商業登記のオンライン申請において利用できる電子証明書に関するQ&A(Ver.3.0) (試訳)

Q&A regarding electronic certificates that can be used in online applications for commercial registration (Ver. 3.0) (Trial translation)

令和2年9月30日September 30, 2020

令和4年 11 月 26 日(改訂)November 26, 2022 (Revised)

令和5年3月 23 日(改訂)March 23, 2023 (Revision)

日本司法書士会連合会商業登記・企業法務対策部

Q1 電子署名とはどのようなものでしょうか。

Q1 What is an electronic signature?

A1 電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号、以下「電子署名法」という。)第2条第1項では、「電子署名」とは、「電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

  • 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
  • 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。」

と定められています。

A1 The Act on Electronic Signatures and Certification Business (Act No. 102 of 2000, hereinafter referred to as the “Electronic Signature Act”) Article 2, Paragraph 1 defines “electronic signature” as “an electromagnetic record (a record made by an electronic method, a magnetic method, or any other method not recognizable to human perception, which is used for information processing by a computer. The same shall apply hereinafter). (i) A measure taken with respect to information that can be recorded in a record (meaning a record made in a form that is not recognizable by human perception, such as a magnetic form or a form that is not recognizable by human perception, and that is used for information processing by computers; the same shall apply hereinafter) that meets all of the following requirements

(i) The measure is taken to indicate that said information was prepared by the person who took said measure.

(ii) The information is such that it can be verified whether or not it has been altered.

The following is stipulated.

端的に言えば、株主総会議事録等の電磁的記録(データ)に、その作成者の電子証明書を付することを、電子署名といいます。

Simply put, attaching an electronic certificate of the creator to an electromagnetic record (data), such as the minutes of a shareholders’ meeting, is called an electronic signature.

Q2 電子証明書には、リモート署名とクラウド型電子署名というものがあると聞きましたが、それぞれの内容を教えてください。

Q2 I heard that there are two types of electronic certificates: remote signature and cloud-based electronic signature.

A2 リモート署名とは、事業者のサーバに、利用者の署名鍵を設置及び保管をし、利用者が当該事業者のサーバにリモートでログインした上で、利用者自らの署名鍵で電子署名を行うものをいいます。

A2 Remote signature means that the user’s signature key is installed and stored on the server of the business, and the user logs in to the business’s server remotely and digitally sign the document with the user’s own signature key.

   クラウド型電子署名とは、立会型ともいわれ、事業者が利用者の指示を受けて、事業者自身の署名鍵で電子署名を行うものをいいます。クラウド型電子署名に関し、電子署名法上の位置付けについて、令和2年7月17日、法務省・総務省・経済産業省が下記の見解を示しております。

問2 サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による電子署名を行う電子契約サービスは、電子署名法上、どのように位置付けられるのか。

・近時、利用者の指示に基づき、利用者が作成した電子文書(デジタル情報)について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行うサービスが登場している。このようなサービスについては、サービス提供事業者が「当該措置を行った者」(電子署名法第2条第1項第1号)と評価されるのか、あるい は、サービスの内容次第では利用者が当該措置を行ったと評価することができるのか、電子署名法上の位置付けが問題となる。

・電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずしも物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはAが当該措置 を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在することなく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はBであると評価することができるものと考えられる。

・このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。 ・そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことよって、電子文書について行われた当該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には、これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署 名法第2条第1項第1号)を満たすことになるものと考えられる。

(法務省HPより https://www.moj.go.jp/content/001323974.pdf

法務省HPによると、商業登記のオンライン申請において添付書面情報に利用可能な電子証明書として、多数の電子証明書が定められています。その詳細につきましては、以下のURL をご参照ください。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji60.html#05

Q3 A2に記載の電子証明書により電子署名された電磁的記録は、商業登記の添付書面情報として利用することができると聞きましたが、この場合、これらの電子署名・電子証明書はいわゆる実印相当と考えてよいのですか。

Q3, I heard that electromagnetic records digitally signed with electronic certificates mentioned in A2 can be used as attached document information for commercial registration. In this case, can these electronic signatures and electronic certificates be considered equivalent to so-called real seals?

A3 商業登記の添付書面情報においては、リモート署名とクラウド型電子署名は、実印相当ではなく認印相当と扱われることが一般的です。

A3 In general, remote signatures and cloud-based electronic signatures are treated as the equivalent of a certified seal, not as the equivalent of an actual seal, in the attached document information for commercial registration.

   なお、令和2年6月12日付法務省民事局商事課事務連絡によると、法令の規定により添付書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない場合には、添付書面情報としての電磁的記録にリモート署名とクラウド型電子署名は利用することができないとされています。

Q4 電子署名・電子証明書が有効であることを確認することはできますか。また、誰の電子署名・電子証明書であるかを確認することもできますか。

Q4 Is it possible to confirm that a digital signature/digital certificate is valid? Can I also check whose digital signature/digital certificate it is?

A4 いずれもできます。

   リモート署名とクラウド型電子署名の両方とも、基本的には、Adobe社のAcrobat Reader を利用して確認します。電子署名された添付書面情報を開き、画面左側に「署名済みであり、すべての署名が有効です。」と表示されていれば、電子署名が有効であることを確認することができます。

A4Yes, it is possible to check the validity of a digital signature and digital certificate.

   Both remote signatures and cloud-based digital signatures are basically verified using Adobe’s Acrobat Reader. You open the attached document information that has been electronically signed, and on the left side of the screen you should see “Signed, all signatures are valid.” on the left side of the screen.

   電子証明書の有効性の確認について、画面右上の「署名パネル」をクリックすると、左側に署名者の情報が表示されます。更に詳細な情報を表示すると、電子証明書の有効性等の情報が表示されます。リモート署名の場合には、添付書面情報に記名されている者が署名者になりますので、署名者と電子証明書に搭載されている情報が一致するか、当該電子証明書が失効していないかを確認します。

   クラウド型電子署名の場合には、電子証明書に搭載されている名称等は事業者名になります。そこで、署名のプロパティ画面を開き、「理由」を確認し、添付書面情報に記名されている者が関与しているか否かを確認します。

また、署名のプロパティ画面で「署名者の証明書を表示」をクリックすると、証明書ビューアが表示され、発行者が表示されますので、法務大臣の定める電子証明書と同一であるかどうかを確認することができます。

   クラウド型電子署名の方法によって電子署名が付与された電子証明書の具体的な確認方法については、P.10~P.18のとおりとなります。

なお、電子証明書とは別にタイムスタンプというものがあります。電子証明書は「誰が」

「何を」を証明する機能があるのに対し、タイムスタンプは「いつ」「何が」を証明する機能がある点で用途が異なります。このタイムスタンプにより、電磁的記録がいつから存在したかを確認することができます。

Q5 電子署名後に添付書面情報が変更や改ざんされている場合、それを確認することはできますか。

Q5 Can I check if the attached document information has been changed or altered after it has been electronically signed?

A5 できます。  

 (1)が変更や改ざんのない電子署名された添付書面情報における、電子署名の情報画面になります。一方、電子署名が付与された後に添付書面情報が変更や改ざんされると(2)のような署名パネルの情報画面となり、変更や改ざんのあったことが一目でわかるようになっています。

なお、株主総会議事録や取締役会議事録等、印鑑提出者とそれ以外の者が同一の電磁的記録に電子署名を行う場合には、先にクラウド型電子署名をした後に商業登記電子署名、公的個人認証サービス電子署名又は特定認証業務電子署名(以下「商業登記電子署名等」という。)により電子署名を行うことが好ましいと考えられます。これは、商業登記電子署名等をした後、クラウド型電子署名をしようとした場合、電磁的記録をシステムにアップロードした段階で、当初した電子署名がリセットされることがあるためです。なお、署名パネルを開くと電子署名が追加された旨が、その他の変更として表示されますが、電磁的記録自体の改ざんには該当しません。

(2) 変更や改ざんのある場合

Q6 オンライン申請ではなく書面による申請を行う場合であっても、クラウド型電子署名がされた添付書面情報を利用することができますか。

Q6, Can I use the attached document information with cloud-based electronic signatures even if I submit a written application instead of an online application?

A6 できます。

   改正された商業登記規則が令和3年2月15日から施行され、書面申請の場合に申請書に添付する電磁的記録にも、リモート署名やクラウド型電子署名が利用可能となりました。

 A6: Yes, it is possible.

   The revised Commercial Registration Regulations came into effect on February 15, 2021, allowing the use of remote signatures and cloud-based electronic signatures for electromagnetic records attached to applications in the case of written applications.

