デジタル化と司法書士

令和3年9月4日九州ブロック司法書士会協議会令和3年度会員研修会

政府の進めるIT戦略と司法書士業務に与える影響~ポストコロナの時代で加速するDXへの対応

「使命」「オンライン利用促進」「書面・対面・押印の見直し」「裁判IT」「ODR」「相談センターのIT化」など

日本司法書士会連合会 会長 小澤吉徳

はじめに

•令和は、司法書士法に「使命規定」が明記された記念すべき時代•すべての業務は国民の権利擁護と自由かつ公正な社会の実現のために法改正の理由近時の司法書士制度及び土地家屋調査士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ、司法書士及び土地家屋調査士について、それぞれ、その専門職者としての使命を明らかにする規定を設けるとともに、懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改める等の懲戒手続に関する規定の見直しを行うほか、社員が一人の司法書士法人及び土地家屋調査士法人の設立を可能とする等の措置を講ずる必要がある。

取り巻く状況の大きな変化とは?

 近年の司法書士・土地家屋調査士を取り巻く状況の大きな変化として指摘されているのは、例えば、(1)簡易裁判所における訴訟代理や成年後見・財産管理業務への司法書士の関与が大幅に増加であり、(2)ADR手続における代理や登記所備付地図の作成等の分野において,土地家屋調査士の活躍の場が拡大していることであり、(3)空家問題・所有者不明土地問題への対応,自然災害における復興支援等に,それぞれ専門家として参画していること。

3つの課題

 上記の状況の変化、すなわち、業務範囲の拡大や活動範囲の広域化に伴い,司法書士・土地家屋調査士の制度について,

  • 専門家としての使命を明確にする必要(使命の明確化)、現状に即して,懲戒手続をより合理化する必要(懲戒手続の適正・合理化)、一人法人を認めることによる多様なニーズへの対応が必要(一人法人の可能化)、という3つの課題に対応する必要がある。

使命の明確化

 司法書士は、司法書士法の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすることを明らかにすること(第1条関係)とされ、この規律を司法書士法人に準用すること(第46条第1項関係)とされた。

使命規定の意義

不動産登記、商業登記、裁判所提出書類作成、簡裁訴訟代理、債務整理、成年後見、遺産承継、民事信託など、多様な業務の根底にあるもの?

全ての業務に通底するもの、自由かつ公正な社会とは?

 「自由で公正な社会とは,様々な考え方を持ち,多様な生き方を求め る人々が,お互いの存在を承認し,多様な考え方や生き方を尊重しながら共に協力して生きていくことのできる社会である。 法は 本来このような共生のための相互尊重のルールとして 国民の権利を守り また,国民の責務を明確にすることによって,各人の自律的な活動を 促進し,その生活をより豊かにするものであって,ただ単に国民を規制するだけのものではない。また,司法とは,すべての当事者を平等・対等の地位に置く公正な手続を通じて,法に基づく権利の救済を図り,ルール違反に対処することにより,法秩序の維持・形成を図るものである。」

法教育委員会の見解

司法書士という用語 行政改革・司法改革のようなレベルを凌駕する旗印

・中央省庁等改革基本法

・司法制度改革推進法

・法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律

・総合法律支援法

の4つの法律にしか使われていない。

(司法書士法改正記念誌 日本司法書士会連合会顧問 寺田逸郎氏の講演録から)

平成31年4月11日参議院法務委員会における大臣の答弁①

○国務大臣(山下貴司君) 全国青年司法書士協議会における人権擁護活動として、全国一斉生活保護一一〇番、あるいは全国一斉養育費相談会、全国一斉労働トラブル一一〇番、法律教室事業、あるいはその他の人権擁護活動、これはもう本当に関係者の皆様に対して深い敬意と謝意を表する次第でございますし、また、日本司法書士会連合会においても、もちろん市民の権利擁護推進室を設置して、経済的困窮者や高齢者の権利擁護などに関する様々な事業を行っておられるということでございます。

 こうした様々な人権擁護活動を行っているその背景には、司法書士の皆様が国民にとって身近な法律家であり、そうした方々がその専門性を生かしておられるということで、そうした人権擁護活動の一翼を担っていただくこと、これは非常に重要なことであると考えております。

平成31年4月11日参議院法務委員会における大臣の答弁②

○国務大臣(山下貴司君)改正法案の第一条は司法書士の使命を規律するものでありますが、主語が司法書士を主体としたということでございます。そして、国民の権利を擁護することをその使命として明確にしたものでございます。そして、司法書士が国民に身近な法律家として幅広く国民の権利を擁護することが期待されていることに照らせば、ここで言う権利の内容として当然憲法上の基本的人権も含まれると考えております。

平成31年4月11日参議院法務委員会における大臣の答弁③

○国務大臣(山下貴司君)もうまさにおっしゃるとおり、この法律の定めるところにより、主体性を持って「国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」ということで、その活動について期待しているところでございます。

令和元年5月31日衆議院法務委員会における大臣の答弁

○山下国務大臣 お答えします。

 改正法案では、司法書士の使命として、司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすると定めることとしております。

 このような改正を行った趣旨は、司法書士を専門家として位置づけた上で、司法書士が主体的に国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与するということをその使命として規定するものでありまして、司法書士の皆様の能動的な規範を定めるものでございます。

 新たにこのような使命規定を設けることによりまして、それぞれの司法書士の皆様が、より高い使命感のもとに、登記や裁判に関する司法書士の業務に加え、それ以外の例えば被災者支援や人権擁護活動も含めた各種活動等を通じて、国民の権利の擁護のためにその職責を果たしていくことが期待されているものでございます。

司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

1 司法書士及び土地家屋調査士の実務能力の向上のために実施される各種の研修制度について、その一層の充実に向けて協力すること。

2 司法書士法人及び土地家屋調査士法人につき、その設立の諸手続が円滑に進められ、司法書士会及び土地家屋調査士会による指導が適切にされるよう努めること。

3 空き家や所有者不明土地問題等の諸課題の解決に当たっては、司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見や財産管理、筆界確定等についてのこれまでの実績に鑑み、その積極的な活用を図ること。

司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

4 司法書士及び土地家屋調査士の有する専門的知見を活用したADR手続により国民の権利擁護及び利便性の向上を図るため、引き続き、それらの手続の周知に努めること。

5 総合法律支援法に基づく特定援助対象者法律相談援助事業に関して、司法書士の更なる活用を進めるなど、関係団体と連携しつつ、国民の権利擁護及び利便性の向上に資するよう努めること。

6 IT環境の急速な進展の下で、各種登記制度やこれを支える司法書士制度及び土地家屋調査士制度に対する国民の信頼を損なうことのないよう、非司法書士行為及び非土地家屋調査士行為に対して引き続き厳正に対応すること。

7 土地家屋調査士の有する専門的知見やその保有する知識、情報等を広く活用することにより、法務局における登記所備付地図の整備を一層促進すること。

8 国民の権利擁護の観点から、司法書士でない者が司法書士の業務について周旋することを禁止する規定の整備について、本法施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること。

9 司法書士の登録前の研修を義務化することなど、簡裁訴訟代理等関係業務を行うことができる司法書士の資質の向上のための施策について、本法施行後の状況も踏まえつつ、必要に応じ対応を検討すること。

今後の具体的な課題

権利擁護事業のさらなる推進

倫理の涵養

執務レベルの向上のための研修

改正司法書士法の施行にあたって~社会の期待に応え,その使命を果たす(会長声明)

• 使命規定は,司法書士が行う不動産登記,商業登記,裁判所提出書類作成,簡裁訴訟代理,債務整理,成年後見,遺産承継,民事信託など,多様な業務のすべてに通底するものであり,すなわち司法書士の行う業務のすべては国民の権利擁護に資するものでなければならない。

• 今,新型コロナウイルスの影響によって,国民の生活様式や社会経済のあり方が大きく変容を迫られ,失業者や経済的困窮者の増加,自死や倒産の増加も懸念されている。

• 連合会は,これまで以上に社会の期待に応えることのできる法律家団体を目指すため,全国の司法書士が使命を自覚しつつ職責を十全に果たし,倫理の涵養を図り,執務レベルを向上させるための研鑽を積むことができるような体制を強化することをここに宣言する。

今日のお話「ポストコロナの時代で加速するDXへの対応」

• 1 戸籍情報連携システム

• 2 法人設立関連手続について等

• 3 オンライン利用の促進

• 4 書面・押印・対面の見直し

• 5 裁判手続きのIT化により高まる本人支援のニーズに応える

• 6 ODR時代到来に備える専門家として

• 7 司法書士総合相談センターのIT化

政府の進めるIT戦略

経済財政運営と改革の基本方針2021

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/decision0618.html

• 日本の未来を拓く4つの原動力

• ~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~

• 令和3年6月18日閣議決定

• 第1章 新型コロナウイルス感染症の克服とポストコロナの経済社会のビジョン

• 1.経済の現状と課題

• 2.未来に向けた変化と構造改革

• 3.ポストコロナの経済社会のビジョン

• 4.感染症の克服と経済の好循環に向けた取組

• (1)感染症に対し強靱で安心できる経済社会の構築

• (2)経済好循環の加速・拡大

• 5.防災・減災、国土強靱化、東日本大震災等からの復興

• (1)防災・減災、国土強靱化

• (2)東日本大震災等からの復興

• 第2章 次なる時代をリードする新たな成長の源泉

• ~4つの原動力と基盤づくり~

• 1.グリーン社会の実現

• (1)グリーン成長戦略による民間投資・イノベーションの喚起

• (2)脱炭素化に向けたエネルギー・資源政策

• (3)成長に資するカーボンプライシングの活用

• 2.官民挙げたデジタル化の加速

• (1)デジタル・ガバメントの確立

• (2)民間部門におけるDXの加速

• (3)デジタル人材の育成、デジタルデバイドの解消、サイバーセキュリ

ティ対策

• 3.日本全体を元気にする活力ある地方つくり~新たな地方創生の展開と分散型国づくり~

• (1)地方への新たな人の流れの促進

• (2)活力ある中堅・中小企業・小規模事業者の創出

• (3)賃上げを通じた経済の底上げ

• (4)観光・インバウンドの再生

• (5)輸出を始めとした農林水産業の成長産業化

• (6)スポーツ・文化芸術の振興

• (7)スマートシティを軸にした多核連携の加速

• (8)分散型国づくりと個性を活かした地域づくり

•• 4.少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現

• (1)結婚・出産の希望を叶え子育てしやすい社会の実現

• (2)未来を担う子供の安心の確保のための環境づくり・児童虐待対策

• 5.4つの原動力を支える基盤づくり

• (1)デジタル時代の質の高い教育の実現、イノベーションの促進

• (2)女性の活躍

• (3)若者の活躍

• (4)セーフティネット強化、孤独・孤立対策等

• (5)多様な働き方の実現に向けた働き方改革の実践、リカレント教育の充実

• (6)経済安全保障の確保等

• (7)戦略的な経済連携の強化

• (8)成長力強化に向けた対日直接投資の推進、外国人材の受入れ・共生

• (9)外交・安全保障の強化

• (10)安全で安心な暮らしの実現

• 第3章 感染症で顕在化した課題等を克服する経済・財政一体改革

• 1.経済・財政一体改革の進捗・成果と感染症で顕在化した課題

• 2.社会保障改革

• (1)感染症を機に進める新たな仕組みの構築

• (2)団塊の世代の後期高齢者入りを見据えた基盤強化・全世代型社会保障改革

• 3.国と地方の新たな役割分担等

• 4.デジタル化等に対応する文教・科学技術の改革

• 5.生産性を高める社会資本整備の改革

• 6.経済社会の構造変化に対応した税制改革等

• 7.経済・財政一体改革の更なる推進のための枠組構築・EBPM推進

• 8.将来のあるべき経済社会に向けた構造改革・対外経済関係の在り方

• 第4章 当面の経済財政運営と令和4年度予算編成に向けた考え方

•• 1.当面の経済財政運営について

•• 2.令和4年度予算編成に向けた考え方

2.官民挙げたデジタル化の加速

• デジタル時代の官民インフラを今後5年で一気呵成に作り上げる。

• デジタル庁を核としたデジタル・ガバメントの確立、民間のDXを促す基盤整備を加速し、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を構築する。

(1)デジタル・ガバメントの確立

• 「デジタル・ガバメント実行計画」に従い行政のデジタル化を強力に推進する。

• デジタル庁は各府省庁への勧告権等を活用し総合調整機能を果たす。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20191220/siryou.pdf

• 2022 年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指すとの方針の下普及に取り組む。

• マイナンバーカードの健康保険証、運転免許証との一体化などの利活用拡大、スマホへの搭載等について、国民の利便性を高める取組を推進する。

• 給付事務等への活用を念頭に行政機関間の情報連携を推進する。

• 住民情報の連携について、マイナンバー制度の活用を図る。

• 法整備も視野に入れ、本年中に給付事務用やGビズID発行事務用等を含めた国の行政機関間の全ての商業登記情報連携を無償化するとともに、独立行政法人及び地方自治体との間の全ての連携についても本年度中の無償化を目標に作業を進める。

• これによりデジタルで手続を完結させ、紙の登記事項証明書の添付省略を促進する。会社法上の決算公告義務の履行を確保しつつ、経済産業省及び国立印刷局は、契約情報・会社決算情報等の官報掲載情報のGビズインフォとの情報連携を本年中に開始する。

• 記帳等の経理事務のデジタル化及び記帳水準の向上を図るなど民間部門の経理・行政事務のDXを推進する。

• デジタル庁は、ベース・レジストリの構築・管理・運営において知見のある国立印刷局等の公的機関の協力を求め、その早期構築に取り組む。

https://cio.go.jp/node/2764

• オンライン化されていない行政手続の大部分を、5年以内にできるものから速やかにオンライン化し、オンライン化済のものは利用率を大胆に引き上げる。

【2020年改定版】デジタル・ガバメント実行計画の概要

➢ デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 ~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~

➢ デジタル庁設置を見据えた「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を踏まえ、国・地方デジタル化指針を盛り込む等デジタル・ガバメントの取組を加速サービスデザイン・業務改革(BPR)の徹底

https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/alphabet/bpr#:~:text=BPR%E3%81%AF%E3%80%81%E6%A5%AD%E5%8B%99%E3%81%AE%E6%9C%AC%E6%9D%A5,%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

行政手続のデジタル化、ワンストップサービス推進等

✓ 書面・押印・対面の見直しに伴い、行政手続のオンライン化を推進

✓ 登記事項証明書(情報連携開始済)、戸籍(令和5年度以降)等について、

行政機関間の情報連携により、順次、各手続における添付書類の省略を実現

✓ 子育て、介護、引越し、死亡・相続、企業が行う従業員の社会保険・税及び法人設立に関する手続についてワンストップサービスを推進

✓ 法人デジタルプラットフォームの機能拡充による法人等の手続の利便性向上デジタル・ガバメント実現のための基盤の整備(上記指針以外)

✓ 政府全体で共通利用するシステム、基盤、機能等(デジタルインフラ)の整備

✓ クラウドサービスの利用の検討の徹底、セキュリティ評価制度(ISMAP)の推進

✓ 情報セキュリティ対策の徹底・個人情報の保護、業務継続性の確保

✓ 新たなデータ戦略に基づき、ベースレジストリ(法人、土地等に関する基本データ)の整備、プラットフォームとしての行政の構築、行政保有データのオープン化の強化等を推進

✓ デジタル庁の設置も見据え、全ての政府情報システムについて、予算要求前から執行までの各段階における一元的なプロジェクト管理を強化

https://cio.go.jp/guides

政府情報システムの効率化、高度化等のため、情報システム関係予算の一括計上の対象範囲を拡大(全システム関係予算のデジタル庁一括計上を検討)

https://cio.go.jp/node/1426

✓ 機動的・効率的・効果的なシステム整備のため、契約締結前に複数事業者と提案内容について技術的対話を可能とする新たな調達・契約方法の試行

✓ 政府情報システムの運用等経費、整備経費のうちシステム改修に係る経費を令和7年度までに3割削減を目指す(令和2年度比)

外部の高度専門人材活用の仕組み、公務員試験によるIT人材採用の仕組みを早期に導入一元的なプロジェクト管理の強化等

地方公共団体におけるデジタル・ガバメントの推進

デジタルデバイド対策・広報等の実施

✓ 身近なところで相談を受けるデジタル活用支援員の仕組みを本格的に実施

✓ SNS・動画等による分かりやすい広報・国民参加型イベントの実施

※本計画は、デジタル手続法に基づく情報システム整備計画として位置付けることとする。

✓ 自治体の業務システムの標準化・共通化を加速(国が財源面を含め支援)

✓ マイナポータルの活用等により地方公共団体の行政手続(条例・規則に基づく行政手続を含む)のオンライン化を推進

✓ 「自治体DX推進計画」に基づき自治体の取組を支援

https://www.soumu.go.jp/main_content/000726912.pdf

✓ クラウドサービスの利用、AI・RPA等による業務効率化を推進

✓ 「地域情報化アドバイザー」の活用等によるデジタル人材の確保・育成

国・地方デジタル化指針

✓ 利用者のニーズから出発する、エンドツーエンドで考える等のサービス設計12箇条に基づく、「すぐ使えて」、「簡単」で、「便利」な行政サービス

https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/servicedesign_betten1.pdf

✓ 利用者にとって、行政のあらゆるサービスが最初から最後までデジタルで完結される行政サービスの100%デジタル化の実現

✓ 業務改革(BPR)を徹底し、利用者の違いや現場業務の詳細まで把握・分析

「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告(工程表含む)」に基づき推進

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/kaizen_wg/dai4/gijisidai.html

✓ 国・地方の情報システムの共通基盤となる「(仮称)Gov-Cloud」の仕組みの整備

https://www.soumu.go.jp/main_content/000731217.pdf

✓ ワンス・オンリー実現のための社会保障・税・災害の3分野以外における情報連携やプッシュ通知の検討、情報連携に係るアーキテクチャの抜本的見直し

✓ 国・地方のネットワーク構造の抜本的見直し(高速・安価・大容量に)

✓ 自治体の業務システムの標準化・共通化・「(仮称)Gov-Cloud」活用

✓ 強力な司令塔となるデジタル庁設置、J-LISを国・地方が共同で管理する法人へ転換

✓ 公金受取口座を登録する仕組み、預貯金付番を円滑に進める仕組みの創設

✓ マイナンバーカード機能をスマートフォンに搭載、電子証明書の暗証番号の再設定等を郵便局においても可能に、未取得者への二次元コード付きカード交付申請書の送付、各種カードとの一体化(運転免許証、在留カード、各種の国家資格等)

✓ マイナポータルのUX・UI改善(全自治体接続等)、情報ハブ機能の強化

✓ 個人情報保護法制の見直し(法律等の一元化、民間事業者等の負担軽減)

✓ 戸籍における読み仮名の法制化(カードへのローマ字表記、システム処理の迅速化)

1 戸籍情報連携システム

戸籍謄抄本の添付省略

• 令和元年5月に改正された戸籍法により、新たに「戸籍情報連携システム」が構築された。

→マイナンバー制度に基づく情報連携、戸籍事務内連携が図られることとなった、

• 令和5年度中に施行予定

マイナンバー制度に基づく情報連携

• マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)が改正され、戸籍情報が、マイナンバー制度に基づく情報連携の対象

• 各種の社会保険手続の申請等を行う際、行政機関側は、申請者が記入したマイナンバーを利用して必要な情報(親子関係や婚姻関係等)を確認できることとなった。

• →戸籍謄抄本の添付不要

地方公共団体システム機構

利用者クライアントソフトに係る技術仕様について

https://www.j-lis.go.jp/jpki/procedure/procedure1_2_3.html

総務省 マイナンバーカードには、住基アプリケーション(住基AP)が入っている、既に住民基本台帳ネットワークは整備させれているので、戸籍連携においてマイナンバーカードを利用する必要がない。個人情報取得に関しては最低限に留めるという趣旨。

https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/03.html#hikaku

情報連携の対象となる具体的な行政事務

• マイナンバー法の別表で定められる。

• 1児童扶養手当の支給事務における続柄、死亡の事実、婚姻歴の確認

• 2国民年金の第3号被保険者(被保険者が扶養する主婦など)の資格取得事務における婚姻歴の確認

• 3奨学金の返還免除事務における死亡事実の確認

• 4健康保険の被扶養者認定事務における続柄の確認などに活用される予定

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律

別表第一(第九条関係)、別表第二(第十九条、第二十一条関係)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027

戸籍事務内連携

戸籍情報システム標準仕様書  日本加除出版株式会社

https://www.moj.go.jp/content/001321623.pdf

戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書(R2.1 版)

令和2年3月法務省

https://www.moj.go.jp/content/001321624.pdf

• 各市区町村長が必要な範囲内で法務大臣の保存する戸籍又は除かれた戸籍の副本を利用して戸籍事務を行えるようになった。

• 各市区町村では、婚姻の届出や養子縁組など戸籍に関する各種届出の際、市区町村長による確認が必要な戸籍情報について「戸籍情報連携システム」で参照可能となった。

• →戸籍の届出に必要とされていた戸籍謄抄本の提出不要に

所有者の登記名義人の死亡情報等を不動産登記記録に反映させる仕組み

• 令和3年4月に不動産登記法改正

• 登記官が、他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や住所等の異動情報等を取得し、これらを職権的に不動産登記記録に反映させられる仕組みの創設

• 所有権の登記名義人が自然人の場合には住民基本台帳ネットワークシステムから、法人の場合は法人登記のシステムから、それぞれ必要な情報を取得することが想定

• 施行期日は、公布日(令和3年4月28日)から起算して5年を超えない範囲

2 法人設立関連手続について等

• 法人設立関連システム等について、費用対効果を考慮した上で、次回システム刷新時に合わせて英語でも対応を行うことを原則とすべきである。法人設立関連手続に関しては、以下の取組を行う

• ①2021年度中に、英語申請ガイドの作成、書式見本の作成等を行う。

• →更なる取組を推進

• ②オンライン申請手続については、2021年度中に設立登記申請時の手続で利用される登記情報システムなどに自動翻訳システムを付すことを検討し結論を得る。

• →左記結論を踏まえ必要な措置を講ずる

•なお、手続代行を担う士業等と連携し、登記申請後の労働基準監督署、ハローワーク及び年金事務所への設立届出の円滑な提出を可能とする。

•→更なる取組を推進

• 商業登記電子証明書について、法人の本人確認をデジタル完結させる手段として一般的に利用されるよう広報活動を行う。

ブリッジ認証局CP/CPS (PDF) 令和3年3月1日改定 行政情報システム関係課長連絡会議了承

https://www.gpki.go.jp/bca/cpcps/index.html

2021年度中に、利便性の向上策や無償化の可否を検討する。

• →更なる取組の検討・実施

• あわせて、クラウド化に向けた検討を行う。また、費用対効果も踏まえつつ、2025年度までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す。

• →費用対効果も踏まえつつ、2025年度までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す

• 2021年度中に設立後の法人の実質的支配者の把握に寄与する制度を導入する

引っ越し関係手続、死亡・相続関係手続

•内閣官房において、「引っ越し」や「死亡・相続」の際に必要となる届出等について、手続きのワンストップ化を検討

•法務省では、不動産登記の所有者の住所変更や、死亡の届出、相続に伴う不動産登記の所有者変更等の制度を所管する立場から、関係省庁と連携し検討

3 オンライン利用の促進

オンライン利用率を大胆に引き上げる取組

• 各府省は、令和2年度に旗艦的なものとして開始した以下の28事業について、規制改革推進会議が示す考え方も踏まえ、短い期間でPDCAを回してオンライン利用率を大胆に引き上げる取組を着実に推進する。

• ・ 商業・法人登記関連手続(法務省)

• ・ 不動産登記関連手続(法務省)

• ほか26事業

• c 法務省は、登記・供託オンライン申請システムについて、開発者等が使いやすい形でのAPI仕様の公開方法に係る改善に取り組むとともに、利用時間の24 時間対応に向け、ニーズや費用対効果を踏まえた検討を行う。

API概要

登記・供託オンライン申請システム

https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/developer.html

• また、申請ページ(法人設立ワンストップサービスを含む)への導線や手続案内等が、手続に精通していない申請者に分かりやすいものとなるよう、法務省・法務局のウェブサイトを見直す等周知方法を改善する。

•d 法務省は、これまでデジタル化の推進に多くの課題があったことを踏まえ、登記その他のデジタル社会の基盤となる制度を所管する省として、デジタル化を強力に推進する観点から、民間人材の登用を含め、デジタル化を推進する体制を構築する。

• g 各府省は、手続件数、手続の性質、手続の受け手となる機関等に応じた優先順位を踏まえつつ、オンライン利用が100%のものなどを除き、原則として年間10 万件以上の手続を含む事業の全てについて、28 事業(上記a)に準じてオンライン利用率を引き上げる目標を設定した取組を行う。

• h 各府省は、オンライン利用率の大胆な引上げを含むデジタル化の推進のため、デジタル技術又は民間におけるデジタル改革について知見のある者の登用を含め、規制改革推進に関する答申(令和3年6月1日)Ⅱ6.(2)アの「基本的考え方」に示した取組を確実に実施できる体制を整備する。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html

•各府省は、オンライン利用を促進する上で、API連携により民間企業等の参入を図ることは極めて重要であることを踏まえ、オンライン利用率を引き上げる目標を設定した取組に当たっては、手続の性質に応じて、開発者・利用者にとって利便性の高い形でAPIが構築・公開されているか点検し、必要な措置を講ずる。デジタル庁(IT室)は、民間が利用しやすい形でAPIが提供されるよう、APIの仕様の標準化など、各府省に対して必要な助言・支援等を行う。

行政手続の100%オンライン利用→司法書士・弁護士については義務化。

• d 法務省は、商業登記・不動産登記に係る手続について、オンライン利用率が中程度となっていることを踏まえ、まずは、上記No.5 の取組を通じてオンライン利用の向上を図る。

•併せて、司法書士等による手続代行が多いことを踏まえ、デジタル化を抜本的に進める上で司法書士等の果たすべき役割について検討を行う。

デジタル化に向けた基盤の整備等

• b 法務省は、デジタル庁(IT室)と連携し、法令において登記事項証明書の添付が求められる手続については、能動的に働きかけを行い、情報連携の促進に係る工程表を作成し、可及的速やかに添付書類の省略を実現する。

• また、法務省は、法整備も視野に入れ、給付事務用やGビズID発行事務用等を含めた国の行政機関間の全ての商業登記情報連携を無償化するとともに、独立行政法人及び地方公共団体との間の全ての連携についても無償化を進める。これによりデジタルで手続を完結させ、紙の登記事項証明書の添付省略を促進

する。

• b:法令において登記事項証明書の添付が求められる手続における情報連携の拡大について、令和3年中に工程表を策定し取組を開始。国の行政機関間の全ての商業登記情報連携の無償化について、令和3年中に措置。独立行政法人及び地方公共団体との間の全ての連携の無償化について、令和3年度中を目途に措置

4 書面・押印・対面の見直し

書面・押印・対面見直しの確実な推進

• a 令和3年3月末までに押印義務の見直しについて法令改正等が行われていない305種類の手続について、速やかに行政手続における押印の見直しを確実に実施する。

• b 各府省は、オンライン化する方針の手続について、可能な限り前倒しを図りつつ措置。なお、オンライン化の手法等については、今後の情報通信技術の発展、政府の方針等を踏まえ柔軟に改善する。

• c 各府省において性質上オンライン化が適当でないと考える432 種類の手続のうち、少なくとも年間の手続件数が1万件以上の手続については、最新のデジタル技術や補完的手段の活用等によるオンライン化を含む利用者負担の軽減策について、引き続き検討する。

デジタル整備法による戸籍法改正

• デジタル整備法により、押印の見直しのために改正された法務省所管の法律は、戸籍法など5つ

• 施行は、9月1日

• 現在、署名と押印を求めている婚姻届・離婚届等について、押印廃止。真正性確保のため署名のみ求める。

• 明治時代から戸籍の届出には押印するとされていいる。人生の節目である婚姻届等については、押印の存続を求める国民の声あり。

• →民事局長通達により、届出人の任意の押印を認め、標準様式にも押印できることを明記予定金融分野の行政手続における書面・押印・対面手続の見直し

• 金融庁は、金融機関等から受け付ける申請・届出等について、令和3年3月末までに整備したシステム及び制度面での対応を踏まえ、令和3年度の可能な限り早期に運用を開始する。また、押印については、府令・監督指針等の改正を行い、令和2年中に全て廃止する。

• (前段)令和3年度措置

• (後段)措置済み

民間における書面・押印・対面規制等の見直し

• a 内閣府及び法務省は、民法(明治29 年法律第89号)第486 条の改正により、令和3年9月から弁済に係る受取証書について電磁的記録の提供の請求が可能となることを踏まえ、施行後に小売店等の店頭において混乱を来さないよう、あらかじめQ&A等で法令解釈を明らかにし、広く周知を図る。

• b 法務省は、令和3年10月以降に開催される株主総会について、新型コロナウイルス感染症の影響により株主総会資料のウェブ開示によるみなし提供制度の対象を拡大する措置が引き続き必要となった場合には、当該措置を講ずる。

• c 経済産業省は、株主総会プロセスにおける企業と株主による対話の充実に向けて、ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施の推進のため、実施ガイドなどの更なる充実を図る。

• d 国土交通省は、不動産の売買取引におけるオンラインによる重要事項の説明について、社会実験の結果を踏まえ、ガイドラインを改定し、テレビ会議等による非対面の説明が可能である旨を明らかにする。

• e 国土交通省は、設計受託契約・工事監理受託契約に係るITを活用した重要事項の説明について、暫定的に運用しているテレビ会議等による非対面の説明を本格的に運用するためのガイドラインを整備する。

書面の見直し(民法・受取証書の電子化)

電子的な受取証書(新設された民法第486条第2項関係)についてのQ&A

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00269.html

• インターネットを用いた電子商取引が増加。

弁済者側には受取証書(領収書)に代えて電磁的記録の提供を受けたいというニーズあり。弁済受領者側にも受取証書の交付が過度な負担となっている場面あり。

• 民法486条2項を新設。弁済者は受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電データの提供を請求できることとした。

• ただし、電子データの提供に直ちに対応することが困難な小規模事業者などに配慮し、弁済受領者にとって電子データの提供が不相当な負担となる場合には、弁済者は請求できないこととした。

書面の見直し(借地借家法等)

• 電子契約システム等を利用した遠隔地での契約を容易にするため、借地借家法を改正

• 一般定期借地権の設定(法定更新等を排除する特約)や定期建物賃貸借契約について、書面に代えて電磁的記録によって行うことを可能とした。定期建物賃貸借の事前説明事項について、電磁的記録による提供も可能。

定期建物賃貸借契約自体の電子化を検討

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/hotline/h_index.html

• 被災地短期借地権設定契約(大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法の改正)、書面よってしなければならないとされている催告等の手続(建物の区分所有等に関する律の改正)について、相手方の承諾を得た場合には、電磁的記録によることを可能。

5 裁判手続きのIT化により高まる本人支援のニーズに応える

• 裁判のIT化は誰のため?

