第2回民事信託実務入門―信託契約条項を書くための準備・検討―

信託フォーラム[1]の金森健一弁護士「第2回民事信託実務入門信託契約条項を書くための準備・検討」からです。

まず、預金取扱金融機関が常に譲渡の承諾をしないとは言い切れない(得意客であれば名義変更に応じるところもあると聞く。)。

初めて聴く金融機関の実務運用でした。

信託財産目録に預貯金口座が記載されたとしても、預貯金債権に譲渡禁止特約(現在の譲渡制限特約)が付されていることは、「少なくとも銀行取引につき経験のある者にとっては周知の事柄に属する」ことを踏まえれば、預貯金債権そのものを対象とするのではなく、預貯金口座に預け入れてある金銭を信託財産とするのが当事者の意思であると解釈することは十分可能である(実務の大半ではおそらくそのように扱われて金銭が移転していると思われれる。譲渡できないものをあえて信託財産としたと解することに意味があるとは思えない。)。

「少なくとも銀行取引につき経験のある者にとっては周知の事柄に属する」について、委託者予定者・受託者予定者その他の民事信託に関係する方(第3次受益者予定者等)についても周知の事実なのか、分かりませんでした。

最高裁判所第一小法廷昭和48年7月19日判決昭和47(オ)111預金支払請求

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52073

譲渡禁止の特約のある債権の譲受人は、その特約の存在を知らないことにつき重大な過失があるときは、その債権を取得しえない。

国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000141

(受給権の保護)

第二十四条 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=329AC0000000115

(受給権の保護及び公課の禁止)

第四十一条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

2 租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。

それでは、委託者がその名義口座で受け取った金銭を信託財産とすることはできるか。信託財産の追加(追加信託に限られない。)の法律構成如何に検討すべき点は異なると思われる。検討は、別の機会としたいが、少なくとも「委託者の行為」が必要になるのであり、委託者に属する財産の移転を受託者が独断で行うことはできないことは、最低限踏まえるべきであろう。

 少なくとも「委託者の行為」が必要になる、に関しては、分かりませんでした。このような運用をした場合、委託者が信託行為の当初に信託財産に属する財産とした財産がなくなった場合、信託は終了となります(信託法2条1項)。

 委託者の地位の移転(信託法146条)により、信託財産に属する金銭については、信託行為後に受益者から拠出が可能になるような条項を設けることが必要だと思います。

社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=413AC0000000075_20210901_503AC0000000037

(振替口座簿の記載又は記録事項)

第百二十九条

3 振替口座簿中の各口座(顧客口座を除く。)には、次に掲げる事項を記載し、又は記録する。五 加入者が信託の受託者であるときは、その旨及び前二号の数のうち信託財産であるものの数

(信託財産に属する振替株式についての対抗要件)

第百四十二条 振替株式については、第百二十九条第三項第五号の規定により当該振替株式が信託財産に属する旨を振替口座簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。

2 前項に規定する振替口座簿への記載又は記録は、政令で定めるところにより行う。

しかし、金銭消費貸借契約等において、抵当不動産が債権者に無断で譲渡されたときは、返済についての期限の利益を喪失する旨の特約が付されているのが通常である。信託により不動産は、委託者(債務者)から受託者へ譲渡される(信託法3条1号。)。信託を利用するにあたっては、債権者(金融機関)の許可を得られるか事前に確認するようにしたい。

 委託者(債務者)から受託者へ譲渡される(信託法3条1号。)、の部分は、委託者(設定者)から受託者へ譲渡される、ではないかなと思いました。

 記事とは関係がないのですが、信託行為について金融機関の事前チェックを受けていますが、信託目録の記録事項については受けていません。この辺りは、他の地域・金融機関ではどういう運用なのか、気になりました。

信託法では、消極財産は当初信託財産にならないと整理され、委託者が負う債務を信託財産とすることはできない。債務引受を行い、かつ、当該債務が信託財産責任負担債務(信託法2条9項)となるように要件(同法21条1項各号)を充足させることになる。

 債務引受を行い、について債務引受が必要なのか、どのような趣旨なのか分かりませんでした。委託者の固有財産への影響を一切排除したいということだとすれば、債務引受に加えて(連帯)保証人になっている場合は、それらを外すことも必要だと思います。

