当する場合。

⑴ 外国投資家の国籍が「対内直接投資等に関する命令 別表1」に掲載されている国または地域以外のもの

⑵ 投資先が営む事業に「指定業種」に属する事業が含まれるもの

対内直接投資等に関する命令第 3 条第 3 項の規定に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件(告示)の別表に該当しない業種

対内直接投資等に関する命令 別表1

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=355M50007fc2001

指定業種を定める告示(PDF:47KB)(対内直接投資等に関する命令第三条第三項の規定に基づき財務大臣及び事業所管大臣が定める業種を定める件)

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm

財務省令和2年4月24日「対内直接投資等に関する政令等の一部を改正する政令」について

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/press_release/kanrenshiryou01_20200424.pdf

⑶ イラン関係者により行われる一定の行為に該当するもの

事前届出の書式

提出時期  対内直接投資等に該当する行為を行おうとする日の前6か月以内に、所定の様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して行う。(オンライン提出も可)※対内直接投資等に該当する行為の基準となる日

日本支社設立の場合:会社設立登記の日

日本支店設置の場合:支店の開設の日

▪「国の安全」武器、航空機、原子力、宇宙関連、軍事転用可能な汎用品の製造業、サイバーセキュリティ関連

▪「公の秩序」電気・ガス、熱供給、通信事業、放送事業、水道、鉄道、旅客運送

▪「公衆の安全」ワクチン製造業、警備業

▪「我が国経済の円滑運営」農林水産、石油、皮革関連、航空運輸、海運

審査期間

 日本銀行が届出書を受理した日から起算して 30 日を経過するまでは、届け出た取引または行為を行うことはできません(「禁止期間」)。ただし、国の安全等を損なう事態を生ずる対内直接投資等に該当しない場合、2週間に短縮されます。(日本銀行のホームページに掲載され、短縮が通知される。)

実行報告

 対内直接投資等に該当する行為後、45 日以内に、所定の様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に対して報告(「実行報告」)が必要。

事前届出免除制度

  一定の外国投資家が、株式、持分、議決権、議決権行使等権限の取得等のうち、国の安全等に係る対内直接投資等に該当するおそれが大きいもの以外の対内直接投資等を行う場合は、事前届出が不要となり、所定の様式による事後報告の提出で足りる。

■事後報告

事後報告が必要となるのは、次のいずれにも該当する場合。

外国投資家の国籍国が日本または直投命令別表1に掲げる国または地域であるもの

投資先が営む事業に指定業種に属する事業が含まれないもの、または、投資先が営む事業に指定業種に属する事業が含まれる場合であって、外国投資家が事前届出免除制度を利用しているもの

イラン関係者により行われる、一定の行為以外のもの

 報告書の提出時期

 行為を行った日から起算して 45 日以内に、所定の様式により、日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣あてに行う必要があります。(オンラインも可)

 署名・押印や添付が必要となる書類の作成、公証手続が必要となる書類(署名証明書・宣誓供述書)の作成。

 通常の会社設立の手続と同様に、押印が必要となる書類を日本語(または、 日英併記)で作成し、添付が必要となる書類についても取得または作成。

【押印や添付が必要となる書類】

 法令上、押印又は印鑑証明書の添付を要する旨の規定がない書面の押印は審査しない(無くても可)。(令和3年1月29日法務省⺠商第10号⺠事局⻑通達)

【商業登記法改正(印鑑提出任意化)及び商業登記規則改正(オンライン申請の利便性向上等)等に関する通達】令和3年1月29日民商第10号通達

 会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

(以下、押印やサインが無くても登記可能となる書面には△。)

①役員の就任承諾書

・取締役会設置会社の場合

 代表取締役:実印+印鑑証明書

 代取以外の役員:押印(△)+身分証(△。但し、証明文言は必要。)

外国人役員の場合

 代表取締役:サイン+署名証明書

 代取以外の役員:サイン(△)+身分証(住所記載要)に原本証明(△) or本人確認証明書(宣誓供述書)

・取締役会非設置会社の場合

 取締役:実印+印鑑証明書

 取締役以外の役員:押印(△)+身分証(△)

外国人役員の場合

取締役:サイン+署名証明書

取締役以外の役員:サイン(△)+身分証に原本証明(△)or本人確認証明書(宣誓供述書)

・定款認証委任状

 個人:実印+印鑑証明書

 法人:会社代表印+印鑑証明書+登記事項証明書

外国人・外国法人が発起人の場合

 個人:サイン+署名証明書

 法人:代表者のサイン+署名証明書+登記事項証明書(宣誓供述書)

印鑑届出書

 個人実印+印鑑証明書

代取が外国人の場合:サイン+署名証明書

印鑑証明書に代わる「署名証明書」

 外国人の署名証明書については、当該外国人が居住する国等に所在する当該外国人の本国官憲が作成したものでも差し支えない。

(平成 28 年 6 月 28 日⺠商第 100 号通達、平成 29 年 2 月 10 日⺠商第 15 号通達)

【外国人の署名証明書に関する通達】平成28年6月28日民商第100号通達(改正)平成29年2月10日民商第15号通達

 登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することが できない場合等の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

平成29年2月10日民商第16号依命通知(やむを得ない事情があるとして,上申書及び日本の公証人等が作成した署名証明書が使用可能な具体例)

 「登記の申請書に押印すべき者が外国人であり,その者の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合等の取扱いについて」の一部改正について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 <添付可能な署名証明書(B国に居住するA国人の場合)>