• 現状と今後のスケジュールについて

• 司法書士会の急務は裁判事務の実績づくり!!

• 平成30年3月30日 裁判手続等のIT化検討会による取りまとめ

• 令和元年12月 民事裁判手続等IT化研究会による報告書世界銀行の“DoingBusiness”の低評価

• 世界銀行の“Doing Business”(注:世界銀行が毎年発表する、世界190か国を対象とし、事業活動規制に係る10分野を選定し、順位付けしたもの)2017年版では、「裁判手続の自動化(IT化)」に関する項目について、我が国に厳しい評価が示されている。

• 我が国のビジネス環境や国際競争力の観点から見た場合、利用者目線に立った裁判手続のIT化を更に進める必要があるのではないかとの声が高まった。

当会のスタンス

• 「裁判記録のペーパレス化・データベース化」「多数当事者を想定する事件における省力化」「遠隔地の当事者間の裁判におけるコスト軽減」「裁判官や裁判所職員、法律家やその事務員の働き方改革にもつながる」「利用者の利便性の向上と民事訴訟の効率的な進行」「真に望ましい迅速かつ効率的な民事訴訟を実現すること」などといったメリットにはすべて基本的に賛成するものである。

• その上で、「利用者目線での推進」「国民に利用しやすく、わかりやすい民事訴訟手続という、現行の民事訴訟法の基本に合った理念の実現」という趣旨こそが、すべてのメリットに最優先されるべき重要な視点である。

実現までの工程表

• 令和元年度 • 民事裁判手続等IT化研究会の報告書取りまとめ

• フェーズ1(ウェブ会議等を用いた争点整理)の特定庁での実施

• 法制審議会への諮問 • 令和2年度 • 専門部会における調査審議 • フェーズ1の拡大(令和2年度以降、順次全国へ)

• 令和3年

• 専門部会における調査審議において中間試案

• パブリックコメント

• 要綱案の取りまとめに向けた議論

• フェーズ3の先行実施(準備書面等のオンライン提出)

• 令和4年

• 専門部会における要綱案決定

• 法制審議会答申、改正法案の国会提出

• フェーズ2の一部実施(ウェブ会議等を用いた双方不出頭の争点整理)

令和5年以降

• フェーズ2の完全実施(口頭弁論のウェブ化)

• フェーズ3の完全実施(訴状を含めたオンライン申立て、記録の電 子化の実現)

日本司法書士会連合会の取り組み

• 平成30年1月3日から5日 韓国視察

• 平成30年2月22日 検討会への意見書提出(HP参照)

• 山本和彦座長、杉本純子先生、湯淺墾道先生らとの意見交換

• 平成30年4月9日 検討会取りまとめに対する会長談話(HP参照)

• 平成30年7月24日から開催された「民事裁判手続等IT化研究会」にオブザーバー参加

・令和元年8月19日より8月14日までアメリカ視察(報告書は会報THINK118号に掲載)

・令和元年9月17日 民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明(HP参照)

・令和2年2月8日 法務士を招いて韓国の新しい電子訴訟についてレクチャーを受ける

諸外国の状況は?

• 欧米を中心に裁判手続等のIT化が既に進められてきており、アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT化した裁判手続等の運用が広く普及・定着している。

• ドイツ等でも、近年、IT化の本格的取組が着実に進展している。

韓国の特徴

(法務士の権限について)民事訴訟等における電子文書利用等に関する規則

• 第4条(使用者登録)

• 1電子訴訟システムを利用しようとする者は電子訴訟システムに接続して、次の各号の会員類型別に電子訴訟ホームページで要求する情報を該当欄に入力した後、電子署名のための証明書を使って使用者登録を申請しなければならない。登録した使用者情報は証明書の内容と一致しなければならない。

• 1.個人会員 2.法人会員 3.弁護士会員

• 4.法務士会員 5.回生・破産事件の手続関係人会員 6.執行官等

• 2 第1項第2号から第6号までの使用者登録をした者(以下「登録使用者」という)は、利用権限の範囲を定めて所属使用者を指定でき、それにより指定された者は電子訴訟システムに所属使用者として登録することができる。

• 第11条(電子文書の作成・提出)

• 1 登録使用者は電子訴訟ホームページで要求する事項を空欄補充方式で入力した後、残りの事項を該当欄に直接入力し、または電子文書を登載する方式で訴訟書類を作成・提出することができる。

• 2 省略

• 3 第4条第1項第4号の法務士会員は次の各号の中でいずれか一つの方法により電子文書を作成・提出することができる。ただし、 民事訴訟等の当事者、訴訟代理人または第3条第1号から第4号ま でに規定された者に該当する委任者が電子訴訟同意をしなかった場合には第24条第1項第3号により登録使用者を送達領収人として 申告する趣旨の書面および今後委任者が直接訴訟書類を提出し、ま たは送達を受ける時に電子訴訟同意をするものとの確約する趣旨の書面を添付しなければならない。

• 以下省略

シンガポールの特徴

(CJCによるサポート)

• The Community Justice Centre

という、公益団体が本人訴訟等の支援も行っている。

• Automated Court Documents

Assembly(ACDA)というシステムにより、本人が入力すると申請書が作成されるシステム

アメリカの特徴

•セルフサポートセンターによる本人訴訟支援(サンフランシスコ)

• LIMITED SCOPE

REPRESENTATION (LSR)という弁護士代理のばら売り制度など(サンフランシスコ)裁判手続等のIT化検討会による取りまとめ(平成30年3月30日)

• IT化に向けた課題として

• (1)本人訴訟について

• (2)情報セキュリティ対策

「本人訴訟について」

• 裁判手続等の全面IT化の実現に当たっては、代理人として弁護士等が選任されていない本人訴訟について、当事者の裁判を受ける権利にも十分配慮しつつ、当事者の置かれた立場や訴訟の各進行段階等に応じ、裁判所による適切なウェブ上の利用システム・環境の構築や、適切な担い手による充実したIT面のサポート(ITリテラシー支援策)が必要である。

• 資力がない当事者への法的側面でのサポートは法テラス等で行われているが、それとは区別されるIT面のサポート策として、その実施主体や内容等について、様々な方策やアプローチが考えられるところであり、今後、総合的な対策を、非弁活動の抑止等の観点にも留意しつつ、検討していく必要がある。

「本人訴訟について」(2)

• この点は、当事者間で利害の対立することが多い裁判事件の一方当事者に対する支援であることからすると、まずは、裁判上の代理人として関与する弁護士、司法書士等の法律専門士業者が、代理権の範囲の中で、所属団体の対応枠組みを使うなどして、法的側面とともにIT面の支援をも行っていくことが考えられる。

• もっとも、充実したサポート体制の実現のためには、これに限る必要はなく、特に、経済的事情で司法アクセスが容易でない当事者への支援の在り方は、既存の各種相談機関や法テラス等の支援窓口の関与・活用も含め、しっかりと検討を進める必要がある。この支援スキームの一案として、裁判所外で、紙媒体の書面の電子化を含めたサポートを行うための支援センターを設けてはどうかという意見も述べられたところであり、引き続き、望ましいサポート策の在り方の検討と対応が求められよう

民事裁判手続等IT化研究会による報告書

• 民事訴訟手続を全面的にIT化した場合における課題の整理や規律の在り方の検討等を行うことを目的として設置され,平成30年7月から令和元年12月までの間,合計15回にわたり,山本和彦一橋大学大学院法学研究科教授を座長として,研究者や,弁護士,司法書士,関係省庁等の関係者をメンバーとして,開催されたものである。

• IT機器を有していない又はITに習熟していない者に対するサポートの在り方については,現在,内閣官房に設置された「民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議」において,書面の電子化については,裁判所や法テラス等の公的機関はもとより,弁護士会や弁護士,司法書士会や司法書士をはじめとする士業者団体・士業者等,受皿 になり得る者において幅広く担当される必要があるとの有識者の意見を踏まえた検討が進められている 。そして,このようなサポート体制について,日本弁護士連合会からは「民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針」が,日本司法書士会連合会からは「民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する声明」が,それぞれ示されているところである。

民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議

• 「民事司法制度改革の推進について」(令和2年3月10日)

• 個々の弁護士や司法書士によるサポートとしては、書面の電子化等のITリテラシー支援サービスを提供するとともに、本人の依頼に応じて、民事訴訟の追行に必要な法的助言の提供を行う(司法書士の場合には、代理業務が可能な範囲で法的助言の提供を行う)こと等が考えられる。また、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び各地の弁護士会や司法書士会におけるサポートとしては、窓口に書面の電子化のための機器を設置すること等が考えられる。こうした方策を前提に、さらに具体的なサポートの内容については、個々の弁護士や司法書士、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び各地の弁護士会や司法書士会において検討することが期待される。

令和2年度革新的事業活動に関する実行計画

• その過程において、弁護士・司法書士等の士業者に限りオンライン提出の義務化を検討する

• 代理人が選任されていない本人訴訟に関して、日本司法支援センターによる書面の電子化等のIT支援や法的助言も含めた支援の内容を2020年度から検討する。日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会等が行う取組の検討も期待する

• 法制審議会における民事訴訟手続のIT化の検討も踏まえつつ、2020年度中に家事事件手続及び民事保全、執行、倒産等の民事非訟事件手続のIT化のスケジュールを検討する

法制審議会の基本的な視点

• 我が国においては,平成16年の民事訴訟法の改正によってオンラインでの裁判所への申立て等を可能とする規定が整備され,平成18年には支払督促手続 について オンラインでの申立てが可能となった 。しかし ,民事訴訟手続一般については,最高裁規則等が整備されていないため,いまだオンラインでの訴え提起等は認められていない。また,ITを利用した本格的な取組が急速に進展している諸外国の状況を踏まえると,我が国においても民事訴訟手続のIT化を更に進めることが,重要な課題であるといえる。

• そのため,政府において,近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに時代に即して民事訴訟制度をより一層 適正かつ迅速なものとし国民に利用しやすくするという観点から訴状等のオンライン提出訴訟記録の電子化情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しについて検討し,令和4年中の民事訴訟法改正を視野に入れて取り組むこととしている。

「成長戦略フォローアップ工程表」• 令和3年6月18日に閣議決定

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/portal/follow_up/index.html

• 民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議の取りまとめに基づき、ITに関する状況を踏まえ、国民の司法アクセスの確保に配慮しつつ、訴状等の書面をオンライン提出に一本化する全面オンライン化を司法府の取組を含め段階的に実現

• その過程において、弁護士・司法書士等の士業者に限りオンライン提出の義務化を検討

• 本人訴訟に関して、日本司法支援センターによる書面の電子化等のIT支援や法的助言も含めた支援の内容を引き続き検討する。日本弁護士連合会や日本司法書士会連合会等が行う取組の検討も期待 →IT化の範囲や導入されるシステム等の具体的内容等を踏まえて検討

司法書士の役割

簡易裁判所における訴訟代理人としての対応

地方裁判所における本人訴訟のサポート

簡易裁判所における本人訴訟のサポート

ITサポートと手続きのサポート

司法書士・司法書士会のすべきこと裁判業務についての実績づくりが急務→実績のない資格者には権限も与えられることはない

• 今後の法制審議会における議論にも注目していただき、前向きで建設的な意見を述べていくこと(パブコメ対応)

• これまでの本人訴訟支援の実績で得た知見を、ITサポートも含めて、国民に提供していくことが求められている

• 司法書士総合相談センターにおけるサポート体制づくりも急務

6 ODR時代到来に備える専門家として

ODR(OnlineDispute Resolution)とは?

ODR は多義的な概念ではあるが、一般的には、IT・AI 等の先端技術を用いたオンラインでの紛争解決手続を指すものと理解されている。

ODR 活性化に向けた取りまとめ

• 令和2年3月16日 ODR 活性化検討会

内閣府 政策会議

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/odrkasseika/index.html

• 政府の「成長戦略フォローアップ」(令和元年6月21日閣議決定)において、「裁判手続等の IT 化の推進」に係る施策の一つとして、「紛争の多様化に対応した我が国のビジネス環境整備として、オンラインでの紛争解決(ODR)など、IT・AI を活用した裁判外紛争解決手続などの民事紛争解決の利用拡充・機能強化に関する検討を行い、基本方針について 2019 年度中に結論を得る。」とされた。

• これを受けて、令和元年9月、「ODR活性化検討会」(本検討会)が設置された

日本の司法アクセス環境の現状等

• 第一審民事訴訟通常事件の新受件数

• 地方裁判所 平成30年には約13万8000件

• 簡易裁判所 平成30年には約34万1000件

• 民事調停事件の新受件数 平成30年には約3万4000件

• 認証 ADR 制度の利用 平成30年度約1650件

• 弁護士会等における法律相談件数 平成30年度約62万件超え

• 国民生活センター及び消費生活センター等に寄せられる消費生活相談の件数 平成30年には約102万件

ODRに適する分野について

• ニーズや諸外国の取組を踏まえると、

• ①一般的には、低額で定型的な紛争が大量に生じることが想定される分野などについては、ODR による解決、早期の実用化が求められている。

• ②紛争の前提となる取引等がオンラインで行われる場合についても、オンラインでの紛争解決に馴染みやすい。

• これらの分野については、早急な試用・実装。

その他の法的紛争におけるODR活用

• 検討会でのヒアリング結果等を踏まえると、離婚・相続等の家庭問題に関する法的紛争、交通事故に関する紛争、家賃増減・敷金返還などの賃貸関連紛争、スポーツ関連紛争などについても、定型的なものも相当数見込まれることから、ODRによる解決のニーズがあるように思われる。

• また、金融取引紛争についても取引そのものがオンラインで行われるフィンテック分野を始めとして、ODR の活用が期待される分野といえよう。

• その他、検討会では、いわゆる災害 ADR や倒産紛争に関する ADR についても、ODR 活用が期待されるのではないかとの意見もあったところであり、更なる ODR の活用に向けて、ニーズやあい路の検討が進められることが期待されるところである。

ODR の実装に向けた課題とその支援策のあり方について

•1 ODRの実施に関し、これまでに必ずしも念頭に置かれていなかったコミュニケーションのオンライン化などについて弁護士法やADR法等といった関連する法令との関係を整理していく必要があろう。

•2 ODRの活用には初期投資 やランニングコストを含め一定のコストが生じることが不可避であり、この観点からの検討も必要と考えられる。諸外国の実情等やニーズを踏まえ、特定の分野で先行してODR のスキームやシステムを試行・実装し、利用者を拡大していくアプローチが相当と考えられることから、民間の取組を促す環境整備も含めて、政府による積極的な支援・サポートも検討されるべきものと考えられる。

•3 また、多様な分野の紛争を取り扱う150以上の認証ADR機関を含め、様々なADR機関が全国各地で活動していることからすると、これらのADR機関は ODR の早期の実装に向けた担い手となることが期待されるが、現状では、本検討会で紹介されたアンケート調査の結果にもあるとおり、様々なコスト負担感等により、十分にODRを活用することができていない。今後、そのあい路をも踏まえた検討が必要であろう。

• ODR推進検討会を設置(令和2年10月から1年程度)

https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04200001_00002.html

• 検討事項は、

• ⑴ ODRの推進に向けた裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律関連の規律(法,法務省令,ガイドライン等)の見直しについて

• ⑵ 民間紛争解決手続における和解合意への執行力の付与について

• ⑶ ODRにおける認証紛争解決事業者の守秘義務の在り方について

日本司法書士会連合会の取り組み

• チャットベース(完全非対面)のODRについての実証実験

• 認証ADR機関におけるウェブ調停の促進

司法書士ODRチャット相談・チャット調停(無料)― チャット相談toチャット調停の試み

【phase1】 相談 【phase2】 調停(ODR)

司法書士

相談者/申立人(賃借人)

相手方(賃貸人)

【留意点】

賃貸借契約における敷金返還請求等の原状回復事件

● LINE上で、チャットベースで相談対応(受付は24時間対応可能とする)

● 担当する司法書士は、ODRの手続実施者とは別の司法書士

● システム(teuchi(テウチ)*ミドルマン社)を利用し、チャットベースで調停遂行(日程調整不要・出頭不要・非対面)

https://www.teuchi.online/

● 一定期間(例:14営業日~30営業日)で調停人から調停案提示

● 資料は画像添付により提供

● 合意に至った場合、合意書にクラウドサインを行う

https://www.cloudsign.jp/

● 手続き実施者は相談対応司法書士とは別司法書士

【phase3】 訴訟等

●日司連のLINE公式IDを使用して相談対応

https://www.linebiz.com/jp/service/line-official-account/

●日司連のLINE公式IDを、「友だち」追加したうえで、相談

●調停申し込みがあった旨連絡(メールなど)

●テンプレートに必要事項を入力し、調停の申立て*「相談」からのシームレス化の工夫

●調停実施

●調停申し込みがあった旨連絡

●事案に応じて、【phase2】・【phase3】を案内

●必要に応じて、訴訟、ADR等の手続きにつなぐためのフォローアップ

(主催)日本司法書士会連合会

≪手続きのながれ≫※

※ フロー図は、賃借人から相談を受けた場合。なお、賃貸人から相談を受ける場合も本制度の対象。

執行力付与について

(1) 執行力付与に関するさまざまな意見及び事例

a 執行力の付与となれば手続きは重厚になり、「それなら裁判所の手続きを選択する」ということにならないか。

b 当事者間の対話を促進し、信頼関係を醸成することで、自発的な履行を促すのがADRとして好ましいのでは。

c 執行力の付与を恐れて、ADRに応諾しない相手方が想起され、この場合貴重な話し合いをする機会を失うことにならないか。

f 調停の利用希望申込、あるいは、法14条に基づく説明段階で、手続きには、執行力がない旨を説明したところ、当事者が手続きの利用を選択しなかったケースがあった。

e 合意成立後に、即決和解、公正証書(執行受諾文言付)の作成を行うことになったケースがあった。

d 執行力を付与することにより、裁判手続における事務的・時間的・経済的負担も軽減できる可能性が拡大する(例えば、不動産の相続における遺産分割調停事案において、民間ADR機関で合意した場合、当該合意書だけでは相続登記ができない)

● 認証紛争解決機関である各地の単位会、当連合会の関連WT内において出された主な意見や報告をまとめると、以下のとおり、肯定的・否定的いずれもみられる。

(2) 執行力に関する考え方(上記(1)をふまえて)

【考え方1】 特定の事件を対象として、執行力の付与をすべきではないか。

● 一定の事件類型(登記関連等)については、執行力付与の必要性が存在(d)。

● 執行力付与の有無を、手続き選択の判断要素にするケースの存在(f)

● 但し、すべての事件を対象とするのでは、応諾率の低下(c)、ADR独自の良さを活かせない(b)等の懸念も存在。

● 対象事件は、現状をふまえ※①当事者の意思(当事者の選択の機会付与)、②事件類型などにより、絞込みを行うことが考えられるのではないか。

● なお、上記絞込みに際しては、既存の様々な履行確保手段が、「執行力付与」の代替手段として消去法的に選択されている手段であるか否かについても留意する必要があるのではないか。

【考え方2】 現在各ADR機関において履行確保に向けて行われている対応や今後導入を検討している「執行力付与」以外の方法につき、これらを実行するための課題(法律上等)を抽出し、課題解決に必要な対応をすべきではないか。

● 例えば、ADR(ODR)手続き内で、合意内容に基づく履行が終了するのであれば、「執行力の付与」まで要しないと考えられる(例えば、金銭請求事件につき手続き内で支払いを完了させる)。この際、金銭支払いにつき、ODRにおいて、その手続き内で履行を行う場合の、法律上(例えば資金決済法)等の課題についても抽出すべきではないか。

※ 例えば、①合意成立時に支払うべき金銭を持参した事案、②建物明渡請求につき、合意成立後、明渡期日に調停人が現場に立ち会い、その後合意書への署名押印を行った事案、③遺産分割調停事案につき、合意内容に沿った具体的な遺産承継手続きが当事者には困難であったため、その後専門職に引き継いだ事案(手続上のアシスト)などがある。

• 我が国の離婚した父母のうち8割近くにも及ぶ養育費の不払い状態を解消することが,待ったなしの喫緊の課題であるという共通認識の下,まずは,養育費不払い問題の改善に資する取組として,できるこから一刻も早く着手すべきである• 法務省において,厚生労働省(厚労省),最高裁判所(最高裁),地方自治体等の公的機関や,法テラス,養育費相談支援センター等の関係機関,日本弁護士連合会(日弁連),弁護士会,ひとり親支援団体等の関係団体等と十分に連携を図って,各機関・団体等の自律性を尊重しつつ必要な協力を得て,スピード感ある取組を進めていくべきである。

2020年養育費相談会 代表相談事例

• 40代女性(同居親)

• 今年6月に調停離婚をした。面会交流なし、養育費なしの合意をしたが、将来の子どものことを考えるとやっぱり養育費を受け取りたい。今後、養育費をもらうためには、どのような手続きをすればよいか。

• 50代女性(同居親)

• 12年前に調停離婚が成立し、数年間は調停での定めに従い養育費をもらっていたが、数年前から全く支払われない状況になった。過去に裁判所へ履行命令申立をしたが、裁判所からの書面を受け取ってもらえず、手続きが進まない。強制執行をしなければならないか。

• 年齢不詳女性(同居親)

• 離婚時に養育費の取り決めをし、文書も作成したように思うが手元にない。養育費を1回支払ってもらったが、その後の支払いはない。自分で養育費の支払いについての調停ができるだろうか。

養育費の不払い解消に向けた当面の改善方策

(中間取りまとめ~運用上の対応を中心として~)

• 相談体制の充実のため,利便性の高いSNSサービスを入口とした非接触型の相談対応の実現や利用可能なサービス時間帯の延長が望まれるし,相談者のニーズによっては,司法書士による書類作成援助業務の在り方について今後検討する。

• 養育費を請求する裁判所の手続について司法書士による申立書等の書類作成援助の活用の在り方を検討してはどうかとの意見があった。

養育費不払い解消に向けた検討会議・取りまとめ

(~子ども達の成長と未来を守る新たな養育費制度に向けて~)令和2年12月24日 法務省養育費不払い解消に向けた検討会議

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00101.html

• 全国的に見ると法律家が地域的に偏在していることを踏まえつつ,養育費案件について事案に応じた選択肢を増やすという観点から,法テラスの地方事務所において,利用者のニーズに応え,適切な案件の振り分けの下で,弁護士の代理援助のみではなく,家事調停手続や民事執行手続の申立書作成などの書類作成援助や,書類作成事務についての相談業務について,司法書士の活用を検討すべきではないか,との意見があった。

• これに対し,案件の振り分けは法的判断を伴い,法テラス職員が行うのは困難である,請求額の妥当性や執行方法,離婚に伴う各種法律問題などにつき,法的助言や相手方との交渉・手続の代理等が必要となり書類作成援助で足りなくなることが多いが,法的助言等を司法書士が行えない以上,改めて弁護士に依頼することになって時間と費用の負担が更に発生するおそれがあるなどとの意見があった。

法務省委託調査「養育費の不払い解消に向けた自治体における法的支援及び紛争解決支援の在り方に関する調査研究」にご協力いただける自治体を募集いたします。(商事法務)

• この度、当会では法務省の委託調査「養育費の不払い解消に向けた自治体における法的支援及び紛争解決支援の在り方に関する調査研究」を受託しましした。本事業は、養育費の不払い解消に向け、モデル事業を実施することで、自治体のニーズを把握し、今後の法的支援及び紛争解決支援のあり方や問題点について調査・研究することを目的としております。

• そこで、モデルとして、本事業にご協力くださる自治体を募集します。

• ご検討いただける自治体は、詳細につき下記宛にお問い合わせください。• モデル事業担当TEL:03-5614-5633 *平日10時~17時におかけください。

7 司法書士総合相談センターのIT化

相談センターIT化の必要性

• 業務拡充を含む次なる司法書士法改正の立法事実の準備として

• 全国の司法書士無料相談のDB化

• 利用者の利便性向上に資するため

• スマホ時代のへの対応

• ウェブ相談への対応

• 司法書士会事務局の事務効率化のため

• 記録化、配転等

司法書士界を覆う閉塞感

不動産登記、商業登記事件の減少は本当か?

民間事業者による登記参入はどの程度進んでいるのか?

他士業による登記参入はどの程度進んでいるのか?

AIによって登記業務は代替されてしまうのか?

変革の時代は好機(チャンス)ではないのか?

不動産登記・商業登記の件数の推移

• 不動産登記(権利)について

• 平成9年から令和元年までの推移(白書参照)

• 平成9年が1297万3298件(最大値)

• 平成30年が800万4543件(最小値)令和元年は803万6297件

• 相続登記の増加傾向

• 商業登記について

• 平成4年から令和元年までの推移(白書参照)

会社登記は平成7年が213万3339件(最大値)平成25年が115万4979件(最小値)そこからは微増。令和元年は124万6751件

東洋経済新報社「誰が日本の労働力を支えるのか」より『職業別代替可能性』

• 行政書士 93.1% • 税理士 92.5% • 弁理士 92.1% • 土地家屋調査士 89.0% • 公認会計士 85.9% • 社会保険労務士 79.7% • 司法書士 78.0% • 裁判官 11.7% • 弁護士 1.4% • 中小企業診断士 0.2%

AIに負けないためには!

(3つのポイント)

「創造性」抽象的な概念を整理・創出するための知識

「ソーシャルインテリジェンス」社会的な情報(を収集する能力)、本当のことを話してくれない相手のことを理解したり、説得する力

「非定型」臨機応変な対応や状況判断が求められること

司法書士制度は発展していないのか?

• 成年後見制度がスタート(平成12年)

• 民事法律扶助に書類作成援助が認められる(平成12年)

• 簡裁代理権の付与(平成14年)とその後の改正

規則31条による附帯業務、民事信託支援業務

• 空き家、所有者不明土地問題における法的需要

• 民事裁判のIT化に伴う本人支援への期待

• などなど

デジタル時代の規制・制度について

(令和2年6月22日規制改革推進会議決定)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/p_index.html

• 5.規制・制度の類型化と具体的な見直しの基準

• (3)業規制の見直し

• ④ 特定の資格保有者による業務独占の見直し

• デジタル技術の発展により、ネットやリモート技術を活用した事業展開が容易になってきている。特定の資格保有者しか業務ができない規制・制度についても、業務の一部をデジタル技術によって支援・補完・代替することによって、柔軟かつ消費者利便に合致した新たなサービスの提供が可能となる。業務の一部をデジタル技術によって行うことを業務独占の範囲から除外するなど、業務独占を定める規制のあり方を見直すべきである。

おわりに

変革の時代は好機ととらえるべし!イノベーションを!

