民事信託の登記の諸問題(21)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(21)」からです。

引き続き、昭和41年5月16日付け民甲1179号民事局長通達の考察です。

委託者と受益者(委託者兼受益者の場合は単独)が承認さえすれば、受託者は何でもできるのか、という問題もある。一体、どこまでが、信託の枠組みとして有効なのだろうか。受益者の承認と信託の変更は何が違うのか(信託目的等の変更を要しないのか)。包括的かつ一般的な事前の承認は、承認といえるのか。

委託者と受益者(委託者兼受益者の場合は単独)が承認さえすれば、受託者は何でもできるのか。

・・・信託法その他の法令に反しない限り、委託者が判断能力があるうちに行う信託行為による定めなので、可能と考えられます。

受益者の承認と信託の変更は何が違うのか。

・・・信託の変更は別段の定め(信託法163条3項)など複数の方法があるので、ここでは、信託の変更の構造と、受益者による受託者に対する事前の承認の構造について、何が異なるのか、という問いだと仮定します。

信託の変更は、信託行為について事後的に変更を行うこと[2]とされています。信託の変更を行う主体、一般的規定、形態は、信託法149条から162条までに定められています。受益者保護の規定として、信託法103条に、受益権取得請求が定められています。

 受益者による受託者に対する事前の承認は、受託者が信託事務を行う場合に、必要とされることがあります。信託法31条2項2号の利益相反行為の制限にかかる承認のほか、信託法149条4項によって、受益者による受託者に対する事前の承認を定めることも可能です。受益者は自ら承認するので、信託法103条のような受益権取得請求権は認められていません。

信託財産の管理方法

受託者の権限

受託者は、委託者兼受益者が創業したXX会社(代表取締役は受託者)が負担する債務を被担保債権(債権額金××万円まで)として、抵当権を設定することができる。

 このような規定をおいた場合、受託者のみで担保設定を行うことができることになります。株主などが【氏名】である限り、などの制限も付けない限り、信託法8条(受託者の利益享受の禁止)により可能なのか分かりませんでした。可能であるとした場合、被担保債権額の上限は具体的金額ではなく、信託不動産の査定額の何パーセントなどの方がよいと考えます。信託財産は時間の経過とともに変化していくからです。

信託の目的

 高齢者の認知症対策と生活支援

信託財産の管理方法

受託者の権限

信託監督人の同意をもって、受託者は、受益者以外の第三者が負担する債務を被担保債権として、抵当権を設定することができる。

 記事では、第三者である士業者による信託監督人が望ましい、との記載があります。仮に私が信託監督人として同意を行う場合、委託者(兼受益者)の推定相続人全員から承諾をもらってからの判断を行うと思います。

信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(受託者の利益享受の禁止)

第八条 受託者は、受益者として信託の利益を享受する場合を除き、何人の名義をもってするかを問わず、信託の利益を享受することができない。

(利益相反行為の制限)

第三十一条 受託者は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を固有財産に帰属させ、又は固有財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を信託財産に帰属させること。

二 信託財産に属する財産(当該財産に係る権利を含む。)を他の信託の信託財産に帰属させること。

三 第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの

四 信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することその他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

2 前項の規定にかかわらず、次のいずれかに該当するときは、同項各号に掲げる行為をすることができる。ただし、第二号に掲げる事由にあっては、同号に該当する場合でも当該行為をすることができない旨の信託行為の定めがあるときは、この限りでない。

一 信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。

二 受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。

三 相続その他の包括承継により信託財産に属する財産に係る権利が固有財産に帰属したとき。

四 受託者が当該行為をすることが信託の目的の達成のために合理的に必要と認められる場合であって、受益者の利益を害しないことが明らかであるとき、又は当該行為の信託財産に与える影響、当該行為の目的及び態様、受託者の受益者との実質的な利害関係の状況その他の事情に照らして正当な理由があるとき。

3 受託者は、第一項各号に掲げる行為をしたときは、受益者に対し、当該行為についての重要な事実を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