Q7 商業登記のオンライン申請において、電子署名された添付書面情報をCD-R等に格納して提出することはできますか。

Q7 In an online application for commercial registration, is it possible to submit electronically signed attached document information on a CD-R, etc.?

A7 できます。

   商業登記規則第102条第2項ただし書において、添付書面情報の送信に代えて、登記所に当該「書面」を提出し、又は送付することを妨げないとされています。

A7 Yes, it is possible.

   The proviso of Article 102, Paragraph 2 of the Commercial Registration Rules states that it is not precluded to submit or send the “document” to the registry office in lieu of sending the attached document information.

この「書面」には、商業登記法第19条の2の申請書に添付する電磁的記録も含まれることから、オンライン申請の場合においても添付書面情報をCD-R等に格納して提出することは可能です。

もっとも、オンライン申請の趣旨を踏まえると、情報が大容量となりオンライン送信ができないといった格別の事由がある場合を除き、司法書士としてはオンライン送信によることが望ましいと考えられます。

Q8 依頼者からクラウド型電子署名がされた就任承諾書に代わる電磁的記録が送付されてきましたが、商業登記の添付書面情報として利用することはできますか。

Q8 My client sent me an electromagnetic record in place of the letter of acceptance of office with a cloud-based electronic signature.

A8 商業登記規則第61条第4項及び第5項に該当する就任承諾書に代わる電磁的記録以外であれば、商業登記の添付書面情報として利用可能です。

A8 If it is not an electromagnetic record in lieu of a letter of acceptance of office that falls under Article 61, Paragraphs 4 and 5 of the Commercial Registration Rules, it can be used as attached document information for commercial registration.

   商業登記の添付書面情報に利用されたクラウド型電子署名は、実印相当ではなく認印相当の扱いとなるのが一般的です(A3参照)ので、設立時取締役及び再任を除く取締役(取締役会設置会社の場合は代表取締役)の就任承諾書に代わる電磁的記録に利用することはできません。

   なお、商業登記の添付書面情報として、就任承諾書に代わる電磁的記録に、公的個人認証サービス電子署名又は特定認証業務電子署名をした場合には、商業登記規則第61条第7項に定める役員の本人確認情報は添付する必要はありません(商業登記規則第103条)。公的個人認証サービス電子署名に係る電子証明書の有効性検証については、日司連公的個人認証有効性確認システムをご活用ください。

Q9 商業登記の添付書面情報にされた電子署名について、資格者代理人としてどの程度までの確認が求められますか。

Q9 To what extent is a qualified representative required to verify the electronic signature made on the attached document information of a commercial registration?

A9 添付書面情報の署名欄記載の者と電子署名の署名者の同一性、電磁的記録の改ざんの有無、電子証明書の有効性について、特に不審な点がないかどうかを確認すれば足りると考えられます。

A9 It is considered sufficient to confirm the identity of the person whose signature appears in the signature field of the attached document information and the signer of the electronic signature, whether the electromagnetic record has been tampered with, and whether there is anything particularly suspicious about the validity of the electronic certificate.

Q10 株主総会議事録や取締役会議事録に代わる電磁的記録の作成者が、登記所に印鑑を提出している代表者である場合、当該代表者の電子署名としてクラウド型電子署名をして作成された当該電磁的記録は、商業登記の添付書面情報として利用することはできますか。

Q10 If the person who created the electromagnetic record in place of the minutes of a general meeting of shareholders or minutes of a board of directors is the representative who has submitted his/her seal to the registry office, can such electromagnetic record created with a cloud-based electronic signature as the electronic signature of such representative be used as attachment information for commercial registration?

A10 できる場合もあります。

   商業登記の添付書面情報の作成者が、登記所に印鑑の提出をした者である場合、当該添付書面情報にする電子署名については商業登記電子署名に限る旨を定めていた商業登記規則第36条第5号及び第102条第6項が削除されました。

In some cases, yes.

   Article 36, Item 5 and Article 102, Paragraph 6 of the Commercial Registration Rules, which provided that if the person who created the attached document information for commercial registration is the person who submitted the seal to the registry office, the electronic signature to be used for such attached document information shall be limited to the electronic signature for commercial registration, have been deleted.

このため、登記所に印鑑を提出した者が、作成者として電磁的記録にクラウド型電子署名をしている場合でも、その電磁的記録は、商業登記の添付書面情報として利用することはできます。例えば、管轄外本店移転を行う際の定款変更にかかる株主総会議事録や、本店所在地を定めた取締役会議事録(取締役決定書)に代わる電磁的記録がこれに当たります。

ただし、法令の規定により添付書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書が必要な場合や、法人が法務局に届出た印鑑を押印しなければならない場合には、添付書面情報としての電磁的記録には、実印相当の電子署名を利用しなければならないとされています。

However, in cases where a certificate prepared by the mayor of the municipality is required for the seal affixed to the attached document in accordance with laws and regulations, or where a corporation must affix a seal registered with the Legal Affairs Bureau, an electronic signature equivalent to a real seal must be used for the electromagnetic record as attached document information.

したがって、代表取締役の選定にかかる株主総会議事録及び取締役会議事録(取締役決定書)に代わる電磁的記録については、クラウド型電子署名の利用ができない場合もあります。詳しくはQ12を参照ください。

Q11 令和2年6月12日付法務省民事局商事課事務連絡によると、クラウド型電子署名については、「添付書面情報の作成者が印鑑提出者である場合及び法令の規定により登記の申請書に添付すべき書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない場合を除いた添付書面情報についてのみ利用可能」としていますが、具体的にどのような書面が該当しますか。

A11 次のとおり整理できると考えられます。

【クラウド型電子署名の利用が認められる添付書面情報】

添付書面情報
■株主総会議事録 ■取締役会議事録 ■取締役決定書 ■Minutes of the General Meeting of Shareholders ■Minutes of Board of Directors Meetings ■Decisions of Directors
■発起人決定書 ■就任承諾書(法令の規定により市町村長の作成した証明書を添付しなければならない場合を除く。) ■辞任届(作成者が印鑑提出者である場合を除く。) ■本人確認証明書 ■株主リスト ■資本金計上証明書 ■払込みがあったことを証する書面 ■株主総会招集期間短縮の同意書 ■失権予告付催告の期間を短縮する場合の総株主の同意書 ■現物出資がされた場合の弁護士等の証明書(商業登記法第56条第3号ハの書面) ■取得請求権付株式の取得の請求があったことを証する書面 ■新株予約権の行使があったことを証する書面 ■組織再編、資本金の額の減少等の場合において、債権者に対して各別に催告した旨を証明した書面 ■外国語で作成された添付書面情報の翻訳文書(作成者が印鑑提出者である場合を除く。) ■Statement of Decision of Promoters ■ Letter of Acceptance of Office (except in cases where a certificate prepared by the mayor of the municipality must be attached pursuant to laws and regulations) ■ Letter of resignation (except when the person making the letter is the person submitting the seal) ■Certificate of identification ■List of shareholders ■Certificate of capitalization ■Document certifying that payment has been made ■An agreement to shorten the period for convening a general meeting of shareholders Consent of all shareholders in the case of shortening the period of notice of forfeiture Certificate from an attorney or other legal representative in the case of contribution-in-kind (document stipulated in Article 56, Item 3(c) of the Commercial Registration Law) ■Document certifying that a request for acquisition of shares with put option has been made Document certifying that the subscription rights to shares have been exercised ■A document certifying that separate notice was given to creditors in the case of reorganization, reduction in the amount of capital, etc. ■Translated documents of the attached document information prepared in a foreign language (except in cases where the preparer is the person submitting the seal)
■募集株式の引受けの申込みを証する書面  ■A document evidencing an offer to subscribe for shares to be offered
■募集新株予約権の引受けの申込みを証する書面 Document evidencing an offer to subscribe for offered stock acquisition rights
■募集株式の総数引受契約を証する書面 ■募集新株予約権の総数引受契約を証する書面 Document evidencing agreement to subscribe for the total number of shares to be offered Document evidencing the subscription agreement for the total number of offered stock acquisition rights

【クラウド型電子署名の利用が認められない添付書面情報】

■定款(設立時に公証人が認証したものを添付する場合を除く)

■就任承諾書(法令の規定により市町村長の作成した証明書を添付しなければならない場合。)

■辞任届(作成者が印鑑提出者(印鑑を届け出ていない会社では「代表取締役」)である場合。)

■株式申込証の添付省略の代表者証明書

■代理人によって登記を申請する場合の委任状

■Articles of Incorporation (unless the articles are certified by a notary public at the time of incorporation, in which case they must be attached)

■Assumption of office (when a certificate prepared by the mayor of the municipality must be attached in accordance with the provisions of the law.)