問われるのは、われわれの姿勢と実績

これからの司法書士制度を創るのは、私たち。

平成30年11月30日金融庁

「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令」の公表について

https://www.fsa.go.jp/news/30/sonota/20181130/20181130.html

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001

(顧客等の本人特定事項の確認方法)

第六条一

ホ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌及び写真付き本人確認書類の画像情報であって、当該写真付き本人確認書類に係る画像情報が、当該写真付き本人確認書類に記載されている氏名、住居及び生年月日、当該写真付き本人確認書類に貼り付けられた写真並びに当該写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴を確認することができるものをいう。)の送信を受ける方法

ヘ 当該顧客等又はその代表者等から、特定事業者が提供するソフトウェアを使用して、本人確認用画像情報(当該顧客等又はその代表者等に当該ソフトウェアを使用して撮影をさせた当該顧客等の容貌の画像情報をいう。)の送信を受けるとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等の写真付き本人確認書類氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されている半導体集積回路(半導体集積回路の回路配置に関する法律(昭和六十年法律第四十三号)第二条第一項に規定する半導体集積回路をいう。以下同じ。)が組み込まれたものに限る。)に組み込まれた導体集積回路に記録された当該情報の送信を受ける方法

半導体集積回路・・・SDカードやUSBメモリなど。

ト(1) 他の特定事業者が令第七条第一項第一号イに掲げる取引又は同項第三号に定める取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、当該確認に係る確認記録を保存し、かつ、当該顧客等又はその代表者等から当該顧客等しか知り得ない事項その他の当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを示す事項の申告を受けることにより当該顧客等が当該確認記録に記録されている顧客等と同一であることを確認していることを確認すること。

ト(2) 当該顧客等の預金又は貯金口座(当該預金又は貯金口座に係る令第七条第一項第一号イに掲げる取引を行う際に当該顧客等について氏名、住居及び生年月日の確認を行い、かつ、当該確認に係る確認記録を保存しているものに限る。)に金銭の振込みを行うとともに、当該顧客等又はその代表者等から当該振込みを特定するために必要な事項が記載された預貯金通帳の写し又はこれに準ずるものの送付を受けること。

司法書士法第3条1項4号、5号業務について

司法書士法(昭和二十五年法律第百九十七号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC1000000197

(業務)

第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。

四 裁判所若しくは検察庁に提出する書類又は筆界特定の手続(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第六章第二節の規定による筆界特定の手続又は筆界特定の申請の却下に関する審査請求の手続をいう。第八号において同じ。)において法務局若しくは地方法務局に提出し若しくは提供する書類若しくは電磁的記録を作成すること。

五 前各号の事務について相談に応ずること。

事実関係

1 知人を通じて相談にのって欲しいと依頼される。

2 相談者から話を聴く。

・飲食店を営んでいる。

・沖縄県感染拡大防止対策協力金(うちなーんちゅ応援プロジェクト)の申請を行った。

https://www.pref.okinawa.jp/site/shoko/keiei/covid19/kyoryokukintop.html

・何回か申請しており、1度目、2度目は協力金が支給された。

・3回目は不支給決定の通知がメールで来た。

・メールに返信する形で不支給決定の理由を県の担当者に訊いたが、教えてもらえなかった。

・居住地の役場に相談し、行政書士を紹介してもらった。

・行政書士に相談すると、「このようなことは行政書士には出来ない。司法書士か弁護士の仕事。」と指摘された。

3 当職の行動

・沖縄県総務部行政管理課(沖縄県行政不服審査会の管轄課)に、司法書士であることを示して問い合わせのメールを送信した。

・電話での返信と確認内容

 普通は不支給決定に関して理由がある。もう一度訊いてみて欲しい。沖縄県感染拡大防止対策協力金(うちなーんちゅ応援プロジェクト)は行政処分ではなく決定なので、不服申立て制度がない。行政不服審査請求(弁護士・(特定)行政書士業務)は不可能。

 理由を訊いて、不備があれば訂正、協力金の審査要件を満たしていなければ不支給決定。理由が分からなければ、対応は出来ない。

新型インフルエンザ等対策特別措置法45条2項

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=424AC0000000031

・私を書類作成者として、沖縄県の担当宛に協力金不支給決定の理由を開示するよう、内容証明郵便を送付。3度受取拒否されたため、レターパック370により送付。

・協力金不支給決定の理由を開示する書面の宛名は相談者本人。

・電子内容証明を利用したため、相談者と私は署名押印していない。レターパック370で送付した書面についても同様。

4 沖縄県担当者の行動

・沖縄県の担当者から相談者宛に、司法書士は県庁に対する書類を作成できず違法であること、報酬を支払う約束をしていることから悪質であり、関係捜査機関と協力して然るべき対処を行う、という内容の電話あり。相談者には捜査・事情聴取に協力して欲しいとのお願い。

・相談者への協力金支払いが遅くなる、私は懲戒請求の調査、刑事事件の捜査で対応する可能性があるため、当職と相談者の委任契約解除。協力金支給に関しては、弁護士に繋げる。

上記の行動は、司法書士法違反、行政書士法違反、弁護士法違反でしょうか。

 私は司法書士法3条1項4の前段業務として、当然に可能だと考えていました。これまで、貸金の返還請求や、アパート賃料未払い金請求のための内容証明郵便を、書類作成者として受任してきました。相談者から資料を見せていただき話を聴いた後、選択肢を示し、書類を作成する。最後に書類の内容を依頼者に確認してもう。依頼者から印鑑などは預からない。というような内容で進めてきました。

 今回も、内容証明郵便が届かなかった事実を含めて未支給決定の理由が開示されなければ、書類作成者として、民事調停などを申し立てることを前提としていました。

 宛先が官公庁だと、司法書士には出来なくて行政書士・弁護士業務である、という根拠法令・判例を見つけることが出来ませんでした。もしあれば、どなたか教えていただければ幸いです。

実質的支配者情報リスト制度の創設について

法務省 令和3年9月17日

実質的支配者情報リスト制度の創設(令和4年1月31日運用開始)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00116.html

<告示>商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則(令和3年法務省告示第187号)

https://www.moj.go.jp/content/001355642.pdf

<通達>

 「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則の施行に伴う事務の取扱いについて(通達)」(令和3年9月17日付け法務省民商第159号民事局長通達)

https://www.moj.go.jp/content/001355840.pdf

告示と通達の違い

国家行政組織法第十四条 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。

2 各省大臣、各委員会及び各庁の長官は、その機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができる。

実質的支配者リスト制度Q&A 令和3年9月17日

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00119.html

商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00044.html

平成27年9月警察庁 共管各省庁

「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案」等に対する意見の募集結果について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000133365

実質的支配者リスト制度Q&A 令和3年9月17日より

1-1 直接保有とは何ですか。

 直接保有とは,例えば,自然人Aが,甲株式会社の議決権のある株式を自ら直接有していることをいいます(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成20年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第1号)第11条第3項第1号)

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成二十年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第一号)

施行日: 令和三年九月一日

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420M60000f5a001_20210901_503M60000F5A003

(実質的支配者の確認方法等)

第十一条3 前項第一号の場合において、当該自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の四分の一又は二分の一を超える議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定は、次の各号に掲げる割合を合計した割合により行うものとする。

一 当該自然人が有する当該資本多数決法人の議決権が当該資本多数決法人の議決権の総数に占める割合

1-2 間接保有とは何ですか。

 間接保有とは,例えば,自然人Aが,甲株式会社の株主である乙株式会社を介して間接的に甲株式会社の議決権のある株式を有していることをいいます。この場合において,間接保有というためには,自然人Aは,乙株式会社の50パーセントを超える議決権を有していることが要件となります(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第3項第2号)

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(実質的支配者の確認方法等)

第十一条3 前項第一号の場合において、当該自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の四分の一又は二分の一を超える議決権を直接又は間接に有するかどうかの判定は、次の各号に掲げる割合を合計した割合により行うものとする。

二 当該自然人の支配法人(当該自然人がその議決権の総数の二分の一を超える議決権を有する法人をいう。この場合において、当該自然人及びその一若しくは二以上の支配法人又は当該自然人の一若しくは二以上の支配法人が議決権の総数の二分の一を超える議決権を有する他の法人は、当該自然人の支配法人とみなす。)が有する当該資本多数決法人の議決権が当該資本多数決法人の議決権の総数に占める割合

1-3  実質的支配者を判断する際,議決権制限株式等については,どのように考えることになりますか。

 いわゆる相互保有株式(会社法(平成17年法律第86号)第308条第1項参照)については,実質的支配者を判断する上での議決権に含むものとされています。一方,取締役,会計参与,監査役又は執行役の選任及び定款変更に関する議案(これに相当するものを含む。)の全部につき株主総会で議決権を行使することができない株式に係る議決権は,実質的支配者を判断する上での議決権から除かれるものとされています(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項第1号括弧書参照)。

(会社法(平成十七年法律第八十六号)

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000086

施行日:令和3年3月1日

(議決権の数)第三百八条 株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条

2 法第四条第一項第四号及び令第十二条第三項第三号に規定する主務省令で定める者(以下「実質的支配者」という。)は、次の各号に掲げる法人の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者とする。

一 株式会社、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人、資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社その他のその法人の議決権(会社法第三百八条第一項その他これに準ずる同法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、同法第四百二十三条第一項に規定する役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。以下この号において同じ。)に係る議決権を除く。以下この条において同じ。)が当該議決権に係る株式の保有数又は当該株式の総数に対する当該株式の保有数の割合に応じて与えられる法人(定款の定めにより当該法人に該当することとなる法人を除く。以下この条及び第十四条第三項において「資本多数決法人」という。)のうち、その議決権の総数の四分の一を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人(当該資本多数決法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合又は他の自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の二分の一を超える議決権を直接若しくは間接に有している場合を除く。)があるもの 当該自然人

1-4 法人が実質的支配者となる場合はありますか。

 本制度の対象となる実質的支配者とは,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項第1号の自然人(同条第4項の規定により自然人とみなされるものを含む。)に該当する者をいいます。

 「自然人とみなされるもの」に該当するのは,国,地方公共団体,人格のない社団又は財団,上場企業等及びその子会社です(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第4条第5項,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令(平成20年政令第20号)第14条,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第4項参照)。そのため,例えば,上場会社の子会社が,甲株式会社の議決権のある株式の50パーセント超の株式を有する場合,当該子会社は甲株式会社の実質的支配者に該当することとなります。

(実質的支配者の確認方法等)第十一条2一 ―中略―自然人

犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成十九年法律第二十二号)

施行日:令和3年7月19日

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000022

(取引時確認等)第四条5 特定事業者との間で現に特定取引等の任に当たっている自然人が顧客等と異なる場合であって、当該顧客等が国、地方公共団体、人格のない社団又は財団その他政令で定めるもの(以下この項において「国等」という。)であるときには、第一項又は第二項の規定の適用については、次の表の第一欄に掲げる顧客等の区分に応じ、同表の第二欄に掲げる規定中同表の第三欄に掲げる字句は、それぞれ同表の第四欄に掲げる字句とする。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=420CO0000000020

(法第四条第五項に規定する政令で定めるもの)第十四条 法第四条第五項に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人

二 国又は地方公共団体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの二分の一以上を出資している法人(前号、次号及び第五号に掲げるものを除く。)

三 外国政府、外国の政府機関、外国の地方公共団体、外国の中央銀行又は我が国が加盟している国際機関

四 勤労者財産形成貯蓄契約等を締結する勤労者

五 金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)第二十七条の二各号に掲げる有価証券(金融商品取引法第二条第一項第十一号に掲げる有価証券及び当該有価証券に係るもの並びに同法第六十七条の十八第四号に規定する取扱有価証券に該当するものを除く。)の発行者

六 前各号に掲げるものに準ずるものとして主務省令で定めるもの

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第4項

4 国等(令第十四条第四号に掲げるもの及び第十八条第六号から第十号までに掲げるものを除く。)及びその子会社(会社法第二条第三号に規定する子会社をいう。)は、第二項の規定の適用については、自然人とみなす。

会社法(定義)

第二条三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

1-5 上場会社又はその子会社の100パーセント子会社の場合,実質的支配者は,誰になりますか。

 上場会社又はその子会社は,自然人とみなされます(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令第14条第5号参照)。そのため,上場会社又はその子会社が,100パーセント子会社の実質的支配者に該当することとなります。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令第14条第5号 金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)第二十七条の二各号に掲げる有価証券(金融商品取引法第二条第一項第十一号に掲げる有価証券及び当該有価証券に係るもの並びに同法第六十七条の十八第四号に規定する取扱有価証券に該当するものを除く。)の発行者

金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)施行日: 令和三年三月一日

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=340CO0000000321_20210301_503CO0000000021

(その発行者が上場会社等となる有価証券の範囲)

第二十七条の二 法第百六十三条第一項に規定する法第二条第一項第五号、第七号、第九号又は第十一号に掲げる有価証券(前条各号に掲げるものを除く。)で金融商品取引所に上場されているもの、店頭売買有価証券又は取扱有価証券に該当するものその他の政令で定める有価証券は、次に掲げるものとする。

一 法第二条第一項第五号、第七号、第九号又は第十一号に掲げる有価証券(前条各号に掲げるもの及び同項第十一号に掲げる外国投資証券を除く。次号において同じ。)で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの

二 法第二条第一項第五号、第七号、第九号又は第十一号に掲げる有価証券(前号に掲げるものを除く。)を受託有価証券とする有価証券信託受益証券で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの

三 外国の者の発行する証券若しくは証書のうち法第二条第一項第五号、第七号若しくは第九号に掲げる有価証券(前条第一号に掲げるものを除く。以下この条において同じ。)の性質を有するもの又は同項第十一号に掲げる外国投資証券(前条第二号に掲げるものを除く。以下この条において同じ。)で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの

四 外国の者の発行する証券若しくは証書のうち法第二条第一項第五号、第七号若しくは第九号に掲げる有価証券の性質を有するもの(前号に掲げるものを除く。)又は同項第十一号に掲げる外国投資証券(前号に掲げるものを除く。)を受託有価証券とする有価証券信託受益証券で、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの

五 外国の者の発行する証券若しくは証書のうち法第二条第一項第五号、第七号若しくは第九号に掲げる有価証券の性質を有するもの(第三号に掲げるもの及び前号に掲げる有価証券信託受益証券の受託有価証券であるものを除く。)又は同項第十一号に掲げる外国投資証券(第三号に掲げるもの及び前号に掲げる有価証券信託受益証券の受託有価証券であるものを除く。)の預託を受けた者が当該証券若しくは証書又は当該外国投資証券の発行された国以外の国において発行する証券又は証書で、当該預託を受けた証券若しくは証書又は外国投資証券に係る権利を表示するもののうち、金融商品取引所に上場されており、又は店頭売買有価証券若しくは取扱有価証券に該当するもの

金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)施行日令和3年5月1日

2条1項11 この法律において「金融商品仲介業」とは、金融商品取引業者(第二十八条第一項に規定する第一種金融商品取引業又は同条第四項に規定する投資運用業を行う者に限る。)又は登録金融機関(第三十三条の二の登録を受けた銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関をいう。以下同じ。)の委託を受けて、次に掲げる行為(同項に規定する投資運用業を行う者が行う第四号に掲げる行為を除く。)のいずれかを当該金融商品取引業者又は登録金融機関のために行う業務をいう。

一 有価証券の売買の媒介(第八項第十号に掲げるものを除く。)

二 第八項第三号に規定する媒介

三 第八項第九号に掲げる行為

四 第八項第十三号に規定する媒介

(認可協会への報告)第六十七条の十八

四 自己の計算において行う取扱有価証券(当該認可協会がその規則において、売買その他の取引の勧誘を行うことを禁じていない株券、新株予約権付社債券その他内閣府令で定める有価証券(金融商品取引所に上場されている有価証券、店頭売買有価証券及び当該規則において流通性が制限されていると認められる有価証券として内閣総理大臣が定めるものを除く。)をいう。以下同じ。)の売買又は媒介、取次ぎ若しくは代理を行う取扱有価証券の売買が成立した場合 当該売買に係る有価証券の種類、銘柄、価格、数量その他内閣府令で定める事項

1-6 「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合」とは,どのような場合を指しますか。

 例えば,信託銀行が信託勘定を通じて25パーセント超の議決権を有する場合,病気等により事業経営を支配する意思を欠く場合,名義上の保有者に過ぎず,他に出資金の拠出者等がいて当該議決権を有している者に議決権行使に係る決定権がない場合等が想定されます(平成27年9月警察庁・共管各省庁『「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案」等に対する意見の募集について』(https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000133365)No.97参照)。

「犯罪による収益の移転防止に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案」等に対する意見の募集結果についてNo.97

97 新規則第11条第2項第1号、第3号イの「事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合」として、どのような場合が想定されるか。

 例えば、信託銀行が信託勘定を通じて4分の1を超える議決権等を有する場合や、4の1を超える議決権等を有する者が病気等により支配意思を欠く場合のほか、4分の1を超える議決権等を有する者が、名義上の保有者に過ぎず、他に株式取得資金の拠出者等がいて、当該議決権等を有している者に議決権行使に係る決定権等がないような場合が考えられます。

1-7 議決権の算定に当たって,自己株式は,どうなりますか。

 自己株式には,議決権はありません。そのため,実質的支配者を判断する上での議決権の算定に当たって,自己株式は,議決権の総数及び保有数から除くこととなります。

1-8 実質的支配者リストは,誰が作成することになりますか。

 実質的支配者リストには,会社の代表者が,作成者として記名することとなります。そのため,作成者は,会社の代表者となります。

1-9 実質的支配者が上場会社である場合,実質的支配者情報一覧の「実質的支配者の本人特定事項等」欄には,どのように記載することとなりますか。

 住居欄及び氏名欄には,上場会社の本店及び商号を記載することとなります。

国籍等欄及び生年月日欄は,空欄となります。

1-10 株主名簿の株主として外国人が外国語で表記されている場合,実質的支配者情報一覧に記載する実質的支配者の表記は当該外国語でよいのですか。

 漢字圏以外の外国人の氏名は,アルファベットで表記することとなります。なお,フリガナはカタカナで表記します。

1-11 実質的支配者情報一覧に記載する実質的支配者の情報は,いつ現在のものを記載すればよいですか。

 申出日から1か月以内の情報を記載することとなります。

2 実質的支配者情報一覧の保管及びその写しの交付の申出について

2-1 どこの登記所に申出をすることとなりますか。

 申出をする株式会社の本店の所在地を管轄する登記所(変更の登記等を申請する登記所と同一の登記所)に申出をすることとなります。

2-2 本制度に係る申出は,代理人からすることができますか。

 本制度に係る申出は,代理人からすることができます。代理人が申出をする場合には,申出書には,代理権限を証する書面を添付する必要があります。

2-3 申出書及び代理権限を証する書面には,株式会社の代表者印を押印する必要はありますか。

 押印する必要はありません。ただし,申出書又は代理権限を証する書面に,株式会社の代表者印(登記所届出印)が押印されている場合には,申出人である会社の代表者の本人確認書面の添付を省略することができます。

2-4 申出は,郵送でもできますか。

 郵送により申出をすることもできます。この場合には,切手を貼付し,送付先を記載した返信用封筒を添付同封していただくこととなります。

2-5 送付の方法により実質的支配者情報一覧の写しの交付を求める場合,その送付先は,どこになりますか。

 申出をした株式会社の本店の所在場所

若しくは申出人欄又は代表者欄に記載されている住所

のいずれかのうち,希望する送付先に送付することとなります。この場合には,希望する送付先を記載した返信用封筒(切手を貼付)を添付することとなります。

 なお,再交付の場合において,本人確認書面の添付がないとき又は申出書若しくは委任状に代表者印(登記所届出印)の押印がないときは,本店の所在場所宛てに送付することとなります。

3 添付書面について

3-1 株主名簿等の写しには,代表者が原本と相違ない旨を記載する必要がありますか。

 その必要はありません。

3-2 実質的支配者情報一覧と株主名簿等の写しの内容とが合致していない場合とは,どのような場合ですか。また,その理由を明らかにする書面としては,どのようなものが該当することとなりますか。

 会社法第109条第2項の規定による定款の定めにより議決権を行使することができない者がいる場合や会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有しない者がいる場合(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項第1号参照)などが考えられます。その理由を明らかにする書面としては,定款や上記に該当するために実質的支配者情報一覧と株主名簿の写し等の添付書面の内容が合致していない旨が記載された代表者の作成に係る証明書(上申書)等が該当します。

会社法(株主の平等)

第百九条2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(実質的支配者の確認方法等)

第十一条2  株式会社、投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十二項に規定する投資法人、資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第二条第三項に規定する特定目的会社その他のその法人の議決権(会社法第三百八条第一項その他これに準ずる同法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、同法第四百二十三条第一項に規定する役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。以下この号において同じ。)に係る議決権を除く。以下この条において同じ。)が当該議決権に係る株式の保有数又は当該株式の総数に対する当該株式の保有数の割合に応じて与えられる法人(定款の定めにより当該法人に該当することとなる法人を除く。以下この条及び第十四条第三項において「資本多数決法人」という。)のうち、その議決権の総数の四分の一を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人(当該資本多数決法人の事業経営を実質的に支配する意思又は能力を有していないことが明らかな場合又は他の自然人が当該資本多数決法人の議決権の総数の二分の一を超える議決権を直接若しくは間接に有している場合を除く。)があるもの 当該自然人

4 実質的支配者情報一覧の写しの再交付について

4-1 実質的支配者情報一覧の写しが追加で必要になりました。再交付を受けることは可能ですか。

 実質的支配者情報一覧の写しの再交付の申出ができます。この場合に,再交付の申出ができるのは,申出をした株式会社に係る最新の申出に基づく実質的支配者情報一覧の写しとなります。

 なお,保存されている実質的支配者情報一覧に記載されている会社の商号,本店又は作成者である会社の代表者が変更されている場合には,再交付の申出をすることができません。この場合には,新たに実質的支配者情報一覧を作成して,申出をすることとなります。

4-2 商業登記所に保管されている実質的支配者情報一覧に記名した代表者が退任した場合でも,再交付の申出はできますか。

 実質的支配者情報一覧に記名した代表者が退任した場合には,再交付の申出をすることができません。この場合には,新たに実質的支配者情報一覧を作成して,申出をすることとなります。

4-3 実質的支配者情報一覧の保管の申出をした後,商号の変更や本店移転の登記をした場合は,再交付の申出をすることはできますか。

 商号の変更や本店移転の登記をした場合には,再交付の申出をすることはできません。この場合には,変更後の商号等が記載された実質的支配者情報一覧を作成した上,新たな申出をすることとなります。

4-4 実質的支配者情報一覧に記名した株式会社の代表者が死亡した場合,その相続人から,再交付の申出をすることはできますか。

 実質的支配者情報一覧に記名した株式会社の代表者が死亡した場合,その相続人から,再交付の申出をすることはできません。実質的支配者情報一覧の写しが必要な場合には,現在の代表者が記名した実質的支配者情報一覧を作成し,新たな申出をすることとなります。

4-5 再交付の申出は,実質的支配者情報一覧に記名した代表者以外の代表者からもできますか。

 実質的支配者情報一覧に記名した代表者が,再交付の申出時において現任の場合には,他の代表者からも再交付の申出をすることができます。

5 その他

5-1 実質的支配者が誰になるかが分からないときは,商業登記所で教えてくれますか。

 実質的支配者が誰であるかが分からないときは,本制度を御利用いただけません。

5-2 申出をした実質的支配者情報に記載している実質的支配者が変更された場合には,申出をし直す必要はありますか。

 本制度は,任意の申出に基づいて実質的支配者情報一覧の写しを発行するものですので,実質的支配者情報一覧に記載されている情報に変更があった場合であっても,変更後の実質的支配者情報一覧の保管及び写しの交付の申出をするかどうかも任意となります。新たな情報が記載された実質的支配者情報一覧の写しを必要とする場合には,改めて申出をすることとなります。

5-3 実質的支配者情報一覧を作成した後,申出をする前に,実質的支配者情報一覧に記載された内容に変更を生じた場合には,どうすればよいですか。

 最新の情報を記載した実質的支配者情報一覧を作成して,申出をすることをおすすめします。

4 手続の流れより

1 申出(会社の代表者又は代理人)

(1) BOリストの作成

 BOリストを作成する。(BOリスト(みほん))

※1 申出書には,申出書(委任による代理人によって申出をする場合にあっては,当該代理人の権限を証する書面)に申出会社の代表者が登記所に提出した印鑑が押印されている場合を除き,申出書に記載されている申出会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出会社の代表者が原本と相違ない旨を記載した謄本を含む。)を添付する必要があります。

※2 郵送の場合,会社の本店,申出人(又は代理人)の表示欄にある住所のうち,希望する送付先に送付します。返信用封筒には,該当の送付先を記載してください。

(2) 申出書の作成

 申出書を作成する。(申出書(みほん))

(3) 添付書面を用意

 添付書面を用意する。(「添付書面」の項目又はこちらを御覧ください。)

1 BOリストの内容を証する書面

①申出会社の申出日における株主名簿の写し

※ 株主名簿の写しに代えて,申告受理及び認証証明書(公証人発行,設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。)又は法人税確定申告書別表二の明細書の写し(申出日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの)を添付することも認められる。

②合致していない理由を明らかにする書面

※ BOリストの記載と①の書面の記載とで内容が合致しない場合には,その理由を記載した代表者作成に係る書面の添付を要する。

例えば、?

③上位会社の申出日における株主名簿の写し(③と④はセットで添付)

※ 上位会社の株主名簿の写しに代えて,申告受理及び認証証明書(公証人発行,設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。)又は法人税確定申告書別表二の明細書の写し(申出日の属する事業年度の直前事業年度に係るもの)を添付することも認められる。

④合致していない理由を明らかにする書面

※ BOリストの記載と③の書面の記載とで内容が合致しない場合には,その理由を記載した代表者作成に係る書面の添付を要する。

実質的支配者の本人確認の書面

※ 実質的支配者の氏名及び住居と同一の氏名及び住居が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該実質的支配者が原本と相違ない旨を記載した謄本を含。)

【具体例】運転免許証の表裏両面のコピー,住民票の写し

2 代理権限を証する書面

代理人によって申出をする場合に添付を要する。

3 申出会社の代表者の本人確認書面

【保管及び写しの交付の場合】

 申出書又は委任状に代表者印が押印されている場合を除き,申出書に記載した申出会社の代表者の氏名・住所を確認することができる本人確認書面の添付を要する。

再交付の場合】

 次の①②の場合を除き,申出書に記載した申出会社の代表者の氏名・住所を確認することができる本人確認書面の添付を要する。

① 申出書又は委任状に代表者印が押印されている場合

② 申出会社の本店の所在場所に宛てて送付する方法により写しの交付を求める場合

代理人によって申出をする場合に添付を要する。

2 代理権限を証する書面

3 申出会社の代表者の本人確認書面

~本人確認書面の具体例~

運転免許証の表裏両面コピー(※)

マイナンバーカードの表面のコピー(※)

住民票記載事項証明書(住民票の写し) など

※ 原本と相違ない旨を記載し,申出会社の代表者が記名したもの

※ 送付の方法により写しの交付を求める場合には,送付先を記載した返信用

封筒と切手の同封を要する。

(4) 申出書の提出

 申出する会社の本店所在地を管轄する法務局に提出する。

  ※ 手数料無料,郵送による申出も可能

  ※ 委任による申出も可能

  ※ 管轄法務局

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

(委任状(記載例))

https://www.moj.go.jp/content/001354917.pdf

委 任 状

(代理人)住 所 東京都杉並区和泉一丁目1番1号 氏 名 乙野 花子

私は,上記の者に対し,次の権限を委任する。

1 実質的支配者情報一覧の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出をすること

(希望する実質的支配者情報一覧の写しの交付通数 1 通

2 上記1のほか,実質的支配者情報一覧の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出に関して必要な一切の権限

令和○○ 年○○ 月○○ 日

(委任者)本 店 東京都中央区日本橋茅場町一丁目2番1号

商 号 第一電気機器株式会社 代表者住 所 東京都文京区目白台一丁目21番5号

資 格 代表取締役 氏 名 法務 太郎

2 確認・交付(登記所) 

(1) 登記官による確認,BOリストの保管

 登記官が申出内容を確認し,問題がなければ,BOリストを保管する。

(2) 認証文付きのBOリストの写しの交付

   認証文付きのBOリストの写しを交付する。

BOリストの写し(みほん)

実質的支配者情報番号は、実質的支配者情報一覧につき1つの番号。

(注)これは,会社において作成した実質的支配者情報一覧について,登記官が各添付書面欄記載の書面と整合することを確認して保管を行ったものの写しであり,記載されている内容が事実であることを証明するものではない。

・・・会社による宣誓供述。

実質的支配者の番号ごとに、支払関係図を作成。

3 利用

 BOリストの写しを銀行等に提出する。

 ※ 必要に応じて,再交付の申出も可能。

再交付申出書(みほん)

申出書に再が付く以外は変わらない。

会社設立時の定款認証における【実質的支配者となるべき者の申告書】

https://www.koshonin.gr.jp/business/b07_4

違い

・出資、融資、取引その他の関係を通じて、設立する会社の事業活動に支配的な影響力を有する自然人となるべき者(犯収法施行規則11条2項2号)を記載する機会はない。

・設立する会社を代表し、その業務を執行する自然人となるべき者(犯収法施行規則11条2項2号)の記載を行う機会はない。

・暴力団員等該当性の記載はない。

・嘱託人の押印(電子署名)が不要。

加工

商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会

~有識者による議論の取りまとめ~令和2年7月

https://www.moj.go.jp/content/001324022.pdf

商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会

~有識者による議論の取りまとめ~令和2年7月

商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究会参加有識者

(座長)早 稲 田 大 学 大 学 院 法 務 研 究 科 教 授 岩 原 紳 作

一 般 社 団 法 人 全 国 銀 行 協 会コ ン プ ラ イ ア ン ス 部 長 阿 部 耕 一

弁 護 士 ( 第 二 東 京 弁 護 士 会 ) 片 山 達

東 京 大 学 大 学 院 法 学 政 治 学 研 究 科 教 授 加 藤 貴 仁

一 橋 大 学 法 学 研 究 科 教 授 角 田 美 穂子

司 法 書 士 ( 京 都 司 法 書 士 会 ) 内 藤 卓

第1 背景となる国内外の情勢

1 法人の実質的支配者を把握することは,国際的要請であり,マネー・ローンダリング/テロ資金供与防止の観点から,各国において取組が進められている。そのような取組が十分に行われていない国においては,その国の企業,特に金融機関が海外取引を行うに当たって取引の相手方である金融機関からリスクが高いとの評価を受け取引コストが増大する事態を招き得る。そのため,その取組状況については,各国の金融機関も高い関心を有している。

2 法人の実質的支配者の把握を含め,マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策に関する国際的な取組の推進について,大きな役割を担っているのが FATF(金融活動作業部会)である。FATFは,1989年にG7 アルシュ・サミット経済宣言を受け設立が合意された政府間枠組みであり,マネー・ローンダリング/テロ資金等の脅威撲滅のため,国際基準の策定,加盟国に対して効果的な遵守や体制の構築の促し等を行っている。

 FATFは,加盟国が遵守すべき包括的かつ一貫性のある枠組みを示す「勧告」を行っており,各国によるその遵守状況については,法令,執行手段,権限ある当局の権限及び手続といった技術的観点から評価されることとなる。さらに,FATF は,各国のマネー・ローンダリング/テロ資金等対策の有効性に関する指標である「直接的効果」(Immediate Outcome, IO)も作成しており,各国はこの観点からも評価されることとなる。

 法人の実質的支配者の把握に関する主な勧告及び直接的効果としては,勧告10,勧告 24,直接的効果5が挙げられ,その内容は次のとおりである。

  •  勧告 10
  • この勧告は,金融機関が,一定の場合に,顧客管理措置をとることを求めるものであり,顧客管理として次の事項を含む措置を求めるものである。

「受益者の身元を確認し,金融機関が当該受益者が誰であるかについて確認できるように,受益者の身元を照合するための合理的な措置をとる。この中には,金融機関が法人及び法的取極めについて当該顧客の所有権及び管理構造を把握することも含まれるべきである。」

なお,この義務は,勧告 22 により,一定の条件の下で,指定非金融業者及び職業専門家にも適用されることとなっている。

② 勧告 24

この勧告は,法人の透明性及び真の受益者に関して,次の事項を含む措置を求めるものである。

「各国は,資金洗浄又はテロ資金供与のための法人の悪用を防止するための措置を講じるべきである。各国は,権限ある当局が,適時に,法人の受益所有及び支配について,十分で,正確なかつ時宜を得た情報を入手することができ,又はそのような情報にアクセスできることを確保すべきである。」

 また,FATF は,技術的観点のみならず,有効性の観点からも評価を行うこととしており,実質的支配者の把握の関係では次の指標を設定している。

③ 直接的効果5(IO5)

直接的効果5は次のとおり定められている。

 「資金洗浄及びテロ資金供与を目的とした法人及び法的取極めの濫用が予防されており,また,実質的支配者に関する情報が権限ある当局に支障なく入手可能となっている。」

3 FATF は,各国による勧告 24 を遵守するための取組を促進するため,2019年 10 月,推奨すべき取組の紹介等を内容とする「法人の実質的支配者に関するベストプラクティス(Best Practices on Beneficial Ownership forLegal Persons)」(以下「FATF ベストプラクティス」という。)を公表した。

 FATF ベストプラクティスでは,複数の情報源(登録機関を情報源とする手法(the Registry Approach),会社を情報源とする手法(the CompanyApproach),既存の情報源を活用する手法(the Existing InformationApproach))を組み合わせることが,法人が犯罪目的で悪用されることを防止し,法人の実質的支配に関する透明性を十分に確保するための方策を実施するために効果的であるとして,推奨されている。

 登録機関を情報源とする手法(the Registry Approach)とは,法人の登録機関において,法人の実質的支配者に関する最新の情報を取得し保持するものである。

 会社を情報源とする手法(the Company Approach)とは,会社に,株主又は構成員のリストを保持し,更新することにより,当該会社の実質的支配者に関する最新の情報を取得し保持することを求めるものである。

 既存の情報源を活用する手法(the Existing Information Approach)とは,法人の実質的支配者を特定するために当該法人の実質的支配に関して収集された既存の情報を活用するものである。