信託法(平成十八年法律第百八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(信託の方法)

第三条 信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。

一 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法

(定義)

第二条 

2 この法律において「信託行為」とは、次の各号に掲げる信託の区分に応じ、当該各号に定めるものをいう。

9 この法律において「信託財産責任負担債務」とは、受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務をいう。

(信託財産責任負担債務の範囲)

第二十一条 次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

一 受益債権

二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利

三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

四 第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権

五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利

六 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しないもののうち、次に掲げるものによって生じた権利

イ 第二十七条第一項又は第二項(これらの規定を第七十五条第四項において準用する場合を含む。ロにおいて同じ。)の規定により取り消すことができない行為(当該行為の相手方が、当該行為の当時、当該行為が信託財産のためにされたものであることを知らなかったもの(信託財産に属する財産について権利を設定し又は移転する行為を除く。)を除く。)

ロ 第二十七条第一項又は第二項の規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないもの

七 第三十一条第六項に規定する処分その他の行為又は同条第七項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利

八 受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利

九 第五号から前号までに掲げるもののほか、信託事務の処理について生じた権利

(委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例)

第九十条 次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

一 委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託

二 委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託

2 前項第二号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

民法(明治二十九年法律第八十九号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)

第六百五条の三 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第三項及び第四項の規定を準用する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この条項は、私はこれまで付けていなかったので、付けないといけないなと思います。

“委託者に属する特定の財産(所有権等)を受託者に移転する、後は受託者の好きにして構わない”というのは、信託の目的を欠く単なる無償譲渡(贈与)になりかねない。財産を譲り受けて管理をする受託者が達成を目指すべき目的が委託者において存在するかを確認することになる。

 もし、“委託者に属する特定の財産(所有権等)を受託者に移転する、後は受託者の好きにして構わない”と定めたとして、単なる無償譲渡(贈受託者に)になりかねない、というのは、少し違和感を感じました。理由は、信託法2条、同法14条同法26条、27条、同法29条から47条、同法92条、同法163条から167条などの存在です。

上記(ア)の例は、誰が受益者であるのかが不明である。「受託者及びその直系血族」は管理の主体とされている。明確ではないが、仮に、同人らが利益帰属主体でもあるとなると、信託の本質(信託法8条)を欠くことを目的とするもので、信託の目的と認められないと思われる。

私が読んだ限りですが、受益者は○○家ではないかと思いました。受益者を誰と特定することが必要なのか、分かりませんでした。信託行為に記録されているのではないかと思います[2]

信託目的の機能として、受託者が信託事務を行う上での指針となり、その権限の外延を画する機能を挙げる見解がある。この観点からすると、受託者が信託財産の管理(保全)、処分又は運用のいずれまでをすることができるとするかを明らかにしておくべきである。

 保全、運用に関しては、明らかにする必要があるかもしれません。管理、処分に関しては、信託法2条1項において一定の目的に従い可能とされているので、制限される場合のみ記載することで足りるのではないかと思います。

信託の存在を限界づけるための信託目的―中略―たとえば、不動産所有者の認知症対策のみをする場合

 信託の目的で抽象的に定めるのではなく、信託の終了事由で具体的に定めることで足りるのではないかなと思いました。

 不動産所有者の認知症対策のみをする場合、という民事信託・家族信託があるのか、私には分かりませんでした。

信託法は、委託者、受託者及び受益者の合意により信託の変更をすることができるとする(149条1項)。委託者や受益者はほとんどの場合個人であろうから、変更権者が意思表示することが出来なくなったときの備えを考えることになる。

 変更権者から委託者を外せばよいのではないかなと思いました(信託法149条3項)。任意後見人(代理権目録への記録を含む。)、後見人等との関係について、信託行為への記載。

そのため、一個の受益権を複数人で準共有している場合は、信託法105条ただし書が許容する別段の定めをおいても適用されず、準共有に関する民法の規律(264条、251条及び252条)に従い意思決定をするのである。「受益者」と称される者に対し与えるのが「受益権」であるのか「受益権の持分」であるのかは明確に区分して、それに見合うルールを定めるようにしたい。