■ Resignation form (if the person making the form is the person submitting the seal (or the “representative director” in the case of a company that has not registered its seal)).

■Certificate of representative omitting the attachment of the certificate of application for shares. ■A letter of attorney when applying for registration by proxy

Q12 代表取締役の選定に係る取締役会議事録に代わる電磁的記録には、誰がどの電子署名をすれば、商業登記において利用可能な添付書面情報となりますか。

Q12 Who and which electronic signature is required for the electromagnetic record in lieu of the minutes of the board of directors meeting regarding the selection of the representative director to be the attached document information that can be used in the commercial registration?

A12 以下のとおりとなります。

  • 登記所に印鑑を提出している者が出席している場合

登記所に印鑑を提出している者が取締役会に出席している場合には、その者は取締役会議事録に代わる電磁的記録に商業登記電子署名等をする必要があります(A9参照)。

この場合には、他の出席役員については、クラウド型電子署名による電子署名をすることで足ります。

  • 登記所に印鑑を提出している者が出席していない場合

登記所に印鑑を提出している者が取締役会に出席していない場合には、出席役員が公的個人認証サービス電子署名又は特定認証業務電子署名で、取締役会議事録に代わる電磁的記録に電子署名をする必要があります。

A12: The following is required

(1) When a person who has submitted his/her seal to the registry office is present

If a person who has submitted his/her seal to the registry office is present at the board of directors meeting, he/she is required to electronically sign the electromagnetic record in place of the minutes of the board of directors meeting (see A9).

In this case, it is sufficient for the other attending officers to electronically sign the minutes using cloud-based electronic signatures.

(2) When a person who has submitted his/her seal to the registry office is not present

If a person who has submitted his/her seal to the registry office is not present at the board of directors meeting, the attending officer must electronically sign the electromagnetic record in place of the minutes of the board of directors meeting by using a public personal certification service electronic signature or a specific certification service electronic signature.

     株主総会や、定款の定めに基づく取締役の互選により代表取締役を選定した場合も、上記の区分に従い、株主総会議事録や互選書に代わる電磁的記録に電子署名をしたものが、商業登記において利用可能な添付書面情報となります。

Q13 Q12 の取締役会を書面決議により行った場合には、取締役会議事録に代わる電磁的記録に、誰がどの電子署名をすれば、商業登記のオンライン申請における利用可能な添付書面情報となりますか。

Q13: If the board of directors’ meeting in Q12 was resolved in writing, who and which electronic signature is required to sign the electromagnetic record in place of the minutes of the board of directors’ meeting, and which electronic signature is required to be the attached document information that can be used in the online application for commercial registration?

A13 以下のとおりとなります。

  • 登記所に印鑑を提出している者が議事録作成者となる場合

登記所に印鑑を提出している者が議事録作成者となる場合には、取締役会議事録に代わる電磁的記録に商業登記電子署名等をすれば、当該電磁的記録は、商業登記における利用可能な添付書面情報となります(A10参照)。

この場合、他の役員は、電子署名をする必要はありません。

  • 登記所に印鑑を提出している者が議事録作成に関与できない場合

登記所に印鑑を提出している者が議事録作成に関与できない場合には、同意の意思表示をした取締役全員が、公的個人認証サービス電子署名又は特定認証業務電子署名で取締役会議事録に代わる電磁的記録に電子署名をしたものが、商業登記において利用可能な添付書面情報となります。

A13: The following is required

(1) When the person who has submitted his/her seal to the registry office is the person who prepares the minutes

If a person who has submitted his/her seal to the registry office is the person who prepares the minutes, if an electronic signature, etc. is made on the electromagnetic record in place of the minutes of the board of directors, the electromagnetic record will become available as attached document information for the commercial registration (see A10).

In this case, other board members are not required to electronically sign the record.

(2) Cases where the person who has submitted his/her seal to the registry office cannot participate in the preparation of the minutes

If the person who has submitted his/her seal to the registry office is unable to participate in the preparation of the minutes, the electronic signatures of all directors who have expressed their consent to the preparation of the minutes by using an electronic signature of a public personal certification service or a specific certification service will be the attached document information that can be used in the commercial registration.

     また、議事録作成者が公的個人認証サービス電子署名又は特定認証業務電子署名により電子署名した議事録に代わる電磁的記録及び他の取締役が公的個人認証サービス電子署名又は特定認証業務電子署名をした同意書に代わる電磁的記録を合わせたものを、添付書面情報としても差し支えないと考えられます。

Q14 取締役会に出席した取締役及び監査役が、同内容の議事録に代わる電磁的記録に別個に電子署名をし、複数の取締役会議事録に代わる電磁的記録がある場合、これらの取締役会議事録に代わる電磁的記録の全てを、取締役会議事録に代わる電磁的記録として、商業登記のオンライン申請における添付書面情報とすることはできますか。

Q14: If a director and a corporate auditor who attended a board of directors’ meeting sign electronically separately on an electromagnetic record in place of the minutes of the same meeting, and there are multiple electromagnetic records in place of the minutes of the board of directors’ meeting, can all of these electromagnetic records in place of the minutes of the board of directors’ meeting be considered as the electromagnetic records in place of the minutes of the board of directors’ meeting and used as the attached document information in an online application for commercial registration? A14: No. If there are multiple electronic records replacing the minutes of the board of directors, can all of these electromagnetic records replacing the minutes of the board of directors be used as attached document information in an online application for commercial registration?

A14 できません。

従来の登記実務では、登記申請の添付書面となる取締役会議事録について、取締役会議事録を数通作成し、各議事録に一部の取締役が記名押印し、全ての議事録を合わせて全取締役の記名押印が揃う方法による議事録の作成は適法でない(昭和36年5月1日民事四発第81 号民事局第四課長事務代理回答)とされています。

このことは、取締役会議事録が電磁的記録により作成されている場合であっても同様と考えられます。したがって、複数の取締役会議事録に代わる電磁的記録に一部の役員が電子署名をし、その全ての電磁的記録をもって、商業登記のオンライン申請における添付書面情報とすることはできません。

A14: No, it is not possible.

In conventional registration practice, it is not legal to prepare minutes of board of directors meetings, which are attached to an application for registration, by preparing several sets of minutes of board of directors meetings and having some directors write and seal their names and seals on each set of minutes so that all the minutes together have the names and seals of all the directors (Civil Affairs Bureau, No. 4, May 1, 1961, Civil Affairs Bureau, No. 81, Acting Assistant to the Director of the Fourth Section, May 1, 1961). (Civil Affairs Bureau, No. 81, May 1, 1961, Answer by the Deputy Director of the Fourth Civil Affairs Division).

電子証明書の確認方法

1.①(クラウドサイン)の電子署名の確認方法

可視署名がある場合

民事信託の登記の諸問題(18)

登記研究[1]の記事、渋谷陽一郎「民事信託の登記の諸問題(18)」からです。

受託者の権限が、信託目録上、一般人にも分かるように明瞭に公示されており、それを見れば、当該行為が、受託者の権限外行為であることが、その行為時、容易に判明する状態であったならば、受託者と権限外取引を行った相手方の悪意が、事実上、推認されよう。

 信託目録の記録が、一般人にも分かるように明瞭に公示出来るのか、分かりませんでした。また受託者が権限外取引を行っても、信託目録上受託者の権限が明瞭に公示されている場合は、権限外取引の登記申請は、不動産登記法25条4号または5号により却下されると考えられます。

それゆえ、訴訟における要件事実論の構造と同様、信託目録に記録すべき情報は、予め手続的に決定することができる。如何なる情報が必要であり、かつ、不要であるかは信託登記の手続き構造から来る必然的な枠組みがある。

民事訴訟法における要件事実論の構造と、信託目録の構造に似ている部分がある、ということに同意します。

なお、信託目録のための整序された要約を実現するためには、信託契約書上の信託条項それ自体が、的確に整序されているものである必要がある。信託条項の要約が上手くいかない場合、元になる信託契約書における信託条項の内容(要件)自体が整序されていない場合も少なくない。

要約をせずに、抽出で済むような信託契約書を作成する必要があると考えます。

例えば、次のような積極的な禁止の定めに関する情報があり得るかもしれない。

―中略―信託法26条但書の定め

信託不動産の売却処分は禁止する。

信託不動産であることは、登記記録から明らかなので、売却の禁止が記録されれば目的は達成できるのではないかと感じました。また積極的な禁止に加えて、制限も必要な場合があると思います。