4 我が国においては,法人の実質的支配者を把握するためには,公証人が定款認証を行う際に嘱託人に対し設立される株式会社等の実質的支配者となるべき者の申告を求める取組を行っており,この取組は FATF ベストプラクティスに取り上げられるなど国際的にも評価を受けている。また,犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成 19 年法律第 22 号。以下「犯罪収益移転防止法」という。)の下で,金融機関を始めとする特定事業者(犯罪収益移転防止法第2条第2項に規定する特定事業者をいう。以下同じ。)が顧客の実質的支配者を確認する取組を行っている。

 その上で,法人の設立後の継続的な実質的支配者の把握については更なる取組を行う必要があり,この点に関しては,権限ある当局が更新された法人の実質的支配者情報にアクセスできるようにすることは,国際的要請であり(勧告 24 参照),また,一般社団法人全国銀行協会が加盟行に対して行ったアンケートにおいても,法人の設立後の継続的な実質的支配者の把握,実質的支配者情報の登記事項への追加,金融機関による登録されている実質的支配者情報への直接のアクセス等を実現するための取組を行うことを求める意見が多かった。

5 法人の実質的支配者の把握に関する国際的動向をみると,欧州では,2015年の EU 指令(2015/849)により,加盟国には,①加盟国内で設立された会社等の法人に,自己の実質的支配者について,正確,最新かつ十分な情報を取得し保持することを義務付けること及び②実質的支配者情報へのアクセスを容易にするために,これらの法人の実質的支配者に関する情報を集める一元的な登録機関を設立することなどが求められている。

 さらに,2018 年の EU 指令(2018/843)により,加盟国には,実質的支配者情報へのアクセス権者を拡大することや,実質的支配者の確認義務者に自己の情報と登録情報との齟齬を発見した場合の登録機関への報告義務を課すことなどが求められている。

イギリス(EU 加盟当時),ドイツ,フランス等の EU 加盟国等では,これらの EU 指令に沿った取組が行われており,既にFATFの第4次相互審査(審査結果は 2018 年 12 月公表)を受けているイギリスは,勧告 24 及び IO5について,高い評価を受けている。イギリスは,2007 年の第3次相互審査においては,現在の勧告 24 に相当する当時の勧告 33 に関して PC の評価を受けていた(当時 IO の指標はなかった。)が,2018 年の第4次相互審査では,勧告 24 に関して LC の評価を,直接的効果5に関して Substantial の評価を受けている(※)。なお,日本は,2008 年の第3次相互審査において,当時の勧告 33 について NC の評価を受けている。

※ 勧告の評価は,上から,C(Compliant), LC(Largely Compliant), PC(PartiallyCompliant), NC(Non-Compliant)の4段階。勧告 24 に関しては,C の評価を受けた国は未だ存在せず,実際に与えられた評価の中では LC が最も高い評価となっている。直接的効果の評価は,上から,High, Substantial, Moderate, Low の4段階。これに対し,アメリカでは,連邦,州いずれのレベルにおいても実質的支配者情報の登録制度は存在しないようである。欧州各国及びアメリカの制度の概要は次のとおりである。

※「BO」は,実質的支配者の略。「R24」は,勧告 24 の略。「IO5」は,直接的効果5の略。

6 以上の情勢に照らし,設立後の法人の実質的支配者の継続的な把握に関する取組を行うため,商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進について検討を行うことは有益であると考えられたことから,法務省民事局長によって本研究会が立ち上げられ,財務省及び金融庁からもオブザーバー参加を得て会合が行われた。

第2 議論の前提及び検討課題

1 議論の前提

(1) 顧客の実質的支配者の確認に関する犯罪収益移転防止法の枠組

 特定事業者は,顧客等との間で特定取引等を行うに際して,当該顧客等が法人(国,地方公共団体,上場会社等を除く。)である場合には,当該顧客等の代表者等から申告を受ける方法によりその事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定めるもの(以下「実質的支配者」という。)の本人特定事項(氏名,住居及び生年月日)の確認を行わなければならないこととされている(犯罪収益移転防止法第4条第1項第1号,第4号,第5項,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成 20 年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第1号。以下「犯罪収益移転防止法施行規則」という。)第 11 条第1項)。

 そして,当該取引がなりすましの疑いのある取引,偽りの疑いのある取引,特定国等(イラン,北朝鮮)居住者等との取引,外国の重要な公的地位を有する者(PEPs)との取引といったハイリスク取引である場合には,特定事業者は,申告された実質的支配者と顧客との関係を株主名簿,有価証券報告書等の書類によって確認しなければならないこととされている(犯罪収益移転防止法第4条第2項,犯罪収益移転防止法施行規則第 14条第3項)。

 実質的支配者の意義については,次のとおりである(犯罪収益移転防止法施行規則第 11 条)。なお,国,地方公共団体,上場会社等及びその子会社は,実質的支配者該当性の判断においては,自然人とみなされる(同条第4項)。

ア 顧客が株式会社等の犯罪収益移転防止法施行規則第 11 条第2項第1号に規定する資本多数決法人(以下「資本多数決法人」という。)の場合

次の①から④までのうちいずれかの者が実質的支配者となる。

① 当該法人の議決権の総数の2分の1を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人がある場合には,当該自然人(以下「実質的支配者類型①」という。)

② ①の者がいない場合において,当該法人の議決権の総数の4分の1を超える議決権を直接又は間接に有していると認められる自然人がある場合には,当該自然人(以下「実質的支配者類型②」という。)

③ ①及び②の者がいない場合において,出資,融資,取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人がある場合には,当該自然人(以下「実質的支配者類型③」という。)

④ ①から③までの者がいない場合には,当該法人を代表し,その業務を執行する自然人(以下「実質的支配者類型④」という。)

イ 顧客が資本多数決法人以外の法人の場合

次の①又は②の者が実質的支配者となる。

① 次の(A)又は(B)の者が実質的支配者となる(A) (a)又は(b)の者が実質的支配者となる。

(a) 当該法人の事業から生ずる収益又は当該事業に係る財産の総額の2分の1を超える収益の配当又は財産の分配を受ける権利を有していると認められる自然人がある場合には,当該自然人

(b) (a)の者がいない場合において,当該法人の事業から生ずる収益又は当該事業に係る財産の総額の4分の1を超える収益の配当又は財産の分配を受ける権利を有していると認められる自然人がある場合には,当該自然人

(B) 出資,融資,取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有すると認められる自然人がある場合には,当該自然人

② ①の者がいない場合には,当該法人を代表し,その業務を執行する自然人

(2) 金融庁マネロンガイドラインの枠組み

 金融庁が平成 31 年4月に作成した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」(以下「金融庁マネロンガイドライン」という。)においては,金融機関による顧客管理における実質的支配者の確認に関して,「顧客及びその実質的支配者の本人特定事項を含む本人確認事項,取引目的等の調査に当たっては,信頼に足る証跡を求めてこれを行うこと」とされている。

 そして,この「信頼に足る証跡」に関して,何を,いかなる方法で確認・勘案すべきかについては,最低水準を画一的に全ての顧客に当てはめるのではなく,リスクが高い場合についてはより深く,証跡を求めて確認を行うなど,リスクに応じた対応を図るべきであると考えられている(金融庁マネロンガイドラインに関するパブリックコメントの結果である「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」15 頁参照(※))。

https://www.fsa.go.jp/news/30/20180206/gaiyou.pdf

(3) 銀行による顧客の実質的支配者の確認の実務

 銀行による顧客の実質的支配者の確認は,次のとおり,犯罪収益移転防止法の枠組みに沿って行われている。

ア 犯罪収益移転防止法第4条第2項のハイリスク取引の場合

 ハイリスク取引の都度,実質的支配者の本人特定事項については申告にもとづいて,実質的支配者と顧客との関係については,株主名簿や有価証券報告書等の法令に定められた書類によって確認されている。

イ 通常の特定取引の場合

 実質的支配者の本人特定事項及び実質的支配者と顧客との関係について,顧客の申告に基づき確認されている。

な お,通常の特定取引の場合であっても,各銀行は,その運用の中で,取引開始時や継続的顧客管理の中で,実質的支配者と顧客との関係や,実質的支配者の本人特定事項について,リスクに応じて信頼に足る証跡となる資料を確認することがある。

(4) 公証人の行う定款認証における実質的支配者となるべき者の申告

 株式会社等の法人を設立する際に,公証人が行う定款認証において,起業者(嘱託人)は,公証人に対し,当該株式会社等の実質的支配者となるべき者及びその者の暴力団員等への該当性を申告するものとされている(公証人法施行規則(昭和 24 年法務府令第9号)第 13 条第4項)。

 公証人は,申告された実質的支配者について,定款その他の資料によってその実質的支配者の該当性を判断するとともに,当該実質的支配者が暴力団員等に該当していないかを確認し,また,申告された実質的支配者の実在性等を本人確認の書面により確認している。

 また,公証人は,定款認証後に,嘱託人の求めに応じて,嘱託人から受けた申告の内容及びその内容を審査した結果嘱託拒否事由が認められないと判断して定款を認証した旨を証明する「申告受理及び認証証明書」を発行している。

(5) 商業登記所

 商業登記の事務については,当事者の営業所の所在地を管轄する(登記事務委任されている場合を含む。)法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が登記所としてつかさどっており(商業登記法(昭和 38 年法律第 125 号)第1条の3),この登記所がいわゆる商業登記所である。商業登記所は,令和2年6月1日時点で,全国に 84 箇所存在する。

 設立後の法人の基礎的な情報は,商業登記所に登記されており,当該業務を担う登記官は,商業・法人登記の分野において高度な専門性を有している。

2 検討課題

 本件研究会の課題は,商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進策として,法人の申出により,商業登記所が,当該法人が作成した実質的支配者リスト(実質的支配者について,その要件である議決権の保有に関する情報を記載した書面をいう。)について,所定の添付書面によりその内容を確認して写しを作成し,写しであることの認証を付す制度(以下「本制度」という。)を創設することについて,その必要性及び制度の内容について検討を行うものである。

検討課題に関する論点は次のとおりである。

(1) 本制度を創設する必要性

ア 国際的には,EU 加盟国等の制度のように,法人,実質的支配者,実質的支配者情報の確認義務者などに一定の義務を課し,実質的支配者情報を登録機関に集め,その正確性を確保するものもある中で,法人が任意に利用することを前提とした本制度は,利用を見込むことができるか。

イ 本制度は,どのような場面で利用されることが想定されるか。

(2) 本制度の対象

ア 本制度を利用することができる法人について,資本多数決法人である株式会社及び特例有限会社のみを対象とすることについてどのように考えるか。

イ 本制度の対象とする実質的支配者の類型について,商業登記所の業務に馴染む種類の書面による審査が可能である実質的支配者類型①及び実質的支配者類型②のみを対象とし,また,株主が外国会社である場合を制度の対象としないことについてどのように考えるか。

(3) 実質的支配者リストの写しを発行する事務のフロー本制度について,次の事務フローとすることについてどのように考えるか。

① 本制度を利用しようとする法人(以下「申出法人」という。)が実質的支配者リストを作成し,所定の添付書面とともに商業登記所の登記官に提出し,実質的支配者リストの保管及び写しの交付の申出をする。

② 申出を受けた登記官は,添付書面及び商業登記所の保有する情報等に基づき実質的支配者リストの内容を調査し,それらの内容が合致していることを確認したときは,実質的支配者リストをスキャンして保管するとともに,申出法人について,実質的支配者リストが保管されている旨を登記簿に付記し,その上で,当該法人に対し,実質的支配者リストの写しに登記官が写しであることの認証を付したものを交付する。

(4) 申出された実質的支配者情報の正確性を確認する方法

ア 申出された実質的支配者について,実質的支配者の該当性を確認するために,どのような添付書面の提出を求めるべきか。

- 現在の銀行の顧客の実質的支配者確認の実務を参考に,株主名簿の写し,確定申告書(法人税)別表二の明細書の写し,公証人の発行する申告受理及び認証証明書等の提出を求める考え方(案①)や,これまでの銀行実務とは異なる確認方法によることとし,第三者が証明を付した株主名簿の写し等の提出を求める考え方(案②)があり得るが,いずれの考え方に拠るべきか。

- 実質的支配者が法人の議決権を間接に保有する場合において,上位会社及び実質的支配者の協力が得られない場合の取扱いをどのようにすべきか。

- 申出された実質的支配者の本人確認の書面の提出を求めるべきか。

イ 虚偽の申出がされた場合の制裁としては,どのようなものが考えられるか。

(5) 実質的支配者リストの記載事項

実質的支配者リストには,いかなる事項を記載すべきか。

(6) 本制度を利用する法人の理解を促進する方法

本制度が法人の実質的支配者把握のための効果的な制度として機能するためには,本制度を利用する法人の間に本制度に関する理解が広まり,十分に利用されることが必要であるところ,そのような理解を促進する方法としてどのようなものが考えられるか。

(7) 想定される実質的支配者リストの写しの需要の大大木

 本制度は,どのような法人が,どのような場面,頻度で利用することが想定されるか。

(8) 商業登記所で管理する実質的支配者情報へのアクセス

 実質的支配者リストは,個人情報を含むものであり,申出法人のみが交付を請求することができる制度とすることはいかがか。

(9) 根拠法令

 本制度については,法務省令に規定を設けることとしてはいかがか。

(10) その他将来の課題

 本制度は,まずは,来年度中を目途に実施することができる事項について,迅速に導入することが考えられるが,その後の将来の課題としては更にどのようなものが考えられるか。

第3 議論の取りまとめ

1 本制度開始時の本制度の在り方

(1) 本制度を創設する必要性

ア 登録機関を情報源とする手法を整備する必要性

 法人の実質的支配者の把握については,前述のとおり,国内外から要請されている。我が国においては,特定事業者が個別に顧客の実質的支配者の確認を行っている。また,公証人が定款認証を行う際に,設立される株式会社等の実質的支配者となるべき者及びその暴力団員等への該当性について確認を行っており,この取組については,FATF ベストプラクティスに取り上げられるなど国際的にも評価を得ている。

 他方で,前記第1の5掲記の EU 加盟国等の取組等の先進的な他国の取組と比較すると,法人設立後の一元的かつ継続的な実質的支配者の把握が課題として残されていることがうかがわれ,そのような課題への取組を行うことについては,銀行業界からも要請されている。

 本制度は,上記課題について,商業登記所による取組を行うものであり,前記第1の3掲記の三つの手法のうち登録機関を情報源とする手法(the Registry Approach)に該当し,法人の実質的支配者情報の把握に関する確度と精度を高める取組として,我が国における他の手法による取組と相まって,国際的にも,前向きな施策として受け止められ得るものである。

 本制度は,法人が自己の実質的支配者を証明するために適宜利用することができるほか,銀行が顧客の実質的支配者を確認する際に,顧客の申告内容の正確性を確認するための資料として,必要に応じて,提出を求めるという形で利用することも可能となる。そこで,国内の銀行業界からも,顧客の実質的支配者を確認する際の「信頼に足る証跡」として実質的支配者リストの写しを利用することができるようになることにより,実質的支配者の確認の信頼性が高まることが期待されている。

イ 商業登記所を登録機関とする必要性

 商業登記所は,法人の基礎的な情報を登記する業務(商業・法人登記)を担う機関であり,当該業務を担う登記官は,商業・法人登記の分野において高度な専門性を有しているため,商業登記所は,設立後の法人の実質的支配者情報の継続的な把握を行う機関として適していると考えられる。

 商業登記所の登記官が実質的支配者リストの写しを発行する際に確認する添付書面について,現在各銀行がそれぞれ行っている実質的支配者の確認において各顧客ごとに個別に提出を求めている書面を参考に定めることとした場合にも,専門性を有する商業登記所の登記官が実質的支配者情報を確認するハブとなって統一的な添付書面をもって判断を行うことにより,個々の金融機関が窓口でその都度確認を行っている現状に比べ,運用の統一性及び一定レベルの判断水準が担保されることにより信頼性が向上するとともに金融機関及び顧客の負担が軽減し,社会全体のコストが低減するとともに,取引がより迅速に行われる効果が期待される。

ウ 小括

 本制度は,法人が任意に利用することを前提とする制度であり,EU 加盟国等の制度のように関係当事者に義務を課すものではないが,後述のとおり,我が国における実質的支配者把握の仕組み全体の中で適切に位置付けられることにより,法人の実質的支配者の確認の信頼性を高めるものであり,本制度を導入することの意義は大きいと考えられる。

(2) 本制度の対象

ア 制度の対象となる法人の種類及び実質的支配者の類型

 本制度は,商業登記所による新たな取組であり,また,一般的に商業登記所は,その業務に馴染む種類の書面による審査により行うことができる業務を担う機関であると考えられてきたことに照らし,まずは,資本多数決法人である株式会社及び特例有限会社のうち,その実質的支配者が実質的支配者類型①及び実質的支配者類型②であるものを対象とし,また,株主が外国会社である場合を対象としないこととして開始するという進め方は,適切であると考えられる。

 他方で,合同会社等の資本多数決法人以外の法人,株式会社及び特例有限会社のうち実質的支配者が実質的支配者類型③又は実質的支配者類型④のもの,株主が外国会社であるものについても,実質的支配者の一元的かつ継続的な把握が課題であることは同様である。

 そこで,本制度の対象外となった法人や実質的支配者の類型については,将来の課題として,本制度導入後の運用状況も踏まえて,その在り方について検討を行うことが相当である。

 その際には,登記所の業務は,一般的に,その業務に馴染む種類の書面による審査により行うものとされているところ,資本多数決法人以外の法人の実質的支配者の確認については,貸借対照表や損益計算書等の収益の配当や財産の分配の状況を明らかにする資料を確認する必要があり,また,最初の段階の審査で,出資,融資,取引その他の関係を通じて当該法人の事業活動に支配的な影響力を有する自然人の有無を確認する必要があることなどから,より実体的な審査が必要になるものの,書面による審査は可能であることなども考慮して,登記所の

 業務に適するか否か,また,仮に適さない場合にはどのような機関が担うべきであるかなどを含め検討を行う必要がある。

イ 本制度の対象となる取引の類型

 本制度は,犯罪収益移転防止法第4条第2項のハイリスク取引,通常の特定取引のいずれの類型の取引についても利用することが可能である。

(3) 実質的支配者リストの写しを発行する事務フロー

 実質的支配者リストの写しの発行の事務フローに関し,第2の2(3)掲記のとおり,申出法人が作成した書面について登記官がその正確性を添付書面により確認するものとすることは,一般的な商業登記の事務フローとも整合するものである。

 また,登記官が申出のあった実質的支配者リストをスキャンして保管することについても,商業登記所において,実質的支配者情報を保管するものであり,実質的支配者を継続的に把握する観点から効果的な取組であると考えられる。

 さらに,登記官が,申出法人について,実質的支配者リストが保管されている旨を登記簿に付記することについても,後述のとおり,本制度の利用を促進する効果があると考えられる。

(4) 申出された実質的支配者情報の正確性を確認する方法

 申出の際に申出法人から提出される実質的支配者リストの正確性を登記官が確認する方法については,現在の銀行の顧客の実質的支配者確認の実務を参考に,株主名簿の写し,確定申告書(法人税)別表二の明細書の写し,公証人の発行する申告受理及び認証証明書等の提出を求める考え方(案①)を採用すべきである。

 その上で,実質的支配者が法人の議決権を間接に保有する場合における実質的支配者と法人の関係や,実質的支配者の本人特定事項に関する確認の在り方については,実務上のニーズにも照らしながら,引き続き検討を行うべきである。

 申出法人が虚偽の資料を用いるなどして申出を行った場合には,個別の事案に応じて,関係法令に基づき制裁が科され得る。例えば,申出法人が株主名簿に虚偽の記載をした場合には,会社法(平成 17 年法律第 86 号)第 976 条第7号の規定により 100 万円以下の過料に処せられることになる。

(5) 実質的支配者リストの記載事項

 実質的支配者リストは,犯罪収益移転防止法の枠組みの下で金融機関等の特定事業者が顧客の実質的支配者について確認し,確認記録として一定期間保存しなければならない事項を網羅している必要があり,次の事項を記載することが相当である(別添実質的支配者リストサンプル参照)。

- 申出法人の商号,本店所在地,会社法人等番号

- 実質的支配者情報を確認した時点

- 作成者

- 実質的支配者の該当事由

- 実質的支配者の本人特定事項として,氏名(及びふりがな),住居,国籍等,生年月日,性別

- 実質的支配者が有する申出法人の議決権割合及び間接保有の有無

- 実質的支配者が申出法人の議決権を間接保有する場合には,支配関係図

- 実質的支配者該当性に関する添付書面の種類

- 実質的支配者の本人確認の書面の種類

(6) 本制度を利用する法人の理解を促進する方法

本制度については,法人が自己の実質的支配者を証明するために利用することができるほか,銀行が顧客の実質的支配者を確認する際に,顧客の申告内容の正確性を確認するための資料として,顧客に実質的支配者リストの写しの提出を求めるという形で利用されることが想定されているところ,そのような運用を行うためには,銀行の顧客による本制度の理解を深めることが重要である。

 この点に関しては,まず,前記第3の1(3)掲記のとおり,本制度を利用した法人については,実質的支配者リストが保管されている旨が登記簿に付記され,登記事項証明書にもその旨を記載することを想定しているため,申出法人は,金融機関以外の当事者と取引を行う際に,取引の相手方から,求めがあれば実質的支配者リストの写しを提出することのできる透明性の高い会社であると認識される。そのため,その信頼性が向上するという事実上の利点を当該法人が享受し得るものであり,このことにより,一定程度本制度の意義についての理解が広まると考えられる。

 さらに,銀行の顧客の理解を促進するためには,本制度が,我が国における実質的支配者情報把握の仕組み全体の中で適切に位置付けられることが重要である。そこで,今後,金融庁マネロンガイドラインを含め,我が国の仕組み全体の中で,本制度が適切に位置付けられるよう,銀行業界,金融庁と連携して更に検討を進めていくことが必要である。

 また,本制度の意義について理解を広めるために,関係機関が連携して周知を行うことも必要であると考えられる。周知に当たっては,公的機関を装ったフェイクメール等によって利用者に被害が生ずるというような事態の発生を防止することにも留意すべきである。

(7) 実質的支配者リストの写しの利用が想定される場面

 令和元年 12 月末時点の株式会社及び特例有限会社の数は約 345 万 5000社であるところ,本制度は,主に,これらの法人が,特定事業者と取引を行う際に利用することが想定される。

 いかなる場合に実質的支配者リストの写しの提出が求められるかについては,特定事業者の運用に委ねられることとなるが,顧客との取引開始時や,継続的顧客管理を行う中で,公的機関による客観的かつ統一的な判断が必要となる場合等に求められることになると考えられる。

(8) 商業登記所で管理する実質的支配者情報へのアクセス

 実質的支配者情報は,個人情報を含むプライバシー性の高い情報であることから,本制度の導入に当たっては,申出法人のみが交付を請求することができる制度とすることが考えられる。

 その上で,将来的には,商業登記所の管理する実質的支配者情報へのアクセス権者の拡大について,本制度の運用状況もみながら,更なる制度改正を行うことを含め,検討を行うことが相当である。

(9) 根拠法令・施行時期

本制度については,まずは,法務省令により,令和3年度中を目途に,速やかに制度導入を実施することが相当である。

そ の上で,将来的には,本制度開始後の運用状況もみながら,より根本的な制度改正を行うことの要否についても検討を行うことが相当である。

2 本制度導入後の課題

本制度導入後の運用状況を踏まえつつ,次の事項について更に検討を行うことが相当である。

資本多数決法人以外の法人に関する実質的支配者の把握の在り方

・ 株式会社及び特例有限会社の実質的支配者類型③及び実質的支配者類型④の実質的支配者の把握の在り方

株主が外国法人である場合の実質的支配者の把握の在り方

・ 実質的支配者,実質的支配者が法人の議決権を間接に有している場合における上位会社,実質的支配者の確認義務者等から,実質的支配者情報の提供を受けることができる仕組みの在り方

・ 商業登記所の管理する実質的支配者情報へのアクセス権者の範囲

・ 商業登記所に保管される実質的支配者リストの保管の在り方

・ 実質的支配者変更の適時の把握の在り方

オンラインによる実質的支配者リストの保管及び写しの交付の手続の実施

・ 申出法人の申出内容に関する正確性の確認における,AI の導入等 IT 技術の活用

第4 おわりに

 法人の実質的支配者を把握することは,国際的要請であり,各国は,知恵を絞り,リスクの評価,ビジネスの効率性,プライバシーの要請など,それぞれが置かれている異なる状況に適しており,かつ,より効果的な制度の実現に向けて取り組んでいる。また,我が国においてそのような取組を行うことは,金融機関が円滑に海外取引を行うための環境整備にも資するなど,我が国の企業による国際的な経済活動を支える制度的インフラを整備することにも資するものである。

本制度は,法人の実質的支配者を把握するための複数の手法のうち,我が国ではこれまで十分に活用されてこなかった,登録機関を情報源とする手法(theRegistry Approach)により,設立後の法人の実質的支配者の継続的把握という残された課題について取組を行うものであり,その意義は大きい。今後,まずは,本制度を円滑かつ速やかに導入することが重要であり,その上で,本制度の運用状況や国際的動向もみながら,更なる取組に向けた検討を行っていくことが期待される。

○法務省告示第百八十七号

https://www.moj.go.jp/content/001355642.pdf

商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則を次のように定める。

令和三年九月十七日 法務大臣上川陽子

商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則

(目的)

第一条 この規則は、登記所が、株式会社からの申出により、その実質的支配者に関する情報を記載した書面を保管し、その写しを交付する制度を定めることを目的とする。

(実質的支配者情報一覧の保管等の申出)

第二条 株式会社は、その本店の所在地を管轄する登記所(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第一条の三に規定する登記所であって、同法第二条の規定に基づき、登記事務委任規則(昭和二十四年法務府令第十三号)の規定により商業登記の事務が他の登記所に委任されたものを除いたものをいう。以下「商業登記所」という。)の登記官に対し、当該株式会社に係る次に掲げる情報を記載した書面(以下「実質的支配者情報一覧」という。)の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出をすることができる。

一 申出に係る株式会社(以下「申出会社」という。)の商号、本店の所在場所及び会社法人等番号(商業登記法第七条に規定する会社法人等番号をいう。以下同じ。)

二 過去の一定の日(本条の申出をする日前一月以内のものに限る。)における申出会社の実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成二十年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第一号。以下「犯収法施行規則」という。)第十一条第二項第一号の自然人(同条第四項の規定により自然人とみなされるものを含む。)に該当する者をいう。以下同じ。)の氏名、住居、国籍等(国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二条第五号ロに規定する地域をいう。以下同じ。)及び生年月日

三前号の実質的支配者が同号の日において直接又は間接に有していた申出会社の議決権(当該実質的支配者が有していた申出会社の議決権(会社法(平成十七年法律第八十六号)第三百八条第一項その他これに準ずる同法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み、同法第四百二十三条第一項に規定する役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。)に係る議決権を除く。以下同じ。)及び当該実質的支配者の支配法人(犯収法施行規則第十一条第三項第二号に規定する支配法人をいい、同号の規定により当該実質的支配者の支配法人とみなされるものを含む。以下同じ。)が有していた申出会社の議決権をいう。)が申出会社の議決権の総数に占めていた割合及び当該実質的支配者の支配法人が有していた申出会社の議決権がある場合にはその旨四第二号の日において前号の実質的支配者の支配法人が有していた申出会社の議決権がある場合には、当該実質的支配者及び当該支配法人(当該支配法人が二以上である場合には各支配法人。以下同じ。)が有していた申出会社の議決権がそれぞれ申出会社の議決権の総数に占めていた割合並びに当該実質的支配者、当該支配法人及び申出会社の間の支配関係

五 第四条第一項第二号の規定により申出書に添付する書面の名称

六 第四条第二項(第二号括弧書を除く。)に掲げる書面を申出書に添付する場合にあっては、その書面の名称

(申出の方法)

第三条前条の申出は、次に掲げる事項を内容とする申出書を商業登記所に提供してしなければならない。

一 申出会社の商号、本店の所在場所及び会社法人等番号並びに申出会社の代表者の資格、氏名、住所及び連絡先

二 代理人によって申出をするときは、当該代理人の氏名又は名称、住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の資格及び氏名

三 交付を求める実質的支配者情報一覧の写しの利用目的

四 交付を求める実質的支配者情報一覧の写しの通数

五 申出の年月日

六 送付の方法により実質的支配者情報一覧の写しの交付を求めるときは、その旨

(実質的支配者情報一覧等の添付)

第四条前条の申出書には、次に掲げる書面を添付しなければならない。

一 実質的支配者情報一覧(別紙書式に第二条各号に掲げる情報及び作成の年月日並びに同条第二号の日の実質的支配者情報(同号から同条第四号までに掲げる情報をいう。)である旨を記載し、作成者である申出会社の代表者が記名したものに限る。)

二 申出会社に係る次に掲げる書面のいずれか

イ 第二条の申出をする日における株主名簿の写し

ロ 公証人が発行する申告受理及び認証証明書(設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。)

ハ 第二条の申出をする日の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第三十一号に規定する確定申告書をいう。)に添付された法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)第三十四条第二項に規定する別表二の写し(設立後最初の事業年度を経過している場合に限る。)

三 第一号の実質的支配者情報一覧と前号に掲げる書面の内容とが合致していない場合には、その理由を明らかにする書面

2 前条の申出書には、前項に掲げる書面のほか、次に掲げるものを添付することができる。

一 前項第一号の実質的支配者情報一覧に実質的支配者として記載された者の氏名及び住居と同一の氏名及び住居が記載されている市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。以下同じ。)その他の公務員が職務上作成した証明書(当該実質的支配者が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

二 第二条第四号の支配関係に係る情報に記載されている支配法人に係る前項第二号に掲げる書面のいずれか(同項第一号の実質的支配者情報一覧と本号により添付する書面の内容とが合致していない場合には、その理由を明らかにする書面を併せて添付する場合に限る。)

(代理権限を証する書面の添付)

第五条 代理人によって第二条の申出をするには、第三条の申出書にその権限を証する書面を添付しなければならない。

(本人確認書面の添付等)

第六条 第三条の申出書には、申出書(代理人によって申出をする場合にあっては、当該代理人の権限を証する書面)に申出会社の代表者が商業登記所に提出している印鑑が押印されている場合を除き、申出書に記載されている申出会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出会社の代表者が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。

(実質的支配者情報一覧の写しの交付)

第七条 登記官は、第二条の申出が同条から前条までの規定に基づき適正にされたものであることを確認し、かつ、第四条第一項第二号及び第三号並びに第二項の規定により添付された書面並びに申出会社の登記簿に記載又は記録されている事項と実質的支配者情報一覧の内容とが整合していることを確認したときは、実質的支配者情報一覧の写しを交付するものとする。