4 第一項及び第二項の規定に違反して第一項第一号又は第二号に掲げる行為がされた場合には、これらの行為は、無効とする。

5 前項の行為は、受益者の追認により、当該行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。

6 第四項に規定する場合において、受託者が第三者との間において第一項第一号又は第二号の財産について処分その他の行為をしたときは、当該第三者が同項及び第二項の規定に違反して第一項第一号又は第二号に掲げる行為がされたことを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該処分その他の行為を取り消すことができる。この場合においては、第二十七条第三項及び第四項の規定を準用する。

7 第一項及び第二項の規定に違反して第一項第三号又は第四号に掲げる行為がされた場合には、当該第三者がこれを知っていたとき又は知らなかったことにつき重大な過失があったときに限り、受益者は、当該行為を取り消すことができる。この場合においては、第二十七条第三項及び第四項の規定を準用する。


[1] 904号、令和5年6月、テイハン、P45

[2] 寺本昌広『逐条解説新しい信託法補訂版』2008、商事法務、P339

橋谷聡一「判例紹介1-福祉型信託において受託者の裁量が問題となった事例―さいたま地越谷支判令和4・3・23―(令和30年(ワ)538号)」

民事信託フォーラム[1]の記事、大阪経済大学橋谷聡一教授「判例紹介1-福祉型信託において受託者の裁量が問題となった事例―さいたま地越谷支判令和4・3・23―(令和30年(ワ)538号)」からです。

判決文全文を未だ読み通していません。読み通した後、追記したいと思います。

〇親族構成

〇時系列

2017(平成29)年12月7日、本件信託契約1が締結される。

2017(平成29)年6月15日、本件信託契約2が締結される。

2017(平成29)年12月8日、本件信託契約2の委託者Aの地位および共同受益者の地位がBに変更される。

2018(平成30)年6月27日

XからYに対して、本件信託契約2の受託者の地位を解任、本件信託契約2を解除する意思表示を行う。

2018(平成30)年9月25日

 XがYを提訴。

請求1・・・受益権の内容である賃料収入が給付されていないので、その給付(信託法2条7号、同法88条1項。)。

請求2・・・信託不動産について作成された財産目録、貸借対照表、損益計算書、預金通帳、税務申告書および会計帳簿のコピーがさせること(信託法36条)。

争点

1 本件信託契約1は終了したか否か。終了したとすれば、Yは、Xに対し、本件所有権移転登記および本件信託登記の各種抹消登記手続をする義務を負うか。

2 Xの本件信託契約2に基づく金銭請求に関し、訴えの変更による請求の拡張は許されるか。

3 Xは、Yに対し、本件信託契約2に基づき、本件信託不動産の賃料収入から経費を除いた、利益の2分の1相当額の支払請求権を持つのか。持っている場合、YがXに支払う金額はいくらか?

4 Xは、Yに対し、本件信託不動産について作成された財産目録、貸借対照表、損益計算書、預金通帳、税務申告書および会計帳簿のコピーを求めることができるか。

裁判所の判断

争点1について

本件信託契約1は、信託法164条1項により終了した。Yは、Xに対し、本件所有権移転登記および本件信託登記の各種抹消登記手続をする義務を負う。

参考 信託法

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC0000000108

(費用等の償還等と同時履行)

第五十一条 受託者は、第四十九条第一項の規定により受託者が有する権利が消滅するまでは、受益者又は第百八十二条第一項第二号に規定する帰属権利者に対する信託財産に係る給付をすべき債務の履行を拒むことができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。

(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)

第百六十四条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。

争点2について

Xの本件信託契約2に基づく金銭請求に関し、訴えの変更による請求の拡張は許される。

争点3について

Xは、Yに対し、賃料収入から経費およびYの報酬―中略―を控除した利益の2分の1の支払い請求権を持つ。

Yは、受益者XおよびAの施設利用費、病気療養費等(これに準ずる費用を含む。)については、受益者の生命・身体および健康を確保するためのものであって、優先して支払う義務があり、これらを支払った場合は、経費に準じて、その支払額も賃料収入から控除。

