「認知症や意思疎通が困難な人の新型コロナワクチン接種のための意思決定の手引き」を読みながら

日本臨床倫理学会 ワーキンググループ

http://square.umin.ac.jp/j-ethics/

1.意思決定能力が脆弱(十分でない)という理由で、ワクチン接種する機会が妨げられないようにすることは大切です。世界医師会リスボン宣言が「すべての人は、差別なしに適切な医療を受ける権利を有する。」と明記しているように、予防接種の対象者は、誰であれ、ワクチンの利益を享受(きょうじゅ)する権利を有しています。

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日本医師会「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」

https://www.med.or.jp/doctor/international/wma/lisbon.html

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2. 医療ケアチームは、新型コロナ感染症およびワクチンに関する医学的情報を、信頼のおける情報源から、事前に、十分、確認してください。

3. 本人に意思決定能力があれば、医療ケアの方針は、本人の意向(同意あるいは拒否)に沿って決定されるのが自律尊重の倫理原則です。特に、ワクチン接種は、予防的な医療という観点から、本人の同意が重要です。したがって、他からの圧力を受けることなく、自発的にワクチンの接種を選ぶ、ないし拒むことが認められる必要があります。

4. 「意思決定能力」を、先入観を持たずに適切に評価してください。意思決定能力は少しずつ低下していきます。本人の意思決定能力に応じて、方針決定に参加する機会を与えることは重要です。総合的に無能力としてはいけません。

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「機会は与えられるもの」なのか、分かりませんでした。

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5. 本人の意思決定能力や障害の特性に応じた、十分かつ分かりやすい説明に心掛けることが大切です。

6. 本人が自分で決定できないと適切に評価された場合には、本人をよく知る家族等による代理判断が行われます。代理判断とは、家族が家族の利害で判断するのではなく、患者に仮に今意思決定能力があるとするとどのような判断をするのかを、本人の価値等を踏まえて行われます。そのための代理判断においては以下の点に注意をします。

(1)代理判断;本人の新型コロナワクチンを含む予防接種(以下、予防接種という)に関する事前の意思表示があれば、尊重します。

(2)代理判断;(1)がなければ本人の意思を推定します。もし、本人に、以前のような意思決定能力が有れば、ワクチン接種を望んだであろうと推定できれば、同意と推定します。もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことが無ければ、「本人が予防接種を望むだろう」という推定をする参考になります。また、もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことがあれば、「本人が予防接種を望まないだろう」という推定をする参考になります。

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「もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことがあれば、「本人が予防接種を望まないだろう」という推定をする参考になります。」新型コロナに関するワクチン接種も参考になるのでしょうか。

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(3)代理判断;本人のこれまでの考え方・人生観・価値観や、予防接種の履歴、接種をした場合の社会的な参加の機会の有無などをもとに、本人にとっての最善の利益を考えます。

2認知症や意思疎通が困難な人の新型コロナワクチン接種のための意思決定の手引き

日本臨床倫理学会 ワーキンググループ

【趣旨】2021 年 4 月、COVID-19 パンデミックに対処する有用な方法としてコロナウイルスワクチンの接種が、高齢者施設において開始された。しかし、高齢者施設(障害者施設でも同様です)では、認知症をはじめとして、意思決定能力が低下して意思疎通が難しい入所者が多数おり、本人の意向を確認することが困難な状況が見受けられる。国は「医療行為には本人の同意が前提」との見解を示しているだけで、本人から有効な同意が取得できない入所者への対応は施設に任されているのが現状である。特に、家族がいない場合には、問題が複雑になり、施設関係者も困惑している現状がある。そこで、日本臨床倫理学会は、この倫理的問題の重要性に鑑み、会員から寄せられたパブリックコメントを基に、ワーキンググループでディスカッションを重ね、「認知症や意思疎通が困難な人の新型コロナワクチン接種のための意思決定の手引き」を出すことにした。施設関係者など、新型コロナワクチン接種に関わる人々の意思決定支援に役立つことを望んでいる。

  1. 新型コロナ感染症およびワクチンに関する最新の医学的事項を確認します

新型コロナ感染症の世界的拡大により、できる限り早くワクチン接種が薦められている現状があります。他方、新型コロナ感染症およびワクチンに関する医学的事項が次第に明らかになってきています。

① 高齢者の COVID-19 感染は予後不良で,しばしば致死的です。;要介護高齢者は、入院を要する重症者のハイリスクグループです。さまざまな基礎疾患を合併していることが多く、入院も長期化・重症化しやすく、死亡率が高くなっています。退院後も廃用萎縮による心身機能の低下に陥りやすくなります。

② COVID-19 に対する mRNA ワクチンは副反応を認めるものの,これまでの臨床試験でその副反応を大きく上回るメリットが証明されています。;ワクチンのベネフィットとして、95%の感染予防の有効性がいわれています。また、たとえ 1 回の接種でも抗体の獲得率(70~80%)が高く、もし罹患しても入院・重症化を抑制(80%)できるとの報告があります。ワクチンのリスクとしての副反応は、重篤なものは少ないといわれています。特に高齢者では軽いと言われています。

③副反応に関連して,ワクチン接種を禁忌(*)とする神経疾患は,認知症を含め基本的にないといわれています。(*)接種を控えるか,厳重な医療体制を敷いて行う場合年はアナフィラキーシーショックの既往歴,現時点での発熱疾患などと考えられています。

④施設内クラスター防止は感染対策上,重要な課題である;感染力の強い変異株の出現で,施設内での感染はより大規模なクラスターを引き起こすリスクがあります。もし、ある人がワクチン接種を受けず発症した場合、他のワクチン接種を受けた入所者の人々が「濃厚接触者」扱いになる可能性があります。