2登記官は、前項の規定により実質的支配者情報一覧の写しを交付する場合には、申出に係る商業登記所に保管された実質的支配者情報一覧の写しである旨の認証文を付した上で、作成の年月日及び職氏名を記載し、職印を押印するものとする。

(実質的支配者情報一覧の写しの再交付の申出)

第八条 第二条の申出をした株式会社は、その申出に係る商業登記所の登記官に対し実質的支配者情報一覧(当該商業登記所に保管されている最新のものに限る。)の写しの再交付の申出をすることができる。2第三条から前条までの規定(第四条を除く。)は、再交付の申出をする場合について準用する。ただし、第六条の規定は、前項の申出をした株式会社がその本店の所在場所に宛てて送付する方法により写しの交付を求める場合については、この限りでない。

(実質的支配者情報一覧の写しの送付の方法等)

第九条 実質的支配者情報一覧の写しの交付は、申出会社の申出により、送付の方法によりすることができる。

2 前項の送付に要する費用は、郵便切手又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者による同条第二項に規定する信書便の役務に関する料金の支払のために使用することができる証票であって法務大臣が指定するものを提出する方法により納付しなければならない。

(帳簿)

第十条 商業登記所には、実質的支配者情報一覧つづり込み帳を備えるものとする。

2前項の帳簿には、実質的支配者情報一覧並びにその保管及び写しの交付の申出(第八条第一項に規定する再交付の申出を含む。)に関する書類をつづり込むものとする。

(保存期間)

第十一条 前条第一項の帳簿の保存期間は、作成した年の翌年から七年間とする。

附則

この告示は、令和四年一月三十一日から施行する。

法 務 省 民 商 第 1 5 9 号

令 和 3 年 9 月 1 7 日 法 務 局 長 殿 地 方 法 務 局 長 殿

法務省民事局長(公 印 省 略)

商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則の施行に伴う事務の取扱いについて(通達)

https://www.moj.go.jp/content/001355840.pdf

 商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規則(令和3年法務省告示第187号。以下「規則」という。)が本日公布され,令和4年1月31日から施行されることとなりましたが,これに伴う事務の取扱いについては,下記の点に留意するよう,貴管下登記官に周知方お取り計らい願います。

第1 規則の趣旨

 公的機関において法人の実質的支配者に関する情報を把握することについては,法人の透明性を向上させ,資金洗浄等の目的による法人の悪用を防止する観点から,FATF(金融活動作業部会。Financial Action TaskForce)の勧告や金融機関からの要望等,国内外の要請が高まっており,成長戦略フォローアップ(令和2年7月17日閣議決定)においても「設立後の法人の実質的支配者の把握等を実現する商業登記制度の在り方を検討し,2020年中に結論を得る。」とされた。

 これを受け,登記所が,株式会社からの申出により,その実質的支配者に関する情報を記載した書面を保管し,その写しを交付する制度を定めることを目的として規則を定め(規則第1条参照),実質的支配者リスト制度を創設することとしたものである。

第2 規則の施行に伴う事務の取扱い

1 実質的支配者情報一覧の保管等の申出

(1) 実質的支配者情報一覧

 株式会社は,その本店の所在地を管轄する登記所(商業登記法(昭和38年法律第125号)第1条の3に規定する登記所であって,同法第2条の規定に基づき,登記事務委任規則(昭和24年法務府令第13号)の規定により商業登記の事務が他の登記所に委任されたものを除いたものをいう。以下「商業登記所」という。)の登記官に対し,当該株式会社に係る次に掲げる情報を記載した書面(以下「実質的支配者情報一覧」という。)の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出をすることができるとされた(規則第2条)。

ア 申出に係る株式会社(以下「申出会社」という。)の商号,本店の所在場所及び会社法人等番号(商業登記法第7条に規定する会社法人等番号をいう。以下同じ。)

イ 過去の一定の日((1)の申出をする日前1月以内のものに限る。)における申出会社の実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(平成20年内閣府・総務省・法務省・財務省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第1号。以下「犯収法施行規則」という。)第11条第2項第1号の自然人(同条第4項の規定により自然人とみなされるものを含む。)に該当する者をいう。以下同じ。)の氏名,住居,国籍等(国籍の属する国又は出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第2条第5号ロに規定する地域をいう。以下同じ。)及び生年月日

ウ イの実質的支配者がイの日において直接又は間接に有していた申出会社の議決権(当該実質的支配者が有していた申出会社の議決権(会社法(平成17年法律第86号)第308条第1項その他これに準ずる同法以外の法令(外国の法令を含む。)の規定により行使することができないとされる議決権を含み,同法第423条第1項に規定する役員等(会計監査人を除く。)の選任及び定款の変更に関する議案(これらの議案に相当するものを含む。)の全部につき株主総会(これに相当するものを含む。)において議決権を行使することができない株式(これに相当するものを含む。)に係る議決権を除く。以下同じ。)及び当該実質的支配者の支配法人(犯収法施行規則第11条第3項第2号に規定する支配法人をいい,同号の規定により当該実質的支配者の支配法人とみなされるものを含む。以下同じ。)が有していた申出会社の議決権をいう。)が申出会社の議決権の総数に占めていた割合及び当該実質的支配者の支配法人が有していた申出会社の議決権がある場合にはその旨

エ イの日においてウの実質的支配者の支配法人が有していた申出会社の議決権がある場合には,当該実質的支配者及び当該支配法人(当該支配法人が二以上である場合には各支配法人。以下同じ。)が有していた申出会社の議決権がそれぞれ申出会社の議決権の総数に占めていた割合並びに当該実質的支配者,当該支配法人及び申出会社の間の支配関係

オ (3)ア(イ)により申出書に添付する書面の名称

カ (3)イ((イ)括弧書を除く。)に掲げる書面を申出書に添付する場合にあっては,その書面の名称

 なお,申出をすることができる株式会社には,特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成17年法律第87号)第3条第2項に規定する特例有限会社をいう。)も含まれる。

(2) 申出の方法

(1)の申出は,次に掲げる事項を内容とする申出書を商業登記所に提供してしなければならないとされた(規則第3条)。この場合の商業登記所への申出書の提供は,商業登記所の窓口に持参する方法によるほか,送付によることも認められる。

ア 申出会社の商号,本店の所在場所及び会社法人等番号並びに申出会社の代表者の資格,氏名,住所及び連絡先

イ 代理人によって申出をするときは,当該代理人の氏名又は名称,住所及び連絡先並びに代理人が法人であるときはその代表者の資格及び氏名

ウ 交付を求める実質的支配者情報一覧の写しの利用目的

エ 交付を求める実質的支配者情報一覧の写しの通数

オ 申出の年月日

カ 送付の方法により実質的支配者情報一覧の写しの交付を求めるときは,その旨この申出書は,別記第1号様式又はこれに準ずる様式によるものとする。

(3) 実質的支配者情報一覧等の添付

ア (2)の申出書には,次に掲げる書面を添付しなければならないとされた(規則第4条第1項)。

(ア) 実質的支配者情報一覧(別紙書式に(1)アからカまでに掲げる情報及び作成の年月日並びに(1)イの日の実質的支配者情報((1)イからエまでに掲げる情報をいう。)である旨を記載し,作成者である申出会社の代表者が記名したものに限る。)

(イ) 申出会社に係る次に掲げる書面のいずれか

a (1)の申出をする日における株主名簿の写し

b 公証人が発行する申告受理及び認証証明書(設立後最初の事業年度を経過していない場合に限る。)

c (1)の申出をする日の属する事業年度の直前の事業年度の確定申告書(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第31号に規定する確定申告書をいう。)に添付された法人税法施行規則(昭和40年大蔵省令第12号)第34条第2項に規定する別表二の写し(設立後最初の事業年度を経過している場合に限る。)

(ウ) (ア)の実質的支配者情報一覧と(イ)に掲げる書面の内容とが合致していない場合には,その理由を明らかにする書面

 この書面には,合致しない理由を記載した申出会社の代表者の作成に係る証明書(当該証明書には,代表者の記名があれば足り,押印は不要である。)等が該当する。

イ (2)の申出書には,(3)アに掲げる書面のほか,次に掲げるものを添付することができるとされた(規則第4条第2項)。

(ア) (3)ア(ア)の実質的支配者情報一覧に実質的支配者として記載された者の氏名及び住居と同一の氏名及び住居が記載されている市町村長(特別区の区長を含むものとし,地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては,区長又は総合区長とする。以下同じ。)その他の公務員が職務上作成した証明書(当該実質的支配者が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)

 この証明書には,例えば住民票記載事項証明書や運転免許証の写しが該当する。

(イ) 1(1)エの支配関係に係る情報に記載されている支配法人に係る(3)ア(イ)aからcまでに掲げる書面のいずれか((3)ア(ア)の実質的支配者情報一覧と(3)イ(イ)により添付する書面の内容とが合致していない場合には,その理由を明らかにする書面を併せて添付する場合に限る。)

 そのため,(3)ア(ア)の実質的支配者情報一覧と(3)イ(イ)により添付された書面の内容とが合致していない場合において,その理由を明らかにする書面の添付がないときは,実質的支配者情報一覧に(3)イ(イ)の書面の名称を記載することはできない。

(4) 代理権限を証する書面の添付

 代理人によって(1)の申出をするには,(2)の申出書にその権限を証する書面を添付しなければならないとされた(規則第5条)。当該書面について,原本の添付に加えて,代理人が原本と相違がない旨を記載し,記名をした謄本が添付された場合は,登記官は,それらの内容が同一であることを確認した上,原本を返却するものとする。

(5) 本人確認書面の添付等

(2)の申出書には,申出書(代理人によって申出をする場合にあっては,当該代理人の権限を証する書面)に申出会社の代表者が商業登記所に提出している印鑑が押印されている場合を除き,申出書に記載されている申出会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出会社の代表者が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。以下(5)において同じ。)を添付しなければならないとされた(規則第6条)。

 なお,申出書に記載されている申出会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書が添付されている場合であっても,登記簿に記録されている代表者の氏名及び住所と一致しないときは,代表者の氏名等の変更の登記をしなければ,申出に応ずることはできない。

2 実質的支配者情報一覧の写しの交付等

 登記官は,1(1)の申出が規則第2条から第6条までの規定に基づき適正にされたものであることを確認し,かつ,1(3)ア(イ)及び(ウ)並びにイにより添付された書面並びに申出会社の登記簿に記載又は記録されている事項と実質的支配者情報一覧の内容とが整合していることを確認したときは,実質的支配者情報一覧の写しを交付するものとするとされた(規則第7条第1項)。

 登記官は,実質的支配者情報一覧の写しを交付する場合には,申出に係る商業登記所に保管された実質的支配者情報一覧の写しである旨の認証文を付した上で,作成の年月日及び職氏名を記載し,職印を押印するものとするとされた(規則第7条第2項)。

登記官における実質的支配者情報一覧の写しの交付等に係る事務は,次の方法によるものとする。

(1) 申出の内容の確認

登記官は,実質的支配者情報一覧の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出があったときは,速やかに,申出の内容を確認するものとする。この場合において,登記簿に記録されている事項と整合していることの確認及び申出書に押印された印鑑が商業登記所に提出されている印鑑と同一のものであることの確認は,申出会社の登記事項証明書及び印鑑証明書と同一の内容が記載された帳票を登記情報システムから出力して行うものとする。

(2) 申出の内容に不備がある場合の取扱い

ア 添付された実質的支配者情報一覧の記載に,その他の添付書面並びに登記簿に記載又は記録されている事項と整合していないなどの誤りや遺漏がある場合,登記官は,申出をした株式会社の代表者又は代理人にその内容を伝え,速やかに当該実質的支配者情報一覧の誤り等を訂正させ,清書された誤りのない実質的支配者情報一覧の添付を求めるものとする。提供された申出書に誤りがある場合,登記官は,申出をした株式会社の代表者又は代理人にその内容を伝え,速やかに当該申出書の誤りを訂正させるものとする。

イ 添付書面が不足している場合,登記官は,申出をした株式会社の代表者又は代理人に不足している添付書面を伝え,一定の補完期間を設けてその添付を求めるものとする。

ウ 前記ア又はイに係る不備の補完がされない場合は,次のとおり取り扱うものとする。

(ア) 申出をした株式会社の代表者又は代理人に対し,申出書及び添付書面を返戻する旨を通知するとともに,窓口において返戻を受ける場合はそのための出頭又は送付によって返戻を受ける場合は必要な費用の納付を求める。

(イ) 前記(ア)の求めに応じない場合は,申出があった日から起算して1か月を経過した後,当該申出書及び添付書面を廃棄して差し支えない。

(3) 実質的支配者情報一覧の保存

 登記官は,提供された申出書の添付書面並びに登記簿に記載又は記録された事項と実質的支配者情報一覧の内容とが整合していることを確認したときは,実質的支配者情報一覧の写しの作成のため,次の方法により実質的支配者情報一覧を保存するものとする。

ア 実質的支配者情報番号の採番

 登記官は,登記所ごとの実質的支配者情報番号を採番し,申出書の所定の欄に記入するものとする。

イ 実質的支配者情報の保存

(ア) 登記官は,添付された実質的支配者情報一覧をスキャナを用いて読み取ることにより電磁的記録に記録して保存するものとする。

(イ) 前記アで採番した実質的支配者情報番号,申出年月日,商号,本店の所在場所及び会社法人等番号を電磁的記録に記録するものとする。

(4) 実質的支配者情報一覧の写しの作成

ア 用紙

実質的支配者情報一覧の写しは,偽造防止措置が施された専用紙を用いて作成する。

イ 認証文及びその他の付記事項

(ア) 実質的支配者情報一覧の写しに付記する認証文は,次のとおりとする。

「これは,年月日に申出のあった当局保管に係る実質的支配者情報一覧の写しである。」なお,前記(2)アにより誤りのない実質的支配者情報一覧を補完させた場合は,その補完がされた日を申出があった日とみなすものとする。同様に,前記(2)イにより不足している添付書面を補完させた場合は,不足している添付書面が補完された日を申出があった日とみなすものとする。

(イ) 実質的支配者情報一覧に登記官が記載する職氏名は,次のとおりとする。

「何法務局(何地方法務局)何支局(何出張所)登記官 何某」

(ウ) 実質的支配者情報一覧の写しには,次の注意事項を付記するものとする。

「これは,会社において作成した実質的支配者情報一覧について,登記官が各添付書面欄記載の書面と整合することを確認して保管を行ったものの写しであり,記載されている内容が事実であることを証明するものではない。」

(5) 実質的支配者情報一覧の写しの交付

ア 商業登記所の窓口における交付の取扱い

 窓口において実質的支配者情報一覧の写しを交付するに当たっては,申出書の受領に際して引換券を交付する等により第三者に交付することがないよう配意する。

イ 送付による交付の取扱い

 実質的支配者情報一覧の写しの交付は,申出会社の申出により,送付の方法によりすることができるとされた(規則第9条)。この方法によるときは,申出書に記載された申出会社の本店の所在場所若しくは申出人である申出会社の代表者又は代理人の住所のうち,申出人である申出会社の代表者又は代理人が希望する送付先に送付するものとする。

ウ 交付の申出をした株式会社の代表者等が実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合の取扱い

 実質的支配者情報一覧の写しの交付の申出をした株式会社の代表者又は代理人が実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合は,申出があった日から起算して1か月を経過した後,廃棄して差し支えない。

3 実質的支配者情報一覧の写しの再交付の申出

(1)の申出をした株式会社は,その申出に係る商業登記所の登記官に対し実質的支配者情報一覧(当該商業登記所に保管されている最新のものに限る。)の写しの再交付の申出をすることができるとされた(規則第8条第1項)。

 また,規則第3条から第7条までの規定(第4条を除く。)は,再交付の申出をする場合について準用するとされた(規則第8条第2項)。ただし,本人確認書面の添付等(前記1(5)参照)については,再交付の申出をした株式会社がその本店の所在場所に宛てて送付する方法により写しの交付を求める場合には,この限りでないとされた(規則第8条第2項ただし書)。

 そのため,再交付の対象となる実質的支配者情報一覧に記載されている商号,本店の所在場所又は作成者である申出会社の代表者として記名された者について,変更等の登記がされたことにより,登記簿の記録と一致していないときは,再交付の申出に応ずることはできないこととなる(規則第8条第2項において準用する第7条第1項)。

 登記官における実質的支配者情報一覧の写しの再交付に係る事務は,次の方法によるものとする。

(1) 再交付申出書

 再交付の申出は,別記第2号様式又はこれに準ずる様式による申出書(以下「再交付申出書」という。)によってするものとする。

(2) 代理権限を証する書面の添付

 代理人によって再交付の申出をするときは,当該代理人の権限を証する書面の添付を要する(規則第8条第2項において準用する規則第5条)。当該書面について,原本の添付に加えて,代理人が原本と相違がない旨を記載し,記名をした謄本が添付された場合は,登記官は,それらの内容が同一であることを確認した上,原本を返却するものとする。

(3) 本人確認書面の添付等

 再交付申出書には,再交付申出書(代理人によって再交付の申出をする場合にあっては,当該代理人の権限を証する書面)に再交付の申出をした株式会社の代表者が商業登記所に提出している印鑑が押印されている場合を除き,再交付申出書に記載されている再交付の申出をした株式会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出をした株式会社の代表者が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。以下(3)において同じ。)を添付しなければならないとされた(規則第8条第2項において準用する規則第6条)。ただし,再交付の申出をした株式会社がその本店の所在場所に宛てて送付する方法により写しの交付を求める場合については,この限りでないとされた(規則第8条第2項ただし書)。

 そのため,これに該当する場合には,再交付申出書には,再交付申出書に記載されている再交付の申出をした株式会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書の添付及び再交付の申出をした株式会社の代表者が商業登記所に提出している印鑑の押印は不要である。

 なお,再交付申出書に記載されている再交付の申出をした株式会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載された市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書が添付されている場合であっても,登記簿に記録されている代表者の氏名及び住所と一致しないときは,代表者の氏名等の変更の登記をしなければ,再交付の申出に応ずることはできない。

(4) 実質的支配者情報一覧の写しの再交付

 再交付の申出があった場合の実質的支配者情報一覧の写しの交付の取扱いは,次のとおりである。

ア 商業登記所の窓口における再交付の取扱い

 窓口において実質的支配者情報一覧の写しを交付するに当たっては,再交付申出書の受領に際して引換券を交付する等により第三者に交付することがないよう配意する。

イ 送付による再交付の取扱い

 実質的支配者情報一覧の写しの再交付は,申出をした株式会社の申出により,送付の方法によりすることができるとされた(規則第9条)。この方法による場合は,規則第8条第2項ただし書(前記(3)参照)に該当するときは,再交付申出書に記載された株式会社の本店の所在場所宛てに送付するものとし,それ以外のときは,再交付申出書に記載された株式会社の本店の所在場所又は申出人である申出をした株式会社の代表者若しくは代理人の住所のうち,申出人である申出をした株式会社の代表者又は代理人が希望する送付先に送付するものとする。

ウ 再交付の申出をした株式会社の代表者等が実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合の取扱い

 実質的支配者情報一覧の写しの再交付の申出をした株式会社の代表者又は代理人が実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合は,申出があった日から起算して1か月を経過した後,廃棄して差し支えない。

4 実質的支配者情報一覧を保管している株式会社から再度の申出があった場合

 商業登記所が既に実質的支配者情報一覧を保管している株式会社から,実質的支配者情報一覧の保管及び実質的支配者情報一覧の写しの交付に係る再度の申出があった場合には,新たな申出があったものとして,前記2と同様の方法により処理を行うこととなる。この場合において,新たな申出により実質的支配者情報一覧を保管したときは,それ以降の実質的支配者情報一覧の写しの再交付の請求に対しては,当該保管に係る実質的支配者情報一覧の写しを交付することとなる(規則第8条第1項参照)。

5 実質的支配者情報一覧つづり込み帳及びその保存期間

(1) 実質的支配者情報一覧つづり込み帳

 商業登記所には,実質的支配者情報一覧つづり込み帳を備えるものとするとされた(規則第10条第1項)。また,実質的支配者情報一覧つづり込み帳には,実質的支配者情報一覧並びにその保管及びその写しの交付の申出(規則第8条第1項に規定する再交付の申出を含む。)に関する書類をつづり込むものとするとされた(規則第10条第2項)。

 この実質的支配者情報一覧つづり込み帳につづり込む書類としては,実質的支配者情報一覧(規則第4条第1項第1号)のほか,申出書(規則第3条),申出書に添付された書面(規則第4条(第1項第1号を除く。)から第6条まで)及び再交付申出書(規則第8条において準用する第3条)が該当する。

 なお,実質的支配者情報一覧を保管している株式会社について,本店を他の商業登記所の管轄区域内に移転した場合であっても,実質的支配者情報一覧につづり込まれている当該株式会社の実質的支配者情報一覧等を移転先の商業登記所に移送する等の特段の措置を講ずる必要はなく,引き続き,申出を受けた商業登記所において保存することとなる。

(2) 実質的支配者情報一覧つづり込み帳の保存期間

実質的支配者情報一覧つづり込み帳の保存期間は,作成した年の翌年から7年間とするとされた(規則第11条)。

別紙書式

(日本産業規格A列4番)

実質的支配者情報一覧

(商号) (会社法人等番号)

(本店)

(作成年月日) (作成者(代表者))

以下の情報は, 現在の実質的支配者情報である。

実質的支配者の該当事由(①又は②のいずれかの左側の□内に✔印を付してください。)(※1)

☐ ① 会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合を除く。):犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(以下「犯収法施行規則」という。)第11条第2項第1号参照

☐ ② ①に該当する者がいない場合は,会社の議決権の総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人(この者が当該会社の事業経営を実質的に支配する意思又は能力がないことが明らかな場合又は他の者が会社の議決権の総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する場合を除く。):犯収法施行規則第11条第2項第1号参照実質的支配者の本人特定事項等(※2,※3)

1番 住居  国籍等 日本・その他 (※4)

( ) 議決権割合 % (間接保有)有・無(※5)※有の場合は別紙に支配関係図を記載

生年月日  (昭和・平成・西暦)年 月 日生 氏名(※6)フリガナ

実質的支配者該当性の添付書面

実質的支配者の本人確認の書面

※1 ①の50%及び②の25%の計算は,次に掲げる割合を合計した割合により行う(犯収法施行規則第11条第3項)。

⑴ 当該自然人が有する当該会社の議決権が当該会社の議決権の総数に占める割合

⑵ 当該自然人の支配法人(当該自然人がその議決権の総数の50%を超える議決権を有する法人をいう。この場合において,当該自然人及びその一若しくは二以上の支配法人又は当該自然人の一若しくは二以上の支配法人が議決権の総数の50%を超える議決権を有する他の法人は,当該自然人の支配法人とみなす。)が有する当該会社の議決権が当該会社の議決権の総数に占める割合

※2 「住居,氏名」欄には,①の場合は,該当する者1名を記載し,②の場合は,該当者全員を記載する。

※3 犯収法施行規則第11条第4項によって,上場企業等及びその子会社は自然人とみなされるので,上記自然人の「住居,氏名」欄に,その「住所,名称」を記載する。

※4 「国籍等」欄は,日本国籍の場合は「日本」を◯で囲み,日本国籍を有しない場合は「その他」を◯で囲んで具体的な国名等を( )内に記載する。

※5 議決権の全部又は一部を間接保有する場合には「有」を,全部直接保有する場合には「無」を◯で囲む。

※6 外国人の氏名は,アルファベットで表記(漢字圏の外国人の氏名については漢字との併記可)し,フリガナをカタカナで表記する。

別紙書式

(別紙)

(日本産業規格A列4番)

実質的支配者の番号 番(支配関係図)

実質的支配者の番号 番(支配関係図)

別記第1号様式

実質的支配者情報一覧の保管及び写し交付申出書

(補完年月日 令和 年 月 日)

申 出 年 月 日 実質的支配者情報番号 – –

会社法人等番号 商 号 本 店 申 出 人 の 表 示 住所 資格 氏名 連絡先 - -

代 理 人 の 表 示 住所 氏名 連絡先 - -

必要な写しの通数・交付方法    通 ( ☐窓口で受取 ☐郵送 )

郵送の場合は,宛先(※2)を記載した返信用封筒及び郵便切手が必要です。

※1 申出書には,申出書(委任による代理人によって申出をする場合にあっては,当該代理人の権限を証する書面)に申出会社の代表者が登記所に提出した印鑑が押印されている場合を除き,申出書に記載されている申出会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出会社の代表者が原本と相違ない旨を記載した謄本を含む。)を添付する必要があります。

※2 郵送の場合,会社の本店,申出人(又は代理人)の表示欄にある住所のうち,希望する送付先に送付します。返信用封筒には,該当の送付先を記載してください。

利 用 目 的 ☐金融機関への提出 ☐その他( )

上記の法人の申出日前1か月以内の日における実質的支配者情報一覧を別添のとおり提出し,上記通数の実質的支配者情報一覧の写しの交付を申出します。

申出の日から1か月以内に実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合は,廃棄して差し支えありません。

(申出会社の本店所在地を管轄する登記所) (地方)法務局 宛て

受領 確認1 確認2 スキャナ・入力 交付

交付方法 ☐窓口交付 送付(☐本店 ☐申出人の住所 ☐代理人の住所)

別記第2号様式

実質的支配者情報一覧の写し再交付申出書

申 出 年 月 日 実質的支配者情報番号 – –

会社法人等番号 商 号 本 店 申 出 人 の 表 示 住所 資格 氏名 連絡先 - -

代 理 人 の 表 示 住所 氏名 連絡先 - -

必要な写しの通数・交付方法    通 ( ☐窓口で受取 ☐郵送 )

郵送の場合は,宛先(※2)を記載した返信用封筒及び郵便切手が必要です。

※1 次の①又は②のいずれかに該当する場合には,窓口で受け取ることができます。

① 申出書に記載されている申出をした株式会社の代表者の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該申出をした株式会社の代表者が原本と相違ない旨を記載した謄本を含む。)が添付されている。

② 申出書(委任による代理人によって申出をする場合にあっては,当該代理人の権限を証する書面)に申出をした株式会社の代表者が登記所に提出した印鑑が押印されている。

※2 郵送の場合,※1の①又は②のいずれかに該当するときは,会社の本店,申出人(又は代理人)の表示欄にある住所のうち,希望する送付先に送付し,いずれにも該当しないときは,会社宛てに送付します。返信用封筒には,該当の送付先を記載してください。

利 用 目 的 ☐金融機関への提出 ☐その他( )

上記通数の実質的支配者情報一覧の写しの再交付を申出します。

申出の日から1か月以内に実質的支配者情報一覧の写しを受け取らない場合は,廃棄して差し支えありません。

(申出をした株式会社の本店所在地を管轄する登記所) (地方)法務局 宛て

受領 確認 交付

交付方法 ☐窓口交付 送付(☐本店 ☐申出人の住所 ☐代理人の住所)

加工

第1回 商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究

https://www.moj.go.jp/content/001320636.pdf

 議事概要

1.日時 令和2年4月24日(金)10:00~12:00

2.開催方法 ウェブ会議により実施

3.出席者(有識者)

座長 岩原紳作 委員 阿部耕一 委員 片山 達 委員 加藤貴仁 委員 角田美穂子 委員 内藤 卓

(法務省)民事局長 小出邦夫 商事課長 篠原辰夫 官房参事官 竹林俊憲 民事局付 福永 宏 民事局付兼登記所適正配置対策室長 竹下 慶

4.議事概要

(次のとおり)議事概要

○篠原商事課長 第1回研究会を開催する。

○小出民事局長 法人の実質的支配者情報の把握は,法人が,資金洗浄・テロ資金供与等に悪用されることを防止する等の観点から,重要な課題であり,実効性のある取組を行うことが,FATF 等の国際機関や国内の金融機関から求められていると承知している。

 この課題に関し,民事局では,平成30年に公証人法施行規則を改正し,同年11月30日以降,株式会社等が設立される際に,公証人が行う定款認証の手続において,起業者(嘱託人)は,設立される株式会社等の実質的支配者となるべき者及びその者の暴力団員等への該当性について申告を行うものとされている。

 この取組は,令和元年10月に FATF のベストプラクティスとして取り上げられるなど,国際的にも評価されており,また,公証人の発行する「申告受理及び認証証明書」は,金融機関が顧客の実質的支配者を確認する際に使用されていると承知している。

 他方で,法人設立後の継続的な実質的支配者の把握については,課題として残っている。この点に関し,国際的には,EU 加盟国等において,公的機関において設立後の法人の実質的支配者を登録するという取組が行われているようである。

 我が国では,設立後の法人の基礎的な情報は,商業登記所に登記されており,当該業務を担う登記官は,商業・法人登記の分野において高度な専門性を有しているところ,法人の実質的支配者情報の把握促進のために効果的な役割を果たし得る。

 そこで,法務省民事局では,商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進について,研究を行い,今後の新たな取組につなげていきたいと考えている。もちろん,法人の実質的支配者の把握は,非常に大きな問題であると承知しており,民事局が取り組むことができるのはその一部ではあるが,精力的に進めてまいりたい。

○篠原商事課長 本日の研究会では,①商業登記所において実質的支配者情報に関する証明書を発行する制度の必要性及び証明制度の対象となる範囲,②申告された法人の実質的支配者情報の正確性確保の方法,③想定される証明書の通数,集積したデータの管理・活用等長期的な課題の三つに分けて議論していただきたい。

○岩原座長 それでは,まず,一つ目のテーマである,商業登記所において実質的支配者情報に関する証明書を発行する制度の必要性及び証明制度の対象となる範囲について,事務局から説明いただきたい。

○竹下室長 (法人の実質的支配者把握に関する国内外の要請,欧州の動向,会社数概況及び商業登記事件数,今回の議論の対象となる制度である法人の実質的支配者証明制度(仮称)案について説明。)

法人の実質的支配者証明制度(仮称)案の概要は次のとおり。

・ 法人の申請により法務局が「実質的支配者情報証明書(仮称)」を発行

・ 申請する法人は,「実質的支配者情報一覧」の保管及び同一覧の写し(実質的支配者情報証明書)の交付を申請,実質的支配者該当性を裏付ける添付

書面を提出

「実質的支配者情報一覧」が保管されていることは,登記簿の付記事項として記録(実質的支配者情報を届け出ている信用性の高い会社と評価され得る)

・スキャンした「実質的支配者情報一覧」は,データベースとして管理

・制度の対象は株式会社・特例有限会社,証明の対象となる実質的支配者は犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項第1号の実質的支配者(株主が外国会社の場合は制度の対象外)