 受益権の単位は、信託行為によって定めることが出来る[3]ので、基準日と受益権1個の価格、評価方法について信託行為で定めておけば、「受益権の持分」というのは生じないのではないと考えます。


[1] 17号,2022年4月,日本加除出版P137~

[2] 道垣内弘人『信託法【現代民法別巻】』有斐閣、2017年、P44,P293、P391

[3] 道垣内弘人『信託法【現代民法別巻】』有斐閣、2017年、P323

照会事例から見る信託の登記実務(23・完)

登記情報[1]の記事、横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(23・完)」から考えてみたいと思います。

一方後者の場合には、信託財産責任負担債務(信託法2条2項、21条1項)と解されるので、差押えが可能であると考えられますが、差押えの登記をするためには、前述したとおり、当該差押えが信託法21条1項2号に定める信託財産責任負担債務に該当することが登記原因証明情報の記録から明らかにされなければならないものと考えます。

差押えの登記申請の申請(嘱託)人からは、滞納期間と不動産登記記録から、信託の登記原因日付を示すことになるのかなと思います。


[1] 726号、2022年5月、(一社)金融財政事情研究会,P33~。

一般社団法人を受託者とした受益者連続信託

  信託フォーラム[1]の記事、中山由宇弁護士・民事信託士「一般社団法人を受託者とした受益者連続信託」から考えてみたいと思います。

本件では、受託者として適当な親族等が見当たらなかったため、本信託の受託を目的に、委託者である両親と弁護士(筆者)及び司法書士の4名を社員兼理事として一般社団法人を設立した。関与する委託者らと法律専門職を2名ずつとすることで、相互チェックが働きやすくし、委託者らの思いを専門的見地から問題のない形で実現することを目指す体制とした。また、信託監督人と一般社団法人監事を兼ねる形で税理士にも関与してもらい、監督機能を強化した。同税理士には、受託者の義務である帳簿などの作成及び受託者(一般社団法人)の確定申告を併せて依頼した。

 委託者である両親と弁護士(筆者)及び司法書士の4名を社員兼理事として一般社団法人を設立した、について。

・・・信託業法2条1項に抵触しないのか、分かりませんでした。

信託業法(平成十六年法律第百五十四号)(定義)

第二条 この法律において「信託業」とは、信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。

 信託監督人と一般社団法人監事を兼ねる形で税理士にも関与してもらい、監督機能を強化した。同税理士には、受託者の義務である帳簿などの作成及び受託者(一般社団法人)の確定申告を併せて依頼した、について。

 受託者の義務である帳簿などの作成は、信託監督人という立場で可能か、について。

 受託者が作成する帳簿などを読んだりコピーを取ったりして、受託者に対して指摘することが仕事で、信託監督人という立場で可能なのか、分かりませんでした。

  受託者の義務である帳簿などの作成は、一般社団法人の監事という立場で可能か、について。 

 監事の仕事は、一般社団法人の財産状況の調査や監査報告の作成で、帳簿などの作成が可能なのか、分かりませんでした。

帳簿などの作成を行うのであれば、一般社団法人の理事に就任するか、税理士として第三者委託の受託者という立場で行うのかなと思いました。

信託法(平成十八年法律第百八号)(信託監督人の権限)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

第百三十二条 信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第九十二条各号(第十七号、第十八号、第二十一号及び第二十三号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

2 二人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000048

(監事の権限)

第九十九条 監事は、理事の職務の執行を監査する。この場合において、監事は、法務省令で定めるところにより、監査報告を作成しなければならない。

2 監事は、いつでも、理事及び使用人に対して事業の報告を求め、又は監事設置一般社団法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

3 監事は、その職務を行うため必要があるときは、監事設置一般社団法人の子法人に対して事業の報告を求め、又はその子法人の業務及び財産の状況の調査をすることができる。