⑤認知症の人は十分な感染対策ができない;認知症の人はマスクの着用や、手指衛生などの感染対策が不十分になってしまいがちです。また、介護量も多いため医療ケア担当者も接触する頻度が多くなります。また、介護現場においては、ケアスタッフもPPE やゾーニングなどの隔離医療に慣れていないため、医療対応能力が脆弱です。上記のリスク-ベネフィットバランスにより、ワクチン接種することによる利益は、接種しないことで生じる不利益を上回ると考えられています。また、また、重篤な副反応が発生した場合や緊急時の対応がすぐに取れるように、事前に対応手順を取り決め、準備をしておくこと、スタッフの事前の教育も大切です。

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PPE・・・個人用防護具 personal protective equipment

職業感染制御研究会

https://www.safety.jrgoicp.org/ppe-2-what.html

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  • 認知症の人のための意思決定の基準として何が用いられるべきか?

本人の選択、②家族等による本人意思の推定、③本人の最善の利益、の順に考え、それらは、④公衆衛生上の視点とのバランスをとって考えることが重要です。

3.本人の選択(意思)について確認します医学的リスク-ベネフィットバランスにより、ワクチン投与が、本人の利益となると考えられる場合であっても、自動的にすべての認知症や意思疎通困難な人が、施設長や家族などの判断でワクチン接種をすべきという事にはなりません。まず、本人の選択(意思)について確認することが重要です。本人の意向を尊重することは重要です。

*本人に意思決定能力があれば、医療ケアの方針は、本人の意向(同意あるいは拒否)に沿って決定されるのが自律尊重の倫理原則です。

*ワクチン接種は、予防的な医療という観点から、特に、本人の同意が重要です。実際、国は「医療行為には本人の同意が前提」との見解を示しています。予防接種法 9 条において「予防接種の対象者は、臨時の予防接種を受けるよう努めなければならない(努力義務)」とされています。したがって、他からの圧力をうけることなく、自発的にワクチンの接種を選ぶことが認められる必要があります。

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予防接種法(昭和二十三年法律第六十八号)(予防接種を受ける努力義務)第九条 

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000068

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*また、患者の権利に関する世界医師会リスボン宣言では、「a. すべての人は、差別なしに適切な医療を受ける権利を有する。」「b.患者は、常にその最善の利益に即して治療を受けるものとする」と明記されており、予防接種の対象者は、だれであれ、ワクチンの利益を享受する権利を有することも重要な視点です。

②意思決定能力について評価します。

*高齢者施設では、実際、インフォームドコンセントできない認知症や意思疎通困難な人が多くいます。

*しかし、高齢や認知症,意思疎通困難を理由に、「自分では決められないだろう」と先入観をもってはいけません。

*医療・ケアチームで「意思決定能力」を適切に評価してください。総合的に無能力としてはいけません。

*意思決定能力とは、自身が受ける医療ケアについて、説明を受けたうえで、自ら判断を下す能力を指します。具体的には、ワクチン接種の必要性や副反応について理解し、受けた場合と受けない場合には、それは、自分にとってどのような影響があるのかを認識できることです。

③意思決定能力は少しずつ低下していきます。「あり」「なし」とは決められません。

*意思決定能力は「あり」「なし」の二者択一ではありません。

*本人の意思決定能力に応じて、方針決定に参加する機会を与えることは重要です。

*意思決定能力がある場合は【consent 同意/refusal 拒否】⇒意思決定能力が境界領域の場合【assent 賛意/dissent 不賛意】⇒意思決定能力がない場合【代理判断】となりますが、実際、残存能力のある境界領域のケースが多くあります。

*特に、意思決定能力が境界領域の場合には、意思決定の共有・支援(Shared DecisionMaking/Supported Decision Making)をしてください。

*同意 consent できる能力から、賛意 assent 出来る能力への移行は漸減的であり、意思決定能力評価のゴールドスタンダードは存在しません。

④わかりやすい説明を心掛けます。

*本人の意思決定能力や障害の特性に応じた、十分かつ分かりやすい説明に心掛けることが大切です。イラストなどを用いた説明を丁寧に繰り返すことも意思決定支援に役立ちます。

⑤医療ケアチームは、認知症の人の意思決定支援をし、守らなければならない

*本人にとって自身の意向を尊重してもらえることは、本人の Well-being(身体的・精神的・社会的に良好な状態にある)の向上に寄与します。

*意思決定能力が脆弱という理由で、ワクチン接種する機会が妨げられないようにすることは大切です。

*本人が自身の意向をできるだけ表出できるように、意思決定支援にある程度時間をかけて、丁寧に関わっていくことが大切です。

*事前説明や実施に際して、ワクチン接種の不安を和らげるように、医療ケアチームの関わりを強化する必要があります。

*本人のした選択は、自身の最善の利益にかなうかどうかについて、検討してください。

*拒絶の意を示した場合、その理由に耳を傾け、真摯に接する必要があります。*一般的に、日本の高齢者は、注射という医療行為に明確な拒否を示すことは比較的少ないですが、実際の臨床現場では、認知症の人は、「注射をする=痛いことをされる、だから痛いことは嫌だ」という理由でワクチン接種を拒否する人がいます。

*本人が自身の最善の利益に、明らかに反すると思われる決定をした場合には、医療ケアチームは説得を試みる必要があります。ただし、認知症の人が、ある治療、例えば注射について嫌がったとしても、それは認知機能が正常で意思決定能力がある人の拒否と同等な倫理的効力がないこともありますので、医療・ケアチームでよく話し合ってください。

4.本人の意思が確認できない場合には、家族等が代理判断をします

本人が自分で決定できないと、適切に評価された場合には、家族等による代理判断が行われます。医療ケアチームは、代理判断者が判断するために必要な医療情報を伝えます。また、アドバイスをするために一緒に話し合いの席につくことが望まれます。本人が意思表明できないという理由で、ワクチン接種の機会が奪われないように配慮することが必要です。また、代理判断者が、「人が自分のために決める場合」と「他人のために決める場合」を区別することができるように支援します。

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少し大ざっぱな分け方かなと感じます。

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4-1;誰が本人のための意思決定をすべきか?