もっとも、高齢者の認知症対策や障害児のための家族信託では、適格者による受益者代理人や信託監督人が設置されていない場合(それらの設置は強制されていないし、不適格者による場合、受託者との共謀もあり得る)、受益者による主体的選択は期待できない。それゆえ、結果として、信託登記の仕組みが、僥倖にも、弱者である福祉型信託における受益者保護の防波堤になっているという意義を忘れてしまっても良いのか、という議論があり得る(極めて難しい論点である)。

現時点での私見です。契約時については、委託者が確認・同意をします。受益者保護の仕組みとして考えるとすれば、法定後見制度の発動を促すために、信託不動産の処分について受益者(法定代理人)の同意を要する、などと定めることです。

例えば、次のような信託条項が信託目録に記録すべき情報として提供された場合、その適法性・有効性をどのように判断すべきなのか(判断できるのか)、という実務論点である。

その他の信託の条項

本信託の残余財産の帰属権利者は、委託者の遺言で指定する。

信託法183条で禁止されていない条項について、当初申請時において、不動産登記法25条に基づき却下することは難しいと思います。

しかしながら、当該信託条項だけが無意味であるが、全体の信託の効果に影響がないような場合には、あえて、却下事由として評価しないという選択もあり得るかもしれない。

上のような場合、登記官の権限で、却下事由として評価できないのではないかと思います。

×

4信託の条項

(4)その他の信託の条項

受益権の相続

 受益者法務太郎の相続人が受益権を相続する

第2次受益者となるべき者

 受益者法務太郎の死亡時、受益権は消滅し、受託者が、新たに発生する受益権を取得すべき者を指定する

不整合として無効と判定される場合がある、という著者の記載に同意です。このような不整合な条項がある場合、上の条項が優先し、それが達成されない場合に下の条項が発効する、という風な解釈が出来るような条項だと、まだ良いのかなと感じます。


[1] 901号、令和5年2月、テイハン、P71~

加工令和5年3月22日付け相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン

令和5年3月22日

法務省 相続登記の申請義務化の施行に向けたマスタープラン

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html

第1 はじめに

社会問題となっている所有者不明土地の発生を予防するため、民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24 号。以下「一部改正法」という。)により不動産登記法(平成16年法律第123 号。以下「法」という。)が改正され、令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化される。

本マスタープランは、相続登記の申請義務化に伴う新制度が、所有者不明土地問題の解決に効果的につながることが期待される一方、幅広い国民層に相当大きな影響を及ぼすものであることから、相続登記の申請義務化の施行1年前の現段階において、法務省として、新制度の開始に向けた環境整備策や予定している運用上の取扱い等を明らかにすることにより、国民に新制度の十分な理解と適切な対応を促すことを目的とするものである。

第2 本マスタープランの前提(一部改正法で規定された新しいルール)

1 相続登記の申請義務化の概要

⑴ 相続等により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該不動産を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない(法第76 条の2第1項)。

⑵ 遺産分割により不動産を取得した相続人についても、遺産分割の日から3年以内に、相続登記を申請しなければならない(法第76 条の2第1項前段、第2項、第76条の3第4項)。

⑶ 正当な理由がないのに、上記⑴又は⑵の申請を怠ったときは、10 万円以下の過料の適用対象になる(法第164 条)。

⑷ 相続登記の申請義務化は、令和6年4月1日から施行される。

⑸ 令和6年4月1日より前に開始した相続によって不動産を取得した場合であっても、相続登記をしていない場合には、相続登記の申請義務の対象となる。ただし、3年間の猶予期間が設けられており、猶予期間中に相続登記を行えば、過料2の適用対象となることはない(一部改正法附則第5条第6項)。

2 相続人申告登記制度の概要

相続登記の申請義務を履行するための簡易な方法として、相続人申告登記という制度が新設された。相続人申告登記の申出をした者は、上記1⑴の申請義務を履行したものとみなされる(法第76 条の3第1項、第2項)。もっとも、上記1⑵の申請義務(遺産分割後の申請義務)については相続人申告登記の申出によって履行することはできない(法第76 条の3第2項括弧書)。

第3 相続登記の申請義務化に向けて進める環境整備

相続登記の申請義務化は、国民に新たな負担を課すものであるため、令和6年4月からの円滑な新制度開始に向けて、国民の負担軽減のための環境整備をあらかじめ進めていくことが重要である。このような環境整備策として、次の1から4までの取組を進め、国民目線に立ったその他の方策も順次講ずるものとする。

1 相続登記を促進するため、令和4年4月1日から、①評価額が100 万円以下の土地に係る相続登記の申請や、②相続により土地を取得した者が相続登記をせずに死亡した場合の当該相続登記の申請については、その登録免許税の免税措置が講じられている(免税期間は令和7年3月31 日まで)(租税特別措置法(昭和32 年法律第26号)第84 条の2の3)。この免税措置について、国民への周知・広報を引き続き実施し、比較的価値の低い土地や数代にわたって相続登記が放置された土地について、相続登記の申請を積極的に促す。

2 相続登記の申請手続に係る国民の不安を解消し負担を軽減する観点から、相続登記の申請のために必要な準備や申請書の記載方法等を利用者目線で分かりやすくまとめた「登記申請手続のご案内」(登記手続ハンドブック)を法務省で作成して、令和4年12 月から法務局ホームページで公開している。今後も、遺言の有無など相続手続の違いを踏まえ、登記手続ハンドブックの類型化や内容の充実を図ったり、典型的な相続のケースにおいて通常想定される必要な対応を示したりする(別紙参照)など、引き続き、登記申請手続についてきめ細やかな情報発信を進める。

3 相続登記の申請義務化への対応として登記申請を検討する国民の増加が見込まれることを踏まえ、全国の法務局・地方法務局で、電話・ウェブ会議・対面の各方式を用いた相続登記の手続案内を効果的に実施する。

また、司法書士・土地家屋調査士を始めとする専門資格者及びその団体と連携し、国民に対し、相続登記その他の登記申請に関する相談先等の情報を提供する。

4 上記第2の2の相続人申告登記は、相続登記の申請義務を自ら速やかに履行したいと考える国民にとって、簡便な手続として選択肢になるものであり、利便性の高い手続となるよう、令和6年4月1日の施行に向けて準備を進める。

相続人申告登記は、対象となる不動産を特定した上で、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び②自らがその相続人である旨を申し出ることによって、相続登記の申請義務を履行したものとみなす制度であり、申出がされた場合には、登記官が所要の審査をした上で、登記簿に、申出をした者の氏名、住所等を職権で登記する(申出に係る登録免許税は、非課税)。

相続人申告登記は、相続人が複数存在する場合でも、他の相続人の関与なく単独で行うことが可能であって、例えば、相続登記の申請義務の履行期限が迫っている場合などに、その義務を果たすための簡易な方法として利用可能である。もっとも、相続人申告登記は、相続登記とは異なり、相続人の氏名、住所等の公示に特化した登記であり、不動産についての権利関係を公示するものではないから、効果が限定的であることに留意を要する。

相続人申告登記は、相続登記の申請義務を履行する簡易な方法として、相続人本人であっても容易に申し出ることができるよう、その申出手続は、申出の真正を確保しつつ、相続登記の申請手続と比べて簡略化したものとする。その具体の手続等を規定する法務省令及び通達は追って公表する予定であるが、その基本的方向性として、次の⑴から⑶までのとおりとする。

⑴ 相続人申告登記の申出は、書面による方法(管轄法務局の窓口に提出する方法又は管轄法務局に郵送する方法)と、管轄法務局宛てにオンラインで送信する方法を認める。オンラインによる申出は、Web ブラウザ上での負担の軽い手続を可能とし、単純な相続の事案では、オンライン上で申出を完結することができるものとする。

⑵ 申出をする本人の意思確認の方法として、書面による申出の場合の提出書面に対する押印や、オンラインによる申出の場合の提供情報に対する電子署名の付与は不要とし、それに代わる負担の軽減された確認方法を用いることとする。

⑶ 申出に必要となる基本的な添付情報は、次のアからウまでのとおりであるが、行政間の情報連携等を効果的に用いることにより、可能な限り、添付省略や写し(コピー)等の提供で足りる取扱いを認めることとする。

ア 申出をする者の本人確認情報

イ 相続があったことを証する情報

戸籍関係書類として、申出をする者が登記簿上の所有者(被相続人)の相続人であることを確認することができる範囲で足りるものとし、相続登記の申請手続とは異なり、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍関係書類までは要しないこととする。