4 前項の子法人は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる。

 受託者の(一般社団法人)の確定申告を、信託監督人という立場で可能か。

・・・可能なのか、分かりませんでした。

 受託者の(一般社団法人)の確定申告を、一般社団法人監事という立場で可能か。

・・・可能なのか、分かりませんでした。

 確定申告を行うのであれば、一般社団法人の理事に就任するか、税理士として第三者委託の受託者という立場で行うのかなと思いました。

信託が成立するまでの過程において弁護士が様々な仕事をしてきたことに対する報酬(1)ということであれば、既に生じている委託者に対する金銭債権ということになるので、信託財産責任負担債務として受託者が引き受けるという構成になるのではないか。本信託に関して今後受託者等が弁護士から法的な助言指導を受けることに対する報酬(2)ということであれば、信託契約書にその点を記載すべきでないかとの指摘であった。

 信託の清算に関する論点で、参考になりました。(1)の場合、信託の成立までの報酬を、信託の終了後にもらうという構成になるのかなと思ったのですが、何故なのか分かりませんでした。

(2)の場合、一般社団法人の理事としての報酬は、どのように決めているのか気になりました。

信託不動産の処分や大規模修繕は、残された受益者の生活に重大な影響が生じかねないものであり、慎重を期する必要があると考えた。そのため、信託不動産の処分については、受託者は、受益者またはその成年後見人等との協議に努めたうえで信託監督人の同意を得なければ出来ないものとした。

 記事では、成年後見人等とは協議、信託監督人には同意を得る、と差を付けています。居住用不動産の場合は、法律が優先し成年後見人が就任している場合は、協議ではなく家庭裁判所の許可が必要だと思います。居住用不動産ではない場合、どのようになるのか分かりません。成年後見人が就任している場合、家庭裁判所への事前報告を行うのが望ましいと考えます。ただし、私は信託行為時における成年後見制度との関係について、委託者の考えを出来るだけ記録するようにしているので、考え方としては似ているのかなと思いました。


[1] Vol.16、2021年10月日本加除出版

依頼者等の本人確認等に関する規定改正案

その他

・意見

本人確認規定の改正の今後の検討のお願い

・根拠法令

犯罪による収益の移転防止に関する法律第2条第2項第46号・同法第4条第1項・別表。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令8条3項9号・同4項6号イ、ロ、ハ。

・理由

2021年駿河台大学34巻2号

金森健一「司法書士による民事信託(設定)支援業務の法的根拠論について:(続)民事信託業務の覚書:「民事信託」実務の諸問題⑸

https://surugadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=2275&item_no=1&page_id=13&block_id=21

・参考

2013年3月1日会規第95条「依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規定」

https://www.nichibenren.or.jp/activity/improvement/mimoto_kakunin.html

依頼者等の本人確認等に関する規定改正案

(目的)

第1条 この規程は、沖縄県司法書士会会則94条の2に定める依頼者及びその代理人等の本人であることの確認並びに記録の作成、保存等について必要な事項を定め、もって司法書士法上の職責及び会則に基づく本人確認等の適正な実施を図ることを目的とする。

(取引時における依頼者の本人特定事項の確認)

第2条 この規定における用語の定義は、次のとおりとする。

  • 依頼者とは、会員に対して次の事務の依頼をする自然人又は法人をいう。

ア 司法書士法第3条に基づく事務

イ 司法書士法第29条及び司法書士法施行規則第31条に基づく事務

  • 代理人等とは、法定代理人、法人の代表者、法人の業務権限代行者、法人の代表者以外の役員、商業使用人、任意代理人又は使者等をいう。
  • 依頼者等とは、依頼者及びその代理人等をいう。
  • 本人確認とは、依頼者及び代理人等の本人であること並びに依頼者が依頼された事務における適格な当事者であることの確認をいう。
  • 意思確認とは、依頼の内容の確認及びその内容に基づく事務について依頼の意思を確認することをいう。

(本人確認等の対象)

第3条 本人確認及び意思確認すべき対象者は、以下のとおりとする。

  • 本人確認の対象者は、依頼者等とする。ただし、依頼者が国、地方公共団体、人格のない社団又は財団及びこれらに準ずるものの場合は、その代理人等を依頼者とみなす。
  • 意思確認の対象者は、依頼者(前号の規定により依頼者とみなされた代理人等を含む。)又はその代理人等であって依頼内容に係る事務について代表権若しくは代理権を有する者その他これに準ずる者とする。ただし、当該対象者が代理人等(法定代理人又は法人の代表者を除く。)である場合において、当該代理人等の言動、受領した書類等の内容から、依頼者(法定代理人又は法人の代表者を含む。)の意思を疑うに足りる事情があるときは、依頼者の意思確認をしなければならない。