*家族等とは、家族をはじめ、本人が最も信頼する親戚、友人、親しい知人などを指します。

*成年後見人には医療の同意権はありませんが、本人の信頼する親しい知人の一人として代理判断者になることは可能です。

*もし、本人が自分の意思で指名した代理判断者がいればその人が最適ですが、いない場合には、話し合いの中心となるキーパーソンが代理判断者の役目を担います。

*代理判断者には、本人の性格や価値観を知り、病気や治療に関する情報をもち、本人のために真摯に考えることができる人が望まれます。

*話し合いの中心となる代理判断者がいても、可能であれば、本人を知る様々な立場の人も加えることが、かつてのその人の通常の日常環境に近づいた判断ができることになり、望ましいと云えます。

4-2;本人は、以前、予防接種について、何か意思表示をしていましたか?

*以前、意思決定能力があった時の意思表示を事前指示(事前の意思表示)といいます。事前指示を尊重することは、意思決定能力が正常だった「かつてのその人」の自己決定権を尊重することになります。

*かつての意思表示である事前指示を尊重することが、現在の本人にとって不利益にならないかを、適切に評価してください。

4-3;本人の意思を推定します

*事前指示がない場合には、ワクチン接種に関する本人の意思を推定します。

*家族や、本人と親しい人,可能ならば複数の人から,本人の価値観や健康観を踏まえた、本人の推定的意思について聞き取ります。

*もし、本人に、以前のような意思決定能力が有れば、コロナワクチン接種の必要性を理解・認識し、ワクチン接種を望んだであろうと推定できれば、同意と推定します。それには、過去の予防接種歴、例えば、インフルエンザワクチン接種などが参考になるでしょう。

*もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことが無ければ、「本人が予防接種を望むだろう」という推定をする参考になります。

*もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことがあれば、「本人が予防接種を望まないだろう」という推定をする参考になります。

4-4;本人にとっての最善の利益を考えます

*本人の事前指示がなく、かつ、本人の意思の推定さえもできない場合には、本人のこれまでの考え方・人生観・価値観や、予防接種の履歴などをもとに、本人にとって何が最善かを考えます。

*コロナワクチンは国民すべてが無償で接種でき、それは平等に与えられた権利です。認知症や意思疎通困難な人が、「同意できない」といった理由で、ワクチン接種対象者から除外される場合、それだけの理由で不利益(感染リスクや重症化による命の危険、その後の ADL や認知機能の低下)をこうむっている可能性があります。

*「本人にとって、何が最善の利益か?」を決めることは難しいことです。それは、本人の医学的利益だけでなく、倫理的価値に関する事項(本人の願望等)、さらには周囲の人々の利益(他の入所者やケアスタッフの感染リスクの低減)についても十分に配慮することが必要です。

*ワクチン接種による利益が、本当に負担(不利益)を上回っているかどうかを、共感をもって考えます。

*本人にとって、ワクチンを打つことによる不利益が、その利益を上回ることがないのであれば、あるいは、医学的に害とならなければ(無危害)、家族・医療ケアチームの判断を尊重してよいでしょう。

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特別な個室で対応可能な場合を除いて、医療・介護施設に入所している場合で、本人が身体的に耐えられるとき、ワクチンを打たないという選択事例があるのでしょうか。

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4-5;医療ケアチームも一緒に話し合いに参加し、家族に助言をします

*医療ケアチームは本人の最善の利益を守り、本人の Well-being のために行動する必要があります。

*家族等が、適切な代理判断ができるように、医療ケアチームは適切かつ十分な情報提供に努めます。

*医療ケアチームは、ワクチン接種の医学的情報(ベネフィットと副反応リスク)について、パンフレットなどを用いて、わかりやすく説明をします。

*感染した場合のデメリット(隔離する、Full PPE(個人防護具)での対応、家族と会えない、もし亡くなったときに死に目に会えないなど)も、必要に応じて伝えます。

*さらに、ワクチン接種の公共性(そのベネフィットが施設内・地域におよび((=道徳的には利他的な行動を採ること))、それは結果的に本人の利益ともなること)についても、説明します。

*家族が決定に悩んでいる場合には、医療・ケアチームは、本人にとって最善と思う方針を家族に薦め、家族が熟慮するのを支援します。

*代理判断の際に、家族に対して「接種しないなら施設を退所してほしい」などといった、不適切な条件を提示して、家族の判断にバイアスを生じさせてはならないのは当然のことです。

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「「接種しないなら施設を退所してほしい」などといった、不適切な条件を提示して、家族の判断にバイアスを生じさせてはならないのは当然のことです。」家族が自ら、そのように考えてしまうんじゃないかなと感じます。

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*家族の決定の適切性について評価します。家族は本人の最善の利益を守らなければなりません。もし、家族が本人の最善の利益にそぐわない決定をした場合には、医療・ケアチームは、説得するよう努めます。

*家族の裁量権は絶対的ではありません。本人の最善の利益にそぐわない、あるいは害になる決定をした場合には、その権限は制限されます。

*医療・ケアチームは、虐待やネグレクトなど、問題のある家族に対しても敬意をもって接し、支援する必要があります。

85.家族がいない場合には、医療ケアチームが多職種協働で話し合います

本人から有効な同意が取得できないにもかかわらず、方針を決定する「家族がいない」、「身寄りがない」「家族はいるが、連絡がつかない」場合には、今後の方針決定について、特に問題となります。「家族がいないから」といった理由でワクチン接種が受けられないことは公正ではありません。また、医療ケアチームは、本人の最善の利益と Well-being のために行動し、認知症や意思疎通困難な人を守る責務があります。施設長、担当医などの個人の独断ではなく、最終判断は本人を良く知る多職種協働チームで決定することが望まれます。

5-1;本人は、以前、予防接種について、何か意思表示をしていましたか?