データベースの外部機関との連携は,将来的な課題

〇岩原座長 続いて,阿部委員から,金融機関における顧客の実質的支配者情報の確認の実務について説明いただきたい。

○阿部委員(実質的支配者の確認に係る銀行の実務対応に関して,実質的支配者の確認に関する法令の規律及び金融庁ガイドラインの定め並びにこれらに関する金融機関の実務的対応,定款認証において実質的支配者の申告を求める制度に関する加盟行のアンケート結果等について説明)

○岩原座長 自由に御議論いただきたい。

○阿部委員 国内外から求められているAML/CFT対策として,実質的支配者の確認というのは非常に重要である。銀行界としても,今回の制度の導入により,信頼性のある実質的支配者の確認につながることを期待したい。

○片山委員 法人や信託の透明性確保というのは世界的な潮流であり,銀行は実質的支配者の審査を義務づけられているのに,それに利用できる信頼に足る資料が今存在しないということで,しわ寄せが銀行に来ているという状況ではないかと思う。その点からも,今回の取組は必要性が高いと考えている。

参考までに,弁護士の業務上も実質的支配者を知る必要性がある。

 第1に,弁護士は事件を受任する前に利益相反の有無のチェックを行うが,その利益相反の有無というのは形式判断ではなくて,実質判断になるので,依頼者又は相手方が法人又は信託である場合には,当該法人又は信託だけを見ていても判断できず,その背後に誰がいるのかということを知っておく必要がある。

第2に,海外では,弁護士に顧客の実質的支配者の確認を義務づけるという国が増えてきており,それが世界の潮流であると承知している。

〇角田委員 公的機関に登録された実質的支配者情報へのアクセスに関して,ドイツでは最近制度改正がされて,アクセス権者が拡大している可能性がある。

〇篠原課長 今回,民事局で考えている制度については,利用者が申請をして,法務局が証明書を発行し,その証明書の利用については,会社が自分の判断で,その証明書を金融機関等に提出して,実質的支配者の確認をしていただくというような運用も考えられると思っている。

〇加藤委員 犯罪による収益の移転防止に関する法律上,実質的支配者の確認については,通常の特定取引とハイリスク取引で区別されているようであるが,今回の制度は,ハイリスク取引を念頭に置くものなのか,それとも,通常の特定取引の確認について手続を円滑にするというものなのか。通常の特定取引とハイリスク取引では,実質的支配者を確認する際の困難さが違う気がする。

〇篠原課長 通常の特定取引についても制度の対象に含めて,議論をお願いしたい。

〇岩原座長 イギリスなどでは,登録された実質的支配者情報は誰でも見られるという形の制度にしている。今回の制度では,登記事項にして誰でも見られるとするのではなく,商業登記所が証明書を出すこととされているが,その理由は何か。

〇竹下室長 実質的支配者の情報というのは,ある種の個人情報であるところ,今回は,法律の改正ではなく,商業登記規則の改正による行政的な取組により対応することを考えており,当該法人に対して証明書を交付し,その証明書をどこに出すかは法人に決めてもらうとすることが限界であると考えられる。

〇岩原座長 法改正をしないと登記事項にできないという制度的な問題のほかに,実質的支配者情報を登記事項にして一般に公開するということが,プライバシーの点からも問題があり得るので,今回の制度では,飽くまで商業登記所が申請を受けて証明書を出すという範囲で対応しようということか。

〇竹下室長 御指摘のとおり。

〇内藤委員 我々司法書士も,定款認証における実質的支配者の申告制度の開始等を通じて実質的支配者に関する理解が進んできた。

今回の制度についても,制度ができて,周知されることで,一般に,法人の実質的支配者に関する理解,周知が進む重要なきっかけになると考えている。

〇岩原座長 次に,二つ目のテーマである,申告された法人の実質的支配者情報の正確性確保の方法について,事務局から説明いただきたい。

〇福永局付 実質的支配者情報証明書の交付フローは,次のものを想定している。

(申請)

・ BO情報証明書の交付を希望する者が「法人の実質的支配者情報一覧」の保管及び同一覧の写しの交付を申請する(任意の制度)。

・ 申請の際には添付書面を提出する。

(登録)

・ 「法人の実質的支配者情報一覧」をスキャンして登録する。

・ 「法人の実質的支配者情報一覧」が保管されている旨を登記簿に記録する(希望する場合のみとするか否かは要検討)。

(証明書交付)

・ 認証文を付した,登録した「法人の実質的支配者情報一覧」の写し(証明書)を交付する。

 今回の制度の対象とする実質的支配者の類型については,形式的審査が可能である,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第11条第2項第1号の実質的支配者のみとし,同項第2号及び第4号の実質的支配者は対象としない。

申請時の添付書面に関しては,二つの案を考えている。

【案1】

① 実質的支配者が法人の株式を直接保有している場合

・ 株主名簿の写し(本店に備え置かれた株主名簿の写しである旨の代表者の証明付き)及び

・ 公証人の発行する申告受理及び認証証明書(初年度の法人税確定申告までの間)又は法人税確定申告書別表二の明細書

② 実質的支配者が法人の株式を間接保有している場合

①の添付書面に加えて次の書面

(上位会社の協力が得られるとき)

・ 上位会社の株主名簿の写し(本店に備え置かれた株主名簿の写しである旨の代表者の証明付き)及び・ 上位会社の申告受理及び認証証明書(初年度の法人税確定申告までの間)又は法人税確定申告書別表二の明細書(上位会社の協力が得られないとき)

・ 株主名簿記載事項を記載した書面

①②の場合共通

・ 実質的支配者本人の実在性・本人特定事項を証する書面(免許証の写し・在留カードの写し等)

【案2】

① 実質的支配者が法人の株式を直接保有している場合

・ 株主名簿の写し(本店に備え置かれた株主名簿の写しである旨の第三者(株主名簿管理人,弁護士等)の証明付き)

② 実質的支配者が法人の株式を間接保有している場合

①の添付書面に加えて次の書面

(上位会社の協力が得られるとき)

・ 上位会社の株主名簿の写し(本店に備え置かれた株主名簿の写しである旨の第三者(株主名簿管理人,弁護士等)の証明付き)

(上位会社の協力が得られないとき)

・ 株主名簿記載事項を記載した書面

①②の場合共通

・ 実質的支配者本人の実在性・本人特定事項を証する書面(免許証の写し・在留カードの写し等)

実質的支配者情報の真実性確保の仕組みについては,次のとおり。

・ 添付書面により真実性を確保

― 虚偽記載には過料の制裁が科される株主名簿の提出を求める。

― 実質的支配者の実在性担保等の観点から実質的支配者の身分証明書の写しの提出を求める。

― 間接保有の場合において,上位会社の協力が得られないときは,株主名簿記載事項を記載した書面の提出を求める。

・ 書面審査により実質的支配者の認定が可能な類型を制度の対象とすることにより真実性を確保

今回の制度については,商業登記規則に規定を設けることを想定している。

飽くまでも任意の制度とすることを想定しており,会社法等の実体法の改正は想定していな。

また,法人の実質的支配者情報証明制度(仮称)は,商業登記制度とリンクさせることを考えている。「法人の実質的支配者情報一覧」が保管されている場合には,その旨を登記簿に記録する(希望する場合のみとするか否かは要検討)ことを考えている。

〇岩原座長 自由に御議論いただきたい。

〇加藤委員 実質的支配者情報証明書の交付のフローに関して,申請の際に,法人が特定の者が実質的支配者であることを証明してほしいという申請をするという理解でよろしいか。それとも,登記所が自分で株主名簿や確定申告書などを見て,誰が実質的支配者を探すというものか。

〇篠原課長 申告に基づいて,その申告された内容を添付書面で確認をいたしまして,それが正しい,整合性があるということであれば,その申告された内容に基づいたものを証明書として申請された方にお渡しするフローを考えている。

〇篠原課長 虚偽申告に関する制裁は,制度の信頼性向上に向けて重要な論点かなと考えている。仮に,登記所を経由して裁判所に過料の発動を促すというような制度を想定すると,例えば,金融機関等において出された証明書に何らか不審な点があるというような形で法務局にお知らせいただくような,金融機関において,この過料発動のプロセスのトリガーを引いていただけるというようなことというのは可能か。

〇阿部委員 加盟行のヒアリングをした上で回答した方が正確だと思うので,現時点では回答は保留させていただきたい。

〇角田委員 過料の事件というのはどれくらいあるのか。

〇篠原課長 現在は,株主名簿の虚偽記載に関しての過料の通知を登記所から裁判所にするという実務はない。多いのは,役員の変更の登記がされない,あるいは役員の選任を怠ったという事実が登記所において把握された場合に,裁判所に過料の通知を行っているというのが実務の現状である。過料通知の件数は相当数ある。

〇加藤委員 株主名簿の過料のトリガーを銀行からの情報提供で引いてもらうという話であるが,銀行の方で法務局が発行した証明書を見て,その証明書を見たにもかかわらず,銀行の方でまたチェックしなければいけないというようなことになると,二度手間になるような気がする。むしろ,この制度の対象になるかどうかを問わず,銀行の窓口などで,BO関係で株主名簿の記載に疑いが生じた場合には,それを法務局の方に通知するような,何かそういった仕組みをお考えなのかなという気がした。

〇竹下室長 商業登記規則第118条の過料の事件の通知については,登記官が職務上知ったときに管轄地方裁判所に通知するということになっており,世の中の株主名簿の虚偽記載について,登記所がまとめてそれを引き受けて通知するというようなことにはなっていないというのが前提である。

その上で,銀行が証明書を受け取ったときには,法務局の証明書ということでそのまま受け入れるのかと思うが,その後も継続的に顧客と取引が続く中で,実態と違うということを銀行が把握する可能性もあるのではないか。その際に,銀行から登記所に資料を提供いただくといった形で,登記所が裁判所に通知するきっかけを作っていただくことが可能なのかどうかという問題意識である。

〇岩原座長 実際には,正にマネーロンダリングが問題になって,証明書を出してもらっていたけれども,それが虚偽記載だったということが金融庁の方から問題にされて,そういうときには,もう裁判所に過料を科してもらって示しをつけざるを得ないというような事態になったときに過料が科されるのではないか。

〇竹下室長 座長御指摘のとおりであり,登記所には外に出て実質的な調査をするという権限がないので,登記所は,金融庁や銀行において調査報告書みたいなものを作っていただければ,それを受けて裁判所に通知することが可能であるというところである。

〇岩原座長 私も,登記所が自主的に動くということは余りなくて,実際には金融庁や銀行から問題にされて,虚偽記載だということになったとき,制度の示しをつけるために過料を科さざるを得ないということになるのではないかという気がする。

〇竹下室長 座長御指摘のとおり,示しをつけるために,銀行等に動いていただければ,それを受けて登記所も動くことができるということかと思う。

〇内藤委員 制度の対象については,定款認証の場面で,現在,株式会社以外にも一般社団法人と一般財団法人の申告が求められている。また,合同会社の最近における設立件数は,新設法人の20パーセントを超えるという状況にある。こういった状況に鑑みると,制度の対象は株式会社以外にも拡大する必要があるのではないかと考えられる。

また,1点確認であるが,実質的支配者情報証明書のイメージであるが,現在公証人が発行している申告受理及び認証証明書については,公証人の一枚ものの証明書の次に申告書のコピー,それから実質的支配者該当性の根拠資料のコピーを何点か,これをとじ合わせるような形で一体としての証明書という形になっているが,今回の実質的所有者情報証明書もそのようなイメージでよいか。

〇篠原課長 制度の対象とする法人については,広く考えることについては将来的な課題と認識しており,法務局のマンパワー等の問題もあるので,最初は株式会社,特例有限会社に限って行い,様子を見てというような方向で考えていきたいと思っている。

 証明書の様式等については,今後,具体的な制度設計をする中で,公証人が発行している申告受理及び認証証明書も参考にし,そういったものを踏まえて今後考えていきたい。

〇阿部委員 実質的支配者情報証明書は,法務局が添付書面を確認して証明書を出すというものであるから,銀行取引における実質的支配者の確認の手続では,信頼に足る証跡として,非常に有益なものであるという前提になる。その上で,銀行取引では,その証明書の内容が実は真実ではないというような場面は基本的に想定していない。

〇角田委員 今回の制度では,添付書面に関して,案1と案2があるところ,案1は,現在の実質的支配者確認の実務を踏まえたものであると伺っているが,

現在の実務にはどのような問題があるのか。

〇阿部委員 実際には,確定申告の別表二の明細書等についても,お客さまからすぐに提出していただけるケースとそうではないケースもあり一様ではないようである。現在の実務が案1で全てうまくやることができているという前提でないことは御理解いただきたい。お客さまにとって負担のある手続は避けたいと考える。

 その上で,案1と案2について,銀行界でどちらかという議論はまだしていないが,必要な添付書面というのは,正確性が担保できるものであると同時に,制度として実行できるものでなければならない。そういう意味では,案1は現行実務をベースとしているが,先ほどのとおり現在の実務の状況を踏まえても,十分に円滑にやっていけるかという観点では議論があると考えている。

〇角田委員 協力を得られるかが問題なのか,信頼性が問題なのか。

〇阿部委員 信頼性の問題もあるが,手続としてお客様から円滑に添付書類を提出いただけるのかという実行性について非常に問題意識が高い。

〇岩原座長 添付書面の点に関して,案2の第三者による証明というのは,具体的に弁護士等を一例として考えているようであるが,実際,うまく機能するのか。弁護士はどうやってこれを証明するのか。

〇竹下室長 現段階で具体的なイメージがあるわけではないが,例えば,一定の書式などを決めて第三者に審査をしていただき,審査の費用は顧客の方に負担いただき,第三者には,一定の専門性を有し,精通している専門職になっていただくというようなスキームを創設することや,公証人の宣誓認証の制度を利用することなどが考えられる。もし,無料で行うということになると,別の公的機関が審査を行うことができるかという議論になるか。

〇岩原座長 その場合,第三者の弁護士等が証明するのは,単に本店に備え置かれた株主名簿の写しであるということだけなのか。それ以上に,株主名簿の真正等を証明するわけではないのか。

〇竹下室長 今回の案では,本店に備え付けたことのみが証明の対象になっている。ただ,本店に備え付けたことだけを証明して,信頼性がどこまで上がるのかといった議論が出てくるかと思うし,そこまでやるのであれば,実体的な誰が株主かということについても証明してもらうべきではないかという議論も,当然出てくるのかとは思っている。

〇岩原座長 そうであろう。弁護士がどうやってそれを確認するのかということになるであろう。

〇岩原座長 三つ目のテーマである,想定される証明書の通数,集積したデータの管理・活用等長期的な課題について,事務局から説明いただきたい。

〇竹下室長 法務局で保管することになる実質的支配者情報へのアクセスについては次のとお考えている。

・ 基本的に,当該法人が実質的支配者情報証明書を取得し,必要な機関に提出することを想定

・ 例外的に,捜査機関や裁判所からの法令に基づく照会,嘱託があった場合には実質的支配者情報を直接提供

・ 将来的な課題として考えられる事項

- 他の機関との連携

- オンラインによる実質的支配者情報の管理

 施策の実施体制等に関して,実施庁は,法務局の商業登記所(84箇所)を想定している。想定される申請数に関しては,令和元年12月末現在の株式会社・特例有限会社数が約345万5000社であることや,これらの会社が数年(2~3年)に1回利用することが想定され得ること等を基に考えていくことになる。なお,平成30年の株式会社・特例有限会社の登記事件数は,約116万8000件である。施策実施の見通しに関しては,実質的支配者情報証明制度(仮称)の開始は令和3年度中を目途とし,制度開始までに,関係機関との調整,省令改正,体制整備,システム開発等が必要となる。さらに,長期的な課題としては,他機関との連携,オンラインによる情報の管理等が考えられる。

〇岩原座長 自由に御議論いただきたい。

〇内藤委員 申請件数に関しては,大多数の中小企業においては,社長イコール実質的支配者であり,株主名簿を見れば実質的支配者が一見明らかであるケースが恐らく8割から9割はあるかと思う。そういった事案について,金融機関が株主名簿で足りると判断するのか,新しい証明制度を要求するのかといったところによっても,証明書発行の通数というのは大きく変わってくるのではないかと思う。

〇加藤委員 金融機関が実質的支配者を確認する中で,ほとんどの事案において,直接又は間接に25パーセントを超える議決権を保有する者を実質的支配者と認定しているのか。

〇阿部委員 今回の証明書を活用し得る場面としては,一つは新規の取引を始める場面である。もう一つは,継続的顧客管理の中で,リスクベースアプローチに基づき,ハイリスク先について証明書の提出を求める場面が考えられる。ローリスク先など,どこまで求めるかは運用の問題だと思う。

〇岩原座長 要するに,今でも,金融機関が取引をするときには株主名簿などは提出してもらっているが,それにとどまらず法務局,登記所の証明書を添付するという形で,より信頼性を高める必要がどれほどあるのかということか。それは,金融庁あるいは FATF の関係で,より信頼性を高めるためにこの証明書が要求されることになるかということにかかっているのではないか。実務的な感覚としてはいかがか。

〇阿部委員 座長御指摘のとおり,今回の証明書が信頼に足る証跡としてどの

ように位置づけられるかという問題である。

〇岩原座長 今回の制度に関して,実質的支配者情報について,証明書を出すというだけではなくて,登記事項,登記の付記事項にするということの意味は,具体的にどういうところにあるのか。

〇篠原課長 今回は,登記の付記事項という形を考えている。登記事項という形になると,法律によらざるを得ないということになるので,なかなか難しいところがある。付記事項というような形で,この会社については今回の制度の申請があったというようなことを登記事項証明書で明らかにするということであれば,何とかなるのではなかろうかという見通しである。

 登記事項証明書にそういう付記事項が掲げられると,当該会社については信頼性のおける会社である,取引においても安心できると受け止められることが間接的な効果として期待できるのではなかろうかと認識している。

〇岩原座長 事実上の信頼性を期待してのことだということか。

〇篠原商事課長 付記事項につきましては,そういうことかと思っている。

〇篠原商事課長 金融機関からみて,実質的支配者情報について,最新の情報を法務局で保有しておけば足りるのか,あるいは一定の過去の情報も利用される場面が想定されるのか。

〇阿部委員 まず法務局の集める実質的支配者情報が最新の情報であるということは,大前提となる。その上で,そこに至る過程の情報の取扱いをどうするかは,加盟行の意見を聞いてみないと分からない。

加工

第2回 商業登記所における法人の実質的支配者情報の把握促進に関する研究

https://www.moj.go.jp/content/001322679.pdf

 議事概要

1.日時 令和2年5月29日(金)13:00~15:00

2.開催方法 ウェブ会議により実施

3.出席者(有識者)

座長 岩原紳作 委員 阿部耕一 委員 片山 達 委員 加藤貴仁 委員 角田美穂子 委員 内藤 卓

(法務省)商事課長 篠原辰夫 官房参事官 竹林俊憲 民事局付 福永 宏

民事局付兼登記所適正配置対策室長 竹下 慶

(オブザーバー)財務省国際局国際機構課兼調査課資金移転対策室外国為替管理官 野田恒平

金融庁総合政策局マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画室長 尾崎 寛

日本公証人連合会常務理事 北原一夫

4.議事概要(次のとおり)

議事概要

○篠原商事課長 第2回研究会を開催する。

○岩原座長 本日の研究会では,①商業登記所において実質的支配者情報に関する証明書を発行する制度の必要性及び証明制度の対象となる範囲,②申告された法人の実質的支配者情報の正確性確保の方法及び証明書の書式,③顧客の理解促進,想定される証明書の通数,集積したデータの管理・活用等長期的な課題の三つに分けて御議論いただきたい。

 本日の議論に入る前に,前回の研究会においてシステムの不具合により御発言を頂けなかった部分について,片山委員から御発言いただきたい。

○片山委員 前回発言しようと考えていたポイントについて4点ほど,今日の議題とも関係するが,コメントをさせていただきたい。

 まず第1点目は,前回加藤委員から問題提起があった点である。今回の制度が通常取引とハイリスク取引のどちらをメインと考えているのかという御質問についてである。この点については,法務省民事局の案は,どちらかというとハイリスク取引というよりは通常取引を想定した案であると考えている。

 その理由としては,今回の提案は実質的支配者の該当事項の中で形式審査可能な要件のみを対象としており,ハイリスク取引ではそれだけでは足りない実質的判断が求められることによる。

 そうした場合に,この制度の導入により登記所で行うことが,現在銀行で行っている実務と変わらないのであれば,余り意味がないという見方もあり得る。しかし,現在の実際の銀行実務では,マネーローンダリングのリスクがほとんど存在しないような顧客が恐らく数の上ではかなり多いと思われ,そういった事案についてもルールベースで一律に審査を行っている結果,かなりコンプライアンス疲れみたいな状況が生じていると聞くこともある。その意味で,今銀行の現場で行っている通常取引の審査を登記所が肩代わりしていただけるということであれば,現場の負担をかなり軽減できるのではないかと期待している。

 また,事業者の側から見ても,事業者は複数の金融機関と取引をする場合もあるが,それぞれの金融機関からいろいろな審査資料を出せということを言われると,それなりに事業者側の負担になるのではないかと思っている。それがもし登記所に一度審査資料を出せば証明書を発行していただけるということであれば,事業者側から見ても金融機関にいろいろな資料を提出する手間が省けることになり,登記所がハブになってこの実質的支配者の審査に関するコストを社会全体として低減するということが実際できるのではないかと思った。

 第2点目は,実質的支配者情報の正確性についてである。今回の提案における登記所に提出する添付書面の範囲が,現在銀行が顧客から提出を受けている資料と異ならないのであれば,登記所の証明書によって実質的支配者に関する判断の正確性が著しく増大するということは考えにくいかとも思う。他方で,これも金融機関の現場を想像すると,今回の案となっている添付書面のようなものを見て,判断できる方が全国の金融機関の現場にどのぐらいいらっしゃるのかと。忙しい実務の中でこういったことを判断する手間に比べると,登記所は皆様専門性を有する方々であるので,この方々に審査をしていただくということで信頼性が担保されるのではないかと考えた。

 それから,3番目のポイントは,申請時の添付書面に関して,今日の議論の中でも出てくると思うが,上位会社の協力が得られない場合にどうするかという議論についてである。海外では協力しない上位会社の株主の権利をむしろ制限するといったような法制があると聞いているが,今回の取組は,法律の改正ではなく規則改正で対応できる範囲で取組を行うという前提であるので,これは今回の検討の範囲を超えるのではないかと思った。

 最後のポイントとして,全銀協さんの説明の中で,顧客の協力を得られない場合について言及があったが,同族経営で複雑な株主構成を取っており,実質的な支配者が分かりにくい企業というのは現実にあると思う。そのような,同族企業の場合は,サラリーマン経営者がいるとしても,その方には実質的な権限はなく,実質的権限を持つ人の情報をサラリーマン経営者に開示しろといってもその人が板挟みになるだけで,非常に無理があるように思う。今回の新制度が実施されるという仮定の下で,法人とか信託の透明性というのが社会の要請であるということの認識が広まると,そういう方々も実質的な権限を持つ人との板挟みに遭わなくて,これが社会の要請であるということを説明しやすくなるという点は期待したいと考えている。

○岩原座長 それでは,本日の議題について,まず一つ目の,商業登記所において実質的支配者情報に関する証明書を発行する制度の必要性及び対象となる範囲について御議論いただきたい。

議論を始める前に,事務当局から説明いただきたい。

○竹下室長 前回の説明から追加,修正する事項を説明させていただく。まず,法人の実質的支配者把握に関するFATFの要請について,関連するFATFの勧告が,勧告10「顧客管理」(金融機関による実質的支配者の確認・照合等)及び勧告24「法人の透明性及び真の受益者」(権限ある当局が適時に正確かつ時宜を得た情報を入手)であり,また,2019年10月公表のFATFのベストプラクティスでは,複数の情報を組み合わせて判断する手法が推奨されていることを補足させていただく。

 続いて,前回の角田委員からの御指摘を踏まえ,海外法制について追加の調査をした。その結果,2018年に新たなEU指令が出ており,これを踏まえて各国において制度改正が行われていたことが分かった。内容は,アクセス権者の拡大及び実質的支配者の確認義務者に自己の情報と登録情報との齟齬を発見した場合に登録機関への報告義務を課すことであり,本年1月までに各国において履行されている。実質的支配者の確認義務者というのは,日本で言えば特定事業者であり,金融機関のような主体である。

 さらに,金融機関による法人の実質的支配者の確認実務に関して,確認の頻度については,顧客との取引開始時,犯罪による収益の移転防止に関する法律第4条第2項で定める高リスク取引を行う際のみならず,リスクに応じた頻度やリスクに影響を与える事象が発生した際に行うことを補足させていただきたい。

 最後に,今回の制度の利用に関して,実質的支配者情報証明書(仮称)は,商業・法人登記分野での専門性を有する登記官が,株主名簿等の書面を適正,迅速に審査して発行するものであり,発行された証明書は,各法人が任意に利用するとともに,金融機関等が継続的顧客管理の中でリスク等の個々の事情に応じて利用することが想定されることを補足させていただきたい。

 なお,今回の制度の対象については,株式会社,特定有限会社という案にさせていただいているが,資本多数決法人以外の法人,すなわち合同会社や一般社団法人等の法人については,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則上も判断枠組みが異なっており,第一段階から実質的な審査が必要となっている。現在の金融機関の実務においてそういった資本多数決法人以外の法人について,定型的な書面による実質的支配者の確認手法が確立しているのかという辺りについても御議論いただきたい。

○岩原座長 それでは,どなたからでも結構ですので,自由に御発言いただきたい。

○阿部委員 今法務省から,EUの指令により欧州の制度では,自己情報と登録情報の齟齬を発見した場合には,金融機関に登録機関への報告義務があるとの説明があったが,その前提として,欧州では登録された情報に何人もアクセスできるという制度があり,それとの兼ね合いで,この報告義務の手続につながっていると思われる。実質的支配者の登録情報のアクセスについては,前回の研究会でも議論したが,現時点での実現は法令の整備の問題もあり,難しいということとは理解をしている。ただ,世界的な趨勢をみても,情報へアクセスできる者は限定されていないことから,何人とはいかないとしても,特定事業者がアクセスできる制度的な手当て,システムというのを御検討いただければと考えている。

○角田委員 先ほどの片山委員のコメント,今の阿部委員のコメントを伺って感じたところであるが,今回の制度の必要性についてもう少し深堀りする必要があるのではないか。制度導入の必要性を論証するに当たっては,やはり将来的な方向性を示さないと,なかなか第3パートで議論する顧客の理解促進や関係者の協力というものは得られないのではないかという感想を持っている。

 片山委員の御意見については,重要な点が二つほどあるように思った。一つは,コンプラ疲れであるとか,登記所がハブとなって実質的支配者の審査を行うことで社会コストが全体として低減するという点。これは,正に今回我が国もレジストリアプローチを導入してFATFのベストプラクティスで推奨されている方向に踏み出すということであり,また,諸外国ではBO把握は自動化,AIの導入によって精度を高めているという展開もみられる。将来的な方向性ではあるが,そのような方向を志向した第一歩の制度導入であるという論証もあり得るのではないか。

 それから,登記所という制度を活用し,登記官というプロフェッショナルが関わることで信頼性が担保されるというファクターも制度設計においては非常に重要ではないかと考えている。また,長期的な視野を持ちながらデータベースを構築することを考えているようだが,将来的なAI技術の開発に向けて使いやすいデータベースというものを考えてもよいのではないかという感想を持った。

○尾崎室長 角田委員から御指摘があった将来的な方向性であるが,マネーローンダリング・テロ資金供与対策に関しては,国際的な政府間の協調の枠組みであり,ルール・セッターであるFATFの勧告やFATFのガイドライン等に従って加盟各国がその目指すところに向けて体制整備をしているという状況の中で,FATFが2019年10月に出した実質的支配者に関するベストプラクティス集を参考に将来的な方向性を検討するのがよいのではないかと考えている。

 このFATFの実質支配者に関するベストプラクティス集では,確認手法として,Registry Approach,Company Approach,Existing InformationApproach といった三つのアプローチを組み合わせて,できるだけ情報の精度と確度,精度というのはその新しいかどうかということ,確度というのは確実であるかどうかということ,を高めていくという手法(Multi-prongedApproach)がより良い手法であると述べられている。

なぜ,それらの手法の組合せが必要かというと,実質的支配者については,

 絶対的な確証を持った情報はないという実態があり,各国とも,実質的支配者の認証をすること自体で苦労しているという実態を踏まえて,ベストプラクティスとしてもその三つの組合せが重要であるということが現在示されているのであり,それが将来的な目指すところであると思う。

 そこで,こういった将来的な方向性を念頭に置き,できる施策に取り組んでいくという観点から,法務省が取り組んでいる今回の措置というのは,Registry Approach の確度と精度を高めるという点で,前向きで,かつFATFから見てもポジティブな施策であると思う。法務省は,既に法人設立時に公証人が株主の認証を行うという制度を導入しているが,この取組に関してはFATFのベストプラクティス集における各国の取組の中で,日本の取組として評価される取組であると取り上げられている。今回,設立時のみならず継続的に認証を行うということであるので,これは意味のあることであると思う。

 ここは冒頭片山委員が述べられたとおり,金融機関の負担軽減,社会全体のコストの低下ということにもつながってくると考えているので,歓迎したい取組と考えている。

○阿部委員 今,尾崎室長の説明にあったように,金融機関の実質的支配者の確認というのは,レジストリアプローチのほか多面的,総合的に行っている。その中で今回の実質的支配者情報証明制度が確立することで,多面的なアプローチの中の一つのアプローチの信頼性が高まり,実質的支配者の確認事務の信頼性向上につながることを期待している。

○岩原座長 ということは,この試みをやっていけばFATFからも評価されるのではないかという期待があるということだと思うが。財務省の方からそういう感触はいかがか。

○野田管理官 今第4次審査が正に進行している最中であり,実は新型肺炎の影響でFATFのプロセス自体が先延ばしになってしまい,本当であれば6月に決着がつく予定であったものが秋以降になっている中であるが,その4次審査との関係では今もってFATFの審査団とのやり取りが続いている。

 そういう意味では審査の内容というのは現在進行形であり,かつ世間の耳目を非常に集めているところであるので,なかなか憶測を呼ぶようなことも申し上げづらいということは,御理解いただきたい。