(本人確認の方法)

第4条 本人確認は、次の方法による。

  • 依頼者等が自然人である場合

ア 依頼者等と面談し、第7条第1項に定める本人確認情報の提示を受ける方法

イ 上記アの方法によらない合理的理由がある場合には、第7条第1項に定める本人確認情報又はその写しの送付を受けて当該情報の写しを第6条に定める記録に添付するとともに、当該確認情報書類に記載された住所に宛て、当該依頼者等に対し、転送不要扱いの書留郵便(簡易書留郵便含む。)等により文書送付を行い確認する方法

ウ 上記ア及びイの方法によらない合理的理由がある場合には、司法書士の職責に照らし適切と認められる方法

  • 依頼者等が法人である場合

ア 法人の代理人等と面談し、当該法人の登記事項証明書、印鑑登録証明書の提示を受ける方法又は当該法人の会社法人等番号の提供を受けて、当該番号に基づき、当該法人の登記情報等により確認する方法

イ 上記アの方法によらない合理的理由がある場合には、法人の代理人等から当該法人の登記事項証明書又は印鑑登録証明書の提示を受ける方法若しくは当該法人の会社法人等番号の提供を受けて、当該番号に基づき、当該法人の登記情報等により確認したことを証する情報(以下「法人等確認情報」という。)を第6条に定める記録を添付するとともに、当該法人等確認情報に記録された本店、主たる事務所又は支店等に宛て、転送不要扱いの書留郵便(簡易書留郵便含む。)等により文書送付を行い確認する方法

ウ 上記ア及びイの方法によらない合理的理由がある場合には、司法書士の職責に照らし適切と認められる方法

2 前項の規定にかかわらず、既に本人確認記録のある依頼者等の本人確認については、当該本人確認記録に記録されている依頼者等と同一であることを確認する方法で足りる。

3 前項の確認方法は、依頼者等と同一であることを確認できる情報の提示あるいは送付を受けるか、又は同一であることを示す事項の申告を受ける方法とする。ただし、依頼者又はその代理人等と面識がある場合はこの限りではない。

(意思確認の方法)

第5条 意思確認は、次の方法による。

 (1) 事務の依頼を受けるにあたり、自然人たる依頼者又はその代理人等に対し面談をする方法

 (2) 前号の規定にかかわらず、合理的理由がある場合には、依頼者等の本人確認情報の原本又は写しを取得するとともに依頼者等に対し電話をし、本人固有の情報を聴取するなどして本人であることの確認を行った上で確認を行う方法、その他これに準ずる方法であって、司法書士の職責に照らし適切と認められる方法

2 法人の意思確認の対象者が、当該法人を代表する権限を有しない代理人等である場合は、当該法人の代表権限を有する者が作成した依頼の内容及び意思を証する情報を取得しなければならない。

(本人確認等の記録)

第6条 本人であることの確認及び依頼された事務内容に関する記録事項は次のとおりとする。

 (1) 本人であることの確認に関する記録

ア 本人確認及び意思確認を行った者の氏名

イ 記録を作成した者の氏名

ウ 依頼者又は代理人等の氏名、住所及び生年月日(法人の場合は、名称又は商号及び主たる事務所又は本店の所在地)

エ 確認を行った依頼事務

オ 確認を行った方法

カ 代理人等の場合は、依頼者との関係及び代理人等と認めた理由

キ 本人確認情報書類の名称及びその特定事項

ク 確認を行った日及び場所

 (2) 依頼された事務の内容に関する記録

ア 意思確認の相手方の氏名

イ 依頼を受けた事務の内容

ウ 確認を行った日及び場所

エ 確認を行った方法

オ 手続等の代理、記録作成代行を行った日及び手続等が終了した日

2 前項第1号ウの規定にかかわらず、代理人等の記録事項について合理的な理由がある場合は、氏名、役職その他の司法書士の職責に照らし適切と認められる本人を特定するに足りる事項を記録事項とすることが出来る。