*事前指示を尊重することは、意思決定能力が正常だった「かつてのその人」の自己決定権を尊重することになるという点は、家族等による代理判断と同様です。

*かつての意思表示である事前指示を尊重することが、現在の本人にとって不利益にならないかを、適切に評価してください

5-2;本人の意思を推定します

*事前指示がない場合には、ワクチン接種に関する本人の意思を推定します。

*医療ケアチーム内のさまざまな職種の人から、本人意思を推定するために有用な情報を聞き取ります。多職種から聞き取りをすることは、本人を多面的・総合的に見ることに役立ちます。

*もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことが無ければ、「本人が予防接種を望むだろう」という推定をする参考になります。*もし、本人が、これまでに「予防接種をしない」という意思表示をしたことがあれば、「本人が予防接種を望まないだろう」という推定をする参考になります。

5-3;本人にとっての最善の利益を考えます

*本人の事前指示がなく、かつ、本人の意思の推定さえもできない場合には、本人のこれまでの考え方・人生観・価値観や、予防接種の履歴などをもとに、本人にとって何が最善かを考えます。

*医療・ケアチームは本人の最善の利益を守るために行動する倫理的義務があります。ワクチン接種による利益が、本当に負担(不利益)を上回っているかどうかを、共感をもって考えてください。医学的側面、本人の価値観、周囲の状況など広い視点から熟慮してください。

5-4;第三者的・中立的視点を取り入れ、公正性に留意します

*医療ケアチームによる意思決定において、そのプロセスの適切性について確認します。

*さまざまな立場の多職種スタッフの意見を十分に聞き取りましたか? 意思決定は、独断にならず、関係者間のコミュニケーションを尽くすことが重要です。*密室の決定にならないように、透明性に配慮してください。そのためには、話し合いの経過・決定理由を適切に記録しておきます。*関係者間で意見がまとまらない場合には、施設内の医療ケアチームだけでなく、中立的第三者の意見を聞く必要があります。

*解決困難な事例の場合には、倫理カンファや倫理コンサルテーションに諮問するとよいでしょう。

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「第三者的・中立的」の的というのは、良い表現だなと思いました。第三者、中立な立場というのはあまりいないと思います。

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6.公衆衛生上・公共の福祉の視点

①ワクチン接種が、新型コロナウィルス感染から高齢者本人を守ることは勿論のこと、社会全体として感染拡大を抑制・収束させるという公衆衛生上の視点も考慮することは重要です。患者数の増加や、重症化の割合の増加は、病床逼迫や医療従事者の疲弊といった医療体制全般にも好ましくない影響を与えます。

②ワクチン接種のベネフィットは、感染対策として高齢者施設内だけでなく地域社会全体にもおよぶという利他性・公共性があります。また、それは結果として、本人がその施設やコミュニティに安心して継続的に所属でき、また、社会活動にも参加できるという意味で、本人の利益ともなります。

③ 高齢者施設という集団の生活の場における感染予防は、他の入所者への危害を防ぐために大切です。したがって、利用者の意思決定(特に拒否の意思決定)は「公共の福祉」によって制約される場合があります。施設で生活している認知症の人が、「意思表明できない」「家族がいない」ことを理由にワクチン接種が実施されなかった場合、感染拡大防止の観点から、本人の行動範囲が制限される可能性がでてきてしまいます。また、万一、感染し、その結果、施設内クラスターが発生した場合、ⅰ)本人は周囲の反感をかったり、非難されるという不利益を蒙る可能性があります。ⅱ)他の入所者がワクチン接種をしていても、濃厚接触者扱いになります、ⅲ)マスク着用ができないと、接触した人は「濃厚接触者」扱いになってしまいます、などのデメリットがあります。

④「個人のリスク-ベネフィットバランス」と「公共の福祉」の両者を総合的に考慮した場合、現時点の医学的事実からは、新型コロナワクチン接種は、正当性だけでなく、緊急性もあると思われます。ただし、施設の方針だとして一律に強制的に実施してはなりません。また、ワクチン接種をしていないからといって、福祉サービスなどを利用しにくくなるといった不利益を被ることの無いよう、関係各所において申し合わせしておく必要もあります。本人の意思の尊重をはじめ、適切な代理判断の手順を踏み、その実施について多職種で熟慮することが必要です。

7.合意が形成されない場合には、倫理コンサルテーションに相談します

一般的には、上記の1~6の手順を踏むことによって、ワクチン接種の方針が決定できることが多いでしょう。しかし、臨床現場には、さまざまな個別の特徴のあるケースが出てきて、医療・ケアチームを悩ませます。解決が難しいケースの場合には、倫理コンサルテーションに相談をしてください。日本臨床倫理学会は、その会員を通じて、倫理相談をする仕組みを構築しています。

11Q&A

Q1;私の働く施設には 100 人もの多くの利用者様がいます。どのように説明を行っていけばよいでしょうか?