 手続的に見ると,昨年の秋にオンサイト審査として,FATFの審査団が日本にやってきて,我々の方から日本の制度の説明をして,民間企業のヒアリングも彼らが行い,そこでの感触を得てまたレポートをまとめて,その後に評価ということである。飽くまで制度設計というか建前の手続論としてはそこのオンサイトが終わった時点で提出した資料及び説明でもって評価が決まるよということであり,その後にいろいろな追加の制度や実務の改善を行ったとしても,そこは評価には影響しないというのが,手続の在り方である。とは言いつつも,他方で先ほど尾崎室長からもあったように,FATFの審査は多国間の協力によるものであり,何かFATFというオーソリティを持った組織が加盟国から独立のものとして存在していくわけではなく,飽くまでピアプレッシャーと言われる相互審査の枠組みで行われるものであるので,最終的には加盟国が集う場において日本の審査結果について審査団からまず報告がなされ,それに対して各国が意見を述べ,それから,ほかの国の評価なども踏まえて,最終的な評価が議論されるということである。

 このように,極めて有機的でダイナミックなプロセスであるため,今回法務省が取り組まれているが,ほかの省庁もいろいろ今回の審査の感触などを経て一部動き出していただいているところもあり,そういう取組というのは決して無駄にはならないと思っている。

 あとは,評価が出てそれで終わりというわけではなくて,極端な話一番よい評価を得たとしても,フォローアップのプロセスというのがずっと続くわけであり,その中で制度の改善というのは継続的に行われていくということである。その意味においても,これを一過性の試験のように捉えて,そこで次まで何もしなくていいということでは決してない。今のような継続的な取組というのを行っていただくということが極めてFATFとの関係でも有意義であると考えている。

○篠原商事課長 様々な御意見をいただいた。この制度が導入され,それでもうおしまいというわけでは当然ない。将来を見越して課題はいろいろあると思う。阿部委員の述べられたアクセス権者拡大の関係であるとか,あるいは片山委員が外国法制に関して言及された強い規制の世界であるとか,そういった様々なゴールがまだあるわけである。今回は,取りあえずこういった制度を開始し,社会に働き掛けて,それにより,そういう規制を受け入れるような土壌がもしできれば,その後,法律等の手当てをしていくというような歩みになっていくのではないかと思っている。そういった意味で,今回実施する制度にとらわれずに,将来的な課題までお示しいただけると非常に参考になると思っている。

○内藤委員 最初の会議のときに阿部委員が,最初の取引のときよりも2回目以降の確認の際にこの証明書が有意義ではないかと述べていたように思う。犯罪による収益の移転防止に関する法律にも最初の取引時に確認した本人特定事項に変更があったかなかったかについての最新の情報を保つような措置を取れというような条文があり,定期的にこういった証明書の交付を受けるということがあり得るかと思う。

 ただ,今回の制度では,法務局に保管されたこの実質的支配者に関する情報について,5年,10年と内容に変更がない場合にはその保管したままのものについて3年,5年後,10年後と同じ内容の証明書の発行を受けるようなことになるのか。また,それを特定事業者である金融機関その他の事業者がそれを受け入れるようなことでよいのかという問題意識もある。

○篠原商事課長 金融機関がどのようなニーズに基づいて証明書を活用するのかによると思っている。取引時点あるいは調査時点における最新の情報を知りたいということであれば,過去の情報を参照するという必要性というのは少なくなってくるかと考えているが,阿部委員の方がより適切なコメントをしていただけるのではと思うが,いかがか。

○阿部委員 銀行では,取引の開始時における本人確認時において実質的支配者の確認を行う。前回の研究会で申し上げたのは,取引開始後において,金融庁のマネロンガイドラインでいう「継続的な顧客管理」を行うため,各銀行が顧客のリスクに応じた頻度,影響を与える事象が発生した際に実質的支配者の確認として,今回の実質的支配者情報証明書を活用することが重要になるということである。実質的支配者情報証明書は,取得したときに,前回の取引開始時における実質的支配者から,現時点における実質的支配者にきちんと更新され,それが証明されているということで利用するのであれば,非常に有意義であると思う。

 また,証明書を何年ごとに確認するのかという点については,個別銀行のマネロン・テロ資金供与対策のやり方,リスクの評価の仕方も違うので,そこはいろいろなバリエーションがあると考えている。

○尾崎室長 継続的顧客管理がなぜ重要かということについて,追加で説明させていただく。個人も法人も,銀行口座の名義人が,なりすましではないか,乗っ取られていないか,ということを継続的に確認する必要がある。具体的には,個人の場合は当該個人,法人の場合は実施的支配者が,取引開始後において,取引を開始したときに確認した本人や実質的支配者等から変更がないか,反社会的勢力等が乗っ取っていないかということを確認する必要がある。そのため,取引開始時のみならず,定期的なチェックが必要となり,また,会社の合併や買収等,形態が変わったというようなときは,その変化を捉えて,どういう変化が起き,実質的支配者が変更されていないのか,その者に問題があるのかないのかということを確認することが必要になるのである。

○竹下室長 阿部委員に質問であるが,もし可能であれば,資本多数決法人以外の法人の実質的支配者の確認の実務について,何か今現在,定型的な書類による確認の手法は確立しているのか,それとも,資本多数決法人以外の法人の確認については,そういった手法は確立していないというような状況なのか,この辺りについて御発言をお願いしたい。

○阿部委員 「定型的」という言葉の意味にもよるが,例えば,合名会社や合同会社などの実質的支配者の確認に関しては,その審査基準として,25%を超える配当・分配を受ける権利を有する者の確認というところから入る。これは会社の貸借対照表や損益計算書を見ながら確認することになる。又は,出資,融資等により,事業活動に支配的な影響力を有する者の確認を行う。ここも,融資額なり出資額なりを見ればいいので,書面による確認が可能ではある。これらの審査だけでは実質的支配者の確認ができない場合には,次のステップとして,法人を代表して業務を執行する者の確認を行うことになる。

 このようにみると,合同会社等においても一定の形式的な書面による審査は可能であると思う。ただし,株式会社の場合の株主名簿によるチェックと比べると,実質的な審査の要素が若干多いと思われる。

 全銀協としては,実質的支配者情報証明書が,限られた対象だけではなく,将来的な課題として,資本多数決法人以外の法人についても対象を広げて,実質的審査まで行っていただくことが望ましいと考える。

○篠原商事課長 今回の制度については,株式会社と特例有限会社を対象にして審査を登記所において行うということを考えている。今回は,形式的審査によらざるを得ないということで,資本多数決法人を対象にし,株式会社,特例有限会社に限定しているところである。今,阿部委員から御紹介があった合同会社については,定型的ではないが,書面で審査するという意味での形式的審査には何とか耐え得るのではないかという御発言,御趣旨と受け止めたが,やはり多数の申請会社について,一律に処理を迅速にやっていくというような事務の形態を考えると,添付書類として決められたものについて,それを形式的に審査するというやり方でないと,なかなか事務が回らないのかなというところが心配である。そういった意味で,実質的審査の必要な部分については,登記所以外のアプローチによって御判断を頂いて,制度全体としてマネロンの防止といったものを図っていければよいのかなという認識でいるところである。

○岩原座長 御趣旨はよく分かるが,一方で,合同会社は最近かなり数も増えているし,このままでいいのかという問題はやはりあるのではないか。

○篠原商事課長 そのような問題意識は,当然,共有させていただいている。事務のやり方,あるいは,この実績等を踏まえて,是非検討していくテーマだろうと思っている。

○岩原座長 次に,二つ目の論点,申告された法人の実質的支配者情報の正確性確保の方法及び証明書の書式について,御議論いただきたい。

まず,事務当局から説明いただきたい。

○福永局付 私の説明も前回から修正等がある事項について説明する。

 まず,申請時の添付書面について,前回は,株主名簿の写しと申告受理及び認証証明書又は法人税確定申告書別表二の明細書の提出を求める案1と,第三者の証明付きの株主名簿の提出を求める案2という形で二つの案を提示していたが,前回の議論を踏まえて,案2については,実効性や実現可能性というところに問題があるのではないかと考え,他方で,案1の方は,現行ベースのシステムにも近いといった御発言もあり,今回は,案1に絞るという案を提示することとしたい。

 また,案1の中についても,更に修正の提案をすることとしたい。それは,間接保有型についてであり,前回の案では,上位会社の協力が得られない場合に,株主名簿記載事項を記載した書面の提出を求めるという提案をしていた。

 すなわち,いわゆる間接保有型で,上位会社の協力が得られないで,上位会社の株主名簿の写しや法人税の確定申告書別表等が添付できない場合に,この株主名簿記載事項を記載した書面を添付書面として添付してはどうかという提案をしていた。

 しかし,委員の方々から御指摘を頂き,間接保有型の場合に上位会社の協力が得られない場合には,上位会社を実質的支配者が支配しているという状況にあることを考えると,実質的支配者が上位会社に対してこういった株主名簿記載事項を記載した書面を請求することも考え難いと思われ,これをあえて記載するべきではないであろうという考えから,今回の提案には含めないこととした。

 代わりに,上位会社や実質的支配者から協力が得られずに,上位会社の株主名簿の写しや法人税の確定申告書別表等の添付が困難な場合に,どうするかという問題提起をした。

 また,添付書面について様々なものが想定されるが,そういったものについて類型化が可能であるかという論点もあるかと考えている。

 さらに,実質的支配者の実在性等を証する書面として,実質的支配者の身分証明書,免許証の写し等の添付を考えているが,実質的支配者の協力が得られずに,写真付きの本人確認書類の添付するのが困難な場合に,どうするかといった論点もあるかと考えている。

 真実性確保の仕組みに関する論点としては,前回議論になった,過料の制裁が考えられるというところであるが,実際にどうやって過料を科すのかというところが論点である。法人が株主名簿に虚偽の記載をして,虚偽のBO情報を申告した場合に,誰が,前回の議論の言葉を用いれば,トリガーを引くのかといったところが,論点としてあろうかと考えている。

 最後に法人の実質的支配者情報一覧,すなわち申請人が提出することとなる実質的支配者情報の申告書の書式について説明したい。

 この書式については,現在,公証人が定款認証をする際に嘱託人に実質的支配者の申告を求めており,その申告書の書式をたたき台にして作成したものになっている。ただし,制度が異なるので,その点で修正を加えている。

 概要を順に説明すると,実質的支配者というのは株式の譲渡等により日々替わり得るものであるので,いつの時点での実質的支配者かということを明らかにするという意味で,冒頭で,「以下の情報は,〇年〇月〇日時点の実質的支配者情報である」との記載をするものとしている。

 次に,実質的支配者の該当事由を記載することとしており,今回の制度では,50%超か25%超という二つの類型のいずれかを証明することになるので,そのどちらかを記載するものとしている。

 それから,実質的支配者の本人特定事項ということで,住居,氏名,国籍,性別等を記載することにしている。また,議決権割合を記載する際に,間接保有型であるかどうかについても記載することとしており,間接保有型であるということを申告した場合には,別紙に支配関係図を記載することを提案をした。銀行実務でも,支配関係図を記載させている場合もあると伺っており,そういったものに対応できるようにという趣旨である。

 さらに,実質的支配者の該当性の添付書面が何か,すなわちどういった書面で確認しているかを記載するものとしており,株主名簿等を記載することとなる。

 また,実質的支配者の本人確認書類についても,どういった書面で確認しているかを記載するものとしており,免許証,マイナンバーカード等を記載することとなる。

○岩原座長 それでは,どなたからでも,自由に御発言いただきたい。

○阿部委員 今の御説明いただいた申請時の添付書面に関して,間接保有と直接保有いずれの場合も,実質的支配者を証する書面の提出の協力を得られなかった場合にどうなるのか。現行の銀行実務では,ハイリスク先からの申告という方法の中での手続であるが,今回の制度では,添付書面の提出は必須となるのか。

 その上で,添付書面,例えば株主名簿や実質的支配者の実在性を証する免許証等の書類の提出が得られなかった場合には,法務局は実質的支配者情報証明書を発行しないという理解でよろしいか。

○竹下室長 法務局における一般的な証明書交付の手続の仕組みを考えると,法令で添付書面を定め,それが欠けている場合には当該申請は却下されるということになる。そこで,厳格に添付書面を定めれば,それがなければ証明書を出せないということになるし,逆に言えば,ある程度緩く添付書面の規定を定めておけば,それは証明書が出せるということになってくる。どこまで厳格に添付書面を求めるのか,実質的支配者該当性の確認と本人確認のそれぞれあるが,どこまで厳格に求めるべきなのかというのは,これはやはりFATFの評価や,金融庁から見てどれぐらい正確なものにすることによって,その信頼性が上がるのかという辺りのバランスかと思う。その辺りについて金融庁の方でも何かお考えなどあれば,お聞かせいただきたい。

○尾崎室長 先ほど,財務省の野田管理官からも説明があったが,FATFの対日相互審査の中で,ここが評価にどうつながるかというのは,明確には申し上げられないが,制度として実質的支配者の確認手段が増えるというのは,肯定的に評価されるであろう。また,制度として存在しているかという点と,その制度がしっかりと有効に機能しているかという点の両者がポイントになるので,有効に機能しているかという点に関して,実務の面で書式がどのようにFATFの評価に影響するかについては,正直に申し上げて,コメントしづらい。

 むしろ大事なのは,法務局にとっても金融機関等にとっても運用しやすい形で,過度に負担を掛けず,かつ,金融機関が利用している実態を我々がモニタリングするに当たってチェックしやすいという,利用者,法務局,事業者という関係者が,運用しやすいように,余り細かくなり過ぎないようにするというのは,一つの着眼点としてあり得ると思う。

 株式の保有形態については,これは重要な部分であるので,現在の案のとおり,申告書別紙の支配関係図などはあった方がよいと思う。

 結局,どこまで突き詰めれば完璧なものになるかというと,ここはなかなか難しいものがあり,これは,冒頭申し上げたとおりいろいろな情報を統合的に判断するしかないというものであり,その中でできるだけ確度が高いものを追求する中で,ここまでやればいいというのがなかなかないというものである。したがって,利便性ということ,煩雑になり過ぎない簡潔さということ,それから実質的に最低限のものが入っているということ,これらの三点を考慮すべきではないかというのが私のコメントである。

○内藤委員 現在,公証人が定款認証の場面で実質的支配者に関して申告を受けているが,公証人の場合は,ある意味,実質的支配者の根拠資料が分からない場合には,実質的審査を行った上で,最終的にはその新しく作る会社を代表して業務を執行する者を実質的支配者ということで申告を受けるという,ある意味で受け皿のようなものがあるが,今回の実質的支配者情報証明書の場合には,飽くまで形式的審査ということもあって,そのような受け皿が用意されてないので,根拠資料からぎりぎり実質的支配者を認定する,あるいは,できなかったらもう証明書が出せないという,どちらかということになっていくかと思う。そういった意味では,ある意味,使いにくい部分もあるのかなという感想を持っている。

○尾崎室長 添付書面の点については,実際の実務に即して,今後,継続検討をしていただく方がいいのかなと思う。というのは,証明書が出せないということが,金融機関にとってはすごくネガティブ情報に伝わって,それがお客様の評価に対して非常にネガティブになってしまうという可能性も考えられる。

 金融機関がいろいろな情報を総合的に判断するということで,「出せない=実質的支配者が確認できない」ととらわれないように,言ってみれば,ある程度幅を持った形の方がよいのではないか。

○岩原座長 他の論点でもいかがか。

○阿部委員 前回の研究会では,添付書面による真実性の確保ということで,添付書類の虚偽記載について,過料の制裁が科されるトリガーとして,銀行が証明書の内容をみて,不審事項を発見した場合に法務局に連絡をするという考え方が示されていた。

 この点については,全銀協で議論したが,銀行は,法務局が発効する実質的支配者情報証明書を信頼に足る証跡として利用するので,それについて虚偽があるかないかというチェックをするということは想定していない。また,申請の時点で銀行にはお客様の実質的支配者の内容を判断する情報もないので,銀行が証明書の内容の真偽を確認することはできず,銀行が法務局へ連絡する手続は困難との意見である。

○岩原座長 となると,実際上,過料のトリガーを引く人は誰になるのか。

○竹下室長 今の議論に関して,前回議論のあったトリガーを誰が引くかというところについて,通常,銀行の方ではトリガーを引くことはできないということであるが,ただ,事案によっては,例えば,社会の耳目を集めるような事案において,詐欺などいろいろな問題生じている中で,その過程において,例えば証明書を取得するために虚偽の株主名簿が提出されていたというような事実が明るみになってきたような事案においては,個別に銀行なり他の機関なりに協力していただいて,法務局にそういた資料が集まって,法務局から最終的には裁判所に通知するということもあり得ると思う。

 そこで,一般的な取決めとしては難しくても,事案によってはそういうことはあり得るところであり,そこまで否定されるものではないのかなと理解している。そういった意味では,この過料が発動する余地が全くないということではないのではないかと考えている次第である。

○岩原座長 過料を裁判所が科すというのは,実際には法務局からの連絡を受けてということになっているのか。

○竹下室長 過料の裁判は,法務局からの通知がなければできないということになっているわけではないが,実際上は何らかの契機がないと裁判所の職権での手続が始まらないと思う。今回の証明書を取得する過程で虚偽の株主名簿が提出された場合に関しても,裁判所にそういった通知をするきっかけがあるとすれば,恐らく今の実務を前提とすると法務局が一番考えられるのではないかなと思うが,ほかの選択肢も制度上できないということではないのではないかとは思う。

○岩原座長 他の点に関してでも,何か御意見はあるか。

○加藤委員 今回の制度における,添付書面として想定されている,実質的支配者本人の実在性,本人特定事項を証する書面というのは,現在の金融機関の実務では,徴収されていない書面という理解でよろしいか。

○阿部委員 現行の銀行実務では,ハイリスク取引で求められる場面はあると思うが,申告ベースの扱いであり,確実に提出されているわけではないと認識している。

○加藤委員 それは,本人の実在性を証明する公的な書類は,別に犯罪による収益の移転防止に関する法律上要求されているわけではないということか。それは,リスクに応じて要求するかどうかを金融機関側が判断すればよいという,そういう構造ということか。

○阿部委員 法令上のハイリスク先から申告を受ける建て付けの中で確認するというものであり,必須なものとして書面の提出を受ける手続にはなってはいない。

○加藤委員 そうすると,今後,実質的支配者情報証明書を利用する人たちのことを考えた場合に,これまでは実質的支配者本人の実在性の証明書とかを出さなくてよかった,出さなくても金融機関と取引できたような人も出さないと使えなくなるというわけか。

○竹下室長 もし厳格に求めるとすると,加藤委員の述べたように,その書面を提出できる者のみについて証明書を出すということになるので,今までの事件の一部のみが証明書交付の対象になるということになるし,また,先ほど金融庁から継続的に検討したらよいのではないかという提案があったが,これをもっと緩めていけば,その対象は広がっていき,現在の実務に近づいていくということで,最終的に,この本人確認の添付書類についてどういうふうに規定するのか,求めるのかについては,今後の検討判断によるのかなと思う。

○尾崎室長 ここは今後の検討課題で,今,竹下室長からもあったとおりだと思うが,現状でも,例えば実質支配者の本人特定事項を証明する確証を取るというような形で,私どもガイドラインには書いてあるが,ここはパブコメに対するコメントでも,一律にこの書類がなければ駄目だとは書いておらず,ある程度幅を持たせた形で,運用しやすい形にしている。というのは,これがないと,銀行で口座開設ができないというようなことをガイドラインで定めてしまうと,過度に金融取引から利用者を排除するとなってもいけないので,そこはある程度幅を持たせるということの観点の考慮も必要だということだと思う。

 そもそも,こういった証明書が出せなかったことをもって,口座が開けない,取引ができないとするのではなくて,金融機関側から見た場合のお客様のリスク評価をする際の材料として捉えるべき情報になると考える。例えば,実質支配者について口頭で説明はできるものの,確証となるエビデンスが出せない,という状況において,一律に取引謝絶をするのではなく,取引はするのだけれども,これはよく注意して取引を継続していく高リスク先として捉えなければいけないというリスクベース・アプローチの考え方を適用すべきであり,オール・オア・ナッシングではなく,リスクに応じた対応をしていくという考え方が重要であると考える。

○岩原座長 三つ目のテーマである,顧客の理解促進,想定される証明書の通数,集積したデータの管理・活用など,長期的な課題について御議論いただきたい。まず,事務当局から,説明いただきたい。

○竹下室長 前回の議論を踏まえ,今回新たに論点とする,顧客の理解促進について説明させていただきたい。

 まず,本制度を利用した法人について,金融機関以外の取引相手との関係でも当該法人の信頼性が向上するというメリットが考えられ,これにより顧客の制度利用に関する理解が進むと考えられる。制度を利用した法人については,「法人の実質的支配者情報一覧」が保管されている旨が登記簿に記録されるため,金融機関以外の取引相手からも,実質的支配者情報証明書を提出することができる透明性の高い法人であると認識され,信頼性が向上すると考えられる。

 次に,実質的支配者情報証明書が,我が国における実質的支配者把握の仕組み全体の中で適切に位置付けられることにより,顧客の理解が促進すると考えられ,この点については,また金融庁の御意見もお伺いしたいと思う。

 最後に,実質的支配者情報証明書の活用の際の顧客への適切な働き掛けにより顧客の理解が促進すると考えられる。顧客への適切な働き掛けというのは,金融機関,法務局,金融庁などが,総合的な取組として顧客の理解を促進していくという趣旨である。

○岩原座長 ただいま,金融庁の方の御見解を伺いたいということであったがいかがか。

○尾崎室長 顧客の理解促進というのは実は非常に重要な部分であり,私どももリスクベース・アプローチによるマネーローンダリング対策というのを行っているが,やはり利用者から見たとき,今まで聞かれていなかったのに,なぜ最近,銀行からこういう追加確認資料を求めるのか,実質的支配者の確認資料を求めるのかといった声があることも事実である。そこで,やはりここは利用者や国民の皆様の理解を求めるということを私どもとしてもやっていく必要があるので,実際,政府広報等も活用しながら,全銀協とも,日証協といった業界団体とも提携して,マネーローンダリングの取組に関して,なぜ金融機関,銀行等がこういうことをしているのかということを理解していただくということ,一般の国民の皆様に向けて行う広報ということをやっている。引き続きそういった中に今回の制度も入れていくということは一つあるのかなと思う。

 それから二つ目であるが,事業者,法人の顧客から見た場合のインセンティブについては,やはりこれは法務局で認証を取って,それを金融機関に出して,それによって実質支配者の説明をするということは,金融機関側からも情報が増えるということで歓迎されることだと思うので,金融機関側からお客様に対してしっかりと説明していくということが必要である。

 ただ,ここで私どもが1点注意しておきたいのは,今回のこの制度が将来導入されたとして,それだけをもってして,実質的支配者を法務局から認証をもらった,それが全てだと,これだけだと言われてしまうと,それはどうなのかなという点は留意する必要があると思う。というのは,正確性の担保については,冒頭申し上げたとおり,100%確かな確証というものは,ほかの国を見てもない。実務的の実効性の観点からは,それだけではなくて,やはり引き続き法人税申告の別表2であるとか,株主名簿であるとか,こういったものや,実際に今実務で使われている第三者のリサーチ会社のデータ,そういったものも活用しながら総合的に判断していくというところはしっかりと理解を進めていっていきたいと思っている。

○岩原座長 皆様からいかがか。

○阿部委員 今回の実質的支配者情報証明書制度について,実質的支配者の確認の信頼性向上の役割を果たすことを期待している。

 一方で,マネロン対策について,お客様の理解を十分にいただくことはなかなか難しいというのが現状である。日々,お客様からは,「私はマネロンに関係ないのに,なぜこのような書面を提出しなければならないのか」といった類の苦情相談が,全銀協,個別銀行の窓口に寄せられている。全銀協も従来,マネロン防止に係るお客様への周知啓蒙を,テレビCMや新聞広告など,いろいろと行っているが,十分ではなく,継続していきたいと思っている。今回の制度についても,官民一体となってお客様に対して丁寧に周知していくことが大切であり,お互いに協力していきたいと思っている。

 また,金融機関が,本制度についてお客様への説明,理解をすすめていく上では,金融庁のマネロンガイドラインにおいて,今回の実質的支配者情報証明書の位置付け等を含めて手当ていただけると,金融機関のお客様への説明もしやすくなるかと思うので検討いただきたい。

○岩原座長 尾崎室長から今の点についていかがか。

○尾崎室長 金融庁のマネロンガイドラインについては,2018年の2月,リスクベース・アプローチに基づく AML/CFT 管理のガイドラインということで作成・公表され,その後,2019年の4月に一度改訂しているが,引き続き

 必要に応じて定期的に改訂していくことは当然であるので,次回の改訂やパブコメへの回答という形で,将来的に金融機関の皆様にも理解しやすく,また,金融機関の方から利用者の方に説明しやすいような形で示せるようにしたいと考えている。今後,検討させていただきたい。

○岩原座長 ほかにいかがか。

○内藤委員 私は司法書士の立場で,公証人の定款認証の場面で実質的支配者の申告に携わっているが,実際,実質的支配者についての考え方などを依頼者である発起人などに説明して理解してもらった上で,実質的支配者というのは誰かというような申述を受けるのであるが,やはり一般の方は全く御存じないということもあり,これはかなり積極的に,かつ丁寧に周知,理解を広めるための活動を,この証明書の制度を始めるに当たってはやっていく必要があるのではないかと思う。実際に,株主に外国会社がいたり,上位株主が複数いるようなケースというときには,かなり実質的支配者に関する判断も難しいという場面もあるので,新しい制度については丁寧に周知していく必要があると思う。

○岩原座長 ほかにいかがか。

○片山委員 長期的な課題について,コメントをさせていただきたい。

 今回の制度の展開としては,篠原課長から,今回小さく産んでおいて,国民の理解を得ながら,これを大きく育てていきたいというお話があったが,法務省から説明があった欧米各国の制度と比較すると,今回の制度を導入しても,イギリス,ドイツ,フランスと比べると,まだまだかなりの違いがある。

 私の方から2点ほどコメントさせていただきたい。まず1点目は,間接保有の形態で,上位会社の協力が得られない場合にどうするかが問題になっているが,冒頭のコメントでも申し上げたが,海外ではそういう場合には上位会社の議決権の行使を制限するといったような,かなりドラスティックなことをやっている国もあると理解している。いきなりそういったことができないとしても,もともとUBOというのは,本来は,英語で言うとアルティメット・ベネフィシャル・オーナーということで,上位会社が法人であれば,その法人はBOではなく,最終的に個人まで行き着かなければならない。そこで,上位会社の協力がなければこれでおしまいということでは不十分であり,個人まで何とか行き着けるような方法を将来的にはとらなければならないと思った。

 あともう1点が,情報へのアクセスに関して,阿部委員からのコメントにもあったが,アクセスの範囲をもう少し広げられないかと思っている。それとの関係でいうと,開示される情報の範囲との関係なのではないかと捉えた。法務省の説明した外国法制によると,イギリスなどでは住所以外の情報は何人もアクセスすることができるとのことで,アクセスすることができる情報の中に住所が入っていない。恐らくこれらの国では個人の住所というものはかなりプライベートな情報であると考えられているのだと思う。どこまでの範囲の情報にアクセス可能にするかということを考えることによって,アクセスすることができる者の範囲を広くすることも可能ではないかと考えた。

○岩原座長 大変根本的な御指摘いただいたが,ほかにいかがか。

○尾崎室長 片山委員の御指摘は,非常に興味深い。実際に海外に行って実務を見ると,UBO,最終的なアルティメット・ベネフィシャル・オーナー,自然人まで行くということとし,かつ,その自然人のID,身分証明書を取るというところまで,かなり厳しく行っている国もあり,そういったところでは非常に時間がかかったり,手続が細かくなる。また,中東の国などでは,王族関係の身分証明書は取れないなどの例外扱いも増えてくるようである。非常にコストがかかる部分でもあるので,そのメリット・デメリットをこれからもう少し議論しながら制度設計,法制度設計を作り上げていくということが有益ではないかと思う。

○岩原座長 ほかにいかがか。

○角田委員 別の観点からの追加コメントをさせていただきたい。ドイツでは,実質的支配者の登録機関を名乗ったフェイクメールが随分出回って,社会問題になったようである。今回導入しようとしている制度は,そのような弊害を生じさせない形でスタートが期待できるようにしていただきたい。

○尾崎室長 実は,各金融機関が,金融庁マネロンガイドラインに沿って継続的な顧客管理の中で,お客様の属性データの更新等をお願いする依頼書をお客様に郵便でお送りしたりするケースがあるが,金融機関等から聞くと,お客様から,これは本当に銀行から来たのか,これは詐欺の一種ではないか,ここに電話して身分証明書を送ると逆に悪用されるのではないかというような照会があるというような,本当に困った話もある。正に角田委員御指摘の点には十分留意しながら,政府広報とか周知活動,アウトリーチをしていく必要があると思う。

○岩原座長 ほかに特にないか。

 それでは,根本論を言えば,欧州各国の制度等を比較すると,より根本的な制度改正も考えなければならないのかもしれないが,それは法改正も必要になってくるということで,今後更に検討が必要ということかと思う。

 今回の諮問で指摘されている三つの課題のほかに,この会で議論すべきこと,その他この機会に発言しておきたいということがあれば御発言いただきたい。

○野田管理官 先程来,アウトリーチという話が出ているが,これはFATFの審査との関係でも非常に重要なものとなってくる。今回の4次審査からIOといった項目が加えられている。要するに,これは法制度をどう設計しているかだけではなく,その実態,きちんと運用されているかということを独自の基準として定めて,その観点から見るということになっている。仏造って魂入れずのように,制度だけ作ったが,それが民間で余り有効な形で実施されていないというと,全体の評価を引き下げてしまう。結局,官民が一つの制度を作った場合,それに対してきちんと共通の理解をし,利用者にも浸透しているということが極めて重要になる。

 もう一点,脚注の脚注で申し訳ないが,結局,何をもってして合格点が与えられる制度設計になるのかということに関して,結局,FATFが一種のグローバルスタンダードというのを設定して目指していくという,その取組であることと同時に,やはり各国それぞれ状況も違う。リスクの評価,ビジネスの効率性やプライバシー等の要請に関する重きの置き方などは,各国によっては様々である。その中で,何が最適かということであるので,一意的にここまでやればもう合格という,そのものが定まっているわけではない。そこで我々だけはなく,各国も悩みながら施策を進めており,正にこういう場で議論させていただければと思っている。

「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規程案」に関する意見募集の結果について

https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=300080244&Mode=1

20220425追加

日司連常発第24号令和4 年( 2022 年) 4月 25日「実質的支配者情報一覧の写しの取扱いについて」

令和4年3月31日警察庁丁組企発第43号事務連絡「実質的支配者情報一覧の写しの取扱いについて」警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課長

令和3年版情報通信白書について

加工 令和3年版情報通信白書

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/index.html

デジタル活用に関する課題

理由

 「情報セキュリティやプライバシー漏えいへの不安」が52.2%と最も多く、次いで、「利用する人のリテラシーが不足しているから」(44.2%)、「デジタルでの業務利活用が不十分」(36.7%)、「通信インフラが不十分」(35.5%)、「情報端末が十分に行きわたっていない」(34.0%)、「利用者がデジタルに対する抵抗感をもっている」(33.7%)など。

企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題

Digitization(デジタイゼーション)

既存の紙のプロセスを自動化するなど、物質的な情報をデジタル形式に変換すること

Digitalization(デジタライゼーション)

組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること

課題

 「人材不足」、「費用対効果が不明」、「資金不足」、「ICTなど技術的な知識不足」、「既存システムとの関係性」。

デジタル・トランスフォーメーションの進展による影響

 デジタル・トランスフォーメーションに取り組む企業が米国並みになった場合、我が国の産業全体でどの程度(対前年度比)売上高が増加するのか、製造業と非製造業に分けてシミュレーションを行った。

 シミュレーションの結果が図表1-2-4-28である。製造業では5.7%、非製造業では4.2%の売上高押し上げ効果が見られた。これを金額に換算すると、製造業では約23兆円、非製造業では約45兆円の押し上げ効果となる。

公的分野におけるデジタル化の現状と課題

2020(令和2)年12月、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」閣議決定。

2020(令和2)年12月、改定版「デジタル・ガバメント実行計画」閣議決定。

 2021(令和3)2月デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを任務とするデジタル庁を設置するデジタル庁設置法案を含めたデジタル改革関連6法案*13が閣議決定。

2020年3月、「オンライン利用促進指針」を改訂。

 2021(令和3)年5月、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)が成立。

海外におけるデジタル・ガバメントの動向

「誰一人取り残さない」デジタル・ガバメントの実現に向けて必要な取組?