本国に所在する本国官憲作成(例:A国にあるA国の行政機関) ○

日本に所在する本国官憲作成(例:日本にあるA国の領事) ○

第三国に所在する本国官憲作成(例:B国にあるA国の領事) ○

本国に所在する公証人作成(例:A国の公証人) ○

*本国官憲の署名証明書を取得できないやむを得ない事情がある場合には、以下の署名証明書も認められる場合がある。(平成 29 年 2 月 10 日⺠商第 16 号依命通知)

第三国に所在する公証人作成(例:B国にあるB国の公証人) ○

日本に所在する公証人作成(例:日本の公証人) ○

やむを得ない事情の例

・日本における本国領事若しくは日本における権限がある本国官憲が署名証明書を発行していない場合。

・日本に当該外国人の本国官憲がない場合(たとえ日本以外の国における本国 官憲において署名証明書を取得することが可能であってもOK。)。

・当該外国人の本国に署名証明書の制度自体がないため、本国官憲において署 名証明書を取得することができない場合。

・当該外国人の本国においては署名証明書の取得が可能であるが、当該外国人 が居住している本国以外の国等に所在する当該外国人の本国官憲では署名証明書を取得することができない場合等。

取締役・監査役の本人確認証明書について

▪日本在住の日本人・外国人例)住⺠票 or 住⺠票記載事項証明書 or ⼾籍附票 or 印鑑証明書。

運転免許証(運転経歴証明書) or 在留カード or 特別永住者証明書or マイナンバーカード のコピー+原本証明(△)。個人番号の「通知カード」は不可。

▪外国在住の日本人(平成 27 年 2 月 20 日⺠商第 18 号)

【代表取締役が日本に住所を有しない場合の申請に関する通知】平成27年3月16日民商第29号通知

 内国株式会社の代表取締役の全員が日本に住所を有しない場合の登記の申請の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

⑴ 日本大使館で作成した証明書(在留証明)

⑵ 外国官憲の作成に係る取締役等の氏名及び住所が記載された証明書

⑶ 外国官憲の発行に係る身分証明書等のコピー+原本証明(△)

▪外国在住の外国人

⑴ 外国官憲の作成に係る取締役等の氏名及び住所が記載された証明書

 <添付可能な本人確認証明書(B国に居住するA国人の場合)>

本国に所在する本国官憲作成(例:A国にあるA国の行政機関) ○

日本に所在する本国官憲作成(例:日本にあるA国の領事) ○

第三国に所在する本国官憲作成(例:B国にあるA国の領事) ○

本国に所在する公証人作成(例:A国の公証人) ○

居住国に所在する公証人作成(例:B国の公証人) 〇

⑵ 外国官憲の発行に係る身分証明書等(住所の記載があるもの)のコピー+ 取締役本人の原本証明(△)

■外国法人の登記事項証明書に代わる「宣誓供述書」

 日本法人が発起人となる場合、定款認証時に発起人たる法人の登記事項証明書・印鑑証明書の提出が必要となりますが、この扱いは外国法人が発起人となる場合も同様。ただし、外国によっては法人の登記事項証明書・印鑑証明書の制度がないことも多く、添付ができない場合、本店、商号、目的、代表者の資格・氏名、設立準拠法等を記載した書類に準拠法国の本国官憲が認証したもの(「宣誓供述書」)を法人の登記事項証明書の代替として利用。

 実務上では外国会社の登記の添付書類に準じて、「外国法人の設立準拠法国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲」の認証を受けたものが必要。

 <A 国が設立準拠法国である外国法人の場合>

本国の公証人が作成(例:A国の公証人) ○

本国に所在する本国官憲が作成(例:A国にあるA国の行政機関) ○

日本に所在する本国官憲が作成(例:日本にあるA国の領事) ○

第三国に所在する本国官憲が作成(例:第三国にあるA国の領事) ×

6出資金の払込み

発起人が外国人・外国法人の場合、内国銀行の口座を有していないことが多く、設立時取締役の個人口座や、委任を受けた第三者の口座を使用することがある。

■預金通帳の口座名義人について

 発起人、 設立時取締役、第三者(発起人・設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合に限る)(平成29年3月 17 日⺠商第 41 号通達)

【出資の払込みを証する書面(預金通帳の口座名義人)に関する通達】平成29年3月17日民商第41号通達

 株式会社の発起設立の登記の申請書に添付すべき会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面の一部として払込取扱機関における口座の預金通帳の写しを添付する場合における当該預金通帳の口座名義人の範囲について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 ※発起人名義以外の口座を使用する場合、登記添付書類として払込金の受領に関する発起人の委任状が必要。

■払込取扱機関

内国銀行の日本国内本支店だけでなく、外国銀行の日本国内支店(内閣総理大臣の認可を受けて設置された銀行)、内国銀行の海外支店を含む(平成 28 年 12 月 20 日⺠商第 179 号通達 )。

【払込取扱機関(邦銀の海外支店)に関する通達】平成28年12月20日民商第179号通達

 会社法第34条第1項の規定による払込みがあったことを証する書面について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

 このような支店かどうかは、銀行の登記事項証明書により確認可能。 外国法に基づき設立されたいわゆる現地法人は、内国銀行の海外支店ではなく、「払込取扱機関」に含まれません。

 <「払込取扱機関」の該当の有無>

内国銀行の日本国内本支店(例:東京銀行の大阪支店) ○

内国銀行の海外支店(例:東京銀行のニューヨーク支店) ○

外国銀行の日本国内支店(例:ニューヨーク銀行の東京支店) ○

外国銀行の海外本支店(例:ニューヨーク銀行のボストン支店) ×

法務省 Website「出資の払込みを証する書面について」

資本金の送金の際には以下の内容をアドバイス。

⑴ 外貨でなく円建てで送金すること

⑵ 銀行手数料は送金元がすべて負担すること

 (送金先銀行の手数料のほか、中継銀行の手数料にも注意が必要)