A1; 『同じような理解度の利用者さんを少人数ずつに分けて、集団で説明会を行ってみてみましょう。その時、個々のマスク使用、充分なソーシャルディスタンスに注意を払ってください。』『説明に理解を示して頂ける様なら承諾のサインを利用者さんに頂いておきましょう。更に説明を行って承諾をいただいたことを記録に残してください。その後家族への伝達を行い、重ねて承諾を頂くのも良いでしょう。』『理解度が低くなるほど人数を減らし、1 回では理解していただけなければ日を変えて、数回に渡って行ってみましょう。』

Q2;難聴や視力障害のある利用者が多数います。

A2;『難聴がある人には絵やイラストを使って、視覚に訴えてみましょう!大きく書いた文字も付け足しておくと良いでしょう。説明時には、ゆっくり大きな声で話してみましょう。』『手話で話の理解できる利用者さんには手話のできるスタッフに説明してもらいましょう。』『説明を行う前に眼鏡が必要な利用者さんへの声掛けを行いましょう。』

12『補聴器が必要な方は補聴器を付けている事を確認しましょう。』

Q3; 理解度に波のある方がいます。どのように説明を行えばよいでしょうか?A3;『説明当日は調子が悪くて理解してもらえなかったとしても、時間を変えたり、日を変えると理解してもらえることがあります。根気強く説明を行ってください。』『特にその人が眠い時などは、いくら声掛けを行っても話が耳に入らないことがあります。本人が一番覚醒している時を選んで説明を行いましょう。』『長文で説明を行うのではなく、本人が理解できるぐらいの短文や、単語を使用すると理解度が上がることがあります。』

Q4;古い出来事は理解されますが、新しい事を理解することが苦手な利用者にはどのように説明を行ったらよいでしょうか?

A4;『コロナウイルス、と言ってもなじみが薄いので、新しい事を覚えられない人には理解することが困難です。そこで、インフルエンザやソ連風邪の様な人に伝染する病気と言った様な、昔から馴染んでいる言葉に置き換えてみてはどうでしょうか。』『さらに、ワクチン接種ではなく予防接種と言うと、イメージして頂けると思います。』『小学校の時に行った集団接種の思い出を、利用者さん皆で話しをしながら説明を進めると、ワクチン接種の必要性を思い出してくれるかもしれません。』

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毒性を弱めた病原体(ウイルスや細菌)や毒素を、前もって投与しておくことにより、その病気に罹りにくくすることを予防接種といい、投与するものをワクチンあるいはトキソイド(以下、ワクチン)といいます。

(公社)東京都医師会

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Q5;予防接種が大切な事までは理解してくださるのですが、「注射は痛いから嫌!」「怖いから嫌」と言い拒んでいます。どう対処したらいいでしょうか。

A5;予防接種の強制はできませんので、その理由をよく訊き、ワクチン接種に伴う不安や身体的苦痛を最小化する努力が前提となります。何のためのワクチン接種なのか、施設内では、他の人のためにも、接種が必要であることを、根気よく説明しましょう。その上で、一時の反応的行動だけではなく、その方の人生全般における価値観や姿勢から本人の意思を推定してください。事前指示の有無、認知症や意思疎通困難となる病気を発病する前は、インフルエンザ等の予防接種を受けていたのか等の情報を得るのも、判断材料の一つとして有効です。

Q6;ある入所者の方は、一日の大半をベッドで過ごし、覚醒状態が良い日でもご自身から話をされることがありません、話しかけても反応は殆ど見られません。

A6;かなり認知機能の低下が進行した方の場合、本人へ説明したとしても、その方からの返事を聞き取ることは不可能と考えられます。この様な場合、ご家族の方にワクチン接種の同意を求める事になりますが、スタッフより一言付け加えて頂きたい事があります。「ご本人ならこのような場合、どの様に考えられますか?本人の立場に立って考えてみてください。またご本人にとって、何が最善かを話し合ってください。」

Q.7 「5-2;本人の意思を推定します *医療ケアチーム内のさまざまな職種の人から、本人意思を推定するために有用な情報を聞き取ります。」とありますが、具体的にどのような情報を聞き取ればよいのでしょうか?

A 7;ワクチン接種や、病気予防に関連するこれまでのご本人の言動に関する情報です。過去にワクチン接種をどうしていたか(例:インフルエンザや肺炎球菌など)、健康を保ち病気を予防するための行動はどうしていたか(例:検診受診、健康行動など)、自分が感染症にかかることで周囲に及ぼす影響をどう考えていたか、などが参考になります。

Q8;高齢者施設には、意思疎通が難しい入所者が多数います。意思決定能力およびその評価において留意することは何ですか?

A8;意思決定能力の低下の程度は様々です。「あり」「なし」とは明確に決められないことがほとんどです(グレーゾーンが大きい)。また、意思決定能力の低下の度合いは一様ではなく、変化することもありますので、「この人は自分で決められないだろう」といった先入観を持たずに適切に評価をしてください。そして、本人の意思決定能力の程度に応じて、方針決定に参加する機会を与えることは重要です。総合的に無能力としてはいけません。

Q9;認知症の人へのコロナワクチン接種に関する海外の事情はどうなっていますか?

A9;ここでは、Dementia UK(英国の認知症 NPO 団体)の文献(ワクチン及びワクチン接種に関する Q&A)をご紹介しておきます。https://www.dementiauk.org/giving-covid-19-vaccine-to-someone-with-dementia/https://www.dementiauk.org/get-support/coronavirus-covid-19/questions-and-answers

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更新日が明示されている点が良いなと思いました。

https://www.nhs.uk/conditions/coronavirus-covid-19/coronavirus-vaccination/coronavirus-vaccine/?priority-taxon=774cee22-d896-44c1-a611-e3109cce8eae

ページの最終レビュー日:2021年8月12日

次のレビュー期限:2021年8月26日

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Q10;コロナワクチン接種は、任意接種ですか?