2020年(令和2年)7月にIT戦略本部において「官民ITS構想・ロードマップ2020」策定。

「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの運用調整に関する基本的な在り方」が2021年(令和3年)5月に取りまとめられた。

・公的機関等で登録され多くの場面で利活用される、人、法人、土地、建物、資格などの社会の基本データを「ベース・レジストリ」として整備することとし、その後、ベース・レジストリの対象となるデータの範囲を広げることが必要である。さらに、行政機関全体で利活用する基本データに加え、公的分野(医療や教育等)においては、官民が連携し分野ごとに様々な手続で参照される基盤データを整備する必要がある。

 2014年(平成26年)の10月から始まった提供が開始された訪日外国人向けプッシュ型情報発信アプリ「Safety tips」(図表3-2-2-5)にて避難行動、気象警報等の解説、災害時の情報提供を開始。

 2011年(平成23年)6月より、それまで、国・地方公共団体が各メディアに対して個別に発信していた災害情報を一元的に集約し、テレビやラジオ、スマートフォン等の多様なメディアに一斉配信する仕組みである「Lアラート」の運用を開始した。運用開始から8年後の2019年(平成31年)4月には、全都道府県による運用開始が完了。

 電源供給が不要であり停電に対して強い、光ケーブルによる伝送「FTTH方式」への切り替えに取り組んでいる。なお、2019年度末時点で契約数に占めるFTTH方式の割合は約43%。

 2014年から2018年の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期にて災害時に自治体や民間から発信される情報を収集・自動変換することで統合された情報を現場で活用できるように「SIP4D(Shared Information Platform for Disaster Management)」の開発が行われた。SIP4Dは熊本地震や平成30年7月豪雨等で、政府災害対策本部、県、市町村、災害対応機関等の様々な機関から発信された情報を統合し提供することで、現場対応や復旧計画策定等に貢献。

 IPv6対応に係る現状

(ア)IPv4アドレス在庫の枯渇状況

●APNIC/JPNICの IPv4アドレスの通常在庫が枯渇

IPv4アドレスについては、2011年2月3日にIANA*13の世界共通在庫が枯渇し、同年4月15日には、アジア太平洋地域にIPアドレスを分配しているAPNICと我が国のIPアドレスを管理するJPNICにおいてIPv4アドレスの在庫が枯渇した。その後、2012年9月14日にはRIPE NCCが、2014年6月10日 に はLACNIC が、2015年9月24日にはARINのIPv4アドレス在庫が枯渇し、AFRINIC7も2031年12月に枯渇する見込みである。これにより、世界に5つある全ての地域インターネットレジストリのIPv4アドレスの在庫が枯渇することになる。

(イ)IPv6への対応状況

●大手 ISPを中心に IPv6対応が本格化

 APNIC/JPNICにおけるIPv4アドレス在庫が枯渇した2011年4月からアクセス回線事業者のIPv6対応が本格化しており、主要な事業者においては既にIPv6インターネット接続サービスが提供されている。IPv6普及・高度化推進協議会の調査によると、NTT東西の提供するFTTH回線であるフレッツ光ネクストにおけるIPv6普及率が、2021年3月時点で80.0%に達している。

 また、ISPについては、アクセス回線事業者のIPv6対応に合わせて、大手ISPを中心にIPv6インターネット接続サービスの提供が進展している。2021年1月に総務省が実施したアンケート調査に対し、加入者10万契約以上のISPでは91.7%がIPv6インターネットサービスを「提供中」と回答している。

 一方で加入者1万契約以上10万契約未満のISPでは16.7%、加入者1万契約未満のISPでは55.0%が「検討の上、提供しないと決定」か「未検討」と回答しており、大規模ISPと比較してIPv6対応が遅れている。

 各種オンラインシステムの共同利用の状況については、都道府県では「公共事業にかかる電子入札」、市区町村では「図書館蔵書検索・予約」が最多。各種オンラインシステムの共同利用の状況については、「公共事業にかかる電子入札」が都道府県では24団体(51.1%)と最も多く、次いで「公共施設予約」が16団体(34.0%)となった。市区町村では「公共事業にかかる電子入札」が569団体(32.7%)と最も多く、次いで「公共施設予約」が261団体(15.0%)となっている。

引受信書便物数は毎年増加しており、2019年度は 2,085万通

2019年度の引受信書便物数は、2,085万通となっており、前年度比 0.7%の伸びを示している。

 2019年(令和元年)8月に「青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策」を取りまとめ、公表した。また、2020年(令和2年)1月に同タスクフォースにおけるこれまでの議論並びに「青少年のフィルタリング利用促進のための課題及び対策」及びその進捗を基に「青少年インターネット環境整備法の改正法附則に基づく検討について~電気通信事業者等の取組状況に係る見解~」を公表。

 2021年(令和3年)6月には、当面の主要な政策課題として、①電気通信事業者における安全かつ信頼性の高いネットワークの確保のためのセキュリティ対策の推進、②COVID-19への対応を受けたセキュリティ対策の推進、③デジタル改革・DX推進の基盤となるサービス等のセキュリティ対策の推進、④サイバーセキュリティ情報に関する産学官での連携・共有等の促進を掲げた「IoT・5Gセキュリティ総合対策2021(案)」に対する意見募集実施。

行政手続における書面主義の見直し及びオンライン利用率を大胆に引き上げる取組について(戸籍謄抄本の請求等のオンライン化の促進等)

加工

内閣府第1回デジタルワーキング・グループ 令和3年9月8日(水)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/digital/20210908/agenda.html

議題.行政手続における書面主義の見直し及びオンライン利用率を大胆に引き上げる取組について(戸籍謄抄本の請求等のオンライン化の促進等)

・戸籍謄抄本の請求等のオンライン化の取組・課題について(株式会社グラファーからのヒアリング)

・戸籍謄抄本の請求等のオンライン化に係る国の取組等について(法務省からのヒアリング論点に対する回答

【論点1-③】

 戸籍の記載事項は、ベースレジストリにも指定されており、関連する手続のデジタル化が強く求められると考えられる。「法務省情報化推進会議」等において、戸籍謄抄本の請求・交付、届出分野のデジタル化を進める観点から、どのような検討が行われたか(事務次官がどのようにリーダーシップを発揮したかを含む)、具体的にご説明願いたい。

【論点1-③】

 本年7月に開催した「法務省情報化推進会議」においては,戸籍謄抄本の請求・交付,届出分野のデジタル化を含めた国民目線でのオンライン化やキャッシュレス化の推進などの課題に対する取組を強力に推進するために,省全体のデジタル化推進体制を強化する必要があるとの認識を出席者一同で確認した。

 そして,戸籍謄抄本の請求・交付,届出分野のデジタル化については,事務次官のリーダーシップの下,PMOにおいて,CIO補佐官からの知見も得つつ,担当PJMOと協議を重ね,オンライン利用率向上等に向けた検討を行うなどしている。

 また,戸籍情報の連携のための関係省庁との協議,例えば,旅券発給手続に関する外務省や内閣官房番号制度推進室との協議や年金手続などの社会保障手続に関する厚生労働省との協議などに当たって相談を受けるなどしている。

 さらに,戸籍事務におけるマイナンバー制度の利活用を推進するべく,①マイナンバーの提供等による戸籍謄抄本の添付省略並びに②戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略及び本籍地以外の市区町村での戸籍謄本の発行を実現するために必要な経費を令和4年度予算概算要求に盛り込んでいる。

【論点2-①】

 現在、検討・策定を進めている基本計画等について、可能な範囲で、具体的内容をご説明願いたい。なお、目標については、狭い意味でのオンライン利用率に留まらず、コンビニ交付や情報連携により戸籍謄抄本等の添付が不要となる件数も考慮したものとすべきである。

【回答2-①】

 令和5年度中に戸籍情報連携システムを構築・稼動させることを予定している。これにより,戸籍の届出における戸籍証明書の提出や他の行政手続に添付する戸籍証明書の添付省略が図られることにより,そもそも戸籍証明書を取得する場面が減少することとなる。その結果,全ての市区町村の住民がその恩恵を受けることができることとなる。オンライン利用率の目標設定については,御指摘を踏まえつつ,検討してまいりたい。

【論点3-①】

 コロナ禍を踏まえて書面・押印・対面の見直しが進められる中におけるオンライン請求及びコンビニ請求に関する国民のニーズについて、可能な限り定量的にお示し願いたい。

【回答3-①】

 平成29(2017)年に実施した調査研究における結果,将来における戸籍証明書の取得方法に関するニーズとして,「インターネットでマイナンバーカードの電子証明書を利用して取得」するニーズが12.9%,「最寄りのコンビニエンスストアでマイナンバーカードを使ってマルチコピー機から取得」するニーズが11.1%あったところであるが,当局が構築する戸籍情報連携システムが稼動することにより,戸籍の届出における戸籍証明書の提出や他の行政手続に添付する戸籍証明書の添付省略が図られることにより,そもそも戸籍証明書を取得する場面が減少することとなり,全ての市区町村の住民がその恩恵を受けることができることとなる。

【論点3-②】

 戸籍謄抄本をオンライン請求もしくはコンビニ請求できる自治体数は人口カバー率でどの程度か、定量的にお示し願いたい。

【回答3-②】

 オンラインによる戸籍証明書の交付請求が可能な自治体は,本年7月1日現在,1896市区町村のうち,17市区町村(約 0.8%)であり,本籍人口は約 250 万人で,全体の約2%となっている。

 また,コンビニ交付の仕組みを使った戸籍証明書の交付請求が可能な自治体は,本年7月1日現在,1896市区町村のうち,693市区町村(約36.5%)である。なお,コンビニ交付は,住民票の住所を置く市区町村と本籍を置く市区町村が同一である場合にのみ交付請求ができる場合と,これらが同一でなくても交付請求ができる場合とがあるが,戸籍には住所情報がないため,コンビニ交付を受けることができる正確な人口割合は不明であるものの,人口比で約55%前後であると推計される。

【論点3-③】

 平成 29 年時点においてもオンライン請求及びコンビニ請求に対する一定のニーズが示されているが、オンライン請求やコンビニ請求を導入する自治体数が現況に止まる要因をどのように考えているか、具体的にご説明願いたい。

【論点3-④】

 論点3-③を把握するため、どのような取組を行ったのか、具体的にご説明願いたい。

【論点3-⑤】

 論点3-③について、具体的な把握ができていないとすれば、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答3-③から⑤まで】

 市区町村において戸籍事務に従事する職員にヒアリングしたところ,オンライン請求については,コンビニ交付に比べ交付までに時間がかかることから,住民からのニーズが高くないこと,戸籍事務のためだけにオンライン請求を受け付ける環境を構築することに意義が見出せないこと,などが挙げられる。

 また,コンビニ交付については,オンライン請求に比べ比較的普及が進んでいるところ,特に地方の小規模自治体については,本籍人が必ずしも住民とは限らず,導入することが当該自治体の住民の利便性の向上に資するものとはいえないことから,予算措置の優先順位が低いことが挙げられる。

 さらに,いずれの仕組みについても,地方公共団体の事務が多数ある中で,その仕組みの導入は戸籍証明書の交付請求の場面に限ったものではない。

 もっとも,当局が構築する戸籍情報連携システムが稼動することにより,戸籍の届出における戸籍証明書の提出や他の行政手続に添付する戸籍証明書の添付省略が図られることにより,コンビニ交付やオンライン申請により戸籍証明書を取得する場面が大幅に減少することになる見込みである。

【論点3-⑥】

 オンライン請求やコンビニ請求を実現した自治体においても、必ずしも、オンライン請求やコンビニ請求の利用状況はそれほど多くないが、その要因をどのように考えているか、具体的にご説明願いたい。

【回答3-⑥】

 オンライン請求やコンビニ交付による請求を実施する前提として,マイナンバーカードを使って行う必要があるところ,マイナンバーカードが完全に普及していないことも一因であると考えられる。

 また,オンライン請求を導入している自治体において,現在,紙の証明書を郵送で返信する方式又は自治体の窓口で交付していることから,コンビニ交付と比較して交付までの時間がかかることが要因として挙げられる。

【論点3-⑨】

 オンライン請求システムを提供しているグラファー社からは、デジタル手続法により、戸籍のオンライン請求が制度上可能となっている旨を把握していない自治体職員もいるとの課題が示されている。オンライン請求が可能であること等について、自治体への周知徹底が不十分であると考えるが、法務省としての見解及び今後の対応についてお示し願いたい。

【回答3-⑨】

 オンライン請求は,デジタル手続法の施行前から法制上可能であり,平成16年の戸籍法令の改正により,導入することが可能である。平成16年には標準仕様書を通達として発出し,これに関する解説記事も掲載しているほか,平成22年(東京都中野区の取扱いの認容事例),令和2年(埼玉県志木市の取扱いの認容事例)にオンライン請求の認容事例を紹介する周知を実施も行った。さらに,デジタル手続法が成立したことを踏まえ,オンラインシステムを導入している市区町村の一覧を掲載し,制度の周知を図っているところである。

【論点3-⑪】

 オンライン請求システムを提供しているグラファー社からは、法務省が整備している「戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書」について、最新のデジタル技術を踏まえた改訂が必要との課題が示されている。法務省が整備している「戸籍手続オンラインシステム構築のための標準仕様書」については、最新のデジタル技術や、自治体における実際の運用状況等も踏まえ、不断の見直しが必要であり、ベンダーや自治体関係者等と定期的に意見交換をして課題や対応策を検討することが不可欠と考えるが、法務省の取組について、具体的にご説明願いたい。

【回答3-⑪】

 戸籍情報システムの仕様書については,例年,調査研究委託として実施される標準仕様研究会において改訂が実施されている。この研究会は,法務省職員や地方自治体職員,戸籍情報システム事業者から構成され,制度改正や技術の進歩等に合わせた仕様書の改訂について研究しており,定期的な意見交換が実施されているところである。

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司法書士を入れていただけないかな、と思います。

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【論点3-⑫】

 一部の自治体からは、申請部分が電子化されても、戸籍情報を管理する内部システムと連動していないことから人による筆頭者等の審査・補正が必要、また、戸籍情報以外にも他のデータからDV等被害者に該当するか否か人による審査が必要等の理由から、オンライン請求を導入しても、自治体内部の効率化が図れないとの課題が示されている。デジタル化の推進に当たっては、申請者のインターフェイスだけでなく、自治体内部の業務も含め一連の業務をデジタル完結することが必要であるが、法務省としてどのような対応を行っているのか、具体的にご説明願いたい。

【論点3-⑬】

 論点3-⑫について、自治体任せにするのでは、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答3-⑫及び⑬】

 戸籍証明書の交付申請に当たっては,戸籍を特定する必要があり,戸籍の特定は,本籍及び筆頭者氏名を明らかにすることにより行うこととなるが,本籍及び筆頭者氏名が正しく特定されない場合には,交付すべき戸籍証明書が明らかにならないことから,申請内容を修正する必要がある。本籍及び筆頭者氏名以外の情報により個人情報を特定する方法としては,例えば,個人のマイナンバーにより特定する方法が考えられるが,マイナンバーと戸籍情報との紐付けについては,関係府省担当者も委員として参加した法制審議会戸籍法部会においても審議され,個人情報保護の観点から,直接紐付けをすべきではないとされたところである。そのため,現在,マイナンバーと戸籍情報は紐付いておらず(又は「マイナンバーカードには戸籍情報は登録されておらず」),マイナンバーによっては戸籍が特定されないことから,申請する側で戸籍を特定する必要がある。

 また,DV加害者やその代理人から,DV被害者等が記載された戸籍に係る戸籍証明書の交付請求がされた場合には,当該請求が不当な目的によるものであるか否かを審査する必要があるところであり,いずれも交付請求の適否の審査において必要な行為であると考えている。もっとも,DV被害者等が記載された戸籍に係る戸籍証明書の取扱いについては,DV被害者等からの申出を受けて証明書が交付されないような仕組みを検討中である。

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戸籍証明書の交付申請に当たって、請求者の生年月日が不要ということを初めて知りました。

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【論点3-⑭】

 法務省では、DV加害者からの請求への対応は、当該請求が戸籍法第 10条2項の「不当な目的」に該当するか否かを自治体が個別判断すべきとしていると承知している。当然にして慎重かつ正確な判断が求められる性質の審査であると考えるが、一方でその審査には相応の事務負担が自治体に発生しているものと考えられる。他方で、埼玉県戸田市では、グラファー社と連携した上で、自治体内部における審査業務のデジタル化の実証実験を行っていると承知している。総務省と連携の上で戸田市の取組に関する課題・効果を検証し、デジタル技術を用いて画一的に判断可能な審査項目・業務について、事務負担軽減のための取組みの横展開を図るべきと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答3-⑭】

 埼玉県戸田市における「審査業務のデジタル化の実証実験」の内容については,有益な情報があれば,是非お聞かせいただきたいと考えており,管轄法務局とも連携し,審査業務の効率化に資する事務負担の軽減に向けた取組を進めてまいりたい。

【論点3-⑮】

 「規制改革実施計画(令和3年6月 18 日閣議決定)」において、「キャッシュレス化の推進」が決定されているところ、郵送による請求の際には、手数料を定額小為替で納付するよう求める自治体も多数ある実態を踏まえると、自治体任せにするのでは、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省の見解及び今後の対応についてお示し願いたい。

【回答3-⑮】

 手数料の徴収に関する事項は,地方自治法に基づき条例によることとされているところであり,地方公共団体の事務は多数ある中で,決済方法の問題については,戸籍証明書の交付請求の場面に限ったものではないが,キャッシュレス決済の取組を進めている自治体の実例を紹介するなど,関係府省と連携して,利用者の利便性の向上に資する取組を進めてまいりたい。

【論点3-⑯】

 一部の自治体からは、請求総数のうち、士業による職務上請求が占める割合が高く、正当な理由であるか等の審査が必要で、本人請求を前提としたオンライン請求やコンビニ請求では対応できないとの課題が示されているが、士業団体等との協議状況も含め、法務省としての取組を具体的にご説明願いたい。

【回答3-⑯】

 士業者が戸籍証明書を請求する場合には,個人情報保護の観点から,その職務上必要とされるかについて,正当な事由の有無について審査が必要となる。

 当該請求については,利便性の向上を求める意見もある一方,本年8月にも,行政書士による不正請求が発覚するなど,不正請求事件も多く見られるところであり,市区町村からも,人権上の見地から,請求の事由を正確に記載するよう指導すべきとする意見もあるところであり,様々な意見を踏まえる必要があると考えている。

 なお,オンラインによる士業者からの職務上請求を可能とする戸籍法施行規則の改正については検討し,その旨を内閣府に回答したところである。

20221009追加

2022年9月5日富士フイルムシステムサービス
東京都墨田区と住民票の写しなどの証明書の郵送請求に
おけるキャッシュレス化に向けた実証実験を開始

証明書請求者と自治体職員双方の負荷軽減を目指して

https://www.fujifilm.com/fbss/news/news_220905

【論点3-⑰】

 平成 29 年8月の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」において、平成7年度から平成 15 年度までの間、戸籍の電算化に必要な経費について、特別交付税による財政支援がされ、各市区町村がベンダー(8社)から個別に戸籍情報システムを調達して順次電算化を進めた結果、電算化した自治体の数は、平成7年時点の 24 庁から平成 15 年には 1,497 庁へと拡大したことが示されている。

 一部の自治体からは、戸籍に限らずコンビニ請求を実施する際のサーバー設置費や、コンビニ等に支払う手数料が財政的に課題であるとの意見が示されているところ、総務省では一定の地財措置を講ずる等の取組を行っている。戸籍のオンライン請求及びコンビニ請求の拡大に向け、財政支援や複数の自治体による共同の取組の支援など法務省としての対応を検討すべきと考えるが、法務省の見解及び今後の対応についてお示し願いたい。

【回答3-⑰】

 財政措置の可否については,関係府省と相談の上で対応してまいりたい。

【論点4-①】

 「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」、「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」、「本籍地以外での戸籍謄抄本の発行」のそれぞれにつき、検討状況及び課題並びに実現に向けた今後のスケジュールについて、具体的にご説明願いたい。

【回答4-①】

 行政手続における戸籍謄本等の添付省略等については,法務省において新たに整備する戸籍情報連携システムによって戸籍情報の提供を可能とすることとなるところ,その検討状況等は以下のとおりである。

○「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」

以下の2通りの実現方式について,現在,設計・開発を行っている。

① マイナンバー制度に基づき情報提供ネットワークシステムを通じて戸籍情報を提供する方式

 改正戸籍法(令和元年法律第17号)附則第1条第5号による施行日(令和6年3月予定)の導入を目指して開発中である。

 ・開発・テスト:令和4年度まで ・情報提供用個人識別符号取得:令和4年度 ・連携テスト:令和5年度 ・運用開始:令和6年3月

② 電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)をオンラインで提供する方式

令和6年度中の導入を目指して設計中である。

 ・対象行政機関と調整の上,現在設計中 ・運用開始:令和6年度以降

○「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」

改正戸籍法(令和元年法律第17号)附則第1条第5号による施行日(令和6年3月予定)の導入を目指して開発中である。

・開発・テスト:令和4年度まで・連携テスト:令和5年度・運用開始:令和6年3月

○「本籍地以外での戸籍謄本の発行」

 改正戸籍法附則第1条第5号による施行日(令和6年3月予定)の導入を目指して開発中である。

・開発・テスト:令和4年度まで・連携テスト:令和5年度・運用開始:令和6年3月

【論点4-②】

 「デジタル・ガバメント実行計画(令和2年 12 月 25 日閣議決定)」において、「戸籍謄本・抄本は、身分関係等を証明することを目的として、年間約 4,200 万件(令和元年)が発行されており、法令に基づく約 500 種類以上の国の行政手続において提出を求めることとなっている。」とあるが、速やかに添付省略が実現され、国民・行政双方のデジタル化・事務負担の軽減が図られる必要がある。上記取組みによって、500 種類以上の手続について、いつまでに、どの程度の手続(種類数・件数ベース・内容)で添付省略が実現されるのか、ご説明願いたい。

【回答4-②】

 IT室による「ワンスオンリー実現に必要な情報連携拡大等検討のための基礎調査」結果等を踏まえ,合計で 600 種類以上,少なくとも 1,000 万件以上の手続について,戸籍謄抄本の添付省略が実現される見込みであり,その詳細は以下のとおりである。

○「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」

①マイナンバー制度に基づき情報提供ネットワークシステムを通じて戸籍情報を提供する方式

 ・約 580 手続,件数 約 580 万件 ・令和6年度から順次開始

② 電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)をオンラインで提供する方式

 ・約 30 手続,件数 約 345 万件 ・令和6年度中に開始

○「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」

・件数 約 121 万件・令和6年3月から開始

【論点4-③】

 平成 29 年8月の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」において、「戸籍謄本等の交付請求をした目的」として「パスポートの申請のため:61.6%」、「婚姻届など戸籍の届出で提出するため:50.2%」、「年金や児童扶養手当などの社会保障給付金受給に関する手続で提出するため:27.0%」等のニーズが示されている。これら国民のニーズが高い手続については、速やかに添付省略が実現される必要がある。法務省としての取組を具体的にご説明願いたい。

【回答4-③】

 戸籍情報連携システムを整備することで,国民のニーズが高いとされた以下の手続について,戸籍謄抄本の添付省略が実現される見込みである。

○「パスポートの申請のため:61.6%」【論点4-①】の回答で示した「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」の②電子的な戸籍記録事項の証明情報(戸籍電子証明書)を提供する方式により,添付省略が実現される。

○「婚姻届など戸籍の届出で提出するため:50.2%」【論点4-①】の回答で示した「戸籍の届出における戸籍謄抄本の添付省略」により,添付省略が実現される。

○「年金や児童扶養手当などの社会保障給付金受給に関する手続で提出するため:27.0%」

【論点4-①】の回答で示した「行政手続における戸籍謄抄本の添付省略」マイナンバーに基づき情報提供ネットワークシステムを通じて戸籍情報を提供する方式により,添付省略が実現される。

【論点4-⑤】

 平成 29 年8月の「戸籍制度に関する研究会最終取りまとめ」において、全国の市区町村における戸籍謄本等の利用目的別の比率は「相続関係手続」が 33.9%に上ることが示されており、相続時においては、民間の手続きについても戸籍謄抄本の添付を求める手続が多数ある。国民負担の軽減の観点から、民間手続における戸籍謄抄本の利用についても可能な限り定量的・具体的に手続の種類・内容を把握したうえで、情報連携による添付省略の取組について、検討を開始すべきと考える。法務省としての見解をお示し願いたい。なお、十分にデジタル化が進まない中で、本籍地以外での戸籍謄抄本の請求が可能にすれば、都市部の自治体等において他の自治体分の戸籍請求も増えることも想定されるところであり、こうした問題について、法務省としてどのようにどのように考えているか、併せてお示し願いたい。

【回答4-⑤】

(民間手続における戸籍謄抄本の利用について)

 戸籍謄抄本については,利用目的別の比率の高い行政手続だけでなく,民間でも相続時においては添付を求める手続が多数あるものと承知している。

 この点に関し,デジタル・ガバメント実行計画の「死亡・相続ワンストップサービス」においては,「内閣官房は、戸籍情報連携システムの戸籍電子証明書(電子的な戸籍記録事項の証明情報)を活用した法定相続人の特定に係る遺族等の負担軽減策について、法務省と検討を行う」とされており,引き続き内閣官房の検討に協力してまいりたい。

 なお,【論点4-①】の回答で示した「本籍地以外での戸籍謄本の発行」により,本籍地以外の市区町村の窓口でも,自らや父母等の戸籍謄本の取得を可能とする広域交付の仕組みが導入されるため,国民の利便性向上に大きく資することとなると考える。

(「都市部の自治体等において他の自治体分の戸籍請求も増える」について)

 御指摘のとおり,人口が集中する都市部の自治体等においては,他の自治体の戸籍謄本の請求が増えることも想定されるところではあるが,国民の利便性向上のため,都市部の自治体等の理解を得つつ,所要の検討を進めてまいりたい。

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戸籍謄本の交付は、自治体の収入にはならないのでしょうか。

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【論点5-①】

平成 16 年から制度上可能となっているにもかかわらず、現在、導入している自治体は無いことについて、具体的な要因をどのように考えているか、ご説明願いたい。

【論点5-②】

論点5-①について、具体的な把握ができていないとすれば、「デジタル社会の基盤となる制度を所管する省」としての取組が十分とは言えないと考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答5-①及び②】

 届出のオンラインシステムを導入しない理由について,証明書のオンラインシステムを導入する市区町村に聞いたところ,以下の課題があるとのことであった。

①オンライン届出と紙の届出が混在することとなり、処理が複雑となる。

  • オンライン届出情報の他市区町村への送付や添付資料の確認など検討課題が多い。
  • 戸籍のオンライン届出については,届出人や証人についても電子署名が必要であるなど,届出を行うまでのハードルが高く,現実的でない。

【論点5-③】

 死亡時における国民の手続負担軽減の観点からは、死亡・相続ワンストップサービスの利便性向上等が必要である。「第 14 回デジタル・ガバメント分科会(令和3年 3月 26 日)」において、死亡届及び死亡診断書(死体検案書)の提出をオンラインで完結する仕組みの構築に向けて、厚生労働省と共に検討を開始することが示されているが、具体的に何がいつまでにどの様な工程を経て実現されるのか、課題は何か、ご説明願いたい。

【回答5-③】

 死亡届及び死亡診断書(死体検案書)の提出をオンラインで完結する仕組みの構築に向けては,現在,デジタル庁及び厚生労働省とともに取り組んでいるところである。当省としては,市区町村長が死亡診断書の内容を確認することが可能な場合には,死亡の届書に死亡診断書の添付を省略することができる旨の戸籍法施行規則の改正を本年4月に実施したところである。

 電子死亡診断書を市区町村に送付する運用の実施に当たっての主な課題としては,HPKI(保健医療福祉分野の公開鍵基盤)カード電子署名や医療関係データの送付の仕組みの普及などがあると承知している。現在,関係府省の間で,添付省略の取扱いの実証的運用について,本年度中に実施する方向で調整中である。

【論点5-④】

 死亡届以外も、例えば出生届及び出生証明書のデジタル化や、離婚届と調停調書のデジタル化など、関係府省等と連携して、国主導でオンライン化・デジタル化の検討を進めることが、国民の利便性向上につながると考える。

 法務省としてデジタル化に向けた取組みに率先して取り組むことが必要と考えるが、法務省としての見解をお示し願いたい。

【回答5-④】

 戸籍届書の添付書類の電子化は,手続をデジタルで完結させるために必要な課題であり,重要な取組であると認識している。今後とも引き続き,添付書類の電子化について関係府省等と取り組んでまいりたい。

20221116追記

参考

市民と法No.137、2022年10月、民事法研究会、赤松茂司法書士「戸籍全部事項証明書等の職務上請求のオンライン化に向けた展開」
  

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