送金の目的が「会社設立のための出資金」の明示

*「払い込みがあったことを証する書面」に押印も契印も不要(令和3年1月29日法務省⺠商第10号⺠事局⻑通達) 。

【商業登記法改正(印鑑提出任意化)及び商業登記規則改正(オンライン申請の利便性向上等)等に関する通達】令和3年1月29日民商第10号通達

 会社法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いについて

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00098.html

7 定款の認証

■手続時に必要となる書類

▪発起人が外国人個人の場合  印鑑証明書(署名証明書)

▪発起人が外国法人の場合

 登記事項証明書(登記事項証明書に相当するもの)

 本国官憲の認証を受けた宣誓供述書

 印鑑証明書(法人代表者個人の署名証明書)

8 実質的支配者に関する申告

  公証人法施行規則の改正により、法人成立の時に実質的支配者となるべき者について、その氏名、住居、生年月日等と、その者が暴力団員等に該当するか否かにつき公証人への申告が必要。(公証人法施行規則13条の4)

*公証人法施行規則改正の趣旨

  暴力団による事件や資金源の根絶(マネーロンダリング・テロ資金供与の抑止)を図るため。株式会社等を設立する際、その実質的支配者が反社会的勢力に所属していないこと等を公証人に対して申告させるように義務付け、公証人が確認する仕組みを設けることとされた。FATF(金融活動作業部会)勧告により、株式会社等の実質的支配者に関する情報を明らかにさせる仕組みを整えることが国際的な要請となっている。

公証人法施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=324M50000001009_20190701_501M60000010015

第十三条の四 公証人は、会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及び第百五十五条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。

一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)第四条第一項第四号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日

二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十四号)第三条第一項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第四条第一項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か

2 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第一号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。

実質的支配者となるべき者

⑴設立する会社の議決権の 50%を超える議決権を、直接又は間接に有する自然人

⑵⑴に該当する者がいない場合、設立する会社の議決権の 25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人全員

⑶⑴・⑵に該当する者がいない場合、出資・融資・取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人全員

⑷⑴・⑵・⑶に該当する者がいない場合、設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人

 議決権を直接に有するとは、自然人が発起人となり株式を保有すること。

議決権を間接に有する例。

例 1)CがB社を通じて25%超のA社の議決権を保有している例

CはB社の議決権の51%の議決権を有しています。このように過半数の議決権を有している場合、CがB社を支配していると考えます。

Cの支配法人であるB社は,新設会社A社の25%を超える議決権を有しています。この場合、CがB社を通じてA社の25%超の議決権を有していると考える。

例 2)Cが直接10%、B社を通じてA社の 15%超の議決権を保有している。

*実質的支配者に該当する者は原則として自然人ですが、発起人が上場企業又はその子会社である場合、その法人が自然人とみなされる。

*有価証券の売買を行う外国(国家公安委員会及び金融庁⻑官が指定する国又は地域に限る)の市場で上場している会社も自然人とみなされます(犯収法施行令 14条6号、犯収法施行規則18条11号。)。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成二十年政令第二十号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420CO0000000020

(法第四条第五項に規定する政令で定めるもの)

第十四条

六 前各号に掲げるものに準ずるものとして主務省令で定めるもの

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成二十年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第一号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(国等に準ずる者)

第十八条 令第十四条第六号に規定する主務省令で定めるものは、次の各号に掲げるものとする。

十一 有価証券の売買を行う外国(国家公安委員会及び金融庁長官が指定する国又は地域に限る。)の市場に上場又は登録している会社

■実質的支配者該当性の根拠資料 発起人間の議決権保有割合を証するものとして定款、発起人の決定書等を添付することになります。発起人が法人の場合には、当該法人の議決権保有状況に関する資料(株主名簿等)も添付する必要がありますが、発起人が外国法人の場合には、原則として「外国官憲等の証明に係る証明書」を添付。

Cは、直接に10%、支配法人であるB社を通じて16%の議決権を保有し、直接保有と間接保有を合わせて26%、すなわち25%超の議決権を保有していると考えます。

C、D、Eは、A社の 100%親会社であるB社議決権を各 25%以上有していることから、(2)に該当し、A社の実質的支配者にあたるように思える。しかし、B社の議決権の 50%超を有する自然人はいないため、B社は特定の自然人の被支配法人にはあたらない。

A 社設立時の判断としてはB社の実質的支配者となる特定の自然人は存在せず、(2)ではなく、(4)に該当することになる。A社の代取が該当。

 実質的支配者該当性の根拠資料が外国語で作成されている場合、その訳文を添付。実質的支配者の氏名・住居に関する情報は外国語原文。

■本人特定事項等が明らかになる資料

  実質的支配者の氏名、住居及び生年月日の本人特定事項が明らかになる資料を添付することになります。パスポート等で住居の記載がない資料については、自筆で記載しているものを利用することも可能。 例)運転免許証、パスポート、個人番号カード等の写し

実質的支配者に該当する者が外国人である場合、日本国政府が承認した外国政府発行の書類(台湾や外国の地方政府発行の書類を含む)を利用。

■日本語の訳文の作成・添付

 外国語で作成された書面を添付書面として添付する場合、原則としてそのすべての日本語の訳文を併せて添付する必要があります。ただし、一定の場合には、翻訳の一部を省略することが可能。

外国官憲発行の各種証明書

 登記の内容や証明の対象とは関係のない部分の翻訳は省略して差し支えありません。(本国官憲使用欄や領収書部分等)証明書の発行主体(領事、公証人等)に関する記載の翻訳を省略することはできない。