A10;ワクチン接種は、予防接種法 9 条において「予防接種の対象者は、臨時の予防接種を受けるよう努めなければならない」とされており接種は努力義務です。自発的にワクチンの接種を選ぶことが認められています。しかし、すべての人は、差別なしに適切な医療を受ける権利を有していますので、「自分で同意できない」「同意する家族がいない」といった理由で、ワクチン接種が受けられないことは好ましくありません。

Q11;成年後見人は、ワクチン接種について同意できますか?

A11;一般的には、成年後見人には医療に関する同意権はないとされています。しかし、その成年後見人が、本人のことをよく知っており、本人の考え方を理解し、また、本人も信頼している親しい関係であれば、「本人が信頼している人」の一人として、医療に関する今後の方針決定の話し合いに参加できると考えられます。

Q12;「人が自分のために決める場合」と「他人のために決める場合」を区別するとは、どういうことですか?

A12;一般的に、自己決定とは、自分のことを、自分のために決めることです。しかし、意思決定能力が低下する等の事情で、本人が決めることができなくなった場合には、家族等が、本人に代わって決めることになります。その場合に、家族は「自分はこう考える」「自分はこう思う」といった家族自身の願望や都合、いわゆる「家族による自己決定」になってはいけないということです。「他人のために決める」場合には、家族等は、「本人ならこう考えるだろう」「本人ならこう望むだろう」といった本人意思を適切に推定し、本人にとって何が最もよいことなのかを考えることが大切です。

Q13;利用者さんが、その時は理解を示しても、直ぐに忘れてしまう場合や、言うことが変わってしまう場合にはどのように考えればいいですか。

A13;認知症の利用者さんには、短期記憶が困難な方もいらっしゃいますが、記憶障害のある場合でも、意思決定する間に記憶が保持できるのであれば意思決定は可能です。時間を空けて繰り返し説明する、人を代えて確認するなどを実施した際に、説明直後に本人の理解が十分にあり、かつ意向が一貫していれば、本人の意思である可能性が高いと推測できます。

MOJchannel「動画でわかるオンライン登記申請(抵当権抹消登記編)」を観ながら

法務局の解説動画

https://www.youtube.com/watch?v=BficxpKiZjs&t=249s

登記事項証明書・・・右上に全部事項証明書と記載されているもの。

住所変更がある場合の住所変更の日・・・住民票の「転入」の日、住民(市民)となった日。届出の日ではない。

どんな住民票が必要か・・・登記事項証明書(全部事項証明書)の住所と現在の住所が繋がるもの。

・登記事項証明書(全部事項証明書)の住所・・・北海道旭川市六条通九丁目4番地

・現在の住所・・・札幌市中央区北二条西二丁目1番地1

であれば、下の住民票抄本で可能。

札幌市HP住民票の記載事項

https://www.city.sapporo.jp/shimin/koseki/shomei/what_juminhyo.html

抵当権の順位番号について・・・登記事項証明書(全部事項証明書)で確認する場合は左側に記載されている。

例えば、琉球銀行の住所が変わっている場合・・・gBizINFO

https://info.gbiz.go.jp/

サイト内で「琉球銀行」と検索

法人番号6360001000404のうち、左の1桁6を除いた数、360001000404を添付情報に追加記載。

会社法人番号等が通用しない場合

不動産登記令等の改正に伴う添付情報の変更に関するQ&A

令和3年6月29日 初回掲載日(平成27年10月29日)

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00237.html#a18-1

Q18-1    住所の変更事項等が閉鎖登記記録に記録されている場合であっても,会社法人等番号を提供すれば,法人の住所変更等を証する情報の提供を省略することができますか。

A18-1    以下の閉鎖事項証明書の提供を省略することができます(省略することができない場合については,Q18-2を参照してください。)。

        1 現在の会社法人等番号が記載されている閉鎖事項証明書

        2 会社法人等番号が記載されていない閉鎖事項証明書(商業登記規則第44条第1項の規定により閉鎖された登記事項を証明したもの)

Q18-2    Q18-1で省略することができない場合を教えてください。

A18-2    閉鎖事項証明書に現在の会社法人等番号とは異なる会社法人等番号が記載されている場合には,省略することはできません。

  平成24年5月20日(外国会社にあっては平成27年3月1日)以前の法人の登記においては,組織変更や他の登記所の管轄区域内への本店の移転の登記等をする場合には,会社法人等番号が変更されていました。この変更前の会社法人等番号が記録された登記記録に住所の移転の事項が記録されているときは,現在の会社法人等番号の提供に加えて,住所の移転の事項を確認することができる閉鎖事項証明書又は閉鎖登記簿謄本を提供する必要があります。

入力についての参考

富山地方法務局

【不動産・権利】オンライン登記申請時のデータ入力における協力依頼事項

http://houmukyoku.moj.go.jp/toyama/content/001337871.pdf

「民事信託の登記の諸問題(1)」

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(1)」を基に考えてみたいと思います。

更には、信託登記の具備が、受益者保護の最後の砦である受託者の権限外行為に対する受益者取消権の権利行使要件となっている(信託法27条2項1号、同法14条等)。

信託法27条2項1号に関して、初めて知りました。受託者が信託の登記申請を行わない場合、代位申請の必要があると考えます(不動産登記法99条)。

業ではないということは、営利を目的として反復継続しないことである。受託者が、原則として、一生に一度だけ行う信託のこととなる。

信託業法2条を載せます。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?law_unique_id=416AC0000000154_20200401_429AC0000000045

(定義)

第二条 この法律において「信託業」とは、信託の引受け(他の取引に係る費用に充てるべき金銭の預託を受けるものその他他の取引に付随して行われるものであって、その内容等を勘案し、委託者及び受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。以下同じ。)を行う営業をいう。