さらに、今後運用が開始されることになる戸籍電子証明書の活用により、戸籍関係書類の提出を不要とする方策についても、速やかに検討を進める。

ウ 申出をする者の住所を証する情報

申出をする者が、申出の際に、その生年月日等の検索用情報(登記官において住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)から情報を取得するために必要な情報)を法務局に提供して、登記官が住基ネットとの連携によりその住所を確認することができる場合には、住民票の写しの提供を不要とすることとする。

第4 相続登記の申請義務化の運用方針の決定

相続登記の申請義務化に伴う運用の在り方については、国民に自発的な申請を可能な限り促しつつ、新制度に関する予見可能性の確保と不安の解消を図るよう、法務局における運用の透明性及び公平性を十分に確保する。そのような観点から、今後、具体の運用や手続を規定する法務省令及び通達を早期に定めて公表することとするが、運用の方針として、以下のとおりとする。

1 過料通知及びこれに先立つ催告

登記官は、相続登記の申請義務に違反したことにより過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは、遅滞なく、管轄地方裁判所にその事件を通知するものとする(以下「過料通知」という。)。過料通知を受けた管轄地方裁判所は、過料決定に関する判断を行うことになる。

ただし、登記官が過料通知を行うのは、過料に処せられるべき要件を充足すると合理的に判断される場合に限るものとする。具体的には、登記官が過料通知を行うのは、申請義務に違反した者に対し、相当の期間を定めてその申請をすべき旨を催告したにもかかわらず、正当な理由なく、その申請がされないときに限ることとし、また、当該催告に応じて登記の申請がされた場合には、それ以前の正当な理由の有無にかかわらず、過料通知は行わないものとする。

2 登記官による相続登記の申請義務に違反した者の把握方法

登記官が行う催告の前提となる、相続登記の申請義務に違反した者の把握は、運用の統一性・公平性とともに国民の納得感を確保する観点から、登記官が登記申請の審査の過程等で把握した情報により行うこととする。

登記官による相続登記の申請義務違反の把握の端緒としては、例えば、次のような場合が想定される。

⑴ 相続人が遺言書を添付して遺言内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺言書に他の不動産の所有権についても当該相続人に遺贈し、又は承継させる旨が記載されていたとき。

⑵ 相続人が遺産分割協議書を添付して協議の内容に基づき特定の不動産の所有権の移転の登記を申請した場合において、当該遺産分割協議書に他の不動産の所有権についても当該相続人が取得する旨が記載されていたとき。

3 「正当な理由」があると認められる場合

⑴ 上記1の催告をしたにもかかわらず、当該催告に係る登記の申請が相当の期間内にされない場合であっても、当該登記の申請をしないことに「正当な理由」があると認められるときには、過料通知は行わない。

「正当な理由」の有無は、登記官が、個別の事案における具体的な事情に応じて判断するものとし、上記1の催告手続においては、「正当な理由」の有無やその内容について申告することを求めるものとする。

⑵ 一般的に、例えば、次のアからオまでのような事情がある場合には、相続登記の申請をしていないことにつき「正当な理由」があると考えられる。もっとも、

「正当な理由」があると認められるのは、これらの場合に限定されるものではないため、「正当な理由」についての判断は、登記官において、相続登記の申請義務を負う者の具体的事情を丁寧に確認した上で行うものとする。

ア 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

イ 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているために不動産の帰属主体が明らかにならない場合

ウ 相続登記の申請義務を負う者自身に重病等の事情がある場合

エ 相続登記の申請義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

オ 相続登記の申請義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

第5 相続登記の申請義務化に向けた周知・広報

相続登記の申請義務化に向けては、負担軽減のための環境整備策を含めた制度の内容や具体的ルールについて、関連する制度改正(例えば、令和5年4月から始まる具体的相続分による遺産分割の期間制限)等と併せ、国民一般に分かりやすく十分な周知を、引き続き図ることが重要である。

法務省では、これまでも、①法務局・地方自治体の窓口や、法務省ホームページ、パンフレット、動画等を用いた情報提供のほか、②地方自治体や専門資格者団体等と連携した説明会・相談会の開催等を進めてきたところであるが、新制度開始1年前の現時点で、国民の認知・理解が十分に進んでいる状況にはない。

今後、国民各層の認知度を一層向上させるため、従前の取組から一歩進めて、国民の幅広い層に必要な情報が確実に届けられるよう、住民に身近な各地の地方自治体、公共的団体(自治会等)、各種資格者団体、福祉団体及び経済団体等とも連携し、一段ときめ細やかな、幅広い周知・広報に取り組む。

その観点から、政府を挙げた省庁横断的な広報対応や、関係機関・団体の幅広いサポートを得た周知活動、国民各層の年齢・環境に応じて多様な広報ツール・手法を用いた情報発信等について、法務省を挙げて、国民の理解の増進と協力の確保に全力で取り組んでいく。

以 上

読んでみて

・法務局に相続人申告登記を申請する場合は、抵抗がなければ、同時に生年月日などの提供を行う。

・戸籍電子証明書について考えられること

・・・オンラインで発行する場合、マイナポータルからマイナンバーカードに、戸籍に関する電子証明書提供用識別符号を付与・格納してもらう。

対面で発行してもらう場合、役所などにマイナンバーカードを提供して、戸籍に関する電子証明書提供用識別符号を付与・マイナンバーカードに格納してもらう。

法務局に、相続人申告登記を申請する際、電子証明書提供用識別符号を付与・格納を提供すると、法務局は、LGWAN内の 戸籍連携システムで確認し、相続人であることが確認出来れば申告手続き完了。戸籍連携システムが間に合わない場合は、電子証明書提供用識別符号を各市町村に照会して確認。士業による職務上請求などの代理での利用は、現在想定されていない。

上に記載の

⑶ 申出に必要となる基本的な添付情報は、次のアからウまでのとおりであるが、行政間の情報連携等を効果的に用いることにより、可能な限り、添付省略や写し(コピー)等の提供で足りる取扱いを認めることとする。

は、 ア 申出をする者の本人確認情報がマイナンバーカードとその中に格納された電子証明書提供用識別符号であれば、イの相続があったことを証する情報は不要となる。

・健康保険証や年金などのように、戸籍の情報(入籍など)が連携・更新されるのかについて・・・マイナンバーカードに付与・格納される、戸籍に関する電子証明書提供用識別符号が1人につき1つ(一意)である場合、戸籍事項全部証明書や除籍事項全部証明書の情報が取得出来ることからすると、連携・更新する方向なのではないかと考えます。

参考

法務省 戸籍法部会資料 12戸籍法の改正に関する要綱案

https://www.moj.go.jp/content/001387519.pdf

5 電子的な戸籍証明情報(戸籍電子証明情報)の発行

(1) 本人等による戸籍証明書又は除籍証明書の交付の請求は,戸籍証明書又は除籍証明書の交付に代えて,戸籍電子証明情報(戸籍証明書に係る電磁的記録をいう。)又は除籍電子証明情報(除籍証明書に係る電磁的記録をいう。)の発行についてすることができるものとする(注1)。

(2) 前記4(1)後段及び同(2)の規定は,(1)の場合に準用するものとする。

(3) 戸籍電子証明情報又は除籍電子証明情報の発行の方法(注2)その他(1)及び(2)の規定の実施に関し必要な事項は,法務省令で定めるものとする。

(注1)戸籍電子証明情報等は,前記4の広域交付に係る戸籍証明書又は除籍証明書についても発行することができるものとする。

(注2)戸籍電子証明情報等の交付に当たっては,マイナンバー制度におけるマイナポータルの仕組みを活用し,オンラインにより交付請求を行うことも可能とすることを想定している。

戸籍法(令和元年法律第17号)施行日

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000224_20240530_501AC0000000017

第百二十条の二 第百十九条の規定により戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもつて調製されているときは、第十条第一項(第十二条の二において準用する場合を含む。次項及び次条(第三項を除く。)において同じ。)の請求は、いずれの指定市町村長(第百十八条第一項の規定による指定を受けている市町村長をいう。以下同じ。)に対してもすることができる。

 前項の規定によりする第十条第一項の請求(本籍地の市町村長以外の指定市町村長に対してするものに限る。)については、同条第三項及び第十条の三第二項の規定は適用せず、同条第一項中「現に請求の任に当たつている者」とあり、及び「当該請求の任に当たつている者」とあるのは、「当該請求をする者」とする。