争点4について

Xは、Yに対し、本件信託不動産について作成された財産目録、貸借対照表、損益計算書、預金通帳、税務申告書および会計帳簿のコピーを求めることができる。


[1] Vol19,2023年4月、日本加除出版、P129~

分筆登記の前提として、所有権登記名義人住所変更登記申請の必要の可否

 分筆登記をする場合において所有者の現住所と登記簿上の住所が合致していない場合、分筆登記の前提として、住所変更登記が必要かについて

  • 原則として必要

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=416AC0000000123

(分筆又は合筆の登記)

不動産登記法39条 分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

例外

住所の変更を証する書面を添付してなされた分筆登記の申請の受否(登研573号)

〇要旨:土地の分筆の登記申請書に住所の変更を証する書面を添付して、登記簿上の表示と異なる申請人の住所を記載して登記の申請をした場合、便宜受理される。

・例外を使用する場合

・・・土地収用などで分筆し、分筆後の1筆を売却を市区町村に売却し、代金の支払いを早めに受けて、分筆後の所有地について相続登記、地目変更、贈与、担保設定などを計画している場合。

会社設立 株式会社と合同会社の違い

株式会社

上場企業など

株主の有限責任(会社法104条。)。出資した金額以上の責任を負わない。

株主は株式を自由に譲渡することができる(会社法2条5号、127条。)。他の人に高く売ったり、会社から離れるために、安くでも売ったりすることができる。

→お金を集めやすい。

 結果として、会社の所有と、経営(会社法326条、329条、330条、349条など。)が分離されている。

上場していない会社など(非公開会社)

 株主の有限責任はあるが、会社代表者が連帯保証人(民法454条、456条の2~など。)になっていたりするので、出資した以上の、代表取締役個人の預貯金などにも責任を持つことがある。