 2つの外国語(当該外国の公用語と英語等)で同様の内容が記載がされているものについては、どちらか一方の翻訳で足り、両方の翻訳は不要。

*各種証明書の例 署名証明書、本人確認証明書、宣誓供述書、パスポートの写し等

【参考】外国会社の登記の添付書面

▪株主総会議事録等を添付する場合

 商業登記法 129 条 1 項、2 項、130 条 1 項の規定に基づき、外国会社の株主総会議事録や取締役会議事録(外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたもの)を添付する場合、日本における営業所又は日本における代表者の登記とは関連しない内容については、翻訳を省略。

▪登記事項証明書に相当する書面を添付する場合

 商業登記法 130 条 1 項の変更の登記の書面として、外国における登記事項証明書等を添付する場合、変更の登記と関係のない部分については、翻訳を省略できます。*翻訳を省略した場合、日本語の訳文には省略した箇所・当該変更の登記と関係のない旨を記載

商業登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

(外国会社の登記)

第百二十九条 会社法第九百三十三条第一項の規定による外国会社の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。

一 本店の存在を認めるに足りる書面

二 日本における代表者の資格を証する書面

三 外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面

四 会社法第九百三十九条第二項の規定による公告方法についての定めがあるときは、これを証する書面

2 前項の書類は、外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたものでなければならない。

3 第一項の登記の申請書に他の登記所の登記事項証明書で日本における代表者を定めた旨又は日本に営業所を設けた旨の記載があるものを添付したときは、同項の書面の添付を要しない。

(変更の登記)

第百三十条 日本における代表者の変更又は外国において生じた登記事項の変更についての登記の申請書には、その変更の事実を証する外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けた書面を添付しなければならない。

2 日本における代表者の全員が退任しようとする場合には、その登記の申請書には、前項の書面のほか、会社法第八百二十条第一項の規定による公告及び催告をしたこと並びに異議を述べた債権者があるときは、当該債権者に対し弁済し若しくは相当の担保を提供し若しくは当該債権者に弁済を受けさせることを目的として相当の財産を信託したこと又は退任をしても当該債権者を害するおそれがないことを証する書面を添付しなければならない。ただし、当該外国会社が同法第八百二十二条第一項の規定により清算の開始を命じられたときは、この限りでない。

3 前二項の登記の申請書に他の登記所において既に前二項の登記をしたことを証する書面を添付したときは、前二項の書面の添付を要しない。

営業所の設置(外国会社の登記)

駐在員事務所、支店、支社の違いを説明した上で、実体に合致しているのかを法務・税務の面からそれぞれ検討。

①営業所設置と日本法人設立の違いは理解したが、手続面・税金面でどちらが有利なのか。

②営業所または日本法人で働く外国人の在留資格について知りたい。

③スケジュールと費用イメージを知りたい。

JETROホームページ参考情報。

https://www.jetro.go.jp/invest/setting_up/sectionl/page2.html

 企業(中国・上海)から、日本における営業所設置の依頼を受けました。日本における代表者は日本人が就任。本国で準備する書類は中国語で作成。書籍を見ると、宣誓供述書を準備すればよいようですが、宣誓供述書の実物を見たことがないのでよく分かりません。日本の会社のように、中国の会社の登記簿謄本、代表者の印鑑証明書や各議事録等に翻訳文を添付するだけではだめか?

 営業所設置(外国会社の支店)に決定している場合、営業所設置の必要書類の準備、宣誓供述書起案のための情報収集、宣誓供述書の認証、外為法の事前届出、事後報告の要否を検討。

【営業所設置の必要書類の準備】

宣誓供述書起案のための情報収集

日本における営業所設置の必要書類は、商業登記法に規定。

商業登記法第129条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

会社法第933条第l項の規定による外国会社の登記の申請書には、次の書面を添付しなければならない。

1本店の存在を認めるに足りる書面

2日本における代表者の資格を証する書面

3外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面

4会社法第939条第2項の規定による公告方法についての定めがあるときは、これを証する書面

2前項の喜類は、外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたものでなければならない。

本店の存在を認めるに足りる書面→登記事項全部証明書(韓国)、企業登録証明書(ベトナム)

宣誓供述書

日本公証人連合会

https://www.koshonin.gr.jp/business/b07_2

Q.アフィダビットと宣誓供述書は、同じものですか。

 アフィダビット(一般的に「宣誓供述書」と訳されています。)とは、法廷外で公証人その他宣誓を司る者の面前で宣誓した上、記載内容が真実であることを確約し、署名したものをいい、英米両国をはじめ多くの国で使われています。Affidavitと言う表題があっても、必ずしも我が国の「宣誓供述書」(宣誓認証された私書証書)と法律的に同一の性質を持つ文書とは限りません。

 しかし、Affidavitの表題を掲げ、あるいは、swear、takeanoathといった宣誓を表すような文言がある外国文書の認証については、単なる署名認証ではなく、宣誓認証が要求されていることが多いと思われます。なお、署名の真正の確認方法についても、自認認証や代理自認(代理認証)ではなく、目撃認証(面前認証)が求められることも少なくありません。ですから、嘱託人としては、その証書の提出を求める外国機関等の意向を十分理解して、これを公証人に正確に伝えることが重要です。

公証人法(明治四十一年法律第五十三号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=141AC0000000053_20150801_000000000000000

第五十八条ノ二 公証人私署証書ニ認証ヲ与フル場合ニ於テ当事者其ノ面前ニ於テ証書ノ記載ノ真実ナルコトヲ宣誓シタル上証書ニ署名若ハ捺印シ又ハ証書ノ署名若ハ捺印ヲ自認シタルトキハ其ノ旨ヲ記載シテ之ヲ為スコトヲ要ス