第百二十条の三 前条第一項の規定によりする第十条第一項の請求は、戸籍電子証明書(第百十九条の規定により磁気ディスクをもつて調製された戸籍に記録された事項の全部又は一部を証明した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をいう。以下同じ。)又は除籍電子証明書(第百十九条の規定により磁気ディスクをもつて調製された除かれた戸籍に記録された事項の全部又は一部を証明した電磁的記録をいう。以下同じ。)についてもすることができる。

 前項の規定によりする第十条第一項の請求があつたときは、指定市町村長は、当該請求をした者に対し、戸籍電子証明書提供用識別符号(当該請求に係る戸籍電子証明書を識別することができるように付される符号であつて、法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)又は除籍電子証明書提供用識別符号(当該請求に係る除籍電子証明書を識別することができるように付される符号であつて、法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を発行するものとする。

 指定市町村長は、行政機関等(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成十四年法律第百五十一号)第三条第二号に規定する行政機関等その他の法務省令で定める者をいう。)から、法務省令で定めるところにより、前項の規定により発行された戸籍電子証明書提供用識別符号又は除籍電子証明書提供用識別符号を示して戸籍電子証明書又は除籍電子証明書の提供を求められたときは、法務省令で定めるところにより、当該戸籍電子証明書提供用識別符号に対応する戸籍電子証明書又は当該除籍電子証明書提供用識別符号に対応する除籍電子証明書を提供するものとする。

 第一項の規定によりする第十条第一項の請求については、同項中「交付」とあるのは、「第百二十条の三第三項の規定により同項に規定する行政機関等に提供すること」とし、同項の請求(本籍地の市町村長以外の指定市町村長に対してするものに限る。)については、同条第三項及び第十条の三第二項の規定は適用せず、同条第一項中「現に請求の任に当たつている者」とあり、及び「当該請求の任に当たつている者」とあるのは、「当該請求をする者」とする。

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000027_20230401_504AC0000000026

(利用範囲)

第九条(1項2項略)

3 法務大臣は、第十九条第八号又は第九号の規定による戸籍関係情報(戸籍又は除かれた戸籍(戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第百十九条の規定により磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録することができる物を含む。)をもって調製されたものに限る。以下この項及び第四十五条の二第一項において同じ。)の副本に記録されている情報の電子計算機処理等(電子計算機処理(電子計算機を使用して行われる情報の入力、蓄積、編集、加工、修正、更新、検索、消去、出力又はこれらに類する処理をいう。)その他これに伴う政令で定める措置をいう。以下同じ。)を行うことにより作成することができる戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている者(以下この項において「戸籍等記録者」という。)についての他の戸籍等記録者との間の親子関係の存否その他の身分関係の存否に関する情報、婚姻その他の身分関係の形成に関する情報その他の情報のうち、第十九条第八号又は第九号の規定により提供するものとして法務省令で定めるものであって、情報提供用個人識別符号(同条第八号又は第九号の規定による特定個人情報の提供を管理し、及び当該特定個人情報を検索するために必要な限度で第二条第五項に規定する個人番号に代わって用いられる特定の個人を識別する符号であって、同条第八項に規定する個人番号であるものをいう。以下同じ。)をその内容に含むものをいう。以下同じ。)の提供に関する事務の処理に関して保有する特定個人情報ファイルにおいて個人情報を効率的に検索し、及び管理するために必要な限度で情報提供用個人識別符号を利用することができる。当該事務の全部又は一部の委託を受けた者も、同様とする。

加工令和5年4月1日施行法務省令第六号不動産登記規則等の一部を改正する省令

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00501.html#mokuji3

〇法務省令第六号

民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第二十四号)及び不動産登記令等の一部を改正する政令(令和四年政令第三百十五号)の施行に伴い、並びに関係法令の規定に基づき、及び関係法令を実施するため、不動産登記規則等の一部を改正する省令を次のように定める。

令和五年三月二十日 法務大臣 斎藤健

不動産登記規則等の一部を改正する省令

(不動産登記規則の一部改正)

第一条  不動産登記規則(平成十七年法務省令第十八号)の一部を次のように改正する。

次の表により、改正前欄に掲げる規定の傍線を付した部分をこれに順次対応する改正後欄に掲げる規定の傍線を付した部分のように改め、改正前欄及び改正後欄に対応して掲げるその標記部分に二重傍線を付した規定(以下「対象規定」という。)は、その標記部分が同一のものは当該規定を改正後欄に掲げるもののように改め、その標記部分が異なるものは改正前欄に掲げる対象規定を改正後欄に掲げる対象規定として移動し、改正後欄に掲げる対象規定で改正前欄にこれに対応するものを掲げていないものは、これを加える。

改正後

(法第七十条第二項の相当の調査)第百五十二条の二

 法第七十条第二項の法務省令で定める方法は、次の各号に掲げる措置をとる方法とする。

一法第七十条第二項に規定する登記の抹消の登記義務者(以下この条において単に「登記義務者」という。)が自然人である場合

イ 共同して登記の抹消の申請をすべき者の調査として次の(1)から(5)までに掲げる措置

(1) 登記義務者が記録されている住民基本台帳、除票簿、戸籍簿、除籍簿、戸籍の附票又は戸籍の附票の除票簿(以下この条において「住民基本台帳等」という。)を備えると思料される市町村の長に対する登記義務者の住民票の写し又は住民票記載事項証明書、除票の写し又は除票記載事項証明書、戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書並びに戸籍の附票の写し及び戸籍の附票の除票の写し(以下この条において「住民票の写し等」という。)の交付の請求

(2)(1)の措置により登記義務者の死亡が判明した場合には、登記義務者が記録されている戸籍簿又は除籍簿を備えると思料される市町村の長に対する登記義務者の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書の交付の請求

(3)(2)の措置により登記義務者の相続人が判明した場合には、当該相続人が記録されている戸籍簿又は除籍簿を備えると思料される市町村の長に対する当該相続人の戸籍及び除かれた戸籍の謄本又は全部事項証明書の交付の請求

(4)(3)の措置により登記義務者の相続人の死亡が判明した場合には、当該相続人についてとる(2)及び(3)に掲げる措置

(5)(1)から(4)までの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者が判明した場合には、当該者が記録されている住民基本台帳又は戸籍の附票を備えると思料される市町村の長に対する当該者の住民票の写し又は住民票記載事項証明書及び戸籍の附票の写し((1)の措置により交付の請求をしたものを除く。)の交付の請求

ロ  共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法による次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1)登記義務者の不動産の登記簿上の住所に宛ててする登記義務者に対する書面の送付(イの措置により登記義務者の死亡及び共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合を除く。)

(2)イの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合には、その場所に宛ててする当該者に対する書面の送付

二  登記義務者が法人である場合

イ  共同して登記の抹消の申請をすべき者の調査として次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1)  登記義務者の法人の登記簿を備えると思料される登記所の登記官に対する登記義務者の登記事項証明書の交付の請求

(2)の措置により登記義務者が合併により解散していることが判明した場合には、登記義務者の合併後存続し、又は合併により設立された法人についてとる(1)に掲げる措置

ロ  イの措置により法人の登記簿に共同して登記の抹消の申請をすべき者の代表者(共同して登記の抹消の申請をすべき者が合併以外の事由により解散した法人である場合には、その清算人又は破産管財人。以下この号において同じ。)として登記されている者が判明した場合には、当該代表者の調査として当該代表者が記録されている住民基本台帳等を備えると思料される市町村の長に対する当該代表者の住民票の写し等の交付の請求

ハ    共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法による次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1) 登記義務者の不動産の登記簿上の住所に宛ててする登記義務者に対する書面の送付(イの措置により登記義務者が合併により解散していること及び共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合を除く。)

(2)イの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者が所在すると思料される場所が判明した場合には、その場所に宛ててする当該者に対する書面の送付

ニ  イ及びロの措置により共同して登記の抹消の申請をすべき者の代表者が判明した場合には、当該代表者の所在の調査として書留郵便その他配達を試みたことを証明することができる方法による次の(1)及び(2)に掲げる措置

(1)共同して登記の抹消の申請をすべき者の法人の登記簿上の代表者の住所に宛ててする当該代表者に対する書面の送付

(2)イ及びロの措置により当該代表者が所在すると思料される場所が判明した場合には、その場所に宛ててする当該代表者に対する書面の送付

改正前

【条を加える。】

改正後

(申請人以外の者に対する通知)第百八十三条

【一・ニ略】

三 法第六十九条の二の規定による申請に基づく買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合

当該登記の登記名義人であった者

【2・3略】

4 登記官は、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされた相続による所有権の移転の登記についてする次の各号に掲げる事由による所有権の更生の登記の申請(登記権利者が単独で申請するものに限る。)があった場合には、登記義務者に対し、当該申請があった旨を通知しなければならない。