 株式は自由に譲渡できない。株主総会などの承認が必要(会社法108条1項4号、165条。)。

 経営者が1人株主の株式会社の状態の場合、所有と経営は、分離していない。

合同会社

 社員・・・出資した人のこと。出資した金額以上の責任と負わない有限責任(会社法580条)。代表社員が個人で会社の保証人になる場合は、有限責任は崩れる。

 社員が出資した財産は、持分と呼ばれる。持分を他の人に譲渡するには、他の社員全員の同意が必要(会社法585条)。

 社員は原則として事業を行わなければならない(会社法590条。)。→所有と経営は分離していない。

出資して社員になると、経営も行い、役員の任期規定がない。

株式会社と比べて、設立費用が十数万円安い。

加工デジタル社会の実現に向けた重点計画

https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program/

2023年(令和5年)6月9日

はじめに ……………………………………………………………….. 1

第1 安全・安心で便利な国民の生活や事業者の活動に向けた重点的な取組 ……………. 2

1.マイナンバーカード/デジタル行政サービス ……………………………….. 2

(1)申請・交付環境の整備 ……………………………………………. 2

(2)行政サービス等の拡充 ……………………………………………. 2

(3)民間サービスとの連携 ……………………………………………. 4

(4)公金受取口座の活用推進 ………………………………………….. 4

(5)スマートフォンへの搭載等マイナンバーカードの利便性の向上 …………….. 5

(6)次期マイナンバーカードの検討 …………………………………….. 5

2.デジタル臨時行政調査会によるアナログ規制の横断的な見直し ………………… 5

(1)アナログ規制の横断的な見直し …………………………………….. 5

(2)テクノロジーマップ等の整備 ………………………………………. 5

(3)デジタル法制審査 ……………………………………………….. 5

(4)官報の電子化 …………………………………………………… 5

(5)手続のデジタル完結と利便性向上 …………………………………… 5

3.国・地方公共団体を通じたDX の推進 …………………………………….. 6

(1)デジタル推進委員の活用 ………………………………………….. 6

(2)地方公共団体のアナログ規制の見直し ……………………………….. 6

(3)情報連携基盤(公共サービスメッシュ)の整備 …………………………. 6

(4)自治体窓口DX「書かないワンストップ窓口」 ………………………….. 6

(5)自治体キャッシュレス ……………………………………………. 7

(6)地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化 ……………………….. 7

(7)国・地方公共団体のガバメントクラウド移行 …………………………… 7

(8)デジタル化を支えるインフラの整備 …………………………………. 7

4.データ連携基盤の整備・優良事例のサービス/システムの横展開 ……………….. 7

(1)データ連携基盤の整備 ……………………………………………. 7

(2)優良事例のサービス/システムの横展開……………………………….. 7

5.準公共サービスの拡充 ……………………………………………….. 8

(1)健康・医療・介護分野 ……………………………………………. 8

(2)教育・こども分野 ……………………………………………….. 8

(3)防災分野 ………………………………………………………. 9

(4)モビリティ分野 …………………………………………………. 9

(5)インフラ分野(「電子国土基本図」の整備・更新) ……………………… 10

6.AI 活用及びデータ戦略の推進 …………………………………………. 10

(1)AI 活用に係る取組 ………………………………………………. 10

(2)包括的データ戦略の推進と今後の取組 ………………………………. 10

7.国際的なデータ連携・越境データ移転の国際枠組み ………………………… 11

(1)国際的な官民連携枠組みの設立 ……………………………………. 11

(2)eID の相互活用・信頼の枠組み …………………………………….. 11

(3)簡易な国際間送金 ………………………………………………. 11

8.事業者向け行政サービスの拡充 ……………………………………….. 11

(1)e-Gov の拡充…………………………………………………… 11

(2)G ビズID の普及 ………………………………………………… 11

(3)J グランツの刷新 ……………………………………………….. 12

(4)中小企業支援のDX 推進 ………………………………………….. 12

(5)政府調達におけるスタートアップ支援 ………………………………. 12

9.デジタルマーケットプレイス試行導入 …………………………………… 12

10.国家安全保障戦略等に基づく取組等の推進 ……………………………….. 12

第2 重点計画の基本的考え方 ……………………………………………… 14

1.デジタルにより目指す社会の姿 ……………………………………….. 14

2.デジタル社会の実現に向けての理念・原則 ……………………………….. 19

(1)デジタル社会形成のための基本原則 ………………………………… 19

(2)BPR と規制改革の必要性 ………………………………………….. 19

(3)構造改革のためのデジタル原則 ……………………………………. 20

(4)クラウド・バイ・デフォルト原則 ………………………………….. 20

第3 デジタル社会の実現に向けた戦略・施策 ………………………………….. 21

第3-1 戦略として取り組む政策群 ………………………………………….. 21

1.デジタル社会の実現に向けた構造改革 …………………………………… 21

(1)デジタル原則を踏まえた規制の横断的な見直し ………………………… 21

(2)国民が利便性を実感できる官民デジタル完結の徹底とAI・データ等を徹底活用でき

る社会づくり ……………………………………………………….. 23

(3)規制改革 ……………………………………………………… 24

2.デジタル田園都市国家構想の実現 ……………………………………… 25