② 前項ノ認証ノ嘱託ハ証書二通ヲ提出シテ之ヲ為スコトヲ要ス

③ 第一項ノ認証ノ嘱託ハ代理人ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得ズ

④ 公証人ハ第一項ノ規定ニ依ル記載ヲ為シタル証書ノ中一通ヲ自ラ保存シ他ノ一通ヲ嘱託人ニ還付スルコトヲ要ス

Q. 宣誓認証とは、どういう制度ですか。

 宣誓認証制度は、公証人法58条ノ2の規定の新設により設けられた制度です(平成10年1月1日施行)。公証人が私署証書(作成者の署名、署名押印又は記名押印のある私文書のこと)に認証を与える場合において、当事者がその面前で証書の記載が真実であることを宣誓した上、証書に署名若しくは押印し、または証書の署名若しくは押印を自認したときは、その旨を記載して認証する制度です。宣誓認証を受けた文書を宣誓供述書といいます。

 公証人が、私文書について、作成の真正を認証するとともに、制裁の裏付けのある宣誓によって、その記載内容が真実、正確であることを作成者が表明した事実をも公証するものです。

 簡体字の場合、正字に引き直して登記申請。有限公司を付加する必要はない。住所の表示の一部にローマ字が符号として使用されている場合、そのまま登記申請可能。役員の住所氏名の表記は原則としてカタカナに引き直す。漢字使用国の役員については、正字に引き直した後、そのまま表記することが可能。

設立準拠法の記録

×アメリカ合衆国デラウェア州法

〇アメリカ合衆国デラウェア州一般会社法

昭和60年1月21日民四207→探せない。

登記研究86-42→探せない。

昭和44年1月14日民甲第32号民事局長通達→探せない。

外務省 公印確認・アポスティーユとは 令和2年6月22日

https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html

公印確認

 日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事による認証(=領事認証)を取得するために事前に必要となる外務省の証明のことです。外務省では公文書上に押印されている公印についてその公文書上に証明を行っています。外務省で公印確認を受けた後は必ず日本にある外国の大使館・(総)領事館の領事認証を取得して下さい。

 外務省における公印確認は,その後の駐日外国大使館・(総)領事館での領事認証が必要となる証明ですので,必ず駐日外国領事による認証を受けてから提出国関係機関へ提出して下さい。

 提出先機関の意向で日本外務省の公印確認証明ではなく,現地にある日本大使館や総領事館の証明が求められている場合があります。外務省で公印確認証明を受けた書類は,現地日本大使館や総領事館で重ねて証明することはできませんので,ご注意ください。

アポスティーユ

「外国公文書の認証を不要とする条約(略称:認証不要条約)」(1961年10月5日のハーグ条約)に基づく付箋(=アポスティーユ)による外務省の証明のことです。提出先国はハーグ条約締約国のみです。アポスティーユを取得すると日本にある大使館・(総)領事館の領事認証があるものと同等のものとして,提出先国で使用することができます。

提出先国がハーグ条約(認証不要条約)の締約国であっても,領事認証が必要となり,公印確認を求められる場合があります。事前に提出先または日本にある提出先国の大使館・(総)領事館にご確認ください。

ハーグ条約に加入していない国へ提出する公文書の証明は全て公印確認となります。

日本法人の設立(合同会社の設立)

 日本で子会社を設立することを決定したドイツの会社があるので、手続を進めてほしい、と依頼されました。簡単な構造の会社の設立を希望しているので、合同会社の設立を勧めようと思います。この場合の注意点。

《回答〉

 基本的には内国合同会社の設立と同じく、会社法第575条以下が適用。但し、外国会社が出資するということから、以下の点に注意が必要です。

(1)外為法の事前届出と事後報告の要否(2)合同会社の定款の内容(3)定款以外の添付書類

《解説》

1外為法の事前届出と事後報告の要否株式会社の設立と同様です。(料資18)   2合同会社の定款作成のための情報収集

社員となる外国人、外国法人の確認

合同会社は、定款に社員の氏名又は名称及び住所、並びに出資の目的として金銭等の価額を記載することとされています。(会社法第576 条第 1 項第4 号及び第6号)

社員が外国人又は外国法人の場合の確認方法:

個人:旅券、国籍国で交付される身分証明書、滞在国で交付さ滞れ在る許可証、運転免許証等(できれば複数の証明書)を確認。

職務執行者(住所、氏名、生年月日)の選任についても宣誓供述書に盛り込む。職務執行者の就任承諾書の宛先は、選任した社員。

外国会社から連絡を受け、日本の合同会社の持分の全てを取得することになった場合。

商業登記法(添付書面の通則)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

第九十三条 登記すべき事項につき総社員の同意又はある社員若しくは清算人の一致を要するときは、申請書にその同意又は一致があつたことを証する書面を添付しなければならない。

(準用規定)

第百十八条 第四十七条第一項、第四十八条から第五十三条まで、第九十三条、第九十四条、第九十六条から第百一条まで及び第百三条の規定は、合同会社の登記について準用する。

会社法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

(持分の譲渡)

第五百八十五条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。

2 前項の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員は、業務を執行する社員の全員の承諾があるときは、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができる。

3 第六百三十七条の規定にかかわらず、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡に伴い定款の変更を生ずるときは、その持分の譲渡による定款の変更は、業務を執行する社員の全員の同意によってすることができる。

4 前三項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。

(社員の加入)