要件のとして、3つが挙げられています。

1つ目が、営利を目的としない。2つ目が反復継続しない。3つ目が、2つ目と重複する部分もありますが、受託者が、原則として、一生に一度だけ行う。

一つ目の営利を目的としないについて、自己信託については信託業法に基づく登録が不要なもの(信託業法50の2)に関しては、営利を目的としても良いと考えることが出来ます。

(信託法第三条第三号に掲げる方法によってする信託についての特例)

第五十条の二 信託法第三条第三号に掲げる方法によって信託をしようとする者は、当該信託の受益権を多数の者(政令で定める人数以上の者をいう。第十項において同じ。)が取得することができる場合として政令で定める場合には、内閣総理大臣の登録を受けなければならない。ただし、当該信託の受益者の保護のため支障を生ずることがないと認められる場合として政令で定める場合は、この限りでない。

2つ目の反復継続しないについて、受託者の主観も問われる[2]とありますが、民事信託に関わる場合、裁判所からみて反復継続していたと事実認定されないことが重要になります。そのように考えると、はっきりとした判例や法令がない限り、受託者の主観が争点になるようなことは、最初からしない方が良い、という結論になり、記事に記載の通り、受託者が反復継続して信託の引き受けを行う信託に関わることは避けることが必要となります。

3つ目の受託者が、原則として、一生に一度だけ行う、については、1つ目に挙げた自己信託に関しては回数を問いません。また2つ目と矛盾するようですが、特定少数の親族である委託者に関して信託の引き受けを行うことは、営業(営利を目的として反復継続して行う。)に該当しません。ただし、実態として長期に渡る信託について受託者が引き受けを行う回数は、自ずと限られてくると考えられます。

なお、信託業法施行令1条の2第1号で信託業法の適用除外とされる行為が定められています。

(信託業の適用除外)

第一条の二 法第二条第一項に規定する政令で定めるものは、次に掲げる行為であって、信託の引受けに該当するものとする。

一 弁護士又は弁護士法人がその行う弁護士業務に必要な費用に充てる目的で依頼者から金銭の預託を受ける行為その他の委任契約における受任者がその行う委任事務に必要な費用に充てる目的で委任者から金銭の預託を受ける行為

二 請負契約における請負人がその行う仕事に必要な費用に充てる目的で注文者から金銭の預託を受ける行為

三 前二号に掲げる行為に準ずるものとして内閣府令で定める行為

信託登記の公示のために必要な技法

1信託契約書や遺言書等に記載された信託条項群の中から、信託登記の登記事項とすべき信託条項を的確に選択。

2そのようにして選択された信託条項から法的に意味のある要件を抽出

3公示の一覧性の要請に従い、かつ、登記官の審査を可能とするため、適切に要約。

3については、要約してなくてもそのまま信託目録に記録できるように、信託行為の条項を定める方法もあるのではないかと感じました。


[1]881号、令和3年7月、テイハン67~

[2] 小出卓哉「逐条解説信託業法」2008清文社P17~P18。

民事信託支援業務のための執務指針案100条(8)

市民と法[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託支援業務のための執務指針案100条(8)」を基に考えてみたいと思います。

45 家族信託とは複数の者の利害が絡む「しくみ」である―そのリスクの源泉

 私の理解では、最初に信託法という仕組みがあり、それを親族の財産承継にどうにかして使えないかと当てはめ始めた。当初は受託者に就任出来ないのか、受託者法人の役員に就任出来ないか、震災復興支援、農地関連など手探りでした。その後、民事信託支援業務という、記事での前段事務(司法書士法3条)と信託登記の代理申請という後段事務とされている事務に法的根拠を求め始めた、というようなものです。司法書士法施行規則31条が法的根拠であるという司法書士もいるかと思います。

46 司法書士が信託分野に果たした功績とその意義

 私が司法書士試験に合格した年の新人合同研修では、七戸克彦教授が信託法改正について言及していたことを未だ覚えています。司法書士はこれから、簡裁訴訟代理等関係業務を中心としてプチ弁護士として生きていくのか、信託法改正を契機として民事信託分野、債権・動産譲渡登記を扱って生きていくのかの分岐点に在る、というような内容だったと思います。2007年のことです。成年後見業務を中心に行うと決めていた私は、民事信託や債権・動産譲渡登記を将来扱っていきたいと考えていました。

47 民事信託支援業務の「支援」とは前段事務を意味する

業務の低廉、高品質については、私にはどのような基準なのか分かりませんでした。成年後見人として遺産分割調停の代理や訴訟代理、強制執行は行いましたが、本人訴訟支援業務の経験件数が少ないからだと思います。記事での低廉、高品質というレベルは、過払金返還請求訴訟を除く本人訴訟支援業務における低廉、高品質を指しているのだと思います。

成年後見業務における低廉、高品質を私の理解するレベルで行うと、事務所経営は出来ません。

ただし、最近は民事信託専門、家族信託専門コンサルタントを肩書にしていた司法書士が民法や社会福祉法改正を受けて、相続や成年後見業務に重心を移してきているようです。1年で成年後見人に30件就任したという記事を読み、私なら不可能だと感じました。

48 前段事務と実体関与は異なる

完全な訴状、瑕疵のない準備書面を作成し続けるのは、弁護士でも難しいのではないかなと考えますが、どうなのでしょうか。報酬は、おそらく報酬自由化の前の報酬基準が目安になるのかなと思います。

49 最近の気になること

司法書士会内における批判の声の高まりについて、私は過払金返還請求の際の宣伝や報酬とは、2点異なるものを感じます。宣伝や報酬については、日本司法書士会連合会で基準を作成することが可能であり、宣伝については既にあります。