(1)デジタル田園都市国家構想の意義、目的……………………………… 25

(2)構想実現に向けた取組の基本的な考え方……………………………… 25

(3)デジタル田園都市国家構想の実現に向けた重点検討課題 …………………. 26

3.国際戦略の推進 ……………………………………………………. 30

(1)DFFT の推進に向けた国際連携 ……………………………………… 30

(2)利用者本位の行政サービスの実現に向けた国際協力関係の構築 ……………. 30

(3)行政機関におけるデジタル人材育成に向けた国際協力 …………………… 31

(4)諸外国のデジタル政策に関わる機関との連携強化 ………………………. 31

(5)他国への支援 ………………………………………………….. 31

(6)民主的な「メタバース」の実現 ……………………………………. 31

4.サイバーセキュリティ等の安全・安心の確保 ……………………………… 32

(1)サイバーセキュリティの確保 ……………………………………… 32

(2)個人情報等の適正な取扱いの確保 ………………………………….. 34

(3)情報通信技術を用いた犯罪の防止 ………………………………….. 34

(4)高度情報通信ネットワークの災害対策 ………………………………. 34

5.急速なAI の進歩・普及を踏まえた対応 ………………………………….. 35

(1)連携体制 ……………………………………………………… 35

(2)基礎的な開発能力の構築・強化や包括的データ戦略に基づくデータ整備 …….. 35

(3)AI の社会実装 ………………………………………………….. 35

6.包括的データ戦略の推進と今後の取組 …………………………………… 36

(1)内外のデータ戦略の現状 …………………………………………. 36

(2)包括的データ戦略を踏まえた今後の方向性 ……………………………. 38

(3)当面重点的に取り組むべき事項 ……………………………………. 39

7.Web3.0 の推進 ……………………………………………………… 44

(1)Web3.0 の中核的要素であるトークンの利活用に係る環境整備 …………….. 44

(2)Web3.0 を活用したコンテンツ産業の活性化に向けた環境整備 …………….. 44

(3)Web3.0 の健全な発展を担う主体とアイデアの裾野の拡大 ………………… 45

(4)利用者保護 ……………………………………………………. 45

(5)その他 ……………………………………………………….. 45

第3-2 各分野における基本的な施策 ………………………………………… 46

1.国民に対する行政サービスのデジタル化 …………………………………. 46

(1)国・地方公共団体・民間を通じたトータルデザイン …………………….. 46

(2)マイナンバー制度の利用の推進 ……………………………………. 47

(3)マイナンバーカードの普及及び利用の推進 ……………………………. 48

(4)公共フロントサービスの提供等 ……………………………………. 55

(5)デジタル庁における一元的なフォローアップ体制 ………………………. 57

2.安全・安心で便利な暮らしのデジタル化 …………………………………. 58

(1)準公共分野・相互連携分野の指定 ………………………………….. 58

(2)準公共分野のデジタル化の推進 ……………………………………. 58

(3)相互連携分野のデジタル化の推進 ………………………………….. 70

3.アクセシビリティの確保 …………………………………………….. 72

(1)デジタル庁におけるサービスデザイン体制の強化及び他の政府機関等に対する横展開

……………………………………….. 72

(2)デジタル機器・サービスに係るアクセシビリティ環境の整備 ……………… 72

(3)皆で支え合うデジタル共生社会の実現 ………………………………. 73

(4)経済的事情等に基づくデジタルデバイドの是正 ………………………… 74

(5)「言葉の壁」の克服、多文化共生の推進………………………………. 74

(6)情報通信ネットワークの利用環境に係る格差の是正 …………………….. 74

4.産業のデジタル化 ………………………………………………….. 75

(1)デジタルによる新たな産業の創出・育成……………………………… 75

(2)事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組 ………………………. 77

(3)中小企業のデジタル化の支援 ……………………………………… 79

(4)産業全体のデジタルトランスフォーメーション ………………………… 79

5.デジタル社会を支えるシステム・技術 …………………………………… 80

(1)国の情報システムの刷新 …………………………………………. 80

(2)地方の情報システムの刷新 ……………………………………….. 94

(3)デジタル化を支えるインフラの整備 ………………………………… 98

(4)デジタル社会に必要な技術の研究開発・実証の推進 ……………………. 101

6.デジタル社会のライフスタイル・人材 ………………………………….. 105

(1)新たなライフスタイルへの転換 …………………………………… 105

(2)デジタル人材の育成・確保に向けた取組…………………………….. 106

第4 今後の推進体制 ……………………………………………………. 110

1.デジタル庁の役割と政府における推進体制 ………………………………. 110

(1)デジタル化に向けた司令塔としてのデジタル庁の役割 ………………….. 110

(2)政府におけるデジタル改革の推進体制の強化 …………………………. 111

(3)関係会議の開催 ……………………………………………….. 111

(4)政府情報システム保守運用体制に係る関係機関との連携強化 …………….. 112

2.地方公共団体等との連携・協力 ………………………………………. 113

3.民間事業者等との連携・協力 ………………………………………… 113

工程表

別冊

施策集

オンライン化を実施する行政手続の一覧等

1.マイナンバーカード/デジタル行政サービス

マイナンバーカードを使って国民の生活を向上させるため、マイナンバーカードと各種カードとの一体化や、行政手続のオンライン・デジタル化、市民カード化、民間ビジネスにおける利用、カードの利便性の向上など、以下に掲げる事項について重点的に取り組む。