3 依頼が特定取引(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第4条第1項に定める特定取引をいう。)に該当する場合は、前項第1号の記録事項に加え、次のアからウの事項を記録する。 また、その依頼に基づいて行った事務が特定業務(犯罪による収益の移転防止に関する法律第4条第1項に定める特定業務をいう。)に該当する場合には、前項第2号の記録事項に加え、次のエ、オの事項を記録しなければならない。

ア 本人確認情報の提示を受けた日時、送付を受けた場合はその日付

イ 依頼者等へ文書送付をした場合は、その方法及び日付

ウ 依頼者が自己の氏名及び名称と異なる名義を用いるときは当該名義とその理由

エ 代理等に係る財産の価額

オ 財産移転を伴う代理等の場合は、移転先及び移転元の住所、氏名(法人の場

合は、名称及び主たる事務所又は本店の所在地)

4 第1項第1号の記録事項のうち、本人確認情報書類の写しを添付した場合は、当該確認情報により確認できる事項については記録しないことができる。

5 既に依頼者等の本人確認記録がある場合は、第1項第2号、第3項エ、オ及び保存している本人確認記録を検索するための事項を記録すれば足りる。

6 前項の記録は、既存の記録とともに、新たに依頼された事務の内容に関する記録の事務終了の日から10年間保存しなければならない。

7 本条の記録は、検索可能としなければならない。

(自然人の本人確認書類)

第7条 本人確認情報書類は、次の各号のいずれかとする。ただし、官公庁が発行する証明書で有効期間又は有効期限のある書類にあっては提示を受ける日において有効なもの、その他の書類にあっては発行のときから3か月以内のものに限る。

 (1) 官公庁の発行する次の公的証明書

ア 運転免許証

イ 住民基本台帳カード、個人番号カード(顔写真付)

ウ 旅券

エ その他顔写真付きで氏名、住所、生年月日の記載のある公的証明書

 (2) 前号以外の官公庁の発行する公的証明書

ア 国民健康保険証

イ 介護保険証

ウ 国民年金手帳

エ 身体障害者手帳

オ 精神障害者保健福祉手帳

カ 療育手帳

外国人登録証明書在留カード・特別永住者カード

ク 上記の書類に準ずるもので、氏名、住所、生年月日の記載のある公的証明書

 (3) 依頼者が作成した委任状に押印した印鑑にかかる発行日から3か月以内の印鑑登録証明書

2 依頼された事務が、特定取引以外のものである場合は、司法書士の職責に照らし信頼にたる機関が発行した身分証明書その他の身許証明書を本人確認書類情報とすることができる。

(受託拒否)

第8条 依頼者等が、依頼者及びその代理人等の本人であることの確認、ならびに依頼の内容の確認、及び依頼の意思の確認に協力しない場合は、それを正当理由として事件受託を拒否することができる。

(記録の適正管理)

第9条 この規程に定める記録の保存に関しては、司法書士法及び個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の規定に十分配慮し、適正に管理しなければならない。

(他の法令等の遵守)

第10条 犯罪による収益移転防止に関する信託法に基づく信託行為の設定、信託の併合・分割又は信託行為の変更・終了など、その他の法令の規定が存する場合はこの規定とともに、当該法令の規定を遵守しなければならない。

(規程の改廃)

第11条 この規程の改廃は、理事会の決議による。

附則

(特定取引以外のものであるときの経過措置)

第1条

依頼された事務が特定取引以外のものであるときは当分の間、次条以下の規定によるものとする。

(本人確認の方法に関する経過措置)

第2条

本規定第2条第1項第1号ア中「依頼者及びその代理人等」とあるのは、「依頼者又はその代理人等」として、同号ア中「第5条第1項に定める本人確認書類の提示を受ける方法」とあるのは、「第5条第1項に定める本人確認書類の提示を受ける方法」とあるのは、「第5条第1項に定める本人確認書類の提示を受ける方法その他司法書士の職責に照らし適切と認められる方法」とする。

2 本規定第2条第1項第2号アの適用については、当該法人の登記事項証明書又は印鑑登録証明書を取得している場合は、これらの提示を受けることを要しない。

附則

(施行期日)