第六百四条 持分会社は、新たに社員を加入させることができる。

2 持分会社の社員の加入は、当該社員に係る定款の変更をした時に、その効力を生ずる。

3 前項の規定にかかわらず、合同会社が新たに社員を加入させる場合において、新たに社員となろうとする者が同項の定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは、その者は、当該払込み又は給付を完了した時に、合同会社の社員となる。

商業登記法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338AC0000000125

(社員の加入又は退社等による変更の登記)

第九十六条 合名会社の社員の加入又は退社による変更の登記の申請書には、その事実を証する書面(法人である社員の加入の場合にあつては、第九十四条第二号又は第三号に掲げる書面を含む。)を添付しなければならない。

2 合名会社の社員が法人であるときは、その商号若しくは名称又は本店若しくは主たる事務所の変更の登記の申請書には、第九十四条第二号イに掲げる書面を添付しなければならない。ただし、同号イただし書に規定する場合は、この限りでない。

参考

月刊登記情報2022年9月号(730号)きんざい

渥美坂井法律事務所・外国法共同事業弁護士菅原佐知子、三浦司法書士事務所司法書士三浦真紀「Q&A日本に進出する外国法人に関する登記第4回 外国会社を発起人とする株式会社の設立登記申請」


研修「外国籍の方の相続登記 具体的事例から」

 NPO法人渉外司法書士協会

2021年8月20日東京定例会 講師大阪会 萬田英伸先生

1 具体的事例

●登記事項証明書

所在   所有権保存 母   所有権移転 平成年月相続   

事例

依頼人によると、被相続人は、平成年月に死亡した。被相続人名義の建物を名義にしたいという。被相続人は婚姻しておらず、子供もいない。姉は了解している。

ただし、父及び母は朝鮮半島出身(現在の韓国の地域)で戦前に婚姻後に日本に来た。両親は戦後は子供が生まれた際に韓国に出生届を出していない。そのため、姉や依頼人は自分で韓国戸籍をつくった。被相続人Eは韓国戸籍を取得していないので、国籍は「朝鮮」のまま。兄は、昭和年に北朝鮮に渡ったまま。昭和年生まれの姉は日本で出生後すぐに亡くなった。

(2)根拠法

日本の「法の適用に関する通則法36条」→相続は、被相続人の本国法による。

法の適用に関する通則法(平成十八年法律第七十八号)

(相続)

第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。

韓国・・・・国際私法→遺言がない場合は韓国民法

(国際私法49条1項、2項)

→兄弟姉妹は第3順位相続人

→被相続人には妻、子がおらず、父母が死亡しているので兄弟姉妹が相続人

第49条(相続)

相続は、死亡当時の被相続人の本国法による。

2被相続人が遺言に適用される方式により、明示的に次の各号の法のうちいずれかを指定したときには、相続は第1項の規定にかかわらず、その法による。

(1).指定当時の被相続人の常居所地がある国家の法。ただし、その指定は被相続人の死亡時までその国家に常居所地を維持した場合にかぎり、その効力がある。

(2)不動産に関する相続については、その不動産の所在地法

北朝鮮・・・北朝鮮対外民事関係法45条

→不動産相続には相続財産の所在する国の法を適用

→日本の民法

→いずれにしても、今回の相続人は兄弟姉妹。

第四五条  不動産相続には、相続財産の所在する国の法を適用し、動産相続には被相続人の本国法を適用する。但し、外国に住所を有する共和国国公民の動産相続には被相続人が住所を有していた国の法を適用する。

(3)外国人登録原票

・平成24年9月に従来の外国人登録制度が廃止になり、出入国在留管理庁が管理。

出入国在留管理庁

https://www.moj.go.jp/isa/applications/disclosure/foreigner.html

「平成24年7月9日,新たな在留管理制度が導入されたことに伴い外国人登録制度は廃止されました。これに伴い,外国人登録原票は,特定の個人を識別することができる個人情報として,出入国在留管理庁において適正に管理しています。なお,自分の外国人登録原票を確認したい,写しを交付してほしいとする場合,開示請求を行う必要があり,その手続は,次の「開示請求の手続について」の内容をご確認ください。」

・本人又は死亡した外国人については兄弟姉妹ならば取得可能

被相続人が韓国の戸籍を作っていなかったため、外国人登録原票で身分関係を明らかにする。年月以降に死亡しているので、死亡を証する住民票の写しを添付して、依頼人が請求。

出入国在留管理庁

死亡した外国人に係る外国人登録原票の写しの交付請求について

https://www.moj.go.jp/isa/applications/disclosure/foreigner_death.html

被相続人の家族を明らかにするため、両親の登録原票も取得。北朝鮮に行った兄は、死亡を証する書面が取得できないので、兄弟姉妹による外国人登録原票の取得はできなかった。

(4)韓国戸籍

・両親は戦前婚姻しているので、韓国戸籍をもっていたが、あえて韓国領事館で手続きしていない。姉、依頼人も領事館で韓国戸籍を作成。両親の出生から死亡までの戸籍、家族関係証明書を請求。姉、依頼人の家族関係証明書を請求。