(1)申請・交付環境の整備

紛失等の場合に最短5日間で発行・交付できる特急発行・交付の仕組み、出張申請受付の推進等、取得に課題がある方への環境整備を推進し、マイナンバーカードの交付体制や申請環境を整備する。

(2)行政サービス等の拡充

① 健康保険証との一体化

マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会の取りまとめを踏まえ、一体化を加速し、2024 年(令和6年)秋に健康保険証を廃止する。

(5)スマートフォンへの搭載等マイナンバーカードの利便性の向上

2023 年(令和5年)5月にAndroid 端末で導入したスマートフォン用電子証明書について、利用できるサービスを順次拡大する。iOS 端末についても実現に向けた検討を進める。

また、成人以降のカード更新を、マイナンバーカードに要求される身元確認保証レベル等について整理の上、オンライン化できないか、更に詳細を検討する。

(6)次期マイナンバーカードの検討

2026 年(令和8年)中を視野に次期マイナンバーカードの導入を目指す。このため検討の場として「次期マイナンバーカードタスクフォース(仮称)」を設ける。

暗号アルゴリズム、偽装防止技術を含めた券面デザインについて必要な見直しを行うとともに、性別、マイナンバー、国名、西暦等の券面記載事項、電子証明書の有効期間の延長、早期発行体制の構築を含む発行体制の在り方、マイナンバーカードの公証名義等について検討を行う。券面記載事項については、マイナンバーカードの身分証明書としての機能やマイナンバー利用事務・関係事務実施者の事務への影響を踏まえつつ検討する。

また、より効率的なマイナンバーカード管理システム及び公的個人認証サービス(JPKI)システムへの刷新や、既発行カードの扱い、新旧カード切替えに伴うカード利用機関等への影響についても検討することとする。

法改正が必要な場合は、2024 年(令和6年)通常国会への法案提出を目指す。

6.AI 活用及びデータ戦略の推進

(2)包括的データ戦略の推進と今後の取組

包括的データ戦略のうち、既に実装の段階に入っている施策については、本重点計画の各該当項目に進捗を記載し、引き続き推進する。更に、特に重点的に取り組むべき施策として、ベース・レジストリ等に関する施策を推進する。

ベース・レジストリに関する取組については、社会全体の取引コスト削減による取引規模拡大や生産性向上に向けて、ベース・レジストリに関する制度化の検討と、法人・土地系の注力領域における価値創出の両輪で進める。

制度化については、整備対象データに関し、①法令における位置付け②共有するための根拠③各行政機関の役割分担について整理を行うとともに、デジタル庁が定める「ベース・レジストリの指定」に基づき、データの整備を進める。

法人・土地系のベース・レジストリにおいては、各行政機関において、法人番号等の共通番号の徹底活用を進めるとともに登記等の基本情報を共有することによる変更手続省略等、申請者や審査者の負担軽減に向けた制度やシステムの検討を進める。

個人事業主の番号体系について、本人確認や情報連携等の具体的なユースケースの整理を行った上で、制度的な対応を含めた検討を行い、2023 年(令和5年)内に具体的な結論を出す。

7.国際的なデータ連携・越境データ移転の国際枠組み

(2)eID の相互活用・信頼の枠組み

各国のDigital Identity Wallet3等の取組を踏まえて、eID(electronic id)の領域で公的個人認証による本人確認等を活用するほか、データのやり取りにおいてデータや相手方を検証できる仕組みなど、新たな信頼の枠組みを付加する構想である「Trusted Web5」を推進する。