1 この規程は、平成22年11月3日から施行する。

(施行期日)

1 この規程は、平成24年7月9日から施行する。

(施行期日)

1 この規程は、平成25年4月1日から施行する。

(施行期日)

1 この規程は、平成25年4月16日から施行する。

附則

(施行期日)

1 この規程は、平成28年3月15日から施行する。

照会事例から見る信託の登記実務(22)

 登記情報[1]の記事、横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(22)」から考えてみたいと思います。

照会者は、信託条項中、「受託者は、本件信託不動産に関し、受益者又は委託者を債務者とする抵当権等の担保を設定する登記手続、担保権を変更・抹消する登記手続等を行うことができる。」旨の定めがあるので、債務者が受益者又は委託者ではない本件抵当権に関して、受託者は、当該根抵当権の登記の抹消の申請をすることができると考えているようです。

 私は、問7の文章から、出来ると考えていると読むことが出来ませんでした。

一般に信託登記に優先する根抵当権が設定されている場合には、担保権が実行されれば、信託の登記は抹消される運命にあることから、信託契約そのものが不安定なものとなります。信託業実務では、一般にそのような信託契約を嫌い、信託契約に先だって、当該根抵当権を抹消するものと思われますが、本件は、何らかの事情で、当初受益者兼委託者を債務者とする根抵当権が存置されているようです。

 信託契約そのものが不安定なものとなることについて、記載の通りだと思います。記事に信託業、と記載があることから、信託業法2条に定義されている信託業を前提にした登記実務を解説されているのかもしれません。

 民事信託に関して私の知る限り、信託契約に先だって、既登記の根抵当権を抹消するという取扱いを聴いたことがありません。(根)抵当権に関する登記は、金融機関の了承を得て手を加えていません。今後、実務も変わっていくのでしょうか。例えば、一度抹消して債務者を受託者名義でもう一度設定登記の申請を行うのか、受託者名義に債務者変更登記を申請するのか。

本問では、信託条項中、「受託者は、本件信託不動産に関し、受益者又は委託者を債務者とする抵当権等の担保を設定する登記手続、担保権を変更・抹消する登記手続等を行うことができる。」旨の定めがあります。

 私は、問いを投げかけている人が、なぜ受益者又は委託者を債務者とする、という文言を入れたのだろうと思いました。受益者又は委託者が債務者ではない(根)抵当権は少ないかもしれませんが、あえてこの文言を入れて受託者の裁量を狭くする必要はないのかなと思いました。必要に応じて受益者や受益者の法定代理人などの同意を求めれば、債務者が誰、という入り口で弾く必要性は低いのかなと感じます。

本問の場合には、抵当権の一部移転の登記原因として、「同日信託財産の一部処分」をも登記しなければなりません。この場合の登記記録には、「原因 平成何年何月何日一部保険代位 弁済額金〇円」として、登記をすることができる、との振合いが相当です。

 この文章の位置付けは、先例・通達と同様と考えても良いのでしょうか。私には分かりませんでした。

上記定めは、「信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの」(信託法21条1項3号)に該当するものと思われることから、信託財産責任負担債務と解して差し支えないと考えます。

 次に照会者は、上記定めを①信託目録に記録すべきか考えているようですが、信託目録の記録事項「その他の信託の条項(不動産登記法97条1項11号)」に該当するかは検討が必要と思われます。―中略―なお、当初、上記定めを登記しなかった場合であっても、後日、登記をする必要性が生じた場合には、錯誤を原因とする信託目録の記載事項の更正が認められることはいうまでもありません。

 私は、信託目録の記録事項「その他の信託の条項(不動産登記法97条1項11号)」に該当するかは検討が必要、について同感です。信託財産責任負担債務を信託目録に記録する必要性が分かりませんでした。同様に、抵当権の変更登記申請の際に、錯誤を原因とする信託目録の記載事項の更正登記を申請する必要性も分かりませんでした。登記原因証明情報に記載することで、抵当権変更登記は申請することが出来ると思っていました。


[1] 725号、2022年、4月、(一社)金融財政事情研究会P26~

PAGE TOP