1点目は、司法書士が、司法書士を始めとする士業やその他の専門家に対してビジネスを始めたことです。司法書士間で対価を授受するという行為を通して上下関係が出来たことです。

2点目は、1点目と重複する部分がありますが、対価を受け取る側のビジネスを展開している側に対して批評を行うと、その集団から排除されることです。私は、一般社団法人民事信託推進センターから、除名されました。この事実は今後、残念な形で残り続けると思います。著作権法違反が主な理由のようですが、裁判手続きに載せない事実、懲戒処分の申立てもされていない事実を併せると、批評をすると多数決で排除される、という構図が残ります。今後は信託の学校と共に、排他的な法人として存続は難しいのかなと思います。

 「○○という誤った条項を見かけることがありますが、」「分かっていない専門家が多くみられますが、」から始まり、少数での勉強会内で固まった考えを正しいと広めるのもどうなのかなと感じます。

(2)東京地判令和2年12月24日と日司連会長挨拶

東京地判令和2年12月24日については、司法書士が信託監督人に就任したことと辞任しなかったこと、信託期中に少し中に入り過ぎたのではないかという印象を持ちました。

日司連会長挨拶については、実態との乖離を感じるので記事に記載されているような感銘を受けることはありませんでした。

50 指針案のあてはめの実践編について

51 裁判例の事実認定の検討と分析

一部の親族(推定相続人)の利益となるであろうことを想定しながら、信託組成を支援したか?

推定相続人の利益を平等にしたい場合は、法定相続分によるか全員等価で分けることが最善な方法だと思います。一部の親族(推定相続人)の利益になることは、信託組成の支援において優先的な判断基準にはならないのかなと思います。

私なら遺言作成を始めに説明したかもしれません。

潜在的紛争性のある事件として、弁護士への相談を助言しただろうか?

連絡が取れるのであれば、長男を含めた関係者全員に、それぞれ弁護士への相談を助言したと思います。

長男と親族との間で紛争を生ずる蓋然性を予測できただろうか?

出来なかった可能性があります。

潜在的な紛争可能性を予測すべきであっただろうか?

信託の終了方法に、少し幅を持たせても良かったかなとは思います。

「提案」と「情報提供」との差異は何か?

「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」について(意思決定支援ワーキング・グループ)2020年(令和2年)10月30日

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2021/20201030guideline.pdf

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説編」

人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会 改訂 平成30年3月

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197702.pdf

の範囲を超えないことが、提案と事実認定されないために必要だと考えます。


[1] №130、2021.8.P21~民事法研究会

照会事例から見る信託の登記実務(14)について

登記情報[1]の横山亘「照会事例から見る信託の登記実務(14)」から考えてみたいと思います。

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 委託者の死亡を始期とする信託契約を確実に履行するために遺言の執行の機能が併用されることがあるようです。このような場合には、契約による信託の登記の添付情報として遺言書が提供されるなど、信託の登記が複雑な形態となって申請されることになります。

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 問いは、信託契約に始期を付けるということなので、登記原因証明情報は信託契約書と委託者が死亡したことを証する除籍(戸籍)謄抄本となり、遺言書ではないと考えます。また登記権利者は受託者、登記義務者は委託者の相続人か信託契約書その他の信託行為で委託者の地位を承継した者です(信託法146条)。

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 賃借権設定の仮登記がされている場合、転貸は、信託法3条1項1号でいう財産の処分に該当すると解されるので、賃借権を信託財産とすることは許されるものと考えられ、その仮登記の申請も、することができるものと思われます。

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申請

登記の目的 何番賃借権転貸仮登記及び信託仮登記

原因 年月日転貸(信託)

賃料 1月○万円

特約 譲渡、転貸ができる

権利者(転借権者) 受託者住所氏名

義務者 委託者住所氏名

登記記録

付記〇号

何番賃借権転貸仮登記及び信託仮登記

年月日受付〇号

原因 年月日転貸(信託)

権利者 受託者住所氏名

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信託仮登記

信託目録第〇号

(信託法3条、26条、民法612条、613条、不動産登記法81条、98条、107条、不動産登記規則3条1項4号)

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C土地の委託者A、受託者B。C土地について、建物所有を目的として賃貸借契約設定仮登記。賃貸人B、賃借人D。Dを委託者、Bを受託者として賃借権移転の仮登記及び信託の仮登記は可能か。

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申請

登記の目的 何番賃借権移転仮登記及び信託仮登記

原因 年月日転貸(信託)

賃料 1月○万円

権利者 受託者住所氏名B

義務者 委託者住所氏名D

登記記録

付記〇号

何番賃借権移転仮登記及び信託仮登記

年月日受付〇号

原因 年月日転貸(信託)

権利者 受託者住所氏名

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信託仮登記

信託目録第〇号

(信託法3条、26条、民法612条、613条、借地借家法3条、22条、不動産登記法81条、98条、107条、不動産登記規則3条1項5号)

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申請

登記の目的

〇番付記〇号仮登記根抵当権抹消及び仮登記信託抹消

年月日受付〇号

仮登記根抵当権抹消 年月日解除

仮登記信託抹消 年月日終了(解除?)

権利者 委託者住所氏名

義務者 受託者住所氏名

登記記録

〇番付記〇号仮登記抹消

年月日受付〇号

年月日解除

登記原因証明情報

・受益者の意思決定は、信託行為によりセキュリティエージェントが行うこと。

・(委託者に、解除希望日がある場合)

・委託者から、受託者とセキュリティエージェントに対する、根抵当権の解除希望通知。

・セキュリティエージェントから受託者への根抵当権解除通知。

・受託者から委託者への解除の承諾。

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〇番付記〇号信託仮登記抹消

年月日解除

(不動産登記法110条)


[1] 717号2021.8きんざいP36~

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