・韓国法の改正で平成20年から戸籍が廃止し、家族関係証明書等になった。個人単位の証明書で、本籍が登録基準地となった。

家族関係証明書等・・・「家族関係証明書」「基本証明書」「婚姻関係証明書」

「入養関係証明書」「親養子関係証明書」

戸籍及び家族関係証明書等は在大阪大韓民国総領事館で取得可能ただし、代理人では親養子関係証明書は取得できない。

駐大阪大韓民国総領事館

https://overseas.mofa.go.kr/jp-osaka-ja/index.do

家族関係登録簿等の証明書交付申請書、委任状、依頼人の身分証明書の写し

代理人の身分証明書の写し

父親は出生から死亡までの戸籍及び家族関係証明書等があった。

母親は婚姻から死亡までの戸籍及び家族関係証明書などがあった。

母親は出生から婚姻までの戸籍は見つからなかった。

姉及び依頼人の家族関係証明書等が取得。

被相続人及び兄は、両親の戸籍及び家族関係証明書に記載なし。

2021-08-04駐日本国大韓民国大使館

委任による家族関係登録簿等申請に関する案内

「第三者が業として家族関係書類発行を委任される行為は、刑事告発になる可能性がありますので、格別に留意してください。」

https://overseas.mofa.go.kr/jp-ja/brd/m_11900/view.do?seq=760726&srchFr=&srchTo=&srchWord=&srchTp=&multi_itm_seq=0&itm_seq_1=0&itm_seq_2=0&company_cd=&company_nm=

委任状

被委任者(委任を受けて、窓口に来られる方)姓 名:生年月日:住 所:

委任人 は下記の行為に関する権限を上記の に委任する。

下記「家族関係の登録等に関する法律」第14条及び「家族関係の登録等に関する規則」第19条により登録簿等の記載事項等に関する証明申請書の提出及び受領等に関する一切の行為

家族関係の登録等に関する法律

第14条(証明書の交付等) ①本人または配偶者,直系血族,兄弟姉妹(以下,本条では「本人等」という)は第15条に規定する登録簿等の記録事項に関して発給できる証明書の交付を請求できるが,本人等の代理人が請求する場合には本人等の委任を受けなければならない。ただし,次の各号のいずれかに該当する場合には本人等でない場合でもその交付を申請することができる。

1.国家または地方自治団体が職務上の必要に従い文書で申請する場合

2.訴訟・非訟・民事執行の各手続で必要な場合

3.他の法令で本人等に関する証明書を提出することを求められる場合

4.その他大法院規則で定める正当な利害関係を有する者が申請する場合

②第15条第1項第5号の親養子入養関係証明書は次の各号のいずれかに該当する場合に限りその交付を請求することができる。

1.親養子が成年になり申請する場合

2.婚姻当事者が「民法」第809条の親族関係を把握しようとする場合

3.法院の事実照会嘱託があるか捜査機関が捜査上の必要に従い文書で申請する場合

4.その他大法院規則で定める場合

③ 第1項及び第2項に従い証明書の交付を申請する者は手数料を納付しなければならず,証明書の送付を申請する場合には郵送料を別に納付しなければならない。

⑤ 市・邑・面の長は第1項及び第2項の請求が登録簿に記録された者についての私生活の秘密を侵害するなど不当な目的によることが明らかと認めたときには証明書の交付を拒否することができる。

⑥ 第1項から第4項までの規定は閉鎖登録簿に関する証明書の交付の場合にも準用する。

○ 添付書類

委任人と被委任者の身分証明書の両名写し一部。

身分証明書は、在留カード、パスポート、住基カード

年月日委任者(委任をした方)姓 名:住 所:生年月日:電話番号:

(5)姉

・当初、姉についての言及はなかった。

両親の戸籍に昭和年に出生しており、すぐに死亡したが、戸籍及び家族関係証明書等にも生存として記載したまま。

昭和年以前に死亡しているので、外国人登録原票は作成されておらず、区役所にも死亡届は残っていない。

(6)法務局に相談

・被相続人及び父母の外国人登録原票の世帯構成員の欄などで、北朝鮮に行った兄の記載がなかった。

・父母の戸籍及び家族関係証明書等に兄の記載はなかった

被相続人及び父母の外国人登録原票

被相続人の住民票の除票

父母の戸籍・家族関係証明書等

姉及び依頼人の家族関係証明書等

兄はいないものとして法務局に相談し、上申書案を出した。

(5)登録原票及び戸籍(家族関係証明書等)を取得しただけの段階

・被相続人及び両親の外国人登録原票には、北朝鮮に行った兄の記載はない。

→登録原票の家族の欄にも兄の記載はなかった。

→両親の戸籍や姉、依頼人の戸籍にも兄の記載はなかった。

→両親の外国人登録原票には、被相続人の記載があった。

年月日  被相続人氏名  死亡日時 年月日

出生日 年月日  最後の住所 大阪府

上申者(上記相続人) 上申書案

今般後記不動産(本件不動産)の相続による所有権移転登記申請にあたり、次のとおり上申いたします。

1.被相続人が、本件不動産の所有者であったこと

被相続人は日本国籍ではありません。そのため、日本において戸籍がありません。さらに、被相続人の両親及び兄弟姉妹は韓国籍ですが、被相続人は韓国籍を取得していないため、両親の戸籍には掲載されていません。

以上から、被相続人の存在を証する公的な情報は、外国人登録原票及び住民票の除票しかありません。しかしながら、外国人登録原票には、住所地として●●とあり、父の氏名として●、母親の●としており、私たち兄弟姉妹と同じです。

さらに、本件不動産は、平成年月に母から相続しています。また、被相続人の遺品から本件不動産の登記済証が見つかりました。以上から、本件不動産の所有者だったは、私達の兄弟と間違いありません。

2.相続人が私達兄弟姉妹であること。

被相続人は婚姻しておらず、直系卑属がいません。さらに、両親が死亡しているため、相続人は私達兄弟姉妹となります。在大阪韓国総領事館で父の戸籍は出生から死亡まで戸籍等は取得することができましたが、母の戸籍は婚姻前のものが取得できませんでした。在大阪韓国領事館の担当者によると、何らかの理由で婚姻前の戸籍は消失しているようです。