一 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言による所有権の取得

二 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の取得

   改正前

(申請人以外の者に対する通知)第百八十三条同上

  一・二 同上

号を加える

2・3 同上

改正後

(登記事項証明書の交付の請求情報等)第百九十三条【略】

2 法第百二十一条第三項又は第四項の規定により土地所在図以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、前項第一号及び第二号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を請求情報の内容とする。

【一〜三略】

四    法第百二十一条第三項の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、閲覧する部分及び当該部分を閲覧する正当な理由

五    法第百二十一条第四項の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、閲覧する附属書類が自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類である旨

3 前項第四号の閲覧の請求をするときは、同号の正当な理由を証する書面を提示しなければならない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。

4 第二項第五号の閲覧の請求をするときは、同号の閲覧する附属書類が自己を申請人とする登記記録に係る登記簿の附属書類である旨を証する書面を提示しなければならない。この場合において、登記官から求めがあったときは、当該書面又はその写しを登記官に提出しなければならない。

5􅩋 6􅩋7略

改正前

(登記事項証明書の交付の請求情報等)第百九十三条【同上】

2  法第百二十一条第二項の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、前項第一号及び第二号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を請求情報の内容とする。

【一〜三同上】

四    法第百二十一条第二項ただし書の利害関係を有する理由及び閲覧する部分

【号を加える】

3 前項の閲覧の請求をするときは、同項第四号の利害関係がある理由を証する書面を提示しなければならない。

4・5・6同上

改正後

(登記事項証明書の受領の方法)第百九十七条の二

第百九十四条第三項前段の規定により登記事項証明書の交付を請求した者が当該登記事項証明書を登記所で受領するときは、法務大臣が定める事項を当該登記所に申告しなければならない。

改正前

(登記事項証明書の受領の方法)第百九十七条の二

第百九十四条第三項前段の規定により登記事項証明書の交付を請求した者が当該登記事項証明書を登記所で受領するときは、法務大臣が定める情報を当該登記所に提供しなければならない

改正後

(手数料の納付方法)第二百三条

法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項から第四項までの手数料を収入印紙をもって納付するときは、請求書に収入印紙を貼り付けてしなければならない。

2【略】

改正前

(手数料の納付方法)第二百三条

法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項及び第二項の手数料を収入印紙をもって納付するときは、請求書に収入印紙を貼り付けてしなければならない。

2【同上】

改正後

(電子情報処理組織による登記事項証明書の交付の請求等の手数料の納付方法)第二百五条

 法第百十九条第四項ただし書(法第百二十条第三項及び第百二十一条第五項並びに他の法令において準用する場合を含む。)の法務省令で定める方法は、第百九十四条第二項及び第三項に規定する方法とする。

【2・3 略】

改正前

(電子情報処理組織による登記事項証明書の交付の請求等の手数料の納付方法)

第二百五条法第百十九条第四項ただし書(法第百二十条第三項及び第百二十一条第三項並びに他の法令において準用する場合を含む。)の法務省令で定める方法は、第百九十四条第二項及び第三項に規定する方法とする。

【2・3 同上】

改正後

(準用)第二百四十一条

第二百二条の規定は筆界特定手続記録の閲覧について、第二百三条第一項の規定は法第百四十九条第一項及び第二項の手数料を収入印紙をもって納付するときについて、第二百四条の規定は請求情報を記載した書面を登記所に提出する方法により第二百三十八条第一項の交付の請求をする場合において前条第三項の規定による申出をするときについて、第二百五条第二項の規定は第二百三十九条第二項に規定する方法により筆界特定書等の写しの交付の請求をする場合において手数料を納付するときについて、それぞれ準用する。この場合において、第二百二条第二項中「法第百二十条第二項及び第百二十一条第二項」とあるのは「法第百四十九条第二項」と、第二百三条第一項中「法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項から第四項まで」とあるのは「法第百四十九条第一項及び第二項」と、第二百四条第一項中「第百九十三条第一項」とあるのは「第二百三十八条第一項」と、「第百九十七条第六項(第二百条第三項及び第二百一条第三項において準用する場合を含む。)」とあるのは「第二百四十条第三項」と読み替えるものとする。

改正前

(準用)第二百四十一条

第二百二条の規定は筆界特定手続記録の閲覧について、第二百三条第一項の規定は法第百四十九条第一項及び第二項の手数料を収入印紙をもって納付するときについて、第二百四条の規定は請求情報を記載した書面を登記所に提出する方法により第二百三十八条第一項の交付の請求をする場合において前条第三項の規定による申出をするときについて、第二百五条第二項の規定は第二百三十九条第二項に規定する方法により筆界特定書等の写しの交付の

請求をする場合において手数料を納付するときについて、それぞれ準用する。この場合において、第二百二条第二項中「法第百二十条第二項及び第百二十一条第二項」とあるのは「法第百四十九条第二項」と、第二百三条第一項中「法第百十九条第一項及び第二項、第百二十条第一項及び第二項並びに第百二十一条第一項及び第二項」とあるのは「法第百四十九条第一項及び第二項」と、第二百四条第一項中「第百九十三条第一項」とあるのは「第二百三十八条第一項」と、「第百九十七条第六項(第二百条第三項及び第二百一条第三項において準用する場合を含む。)」とあるのは「第二百四十条第三項」と読み替えるものとする。

・読んでみて

・休眠担保権の登記の抹消申請について(参考、不動産登記69条、69条の2、70条。)

供託して抹消登記申請(不動産登記法70条4項、戸籍調査など要求されてない)・・・担保権の登記。

供託しないで抹消(不動産登記法70条2項、戸籍・住所調査など要求)・・・地上権、永小作権、質権、賃借権、採石権、買戻しの特約の登記。抵当権、根抵当権、先取特権は該当なし。

→占有権があって所有者の障害になるから。登記記録上、存続期間で分かる権利があるから。買戻しの特約は、お金を払ったのが本当か分からないから、一応通知します。

登記義務者が自然人の場合

・戸籍、住所を追って、配達証明付き書留郵便を送った(けれど反応がなかった。)ことを証明する情報を提供。

登記義務者が法人の場合

・法人の登記記録、法人の代表者住所を追って、不動産登記記録上の法人の本店所在地・代表者の住所に、配達証明付き書留郵便を送った(けれど反応がなかった。)ことを証明する情報を提供。

・申請人以外の者に対する通知について

・不動産登記記録上の住所に、通知がされる場合

・買戻しの特約に関する登記の抹消を完了した場合の登記名義人。参考として不動産登記令7条3項1号。

・相続により法定相続分で登記された後(戸籍関係のみが添付されている。)、権利を得る登記権利者が単独で更生の登記申請をした場合。理由は、2つのみ。一つ目が、遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言による所有権(持分)の取得。二つめが、遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権(持分)の取得。参考として不動産登記法63条3項。

→考えられること。不意打ちを避けるための手続き保障。

登記権利者(所有者)が抵当権者の相続人の存在等を知らなければ・・・登記権利者(所有者)に探索してもらう必要がある(実際は,司法書士がその実務を担うことになるであろうが。)。

まずは,登記簿上の住所地を調査することになるが,当該住所地に不存在である場合には・・・登記簿上の住所を手がかりに,抵当権者の住民票や戸籍等を調査することになるであろう。この場合,登記権利者(所有者)は,戸籍法等の第三者請求の要件(自らの権利行使のため)を満たすので,第三者請求をすることは可能であるが,司法書士としては何ら業務に関する委任を受けているわけではないので,職務上請求をすることはできないと考えられる。登記権利者(所有者)から委任状の交付を受けて,代理人として動くことになるであろう。

 その結果,不在住&不在籍ということであれば,不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消登記が選択肢として浮上することになるであろうし,抵当権者の相続人の存在が明らかになれば,登記権利者(所有者)が当該相続人と連絡をとって,上記のように共同申請の手続をとることになるであろう。

 登記権利者(所有者)による登記義務者(抵当権者の相続人)との連絡調整がうまく行かない場合には,民事訴訟による抹消登記請求を行うことが選択肢となる。簡裁訴訟代理等関係業務の範囲内であれば,司法書士が訴訟代理人として訴訟を追行することが考えられる。仮にもっと早い段階(登記簿上の住所地を調査して,抵当権者が当該住所に不存在であることが判明した時点)で簡裁訴訟代理等関係業務の委任を受ければ,職務上の請求により戸籍等の調査をすることも可である。