(3)簡易な国際間送金

簡易な国際間の即時送金について、本人確認手段や必要となるデータ標準など、国際的な相互運用性等について検討し、具体的な結論を得る。

8.事業者向け行政サービスの拡充

(2)G ビズID の普及

事業者(法人、個人事業主)が、様々なサービスにログインできる認証サービスを実現する「G ビズID」について、2023 年度(令和5年度)中にマイナンバーカードを利用した審査の効率化等を通じたユーザー数の増加、連携行政サービスの拡充を進める。加えて、「G ビズID」の制度化を進め、商業登記電子証明書との連携、民間サービスとの連携の在り方について整理・検討を進める。

6.包括的データ戦略の推進と今後の取組

(3)当面重点的に取り組むべき事項

⑤ ベース・レジストリ

社会基盤として参照可能なデータを整備する上では、データの元となる情報(情報源)の最新性や正確性、完全性等の品質担保が重要であり、具体的な社会課題への対応や、実現すべきサービスを念頭に置いた上で、必要となるデータの情報源と、データの共有の在り方について、関係行政機関等とともに検討することが重要である。また、品質担保の実現には、業務面(法令を含む。)やシステム面等の工数がかかり、メリハリをつけた対応が必要である。当面は、法人・土地系等の注力領域を設定し、デジタル臨時行政調査会において、ベース・レジストリの制度化と注力領域における価値創出の両輪で検討を進める。

ベース・レジストリの制度化については、①対象となるデータに関する行政事務における位置付け②データを共有するための法的な根拠の整理③データの整備及び情報連携基盤に係る関係行政機関等の役割分担について、検討を行った上、デジタル庁が別途定める「ベース・レジストリの指定」に基づき、関係行政機関等と連携してデータの整備を進める。

また、行政機関間における個人情報を含むデータの連携等に関する制度設計や運用が適切かつ円滑に行われるよう、個人情報保護委員会においては、個人情報の適正な取扱いに関し、必要な情報提供や助言等を行う。

ベース・レジストリの整備・運用に当たっては、官民の様々な情報について、正確かつ途切れることなく、データクレンジングを行ってきた国立印刷局等の関係する公的機関との連携について、関係府省庁とともに、検討する。

法人ベース・レジストリについては、社会における法人情報を整備し、共有することで、官民の取引コストを低減させ、もって企業の取引規模拡大、生産性向上を目指す。まずは、各行政機関によって目的別に個々に収集されている法人基本情報について、商業登記由来の情報からマスターデータとして行政機関内で共有することにより、申請者たる法人及び審査者たる行政機関双方の事務負担軽減を図るため、制度的な対応や規格の整理、システムの検討を行う。

個人事業主の番号体系については、本人確認や情報連携等の具体的なユースケースの整理を行った上で、制度的な対応を含めた検討を行い、年内に具体的な結論を出す。

土地系ベース・レジストリについては、所在情報に関し誰もが参照できるマスターデータや行政機関が不動産登記情報を利用するに当たっての使いやすいデータを提供することによって、各分野の業務効率化や新たな価値創造の取組の加速化を目指す。不動産登記ベース・レジストリについては、各行政機関によって目的別に個々に取得されている不動産登記由来の情報に関し、その取得スキームを一元化することで、法人ベース・レジストリと同様の行政手続等における効率化等、行政機関の業務効率化や国民の利便性向上を図るため、デジタル庁において、制度的な対応や規格の整理に関する検討を行うとともに、システム整備を推進する。アドレス・ベース・レジストリについては、地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化のスケジュールに対応するため、2025 年度(令和7年度)の本格運用を目指し、デジタル庁において、関係行政機関等と協力し必要な対応を進める。

また、法人及び不動産登記ベース・レジストリの実装に向けては、登記情報のうち、必要なデータ項目の異動情報の受領の在り方について、デジタル庁と法務省において連携して検討する。

支援制度ベース・レジストリについては、マイナポータルとの連携を着実に進め、機能の改善と拡充を図る。

また、ベース・レジストリとして位置付けるものではないものの、ベース・レジストリを活用した基礎的な時系列データや、ベース・レジストリのように汎用的に活用されないが特定分野等で社会の基盤として使われるデータ等に関して、データ整備等の検討をしていく必要がある。