また、母及び父の家族関係証明書や戸籍には、子供として●人の名前があります。ところが、年生は、出生後すぐに死亡したと両親から聞いていますが、死亡の届けがされていないため、韓国の書類では現在も生きているような扱いとなっています。今回、韓国の証明書で死亡した旨を記載するために、当時家族が住んでいた役所に問い合わせをしましたが、当時の書類は破棄されてありませんでした。

以上から、相続人は、○○で間違いありません。

3.万一、第三者より異議がありましたときは、私ども相続人が一切の責任をもって処理し、貴庁にご迷惑はかけません。

相続を証する書面及び住民票除票写し並びに所有権移転登記済証(写)等により被相続人の同一性が確認されると思科致します。さらに、韓国戸籍及び被相続人の外国人登録原票などで、相続人が私達だけだと思科します。よろしくご処理賜りますようお願い申し上げます。

不動産の表示

(5)法務局からの回答

・担当登記官は、平成年月の相続登記の際の申請書類を確認したところ、被相続人には兄がいるはずである。当時、北朝鮮の書類を提出しており、無視することはできない。前回の登記で姉の記載がないが、両親から死亡したという話を聞いたという記載は弱いので、お墓があるとか、命日にはお参りしているとか、書いてほしい。

(6)前回の相続登記について

・依頼人から預かった平成年の相続当期の登記関係書類には、兄の朝鮮民主主義人民共和国発行の居住証明書及び遺産分割協議証明書などがついていた。兄弟の外国人登録原票の中に、申請人として兄の記載があった。

(7)朝鮮総連経由での書類の取得について

●年ほど前に朝鮮総連での相続などの関係書類を取得する担当者だった人によると、北朝鮮に移住した在日の名簿が朝鮮総連及び北朝鮮本国の双方にあり、人物の行方は簡単にわかるという。

→総連の担当者が北朝鮮に行った際に、本国の担当者に依頼するという。

→ただし、手続としては、朝鮮総連を通じつつ、手紙で本国の親族に連絡をして、事情を説明した方が話がスムーズに行くという。

●現在の担当者によると、コロナにより、封鎖されて、手紙の行き来も難しい。本国に行くことができないので、手続はできない状態が続いている。いつ入手できるか不明。費用は、書類一通で1万円。

(8)日本郵便

・東京の広報に聞いたところ、北朝鮮に出す手紙を受け付けることはできるが、届くかどうかは、保証できないという。

(9)財務省国際局調査課外国為替室

https://www.mof.go.jp/application-contact/procedure/disclosure_etc/tuuhou/laws/gaikokukawase.html

・外国為替及び外国貿易法16条に基づき、北朝鮮に住所などを有する個人等に対する支出は、原則、許可制をすることにより禁止する。

例外・北朝鮮に滞在する居住者がその滞在に伴い通常必要とする支払い

・北朝鮮に住所又は居所を有する自然人に対する支出であって、次に掲げるもの(10万円に相当する額以下のものに限る。)

(i)北朝鮮に住所又は居所を有する自然人がする食糧、衣料、医薬品その他生活に欠くことができない物資の購入に充てられるもの

(ⅱ)北朝鮮に住所又は居所を有する自然人が衣料サービスを受けるために充てられるもの

(ⅲ)(ⅰ)及び(ⅱ)に掲げるもののほか、人道上の理由により特に必要と認められるもの

→もし、相続手続のために、送金するとすれば、上記の例外に当てはまるか問い合わせた。

→担当者は、相続手続のためというのは、そもそも例外に当てはまるかは、ケースバイケースだが、現在の日本の金融機関は北朝鮮に金融機関と提携していないので、合法的に送金するのは事実上、難しいのではないかという。

→こういった相談は意外とある。

(10)法務局に再び相談

・北朝鮮への送金は、非合法であり、北朝鮮政府に証明書の発行を請求するこはできないのではないか。

・朝鮮総連でも、現在、手続ができていない状態が続いている。

→不在者財産管理人の選任しかないと回答してくる。

(11)不在者財産管理人

民法25条1項「従来の住所又は居所を去った者がその財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命じることができる。」

・権限の定めのない代理人として、保存行為ほか、物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為することができる。(民法28条、103条)

→遺産分割協議は、権限外行為なので、家庭裁判所の許可が必要となる。

・管轄

不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法145条)

→家事事件手続法の他の規定により家事事件の管轄が定まらないときは

→従来の住所や居所がいずれも不明な場合は、財産の所在地を管轄する家庭裁判所又は家庭裁判所(家事事件手続法7条、家事事件手続規則6条)

→家裁に問い合わせると、最後の住所地を閉める書類が不明な場合は、家裁になる可能性があるが、財産の所在地からOKだろうという。

→書記官の話では、過去に北朝鮮からみの不在者財産管理人の選任の申立があり、家庭裁判所では受けるケーズもあるという。

・申立の添付書類に戸籍などが添えられない点について

→家族の原票にある名前や、北朝鮮の居住証明書など、提出できる範囲の書類

・予納金 30万円

・財産価格は130万円

→普通の不在者管理人の選任ならば、遺産分割協議書を署名押印とともに財産価格の130万円を渡し、代理人がそこから報酬を差し引いて、供託することになると思われる。(兄が日本に来る可能性は低いため。予納金は申立人に返還される。

→そうるすと、申立費用を含めて、とりあえず160万円が必要

→不在者が帰って来る可能性はほぼないことから、帰来時弁済(不在者が帰ってきたときに、他の相続人が代償金を支払う)になる可能性があるか、裁判所に言わせた。

→本件は、可能性は高いが、裁判官の判断。

→以上を、依頼人に説明して、不在者在財産管理人を選任するか検討してもらう。

PAGE TOP