 まとめると,司法書士が職務上請求をすることが可能となるのは,

(1)依頼者が自ら戸籍法等の第三者請求が可能であること

(2)司法書士が当該依頼者から司法書士法に定める業務の依頼を受けること

の2点が満たされた場合である。

 (2)については,漠然と「登記権利者(所有者)から抹消登記の委任を受けた」では足りない。不動産登記は,共同申請が大原則であり,登記義務者(抵当権者)の権利の保護も図られるべき点を踏まえ,職務上請求に際しては,何の業務の委任を受けているのか(職務上請求用紙の記載事項である。)を明確にする必要がある。

 このように考えると,「不動産登記法第70条第3項後段の規定による休眠担保権の抹消」手続というのは,抵当権の登記名義人について戸籍等の調査を経た上で,不在籍証明が出たような場合に限られることになる。

 抹消登記は,既に権利は消滅しているが故に,とかく軽く考えられがちであるが,司法書士としては,登記義務者(抵当権者)からも委任を受け得る立場として,適切な執務対応が求められる。

 くれぐれも「『宛所に尋ね当たらず』の葉書一枚があればよい」と考えてはならないというべきである。

 なお,先般成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)による不動産登記法の改正によって,次の改正がされた。

〇 登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化

 不動産登記法第70条第1項及び第2項に規定する公示催告及び除権決定の手続による単独での登記の抹消手続の特例として、次のような規律を設けるものとする。

 不動産登記法第70条第1項の登記が地上権、永小作権、質権、賃借権若しくは採石権に関する登記又は買戻しの特約に関する登記であり、かつ、登記された存続期間又は買戻しの期間が満了している場合において、相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しないときは、その者の所在が知れないものとみなして、同項の規定を適用する。

 したがって,不動産登記法第70条第3項後段の規定の適用場面においても,同様に,「相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しない」ことが要件となり得るであろう。

・司法書士としては何ら業務に関する委任を受けているわけではないので,職務上請求をすることはできないのかについて

・・・職務上請求書1号様式を使用することは、可能と考えられます(日本司法書士会連合会「司法書士のための戸籍謄本・住民票の写し等の交付請求の手引き(第3版)」(平成31年3月)、P25)。戸籍法10条2第1項、第3項.。

第166回国会 法務委員会 第7号(平成19年3月20日(火曜日))

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/000416620070320007.htm

寺田政府参考人 「-今までですと、ただ自分の仕事の上で必要だと言えばそれでよかったわけでございますけれども、だれのためにということを示すのを原則にいたしておりますし、紛争性がない限りはその原則に従っていただくわけでございます。―」

→結果として、登記権利者から依頼を受け、(例えば)抵当権の抹消登記を申請するために、登記義務者の所在または相続人を確認するために、職務上請求書を使用することが可能と考えられます。

また、抹消登記は,既に権利は消滅しているが故に,とかく軽く考えられがちであるが,司法書士としては,登記義務者(抵当権者)からも委任を受け得る立場、については、既に権利が消滅しているか、分からない場合もあります。分からないので、先取特権、質権、抵当権、は供託を行い、(共同申請)第60条に定める法令で別段の定がある場合として、登記義務者からの委任を受けないという立場で、単独申請の代理を行うのだと考えられます。

不動産登記法第70条第3項後段の規定の適用場面においても,同様に,「相当の調査が行われたと認められるものとして法務省令で定める方法により調査を行ってもなお共同して登記の抹消の申請をすべき者の所在が判明しない」ことが要件となり得る、について

・・・今回の改正では要件となりませんでした。理由として、

  • 所有者不明土地の(出来る限り簡易な)解消という立法事実。
  • そのために、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律などの創設、民法や不動産登記法などの法改正が行われてきた。
  • 法律に従い、手続として省令が規定されている。この段階で、法益や個人(主に登記義務者)の被る損害などが比較考量された。

が挙げられると思います。結果として、先取特権、質権、抵当権の中で、占有権のある質権のみが戸籍調査の対象とされました。

今後、先取特権、抵当権について、戸籍調査の対象となる可能性はあると思います。登記義務者の被る損害が大きい事実が明らかになってきた場合など。

(除権決定による登記の抹消等)

第七十条 4 第一項に規定する場合において、登記権利者が先取特権、質権又は抵当権の被担保債権が消滅したことを証する情報として政令で定めるものを提供したときは、第六十条の規定にかかわらず、当該登記権利者は、単独でそれらの権利に関する登記の抹消を申請することができる。同項に規定する場合において、被担保債権の弁済期から二十年を経過し、かつ、その期間を経過した後に当該被担保債権、その利息及び債務不履行により生じた損害の全額に相当する金銭が供託されたときも、同様とする。

参考

登記研究 487号 156頁 昭和63年7月1日 法務省民三第3456号 民事局長通達 〔四九〇五〕不動産登記法の一部改正に伴う登記事務の取扱いについて

・・・自然人は、登記義務者が登記簿上の住所に居住していないことを市区町村長が証明した書面又は討議義務者の登記簿上の住所に宛てた被担保債権の受領不動産辰であったことを証する書面。法人の場合は、申請人が当該法人の所在地を管轄する登記所等において調査した結果を記載した書面(申請人の印鑑証明書を添付したもの)。

登記研究 487号 162頁 昭和63年7月1日 法務省民三第3499号 民事局第三課長依命通知 〔四九〇六〕不動産登記法第一四二条第三項後段の規定による登記申請の取扱いについて

・・・自然人の場合、配達証明付郵便か、警察官が調査結果を記載した書面、民生委員が登記義務者の居住していないことを証明した書面。法人の場合、登記記録、閉鎖登記簿の閲覧申請をしたが、その目的を達することができなかった旨を記載。

定款作成の委任を受けて作成された電子定款について、テレビ電話を利用して公証人の認証を受ける場合

株式会社・一般社団法人・一般財団法人

日本公証人連合会

令和2年5月11日からテレビ電話による認証制度がさらに便利になります。

https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/20200501.html

スケジュール

1、全て電子申請を行う場合

(1)定款案、実質的支配者になるべき者の申告書、発起人の印鑑証明書・本人確認情報を、管轄の公証センターにメール送信。公証人とテレビ電話会議の日程調整。

(2)定款完成後、公証センターから、定款認証費用、書面による同一の情報の発行費用、CD発行費用、申告受理及び認証証明書費用などのお知らせ。

(3)定款認証費用などを振込。

(4)定款完成後、2つのPDFファイル(定款,定款作成委任状)を法務省の専用ソフトを用い、オンラインで送信。

(5)公証人と嘱託人がテレビ電話会議で、本人確認。

(6)公証人から、電子定款が返信される。その他の書面による同一情報などは、レターパックで返送される。

2.書類郵送+テレビ電話認証

(1)定款案、実質的支配者になるべき者の申告書、発起人の印鑑証明書・本人確認情報を、管轄の公証センターにメール送信。公証人とテレビ電話会議の日程調整。

(2)定款完成後、公証センターから、定款認証費用、書面による同一の情報の発行費用、CD発行費用、申告受理及び認証証明書費用などのお知らせ。

(3)定款認証費用などを振込。

(4)管轄の公証センターへ、定款と定款作成委任状(発起人が押印)、発起人の印鑑証明書・本人確認情報を郵送。

(5)定款完成後、定款PDFファイル(士業者が電子署名)を法務省の専用ソフトを用い、オンラインで送信。

(6)公証人と嘱託人がテレビ電話会議で、本人確認。

(7)公証人から、電子定款が返信される。その他の書面による同一情報などは、レターパックで返送される。

実質的支配者になるべき者の申告について、記名(署名)押印は誰が行うのか?嘱託人とは?

嘱託人・・・公証人に直接依頼する人。発起人(社員)が直接依頼する場合は、発起人(社員)、定款を士業者が作成代理し、記名押印(電子署名)して公証人に直接依頼する場合は、士業者。

本人申請・・・発起人(社員)全員・発起人(社員)の代表者。

代理・・・定款に、作成代理人(士業者)が記名押印(電子署名)すれば士業者。

・実質的支配者となる者の申告書ではなく、直接表明保証を利用する場合

利用場面の想定

発起人が1人の場合

発起人が多数、遠方にいて、それぞれに直接作成して欲しい場合

・なお、公証センターによって取扱いが多少違うこともあるようなので(例えば司法書士代理でも発起人が実質的支配者の一覧図に記名押印でも可能など、代理の問題?)、初めての公証センターでは、事前に確認が必要です。

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