第3-2 各分野における基本的な施策

  • 国民に対する行政サービスのデジタル化

(3)マイナンバーカードの普及及び利用の推進

・死亡・相続手続のオンライン・デジタル化

2020 年度(令和2年度)にデジタル・ガバメント分科会で報告した方針等に基づき、関係府省庁や地方公共団体の協力の下、次の施策を推進する。

2021 年度(令和3年度)中に行われた実証実験等を踏まえて、死亡に関する手続(死亡届及び死亡診断書(死体検案書)の提出)のオンライン化に向けて、デジタル庁において、厚生労働省及び法務省とともに課題の整理を行う。

デジタル庁は、法定相続人の特定に係る遺族等の負担軽減策について、これまでの検討を基に、法務省とともに社会実装に向けた論点整理を行い、その実現を支援する。戸籍情報連携システムを活用した法定相続人の特定に関する支援等を検討する。

第三に、図書館カード、印鑑登録証、書かない窓口の実現など、行政による市民サービスにおけるマイナンバーカードの利活用については、推奨すべきケースやソフト/システムを積極的に特定し、当該サービスの全国への展開を積極的に支援する。なお、コンビニ交付サービスや行政手続のオンライン化についても、引き続き推進する。

様々な民間ビジネスにおける利用の推進

マイナンバーカードが持つ本人確認機能の民間ビジネスにおける利用の普及を図るため、2023 年(令和5年)1月から行っている電子証明書失効情報の提供に係る手数料の当面無料化に続き、2023 年(令和5年)5月から公的個人認証サービスにおける本人同意に基づく最新の住所情報等の提供、スマートフォン用電子証明書搭載サービスを開始した。

また、地域通貨と連動した地域の消費や社会的活動を活性化させるための地域ポイントや、エンタメ分野におけるチケット上の本人確認と連動させたサービス、コンビニセルフレジでの酒・たばこ販売時の年齢確認サービスなど、各分野における新たなユースケース創出のための実証実験や基盤となるシステムの廉価な提供の促進に取り組む。

さらに、給付事業との組合せによる自治体施策の効果的な推進や地域経済の活性化など、自治体マイナポイントの効果的な活用を推進する。

犯罪による収益の移転防止に関する法律、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(携帯電話不正利用防止法)に基づく非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。対面でも公的個人認証による本人確認を進めるなどし、本人確認書類のコピーは取らないこととする。

(2)事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組

デジタル社会では、高度情報通信ネットワークを通じて流通する情報の発信者の真正性や、情報そのものの真正性、完全性等を保証するための機能が提供されることが必要であるため、前述のマイナンバーカードの普及に加え、電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書、法人共通認証基盤(G ビズID)の普及に関する取組を更に強力に推進するとともに、確実な本人認証を実現するための技術動向を注視していく。

また、「行政手続におけるオンラインによる本人確認の手法に関するガイドライン」に基づき、行政手続の特性に応じた本人確認手法の適正化を図る。

① 電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書の普及

電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書について、事業者による活用の機会が増加し、多様化していることから、普及を更に強力に推進する。

商業登記電子証明書を用いた電子署名について、利用者の利便性の向上の観点から、リモート署名方式の導入及び認証局機能のクラウド化について2025 年度(令和7年度)までの可能な限り早期に新規システムの運用開始を目指す。その際、認証と署名の役割を明確化した上でG ビズID と連携を検討する。

代理申請を可能とする場合に、申請者本人の電子証明書及び代理申請者の電子証明書を重ねて提出させることを不要とすること等によって、代理申請の容易化を図る。

共通的な認証・署名の利用

各府省庁による認証・署名機能の利用については、次を原則とする。

・個人の電子署名については、マイナンバーカードによる電子署名

・個人の電子認証については、マイナンバーカードによる電子利用者証明・法人の電子署名については、商業登記電子証明書、特定認証業務として認定された民間

認証局の電子証明書・法人の電子認証については、G ビズID公的個人認証サービスの民間利用の拡大を推進する。また、個人の認証・署名に利用するアプリケーションについては、独自構築による乱立を避けるため、デジタル庁が開発・運用する共通機能の活用を原則とする。

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